説明

医療環境における人間に対して、個人に即した体験を与えるシステム

【課題】本発明は、医療環境における人間に対して、個人に即した体験を与えるシステムに関する。
【解決手段】人間(専門家又は患者)が、医療環境、例えば、放射線診断部、心臓科、集中治療室等に入ることにより開始される、画像及び/又はアニメーションの投影と共に、発光における変化及び音声ソリューションを通して、この特定の構造的な状況において特定の環境/雰囲気が作り出される。この雰囲気は、特定の所定のテーマ(例えば、子供用の動物の絵又は自然の画像)から選ばれたものとするか、又は個人的なコンテンツ(例えば、家族又は休暇時の画像)がそのシステムに挿入されるときは、真に個人的なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療環境における人間に対して、個人に即した(personalized)体験(experience)を与えるシステムに関する。
【0002】
本発明は、更に、医療環境における人間に対して、個人に即した体験を与える方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の医療処置又は医療検査のため病院を訪れる人間は、通常、快適さや気楽さを感じることはない。これは、例えば、不安な気持ちと、その人が専門的な医療環境、及び実施されなければならない処置又は検査に不慣れであるという事実とによりもたらされる。これは、特に小さな子供やお年寄りに当てはまるということができる。患者のこうしたネガティブな感情は、処置又は検査の正確な実施を妨害する場合がある。従って、医療スタッフが、検査又は処置の前及びその間、各個別の患者を落ち着かせ、安心させることに一層多くの時間を費やす必要が生じる。こうして、ワークフローの効率性が否定的な影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、医療環境を患者にとってより快適なものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的を達成するため、本発明によるシステムは、医療環境における人間に対して、個人に即した体験を与えるシステムを有する。そのシステムは、情報(data)のコレクションから好ましい情報を選択するための選択手段と、その選択手段に接続され、その医療環境においてその選択された情報を表示する表示手段を制御する制御手段とを有する。特定の医療環境、例えば病院における検査室に入る前に、患者は、その人の個人的な好みに基づき、その選択手段を介して、情報のコレクションから特定の情報を選択する機会(possibility)を与えられる。これらの情報は、例えば、「自然」などの特定のテーマに関する画像及び音声の配合(composition)を有することができる。こうして選択された情報に基づき、システムにおける制御手段は、医療環境においてその選択された情報の表示を制御する。例えば、「自然」がテーマの場合、これは、自然の景色が、付随する音声と共に表示されることを意味する。例えば、海と波音とである。検査の間中、患者を落ち着かせ、リラックスさせる効果を与えるべく、この景色及び音声が提供されることになる。こうして、患者は、検査の間より快適さを感じることになる。
【0006】
本発明によるシステムの実施形態は、情報が視覚的な情報を有することを特徴とする。こうした視覚的な情報は、処置及び検査の間中、患者により見られる事ができる。
【0007】
視覚的な情報は、例えば写真のような静止画像を有することができるが、動画を有することもできる。
【0008】
本発明によるシステムの実施形態は、表示手段が、その環境の表面に視覚的な情報を投影する少なくとも1つのプロジェクタを有することを特徴とする。こうして、視覚的な情報は、好みと環境のタイプとに応じて、例えば、検査室の壁、天井、又は床面に投影されることができる。
【0009】
更に、そのシステムは、視覚的な情報と共に、又はそれとは別に、音楽、音、又は人の声といった音声情報を再生することもできる。
【0010】
本発明によるシステムの実施形態は、その選択手段が、所定の情報を有する少なくとも1つの識別子要素(identifier element)を有し、その制御手段が、その識別子に含まれる情報を読み出す読み出し手段を有することを特徴とする。
【0011】
その識別子要素は、無線周波数トランスポンダ(radio frequency transponder: RFタグ)及びバーコードのグループから選ばれる識別子を有することができる。そして、その読み出し手段は、無線周波数リーダ(reader)及びバーコードリーダのグループから選ばれるリーダを有する。
【0012】
有利には、その人の個人情報が情報のコレクションに含まれることができる。こうして、患者は、例えば、検査の間、その人の家族の個人的な写真、フィルム及び声を見聞きすることができる。そのことは、患者をリラックスさせるのに役に立ち、快適さの感情を更に高める。
【0013】
有利には、その個人情報は、情報のコレクションに含まれるよう、公衆交換網(public switching network)を介して送信されることができる。病院に行く前に、患者は、例えば、インターネットに接続されたパーソナルコンピュータを介してその人の個人情報を容易に送信することができる。
【0014】
本発明によるシステムの実施形態は、医療処置室、医療検査室、待合室、及び患者回復室(patient recovery room)を含む、一群の病院施設(hospital rooms)のいずれかを、医療環境が有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、更に、医療環境における人間に対して、個人に即した体験を与える方法に関する。その方法は、その人間に、選択がなされることが可能な情報のコレクションを提供するステップと、その人間によりなされた選択に基づき、その医療環境において情報を表示するステップとを有する。
【0016】
本発明による方法の実施形態は、患者に、選択がなされることができる識別子のコレクションが提供され、各識別子は、その環境における情報の表示を制御するための、その医療環境に含まれるリーダ(reader)により読み出し可能な所定の情報を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムの第1の実施形態を示す図である。
【図2】医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムの第1の実施形態を示す図である。
【図3】医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムの第1の実施形態を示す図である。
【図4】医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムの第1の実施形態を示す図である。
【図5a】医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムの追加的な実施形態を示す図である。
【図5b】医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムの追加的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本書において以下、図面を参照して、本発明が一層詳細に説明されることになる。
【0019】
図1、図2及び図3は、医療環境における人間に対して、個人に即した体験を与える、本発明によるシステム及び方法の第1の実施形態を示す。図1において、患者が、本例においては、母親に付き添われた子供であるが、病院に入り、受付で報告する。その子供に関する適切な患者情報が処理された後、その子供に、選択手段を介して選択がなされることが可能な情報1が提供される。本実施形態において、その情報はテーマに沿って配置される;例えば、「宇宙」、「自然」、「動物」及び「アニメ」などである。図2において見られるように、子供は、本人の個人的な好みに基づき、テーマを選ぶ。その選択手段は、所定の情報Aを有する少なくとも1つの識別子要素11を有する。本実施形態においては、無線周波数トランスポンダが、例えば、宇宙におけるロケット、宇宙飛行士、星、惑星などの絵又はフィルム並びに対応する音楽といった宇宙に関する視覚的及び音声の情報Aを有する。
【0020】
図3において見られるように、制御手段2は、識別子要素11に含まれる情報を読み出す読み出し手段3を有する。本実施形態において、無線周波数リーダ31が、本実施形態において検査室5である医療環境における入り口の前の壁面に与えられる。子供は、リーダ31に識別子要素11を置き、検査室5に入る。リーダにより読み出される識別情報に基づき、制御手段2は、その子供によりなされた選択に基づき、検査室5において情報Aを表示する表示手段15を制御する。本実施形態においては、図4において見られるように、宇宙に関する視覚的及び音声の情報がこうして検査室5において再生される。検査の間中、この景色及び音声が、子供を落ち着かせリラックスさせる効果を与えるために、提供されることになる。結果として、自分の好きなテーマを、本例においては宇宙を見聞きすることにより、その子供は、検査の間、より快適さを感じることになる。
【0021】
図5a及び図5bは、医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムの追加的な実施形態を示す。本実施形態において、検査室に表示される情報は、昼及び夜の両方に関する視覚的な情報を有する。検査が開始すると、青空が部屋の天井に投影され、鳥のさえずりといった適切な音が付随する。検査が進むと、空が昼から夜へと変化し、星が見える夜空が投影され、こおろぎの鳴き声といった適切な音が付随する。本実施形態において、視覚的な及び音声の情報は、検査の持続時間を示すものである;夜空が消えるとすぐ、再び青空が現れ、検査が終了する。患者はこうして、その環境において表示される情報を介して、検査の状態が通知される。
【0022】
例えば、これは、患者に通知する声、タイマのカウントダウン、発光色の変化を介しても行われることができる点に留意されたい。更に、患者は、表示される情報を介して指示されることができる。例えば、時間のカウントダウンが進むにつれ数を変える、空の雲により;又は子供向けには、例えば、その子供が検査の間、息を止めているべき時間期間を示すため、水面下に潜るアザラシのアニメにより、指示が行われる。更に、例えば、検査室の壁又は天井を介して、患者とコントロール室との間の双方向映像通信を追加することが可能である。
【0023】
個人に即した体験を更に高めるため、視覚的な及び音声の情報に加えて、特定の香りが更にその環境に提供されることもできることに更に留意されたい。患者が例えば「自然」のテーマを選択するとき、海のフィルムが投影され、潮風の香りがその環境に投与されることができる。
【0024】
その環境における設定が患者の好みに応じて個人に即したものとできるので、患者が検査の間、快適さを感じることの役に立つ。医療環境は、より開放的で(open)優しい(friendly)ものに感じられ(experienced)、双方向音声/映像通信は、患者により自然な通信手段を与える。更に、患者に対する全面的な体験(total experience)の効果は、日々の仕事において臨床ユーザを助けるのに役立つ。患者がリラックスし快適であるとき、患者を落ち着かせ安心させるのにかける時間が少なくて済む。このことは、ワークフローの効率性を更に高める。医療環境は、ワークフローの改善を可能にするので、対応可能な患者数(patient throughput)も増加される。
【0025】
更に、病院が、本発明によるシステム及び方法を適用することも有利である。なぜなら、より「個人に即した」体験を提供することにより、病院は、より多くの患者を引き付けることができるからである。病院は、重要な病院にふさわしい、注文仕立ての体験を作り出すことにより、その価値と専門性とを表明することが可能にされる。更に、革新的な職場環境を提供することにより、病院は、トップクラスの専門家達を引き付け、そこに留めることができる。
【0026】
本発明によるシステムは、有利には、以下に説明される環境において適用されることができる。病院における特定の部門において、本実施形態においては、放射線診断部において、待合室、更衣室及び準備室が1つの部屋にまとめられ、パーソナル準備室と呼ばれる。この部屋は、放射線診断部にステイする間、患者のための個人空間を提供する。これらの3つの部屋を1つにまとめることにより、検査が開始されるまで、家族や友人が患者に付き添う機会が更に作り出される。パーソナル準備室は、医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える、本発明によるシステムを介して、個人に即したものとすることができる。例えば、患者に対する娯楽手段及びリラクゼーション手段として、個人的に選択された音楽を再生し、写真を表示することによってである。
【0027】
検査手続が開始する前、患者は、個人的に選択したテーマに適した態様で、すべての適切な情報が与えられる。患者は、例えば、来るべき検査に関する、テーマに即した(themed)プレゼンテーションを、その選択されたプロファイルの要素を伝える態様で示されることができる。例えば、患者が子供であるとき、これは、おとぎ話の形式でストーリーを伝えることにより、又はアニメシステムを用いることにより行われる。
【0028】
この個人に即したテーマは、前述されるように検査室においても継続される。視覚的な情報は、例えば、絵、フィルム、処置の間のアドバイスのために投影される文及び医者を映す映像通信を含むことができる。音声情報は、例えば、音楽、処置の間の会話によるアドバイス及び医者の実際の声を含むことができる。
【0029】
人間(専門家又は患者)が放射線診断部(心臓科、集中治療室等に対しても同様)に入ることにより開始される、画像及び/又はアニメーションの投影と共に、発光における変化及び音声ソリューションを通して、この特定の構造的な状況において、特定の環境/雰囲気が作り出される。この雰囲気は、特定の所定のテーマ(例えば、子供用の動物の絵又は自然の画像)から選ばれたものとするか、又は個人的なコンテンツ(例えば、家族又は休暇時の画像)がそのシステムに挿入されるときは、真に個人的なものとすることができる。
【0030】
更に、本発明は、患者に関する用途に限定されない。本発明によるシステムは、有利には、医療スタッフメンバがその医療行為中にアクティブである医療環境、例えば、コントロール室などにおいて適用されることもできる。こうして、一層快適な職場環境が医療スタッフに提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療環境における人間に対して個人に即した体験を与えるシステムであって、
情報のコレクションから好ましい情報を選択する選択手段と、
前記医療環境において前記選択された情報を表示する表示手段を制御し、前記選択手段に接続される制御手段とを有するシステム。
【請求項2】
前記情報が、視覚的な情報を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記視覚的な情報が、静止画像を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記視覚的な情報が、動画を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記表示手段が、前記環境の表面に前記視覚的な情報を投影するプロジェクタを少なくとも1つ有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記情報が、音声情報を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記選択手段が、所定の情報を有する少なくとも1つの識別子要素を有し、前記制御手段は、前記識別子に含まれる前記情報を読み出す読み出し手段を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記識別子要素が、無線周波数トランスポンダ及びバーコードのグループから選択される識別子を有し、前記読み出し手段は、無線周波数リーダ及びバーコードリーダのグループから選択されるリーダを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記人間の個人情報は、前記情報のコレクションに含まれることができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記個人情報は、前記情報のコレクションに含まれるよう、公衆交換網を介して送信されることができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記環境は、医療処置室、医療検査室、待合室及び患者回復室を含む、一群の病院施設のいずれかを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
医療環境における人間に対して個人に即した体験を与える方法において、
選択がなされることが可能な情報のコレクションを前記人間に提供するステップと、
前記人間によりなされる前記選択に基づき、前記医療環境において情報を表示するステップとを有する方法。
【請求項13】
前記患者は、選択がなされることが可能な識別子のコレクションを提供され、各識別子は、前記環境における情報の表示を制御するための、前記医療環境に含まれるリーダにより読み出し可能な所定の情報を有する、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公開番号】特開2012−18696(P2012−18696A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−227051(P2011−227051)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2006−540698(P2006−540698)の分割
【原出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】