説明

医療用の側鎖結晶性ポリマー

【課題】主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合した複数の重原子を含むポリマーを提供する。
【解決手段】主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合した複数の重原子を含み、前記重原子が、前記ポリマーに放射線不透過性を与えるのに有効な量で存在し、前記ポリマーが、所定の構造の繰返し単位を含むポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年7月8日出願の米国特許仮出願第60/586796号の優先権を主張する、2005年7月7日出願の米国特許出願第11/176638号の一部継続出願であり、両方共、これらの全体において参照として本明細書に組み込まれる。
背景
発明の分野
本発明は側鎖結晶性ポリマーに関し、特に、医療用途で有用な側鎖結晶性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
ポリマー材料は多数の用途で広く使用されている。例えば、治療的塞栓は、血管または病気に罹っている血管構造の選択的閉塞である。ポリマーの塞栓治療デバイスおよび試薬の例としては、例えば、出血を制御するため、外科手術前または途中での失血を防ぐため、腫瘍および血管奇形、例えば、子宮筋腫、腫瘍(即ち、化学塞栓形成)、出血(例えば、出血を伴う外傷中の)および動静脈奇形、瘻(例えば、AVF)ならびに動脈瘤への血液供給を制限または阻止するために使用される塞栓コイル、ゲル発泡体、膠、および粒子状ポリマー塞栓剤が挙げられる。
【0003】
ポリマーの液体塞栓剤としては、沈降性および反応性系が挙げられる。例えば、沈降性系では、ポリマーは、血管送達で分散してポリマーを現場に沈殿させて残す、生物学的に許容される溶剤に溶解されてもよい。反応性系としてはシアノアクリレート系が挙げられ、例えば、液体モノマーおよび/またはオリゴマーシアノアクリレート混合物は、カテーテルを通して血管部位へ導入され、現場で重合する。この系では、重合は血液中で利用できる水分で開始される。
【0004】
多数の技術的用途は、温度の変化に基づく変遷を受けるポリマーの使用を含む。例えば、医療分野では、固体ポリマーを特定の体の領域中へ導入するための1つの方法は、ポリマーを加熱して流動可能な状態とし、次いで、ポリマーをその領域中へ注入し、それを冷却し、固化することである。米国特許第5469867号は、生きた哺乳動物において流路を塞ぐのに有用であると言われている側鎖結晶性ポリマーを開示している。その様なポリマーは、これらが体温よりもわずかに上で流動可能であり、体温まで冷却された場合に固化する様にこれらが溶融できる様に設計されていると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5469867号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
一実施形態は、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合した複数の重原子を含むポリマーを提供する。重原子は、ポリマーに放射線不透過性を与えるのに有効である量で存在してもよい。一実施形態では、ポリマーは、以下で示される式(VI)の繰返し単位を含む。その他の実施形態は、その様なポリマーを含む医療デバイスを提供する。
【0007】
その他の実施形態は、生体適合性の本質的に放射線不透過性側鎖結晶性ポリマーを含むポリマー材料を含む医療デバイスを提供する。一実施形態では、医療デバイスは少なくとも1つのステントを含む。
【0008】
その他の実施形態は、体腔を少なくとも部分的に塞ぐのに有効な量で哺乳動物の体腔中へ医療デバイスを導入することを含む治療方法であって、医療デバイスはポリマー材料を含み、ポリマー材料は側鎖結晶性ポリマーを含む方法を提供する。一実施形態では、方法は、医療デバイスを貫く流路を形成することをさらに含む。
【0009】
その他の実施形態は、第1モノマーおよび第2モノマーを共重合することを含む、本質的に放射線不透過性側鎖結晶性ポリマーを製造する方法であって、第1モノマーが重原子を含み、第2モノマーが結晶性基を含む方法を提供する。
【0010】
その他の実施形態は、側鎖結晶性ポリマーと重金属試薬とを、複数の重原子を側鎖結晶性ポリマーへ結合するために選択された条件下で反応させる工程を含む、本質的に放射線不透過性側鎖結晶性ポリマーを製造する方法を提供する。
【0011】
その他の実施形態は、側鎖結晶性ポリマーを含むステントを提供する。
【0012】
これらのおよびその他の実施形態は、以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、一方向の拡張を示すステントを与えるために下方へ反る湾曲性の歯を含む、本発明の好ましい一実施形態による、スライドロックステント構成の詳細図である。
【0014】
好ましい実施形態の詳細な説明
一実施形態は、重原子含有側鎖結晶性ポリマー(「HACSCCP」)を提供する。多数のポリマーは、相対的に低い原子番号の原子、例えば、水素、炭素、窒素、酸素、ケイ素および硫黄を含む。しかし、ポリマーへの相対的に高い原子番号の原子の結合は、ポリマーの種々の物理的および機械的性質に影響を及ぼす可能性があることが分かった。例えば、十分な量での重原子のポリマーへの結合は、ポリマーに、種々の医療的画像化方法による検出の容易さを都合よく与えることができる。「重原子」と言う用語は、17以上の原子番号を有する原子を意味するために本明細書では使用される。好ましい重原子は35以上の原子番号を有し、臭素、ヨウ素、ビスマス、金、白金、タンタル、タングステン、およびバリウムが挙げられる。ある種の構成では、HACSCCPは本質的に放射線不透過性であってもよい。「本質的に放射線不透過性」と言う用語は、十分な数の重原子が、ポリマーに、医療的画像化方法(例えば、X−線によるおよび/または蛍光透視中)による検出の容易さを与えるために共有またはイオン結合で結合したポリマーを意味するために本明細書では使用される。HACSCCPは、これらが、顕著な利益を与えてもよいある程度の本質的な放射線不透過性を与えるために構成される医療用途を含む種々の用途で使用されてもよい。結合した重原子がポリマーに、医療的画像化方法による検出の容易さを与えるその程度は、一般的に、ポリマー中へ導入される重原子の量およびポリマーの構成(例えば、厚さ)によることが理解される。
【0015】
重原子に加えて、HACSCCPは、また、結晶性側鎖を含む。側鎖結晶性(SCC)ポリマーは、時に「櫛様」(comb−like)ポリマーと呼ばれよく知られている。その開示が参照として本明細書に組み込まれる、N.A.Plate and V.P.Shibaev、J.Polymer Sci.:Macromol.Rev.8:117頁〜253頁(1974年)を参照されたい。HACSCCPは、SCCポリマーのタイプであり、別途言及しない限り、本明細書でのSCCポリマーへの参照はHACSCCPを含むことが理解される。一実施形態では、SCCポリマーは重原子を実質的に含まない。HACSCCPは、例えば、重原子をSCCポリマーへ結合することによりおよび/または重原子を含むモノマーを重合することによりHACSCCPを作ることにより重原子を含ませるために改質されたSCCポリマーであってもよい。SCCポリマーは種々の構成、例えば、ホモポリマー、コポリマー(例えば、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー)、種々の立体規則性(例えば、ランダム、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチック)等を有してもよい。SCCポリマーは2つ以上のSCCポリマーの混合物またはブレンドであってもよく、混合物またはブレンド中の個々のSCCポリマーのそれぞれは、異なる構成、異なる水準の重原子含有量、分子量、融点等を有する。結晶性側鎖が結合するSCCポリマーのポリマー骨格または主鎖は、種々の方法で、例えば、線状、分枝、架橋、樹状、一本鎖、二本鎖等で構成されてもよい。医療用の好ましいSCCポリマーは、本質的に放射線不透過性、生体適合性および/または生体吸収性である。重原子は、HACSCCPの主鎖および/または側鎖へ結合してもよい。
【0016】
SCCポリマー(例えば、HACSCCPを含む)の結晶性側鎖は、好ましくは、互いに結晶化して結晶領域を形成するために選択され、例えば、−(CH−および/または−((CH−O−)基を含んでもよい。側鎖は、結晶化を促進するために好ましくは線状である。結晶性側鎖に−(CH−基を含むSCCポリマーでは、nは、好ましくは、約6〜約30の範囲、さらに好ましくは、約20〜約30の範囲である。結晶性側鎖に−((CH−O−)基を含むSCCポリマーでは、nは、好ましくは、約6〜約30の範囲であり、mは、好ましくは、約1〜約8の範囲である。さらに好ましくは、mおよびnは、((CH−O−)基が約6〜約30個の炭素原子、なおさらに好ましくは、約20〜約30個の炭素原子を含む様に選択される。側鎖間の間隔ならびに側鎖の長さとタイプは、好ましくは、得られるSCCポリマーに所望の融点を持たせるために選択される。例えば、医療用途(例えば、塞栓治療)では、側鎖間の間隔ならびに側鎖の長さおよびタイプは、好ましくは、約30℃〜約80℃の範囲の融点を持つSCCポリマー(および/またはそれが導入される材料)を用意するために選択される。側鎖間の間隔が増加するにつれて、側鎖の結晶化傾向は減少する傾向にある。同様に、側鎖の可撓性が増加するにつれて、側鎖の結晶化傾向は減少する傾向にある。一方、側鎖の長さが増加するにつれて、側鎖の結晶化傾向は増加する傾向にある。多くの場合、結晶性側鎖の長さは、SCCポリマーの結晶性側鎖間の平均距離の約2倍〜約10倍の範囲であってもよい。
【0017】
SCCポリマーの例としては、アルキル基が、所望の融点を与えるために十分に長い(例えば、約6個を超える炭素)ものである様に、そしてHACSCCPに対しては、重原子を、例えば、それらに放射線不透過性を与えるのに十分な重原子を含ませるために改質される様に選択される次のポリマーの形式のものが挙げられる:ポリ(1−アルケン)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルビニルエーテル)、およびポリ(アルキルスチレン)。SCCポリマーの例としては、結晶性側鎖を含む(または含むために改質されている)、そしてHACSCCPに対しては、重原子を、例えば、それらに放射線不透過性を与えるのに十分な重原子を含む、次の参考文献に開示されているポリマーの形式のものがさらに挙げられる:米国特許第4638045号;第4863735号;第5198507号;第5469867号;第5912225号;および第6238687号;ならびに米国特許仮出願第60/601526号(2004年8月13日出願)、これらすべては、これらの全体において、特に、SCCポリマーおよびこの製造方法を説明する目的のために参照として組み込まれる。
【0018】
一実施形態では、側鎖は、制御可能な融点を持つSCCポリマー(またはSCCポリマーが導入される材料)を与えるために選択される。好ましい実施形態では、ポリマーの塞栓治療製品としては、X−線等の方法により検出可能な塞栓治療製品を与えるために構成されたHACSCCPが挙げられる。含まれるHACSCCPの側鎖は、ポリマーの塞栓治療製品が、製品が意図される哺乳動物の体温よりも高い融点を有する様に選択されてもよい。その様なポリマーの塞栓治療製品は、例えば、それにさらなる流動性を与え、それによって、それが冷却して、血管構造を塞栓するために固化してもよい目標の血管構造への送達を促進するために溶融温度より上まで加熱されてもよい。放射線不透過性を与えるための本質的に放射線不透過性HACSCCPの使用および制御された融点は、医療用途では特に有益であり得るが、当業者はなおさらなる用途を認識するものである。この様に、SCCポリマーに関しての本明細書の種々の説明は医療用の選択を示唆するものであってもよいが、医療領域以外の種々の方法も、SCCポリマー、特にHACSCCPの使用の利益を受けてもよいことが理解される。
【0019】
さらに、いくつかの実施形態では、本発明のSCCポリマーは、種々の医療デバイスを開発するために使用されてもよい。例えば、既製の市販デバイス、迅速に試作したデバイス、コンピュータ技術を使用する即座に試作したデバイス。さらに本発明のポリマーは、体の非内腔または非腔へ直接送達されてもよい。種々の医療デバイスとしては、血管および体腔用のステントおよびステントグラフト、ピン、ネジ、縫合糸、再構成骨格または軟組織用のアンカーおよびプレート、軟骨代替品が挙げられるがこれらに限定されない。SCCポリマーは、体の組織に、例えば、皮下および筋肉内組織に直接置かれてもよい。
【0020】
HACSCCPの一実施形態は、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーへ結合した複数の重原子を含むポリマーであり、重原子はポリマーに放射線不透過性を与えるのに有効な量で存在する。式(I)の繰返し単位を含むポリマーは、その様なHACSCCP等の一例である:
【0021】
【化1】

【0022】
式(I)で、XおよびXは、それぞれ独立に、BrおよびIからなる群から選択され、yおよびyは、それぞれ独立に、0または1〜4の範囲の整数であり、Aは、
【0023】
【化2】

【0024】
からなる群から選択される。
【0025】
は、C〜C30アルキル、C〜C30ヘテロアルキル、C〜C30アリール、C〜C30アルキルアリール、およびC〜C30ヘテロアリールからなる群から選択され、Rは、H、C〜C30アルキル、およびC〜C30ヘテロアルキルからなる群から選択され、Rは、
【0026】
【化3】

【0027】
である。
【0028】
およびRは、それぞれ独立に、−CH=CH−、−CHJ−CHJ−、および−(CH−からなる群から選択され、aは0または1〜8の範囲の整数であり、JおよびJは、それぞれ独立に、BrおよびIからなる群から選択され、Zは、OまたはSであり、Qは、約6〜約30個の炭素原子、好ましくは、約20〜約30個の炭素原子を含む結晶性基である。一実施形態では、Qは、
【0029】
【化4】

【0030】
である。
【0031】
式(I)のポリマーは、適当な側鎖長、側鎖間隔およびハロゲン含有量を選択するために、米国特許仮出願第60/601526号(2004年8月13日出願)に記載されている一般的方法を改良して調製されてもよい。
【0032】
Qおよび/またはRは、結晶性側鎖を含んでもよく、X、JおよびJのそれぞれが重原子であり、yは、ポリマー中の重原子の数が、ポリマーに放射線不透過性を与えるのに十分である様に調整されてもよいことが理解される。QおよびRは、それぞれ独立に、−(CHn1−および−((CHm1−O−)n1からなる群から選択される単位を含んでもよく、ここで、m1およびn1は、それぞれ独立に、Qおよび/またはRが、それぞれ独立に、約1〜約30個の炭素原子、好ましくは、約6〜約30個の炭素原子、さらに好ましくは、約20〜約30個の炭素原子を含む様に選択される。さらに、QおよびRは、その他の官能基、例えば、エステルおよびアミド等、および/または重原子、例えば、ヨウ素および臭素等を含んでもよい。QおよびRの非限定的例としては、したがって、−Cn12n1+1、−CO−Cn12n1+1、−CONH−Cn12n1+1、−(CHn1−Br、−(CHn1−I、−CO−(CHn1−Br、−CO−(CHn1−I、−CONH−CO−(CHn1−Br、および−CONH−CO−(CHn1−Iが挙げられる。一実施形態では、Rは−CH=CH−または−(CH−であり、Rは−(CH−であり、Qは、約10〜約30個の炭素原子を含むエステル基である。
【0033】
式(I)の繰返し単位を含むポリマーは、コポリマー、例えば、−R−A−の繰返し単位をさらに含む式(I)のポリマーであってもよく、ここで、Rは、−(CHn2−および−((CHm2−O−)n2−からなる群から選択され、m2およびn2は、それぞれ独立に、Rが約1〜約30個の炭素原子を含む様に選択され、Aは、上記Aと同じ方法で定義されることが理解される。したがって、一実施形態は、式(Ia):
【0034】
【化5】

【0035】
の繰返し単位を含むポリマーを提供する。
【0036】
式(Ia)で、X、X、y、y、RおよびAは、式(I)に対して上記で説明された通りに定義され、pおよびqは、それぞれ独立に、日常の実験を使用して、所望の性質、例えば、融点、放射線不透過性、および粘度を有するポリマーを与えるために広範囲にわたって変動してもよい。一実施形態では、pおよびqは、それぞれ独立に、1〜約10,000の範囲の整数である。式(I)の単位および式(Ia)の繰返し単位を含むポリマーにおける−(R−A)−の単位は、種々の方法で、例えば、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマー等の形態で配列されてもよいものと理解される。
【0037】
HACSCCPのその他の実施形態(例えば、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合した複数の重原子を含むポリマーであって、重原子がポリマーに放射線不透過性を与えるのに有効な量で存在するポリマー)は、式(II):
【0038】
【化6】

【0039】
の繰返し単位を含む。
【0040】
式(II)で、RはHまたはCHであり、Aは、約500以下の分子量を有する化学基であり、Aは、ポリマーに結合した重原子の少なくとも1つを有する。Aの非限定的例としては、金属カルボキシレート(例えば、−COCs)、金属スルホネート(例えば、−SOBa)、ハロゲン化アルキルエステル(例えば、−CO−(CH−Br)、ハロゲン化アルキルアミド(例えば、−CONH−(CH−Br)、およびハロゲン化芳香族(例えば、−C−I)が挙げられ、ここで、bは、約1〜約4の範囲の整数である。一実施形態では、Aは、臭素およびヨウ素からなる群から選択される少なくとも1つのハロゲン原子を有する芳香族基を含む。その他の実施形態では、Aは、式−L−(CHn3−L−Arの化学基を含み、ここで、LおよびLは、それぞれ独立に、なし(即ち、存在しない)、エステル、エーテルまたはアミド基を表し、n3は、0または約1〜約30の範囲の整数であり、Arは、約2〜約20個の炭素原子を含むハロゲン化芳香族基を含む。式(II)の繰返し単位を含むHACSCCPは、相当するモノマーの重合によりまたは適当なポリマー前駆体の後反応により形成されてもよい。式(II)の繰返し単位を含むHACSCCPは、さらなる繰返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0041】
式(II)の繰返し単位を含むHACSCCPにおける側鎖A基は結晶性であってもよくおよび/または式(II)の繰返し単位を含むHACSCCPは、結晶性側鎖を含む第2繰返し単位をさらに含んでもよい。結晶性側鎖を有する適当な第2繰返し単位の例としては次のものが挙げられる:ポリ(1−アルケン)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルビニルエーテル)、およびポリ(アルキルスチレン)。先の例示的第2繰返し単位のアルキル基は、好ましくは、6個を超える炭素原子を含み、さらに好ましくは、約6〜約30個の炭素原子を含む。例えば、一実施形態では、第2繰返し単位は、式(III):
【0042】
【化7】

【0043】
の繰返し単位である。
【0044】
式(III)で、RはHまたはCHであり、Lはエステルまたはアミド結合であり、Rは、C〜C30炭化水素基を含む。式(II)の繰返し単位を含むHACSCCPおよび第2繰返し単位(例えば、式(III)の繰返し単位等)は、相当するモノマーの共重合によりおよび/または適当なポリマー前駆体の後反応により形成されてもよい。
【0045】
HACSCCP(例えば、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合した複数の重原子を含むポリマーであって、重原子がポリマーに放射線不透過性を与えるのに有効な量で存在するポリマー)のその他の実施形態は、式(IV)(ここで、Aは上で定義されている)の繰返し単位を含む:
【0046】
【化8】

【0047】
式(IV)で、AはHまたは約1〜約30個の炭素を含む基、例えば、C〜C30炭化水素を表す。式(IV)の繰返し単位を含むHACSCCPにおける側鎖Aおよび/またはA基は、結晶性であってもよくおよび/または式(IV)の繰返し単位を含むHACSCCPは、結晶性側鎖を含む第2繰返し単位をさらに含んでもよい。例えば、一実施形態では、第2繰返し単位は、式(V)(ここで、R10はC〜C30炭化水素基を含み、R11はHまたは約1〜約30個の炭素を含む基、例えば、C〜C30炭化水素を表す)の繰返し単位である:
【0048】
【化9】

【0049】
HACSCCPのその他の実施形態は、式(VI):
【0050】
【化10】

【0051】
(式中、R12はHまたはCHであり、n4は約1〜約1,000の範囲の整数である)の繰返し単位を含む。好ましい実施形態では、式(VI)の繰返し単位を含むHACSCCPは生体適合性である。その他の実施形態では、医療デバイス(例えば、本明細書に記載されている、ステント、カテーテルまたは任意のその他の医療デバイス)は、式(VI)の繰返し単位を含むポリマーを含む。式(VI)の繰返し単位は、種々の方法で形成されてもよい。例えば、繰返しヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)単位を含む開始ポリマーが与えられてもよく、これらの繰返しヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)単位の少なくとも一部はカプロラクトンと反応して、以下のスキームAで例示される、側鎖において結晶性ポリ(カプロラクトン)(PCL)基を有する式(VIa)の繰返し単位を形成してもよい。
【0052】
【化11】

【0053】
結晶性PCL基を形成するためのカプロラクトンの重合は、適当な触媒、例えば、オクタン酸スズを使用して行われてもよい。側鎖(およびHACSCCP)の融点は、PCL基の重合度(n4)を操作することにより、例えば、当業者に一般的に知られている方法で、重合中のHEMA繰返し単位およびカプロラクトンモノマーの相対的量を調整することにより制御されてもよい。融点は、また、PCL基間の、ポリマー骨格に沿う間隔を操作することにより、例えば、開始ポリマーにおけるHEMA繰返し単位の量の適当な選択により制御されてもよい。一実施形態では、n4は、約2〜約10の範囲の整数である。重原子は、種々の方法で、式(VI)の繰返し単位を含むHACSCCPに含まれてもよく、例えば、HACSCCPは、上述の式(II)の繰返し単位をさらに含んでもよい。
【0054】
SCCポリマーは上述のものに限定されず(例えば、式(I)〜(VI)の繰返し単位を含むHACSCCPに限定されない)、側鎖結晶性基および/または得られるポリマーに放射線不透過性を与えるために十分な重原子を含ませるために改質された公知のポリマーの形式をさらに含む。当業者は、HACSCCPが種々の方法で、例えば、日常の実験を使用して、SCCポリマーを作製するために公知の方法を改良し、それによって、得られるポリマー中へ重原子を導入することにより調製されてもよいことを理解する。例えば、米国特許第5469867号に記載されている側鎖結晶性ポリマーの本質的に放射線不透過性形式は、相当するモノマーを、重原子を含むモノマーと共重合させることにより調製されてもよい。米国特許第5469867号は、参照として、特に、モノマー、ポリマーおよび重合方法を説明することの目的のために組み込まれる。重原子を含む適当なモノマーの例は、Kruftら、「Studies On Radio−opaque Polymeric Biomaterials With Potential Applications To Endovascular Prostheses」、Biomaterials 17(1996年)1803頁〜1812頁;およびJayakrishnanら、「Synthesis and Polymerization of Some Iodine−Containing Monomers for Biomedical Applications」、J.Appl.Polm.Sci.、44(1992年)743頁〜748頁に開示されている。HACSCCPは、また、後反応によって、例えば、米国特許第5469867号に記載されているポリマーへ重原子を結合させることにより調製されてもよい。HACSCCPを作るために重原子で改質されてもよいSCCポリマーの特定の例としては、J.Poly.Sci.10:3347頁(1972年);J.Poly.Sci.10:1657頁(1972年);J.Poly.Sci.9:3367頁(1971年);J.Poly.Sci.9:3349頁(1971年);J.Poly.Sci.9:1835頁(1971年);J.A.C.S.76:6280頁(1954年);J.Poly.Sci.7:3053頁(1969年);Polymer J.17:991頁(1985年)に記載されている、アクリレート、フルオロアクリレート、メタクリレートおよびビニルエステルポリマー、相当するアクリルアミド、置換アクリルアミドおよびマレイミドポリマー(J.Poly.Sci.:Poly.Physics Ed.11:2197頁(1980年);J.Poly.Sci.:Macromol.Rev.8:117〜253頁(1974年)およびMacromolecules 13:12頁(1980年)に記載されている様なポリオレフィンポリマー、Macromolecules 13:15頁(1980年)に記載されている様なポリアルキルビニルエーテル、ポリアルキルエチレンオキシド、Poly.Sci.USSR 21:241頁、Macromolecules 18:2142頁に記載されている様なアルキルホスファゼンポリマー、ポリアミノ酸、Macromolecules 12:94頁(1979年)に記載されているようなポリイソシアネート、Macromolecules 19:611頁(1986年)に記載されている様な、アミンまたはアルコール含有モノマーと長鎖アルキルイソシアネートとの反応による作られるポリウレタン、ポリエステルおよびポリエーテル、ポリシロキサンおよびポリシラン、ならびにJ.A.C.S.75:3326頁(1953年)およびJ.Poly.Sci.60:19頁(1962年)に記載されている様なp−アルキルスチレンポリマーが挙げられる。先のSCCポリマーは、種々の方法でHACSCCPを作るために重原子で改質されてもよい。例えば、重原子を持つモノマーは、先のポリマーを作製するために使用されるモノマーをヨウ素化および/または臭素化することにより調製されてもよい。これらの重原子を持つモノマーは、次いで、未改質モノマーと共重合してHACSCCPを調製してもよい。当業者は、重原子を持つモノマーおよび相当するHACSCCPを作るための条件を日常の実験で確認してもよい。
【0055】
その他の実施形態では、HACSCCPは、側鎖結晶性ポリマーと重金属試薬とを、複数の重原子を側鎖結晶性ポリマーへ結合させるために選択された条件下で反応させることにより調製される。例えば、側鎖結晶性ポリマーは、臭素および/またはヨウ素を含む重金属試薬へ曝露されてもよい。重金属試薬の例としては、臭素蒸気、ヨウ素蒸気、臭素溶液およびヨウ素溶液が挙げられる。側鎖結晶性ポリマーは、重金属試薬へ、例えば、固体ポリマーを重金属試薬へ曝露するかまたは重金属試薬と混合することにより、および/または側鎖結晶性ポリマーを溶剤に溶解または分散して、重金属試薬と混合することにより曝露されてもよい。その他の方法が、また、使用されてもよい。
【0056】
SCCポリマーは、SCCポリマーに求められる性質によって、種々の量の重原子および/または結晶性側鎖を含んでもよい。好ましくは、結晶性側鎖の含有量は、主鎖結晶化を実質的に減少させまたは防ぐのに十分なものである。多くの場合、SCCポリマー中の結晶性側鎖の量は、合計ポリマー重量を基準にして約20重量%〜約80重量%の範囲であり、ある場合には、同じ基準で約35%〜約65%の範囲であってもよい。SCCポリマーの結晶性側鎖の長さは、好ましくは、結晶性側鎖間の平均距離の約2倍〜約10倍の範囲である。SCCポリマーは、結晶領域(例えば、ポリマーの融点より下で側鎖の結晶化により形成される)および非結晶領域(例えば、SCCポリマーの非結晶性部分で形成されるガラス質またはエラストマー性領域)を含んでもよい。一実施形態では、非結晶領域は、哺乳動物の体温より高い、例えば、約37℃よりも高いガラス転移温度を有し、その他の実施形態では、非結晶領域は、哺乳動物の体温より低い、例えば、約37℃よりも低いガラス転移温度を有する。特定のSCCポリマー中の重原子の量は、所望の放射線不透過性および/または材料の(機械的)性質の程度を基準にして選択されてもよい。例えば、医療用途では、HACSCCPは、HACSCCPの合計重量を基準にして、好ましくは、約1重量%〜約90重量%の重原子、さらに好ましくは、約20重量%〜約50重量%の重原子を含む。ある場合では、SCCポリマーはポリマー材料中へ導入され、および/または以下で説明される様な医療デバイスに形成される。SCCポリマーがHACSCCPである場合は、HACSCCP中の重原子の量は、放射線不透過性の所望の程度を持って得られるポリマー材料および/または医療デバイスを与えるために調整されてもよい。
【0057】
重原子の側鎖結晶性ポリマー中への無差別な導入は、多くの場合、さもなければ結晶性の側鎖の結晶化を妨害または阻止し、特に、重原子の導入の水準が高い場合には、側鎖は相対的に短く、側鎖は相対的に可撓性で、および/または側鎖間の距離は相対的に大きい。好ましくは、重原子は、側鎖の結晶化度の崩壊を最小限にするかなくす方法でHACSCCPへ結合される。例えば、一実施形態では、重原子の少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約80%がHACSCCPの主鎖へ結合される。その他の実施形態では、重原子の少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約80%が、HACSCCPの側鎖の末端へ、例えば、結晶性側鎖の末端および/または非結晶性側鎖へ結合される。その他の実施形態では、重原子の少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約80%が、HACSCCPの主鎖または側鎖(結晶性および/または非結晶性)へ結合される。その他の実施形態では、HACSCCPは、結晶ブロックおよび無定形ブロックを含むブロックコポリマーであって、重原子の少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約80%が無定形ブロックへ結合されているブロックコポリマーである。
【0058】
SCCポリマーの分子量は、ポリマーに対して意図される用途の観点から選択される。例えば、ある医療用途、例えば、一定の塞栓治療用途では、SCCポリマーにとっては、ポリマーの融点より高い温度で流動し、ポリマーの融点より低い温度で固体を形成することが望ましい。溶融SCCポリマーの粘度は、一般的に、ポリマーの分子量が増加するにつれて増加し、したがって、特定のSCCポリマーの分子量は、好ましくは、所望の溶融ポリマー粘度を与えるために選択される。例えば、塞栓治療製品で使用されるSCCポリマーにとって好適な分子量範囲は、約2,000〜約250,000、好ましくは、約5,000〜約150,000の範囲である。分子量は、光散乱検出を使用する高圧サイズ排除クロマトグラフィーで決定される平均重量である。
【0059】
ある場合には、SCCポリマーを第2材料(例えば、第2ポリマー)と混合またはブレンドしてポリマー材料を形成し、次いで、これを意図する用途で使用することが望ましい場合がある。例えば、一実施形態は、SCCポリマー(例えば、HACSCCP)および第2ポリマーを含むポリマー材料を提供する。好ましくは、第2ポリマーは生体適合性および/または生体吸収性である。SCCポリマーと混合またはブレンドしてポリマー材料を形成するのに適した第2ポリマーの例としては、共に参照として組み込まれる、米国特許第5469867号に開示されている本来放射線不透過性ではないポリマーおよび米国特許仮出願第60/601526号(2004年8月13日出願)に記載されている放射線不透過性ポリマーが挙げられる。意図する用途によって、ポリマー材料におけるSCCポリマーと第2ポリマーの相対的量は広範囲にわたって変動してもよい。例えば、一実施形態では、ポリマー材料は、合計重量を基準にして、約1重量%〜約100重量%のSCCポリマーおよび約99重量%までの第2ポリマーを含む。ポリマー材料は単にSCCポリマーからなっていてもよいので、本明細書で使用される「ポリマー材料」と言う用語は、SCCポリマー(HACSCCP等)を含むものと理解される。上で言及した様に、SCCポリマーそれ自体は、それぞれが、例えば、異なる分子量、構成および/または融点を有する2つ以上の個々のSCCポリマーの混合物またはブレンドであってもよいことが理解される。
【0060】
SCCポリマーを含むポリマー材料は、種々の構成または予備成形形状、例えば、ロッド、粒子、またはシートに形成されてもよい。ロッドは、線状、コイル状、中空、非常に長いもの(例えば、ひも、または糸)であってもよく、種々の断面形状、例えば、実質的に円形、実質的に楕円形、実質的に三角形、実質的に長方形、不規則なもの等であってもよい。粒子は、球状粒子、幾何学的に不均一な粒子(例えば、フレークまたはチップ)、多孔性粒子、中空粒子、固形粒子等であってもよい。粒子は、好ましくは、約10ミクロン〜約5,000ミクロンの押出し直径を有する。
【0061】
ポリマー材料の構成は、種々の要因、例えば、意図される用途、輸送上の制約、加工上の制約等による可能性がある。例えば、一実施形態は、ポリマー材料を含む医療デバイスを提供する。このポリマー材料はSCCポリマーを含んでもよい。SCCポリマーを含んでもよい医療デバイスの非限定的例としては、例えば、ステント(例えば、拡張性ステント)、ステントグラフト、弁形成リング、代用血管、縫合糸、血管カフ、中隔欠損修復デバイス、心臓弁、心臓弁部品、心臓弁修復デバイス、縫合デバイス、血管構造および結合組織増殖の誘引物質、カテーテル(例えば、ステントを送達するために構成されるバルーンカテーテル)および/または再生医療インプラントが挙げられる。種々の医療デバイスの実施形態は、以下でさらに詳細に説明される。医療デバイスが、単にSCCポリマーからなるポリマー材料から単に構成されてもよいことは理解される。例えば、一実施形態では、医療デバイスは、哺乳動物の体腔へ(例えば、注射、カテーテル、物理的挿入、注入、加熱ロッド、噴霧および/または噴射により)送達可能なものとして構成される。その様なデバイスは、例えば、HACSCCPを含むポリマー材料で主として形成されている塞栓治療製品であってもよい。したがって、以下のある説明が医療デバイスに関わるものであっても、その様な説明は、また、別途文脈が指示しない限り、ポリマー材料に対しておよびSCCポリマー(HACSCCPを含む)に対して適用することが理解される。同様に、ポリマー材料およびSCCポリマーについての本明細書での説明は、また、別途文脈が指示しない限り、医療デバイスにも適用する。
【0062】
SCCポリマーを含む医療デバイスは、SCCポリマーの少なくとも一部が医療デバイスの表面に配置されている医療デバイスであってもよい。医療デバイスの表面でのSCCポリマーのその様な配置は、医療デバイスの表面の性質を温度の関数として操作することを可能とし、例えば、表面にあるSCCポリマーは、増加した生体適合性および/または、例えば、1つまたは複数のその他の医療デバイスおよび/または医療デバイス部品との界面における温度依存性潤滑剤および/または接着剤としての機能を与えてもよいことが分かった。SCCポリマーは、種々の方法で医療デバイスの表面に配置されてもよい。例えば、SCCポリマーの量は、医療デバイスの表面上の一定の場所へ適用されてもよく;SCCポリマーは、医療デバイスの表面上へ被覆されてもよく;SCCポリマーのフィルムは医療デバイスへ適用されてもよく;および/または医療デバイスは、SCCポリマーが表面で形成される様な方法で製造されてもよい。例えば、一実施形態では、放射線不透過性および/または結晶性基は、例えば、放射線不透過性および/または結晶性基を表面上の官能基と反応させて、および/または表面上の開始部位から放射線不透過性および/または結晶性モノマーを重合させ、それによってポリマーの放射線不透過性および/または結晶性基を形成することにより、ポリマーの医療デバイスの表面上へグラフトさせてもよい。官能基および開始部位は、種々の方法でポリマーの医療デバイスの表面上で創り出されてもよい。例えば、イオン化放射線(例えば、e−ビームおよび/またはガンマ放射線)および/または酸素の存在下のプラズマでのポリマー表面の処理は、ポリマー表面上に−OH基の形成をもたらす。その様な−OH基は、次いで、イソシアネート官能化放射線不透過性および/または結晶性基と反応し、それによって、それらの基を、ウレタン結合を形成することによって表面へ結合させてもよい。カプロラクトン等の適当なモノマーの重合は、適当な触媒(オクタン酸スズ等)の存在下で−OH基から開始して、ポリマー表面へ結合される結晶性PCL基を形成してもよい。その他の例として、イオン化放射線および/またはプラズマでのポリマー表面の処理は、光および/または放射線感応性結晶性モノマー(約6〜約30個の炭素を含む1−アルケン)の重合を開始することのできる活性表面部位を生成し、それによって、側鎖結晶性ポリマーをポリマーの医療デバイスの表面上へグラフトしてもよい。表面へ結合した基は、放射線不透過性および/または結晶性であってもよい。一実施形態では、ポリマーの医療デバイスは、この表面へ結合したSCCポリマーを含む。
【0063】
医療デバイスの表面に配置された特定のSCCポリマーの温度依存性(例えば、接着性、潤滑性等)は、一般的に、表面の性質、SCCポリマーの性質およびこれらの間の相互作用の性質に依存する。例えば、ある場合では、相対的に低い分子量のSCCポリマーは、融点より下の温度でそれらのSCCポリマーの接着性と比較して、SCCポリマーの融点より上の温度で良好な接着性を有する傾向がある。一方、ある場合では、相対的に高い分子量のSCCポリマーは、融点より高い温度におけるよりも融点より下の温度で良好な接着性を有する傾向がある。相対的に弱い分子間相互作用を形成することのできる相対的に非極性のSCCポリマー、例えば、十分にフッ素化されたSCCポリマー等は、医療デバイスの表面の性質により、相対的に強い分子間相互作用を形成することのできる相対的に極性のSCCポリマーよりも良好な潤滑剤である傾向にある。医療デバイスの表面で温度依存官能性を与えるための特定のSCCポリマーの使用は、好ましくは、本明細書で与えられる指針での情報としての、当業者に公知の接着の一般的原理を考慮して、日常の実験により決定される。
【0064】
ポリマー材料を含む医療デバイスは、意図する用途によって、1つまたは複数のさらなる成分、例えば、可塑剤、充填剤、結晶化核生成剤、防腐剤、安定剤、光活性化剤等を含んでもよい。例えば、一実施形態では、医療デバイスは、少なくとも1つの治療薬および/または磁気共鳴増強剤の有効量を含む。好ましい治療薬の非限定的例としては、化学療法薬、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、および創傷治療薬が挙げられる。治療薬は、ポリマー材料と一緒に投与されてもよい。好ましい実施形態では、治療薬の少なくとも一部はポリマー材料内に含まれる。その他の実施形態では、治療薬の少なくとも一部は医療デバイスの表面上のコーティング内に含まれる。
【0065】
好ましい化学療法薬の非限定的例としては、タキサン(taxane)、タキシニン(taxinine)、タキソール(taxol)、パクリタキセル(paclitaxel)、ジオキソルビシン(dioxorubicin)、シスプラチン(cis−platin)、アドリアマイシン(adriamycin)、およびブレオマイシン(bleomycin)が挙げられる。好ましい非ステロイド系抗炎症化合物の非限定的例としては、アスピリン、デキサメタゾン(dexamethasone)、イブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、およびCox−2阻害剤(例えば、ロフェックスコキシブ(Rofexcoxib)、セレコキシブ(Celecoxib)およびバルデコキシブ(Valdecoxib))が挙げられる。好ましいステロイド系抗炎症化合物の非限定的例としては、デキサメタゾン、ベクロメタゾン(beclomethasone)、ヒドロコーチゾン(hydrocortisone)、およびプレドニソン(prednisone)が挙げられる。1つまたは複数の治療薬を含む混合物が使用されてもよい。好ましい磁気共鳴増強剤の非限定的例としては、炭酸ガドリニウム、酸化ガドリニウム、塩化ガドリニウム等のガドリニウム塩、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
核生成剤は、ポリマーの存在下で、さらに動力学的に有利なポリマーの結晶化を行う物質である。例えば、核生成剤は、一定温度でポリマーの結晶化を促進してもよく、および/または核生成剤の不存在下におけるよりも高温で結晶化(例えば、過冷却ポリマーの)を誘発してもよい。好ましい核生成剤の非限定的例としては、バルクポリマーが結晶化されるよりも高いピーク結晶化温度を持つ、SCCポリマーの低分子量類似体、カルボキシレート塩(ナトリウムベンゾエート等)、無機塩(硫酸バリウム等)および相対的に高い表面積対容積比を持つ種々の粒状物質が挙げられる。
【0067】
医療デバイス中に存在するさらなる成分の量は、好ましくは、意図した用途にとって有効である様に選択される。例えば、治療薬は、好ましくは、医療デバイスが投与されまたは移植される患者において所望の治療効果を達成するために有効な量で医療デバイスに存在する。その様な量は日常の実験で決定されてもよい。ある実施形態では、所望の治療効果は生物学的応答である。一実施形態では、医療デバイス中の治療薬は、少なくとも1つの生物学的応答、好ましくは、血栓症、細胞付着、細胞増殖、炎症細胞の誘引、マトリックスタンパク質の堆積、血栓症の阻害、細胞付着の阻害、細胞増殖の阻害、炎症細胞の阻害、およびマトリックスタンパク質の堆積の阻害からなる群から選択される生物学的応答を促進するために選択される。医療デバイス中の磁気共鳴増強剤の量は、好ましくは、放射線画像化を促進するのに有効な量であり、日常の実験で決定されてもよい。
【0068】
SCCポリマーを含む医療デバイスの粘度および/または融点は、一般的に、医療デバイス中に存在するSCCポリマーおよび、もしあればその他の成分の相対的量に依存する。医療デバイス(または医療デバイス中のポリマー材料)の粘度および/または融点は、医療デバイス中のSCCポリマーの量を操作することにより、および所望の粘度および/または融点を伴って得られる医療デバイスを与えるSCCポリマーを選択することにより制御されてもよい。したがって、例えば、40℃の融点を有するポリマー材料を用意するためには、それとの混合物にある場合にSCCポリマーの融点を下げる傾向を有する第2ポリマーまたはその他の成分の存在に対する補填のために、ポリマー材料中への導入に際しては、幾分高い融点、例えば、約45℃の融点を有するSCCポリマーを選択することが望ましい場合がある。一実施形態では、医療デバイスは、約30℃〜約80℃の範囲の融点を有するポリマー材料を含む。
【0069】
医療デバイスのポリマー材料は、好ましくは、融点より上の温度で流動するために構成される。融点より上の温度でのポリマー材料の粘度は、意図する用途等の要因により、広範囲にわたって変動してもよい。例えば、塞栓治療製品に対しては、ポリマー材料は、好ましくは、医療デバイスを、注射器を通しての注射および/またはカテーテルを通しての流動による等の都合のよい方法により目標の血管構造まで送達することを可能にする融点よりも上の粘度を有する。その様な場合、所望の粘度は、多くの場合、注射針またはカテーテルの直径に依存し、例えば小さな直径では低い粘度が一般的に好ましい。一方、粘度が低過ぎる場合は、ポリマー材料は、冷却し、そして固化する前に目標の血管構造から離れて移動する可能性がある。一実施形態では、医療デバイスのポリマー材料は、融点より上の温度で、約50cP〜約500cPの範囲の粘度を有する。その他の実施形態では、ポリマー材料は、融点より上の温度で、約500cP〜約5,000cPの範囲の粘度を有する。その他の実施形態では、ポリマー材料は、融点より上の温度で、約5,000cP〜約250,000cPの範囲の粘度を有する。その他の実施形態では、ポリマー材料は、融点より上の温度で、約250,000cP〜約1,000,000cPの範囲の粘度を有する。
【0070】
一実施形態では、ポリマー材料は、体腔への送達で固形塊を形成するために構成される。固形塊は、体腔の内部寸法と全体にまたは部分的に適合してもよい。例えば、ポリマー材料は、約40℃の融点を持つポリマー材料を与えるSCCポリマーの量を含むために構成されてもよい。ポリマー材料は、体腔へ送達可能である様にさらに構成されてもよく、例えば、ポリマー材料は、流動を促進するために溶融状態まで加熱されてもよいロッドの形態であってもよい。溶融ポリマー材料は、次いで、溶融状態で送達デバイスを通して流動することにより体腔へ送達されてもよい。体腔に到達すると、溶融ポリマー材料は体腔の内部寸法に少なくとも部分的に適合してもよく、次いで、冷却し、固形塊を形成する。その他の例では、ポリマー材料は、水または生理食塩水等の相対的に低粘度の生体適合性キャリヤー液体に懸濁した小さな粒子の形態にあってもよい。ポリマー材料は、次いで、送達デバイスを介して目標の体腔へ流動を引き起こしてもよい。ポリマー材料の小さな粒子は、送達前、送達中および/または目標の体腔内で加熱され、それによって、ポリマー材料の流動を引き起こし、体腔の内部寸法に適合してもよい。冷却により、ポリマー材料は、体腔の内部寸法に適合し続ける固形塊を形成してもよい。加熱前の種々の構成および組成のポリマー材料は、一度温まった体腔へ適合するためにこれらの能力を変動させてもよく、したがって、この理由で、治療に合わせて選択されてもよいことが理解される。さらに、ポリマー材料は、送達を達成するために完全に溶融させる必要のないことが理解される。例えば、ポリマー材料は、コイル等の特殊な形状に形成され、次いで、前形成された形状を保持しながら目標の体腔中へ移植されてもよい。ポリマー材料(例えば、コイル)は、種々の理由で、例えば、コイルにさらに弾性を与えるために、したがって、送達を容易にするために、および/またはコイルが移植される体腔にコイルがよく適合できる様にするために、移植前および/または途中で加熱されてもよい。ポリマー材料は、また、体の外で流動を引き起こし、次いで、流動可能な状態で体腔へ送達されてもよい。
【0071】
一実施形態は、SCCポリマーを含む形状記憶ポリマー材料を与える。例えば、SCCポリマーは、標準的な熱可塑性プラスチック形成方法でコイル形状等の第1形状へ構成され、第1形状の記憶を固定するために架橋されてもよい。形成されたSCCポリマーコイルは、次いで、SCCポリマーを溶融して、それを、ロッド形状等の第2形状へ再構成することを可能にするために加熱されてもよい。架橋は熱可塑性プラスチックの流動を制限しまたは妨げるが、SCCポリマーは溶融した状態にある。SCCポリマーは、まだ第2形状にある間に、次いで、SCCポリマーが再結晶化する温度まで冷却されてもよい。SCCポリマーの再結晶化は、第2形状(例えば、ロッド形状)が第1形状(例えば、コイル形状)へ戻るのを制限しまたは妨げる。SCCポリマーの融点より上の温度まで再加熱することにより、第2形状は第1形状へ戻り、例えば、ロッドはその記憶状態のコイルへ戻る。SCCポリマーの架橋は、当業者に公知の種々の方法で行われてもよい。
【0072】
一実施形態は、体腔を少なくとも部分的に塞ぐのに有効な量で哺乳動物の体腔中へ、本明細書に記載の医療デバイス(例えば、SCCポリマーを含む医療デバイス)を導入することを含む治療方法を提供する。一般的に、その様な方法は、例えば、普通、管、細管、管路、流路、孔、血管、空孔、および導管と称されてもよい種々の体腔を含む任意の型の体腔を塞ぐために使用されてもよい。好ましい実施形態では、医療デバイスは塞栓治療製品である。好ましくは、SCCポリマーはHACSCCPである。その他の好ましい実施形態では、体腔は、血管構造、例えば、動静脈奇形または血管、例えば静脈瘤等を含む。医療デバイスは、注射、カテーテルおよび外科移植を含む種々の方法で体腔へ導入されてもよい。特定の体腔に対しては、医療デバイスは、好ましくは、ポリマー材料が、ポリマーが体腔の正常な温度で固形塊を形成するのに十分に高く、そして軟化したまたは溶融したポリマー材料が、それが導入される哺乳動物に対してわずかな熱損傷でまたはまったく熱損傷を伴わずに体腔の寸法へ適合してもよい様に十分に低い融点を有する様に選択される。したがって、体腔へのその様なポリマー材料の導入は、融点よりも高い温度までポリマー材料を加熱することおよび/またはそれを融点より低い温度まで冷却することを含んでもよい。
【0073】
種々の型の送達デバイス、例えば、医療専門家に一般的に知られていて入手可能な、プラスチック管、カテーテル、微細カニューレ、テーパー付カニューレならびに種々の型の注射器および皮下注射針が、医療デバイスを体腔へ導入するために使用されてもよい。一実施形態は、ポリマー材料がSCCポリマーであり、ポリマー材料および送達デバイスが、ポリマー材料の、送達デバイスによる体腔への送達を促進するために相互に構成されている、ポリマー材料および送達デバイスを含む医療デバイスを与える。ポリマー材料は、好ましくは、塞がれる特定の体腔ならびに所望の閉塞の量および型によって幾分変動してもよい量で送達デバイス内に含まれる。当業者は、患者のサイズ、生体組織の一般的な知識、したがって、X−線およびMRI等の診断方法の使用に基づいて、塞がれる体腔のサイズを認識する。当業者は、送達デバイス内に含まれるべきポリマー材料の量を決定することができる。一般的に、過剰量のポリマー材料が、ある程度の許容誤差に備えるために送達デバイスに含まれるべきである。一実施形態では、医療デバイスは、塞栓治療製品および管を含み、塞栓治療製品は本明細書に記載されているSCCポリマーを含み、管は、体腔への塞栓治療製品の流動を促進するために構成される。例えば、管は、針、カニューレ、シリンジ、および/またはカテーテルを含んでもよく、塞栓治療製品をその融点より上の温度まで、例えば、約30℃〜約80℃の範囲の温度まで加熱するために構成されたヒーターを備えてもよい。ポリマー材料は、固体形態で送達デバイス内に含まれてもよく、または別々に加熱されてもよく、流動可能形態で送達デバイスに用意されてもよい。一実施形態では、医療デバイスは、送達デバイス内に存在するポリマー材料で予め充填されてもよく、その後でポリマー材料を流動可能とするために加熱されてもよい。加熱は、空気、水または油浴あるいは電気ヒーター等の外部源から適用されてもよく、両方の場合では、送達デバイスおよびポリマー材料の両方が加熱されてもよい。加熱は、また、内部源、例えば、固体ポリマー材料の薄いロッドが通過するカテーテルの先端で小さな電気抵抗要素を使用するか、またはカテーテルの先端から出てくるポリマー材料のロッドの先端に導かれる小さなレーザーを使用する内部源から適用されてもよい。
【0074】
送達デバイスは、塞がれるべき体腔の近傍の組織をひどく損傷しない様に、好ましくは相対的に小さな直径であって、ポリマー材料をノズルから容易に押し出すことができる様に十分に長い押出しノズルを含んでもよい。例えば、体の流路の閉塞を含む用途では、ノズルのサイズは、一般的に、ノズルが置かれる流路の内側直径に関係する。例えば、24ゲージ針は、一般的に、小管へつながる窪みの開口部内に適合する。2mmのカテーテルは、一般的に、ポリマー材料を卵管に導入するのに適している。1/4インチのカニューレは、ポリマー材料を成人の上腕骨の内腔中へ導入するのに好ましい。溶融状態で送達される場合、ポリマー材料は、好ましくは、ポリマー材料の押出しノズルの通過を促進する粘度を持つために選択される。一般的に、相対的に低い粘度は、相対的に小さい直径のノズルにとって好ましい。
【0075】
送達デバイスは、1つまたは複数の送達口を持つ押出しノズルを含んでもよいことが理解される。ポリマー材用は、複数の口を通して連続的にまたは同時に分配されてもよい。このやり方は、冷却するポリマー材料の良好な充填および/または安定化に適応してもよく、大きな表面積にわたって多くのポリマー材料の送達を可能にしてもよい。その種々の構成および組成物は、種々の送達口の使用により同時に送達されてもよい。
【0076】
例えば、一実施形態では、2つ以上のポリマー材料(それぞれがSCCポリマーを含む)は、体腔へ順番に送達されてもよい。1つの塞栓治療の実施形態では、第1ポリマー材料が血管構造へ送達される。第1ポリマー材料は、コイル等の第1構成を有してもよい。コイルは、例えば、ロッド形状(送達によってコイルを形成する)で送達される、前述の形状記憶コイルに前形成されていてもよく、または適当に構成されたダイを有する送達デバイスの送達口を通してポリマー材料を押し出すことにより送達中に形成されるコイルであってもよい。第1ポリマー材料は、好ましくは、その融点より高い温度、例えば、第1ポリマー材料中の第1SCCポリマーの融点よりも高い温度で送達される。
【0077】
コイルは、血流を完全に止めることなく血流を減少させて血管構造を部分的に塞ぐ、相対的に開放構造であってもよい。その様な部分的閉塞はある場合には適切となり得るが、別の場合では、さらなる閉塞が求められる可能性がある。その様なさらなる閉塞は、第1ポリマー材料に対して手術可能な近傍の血管構造へ第2ポリマーを送達することにより遂行されてもよい。第2ポリマー材料は、好ましくは、その融点より高い温度、例えば、第2ポリマー材料中の第2SCCポリマーの融点よりも高い温度で送達される。第2ポリマー材料は、好ましくは、第1ポリマー材料における、および/または第1ポリマー材料と血管構造の内側との間の隙間または裂け目を少なくとも部分的に充填してもよい様に、第1ポリマー材料よりも低い粘度を有する。したがって、例えば、第2ポリマー材料は、第1ポリマー材料のコイルの空間に第2ポリマーを充填することを可能にする、送達中のその融点より上の温度でのペーストのコンシステンシーを有してもよい。
【0078】
1つまたは複数のさらなるポリマー材料は、第1および第2ポリマー材料に対して手術可能な近傍の場所へ送達されてもよい。例えば、第1および第2ポリマー材料は、一般的には第1ポリマー単独よりも広い範囲にわたるけれども、血管構造を部分的に塞ぐだけであってもよい。その様な場合には、さらなる閉塞を準備するために第3ポリマー材料を送達することが望ましい場合がある。第3ポリマー材料は、好ましくは、その融点より高い温度、例えば、第3ポリマー材料中の第3SCCポリマーの融点よりも高い温度で送達される。第3ポリマー材料は、第1および第2ポリマー材料によって形成されるポリマー塊における、および/またはその塊と血管構造の内側との間の隙間または裂け目を少なくとも部分的に充填してもよい様に、好ましくは、第1ポリマー材料よりも低い粘度を有し、さらに好ましくは、第2ポリマー材料よりも低い粘度を有する。
【0079】
当業者は、上述の実施形態の複数の変化が実施されてもよいことを理解する。例えば、単独のポリマー材料は、複数の投与量で、または異なる形態で、例えば、第1送達ではコイルとして、そして第2送達ではペーストとして、あるいは第1および第2送達共にペーストで送達されてもよい。2つ以上のポリマー材料は同時に送達されてもよく、例えば、コイル形状の第1ポリマー材料は、ペーストまたは液状形態の第2ポリマー材料で被覆されまたは混合されて、両方のポリマーを含む複合体を形成してもよく、得られた複合体は、次いで、体腔へ送達されてもよい。種々の体腔が送達の目標であってもよく、および/または種々のポリマー材料および形態が送達される順序は変動されてもよい。SCCポリマーを含むポリマー材料の送達は、異なる材料、例えば、金属塞栓コイルの送達と、連続的にまたは同時に組み合わされてもよい。この様に、例えば、ポリマー材料は体腔へ送達されてもよく、金属塞栓コイルは、ポリマー材料と接触して体腔へ送達されてもよい。様々な時間帯が送達の間に経過してもよく、例えば、ポリマー材料のコイルは、体腔の部分的閉塞を与えるために送達されてもよく、第2ポリマー材料のペーストは、コイルの数分、数時間、数日、数週間、数カ月、または数年後に、手術可能な近傍の場所へ送達されてもよい。
【0080】
ポリマー材料が溶融状態で送達される実施形態では、ポリマー材料が送達デバイス内に含まれ、流動可能な状態へ加熱されると、送達デバイスのノズル(例えば、針、カテーテルの先端、および/または注射器のノズル)は、塞がれるべき流路の開口部へ(または体腔の壁を通して)挿入されてもよく、ポリマーはノズルを出て体腔中へ分散されてもよい。注射は、好ましくは、閉塞(例えば、血管構造の閉塞)の所望の量が得られるまで続けられる。ある場合では、体腔の一部だけを塞ぐことが望ましい場合がある。その後、送達デバイスのノズルが引き出されてもよい。
【0081】
ポリマー材料が送達された後、方法は手術者の指示なしで続けてもよい。例えば、塞栓治療の場合では、哺乳動物の循環器系統は、一般的に、注射されたポリマー材料を冷却する周りの組織の冷却効果を引き起こす。ポリマー材料は、好ましくは、ポリマー材料が少量のエネルギーだけを失った後に冷却し、固化する様に、即ち、2〜3℃温度を下げるだけで固化する様に選択される。通常、冷却は、冷却をさらにゆっくりと起こさせるのが望ましいとされる場合、例えば、骨が送達後に再び固定される場合の時間が存在するが、わずか2〜3秒または2〜3分で生起する。冷却が生起した後、ポリマーは、好ましくは、体腔の形状へ適合する方法で体腔内で固化し、流路は少なくとも部分的に充填されまたは閉鎖される。ポリマー材料は、長期間にわたり体腔内に置かれて残ってもよい。生体適合性、非免疫材料を含む好ましい医療デバイスでは、わずかな拒絶反応があるかまたはまったく拒絶反応はない。ある実施形態では、ポリマーは生体吸収性であり、したがって、長い間に減少し、その場合、周りの組織が既に塞がれた領域を充填する可能性がある。
【0082】
有効な体腔閉塞は、また、SCCポリマー材料および種々の賦形剤の使用により達成されてもよい。例えば、SCCポリマー材料は、(1)光の使用により架橋する光重合材料、(2)コラーゲンまたはトロンビン等の凝固を刺激する血液反応性物質、および/または(3)核生成剤と一緒に送達されてもよい。
【0083】
一実施形態では、ポリマー材料は、正常な方法で機能する体腔を再度与えるために、簡単に除去されてもよい。例えば、輸精管または卵管からポリマー材料を除去して受精率を復活させることが望ましい場合がある。ポリマー材料は種々の方法で除去されてもよい。例えば、ポリマー材料は、簡単な機械的抽出で除去されてもよい。ある例では、種々の取り付け突起を結合した鉗子および/またはカテーテル等のデバイスが流路の中に挿入することができ、ポリマー材料へ結合させてポリマー材料を体腔の外へ引っ張り出すか、またはポリマー材料を第2体腔中へ押し出して、第1体腔が最早塞がれることなく、ポリマー材料も何ら損傷を引き起こすことのない様に使用することができる。あるいはまた、加熱ワイヤ等のデバイスが、固化したポリマー材料と接触させられてもよい。加熱ワイヤでポリマー材料を加熱することにより、ポリマー材料の温度はポリマー材料の融点よりも上に上昇して再び流動可能となる。流路(管または血管等)の場合では、加熱は、流動可能なポリマー材料が流路から流動し、流路が、正常な機能を与えるために再開されるまで続けられてもよい。ある状況では、液状プラグを、例えば、穏やかな真空での吸引により、または空気もしくは生理食塩水流で創り出される穏やかな圧力を使用しておよび/または捕捉と吸引を伴う機械的破壊により流路に引き込み、吸引しまたは流路の外へ押し出すことができる。
【0084】
固化したポリマー材料を流路またはその他の体腔から除去する好ましい方法は、天然産油または脂肪酸エステル等の親油性物質を、固化したポリマー材料の周りの領域の流路の中へ注入することである。好ましくは、親油性物質は、ポリマー材料中へ拡散してその融点を減少させる傾向を有するものが選択される。親油性物質は、好ましくは、ポリマーが流動可能となる範囲まで、体温より下に、ポリマー材料の融点を減少させるのに有効な量で添加される。ポリマーが流動可能となると、生物の流路内で起る自然な機械的移動が、流路からポリマーを移動させやすくして、流路の正常な機能を復活させる。
【0085】
好ましい実施形態では、医療デバイスはステントを含む。ステントは、種々の構成、例えば、シートステント、編み上げステント、自己拡張性ステント、ワイヤステント、変形可能なステント、およびスライドロックステントからなる群から選択される構成を含んでもよい。
【0086】
好ましい実施形態では、ステントは、管状部材を形成するために配置される少なくとも2つの実質的に変形しない要素を含み、この変形しない要素は、管状部材が、折り畳まれた直径から拡張した直径へ拡張することができる様にスライド可能な様に相互連結している。その他の変化では、管状部材は一連のスライド可能な様に連動した放射状要素および、第1の折り畳まれる直径から第2の拡張した直径へ放射状要素の一方向スライドを可能にする少なくとも1つの固定機構を含む。
【0087】
カテーテル上のステントは、普通、ステント系と総称される。カテーテルとしては、オーバー−ザ−ワイヤ(over−the−wire)カテーテル、同軸迅速交換設計および相対的に新しい複数交換送達プラットフォームであるMedtronic Zipper Technologyが挙げられるがこれらに限定されない。その様なカテーテルとしては、例えば、米国特許第4762129号、第5232445号、第4748982号、第5496346号、第5626600号、第5040548号、第5061273号、第5350395号、第5451233号および第5749888号に記載されているものが挙げられてもよい。適当なカテーテル設計のさらなる例としては、米国特許第4762129号、第5092877号、第5108416号、第5197978号、第5232445号、第5300085号、第5445646号、第5496275号、第5545135号、第5545138号、第5549556号、第5755708号、第5769868号、第5800393号、第5836965号、第5989280号、第6019785号、第6036715号、第5242399号、第5158548号、および第6007545号に記載されているものが挙げられる。上記引用特許の開示は、参照として開示の全体において本明細書に組み込まれる。
【0088】
カテーテルは、超音波効果、電場、磁場、光および/または温度効果を生成するため等の種々の目的のために特殊化されてもよい。加熱カテーテルとしては、例えば、米国特許第5151100号、第5230349号、第6447508号、および第6562021号ならびにWO90/14046A1に記載されているものが挙げられてもよい。赤外光発光カテーテルとしては、例えば、米国特許第5910816号および第5423321号に記載されているものが挙げられてもよい。上記引用特許および特許公報の開示は、参照として開示の全体において本明細書に組み込まれる。
【0089】
その他の好ましい変化では、ステントは、選択された治療効果を発揮させるのに十分な治療薬(例えば、薬剤および/または生物学的作用薬)の量をさらに含む。本明細書で使用される「薬剤」と言う用語は、特定の生理学的(代謝)応答を刺激する、疾患の軽減、治療、または予防を意図した物質を包含する。本明細書で使用される「生物学的作用薬」と言う用語は、限定なしで、器官、組織または細胞を基にした誘導体、細胞、ウイルス、ベクター、発生において、ならびに任意の配列およびサイズの、天然および組換えならびに合成の核酸(動物、植物、微生物、およびウイルスの)、抗体、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、cDNA、癌遺伝子、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、リポタンパク質、糖タンパク質、脂質、炭水化物、多糖類、脂質、リポソーム、あるいはその他の細胞成分または細胞小器官、例えば、受容体およびリガンドを含む、生体系において構造的および/または機能的活性を有する任意の物質を包含する。さらに、本明細書で使用される「生物学的作用薬」と言う用語は、人間の疾患または損傷の予防、治療、または治癒に対して適用できる、ウイルス、血清、毒素、抗毒素、ワクチン、血液、血液成分または誘導体、アレルギー生成物、または類似生成物、またはアルスフェナミン(arsphenamine)もしくはその誘導体(または任意の三価の有機砒素化合物)を含む(Section 351(a)of the Public Health Service Act(42 U.S.C.262(a)による)。さらに、「生物学的作用薬」と言う用語は、1)生物学的に活性なペプチド、タンパク質、炭水化物、ビタミン、脂質、あるいは天然産または組換え有機体により産生された、およびそれから精製された核酸、抗体、組織または細胞系を包含する、本明細書で使用される「生体分子」またはその様な分子の合成類似体、2)核酸(デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA))、遺伝要素、遺伝子、因子、対立遺伝子、オペロン、構造遺伝子、調節遺伝子、作動遺伝子、遺伝子相補、ゲノム、遺伝子コード、コドン、アンチコドン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRAN(tRNA)、リボソーム染色体外遺伝子要素、細胞質遺伝子、プラスミド、トランスポゾン、遺伝子突然変異、遺伝子配列、エクソン、イントロンを包含する、本明細書で使用される「遺伝子物質」、および3)操作を受けた細胞、組織または器官等の本明細書で使用される「加工された生物製剤」を含んでもよい。治療薬は、また、ビタミンまたは無機物質あるいはその他の天然元素を含んでもよい。
【0090】
血管系に置かれるデバイス、例えば、ステントに対しては、治療薬の量は、好ましくは、再狭窄または血栓症を阻害し、あるいはステントされた組織のいくつかのその他の状態に影響を及ぼす、例えば、傷つきやすいプラークを治癒し、および/または破裂を防ぎまたは内皮細胞増殖を刺激するのに十分なものである。この薬は、本発明の好ましい実施形態に従って、抗増殖性剤、抗炎症、抗マトリックス金属プロテイナーゼ、および脂質低下、コレステロール改質、抗血栓および抗血小板剤からなる群から選択されてもよい。ステントのいくつかの好ましい実施形態では、治療薬は、この薬がポリマーとブレンドされ、または当業者に公知のその他の手段で混合されてステント内に含まれる。ステントのその他の好ましい実施形態では、治療薬は、ステント表面上のポリマーコーティングから送達される。その他の好ましい変化では、治療薬は、ポリマーコーティングではない手段で送達される。ステントのその他の好ましい実施形態では、治療薬は、ステントの少なくとも1つの領域または1つの表面から送達される。治療薬は、ステントの少なくとも1つの部分の治療薬の送達のために使用されるポリマーまたはキャリヤーへ化学的に結合されてもよく、および/または治療薬は、ステント本体の少なくとも1つの部分を含むポリマーへ化学的に結合されてもよい。好ましい一実施形態では、2つ以上の治療薬が送達されてもよい。
【0091】
ステントの製造での使用にとって好ましいSCCポリマーは、以下の基準の少なくともいくつかを満たすべきである:
放射線不透過性は、好ましくは、診療所で使用される標準的方法のX−線蛍光透視によるヒトの胸部の背景に向けたステント構造の可視性を確実にするのに十分のものである。
【0092】
本発明の態様によるステントは、好ましくは、低い交差形状を与え、優れた長さ方向の可撓性を可能にするための壁で形成される。好ましい実施形態では、壁厚は、約0.0001インチ〜約0.0250インチ、さらに好ましくは、約0.0010〜約0.0100インチである。しかし、壁厚は、少なくとも一部は、選択される材料に依存する。例えば、厚さは、プラスチックおよび分解性材料に対しては約0.0060インチ未満であってもよく、金属材料に対しては約0.0020インチ未満であってもよい。さらに具体的に言えば、3.00mmのステント用途に対して、プラスチック材料が使用される場合は、厚さは、好ましくは、約0.0040インチ〜約0.0045インチの範囲である。しかし、種々の直径を有するステントは、胆管およびその他の末梢血管用途に対して異なる厚さを使用してもよい。上記の厚さ範囲は、組み立ておよび開発を含むデバイスのすべての態様を通して好ましい特徴を与えることが分かった。しかし、上記の厚さ範囲は、本発明の範囲に関して限定されるべきものではなく、本発明の教示は、本明細書で検討されていない寸法を有するデバイスにも適用されてよいことが理解される。
【0093】
ステントは、好ましくは、急性血栓症を予防するために血液適合性である。したがって、デバイス表面は、好ましくは、タンパク質吸着および血小板/単球付着に対して抵抗性である。さらに、デバイス表面は、理想的には、内皮細胞の過度の成長を好むが、平滑筋細胞(再狭窄の発生に対して応答可能である)の付着および成長を阻止する。
【0094】
ステントは、好ましくは、約1〜24カ月、さらに好ましくは、約3〜18カ月、さらに好ましくは、なお約3〜12カ月、最も好ましくは、約3〜6カ月の間これらの機械的強度(例えば、フープ強度)を維持する。
【0095】
ステントは、好ましくは、その後になって、任意のステント、生物吸収性または金属あるいはその他が、血管のほぼ同じ領域を再治療するために、または血管バイパス等の別の形態での血管再介入を可能にするために使用されてもよい様に、ステントが体腔においてある期間存在する様な望ましい生分解および生物吸収性形状を有する。
【0096】
一実施形態では、SCCポリマー含有医療デバイスはステントおよび/またはカテーテルを含み、したがって、SCCポリマー含有医療デバイスは、ステントまたはステントおよび送達カテーテルを含むステント系であってもよい。SCCポリマーは、その様な医療デバイスへ種々の方法で導入されてもよい。例えば、種々の実施形態では、ステントの本体および/またはカテーテルはSCCポリマーを含み、またはSCCポリマーから本質的になっていてもよく、ステントおよび/またはカテーテルは、SCCポリマーで被覆されてもよく、SCCポリマーは、医療デバイスの部品間の界面、例えば、ステントとカテーテルとの間に配置されてもよく、SCCポリマーはHACSCCPであってもよく、および/またはSCCポリマーは、ステントおよび/またはカテーテルの表面に配置されてもよい。医療デバイスの実施形態では、SCCポリマーは、好ましくは、生体適合性であり、好ましくは、約30℃〜約80℃の範囲の融点を有する。
【0097】
SCCポリマーを含むステントは、一定の用途に適した任意の設計(例えば、スライドロックステント、シートステント(時に、ジェリーロール(jelly−roll)ステントとも称される)、変形可能なステント、および自己拡張性ステント)のステントであってもよい。好ましくは、SCCポリマーを含むステントは、動物、例えば、ヒト等の動脈または組織に容易に移植可能である様に、そして、動脈を拡張できる様におよび/または例えば、前記動脈が血管形成術等の医療処置を介して開かれた後に、開いたまま保持するのに適したものである様に設計される。本発明での使用に適したステント設計の例としては、そのすべてが参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第6033436号、第6224626号および第6623521号、係属米国特許出願第11/016269号(2004年12月17日出願)、ならびに係属米国特許出願第11/200656号(2005年8月10日出願)に開示されているものを含めて、「スライドロック」ステントが挙げられる。
【0098】
図1を参照すると、好ましいステントの実施形態320の一部が示され、放射状要素320(1)、320(2)はスライド可能な様に相互連結されている。それぞれの放射状要素は、複数の湾曲可能な歯326を持つレール328を伴って用意される。それぞれの歯は上方へ角度が付けられ、下方へ(即ち、放射状方向へ)反らすために構成される。固定タブ322、324が湾曲可能な歯326に沿ってスライドすると、歯は下方へ湾曲して、タブ322、324が展開しながら歯326の上を通過するのを可能にする。しかし、歯の角度により、固定タブは一方向にだけ移動することができる。さらに具体的に言えば、圧縮する力が、折り畳まれた状態に向けて後ろに放射状要素320(1)、320(2)を押すと、固定タブ322、324は、歯326と当接し、それによってさらなる相対移動を防ぐ。ステントの実施形態320のすべてのまたはいくつかの様々な要素(例えば、要素320(1)、320(2)、322、324、326、328)は、SCCポリマーを含み、または本質的にSCCポリマーからなっていてもよい。
【0099】
本明細書での使用に適したその他の適当なステント設計としては、種々のメッシュ、ジェリーロール、シート、ジグザグ、ならびに螺旋状コイル設計、例えば、米国特許第4733665号等のPalmazによる変形可能なステントおよび、制御可能な拡張および弾性限界を超える力で変形する人工装具の一部を有するその後継を含む、従来から金属およびポリマーステントで使用されているものが挙げられる。その他のステント設計としては、次の設計およびこれらの後継が挙げられる:Lauによる米国特許第5344426号、Fordenbacherによる米国特許第5549662号および第5733328号、Carpenterによる米国特許第5735872号および第5876419号、Wijayによる米国特許第5741293号、Ryanによる米国特許第5984963号、Khosraviによる米国特許第5441515号および第5618299号、Stackによる米国特許第5059211号、第5306286号および第5527337号、Sigwartによる米国特許第5443500号、Daytonによる米国特許第5449382号、Boatmanによる米国特許第6409752号等。
【0100】
SCCポリマーの種々の温度依存性質(例えば、強度、可撓性、結晶性、接着性等)は、医療デバイスの性能を高めるために操作されてもよい。例えば、ステントは、拡張可能なステント、例えば、変更可能な断面寸法、例えば、拡張が求められる血管内のステントの位置によって増加されてもよい断面寸法を持たせるために設計されたまたは構成されたステントであってもよい。ステントは、機械的に拡張可能、加熱で拡張可能であってもよく、または機械的におよび熱的に両方で拡張可能であるハイブリッドステントであってもよい。一実施形態では、拡張可能なステントの本体は、ステントが、SCCポリマーの融点より上の温度で拡張できることを可能にするのに有効なSCCポリマーの量を含む。例えば、拡張可能なステントは、生体適合性の本質的に放射線不透過性側鎖結晶性ポリマーの融点より上の温度で拡張され、次いで、融点より下の温度まで冷却(積極的にまたは消極的に)される血管内に配置されてもよい。一実施形態では、拡張可能なステントの少なくとも一部は加熱拡張性である。好ましくは、加熱拡張性部分は、側鎖結晶性ポリマーの融点より上の温度で拡張できる。一実施形態では、拡張性ステントまたはこの一部は、ステントが、体温(約38℃)より上である温度で拡張できることを可能にするのに有効なSCCポリマーの量を含む。例えば、ステントは、約40℃〜約80℃の範囲の融点を有するSCCポリマーから本質的になっていてもよい。その様なステントを溶融温度よりも上の温度まで加熱すると、ステントの可撓性が増加し、適切な機能、例えば、血管の支持にとって望ましいサイズおよび形状を想定することができる。一実施形態では、血管内での適当な配置前、途中および/または後に、拡張性ステントは融点より上の温度まで加熱され、例えば、当業者にとって一般的に公知の方法で、ステント内に配置されたバルーンカテーテルの使用により拡張されてもよい。場合により、加熱された液体は、拡張性ステントへの加熱を与えるためにバルーンカテーテルを通して循環されてもよい。拡張後、ステントは、例えば、ステントを周りの血液および/または組織の温度まで冷却させることにより、および/またはバルーンカテーテルを通して冷却液を循環させることにより冷却されてもよい。SCCポリマー(溶融温度として異なっていてもよくまたは同じであってもよい)の再結晶化温度より下に冷却することにより、ステントはなお一層硬くなり、したがって、所望の機能、例えば、血管の支持を与えることができる様になる。ステント中のSCCポリマーの量およびタイプは、日常の実験で決定される様に、ステントにとって望ましい温度依存性可撓性に基づいて選択されてもよい。
【0101】
一実施形態では、医療デバイス(SCCポリマーを含む)はカテーテルであり、例えば、上述の任意のカテーテル設計を有するデバイスである。SCCポリマーは、上述の通り、種々の方法でその様なカテーテル中へ導入されてもよい。一実施形態では、SCCポリマーの少なくとも一部はカテーテルの表面に配置される。カテーテルの表面でのSCCポリマーのその様な配置は、カテーテルの表面の性質を温度の関数として操作することを可能とし、例えば、SCCポリマーは、上述の様に、温度依存性潤滑剤および/または接着剤として機能してもよいことが分かった。
【0102】
一実施形態では、医療デバイス(SCCポリマーを含む)は、ステントおよびカテーテルを含むステント系である。SCCポリマーは、例えばステントの本体にまたは表面に、カテーテルの本体にまたは表面に、および/またはステントとカテーテルとの間の界面に、種々の方法でその様なステント系へ導入されてもよい。SCCポリマーは、種々の方法で2つの医療デバイスの間の界面に配置されてもよい。例えば、SCCポリマーの量は、ステントおよびカテーテルの1つまたは両方の表面上の選択された場所に適用されてもよく、SCCポリマーは、ステントおよびカテーテルの1つまたは両方の表面上に被覆されてもよく、SCCポリマーのフィルムは、ステントおよびカテーテルの1つまたは両方の表面上に適用されてもよく、および/またはステントおよびカテーテルの表面の1つまたは両方は、SCCポリマーが表面で形成される方法で製造されてもよい。表面および/または界面にSCCポリマーを配置する方法は上で述べられている。
【0103】
一実施形態では、SCCポリマーは、ステントおよびカテーテルの間の温度依存性接着性を与えるために構成される。例えば、上で検討された通り、SCCポリマーは、SCCポリマーの融点より上の温度で大きな接着性を与えるために選択されてもよい。その様なSCCポリマーは、ステントとカテーテルとの間の界面で与えられ、融点より上の温度まで加熱されて、ステントとカテーテルとの間の接着の量を増加してもよい。次いで、ステントは、血管系内の所望の部位に配置されてもよい。その様な配置中に、SCCポリマーの接着性は、ステントおよびカテーテルの間の滑りを、望ましくは減少しまたは防止する。ステントの拡張後、SCCポリマーは、SCCポリマーの融点よりも下の温度まで冷却されてもよい(および/または、カテーテルを通して液体を循環させることにより積極的に冷却されてもよい)。その様な冷却により、SCCポリマーの接着性は減少し、ステントの望ましくない再配置なしで、ステントの近傍からカテーテルをきれいに取り出すことを可能にする。その他の実施形態では、SCCポリマーは、SCCポリマーの融点より下の温度で大きな接着性を与えるために選択される。その様な実施形態では、ステントは、好ましくは、SCCポリマーの融点より下の温度で配置されるが、接着は大きく(この実施形態のSCCポリマーに対して)、血管構造内で所望の直径まで拡張され、次いで、ステントとカテーテルとの間の接着を減少させるために加熱され、それによって、ステントの望ましくない再配置を最小限にして、カテーテルの脱離および取り出しを促進する。この様に、いくつかの実施形態では、SCCポリマーは、接着を増加するために加熱され、および/または接着を減少させるために冷却され、その他の実施形態では、SCCポリマーは、接着を増加するために冷却され、および/または接着を減少させるために加熱される。好ましくは、SCCポリマーはHACSCCPである。
【0104】
その他の実施形態では、医療デバイスは、ポリマー材料を体腔中へ導入し、次いで、ポリマー材料を通る流路を形成することにより、in vivoで形成される。例えば、ステントは、塞栓に対して上で記載された方法と同じ方法で、(SCCポリマーを含む)ポリマー材料を血管中へ導入し、次いで、ポリマー材料を通る流路を形成することにより形成されてもよい。好ましくは、SCCポリマーはHACSCCPである。流路は、好ましくは、血管と実質的に同軸であり、したがって、血液を流路を通して流動させることができる。流路は種々の方法で形成されてもよい。例えば、一実施形態では、ポリマー材料は、円筒金型の周りで形成される。ポリマー材料中のSCCポリマーは、金型とポリマー材料との間の接着が、SCCポリマーの融点より下の温度でさらに大きい様に選択される。金型とポリマー材料は、次いで、血管構造中へ挿入され、血管を少なくとも部分的に塞ぐために配置される。金型は、次いで、ポリマー材料の融点よりもわずかに上の温度まで加熱され、それによって、ポリマー材料および金型の間の接着を減少させる。次いで、金型は取り出され、ポリマー材料中に円筒形の穴を残す。ポリマー材料の望ましくない再配置なしでの金型の取り出しは、SCCポリマーの温度依存性接着性で促進される。その他の方法は、また、ポリマー材料、例えば、その他の金型および構成で、および/またはポリマー材料の部分を、SCCポリマーまたはポリマー材料の融点よりも上の温度まで加熱することにより流路を形成するために使用されてもよい。流路のサイズ、形状、数および構成は種々の方法で制御されてもよい。例えば、加熱エネルギーは、種々の水準でおよび種々の形態で、例えば、レーザーでおよび/または加熱した器具(例えば、加熱したワイヤ等)をポリマー材料中へ挿入することにより適用されてもよい。
【0105】
実施例1
温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた樹脂製フラスコへ、500gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、250gのオクタフェニルシクロテトラシロキサン、および重原子を有するモノマーの250gのオクタ(ヨードフェニル)シクロテトラシロキサンを添加する。フラスコおよび内容物を150℃に加熱し、0.11gの水酸化カリウム−イソプロパノール錯体(中和当量=193.5)を添加する(Si:K比は、約4470:1)。溶液を約30分間撹拌する。溶液が有効な撹拌にとって粘稠になり過ぎたら(ポリマーの形成による)、ポリマーを、3〜4時間、およそ165℃まで加熱し、次いで、室温まで冷却する。得られたポリマーは、式(IV)(ここで、AおよびAはヨウ素化フェニル基である)の繰返し単位、式(V)(ここで、R10およびR11はフェニル基である)の繰返し単位、およびジメチルシロキサン繰返し単位を含むHACSCCPである。
【0106】
実施例2
温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた樹脂製フラスコへ、およそ135℃で撹拌した250gのキシレン、20gの4−ヨードスチレンの溶液、60gのデコサニルアクリレート、および11gのジ−t−ブチルペルオキシドを、およそ3時間掛けて添加する。添加が完了後、混合物を、さらにおよそ3時間撹拌し続けてさらに完全な転換を促し、次いで、室温まで冷却する。得られたポリマーは、式(II)(ここで、RおよびRはHであり、AはC−Iである)の繰返し単位、および式(III)(ここで、Lはエステル結合であり、RはC22炭化水素基を含む)の繰返し単位を含むHACSCCPである。
【0107】
実施例3
機械的撹拌機およびゴムセプタムを備えた500mLの二口丸底フラスコへ、30gの式(VII)(I2DT−ドコサニル)のモノマーおよび240mlの塩化メチレンを添加する。固体を、撹拌しながら溶解する。30mLの塩化メチレンに溶解した約4.34gのトリホスゲンを気密注射器に入れ、注射器ポンプで、一定速度で、約2〜3時間掛けて反応フラスコへ添加する。得られた粘稠ポリマー溶液を、約150mLのテトラヒドロフランおよび10mLの水を添加して希釈する。ポリマーを、イソプロパノール中でポリマー溶液を沈殿させることにより単離し、得られた固体を濾過し、真空下で乾燥する。ポリマーは、式(I)(ここで、XはIであり、yは2であり、yは0であり、Aは−(C=O)−であり、Rは−CHCH−であり、Rは−CH−であり、Qは、23個の炭素を含む結晶性エステル基である)の繰返し単位を含むHACSCCPである。
【0108】
【化12】

【0109】
実施例4
塞栓を次の通り行う:実施例3に記載された通りに調製したHACSCCPをロッド形状の塞栓医療デバイスに形成し、加熱したカテーテル中へ入れる。医者がカテーテルを、塞栓が形成されるべき動静脈瘻(AVF)へ送達する。塞栓が形成されるべき領域をさらによく決定するために基線血管造影を蛍光透視で行う。ロッドのHACSCCP塞栓剤をカテーテルを通して目標部位へ押し出す。カテーテルを局部加熱してHACSCCPを溶融し、カテーテルを通して流動可能とし、AVFに一致する液状形態で目標部位まで流動させて組織を塞栓する。HACSCCPは冷却し、目標部位で再結晶化する。HACSCCPの送達は、血流が目標域で止まるまで続けられる。血流停止は、造影剤を注入し、蛍光透視で眺めて確認する。HACSCCPは蛍光透視下で見ることができる。カテーテルを、不必要なHACSCCPの流動を止めるために冷却する。カテーテルを取り出す。
【0110】
実施例5
高粘度HACSCCPを利用し、HACSCCPを、動脈瘤の治療のために動脈へ送達する以外は、塞栓を、実施例4に記載されている通りに行う。塞栓が達成される。
【0111】
実施例6
送達前にHACSCCPをコイルの形状に形成し、放射線照射により架橋して記憶コイルを形成した以外は、外傷性出血動脈の塞栓を、全体に実施例4に記載されている通りに行う。加熱中に、記憶コイルは軟化し、カテーテルを通して動脈へ送達される可撓性ロッドを形成する。送達により、可撓性ロッドは冷却し、動脈内でコイル形状を戻し、それによって血流を減少させる。
【0112】
実施例7
1リットルの反応器中へ、90gのヨードスチレンおよび10gのヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を充填する。約200mlのトルエン(溶剤)を添加し、反応器をアルゴンで慎重にパージする。次いで、0.5モル%のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)を添加し、反応を70℃で約24時間行う。得られたヨードスチレンとHEMAのコポリマーの組成を、核磁気共鳴(NMR)分光法で確認する。次いで、30gのカプロラクトンを添加する。反応系を共沸脱水するために、約10%のトルエンを蒸留で除去し、次いで、100万分の100部のオクタン酸スズ触媒を添加する。温度を100℃まで上昇させ、ヨードスチレン/HEMAコポリマーのペンダントヒドロキシル基をグラフトさせることによりカプロラクトンを重合する。得られたHACSCCPをアルコール中で凝固させ、乾燥する。HACSCCPは、結晶性PCL側鎖の形態で約23%(NMR)の半結晶性ポリカプロラクトン(PCL)を含む。HACSCCPの固有粘度は、30℃のトルエン中で1.0を超え、相対的に高分子量を示す。
【0113】
実施例8
骨格およびPCL側鎖の分子量と一緒に、HEMAおよびヨードスチレンの相対的量を変えた以外は、一連のHACSCCP材料を、実施例7に記載された方法と同じ方法で調製する。一連のHACSCCPポリマーは、PCL結晶性側鎖の長さおよび側鎖間の間隔によって、ある範囲の融点を示す(長さが長くおよび/または間隔が短いと、高い融点、例えば、約60℃までの融点をもたらす)。一連のHACSCCPポリマーは、また、HACSCCP中へ導入されるヨードスチレンの繰返し単位の数によって、ある範囲の放射線不透過性を示す。
【0114】
当業者は、種々の省略、付加および変更が、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の材料および方法に対して為されてもよく、すべてのその様な変更および変化は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内に入ることが意図されるものであることを理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖、
複数の結晶性側鎖、および
ポリマーに結合した複数の重原子を含み、前記重原子が、前記ポリマーに放射線不透過性を与えるのに有効な量で存在し、
前記ポリマーが、式(VI):
【化1】

(式中、R12はHまたはCHであり、n4は約1〜約1,000の範囲の整数である)の繰返し単位を含むポリマー。
【請求項2】
n4が約2〜約10の範囲の整数である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
式(II):
【化2】

(式中、RはHまたはCHであり、Aは約500以下の分子量を有する化学基であり、Aは、前記ポリマーへ結合した少なくとも1つの重原子を有する)
の繰返し単位をさらに含む、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
生体適合性である、請求項1、2または3に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1、2、3または4に記載のポリマーを含む医療デバイス。
【請求項6】
繰り返すヒドロキシエチルメタクリレート単位を含むポリマーを用意する工程、および
前記ヒドロキシエチルメタクリレート単位の少なくとも一部とカプロラクトンとを反応させる工程
を含む、請求項1、2、3または4に記載のポリマーの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111959(P2012−111959A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−38904(P2012−38904)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【分割の表示】特願2008−551307(P2008−551307)の分割
【原出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(507000316)レヴァ メディカル、 インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】REVA MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】