説明

医療用アームレスト

【課題】長時間の腕固定状態において、腕に与える違和感を少なくするようにした医療用アームレストを提供する。
【解決手段】全体が発泡プラスチック材からなるものであって、その平面視が四辺形状の形態からなるとともに、その側面視においては楔状の形態からなり、更には、その上面側にはV字状の凹陥部19を有する形態からなるクッション1と、クッション1の下面側に設けられるものであって所定の撓み剛性を有するとともに、上記クッション1を下側から支える役目を果たすゴム状プレート3と、これらクッション1及びゴム状プレート3を一体的に包み込むように形成された袋状の形態からなるものであって、上面側及び側面側は防水性及び抗菌性を有するとともに、下面側23には防止滑り止め処置が施され、更には、このような構成からなる全体が所定の伸縮性を有する素材にて形成されるカバー3と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析の際等に用いられるものであって、患者の腕を軽度屈曲位を保った状態で下方から支え、これによって患者に与える苦痛や疲労感等を軽減させるとともに、医療現場での感染症予防に対応できるようにした医療用アームレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における、この種、患者のアームを支持するものとしては、例えば特開平10−295654号公報記載のもの等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−295654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものは、患者の血圧測定用に用いられるものであって、このときの測定値がばらつかないよう、アーム部の固定等が主に考えられているものである。また、この血圧測定は、一般に、短時間のうちに、その作業が完了するようになっているものである。これに対して、人工透析等の作業は、1回に4〜6時間と比較的長い時間を掛けて行われるようになっているものである。従って、この場合、患者は長時間、腕をある程度固定させた状態で居なければならず、患者の腕周りには苦痛や圧迫感、あるいは疲労感等が生ずることとなる。このような長時間の腕固定状態においても、腕に違和感等を与えることの無いようにした、患者に優しい、医療用アームレストを提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、患者の腕部を下方から支えるように形成された医療用アームレストに関して、全体が発泡プラスチック材からなるものであって、その平面視が四辺形状の形態からなるとともに、その側面視においては楔状の形態からなり、更には、その上面側にはV字状の凹陥部を有する形態からなるクッションと、当該クッションの下面側に設けられるものであって所定の撓み剛性を有するとともに、上記クッションを下側から支える役目を果たすゴム状プレートと、これらクッション及びゴム状プレートを一体的に包み込むように形成された袋状の形態からなるものであって、上面側及び側面側は防水性及び抗菌性を有するとともに、下面側には防水滑り止め処置が施され、更には、このような構成からなる全体が所定の伸縮性を有する素材にて形成されるカバーと、からなるようにした構成を採ることとした。
【0006】
次に、請求項2記載の発明である第二の発明においては、請求項1記載の医療用アームレストに関して、上記クッションを、複数の発泡層状体を積み重ねることによって形成される発泡積層状体からなるようにするとともに、このような発泡積層状体のうちの最上層を形成するものを、各層を形成するものに対して最も柔らかな性状を有するようにした構成を採ることとした。
【0007】
次に、請求項3記載の発明である第三の発明においては、請求項2記載の医療用アームレストに関して、上記クッションを形成する各層状体間を所定の接着剤にて貼り合せるようにした構成を採ることとした。
【0008】
次に、請求項4記載の発明である第四の発明においては、請求項1記載の医療用アームレストに関して、上記クッションの、その側面視の形状を楔状の形態からなるようにするとともに、当該楔状の形態を形成する、その傾斜面の傾斜角度を15°から25°の範囲内に設定することとした構成を採ることとした。
【0009】
次に、請求項5記載の発明である第五の発明においては、請求項1記載の医療用アームレストに関して、上記カバーの、その下面側のところに、当該カバー内に収納されるクッションを出し入れすることのできるようにした開閉部を設けるとともに、この開閉部の周辺部のところに、当該開閉部を適宜開閉作動させるように形成された防水ファスナを設けるようにした構成を採ることとした。
【0010】
次に、請求項6記載の発明である第六の発明においては、請求項1記載の医療用アームレストに関して、上記カバーが、クッションのところに当該クッションを覆うように取付けられた状態において、当該カバーの、楔状の形態からなる上記クッションの最も高さの高くなる側の端部側に設けられる部分の、その上面側のところに、所定の幅を有するストラップを設けるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を採ることにより、本発明のものにおいては、次のような効果を得ることができるようになる。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明のものにおいては、クッション上面側に形成されるV字状の凹陥部のところに患者の腕を載せることによって、患者の腕は、その先端部である手首または手指側がわずかに上側に上げられた状態で保持されることとなる。その結果、本医療用アームレストのところに腕を載せた状態の患者は、その腕周りの姿勢に無理が無く、上記アームレスト上に長時間腕を載置させた状態においても、違和感等を感ずることが少なくなる。従って、このような腕の姿勢を採ることによって、患者は人工透析作業等において比較的楽な状態で長時間対応することができるようになる。
【0012】
また、請求項2記載の発明である第二の発明のものにおいては、医療用アームレストに関して、上記クッションを形成する発泡層状体のうちの最上層部に設けられるものであって患者の腕を直接支持するものを、他の層のものに対して最も柔らかな状態に発泡させたものからなるようにしたので、患者の腕は、より柔らかな状態で保持されることとなる。その結果、患者の腕は優しく支えられることとなり、患者は、人工透析を初めとした長時間の医療行為に心地良く対応することができるようになる。
【0013】
また、請求項3記載の発明である第三の発明のものにおいては、各層状体間を所定の接着剤を用いて強固に貼り合せるようにしたので、使用中において、各層間において滑りや、ズレ等の生ずるおそれがなくなり、本医療用アームレストを形成するクッションの部分が使用中おいて崩れたりするおそれが無くなる。従って、本医療用アームレストの耐久性が向上し、高い使用頻度に対しても十分に耐え得るようになる。
【0014】
また、請求項4記載の発明である第四の発明のものにおいては、患者の腕の載置されるクッションの形状を、その側面視において楔状の形態からなるようにするとともに、その楔の傾斜角を、腕の先端部である手指のある側が15°ないし25°の範囲内で所定の角度だけ上側に持上げられた状態で保持されるような値からなるようにしたので、患者の手指側には不必要に血液等が流れないようになる。その結果、患者は楽な状態で本医療用アームレスト上に腕を載置し続けることができるようになる。
【0015】
また、請求項5記載の発明である第五の発明のものにおいては、カバーの下面側の一部に、上記クッション等の出し入れを可能なようにした開閉部を設けるようにしたので、これにより、上記開閉部を適宜開くことによって中のクッション及びゴム状プレートを取り出すことができるようになる。その結果、このようにクッション等の取り出された状態のカバーを洗浄することができるようになる。このような洗浄作業を適宜行なうことによって、カバーを常に清潔な状態に維持することができるようになるとともに、医療現場での感染症予防対策に対応することができるようになる。
【0016】
また、請求項6記載の発明である第六の発明のものにおいては、上記カバーの先端部であって載置された患者の手指のある側のところには、所定の幅を有するストラップが設けられるようになっていることより、患者は、このストラップのところに手指を絡ませた状態で腕を本医療用アームレスト上に載置させることができるようになる。これによって、患者は本医療用アームレスト上への腕の載置を、違和感の無い状態で長時間保持することができるようになる。すなわち、患者は楽な状態で人工透析等の医療行為を受けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の全体構成を示す展開斜視図である。
【図2】本発明の主要部を成すクッションについての、その全体構成を示す斜視図である。
【図3】本発明 の主要部を成すクッションの、その具体的構成を示す展開斜視図である。
【図4】本発明にかかるカバーの全体構成を示す斜視図である。
【図5】本発明にかかるカバーの裏面側及び当該裏面側に設けられたファスナの構成を示す図である。
【図6】本発明にかかるカバー表面側に設けられたストラップの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について、図1ないし図6を基に説明する。本実施の形態にかかるものは、人工透析を初めとした医療行為において、患者の腕を比較的長時間、患者に違和感を与えることのない状態で保持することのできるようにした医療用アームレストに関するものである。具体的には、本医療用アームレストは、図1に示す如く、全体が発泡プラスチック材からなるものであって、その平面視が四辺形状の形態からなるとともに、その側面視においては楔状の形態からなり、更には、その上面側にはV字状の凹陥部19を有する形態からなるクッション1と、当該クッション1の下面側に設けられるものであって所定の撓み剛性を有するとともに、上記クッション1を下側から支える役目を果たすゴム状プレート3と、これらクッション1及びゴム状プレート3を一体的に包み込むように形成された袋状の形態からなるものであって、上面側及び側面側は防水性及び抗菌性を有するとともに、下面側には防水滑り止め処置が施され、更には、このような構成からなる上面側及び側面側が所定の伸縮性を有する素材にて形成されるカバー2と、からなることを基本とするものである
【0019】
このような基本構成からなるものにおいて、上記クッション1は、例えば図2に示す如く、全体的にV字状の立体形状を有するものであり、平面視においては四辺形状の形態を有するとともに、その側面視においては所定の傾斜角αを有する楔状の形態からなるものである。このような形態からなるものにおいて、基本的には、発泡ウレタン等からなる発泡プラスチックの積層状体からなることを基本とするものである。具体的には、図2または図3に示す如く、一番下側、すなわち、図1におけるゴム状プレート3上に載置されるベース13、当該ベース13上に載置されるものであって、V字状の凹陥部を形成する中間層12、当該中間層12の上側に載置されるものであって、最終的に患者の腕を保持する役目を果たすトップ層11、からなるものである。そして、これら各部(各層)11、12、13は、すべてポリウレタン樹脂等のプラスチック材が発泡処理されることによって形成される発泡プラスチック材からなるものである。このような構成からなる各層が重ね合わされるとともに、各層間を所定の接着剤にて貼り合せることによって、図2におけるような楔状形態からなるクッション1が形成されることとなる。
【0020】
このような構成からなるものにおいて、一番下側に設けられるベース13は、図3に示す如く、全体的に楔状の形態からなるものである。そして、その平面視は四辺形状の形態を有するとともに、その側面視は所定の傾斜角(α)を有する三角形状の形態を有するようになっているものである。すなわち、本クッション1は、四辺形状の傾斜面131及び三角形状の側面133等を基礎に形成されるようになっているものである。このような構成からなるものにおいて、上記傾斜面131の傾斜角度(α)としては、本実施の形態においては15°〜25°の値が採られるようになっており、最も好ましくは約20°の値が採られるようになっている。
【0021】
次に、上記ベース13の上側に載置される中間層12は、基本的には二つの楔状の形態からなるものの組合せによって形成されるようになっているものである。なお、このような中間層12を形成する各部は、上記ベース13と同様、発泡プラスチック材にて形成されるようになっているものである。そして、このような中間層12を形成する楔状のものの形態は、本クッション1の幅方向の値(図2におけるAの値)の1/2の値を楔の長さとするような、小形のものからなるものである。このような小形の楔状形態からなるものを、図3に示す如く、ベース13の上方側に、並列に2個向き合わせた状態で載置することによって、本クッション1全体の長手方向であるL方向(図2参照)にV字状の形態からなる谷状の凹陥部19(図2参照)が形成されることとなる。そして、最終的には、このようなV字状の凹陥部19が形成されるところに、例えば図6に示す如く、患者の腕が載置されるようになっているものである。
【0022】
そして更に、このような中間層12の上側には、上記ベース13、中間層12と同様、発泡プラスチック材からなるものであって、その平面視が四辺形状の形態からなる平板状のトップ層11が設けられるようになっている。なお、このトップ層11は、上記中間層12、ベース13よりも、その全体の硬度が低くなるように設定されているものである。すなわち、トップ層11は、他の各層よりも、更に一段柔らかな性状を有するようになっているものである。このような柔らかな性状を有するものをトップ層11に設けることによって、載置される患者の腕は優しく保持されることとなる。そして、最後に、上記構成からなる各層11、12、13を所定の接着剤を用いて貼り合せることによって、図2に示す如く、表面にV字状の凹陥部19を有するクッション1が形成されることとなる。
【0023】
次に、このような構成からなるクッション1の下側、具体的にはクッション1を形成するベース13の下側には、ゴム状シート材からなるプレート、本実施の形態においてはゴム状プレート3が設けられるようになっている。このものは所定の撓み性と適度の剛性とを備えたものからなるものであり、上記発泡プラスチック材からなる軟らかな性状を有するクッション1を固定し、かつ、保持する役目を担うようになっているものである。すなわち、本ゴム状プレート3は上記クッション1を安定させるための基礎の役目を担うようになっているものである。
【0024】
次に、このような構成からなるクッション1及びゴム状プレート3を包み込むように保持するカバー2について説明する。このものは、全体的に袋状の形態からなるものであり、その表面側及び側面部側は防水性及び抗菌性を有する布状素材にて形成されるようになっているものである。そして、その裏面側は滑り止め加工の施された布状素材にて形成されるようになっているものである。これら構成からなる各部が所定の縫製手段等を介して接合され、袋状の形態に形成されるようになっているものである。
【0025】
このような構成からなるカバー2の表面側であって、本カバー2が楔状の形態からなるクッション1上に被せられた状態において、クッション1の高さが最も高くなる側の端部のところには、所定の幅を有するストラップ22が設けられるようになっている(図4,図6参照)。このストラップ22は、例えば図6に示す如く、本ストラップ22を有する本医療用アームレスト上に患者の腕が載置された状態において、患者の、その手指にて握る、あるいは指を絡ませる、ことができるようになっているものである。これによって患者は安定した状態で、自身の腕を本医療用アームレスト上に載せておくことができるようになる。その結果、人工透析を初めとした長時間の医療行為に対して、患者は違和感等を感じるようなことが少なくなる。
【0026】
また、このような構成からなるカバー2の下面側23のところには、例えば図5に示す如く、その一部を開くように形成された開口部25が設けられるようになっている。そして、この開口部25のところには、当該開口部25を適宜開閉させることのできるように形成されたファスナ5が設けられるようになっている。従って、このファスナ5を作動させることによって、上記開口部25を開かせることができるようになる。このように開口部25を開かせることによって、中からクッション1及びゴム状プレート3を取り出すことができる。そして、このように中味が取り外された状態のカバー2は、そのまま洗浄等をすることができるようになり、これによって、本カバー2を常に清潔な状態に保持することができるようになる。
【符号の説明】
【0027】
1 クッション
11 トップ層
12 中間層
13 ベース
131 傾斜面
133 側面
19 凹陥部
2 カバー
22 ストラップ
23 下面側
25 開閉部
3 ゴム状プレート
5 ファスナ






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が発泡プラスチック材からなるものであって、その平面視が四辺形状の形態からなるとともに、その側面視においては楔状の形態からなり、更には、その上面側にはV字状の凹陥部を有する形態からなるクッションと、当該クッションの下面側に設けられるものであって所定の撓み剛性を有するとともに、上記クッションを下側から支える役目を果たすゴム状プレートと、これらクッション及びゴム状プレートを一体的に包み込むように形成された袋状の形態からなるものであって、上面側及び側面側は防水性及び抗菌性を有するとともに、下面側には防水滑り止め処置が施され、更には、このような構成からなる全体が所定の伸縮性を有する素材にて形成されるカバーと、からなるようにしたことを特徴とする医療用アームレスト。
【請求項2】
請求項1記載の医療用アームレストにおいて、上記クッションを、複数の発泡層状体を積み重ねることによって形成される発泡積層状体からなるようにするとともに、このような発泡積層状体のうちの最上層を形成するものを、各層を形成するものに対して最も柔らかな性状を有するようにした構成からなることを特徴とする医療用アームレスト。
【請求項3】
請求項2記載の医療用アームレストにおいて、上記クッションを形成する各層状体間を所定の接着剤にて貼り合せるようにした構成からなることを特徴とする医療用アームレスト。
【請求項4】
請求項1記載の医療用アームレストにおいて、上記クッションの、その側面視の形状を楔状の形態からなるようにするとともに、当該楔状の形態を形成する、その傾斜面の傾斜角度を15°から25°の範囲内に設定することとした構成からなることを特徴とする医療用アームレスト。
【請求項5】
請求項1記載の医療用アームレストにおいて、上記カバーの、その下面側のところに、当該カバー内に収納されるクッションを出し入れすることのできるようにした開閉部を設けるとともに、この開閉部の周辺部のところに、当該開閉部を適宜開閉作動させるように形成された防水ファスナを設けるようにした構成からなることを特徴とする医療用アームレスト。
【請求項6】
請求項1記載の医療用アームレストにおいて、上記カバーが、クッションのところに当該クッションを覆うように取付けられた状態において、当該カバーの、楔状の形態からなる上記クッションの最も高さの高くなる側の端部側に設けられる部分の、その上面側のところに、所定の幅を有するストラップを設けるようにした構成からなることを特徴とする医療用アームレスト。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90707(P2013−90707A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233571(P2011−233571)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(511258167)カネタコーポレーション株式会社 (1)
【Fターム(参考)】