説明

医療用ガイドワイヤー

【課題】本筋の血管から分岐血管へのガイドワイヤーの迷い込みを防止することのできるガイドワイヤーを提供する。
【解決手段】先端側に湾曲部5を備えた医療用ガイドワイヤーであって、ワイヤー本体3の先端側は、ワイヤー本体3の先端部が当該ワイヤー本体3の基部側へ戻るように湾曲してあり、かつ上記先端部付近は、平面視したときワイヤー本体と鋭角度でもって立体交差してある。また、先端側に湾曲部5を備えた医療用ガイドワイヤーであって、ワイヤー本体3の先端側に、ワイヤー本体3の軸心に平行な第1平面P1の一側方向に突出し、かつ前記第1平面P1に対して直交すると共に前記軸心に平行な第2平面P2から先端側が次第に離反するように湾曲した螺旋状の湾曲部5を備え、この湾曲部5の先端側に前記ワイヤー本体3に鋭角度でもって立体交差した直線状先端部7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内治療に使用される医療用ガイドワイヤーに係り、さらに詳細には、ガイドワイヤーの先端側に螺旋状に湾曲した立体形状の湾曲部を備えている医療用ガイドワイヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療に使用されるガイドワイヤーの先端部を湾曲したものとして、先端をアングル型又はJ字型に湾曲したものが知られている。上記J字型においては分岐血管への挿入が困難であり、アングル型においては分岐血管に蛇行し易いという問題がある。そこで、前記J字型,アングル型の欠点を改善すべくガイドワイヤーの先端部をJ字型に湾曲した状態において、J字型湾曲部の基部側を前記J字型の湾曲方向と同方向へ屈曲した構成のガイドワイヤーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−25907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載のガイドワイヤーの構成においては、J字型に湾曲したガイドワイヤーの先端部を、上記J字型湾曲部の基部をJ字型湾曲部の湾曲方向と同方向に屈曲した構成であり、ガイドワイヤーの先端側は同一平面内において湾曲されているものである。そして、ガイドワイヤーを進めるべき本筋の血管から分岐した血管内へガイドワイヤーの進行方向の先端部が入り込んだことを知らずにガイドワイヤーを押し進めると、ガイドワイヤーが本筋の血管から分岐血管内へ進んでしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、先端側に湾曲部を備えた医療用ガイドワイヤーであって、ワイヤー本体の先端側は、ワイヤー本体の先端部が当該ワイヤー本体の基部側へ戻るように湾曲してあり、かつ上記先端部付近は、平面視したときワイヤー本体と鋭角度でもって立体交差してあることを特徴とするものである。
【0005】
また、先端側に湾曲部を備えた医療用ガイドワイヤーであって、ワイヤー本体の先端部に、ワイヤー本体の軸心に平行な第1平面の一側方向に突出し、かつ前記第1平面に対して直交すると共に前記軸心に平行な第2平面から先端側が次第に離反するように湾曲した螺旋状の湾曲部を備え、この湾曲部の先端側に前記ワイヤー本体に鋭角度でもって立体交差した直線状先端部を備えていることを特徴とするものである。
【0006】
また、前記医療用ガイドワイヤーにおいて、前記螺旋状の湾曲部の円弧状の部分の範囲は200°〜235°であることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記医療用ガイドワイヤーにおいて、前記直線状先端部が前記ワイヤー本体の押進方向に指向するように前記螺旋状の湾曲部を引き伸ばしたとき、前記ワイヤー本体と前記直線状先端部との間に、ほぼ一周のねじれ部を備える構成であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガイドワイヤーの先端部がガイドワイヤーの進行方向を指向するように伸ばした状態において本筋の血管内を進行中に、本筋の血管から分岐した血管の入口に前記先端部が僅かに入り込んだ状態において、ガイドワイヤーをさらに押し進めると、ガイドワイヤーの先端側が元の湾曲状態に復帰されて、湾曲部における進行方向の先端が本筋の血管内に位置し、前記先端部が本筋の血管内に戻るので、分岐した血管内へガイドワイヤーが進入することを防止することができる。すなわち、本筋の血管から分岐した血管への迷い込みが防止されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1(A),(B)を参照するに、本発明の実施形態に係る医療用のガイドワイヤー1は、従来のガイドワイヤーと同様に金属製の芯線の表面を樹脂によって被覆してあり、かつ樹脂の表面には親水性処理が施してある。上記ガイドワイヤー1は、直線状のワイヤー本体3の先端側に湾曲部5を備えている。
【0010】
より詳細には、前記湾曲部5は、前記ワイヤー本体3の軸心と平行な第1平面P1(図1(A)には線で表わされている)の一側方向(図1(A)においての上方向)に突出してある。さらに、前記湾曲部5は、前記ワイヤー本体3の軸心と平行で前記第1平面P1に直交した第2平面P2((B)には線で表わされている)に前記ワイヤー本体3が接触した状態にあるものと仮定すると、前記湾曲部5は、前記第2平面P2から次第に離れるように(図1(B)においては次第に上昇するように)螺旋状に湾曲してある。
【0011】
したがって、前記湾曲部5は、平面視したときには、図1(A)に示すように、ワイヤー本体3の直線状部分3Aと湾曲部5の接線とがほぼ一致するように接続した構成である。そして、前記湾曲部5の先端側には、前記ワイヤー本体3の前記直線状部分3Aと鋭角度でもって立体交差した直線状先端部7を備えている。前記湾曲部5と前記直線状先端部7は、前記湾曲部5の接線と前記直線状先端部7とがほぼ一致するように接続した構成である。なお、上記直線状先端部7は、必ずしも直線である必要はなく、多少湾曲していてもよいものである。
【0012】
そして、前記直線状先端部7における先端9は、平面視したとき、図1(A)に示すように、前記第1平面P1に対して前記湾曲部5の突出方向とは逆に、すなわち第1平面P1の他側方向(図1(A)において下方向)に突出してある。また、前記直線状先端部7の先端9は、図1(B)に示すように、前記第2平面P2から最も離れた位置にある。前記湾曲部5において、図1(A)に示すように、平面視したときの円弧状部の部分は、ワイヤー本体3の直線状部分3Aに対して直線状先端部7が鋭角度でもって立体交差するように、約200°〜235°の範囲に亘って設けてある。なお、前記湾曲部5は、平面視したときに円弧状に表わさせるのが望ましいが、必ずしも円弧状に限ることなく、例えば楕円形状など適宜の曲線で表わされることが望ましいものである。
【0013】
以上のごとき構成において、前記ガイドワイヤー1を血管内に挿入して押し進める場合には、図2に示すように引き伸ばすものである。図2は、対象とする血管の太さにほぼ等しい透明な樹脂製のパイプ11内に挿入した状態で示してある。
【0014】
図2(B)より明らかなように、前記直線状先端部7における先端9が前記ワイヤー本体3の押進方向(図2(B)において左方向)を指向するように、螺旋状の前記湾曲部5を弾性変形させて引き伸ばすと、上記湾曲部5はパイプ11の内面によって元の状態に戻ることを規制された状態にあって、前記湾曲部5に相当する長さの部分Lの範囲において、前記湾曲部5はねじれ部5Aを構成する。このねじれ部5Aはピッチの大きなコイル状を呈するものである。
【0015】
上記構成において、ワイヤー本体3を押進することによってパイプ(血管)11内を移動すると共に、ワイヤー本体3を軸心回りに右回り又は左回りに回動すると、直線状先端部7の先端9は、進行方向(図2(B)において左方向)を指向した状態において、血管(パイプ)11から分岐した血管11A(図3参照)方向に指向されるものである。そして、前記先端9が進行すべき分岐血管の入口に達すると、本筋の血管(パイプ)11による先端9部分の規制が一部解除される態様となるので、前記湾曲部5の弾性により、前記先端9は分岐血管の方向へ入り込むことになる(図3(B)参照)。
【0016】
したがって、前記先端9が分岐血管11A内に入り込むように、前記ワイヤー本体3を軸心回りに回動して、直線状先端部7を上記分岐血管11A内へねじり込むようにワイヤー本体3を押し進めることにより、前記直線状先端部7に追従してねじれ部5Aが次第にねじれ込まれる態様となり、ワイヤー本体3における直線状先端部7を分岐血管11A内へ容易に進行することができるものである。
【0017】
よって、ワイヤー本体3を軸心回りに回動して直線状先端部7の先端を所望する分岐血管11A方向へ指向して、ねじり込むように操作することにより、所望する血管の方向へワイヤー本体3を容易に進行することができるものである。
【0018】
ところで、ワイヤー本体3を軸心回りに回動することなく押進して血管11内を進行しているときに、図3(B)に示すように、ワイヤー本体3における直線状先端部7の先端9が希望しない分岐血管11A内に入り込み、この状態すなわち直線状先端部7の先端9が希望しない分岐血管11A内に入ったことに気付かずにワイヤー本体3の押進を継続すると、前記先端9が分岐血管11Aの入口に引っ掛かった状態となる。
【0019】
そして、前記先端9が分岐血管11Aの入口に引っ掛かった状態においてワイヤー本体3の押進がさらに続行されると、ねじれ部5Aが弾性によって元の湾曲部5の形状に復帰するので、本筋の太い血管11から分岐した細い血管11A内へワイヤー本体3が迷い込むことを防止することができるものである。
【0020】
前述のごとく、ワイヤー本体3の湾曲部5がねじれ部5Aの状態から元の螺旋状の形態に復帰したことが検出されたときには、ワイヤー本体3を本筋の血管11から抜き出して挿入を再度行うものである。
【0021】
なお、ガイドワイヤー1を挿入する血管11が全長に亘って太い血管である場合には、図3(D)に示すように、湾曲部5をねじれ部5Aに引き伸ばすことなく使用するものである。この場合、ワイヤー本体3の進行方向の先端部に湾曲部5が位置するので、本筋の太い血管11から分岐した細い分岐血管11Aに湾曲部5が入り込むようなことがないものであり、目的位置へ湾曲部5を押し進めることができるものである。
【0022】
以上のごとき説明より理解されるように、ガイドワイヤー1の先端部を、目的としない血管への迷い込みを防止して、目的とする血管内へ容易に押し進めることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るガイドワイヤーの先端側の形状を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガイドワイヤーの使用状態を示す説明図である。
【図3】ガイドワイヤーの迷い込みを防止するための作用説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ガイドワイヤー
3 ワイヤー本体
5 湾曲部
5A ねじれ部
7 直線状先端部
9 先端
11 パイプ(血管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に湾曲部を備えた医療用ガイドワイヤーであって、ワイヤー本体の先端側は、ワイヤー本体の先端部が当該ワイヤー本体の基部側へ戻るように湾曲してあり、かつ上記先端部付近は、平面視したときワイヤー本体と鋭角度でもって立体交差してあることを特徴とする医療用ガイドワイヤー。
【請求項2】
先端側に湾曲部を備えた医療用ガイドワイヤーであって、ワイヤー本体の先端側に、ワイヤー本体の軸心に平行な第1平面の一側方向に突出し、かつ前記第1平面に対して直交すると共に前記軸心に平行な第2平面から先端側が次第に離反するように湾曲した螺旋状の湾曲部を備え、この湾曲部の先端側に前記ワイヤー本体に鋭角度でもって立体交差した直線状先端部を備えていることを特徴とする医療用ガイドワイヤー。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用ガイドワイヤーにおいて、前記螺旋状の湾曲部の円弧状の部分の範囲は200°〜235°であることを特徴とする医療用ガイドワイヤー。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の医療用ガイドワイヤーにおいて、前記直線状先端部が前記ワイヤー本体の押進方向に指向するように前記螺旋状の湾曲部を引き伸ばしたとき、前記ワイヤー本体と前記直線状先端部との間に、ほぼ一周のねじれ部を備える構成であることを特徴とする医療用ガイドワイヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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