説明

医療用ガイドワイヤ

【課題】先端部が柔軟、かつ堅牢な医療用ガイドワイヤを提供する。
【解決手段】医療用ガイドワイヤ1Aは、外側コイル体3と内側コイル体10との間に、樹脂材料が充填されることによって構成された樹脂層20が形成されているため、医療用ガイドワイヤ1Aが屈曲又は湾曲しても、外側コイル体3及び内側コイル体10が干渉することがなく、また、先端部が硬くなりすぎることがない。このため、該医療用ガイドワイヤ1Aは、優れた柔軟性と堅牢性とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用分野で好適に用いられる医療用ガイドワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場において血管、尿管、又は器官等へのカテーテルの挿入や、血管の動脈瘤形成部への体内留置具の挿入の際にガイドとして用いられる医療用ガイドワイヤは、既によく知られている。通常、前記医療用ガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトの先端部外周に巻回されたコイル体とを備え、前記コイル体の先端部と前記コアシャフトの先端部とが接合されて最先端部が形成されている。
【0003】
また、医療用ガイドワイヤの先端部の柔軟性及び回転力伝達性の両立を図るため、外側コイルと、該外側コイルの内側に配置される内側コイルとを備える構成も既に開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、コアワイヤとコイルスプリングとを備え、該コイルスプリングの内側、すなわちコアワイヤとコイルスプリングとの間に樹脂が充填されてコアワイヤとコイルスプリングとの固着強度を高めた構成も既に開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5345945明細書
【特許文献2】特開2010−214054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外側コイルと内側コイルとを備えた医療用ガイドワイヤにあって、使用時に該医療用ガイドワイヤの先端部が屈曲又は湾曲した際、該外側コイルと該内側コイルとが干渉してしまって該外側コイルと該内側コイルとが変形したり、又は、内側コイルのコイル素線が外側コイルのコイル素線に乗り上げてしまったりして、損傷を受けてしまうおそれがあった。また、同様に該医療用ガイドワイヤの先端部が屈曲又は湾曲した際に、前記内側コイルと前記コアシャフトとが干渉して該コアシャフトが折れる等してしまい、またこれに伴い該内側コイル体が変形し、さらに、該内側コイル体と前記外側コイル体とが干渉することで、該外側コイル体も変形してしまうおそれがあった。
【0007】
また、上記した医療用ガイドワイヤにおいて、外側コイル体とコアシャフトとの間に樹脂を充填した場合には、相互の干渉の問題は解決されるものの、医療用ガイドワイヤの先端が硬くなりすぎてしまい、その結果、柔軟性を損ない、血管等の器官を損傷してしまうおそれがあった。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、外側コイルと内側コイルとを備えた医療用ガイドワイヤにあって、屈曲又は湾曲時における外側コイルと内側コイルとの干渉、あるいは内側コイルとコアシャフトとの干渉を防ぐことにより、該医療用ガイドワイヤにおける先端部の損傷を抑止して、柔軟性と堅牢性とを備える医療用ガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コアシャフトと、前記コアシャフトの少なくとも先端部を覆う外側コイル体と、前記外側コイル体の内側に位置し、かつ前記コアシャフトの少なくとも先端部を覆う内側コイル体と、を有し、前記外側コイル体と前記内側コイル体との間、及び、前記コアシャフトと前記内側コイル体との間、のうちいずれか一方に、樹脂材料が充填されて樹脂層が形成されていることを特徴とする医療用ガイドワイヤである。
【0010】
ここで、外側コイル体と内側コイル体との間に樹脂層が形成されている場合、使用時に該外側コイル体と該内側コイル体とが強く屈曲又は湾曲しても、該外側コイル体と該内側コイル体との間に該樹脂層が介在しているため、該外側コイル体と該内側コイル体とが接触してしまうことがない。このため、該外側コイル体と該内側コイル体とが干渉して互いに変形などの損傷を受けてしまうことが抑止される。また、この場合において内側コイル体とコアシャフトとが強く屈曲又は湾曲して、コアシャフトが内側コイル体と接触したとしても、内側コイル体は、樹脂層を介して外側コイル体に固定されているため、屈曲又は湾曲したコアシャフトによる内側コイル体の変形を抑止できると共に、コアシャフトも内側コイル体によって、その屈曲又は湾曲形態の発展が適度に抑止される。このため、コアシャフトの損傷も防止することができる。また、内側コイル体とコアシャフトとの間に樹脂層が形成されている場合、使用時に該内側コイル体と該コアシャフトとが強く屈曲又は湾曲しても、該内側コイル体と該コアシャフトとの間に該樹脂層が介在しているため、該内側コイル体と該コアシャフトとが接触してしまうことがない。このため、例えば該内側コイル体と該コアシャフトとの干渉による該コアシャフトの折れや傷つきなどを抑止できる。したがって、医療用ガイドワイヤの先端部の損傷が抑止される。また、前記樹脂層が、外側コイル体と内側コイル体との間、及び、内側コイル体とコアシャフトとの間、のうちいずれか一方に設けられていることにより、医療用ガイドワイヤの先端部が硬くなりすぎず、医療用ガイドワイヤの先端部の柔軟性が確保される。したがって、上記の本発明においては、医療用ガイドワイヤにおける先端部の柔軟性と堅牢性とが向上する。
【0011】
また、前記内側コイル体における前記樹脂層に対応する部分は、少なくとも密巻きに形成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成において、内側コイル体における密巻きにされた部位は、コイル素線間の隙間がほとんどないため、前記外側コイル体と前記内側コイル体との間に前記樹脂層が形成される場合、該樹脂材料が該内側コイル体の内側へ漏出してしまうことを防止できる。このため、確実に該内側コイル体の外側に前記樹脂材料を留めて前記樹脂層を形成することができ、該外側コイル体と該内側コイル体との干渉防止を確かなものとすることができる。また、内側コイル体とコアシャフトとの間に樹脂層が形成される場合に、充填される樹脂材料が内側コイル体の外側へ漏出してしまうことを防止できる。さらに、仮に外側コイル体と内側コイル体とが干渉した場合にも、内側コイル体のコイル素線が密巻きに形成されているため、内側コイル体のコイル素線が外側コイル体のコイル素線に乗り上げてしまうことが抑止される。したがって、かかる構成は確実に内側コイル体の内側に樹脂層を形成でき、かつ、内側コイル体とコアシャフトとの干渉の防止でき、さらには、外側コイル体と内側コイル体との干渉の防止を確かなものとすることができる。
【0013】
また、前記樹脂層が前記外側コイル体と前記内側コイル体との間に形成されている構成にあって、前記外側コイル体における前記樹脂層に対応する部分には、疎巻きに形成された部位が設けられていることが好ましい。
【0014】
上記構成とすると、外側コイル体におけるコイル素線間の隙間から前記樹脂材料を容易に充填することが可能となるため、該樹脂層の形成作業が円滑となって医療用ガイドワイヤの生産性が向上する。
【0015】
また、前記外側コイル体と前記内側コイル体とのうち少なくともいずれか一方は、複数のコイル素線が撚られて構成された多条コイルであることが好ましい。
【0016】
上記構成にあって、多条コイルは、湾曲した際にもいわゆる素線ずれが小さく、元々堅牢性が高い。このため、該多条コイルを本発明における前記外側コイル体と前記内側コイル体とのうち少なくともいずれか一方に適用することにより、前記樹脂層の形成による堅牢性の向上とも相まって、より一層医療用ガイドワイヤにおける先端部の堅牢性が向上する。また、このように多条コイルを適用した構成の利点を単コイルを適用した構成と比較して述べると、該多条コイルのコイル素線の医療用ガイドワイヤの中心軸に対する巻回角度は、単コイルのコイル素線の医療用ガイドワイヤの中心軸に対する巻回角度よりも小さいため、かかる構成においては外側コイル体のコイル素線と内側コイル体のコイル素線とが干渉することによって内側コイル体のコイル素線が外側コイル体のコイル素線に乗り上げてしまうという現象を防止でき、内側コイル体及び外側コイル体の損傷を回避できるため医療用ガイドワイヤの堅牢性が向上する。
【0017】
また、前記樹脂材料は、疎水性の樹脂材料が好ましい。
【0018】
かかる構成とすることにより、体液などの水分によって樹脂層の体積が増大してしまうことを防ぐことができるため、該樹脂層の寸法安定性を確保することができ、延いては、医療用ガイドワイヤの堅牢性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、屈曲又は湾曲時における外側コイル体と内側コイル体との干渉、あるいは内側コイル体とコアシャフトとの干渉を防ぐことができるため、医療用ガイドワイヤの先端部が損傷しなくなり、医療用ガイドワイヤの先端部の堅牢性が向上すると共に、樹脂層が外側コイル体と内側コイル体との間、及び、内側コイル体とコアシャフトとの間、のうちいずれか一方に設けられているため、医療用ガイドワイヤの先端部が硬くなりすぎず、医療用ガイドワイヤの先端部の柔軟性も確保される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の医療用ガイドワイヤを示す説明図
【図2】実施例2の医療用ガイドワイヤを示す説明図
【図3】実施例3の医療用ガイドワイヤを示す説明図
【図4】実施例4の医療用ガイドワイヤを示す説明図
【図5】実施例5の医療用ガイドワイヤを示す説明図
【図6】実施例6の医療用ガイドワイヤを示す説明図
【図7】実施例7の医療用ガイドワイヤを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる医療用ガイドワイヤの実施例1〜7を添付図面に従って説明する。
【0022】
(実施例1)
図1に示すように、医療用の医療用ガイドワイヤ1Aは、先端側が細径で基端側が太径とされている先細り丸棒形状のコアシャフト2を有している。
【0023】
また、前記コアシャフト2の少なくとも先端部には、外側コイル体3が固定されている。さらに詳述すると、前記外側コイル体3は、少なくとも先端部が密巻きに形成された単コイルで構成されており、その先端と前記コアシャフト2の先端とが接続されて略半球体形の最先端部4が形成されている。また、該外側コイル体3の基端は、第1固定部5を介して前記コアシャフト2に固定されている。
【0024】
また、前記外側コイル体3の内側には、前記コアシャフト2の少なくとも先端部を覆う内側コイル体10が配置されている。該内側コイル体10は、全長にわたって密巻きに形成された単コイルで構成されており、該内側コイル体10の先端は、前記最先端部4に接続されている。また、該内側コイル体10の基端は、該コアシャフト2と前記外側コイル体3とに連続する第2固定部12に接続されている。なお、前記第1固定部5、及び前記第2固定部12は、公知材料を用いた公知技術(例えば、接着剤、ロウ接、又は溶接)により構成される。
【0025】
さらに、前記外側コイル体3と前記内側コイル体10との間であって、前記最先端部4と前記第2固定部12との間に形成された空隙には、樹脂材料が充填されることによって樹脂層20が形成されている。
【0026】
前記樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、シリコンゴム、アクリルゴム等のゴム材料、ポリウレタン系、ポリアミド系等のエラストマー材料、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体等のフッ素樹脂材料のような各種疎水性樹脂材料を用いるのが好ましい。
【0027】
なお、外側コイル体3と内側コイル体10との間の樹脂層20を形成する樹脂材料に親水性樹脂材料を用いると、該樹脂層20の樹脂材料が湿潤時に吸水して膨潤し、体積が増加してしまう。この結果、樹脂層20が、外側コイル体3を外周方向へ、内側コイル体10を医療用ガイドワイヤ1Aの中心方向へそれぞれ押圧するため、これにより外側コイル体3と内側コイル体10とが変形してしまうおそれが生じる。これを防止するためにも、樹脂層20を形成する樹脂材料としては、上記の疎水性樹脂材料を用いることが好ましい。
【0028】
前記樹脂層20の形成方法としては、樹脂材料を加熱溶融して前記外側コイル体3と前記内側コイル体10との間の空隙に流し込む又は押し出す方法、あるいは該樹脂材料を溶媒に溶解させた溶液を、樹脂層20を形成する部位に塗布した後、該溶媒を乾燥させる方法等が例示される。ただし、これらに限定されることなく、公知の技術を適宜採用することが可能である。
【0029】
また、外側コイル体3と内側コイル体10との間に樹脂層20を形成する方法としては、外側コイル体3の外側から溶融又は溶解した樹脂材料を流し込むか、あるいは、最先端部4を形成する前に、先端に形成されている開口から外側コイル体3と内側コイル体10との間に樹脂材料を流し込む、又は押し出す方法が例示される。
【0030】
上記構成の医療用ガイドワイヤ1Aにあっては、前記外側コイル体3と前記内側コイル体10との間に前記樹脂層20が介在しているため、使用時に該外側コイル体3と該内側コイル体10とが強く屈曲又は湾曲しても、該外側コイル体3と該内側コイル体10とが接触してしまうことがない。このため、使用時に、該外側コイル体3と該内側コイル体10とが干渉して互いに変形などの損傷を受けることがないため、該医療用ガイドワイヤ1Aにおける先端部の損傷が抑止され、該医療用ガイドワイヤ1Aにおける先端部の堅牢性が向上する。また、内側コイル体10とコアシャフト2とが強く屈曲又は湾曲して、該コアシャフト2が該内側コイル体10と接触したとしても、該内側コイル体10は、前記樹脂層20を介して前記外側コイル体3に固定されているため、屈曲又は湾曲した該コアシャフト2による該内側コイル体10の変形を抑止できると共に、該コアシャフト2も該内側コイル体10によって、その屈曲又は湾曲形態の発展が適度に抑止される。このため、コアシャフト2の損傷も防止することができる。また、樹脂層20が、外側コイル体3と内側コイル体10との間にのみ設けられているため、医療用ガイドワイヤ1Aの先端が硬くなりすぎず、該医療用ガイドワイヤ1Aの先端の柔軟性も確保される。
【0031】
さらに、前記内側コイル体10における樹脂層20に対応する部分が密巻きに形成されており、かかる部分のコイル素線間には隙間がほとんどないため、該外側コイル体3と該内側コイル体10との間に充填される樹脂材料が該内側コイル体10の内側へ漏出してしまうことがない。このため、確実に該内側コイル体10の外側に該樹脂材料を留めて前記樹脂層20を形成することができる。また、仮に外側コイル体3と内側コイル体10とが干渉した場合にも、内側コイル体10のコイル素線が密巻きに形成されているため、外側コイル体3のコイル素線に乗り上げてしまうことが抑止される。これらのことから、内側コイル体10の内側に確実に樹脂層20を形成することができ、かつ内側コイル体10とコアシャフト2との干渉の防止ができ、さらには、外側コイル体3と内側コイル体10との干渉の防止も確かなものとすることができる。なお、実施例1における内側コイル体10は、軸線方向において全長に亘って密巻きに形成されているが、これに限定されず、該内側コイル体10における樹脂層20に対応する部分についてのみ密巻きに形成されていてもよい。
【0032】
(実施例2)
以下、実施例2にかかる医療用ガイドワイヤ1Bを図2に従って説明するが、実施例1と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0033】
図2に示すように、外側コイル体31の少なくとも先端部は、疎巻きに形成されており、前記樹脂層20に対応する部分において、コイル素線間に隙間が設けられている。
【0034】
このように、外側コイル体31において、前記樹脂層20に対応する部分が少なくとも疎巻きに形成されていると、該外側コイル体31のコイル素線間の隙間から該樹脂層20を構成する樹脂材料を容易に充填することが可能となる。このため、該樹脂層20の形成作業が円滑となって医療用ガイドワイヤ1Bの生産性が飛躍的に向上する。なお、外側コイル体31において、前記樹脂層20に対応する部分の全部が疎巻きに形成されていてもよいし、一部が疎巻きに形成されていてもよく、要は外側コイル体31の外側から樹脂材料を充填しやすくする隙間が設けられていればよい。
【0035】
(実施例3)
以下、実施例3にかかる医療用ガイドワイヤ1Cを図3に従って説明するが、実施例1,2と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0036】
図3に示すように、前記内側コイル体14は、複数のコイル素線が撚られてなる多条コイルにより構成されている。なお、該多条コイルは、屈曲又は湾曲した場合にもいわゆる素線ずれが小さいという性質を有し、堅牢性が高い。
【0037】
このように内側コイル体14が多条コイルにより構成されていると、前記樹脂層20の形成による堅牢性の向上とも相まって、医療用ガイドワイヤ1Cにおける先端部の堅牢性が大幅に高められる。また、該多条コイルのコイル素線の医療用ガイドワイヤ1Cの中心軸に対する巻回角度は、単コイルを適用した構成における該単コイルのコイル素線の医療用ガイドワイヤの中心軸に対する巻回角度よりも小さいため、かかる構成においては外側コイル体31のコイル素線と内側コイル体14のコイル素線とが干渉することによって内側コイル体14のコイル素線が外側コイル体31のコイル素線に乗り上げてしまうという現象を防止できる。したがって、内側コイル体14及び外側コイル体31の損傷を回避できるため、医療用ガイドワイヤ1Cの堅牢性が向上する。なお、内側コイル体14に加え、外側コイル体31も多条コイルにより構成されていてもよい。また、外側コイル体31のみ多条コイルで構成されていてもよい。ただし、医療用ガイドワイヤ1Cの柔軟性確保、及び樹脂層20の形成容易性の点に鑑みれば、内側コイル体14のみを多条コイルとすることが最も望ましい。
【0038】
(実施例4)
以下、実施例4にかかる医療用ガイドワイヤ1Dを図4に従って説明するが、実施例1〜3と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0039】
図4に示すように、医療用ガイドワイヤ1Dは、コアシャフト2と、少なくとも先端部が密巻きに形成された単コイルにより構成される外側コイル体3と、全長に亘って密巻きに形成された単コイルにより構成される内側コイル体10とを有している。
【0040】
また、前記コアシャフト2と前記内側コイル体10との間であって、最先端部4と第2固定部12との間に形成された空隙には、樹脂材料が充填されることによって構成された樹脂層24が形成されている。
【0041】
内側コイル体10とコアシャフト2との間に樹脂層24を形成する方法としては、最先端部4を形成する前に、先端に形成されている開口から内側コイル体10とコアシャフト2との間に樹脂材料を流し込む、又は押し出す方法が例示される。
【0042】
上記構成にあっては、前記内側コイル体10と前記コアシャフト2との間に前記樹脂層24が介在しているため、使用時に該内側コイル体10と該コアシャフト2とが強く屈曲又は湾曲しても、該内側コイル体10と該コアシャフト2とが接触してしまうことがない。このため、使用時に医療用ガイドワイヤ1Dが湾曲した場合においても、例えば該内側コイル体10と該コアシャフト2との干渉による該コアシャフト2の折れや傷つきなどを抑止でき、全体として、該医療用ガイドワイヤ1Dにおける先端部の損傷が抑止されて該先端部の堅牢性が向上する。
【0043】
また、前記内側コイル体10にあって、前記樹脂層24に対応する部分は密巻きに形成されているため、該樹脂層24を構成する樹脂材料が充填される際に該内側コイル体10の外側へ漏出してしまうことがない。このため、確実に該内側コイル体10の内側に該樹脂層24を形成することができ、該内側コイル体10と該コアシャフト2との干渉防止を確かなものとすることができる。なお、外側コイル体3及び内側コイル体10のうち少なくともいずれか一方は、多条コイルにより構成されていてもよい。このように外側コイル体3及び内側コイル体10のうち少なくともいずれか一方が多条コイルにより構成されていると、多条コイル自身は堅牢性が高いため、医療用ガイドワイヤ1Dの先端部の堅牢性が向上する。
【0044】
(実施例5)
以下、実施例5にかかる医療用ガイドワイヤ1Eを図5に従って説明するが、実施例1〜4と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0045】
図5に示すように、医療用ガイドワイヤ1Eは、最先端部4から基端方向に離間した位置に配置された内側コイル体10を備えている。具体的には、該内側コイル体10の先端は、前記最先端部4から基端方向に離間した位置に設けられ、外側コイル体3と連続する第3固定部26に接続されている。また、前記医療用ガイドワイヤ1Eは、疎巻きに形成された部位と密巻きに形成された部位とを有した外側コイル体32を備えている。そして、前記内側コイル体10に対応する位置に、前記外側コイル体32の疎巻きの部位が配置されている。
【0046】
かかる構成は、内側コイル体10の先端が最先端部4から基端方向に離間しているため、医療用ガイドワイヤ1Eの先端側の柔軟性を充分に確保することができる。
【0047】
(実施例6)
以下、実施例6にかかる医療用ガイドワイヤ1Fを図6に従って説明するが、実施例1〜6と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0048】
図6に示すように、医療用ガイドワイヤ1Fは、先端側と基端側とでコイル外径が異なる内側コイル体16を備えている。具体的には、該内側コイル体16は、先端側に位置するコイル外径が小さい先端側コイル部161と、基端側に位置するコイル外径が先端側コイル部161より大きい基端側コイル部162とを備えている。
【0049】
そして、内側コイル体16とコアシャフト2との間には樹脂層24が形成されているところ、前記先端側コイル部161とコアシャフト2との間には、薄肉の先端側樹脂層241が形成され、前記基端側コイル部162とコアシャフト2との間には、前記先端側樹脂層241より厚肉の基端側樹脂層242が形成されている。
【0050】
かかる樹脂層24にあっては、先端側が基端側よりもその層厚が薄いため、より一層医療用ガイドワイヤ1Fの先端側の柔軟性が確保される。
【0051】
(実施例7)
以下、実施例7にかかる医療用ガイドワイヤ1Gを図7に従って説明するが、実施例1〜6と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0052】
図7に示すように、内側コイル体18が全長に亘って疎巻に形成された単コイルにより構成されている医療用ガイドワイヤ1Gも、本発明に含まれるものである。
【0053】
なお、これまでに述べた本発明は、上述の実施例1〜7に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更することは勿論可能である。
【符号の説明】
【0054】
1A〜1G 医療用ガイドワイヤ
2 コアシャフト
3,31,32 外側コイル体
10,14,16,18 内側コイル体
20,24 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトの少なくとも先端部を覆う外側コイル体と、
前記外側コイル体の内側に位置し、かつ前記コアシャフトの少なくとも先端部を覆う内側コイル体と、
を有し、
前記外側コイル体と前記内側コイル体との間、及び、前記コアシャフトと前記内側コイル体との間、のうちいずれか一方に、樹脂材料が充填されて樹脂層が形成されている
ことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記内側コイル体における前記樹脂層に対応する部分は、少なくとも密巻きに形成されている
請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記樹脂層が前記外側コイル体と前記内側コイル体との間に形成されている構成にあって、
前記外側コイル体における前記樹脂層に対応する部分には、疎巻きに形成された部位が設けられている
請求項1又は請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記外側コイル体と前記内側コイル体とのうち少なくともいずれか一方は、複数のコイル素線が撚られて構成された多条コイルである
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の医療用ガイドワイヤにおいて、
前記樹脂材料は、疎水性の樹脂材料である
医療用ガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223256(P2012−223256A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91644(P2011−91644)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】