説明

医療用ガス配管接続装置

【課題】 差込プラグの抜差し操作を簡略化して作業性を向上することができる医療用ガス配管接続装置を提供する。
【解決手段】 ガス供給ソケット2は、ガスの流入口4および排出口5を備えたソケット本体6と、ソケット本体6内に、排出口5の軸線L方向に沿って弾力付勢状態で設置され、この弾発的に付勢された状態で排出口5を封止し、弾力に抗する力が作用したときには弾発的に付勢される方向とは逆方向に移動して排出口5を開くよう作動する弁体7と、排出口5にその軸線L方向に同心的に連接されて差込プラグ3を気密的に差込み可能とされるソケット部8とを含む。ソケット部8と、差込プラグ3とには、軸線L方向に沿った2個所の異なる位置で、差込まれた差込プラグ3を保持するロック手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療室および一般病室などの壁部に設けられて、治療に必要なたとえば酸素、笑気および空気などの医療用ガスを供給し、または汚物等を吸引するアウトレット装置における医療用ガス配管接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ガス配管接続装置の典型的な従来技術は、特許文献1に示されている。このような医療用ガス配管接続装置は、病室壁部に設置されるガス供給ソケットと、前記ガス供給ソケットに着脱自在に装着されるガス受給用差込プラグとを含む。医療用ガスとしては、たとえば、酸素ガス、笑気および空気などが用いられる。またガス受給用差込プラグには、汚物などを吸引するための吸引力が導かれる。治療室および一般病室などの壁部には、これらの医療用ガス毎および吸引力が導かれるアウトレットとも称される複数のガス供給ソケットが設置され、各ガス供給ソケットに対応するガス受給用差込プラグが必要に応じて差込み装着される。
【0003】
差込プラグは、前記ガス供給ソケットに対して、所定の位置まで差込まれ、これによって、ガス供給ソケット内に弾発的に付勢された状態で収容された弁体を、この弾発力に抗して後退させてガスの排出口を開放させ、ガス供給ソケットに導入されている医療用ガスを前記排出口を介して差込プラグ内のガス管路に流入させ、治療に用いることができるように構成されている。使用後は、差込プラグをガス供給ソケットから抜取ることによって、弁体が前記弾発付勢力によって前記排出口を封止する位置に復帰し、抜出された差込プラグは所定の保管位置に保管される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−341273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような医療用ガス配管接続装置においては、医療用ガスを使用する度に、所定のガスに対応する差込プラグを保管位置から取出し、対応するガス供給ソケットに差込み装着される。治療態様によって、医療用ガスの使用が頻繁に繰返される場合、その都度、保管位置から差込プラグを取出し、所定のガス供給ソケットに差込み装着する作業が短い時間で繰返されることになり、このような作業は、大変煩わしく、多大な手間を強いることになる。
【0006】
本発明の目的は、差込プラグの抜差し操作を簡略化して治療作業の効率化を図ることができる医療用ガス配管接続装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、病室壁部に設置され、ガス供給源からガスが導かれ、または吸引力が導かれるガス供給ソケットと、前記ガス供給ソケットに着脱自在に装着される差込プラグとを含む医療用ガス配管接続装置であって、
前記ガス供給ソケットは、
ガスの流入口および排出口を備えたソケット本体と、
前記ソケット本体内に、前記排出口の軸線に沿って弾発的に付勢された状態で設置され、この状態で前記排出口を封止し、前記弾発的に付勢する力に抗する力が作用したときには、前記弾発的に付勢される方向とは逆方向に移動して前記排出口を開くように作動する弁体と、
前記排出口にその軸線方向に同軸に連接されて前記差込プラグを気密的に差込み可能とされる筒状のソケット部とを含み、
前記ソケット部および差込プラグには、前記軸線方向に沿った2個所の異なる保持位置で、差込まれた前記差込プラグを保持するロック手段が設けられ、
前記ロック手段による2個所の異なる保持位置は、前記ソケット部に差込まれた差込プラグを、その先端が前記弁体に接触しない位置に保持する第1の位置と、前記ソケット部に差込まれた差込プラグを、その先端が前記弁体を前記弾発的に付勢される力に抗して押圧し、前記排出口を開放して前記ソケット本体内のガスが前記排出口を経て差込プラグ内に流入し得る状態に保持する第2の位置とに設定されることを特徴とする医療用ガス配管接続装置である。
【0008】
本発明に従えば、病室壁部に設置されるガス供給ソケットに差込プラグが着脱自在に装着される。そして、差込プラグのガス供給ソケットに対する装着状態は、前記ロック手段によって、軸線に沿った2個所の異なる位置で保持が可能とされる。第1の保持位置は、ソケット本体のガスの排出口にその軸線に沿って同軸に連接されたソケット部に差込まれた差込プラグを、その先端が前記弁体に接触しない状態に保持する位置である。したがって、この状態では、差込プラグは、ソケット部に差込み状態で保持されるが、弁体には作用せず、前記排出口は閉鎖されたままで、この状態で待機させることができる。また、第2の保持位置は、前記ソケット部に差込まれた差込プラグを、その先端が前記弁体を前記弾発力に抗して押圧し、前記排出口を開放して前記ソケット本体内のガスが前記排出口を経て差込プラグ内に流入し得る状態に保持する位置である。
【0009】
前記第1の位置から、差込プラグをさらに押し込むと、前記弁体が作動して排出口が開放され、ソケット本体にガス供給源から導入されているガスまたは吸引力が、排出口を経て差込プラグ内に導かれ、必要部位での使用に供される。この使用を停止する際は、ロック手段による差込プラグのロック状態を解除すると、前記弁体が前記弾発力の作用によって、前記排出口を閉鎖する位置に復帰し、差込プラグは前記第1の保持位置で保持され、待機状態とされる。これによって、差込プラグを別途に準備された保管位置に戻し、あるいは保管位置から取り出すような煩わしい作業の繰り返しが不要とされ、治療作業の効率化が図られる。
【0010】
また本発明の前記ロック手段は、前記ソケット部の周壁部に一半径線方向に移動自在にかつ前記ソケット部の軸線に近接する方向に弾発的に付勢された状態で、一部が前記ソケット部の内壁面から内方に突出するよう保持された2つのロック部材と、前記差込プラグの外周部に形成され、前記2つのロック部材における前記内壁面から内方に突出する部分に係合可能な係合溝部とによって構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に従えば、前記ロック手段は前記2つのロック部材および前記係合溝部によって構成されるので、差込プラグのソケット部における前記2個所の異なる保持位置での保持状態を容易に実現することができる。そして、2つのロック部材は、前記ソケット部の周壁部に一半径線方向に移動自在にかつ前記ソケット部の軸線に近接する方向に弾発的に付勢された状態で、一部が前記ソケット部の内壁面から内方に突出するように保持されているので、差込プラグをソケット部に差込み操作するだけで、各ロック部材のいずれか一方が前記係合溝部に係合して、前記差込プラグを前記2個所の保持位置のいずれかで確実に保持し、安定的な保持状態を維持することができる。
【0012】
さらに本発明は、前記ガス供給ソケットは、前記ソケット部が着脱可能に接続されるケーシングを有し、前記ケーシングには、前記差込プラグによって押圧される弁体よりもガスの供給方向上流側に設けられ、前記ソケット部を前記ケーシングに装着すると、弁孔を開放し、前記ソケット部を前記ケーシングから離脱させると、ガス供給源からのガス圧によって前記弁孔を閉鎖する流路開閉手段が設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明に従えば、前記ガス供給ソケットには、ソケット部をケーシングに装着すると、弁孔を開放し、ソケット部をケーシングから離脱させると、ガス供給源からのガス圧によって前記弁孔を閉鎖する流路開閉手段が設けられるので、前記弁孔を開閉するための弁体など部品を閉弁状態に保持するばねを必要とせず、部品点数を削減して、ガス供給ソケットの構成を簡素化することができる。
【0014】
さらに本発明は、前記ガス供給ソケットには、前記差込プラグの前記2個所の保持位置での差込保持状態を識別表示する表示手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、ガス供給ソケットに対する前記差込プラグの差込保持状態が表示手段によって表示されるので、差込プラグが第1の保持位置に保持されているか、第2の保持位置に保持されているかを装置の外部から容易に識別することができる。これによって、差込プラグがガス供給ソケットに保持された状態が、ガスの供給または吸引力が阻止されている状態であるか、ガスが供給されまたは吸引力が導かれている状態かを、この表示手段の表示によって容易かつ確実に認識することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る医療用ガス配管接続装置によれば、医療用ガスまたは吸引力の使用の度に、差込プラグを保管位置から取り出し、ガス供給ソケットに差込むような煩わしい作業が不要とされ、差込プラグの操作を簡略化して治療作業の効率化を図ることができる。たとえば医療用ガスまたは吸引力を使用しないときには、差込プラグを前記第1の保持位置に保持した状態とし、医療用ガスまたは吸引力の使用時に、前記第1の保持位置で保持されている差込プラグをさらに押し込み操作することによって、医療用ガスまたは吸引力の供給が可能となるため、治療態様によって、医療用ガスの使用が頻繁に繰返されるような場合に、その抜差し操作が簡略化される点は特に有効であり、実益が大である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施態の医療用ガス配管接続装置1の縦断面図である。
【図2】図1におけるガス供給ソケット2の矢符II方向から見た正面図である。
【図3】ソケット部8から係止ピン27〜30を離脱させた状態を示す分解斜視図である。
【図4】作動リング19の縦断面図である。
【図5】ロック手段33の作動原理を説明する図であり、図5(a)は差込プラグ3の挿入途中の状態を示し、図5(b)は差込プラグ3が第1の位置に保持された状態を示し、図5(c)は差込プラグ3が第2の位置に保持された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の医療用ガス配管接続装置1を示す縦断面図であり、図2は図1におけるガス供給ソケット2を矢符II方向から見た正面図であり、図3はソケット部8から係止ピン27〜30を離脱させた状態を示す分解斜視図である。図示の医療用ガス配管接続装置1は、大略的に病室壁部に設置された筐体に収容されるガス供給ソケット2と、前記ガス供給ソケット2に着脱自在に装着される差込プラグ3とによって構成される。このように、前記病室壁部に、図示の医療用ガス配管接続装置1を直接設ける構成に代えて、本発明の他の実施形態では、前記医療用ガス配管接続装置1を、他の医療用ガス配管接続装置や電気配線接続装置とともに並べてユニット化して前記病室壁部に設置してもよい。
【0019】
ガス供給ソケット2は、ガスの流入口4および排出口5を備えたソケット本体6と、前記ソケット本体6内に、前記排出口5の軸線Lに沿って弾発的に付勢された状態で設置された弁体7と、前記排出口5にその軸線Lに同軸に連接されて前記差込プラグ3を気密的に差込み可能とされる筒状のソケット部8とを含む。
【0020】
前記ソケット本体6は、前記病室壁部に固定される基体9と、この基体9に固着されたケーシング10とを備え、基体9とケーシング10によって実質的に弁箱を構成する。ケーシング10は、ケーシング本体41と、ケーシング本体41内に収容される球状の弁体42と、弁体42によって開閉される弁孔43を有するホルダ44と、弁孔43を外囲するようにホルダ44に装着される環状のシール部材45と、弁体42をシール部材45に向かってばね付勢するばね46とを有する。
【0021】
前記弁体42は、金属または合成樹脂からなる。前記シール部材45は、可撓性および断発性を有する材料、たとえばゴム、合成ゴムまたは合成樹脂からなる断面円形の部材であり、Oリングによって実現される。このようなシール部材45は、弁体42が着座する弁座を構成する。前記ばね46は、圧縮コイルばねによって実現され、弁体42をシール部材45に着座した状態に保つ。これらの弁体42、ホルダ44、シール部材45およびばね46を含んで、前記弁体7よりもガスの流れ方向上流側、すなわち供給源11側に、流路開閉手段が構成される。
【0022】
ケーシング本体41は、弁体42およびばね46が収容され、ホルダ44がシール部材45とともに装着される弁室47を規定する基部48と、弁室47に軸線方向に連通する嵌合空間49を規定する円筒状の筒部50とを有する。基部48にはまた、前記管継手40が溶接またはパッキングされて気密に接続される接続孔51と、接続孔51と弁室47とを連通する通路52とが形成される。
【0023】
前記筒部50の内周部には、内ねじが刻設された内ねじ部60が形成され、前記ソケット本体6には、外ねじが刻設された外ねじ部61が形成される。ソケット本体6の外ねじ部61は、ケーシング10の内ねじ部60に螺合し、ソケット本体6がケーシング10に着脱可能に取付けられる。ケーシング10とソケット本体とは、それらの間に介在される環状のシール部材68によって、気密に接続される。シール部材68は、Oリングからなる。
【0024】
フィルタ12には、弁座リング64が螺着され、ゴム製のパッキン15aとともにソケット本体6の取付孔66に収容され、ナット67によって抜止めされる。ナット67は、外周部に外ねじが刻設された外ねじ部62を有し、この外ねじ部62は前記ソケット本体6の内周部に内ねじが刻設された内ねじ部63に螺合し、フィルタ12がソケット本体6に着脱可能に取付けられる。
【0025】
フィルタ12は、たとえば金属粉末を焼結した多孔質材料からなり、直円筒状の筒部12aと、筒部12aの軸線方向一端部を塞ぐ底部12bと、底部12bから軸線方向外方に突出して形成される円柱状の突起12cと、筒部12aの軸線方向他端部から半径方向外方に突出するフランジ12dとを有する。これらの筒部12a、底部12b、突起12cおよびフランジ12dは、一体的に形成される。フィルタ12のフランジ12dは、ソケット本体6の内ねじ部63に螺着されたナット67によって押圧されて抜止めされる。
【0026】
ケーシング10には、前記流入口4を有する管継手40が設けられており、この管継手40に接続されたチューブなどの管体を介して所定ガスの供給源11がケーシング10に接続されて、ケーシング10内に供給源11からの所定ガス圧で酸素、空気、笑気などの医療用ガスが導入され、また汚物などを吸引するための吸引力が導かれている。
【0027】
前記ケーシング10内には、フィルタ12が前述のように設置され、このフィルタ12の底部12bには、圧縮ばね13の基端部が当接して支持され、圧縮ばね13の先端部には、前記弁体7が装着される。弁体7は、フィルタ12に保持された圧縮ばね13によって、前記軸線Lに沿って前記排出口5に向かって弾発的にばね付勢されている。弁体7の先端部側には、Oリング7aが装着され、弁体7が弾発的に付勢された状態で、このOリング7aが前記排出口5の内周縁部に形成された弁座部5aに弾発的に当接し、これによって排出口5が閉鎖状態とされる。
【0028】
前記ソケット本体6における前記排出口5と、前記ソケット部8の筒部73との間には、挿入筒部8bよりも内径が小さく、差込プラグ3の円筒状の先端部3cが軸線Lと平行に挿入自在でかつパッキン15を挿入方向下流側(図1の左側)から装着されて保持する絞り部14が形成され、この絞り部14の内周部に差込まれた差込プラグ3との間の気密性を保つため、絞り部14と弁座リング64との間にはパッキン15aが装着されている。ソケット部8は、前記ソケット本体6に対し、前記排出口5および絞り部14と同軸に固着され、その排出口5とは反対側の開口部が差込口8aとされ、この差込口8aを介して着脱自在に差込プラグ3が差込み可能とされている。
【0029】
図4は作動リング19の縦断面図である。前記作動リング19には、その先側より前記排出口5側に向かって軸線Lを含む仮想一平面に関して離反する方向に傾斜して形成された長孔状の第1のガイド孔15,16,17,18が形成されている。これらの第1のガイド孔における一方のガイド孔15,16の対は、その長手軸線が互いに平行で、かつ同形および同じ大きさに形成され、他方のガイド孔17,18の対は、前記ガイド孔15,16の対と前記軸線Lを含む仮想一平面に関して面対称に、前記ソケット部8の周壁に形成されている。
【0030】
前記ソケット部8には、前記軸線Lに沿ってスライド可能に作動リング19が外装されており、この作動リング19には、カバーリング20が一体に固着されている。このカバーリング20と、前記基体9との間には圧縮ばね22が圧縮状態で装着され、これによって作動リング19がカバーリング20とともに、軸線Lに沿ってソケット部8の先端部に向けて弾発的にばね付勢された状態とされている。
【0031】
ソケット部8の周壁部には、前記軸線Lを含む仮想一平面に対して垂直でかつ離反する方向に延びる長孔状の第2のガイド孔23,24,25,26が形成されている。これらの第2のガイド孔23〜26における一方のガイド孔23,24の対は、その長手軸線が互いに平行で、かつ同形および同じ大きさに形成され、他方のガイド孔25,26の対は、前記ガイド孔23,24の対と前記軸線Lを含む仮想一平面に関して面対称に前記作動リング19の周壁に形成されている。そして、軸線Lに沿って隣り合う前記第1のガイド孔15,16;17,18と、第2のガイド孔23,24;25,26とは、同じピッチとされ、かつ、作動リング19に対して軸線L方向に外力を付与しない状態においては、各第1のガイド孔15,16;17,18および第2のガイド孔23,24;25,26の前記軸線Lに近い部分が、図1に示すように側面視した状態で、紙面に垂直な方向にそれぞれが連通するように形成されている。
【0032】
前記作動リング19にはまた、周方向に180°間隔をあけて軸線L方向に延びる一対の案内長孔71a,71bが形成される。各案内長孔71a,71bには、ソケット部8の周壁部に軸線Lに垂直な軸線を有するビス72a,72bがそれぞれ嵌まり込み、作動リング19が軸線L方向に移動可能な状態で抜止めされる。
【0033】
前記のように、第1のガイド孔15,16,17,18および第2のガイド孔23,24,25,26がオーバーラップする部分には、断面が平行四辺形の棒状係止ピン27,28,29,30が、その両端部が挿入された状態で保持されている。これらの係止ピン27,28,29,30は、図1の紙面に垂直な軸線Lを含む仮想一平面に関して互いに近接する方向にばね付勢され、後述の係合溝33とともにロック手段を構成する。そして、前記挿通保持状態では、各係止ピン27,28,29,30の一部がソケット部8の内壁面から軸線Lを含む仮想一平面側、すなわち内方に突出した状態とされる。他の実施形態では、前記係止ピン27,28,29,30は、断面が円形であってもよい。
【0034】
前記差込プラグ3は、中空の筒状体からなり、断面が円柱状のグリップ部3aと、このグリップ部3aの先側(差込側)には差込プローブ3bが連接され、差込プローブ3bの先端側は先細りの円錐台状部3gを経て直円筒状の先端部3cが一体的に形成され、この先端部3cにはガスの流入口3dが形成されている。前記先端部3cが弁体7の環状部分7bをパッキン15aとともに押圧する位置まで差込プラグ3が差込まれ、前記ロック手段33によって、この位置に保持された状態では、先端部3cによって前記弁体7が前記圧縮ばね13の弾発力に抗して押圧され、これによって、弁体7が後退し、排出口5が開放される。なお、供給源11側の弁体42はフィルタ12の突起12cによってシール部材45から離間した状態で支持され、常開の状態に設定されている。前記下流側の弁体7が前述のように差込プラグ3によって押圧されて開弁されることによって、ケーシング10内の医療用ガスが、排出口5および流入口3dを経て差込プラグ3内の通路3eに供給される。
【0035】
前記グリップ部3aの基端側には、図示しない可撓管の一端部が接続され、この可撓管の他端部に装着された治療器具、たとえば、酸素マスクなどに医療用ガスが導かれて放出され、所定の治療に供される。前記ソケット部8の絞り部14は、前記差込口8aに連なり、前記グリップ部3aが挿入される挿入筒部8bが形成され、この挿入筒部8b内には断面円形に形成された前記ロック手段33の作動空間8cが形成される。
【0036】
前記第1のガイド孔15,16の前記差込方向側近傍部位における前記ソケット部8の周壁部には、光軸が係止ピン27,28と平行な光センサ34,35が埋設されている。光センサ34,35は、発光部と受光部とからなる、たとえばフォトインタラプタなどの公知の光センサによって実現することができ、前記ソケット部8の周壁における係止ピン27,28と平行な対向位置に各一対の発光部と受光部とがそれぞれ対向して埋設されている。図1では、発光部と受光部のうちの一方のみを図示している。
【0037】
前記カバーリング20は、図2に示すように、表面に酸素ガス用であることを明示するための識別符36が印刷されている。また、2個所のカット面には、発光色の異なる発光ダイオード(Light Emitting Diode:略称LED)からなる表示手段としての表示部37,38が設けられている。この表示部37,38は、前記光センサ34,35の検出信号に基づき、たとえば、一方の表示部37が点灯している場合は、差込プラグ3が後記する第1の位置にあることを示し、他方の表示部38が点灯している場合は、同じく第2の位置にあることを示すよう構成される。なお、表示部を1個とし、前記2種の位置に応じて発光色を変えるようにしたり、あるいは、「ガス閉」(第1の保持位置)や「ガス開」(第2の保持位置)などのような具体的な文字による表示形態とすることも可能である。
【0038】
前記カバーリング20の中央部には、円形孔20aが形成され、この円形孔20aから前記ソケット部8の端部が露出している。ソケット部8の差込口8aからは、これに続く前記挿入筒部8b、作動空間8c、その奥の前記絞り部14、弁体7および係止ピン27,28;29,30などが視認される。前記差込プラグ3をガス供給ソケット2に差込む際は、図1に示す矢符II方向に沿って、前記先端部3cから前記ソケット部8の差込口8aに差込む。そして、グリップ部3aを、前記挿入筒部8bに整合するように嵌入させる。差込プラグ3が酸素ガス用でない場合は、差込プラグ3のグリップ部3に周方向に位置を違えて複数(本実施形態では2)のピン76a,76bが設けられ、ソケット部8には複数(本実施形態では2)のピン孔75a,75bを周方向に位置を違えて設け、各ピン76a,76bおよびピン孔75a,75bの周方向の位置によって医療用ガスの種類または吸引力に対する差込プラグ3およびガス供給ソケット2の誤装着を防止するように構成されるので、異なった種類の差込プラグが誤ってソケット部8に誤装着されることはない。
【0039】
次に、差込プラグ3をガス供給ソケット2に差込む際、あるいは、取外す際におけるロック手段33の挙動、および、前記第1および第2位置での保持状態について、図5(a)〜図5(c)を参照して説明する。図1ならびに図5(a)〜図5(c)に示すように、ロック手段33を構成する係止溝部32は、差込プラグ3の外周部に軸線Lを中心に形成された環状の凹溝であり、前記作動空間8cの内径より小とされている。
【0040】
このように差込プラグ3を、図1に示す状態から、矢符II方向に軸線Lに沿って、ソケット部8に差込んでゆくと、係止溝部32が、係止ピン27(または29)のソケット部8内に突出する部分に近接する位置に達する。そのまま、強く差込プラグ3を差込めば、前記圧縮ばね22の弾発力に抗して、作動リング19をソケット本体6側に押しやり、これとともに下流側の係止ピン27,29が係止溝部32に嵌まり込み、係止ピン27(または29)が、第2のガイド孔23(または25)および第1のガイド孔15(または17)の規制作用を受けて、第1のガイド孔15(または17)の長手方向に沿ってソケット本体6側に移動する。このとき係止ピン28(または30)も同様に、第1のガイド孔16(または18)の長手方向に沿って移動する。このようなカバーリング20の押込み操作によって、前記圧縮ばね22の圧縮を伴いながら作動リング19がソケット部8の外周に沿ってソケット本体6側にスライド移動する。
【0041】
作動リング19のスライド移動に伴い、第2のガイド孔23,24,25,26および第1のガイド孔15,16,17,18の複合した規制作用を受けて、係止ピン27,28,29,30が、第1のガイド孔15,16,17,18内を摺動移動して、ソケット部8の周壁部内に埋入するようになり、ソケット部8の内壁面から突出する部分がない状態となる。したがって、差込プラグ3の差込みに障害となるものがなくなり、そのまま、係止溝部32が、図5(a)に示すように、第1のガイド孔15(または17)よりも差込み方向II上流側に位置するまで差込プラグ3がスムースに差込まれる。
【0042】
この状態では、圧縮ばね22の圧縮復元力により、カバーリング20とともに作動リング19が、元の位置に戻り、これに伴い、係止ピン27,28,29,30が、第2のガイド孔23,24,25,26および第1のガイド孔15,16,17,18の複合した規制作用を受けて、図5(a)に示すように一部がソケット部8の内壁面より内方に突出する位置に復帰する。
【0043】
この状態から差込プラグ3をさらに差し込むと、図5(b)に示すように、係止ピン27,29係止溝部32に嵌まり込み、その規制作用によって、差込プラグ3が軸線Lに沿った引抜き方向への移動が阻止された状態に保持され、この保持位置が第1の位置とされる。この第1の位置に保持された状態では、差込プラグ3の先端部3cは、まだ前記弁体7に当接しておらず、前記排出口5は閉鎖されたままである。通常の使用状態では、この第1の位置に差込プラグ3を保持させた状態が待機状態とされる。
【0044】
そして、ガスの供給が必要となったとき、あるいは吸引力を導入するときには、図5(b)の状態から差込プラグ3をさらに押込むと、前述と同様に、係止ピン27,28,29,30がソケット部8の周壁内に退避し、前記先端部3cが弁体7に当接する位置に達する。この当接した状態で、差込プラグ3を前記圧縮ばね13の弾発力に抗して押込むと、弁体7が後退して前記Oリング7aが弁座5aから離れ、排出口5が開放される。
【0045】
この状態では、圧縮ばね22の圧縮復元力によって、カバーリング20とともに作動リング19が元の位置に戻り、これに伴い、係止ピン27,28,29,30が、第2のガイド孔23,24,25,26および第1のガイド孔15,16,17,18の複合した規制作用を受けて、図5(c)に示すように一部がソケット部8の内壁面より突出する位置に復帰する。
【0046】
また係止溝部32が係止ピン28(または30)の間に位置し、また、係止溝部32が係止ピン28(または30)のソケット本体6側部分に近接して位置する。係止ピン28(または30)の係止溝部32に対する規制作用によって、差込プラグ3が軸線Lに沿った前後いずれの方向へも移動が阻止された状態に保持され、この保持位置が第2の保持位置とされる。このとき、供給源11側の弁体42は、ガス供給ソケット2が組み立てられた状態において、シール部材45から離反して開弁状態に設定されている。したがって差込プラグ3を挿入して弁体7が押圧されると、ガスが弁体7と弁座5aとの間の弁孔を経て、差込プラグ3内のガス管路から所定の治療対象部位に導かれて使用される。
【0047】
また、カバーリング20を押圧操作すると、差込プラグ3の挿入方向下流側(図1の左側)の係止ピンの係止溝部32へ係止状態が解除して、差込プラグ3をガス供給ソケットから取り外すと、弁体7はばね力によって閉鎖し、ガスの流出が遮断される。
【0048】
図5(b)に示すように、差込プラグ3が第1の保持位置にあるときは、係止溝部32が光センサ34の光路を遮断し、また、他方の光センサ35はその光路が遮断されていない状態であり、受光部によるこの2種の検出信号により、前記表示部37,38において、差込プラグ3が第1の保持位置に保持されていることを表示させることができる。また、図5(c)に示すように、差込プラグ3が第2の位置にあるときは、係止溝部32によって、両光センサ34,35の光路が遮断された状態であり、受光部によるこの2種の検出信号により、前記表示部37,38において、差込プラグ3が第2の保持位置に保持されていることを表示させることができる。
【0049】
したがって、術者は、この表示部37,38の表示状態を見て、差込プラグ3が第1および第2のいずれの位置に保持された状態か、また、ガスの供給が阻止されている状態か、供給がなされている状態かの識別判断を簡易に行うことができる。また、差込プラグ3の差込操作を、この表示部37,38を見ながら行うようにすれば、差込プラグ3を所望の第1および第2のいずれかの位置に的確に保持させることができる。
【0050】
差込プラグ3を取り外す際は、カバーリング20を前記と同様に押込み操作して、係止ピン27,28,29,30をソケット部8の周壁部内に退避させるようにすれば、極めて簡易に引き抜き操作を行うことができる。このとき、図5(c)の第2の保持位置から、図5(b)の第1の保持位置にまで差込プラグ3を取り外し、この位置で保持させようとする場合、前記と同様に表示部37,38を見ながらこれを行うようにすれば、この位置設定が的確になされる。また、差込プラグ3の取外し操作の際、係止溝部32から先端部3cにわたって形成される円錐台状部3gの外周面の傾斜角度αが各係止ピン27,28,29,30の摺動面の傾斜角度θよりも緩やかであるから、カバーリング20の押し込み操作によって係止ピン27,28,29,30差込プラグ3から退避させ、差込プラグ3を円滑に引抜いて取り外すことができる。
【0051】
なお、実施形態では、ロック手段33を構成する係止ピン27,28および29,30がソケット部8の対向位置に設けられている例について述べたが、これに限らず、ソケット部8の周方向の適宜位置に配するようにしてもよい。また、係止ピン27〜30と、係止溝部32とからロック手段33が構成される例について述べたが、これに代えて、ソケット部8の周壁部にその内壁面より弾発的に出没可能に設けられた複数のボールと、係止溝部32との組合せにより構成することも可能であり、またロック部材を係止ピンとボールとの組合せによって構成することも可能である。
【0052】
さらに、表示部37,38をカバーリング20に設けた例について述べたが、医療用ガス配管接続装置1の近傍の病室壁部や、前述のように他の接続装置とともに医療用ガス配管接続装置1がユニット化されている場合は、ユニットフレームなどに設けるようにしてもよい。また、前記位置検出のための光センサ34,35に代えて、他の機械的センサ、磁気的センサあるいは電気的センサを用いることも可能である。
【0053】
前述の実施形態では、長手方向に垂直な断面が平行四辺形の係止ピン27〜30について述べたが、本発明の他の実施形態では、これに限るものではなく、その他の形状、例えば鉤状の断面を有する棒状態であってもよく、断面が四角形であってもよく、その他の多角形であってもよい。さらに差込プラグ3のグリップ部3に周方向に位置を違えて複数(本実施形態では2)のピン76a,76bを設け、ソケット部8には複数(本実施形態では2)のピン孔75a,75bを周方向に位置を違えて設け、各ピン76a,76bおよびピン孔75a,75bの周方向の位置によって医療用ガスの種類または吸引力に対する差込プラグ3およびガス供給ソケット2の誤装着を防止するように構成されてもよい。また、各ピン76a,76bおよび各ピン孔75a,75bが嵌合する構成に代えて、ソケット部8の挿入筒部8bの内周形状および差込プラグ3の差込プローブ3bの外周形状を、ガスの種類または吸引力に応じて軸直角断面が四角形、六角形などの多角形、円形、楕円形などに異ならせて、形状が一致する差込プラグ3だけが差し込み可能とし、誤装着を防止するようにしてもよい。
【0054】
本発明のさらに他の実施形態では、ソケット部8をケーシング10に装着すると、弁体42が変位して弁孔43を開放し、ソケット部8をケーシング10から離脱させると、前記圧縮ばね46を設けずにガス供給源11からのガス圧によって前記弁孔を閉鎖するように設定圧力等に作動するように構成されてもよい。
【0055】
このような流路開閉手段によって、ソケット部8をケーシング10に装着すると、弁孔43を開放し、ソケット部8をケーシング10から離脱させると、ガス供給源11からのガス圧によって前記弁孔43を閉鎖することができ、前記弁孔43を開閉するための弁体など部品を閉弁状態に保持するばねを必要とせず、部品点数を削減して、ガス供給ソケットの構成を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 医療用ガス配管接続装置
2 ガス供給ソケット
3 差込プラグ
4 ガスの流入口
5 ガスの排出口
6 ソケット本体
7,42 弁体
8 ソケット部
15,16,17,18 第1のガイド孔
23,24,25,26 第2のガイド孔
27,28,29,30 係止ピン
32 係止溝部
33 ロック手段
37,38 表示部
L 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病室壁部に設置され、ガス供給源からガスが導かれ、または吸引力が導かれるガス供給ソケットと、前記ガス供給ソケットに着脱自在に装着される差込プラグとを含む医療用ガス配管接続装置であって、
前記ガス供給ソケットは、
ガスの流入口および排出口を備えたソケット本体と、
前記ソケット本体内に、前記排出口の軸線に沿って弾発的に付勢された状態で設置され、この状態で前記排出口を封止し、前記弾発的に付勢する力に抗する力が作用したときには、前記弾発的に付勢される方向とは逆方向に移動して前記排出口を開くように作動する弁体と、
前記排出口にその軸線方向に同軸に連接されて前記差込プラグを気密的に差込み可能とされる筒状のソケット部とを含み、
前記ソケット部および差込プラグには、前記軸線方向に沿った2個所の異なる保持位置で、差込まれた前記差込プラグを保持するロック手段が設けられ、
前記ロック手段による2個所の異なる保持位置は、前記ソケット部に差込まれた差込プラグを、その先端が前記弁体に接触しない位置に保持する第1の位置と、前記ソケット部に差込まれた差込プラグを、その先端が前記弁体を前記弾発的に付勢される力に抗して押圧し、前記排出口を開放して前記ソケット本体内のガスが前記排出口を経て差込プラグ内に流入し得る状態に保持する第2の位置とに設定されることを特徴とする医療用ガス配管接続装置。
【請求項2】
前記ロック手段は、前記ソケット部の周壁部に一半径線方向に移動自在にかつ前記ソケット部の軸線に近接する方向に弾発的に付勢された状態で、一部が前記ソケット部の内壁面から内方に突出するよう保持された2つのロック部材と、前記差込プラグの外周部に形成され、前記2つのロック部材における前記内壁面から内方に突出する部分に係合可能な係合溝部とによって構成されることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガス配管接続装置。
【請求項3】
前記ガス供給ソケットは、前記ソケット部が着脱可能に接続されるケーシングを有し、前記ケーシングには、前記差込プラグによって押圧される弁体よりもガスの供給方向上流側に設けられ、前記ソケット部を前記ケーシングに装着すると、弁孔を開放し、前記ソケット部を前記ケーシングから離脱させると、ガス供給源からのガス圧によって前記弁孔を閉鎖する流路開閉手段が設けられることを特徴とする請求項2に記載の医療用ガス配管接続装置。
【請求項4】
前記ガス供給ソケットには、前記差込プラグの前記2個所の保持位置での差込保持状態を識別表示する表示手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の医療用ガス配管接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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