説明

医療用スタンド

【課題】ポンプ台を外す操作を必要とせずに、医療用ポンプの向きを容易に変更できる医療用スタンドを提供すること。
【解決手段】支柱部2とポンプ台3とを備えた医療用スタンド1であって、支柱部2は、第1部分7と2つの第2部分8とを有し、また、第1部分7に取り付けられたポンプ台3には、医療用ポンプ101が着脱自在に取り付けられるポンプ取付部19が設けられており、第1部分7の軸方向に摺動可能とした。また、第1部分7の外周面には突起12が、ポンプ台3の内周面には当該軸方向に延在した複数の溝16が設けられており、突起12は、ポンプ台3の当該軸方向への摺動可能範囲の一部においてのみ複数の溝16のうち任意の1つと係合してポンプ台3の回転を規制し、摺動可能範囲の一部以外では複数の溝16のいずれとも係合しないためにポンプ台3の回転を許容する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ポンプやシリンジポンプのような人体に薬剤等の注入を行う医療用ポンプが取り付けられる、医療用スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用スタンドに関する技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された医療用スタンドは、スタンドポール310又はサブスタンドポール316に取り付けられた2種類の置き台305、320に、輸液ポンプ1が固定されたものであり、複数の輸液ポンプを一つの置き台に設置できるとともに、輸液ポンプを容易に置き台に着脱できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−137680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された医療用スタンドにおいては、置き台305では、背面側に設けられた金属製の部材355とジョー325とでサブスタンドポールを挟み、ノブ326を回転させることで、この置き台をサブスタンドポールに固定している。そのため、医療用ポンプの向き(即ち、置き台の向き)を変更したい場合には、ノブを緩み方向に回転させる必要があり、作業が煩雑となる問題がある。また、置き台320においても、置き台がスタンドポールの上端に固定されているので、医療用ポンプの向き(即ち、置き台の向き)の変更は困難である。
【0005】
特に、重篤患者などの場合には、複数の医療用ポンプが医療用スタンドに取り付けられることが多く、例えば、患者をベッドに乗せたまま、病棟や手術室、ICU等を行き来させる際には、廊下等の壁に接触するなどして邪魔となる医療用ポンプを置き台(以下、ポンプ台と記載する。)ごと一旦全て取り外し、再度取り付ける必要が生じ、その作業が非常に負担となる問題がある。そのため、医療用ポンプの向きを容易に変更できる手段の構築が切望されていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、医療用ポンプの向きを容易に変更できる医療用スタンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の医療用スタンドは、支柱部と、前記支柱部に装着されたポンプ台とを備えた医療用スタンドであって、前記支柱部は、断面外形形状が円形である第1部分と、前記第1部分よりも外径が大きく且つ前記第1部分を軸方向に挟むように接続された断面外形形状が円形である2つの第2部分とを有し、前記ポンプ台には、医療用ポンプが着脱自在に取り付けられるポンプ取付部と、前記第1部分の外径よりも大きく前記第2部分の外径よりも小さい内径を有し、且つ、前記ポンプ台を前記軸方向に貫通する貫通孔とが設けられており、前記ポンプ台の前記貫通孔が設けられた領域の前記軸方向への厚さが前記第1部分の長さよりも短く、前記第1部分が前記貫通孔を貫くように前記支柱部に取り付けられた前記ポンプ台が、前記軸方向に沿って摺動可能となっており、前記第1部分の外周面及び前記貫通孔を画定する前記ポンプ台の内周面の一方及び他方には、それぞれ、突起及び前記軸方向に延在した複数の溝の一方及び他方が設けられており、前記突起は、前記ポンプ台の前記軸方向への摺動可能範囲の一部においてのみ前記複数の溝のうち任意の1つと係合して前記ポンプ台の回転を規制し、前記摺動可能範囲の前記一部以外では前記複数の溝のいずれとも係合しないために前記ポンプ台の回転を許容することを特徴とするものである。
【0008】
この構成によると、ポンプ台の摺動可能範囲の一部以外では複数の溝と突起とが係合しないので、ポンプ台を軸方向に摺動させるだけで自在に回動させることができる。さらに、複数の溝のうち突起に係合させたい溝を選んで係合させることで、ポンプ台の向きを変えた状態でポンプ台の回転を規制することができる。したがって、ポンプ台を支柱部から取り外す操作をすることなくポンプ台の向きを変更することが可能となる。
【0009】
また本発明において、前記支柱部は、複数の前記第1部分と複数の前記第2部分とを有し、前記複数の第1部分のうち、両端に前記第2部分が接続された第1部分については、前記両端に接続された2つの前記第2部分のうち、少なくとも一方の第2部分が着脱自在に接続されていることが好ましい。
【0010】
この構成によると、支柱部には第1部分が複数形成されることとなり、ポンプ台の取り付け高さを選択又は変更できる。また、第1部分と第2部分との少なくとも一部が着脱自在に接続されているので、ポンプ台の着脱を容易に行うことができる。
【0011】
また本発明において、前記第1部分及び前記第2部分を1つずつ有する2本以上の棒状部材が、前記第1部分と前記第2部分とが交互となるように前記軸方向に着脱自在に接続されたものであることが好ましい。
【0012】
この構成によると、第1部分と第2部分とを接続する工程数が減り、支柱部を容易に組み立てることができる。
【0013】
また本発明において、前記第1部分の一部を別の前記棒状部材の前記第2部分に差し込むことが可能なように、前記第2部分に円筒領域が設けられており、前記棒状部材には、接続された前記棒状部材同士の回転防止機構及び抜け止め機構が設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によると、第1部分と第2部分とが相対的に回転してしまうことを防止できるとともに、第1部分と第2部分とが予期せずに外れてしまうことを防止できる。
【0015】
また本発明において、前記回転防止機構は、前記第1部分の先端に設けられた凹部と、この凹部と係合するように前記第2部分内に配置されたピンとを含んでいることが好ましい。
【0016】
この構成によると、簡単な構造で、第1部分と第2部分とが相対的に回転してしまうことを防止できる。
【0017】
また本発明において、前記抜け止め機構は、前記第1部分の外周面に設けられた穴と、前記穴内に配置された硬質部材と、前記硬質部材を外向きに付勢して前記硬質部材の一部を前記穴から突出させる弾性部材と、前記第2部分の前記円筒領域の内周面に設けられた穴とを含んでおり、前記硬質部材が前記第2部分の前記円筒領域の内周面に設けられた穴に係合することが好ましい。
【0018】
この構成によると、簡単な構造で、第1部分と第2部分とが予期せずに外れてしますことを防止できる。なお、抜け止め機構を構成する第1部分の外周面に設けられた穴及び第2部分の円筒領域の内周面に設けられた穴は、凹部及び孔部のいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の医療スタンドによれば、ポンプ台の摺動可能範囲の一部以外では複数の溝と突起とが係合しないので、ポンプ台を軸方向に摺動させるだけで自在に回動させることができる。さらに、複数の溝のうち突起に係合させたい溝を選んで係合させることで、ポンプ台の向きを変えた状態でポンプ台の回転を規制することができる。したがって、ポンプ台を支柱部から取り外す操作をすることなくポンプ台の向きを変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る医療用スタンドの概略図である。
【図2】図1に示した支柱部とポンプ台との接続部分Aの縦断面図である。
【図3】(a)は図1に示したポンプ台の斜視図であり、(b)は(a)の正面図である。
【図4】(a)は図2のIVA−IVA断面図であり、(b)は図2の要部拡大図である。
【図5】図4(a)に示したポンプ台の向きを時計回りに45°変更したときの図4(a)のIVA−IVA断面に相当する断面図である。
【図6】図6(a)は、溝の第1変形例を示す断面図であり、(b)は溝の第2変形例を示す断面図である。
【図7】(a)は第1部分と第2部分との接続前の状態を示した要部断面図であり、(b)は第1部分と第2部分との接続後の状態を示した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(医療用スタンドの構造)
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係る医療用スタンド1の概略図である。医療用スタンド1は、図1に示すように、支柱部2、ポンプ台3、フック4、脚部5及びキャスター6を有している。ポンプ台3は支柱部2に装着され、ポンプ台3には医療用ポンプ101が着脱自在に取り付けられる。フック4には薬剤等が入った輸液バッグ102が吊り下げられ、医療用ポンプ101と輸液バッグ102とはチューブ103で接続されている。チューブ103は医療用ポンプ101からさらに延びて図示しない患者等に接続され、薬剤等が医療用ポンプ101により患者等に注入される。なお、脚部5とキャスター6は必要に応じて設置されるものであり、医療用スタンド1は、支柱部2がベッド脇に差し込まれて使用されてもよい。
【0022】
支柱部2は、第1部分7及び第2部分8を1つずつ有するように第1部分7と第2部分8とが一体に形成された複数の棒状部材2aからなり、第1部分7と第2部分8とが交互となるように第1部分7の軸方向に着脱自在に接続されて構成される。棒状部材2aを順次接続すると上端及び下端の一方が第1部分7となるので、本実施形態においては、その第1部分7の一端に第2部分8を単独で配置している(図1、上端の第2部分8)。ただし、上端及び下端の一方が第1部分7となっていても構わない。また、棒状部材2aは上方に第1部分7を有し下方に第2部分8を有しているが、上方に第2部分8を有し下方に第1部分7を有していてもよい。また、第1部分7と第2部分8は、各々別個の部材とすることもできるが、棒状部材2aとした方が、支柱部2の組立時の工程数が減り、支柱部2の組立てが容易となる。
【0023】
図2は、図1に示した支柱部2とポンプ台3との接続部分Aの縦断面図である。支柱部2は、円柱形状の第1部分7と、この第1部分7の外径よりも内径及び外径が大きい円筒形状の第2部分8とが交互に接続されて構成される。なお、図2において、第1部分7の下端側に設けられた第2部分8を第2部分8aとも記載し、第1部分7の上端側に設けられた第2部分8を第2部分8bとも記載する。第1部分7と第2部分8aとは、第1部分7の下端側が第2部分8aに差し込まれた後、ねじ9により接続されて、棒状部材2aを形成している。また、第1部分7と第2部分8bとは、第1部分7の上端側が第2部分8bに差し込まれた後、後述する抜け止め機構10により着脱可能に接続されている。このように第1部分7の一部を第2部分8に差し込むことで支柱部2が構成されているため、支柱部2の外観としては、第1部分(第1部分7のうち第2部分8で被覆された領域以外の領域(面11に相当する領域))と第2部分8とが軸方向に交互に設けられていることになる。
【0024】
また、第1部分7の上端には、凹部13が設けられている。凹部13は、第1部分7の上端面において、第1部分7の軸方向と直交する方向に上端面を貫くように延在している。凹部13の形状は、図2に示すように、第1部分7の側面から見て略半球形状である。また、第2部分8は内部にピン14を有している。ピン14は、凹部13の外径よりも小さい径を有した円柱形状であって、第2部分8の軸方向と直交方向に延在し、ピン14の両端部が第2部分8の内周面に固定されている。そして、第1部分7が第2部分8に差し込まれると、凹部13及びピン14は係合して、第1部分7と第2部分8とが相対的に回転することを防止している。なお、凹部13及びピン14は、係合して第1部分7と第2部分8とが相対的に回転することを防止するものであればこれらの形状に限られるものではなく、たとえば、矩形形状であってもよい。また、第1部分7の上端に凸部が設けられ、第2部分8の内部にこの凸部と係合する凹部を有した部材が固定配置されていてもよい。
【0025】
また、面11の下端部には、突起12が180°異なる位置に2箇所形成されている。突起12は、第1部分7に部分的に埋め込まれ、先端が面11から突出している。なお、突起12は、第1部分7と一体に形成されていてもよいし、2つの突起12が1本のピンの両端近傍であって、このピンが第1部分7に設けられた孔に挿入固定されていてもよい。
【0026】
また、第1部分7の外周面には、ポンプ台3が装着されている。ポンプ台3には、第1部分7の外径よりも大きく第2部分8の外径よりも小さい内径を有し且つポンプ台3を第1部分7の軸方向に貫通する貫通孔15が設けられており、第1部分7がこの貫通孔15を貫くように、ポンプ台3は装着されている。ここで、ポンプ台3の貫通孔15が設けられた領域の第1部分7の軸方向への厚さtは、面11の長さLよりも短くなっている。したがって、ポンプ台3は、長さLの範囲を第1部分7の軸方向に沿って摺動することが可能となる(以下、長さLの範囲を摺動可能範囲Lと記載する。)。また、この貫通孔15を画定するポンプ台3の内周面には、溝16が形成されており(図2に示したポンプ台3において、ハッチングが施されていない部分)、溝16は突起12に係合している。溝16については以降に詳しく説明する。
【0027】
(ポンプ台の構造)
次に、ポンプ台3の構造について図3を参照しつつ説明する。図3(a)は図1に示したポンプ台3の斜視図であり、(b)は(a)の平面図である。ポンプ台3は、金属板をコの字状に折り曲げて形成された本体部17と、本体部17とねじにより接続され、本体部17を補強支持する樹脂製のスペーサ18と、本体部17の側面にねじにより着脱自在に取り付けられる樹脂製のポンプ取付部19とを有している。前記した貫通孔15は、この本体部17とスペーサ18とを貫くように形成されている。また、ポンプ取付部19の中央部には、ねじ穴20が形成されており、ポンプ取付部19に医療用ポンプ101が着脱自在に取り付けられる。なお、スペーサ18やポンプ取付部19は金属製であってもよく、それぞれ本体部17と一体に形成されていてもよい。
【0028】
貫通孔15を画定するポンプ台3の内周面には、貫通孔15の軸方向に延在するように溝16が複数設けられている。溝16は、図3(b)に示すように、貫通孔15の中心を中心点として、一定の角度間隔を持って形成されており、その角度間隔を45°としている(即ち、溝16の数は8個)。この角度間隔は何度に設定してもよいが、この角度間隔がポンプ台3の取り付け向きの変更角度の間隔となるので、角度間隔が小さい方がよりポンプ台3の取り付け向きを細かく変更できる。角度間隔は少なくとも90°以下(即ち、溝16の数を4個以上)とすることが好ましい。
【0029】
次に、溝16の形状について説明する。図3(b)に示すように、溝16は各々同一形状であり、溝16の幅aは、第1部分7の下端部に設けられた突起12の幅c(図4(a)参照)よりも僅かに大きくなっており、溝16の奥行きbは、突起12の面11から突出した長さd(図4(b)参照)よりも大きくなっている。いずれも、溝16を突起12に係合させるためである。ここで、溝16の幅aの大きさを突起12の幅cよりも僅かに大きくしたのは、溝16を突起12に係合させたときのポンプ台3の回転方向へのがたつきを少なくするためである。
【0030】
また、溝16は、貫通孔15と同様に、ポンプ台3を貫くように形成されている。そのため、ポンプ台3を第1部分7の軸方向に摺動させる際に、上下どちら方向への摺動についても突起12がポンプ台3の軸方向への摺動の障害となることがない。したがって、ポンプ台3を第1部分7に着脱する際に、ポンプ台3の上端面3a及び下端面3bどちら側からでも着脱することができる。
【0031】
(ポンプ台の向きの変更方法)
次に、ポンプ台3の向きの変更方法について図4及び図5を参照しつつ説明する。図4(a)は図2のIVA−IVA断面図であり、図4(b)は、図2の要部拡大図である。また、図5は、図4(a)に示したポンプ台の向きを時計回りに45°変更したときの図4(a)のIVA−IVA断面に相当する断面図である。図4の状態においては、複数の溝16のうちの溝16aとこの溝に対向する溝16eが突起12に係合している。したがって、この状態においては、ポンプ台3の回転は規制されており、ポンプ台3は回転しない。
【0032】
この状態からポンプ台3を回動させるには、まず、ポンプ台3を摺動可能範囲Lの範囲内で摺動させる必要がある。図4の状態においては、ポンプ台3を第1部分7の軸方向に沿って上方(Y方向)に摺動させる。そうすると、溝16a及び溝16eと突起12との係合が外れて、ポンプ台3の回転が許容され、ポンプ台3を自在に回動させることができる。
【0033】
次に、ポンプ台3を回動させて、ポンプ台3を所望の向きに変更する。そして、ポンプ台3を再び摺動可能範囲Lの範囲内で摺動させて、即ち、図4の状態においては、ポンプ台3を第1部分7の軸方向に沿って下方(Y方向と逆方向)に摺動させて、複数の溝16のうち、当該所望の向きに最も近い溝16を突起12に係合させる。そうすると、ポンプ台3の回転は再び規制され、ポンプ台3の向きの変更が完了する。例えば、図5に示すように、溝16bとこの溝に対向する溝16fを突起12に係合させれば、図4の状態から、ポンプ台3の向きを時計周りに45°変更させることができる。また、突起12に係合させる溝をその他の溝(例えば溝16cや溝16d)とすれば、ポンプ台3の向きを時計回り又は反時計回りにさらに大きな角度で変更することができる。
【0034】
以上のように、ポンプ台3を第1部分7の軸方向に摺動させることで、ポンプ台3を自在に回動させたり、ポンプ台3の回転を規制することができるので、ポンプ台3を支柱部2から取り外す操作をすることなくポンプ台3の向きを変更することが可能となる。
【0035】
次に、前記したように、ポンプ台3を摺動可能範囲Lの範囲内で摺動させることで、ポンプ台3の回転を規制及び許容できる仕組みについて説明する。ポンプ台3の摺動可能範囲Lの範囲には、溝16と突起12とが係合する範囲が設けられており、この係合する範囲でポンプ台3の回転を規制している。ここで、この係合する範囲は、ポンプ台3の摺動可能範囲Lの一部としている。係合する範囲がポンプ台3の摺動可能範囲Lの全部としたのでは、ポンプ台3を摺動可能範囲Lの範囲内で摺動させても、溝16と突起12との係合が外れず、ポンプ台3を回動させることができないためである。したがって、面11の下端から、突起12の上端12aまでの長さX0は、摺動可能範囲Lとポンプ台3の厚さtとの差X1よりも短くなっている。また、摺動可能範囲Lの一部以外の範囲においては、溝16と突起12とが係合しないようになっており、ポンプ台3の回転が許容され、ポンプ台3を自在に回動させることができるようになる。したがって、ポンプ台3を摺動可能範囲Lの範囲内で摺動させることで、ポンプ台3の回転を規制及び許容できる。
【0036】
本実施形態においては、突起12を面11の下端部に設け、当該下端部で溝16と突起12を係合させているが、突起12を面11の下端部以外の領域に設け、当該下端部以外の領域で溝16と突起12を係合させてもよい。ただし、その場合、溝16と突起12との係合している状態でポンプ台3を支持しておく機構が別途必要になるので、突起12は、本実施形態のように面11の下端部に設けておくことが好ましい。なお、下端部とは、摺動可能範囲Lの一部(即ち、溝16と突起12が係合する範囲)が摺動可能範囲Lの下端を含む範囲を言う。
【0037】
また、溝16はポンプ台3を貫くように形成されているが、溝16の長さはポンプ台の厚さtの一部とされていてもよい場合がある。以下、当該場合について図6を参照しつつ説明する。図6(a)は、溝16の第1変形例を示す断面図であり、(b)は溝16の第2変形例を示す断面図である。これら2つの変形例は、突起12が下端部に設けられている場合の例である。図6(a)に示す変形例では、溝16は、ポンプ台3の下端面3bを含み、突起12の上端12aまで延在するように形成されている(即ち、溝16の長さは、面11の下端から突起12の上端12aまでの長さX2と同等である)。この変形例でも、溝16がポンプ台3を貫くように形成されている場合と比較して、ポンプ台3の回転を規制及び許容する効果は変わらない。なお、本変形例においても、面11の下端から突起12の上端12aまでの長さX2は、摺動可能範囲Lとポンプ台3の厚さtとの差X1よりも短くなっている。また、本変形例のさらなる変形例として、突起12が下端部以外に設けられていると共に、溝16がポンプ台3の上端面3aを含み、突起12の下端12bまで延在するように形成されていてもよい。
【0038】
また、図6(b)に示す変形例では、溝16が、ポンプ台3の下端面3bを含み、溝16の長さが面11の下端から突起12の上端12aまでの長さX3よりも短くなるように(即ち、溝16が突起12に係合するように(図6(b)参照)))形成されている。ただし、その場合には、ポンプ台3の下端面3bと面11の上端との間に新たに形成される摺動可能範囲L´の一部において、ポンプ台3の回転を規制し、摺動可能範囲L´の一部以外においては、ポンプ台3の回転を許容する必要がある。なお、本変形例においては、ポンプ台3の下端面3bから突起12の上端12aまでの長さX4は、摺動可能範囲L’とポンプ台3の厚さtとの差X5よりも短くなっている。
【0039】
さらに、本変形例のさらなる変形例として、突起12が下端部以外に設けられていると共に、溝16がポンプ台3の上端面3aを含み、溝16の長さ(不図示)が面11の上端端から突起12の下端12bまでの長さ(不図示)よりも短くなるように形成されていてもよい。ただし、その場合には、新たに形成される摺動可能範囲(不図示)の一部において、ポンプ台3の回転を規制し、摺動可能範囲(不図示)の一部以外においては、ポンプ台3の回転を許容する必要がある。
【0040】
(抜け止め機構)
次に、抜け止め機構10について図7を参照しつつ説明する。図7(a)は、第1部分7と第2部分8bとの接続前の状態を示した要部断面図であり、図7(b)は、第1部分7と第2部分8bとの接続後の状態を示した要部断面図である。抜け止め機構10は、第1部分7と第2部分8bとが予期せずに抜けないように固定する一方で、簡単な操作で固定を解除できるものであり、第1部分7の外周面に設けられたねじ穴21と、ねじ穴21に固定された弾性体機構22と、第2部分8bに設けられたストッパー機構23とから構成されている。弾性体機構22は、固定部24と、固定部24の一端から延在する弾性部材25と、弾性部材25の先端に固定された第1硬質部材26とから構成され、固定部24の外周に設けられたねじ部がねじ穴21に螺着されている。弾性体機構22は、弾性部材25が圧縮されていない状態において、第1硬質部材26が第1部分7の外周面から突出した状態となっている。弾性部材25としては、コイルばね、板ばね、ゴム等が好適に用いられる。第1硬質部材26は、半球形状で、平面側が弾性部材25に固定されている。第1硬質部材26の材質は、弾性変形が小さいものが好ましく、樹脂や金属等が好適に用いられる。なお、本実施形態においては、ねじ穴21は第1部分7を貫通しているが、貫通させずに凹部としもよい。
【0041】
ストッパー機構23は、第2部分8bに設けられた孔27と、孔27を覆い第2部分8bの外周面の一部分の全周に取付けられたゴム部材28と、孔27の内部に収納され、ゴム部材28の内周面に接着固定された第2硬質部材29とから構成されている。孔27は、第1硬質部材26が係合するように、第1硬質部材26よりも大きく形成されている。なお、ゴム部材28の材質は、弾性部材25の付勢力によって容易に弾性変形する材質が好適に用いられ、第2硬質部材29の材質は、弾性変形が小さいものが好ましく、樹脂や金属等が好適に用いられる。
【0042】
次に、抜け止め機構10の作用について説明する。第1部分7が第2部分8bに差し込まれると、まず、第1硬質部材26が第2部分8bの内周面に接触して弾性部材25が圧縮された状態となる。そして、第1硬質部材26が孔27の位置に達すると、弾性部材25の圧縮は開放されて第1硬質部材26を外側に付勢し、第1硬質部材26は第2硬質部材29を外側に付勢して第1硬質部材26は孔27と係合する。外側に付勢された第2硬質部材29はさらにゴム部材28を外周側に付勢し、ゴム部材28は孔27の外周部分が弾性変形して膨らんだ状態となる(図7(b)参照)。この状態においては、第1硬質部材26が孔27と係合しているので、第1部分7は第2部分8bと接続固定され予期せずに抜けることはない。そして、第1部分7は第2部分8bと固定を解除する場合には、ゴム部材28の膨らみ部分を素手などで押してやることで(図7(b)矢印参照)、弾性部材25が圧縮されて、第1硬質部材26が孔27と係合が解除され、第1部分7と第2部分8bとを容易に取り外すことができる。
【0043】
なお、ストッパー機構23は、第2部分8bに設けられた孔27だけで形成されており、容易に固定を解除する機能はなくてもよい。また、孔ではなく凹部であってもよい。また、抜け止め機構10は、上述した形態以外の機構であってもよく、例えば、第1部分7の外周面又は第2部分8bの内周面にOリング等の弾性部材を配置してもよい。また、着脱が面倒となるが、第1部分7と第2部分8bとをねじにより接続してもよい。また、本実施形態においては、抜け止め機構10を第1部分7の上端側と第2部分8の下端側との接続部分にのみ設けているが、第1部分7の下端側と第2部分8の上端側との接続部分に設けていてもよい。
【0044】
(支柱部の構成)
本実施形態において、支柱部2は、2つの第1部分7と3つの第2部分8とが交互に接続されて構成されている(図1参照)。このように、支柱部2には2つの第1部分7を含んでいるので、ポンプ台3を取り付ける位置(高さ)を選択することができ、その結果、ポンプ台3の取り付け高さを変更することができる。また、第1部分7と第2部分8とが抜け止め機構10により接続されている箇所においては、第1部分7と第2部分8との着脱が容易であるため、簡単にポンプ台3を着脱でき、ポンプ台3の取り付け位置(高さ)を容易に変更することができる。なお、支柱部2は、3つ以上の第1部分7と3つ以上の第2部分8(即ち、3つ以上の棒状部材2a)とから構成されていてもよく、また、1つの第1部分7と2つの第2部分8から構成されていてもよいし、第1部分7と第2部分8がそれぞれ1つ(即ち、1つの棒状部材2a)から構成されていてもよい。
【0045】
また、第1部分7と第2部分8との接続箇所全てをねじ9又は抜け止め機構10により着脱自在に接続しているが、全ての接続箇所を着脱自在に接続する必要はなく、第1部分7のうち両端に第2部分8が接続された第1部分については、両端に接続された2つの第2部分8のうち、少なくとも一方の第2部分が着脱自在に接続されていればよい。このようにしておけば、複数の第1部分7全てにおいてポンプ台3の着脱が可能となるからである。なお、ポンプ台3の着脱が不可能となるが、第1部分7と第2部分8は着脱できないように固定されていてもよい。
【0046】
また本実施形態においては、第1部分7を円柱形状としているが、第1部分7の断面外形形状が円形であれば、その他の形状であってもよい。また、第2部分8は円筒形状としているが、第1部分7の一部を第2部分8に差し込むことができ、且つ、第1部分7と第2部分8がねじ9や抜け止め機構10により接続することができる程度の円筒領域を持っていれば、その他の領域は円柱形状であってもよい。さらに、第1部分7と第2部分8とが接続できるのであれば、円筒領域はなくてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0048】
本実施形態においては、複数の溝を貫通孔を画定するポンプ台の内周面に設け、突起を第1部分の外周面に設けているが、複数の溝を第1部分の外周面に設け、突起を貫通孔を画定するポンプ台の内周面に設ける構造としてもよい。この構成の場合には、第1部分の外周面の一部に、他の部分に比べて外径が小さい部分を設けるなどして、ポンプ台が自在に回動できるようにする必要がある。
【0049】
また本実施形態においては、突起12を2つ設け、複数の溝のうち2つの溝がこれら突起と係合するようにしているが、突起12は少なくとも1つあればよい。
【0050】
また本実施形態においては、支柱部の材質は、いずれもアルミニウムやステンレス等の金属で形成したが、支柱部はその他の材質で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:医療用スタンド
2:支柱部
2a:棒状部材
3:ポンプ台
4:フック
5:脚部
6:キャスター
7:第1部分
8:第2部分
9:ねじ
10:抜け止め機構
11:面
12:突起
13:凸部
14:ピン
15:貫通孔
16:溝
17:本体部
18:スペーサ
19:ポンプ取付部
20、21:ねじ穴
22:弾性体機構
23:ストッパー機構
24:固定部
25:弾性部材
26:第1硬質部材
27:孔
28:ゴム部材
29:第2硬質部材
101:医療用ポンプ
102:輸液バッグ
103:チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部と、前記支柱部に装着されたポンプ台とを備えた医療用スタンドであって、
前記支柱部は、断面外形形状が円形である第1部分と、前記第1部分よりも外径が大きく且つ前記第1部分を軸方向に挟むように接続された断面外形形状が円形である2つの第2部分とを有し、
前記ポンプ台には、医療用ポンプが着脱自在に取り付けられるポンプ取付部と、前記第1部分の外径よりも大きく前記第2部分の外径よりも小さい内径を有し、且つ、前記ポンプ台を前記軸方向に貫通する貫通孔とが設けられており、
前記ポンプ台の前記貫通孔が設けられた領域の前記軸方向への厚さが前記第1部分の長さよりも短く、前記第1部分が前記貫通孔を貫くように前記支柱部に取り付けられた前記ポンプ台が、前記軸方向に沿って摺動可能となっており、
前記第1部分の外周面及び前記貫通孔を画定する前記ポンプ台の内周面の一方及び他方には、それぞれ、突起及び前記軸方向に延在した複数の溝の一方及び他方が設けられており、
前記突起は、前記ポンプ台の前記軸方向への摺動可能範囲の一部においてのみ前記複数の溝のうち任意の1つと係合して前記ポンプ台の回転を規制し、前記摺動可能範囲の前記一部以外では前記複数の溝のいずれとも係合しないために前記ポンプ台の回転を許容することを特徴とする医療用スタンド。
【請求項2】
前記支柱部は、複数の前記第1部分と複数の前記第2部分とを有し、
前記複数の第1部分のうち、両端に前記第2部分が接続された第1部分については、前記両端に接続された2つの前記第2部分のうち、少なくとも一方の第2部分が着脱自在に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用スタンド。
【請求項3】
前記支柱部は、前記第1部分及び前記第2部分を1つずつ有する2本以上の棒状部材が、前記第1部分と前記第2部分とが交互となるように前記軸方向に着脱自在に接続されたものであることを特徴とする請求項1に記載の医療用スタンド。
【請求項4】
前記第1部分の一部を別の前記棒状部材の前記第2部分に差し込むことが可能なように、前記第2部分に円筒領域が設けられており、
前記棒状部材には、接続された前記棒状部材同士の回転防止機構及び抜け止め機構が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の医療用スタンド。
【請求項5】
前記回転防止機構は、前記第1部分の先端に設けられた凹部と、この凹部と係合するように前記第2部分内に配置されたピンとを含んでいることを特徴とする請求項4に記載の医療用スタンド。
【請求項6】
前記抜け止め機構は、前記第1部分の外周面に設けられた穴と、前記穴内に配置された硬質部材と、前記硬質部材を外向きに付勢して前記硬質部材の一部を前記穴から突出させる弾性部材と、前記第2部分の前記円筒領域の内周面に設けられた穴とを含んでおり、
前記硬質部材が前記第2部分の前記円筒領域の内周面に設けられた穴に係合することを特徴とする請求項4又は5に記載の医療用スタンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59366(P2013−59366A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197937(P2011−197937)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(500409219)学校法人関西医科大学 (36)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】