説明

医療用ステープル

【課題】打針時と脱針時における折り曲げや押えの位置を正確にして、ステープルAの左右の針脚部3を均等に皮膚に刺し込み、また皮膚から抜き出すことができる。
【解決手段】クラウン部1とその両端の弯曲部2を介して下方に折れ曲がった針脚部3とから構成され、ステープラによって上記クラウン部1の中央部と上記弯曲部2との間を折り曲げて針脚部3を皮膚内に打ち込んで傷口を寄せるステープルにおいて、上記ステープラによって折り曲げられる両側折り曲げ部の下面部に第1のノッチ6を形成し、上記クラウン部1の第1のノッチ6間でかつ該両第1のノッチ6、6から均等に所定距離離間した上面部に第2のノッチ7を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷口を縫合するために使用される医療用ステープルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、外科手術等において傷口を縫合する手段として糸のほかに医療用ステープルが使用されている。このステープルは、クラウン部とその両側の弯曲部から下方に弯曲する針脚部とから構成され、医療用のステープラを使用し、クラウン部の中央部と弯曲部との間をステープラにより強制的に下方に折り曲げることにより上記針脚部を皮膚に打ち込んで傷口を縫合するものである。
【0003】
このように、事務用のステープルと異なり、医療用ステープルはクラウン部の中央部と針脚部との間で折り曲げられ、左右の針脚部が外側から内側に、互いに引き寄せられ、全体として四角い形状になる。
【0004】
また、傷口がある程度癒えてステープルが不要になったときには、傷口からステープルを取り外す必要があるが、この場合は、取り外し用のリムーバを用い、クラウン部の中央部上部を押さえ、この押え部の両側下部を引き上げることによって上記針脚部を皮膚から抜き出して取り外す。
【特許文献1】特許第2607747号公報
【特許文献2】特公昭62−44935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の打ち込み、取り外し方法によれば、針打ち込み時にステープルの折り曲げ位置が左右で異なると、左右の皮膚を均等に寄せ合うことができず、傷口がずれた状態で縫合されてしまい、傷口の両側の皮膚の高さにずれが生じることがあり、好ましくない。同様に針取り外し時も、クラウン部の中央の押え部とその両側の引き上げ位置とがずれると、一方の針脚部のみが抜け、他方が抜けないという不都合が生じる。この場合は、他方の針脚部を手作業で抜き出さなければならないので手間がかかるほか、皮膚損傷も大きく、患者に苦痛を与えることにもなる。
【0006】
本発明は前記問題点を解消することを目的とし、打針時と脱針時における折り曲げや押えの位置を正確にして、ステープルの左右の針脚部を均等に皮膚に刺し込み、また皮膚から抜き出すことができる医療用ステープルを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る医療用ステープルは、クラウン部とその両端の弯曲部を介して下方に折れ曲がった針脚部とから構成され、ステープラによって上記クラウン部の中央部と上記弯曲部との間を折り曲げて針脚部を皮膚内に打ち込んで傷口を寄せるステープルにおいて、上記ステープラによって折り曲げられる両側折り曲げ部の下面部に第1のノッチを形成し、上記クラウン部の前記第1のノッチ間でかつ該両第1のノッチから均等に所定距離離間した上面部に第2のノッチを形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る医療用ステープルは、前記クラウン部の前記第1のノッチ間でかつ該両ノッチから均等に所定距離離間した上面部に形成された前記第2のノッチが、前記クラウン部の長さの中央部を挟んで互いに対向して離間する位置に形成された2つのノッチであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る医療用ステープルは、前記クラウン部の前記第1のノッチ間でかつ該両ノッチから均等に所定距離離間した上面部に形成された前記第2のノッチが、前記クラウン部の長さの中央部に形成された1つのノッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、ステープラによって針脚部を皮膚に打ち込むときは、クラウン部の両側を押し下げることによりステープルは第1のノッチから略直角に折り曲げられる。したがって、両側の針脚部は均等に皮膚内に差し込まれ、良好な縫合状態が得られる。
【0011】
また、針脚部を取り外すときは、クラウン部の第2のノッチ部分と、第1のノッチと第2のノッチとの間を相対的に上下逆方向に移動させることによってステープルは第2のノッチから第1のノッチの折れ曲がり方向とは逆の方向に折れ曲がる。このように左右両側の折れ曲がりは均等に行なわれるので、両側の針脚部は皮膚から同じ状態で抜け出る。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、前記請求項1に係る発明の奏し得る効果に加えて、針脚部の取り外しにおけるクラウン部の長さの中央部を挟んで互いに対向して離間する位置に形成された2つの第2のノッチは左右均等な折れ曲がりを確保するから、両側の針脚部の皮膚からの均等な抜け出しを達成する。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、前記請求項1に係る発明の奏し得る効果に加えて、針脚部の取り外しにおけるクラウン部の長さの中央部の1つの第2のノッチは左右均等な折れ曲がりを確保するから、単純な構造でありながら両側の針脚部の皮膚からの均等な抜け出しを達成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1において符号Aは医療用ステープルで、このステープルAはクラウン部1とその両側の弯曲部2から下方に弯曲する針脚部3とから構成され、針脚部3の先端は先鋭に形成されている。
【0015】
上記ステープルAによって傷の縫合手術をするときは、特許文献1に示したようなステープラを用い、図2(a)に示されるように、ステープルAのクラウン部1の中央下部をステープラのアンビル4で支え、クラウン部1の両側をステープラのドライバプレート5で押し下げて折り曲げ、針脚部3を傷口の両側の皮膚に打ち込む。そこで、これに対応し、ステープラによって略直角に折り曲げられる両側折り曲げ部の下面部に第1のノッチ6が形成されている。
【0016】
また、傷口からステープルAを取り外すときは、図6に示されるリムーバを使用する。このリムーバは2本のアーム8、9を軸10によって軸着し、その一方の部位11をグリップ部とし、他方の部位の一方のアーム8の先端部8aに開口部12を形成し、他方のアーム9の先端には上記開口部12に挿入可能な凸部13を備えたものであり、図3(a)に示されるように、一方のアーム8の開口部12側の先端をステープルAの下から差し入れ、グリップ部11を強く握って他方のアームの先端凸部13を上記開口部12に押し込むようにする。これに対応し、ステープルAのクラウン部1の中央部とその両側の第1のノッチ6との間の上面部に第2のノッチ7が形成されている。
【0017】
なお、リムーバの開口部12の内側に先端凸部13が入り込んだときに先端凸部13の両側と開口部12の内面との間にステープルAの肉厚よりわずかに大きい程度の隙間ができるようにする。
【0018】
また、上記ステープルAの第1のノッチ6および第2のノッチ7はV溝状に形成されているのが好ましいが、U溝状でもよく、あるいは切り込み状でもよい。要するに、その部分から折れ曲がりやすく、しかも一度の折り曲げで折損しない形状であればよい。
【0019】
そこで、上記ステープルAによってステープルを打ち込む場合と取り外す場合について説明すると、まず針打ち込みにあたり、図2(a)のようにステープルAのクラウン部1の両側をステープラのドライバプレート5で押し下げたとき、同図(b)のように、ステープルAは応力が集中する第1のノッチ6部分で略直角に折り曲げられるから、左右の針脚部3が外側から内側に、互いに均等に引き寄せられて皮膚Bに打ち込まれ、傷口の両側部分も互いに引き寄せられてくっつき、全体が四角い形状になる。このように、打針時にステープルAの折り曲げ位置が左右で同じになるので、左右の皮膚Bを均等に寄せ合うことができる。
【0020】
また、ステープルAを取り外すときは、図3(a)に示されるように、上記リムーバの一方のアーム8の先端を皮膚BとステープルAのクラウン部1の間に入れた後、リムーバを強く握り、他方のアームの先端凸部13を上記一方のアームの開口部12に挿入するように動かす。これにより、同図(b)に示されるように、2つのアームが相対的に上下逆方向に作動し、先端凸部13が開口部12に挿入されるので、ステープルAのクラウン部1の中央部も開口部12内にしごかれるようにして引きずり込まれて折り曲げられ、同時に左右両側の針脚部3は引き上げられる。このとき、クラウン部1の中央部の両側の第2のノッチ7に応力が集中するので、両側部において第2のノッチ7から急角度で略直角に折れ曲がる。そして、左右両側の第1のノッチ6は開口部12の内縁に係合するので、両側の針脚部3も左右で均等に引き上げられることになるから、両側の針脚部3は皮膚Bから同じ状態で抜け出る。
【0021】
上述の実施形態のステープルAに替えて、図4および図5(a)(b)に図示される以下の実施形態のステープルA´とすることができる。
【0022】
このステープルA´は、上述のステープルAのクラウン部1における折り曲げ位置に変更が加えられたものである。
【0023】
具体的には、脱針時に折り曲げられるクラウン部1の上面部に第2のノッチ7が1つだけ形成されたものである。1つのノッチとして形成された第2のノッチ7は、クラウン部1の長さの中央部に形成され、上述のステープルAにおける第2のノッチ7と同様、V溝状、もしくはU溝状、切り込み状等の形状とされる。
【0024】
ステープルA´の皮膚への打ち込みは、ドライバプレート5の押し下げによる両側折り曲げ部下面部の第1のノッチ6の略直角の折り曲げによりなされ、ステープルAと全く同様である。従って、図示は省略されている。
【0025】
一方、ステープルA´の脱針は、図6に示されるリムーバのアーム8の先端部8aを、図5(a)(b)に示されるように、ステープルA´のクラウン部1と皮膚B間に差し入れた後、グリップ部11を握り、アーム9の先端凸部13によりクラウン部1の中央を一方のアーム開口部12に対して相対的に上下の逆方向移動で押し込み挿入して、ステープルAの脱針と同様になされるが、ステープルA´においては、上記他方アーム9の先細加工の先端凸部13でクラウン部1の中央部の丁度第2のノッチ7の形成部を押し込むようにしている。なお、上記先端凸部13の先端はやや尖っているのが好ましい。
【0026】
従って、上記他方アーム9の先端凸部13により上記一方アーム8の開口部12に相対的に上下の逆方向移動で押し込み挿入される第2のノッチ7による折り曲げは、該クラウン部1が前記開口部12内でしごかれるように引きずり込まれてなされ、ステープルAにおいては、2つのノッチ7が折り曲げられてクラウン部1は凹溝状に折り曲げられ、同時に左右両側の針脚部3が左右均等に引き上げられて皮膚Bから抜けるのに対して、ステープルA´においては、1つのノッチ7が折り曲げられてクラウン部1はV溝状に折り曲げられ、同時に左右両側の針脚部3が左右均等に引き上げられて皮膚Bから抜ける。
【0027】
なお、上記両実施形態のステープルA、A´はいずれも、上記ステープルの打ち込みと取り外しを通して第1のノッチ6と第2のノッチ7は1度しか曲がらないから、強度劣化は最小限に抑えられ、ステープルがノッチ部分から折損することはない。
【0028】
また、ステープルの打ち込みと取り外しの作業を効率的に行なうことができるとともに、皮膚損傷もほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る医療用ステープルの正面図である。
【図2】(a)(b)は図1に図示の上記ステープルによる打針時のステープル形状を示す説明図である。
【図3】(a)(b)は図1に図示の上記ステープルの脱針時のステープル形状を示す説明図である。
【図4】本発明に係る医療用ステープルの別の実施例を示す正面図である。
【図5】(a)(b)は図4に図示のステープルの脱針時のステープル形状を示す説明図である。
【図6】リムーバの斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
A、A´ ステープル
1 クラウン部
3 針脚部
6 第1のノッチ
7 第2のノッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウン部とその両端の弯曲部を介して下方に折れ曲がった針脚部とから構成され、ステープラによって上記クラウン部の中央部と上記弯曲部との間を折り曲げて針脚部を皮膚内に打ち込んで傷口を寄せるステープルにおいて、
上記ステープラによって折り曲げられる両側折り曲げ部の下面部に第1のノッチを形成し、上記クラウン部の前記第1のノッチ間でかつ該両第1のノッチから均等に所定距離離間した上面部に第2のノッチを形成した
ことを特徴とする医療用ステープル。
【請求項2】
前記クラウン部の前記第1のノッチ間でかつ該両ノッチから均等に所定距離離間した上面部に形成された前記第2のノッチが、前記クラウン部の長さの中央部を挟んで互いに対向して離間する位置に形成された2つのノッチであることを特徴とする請求項1に記載の医療用ステープル。
【請求項3】
前記クラウン部の前記第1のノッチ間でかつ該両ノッチから均等に所定距離離間した上面部に形成された前記第2のノッチが、前記クランク部の長さの中央部に形成された1つのノッチであることを特徴とする請求項1に記載の医療用ステープル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−223844(P2006−223844A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358689(P2005−358689)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】