説明

医療用デバイスのコーティング方法

本発明は、医療用デバイスを生体適合性のタンパクコーティング剤でコーティングするための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植医療用デバイスの分野にある。特に、本発明は、生体適合性材料でコーティングされる医療用デバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用デバイス、特に、移植医療用デバイスは、その表面が所望の特性又は作用を有するようにコーティングされる場合がある。例えば、医療用デバイスは、有益な表面特性を提供するように、諸材料でコーティングされる場合がある。例えば、医療用デバイスは、放射線不透過性の材料でしばしばコーティングされて、体内に設置される間に、蛍光透視の可視化を可能にする。また、高められた生体適合性を達成するために、ある種のデバイスをコーティングすることも有用である。一般に、そのようなコーティング剤は、免疫原性又は炎症性の反応を体内でほとんど又はまったく引き起こさない生体適合性ポリマーを含む。別の所望される特性は、細胞接着の増進であり得る。また、周囲の組織に対して優しい(例えば、より少ない炎症応答、及び、インプラントの破壊時に外傷をもたらす可能性がより低いこと)一方でポリマーの分解が進行するような、in vivoでの「穏やかな」生体吸収可能性も考慮される場合がある。生体適合性ポリマーの例は、ポリスチレン、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、脂肪族ポリエステル、ポリ3-ヒドロキシ酪酸、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、又はポリアクリル酸、グリコサミノグリカン(ヒアルロン酸若しくはキトサン酸など)、修飾多糖(セルロース又はデンプンなど)、又はポリ-l-リジンなどのポリペプチド、又は有利には、ゼラチン、コラーゲン、エラスチン、又はフィブリン、等の細胞外マトリックスタンパク質、又は組換えゼラチン様タンパク質、又は組換えコラーゲン用タンパク質である。
【0003】
医療用デバイスのコーティング剤は、さらに、良好な外科取扱い特性を有し、低い血栓形成性を有し、塞栓性の合併症がなく、周囲の組織に対して悪影響を及ぼさず、細胞内部成長を促進する特徴を有して、そして好適な強度特性を有するべきである。医療用デバイスコーティング剤の別の所望される特性は、水及び生体液への低い浸透性である。ヒト及び動物の中空器官に置き換わる人工器官を意味する人工血管に対して、医療用デバイスコーティング剤の低浸透性が特に所望される。いくつかの事例では、そのような人工移植片が、比較的乾燥した状態で、使用前の延長期間の間、柔軟で保存可能なままであることに対してコーティング剤が貢献することも望ましい。
【0004】
生体適合性、吸収性のタンパクコーティング剤が開発されてきた。例えば、当該技術分野では、コラーゲン又はゼラチンで処理された移植片が知られている。例えば、US4,784,659は、それ自体が有孔性であり、ジイソシアネートと架橋結合するゼラチンにそれを含浸させることによって塞がれる人工血管について記載する。US5,584,875は、ゼラチン又はコラーゲンなどのゲル化材料に含浸させて、そのゲル化材料を架橋結合させることによって、有孔の織物構造を含んでなる人工血管を作製するための方法について記載する。しかしながら、既知の方法は、適切なコーティング均一性を達成するために使用されるゼラチン又はコラーゲンの内在するゲル化特性にきわめて依存している。天然由来のゼラチン又はコラーゲンのゲル化特性は、バッチごとに変動する可能性があり、多様なコーティング結果をもたらす可能性がある。第二に、先行技術の方法は、コーティング手順の間に、コーティング材料に結果的に含まれる架橋結合剤をしばしば利用する。これにより、コーティング材料の全体量は、徐々にゲル化又は硬化させる。コーティング材料における架橋結合剤の使用には、重大な欠点がある。第一に、この技術でコーティングされる連続した医療用デバイス間のコーティングの均一性は、コーティング材料が医療用デバイス上への適用の間に徐々にゲル化するので、変動するものである。第二に、ある時間以内にはコーティング材料の全量がゲル化するので、コーティングし得る医療用デバイスの数が制限されて、この方法をより不経済なものにする。
【0005】
従って、タンパク質ベースの生体適合性材料を医療用デバイス上へ適用するための改善された方法へのニーズが存在する。そのような改善された方法は、タンパク性コーティング材料のきわめて均一で液体不浸透性のコーティング剤を有し、乾燥スポットや空隙がなく、そして過剰なコーティング材料を有する領域もない医療用デバイスをもたらすべきである。そのような方法によって作製される、結果として得られる実質的に均一にコーティングされる医療用デバイスへのニーズも存在する。
【0006】
EP166998は、医療品を構成する基質を、反応性官能基を有する化合物の溶液で処理する工程、そして次いで、該基質を水溶性ポリマーで処理して、反応性官能基を水溶性ポリマーへ共有結合させる工程を含んでなる、医療品をコーティングするための方法を開示する。
【0007】
US5,157,111は、コラーゲンを合成ポリエステル繊維へ共有結合させるための方法を開示する。この目的のためには、ポリエステル繊維を二機能性の架橋結合剤と反応させてから、得られるポリマーをコラーゲンと接触させる。
【0008】
EP237037は、人工血管をジイソシアネート架橋結合ゼラチンでコーティングして、存在する空孔を塞ぐための方法を開示する。好ましくは、110〜300の範囲のブルーム強度を有する、良好なゲル化ゼラチンを使用する。
【0009】
EP1121947は、医療品の基質を架橋結合剤の溶液で処理する工程、そして次いで、この前処理した基質へポリマー溶液を適用する工程を含んでなる、該基質をコーティングする方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US4,784,659
【特許文献2】US5,584,875
【特許文献3】EP166998
【特許文献4】US5,157,111
【特許文献5】EP237037
【特許文献6】EP1121947
【発明の概要】
【0011】
本発明は、コーティングされる医療用デバイスを製造するための方法に関する。特に、本方法は、タンパク性コーティング材料を含んでなる、水浸透性が低い均一コーティング剤を医療用デバイス上へ適用するための方法に関する。先行技術の方法は、初めのコーティングを形成するために適用されて、その後不可逆的に架橋結合するタンパク性コーティング材料の内在するゲル化特性に依存するか、又はやはり架橋結合剤を含んでなるコーティング材料の溶液を使用する。天然源に由来するタンパク質の内在するゲル化特性は変動する可能性があり、多様なコーティング結果をもたらす。コーティング材料の溶液における架橋結合剤の使用は、使用するコーティング材料の全体量のゲル化を始動させる。これはまた、コーティング剤の均一性に悪影響を及ぼす。本発明者は、驚くべきことに、医療用デバイスを、タンパク性コーティング材料でのコーティングに先立って架橋結合剤に含浸させることに続けて、そのタンパク性材料を硬化させることによって、高いコーティング均一性と低い水浸透性が達成されることを見出した。このやり方で、本発明の方法は、タンパク質が医療用デバイスとの接触時にゲル化して架橋結合することを可能にする。故に、本発明の方法は、使用するタンパク質の内在するゲル化特性には依存せず、そしてまた、コーティング材料が架橋結合しないので、その溶液の再使用を可能にする。このように、本方法は、得られる低い水浸透性を有するタンパク性材料を含んでなる、均質なコーティング剤を有する移植医療用デバイスを提供する。
【0012】
全般的な定義
他に定義されなければ、本明細書中で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書の記載に類似しているか又は同等であるどの方法及び材料も、本発明の実施又は試験に使用し得るが、好ましい方法、デバイス、及び材料についてこれから記載する。
【0013】
本明細書において使用される「医療用デバイス」は、人体の再構築用のデバイス又は製品、及び/又は薬物放出を制御するために身体中に移植される物体を意味する。この用語には、吸収性のデバイス及び製品が含まれる。
【0014】
本明細書において使用される「水浸透性」は、水の粘度に近似した粘度のある、清浄濾過された液体の容量が、特定期間の間に、特定の圧力の下で、人工材料の単位領域を通して通過することを意味する。
【0015】
本明細書において使用される「タンパク性コーティング材料」は、タンパク質を含んでなる組成物である。
「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「ペプチド」という用語は、交換可能的に使用されて、特定の作用形式、大きさ、三次元構造、又は起源とは無関係に、アミノ酸の鎖からなる分子を意味する。
【0016】
本明細書において使用される「ゼラチン」は、従来法によって抽出されるか、又は起源が組換え若しくは生合成であるかに拘らず、あらゆるゼラチンを意味するか、又はゼラチンの少なくとも1つの構造及び/又は機能特性を有するあらゆる分子を意味する。ゼラチンは、動物(例、ウシ、ブタ、齧歯動物、ニワトリ、ウマ、魚)源、例えば、骨及び組織に由来するコラーゲンからの抽出によって現在入手される。この用語には、ゼラチン製品に含まれる1より多いポリペプチドの組成物だけでなく、ゼラチン材料へ寄与する個々のポリペプチドも含まれる。従って、本発明に関連して使用される「組換えゼラチン」という用語には、ゼラチンポリペプチドを含む組換えゼラチン材料だけでなく、個々のゼラチンポリペプチドも含まれる。
【0017】
ゼラチンを導くことができるポリペプチドは、コラーゲン、プロコラーゲンなどのポリペプチドと、コラーゲンの少なくとも1つの構造及び/又は機能特性を有する他のポリペプチドである。そのようなポリペプチドには、単一のコラーゲン鎖、又はコラーゲンのホモ三量体若しくはヘテロ三量体、又は少なくとも1つのコラーゲン様ドメイン(Gly-X-Y領域)を含有する、そのあらゆる断片、誘導体、オリゴマー、ポリマー、又はサブユニットを含めることができよう。この用語には、具体的には、改変されたコラーゲン配列(例えば、天然に存在するコラーゲン配列より、欠失、付加、置換、又は他の変化によって改変された配列)などの、天然に見出されない工学処理された配列が考慮される。このような配列は、好適な改変コラーゲンポリヌクレオチド構築体、等より入手することができる。
【0018】
本明細書において使用される非ゲル化ゼラチンは、ブルーム強度が50 gより低いゼラチンであり、好ましくは、ブルーム強度が10 g未満のゼラチンである。
本明細書において使用される「ブルーム強度」は、一定温度の浴(10℃)中にてゼラチンの6.67%溶液(w/v)によって17時間にわたり形成されるゲルの強度の測定値である。標準のテクスチャーアナライザー(Texture Analyzer)を使用して、標準の0.5インチ径AOAC(Association of Official Agricultural Chemists)プランジャーをゲル中へ4ミリメートル下降させるのに必要とされる重量をグラム数で測定する。プランジャーの下降に必要とされる重量(グラム)が200グラムであれば、その特別なゼラチンは、200 gのブルーム値を有する(例えば、米国薬局方と「AOACインターナショナルの公式分析法(Official Methods of Analysis of AOAC International)」第17版、第II巻を参照のこと)。
【0019】
本明細書において記載される「架橋結合剤」は、架橋剤を含む組成物を意味する。本明細書において使用される「架橋剤」は、有機分子中に共有性の分子内及び分子外架橋を導入することができる、反応性の化学化合物を意味する。本発明において言及される架橋剤は、限定されないが、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物、カルボジイミド、ジアルデヒドジイソシアネート、エポキシド、ジアセチル及びクロロペンタンジオンなどのケトン化合物、ビス(2-クロロエチル尿素)、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン、US3,288,775に開示される反応性ハロゲン含有化合物、US4,063,952及びUS5,529,892に開示される、ピリジン環がスルフェート若しくはアルキルスルフェート基を担うカルバモイルピリジニウム化合物、ジビニルスルホン、等より選択され得る。2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-s-トリアジンなどのS-トリアジン誘導体は、よく知られた架橋結合性の化合物である。
【0020】
本明細書において記載される「硬化」は、一部架橋結合した材料を、その材料の最初の架橋結合に使用したのと同じか又は別の架橋結合剤とさらに架橋結合させる方法である。この工程により、元の架橋結合材料の物理特性をより耐久性がある、及び/又はより水不浸透性であるように変化させることができる。
【0021】
本明細書に記載される「湿潤性」は、どの形状の固形物も、気泡を伴わずに、又は固形物の表面に乾燥した斑点を残すことなく完全に包囲する、液体、特に水性液体の特性である。本発明に照らせば、本明細書に記載されるような高い湿潤性とは、20℃と約100キロパスカルの大気圧で固形物を包囲する液体フィルムを達成するのに、同じ条件下での純水(即ち、添加物を含有しない水)と比較して、より少ない量の液体が必要とされるということである。湿潤性は、一般に、摂氏20°と約100キロパスカルの大気圧で水より低い密度及び表面張力がある液体でより高い。このやり方では、水の湿潤性を、界面活性剤の添加によって改善することができる。
【0022】
「含む」という用語は、所定の構成要素(parts)、工程、又は成分の存在を特定するものとして解釈されるべきであるが、1以上の追加の構成要素、工程、又は成分の存在を排除しない。
【0023】
さらに、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、要素が1つ又は唯1つであることを文脈が明確に求めなければ、その要素の1以上が存在する可能性を排除するものではない。従って、不定冠詞の「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
このように、本発明は、医療用デバイスをコーティングするための方法に関し、前記方法は:
a.医療用デバイスを架橋結合剤に含浸させる工程、そして次いで
b.含浸させた医療用デバイスをタンパク性コーティング材料と接触させて、医療用デバイスのタンパク性材料でのコーティングをもたらす工程、そして次いで
c.医療用デバイス上へコーティングされたタンパク性材料を、架橋結合剤と接触させることによって硬化させる工程を含む。
【0025】
本方法の特別な利益は、最初の含浸工程によって、より少量のゼラチンの使用を可能にすることである。本発明による方法のさらなる利益は、非ゲル化タンパク質をコーティング材料として使用する能力である。そのようなタンパク質の例は、アルブミン、エラスチン、絹フィブロイン、フィブリンであり、好ましくは、ゼラチン又はコラーゲン、等である。1つの態様において、タンパク性コーティング材料は、非ゲル化ゼラチン、好ましくは魚ゼラチンを含む。別の態様において、タンパク性コーティング材料は、組換え的に産生したゼラチン、コラーゲン、エラスチン、絹フィブロイン、又は組換えのゼラチン様若しくはコラーゲン様タンパク質を含む。この文脈において、ゼラチン様若しくはコラーゲン様は、このタンパク質の配列が、完全にはインタクトでないが、他の点では、ゼラチン又はコラーゲンの構造及び機能上の特性(特に、その生体適合性に関して)には影響を及ぼさない、Gly-Xaa-Yaa(XaaとYaaは、どのアミノ酸でもよい)からなる配列を残す修飾部分を含有し得ることを意味する。組換えゼラチンの使用は、動物源より慣用的に産生されるゼラチンと比較して、医療上有益である。潜在的な免疫原性応答(例、抗原性及びアレルギー性応答)への懸念などの安全性の課題が生じてきた。現在使用されている動物源のゼラチン混合物を完全に特性決定する、精製する、又は再生産することができないことは、製薬業界と医学界において進行中の懸念である。抽出及び精製法より生じる細菌汚染と内毒素負荷に関するさらなる安全性の懸念が存在する。組換え的に産生されるゼラチンは、これらの安全性の懸念に対する1つの解決策である。さらに、組換え技術は、例えば、限定されないが、低い免疫原性、改善された細胞付着、及び/又は制御された生分解性といった、より優れた特性のあるゼラチン様タンパク質の設計を可能にする。さらなる利益は、組換え的に産生されるゼラチン様タンパク質が構造及びサイズにおいてより均一でもあり、それにより本発明の方法を使用して得られるコーティングの均一性を高めることである。EP0926543、EP1014176、及びWO01/34646と、また具体的には、EP0926543及びEP1014176の実施例は、組換えゼラチンと、メタノール資化性酵母、特にPichia pastoris を使用する、その産生の方法について記載する。本発明の1つの態様において、タンパク性コーティング材料は、その非ゲル化特性を高める、非ヒドロキシ化である組換えゼラチンを含む。本発明のコーティング方法は、そのような非ゲル化組換えゼラチンで医療用デバイスをコーティングするのにきわめて適しているが、先行技術の方法は、そうでない。ヒドロキシル化組換えゼラチンの産生は、例えば、好適にはWO98/18918に記載されるように、宿主、好ましくは酵母を、プロリン-ヒドロキシラーゼ活性を有するように遺伝子工学的に処理することによって達成することができる。
【0026】
1つの態様において、本発明の方法は、医療用デバイスの架橋結合剤での含浸と、引き続きタンパク性コーティング材料を適用することを含む。医療用デバイスの含浸は、限定されないが、架橋結合剤を含む溶液剤を医療用デバイス上へ噴霧すること、又は架橋結合剤を含む溶液剤に医療用デバイスを浸漬させることといった、どの方法でも行うことができる。好適な架橋結合剤は、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物、カルボジイミド、ジアルデヒドジイソシアネート、ジアセチル及びクロロペンタンジオンなどのケトン化合物、ビス(2-クロロエチル尿素)、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン、US3,288,775に開示される反応性ハロゲン含有化合物、US4,063,952及びUS5,529,892に開示されるピリジン環がスルフェート若しくはアルキルスルフェート基を担うカルバモイルピリジニウム化合物、ジビニルスルホン、等、並びに、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-s-トリアジンなどのS-トリアジン誘導体より選択される化学架橋剤のように、当該技術分野で知られているものである。架橋結合剤の溶液剤は、医療用デバイスのより良好な湿潤性を可能にして、室温でのより高い蒸発速度を有する、水以外の溶媒を含んでよい。好適な溶媒は、架橋結合剤を含む架橋剤の溶解度に依存して、例えば、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及び酢酸エチルである。架橋結合剤の濃度は、好ましくは、少なくとも約1、2、2.5、4.5、5、7.5、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50重量パーセントである。含浸の継続時間は、医療用デバイスによる吸収性に依存して、好ましくは、少なくとも約1、2、5、8、10、12、15、20、30、50〜60分までである。含浸工程は、使用する溶媒及び架橋剤の組合せに依存して、選択した組成物の凝固点より高いが、選択した組成物の沸点より低い、架橋結合剤に適している温度で実施することができる。1つの態様において、含浸は、大気圧付近で実施するが、わずかにより高い気圧とより低い気圧も好ましく使用することができる。別の態様において、含浸は、低位〜中位の真空(例えば、約4.0 kPa(30 mmHg)以下)で実施する。
【0027】
有利な態様では、含浸工程に乾燥工程を続けて、架橋結合剤の溶媒を蒸発させる。1つの態様において、乾燥工程は、好ましくは、架橋結合材料での含浸と同じ温度で実施する。1つの態様において、乾燥工程は、大気圧付近で実施するが、わずかにより高い気圧とより低い気圧も使用することができる。大気圧付近の条件下では、乾燥工程の間の相対湿度は、好ましくは、約80パーセントより高くない。別の態様において、乾燥工程は、減圧で、例えば、低位〜中位の真空(例えば、約4.0 kPa(30 mmHg)以下)で実施する。医療用デバイスは、少なくとも約1、2、4、8、10、12、16、18、20〜24時間まで乾燥させてよい。
【0028】
さらに本方法は、コーティング工程、特に、例えば、含浸させた医療用デバイスをタンパク性コーティング材料と接触させることによって、タンパク性コーティング材料を医療用デバイス上へ適用して、医療用デバイスのタンパク性材料でのコーティングをもたらす工程を含む。これは、コーティング材料の溶液剤を医療用デバイス上へ噴霧することによって実施することができる。1つの態様では、医療用デバイスをタンパク性コーティング材料の溶液剤に浸漬するが、これは浸漬コーティングと呼ばれる場合もある。タンパク性コーティング材料に適した溶媒は、好ましくは水であるが、それは、助溶媒(例えば、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及び酢酸エチル)を含んでもよい。タンパク性コーティング材料は、少なくとも1重量パーセント〜60重量パーセントまでのそのような助溶媒を含んでよい。タンパク性コーティング材料は、少なくとも約0.1重量パーセント〜20重量パーセントまでの選択されるタンパク質を含んでよい。より好ましくは、5重量パーセントと10重量パーセントの間の濃度である。好適なタンパク質、特に、生体適合性タンパク質の例は、アルブミン、エラスチン、絹フィブロイン、フィブリンであり、好ましくは、ゼラチン又はコラーゲン、等である。別の好ましい態様において、生体適合性タンパク質は、ブルーム強度が約10 g未満の非ゲル化ゼラチンである。より好ましい態様において、タンパク性コーティング材料は、組換えゼラチン、好ましくは、ブルーム強度が10 g未満の非ゲル化組換えゼラチンを含み、そしてなおより好ましくは、タンパク性コーティング材料は、例えば、EP0926543、EP1014176、及びWO01/34646に開示される組換えゼラチンなどの、非ヒドロキシル化組換えゼラチンを含む。好ましくは、タンパク性コーティング材料の少なくとも50重量パーセントが非ゲル化ゼラチンであり、好ましくは、タンパク性コーティング材料の少なくとも70重量パーセント、より好ましくは、少なくとも90重量パーセントが非ゲル化ゼラチンである。さらに好ましい態様では、例えば、EP1608681とEP1368056に開示されるような、細胞結合性が強化された、及び/又は免疫原性が最小であるように機能化された組換えゼラチンがタンパク性コーティング材料に含まれる。機能化組換えゼラチンは、移植後に医療用デバイス周囲の組織の細胞浸透をシミュレートする、改善された細胞結合特性を有するように設計することができる。企図される応用に有利なように調整し得る、組換えゼラチンの別の特徴は、生分解性である。1つの好ましい態様において、タンパク性コーティング材料は、溶液剤の表面張力を低下させる界面活性剤及び/又は湿潤剤も含む。これにより、コーティングされる医療用デバイスの湿潤性が改善されて、最終コーティングの均一性が改善される。好適な界面活性剤の例には、アルキルスルホカルボキシレート、α-オレフィンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアセテート、N-アシルアミノ酸とその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキルスルフェート、ポリオキシアルキルエーテルスルフェート、ポリオキシアルキルエーテルホスフェート、ロジン石鹸、硫酸化ヒマシ油、ラウリルアルコールスルフェート、アルキルフェノールホスフェート、アルキルホスフェート、アルキルアリルスルホネート、ジエチルスルホスクシネート、ジエチルヘキシルスルホスクシネート、及びジオクチルスルホスクシネートなどの陰イオン性界面活性剤、又は2-ビニルピリジン誘導体及びポリ-4-ビニルピリジン誘導体などの陽イオン性界面活性剤、又はラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、プロポリジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、及びイミダゾリン誘導体などの両性界面活性剤が含まれる。別の好ましい態様において、タンパク性コーティング材料は、限定されないが、グリコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、又はグリセロールなどの可塑剤も含む。これは、柔軟な移植片をコーティングするのに特に有利である。
【0029】
本発明の方法におけるタンパク性コーティング材料の酸性度は、使用するタンパク質及び架橋結合剤に依存して調整される。タンパク性コーティング材料のpHは、少なくとも約pH4と約pH10までの間、より好ましくは少なくとも約pH6と約pH8までの間の範囲に及んでよい。コーティング工程は、限定されないが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、19、20、22、25、27、30、32、35、37、38、40、45、50、55℃より選択される温度、そして好ましくは0℃より高い温度、好ましくは60℃未満の温度で実施することができる。コーティング工程の継続時間は、可能な限り短いことが好ましい。タンパク性コーティング材料の長い曝露は、含浸させた医療用デバイスから溶液中へ架橋剤が拡散して、おそらくは架橋結合反応を引き起こす可能性があり、コーティング剤と架橋結合剤の均質性に悪影響を及ぼして、タンパク性コーティング材料の容量の経時的な増加をもたらす場合がある。1つの態様において、コーティング工程の継続時間は、15分未満、好ましくは5分未満であり、なおより好ましくは3分未満であり、好適なコーティングを達成するには、1分以下の継続時間でも適切な場合がある。1つの態様において、コーティング工程は、大気圧付近で実施するが、わずかにより高い気圧とより低い気圧も好ましく使用することができる。好ましい態様において、浸漬コーティング手順は、約4.0 kPa(30 mmHg)以下の低位〜中位の真空で実施する。有利には、これによって、コーティングされる医療用デバイスの表面に形成された可能性がある気泡が除去され得る。
【0030】
有利な態様では、コーティング工程に乾燥工程を続ける。1つの態様において、乾燥工程は、好ましくは、コーティング工程と同じ温度で実施する。好ましくは、乾燥工程の間の相対湿度は、約80パーセントより高くない。1つの態様において、乾燥工程は、大気圧付近で実施するが、わずかにより高い気圧とより低い気圧も使用することができる。大気圧付近の条件下では、乾燥工程の間の相対湿度は、好ましくは、約80パーセントより高くない。別の態様において、乾燥工程は、減圧で、例えば、低位〜中位の真空において(例えば、約4.0 kPa(30 mmHg)以下で)実施する。医療用デバイスは、少なくとも約1、2、4、8、10、12、16、18、20〜24時間まで乾燥させてよい。
【0031】
本発明による方法は、硬化工程、特に、医療用デバイス上へコーティングされたタンパク性材料を硬化させる工程をさらに含む。この硬化工程は、生体適合性タンパク質がコーティングされた医療用デバイスを架橋結合剤と接触させて、このコーティング剤をさらに硬化させることを含む。有利には、このような硬化工程により、コーティングされた医療用デバイスの耐久性が高まる。また、硬化工程は、有利にも、医療用デバイスのコーティング剤の水浸透性を減少させて、好ましくは、コーティング剤を「防水性」にする(例えば、体液に不浸透性にする)。架橋結合剤との接触は、限定されないが、架橋結合剤を含む溶液剤を医療用デバイス上へ噴霧すること、又は架橋結合剤を含む溶液剤に医療用デバイスを浸漬させることといった、どの好適な方法でも行うことができる。好適な架橋結合剤は、限定されないが、本明細書においてすでに記載した架橋結合剤より選択することができる。好適な架橋結合剤は、ホルムアルデヒド及びグルタルアルデヒドなどのアルデヒド化合物、カルボジイミド、ジアルデヒドジイソシアネート、エポキシド、ジアセチル及びクロロペンタンジオンなどのケトン化合物、ビス(2-クロロエチル尿素)、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン、US3,288,775に開示される反応性ハロゲン含有化合物、US4,063,952及びUS5,529,892に開示されるピリジン環がスルフェート若しくはアルキルスルフェート基を担うカルバモイルピリジニウム化合物、ジビニルスルホン、等、並びに、2-ヒドロキシ-4,6-ジクロロ-s-トリアジンなどのS-トリアジン誘導体より選択される化学架橋剤のように、当該技術分野で知られているものである。架橋結合剤の溶液剤は、医療用デバイスのより良好な湿潤性を可能にして、室温でのより高い蒸発速度を有する、水以外の溶媒を含んでよい。好適な溶媒は、例えば、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及び酢酸エチルである。架橋結合剤の濃度は、好ましくは、少なくとも約0.01、0.03、1、3、5、又は10重量パーセントである。別の好ましい態様において、架橋結合剤は、限定されないが、グルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、又はグリセロールなどの可塑剤も含む。本発明による硬化工程の継続時間は、好ましくは、少なくとも約5、6、7、8、9、10、15時間である。硬化工程は、限定されないが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、19、20、22、25、27、30、32、35、37、38、40、45、50、55℃より選択される温度、そして好ましくは0℃より高い温度、そして好ましくは60℃未満の温度で実施することができる。1つの態様において、硬化工程は、大気圧付近で実施するが、わずかにより高い気圧とより低い気圧も使用することができる。別の態様において、硬化工程は、真空付近で、例えば、約4.0 kPa(30 mmHg)以下で実施する。
【0032】
有利な態様では、硬化工程に乾燥工程を続けて、架橋結合剤の溶媒を蒸発させる。1つの態様において、乾燥工程は、好ましくは、硬化工程と同じ温度で実施する。1つの態様において、乾燥工程は、大気圧付近で実施するが、わずかにより高い気圧とより低い気圧も使用することができる。大気圧付近の条件下では、乾燥工程の間の相対湿度は、好ましくは、約80パーセントより高くない。別の態様において、乾燥工程は、減圧で、例えば、低位〜中位の真空(例えば、約4.0 kPa(30 mmHg)以下)で実施する。医療用デバイスは、少なくとも約1、2、4、8、10、12、16、18、20〜24時間まで乾燥させてよい。
【0033】
別の態様では、追加のコーティング工程を、上記に記載のような最初のコーティング工程(b)と上記に記載のような硬化工程(c)の間で実施する。好ましくは、追加のコーティング工程は、第一のコーティング工程(b)後の乾燥工程の後で行う。追加のコーティング工程は、第一のコーティング工程と本質的に同じように実施してよく、有利には、上記の記載のような乾燥工程を続ける。有利には、追加のコーティング工程において成分又は変数を変えてよく、特に、タンパク性コーティング材料では、酸性度を調整することが有益である。追加のコーティング工程におけるタンパク性コーティング材料の酸性度は、好ましくは、後続の硬化工程で使用する架橋結合剤に最適なpHへ調整する。1つの態様において、追加のコーティング工程におけるタンパク性コーティング材料のpHは8と11の間であり、好ましくは、そのpHは約10である。
【0034】
1つの態様において、医療用デバイスの最初の含浸工程における架橋結合剤と硬化工程の架橋結合剤は、同一の架橋結合剤であり、好ましくは、本明細書に記載される好適な架橋結合剤より選択される。好ましい態様において、架橋結合剤は、カルボジイミド又はジイソシアネートである。別の態様において、医療用デバイスの最初の含浸工程の架橋結合剤と硬化工程の架橋結合剤は、異なる架橋結合剤であり、好ましくは、本明細書に記載される好適な架橋結合剤より選択される。より好ましい態様において、含浸工程と硬化工程で異なる架橋結合剤は、カルボジイミドとジイソシアネートより選択される。好ましくは、含浸工程における架橋結合剤は、カルボジイミドとジイソシアネート、好ましくはカルボジイミドであり、そして硬化工程における架橋結合剤は、ジイソシアネートである。より好ましくは、含浸工程は、水溶性カルボジイミド、好ましくは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を使用して実施して、硬化工程は、ジイソシアネート、好ましくは1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを使用して実施する。
【0035】
本発明の方法は、限定されないが、例えば、吸収性縫合糸、吸収性クリップ、吸収性ステープル、吸収性ピン、吸収性ロッド(骨折修復用)、遅吸収性ビーズ(皮膚充填剤としての使用のため)、吸収性ジョイント、吸収性スポンジ、止血鉗子、吸収性接着剤、及び吸収性薬物制御/放出デバイスなどの、どのような好適な種類の医療用デバイスもコーティングするために使用することができる。非吸収性医療用デバイス及び製品(具体的には、骨修復用に設計される医療用デバイス、例えば、人工関節の臼蓋又は脛骨成分)も、本方法で好適にコーティングすることができる。また、本方法に従ってコーティングされるのに適しているのは、歯科用インプラントである。本発明の方法は、吸収性の布地又はメッシュ(例えば、ヘルニア修復用)などの織材料又は不織材料を含む医療用デバイスと人工血管、そして特に吸収性血管移植片をコーティングするのに特に適している。水や生体液に対する人工血管コーティング剤の低い浸透性は、きわめて望まれる特性であり、本発明の方法で容易に達成可能である。また、針及びカテーテルなどの医療用デバイスも、例えば、好ましくは、抗微生物コーティングを提供するために、本発明の方法に従って好適にコーティングすることができる。
【0036】
本発明を以下の非限定的な実施例においてよく詳しく説明する。
【実施例】
【0037】
生体適合性タンパク質でコーティングされる医療用デバイスを以下のように製造した。
1)血管移植片のEDCでの含浸
1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)をエタノールに溶かした。長さ25 mmのベロア織ファインポリエステル繊維の血管移植片を:
25重量% EDC(=3グラムのEtOH中1グラムのEDC);
2.5重量% EDC;
0.25重量% EDC;に含浸させた。
【0038】
含浸は、真空条件下に室温で行って、継続期間は5〜10分で変化させた。最終的には、より高い濃度の架橋結合剤が、血管移植片の水浸透性によって判定されるように、よりよいコーティング結果をもたらした。
【0039】
EDCを水に溶かしても、同様の結果が得られた。水の蒸発が遅いことと、エタノールでの移植片のより良好な湿潤性により、後者が好ましかった。
2)含浸させた移植片の乾燥
含浸後、エタノールが完全に蒸発するまで、移植片を真空下に室温で乾燥させた。
【0040】
3)浸漬コーティング
含浸させた血管移植片を7.5重量%組換えゼラチンP4(Werten et al. 2001, Protein Engineering 14: 447-454)又はEP1608681に開示される、水中15重量%グリセロールに溶かしたRGD濃縮配列でコーティングした。この溶液のpHをHCl又はNaOHで調整した。架橋結合手順のpH依存性を検討して、4、6、8、及び10のpH値について試験した。EDC架橋結合では低いpH(pH4〜6)が最も良いが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDIC)架橋結合では、高いpH(pH10)が好ましい。最良の結果が6又は8のpHで得られた。真空条件(3.6 kPa(27 mmHg))下に40℃で移植片を短時間コーティングした。コーティングの時間は、5分未満であった;移植片が全体的に濡れて、すべての気泡が除去されたとき、移植片をコーティング溶液より取り出して、乾燥させた。気泡が存続する場合は、真空条件を適用した。
【0041】
4)乾燥
移植片を室温で一晩乾燥させた。
この時点で、この血管移植片について、走査電子顕微鏡を使用して均一性を、そして9項に記載する方法を使用して水浸透性を分析した。
【0042】
移植片がゼラチンで適切にコーティングされていることがわかったが、この移植片は、ある程度は水に対して浸透性であり、人工血管として即座に適しているわけではないことが見出された。
【0043】
5)追加の浸漬コーティング工程
この移植片を水に対してより不浸透性にするために、いくつかの移植片に対して組換えゼラチンの第二層を適用した。上記の3)項に記載したような浸漬コーティング剤をpH10で行って、より低濃度(特に、水中15重量%グリセロールに溶かした2及び5重量%の濃度)の組換えゼラチンを使用した。HMDIC架橋結合では、後続の硬化工程において、より高い10のpHを使用することが有利であった。
【0044】
6)乾燥
工程5)からの移植片を、再び室温で一晩乾燥させた。
7)硬化工程
工程4)及び工程6)より入手した移植片を、イソプロパノール(IPA)中15%グリセロール中の1重量%HMDICの15 mlに浸漬させた。架橋結合を室温で行って、継続時間は6〜9時間で変化させた。
【0045】
対照として、IPA中15%グリセロールへ架橋剤を加えなかった。
8)乾燥
上記の移植片を室温で一晩乾燥させた。
【0046】
再び、硬化した移植片について、走査電子顕微鏡を使用して均一性を、そして工程9に記載する方法を使用して水浸透性を分析して、工程4)の後で得られる移植片への硬化工程が工程6)より得られる移植片への硬化工程とともに、本質的に水不浸透性のコーティングをもたらすことを見出した。工程5)を含めること、そしてまた工程5)においてより高い濃度の組換えゼラチンを使用することによって、血管移植片の堅さが増加する。
【0047】
9)水浸透性の判定
試験する移植片の内径に特異的なアダプターのセットを使用して、コーティングした移植片を載せた。この移植片-アダプターの組立てを、移植片の一端が加圧されている間に自由に伸びることを可能にする固定器具へ連結した。この固定器具を、16 kPa(120 mmHg)より高い圧力で水を送達することが可能な圧力調節システムへ連結した。移植片を16 kPaへ加圧した。水の流れを安定させて、移植片の壁からの漏れの発生を60秒の間判定した。
【0048】
結果
表1:EDCで含浸させて、硬化(工程4)を伴わない移植片の水浸透性
【0049】
【表1】

【0050】
表2:EDC含浸と1% HMDICでの硬化(工程8)を伴う移植片の水浸透性
【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスのコーティングの方法であって:
a.医療用デバイスを架橋結合剤に含浸させる工程、そして次いで
b.含浸させた医療用デバイスをタンパク性コーティング材料と接触させて、医療用デバイスのタンパク性材料でのコーティングをもたらす工程、そして次いで
c.医療用デバイス上へコーティングされたタンパク性材料を、架橋結合剤と接触させることによって硬化させる工程を含む、前記方法。
【請求項2】
架橋結合剤がカルボジイミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
架橋結合剤がジイソシアネートを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程aの架橋結合剤がジイソシアネートを含み、工程cの架橋結合剤がカルボジイミドを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程aの架橋結合剤がカルボジイミドを含み、工程cの架橋結合剤がジイソシアネートを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程bのタンパク性コーティング材料がコラーゲン及び/又はゼラチンを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程bのタンパク性コーティング材料が非ゲル化ゼラチンを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
非ゲル化ゼラチンが組換えゼラチン様タンパク質を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非ゲル化ゼラチンが50 gより低いブルーム(Bloom)強度を有し、好ましくは、非ゲル化ゼラチンが10 g未満のブルーム強度を有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって得られる、コーティング剤を含む医療用デバイス。
【請求項11】
人工血管である、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
骨修復移植片である、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
歯科用インプラントである、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
カテーテルである、請求項10に記載の医療用デバイス。

【公表番号】特表2011−526510(P2011−526510A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515626(P2011−515626)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050735
【国際公開番号】WO2010/001149
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(509077761)フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ (25)
【Fターム(参考)】