説明

医療用デバイス表面への糖ペプチド抗生物質の送達のための組成物および方法

本明細書で開示される事項は、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチド、ならびに糖ペプチド抗生物質を医療用デバイスの表面に送達するための方法および組成物に関する。上記ペプチド組成物は、上記糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに連結される医療用デバイスの表面物質に対して結合親和性を有するペプチドを含み得る。上記ペプチド組成物と、上記医療用デバイスの表面とを接触させることによって、上記ペプチド組成物を医療用デバイスに適用するための方法もまた、提供される。さらに、上記ペプチド組成物を含むキットもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
ここに開示される内容は、2007年10月22日に出願された米国仮特許出願第60/981,565号および2008年5月28日に出願された米国仮特許出願第61/056,746号の利益を主張し、これらの開示のそれぞれは、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(助成金の申告)
ここに開示される内容は、国立歯科学研究所からの補助金第1R43DE018584−01号および国立アレルギー・感染症研究所からの補助金第9R44AI082540−02号の下に政府の支援により一部は行われた。したがって、米国政府は、ここに開示される内容に特定の権利を有する。
【0003】
(分野)
本明細書で開示される事項は、医療用デバイスの表面に糖ペプチド抗生物質を送達するための組成物に関する。より具体的には、本明細書で開示される事項は、あるクラスの糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドのファミリーに関し、このようなペプチドは、医療用デバイスの1つ以上の表面に対して抗菌活性を付与することに関連する組成物および方法において有用である。
【背景技術】
【0004】
(背景)
医療用デバイス上での最近の接着および増殖に関連する問題は、周知である。例えば、「中心ラインカテーテル」でのカテーテル法は、ポリウレタンもしくはポリビニルクロリドのチュービングを患者の胸部の血管に配置すると同時に、上記チュービングの他方の末端を、病院の部屋環境、従って、種々の病原体(潜在的には、薬物耐性病原体を含む)に露出したままにする工程を伴う。頻繁には、このカテーテル法は、上記血液のシステム全体の感染という生命を脅かす合併症を生じる。研究は、このような症例のうちの最大90%が、カテーテル壁に接着する細菌の薄膜に端を発することを示唆する。頻繁に使用される他のタイプのカテーテルとしては、失禁の年配の患者で代表的には使用され、代表的にはシリコーンおよびラテックスから作製される尿カテーテルが挙げられる。不運なことに、28日間以上にわたって尿カテーテルを適所に有する実質的に全ての患者は、尿路感染症を発症させる。中心ラインカテーテルと関連しないほぼ全ての院内全身感染症は、尿カテーテルと関連する。カテーテル関連感染症の処置は、単独で、年間、概算で1.80億ドルの費用がかかっている。
【0005】
類似の問題は、現在、整形外科的インプラントで存在している。整形外科的インプラントの失敗の多くの原因としては、宿主炎症応答、および上記インプラントの表面上の細菌バイオフィルムの形成に起因する感染症が挙げられる。さらに、研究は、外部固定装置と関連する感染症の割合は、85%程度であり得ることを示した。金属ピンおよびワイヤは、整形外科的外傷の処置において、主に、骨折の外部固定のために、より頻繁に使用されつつあるので、関節プロテーゼもしくは他の金属製インプラントからの感染症の割合を低下させる任意のデバイス改善が、整形外科的ヘルスケアの質に顕著な影響を有し得る。
【0006】
医療用デバイスに対する後半に種々の表面改変は、上記改変された医療用デバイスの感染率を低下させるという目的とともに試みられてきた。このような表面改変としては、細菌による接着を阻止するためのポリマーでの上記医療用デバイスの被包、および抗菌剤での上記医療用デバイスの含浸もしくはコーティングが挙げられる。抗菌薬でコーティングもしくは含浸された物品を要する患者の代表例は、特許文献1(「Catheter Having a Long−Lasting Antimicrobial Surface Treatment」)、特許文献2(「Silastic and Polymer−Based Catheters with Improved Antimicrobial/Antifungal Properties」)、特許文献3(「Antimicrobial Tympanostomy Tubes」)、特許文献4(「Anti−infective and antithrombogenic medical articles and method for their preparation」)、特許文献5(「Antimicrobial impregnated catheters and other medical implants」)、および特許文献6(「Antimicrobial impregnated catheters and other medical implants and method for impregnating catheters and other medical implants with an antimicrobial agent」)を含む。
【0007】
糖ペプチド抗生物質の機能的にかつ構造的に関連するクラスは、細菌ペンタペプチドペプチドグリカン前駆体の末端D−アラニン−D−アラニン(D−Ala−D−Ala)に結合することによって、抗菌活性を媒介する。このクラスの抗生物質は、D−Ala−D−Alaの非常に特異的な配置のペプチドを結合する裂け目を含む三次元構造を共通して有する。D−Ala−D−Alaの結合は、トランスペプチド化(D−Ala部分の、隣り合うペンタペプチド上の一部との架橋)を阻害し、それによって、細胞壁成長を阻害すると考えられている。糖ペプチド抗生物質のこのクラス中の抗生物質としては、バンコマイシン、アボパルシン、リストセチン、テイコプラニン、およびこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、バンコマイシンの誘導体としては、多価バンコマイシン、peg化バンコマイシン結合体、ノルバンコマイシン、バンコマイシンジスルフィド、シンモニシン(synmonicin)、モノデクロロバンコマイシンもしくはジデクロロバンコマイシン、バンコマイシンのグルタミンアナログ(例えば、A51568B、およびM43G)、バンコマイシンのアスパラギン酸アナログ(例えば、M43F、M43B)、バンコマイシンのデスバンコサミン誘導体(例えば、A51568AおよびM43A、ならびに対応するアグリコン)、バンコマイシンの塩素誘導体(例えば、A82846B、A82846A(エレモマイシン(eremomycin))、オリエンチシン(orienticin)A、A82846C)、バンコマイシンのベンジルアミノ糖誘導体(例えば、A82846B)、N−アシルバンコマイシン、N−アラシルバンコマイシン、N−アルキルバンコマイシン(オクチルベンジル、オクチルオキシベンジル、ブチルベンジル、ブチルオキシベンジル、およびブチルの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。バンコマイシン関連糖ペプチドの総説については、例えば、非特許文献1を参照のこと。類似の誘導体は、アボパルシン、リストセチン、もしくはテイコプラニンおよび当該分野で周知の方法を使用して作製され得る。
【0008】
微生物の増殖を阻害するために、医療用デバイス表面に適用され得るコーティング組成物が未だに必要である。さらに、医療用デバイスの表面から抗生物質を局所送達し、長期間放出するための改善されたシステムが未だに必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,520,664号明細書
【特許文献2】米国特許第5,709,672号明細書
【特許文献3】米国特許第6,361,526号明細書
【特許文献4】米国特許第6,261,271号明細書
【特許文献5】米国特許第5,902,283号明細書
【特許文献6】米国特許第5,624,704号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nagarajan,Antimicrob.Agents Chemother.1991,35:605−609
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
本明細書で開示される事項は、医療用デバイスの表面に糖ペプチド抗生物質を送達するための組成物および方法を提供する。一実施形態において、ペプチド組成物が提供され、上記ペプチド組成物は、糖ペプチド抗生物質結合ドメインおよび糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを含む。一実施形態において、上記ペプチド組成物は、表面結合ドメインおよび医療用デバイスが構成される表面物質に対する結合親和性を有する表面結合ペプチドをさらに含む。一実施形態において、上記糖ペプチド抗生物質結合ペプチドおよび表面結合ペプチドは、一緒に連結される。一実施形態において、上記ペプチド連結は、リンカーを介しており、ここで上記リンカーが存在しない場合、上記ペプチドは、直接一緒に連結される。
【0012】
本明細書で開示される事項の一実施形態において、医療用デバイスをコーティングするための方法が提供され、上記方法は、糖ペプチド抗生物質結合ドメインおよび糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを含むペプチド組成物を適用する工程を包含し、ここで上記ペプチド組成物の少なくとも一部は、上記医療用デバイスの上記表面に結合されている。一実施形態において、上記ペプチド組成物は、表面結合ドメインおよび医療用デバイスが構成される表面物質に対する結合親和性を有する表面結合ペプチドをさらに含み、ここで上記ペプチド組成物の少なくとも一部は、上記医療用デバイスの上記表面物質に結合されている。
【0013】
本明細書で開示される事項の一実施形態において、ペプチド組成物でコーティングされた医療用デバイスが提供され、上記デバイスは、糖ペプチド抗生物質結合ドメインおよび糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを含む。一実施形態において、上記コーティングされた医療用デバイスは、表面結合ドメインおよび上記医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性を有する表面結合ペプチドをさらに含む。
本明細書で開示される事項の一実施形態において、キット構成要素を含む容器を含むキットが提供され、ここで上記キット構成要素は、糖ペプチド抗生物質結合ドメインおよび糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを含む。一実施形態において、上記キットは、表面結合ドメインおよび医療用デバイスが構成される表面物質に対する結合親和性を有する表面結合ペプチドをさらに含み、ここで上記表面結合ペプチドは、上記糖ペプチド抗生物質結合ペプチドに連結され得る。再構成用の液体、アプリケーターデバイス、使用説明書、上記ペプチド組成物が適用されるべき医療用デバイス、およびこれらの組み合わせを含むキットがまた、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本明細書で開示される事項は、微生物の増殖を防止するために、医療用デバイスの表面に糖ペプチド抗生物質を送達しかつ位置づけるための組成物および方法を提供する。好ましくは、上記医療用デバイスの上記表面からの上記糖ペプチド抗生物質の放出は、長期間(例えば、数日から数週間の範囲に及ぶ)にわたり、その結果、抗生物質の活性が、上記医療用デバイスのその部位において保持され得る。
【0015】
定義の節。以下の用語は、当業者によって十分に理解されていると考えられるが、以下の定義は、本明細書で開示される事項の説明を容易にするために記載される。
【0016】
用語「抗菌活性」とは、本明細書および特許請求の範囲の目的では、組成物(その抗生物質成分を含む)が、細菌増殖を阻害するかもしくは不可逆的に防止する能力をいうために使用される。このような阻害もしくは防止は、殺菌作用(上記組成物が、その抗生物質に対して感受性の1種以上の細菌種を死滅させるかまたは変更できない損傷を与える能力)を介して、または静菌作用(上記組成物の抗生物質に感受性の1種以上の標的細菌種を死滅させずに、上記組成物が、1種以上の細菌種の増殖を阻害する能力)を介して、またはこれらの組み合わせ(例えば、抗生物質組成物の組み合わせが使用される場合、1種以上の殺菌剤、および1種以上の静菌剤とともに)を介して、であり得る。殺菌作用もしくは静菌作用は、治療的に(どちらかの細菌増殖を現在示している環境に)、または予防的に(細菌増殖を支えるもしくは支援するリスクのある環境に)適用され得る。本発明の事項に従う組成物によってコーティングされた医療用デバイスに付与された抗菌活性に言及する場合、主な活性は、細胞壁増殖を阻害する工程を包含する作用機構によって、上記医療用デバイスのコーティングされた表面上での細菌増殖を阻害および/もしくは防止する能力である。
【0017】
用語「糖ペプチド抗生物質」とは、本明細書および特許請求の範囲の目的で、および当業者に公知であるように、細菌細胞壁増殖を阻害する工程を包含する作用機構を有する抗生物質を意味するために、本明細書で使用される。糖ペプチド抗生物質のこのクラスにおける抗生物質としては、バンコマイシン、アボパルシン、リストセチン、テイコプラニン、およびこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、バンコマイシンの誘導体としては、多価バンコマイシン、ペグ化バンコマイシン結合体、ノルバンコマイシン、バンコマイシンジスルフィド、シンモニシン、モノデクロロバンコマイシンもしくはジデクロロバンコマイシン、バンコマイシンのグルタミンアナログ(例えば、A51568B、およびM43G)、バンコマイシンのアスパラギン酸アナログ(例えば、M43F、M43B)、バンコマイシンのデスバンコサミン誘導体(例えば、A51568AおよびM43A、ならびに対応するアグリコン)、バンコマイシンの塩素誘導体(例えば、A82846B、A82846A(エレモマイシン)、オリエンチシンA、A82846C)、ベンジルアミノ糖誘導体のバンコマイシン(例えば、A82846B)、N−アシルバンコマイシン、N−アラシルバンコマイシン、N−アルキルバンコマイシン(オクチルベンジル、オクチルオキシベンジル、ブチルベンジル、ブチルオキシベンジル、およびブチルの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。類似の誘導体は、アボパルシン、リストセチン、もしくはテイコプラニン、および当該分野で周知の方法を使用して作製され得る。好ましいテイコプラニン誘導体としては、ダルババンシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
用語「第1」および「第2」とは、2種の異なる分子の間の区別において説明を容易にするために、本明細書および特許請求の範囲の目的で、本明細書において使用され、そして本発明の事項の範囲を限定することを意図せず、別段特定して示されない限り、空間的順序も、逐次的順序も、階層的順序も意味しない。
【0019】
用語「医療用デバイス」とは、本明細書および特許請求の範囲の目的で本明細書において使用される場合、損傷もしくは障害もしくは疾患もしくは状態を防止、処置、調節もしくは改善するために、損傷した組織の機能を修復もしくは回復させるために、または新たな機能を提供するために、個体の身体の中にもしくは身体上に位置するかもしくは位置することが出来る構造をいう。医療用デバイスは、任意の生体適合性物質を使用して作り出され得る。代表的な医療用デバイスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:股関節体内プロテーゼ(hip endoprostheses)、人工関節、顎もしくは顔面インプラント、歯科用インプラント、腱および人体置換物、皮膚置換物、骨固定インプラント、金属置換物、および金属ねじ、プロテーゼプレート、金属製釘もしくはピンもしくはリベット、金属製移植片デバイス、ポリマー含有移植片、血管プロテーゼ(例えば、パッチ(例えば、心パッチ)、ヘルニア輪縫合リング、環状リング、機械補助デバイス、血管シーリングデバイス、末梢静脈カテーテル、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル)、除細動器、ガイドワイヤ、塞栓保護フィルタ(embolic protection filter)およびデバイス、移植用注入ポンプ、血管移植片、心臓ペースメーカー、人工心臓弁、血液フィルタ、閉鎖デバイス(例えば、創傷、切開、もしくは組織欠損の閉鎖のため(皮膚および他の器官(心臓、胃、肝臓など)が挙げられるが、これらに限定されない)、縫合糸、乳房インプラント、陰茎インプラント、支点と、カテーテル、シャント、神経増殖ガイド、バッテリー動力の医療用デバイスのための導線、眼内レンズ、包帯、組織シーラント、動脈瘤コイル、プロテーゼ(例えば、蝸牛インプラント、眼用プロテーゼ(コンタクトレンズ、および他の視覚補助デバイスが挙げられるが、これらに限定されない)、関節プロテーゼ、歯科用プロテーゼ)、神経刺激器、筋刺激器、眼科用デバイス(緑内障シャント、眼科用インサート、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼のインサート、光学インサート、ネブライザー、医療処置に関するかもしくは生物学的物質のための導管として使用される任意の物品(例えば、カテーテル、チュービング(例えば、気管内チューブ、胸腔チューブなど))(例えば、供給用のチューブ、生物学的流体を排出するためのチューブ);あるいは生物学的物質のための貯蔵デバイスとして使用される任意の容器(例えば、生物学的流体収集場バッグ、タンパク質もしくは細胞含有溶液を貯蔵するためのデバイスなど)。医療用デバイスは、1種以上の基材(金属(金属合金、金属酸化物などが挙げられる)、ポリマー、非金属酸化物(例えば、結晶性酸化物)、セラミック、コラーゲンベースの基材、およびこれらの組み合わせもしくは複合材が挙げられるが、これらに限定されない)から構成され得る。
【0020】
用語「金属」とは、周期表において代表される金属(例えば、遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属(これらの各々は、周期表で分類されるように、構造および機能において関連する金属を含む))、金属合金、金属酸化物、および生体活性ガラスを含む1種以上の化合物もしくは組成物を意味するために、本明細書および特許請求の範囲の目的で本明細書において使用される。好ましい金属の例としては、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、アルミニウム、ジルコニウム合金金属基材(例えば、OxiniumTM)、コバルトクロム合金、金、銀、ロジウム、亜鉛、タングステン、白金、ルビジウム、および銅が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい金属タイプもしくは金属組成物は、上記好ましい金属タイプもしくは金属組成物以外の金属タイプもしくは金属組成物を除外して、本明細書で開示される事項に従って使用され得る。
【0021】
用語「ポリマー」とは、共有化学結合によってつなげられる反復構造ユニット(代表的には、モノマーといわれる構造ユニット)から構成される分子もしくは物質を意味するために、本明細書および特許請求の範囲の目的で、本明細書において使用される。その意図された使用に依存して、ポリマーは、生分解性であり得る。生分解性ポリマーとしては、例えば、インビボで自己溶解性であるか、生体吸収性であるか、そして/もしくは分解性であるポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ポリマーは、非生分解性であるか、そして/もしくは合成である(すなわち、製造され、天然では見いだされない)ものであり得る。本明細書で開示される事項のさらなるポリマーとしては、天然である(すなわち、植物および/もしくは動物の生組織で作製されるように、天然で見いだされる)ポリマーが挙げられる。
【0022】
生分解性であると記載される適切な剛性ポリマーの非限定的例としては、以下が挙げられる:ポリ−アミノ酸;ポリ無水物(マレイン酸無水物ポリマーが挙げられる);ポリカルボン酸;いくつかのポリエチレン(ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない);ポリプロピレン(ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンフマレートが挙げられるが、これらに限定されない);1種以上のポリ乳酸もしくはポリグリコール酸(およびこれらのコポリマーおよび混合物(例えば、ポリ(L−乳酸)(PLLA)、ポリ(D,L,−ラクチド)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、50/50(DL−ラクチド−コ−グリコリド)));ポリオルトエステル;ポリジオキサノン;ポリホスファゼン;ポリデプシペプチド(polydepsipeptide);1種以上のポリカプロラクトン(およびそのコポリマーおよび混合物(例えば、ポリ(D,L−ラクチド−コ−カプロラクトン)もしくはポリカプロラクトン−コ−ブチルアクリレート));ポリヒドロキシブチレートバレレートおよびブレンド;いくつかのポリカーボネート(例えば、チロシン由来ポリカーボネートおよびアリーレート(arylate)、ポリイミノカーボネート、ポリジメチルトリメチルカーボネート);リン酸カルシウム;シアノアクリレート;いくつかのポリアミド(ナイロンが挙げられる);ポリウレタン;剛性セルロース性ポリマー(例えば、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロハン);ならびに前述のうちのいずれかの混合物、組み合わせ、およびコポリマー。生分解性と記載される代表的天然ポリマーとしては、高分子(例えば、ポリサッカリド(例えば、アルギネート、デンプン、キトサン、セルロース、もしくはそれらの誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース));タンパク質およびポリペプチド(例えば、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、フィブリン、フィブリノゲン);ポリグリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸);ならびに前述のうちのいずれかの混合物、組み合わせ、複合材(例えば、コラーゲン−ポリマー複合基材)、およびコポリマーが挙げられる。コラーゲンベースの基材は、コラーゲン−ポリマー複合基材、もしくはコラーゲンから構成されるマトリクス(例えば、鉱物質除去骨マトリクスが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられ得る。
【0023】
非生分解性であると記載される適切な剛性ポリマーの非限定的例としては、以下が挙げられる:不活性ポリアリールエーテルケトン(ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルケトンエーテルケトンケトンが挙げられる);ポリウレタン;ポリスチレン、およびスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー;ポリイソブチレンコポリマーおよびスチレン−イソブチレン−スチレンブロックコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ビニルポリマーのコポリマー;ポリビニルエーテル;ポリビニル芳香族物質;ポリエチレンオキシド;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートが挙げられる);いくつかのポリアミド;ポリアクリルアミド;ポリエーテル(ポリエーテルスルホンが挙げられる);ポリアルキレン(ポリプロピレン、ポリエチレンが挙げられる);エチレンおよびポリプロピレンのコポリマー;いくつかのポリカーボネート(シリコーンおよびシリコーンゴム);シロキサンポリマー;ポリテトラフルオロエチレン;発泡ポリテトラフルオロエチレン(e−PTFE);ナイロンおよび関連ポリアミドコポリマー;ナイロン;フッ素化エチレンプロピレン;ヘキサフルオロプロピレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA);2−ヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA);ポリイミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリする本発明、およびポリスルフィド;ならびに前述のうちのいずれかの混合物、組み合わせ、およびコポリマー(架橋コポリマーが挙げられる)。
【0024】
用語「セラミック」とは、無機非金属物質(その形成は、熱の作用に起因する)を意味するために、本明細書および特許請求の範囲の目的で、本明細書において使用される。適切なセラミック物質としては、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、アルミナ、シリカ、ヒドロキシアパタイト、ガラス、石英、カルシウム酸化物、リン酸カルシウム、酸化インジウムスズ(ITO)、ポリシラノール、酸化リン、磁器、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
語句「結合親和性」とは、本明細書および特許請求の範囲の目的で、ペプチド(本明細書で記載される場合)が、ある種よりも別の種の標的分子もしくは表面物質に対してより大きな結合親和性(例えば、不均一な分子集団中の所定の分子に対する親和性)を有する能力に言及するために使用される。例えば、ペプチドは、上記ペプチドが、別の非糖ペプチドタイプの抗生物質への結合と比較して、糖ペプチド抗生物質への優先的な結合を実証する場合に、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する。別の例として、ペプチドは、上記ペプチドが、別の表面物質(例えば、ポリマー)への結合と比較して、金属への優先的な結合を実証する場合に、金属を含む表面に対して結合親和性を有する。このような優先的結合は、結合親和性を有する上記ペプチドおよび/もしくは物質上もしくはその内部に、特定のコンホメーション、構造、および/もしくは電荷が存在することに依存し得る。いくつかの実施形態において、表面物質もしくは糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドは、上記ペプチドが、例えば、異なる表面物質もしくは非糖ペプチド抗生物質に結合するより、少なくとも10%大きな親和性、または20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%もしくは500%大きな親和性、またはそれより高いパーセンテージで結合する。好ましい実施形態において、ペプチドは、10μM以下、およびより好ましくは、1μM未満、およびより好ましくは、100nM未満のEC50によって測定される場合、相対的結合親和性によって特徴付けられる結合親和性を有する。上記EC50は、当該分野で公知の任意の多くの方法を使用して(例えば、上記ペプチドの濃度が、上記ペプチドが結合親和性を有する基材の既知の量で滴定される結合アッセイから、濃度応答曲線を作成することによって)決定され得る。このような場合、上記EC50は、上記アッセイにおけるそのペプチドに対して観察される最大結合の50%を生じるペプチドの濃度を表す。
【0026】
「糖ペプチド抗生物質結合ドメイン」とは、本明細書で使用される場合、長さが少なくとも約6アミノ酸残基かつ多くて約30アミノ酸残基および糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する、ペプチドもしくはアミノ酸鎖に言及し、ここで上記アミノ酸鎖は、天然に存在するアミノ酸、合成アミノ酸、遺伝子によりコードされたアミノ酸、遺伝的にコードされていないアミノ酸、改変されたおよび/もしくはタグ化されたアミノ酸、ならびにこれらの組み合わせを含み得る;しかし、抗体は、本明細書で開示される事項の糖ペプチド抗生物質結合ドメインの範囲および定義から具体的に排除される。いくつかの実施形態において、上記糖ペプチド抗生物質結合ドメインは、長さにおいて少なくとも約7アミノ酸残基かつ多くても約25アミノ酸残基、または長さにおいて少なくとも約8アミノ酸残基および多くても約20もしくは22アミノ酸残基を有し得る。いくつかの実施形態において、上記糖ペプチド抗生物質結合ドメインは、長さにおいて少なくとも約9アミノ酸残基かつ多くても約18もしくは19アミノ酸残基、または長さにおいて少なくとも約10アミノ酸残基かつ多くても約16もしくは17アミノ酸残基を有し得る。本明細書で開示される事項に従う上記糖ペプチド抗生物質ペプチド結合ドメインは、長さにおいて少なくとも約6アミノ酸かつ多くても約25アミノ酸の連続配列を含み、そしてより好ましくは、長さにおいて、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、もしくは25アミノ酸を含む。
【0027】
「表面結合ドメイン」とは、本明細書において使用される場合、長さにおいて少なくとも約7アミノ酸残基かつ多くても約30アミノ酸残基残基および医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性を有するペプチドもしくはアミノ酸鎖をいい;ここで上記アミノ酸鎖は、天然に存在するアミノ酸、合成アミノ酸、遺伝的にコードされたアミノ酸、遺伝的にコードされていないアミノ酸、改変されたおよび/もしくはタグ化されたアミノ酸、ならびにこれらの組み合わせを含み得る;しかし、抗体は、本明細書で開示される事項の表面結合ドメインの範囲および定義から具体的に排除される。いくつかの実施形態において、上記表面結合ドメインは、長さにおいて少なくとも約8アミノ酸残基かつ多くても約25アミノ酸残基、または長さにおいて少なくとも約9アミノ酸残基かつ多くても約20もしくは22アミノ酸残基を有し得る。本明細書で開示される事項に従う上記表面結合ドメインは、長さにおいて少なくとも約7アミノ酸かつ多くても約25アミノ酸の連続配列を含み、そしてより好ましくは、長さにおいて7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、もしくは25アミノ酸を含む。
【0028】
用語「ペプチドコーティング組成物」もしくは「ペプチド組成物」とは、本明細書および特許請求の範囲の目的で、本明細書で開示される事項に従う糖ペプチド抗生物質結合ドメインを含むペプチドを含む組成物をいう。いくつかの実施形態において、上記ペプチドコーティング組成物は、本明細書で開示される事項に従う表面結合ドメインをさらに含み得る。上記糖ペプチド抗生物質結合ドメインペプチドの、上記表面結合ドメインペプチドへの連結は、いずれの配向においても生じ得る。例えば、上記糖ペプチド抗生物質結合ドメインペプチドは、上記ペプチド組成物のアミノ末端もしくはカルボキシル末端のいずれにおいても生じ得る。上記ペプチド組成物は、結合した糖ペプチド抗生物質、および本明細書で開示される事項に従う1つもしくは両方のペプチドに連結される1種以上のリンカー、本明細書で開示される事項に従う1種以上のアミノ末端改変および/もしくはカルボキシル末端改変、薬学的に受容可能なキャリア、ならびにこれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0029】
従って、一実施形態において、本明細書で開示される事項のペプチド組成物は、式I:GABP‐L‐SBPもしくはSBP‐L‐GABPによって表され得、ここでGABPは、(i)6〜30アミノ酸の糖ペプチド抗生物質結合ドメイン、および(ii)糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を含む、6〜50アミノ酸のペプチドである。SBPは、(i)7〜30アミノ酸の表面結合ドメイン、および(ii)医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性を含む、7〜50アミノ酸のペプチドであり、ここでSBPは、存在していてもよいし存在していなくてもよい。Lは、SBPとGABPとの間のリンカーであり、Lは、存在していてもよいし存在していなくてもよい。Lが存在せずかつSBPが存在する場合、GABPおよびSBPは直接一緒に連結される。好ましくは、上記医療用デバイスの表面物質は、金属、非金属酸化物、セラミック、ポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0030】
SBPは、各々がそのそれぞれの結合親和性を保持するこのような方法において、GABPに連結され得る。このような連結は、医療用デバイスに対する表面結合親和性を有する2種以上のペプチド、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する2種以上のペプチド、およびこれらの組み合わせを有するマルチマー分子を形成する工程を包含し得る。例えば、ペプチド化学の分野において公知の標準的試薬および方法を使用して、2つのペプチドは、側鎖から側鎖(例えば、上記ペプチドの各々が、側鎖アミン(例えば、リジンのεアミン)を有する)への結合、側鎖からN末端の結合(例えば、一方のペプチドのN末端アミンを、他方のペプチドの側鎖と連結する)、側鎖からC末端への結合(例えば、一方のペプチドのC末端化学的部分(例えば、カルボキシル)と他方のペプチドの側鎖アミンとの連結)、N末端からN末端への結合、N末端からC末端への結合、C末端からC末端への結合、もしくはこれらの組み合わせを介して連結され得る。合成もしくは組換え発現において、医療用デバイスに対して表面結合親和性を有するペプチドは、糖ペプチド抗生物質結合親和性を有するペプチドへと、単一ペプチドとして両方のペプチドを合成もしくは発現することによって、直接連結され得る。2種以上のペプチドの連結はまた、本明細書で開示される事項に従う組成物を形成するために、リンカーを介してであり得る。
【0031】
本明細書で開示される事項に従うペプチドは、いくつかの実施形態において、任意の薬学的に受容可能な塩もしくはそのエステルを包含し得る。本明細書で開示される事項に従って使用されるペプチドは、化学合成、酵素による合成、組換え発現、高分子の生化学的もしくは酵素的フラグメント化、高分子の化学的切断、前述の組み合わせによって生成され得るか、または一般に、当該分野の任意の他の方法によって作製され得、そして好ましくは、単離され得る。用語「単離された」とは、上記ペプチドが、上記ペプチド自体の不可欠な構造の一部になっらなかった成分を実質的に含まないことを意味する;例えば、組換え技術によって生成される場合に細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学的に合成されるか、または生化学的プロセスもしくは化学的プロセスを使用して生成される場合に、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。
【0032】
本明細書で開示される事項のペプチドおよび/もしくはアミノ酸は、L型アミノ酸、D型アミノ酸、もしくはこれらの組み合わせを含み得る。代表的な遺伝的にコードされていないアミノ酸としては、2−アミノアジピン酸;3−アミノアジピン酸;β−アミノプロピオン酸;2−アミノ酪酸;4−アミノ酪酸(ピペリジン酸);6−アミノカプロン酸;2−アミノヘプタン酸;2−アミノイソ酪酸;3−アミノイソ酪酸;2−アミノピメリン酸;2,4−ジアミノ酪酸;デスモシン;2,2’−ジアミノピメリン酸;2,3−ジアミノプロピオン酸;N−エチルグリシン;N−エチルアスパラギン;ヒドロキシリジン;アロ−ヒドロキシリジン;3−ヒドロキシプロリン;4−ヒドロキシプロリン;イソデスモシン;アロ−イソロイシン;N−メチルグリシン(サルコシン);N−メチルイソロイシン;N−メチルバリン;ノルバリン;ノルロイシン;オルニチン;および3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン(「DOPA」)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な誘導体化アミノ酸は、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されてアミンヒドロクロリド、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、カルボアセチル基もしくはホルミル基を形成した分子を含む。遊離カルボキシル基は、エステルもしくはヒドラジドの塩、メチルエステルおよびエチルエステル、または他の形態を形成するために誘導体化され得る。遊離ヒドロキシル基は、O−アシルもしくはO−アルキル誘導体を形成するために誘導体化され得る。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、N−im−ベンジルヒスチジンを形成するために誘導体化され得る。
【0033】
さらに、本明細書で開示される事項に従うペプチドは、化学的部分の付加、またはアミノ酸の置換、挿入および欠失によって改変され得る。ここでこのような改変は、その使用において特定の利点を提供する。従って、用語「ペプチド」とは、ペプチド誘導体の種々の形態(例えば、アミド、タンパク質との結合体、環式ペプチド、重合体化ペプチド、保存的に置換された改変体、アナログ、フラグメント、化学的に改変されたペプチド、およびペプチド模倣物を含む)のうちのいずれかを包含する。本明細書で開示される事項に従う終えのファミリーの所望の結合特徴を有する任意のペプチド誘導体は、本明細書で開示される事項の実施において使用され得る。例えば、合成ペプチドのアミノ末端の化学的反応性をブロックするために、上記ペプチドのN末端アミノ酸に付加される化学基は、N末端基を含む。ペプチドのアミノ末端を保護するためのこのようなN末端基は、当該分野で周知であり、そして低級アルカノイル基、アシル基、スルホニル基、およびカルバメート形成基が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいN末端基としては、アセチル、Fmoc、およびBocが挙げられ得る。合成ペプチドのカルボキシ末端の化学反応性をブロックするために上記ペプチドのC末端アミノ酸に付加される化学基は、C末端基を含む。ペプチドのカルボキシ末端を保護するためのこのようなC末端基は、当該分野で周知であり、そしてエステル基もしくはアミド基が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチドの末端改変は、しばしば、プロテイナーゼ消化によって感受性を低下させ、従って、プロテアーゼが存在し得る生物学的流体の存在下でペプチドの半減期を長期化するために有用である。ペプチドの末端改変はまた、脂肪酸改変を含み得る。必要に応じて、ペプチドは、本明細書で記載されるように、リンカー分子に上記ペプチドを連結することを促進するために、1種以上の化学基(例えば、反応性官能基(例えば、フッ素、臭素、もしくはヨウ素))を含むように改変された1種以上のアミノ酸を含み得る。本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」はまた、上記ペプチド結合のうちの1つ以上が、偽ペプチド(pseudopeptide)結合によって置換されるペプチドを包含し、偽ペプチド結合としては、カルバ結合(carba bond)(CH−CH)、デプシ結合(depsi bond)(CO−O)、ヒドロキシエチレン結合(CHOH−CH)、ケトメチレン結合(CO−CH)、メチレン−オキシ結合(CH−O)、還元された結合(CH−NH)、チオメチレン結合(CH−S)、N−改変結合(−NRCO−)、およびチオペプチド結合(CS−NH)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で開示される事項に従う組成物において有用なペプチドは、配列番号6〜8に従う配列を有するペプチド、ならびに表1および表4において開示される例示的ペプチド、ならびにもとの例示的ペプチドの結合特性が、実質的に保持される限りにおいて、本明細書における配列番号1〜5、配列番号9〜10、配列番号14〜120、および配列番号124〜131の配列に対して残基の1もしくは数個の置換、付加および/もしくは欠失を有するペプチドを含む。従って、本明細書で開示される事項は、約1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸もしくは8アミノ酸(本明細書で開示される例示的ペプチドの長さに依存する)だけ、本明細書で開示される例示的配列とは異なり、かつ少なくとも70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性の、本明細書で開示される例示的配列と配列同一性を共有するペプチドを包含する。配列同一性は、手動で計算され得るか、または数学的アルゴリズムのコンピューター実行を使用して計算され得る(例えば、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA、または当該分野で公知の他のプログラムもしくは方法)。これらプログラムを使用するアラインメントは、デフォルトパラメーターを使用して行われ得る。本明細書で開示される例示的ペプチドの配列から本質的になるアミノ酸配列を有するペプチドは、機能的に類似のアミノ酸残基(「保存的置換」)を有する例示的ペプチドの配列におけるアミノ酸残基の置換の結果として、1もしくは数個の異なるアミノ酸残基を有し得る;ただし、保存的置換を含むペプチドは、上記保存的置換を含まない例示的ペプチドの結合親和性を保持している。保存的置換の例としては、1個の非極性(疎水性)残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニン)で別のものを置換すること;1個の芳香族残基(例えば、トリプトファン、チロシン、もしくはフェニルアラニン)で別のものを置換すること;1個の極性(親水性)残基で別のものを、例えば、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、スレオニンとセリンとの間で置換すること;1個の塩基性残基(例えば、リジン、アルギニンもしくはヒスチジン)で別のものを置換すること;もしくは1個の酸性残基(例えば、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸)で別のものを置換すること;または脂肪族側鎖含有アミノ酸を脂肪族アミノ酸(例えば、側鎖に脂肪族部分を有するメチオニン、リジンおよびアルギニン、ならびに脂肪族アミノ酸であるアラニン、ロイシン、イソロイシン、およびバリン)で置換することが挙げられる。
【0035】
別の実施形態において、本明細書で開示される事項のペプチドは、もとの例示的ペプチドの結合特性が実質的に維持される限りにおいて、カルボキシ末端および/もしくはアミノ末端においてさらなるアミノ酸(例えば、一方もしくは両方の末端において、1から最大約10個、20個、30個もしくは40個までの範囲に及ぶさらなるアミノ酸)を含み得る、表1および表4、ならびに配列番号1〜10、配列番号14〜119、および配列番号124〜131で開示される例示的ペプチド結合ドメインを含む。例えば、一方もしくは両方の末端においてさらなるアミノ酸を含む上記ペプチドは、本明細書で記載されるように、糖ペプチド抗生物質結合親和性および/もしくは表面結合親和性を保持する。例えば、配列番号1〜10、配列番号14〜120、および配列番号124〜131として例示される例示的アミノ酸配列の一方もしくは両方の末端においてさらなるアミノ酸を含むペプチドは、本明細書で提供される場合、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性および/もしくは表面結合親和性を保有し、結合親和性において顕著な変化(例えば、結合親和性において約10倍より高い〜50倍以上の差異を含む顕著な変化)を構成する任意の特徴を有しない。
【0036】
用語「リンカー」とは、本明細書および特許請求の範囲の目的で、少なくとも2個の異なる分子を共有結合する(例えば、本明細書で開示される事項に関して、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有する少なくとも1個のペプチドを、医療用デバイスの表面に、もしくは医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性を有するペプチドに連結する)ために、文永か今日として作用する,化合物もしくは部分をいうために使用される。従って、例えば、上記リンカーの1個の部分(例えば、「第1の」反応性官能基)は、表面に対する結合親和性を有する少なくとも1個のペプチドに結合し、そして上記リンカーの別の部分(例えば、「第2の」反応性官能基)は、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに結合する。当業者にとって公知であるように、および当該分野で公知の方法を使用して、2つの分子は、段階的様式において、上記リンカーに連結され得るか、または上記リンカーに同時に連結され得る。上記リンカーに対しては、これが分子架橋としてその目的を果たし得、本明細書で開示される事項に従う組成物において上記ペプチドの結合親和性が、実質的に保持される限りにおいて、特定のサイズ制限も内容制限もない。
【0037】
リンカーは、化学鎖、化合物(例えば、試薬)などが挙げられるが、これらに限定されないことが当業者にとって公知である。上記リンカーとしては、ホモ官能性リンカーおよびヘテロ官能性リンカーが挙げられ得るが、これらに限定されない。ヘテロ官能性リンカーは、当業者に周知であり、第1の分子に特異的に連結するために第1の反応性官能基(化学基もしくは化学的部分)を有する一方の末端、および第2の分子に特異的に連結するために第2の反応性官能基を有する反対の末端を含む。種々の二官能性もしくは多官能性の試薬、両方がホモ官能性およびヘテロ官能性(例えば、Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.のカタログに記載されているもの)、アミノ酸リンカー(代表的には、3〜15アミノ酸の間の短いペプチド、およびしばしば、アミノ酸(例えば、グリシン、および/もしくはセリン)を含むペプチド、ならびにポリマー(例えば、ポリエチレングリコール))が、本明細書で開示される事項に関してリンカーとして使用され得ることは、当業者に明らかである。一実施形態において、代表的ペプチドリンカーは、結合ドメインに連結されるべき複数の反応性部位(例えば、ポリリジン、ポリオルニチン、ポリシステイン、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸)を含むか、または実質的に不活性なペプチドリンカー(例えば、ポリグリシン、ポリセリン、ポリプロリン、ポリアラニン、およびアラニル、セリニル、プロリル、および/もしくはグリシニルアミノ酸残基を含む他のオリゴペプチド)を含む。リンカーはまた、銅触媒のアジド−アルキン環付加(例えば、「クリックケミストリー」)もしくは当該分野で周知の任意の他の方法を利用し得る。リンカーは、当該分野で公知であり、切断され得る(例えば、熱によって、個体の身体中もしくは身体上で見いだされた天然の酵素によって、そして/またはpH感受性によって)リンカー、および架橋目的で、他の分子部分に対してもしくはそれ自体に対して反応性にされ得るリンカーを含む。リンカーとして有用なpH感受性物質の例としては、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートが挙げられ得るが、これらに限定されない。連結されるべき分子、および連結が行われる条件のような因子に依存して、上記リンカーは、生物学的機能の保存、安定性、特定の化学物質に対する耐性および/もしくは温度パラメーター、ならびに十分亜立体選択性もしくはサイズの保存のような特性を最適化するために、長さおよび組成において変動し得る。例えば、上記リンカーは、組成物が、表面にもしくは糖ペプチド抗生物質に十分に結合する能力、上記目的のための適切なアビディティーを顕著には妨害すべきでない。好ましいリンカーは、本明細書で開示される事項の上記組成物の機能を増強もしくは補完する活性を有する分子であり得る。
【0038】
適切なポリマーリンカーは、当該分野で公知であり、合成ポリマーもしくは天然のポリマーを含み得る。代表的合成ポリマーとしては、ポリエーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」)、10ユニットポリ(エチレングリコール)(「P10」)、Fmoc−8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸(「MP」)であるミニ−PEG、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA))、ポリアミン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリウレタン、ポリメタクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート;PMMA)、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリヘキサン酸、可撓性キレート化剤(例えば、EDTA、EGTA、および好ましくは、約20ダルトン〜約1,000キロダルトンの分子量を有する他の合成ポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な天然ポリマーとしては、ヒアルロン酸、アルギネート、コンドロイチン硫酸、フィブリノゲン、フィブロネクチン、アルブミン、コラーゲン、カルモジュリン、および好ましくは、約200ダルトン〜約20,000キロダルトンの分子量(構成モノマーについて)を有する他の天然のポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーリンカーは、ジブロッックポリマー、マルチブロックコポリマー、コームポリマー、スターポリマー、樹状ポリマーもしくは分枝状ポリマー、ハイブリッド直鎖状−樹状ポリマー、リジンから構成される分枝鎖、もしくはランダムコポリマーを含み得る。リンカーはまた、メルカプト(アミド)カルボン酸、アクリルアミドカルボン酸、アクリルアミド−アミドトリエチレングリコール酸、7−アミノ安息香酸、およびこれらの誘導体を含み得る。
【0039】
別の実施形態において、本明細書で開示される事項のリンカーは、脂肪酸であり得る。本明細書で開示される事項の脂肪酸としては、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸(例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、アミノウンデカン酸(AUD)、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、およびドコサヘキサエン酸が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、上記脂肪酸リンカーは、上記表面結合ペプチドと、上記糖ペプチド抗生物質結合ペプチドとの間の連結基として使用される。リンカーとしてのそれらの使用に加えて、本明細書で開示される事項の脂肪酸分子は、他の実施形態において、上記表面結合ペプチドおよび上記糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを改変するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、脂肪酸は、表面結合ペプチドおよび糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを含む上記ペプチド組成物のアミノ末端および/もしくはカルボキシル末端を改変するために使用される。
【0040】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書で、本明細書および特許請求の範囲の目的で使用される場合、本発明の事項に従う組成物の投与および/もしくは適用のための適切な支持媒体であるキャリア媒体を意味する。好ましくは、薬学的に受容可能なキャリアは、これが添加される本明細書で開示される事項に従う組成物の生物学的活性を顕著に改変しない。このようなキャリア媒体の例としては、水溶液、水性溶媒もしくは非水性溶媒、懸濁物、エマルジョン、ゲル、ペーストなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者に公知であるように、適切な薬学的に受容可能なキャリアは、1種以上の物質(水、緩衝化した水、医療用非経口ビヒクル、生理食塩水、0.3% グリシン、水性アルコール、等張性水性緩衝化剤が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得;そして1種以上の物質(例えば、水溶性ポリマー、グリセロール、ポリエチレングリコール、グリセリン、油、塩(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびアンモニウム)、ホスホネート、炭酸エステル、脂肪酸、サッカリド、ポリサッカリド、糖タンパク質(増強された安定性のため)、賦形剤、および保存剤ならびに/または安定化剤(貯蔵寿命を高めるか、または必要な場合、上記組成物の製造および流通に適切である)をさらに含み得る。
【0041】
用語「有効量」とは、本明細書で開示される事項に従う組成物、およびこれが結合するかもしくは連結される医療用デバイスに関連して、そして本明細書および特許請求の範囲の目的で、上記組成物の、上記基剤への結合を媒介するように;上記組成物の、医療用デバイスへの結合を促進することにおいて、上記組成物の十分な量を意味するために、本明細書で使用される。用語「有効量」は、本明細書で開示される事項に従う組成物の使用およびその抗菌活性への言及において、および本明細書および特許請求の範囲の目的で、これが適用される上記医療用デバイスの表面において細菌増殖を阻害するに有効な、上記組成物中の糖ペプチド抗生物質の量を意味するために、本明細書で使用される。
【0042】
用語「個体」とは、本明細書において使用される場合、本明細書および特許請求の範囲の目的で、ヒトもしくは動物のいずれか、および好ましくは、ヒトに言及する。
【0043】
本明細書で開示される事項は、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチド;本明細書で開示される事項に従うペプチドを含む組成物;本明細書で開示される事項のペプチド組成物を適用することによって、医療用デバイスをコーティングするための方法;および本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物が適用された医療用デバイスを提供する。糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有する例示的なペプチドは、配列番号1〜10および配列番号119、配列番号124〜131と、配列番号1〜10および配列番号119、配列番号124〜131のうちのいずれか1個以上と95%の同一性を有するペプチド、その保存的に置換された改変体、その改変されたペプチド(すなわち、上記ペプチドは、末端改変、および連結を促進するための改変のうちの1つ以上を含むように改変されている)と、これらの組み合わせとからなる群より選択されるアミノ酸からなる群より選択されるペプチドを含む。
【0044】
以下の実施例は、本明細書で開示される事項の特定の局面をさらに記載するために提供され、本明細書で開示される事項の範囲を制限することは意図されない。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
ファージディスプレイ技術は、一般に、タンパク質−ペプチド相互作用によって代表的には媒介される結合親和性を有するペプチドを生成するために使用される。ファージディスプレイはまた、表面物質(例えば、金属表面、もしくはポリマー表面)に対して結合親和性を有するペプチドを生成するために首尾よく使用されてきた。しかし、ファージディスプレイは、代表的には、低分子(例えば、2,000ダルトン未満、およびより代表的には、1,500ダルトン未満の分子サイズを有する)(例えば、バンコマイシン)に対して高い結合親和性(例えば、<1mMのEC50によって測定される場合)を有するペプチドを生成するために、首尾よく使用されてこなかった。従って、この実施例では、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性(高い結合親和性を含む)を有するペプチドを予測外にも生成するために、ファージディスプレイ技術を利用するための種々の方法が例示される。医療用デバイスの表面に対して結合親和性を有するペプチドを、以前に記載されたように、固相スクリーニングおよびファージディスプレイ技術を使用して最初に開発し、続いて、ペプチド設計およびペプチド合成により、改善された結合特性を得た。
【0046】
ファージ選択について以前に記載された方法と比較して、ファージディスプレイされているペプチドが、首尾よく得られ、このペプチドが、バンコマイシンおよび他の糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有することを、本明細書で開示される事項の開発の間に、予測外にも発見した。
【0047】
この本明細書で開示される事項の開発において使用される方法の例示的実施例として、緩衝液−T(200μl、終濃度0.05%でTWEEN−20を含む0.05M トリス緩衝化生理食塩水)中のビオチン化バンコマイシン(100ピコモル)のアリコートを、一連の微小遠心チューブ中に分与した。チューブあたり、ファージライブラリーの25μlの混合物を添加して、スクリーニングし(例えば、1010pfu/ml各々の濃度で)、上記混合物を、室温において2時間にわたってインキュベートした。上記混合物に、ストレプトアビジン標識した金属ビーズを添加し、これを、緩衝液−T中の1% ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックし、上記ビーズ含有混合物を、室温において2時間にわたって穏やかに混合した。次いで、上記チューブを、上記金属ビーズを各回で沈めるために磁力を使用して、1mlの緩衝液−T+0.5mM ビオチンで3回洗浄した。その上清を除去し、バンコマイシンとの競合によって、ファージを上記金属ビーズから溶離させた。上記溶離プロセスにおいて、上記ビーズを含む各チューブに、20μlの0.1mM バンコマイシンを添加し、上記ビーズ含有混合物を、室温において20分間にわたってインキュベートした。次いで、上記ファージ含有上清を、ファージに感染しやすいE.coli細胞の培養物に移し、振盪インキュベーター中で、37Cにおいて一晩インキュベートした。ファージ上清を、8500×gにおいて10分間の培養培地の遠心分離によって回収した。第2ラウンドおよび第3ラウンドの選択を、投入物として前のラウンドから増幅したファージを用いて、第1のラウンドと同様の様式において行った。
【0048】
ファージ結合を決定するために、ELISA(酵素結合イムノアッセイ)を、以下のように行った。マイクロタイタープレートのウェルを、1ウェルあたり50μlの10μg/ml 溶液を4℃において16時間にわたってインキュベートすることによって、ストレプトアビジンでコーティングした。上記マイクロタイタープレートのウェル表面上の非特異的結合部位を、250μlの、0.1M NaHCO中1% BSAでブロックした。上記プレートを、少なくとも2時間にわたって室温においてインキュベートした。上記ウェルを緩衝液−Tで3回洗浄した後、各ウェルに、100μl 緩衝液−T中のビオチン化バンコマイシン(0.1μM)を添加し、30分間にわたって室温においてインキュベートした。次いで、100μl 緩衝液−T中のビオチン(0.1μM)を、各ウェルに添加して、いかなる利用可能なストレプトアビジン部位をもブロックした。上記プレートを、30分間にわたって室温においてインキュベートし、続いて、緩衝液−Tで5回洗浄した。各ウェルに、175μlの緩衝液−Tおよび25μlの試験している上記ファージ溶液を添加し、続いて、室温において2時間にわたってインキュベートした。緩衝液−Tで数回洗浄した後、西洋ワサビ−ペルオキシダーゼに結合体化された抗M13ファージ抗体を添加し、続いて、インキュベートし、洗浄した。色素生成性薬剤ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)を添加し、15分間で、405nmの読み取り値として決定した。各ウェルについて得られた吸光度値は、バンコマイシンに結合したファージの量と相関している。
【0049】
上記挿入部位に隣接する上記ファージベクター配列に対するプライマーを使用して、各群における上記ファージについて、上記ペプチドをコードするDNA配列を決定した。上記ペプチドインサートをコードする配列を翻訳して、上記ファージ表面にディスプレイされたその対応するアミノ酸配列を得た。上記アミノ酸配列(これは、バンコマイシンを上記代表的な糖ペプチド抗生物質として使用して単離されたペプチドをコードする)を決定した。これを表1に示す。上記ペプチドに隣接するファージアミノ酸は、代表的には、上記ペプチドに対する結合親和性に顕著な寄与を提供しないが、本明細書で開示される事項に従うペプチドは、これらのアミノ酸配列において、N末端(SS)およびC末端(SR)において上記ペプチドに隣接するファージアミノ酸を含み得る。配列番号5に示される上記ペプチド配列は、配列番号1の第1のシステイン残基の、セリン残基への部位指向性変異誘発を表す。
【0050】
上記ファージ由来配列はを、合成ペプチドとしてさらに評価した。本明細書で開示される事項に従うペプチドは、当業者に公知の任意の方法(固相合成、液相合成、直線状合成、組換え合成、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して合成され得る。この実施例において、ペプチドを、標準的なFmoc化学を使用するペプチド合成器で、標準的な固相ペプチド合成技術を使用して合成した。全ての残基を連結した後、同時の切断および側鎖脱保護を、トリフルオロ酢酸(TFA)カクテルでの処理によって達成した。粗製ペプチドを、冷ジエチルエーテルで沈澱させ、0.1% TFAを含む水/アセトニトリルの直線勾配を使用して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。上記合成ペプチドの均一性を、分析用逆相HPLCによって評価し、上記ペプチドの正体を、質量分析計で確認した。
【0051】
糖ペプチド抗生物質に対する代表的な結合アッセイを、以下の手順に従って行った。簡潔には、結合について特徴付けされるべきアミノ酸配列を含む合成ペプチドを、ストレプトアビジンコーティングした96ウェルプレート上の固定化を促進するために、ビオチン化した。上記マイクロタイタープレートを、50μlの、0.1M NaHCO中の10μg/ml ストレプトアビジン溶液を添加し、上記プレートを、少なくとも3時間にわたってインキュベートすることによって、ストレプトアビジンでコーティングした。上記プレートのウェルを、150μlの、0.1M NaHCO中の1% BSA溶液を添加し、少なくとも2時間インキュベートすることによってブロックし、上記プレートを、必要時まで4℃で貯蔵した。使用前に、上記ストレプトアビジン;プレートを、緩衝液−T中で完全に洗浄した。各ウェルあたり、ペプチド(100μlの、緩衝液−T中0.1μM ペプチド)を添加し、次いで、振盪しながら、室温において30分間にわたってインキュベートした。200μlの、緩衝液−T中の0.5mM ビオチンを添加して、残りのストレプトアビジン部位をブロックし、プレートを、室温において15分間にわたってインキュベートした。次いで、プレートを緩衝液−Tで洗浄して、過剰なビオチンおよびペプチドを除去した。緩衝液−T中のビオチン化糖ペプチド抗生物質の連続希釈物を、各ウェルに添加し(100μl)、これは、100pM〜100μMの間の濃度範囲を表す。プレートを、緩衝液−Tで数回洗浄する前に、振盪しながら室温において30分間にわたってインキュベートした。次いで、糖ペプチド抗生物質を、100μlの希釈したストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ結合体を各ウェルに添加することによって検出し、室温において30分間にわたってインキュベートした。過剰な結合体を、緩衝液−Tでの反復洗浄によって除去し、上記ウェル中に残っているアルカリホスファターゼの量を、pNPP(パラ−ニトロフェニルホスフェート)比色酵素アッセイを使用して検出した。上記ペプチドによって捕捉された糖ペプチド抗生物質の相対量を、上記アルカリホスファターゼ反応の呈色生成物の405nmの吸光度を測定することによって決定した。上記EC50を、上記アッセイにおいて使用される上記糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性に関して、表1に示されるように、(代表的糖ペプチド抗生物質としてバンコマイシンを用いて)各ペプチドに対して決定した。
【0052】
【表1】

バンコマイシンを結合することができるさらなるペプチドを同定するために、スキャニング縮重コドン変異誘発研究を、配列番号1を使用して行った。上記単離されたバンコマイシン結合ペプチドの改変体を迅速に試験するために、細菌発現系を設計した。この系の下で、ペプチド配列を、T7プロモーターの転写制御下に配置した。上記ペプチドを、分泌のためにこれを標的とする、N末端のOmpAシグナルペプチドといっしょに発現させた。HA−tagを、抗体媒介検出のための上記ペプチド配列の下流で操作し、ライノウイルスプロテアーゼ切断部位を、ペプチド遊離のために操作し、上記アルカリホスファターゼをコードするDNA配列を、p−NPP比色検出のために操作した。この発現系を使用して、スキャニング変異誘発研究を行った。ここで新たなペプチド配列を、変異誘発オリゴヌクレオチドプライマーを使用して生成し、バンコマイシン結合について試験した。上記C末端のHis6タグは、Ni2+カラムもしくはビーズ(Qiagen;Cat# 30600)でのハイスループットペプチド精製を可能にした。PCR変異誘発および上記ベクターへの配列のクローニングの後、コンピテント細胞を形質転換し、2xYT−KAN−BCIP(40μg/ml)プレート上で、37℃において一晩培養した。形質転換したコロニーを、2xYT−KANブロス中で一晩増殖させた。ペプチド−AP融合物含有上清を採取し、バンコマイシンへの結合について試験した。簡潔には、上記改変ペプチドを、以下のように、バンコマイシン結合について試験した。ストレプトアビジンコーティングしたマイクロタイタープレートを、ビオチン化バンコマイシンでコーティングした。上記アルカリホスファターゼ連結した改変ペプチドの濃度を、アルカリホスファターゼ活性に基づいて、アルカリホスファターゼ特異的色素生成性基質p−ニトロフェニルホスフェート(p−NPP)との動力学的アッセイにおいて決定したように、等しいレベルに正規化した。ストレプトアビジンコーティングしたマイクロタイタープレートを、ビオチン化バンコマイシンでコーティングした。アルカリホスファターゼ連結したペプチドの正規化した量を、上記固定化バンコマイシンに結合させ、上記アルカリホスファターゼ特異的色素生成性基質p−NPPの添加によって検出した。上記変異誘発研究の結果を、表2に示す。
【0053】
【表2】

表1において例示的糖ペプチド抗生物質としてバンコマイシンを使用するファージ選択によって同定した上記ペプチドのアミノ酸配列のアラインメントから、コンセンサス糖ペプチド抗生物質結合ドメイン配列を構築した(配列番号6)。この配列は、配列番号1〜4の全てを代表しかつ配列番号1での変異誘発研究の結果を考慮に入れている。上記コンセンサス糖ペプチド抗生物質結合ドメイン(配列番号6)は、以下のとおりである:CXaa0−3DMFGXaa0−3C(配列番号6)。ここでXaaは、任意のアミノ酸を表し、上記2個のシステイン残基は、ジスルフィド結合されており、上記2個のシステイン残基の間の長さは、4〜10アミノ酸の範囲に及び得る。
【0054】
同様に、表1において例示的糖ペプチド抗生物質としてバンコマイシンを使用するファージ選択によって同定された上記ペプチドのアミノ酸配列のアラインメントから、コンセンサス糖ペプチド抗生物質結合ドメイン配列を構築した(配列番号7)。この配列は、配列番号1〜4の全てを代表しかつ配列番号1での変異誘発研究の結果を考慮に入れている。上記コンセンサス糖ペプチド抗生物質結合ドメイン(配列番号7)は、以下の通りである:XaaXaaXaa(配列番号7)。ここで上記配列は、少なくとも2個のシステイン残基を含み;ここでXaaは、別段示されなければ任意のアミノ酸であり;ここでXaaもしくはXaaのうちのいずれかはCであり、Xaaは、XaaがCである場合に存在しなくてもよく;ここでXは、L、M、I、VもしくはAであり;ここでXは、I、MもしくはFであり;ここでXはDであり;ここでXは、MもしくはIであり;ここでXは、FもしくはYであり;ここでXはGであり;ここでXは、CもしくはPを除いて任意のアミノ酸であり;ここでXもしくはXがCである場合、Xaaは、C以外の任意のアミノ酸であり、そして存在しなくてもよく;ここでXは、XaaもしくはXがCでなく、XがCでなければ、CもしくはHであり;そしてここでXは、XaaもしくはXがCでなく、XがCでなければ、HもしくはCである。
【0055】
別の実施形態において、コンセンサス糖ペプチド抗生物質結合ドメイン配列を構築した(配列番号8)。この配列は、配列番号1〜5のうちの全てを代表しかつ表2に示される配列番号1とともに、配列番号1での変異誘発研究の結果を考慮している。上記コンセンサス糖ペプチド抗生物質結合ドメインは、以下の通りである:XaaXaaXaa(配列番号8)。ここで上記配列は、少なくとも2個のシステイン残基を含み;ここでXaaは、別段示されなければ任意のアミノ酸であり;ここでXaaもしくはXaaのいずれかはCであり、XaaがCである場合、Xaaは存在しなくてもよく;ここでXは、Cでも、Gでも、Pでも、Qでも、Tでもなく;ここでXは、Aでも、Gでも、PでもSでもなく;ここでXは、DもしくはCであり;ここでXは、MもしくはIであり;ここでXは、FもしくはYであり;ここでXは、Aでも、Rでも、SでもVでもなく;ここでXは、CもしくはP以外の任意のアミノ酸であり;ここでXもしくはXがCである場合、Xaaは、C以外の任意のアミノ酸であり、そして存在しなくてもよく;ここでXは、XaaもしくはXがCでなく、XがCでなければ、CもしくはHであり;そしてここでXは、XaaもしくはXがCであり、XがCでなければ、HもしくはCである。
【0056】
従って、ペプチド結合ドメイン配列モチーフが提供され、このモチーフは、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する。配列番号6〜8の上記糖ペプチド抗生物質結合ドメインに従うペプチドは、本明細書で開示される事項に従う改変をさらに含み得、上記改変としては、例えば、1種以上の末端改変、および上記ペプチドの連結を容易にする改変が挙げられる。従って、このようなペプチドは、配列番号1〜8からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し得る。好ましくは、本明細書で開示される事項に従うペプチドは、1μM未満のEC50の、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する。
【0057】
(実施例2)
この実施例において、本明細書で開示される事項に従うペプチドのさらなる特徴が例示される。
【0058】
構造−機能および結合親和性特徴
上記ペプチド、アミノ酸配列SSCLIDMYGVCHNFDGAYDSSR(配列番号1)から、さらなるペプチドを設計し、構造−機能関係をさらに評価するために、本明細書で記載される細菌発現系において発現した。配列番号9のアミノ酸配列(STCLIDMYGVCH)を含む短縮型ペプチドを発現し、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性について、配列番号1を含むペプチドと比較した。この短縮型ペプチドのダイマー(配列番号10;STCLIDMYGVCHSSCLIDMYGVCH)、DからAへの置換(配列番号11;STCLIAMYGVCH)、DからEへの置換(配列番号12;STCLIEMYGVCH)、およびGからSへの置換(配列番号13;STCLIDMYSVCH)もまた、生成した。糖ペプチド抗生物質に対するこれらペプチドおよび他の代表的ペプチドの相対的結合強度を、バンコマイシンもしくは他の糖ペプチド抗生物質への結合についてのEC50値によって決定した。
【0059】
糖ペプチド抗生物質に対する代表的結合アッセイを、以下の手順に従って行った。上記アルカリホスファターゼ連結した改変ペプチドの濃度を、上記アルカリホスファターゼ特異的色素生成性基質p−ニトロフェニルホスフェート(p−NPP)での動力学的アッセイにおいて決定したように、上記アルカリホスファターゼ活性に基づいて、等しいレベルへと正規化した。ストレプトアビジンコーティングマイクロタイタープレートを、ビオチン化バンコマイシンでコーティングした。正規化したアルカリホスファターゼ連結ペプチドの連続希釈物を、上記固定化バンコマイシンに結合させ、上記アルカリホスファターゼ特異的色素生成性基質p−NPPの添加によって検出した。上記固定化バンコマイシンへのペプチド結合に対する相対的親和性を、上記アルカリホスファターゼ反応の呈色生成物の405nmでの吸光度を測定することによって決定した。糖ペプチド抗生物質結合を示した上記アルカリホスファターゼ連結ペプチド(配列番号9および配列番号10)について、合成ペプチドを合成した。対照的に、配列番号11、配列番号12もしくは配列番号13については、糖ペプチド抗生物質結合は検出可能でなかった。バンコマイシンに結合する上記合成ペプチドのEC50値を、実施例1に記載されるように決定し、表3に示す。約1μM以下、およびより好ましくは、ナノモル濃度範囲(例えば、<0.1μM)のEC50の結合親和性で、糖ペプチド抗生物質に結合するペプチドが好ましい。
【0060】
【表3】

表3から明らかなように、配列番号9のアミノ酸配列を含むペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドと比較して、バンコマイシンに対して類似の結合親和性を示す。このことは、配列番号9のアミノ酸配列が、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性ついて重要なコアモチーフを表すことを示す。このコアモチーフはまた、配列番号6〜8として示される上記コンセンサスアミノ酸配列によって表され得、本明細書で実施例1に記載され得る。また、表3から示されるように、D位置(配列番号9におけるアミノ酸6位;表3、配列番号11および配列番号12を参照のこと)もしくはG位置(配列番号9におけるアミノ酸9位;表3、配列番号13を参照のこと)におけるコアモチーフ中の置換は、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性の喪失を生じた。このことは、糖ペプチド抗生物質への結合の機能において上記コアモチーフ中のこれら重要な位置においてこれら2個の残基の重要性を示す。表3および他のデータから推定され得るように、このコアモチーフのコンカテマ−は、上記コアモチーフのモノマーと比較して、糖ペプチド抗生物質への類似のもしくは改善された結合を示し得る(表3、配列番号9および配列番号10を参照のこと)。このコアモチーフにおける他の置換を評価する研究は、システインジスルフィド架橋が、糖ペプチド抗生物質への最適な結合に好ましい(例えば、約7〜約9アミノ酸で隔てられた2個のシステイン;例えば、配列番号9のアミノ酸3位および11位のシステイン残基を参照のこと)ことを示す。上記ジスルフィド結合をチオエーテルで置換することは、上記ジスルフィド結合を有する上記コアモチーフと同様に、糖ペプチド抗生物質への匹敵する結合を示す。
【0061】
本明細書で記載される結合アッセイ、および他のデータは、(例えば、医療用デバイスの)表面物質への本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物の適用において、ペプチド組成物を上記表面物質へ結合するために(および糖ペプチド抗生物質を上記組成物へ結合するために)十分な時間が、上記表面物質と、上記組成物とを接触させることの最低でも数分間を含み得ることを示唆する。従って、結合に十分な時間は、約5分間〜約5時間、約5分間〜約2時間および約5分間〜約15分間の範囲であり得る。
【0062】
(結合親和性のさらなる特徴付け)
バンコマイシンについて、本明細書で記載されるのと類似の結合アッセイ形式を使用して、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドが、ゲンタマイシン(アミノグリコシド系抗生物質)を結合する能力を決定した。このアッセイの結果は、この代表的ペプチドがゲンタマイシンに対する顕著な結合親和性を欠いていることを示した。
【0063】
表1および表3に示されるように、および本明細書で先により詳細に記載されたように、本明細書で開示される事項のペプチドは、構造(例えば、アミノ酸配列相同性および/もしくは同一性)ならびに機能(例えば、糖ペプチド抗生物質(例えば、バンコマイシン)に対する結合親和性を有する)に関連している。実験によって、バンコマイシンに対するこれらペプチドの結合が、Lys−D−Ala−D−Alaによって阻害されることを見いだした。本明細書で開示される事項を特定の機構に制限しないが、この知見は、細菌ペンタペプチドペプチドグリカン前駆物質の末端D−Ala−D−Alaを結合する、バンコマイシンの一部もしくは配座的ポケットを結合することによって、上記ペプチドがバンコマイシンに結合することを示唆する。結合親和性のこの特徴のおかげで、本明細書で開示される事項に従うペプチドが、バンコマイシンおよび細菌ペンタペプチドペプチドグリカン前駆物質の末端D−Ala−D−Alaに結合することによって抗菌活性を媒介する他の糖ペプチド抗生物質に結合し得ることが示唆される。
【0064】
例として、バンコマイシンと、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドとの間の特異的結合の、Lys−D−Ala−D−Alaによる阻害が示される。ストレプトアビジンでコーティングされた96ウェルプレートのウェルに、緩衝液−T中のビオチン化ペプチドの0.2μM溶液、100μlを添加した。インキュベーションの後に、上記ウェルを、緩衝液−T中のビオチンの0.5mM溶液200μlを添加することによって、ブロックした。次いで、上記プレートを、緩衝液−Tで3回洗浄した。Lys−D−Ala−D−Alaの連続希釈物を調製し、Lys−D−Ala−D−Alaが終濃度約1μM〜約200μMの範囲になるように、上記ウェルに個々に添加した(35μlの容積で)。35μlのビオチン化バンコマイシン(20nM 終濃度)もまた、各ウェルに添加し、上記プレートを、室温において30分間にわたってインキュベートした。次いで、上記ウェルを、緩衝液−Tで3回洗浄し、続いて、100μlのストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ結合体(1mg/ml(緩衝液−T中で1:500))を添加した。30分間のインキュベーションの後、上記ウェルを、緩衝液−Tで5回洗浄した。100μlのpNPPを各ウェルに添加し、続いて、405nmの吸収で12分間痕に比色検出を行った。上記アッセイの結果は、わずか約10μMのLys−D−Ala−D−Alaが、バンコマイシンと、糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性を有する本明細書で開示される事項に従うペプチドとの間の結合の約50%を阻害するために必要とされることを示し;100%付近の阻害が、100μM〜200μMの間のLys−D−Ala−D−Alaの濃度で達成される。従って、Lys−D−Ala−D−Alaが、糖ペプチド抗生物質への本明細書で開示される事項に従うペプチドの結合を阻害し得ることが示唆される。
【0065】
(実施例3)
当該分野で公知の他の表面結合ペプチドが、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有する、本明細書で開示される事項に従うペプチドに連結されるべき本明細書で開示される事項に従う組成物中の成分として使用され得るが、表4は、医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性を有する代表的ペプチド(「表面結合ペプチド」)を示す。例えば、表面結合ペプチドは、以下のアミノ酸配列を含む:ポリスチレンに対する結合親和性を有する配列番号14〜35;ポリウレタンに対する結合親和性を有する配列番号36;ポリグリコール酸に対する結合親和性を有する配列番号37〜50;ポリカーボネートに対する結合親和性を有する配列番号51〜56;ナイロンに対する結合親和性を有する配列番号57〜65;TEFLONに対する結合親和性を有する配列番号66および配列番号67;ポリエチレンテレフタレート繊維に対する結合親和性を有する配列番号68および配列番号69;コラーゲンベースの基材に対する結合親和性を有する配列番号70および配列番号71;金属(例えば、チタン、およびステンレス鋼のうちの1種以上を含む)に対する結合親和性を有する配列番号72〜119)。少なくとも1個の表面結合ペプチドは、本明細書で開示される事項に従う組成物を生成するにあたって、少なくとも1個の糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに連結され得る。
【0066】
【表4−1】

【0067】
【表4−2】

【0068】
【表4−3】

【0069】
【表4−4】

【0070】
【表4−5】

(実施例4)
この実施例は、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を作製するための方法を提示し、上記方法は、医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性(SBP)を有する少なくとも1個のペプチドと、少なくとも1個の糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチド(GABP)とを一緒に連結する工程を包含する。この実施例に例示される本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物は、以下の式を含むとして表され得る:SBP‐L‐GABPもしくはGABP‐L‐SBP。
【0071】
本明細書で記載される方法および2つの分子を一緒に連結するための当該分野で周知の方法(直接もしくはリンカーの使用を介する)を使用して、例えば、表面物質に対して結合親和性を有するペプチドを、表面物質(例えば、医療用デバイスの表面)をコーティングするために有用な本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を形成するにあたって、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに連結子得る。当業者に明らかなように、2個の分子を連結するための好ましい方法は、各分子に存在する反応性官能基に従って変動する。当業者に公知であるように、共有結合において使用され得る反応性官能基は、マレイミド、チオール、カルボキシ、水素、ホスホリル、アシル、ヒドロキシル、アセチル、アルデヒド、疎水性、アミン、アミド、ダンシル、スルフヒドリル、スクシンイミド(スクシンイミジルエステルもしくはスクシンイミジルカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない)、ハロゲン、チオール反応性化学基、アミン反応性化学基、カルボキシル反応性化学基、ヒドロキシル反応性化学基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される化学基を含み得る。
【0072】
この実施形態の一例示において、リンカーを、医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性を有するペプチドと、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドとを連結するために使用した。多くの医療用デバイスは、金属を含む表面物質から構成されるので、金属に対して結合親和性を有するペプチドを、本発明の事項に従う組成物中の成分として含めるための代表的表面結合ペプチドとして選択した。金属を含む表面物質に対して結合親和性を有する、配列番号118からなるアミノ酸配列を有するペプチドを、本発明の事項に従うペプチド組成物中の成分として含めるための代表的なペプチドとして使用した。配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドを、代表的な、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドとして、本発明の事項に従うペプチド組成物中の成分として含めるために、使用した。以下の手順を使用して、リンカーを、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを、配列番号118のアミノ酸配列を含むペプチドに連結するために使用して、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに連結された表面結合ペプチドを含む本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を生成した(例えば、配列番号120を参照のこと)。
【0073】
使用した代表的リンカーは、PEG[ポリ(エチレン)グリコール]の考えられる最も短いエーテル構造と2つのエチレンオキシドユニットを有する親水性二官能性スペーサーである、PEG(8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸)から構成された。上記リンカーは、2個のPEGユニットから構成される; 例えば、(HN−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−C=O)(本明細書中以降、「(ミニPEG)」リンカーといわれる)。本明細書で開示される事項に従う組成物を、上記表面結合ペプチド(配列番号118のアミノ酸配列を含む)が、C末端に位置し、上記糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチド(配列番号1のアミノ酸配列を含む)がN末端に位置し、そして上記2個のペプチドの間においてこれらを連結するのがミニPEGリンカーである(配列番号120;SSSCLIDMYGVCHNFDGAYDSSRG−(ミニPEG)−SSHRTNHKKNNPKKKNKTRGSSGKもまた参照のこと;下線は、上記システイン残基の間のジスルフィド結合形成を表す)ように、合成した。上記組成物のC末端アミノ酸を、アミド化によって改変し、その一歩婦出、上記組成物のN末端アミノ酸は、遊離アミンを含む。
【0074】
上記組成物を、完全に自動化されたペプチド合成器で、固相ペプチド合成を使用して、直線的様式において合成した。標準的なFmoc/t−Bu(フルオレン−9−イルメトキシカルボニル/tert−ブチル)化学を、標準的なカップリング試薬、方法、および樹脂を使用して、採用した。上記Fmoc脱保護反応を、DMF(ジメチルホルムアミド)中の20% ピペリジンを使用して、15分間にわたって行った。上記樹脂からの直線状ペプチド切断を、試薬K(TFA(トリフルオロ酢酸):EDT(1,2−エタンジチオール):HO:フェノール:チオアニソール=82.5:2.5:5:5:5)を使用して、室温において4時間にわたって達成した。上記粗製生成物を、冷エーテル中に沈澱させた。遠心分離後に得た上記ペレットを、冷エーテルで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥して、直線状ペプチドを白色固体として得た。上記直線状粗製生成物を、分析用HPLCより分析した。これを環化反応に供する前に、上記直線状組成物を、HPLCによって精製した。
【0075】
上記環化反応を、上記糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドを含む上記組成物の成分のアミノ酸配列中の2個のシステイン残基の間で分子内ジスルフィド結合形成を媒介するために行った。上記精製した直線状組成物(約0.5mg/ml)を、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)中に溶解し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO;3〜5%)を、攪拌しながら、上記組成物を含む溶液に滴下した。上記環化反応の進捗を、HPLCによってモニターした。上記出発直線状組成物の消失後(HPLCによる)に、上記反応混合物を真空下で濃縮し、上記粗製環状生成物を、半分取用RP(逆相)−HPLC精製に供した。上記粗製環状組成物を、HPLCによって精製し、上記望ましい生成物を含む画分をプールし、凍結完納して、上記ジスルフィド結合を含む上記組成物を含む綿状の白色粉末を得た。上記最終生成物を、エレクトロスプレー質量分析法によってさらに特徴付けた。配列番号120のアミノ酸配列を含むペプチド組成物について上記でが節された合成手順を使用して、配列番号124のアミノ酸配列:AUD−AUD−AUD−AUD−SSSCLIDMYGVCHNFDGAYDSSRG−(ミニPEG)−SSHRTNHKKNNPKKKNKTRGSSGK)を含む組成物もまた、アミノウンデカン酸(「AUD」)の4残基を、直線状の合成の間に、N末端へと逐次的に付加することによって合成した。
【0076】
別の実施形態において、配列番号125のアミノ酸配列:(Myr−Ahx−SSCLIDIYGVCHNFDAY−(ミニPEG)−HKKNNPKKKNKTRGSSK)を含むペプチドを提供し、ここで「Myr」は、ミリスチン酸であり、「Ahx」は、アミノヘキサン酸である。AA/TBTU/HOBt/NMM(1:1:1:2)を、上記カップリング試薬として使用する標準的Fmoc/t−Bu化学を採用した(AAは、アミノ酸であり;TBTUは、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレートであり;HOBtは、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールであり;NMMは、N−メチル−モルホリンである)。上記ベース樹脂、Fmoc−PAL−Peg−PS(約0.20mmol/g;[5−(4−Fmoc−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)吉草酸]−ポリエチレングリコール−ポリスチレン樹脂)を、ペプチド合成に使用した。アミノ酸を、上記合成サイクルにおいて5倍過剰で使用し、全ての残基を、二重もしくは三重に連結した。上記カップリング反応を、Kaiserニンヒドリン試験もしくはクロラニル試験によってモニターした。ペプチド凝集を抑制するために、シュードプロリン(pseudoproline)ジペプチドFmoc−SerSer(PsiMe,Me pro)−OHを使用し、5倍過剰で二重カップリングした。Fmoc−Lys(ビオチン)−OHおよびFmoc−ミニPeg−COHを、上記のカップリング条件を使用して手動で二重カップリングした。Fmoc脱保護反応を、0.1M HOBtを含むDMF中の20% ピペリジンを使用して行った。アミノヘキサン酸(Ahx)を、上記樹脂結合ペプチドのN末端に導入し、続いて、TBTU活性化法を使用して、ミリスチン酸の三重カップリングを行った。上記樹脂からのペプチド切断を、TFAカクテル(TFA:HO:TIS:ドデカンチオール=95:2:2:1)を使用して、室温において4時間にわたって、もしくは試薬K(TFA:EDT:HO:フェノール:チオアニソール=82.5:2.5:5:5:5)を使用して、室温において3時間にわたって達成した。
【0077】
上記粗製生成物を、冷エーテル中で沈潜させた。上記ペレットを、遠心分離後に得、これを、冷エーテルで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥して、粗製ペプチドとして白色固体を得た。上記粗製直線状生成物を、メタノール中0.1M ヨウ素溶液を使用してジスルフィド酸化(環化)に供した(最終濃度≦0.5mg 直線状ペプチド/mL)。上記反応混合物を、10分間〜1時間にわたって25℃において攪拌した。HPLCモニタリングによって明らかにされるように、完全に酸化した後、上記反応を、無色の溶液が得られるまで、水中5% 二亜硫酸ナトリウムでクエンチした。上記反応系を凍結乾燥し、上記粗製環状組成物を、移動溶離液(A=HO/TFA(0.1%TFA)およびB=アセトニトリル/TFA(0.1%TFA)、を用いてHPLCによって精製した。上記所望の生成物を含む画分をプールし、凍結乾燥して、>90%純度で、綿状の白色粉末を得た。上記最終生成物を、エレクトロスプレー質量分析法によってさらに特徴付けした。
【0078】
別の実施形態において、配列番号126のアミノ酸配列:(AUD−AUD−AUD−SSCLIDIYGVCHNFDAY−(ミニPEG)−HKKNNPKKKNKTRGSSK)、および配列番号127のアミノ酸配列(AUD−AUD−AUD−AUD−SSCLIDIYGVCHNFDAY−(ミニPEG)−HKKNNPKKKNKTRGSSK)を含むペプチドを提供する。これら組成物の合成のために、Fmoc−AUD−COHを、NMP(N−メチルピロリジン)中の0.2M HOBt溶液を使用して活性化し、TBTU/NMM法を使用して、上記ペプチド樹脂のN末端において逐次的に手動で連結した。各連結の後、上記Fmoc基を、DMF中の20% ピペリジンを使用して除去し、ニンヒドリン試験によって判定した場合に、上記反応が完了するまで、上記樹脂を、続いて、Fmoc−AUD−COHでさらに連結した。上記末端Fmocを、上記ペプチド樹脂を完全な切断に供する前に除去した。上記粗製直線状組成物を、上記ヨウ素酸化法を使用して環化し、上記粗製環状組成物を、C−18カラムでのRP−HPLCによって精製した。上記最終生成物を、エレクトロスプレー質量分析法によってさらに特徴付けた。
【0079】
別の実施形態において、配列番号128のアミノ酸配列:(SSCLIDIYGVCHNFDAY−(ミニPEG)−YFRAFRKFVKPFKRAFKGSSGK)および配列番号129のアミノ酸配列:(Myr−Ahx−SSCLIDIYGVCHNFDAY−(ミニPEG)−YFRAFRKFVKPFKRAFKGSSGK)を含むペプチドが提供される。これらペプチドの合成をまた、Fmoc−PAL−PEG樹脂での固相合成により達成した。アミノ酸を合成サイクルにおいて5×過剰で使用し、全ての残基を、二重連結もしくは三重連結した。上記カップリング反応を、Kaiserニンヒドリン試験もしくはクロラニルテストによってモニターした。合成の完了後、上記末端Fmoc基を除去し、上記粗製生成物を環化して、上記2個のシステイン残基との間の分子内ジスルフィド結合形成を媒介した。上記精製した直線状組成物(約0.5mg/ml)を、10mM リン酸緩衝液(pH7.4)中に溶解し、次いで、ジメチルスルホキシド(DMSO;3〜5%)を、攪拌しながら上記溶液に滴下した。上記環化反応の進捗を、HPLCによってモニターした。上記出発直線状ペプチドの消失の後(HPLC)、上記反応混合物を、真空下で濃縮し、上記粗製環状生成物を、半分取用RP−HPLC精製に供した。上記所望の生成物を含む画分をプールし、凍結乾燥して、綿状の白色粉末を得た。配列番号129のアミノ酸配列を含む上記組成物について、ミリスチン酸を、上記に記載されるように、上記合成した生成物をヨウ素環化に供する前に、Ahxリンカーを介して上記合成した生成物のN末端において導入した。上記粗製環状生成物を、C−18カラムでのRP−HPLC精製に供した。上記最終生成物の各々を、エレクトロスプレー質量分析法によってさらに特徴付けた。
【0080】
別の実施形態において、配列番号120および配列番号124の合成のために上記の手順を使用して、配列番号130および配列番号131の以下のペプチドを生成し、これは、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに連結した表面結合ペプチドを含む:
配列番号130:SSCLIDIYGVCHNFDAY−(ミニPEG)−HKKNNPKKKNKTRGSSK
配列番号131:SSCLIDIYGVCHNFDAY−(ミニPEG)−SSHRTNHKKNNPKKKNKTRGSSGK。
【0081】
(実施例5)
実施例4に記載されるように作製した代表的ペプチドを使用して、この実施例において、上記ペプチドが、糖ペプチド抗生物質を表面物質の負荷および/もしくは保持する能力を評価した。この実施例において、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を、上記ペプチド組成物と、金属ビーズ(医療用デバイス表面を代表する)とを、上記ペプチドを上記ビーズに結合させるに十分な時間にわたって接触させることによって、上記金属ビーズに適用した。以下に記載される実験結果は、上記ペプチド組成物が、糖ペプチド抗生物質を表面物質に結合および保持するために使用され得ることを示す。
【0082】
一実験において、チタンビーズを、96ウェルプレートのウェルに入れた。各ウェルに、少なくとも1種の糖ペプチド抗生物質結合ペプチドに連結された少なくとも1種の表面結合ペプチドを含むある濃度範囲(1〜50μM)のペプチド組成物、および200μMのバンコマイシンを添加した。適切なネガティブコントロールもまた、含めた。上記プレートを、30分間にわたってインキュベートし、次いで、上記ウェルおよびビーズを、緩衝液で4回洗浄した。洗浄後、10mM HClを各ウェルに添加して、上記金属ビーズから残っているバンコマイシンを溶離した。結合したバンコマイシンを、検出波長214nmにおいてHPLCアッセイによって測定した。実験結果を表5に示す。上記3種の試験したペプチド組成物の各々は、displayed 同様の糖ペプチド抗生物質負荷結果を示した。さらに、結合アッセイを、代表的表面物質としてチタンビーズ以外にもステンレス鋼を使用して行ったところ、類似の結果を生じた。
【0083】
【表5】

本明細書で開示される事項の組成物によって、長期にわたる糖ペプチド抗生物質の表面物質での保持をまた、評価した。この実験において、BODIPY−FLバンコマイシンおよびチタンビーズを使用する結合アッセイを、配列番号120を含むペプチド組成物による糖ペプチド抗生物質保持を評価するために使用した。BODIPY−FLバンコマイシンを、上記チタンビーズに添加し、上記ビーズに固定化したBODIPY−FLバンコマイシンの相対量を、45分間〜100時間の範囲に及ぶ時間にわたって測定した。このアッセイの結果は、上記ペプチド組成物の存在下で、上記BODIPY−FLバンコマイシンの約50%が、3時間後に上記金属表面に保持され;そして検出可能なBODIPY−FLバンコマイシンが、最大100時間までにわたって上記ビーズ表面に保持されたことを示す。
【0084】
(実施例6)
先に本明細書で記載される実施例は、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物が、糖ペプチド抗生物質を表面物質に結合しかつ保持するために使用され得ることを実証する。この実施例において、上記ペプチド組成物が、上記表面物質上での細菌増殖を阻害する能力を実証する。上記ペプチド組成物の抗菌活性を例示するために、インビトロ感染アッセイを行った。簡潔には、表面物質を、上記ペプチドが上記表面物質に結合するように、上記ペプチド組成物のうちの1つと接触させた。上記ペプチド組成物を、上記ペプチドと上記表面物質とを接触させる時間において、既に結合した糖ペプチド抗生物質を有し得るか、または上記糖ペプチド抗生物質は、上記ペプチド組成物を上記表面物質に結合した後の工程において、上記ペプチドと接触させ得る。上記表面物質を洗浄して、結合していない糖ペプチド抗生物質を除去し、次いで、細菌細胞と接触させ(対数増殖期の培養物から添加した)、インキュベートして、細菌増殖を促進した。上記表面物質を洗浄し、そして任意の細菌細胞がコロニー形成している上記表面物質を取り出し、細菌増殖を評価するために配置した。
【0085】
一例において、Staphylococcus aureus株MZ100を、代表的細菌細胞として使用した。第1に、代表的表面物質として、チタンビーズを、超音波バスにおいてアセトン中で滅菌し、次いで、無菌フード中で風乾した。上記ビーズを、滅菌微小遠心チューブ中に個々に入れ(1チューブあたり1ビーズ)た。配列番号119(もしくは緩衝液コントロール)のペプチド組成物を、滅菌PBS中終濃度5μMにおいて、上記ビーズ含有チューブに添加した。バンコマイシンを、滅菌PBS中終濃度100μMにおいて、上記ビーズ含有チューブに添加した。上記チューブを、室温において15分間にわたってインキュベートした。上記ビーズの均質なコーティングを最適化するために、各ビーズ含有チューブをはじいて、上記ビーズをそれぞれ5分後および10分間後に移動させ、次いで、上記チューブおよび内容物を、短時間ボルテックスした。次いで、上記ビーズを、滅菌PBSで2回洗浄し、次いで、培養のために滅菌チューブに移した(1チューブあたり1ビーズ)。各培養チューブに、MZ100株(約1×10細菌細胞/ml;早期対数増殖期の)の25μlのストック培養物を添加した。次いで、上記チューブを、37℃においてインキュベートした。2時間のインキュベーション後、上記培養チューブ内容物を吸引し、各ビーズを、上記培養チューブ中で、滅菌PBS(1ml)を使用して2回穏やかに洗浄した。上記表面物質上でコロニー形成したいかなる細菌をも除去するために、次いで、各ビーズを、滅菌マイクロチップで超音波処理器を使用して、発泡もしくはエアロゾルを防止するように注意して、1ml滅菌緩衝液中で超音波処理した(例えば、設定4の出力制御、25%のデューティーサイクル、総時間約1分間)。各チューブからの等しいアリコートを使用して、トリプティックソイブロス寒天プレートにプレートし、次いで、上記プレートを、37℃において一晩インキュベートした。翌日、上記プレートを、細菌増殖について試験し、細菌コロニー数を、プレートあたりで定量した。表6に示されるように、上記プレート上での細菌増殖は、配列番号119のペプチド組成物で処理した上記表面物質上で完全に阻害された。
【0086】
【表6】

抗菌活性の別の実証において、および上記チタンビーズについて記載されるような類似の方法を使用して、チタンピンを、代表的表面物質として使用し、バンコマイシンを、代表的糖ペプチド抗生物質として使用した。アセトン滅菌したチタンピン(1mm直径、12mm長)を、最初に、PBS中で洗浄した。次いで、これらピンを、上記代表的組成物(5μM)+バンコマイシン(100μM)を含む溶液(PBS)中で、コーティングのために間欠的に反転させて、15分間にわたって室温においてインキュベートした。次いで、各ピンをPBS中で完全に洗浄し、上記の方法に従って、30μlの、10コロニー形成単位(cfu)/mLで培養したS.aureus MZ100中に入れた。次いで、上記コーティングしたピンを、30mm長の、末端が閉じている1.5mm直径のシリコーンチュービング中に接種した。振盪しながら2時間インキュベートした後、上記ピンを、1mL PBSを含む新たなチューブに入れた。数回転倒させた後、PBSを吸引し、新たな1mLのPBSに置換した。次いで、上記ピンを、15秒各々の4サイクルにわたって、20kHzで超音波処理した。上清(100μl)および希釈物を、トリプティケースソイ寒天(TSA)プレートにプレートし、37℃において24時間にわたってインキュベートし、コロニーを計数した。上記感染モデルの、上記ピンがコーティングされていないピンである(すなわち、結合される本明細書で開示される事項に従う組成物なし)(「コントロール」)ことを除いて同じ工程に、アッセイコントロールを含めた。代表例として、配列番号125および配列番号126のアミノ酸配列を含む組成物を、インビトロ感染モデルを使用して抗微生物活性について試験した(それぞれ、表7「A」および「B」を参照のこと)。表7に示されるように、上記感染アッセイにおいて、本明細書で開示される事項に従う組成物でコーティングした上記ピンからの培養上清中の細菌数は、上記コントロールと比較して、10コロニー形成単位(「CFU」)より多くまで低下した。
【0087】
【表7】

表6および表7に例示される結果から、結合された糖ペプチド抗生物質を含む本発明の事項に従う組成物は、上記組成物で処理された表面物質上に保持され得、上記表面物質に送達される上記糖ペプチド抗生物質の抗菌活性を介して、上記処理された表面物質上の細菌増殖を阻害し得ることは、明らかである。
【0088】
これら結果は、本明細書で開示される事項のペプチド組成物の抗菌活性を、上記表面物質上で可視化するために設定されるアッセイにおいてさらに確認した。簡潔には、上記表面物質を、糖ペプチド抗生物質単独、結合される糖ペプチド抗生物質なしの上記組成物、もしくは結合される糖ペプチド抗生物質を含む上記組成物のいずれかで処理し、次いで、洗浄して、結合していない化合物もしくは組成物を除去した。各処理した表面物質に、S.aureus MZ100株の接種物を添加した。上記表面物質上での細菌増殖を促進するためのインキュベーション期間の後、上記表面物質を洗浄し、次いで、細菌増殖を、上記表面物質に保持された生細菌細胞もしくは死滅細菌細胞について分染することによって可視化した。糖ペプチド抗生物質単独、もしくは結合される糖ペプチド抗生物質なしの上記組成物いずれかで処理した上記表面物質は、上記表面物質上で増殖している生細菌細胞を示した。対照的に、死滅細菌細胞は、結合される糖ペプチド抗生物質を含む組成物で処理した上記表面物質上で可視化された。これら結果は、本明細書で開示される事項の結合される糖ペプチド抗生物質を有する組成物が、上記組成物で処理した表面物質上で抗菌活性を示すことを示唆する。
【0089】
別の実験において、上記ペプチド組成物の抗微生物活性を、以下のように測定した。チタンビーズを、96ウェルプレートのウェルに入れた。各ウェルに、少なくとも1種の糖ペプチド抗生物質結合ペプチドに連結された少なくとも1種の表面結合ペプチドを含むペプチド組成物(10μM)およびバンコマイシン(200μM)を添加した。適切なネガティブコントロールもまた、含めた。上記プレートを、20℃において1時間にわたってインキュベートし、次いで、上記ウェルおよびビーズを、緩衝液で4回洗浄した。洗浄後、上記ビーズを、対数増殖期のS.aureusを含むプレートのウェルに移し、37℃において18時間にわたってインキュベートした。細菌増殖を、600nmでの光学密度を読み取ることによって評価した。上記実験結果は、配列番号120、配列番号130および配列番号131のペプチドの各々を負荷したチタンビーズについて、完全な細菌増殖阻害を示した。
【0090】
(実施例7)
この実施例において、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を、医療用デバイスに適用するため方法がさらに例示される。上記方法は、上記ペプチド組成物と、上記組成物が適用される医療用デバイスの表面とを、抗菌活性に有効な量の糖ペプチド抗生物質を送達するに有効な上記組成物の量で接触させる工程を包含する。有効量の上記ペプチド組成物は、上記組成物の一部として送達されるべき特定の糖ペプチド抗生物質、処理されるべき表面物質のタイプ、上記医療用デバイスが配置されるべき部位、および上記処理された医療用デバイスを受容している個体の細菌叢が挙げられるが、これらに限定されない因子を考慮して、医師によって決定され得る。当該分野で公知の方法を使用して、有効用量はまた、本発明の事項に従う組成物を使用して前臨床研究および臨床研究の結果から決定され得る。本明細書で開示される事項に従う組成物によって配置された抗菌活性の経過もしくは評価は、当該分野で公知の方法によって(例えば、by 感染に関連する変化のための種々の画像化技術(例えば、x線、コンピュータートモグラフィー(computer−assisted tomography)(CATスキャン)、核磁気共鳴画像法(MRI)、関節鏡検査法)、または処理された医療用デバイスの配置に関連する体液サンプルを培養することによって)モニターされ得る。
【0091】
上記ペプチド組成物は、医療用デバイスに適用され得、ここで上記組成物は、上記医療用デバイスに適用する時間において上記糖ペプチド抗生物質結合ドメインに既に結合した糖ペプチド抗生物質を含む。別の実施形態において、上記糖ペプチド抗生物質は、上記ペプチド組成物が上記医療用デバイスに適用される時点においてまだ結合されていない。後者に関して、コーティングするさらなる工程において、上記ペプチド組成物が適用された上記表面物質は、次いで、糖ペプチド抗生物質が、上記医療用デバイスの表面に結合した上記ペプチド組成物に結合するように適した条件下で、十分量の糖ペプチド抗生物質と(インビトロもしくはインビボで)接触させられる。一例において、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物は、上記医療用デバイスを正常な位置に配置する前に、上記医療用デバイス適用される。
【0092】
別の例において、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物は、正常な位置で医療用デバイスに適用される。例えば、上記医療用デバイスが、身体中で開放部位を介して(例えば、手術において)曝されるか、または身体外で直ぐに接近可能な部位で配置される場合(例えば開いた口から接近可能な歯科用インプラント)、医師はスプレーし得るか、または他の方法で、上記ペプチド組成物を、上記医療用デバイスに正常な位置で適用し得る。上記医療用デバイスが、スプレーコーティングのように適用によって容易に接近可能でない別の例において、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物は、上記医療用デバイスの部位において注射することによって投与され得、その結果、上記組成物が、上記医療用デバイスに結合するように、上記医療用デバイスと接触させられる。上記ペプチド組成物の適用を(例えば、スプレー、浸漬、もしくは注射によって)促進するために、上記組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む。当該分野で公知の従来のプロセスは、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を、コーティングされるべき医療用デバイスの1つ以上の表面に適用するために使用され得る。上記ペプチド組成物が適用されるべき上記医療用デバイスの性質に依存して、このようなプロセスは、浸漬する、混合する、浸す、ブラシで塗布する、スプレーする、および蒸着が挙げられるが、これらに限定されないことが公知である。例えば、上記ペプチド組成物を含む溶液もしくは懸濁物は、スプレーデバイスのスプレーノズル(コーティングされるべき上記医療用デバイスの表面をコーティングする液滴を作り出す)を介して、適用され得る。上記コーティングされた医療用デバイスは、乾燥させられる。望ましい場合、上記コーティングされた医療用デバイスが、使用前にさらに処理され得る(例えば、溶液(例えば、水もしくは等張性緩衝液)中で洗浄されて、上記医療用デバイスに特異的に結合されていない過剰な組成物を除去する場合;インビボで使用する場合、ポリマーを滅菌するための当該分野で公知のいずれか1種以上の方法を使用する滅菌によって、など)。あるいは、上記ペプチド組成物および上記医療用デバイスは、それらを組み合わせるというプロセスの前に、別個に滅菌され得、次いで、無菌条件下で、上記組成物を上記医療用デバイスの1つ以上の表面に適用することが行われる。
【0093】
上記ペプチド組成物を、コーティングされるべき医療用デバイスの1つ以上の表面に適用するための別のプロセスにおいて、コーティングされるべき上記医療用デバイスの表面は、上記組成物を上記医療用デバイスの表面をコーティングするに有効な量において含む液体(例えば、溶液もしくは懸濁物、水性もしくは溶媒)に浸けられる。例えば、上記表面は、上記ペプチド組成物を含むバスに浸けられるかもしくは浸漬される。コーティング組成物として上記ペプチド組成物を適用するために適切な条件は、コーティングされる上記表面を、上記組成物を含む液体と、適切な期間(例えば、約5分間〜約5時間の範囲に及ぶ;より好ましくは、5分間〜60分間の範囲に及ぶ)にわたって、適切な温度(例えば、10℃〜約50℃の範囲に及ぶ;より好ましくは、室温から37℃の範囲に及ぶ)において接触した状態にすることを包含する。望ましい場合、上記コーティングされた医療用デバイスは、使用(例えば、乾燥、洗浄、滅菌などのうちの1つ以上)に必要な場合、さらに処理され得る。ペプチド組成物を医療用デバイスに適用するためのこれら例示的プロセスは、他のコーティングおよび滅菌法が使用され得るように(当業者が、特定の医療用デバイスおよび/もしくは目的の必要性に適合させるために使用される方法を選択することができるように)、限定的ではない。
【0094】
さらに、本明細書で開示される事項に従う方法において、上記ペプチド組成物を含む、医療用デバイス表面でのコーティングは、例えば、風乾により安定化させられ得る。しかし、これら処理は、限定的ではなく、他のコーティングおよび滅菌法が、採用され得る。適切なコーティングおよび滅菌法は、当該分野で公知である。例えば、本明細書で開示される事項の組成物でコーティングされるべき上記医療用デバイスの表面は、以下のうちの1つ以上を高めるように、上記コーティング工程の前に前処理され得る:上記ペプチド組成物の、上記表面への結合;ならびに上記コーティングのコンシステンシーおよび均質性。
【0095】
(実施例8)
上記糖ペプチド抗生物質結合ペプチドのアミノ酸配列に基づいて、このようなペプチドをコードするポリヌクレオチドは、合成もしくは構築され得、このようなペプチドは、製造(例えば、培養において)および/もしくはこのようなポリヌクレオチドをインビボで導入することによるインビボ生成の手段として、組換えDNA技術によって生成され得ることは、当業者に明らかである。例えば、1つより多いポリヌクレオチド配列が、本発明の事項に従うペプチドをコードし得ること、およびこのようなポリヌクレオチドが、発現が所望される場所がインビトロもしくはインビボにあろうとそうでなかろうと、上記ペプチドのアミノ酸をコードすることが公知のトリプレットコドン、3番目の塩基縮重、および無細胞発現系もしくは宿主細胞(代表的には、原核生物細胞もしくは真核生物細胞(例えば、細菌細胞(例えば、E.coli);酵母細胞;哺乳動物細胞;トリ細胞;両生類細胞;植物細胞;魚の細胞;および昆虫細胞)によって好まれるトリプレットコドン使用法の選択に基づいて合成され得ることは、当業者に明らかである。例えば、特定の宿主のためのコドン発現を最適化する(例えば、上記細菌mRNAにおけるコドンを、哺乳動物、植物もしくは他の細菌宿主(例えば、E.coli)によって好まれるものに変更する)ために、上記の縮重改変体を生成することは、当業者にとって慣用的である。
【0096】
例示目的に過ぎず、限定ではなく、配列番号121−123(これらは、それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである)を提供する。1つの例示的実施形態において、糖ペプチド抗生物質結合ドメインペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターが提供される。上記組換えベクターは、本明細書で開示される事項に従う糖ペプチド抗生物質結合ペプチドの組換え生成のために使用され得る。一例において、上記ポリヌクレオチドは、ペプチドもしくはポリペプチドを生成するために当該分野で公知の無細胞発現系に添加され得る。別の例において、上記ポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドが、宿主細胞において生成される場合に、他のアミノ酸配列(例えば、これは、上記ペプチドの精製を補助する)との融合タンパク質として;または表面結合ドメインに組換え連結されるとして、または上記ペプチドのマルチコピーもしくはコンカテマーとして生成されるように、発現ベクター中に配置され得る。例えば、発現されることが望まれるペプチドとの融合タンパク質との一部として、当業者に公知の配列が存在し、発現のために使用される原核生物細胞の細胞質中で見いだされる封入体における生成を促進し、そして/またはこのような配列を含む融合タンパク質の精製を補助する。封入体は、変性剤、および分画(例えば、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなど)を含む、当該分野で公知の方法によって他の原核生物細胞成分から分離され得る。別の例において、市販のベクターが使用され得、上記ベクターへ、発現の際に、遺伝子産物の精製が、当該分野で標準的な方法を使用して達成され得るように、タンパク質もしくはペプチドとして発現されるべき所望の目的の核酸配列が、挿入され得る。
【0097】
本明細書で開示される事項に従う糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドをコードする核酸配列が、プラスミド、もしくはプラスミド以外のベクターを含む核酸分子に挿入され得、そしてその一部になり得ることは、当業者に明らかである;そして他の発現系も使用され得、それらとしては、バクテリオファージベクターもしくはコスミドDNAで形質転換された細菌;酵母ベクターを含む酵母;真菌ベクターを含む真菌;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞株;およびプラスミドもしくはウイルス発現ベクターが中に導入された(例えば、トランスフェクトされたかもしくはエレクトロポレーションされた)か、または組換えウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロ・ウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。上記ペプチドの首尾よい発現は、上記ペプチドのコード配列を含む組換え核酸分子、もしくは上記ベクター自体のいずれかが、適合しかつ発現のために使用される特定の宿主系によって認識される転写および翻訳のための必要な制御エレメントを含むことを必要とする。
【0098】
分子生物学の分野において公知の方法(上記の方法を含む)を使用して、種々のプロモーターおよびエンハンサーが、上記ペプチドの発現を増大するために上記コード配列を含む上記ベクターもしくは組換え核酸分子に組み込まれ得るが、ただし、上記ペプチドの増大された発現は、上記使用される特定の宿主細胞系と適合性(例えば、上記系に対して非毒性)である。当業者にとって明らかであるように、上記プロモーターの選択は、使用される発現系に依存する。プロモーターは、強度;すなわち、転写を促進する能力で変動する。一般に、クローニングされた遺伝子を発現する目的で、高レベルの上記遺伝子の転写および遺伝子産物への発現を得るために、強力なプロモーターを使用することは望ましい。例えば、高レベルの転写が宿主細胞系(E.coliを含む)において認められたことが当該分野で公知の細菌、ファージ、もしくはプラスミドプロモーターはとして、lacプロモーター、trpプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、PプロモーターおよびPプロモーター、lacUV5、ompF、bla、Ippなどが挙げられ、上記合成ペプチドをコードする挿入ヌクレオチド配列の転写を提供するために使用され得る。哺乳動物発現系のための発現ベクターにおいて一般に使用される哺乳動物プロモーターは、哺乳動物ウイルス遺伝子に由来するプロもターである。例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス腫瘍後期プロモーター、単純ヘルペス・ウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターが挙げられる。
【0099】
上記ペプチドの発現が、上記宿主細胞に対して致死的もしくは有害であり得る場合において、上記宿主細胞系統/株および発現ベクターは、上記プロモーターの作用が、特異的に誘導されるまで阻害されるように選択され得る。例えば、特定のオペロンにおいて、特定の誘導因子の添加は、上記挿入されるDNAの効率的転写のために必要である(例えば、上記lacオペロンは、ラクトースもしくはイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(「IPTG」)の添加によって誘導される;trpオペロンは、トリプトファンが増殖培地中に存在しない場合に誘導される;そしてテトラサイクリンは、tet感受性プロモーターを有する哺乳動物発現ベクターにおいて使用され得る)。従って、上記ペプチドの発現は、上記コード配列から上記発現を制御するプロモーターが誘導されないような条件下で形質転換された細胞もしくはトランスフェクトされた細胞を培養することによって制御され得、そして上記細胞は、増殖培地中で適切な密度に達しない場合、上記プロモーターは、上記コード配列からの発現について誘導され得る。効率的遺伝子転写もしくはメッセージ翻訳のための他の制御エレメントは、エンハンサー、転写シグナルもしくは翻訳シグナル、転写終結配列およびポリアデニル化配列などを含むことが、当該分野で周知である。
【0100】
(実施例9)
この実施例において、本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を含むキットが例示される。上記キットの構成要素は、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドを含むペプチド組成物を含む容器を含み得、そして糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに連結された医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性を有する少なくとも1種のペプチド、糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有するペプチドに結合された糖ペプチド抗生物質、薬学的に受容可能なキャリア、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1種以上の構成要素をさらに含み得る。好ましいタイプの容器は、バイアル(例えば、代表的には、溶液もしくは医薬、薬品、薬物、コーティングなどの凍結乾燥粉末のために使用されるもの)である。
【0101】
あるいは、上記キット中の構成要素は、糖ペプチド抗生物質を含む第1の容器、および本明細書で開示される事項に従うペプチド組成物を含む第2の容器であり得る。ここで糖ペプチド抗生物質は存在しない。従って、上記第1の容器および第2の容器の内容物は、糖ペプチド抗生物質を含む予め形成された組成物の一部としてよりも、上記組成物を表面物質に適用する工程において、混合され得る(例えば、上記糖ペプチド抗生物質は、上記ペプチド組成物に添加され得る)か;または上記組成物を表面物質に適用する前に、上記ペプチド組成物と混合され得る。上記キットの他の構成要素としては、再構成用の液体(キット構成要素を再構成するために(例えば、凍結乾燥もしくは粉末形態において梱包され得る本明細書で開示される事項に従う組成物および/もしくは糖ペプチド抗生物質の再構成のために)使用され得る希釈剤もしくは流体を含む1つ以上の容器);上記ペプチド組成物を表面物質に適用するためのアプリケーターデバイス(例えば、浸漬トレイ、ブラシ、アプリケーターパッド、シリンジ、シリンジ針、もしくはこれらの組み合わせ)、上記キットの使用説明書、本明細書で開示される事項に従う組成物が適用されるべき医療用デバイス、ならびにこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。キットは、一緒に(例えば、単一の滅菌容器(例えば、ボックス、トレイ、パウチ、もしくは従来の梱包の他の形態)中に)梱包されたこのような構成要素を含む。上記キットはまた、複数のもしくは個々に梱包された構成要素を含み得、そして上記個々の梱包は、次は、単一のより大きな容器内に含まれる。医療分野もしくは歯科分野における使用のために、好ましくは、上記構成要素は、これらが滅菌環境において直ぐに使用できる状態であるように、上記梱包もしくは容器内で滅菌される。
【0102】
本明細書で開示される事項の特定の実施形態の前述の説明は、例示目的で詳細に記載されてきた。上記説明および例示に鑑みて、当業者は、本明細書で開示される事項の基本的な概念から逸脱することなく、種々の適用のために、現在の知識を適用することによって、本明細書で開示される事項を容易に改変し、そして/または適合させ得る;従って、このような改変および/もしくは適合は、添付の特許請求の範囲の意味および範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)6〜50アミノ酸の長さ、(ii)配列番号1〜10のうちのいずれか1つの糖ペプチド抗生物質結合ドメイン、ならびに(iii)糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性、を含む、糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを含むペプチド組成物。
【請求項2】
前記糖ペプチド抗生物質結合ペプチドは、(i)7〜50アミノ酸の長さ、(ii)7〜30アミノ酸の表面結合ドメイン、ならびに(iii)医療用デバイスが構成される表面物質に対する結合親和性、を含む、表面結合ペプチドをさらに含む、請求項1に記載のペプチド組成物。
【請求項3】
前記糖ペプチド抗生物質結合ペプチドおよび前記表面結合ペプチドは、一緒に連結される、請求項2に記載のペプチド組成物。
【請求項4】
医療用デバイスをコーティングするための方法であって、該方法は、請求項2に記載のペプチド組成物を適用する工程を包含し、ここで該ペプチド組成物の少なくとも一部は、前記医療用デバイスが構成される前記表面物質に結合される、方法。
【請求項5】
前記医療用デバイスの前記表面物質は、金属、非金属オキシド、セラミック、ポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチド組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
以下の式:
GABP‐L‐SBPもしくはSBP‐L‐GABP
を含むペプチド組成物であって、
ここでGABPは、(i)6〜30アミノ酸の糖ペプチド抗生物質結合ドメインおよび(ii)糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性、を含む6〜50アミノ酸の糖ペプチド抗生物質結合ペプチドであり;
ここでSBPは、(i)7〜30アミノ酸の表面結合ドメインおよび(ii)医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性、を含む7〜50アミノ酸の表面結合ペプチドであり、そしてここでSBPは、存在していてもよいし存在していなくてもよく;そして
ここでLは、SBPとGABPとの間のリンカーであり、ここでLは、存在していてもよいし存在していなくてもよく、そしてここでLが存在せずかつSBPが存在する場合、GABPおよびSBPは、直接一緒に連結されている、
ペプチド組成物。
【請求項8】
前記式GABP‐L‐SBPを含む前記ペプチド組成物は、配列番号131を含む、請求項7に記載のペプチド組成物。
【請求項9】
医療用デバイスをコーティングするための方法であって、該方法は、以下の式:
GABP‐L‐SBP もしくは SBP‐L‐GABP、
を含むペプチド組成物を適用する工程を包含し、
ここでGABPは、(i)6〜30アミノ酸の糖ペプチド抗生物質結合ドメインおよび(ii)糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性、を含む6〜50アミノ酸の糖ペプチド抗生物質結合ペプチドであり;
ここでSBPは、(i)7〜30アミノ酸の表面結合ドメインおよび(ii)医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性、を含む7〜50アミノ酸の表面結合ペプチドであり、そしてここでSBPは、存在していてもよいし存在していなくてもよく;そして
ここでLは、SBPとGABPとの間のリンカーであり、ここでLは、存在していてもよいし存在していなくてもよく、そしてここでLが存在せずかつSBPが存在する場合、GABPおよびSBPは、直接一緒に連結され、
ここで該ペプチド組成物の少なくとも一部は、該医療用デバイスの表面に結合されている、
方法。
【請求項10】
前記医療用デバイスの前記表面物質は、金属、非金属オキシド、セラミック、ポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ペプチド組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
医療用デバイスであって、ここで該医療用デバイスの表面の少なくとも一部は、6〜50アミノ酸の長さ、(ii)配列番号1〜9のうちのいずれか1つの糖ペプチド抗生物質結合ドメイン、および(iii)糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性、を有する糖ペプチド抗生物質結合ペプチドを含む、ペプチド組成物でコーティングされている、医療用デバイス。
【請求項13】
医療用デバイスであって、ここで該医療用デバイスの表面の少なくとも一部は、以下の式:
GABP‐L‐SBP もしくは SBP‐L‐GABP、
を含むペプチド組成物でコーティングされており、
ここでGABPは、(i)6〜30アミノ酸の糖ペプチド抗生物質結合ドメインおよび(ii)糖ペプチド抗生物質に対する結合親和性、を含む6〜50アミノ酸の糖ペプチド抗生物質結合ペプチドであり;
ここでSBPは、(i)7〜30アミノ酸の表面結合ドメインおよび(ii)医療用デバイスの表面物質に対する結合親和性、を含む7〜50アミノ酸の表面結合ペプチドであり、そしてここでSBPは、存在していてもよいし存在していなくてもよく;そして
ここでLは、SBPとGABPとの間のリンカーであり、ここでLは、存在していてもよいし存在していなくてもよく、そしてここでLが存在せずかつSBPが存在する場合、GABPおよびSBPは、直接一緒に連結されている、
医療用デバイス。
【請求項14】
糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有する単離されたペプチドであって、該ペプチドは、(i)配列番号1〜10、配列番号120、配列番号131、(ii)配列番号1〜5、配列番号9〜10、配列番号120、もしくは配列番号131のうちのいずれか1つに対するアミノ酸付加、欠失もしくは置換を有するアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号1〜5、配列番号9〜10、配列番号120、もしくは配列番号131のうちのいずれか1つの配列とは異なる最大2個のアミノ酸を有する、アミノ酸配列、(iii)配列番号1〜5、配列番号9〜10、配列番号120、もしくは配列番号131のうちのいずれか1つと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、ならびに(iv)1個以上の末端改変、および該ペプチドの連結を促進するための改変を含む、配列番号1〜10、配列番号120もしくは配列番号131のうちのいずれか1つの改変されたアミノ酸配列、からなる群より選択される配列を含む、ペプチド。
【請求項15】
配列番号1〜10、配列番号120もしくは配列番号131のうちのいずれか1つをコードするポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
【請求項17】
キット構成要素を含む容器を含むキットであって、ここで該キット構成要素は、請求項1または7に記載のペプチド組成物を含む、キット。
【請求項18】
糖ペプチド抗生物質に対して結合親和性を有する前記ペプチドが第1の容器に梱包され、糖ペプチド抗生物質が第2の容器に梱包されている、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記キットは、再構成用の液体、、アプリケーターデバイス、使用説明書、前記ペプチド組成物が適用されるべき医療用デバイス、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるさらなる構成要素を含む、請求項17に記載のキット。

【公表番号】特表2011−501677(P2011−501677A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531143(P2010−531143)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080321
【国際公開番号】WO2009/055313
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(508207398)アフィナジー, インコーポレイテッド (3)
【出願人】(508111279)シンセス ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】