説明

医療用ドレープの受水袋

【課題】受水袋から検体を衛生的且つ容易に採取可能とするとともに、検体の採取時には、手術用液体や体液等の飛散や検体の紛失の可能性が少なく、また、洗浄容易で洗浄後に汚れ残りが生じることのない受水袋を得る。
【解決手段】上端開口部10を径大としたテーパ状の袋本体4をドレープ本体1に配置するとともに、上記袋本体4の底部に、液体流出用の下端開口部11を形成する。そして、この下端開口部11に、この下端開口部11と連通可能とする漏斗状部材5を着脱可能に接続するとともに、この漏斗状部材5内に、上記下端開口部11の内周に接続したガイド筒12の下端導入部13を導入し、上記上端開口部10から袋本体4内部に流入した液体に混入した検体を採取する検体採用フィルター6を漏斗状部材5に配置することにより、この検体採取用フィルター6にて上記検体を採取可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術の際に患者に被覆する医療用ドレープの受水袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1〜3に示す如く、受水袋を設けた医療用ドレープが一般的に使用されている。これら従来の医療用ドレープの受水袋は、再使用することができない使い捨てであって、使用後には廃棄されるものである。そして、形状を下端側が先細りのテーパ状としており、手術等の際に流出した体液や手術の際に使用する手術用液体を一定位置に誘導したり、前記液体中に混在する手術によって切除した検体を収集するものである。そして、特許文献1〜3の受水袋は、手術の際に収集した液体及び検体のうち、検体のみを採取可能とする検体採取用フィルターを内部に固定配置するとともに、下端には、受水袋を通過した液体を外方に排出するための下端開口部を設けている。
【0003】
そのため、受水袋内に収集した検体は検体採取用フィルター上に残留するとともに、液体は下端開口部を通過して外方に排出されるものとなるため、液体と検体とを別々に採取することが可能となる。
【特許文献1】特開2001−149383号公報
【特許文献2】特開2003−210487号公報
【特許文献3】実公平3−13294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の受水袋は、内部に検体採取用フィルターを一体的に固定したものであるため、検体採取用フィルター上に残留した検体を採取する場合には、医療用ドレープを患者から取り外すか、或いはドレープ本体から受水袋を取り外す必要がある。そのため、受水袋から検体を取り出す作業が繁雑なものとなり、ドレープ本体や受水袋に付着した手術用液体や体液等が飛散したり、作業中に検体を紛失する等の問題が生じるおそれがあった。
【0005】
また、検体採取用フィルターを固定しているため、手術の最中に検体を採取して検査し、その検査結果によって以後の手術方法を決定する場合には、手術中であるためドレープを外すことができず、検体の入手が困難なものとなる。
【0006】
従って、手術用液体や体液が飛散したり検体を紛失したりする事のないよう、細心の注意を払って検体の採取作業を行わなければならず、作業に時間や手間がかかるものとなるとともに、灌流液等の手術用液体や体液等が飛散した場合には、周囲が汚染され、細菌やウイルスによる感染を引き起こすおそれがある。また、上記の如く手術用液体や体液等の飛散を防止したり取り扱いの簡便のため、受水袋の検体採取用フィルター部分を切り取って検体を採取する方法も従来より行われているが、フィルター部分の切り取り作業時に検体や手術用液体等が飛散するおそれがあるとともに、フィルター部分を切り取ってしまうと手術用ドレープの再使用ができなくなるという不都合が生じる。
【0007】
また、従来の手術用ドレープを再使用する場合には、前回の使用時に手術用ドレープに付着した検体や体液などの汚れを、洗浄によって完全に除去する必要がある。しかしながら、検体採取用フィルターには細かい隙間が多数形成されているため、このような細かい隙間に入り込んだ汚れを通常の洗濯によって完全に除去することは困難である。そのため、洗浄後も検体採取用フィルター部分に汚れが残留しやすいものとなり、この残留汚れによって細菌やウイルスが繁殖し、感染の危険性が高まるなど、衛生面において問題が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、受水袋から検体を衛生的且つ容易に採取可能とするとともに、検体の採取時には、手術用液体や体液等の飛散や検体の紛失の可能性が少なく、また、洗浄して再使用をする場合には、洗浄容易で洗浄後に汚れ残りが生じることのない受水袋を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の如き課題を解決するため、上端開口部を径大としたテーパ状の袋本体をドレープ本体の下端側に配置するとともに、上記袋本体の底部に、液体流出用の下端開口部を形成したものにおいて、この下端開口部の内部に、漏斗状部材を着脱可能に挿入接続し、この漏斗状部材内に、上記下端開口部の内周に接続したガイド筒の下端導入部を導入するとともに検体採取用フィルターを配置し、上記上端開口部から袋本体内部に流入する液体に混入した検体を、検体採取用フィルターにて採取可能としたものである。
【0010】
このように、漏斗状部材を袋本体に着脱可能に接続するとともに、漏斗状部材に検体採取用フィルターを配置しているため、袋本体から検体採取用フィルターとともに漏斗状部材を取り外すことにより、医療用ドレープや受水袋等に付着した手術用液体や体液を飛散させることなく、また、検体採取用フィルター上の検体を紛失することなく、受水袋から検体を容易に取り出すことが可能となる。また、上記作業を手術中にドレープを取り外すことなく行うことが可能となる。そのため、受水袋からの検体の採取作業に時間や手間がかからず、作業を円滑に行うことができるとともに、手術用液体や体液等の飛散によって周囲が汚染され、細菌やウイルスによる感染を引き起こすという問題も生じにくいものとなる。
【0011】
また、袋本体とは別個に漏斗状部材及び検体採取用フィルターを洗浄することが可能となるため、袋本体を洗浄する装置とは異なる機械部品用の洗浄装置や溶剤等を用いることができ、例えば超音波洗浄装置や高温高圧滅菌処理装置等により、漏斗状部材及び検体採取用フィルターを細部まで十分に洗浄することが可能となる。従って、洗浄後に汚れが残留しにくいものとなり、漏斗状部材及び検体採取用フィルターを清潔に保つことができる。
【0012】
また、漏斗状部材は、検体採取用フィルターを着脱可能に配置したものであってもよい。これにより、特別な道具を必要とすることなく、漏斗状部材から検体採取用フィルターを取り外すことにより容易に検体を取り出すことが可能となる。よって、事前に検体採取用フィルターの予備を準備しておくことにより、検体採取のため手術中に検体採取用フィルターを漏斗状部材から取り外した場合でも、即座に新たな検体採取用フィルターを漏斗状部材にセットすることにより、迅速に手術を再開させることができる。また、使用後に漏斗状部材と検体採取用フィルターを別個に洗浄することができるため、漏斗状部材の内周面とフィルターの外周縁との隙間に入り込んだ液体や検体を容易に除去する事が可能となり、洗浄を容易なものとすることができる。
【0013】
また、漏斗状部材及び/又は検体採取用フィルターは、ステンレス材にて形成したものであってもよい。このように、漏斗状部材及び/又は検体採取用フィルターをステンレス材で形成することにより、使用した漏斗状部材及び/又は検体採取用フィルターを、他のステンレス製の手術用具と一緒に洗浄し、高温高圧滅菌処理を行うことが可能となる。従って、他の手術用具の洗浄で一般的に使用されている洗浄装置を使用することができることから洗浄が容易であるとともに、高温高圧滅菌処理を行うことができる。そのため、洗浄後の衛生状態を良好に保つことが容易となる。
【0014】
また、ガイド筒は、袋本体内に配置した内袋を介して袋本体の下端開口部に配置したものであっても良いし、袋本体内に固定することにより配置したものであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述の如く構成したものであって、袋本体と漏斗状部材とを別体に形成しているため、手術の途中又は終了後に、検体採取用フィルターをセットした漏斗状部材を袋本体から取り外すことにより、袋本体を移動させることなく迅速、確実、且つ容易に受水袋から検体を取り出すことができる。そのため、検体の採取に時間や手間を要することなく手術を円滑に進めることができるとともに、検体の採取の作業によって手術用液体や体液等の液体が飛散したり、検体を紛失したりする可能性が少なく、衛生状態を良好に保つことができるとともに、検体を確実に採取することが可能となる。
【0016】
また、漏斗状部材を袋本体から取り外すことにより、袋本体と漏斗状部材とを別個に洗浄することが可能となる。そのため、漏斗状部材及び検体採取用フィルターの洗浄を細部まで確実に、且つ容易に行うことが可能となり、洗浄後に検体採取用フィルターに汚れ残りが生じにくいものとなる。従って、洗浄後の衛生状態を良好に保った状態で繰り返し使用することも可能となる。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1について説明すると、本実施例の医療用ドレープは泌尿器科の手術に使用するものであって、図2に示す如く、ドレープ本体(1)に受水袋(2)を配置して成るものである。そして、ドレープ本体(1)には、下端中央部から上方にスリット(3)を形成しており、このスリット(3)を拡開することにより、図3に示す如く手術時に開脚した患者の両足を被覆可能なものとしている。
【0018】
また、上記の如くドレープ本体(1)に形成したスリット(3)の上方には、図2及び図3に示す如く受水袋(2)を固定配置している。この受水袋(2)は、図1に示す如く、袋本体(4)、漏斗状部材(5)、及び検体採取用フィルター(6)にて構成している。そして、上記受水袋(2)の袋本体(4)は、図1に示す如く外袋(7)と内袋(8)とで形成しており、この外袋(7)及び内袋(8)を、上端を径大としたテーパ状に形成するとともに、外袋(7)の上端と内袋(8)の上端とを一体に接続固定し、袋本体(4)の上端開口部(10)を形成している。また、上記外袋(7)と内袋(8)の下端には、それぞれ開口部を設けており、上記外袋(7)及び内袋(8)の下端の開口部を、袋本体(4)の液体流出用の下端開口部(11)としている。
【0019】
尚、上記本実施例のドレープ本体(1)及び袋本体(4)は、ポリエステル長繊維製であって、通気性及び撥水性を有しており、洗浄することによって再使用可能なものである。また、上記ポリエステル長繊維は、難燃性材料であるため、手術で使用する電気メス等の火花によって医療用ドレープに穴が開いたり燃えたりする危険性が少ないものとなる。
【0020】
また、上記内袋(8)側の下端開口部(11)の内周には、図1に示す如く円筒状のガイド筒(12)を固定配置している。このガイド筒(12)は、上端側を内袋(8)の内周に円周方向に固定するとともに、下端側を自由端としている。そして、この自由端を、以下に説明する漏斗状部材(5)の流入部(14)に挿入配置する下端導入部(13)としている。また、本実施例では上記内袋(8)の成形及びガイド筒(12)の固定を縫製により行っている。従って、内袋(8)内に収集された液体が縫製よって形成された針穴から漏れ出し、周囲を汚染する危険性がある。
【0021】
そこで、本実施例では図1に示す如く、内袋(8)の外周に外袋(7)を配置することにより、内袋(8)の液体が針穴から漏れ出た場合でも、漏れ出た液体が外袋(7)により遮断され、外部への流出を阻止することが可能となる。また、内袋(8)の外表面には樹脂被膜をコーティングすることにより、内袋(8)の針穴以外の部分からの液漏れを防止している。上記の如く構成することにより、袋本体(4)内の液体の漏れを防ぐことが可能となるため、袋本体(4)からの液漏れによる周囲への汚染を未然に防ぐことが可能となる。
【0022】
尚、本実施例では上記の如く、袋本体(4)を縫製によって成形しているが、他の異なる実施例においては、袋本体(4)を接着テープによって成形することも可能である。尚、接着テープにて袋本体(4)を成形する場合には、上記の如き針穴が形成されることはない。従って、針穴からの液漏れという問題が生じないため内袋(8)を配置する必要がなく、袋本体(4)の外袋(7)に直接ガイド筒(12)を固定することができる。また、ガイド筒(12)を外袋(7)に縫製によって固定した場合も、縫製部に目止めテープを止着することによって、液漏れを防止することができる。
【0023】
また、上記下端開口部(11)には、図1に示す如く、下端開口部(11)の内周とガイド筒(12)の下端導入部(13)との間にステンレス製の漏斗状部材(5)を配置している。この漏斗状部材(5)は、図4に示す如く、上方がテーパ状に拡開した流入部(14)と、この流入部(14)よりも径小で上記流入部(14)に連通した円筒状の流出部(15)とから成り、上記流入部(14)の外周径を、下端開口部(11)の内周に係止可能な大きさとしている。
【0024】
また、上記漏斗状部材(5)の流入部(14)の底面には、図1に示す如く、検体を採取可能とするステンレス製でメッシュ状の検体採取用フィルター(6)を配置している。これにより、手術用液体や体液等の液体とともに流入部(14)に流入した検体が検体採取用フィルター(6)に残留するものとなる。また、流入部(14)に流入した液体は、検体採取用フィルター(6)を通過して流出部(15)から外方に排出される。尚、本実施例では流出部(15)の下方に液体収集用の液体収集容器(図示せず)を配置し、流出部(15)から排出された液体は、この液体収集容器にて収集される。
【0025】
また、本願発明は袋本体(4)と漏斗状部材(5)及び検体採取用フィルター(6)とを別体に形成しているため、袋本体(4)から漏斗状部材(5)とともに検体採取用フィルター(6)を取り外すことにより、検体を容易に取り出すことができる。よって、手術中に検体を採取する必要がある場合には、漏斗状部材(5)及び検体採取用フィルター(6)を袋本体(4)から取り外した後、事前に準備しておいた新たな漏斗状部材(5)及び検体採取用フィルター(6)を袋本体(4)に配置することにより、迅速に手術を再開させることができる。
【0026】
また、図4に示す如く、本実施例では上記検体採取用フィルター(6)を漏斗状部材(5)とは別体に形成し、漏斗状部材(5)から取り外し可能に配置している。そのため、検体採取時には、特別な道具を必要とすることなく、漏斗状部材(5)から検体採取用フィルター(6)を取り外すのみで容易に検体を取り出すことが可能となる。
【0027】
また、医療用ドレープの使用後に漏斗状部材(5)と検体採取用フィルター(6)とをドレープ本体(1)とは別個に洗浄することができる。そのため、布製のドレープ本体(1)と本実施例においてステンレス等の金属にて形成した漏斗状部材(5)や検体採取用フィルター(6)とをドレープ本体(1)とは別個の洗浄装置により洗浄することが可能となる。従って、各々最も確実な洗浄を行うことができる。
【0028】
そして、上記の如く形成した漏斗状部材(5)を、使用時には図1に示す如く、袋本体(4)の下端開口部(11)の内周に配置するとともに、上記漏斗状部材(5)の内周に、ガイド筒(12)の下端導入部(13)を挿入配置する。このように袋本体(4)の下端開口部(11)に漏斗状部材(5)を配置することにより、袋本体(4)に流入した液体及び検体は、ガイド筒(12)によって確実に漏斗状部材(5)内に送られるものとなる。
【0029】
また、図2に示す如く、袋本体(4)の上端開口部(10)には、左右両側に2箇所、受水袋(2)の形状を保持するための長尺な紐体(20)を接続している。そして、図3に示す如く、ドレープ本体(1)を被覆した患者の両脚部に、それぞれ上記紐体(20)を環状に括り付ける。これにより、袋本体(4)の上端開口部(10)が上記紐体(20)に引っ張られて患者側とは反対方向に開口し、上端開口部(10)の開口状態を保持することができる。尚、本実施例では上記の如く形成した受水袋(2)を、ドレープ本体(1)に離脱不能に配置しているが、他の異なる実施例ではドレープ本体(1)に着脱可能に配置することも可能である。
【0030】
また、上記の如く形成した受水袋(2)の上方には、陰部を露出するための露出開口(16)を設けている。ここで、特にTUR手術(前立腺・膀胱内視鏡手術)においては、手術中に、膀胱内に注入した手術用液体や尿等の体液が上記露出開口(16)に露出した陰部の尿道から大量にかつ体内で加圧されて排出される。しかしながら、従来の医療用ドレープでは露出開口(16)の外周に撥水性の素材を使用するのが一般的であるため、従来の医療用ドレープを使用した場合には、手術用液体や体液等の排出時に手術用液体や体液等がドレープ本体(1)の露出開口(16)の周囲に突き当たって跳ね返り、露出開口(16)に対向して手術を行っている医師や看護師に付着したり、周囲に飛散するおそれがあった。
【0031】
そのため、衛生面に問題が生じるとともに、感染の危険性もあった。そこで、本実施例では図2に示す如く、上記露出開口(16)の外周に液体を吸収可能とする略長方形状の緩衝シート(17)を固定配置している。この緩衝シート(17)は織布であって、表面全体には、織りによって形成した凹凸を配置している。そして、この凹凸によって液体の衝突による衝撃を緩衝し、液体の跳ね返りを防止することが可能となる。
【0032】
そのため、手術用液体や体液等の排出時には、排出された手術用液体や体液等が上記緩衝シート(17)によって緩衝されやすいものとなるため、上記の如く従来の医療用ドレープで生じていた手術用液体や体液等の跳ね返りが生じにくいものとなる。従って、手術時の衛生面を良好なものとすることができるとともに、手術用液体や体液等の飛散による医師、看護師等の感染の危険性を少なくすることが可能となる。
【0033】
また、この緩衝シート(17)は、上端側をドレープ本体(1)に固定するとともに、下端側を自由端とした挿入片(18)としている。そして、使用時にはこの挿入片(18)を、図2に示す如く、受水袋(2)の内方に挿入することにより、緩衝シート(17)上に排出されるとともにこの緩衝シート(17)上を通過した液体を、受水袋(2)内に確実に流入させることが可能となる。
【0034】
また、上記緩衝シート(17)の上端両側には、紐状のコードホルダー(21)を一対設けている。このコードホルダー(21)は、中央部をドレープ本体(1)に固定するとともに、両端に留め具(22)を配置したものである。そして、手術で使用する電気メス等の電気製品のコードを束ねた状態でコードホルダー(21)を巻き付けて留め具(22)で止めることにより、長尺なコードをドレープ本体(1)に固定して手術の妨げにならないようにすることができる。
【0035】
尚、上記の如く本実施例の医療用ドレープは洗浄によって再使用可能なものとしているが、他の異なる実施例においては、全体的に、又は部分的に使い捨て可能なものとすることも、もちろん可能である。
【0036】
上記の如く構成したものにおいて、図3に示す如く、まず患者の上半身にドレープ本体(1)の上部を被覆するとともに、開脚した患者の両足に、それぞれスリット(3)を拡開してドレープ本体(1)の下部を被覆する。次に、露出開口(16)から陰部を露出させるとともに、緩衝シート(17)の挿入片(18)を受水袋(2)内に挿入する。
【0037】
そして、受水袋(2)の紐体(20)を環状に形成し、それぞれ患者の両足に架けることにより、受水袋(2)の上端開口部(10)を開口状態に保持する。その後、漏斗状部材(5)を袋本体(4)の内部に挿入するとともに袋本体(4)の下端開口部(11)に係止して流入部(14)の底面が水平になるよう配置し、更にガイド筒(12)の下端導入部(13)を漏斗状部材(5)の内周に配置する。これにより、医療用ドレープの装着が完了する。
【0038】
そして、手術中に尿道から流出した手術用液体等の液体は、上記の如く緩衝シート(17)上に排出され、この緩衝シート(17)によって排出時の衝撃が緩衝される。そして、上記の如く緩衝シート(17)を通過した液体は、受水袋(2)内の漏斗状部材(5)に収集されるものとなる。更に、上記の如く漏斗状部材(5)に収集された液体は、検体採取用フィルター(6)を通過して流出部(15)から外方に排出され、液体収集容器に収集されるものとなる。
【0039】
一方、尿道から排出された検体は、上記緩衝シート(17)を介して漏斗状部材(5)の検体採取用フィルター(6)に留まるものとなる。そのため、手術中又は手術後において検体を採取する必要がある場合には、上記検体採取用フィルター(6)と漏斗状部材(5)とを袋本体(4)から取り外すことにより、検体を容易且つ確実に取り出すことが可能となる。
【0040】
ここで、本実施例では検体採取用フィルター(6)を漏斗状部材(5)とは別体に形成しているが、他の異なる実施例では、検体採取用フィルター(6)を漏斗状部材(5)と一体に形成することも可能である。検体採取用フィルター(6)を漏斗状部材(5)と一体に形成した場合であっても、本願発明は袋本体(4)と漏斗状部材(5)とを別体に形成しているため、袋本体(4)から漏斗状部材(5)を取り出すことにより、検体を容易に取り出すことができる。
【0041】
また、本実施例では漏斗状部材(5)及び検体採取用フィルター(6)を、いずれもステンレスにて形成している。そのため、使用した漏斗状部材(5)及び検体採取用フィルター(6)を、他のステンレス製の手術用具と一緒に洗浄し、高温高圧滅菌処理を行うことが可能となる。従って、他の手術用具の洗浄で一般的に使用されている洗浄装置を使用することができることから洗浄が容易であるとともに、高温高圧滅菌処理を行うことができる。そのため、洗浄後の衛生状態を良好に保つことが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1を示す受水袋の断面図。
【図2】実施例1の医療用ドレープを示す平面図。
【図3】実施例1の医療用ドレープを患者に被覆した状態を示す概念図。
【図4】実施例1の漏斗状部材及び検体採取用フィルターを示す斜視図。
【符号の説明】
【0043】
1 ドレープ本体
4 袋本体
5 漏斗状部材
6 検体採取用フィルター
10 上端開口部
11 下端開口部
12 ガイド筒
13 下端導入部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口部を径大としたテーパ状の袋本体をドレープ本体の下端側に配置するとともに、上記袋本体の底部に、液体流出用の下端開口部を形成したものにおいて、この下端開口部の内部に、漏斗状部材を着脱可能に挿入接続し、この漏斗状部材内に、上記下端開口部の内周に接続したガイド筒の下端導入部を導入するとともに検体採取用フィルターを配置し、上記上端開口部から袋本体内部に流入する液体に混入した検体を、検体採取用フィルターにて採取可能としたことを特徴とする医療用ドレープの受水袋。
【請求項2】
漏斗状部材は、検体採取用フィルターを着脱可能に配置したことを特徴とする請求項1の医療用ドレープの受水袋。
【請求項3】
漏斗状部材は、ステンレス材にて形成したことを特徴とする請求項1または2の医療用ドレープの受水袋。
【請求項4】
検体採取用フィルターは、ステンレス材にて形成したことを特徴とする請求項1または2の医療用ドレープの受水袋。
【請求項5】
ガイド筒は、袋本体内に配置した内袋を介して袋本体の下端開口部に配置したことを特徴とする請求項1の医療用ドレープの受水袋。
【請求項6】
ガイド筒は、袋本体内に固定することにより配置したことを特徴とする請求項1の医療用ドレープの受水袋。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−35693(P2010−35693A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199750(P2008−199750)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(594158460)ナガイレーベン株式会社 (10)