説明

医療用一酸化炭素放出レニウム化合物

本発明は、医療用途を有する式(I)の新規レニウム化合物、対応する医薬組成物及びそれらの医療用途に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規レニウム化合物、好ましくは医療用非放射性レニウム化合物、対応する医薬組成物及びそれらの医療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一酸化炭素は、ホ乳類における基礎的な低分子メッセンジャーとして知られている。COの内因性産生は、ヘム代謝経路に関係し、特に、ヘムオキシゲナーゼとして知られている酵素群の一ファミリの作用に関係する。ヘムオキシゲナーゼは、ヘムのビリベルジンへの酸化を触媒し、それにより、フリーの鉄及び一酸化炭素を放出する。ヘムオキシゲナーゼの組織特異的な分散、及びそれによって、放出された一酸化炭素は、幾つかの生理学的作用と結びついている。例えば、一酸化炭素は、ストレス刺激に対する誘導可能な防御システムにおけるシグナリング分子である;それは、血管弛緩及び心臓の血液供給を改善することにより循環系における基本の役割を有している;それは、慢性移植片拒絶に伴う動脈硬化の障害を抑える;NOと同様に、それは、視床下部−脳下垂体−副腎系の神経伝達に影響を及ぼし、NPAS2、いわゆるヒト「体内時計」タンパク質と相互作用することにより、一酸化炭素がホ乳類の概日リズムに影響を及ぼすという証拠がある。
【0003】
ホ乳類の生理学にとって一酸化炭素が適切であるため、その医薬用途への関心が増大している。一酸化炭素の直接吸入が試験されたが、一酸化炭素誘発組織低酸素症と治療利益との間に微妙なバランスがあるため、該化合物への低い耐性が矛盾しているとわかった。また、直接のガス状態での使用は、安全性並びに標的化導入及び制御送達に関する問題をもたらす。CO放出分子(CO-RMs)は、一酸化炭素の投与への代替アプローチを表す。多くの錯体が評価され、Motterlini 及び Mannの先駆的な研究(例えば、 Motterliniら, Circ. Res., 2002 90, E17-24;Motterliniら, Intensive Care Med. 2008, 34, 649-658;Motterlini et al., Circ. Res. 2002, 90, E17-24; Motterlini ら, Expert. Opin. Investig. Drugs 2005, 14, 1305-1318;Motterliniら, Curr. Pharm. Des. 2003, 9, 2525-2539;Motterliniら, J., FASEB J. 2005, 19, 284-286)により、インビボで一酸化炭素を制御放出する、最も 将来有望なfac−[RuCl(グリシナト)(CO)]錯体(CO-RM-3)を結果として得た。CORM-3の化学的効果及び治療効果は、きちんと証明されている。CORM-3は、水に溶解後10分以内に1モルの一酸化炭素を放出し、インビボでの血圧を著しく下げ、インビトロでは事前に収縮した大動脈環を緩める。その心臓保護効果は、証明されている。今日、金属カルボニルは、潜在的な新規な類の医薬(CO-RMsのレビューとして、Johnsonら, Metal Carbonyls in Medicine, Angew. Chem. Int. Ed., 2003, 42, 3722-3729を参照のこと)として認識されている。そこには広範囲に亘って、COの生理学上及び医学上の薬効が証明されている。それは、抗炎症であり、例えば、内毒素性ショックを減じたり、アレルギー性炎を減じたりする; 移植拒絶を抑制する;高酸素症及び酸化性肺損傷から守る;虚血及び再灌流障害から守る;アポトーシスから膵臓ベータ細胞を守る;ストレス状態での精子形成を調節する;灌流圧を減少させる;敗血症性ショック及び肺損傷から守る;細胞保護効果を提供する;血管平滑筋緊張を調節し、ストレス状態での血圧を調節し、慢性移植拒絶反応及びバルーン損傷に伴う動脈硬化障害を抑制する。CO-RMsの大動脈血管拡張について、冠血管収縮の減少及び高血圧症の低下が見られた。CO-RM-3の再灌流障害の阻害について、移植 拒絶及び血小板凝集が確認された。
【0004】
WO02/092075A2 金属カルボニル化合物を有する医薬組成物は、次のことを教示する。該金属は、グアニル酸 シクラーゼ活性、神経伝達又は血管拡張を刺激するため、高血圧症、放射線障害、内毒素性ショック、炎症、炎症関連の疾病、過酸素症損傷(hyperoxia-indu injury)、アポトーシス、ガン、移植拒絶、動脈硬化症、虚血後の器官損害、心筋梗塞、アンギーナ、出血性ショック、敗血症、陰茎勃起不全及び成人呼吸促迫症候群を処置するためにFe、Mn、Ru、Rh、Ni、Mo又はCoから選ばれる。
【0005】
レニウムは、超合金及び触媒製造に主に用いられる、極めて希少な第7族遷移金属である。放射性同位体188Re及び186Reは、肝臓ガンの処置に現在用いられる。これらは共に、組織への同様の浸透長を有する(186Reで5mm、188Reで11mm)が、186Reは、より長い寿命であり有利である(90時間、188同位体は17時間)。周期表の傾向に関連して、レニウムは、テクネチウムと類似する化学的性質を有する。標的化合物をレニウムでラベル化する研究の結果、しばしばテクネチウムへと変わることができる。この変換の様相は、放射性医薬に有用であることがわかる。ただし、テクネチウム、特に医学上用いられる99m同位体と作用させるのは困難である。今までのところ、レニウムの医学的応用は、その放射性同位体の細胞毒素の用途に限定されている。
【0006】
つい先頃、Zobiら(Inorg. Chem. 2009, 48, 8965-8970)は、万能な合成中間体[ReIIBr(CO)2−(安定ではあるが、選択された配位子との置換反応に十分に鋭敏である)による一酸化炭素含有レニウムI及びII錯体の合成を報告した。この中間体由来の錯体の予期し得ない好気的安定性および模範的な化学的性質のため、本発明者らは、従来のRe用途、即ち細胞毒素同位体としての用途の観点で、医薬品化学における、これらReI/II錯体の可能性ある医学的応用について、より一般的に思索した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規な医学上有用なレニウム化合物、好ましくは医学上有用でありかつ非放射性のレニウム化合物を提供することにある。また、本発明の目的は、医学的応用及び/又は診断的適用のための、特に心臓血管系疾患、好ましくは心臓低酸素症、心筋梗塞、心臓肥大、動脈硬化症及び高血圧症;虚血再灌流障害、炎症性疾患、好ましくは喘息又はアンギーナ;外傷性損傷、好ましくは脳、腎臓又は肝臓の外傷性損傷;移植拒絶、好ましくは同種及び異種移植拒絶、血小板凝集及び/又は単球活性化;神経系のニューロン変性、放射線損傷、ガン、陰茎勃起不全、成人呼吸促迫症候群、及びホ乳類の日周期リズムの疾患、好ましくは 時差ボケからなる郡から選ばれる疾病及び/又は医学的状態の予防及び/又は治療のための、新規な一酸化炭素放出化合物を提供することにある。
【0008】
さらなる目的は、(i)レニウム化合物、特に非放射性レニウム化合物の診断的使用及び又は医学的使用、並びに(ii)該化合物を有する医薬組成物及び診断組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様として、上記目的は、式(I)の新規化合物、好ましくは医薬用途のものにより解決される。
【化1】

式中、ReはRe(I)又はRe(II)、好ましくはRe(II)であり;
nは3−から3+から選ばれ、好ましくは2−、1−、0、1+及び2+、より好ましくは1−、0、1+から選ばれ;
L1、L2、L3及びL4は、各々独立に、それぞれ医薬上許容可能な単座配位子を意味する。
【0010】
好ましくは、本発明の化合物におけるレニウム金属は放射性物質ではない。
【0011】
Re又はReIIに単座配位子を有することを特徴とする式(I)の化合物は、発明者ら(Zobiら、Inorg. Chem. 2009, 48, 8965-8970)によって以前報告されたように固体又は溶解状態での好気的安定性を示すだけでなく、これらは、生理的条件下で、制御可能な方法、単座配位子の性質及びpHHに依存する放出速度で、実際に一酸化炭素を放出する、ということが驚くべきことに判明した。
【0012】
治療的な一酸化炭素放出について現在研究されており且つpH7.4、37℃の生理的条件下で約1分の半減期を有する、CO-RM-3と称される既知錯体[RuCl(グリシナト)(CO)]と比較して、本発明のレニウム化合 物は、6分〜約1時間の半減期を有し、一酸化炭素放出を提供できることを示している。CO-RM3を上回る、持続期間の向上し且つ調節可能な遅延及び放出速度は、 一酸化炭素の投与、タイミング及び標的化に非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、化合物4(30μM、25℃、0.1Mリン酸バッファ、pH7.4)の添加後、30μM Mb溶液で例示されるシス−トランス−[ReII(CO)Br]n錯体による、デオキシ−ミオグロビン(Mb)から一酸化炭素ミオグロビン(MbCO)への変換の典型的な吸収スペクトルをグラフとして示す。
【図2】図2から図7は、異なるシス−トランス−[ReII(CO)Br錯体の、30μM Mb(ミオグロビン)、25℃、0.1Mリン酸バッファ、pH7.4(黒塗りの丸)、6.3(黒塗りの三角)、5.8(黒塗りの四角)の条件下での、pH依存性のCO放出速度の結果をグラフとして示す。
【図3】図2参照。
【図4】図2参照。
【図5】図2参照。
【図6】図2参照。
【図7】図2参照。
【図8】「虚血再灌流」障害(I/R)に対する共役体B12−CORM−2及びB12CO−RM−4(30μM)の細胞保護効果を示す。新生仔ラット心筋細胞(NRCs)の、虚血(低酸素症、無糖血症、アシドーシス)16時間後の細胞損傷。CO−RM又は一定少量の溶媒(DMSO)を、9時間の再灌流期間の発症時に、30μM濃度で、細胞培地へ加えた。棒は、PI陽性(死)細胞の%を示す。**は、I/R B12−CORM−2治療細胞をI/Rコントロールと比較したとき、p<0.01を示す。#は、正常酸素圧状態の細胞をI/Rコントロールと比較したとき、p<0.05を示す。
【図9】Re−CORMによる酸素利用率及び細胞内グルタチオン含量の減少の調整。A:2、6及びB12CO−RM−2 60μM添加後10分以内のインキュベーション培地内の酸素量の減少;N=6〜8。平均±SEMによる。B:CO−RMの存在下又は非存在下での虚血16時間及び再灌流10分暴露した、NRCの細胞内グルタチオン(GSH)量の減少。N=4データは、平均±SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化合物の単座配位子に関し、本明細書で用いる「医薬上許容可能」の用語は、本発明の化合物の医療用途にもはや 許容できない配位子を排除することを意味する。なぜなら、投与の量及び方法において、特定の配位子の副作用、即ち毒性は、もはやその化合物は医学的に有用ではないからである。
【0015】
単座配位子(又は一座配位子ともいう)は、本発明の化合物の中心のレニウムイオンにたった一つの原子だけが結合する配位子をいう。
【0016】
本発明の化合物において、Re(II)が好ましい。なぜなら、該錯体は、17個の電子を有することを特徴とし、それ故電子的に不飽和であるため、より反応性を有するからである。
【0017】
医薬上許容可能でありかつ単座の配位子である必要性の他に、本発明の化合物の配位子に、さらなる構造的又は機能的な制約は見あたらない。ただし、錯体のレニウム金属に結合するために、少なくとも1つのヘテロ原子、好ましくはN、O、S及び/又はP、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重又は三重結合のいずれかの存在が必要である。好適な配位子の群として、水、一酸化炭素、ハロゲン、ヘテロ芳香族化合物及びアルコール化合物、即ち、実際には少なくとも2つの一酸化 炭素と共に単座レニウムI又はII錯体を形成することができる、任意の化合物又は原子を含むことが実験上立証されている。
【0018】
配位子は、各々独立に、中性荷電、正荷電又は負荷電の単座配位子から選択することができる。好ましい態様として、本発明の化合物は、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくはすべてが、各々独立に、中性荷電又は負荷電の単座配位子、好ましくは中性荷電の単座配位子から選択される。好適な正荷電の配位子の例として、ピラジニウム、ピリミジニウム、又は4,4’-ビピリミジニウム型配位子、好ましくはピリミジニウムがあるが、これに限定されない。好適な中性荷電の配位子の例として、イミダゾール、ピリジン及びピラジン型配位子、好ましくはイミダゾールがあるが、これに限定されない。好適な負荷電の配位子の例として、シアニド、ヒドロキシド及びハロゲン、好ましくはヒドロキシド及びハロゲン、より好ましくはブロミドがあるが、これに限定されない。さらなる例を、明細書全体に亘って記載する。
【0019】
上述したように、本発明を実施するための単座配位子は、種々の特性、例えば大きさ、荷電、原子の空間的及び機能的配列を有する、非常に広範囲に亘る化学化合物から選択することができる。本発明は、医学上のレニウム化学におけるブレークスルーであるので、放射性細胞毒素及びTcモデル化合物としての従前の非常に限定された用途を広く超え、配位子の制約についてほとんど情報がない;また、既に試験した、本発明の種々の化合物も、いかなる制約を示さなかった。よって、本発明を実施するための配位子は、本発明の範囲を不当に制限することなく、機能的にのみ定義することができる。
【0020】
本発明のレニウム化合物の単座配位子に関し、「各ケースにおいて互いに独立に」又は「〜からなる群から各々独立に選ばれる」の用語は、レニウム配位子が、「混合の」配位子であってもよい、即ち、該群を構成する異なる基から選択できることを意味する。
【0021】
「〜からなる群から各々独立に選ばれる」の用語は、4つの配位子が、そこに示される群の同じもの又は異なるものから選択してもよいということを意味する。少なくとも2つの配位子が同じものであるのが好ましく;より好ましくは3つの配位子が同じものであり、最も好ましくは4つ全ての配位子が同じものである。
【0022】
より好ましい態様において、本発明の化合物は、次のものから選ばれる。
即ち、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは全てが、各々独立に下記からなる群から選ばれる:
少なくとも1つのヘテロ原子を含むアルキル及びシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、アリール、ヘテロ アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、イソシアニド、アルコール、ホスフィン、ホスファイト、ホスホニト、スルフィド、スルホキシド、及びアミノ又はグアニジン、各々のアミノ又はグアニジンは、任意に、アルキル、アシル又はアルコキシ カルボニルでモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよく、この群の各々の基は、任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく;
ここで、各R”は、独立に
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びアルキル、アシル又はアルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい。
【0023】
少なくとも1つのヘテロ原子を含むアルキル配位子は、好ましくはC1−20、より好ましくはC1−12、最も好ましくはC1−6であるのがよい。少なくとも1つのヘテロ原子を有するシクロアルキル配位 子は、好ましくはC3−20、より好ましくはC3−12、より好ましくはC3−6、最も好ましくはC5−6であるのがよい。アルケニル、アルキニル及びアルキリデン配位子は、好ましくはC2−20、より好ましくはC2−12、最も好ましくはC2−6であるのがよい。アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル及びアリールオキシ配位子は、好ましくはC5−20、より好ましくはC5−12、最も好ましくはC5−6であるのがよい。アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ及びスルホニルアミノは、好ましくはC1−20、より好ましくはC1−12、最も好ましくはC1−6であるのがよい。
【0024】
本発明の化合物の立体化学に関して、少なくとも2つの一酸化炭素が、互いにシス位の立体配置、即ち、シス−[ReI/II(CO)1−4]立体化学を有することが好ましい。より好ましい態様として、4つの配位子L1−4のうち、少なくとも2つが同じタイプであり、好ましくはハロゲンであり、より好ましくは臭素であり、かつトランス位の立体配置を有する。これは、残りの2つの配位子がシス位の立体配置を維持し、結果としてシス−トランス−シス立体化学、即ち、シス−トランス−シス−[ReI/II(CO)(L)(L)]であって、L及びLが好ましくはハロゲン、より好ましくはBrであるものである。よって、最も好ましい態様として、本発明は、シス−トランス−シス-[ReI/II(CO)(ハロゲン)(L)]化合物に関し、ブロミドが好ましいハロゲンである。
【0025】
本発明の好ましい化合物は、少なくとも2つの一酸化炭素配位子が互いにシス位の立体配置にあり、及び/又は、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも2つがハロゲン、好ましくはブロミドであり、及び/又は、該少なくとも2つのハロゲンが互いにトランス位の立体配置にある化合物である。
【0026】
より好ましい態様として、本発明の化合物は、次のものから選ばれる。
即ち、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に下記からなる群から選ばれる
少なくとも1つのヘテロ原子を含むC1−12アルキル及びC3−12シクロアルキル、好ましくはC1−6アルキル及びC3−7シクロアルキル、C2−12アルケニル、好ましくはC2−6アルケニル、C2−12アルキニル、好ましくはC2−6アルキニル、C2−12アルキリデン、好ましくはC2−6アルキリデン、C1−12アルコキシ、好ましくはC1−6アルコキシ、C1−12アルキルチオ、好ましくはC1−6アルキルチオ、C1−12アシル、好ましくはC1−6アシル、C2−12アルコキシカルボニル、好ましくはC2−7アルコキシカルボニル、C1−12アシルオキシ、好ましくはC1−6アシルオキシ、C1−12アシルアミノ、好ましくはC1−6アシルアミノ、インダニル、インデニル、フェニル、ナフチル、
チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、キナゾリニル及びインダゾリルから選ばれるヘテロアリール、並びに
アジリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、ジオキサラニル、ピラニル、ピペリジニル及びピペラジニルから選ばれるヘテロシクリル、各々は、任意に1〜4個のR”で置換されていてもよい;
ここで、各R”は、独立に、
1−5アルキル、C2−5アルケニル、C2−5アルキニル、C2−5アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アルキルチオ、C1−5アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−5アシルオキシ、C1−5アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい。
【0027】
より好ましい態様として、本発明の化合物は、次のものから選ばれる。
即ち、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に下記からなる群から選ばれる
(i)ハライド、好ましくはBr、OH、CN、ClO、NO、NO、NCO、NCS、N及び
【化2】

(ii)水、一酸化炭素及び窒素、並びに
(iii)ニトリル、イソシアニド、第1アミン、第2アミン、第3アミン、好ましくは第1及び第2アミン、アルコール、ホスフィン、ホスフェート、ホスホニト、スルフィド、スルホキシド、各々は、可能な個所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよい;
ここで、各R及び/又はR”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びアルキル、アシル又はアルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよいアミノから選ばれ、ここで、この群の任意の基及び/又はR”は、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい;
好ましくは、ここで、各R及び/又はR”は、独立に、
1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C2−6アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−5アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−6アシルオキシ、C1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−6アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、ここで、この群の任意の基及び/又はR”のいずれも、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい。
【0028】
さらに好ましい態様として、本発明の化合物は、次のものから選ばれる。
即ち、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に5員又は6員のヘテロ原子炭素環(ヘテロ原子は好ましくは、N、O、S及び/又はPのうちの少なくとも1つである。)からなる群から選ばれ、好ましくは下記からなる群から選ばれ
【化3】

式中、Xは、N、O、S又はPから選ばれる。ただし、2個のXを有する配位子については、1個のXはCであってよく、各々は、可能な個所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよい;
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びアルキル、アシル又はアルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよく;
または、好ましくは、ここで、各R”は、独立に、
1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C2−6アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−6アシルオキシ、C1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−6アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい。
【0029】
さらに好ましい態様として、本発明の化合物は、次のものから選ばれる。
即ち、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に5員又は6員のヘテロ原子(好ましくは、N、O、S及び/又はP)炭素環、好ましくは直前に記載したもの、ここで、5員又は6員のヘテロ原子炭素環の2〜8個、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個が、共通のリンカー、例えば下記のものに結合している。
【化4】

式中、Xは、上述のように定義され、nは好ましくは1〜7、より好ましくは1〜5であり、「リンカー」は、配位子のうち、少なくとも2つの5員又は6員のヘテロ原子炭素環を連結する官能基を意味し、
好ましくは、リンカーは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニルから選ばれ;
より好ましくは、リンカーは、C1−12、好ましくはC1−6アルキル、C1−12、好ましくはC1−6アルケニル、C1−12、好ましくはC1−6アルキニル、C1−12、好ましくはC1−6アルキリデン、C1−12、好ましくはC1−6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−12、好ましくはC1−6アルコキシ、C1−12、好ましくはC1−6アルキルチオ、C1−12、好ましくはC1−6アシル、C1−12、好ましくはC1−6アルコキシカルボニル、C1−12、好ましくはC1−6アシルオキシ、C1−12、好ましくはC1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−12、好ましくはC1−6アルキルスルホニルからなる群から選ばれ;
各化合物は、可能な個所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく;
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
好ましくは、各R”は、独立に、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C2−12アルキリデン、C3−12シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−12アルコキシ、C1−12アルキルチオ、C1−12アシル、C2−12アルコキシカルボニル、C1−12アシルオキシ、C1−12アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−12アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
より好ましくは、ここで、各R”は、独立に、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C2−6アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−6アシルオキシ、C1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−6アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−5アルキル、C1−5アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
ここで、任意のリンカー及び/又はR”は、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよく;
ここで、レニウム配位原子は、好ましくは芳香族系の一部を形成する。
【0030】
より好ましい態様において、本発明の化合物は、次のものから選ばれる。
即ち、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に下記からなる群から選ばれる
【化5】

式中、nは1〜6、好ましくは1〜3であり;
「リンカー」は、2個の窒素原子、2個のリン原子、又は2個のイオウ原子と連結する官能基を意味し、
好ましくは、リンカーは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニルからなる群から選ばれ;
より好ましくは、リンカーは、C1−12、好ましくはC1−6アルキル、C1−12、好ましくはC1−6アルケニル、C1−12、好ましくはC1−6アルキニル、C1−12、好ましくはC1−6アルキリデン、C1−12、好ましくはC1−6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−12、好ましくはC1−6アルコキシ、C1−12、好ましくはC1−6アルキルチオ、C1−12、好ましくはC1−6アシル、C1−12、好ましくはC1−6アルコキシカルボニル、C1−12、好ましくはC1−6アシルオキシ、C1−12、好ましくはC1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−12、好ましくはC1−6アルキルスルホニルからなる群から選ばれ;
ここで、各Rは、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
好ましくは、ここで、各Rは、独立に、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C2−12アルキリデン、C3−12シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−12アルコキシ、C1−12アルキルチオ、C1−12アシル、C2−12アルコキシカルボニル、C1−12アシルオキシ、C1−12アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−12アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
より好ましくは、ここで、各Rは、独立に、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C2−6アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−6アシルオキシ、C1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−6アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−5アルキル、C1−5アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ、
ここで、任意のRは、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい。
【0031】
より好ましい態様において、本発明の化合物は、次のものから選ばれる。
即ち、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に、ヌクレオチド、アミノ酸、ビタミン、好ましくはビタミンB12、及びこれらの1〜10部位のオリゴマー、好ましくは下記式
【化6】

からなる群から選ばれ、可能な個所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよい;
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
好ましくは、ここで、各R”は、独立に、C1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C2−12アルキリデン、C3−12シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−12アルコキシ、C1−12アルキルチオ、C1−12アシル、C2−12アルコキシカルボニル、C1−12アシルオキシ、C1−12アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−12アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
より好ましくは、ここで、各R”は、独立に、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C2−6アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−6アシルオキシ、C1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−6アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−5アルキル、C1−5アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
ここで、任意のR”は、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい。
【0032】
最も好ましい態様として、本発明の化合物は、式[ReIIBr(CO)(L)]、好ましくは、シス−トランス−シス[ReIIBr(CO)(L)]を有し、ここで、少なくとも1つのL、好ましくは双方のLは、ハライド、好ましくはBr、一酸化炭素、N−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルピリジン、イミダゾール、ピリジン、C1−6アルキルシアニド、好ましくはメチルシアニド、及びアルコール、好ましくはC1−6アルコール、より好ましくはメタノール又はエタノールからなる群から選ばれ、可能な個所において任意に1〜4個のR”で置換されてもよく、
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
好ましくは、各R”は、独立に、
1−12アルキル、C2−12アルケニル、C2−12アルキニル、C2−12アルキリデン、C3−12シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−12アルコキシ、C1−12アルキルチオ、C1−12アシル、C2−12アルコキシカルボニル、C1−12アシルオキシ、C1−12アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−12アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ;
より好ましくは、各R”は、独立に、
1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C2−6アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−6アシルオキシ、C1−6アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、C1−6アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−5アルキル、C1−5アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよいアミノからなる群から選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”は、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい。
【0033】
本発明を実施するための単座配位子は、種々の特性、例えば大きさ、荷電、原子の空間的及び機能的配列を有する、非常に広範囲に亘る化学化合物から選択することができるため、本発明の化合物は、少なくとも1つの、好ましくは2つの診断配位子及び/又は生理活性配位子を含んでもよく、好ましくは標的配位子、診断配位子、及び生理活性、好ましくは医学活性配位子からなる群から選ばれる。よって、本発明の化合物は、「機能性」配位子の「キャリア」として機能することができる。
【0034】
本発明は、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして生じることができる、1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を含む上述の化合物の使用を含む。これらの化合物のそのような異性体はすべて、明示的に、本発明に含まれる。各ステレオジェニック炭素は、R配置若しくはS配置又はそれらの組合せであってもよい。本発明の化合物のいくつかは、1以上の互変異性体で存在することができる。本発明は、このような互変異性体をすべて含む。
【0035】
本明細書に開示するすべての化合物に対して、命名法が構造と矛盾する場合、化合物はその構造によって定義されるものと理解される。
【0036】
本明細書で用いられるすべて用語は、特記しない限り、該業界で通常の意味によって理解される。
【0037】
本明細書で用いる「ヘテロ原子」の用語は、例えばヘテロアリールの用語との関係において、例えば、好ましくはO、N、S及びPなどの炭素及び水素以外の原子を意味するものと理解される。
【0038】
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデンなどの用語は、構造上可能であれば、炭素含有鎖の直鎖状及び分岐鎖状、置換又は未置換の形態を含むものとして理解される。これらの炭素鎖において、1つ又はそれ以上の炭素原子は、ヘテロ原子、好ましくはO、S又はNによって任意に置換されてもよい。Nが置換されない場合、それはNHである。ヘテロ原子は、炭素直鎖又は分岐鎖内の末端又は内部炭素のいずれをも置換することができる。本明細書に記述したように、このような基は、オキソのような基によって置換することができ、結果としてアルコキシカルボニル、アクリル、アミド、及びチオオキソなどの定義となるが、これらに限定されない。
【0039】
「環式炭素化合物」の用語は、3〜20個、好ましくは2〜12個、より好ましくは5又は6個の炭素原子を含む環状炭化水素を意味するものと理解される。環式炭素化合物としては、3〜20個、好ましくは3〜12個の炭素原子を含む炭化水素環を挙げることができる。これらの環式炭素化合物は、芳香族又は非芳香族のいずれであってもよく、即ち、シクロアルキル系又は混合シクロアルキル−芳香族系であってもよい。非芳香族環系としては、モノ不飽和又はポリ不飽和であってもよい。好ましい環式炭素化合物として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプタニル、シクロへプテニル、フェニル、インダニル、インデニル、ベンゾシクロブタニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、ベンゾシクロヘプタニル、及びベンゾシクロへプテニルを挙げられるが、これらに限定されない。シクロブタニル及びシクロブチルなどシクロアルキルとして、互換的に用いられる用語もある。
【0040】
「シクロアルキル」の用語は、3〜20個、好ましくは3〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素含有環を意味するものと理解される。これらの非芳香族環系は、モノ不飽和であってもポリ不飽和であってもよい。即ち、この用語は、シクロアルケニル及びシクロアルキニルを包含する。シクロアルキルは、ヘテロ原子、好ましくはO、S又はNを有してもよく、置換又は未置換であってもよい。好ましいシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロへプタニル、シクロヘプチル、ベンゾシクロブタニル、ベンゾシクロヘプタニル、及びベンゾシクロへプテニルを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0041】
「ヘテロ環式」の用語は、安定した非芳香族、好ましくは3〜20員、より好ましくは3〜12員、最も好ましくは5又は6員、単環又は多環、好ましくは8〜12員二環式、ヘテロ原子含有環式化合物(飽和又は不飽和のいずれであってもよい)をいう。各々のヘテロ環は、炭素原子と、窒素、酸素、イオウ及びリン原子から選ばれる、1以上、好ましくは1〜4個のヘテロ原子とからなる。ヘテロ環残基は、該環のいずれかの原子によって完全な分子の残りの構造と結合することができ、この結果として、安定な構造となる。ヘテロ環の例としては、ピロリジニル、ピロリニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、ジオキサラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、1-オキソ-λ4-チオモルホリニル、13-オキソ-11-アザ-トリシクロ[7.3.1.0-2,7]トリデシ-2,4,6-トリエン、テトラヒドロピラニル、2-オキソ-2H-ピラニル、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキソラノン、1,3-ジオキサノン、1,4-ジオキニル、8-オキサ-3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタニル、2-オキサ-5-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2-チア-5-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ピペリジノニル、テトラヒドロピリミドニル、ペンタメチレンスルフィド、ペンタメチレンスルホキシド、ペンタメチレンスルホン、テトラメチレンスルフィド、テトラメチレンスルホキシド、及びテトラメチレンスルホンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書において、「アリール」の用語は、本明細書で定義されるように芳香族環式炭素化合物又はヘテロアリールを意味するものと理解される。特記しない限り、アリール又はヘテロアリールの各々は、その部分又は完全ヒドロ化誘導体を含む。例えば、キノリニルは、デカヒドロキノリニル及びテトラヒドロキノリニルを含んでもよい;ナフチルは、テトラヒドロナフチルなどのそのヒドロ化誘導体を含んでもよい。本明細書に記載されるアリール及びヘテロアリール化合物の、その他の部分又は完全ヒドロ化誘導体は、当業者にとって明白であろう。当然、この用語は、アラルキル及びアルキルアリールを包含し、これら双方は、本発明の化合物を実施するための好ましい態様である。例えば、アリールの用語は、フェニル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ナフチル及びデカヒドロナフチルを包含する。
【0043】
「ヘテロアリール」の用語は、N、O、P及びSなどのヘテロ原子を1〜4個含有する、芳香族C3−20、好ましくは5〜8員の単環、又は好ましくは8〜12員の二環を意味するものと理解される。具体的なヘテロアリールとしては、アジリジニル、チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピロール、イミダゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、インダゾリル、トリアゾリル、ピラゾロ[3,4-b]ピリミジニル、プリニル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル、ピラゾル[3,4-b]ピリジニル、ツベルシジニル、オキサゾ[4,5-b]ピリジニル、及びイミダゾ[4,5-b]ピリジニルが挙げられる。
【0044】
アリールオキシ又はヘテロアリールアミンなどの上記環状部位の類似体である用語は、その各々の基に付いた、上記で定義したアリール、ヘテロアリール、ヘテロ環を意味するものと理解される。
【0045】
本明細書において、「窒素」、「イオウ」及びリンの用語は、得られる化合物が化学的に安定である限り、窒素、イオウ及びリンの任意の酸化体、並びに任意の塩基性窒素の四級化体をも含まれる。例えば、−S−C1−6アルキルラジカルは、−S(O)−C1−6アルキル及び−S(O)−C1−6アルキルを含むものと理解される。
【0046】
本発明の化合物は、当業者によって評価されるような、「化学的に安定」であると考えられるものだけである。例えば、「ダングリングな原子価」又は「カルボアニオン」を有する化合物は、本明細書に開示される発明の概念によって想定される化合物ではない。
【0047】
本発明の化合物の医薬上許容可能な塩には、医薬上許容可能な無機酸及び有機酸並びに無機塩基及び有機塩基由来のもの、好ましくは非酸化性の無機及び有機酸並びに同塩基由来のものが含まれる。好適な酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-硫酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−硫酸、及びベンゼンスルホン酸が挙げられる。適切な塩基由来の塩としては、アルカリ金属(例えばナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム、及びN−(C1−4アルキル)塩が挙げられる。
【0048】
別の態様として、本発明は、医薬上有効量の、上述の本発明の化合物の少なくとも1つ、及び任意に、1つ以上の医薬上許容可能なキャリア及び/又はアジュバントを含む医薬組成物に関する。
【0049】
本発明の医薬組成物は、典型的には、当業者に既知である、医薬上許容可能な賦形剤、キャリア、バッファ、安定化剤、防腐剤及び/又は他の材料を含む。このような材料は、非毒性であるべきで、そして有効成分の効果を不当に阻害すべきではない。キャリア又は他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば経口、静脈内、皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内又は坐薬経路に依存することができる。経口投与用医薬組成物は、タブレット、カプセル、粉末、又は液状の形態とすることができる。タブレットは、ゼラチン又はアジュバント又は徐放性ポリマーなどの固体キャリアを含んでもよい。液状医薬組成物は、一般に、水、石油、動物油若しくは植物油、鉱油又は合成油などの液状キャリアを含む。生理食塩水、ブドウ糖溶液若しくは他の糖類溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなどのグリコール類を含んでもよい。医薬上許容可能量の他の溶媒を含んでもよく、特にそれらは、組成物に含まれる特定の金属カルボニル化合物を溶解するのに必要である。静脈内注射、皮膚注射若しくは皮下注射、又は苦痛部位の注射のために、有効成分は、典型的に、発熱物質フリーであり且つ好適なpH、等張性及び安定性を有する非経口で許容可能な溶液の形態である。医薬業界の当業者は、例えば、注射用の、生理食塩水、リンガー液溶液及びリンガー乳酸溶液などの等張性ビヒクルを用いる好適な溶液を調製することができる。必要ならば、防腐剤、安定化剤、バッファ、酸化防止剤及び/又は他の添加剤を含んでもよい。無針注射用送達システムも知られており、このようなシステムに用いられる本発明の組成物をそれに応じて調製することができる。
【0050】
さらなる態様として、本発明は、一酸化炭素治療に敏感である疾病又は医学的状態、を有する又は生じがちな患者の治療及び/又は予防のための薬剤の調製のための、上述の本発明の化合物の使用に関する。上記疾病又は医学的状態は、好ましくは、低酸素、無酸素性及び/又は炎症性ホ乳類組織、好ましくは心臓、肺、肝臓、脳、腸、腎臓、筋肉、骨、肌及び目からなる群から選ばれる組織に関わるものであり、好ましくは、心臓血管系疾患、好ましくは心臓低酸素症、心筋梗塞、心臓肥大、動脈硬化症及び高血圧症;虚血再灌流障害、炎症性疾患、好ましくは喘息又はアンギーナ;外傷性損傷、好ましくは脳、腎臓又は肝臓の外傷性損傷;移植拒絶、好ましくは同種及び異種移植拒絶、血小板凝集及び/又は単球活性化;神経系のニューロン変性、放射線損傷、ガン、陰茎勃起不全、成人呼吸促迫症候群、及びホ乳類の日周期リズムの疾患、好ましくは時差ボケからなる群から選ばれる。
【0051】
上記の疾病又は医学的状態は、一酸化炭素投与に敏感であるとして確立されている(WO02/092075及びJohnsonら、Metal carbonyls in medicine、Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,3722−3729を参照のこと)。
【0052】
医薬組成物/薬剤は、ある医学的状態の前に、その後に、又はそれと同時に投与される。
【0053】
本明細書で用いるとき、「患者」は、本発明の化合物での治療から利益を得る、いかなるホ乳類をも意味する。好ましくは、「患者」は、実験動物(例えばマウスまたはラット)、家畜(例えばモルモット、ウサギ、ブタ、羊、ヤギ、ラクダ、雌牛、馬、ロバ、猫、または犬を含む)、又はヒトを含む霊長類からなる群から選ばれる。「患者」はヒトであるのが特に好ましい。
【0054】
本明細書で用いるとき、「治療する」、「治療」又は疾病、医学的状態又は障害の「治療」は、次のものを1つ以上達成することを意味する:(a)障害の重篤度を低減させる;(b)治療される障害の特徴的症状の発症を制限又は予防する;(c)治療される障害の特徴的症状の悪化を抑制する;(d)障害を以前有し、現在も有する患者の該障害の再発を制限又は予防する;及び(e)障害に対し以前症候的であった患者の症状の再発を制限又は予防する。
【0055】
本明細書で用いるとき、「投与」は、インビボ投与、及び静脈移植血管のような組織への直接的なエクスビボ投与を含む。投与は、予防、即ち疾病又は障害の臨床的発生前、又は治療、即ち疾病又は障害の臨床的発生後に行うことができる。
【0056】
好ましい態様として、本発明は、心臓血管系疾患、好ましくは心臓低酸素症、心筋梗塞、心臓肥大、動脈硬化症及び高血圧症;虚血再灌流障害、炎症性疾患、好ましくは喘息又はアンギーナ;外傷性損傷、好ましくは脳、腎臓又は肝臓の外傷性損傷;移植拒絶、好ましくは同種及び異種移植拒絶、血小板凝集及び/又は単球活性化;神経系のニューロン変性、放射線損傷、ガン、陰茎勃起不全、成人呼吸促迫症候群、及びホ乳類の日周期リズムの疾患、好ましくは時差ボケからなる群から選ばれる疾病又は医学的状態の治療用薬剤を調製するための上述の化合物の使用に関連する。
【0057】
使用方法
さらなる態様として、本発明は、上述の一酸化炭素治療に敏感である疾病又は医学的状態を有する又はそれを発症しがちな患者を治療及び/又は保護する方法に関する。該方法は、上述の本発明の化合物又はそのプロドラッグを少なくとも1種を治療上有効量、又は上述の本発明の医薬組成物を有効量、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0058】
「有効量」は、意図する目的を達成するのに十分な治療剤の量である。ある治療剤の有効量は、該治療剤の特性、投与経路、該治療剤を受ける動物の大きさ及び種、並びに投与の目的などの因子によって変化するであろう。各々のケースでの有効量は、当業界の確立した方法により当業者によって経験的に決定することができる。
【0059】
治療又は予防の使用に対して、本発明の化合物は、任意の従来の方法で、任意の従来の投与形態で投与することができる。投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮膚、皮下、関節滑液嚢内、点滴による、舌下、経皮、経口、又は局所的投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与の好ましい形態は、静脈内投与である。
【0060】
化合物は、単独で、又はアジュバントと伴に投与することができる。アジュバントは、その他の有効成分を含み、該化合物の安定性を増大させ、ある態様においてそれらを含む医薬組成物の投与を促進させ、増大した分解又は分散を提供し、補助療法を提供することなどを行う。このような組合せ治療は、従来の治療の投与量を低下させるのに役立ち、それらの成分を単独治療として用いるときに生じる毒性の可能性及び有害な副作用を避けることができる。上述の化合物は、従来の治療学又は単一の医薬組成物へのその他のアジュバントと物理的に組み合わせるのが有効である。この点に関し、Cappolaら:米国特許出願番号09/902,822、PCT/US 01/21860及びUS仮出願番号60/313,527(これらは各々、全ての内容が参照として本明細書に組み込まれる)を参照する。有利には、化合物は、共に単回投与することができる。ある態様として、そのような化合物の組合せを含む医薬組成物は、式(I)の化合物又はその組合せを少なくとも約5%、より好ましくは約20%(w/w)含む。本発明の化合物の最適なパーセンテージ(w/w)は、変化することができ、当業者の範囲内である。または、該化合物は、別々に(連続的に又は同時に)投与することができる。別々の投与により、投与体系により多くの柔軟性をもたらすことができる。
【0061】
上述したように、本明細書で記載した化合物の剤形は、当業者に既知である医薬上許容可能なキャリア及びアジュバントを含む。これらのキャリア及びアジュバントとしては、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、バッファ物質、水、塩又は電解質、及びセルロース系物質が挙げられる。好ましい剤形としては、タブレット、カプセル、カプレット、液体、溶液、懸濁液、エマルション、ロゼンジ、シロップ、再構成可能な粉体、細粒、坐薬と経皮パッチが挙げられる。即時放出部分を有するか又は有しない放出制御製剤も想定される。そのような製剤を調製する方法は既知である(例えば、H. C. Ansel及びN. G. Popovish, Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 5th ed., Lea and Febiger (1990)を参照のこと)。投与レベル及び要件は、当業界で十分に認識されており、入手可能な方法及びある特定の患者に好適な技術から、当業者が選択することができる。ある態様では、投与レベルは、70kgの患者に対して約0.1〜100g/投与の範囲である。1日当たりの1回の投与は十分であるかもしれないが、1日当たり5回の投与まで与えることができる。経口投与に対して、2000mg/日まで又はそれ以上を必要としてもよい。
【0062】
この点について、US仮出願番号60/339,249を参照する。当業者が評価するように、特定の要因に依存して、より低い又はより高い投与が必要とされるであろう。例えば、特定の投与及び治療体系は、患者の全般的な健康プロフィール、患者の障害重篤度及び経過又はそれへの対処、並びに治療する医師の判断などの要因に依存するであろう。
【0063】
本発明の一酸化炭素放出レニウム化合物の製剤化及び投与についてのさらなる情報として、次の文献、WO 2005/013691 A1、WO 2009/013612、US 2007/0207993、US 2007/0207217、US 2006/0233890、US 2006/0148900及びUS 2004/0067261を参照する。
【0064】
別の態様として、本発明は、上記式(I)の化合物、好ましくは非放射性化合物に関する。より好ましくは、ただし、該化合物は、本発明者ら(Zobi et al., Inorg. Chem. 2009, 48, 8965-8970)の最近の刊行物に明白に開示された群、好ましくは、[ReIIBr(CO)2−、[ReIIBr(CO)(ピリジン)]、[ReIIBr(CO)(イミダゾール)]、[ReII(CO)(HOCH2+、[ReIIBr(CO)(N≡CCH)]、[ReBr(CO)2−、[ReBr(CO)(イミダゾール)、[ReBr(CO)(N≡CCH]、及び[Re(CO)(HO)からなる群から選択されるものではない。
【0065】
以下の表、図及び実施例は、本発明の単なる例示であり、本発明の範囲を添付の請求の範囲によって示されるように、何ら制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0066】
実施例1
調製方法
本発明の化合物は、有機化学及び無機化学の当業者に既知である、適切な従来の合成手順により、特に、Inorg. Chem. 2009, 48, 8965-8970(その合成ルートは全て参考として本明細書に組み込まれる)における本願発明者らの最近の開示を参照することにより、過度の負荷なく又は高度な技術を用いることなく、調製することができる。
【0067】
化学物質及び溶媒は、標準の購入元から購入し、使用前に必要ならば蒸留及び/又は脱ガス化した。(NEt[ReBr(CO)]、化合物1、2、6、7、12及び13は、先に記載したように合成した(Zobi et al., Inorg. Chem. 2009, 48, 8965-8970;Alberto et al., J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1994, 2815-2820;Abram et al., Z. Anorg. Allg. Chem. 1996, 622, 813-818)。その他の全ての錯体は、標準の技術で窒素下で合成した。元素分析(EA)は、Leco CHNS-932元素分析器で行った。IRスペクトルは、PerkinElmer Spectrum BX FT-IR分光器で記録した。結晶データは、183(2)Kで、ルビー検出器を備えるOxford Diffraction Xcaliburシステム上のグラファイトによりモノクロ化したMo Kα放射(λ=0.7107Å)で収集した。好適な結晶は、オイル(Infineum V8512)でカバーし、ガラスファイバーの上に載せ、直ちに回折計へと移した。データ収集、半経験的吸収補正及びデータ整理にはプログラムスイートCrysAlisProを用いた。構造は、SIR97を用いる直接法で決定し、SHELXL-97を備えるF2上でフルマトリックス(full-matrix)最小二乗法によって精密化した。構造は、プログラムPlatonを用いて高次対称をチェックした。
【0068】
実施例2
ミオグロビンアッセイを用いるCO放出の検出
本発明の化合物からのCO放出は、先に報告したように(Clark et al., Circ. Res. 2003, 93, e2-8;Motterlini et al., Circ. Res. 2002, 90, E17-24;Motterlini et al., Curr. Pharm. Des. 2003, 9, 2525-2539)、デオキシミオグロビン(Mb)の一酸化炭素ミオグロビン(MbCO)への変換を測定することにより、分光光度的に評価した。選択されたRe錯体の調製直後の高濃度溶液(化合物2はメタノールで、その他の錯体についてはDMSOで)を一定少量、種々のpH(7.4、6.3及び5.8;最終濃度:Re錯体及びMbに対して30μM)で調製したリン酸バッファのMb溶液1mlへ加えた。Mbスペクトルの変化を25℃で経時的に記録した。溶液のメタノール又はDMSO量は、決して0.5%を超えなかった。形成したMbCOの量を、540nmでの吸光度を測定することにより決定した(吸光係数=15.4M−1cm−1)。MbCO濃度を経時的にプロットし、化合物から放出したCOの当量と直接関連づけた。種々のpHにおけるRe化合物のCO放出の半減期を、その後、グラフから推定した。コントロール実験は、金属錯体の添加がない以外は同一の条件下で行った。すべての操作を、湿潤ボックス内の純粋なN雰囲気下で行った。
【0069】
[ReBr(CO)(MeIm)](3)の合成
化合物2 100mg(0.122mmol)をDME15mlに懸濁させ、N−メチルイミダゾール(MeIm、3当量)32mgを加えた。混合物を60℃で、3.5時間加熱し、赤色懸濁液が黄色溶液となり、黄色沈殿物が形成されたときに止めた。混合物を熱い状態のまま濾過した。化合物3の鮮やかな黄色固体を収集し、真空乾燥させ、CHCl/ヘキサン混合物から再結晶化させ、暗赤色結晶を得た。収率:49mg、71%。元素分析 計算値:C10H12Br2N4O2Re(566.2): C 21.21%, H 2.14%, N 9.89%. 実測値:C 21.89%, H 2.32%, N 9.64%。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1982, 1825。X線回折に好適な単結晶は、該化合物のCHCl溶液にヘキサンをゆっくり拡散させることにより成長させた。
【0070】
[ReBr(CO)(Bzlm)](4)の合成
化合物2 100mg(0.122mmol)をDME15mlに懸濁させ、ベンズイミダゾール(BzIm、3当量)46mgを加えた。混合物を60℃で、3.5時間加熱し、赤色懸濁液が黄色溶液となり、黄色沈殿物が形成されたときに止めた。混合物を熱い状態のまま濾過した。化合物4の鮮やかな黄色固体を収集し、真空乾燥させた。化合物4のCHOH溶液をクロマトフィックスC18フィルタ上に載置することにより、粗生成物を精製した。これを15%CHOH水溶液で洗浄し、その後、CHOHで抽出した。収率:39mg、50%。元素分析 計算値:C16H12Br2N4O2Re (638.3): C 30.11%, H 1.89%, N 8.78%。実測値:C 29.99 %, H 1.82%, N 8.47%。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1992, 1833。X線回折に好適な単結晶は、該化合物のCHCl溶液にヘキサンをゆっくり拡散させることにより成長させ、暗赤色結晶を得た。
【0071】
[ReBr(CO)(4-pic)](5)の合成
化合物2 100mg(0.122mmol)をDME10mlに懸濁させ、約10当量の4−メチルピリジン(4-pic、100μl)を加えた。一晩攪拌後、茶色がかった沈殿物を濾過し、真空乾燥させた。粗生成物をCHCl/ヘキサン混合物から再結晶化させ、化合物5の暗赤色結晶を得て、X線回折に好適であることがわかった。収率:50mg、70%。元素分析 計算値:C14H14Br2N2O2Re (588.3): C 28.58%, H 2.40%, N 4.76%。実測値:C 28.39%, H 2.69%, N 4.88%。IR(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1992, 1830。
【0072】
[EtN][ReBr(CO)(4-ピコリンアミン)](15)の合成
化合物2 100mg(0.122mmol)をDME15mlに懸濁させ、4-ピコリンアミン39mg(3当量)を加えた。混合物を室温で48時間攪拌した。形成された茶色沈殿物を濾過した。化合物15の茶色固体を収集し、真空乾燥させた。収率:50mg、55%。1H-NMRスペクトル(DMSO-d6):8.64 (doublet, 2H), 7.47 (doublet, 2H), 4.08 (singlet, 2H)。サイクリックボルタンメトリー(CV) (DMF, 電解質0.1M TBAPF6): ReI - ReII couple at 0V vs Ag/AgCl。完全に可逆的(Fully reversible)。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1875, 1776。
【0073】
ReBr(CO)(4,4’-bipy)(16)の合成
化合物2 50mg(0.061mmol)をDME5mlに懸濁させ、4,4’−ビピリジン20mg(4,4’−bipy、0.12mmol、2当量)を加えた。懸濁物を60℃まで3.5時間加熱し、赤色懸濁物が深赤色溶液となったときに止めた。混合物を室温まで冷却させ、その後濾過した。暗赤色溶液を真空乾燥させ、化合物16を暗赤色固体として得た。粗生成物をCHCl/ヘキサン混合物から再結晶化させた。この手順により、X線単結晶品質の化合物16を得て、生成物の分解のため、暗沈殿物となった。化合物16の結晶を暗粉末から分離し、真空乾燥させた。収率:8mg、22%。元素分析 計算値:C22H16Br2N4O2Re (714.4): C 36.99%, H 2.26%, N 7.84%。実測値:C 36.90%, H 2.33%, N 7.49%。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1983, 1830。MS (ESI+): m/z 715.6, i.e [M+1]+, 計算値715.4。
【0074】
(EtN)[ReBr(CO)(pyz)](17)の合成
化合物2 50mg(0.061mmol)をDME7mlに懸濁させ、ピラジン15mg(pyz、0.19mmol、3当量)を加えた。混合物を60℃まで加熱し、3.5時間反応させ、その後、熱い状態のまま濾過した。静電気的に高く帯電した茶色固体17を収集し、真空乾燥させた。収率:35mg、88%。元素分析 計算値:C24H44Br6N4O4Re2 (1304.5): C 22.10%, H 3.40%, N 4.29%。実測値:C 22.89%, H 3.36%, N 4.12%。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1984, 1858。MS (ESI-): m/z 964.1, i.e [M-Br]-, 計算値964.06。該化合物のCHCl溶液へヘキサンをゆっくり拡散させることにより、X線回折に好適な単結晶が成長した。
【0075】
(EtN)[ReBr(CO)(pym)](18)の合成
化合物2 50mg(0.061mmol)をDME7mlに懸濁させ、ピリミジン15mg(pym、0.19mmol、3当量)を加えた。混合物を60℃まで加熱し、3.5時間反応させた。この溶液を室温まで冷却させ、その後濾過した。この固体は、化合物2、18の混合物として同定され、塩を廃棄した。溶液を真空乾燥させ、化合物18のオレンジブラウン色粉末を得て、これを、CHCl/ヘキサン混合物から再結晶化させ、赤−オレンジの針状体を得た。収率:20mg、50%。元素分析 計算値:C24H44Br6N4O4Re2 (1304.5): C 22.10%, H 3.40%, N 4.29%。実測値:C 22.61%, H 3.73%, N 4.69%。IR(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1985, 1844。MS (ESI-): m/z 964.1, 即ち[M-Br]-, 計算値964.06。X線回折に好適な単結晶を得ようと試みて、品質の劣った、ねじれた赤−オレンジ針状体を得た。
【0076】
(EtN)[ReBr(CO)(Br-pym)](19)の合成
代わりに5−Br−ピリミジンを用いた以外は化合物18の合成と同じ手順を行った。収率:26mg、63%。元素分析 計算値:C24H43Br7N4O4Re2 (1383.4): C 20.84%, H 3.13%, N 4.05%。実測値:C 21.16%, H 3.45%, N 4.12%。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1984, 1854。MS (ESI-): m/z 1042.5, 即ち[M-Br]-, 計算値1043。X線回折に好適な単結晶を得ようと試みて、品質の劣った、ねじれた赤−オレンジ針状体を得た。
【0077】
(EtN)[ReBr(CO)(pyd)](20)の合成
化合物2 50mg(0.061mmol)及びピリダジン2.5mg(pyd、0.031mmol、0.5当量)をDME5mlに懸濁させた。混合物を60℃まで加熱し、5時間反応させた。この溶液を数分間冷却させ、その後熱いままの状態で濾過した。赤−オレンジ固体は、未反応化合物2として同定した。この溶液を真空乾燥させ、化合物9のオレンジ−ブラウン色粉末を得て、これを、CHCl/ヘキサン混合物から再結晶化させ、黄色板状体を得た。該黄色板状体は、X線回折に好適であることがわかった。収率:10mg、25%。元素分析 計算値:C14H24Br3N3O2Re (692.3): C 24.29%, H 3.49%, N 6.07%。実測値:C 23.99%, H 3.52%, N 6.20%。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡O 1984, 1858。MS (ESI-): m/z 562.8, 即ち[M]-, 計算値562.0。
【0078】
12-CORM−2の合成
シアノコバラミン(B12、10mg、7.4□mol)及び化合物2(10mg、12□mol)を固体のまま丸底フラスコに加えた。メタノール(6ml)を加え、攪拌を開始し、その後、50℃に予備加熱しておいたオイル浴へそのフラスコを入れた。その後、温度を1時間以内に40℃に下げた。1.5時間後、HPLC分析により、単一のB12誘導体であることを確認した。加熱を止め、減圧下で溶媒を除去した。得られた赤色粉末をCHClで数回洗浄し([EtN]Br約1.7当量を回収した)、その後、洗浄液が透明になるまでアセトンで洗浄した。これにより、化合物B12−CORM−2を赤色微結晶粉末として得た。収率:12.8mg、98%。HPLC分析により、保持時間22分で単一ピークを確認した。B12−CORM−2の分析データ:ESI-MS分析(ポジティブモード)により、1758.4 m/z [M+H+]+及び879.8 m/z [M+H+]2+でピークを得た。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡N 2184, □C≡O 1989, 1839。
【0079】
12-CORM-4の合成
シアノコバラミン(400mg、0.3mmol)を無水DMSO10mlに溶解し、カルボニルジイミダゾール(CDI、1g、6.2mmol)を加えた。この溶液を攪拌し、60℃で12時間加熱した。この溶液を室温(RT)まで冷却させ、その後、ジエチルエーテル:クロロホルムが1:1の混合液300mlを激しく攪拌させたものに、ゆっくり加えた。赤色沈殿物を真空濾過で収集し、アセトン50mlで洗浄し、真空乾燥させた。収率:395mg。この生成物を精製せずに、次の反応に直接用いた。活性化ビタミン100mgを無水DMSO5mlに溶解し、4−ピコリルアミン(100μl、1mmol)を加えた。この溶液を室温で30分間攪拌し、その後、ジエチルエーテル:クロロホルムが1:1の混合液150mlを激しく攪拌させたものに、ゆっくり加えた。赤色沈殿物を真空濾過で収集し、アセトン30mlで洗浄し、真空乾燥させた。収率:109mg。この沈殿物は、生成物の混合物からなる。HPLC保持時間が15分であるシアノコバラミン誘導体をHPLCで精製した。収率45mg。この誘導体を、B12−CORM−2で上述したように、化合物2と反応させた。化合物B12−CORM−4を赤色微結晶粉末として得た。収率:4.9mg、95%。HPLC分析により、保持時間25分で単一ピークを確認した。B12−CORM−4の分析データ:ESI-MS分析(ポジティブモード)により1893.4 m/z [M+H+]+及び946.8 m/z [M+H+]2+でピークがあった。Ir(固形、KBr, cm-1):νC≡N 2184, □C≡O 1989, 1839。
【0080】
錯体の合成
化合物2と、種々の単座、二座、三座配位子との反応の要約を、以下のグラフスキームに示す。既に示したように、錯体2は、単座窒素含有芳香族配位子とよく反応する(Zobi et al., Inorg. Chem. 2009, 48, 8965-8970)。よって、N−メチルイミダゾール(Melm)、4−ピコリン(4−pic)、又はベンズイミダゾール(BzIm)との反応により、対応するシス−トランス−[ReII(CO)Br]錯体が得られた(L=Melmである化合物3、L=BzImである化合物4、L=4−-picである化合物5)。化合物2とこれらのタイプの配位子との直接置換反応により、短時間で且つ良好な単離収率(>50%)で、化合物3、4及び5を単離できた。吸湿性であり経時的に分解することがわかった化合物3を除いて、化合物4及び5は、好気条件下で、固体として永久的に安定しているようである。
【0081】
【化7】

【0082】
【化8】

【0083】
【化9】

【0084】
スキーム3に示す17電子レニウムジカルボニル種のシアノコバラミン(B12)誘導体は、ReII系CO−RMの第2世代である。これらは、オリジナルのものよりもいくつかの向上した特徴を示す。誘導体は、a)十分に水溶性であり且つ生物適合性を有し、b)金属錯体単独よりも水性好気性媒体中で向上した安定性を示し、c)培養心筋細胞に対して非毒性であり、d)障害からこれらの細胞を保護し、かつe)CO放出後、好気条件下、水中で、レニウム錯体は、稀少無機化合物すべてのうち、最も毒性のない一つであるReOへと酸化される。
【0085】
錯体3〜5は、メタノール、CHCl、アセトニトリル又はDMSOのような一般的な有機溶媒に可溶であり、好気条件下であっても数日間安定である。錯体3、4及び5のX線品質の結晶は、CHClから成長させることができる。すべてのケースにおいて、2つのブロミドをCOに対してトランス置換した配位子Lは、結果として、それらの配位子のシス−トランス−シス配置を有する[ReII(CO)Br]錯体となる。2つのCOのシス配置は、ただ1つの構造上の強制であるので、他の異性体も同様に予想される。化合物3〜5の共通の特徴は、COから171.5°のBr−Re−Br平均角度を有して離れている2つのトランスブロミドの曲部である。化合物3及び5の結合長及び結合角は、先に記載した(Zobi et al., Inorg. Chem. 2009, 48, 8965-8970)、関連するイミダゾール錯体及びピリジン錯体、シス−トランス−[ReII(CO)Br(Im)](6)及びシス−トランス−[ReII(CO)Br(py)](7)と同様に、観察された。THF又はチオフェンのようなその他のヘテロ環芳香族配位子と反応した場合、化合物2は、常に未反応のまま回収された。このことは、同様の実験条件下で、これらの配位子が、非常に過剰に存在したとしても、結合したブロミドを置換するほど十分な強さを有していないことを示している。MeIm及び4−pic配位子が主に、Im及びpy付加体6及び7と比較するデータを提供するために選択された一方、BzImも、化合物2とプリン塩基との相互作用の簡単なモデルとして選択された。化合物4において、2つのBzIm配位子は、ヘッド・トゥ・テール(HT)配座で観察される。DNA塩基とfac−[Re(CO)(HO)錯体との相互作用についての我々の以前の研究結果では、水素結合相互作用も立体因子も、Re核の周りの塩基の配向性を決めるのに重要ではない、ことを示している。これらの塩基は、金属中心の周りを自由に回転できることがわかっており、これらの付加体の固体状態の構造で観察される異なるヘッド・トゥ・ヘッド(HH)配座異性体又はHT配座異性体が質量欠損の結果である(Zobi et al., Inorg. Chem. 2004, 43, 2087-2096)ことを示している。BzIm及びその他のプリン型配位子は、シス−[ReII(CO)2+核の周りを自由に回転できることが予想される。よって、化合物4の固体状態の構造で観察されるHT配座異性体は、溶液では主な形態である可能性は低い。
【0086】
化合物2と二座配位子ビピリジン又はフェナントロリン型配位子との反応は、ReII中心の還元がなく、スムーズに進行した。よって、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン(4,4’-Mebipy)、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン(phd)、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン(4,7-Mephen)、及び2,2’-ジピリジニルアミン(2,2’-dipy-NH)により、対応するシス−トランス−[ReII(CO)BrN∩N]錯体(N∩N=4,4’-Mebipyである化合物8、N∩N=phdである化合物9、N∩N=4,7-Mephenである化合物10、及びN∩N=2,2’-dipy-NHである化合物11;スキーム2を参照のこと)を得た。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
実施例2−生物学的特性
シス−トランス−[ReII(CO)Br錯体のCO放出特性
シス−トランス−[ReII(CO)Br錯体の一酸化炭素放出特性を、ミオグロビンアッセイ(図2A)により評価した。このアッセイは、CO放出分子からのCO放出の量及び動態を評価する、信頼性ある方法として示されている(Clark et al., Circ. Res. 2003, 93, e2-8, Motterlini et al., Circ. Res. 2002, 90, E17-24, Motterlini et al., Curr. Pharm. Des. 2003, 9, 2525-2539)。これらの実験において、[ReII(CO)Br錯体の調製直後の濃縮溶液の一定少量を、N下、過剰の亜ジチオン酸ナトリウムで還元した直後のウマ骨格ミオグロビン(Mb)のバッファ溶液へ加えた。化合物2を例外として、試験した全ての錯体は、水に不溶であった。しかしながら、化合物2のストック水溶液は、この化合物からのCO放出が促進されるため、錯体の不活性形態を生成することがわかった。よって、化合物2の溶液は、メタノールで調製した一方、化合物3〜13のストック溶液は、DMSOで調製した。バッファ水溶液の最終メタノール又はDMSO含量は、決して0.5%を超えなかった。Mbの一酸化炭素ミオグロビン(MbCO)への変換は、ReII錯体の添加後、pH7.4、6.3及び5.8におけるこのタンパク質のQバンド領域の吸収スペクトルの変化を経時的に測定することによって行った。560nmでのMbの最大吸収ピークは、経時的に、それぞれ、540及び578で2つの最大吸収ピークを有するMbCOのスペクトルへと急速に変換された。典型的なスペクトルを図1に示す。
【0090】
単座配位子を保持する化合物(即ち、スキーム1の化合物2〜7、スキーム2の化合物16〜20、並びにスキーム3のB12−CORM−2及びB12−CORM−4)のみが、CO放出に伴うスペクトル変化を生じた。Mb溶液にRe錯体を添加後、経時的に形成されるMbCOの量を、既知の吸光係数にしたがって計算した。MbCO濃度は、該化合物から放出されるCOの当量と直接関連し、これらを時間の関数としてプロットした。図2〜7は、種々のシス−トランス−[ReII(CO)Br錯体のCO放出のpH依存速度に関連する結果のグラフ化を示す。ReII錯体からの、異なるpHでのCO放出の半減期(t1/2)は、これらのグラフから概算し、表3にリスト化した。
【0091】
【表3】

【0092】
金属錯体の量を制限した条件下で実験を行ったとき、MbCOのモル吸光係数を考慮に入れて、対応する[ReII(CO)Br種1モル当たり、約1モルのCOが放出されたことがわかった。よって、たった一つのCO配位子のみが、金属錯体2〜7から放出されている。このアッセイによるCO検出は、スペクトルで明確に可視化される3つの等吸収点、552、567及び587nmで予測されるように進行した(図1参照のこと)。上述のように、スペクトルの変化は、MbからMbCOへの変換を意味する。
【0093】
しかしながら、MbのCO完全飽和後、MbCOのQバンド領域でのモル吸光係数は、経時的に予想される計算値を上回った。3つの等吸収点はすべて消失した。540及び578での最大吸収ピークの位置に関して、さらなるスペクトル変化はなく、それらのモル吸光係数の明かな増大だけがあった。これは、試験した[ReII(CO)Br種のすべてに対して、すべてのpHで、そして錯体15に対して、当てはまった。化合物2〜7からのCO消失速度は、生理的条件下(pH7.4)で、pH依存性であり、半減期(t1/2)で約6分(化合物2に対して)〜43分(化合物6に対して、表3)であることがわかった。低pH値では、Mbを金属錯体から放出されるCOで完全に飽和させるのに必要な時間は、徐々に減少した。これは、[ReII(CO)Br(Im)](化合物6)及び[ReII(CO)Br(py)](化合物7)(それぞれ、ほんの少しの差だけが、pH7.4と6.3との間、及びpH6.3と5.8との間に検出された)以外の全ての化合物に対して一般的に当てはまった。
【0094】
錯体2は、すべてのケースにおいて、最も速くCO放出する分子(CORM)であることがわかった一方、イミダゾール付加体は、最も遅かった。試験した化合物のCO放出速度の総合的な順序は:化合物2>4≒7>5>3≒6である。pH7.4、25℃での、化合物2から放出されるCOでのMbの飽和は、30分(t1/2=5.7分)以内に達成された。この値は、pH7.4、37℃でのt1/2が約1分であると報告されているfac−[RuCl(グリシナト)(CO)]錯体(CORM-3)の値と同等である。
【0095】
上記の結果により、本発明の化合物に対して、配位子を適切に選択することにより、CO放出速度を調節することができることが証明される。よって、配位空間を微調整することにより、CO消失の特定の速度を有する本発明の化合物を設計することができる。
【0096】
12−CORMの細胞保護効果
12−CORM−2及びB12−CORM−4(スキーム3)を、既に記載したように(Zobi et al., Inorg. Chem. 2010, 49, 7313-7322)、虚血再灌流障害(I/R)の新生仔ラット心筋細胞(NRC)細胞系モデルを用いて、その細胞毒性効果及び細胞保護効果について試験した。これまで研究された膜不浸透性ReII−CORMは、マイクロモル濃度範囲において非毒性であった。B12−CORM−2及びB12−CORM−4 30μMでNRCを細胞インキュベーションすることにより、B12−CO−RMの可能性ある取り込みについての試験を行い、細胞培地サンプルを180分超インキュベーションして、収集した。原子吸光分析(AAS)測定から、B12−CORM−2及びB12−CORM−4で補充した培地中のレニウム濃度は、経時的に変化しないことが示された。この観察結果から、錯体(又は解離したReフラグメント)は、3時間のインキュベーション期間の間、細胞表面の膜を通って細胞へ進入しなかったことが示唆される(データは示さず)。死細胞のフラクションは、CORMの存在下、減少する傾向であったが、変化が大きいため、その差は、統計的には重要ではなかった(コントロールで2.7±1.7% vs B12−CORM−2及びB12−CORM−4の存在下で、それぞれ、1.1±0.3%、1.0±0.2%)。
【0097】
虚血再灌流を模倣する条件にNRCを暴露させた結果、死細胞の数が5倍増加した(図8のコントロール)。「再灌流開始」時にB12−CORM−2 30μMを投与することにより、細胞の多数の死亡をほとんど防ぐことができた(細胞死は、コントロールと比較して約80%減少した)一方、B12−CORM−4 30μMにより、細胞死を約50%減少させた。よって、B12−CORM−2は、B12−CORM−4よりも、I/R誘発性細胞死を予防するのにより効果的であることがわかった。ゆえに、さらなる調査のために、B12−CORM−2を選択し、実質的に細胞保護効果を示した[EtN][ReIIBr(CO)](化合物2)及びシス−トランス−[ReII(CO)Br(Im)](化合物6)(Zobi et al., Inorg. Chem. 2010, 49, 7313-7322)と比較した。3つの化合物はすべて、水溶液中、異なる速度ではあるが、COを放出し、親油性化合物6を除いて、水によく溶ける。通常の生理的条件下、これらの化合物は、試験した濃度である120μMまで、NCRへの細胞毒性を示さなかった。
【0098】
一酸化炭素は、ミトコンドリアの電子伝達を阻害することによって、そして、酸素結合を妨げることによって、種々の細胞種において、呼吸を抑制することが知られている。ゆえに、選択された3つのCO−RMの、NRCによる酸素消費への効果を研究した。試験された化合物はいずれも、30分以内の観測で、細胞保護に適する濃度範囲内でのNRCによる酸素消費についていかなる有意な効果を示さなかった。効果がないことは、CO放出速度にも、化合物の溶解性にも依存しない。興味深いことに、化合物2と、これより少量程度のB12−CORM−2とを添加することにより、結果として、投与後数分内に、細胞フリーの培地を脱酸素化した。このCORM誘発脱酸素は、投与依存性であった。脱酸素効率は、CO放出(よって、Re(CO)フラグメントの崩壊)の速度論にしたがっており、化合物2の速い放出に対して最大であった。
【0099】
急激な強制酸素投与によって生じる酸化ストレスは、再灌流障害の顕著な特徴である。図9Aに示す結果に基づけば、選択されたCORMは、再灌流の間の初期に適用されたとき、細胞の酸化的障害を低減させることができる酸素スカベンジャーとして見ることができる。この仮説を試験するために、細胞内還元グルタチオン(GSH)レベルを、30μMの錯体2、錯体6及びB12−CORM−2の存在下、又は非存在下で、「再灌流開始」後10分間、細胞内で測定した。図9Bに示すように、再灌流時に錯体2が存在すると、結果として、その抗酸化作用を示すことにより、細胞内還元グルタチオン(GSH)レベルに増加が生じた。(図9B)。錯体2のこの急激な抗酸化作用は、CO放出時に形成される中間体の、酸素形成ReOとの反応能を最もよく示しているであろう。
【0100】
上述のCO−RMの観察された細胞保護作用の分子メカニズムは未知のままであるが、これらの細胞保護作用は、少なくとも一部、COの細胞外放出、そして上述の脱酸素作用に依るものとすることができる。最後に、我々の観測から、ReII系CO−RMは、ミトコンドリア呼吸及び二次的フリーラジカル生成における減少に関連しないことが示唆される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用の式(I)の化合物:
【化1】

(式中、ReはRe(I)又はRe(II)であり;
nは2−、1−、0、1+及び2+から選ばれ;
L1、L2、L3及びL4は、各々独立に、それぞれ医薬上許容可能な単座配位子を意味する)。
【請求項2】
ReがRe(II)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは全てが、各々独立に、中性荷電又は負荷電単座配位子、好ましくは中性荷電単座配位子からなる群から選ばれるものである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つが各々独立に、
少なくとも1つのヘテロ原子を含むアルキル及びシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、イソシアニド、アルコール、ホスフィン、ホスファイト、ホスホニト、スルフィド、スルホキシド、及びアミノ又はグアニジンからなる群から選ばれ、各々のアミノ又はグアニジンは、任意に、アルキル、アシル又はアルコキシカルボニルでモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよく、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよく、この群の各々の基は、任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく;
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びアルキル、アシル又はアルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
少なくとも2つの一酸化炭素配位子は、互いにシス位の立体配置を有し、及び/又は、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも2つがハロゲン、好ましくはブロミドである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つが各々独立に、
少なくとも1つのヘテロ原子を含むC1−12アルキル及びC3−12シクロアルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C2−6アルキリデン、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−6アシルオキシ、C1−6アシルアミノ、インダニル、インデニル、フェニル、ナフチル、
チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、キナゾリニル及びインダゾリルから選ばれるヘテロアリール、並びに
アジリジニル、ピロリジニル、ピロリニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、ジオキサラニル、ピラニル、ピペリジニル及びピペラジニルから選ばれるヘテロシクリルからなる群から選ばれ、各々は、任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく;
ここで、各R”は、独立に、
1−5アルキル、C2−5アルケニル、C2−5アルキニル、C2−5アルキリデン、C3−7シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、C1−5アルコキシ、C1−5アルキルチオ、C1−5アシル、C2−7アルコキシカルボニル、C1−5アシルオキシ、C1−5アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つが各々独立に、
(i)ハライド、好ましくはBr、OH、CN、ClO、NO、NO、NCO、NCS、N及び
【化2】

(ii)水、一酸化炭素及び窒素、並びに
(iii)ニトリル、イソシアニド、第1アミン、第2アミン、第3アミン、好ましくは第1及び第2アミン、アルコール、ホスフィン、ホスフェート、ホスホニト、スルフィド、スルホキシド、からなる群から選ばれ、各々は、可能な箇所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく;
ここで、各R及び/又はR”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びアルキル、アシル又はアルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよいアミノから選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つが各々独立に、5員又は6員のヘテロ原子炭素環からなる群から選ばれ、好ましくは
【化3】

からなる群から選ばれ、
式中、Xは、N、O、S又はPから選ばれ(ただし、2個のXを有する配位子については、1個のXはCであってよい)、各々は、可能な箇所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく;
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びアルキル、アシル又はアルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な個所において任意にハロゲン化されていてもよい、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に、5員又は6員のヘテロ原子炭素環、好ましくは請求項8記載のものであり、ここで、5員又は6員のヘテロ原子炭素環の2〜8個、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個が、共通のリンカーに結合しており、好ましくはリンカーは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニルからなる群から選ばれるものであり;
各化合物は、可能な箇所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく、ここで、各R”は、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれるものであり、
ここで、任意のリンカー及び/又はR”は、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよく、
ここで、レニウム配位原子は、好ましくは芳香族系の一部を形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つが各々独立に、
【化4】

からなる群から選ばれ、
式中、nは1〜3であり;リンカーは、2個の窒素原子、2個のリン原子、又は2個のイオウ原子と連結する官能基を意味し、好ましくは、リンカーは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニルからなる群から選ばれ、
ここで、各Rは、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ;
ここで、任意のRは、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよい、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つが各々独立に、ヌクレオチド、ビタミン、アミノ酸、及びそれらの1〜10部位のオリゴマー、好ましくは下記式
【化5】

からなる群から選ばれ、可能な箇所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく、
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ;
ここで、任意のR”は、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよい、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
式[ReIIBr(CO)(L)]を有し、ここで、少なくとも1つのL、好ましくは双方のLは、ハライド、好ましくはBr、一酸化炭素、N−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルピリジン、イミダゾール、ピリジン、C1−6アルキルシアニド、好ましくはメチルシアニド、及びアルコール、好ましくはC1−6アルコール、より好ましくはメタノール又はエタノールからなる群から選ばれるものであり、可能な個所において任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく、
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びC1−6アルキル、C1−6アシル又はC2−7アルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ;
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよい、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
少なくとも1つ、好ましくは2つの診断配位子及び/又は生理活性配位子を含んでなり、好ましくは標的配位子、診断配位子、生理活性配位子からなる群から選ばれるものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
医薬上有効量の請求項1〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物、及び任意に、1種又はそれ以上の医薬上許容可能なキャリア及び/又はアジュバントを含んでなる、医薬組成物。
【請求項15】
、心臓血管系疾患、好ましくは心臓低酸素症、心筋梗塞、心臓肥大、動脈硬化症及び高血圧症;虚血再灌流障害、炎症性疾患、好ましくは喘息又はアンギーナ;外傷性損傷、好ましくは脳、腎臓又は肝臓の外傷性損傷;移植拒絶、好ましくは同種及び異種移植拒絶、血小板凝集及び/又は単球活性化;神経系のニューロン変性、放射線損傷、ガン、陰茎勃起不全、成人呼吸促迫症候群、及びホ乳類の日周期リズムの疾患、好ましくは時差ボケからなる群から選ばれる疾病又は医学的状態の治療用医薬組成物の製造のための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
式(I)の化合物:
【化6】

(式中、ReはRe(I)又はRe(II)であり;
nは3−〜3+から選ばれ、好ましくは2−、1−、0、1+及び2+であり;
L1、L2、L3及びL4は、各々独立に、それぞれ医薬上許容可能な単座配位子を意味し、ここで好ましくは、L1、L2、L3及びL4のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは4つが、各々独立に、
少なくとも1つのヘテロ原子を含むアルキル及びシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシル、オキソ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、イソシアニド、アルコール、ホスフィン、ホスファイト、ホスホニト、スルフィド、スルホキシド、及びアミノ又はグアニジンからなる群から選ばれ、各々のアミノ又はグアニジンは、任意に、アルキル、アシル又はアルコキシカルボニルでモノ置換、ジ置換又はトリ置換されていてもよく、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよく、この群の各々の基は、任意に1〜4個のR”で置換されていてもよく;
ここで、各R”は、独立に、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキリデン、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アシル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、アルキルスルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、ニトロ、ニトリル、及びアルキル、アシル又はアルコキシカルボニルで任意にモノ置換、ジ置換又はトリ置換、好ましくはモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノから選ばれ、
ここで、前記基及び/又はR”のいずれも、可能な箇所において任意にハロゲン化されていてもよいが、
ただし、この化合物は、[ReIIBr(CO)2−、[ReIIBr(CO)(ピリジン)]、[ReIIBr(CO)(イミダゾール)]、[ReII(CO)(HOCH2+、[ReIIBr(CO)(N≡CCH)]、[ReBr(CO)2−、[ReBr(CO)(イミダゾール)、[ReBr(CO)(N≡CCH]、及び[Re(CO)(HO)からなる群から選ばれるものではない)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−521316(P2013−521316A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556409(P2012−556409)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/001077
【国際公開番号】WO2011/110315
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(504022504)ユニバーシティー オブ チューリッヒ (7)
【Fターム(参考)】