説明

医療用処置具および神経刺激電極留置システム

【課題】線状組織を周辺組織から容易に剥離し、神経刺激電極を留置することを可能にする医療用処置具を提供する。
【解決手段】医療用処置具2は、シース31と、シースの先端側に互いに当接および離間可能に設けられるとともに、互いに当接したときに、シースの軸線C1上であってシースの先端側および前方に規定される先端側空間Tを避けるように構成された一対の処置片11Aと、シースに進退可能に挿通され、一対の処置片を互いに当接および離間させるための線状部材34と、を備え、一対の処置片の少なくとも一方には、一対の処置片が互いに当接する当接面から凹んだ凹部が形成され、一対の処置片が互いに当接したときに、一対の処置片および凹部により形成される貫通孔21が先端側空間に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を体内に留置するための医療用処置具および神経刺激電極留置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、神経刺激装置、疼痛緩和装置、てんかん治療装置、および筋肉刺激装置等の、電気的刺激を直接または間接的に神経組織および筋肉等の生体組織(線状組織)に与え、治療を行う刺激発生装置が知られている。これらの刺激発生装置は内部に電源を有し、通常は、電気的刺激を伝達する刺激電極とともに生体に埋め込まれて使用される。
【0003】
一般に、刺激電極は、生体組織に電気的刺激を与え、もしくは生体組織に生じる電気的興奮を検出するための少なくとも1つの電極と、刺激発生装置と電気的に接続するための電気コネクタと、電極と刺激発生装置との間に設けられ電気的刺激を伝達するためのリード部とを有している。
例えば、特許文献1には、心臓が徐脈を発生したときには心臓を刺激して心拍数を上昇させ、心臓が頻脈または細動を発生したときには迷走神経を刺激して心拍数を低下させる、埋め込み式の心臓治療装置が開示されている。特許文献1では、心臓刺激電極が心筋内または心房内に配置される。神経刺激電極を巻きつけて留置する部位としては、頚部領域あるいは外側頚動脈の右中央位置が好適であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−173790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この分野における従来技術においては、目視下で電極を留置することが可能な部位に、神経刺激電極が留置されることが多い。例えば、心臓の迷走神経を刺激するための神経刺激電極であれば、特許文献1にも記載のように、頸部等に留置される。
しかしながら、迷走神経はその経路中に頸部、胸部および腹部の内臓へ分岐する枝を有しているため、頸部において迷走神経を刺激すると、治療対象組織である心臓に加えて、頸部等の他の器官にも刺激が伝達されることがある。その結果、患者が喉の詰まりや咳きこみ等の反射的自覚症状を呈することがあり、患者のQOL(生活の質)の低下の一因となるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、線状組織を周辺組織から容易に剥離し、神経刺激電極を留置することを可能にする医療用処置具、および、この医療用処置具を備える神経刺激電極留置システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の医療用処置具は、シースと、前記シースの先端側に互いに当接および離間可能に設けられるとともに、互いに当接したときに、前記シースの軸線上であって前記シースの先端側および前方に規定される先端側空間を避けるように構成された一対の処置片と、前記シースに進退可能に挿通され、一対の前記処置片を互いに当接および離間させるための線状部材と、を備え、一対の前記処置片の少なくとも一方には、一対の前記処置片が互いに当接する当接面から凹んだ凹部が形成され、一対の前記処置片が互いに当接したときに、一対の前記処置片および前記凹部により形成される貫通孔が前記先端側空間に連通することを特徴としている。
【0008】
また、上記の医療用処置具において、前記シースの基端側に設けられ、前記線状部材を前記軸線方向に進退させるための操作部を備え、前記シースには、基端部の外周面から突出する鍔部が設けられ、前記操作部は、前記鍔部に前記軸線方向に係合して、前記シースを前記軸線回りに回動可能に支持する被係合部が形成された操作部本体を有することがより好ましい。
また、上記の医療用処置具において、前記シースに対する前記線状部材の前記軸線方向の位置を規制する規制部を備えることがより好ましい。
また、上記の医療用処置具において、前記シースの外面には、前記軸線に沿って延びるように凹んだ没入部が形成されていることがより好ましい。
また、上記の医療用処置具において、基準線に沿って延びるように凹んだ第二の没入部が外面に形成され、前記基準線が前記軸線に略平行となり、かつ、前記第二の没入部が外部に露出するように前記シースの外面に取り付けられた案内部材を備えることがより好ましい。
【0009】
また、本発明の神経刺激電極留置システムは、上記に記載の医療用処置具と、生体組織を鈍的切開する鈍的切開部を先端に有して前記シースの管路に進退可能に挿通され、前記シースの管路に挿通されたときに前記鈍的切開部が互いに当接した一対の前記処置片よりも前方に突出する導入具と、を備えることを特徴としている。
また、上記の神経刺激電極留置システムにおいて、前記導入具は、内視鏡の内視鏡挿入部が挿通可能とされた導入側管路を有する筒状の導入側本体と、先端に前記鈍的切開部を備え、透明性を有するように形成されて前記導入側本体の先端部に取り付けられた切開部材と、を有することがより好ましい。
また、上記の神経刺激電極留置システムにおいて、それぞれの前記処置片は、互いに当接したときに、前方に突出した前記導入具の外面と自身の外面とがなだらかに接続されるように形成されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療用処置具および神経刺激電極留置システムによれば、線状組織を周辺組織から容易に剥離し神経刺激電極を留置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の神経刺激電極留置システムの全体図である。
【図2】同神経刺激電極留置システムで処置片が閉状態のときの先端側の側面図である。
【図3】同神経刺激電極留置システムで処置片が閉状態のときの先端側の平面図である。
【図4】同神経刺激電極留置システムで処置片が閉状態のときの先端側の正面図である。
【図5】同神経刺激電極留置システムで処置片が開状態のときの先端側の側面図である。
【図6】同神経刺激電極留置システムに用いられる神経刺激電極を一部断面で示す図である。
【図7】図6中の切断線A−Aの断面図である。
【図8】同神経刺激電極留置システムの使用時の動作を示す図である。
【図9】同神経刺激電極留置システムの使用時の動作を示す図である。
【図10】同神経刺激電極留置システムの使用時の動作を示す図である。
【図11】同神経刺激電極留置システムの使用時の動作を示す図である。
【図12】同神経刺激電極留置システムの使用時の動作を示す図である。
【図13】同神経刺激電極留置システムの使用時の動作を示す図である。
【図14】同神経刺激電極留置システムの使用時の動作を示す図である。
【図15】本発明の一実施形態の変形例における神経刺激電極留置システムの要部の断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の変形例における神経刺激電極留置システムの要部の断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の変形例における神経刺激電極留置システムの処置片が開状態のときの先端側の斜視図である。
【図18】同神経刺激電極留置システムの処置片が閉状態のときの先端側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る神経刺激電極留置システム(以下、単に「システム」と称する。)の一実施形態を、図1から図18を参照しながら説明する。このシステムは、線状組織から、線状組織に付着している周辺組織を剥離するためのものである。
図1に示すように、本システム1は、本発明の医療用処置具(以下、単に「処置具」と称する。)2と、組織を鈍的に切開するための導入具3とを備えている。
このシステム1は、内視鏡200、および、後述する神経刺激電極(以下、単に「電極」と称する。)とともに用いられるものである。
【0013】
本処置具2は、組織を剥離する処置部10と、処置部10の基端側に設けられた長尺の挿入部30と、挿入部30の基端側に設けられ処置部10を操作するための操作部40とを備えている。
図2から図4に示すように、処置部10は、挿入部30の後述するシース31の先端に回動可能に接続された第一の処置片(処置片)11Aおよび第二の処置片(処置片)11Bを有している。
この例では、第一の処置片11Aおよび第二の処置片11Bが互いに当接して閉状態となったとき、シース31の中心軸線(軸線)C1を含む基準平面S1に対して対称となるよう構成されている。以下では、第一の処置片11Aの形状について説明し、第二の処置片11Bについては、対称となる構成を、符号の数字の部分を共通にし、第一の処置片11Aの構成についてはこの数字に英字「A」を付加し、第二の処置片11Bの構成についてはこの数字に英字「B」を付加することで示し、第二の処置片11Bについての説明を省略する。
【0014】
図4に示すように、第一の処置片11Aは、正面視で中心軸線C1側が開口した略C字状に形成されている。第一の処置片11Aの内周面は、正面視で中心軸線C1を中心とする円弧状に形成されている。第一の処置片11Aは、中心軸線C1上であってシース31の先端側および前方に規定される略円柱状の先端側空間Tを避けるように構成されている。言い換えれば、閉状態となったときの第一の処置片11Aは、先端側空間Tの径方向外側となる位置に配置される。
ここで、説明の便宜のために、基準平面S1に平行であって、中心軸線C1に直交する方向のうちの一方をX1方向、他方をX2方向と規定する。
第一の処置片11Aの基端面には、平面視で中心軸線C1を挟んだ両側に、後方に向けて突出する舌片12A、13Aが設けられている。
第一の処置片11Aは、図3に示す平面視において、X1方向側の方がX2方向側よりも前方に突出するように形成されている。より詳しく説明すると、第一の処置片11Aの先端側は、中心軸線C1に対してX1方向側の先端が頂点となるような、三角形状に形成されている。第一の処置片11Aは、先端に向かうにしたがって幅が狭くなるように形成されている。
第一の処置片11Aは、図2に示す側面視においても、先端に向かうにしたがって幅が狭くなるように形成されている。第一の処置片11Aの外面は、いわゆる流線形のようになだらかに形成されることが好ましい。
【0015】
第一の処置片11AのX1方向側の壁面14Aには、凹部15Aが形成されている。凹部15Aは、壁面14Aにおける壁面14Bとの当接面から凹むとともに、壁面14AをX1方向に貫通するように形成されている。
凹部15Aの先端側の縁部には、基端側に向かうにしたがって壁面14Aの厚さが薄くなるようにテーパー面16Aが設けられている(図2参照。)。
第一の処置片11AのX2方向側の壁面18Aは、側面視において、先端側の縁部が凹部15Aにおける中心軸線C1方向の中央部に位置するように設置されている。
処置片11A、11Bは、ステンレス鋼などの生体適合性を有する金属により形成されている。
このように構成された処置片11A、11Bは、閉状態となったときに、図3に示すように、壁面14Aおよび壁面14Bが凹部15Aを挟んで基端側の範囲R1、および、先端側の範囲R2で互いに当接し、壁面18Aおよび壁面18Bが範囲R3で互いに当接している。第一の処置片11Aの凹部15Aおよび第二の処置片11Bの凹部15Bで、貫通孔21が形成される。この貫通孔21は、図3に示すように、先端側空間Tに連通するように形成される。
【0016】
挿入部30は、管路32が形成された前述のシース31と、シース31の管路32を囲う壁部33を中心軸線C1に沿って貫通する透し孔33a、33bに進退可能に挿通された操作ワイヤ(線状部材)34、35とを有している。
シース31には、図1に示すように、基端部の外周面から突出する環状の鍔部36が設けられている。シース31の先端面には、図2および図3に示すように、前方に向けて突出する舌片37、38が中心軸線C1を挟むように設けられている。
本実施形態では、シース31を形成する材料は、中心軸線C1方向の押し込む力、および、中心軸線C1回りのトルクを伝達可能なものであれば特に制限は無い。例えば、金属であれば、ステンレス鋼などのような腐食を起こしにくく、かつ、生体適合性を有するものを適宜選択して用いることができる。一方で、樹脂であれば、ポリカーボネート、ポリサルホンなどの、いわゆるエンプラ、スーパーエンプラと呼ばれるものを用いることができる。
シース31の外面には、潤滑性のコート層を形成してもよい。このように構成することで、挿入部30の挿入性を高めることができる。
【0017】
第一の処置片11Aは、平面視において、舌片12Aがシース31の舌片38に、舌片13Aがシース31の舌片37に、それぞれ中心軸線C1に直交する軸線回りに回動可能に接続されている。第二の処置片11Bも、シース31の舌片37、38に同様に接続されている。
操作ワイヤ34はシース31の透し孔33aに挿通され、操作ワイヤ34の先端は処置片11Aの基端面に取り付けられている。操作ワイヤ34の基端は、操作部40に延びている。同様に、操作ワイヤ35はシース31の透し孔33bに挿通され、操作ワイヤ35の先端は処置片11Bの基端面に取り付けられている。操作ワイヤ35の基端は、操作部40に延びている。
【0018】
操作部40は、図1に示すように、操作部本体41と、操作部本体41に設けられた指掛けリング42と、操作部本体41の内部空間41aを規定する壁面に接続されたレバー43とを有している。
内部空間41aは操作部本体41の先端側に開口41bを有していて、この開口41bの近傍であって中心軸線C1に直交する平面上には溝部(被係合部)41cが形成されている。
シース31は、基端側が開口41bに挿通されるとともに、鍔部36が溝部41cに中心軸線C1方向に係合している。鍔部36の一部は、操作部本体41から外部に露出している。このように構成された操作部本体41は、シース31を中心軸線C1回りに回動可能に支持している。
操作部本体41の基端側の開口41dの近傍には、ロック機構44が設けられている。ロック機構44は、基端側の内部空間41aに不図示の係止部材を突出させることで開口41dに挿通された部材の外面を押し、操作部本体41に対してその部材を位置決めすることができる。
【0019】
内部空間41aには、素線が螺旋状に巻回されたバネ部材45が、螺旋の軸線が中心軸線C1とほぼ一致するように配置されている。重力以外の外力が作用していない自然状態において、バネ部材45の軸線方向に隣り合う素線は互いに離間するように構成されている。バネ部材45の先端は、内部空間41aを区画する先端側の面となる取り付け面41eに固定されている。
バネ部材45の基端には、連結筒46が固定されている。連結筒46は、自身の軸線が中心軸線C1に一致するように配置されている。操作ワイヤ34、35の基端は、連結筒46に接続されている。
バネ部材45の内径、および連結筒46の内径は、シース31の管路32の内径よりわずかに大きく設定されている。
連結筒46は、バネ部材45を中心軸線C1方向に圧縮させたり伸長させたりすることで、内部空間41aで中心軸線C1方向に移動することができる。
【0020】
レバー43の一方の端部には、指掛け孔43aが形成されている。
レバー43の中間部は、操作部本体41に設けられた軸部材47によって回動可能に支持されている。レバー43における中間部を挟んで一方の端部の反対側となる他方の端部43bは、図示はしないが、連結筒46と係合している。
レバー43の指掛け孔43aと軸部材47によって指示されている部分との間には、軸部材48によってロック部材(規制部)49の中間部が回動可能に支持されている。
【0021】
指掛け孔43aを回動させ、レバー43の指掛け孔43aを、指掛けリング42に近づけた引き戻し位置P1に移動させると、ロック部材49の一端に設けられた突部49aが指掛けリング42に設けられた突部42aに係止されるとともに、ロック部材49の他端49bがレバー43の先端側の面から前方に突出する。
【0022】
このように構成された処置具2は、指掛けリング42の突部42aにロック部材49の突部49aが係止されていると、指掛け孔43aは指掛けリング42から離間するように移動できなくなる。指掛け孔43aが引き戻し位置P1にあるとき、連結筒46、および操作ワイヤ34、35が先端側に移動してバネ部材45は中心軸線C1方向に圧縮されている。このとき、処置片11A、11Bは、前述の軸線回りに回動して閉状態となる。
さらに、圧縮されたバネ部材45によって作用する力で基端側に移動しようとする連結筒46の動き、すなわち、指掛け孔43aが指掛けリング42から離間する動きをロック部材49が規制することで、シース31に対する操作ワイヤ34、35の中心軸線C1方向の位置が規制される。
【0023】
また、ロック部材49の他端49bをレバー43の先端側に押し込み、ロック部材49を位置P11に移動させると、ロック部材49と突部42aとの係止が解除され、圧縮されたバネ部材45が自然状態に戻ろうとする力により、連結筒46、および操作ワイヤ34、35が基端側に移動する。このとき、指掛け孔43aは、指掛けリング42から離間した押し込み位置P2に移動する。
操作ワイヤ34、35が基端側に移動することで、図5に示すように、処置片11A、11Bは、互いの先端側が離間するように前述の軸線回りに回動して開状態となる。
処置片11A、11Bは、閉状態から開状態となるときに中心軸線C1から離間するように移動するため、開状態となったときにおいても前述の先端側空間Tを避けるように配置される。
【0024】
導入具3は、図1に示すように、導入側管路61aを有する筒状の導入側本体61と、先端に鈍的切開部62aを備え導入側本体61の先端部に取り付けられたキャップ(切開部材)62とを有している。
導入側本体61の基端には、外周面から突出するフランジ部63が設けられている。
導入側本体61およびフランジ部63の材質としては、後述する周辺組織を切開して進退できる程度の剛性を有するものであれば特に制限はなく、ステンレス鋼などの金属や、樹脂などを好適に用いることができる。
キャップ62は、先端に設けられた鈍的切開部62aが頂点となるような円錐状に形成されている。キャップ62は、アクリル樹脂等で透明性を有するように形成されており、導入側管路61aを密閉している。キャップ62は、導入側管路61aに挿入された、後述する内視鏡200の内視鏡挿入部210からキャップ62の周囲を観察可能な程度の透明性を有するものであれば、所望の着色が施されていてもよい。また、キャップ62は先端が鈍的切開を行うことができ、かつ観察が可能であれば先端がどのような形状でもよく、角錐状などの形状を取っていてもよい。
鈍的切開部62aの曲率半径は、例えば0.2mm程度に設定されており、鋭利でないように形成されている。
【0025】
導入側本体61およびキャップ62は、外形がシース31の管路32の内径より小さく設定されていて、シース31の管路32に進退可能に挿通することができる。
操作部本体41の開口41dから導入具3を操作部本体41の内部空間41aに挿入し、操作部本体41の開口41dの縁部にフランジ部63を当接させたときに、図2および図3に示すように、シース31を挿通したキャップ62が閉状態となった処置片11A、11Bよりも前方に突出するように構成されている。すなわち、処置片11A、11Bの先端は、導入側本体61の側面上に位置している。
閉状態となった処置片11A、11Bの外面は、先端に向かうにしたがって幅が狭くなるように形成されているため、導入具3の外面と、閉状態となった処置片11A、11Bの外面とがなだらかに接続される。
鈍的切開部62aを先頭にして導入具3を押し込むことにより、導入具3の周囲に存在する周辺組織を鈍的切開部62aで鈍的に切開しながらシステム1を対象組織付近まで導入することができる。
【0026】
内視鏡200としては、図1に示すように、長尺の内視鏡挿入部210と、内視鏡挿入部210の基端に設けられた内視鏡操作部220とを有する公知の構成のものを用いることができる。
挿入部210は先端に不図示の照明装置および観察装置を備えていて、導入具3の導入側管路61aに進退可能に挿通することができる。
導入具3の導入側管路61aに内視鏡挿入部210を挿通し、フランジ部63に内視鏡操作部220を当接させたときに、内視鏡挿入部210の先端が導入側管路61aの先端近傍に達するように構成されている。
【0027】
図6および図7に示すように、本実施形態のシステム1で用いられる電極250は、長尺のリード部251と、リード部251の先端側に設けられた電極部252と、電極部252を神経組織に接触するように支持する支持部253とを有している。
【0028】
リード部251は、生体内で安定性が高いポリウレタン等を材料として内腔254を有する略円筒状に形成されており、内腔254にスタレット260を挿入可能である。内腔254は、リード部251の先端側に開口しておらず、内腔254の先端部は、径方向に潰れている。これにより、当該先端部の径方向における最小寸法は、内腔254の略円柱形状の径方向における寸法よりも短くなっている。
リード部251は、図示しないリードを複数有する。各リードにおいて、導電性の芯線は、耐久性が高いMP35N線又は35MLT線を用いて形成されており、各芯線にETFE材料による絶縁被覆が施されて各リードが形成され、内腔254内に配置されている。リードの先端側は電極部252に接続され、リードの基端側は図示しない神経刺激装置と接続されるためのコネクタ255に接続されている。コネクタ255は、接続される神経刺激装置にあわせて公知のものが適宜選択され。例えばIS1コネクタなどを用いることができる。
【0029】
電極250は、接触した線状組織に電気刺激を与えることができればその構成に特に制限はないが、図6に示すように、マイナス極252aとプラス極252bとの二つの電極を有するバイポーラ型電極とされるのが好ましい。マイナス極252a、プラス極252bの材料としては、生体内で安定な白金が用いられている。各電極252a、252bの表面には微細凹凸構造を有する窒化チタン(TiN)膜が形成され、生体表面とのインピーダンスが下げられている。
各電極252a、252bは留置時に神経組織に対向する側にのみ露出しており、反対側の面はシリコーン樹脂などにより覆われ、電気的に絶縁されている。つまり、印加した電気エネルギーが神経組織の周辺にある組織や器官へ漏れることを低減している。
対象の線状組織が迷走神経である場合、剥離された線状組織は約1〜2mmの外径を有していることが多く、それらに対応するためにリードの芯線および電極部の電極はφ2mm以下に形成されていることが好ましい。
【0030】
支持部253は、電極部252の一部を被覆するシリコーン樹脂の一部が略円弧状に延びることにより形成されている。当該円弧状形状は、支持部253の機能に鑑みて、神経組織の外径よりも大きい円弧径を有するように設定されるのが好ましい。支持部253は弾性変形可能であり、電極部252との間に神経組織を挟みこんで支持することにより、各電極252a、252bを線状組織に接触させることができる。支持部253は、電極部252の外周面に沿うように変形することができるため、電極250全体をシース31の管路32に挿通することができるように構成してもよい。
支持部の個数や形状は、各電極252a、252bを神経組織に接触させるという目的を果たす限り、適宜設定されてよい。
また、支持部の厚みとしては、対象組織に過度な負荷を与えないように、0.5mm以下の厚さとされるのが好ましい。
【0031】
スタイレット260は、樹脂や金属を材料として、リード部251の内腔254に挿入可能な寸法に形成されている。スタイレット260の先端部261(図6参照。)は、内腔254の先端部形状に対応するように径方向につぶされている。したがって、先端部261を内腔254の先端部内に挿入してスタイレット260を回転させると、電極250をリード部251の軸線回りに回転させることができる。また、スタイレット260を軸線方向に前進させたり、リード部251の基端側を手元に引いたりすることで、シース31の管路32から電極部252を突没させることが可能である。
【0032】
上記のように構成されたシステム1の使用時の動作について、ヒト右迷走神経(以下、単に「迷走神経」と称する。線状組織。)を対象として電極250を留置する場合を例にとり説明する。迷走神経は、心臓付近の神経組織刺激部位として、体表からの経路が周辺組織の観察から判別しやすい、体表からの距離が短く到達しやすい等の利点を持ち、比較的アクセスが容易である。
【0033】
術者は、処置具2の指掛けリング42に親指を挿通するとともに、指掛け孔43aに人差し指、中指などを挿通して操作部40を把持する。図1に示すように、指掛け孔43aを引き戻し位置P1に移動させつつ、ロック部材49を突部42aに係止させることで、処置片11A、11Bは閉状態に保持される。
処置具2の開口41dから導入具3を操作部本体41の内部空間41a、およびシース31の管路32に挿入し、操作部本体41の開口41dの縁部にフランジ部63を当接させる。そうすると、キャップ62は閉状態となった処置片11A、11Bよりも前方に突出する。
導入具3の導入側管路61aに内視鏡挿入部210を挿通し、フランジ部63に内視鏡操作部220を当接させる。ロック機構44により、シース31および内視鏡挿入部210の外面を押すことで、操作部本体41に対して導入具3および内視鏡200の内視鏡挿入部210を位置決めする。
【0034】
次に、術者は患者Pの体表面に小切開(挿入部位)を形成し、この小切開にシステム1における前方に突出したキャップ62を挿入する。この例では、図8に示すように、患者Pの胸郭上口Ti付近に小切開を形成する。
小切開にシステム1の挿入部30を挿入後、術者は、内視鏡200でキャップ62の周囲の様子を観察しながら、中心軸線C1方向に力を加え、操作部40を体内に向かって押し込む。図8に示すように、胸郭上口Tiは気管Tcに近い位置にあるため、挿入部30を挿入すると、程なくして内視鏡200の視野内に、白っぽい管状の気管Tcが見えてくる。この例では、気管Tcを迷走神経Vnへのガイドとして利用することができる。
【0035】
この例におけるシステム1のアクセス経路では、挿入部30の周囲には比較的柔らかい疎性結合組織が多く存在しているため、キャップ62を先頭にして挿入部30を押し込むことで、前方に存在する疎性結合組織等の生体組織をキャップ62の鈍的切開部62aにより鈍的に切開して挿入部30を前進させることができる。さらに、閉状態となった処置片11A、11Bの外面と、処置片11A、11Bよりも前方に突出し導入具3の外面とがなだらかに接続されるため、挿入部30を前進させるときに、導入具3および処置部10が生体組織から受ける抵抗が小さくなる。
したがって、挿入部30を前進させるにあたり、挿入部30に金属パイプのような剛性の高いものを用いる必要はなく、挿入部30を前進させるために押し込む際にも大きな力量は必要ない。また、挿入部30を気管Tcに沿って進めると、気管Tcと気管周辺の生体組織との界面が裂けやすいため、さらに容易に鈍的切開を進めることができる。気管Tcは周囲を軟骨に覆われているため、キャップ62の先端が鋭くない限り、挿入部30の前進によって気管Tcを傷つける恐れはない。
生体組織の多くを占める疎性結合組織には血管は少なく、また鋭利でないキャップ62が血管を切断することもほとんどないため、挿入部30を前進させている間の出血はそれほど多くない。
【0036】
挿入部30に挿通された内視鏡挿入部210を、その軸線回りに回転させたり進退させたりすることにより、キャップ62の周囲全体を好適に観察できる。したがって、キャップ62周辺の生体組織を確認しながら、迷走神経Vnが存在する心臓近傍まで容易に挿入部30の先端部を進めることができる。
【0037】
迷走神経Vnを確認したら、術者は、電極250が留置可能となるように、図9に示すように、キャップ62の鈍的切開部62aを周辺組織Stに押し付けるなどして、周辺組織Stの一部を除去して、迷走神経Vnの一部を露出させる。
処置具2の位置を保持しつつ、ロック機構44による固定を解除する。シース31の管路32から導入具3、および内視鏡挿入部210を引き抜き、操作部本体41の開口41dに再び内視鏡挿入部210を挿通し、図10に示すように内視鏡挿入部210の先端面が処置片11A、11Bの間に配置されるように調節する。ロック機構44により、操作部本体41に対して内視鏡挿入部210を位置決めする。
【0038】
ロック部材49の他端49bを押し込み、ロック部材49と突部42aとの係止を解除する。すると、バネ部材45の弾性力により指掛け孔43aは押し込み位置P2に移動し、処置片11A、11Bは開状態となる。
内視鏡200でキャップ62の周囲の様子を観察し、必要に応じて、操作部本体41から露出した鍔部36を操作して挿入部30を中心軸線C1回りに回動させ、処置片11A、11Bの向きを調節する。
挿入部30を移動させ、処置具2の先端側空間Tに迷走神経Vnの一部を配置した状態で、迷走神経Vnが処置片11A、11Bの凹部15A、15Bに挟まれるようにしつつ、指掛け孔43aを引き戻し位置P1に移動させて処置片11A、11Bを閉状態にする。ロック部材49により引き戻し位置P1に移動した指掛け孔43aの位置を保持する。このとき、迷走神経Vnは、図11および図12に示すように、凹部15A、15Bにより形成される貫通孔21に挿通され、周辺組織Stから剥離される。
挿入部30を迷走神経Vnに沿って移動させて、迷走神経Vnの外周面を貫通孔21の縁部で擦ることで、迷走神経Vnから周辺組織Stを剥離させる範囲を調節する。
【0039】
迷走神経Vnの剥離処理が終わったら、電極250の電極部252を剥離した迷走神経Vnの近傍に導入する。電極部252は、シース31の管路32を通して導入してよいし、シース31の外部から導入してもよい。
スタイレット260を回転させて支持部253の位置を調整しながら、支持部253の自由端を、迷走神経Vnの剥離された部位に掛けるようにして、迷走神経Vnと周辺組織Stとの間に挿入する。すると、図13および図14に示すように、支持部253と電極部252との間に迷走神経Vnが支持され、電極部252と迷走神経Vnとが密着するように電極250が迷走神経Vnに留置される。
【0040】
電極250の留置後、術者は電極250からスタイレット260を抜き、処置具2の挿入部30および内視鏡200の内視鏡挿入部210を後退させて体外に抜去する。挿入部30が進入したアクセス経路には、もともと周辺組織や生体組織が隙間なく配置されていたため、挿入部30の抜去に伴い、挿入部30の通った経路は、周辺組織および生体組織により隙間なく埋められる。したがって、挿入部30の抜去後は、留置された電極250の周囲にもほぼ隙間なく周辺組織および生体組織が配置され、電極250は、周辺組織および生体組織により留置位置に位置決めされる。このため、電極250の留置後に、固定のための縫合等を行う必要はない。また、胸郭上口付近は、患者の体動による動きも少ないため、電極位置が安定しやすい。
挿入部30の抜去により、電極250留置のための一連の作業は終了する。
【0041】
電極250の留置後は、電極250のコネクタ255を神経刺激装置に接続し、電気刺激による治療を開始する。例えば、数十マイクロ秒(μsec)〜数ミリ秒(msec)の幅を有する矩形パルス電圧を周波数数十ヘルツ(Hz)で印加する。矩形パルス電圧の電圧値は数ボルト〜数十ボルトの範囲で適宜設定される。治療内容に応じて、連続的な刺激と間欠的な刺激とを選択することが可能であり、電気刺激を行う期間は治療に応じて適宜決定される。
【0042】
治療終了後は、コネクタ255を神経刺激装置から外し、リード部251の端部を引くことで、支持部253が迷走神経Vnからはずれる。さらに引くと、周辺組織および生体組織内を通って電極250を体外に抜去することができる。すなわち、電極250を除去するために比較的侵襲の大きい外科的処置は必要ないため、電極除去時における患者負担が大幅に軽減される。
【0043】
本実施形態の処置具2およびシステム1によれば、処置片11A、11Bを開状態にした状態で、処置具2の先端側空間Tに迷走神経Vnの一部が配置されるように処置具2を移動する。迷走神経Vnが処置片11A、11Bの凹部15A、15Bに挟まれるようにしながら、処置片11A、11Bを閉状態にする。そして、挿入部30を迷走神経Vnに沿って移動させる。
凹部15A、15Bにより形成される貫通孔21に迷走神経Vnが挿通されるので、迷走神経Vnが傷付くのが防止される。迷走神経Vnの一部は先端側空間Tに配置されるため、迷走神経Vnと挿入部30とがほぼ平行となり、挿入部30を中心軸線C1に沿って移動させることで、貫通孔21の縁部により、迷走神経Vnを周辺組織Stから容易に剥離することができる。
【0044】
操作部本体41に形成された溝部41cにシース31の鍔部36が係合することで、シース31が中心軸線C1回りに回動可能に支持されている。このため、鍔部36を操作することで、シース31の先端側に設けられた処置片11A、11Bの向きを調節し、処置片11A、11Bで迷走神経Vnを挟みやすくすることができる。
リング42の突部42aに係止されるロック部材49を備えることで、閉状態となり互いに当接した処置片11A、11Bの相対的な位置を保持し、術者が他の操作に集中しやすくすることができる。
【0045】
本実施形態のシステム1では、シース31の管路32に導入具3を挿通させて導入具3のキャップ62を閉状態となった処置片11A、11Bよりも前方に突出させる。このため、疎性結合組織などの生体組織を鈍的に切開しているときのシステム1の外径(挿入部30の外径。)を小さく抑え、患者Pに与える負担を小さくすることができる。
導入具3は、導入側管路61aを有する筒状の導入側本体61と、透明性を有するキャップ62とで構成されている。したがって、導入側管路61aに内視鏡200の内視鏡挿入部210を挿通することで、内視鏡200でキャップ62を通してキャップ62の周囲の様子を観察することができる。
閉状態となった処置片11A、11Bの外面と、処置片11A、11Bよりも前方に突出し導入具3の外面とがなだらかに接続されるため、挿入部30を前進させるときに、導入具3および処置部10が生体組織から受ける抵抗が小さくなる。これにより、患者Pの体内で、挿入部30を容易に前進させることができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。
たとえば、前記実施形態では、図15に示す処置具2aのように、シース31の外面に、中心軸線C1に沿って延びるように凹んだ没入部31aが形成されていてもよい。
シース31をこのように構成することで、気管Tcの外面に没入部31aを沿わせることにより、シース31を気管Tcに沿って導入しやすくすることができる。
【0047】
図16に示す処置具2bのように、シース31の外面に取り付けられた案内部材71を備えてもよい。
案内部材71の外面には、基準線C2に沿って延びるように凹んだ第二の没入部71a、および取り付け溝71bが形成されている。取り付け溝71bは、案内部材71の第二の没入部71aとは反対側に形成されている。シース31の外面に案内部材71の取り付け溝71bを係合させたときに、案内部材71は、基準線C2が中心軸線C1に略平行となり、かつ、第二の没入部71aが外部に露出するようにシース31に取り付けられる。
このように構成された処置具2bによっても、気管Tcの外面に第二の没入部71aを沿わせることで、シース31を気管Tcに沿って導入しやすくすることができる。
【0048】
また、前記実施形態では、処置片11A、11Bは、シース31より前方に配置され、閉状態となったときに正面視で略C字状に形成されていた。
しかし、一対の処置片の形状はこの限りではなく、例えば、図17および図18に示すように、シース31の基端を略半周切り欠くように形成し、この切り欠いた部分と全体として同形状となるように第一の処置片(処置片)76および第二の処置片(処置片)77を構成してもよい。
【0049】
処置片76、77は、前述の欠いた部分を周方向に2等分した、閉状態となったときに正面視で円弧状に形成されている。
第一の処置片76には、閉状態となったときの処置片76、77の当接面から凹むとともに、第一の処置片76の厚さ方向に貫通する凹部76aが形成されている。同様に、第二の処置片77には、前述の当接面から凹むとともに、第二の処置片77の厚さ方向に貫通する凹部77aが形成されている。
処置片76、77が閉状態となったときに、凹部76a、77aで貫通孔78が形成される。
【0050】
処置片76、77は、前述の先端側空間Tを避けるように構成されている。処置片76、77が閉状態となったときに形成される貫通孔78は、先端側空間Tに連通する。
第二の処置片77は、第二の処置片77の基端に設けられた回動機構79により、シース31の先端部に回動可能に接続されている。第二の処置片77の基端における回動機構79とは位置をずらした部分に接続された操作ワイヤ35を進退させることで、第二の処置片77を回動機構79回りに回動することができる。
同様に、第一の処置片76においても、基端に操作ワイヤ34が接続され、かつ、不図示の回動機構が設けられることで、回動することができる。
【0051】
このように構成された処置片76、77を用いるときには、先端側空間Tに迷走神経Vnの一部を配置した状態で、処置片76、77を閉状態にしたときに形成される貫通孔78に迷走神経Vnを挿通する。そして、処置片76、77を迷走神経Vnに沿って移動させることで迷走神経Vnから周辺組織Stを剥離させる。
以上のように構成された処置片76、77によっても、本実施形態の処置片11A、11Bと同様の効果を奏することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、処置具2を、鈍的な切開を行う公知の切開用処置具(先端の曲率半径が0.2mm程度に設定された処置具)、および、内視鏡200とともに用いてもよい。この場合、本実施形態の導入具3に代えて、この切開用処置具で生体組織などを鈍的に切開することになる。
【0053】
本実施形態では、操作部本体41に対してシース31を中心軸線C1回りに回動させる必要がない場合などには、操作部本体41の溝部41cおよびシース31の鍔部36を備えずに、操作部本体41にシース31基端を固定してもよい。
また、本実施形態では、ロック部材49を備えることで処置片11A、11Bの閉状態を保持した。しかし、例えば、公知のラチェット機構などを用いることで、処置片11A、11Bを開状態で保持したり、処置片11A、11Bを、閉状態と開状態との間の任意の開き角度で保持したりするように構成してもよい。
【0054】
本実施形態では、線状部材として操作ワイヤ34、35を用いた。しかし、線状部材はこれに限ることなく、操作ワイヤ34、35より長手方向の圧縮力に対して変形しにくいロッドを用いたり、複数のロッドを回動軸を介して接続したリンク機構を用いたりしてもよい。
また、操作部本体41に形成される被係合部を溝部41cとしたが、被係合部は鍔部36に係合するものであれば、スリットや凸部などでもよい。
本実施形態では、処置片11A、11Bの両方に凹部が形成されていた。しかし、例えば、第一の処置片11Aに凹部15Aが形成されるが、第二の処置片11Bに凹部15Bが形成されず、凹部15Aおよび第二の処置片11Bの縁部で貫通孔を構成してもよい。
【0055】
さらに、本発明は、以下の技術思想を含むものである。
(付記項1)
シースと、前記シースの先端側に互いに当接および離間可能に設けられるとともに、互いに当接したときに、前記シースの軸線上であって前記シースの先端側および前方に規定される先端側空間を避けるように構成された一対の処置片とを備える医療用処置具を用いて線状組織を剥離する線状組織の剥離方法であって、
体表面を切開して前記医療用処置具の挿入部位を形成し、
内視鏡の内視鏡挿入部で前記医療用処置具の周囲を観察しつつ周囲の周辺組織を鈍的に切開して、前記医療用処置具を前進させるとともに、前記線状組織を前記周辺組織から露出させ、
一対の前記処置片が互いに当接する当接面から凹んだ凹部、および、一対の前記処置片により形成される貫通孔に前記線状組織を挿通させ、かつ、前記先端側空間に前記線状組織の一部を配置し、
前記医療用処置具を前記線状組織に沿って移動させる。
【0056】
(付記項2)
付記項1に記載の線状組織の剥離方法であって、
前記挿入部位を胸郭上口に形成し、
前記シースの外面に形成された没入部を気管に沿わせる。
【符号の説明】
【0057】
1 システム(神経刺激電極留置システム)
2、2a、2b 処置具(医療用処置具)
3 導入具
11A、76 第一の処置片(処置片)
11B、77 第二の処置片(処置片)
15A、15B、76a、77a 凹部
21、78 貫通孔
31 シース
34、35 操作ワイヤ(線状部材)
36 鍔部
40 操作部
41 操作部本体
41c 溝部(被係合部)
49 ロック部材(規制部)
61 導入側本体
61a 導入側管路
62 キャップ(切開部材)
62a 鈍的切開部
71 案内部材
71a 第二の没入部
C1 中心軸線(軸線)
C2 基準線
T 先端側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースと、
前記シースの先端側に互いに当接および離間可能に設けられるとともに、互いに当接したときに、前記シースの軸線上であって前記シースの先端側および前方に規定される先端側空間を避けるように構成された一対の処置片と、
前記シースに進退可能に挿通され、一対の前記処置片を互いに当接および離間させるための線状部材と、
を備え、
一対の前記処置片の少なくとも一方には、一対の前記処置片が互いに当接する当接面から凹んだ凹部が形成され、
一対の前記処置片が互いに当接したときに、一対の前記処置片および前記凹部により形成される貫通孔が前記先端側空間に連通することを特徴とする医療用処置具。
【請求項2】
前記シースの基端側に設けられ、前記線状部材を前記軸線方向に進退させるための操作部を備え、
前記シースには、基端部の外周面から突出する鍔部が設けられ、
前記操作部は、前記鍔部に前記軸線方向に係合して、前記シースを前記軸線回りに回動可能に支持する被係合部が形成された操作部本体を有することを特徴とする請求項1に記載の医療用処置具。
【請求項3】
前記シースに対する前記線状部材の前記軸線方向の位置を規制する規制部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用処置具。
【請求項4】
前記シースの外面には、前記軸線に沿って延びるように凹んだ没入部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用処置具。
【請求項5】
基準線に沿って延びるように凹んだ第二の没入部が外面に形成され、
前記基準線が前記軸線に略平行となり、かつ、前記第二の没入部が外部に露出するように前記シースの外面に取り付けられた案内部材を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用処置具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の医療用処置具と、
生体組織を鈍的切開する鈍的切開部を先端に有して前記シースの管路に進退可能に挿通され、前記シースの管路に挿通されたときに前記鈍的切開部が互いに当接した一対の前記処置片よりも前方に突出する導入具と、
を備えることを特徴とする神経刺激電極留置システム。
【請求項7】
前記導入具は、
内視鏡の内視鏡挿入部が挿通可能とされた導入側管路を有する筒状の導入側本体と、
先端に前記鈍的切開部を備え、透明性を有するように形成されて前記導入側本体の先端部に取り付けられた切開部材と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の神経刺激電極留置システム。
【請求項8】
それぞれの前記処置片は、互いに当接したときに、前方に突出した前記導入具の外面と自身の外面とがなだらかに接続されるように形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の神経刺激電極留置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−106771(P2013−106771A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253787(P2011−253787)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】