説明

医療用化合物あるいは医療用製品を作成するための生体適合性ポリマーの使用方法

【課題】苦痛、不快感、掻痒、刺激および/または疼痛に対する予防、軽減および/または治療、および/または前記症状に対する組織の保護のための医薬用、皮膚医学用あるいは美容化合物あるいは医療用製品を作成するための生体適合性ポリマーの適用法を得る。
【解決手段】一般式AaXxYy(I)からなる生体適合性ポリマーの適用法であり、ここで:Aはモノマー、XはRCOOR′基、YはAに結合されるとともに以下の式−ROSO3R′あるいは−RNSO3R′のいずれかに相当する酸素あるいは窒素スルホナート基であり、ここで:Rは脂肪族炭化水素鎖であって、場合によってこれは分岐しおよび/または非飽和で、複数の芳香環を有することが可能であり、R′は水素原子または陽イオン、aはモノマー数、xはX基によるモノマーAの置換率、yはY基によるモノマーAの置換率である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、疼痛あるいは疾患の予防、軽減、または治療に係り、特に刺激、炎症あるいは刺痛および掻痒に対する予防、治療あるいは保護に関する。後述するように、本発明の対象は特に、各組織の疼痛、不快感、刺激および疾患に対する予防、軽減、保護あるいは治療のための医薬用、皮膚医学用あるいは美容学用化合物あるいは医療用製品を作成するための、一般式AaXxYyを有する生体適合性ポリマーの使用方法である。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、“HBGFPP”と呼ばれる化合物が知られており、これは:
仏国特許第94/03806号明細書に記載されているように神経組織の;
米国特許第5852003号明細書に記載されているように筋組織の;
あるいは米国特許第5852004号明細書に記載されているように消化系の、
の損傷の再生プロセスを加速する特性を有している。
【0003】
仏国特許第2781485号明細書には“RGTA”と呼称される分子系が記載されており、これは特に自由イオン基に対する保護効果繊維症発生の防止効果、ならびに一般的な組織安定性および骨組織安定性に関する調整効果等の特殊な効果を有している。
【0004】
従ってRGTAは、皮膚、角膜、平板状あるいは棒状骨格、骨格筋、心臓あるいは神経組織等の虚血性組織の損傷、神経変性疾患、さらに照射を受けた組織に対する瘢痕形成作用物質として記述されている。HBGFPPならびに特にRGTAは、自然に組織内に存在する成長ファクターの強化および保護を行う作用物質として機能することにより、損傷の種類にかかわらず一般的に組織の瘢痕化および再生の効果を有する作用物質である。
【0005】
仏国特許出願公開第2718025号明細書には、さらにHBGFPPが例えば白血球エラスターゼ等の特定の炎症酵素からの防護を行うことによって炎症防止効果を有する作用物質であることが記載されている。
【0006】
加えて、仏国特許出願公開第2461724号明細書および米国特許第4740594号明細書には、補体の防止による炎症の防止効果を有する、カルボキシメチルアミドスルホナート成分あるいはカルボキシメチルベンジルアミドスルホナート成分(カルボキシ化および硫酸塩化されたデキストラン派生物)を含んだデキストラン派生物が記載されている。さらに最近においては、同様な特性がベンジルアミンを使用せずにフカン(Fucan)あるいはデキストランの硫酸塩化派生物について報告されている(フィッシャー氏等による「モル免疫学」1994年第31(4)号第247頁およびマイガ氏等による「炭水化物ポリマー」1997年第32号第89−93頁)。
【0007】
再生効果にかかわらず、生体適合性ポリマーの疼痛および掻痒に対する効果が実証された。実際に、この化合物は疼痛あるいは掻痒を低減、軽減あるいは排除する予想外の効果を示している。この効果は生体適合性ポリマーを使用した後数分で確認されており、その疼痛および場合によって掻痒の軽減効果ならびにそれによる緩和感覚効果は数時間あるいは数日間維持された。この効果は、生体適合性ポリマーを再び使用する度に達成された。この化合物は損傷したあるいは刺激された組織のみでなく、組織の損傷が観察されない健康な組織に対しても効果を示している。
【0008】
この疼痛および/または掻痒の治療における軽減効果および緩和感は、疼痛の種類あるいは該当する組織の種類、局部的あるいは総体的な使用、経口あるいは呼吸系を介した摂取にかかわらず、全ての種類の疼痛および掻痒に対して確認された。この効果は、特に例えば皮膚、角膜あるいは鼓膜等の直接的な外部接触を有する表面組織、または例えば消化系粘膜、鼻腔あるいは肺呼吸系等の間接的な外部接触を有する組織において観察された。整形外科処置後の筋肉、腱あるいは関節(膝、肘)、あるいは足の骨等の深い位置にあり従ってアクセスし難い組織の疼痛は、患部の皮膚上への局部的な使用、局部あるいは全身的な注入、ならびに経口摂取によって軽減された。意外なことに、単発的な経口摂取によって重度の頭痛が軽減され、数週間にわたる日毎の摂取によって慢性的な運動系の疼痛、背痛、神経痛、消化系あるいは呼吸系の粘膜痛、皮膚組織の疼痛を治療することができた。生体適合性ポリマーの適用は、損傷の直後にその損傷の部位に予防として行うことができ、疼痛を防止するかあるいは大幅に軽減することができる。同様なことが、損傷しておらず一見健康であるが敏感で“虚弱神経機能”と表現することができる不快感を有する皮膚に対して適用した際にある程度緩和感および治癒感をもたらすことに関しても有効であり;また“卸金のような肌”と言える、荒れて乾燥した皮膚の症状がある老人おいても有効である。経口摂取によってもこの緩和感および治癒感を達成することができる。同様に、呼吸系からの吸引によって刺激を鎮静して呼吸障害、呼吸困難ならびに咳を軽減する作用が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許第94/03806号明細書
【特許文献2】米国特許第5852003号明細書
【特許文献3】米国特許第5852004号明細書
【特許文献4】仏国特許第2781485号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第2718025号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第2461724号明細書
【特許文献7】米国特許第4740594号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】フィッシャー氏等、「モル免疫学」、1994年、第31(4)号、第247頁
【非特許文献2】マイガ氏等、「炭水化物ポリマー」、1997年、第32号、第89−93頁
【発明の概要】
【0011】
同様に、本発明に係るポリマーの効果は、局部的あるいは全体的なものかかわらず、掻痒の鎮静あるいは軽減に関するものである。虫刺され、湿疹肌、乾癬あるいは単純な目視不可能な皮膚症、または肛門あるいは性器粘膜、さらに毛が生えた頭皮(典型例を挙げただけである)に対する局部的な適用によって、局部的な掻痒が鎮静される。同様に、経口摂取後に全体的な掻痒も鎮静される。
【0012】
これらの効果は、従来の技術における瘢痕形成および組織再生の刺激作用とは、その特質および即効性において大きく異なったものでる。
【0013】
従って、本発明の対象は、疾患、不快感、刺激および/または疼痛に対する予防、軽減および/または治療、および/または前記症状に対する組織の保護のための医薬用、皮膚医学用あるいは美容化合物あるいは医療用製品を作成するための、
AaXxYy(I)
ここで:Aはモノマー、
XはRCOOR′基、
YはAに結合されるとともに以下の式のいずれかに相当する酸素あるいは窒素スルホナート基、
−ROSO3R′、−RNSO3R′
ここで:Rは脂肪族炭化水素鎖であり、場合によってこれは分岐しおよび/または非飽和であって、複数の芳香環を有することが可能、
R′は水素原子または陽イオン、
aはモノマー数、
xはX基によるモノマーの置換率、
yはY基によるモノマーの置換率
である一般式(I)からなる生体適合ポリマーの適用である。
【0014】
同一あるいは多様なモノマーAは砂糖、エステル、アルコール、アミノ酸、ヌクレオチドからそれらがポリエステル骨格構造、ポリアルコール骨格構造、あるいはポリサッカリド骨格構造を形成するように選択するか、あるいはヌクレイン酸または蛋白質から選択する。
【0015】
ポリエステルは、例えば脂肪族ポリエステルあるいは多価アルコール等の自然原料等の、生合成あるいは化学合成コポリマーである。
【0016】
ポリサッカリドおよびその派生物は、例えばポリグルコース(デキストラン、セルロース、ベータグルカン)等の単鎖状の細菌性原料、あるいはキサンタン(グルコース、マンノース、およびグルクロン酸)等の複雑なユニットを有するその他のモノマー、またはグルクロンおよびグルコグルクロンとすることができる。
【0017】
ポリサッカリドは、セルロース(グルコース)あるいはペクチン(ガラクツロン酸)、フカン、澱粉等の単鎖状の植物性原料、またはアルギン酸塩(グルロン酸およびマンヌロン酸)複雑な植物性原料、例えばステロイドグルカン等のカビ性原料、または例えばキチンあるいはキトサン(グルコースアミン)等の動物性原料とすることができる。
【0018】
本発明は、弱い凝固阻止効果を有する、特に哺乳類−グリカナーゼおよび/または細菌性グリカナーゼによって分解される弱いポリマーに関するものである。本発明において“グリカナーゼによって分解される弱い”という表現は、50%未満のグリカナーゼ溶液によって分解されるポリマーを示しており、一方同じ条件下において哺乳類−グリコアミノグリカン基体は100%分解される。例1に測定方法が示される。本発明において“弱い凝固阻止効果”という表現は、ヘパリン(<20UI)の凝固阻止効果の10分の1未満の凝固阻止効果を示すものである。従って、本発明においてはヘパリン、硫酸ヘパラン、コンドロイチン、デルマタンあるいは硫酸ケラタン、およびヒアルロン酸等の動物性グリコアミノグリカンは除外される。
【0019】
好適には、式(I)のポリマーの質量が約2000Da超(これは10個のグルコースモノマーに相当する)となるように、モノマーAの数は式(I)の“a”によって定義される。また、前記式(I)のポリマーの質量は2000000Da(これは10000個のグルコースモノマーに相当する)未満となる。前記式(I)のポリマーの質量は、約30ないし100kDaとすることが特に好適である。
【0020】
全てのモノマーAのX基による置換率は、一般式(I)において“x”によって示されており、約20ないし150%とすることが好適であり、特に50%程度の大きさを有する。
【0021】
全てのモノマーAのY基による置換率は、一般式(I)において“y”によって示されており、約30ないし150%とすることが好適であり、特に100%程度の大きさを有する。
【0022】
前述した置換率の定義において、100%の置換率xとは、本発明のポリマーの各モノマーAが統計的に見て1つのX基を含んでいることを意味する。同様に、100%の置換率yとは、本発明のポリマーの各モノマーAが統計的に見て1つのY基を含んでいることを意味する。100%を超える置換率は、各モノマーが統計的に見て1つより多い該当するタイプの基を含んでいることを意味しており;反対に100%未満の置換率は各モノマーが統計的に見て1つより少ない該当するタイプの基を含んでいることを意味している。
【0023】
本発明の好適な実施形態によれば、前述したポリマー内のイオン基Rはベンジルアミンあるいはベンジルアミンスルホネートではない。ベンジルアミンの存在は鎮痛効果に影響をもたらすものではないが、式(I)のポリマーの毒性作用をもたらす可能性があるため、不要なものである。
【0024】
イオン基Rは、線形性あるいは分岐した、アルキル基、アリル基、アリール基から選択することが好適である。
【0025】
本発明の枠内で使用される生体適合性ポリマーは、さらにX基およびY基とは異なっていて前記ポリマーに追加的な生物的あるいは生化学的特性をもたらす別の化学作用を有するZ基を含むことができる。追加的なZ基を備えていて本発明の枠内で使用可能な生体適合性ポリマーの一般式は添付の図1中に示されている。
【0026】
全てのモノマーAのZ基による置換率は、図1において“z”によって示されており、約0ないし50%とすることが好適であり、特に30%程度の大きさを有する。
【0027】
本発明の枠内で使用される生体適合性ポリマーにおいて、Z基は前記ポリマーにより良好な水溶性あるいは親油性をもたらすか、あるいは凝固阻止効果を低下させる物質であることが好適である。
【0028】
一実施形態によれば、本発明の枠内で使用される生体適合性ポリマーにおいて、各Z基は同一のものあるいは異なったものであり、アミノ酸、脂肪酸、脂肪アルコール、セラミド、あるいはそれらの派生物もしくはヌクレオチド配列とすることができる。
【0029】
第2の実施形態によれば、本発明の枠内で使用される生体適合性ポリマーにおいて、各Z基は同一のものあるいは異なったものであり、治療効果のある作用物質とすることができる。
【0030】
X,Y,およびZ基は直接モノマーA上に結合するかあるいは相互に結合したものとすることができ、その際構成要素のうちの1つのみがモノマーAと結合する。
【0031】
従って、例えばZ基は直接モノマーA上に共有結合するか、あるいはX基および/またはY基に共有結合することができる。
【0032】
しかしながら、Z基は式(I)のポリマーと共有結合以外の方式で結合することもでき、A,X基およびY基の特性に従って、イオンあるいは親水性交換作用によって結合することができる。
【0033】
出願人は開発作業中に、例えばデキストラン派生物、セルロース派生物、ベータグリカン派生物等のグルコースベースの生体適合性ポリマー、ならびに例えばグルクロンベース、グルコグルクロンベース、フカンベース、あるいはアルギン酸塩ベースの生体適合性ポリマーを試験した。これらのポリサッカリドは、カルボキシル基、硫酸塩基の付加および多種のZ−置換によってRGTAに変換され、その構造は後述の表1に示されている。
【0034】
さらに、ジョンバ−ミモー氏等による文献“骨治療および筋再生のためのマレイン酸生体能動作用ポリマー”(生体材料科学報2001年第11版第979−991頁)に記載されているように、例えばマレイン酸コポリマー等の生体適合性ポリエステルコポリマーも検査した。
【0035】
出願人の作業によって、例えば日焼けあるいはレーザ照射(リサーフェイシング)等の表面損傷、深い熱傷、ならびに血管障害あるいは糖尿性疾患と結合した潰瘍に由来し重度の疼痛をもたらす皮膚損傷の治療に際して生体適合性ポリマーの局部的な適用によって組織に使用してから数時間の間に患者の苦痛を軽減し得ることが確認され、さらに長時間にわたって瘢痕化プロセスが観察された。数ヶ月にわたって患者がモルヒネ等の鎮痛剤によって治療される極端なケースにおいては、生体適合性ポリマーの使用後迅速に軽減効果が明確に確認され、その鎮痛効果は、患者によっては2年も前からモルヒネ投与を行っていたにもかかわらず、その患者が14日後にはもはや鎮痛剤治療を必要としなくなる程強力なものであった。意外なことに、同様な皮膚痛が本発明に係る生体適合性ポリマーの経口摂取後に軽減された。
【0036】
特に皮膚損傷において、出願人は皮膚のひび割れおよび熱性疱疹と結合した苦痛の軽減を確認し、その膿瘍が縮小されて苦痛が少ないものとなった。
【0037】
痛みを伴った痘痕において、顕著な疼痛および掻痒の軽減効果が確認された。数週間後に生体適合性ポリマーを再度適用した際の、軽減作用と結合された効果は、疼痛の大幅な低減に加えて膿瘍の美観的治癒であり、それによって繊細で目視し難い膿瘍治癒および赤みの低減あるいは消滅がもたらされた。
【0038】
さらに、昆虫によってもたらされる疼痛も軽減された。全体として出願人は、頭皮を含めた全ての皮膚損傷および刺激症状部位に生体適合性ポリマーを使用することによって鎮痛効果を確認した。ここで損傷とは、例えば乾癬あるいはその他の過角化症、接触性皮膚炎等の重度の疾患、ならびに機械的あるいは化学的製品によってもたらされた刺激を原因とするものである。本発明に係る生体適合性ポリマーの疼痛および掻痒に対する緩和作用は、掻痒および/または疼痛が一般化しているかどうか、例えば湿疹、菌性、寄生虫性、帯状ヘルペス等のウィルス性、水痘性、医薬品、ホルモン疾患(例えば糖尿、甲状腺機能亢進症)のように時折生じるものかどうか、慢性腎不全によるものであるかどうか、ホジキン病あるいはポリグローブル(Polyglobul)等の血液病を原因とするかどうか、掻痒および/または疼痛が局部的なものであるかどうかにかかわらず、またその起源にかかわらず、多くの場合において経口摂取あるいは局部的な使用によって確認された。
【0039】
同様な効果が特に直接外部と接触する皮膚組織以外の組織においても確認された。これに関して、動物実験において、角膜膿瘍の治療に際して膿瘍形成の直後から治療によって膿瘍に伴った疼痛が軽減されているような、良好な治療効果が確認された。以上の場合において確認された軽減効果は数時間にわたって保持され、生体適合性ポリマーを付加する度に再現された。
【0040】
出願人は、生体適合性ポリマーの服用によって胸焼けが極めて迅速に軽減されることを確認した。同様に、歯肉損傷および内頬の損傷にも有効であり、これは生体適合性ポリマー溶液によるうがいあるいは歯磨きによって迅速に軽減することができた。この効果は歯痛においても確認された。アフタ性口内炎もそれ程ひどくはなくなり、酸性あるいは刺激食品の接触に対してもあまり過敏でなくなった。同様に、肛門あるいは性器粘膜の刺激あるいは掻痒も、水溶性あるいは軟膏性の生体適合性ポリマーの使用によって軽減された。
【0041】
同様な軽減が、火災煙または毒性ガスの吸引による肺毒症および肺炎についても確認された。この場合生体適合性ポリマーはスプレー状に変換した後吸引した。喘息、慢性あるいは急性気管支炎、および気管の閉塞の症状を有する患者の場合、本発明に係る生体適合性ポリマーをスプレー状にして吸引することによって、疼痛および呼吸困難が軽減される効果が達成された。この治療によって咳を防止しまた咳の痛みを軽減することができた。この効果はタバコの煙に敏感で喉の痛みおよび咳を発症し易い患者、喫煙者自身ならびに周囲の人物の双方において特に明確であった。さらに、本発明に係る生体適合性ポリマーの吸引後の効果および軽減は、鼻炎を発症していてその鼻粘膜が簡単に刺激されそれが掻痒あるいは場合によって疼痛の原因となる人物においても確認された。この鎮痛、掻痒防止あるいは緩和効果はスプレー状あるいは霧状での鼻を介した吸引の後直ぐに観察され、疼痛が再発すると同時に生体適合性ポリマーを再度使用した。興味深いことに、段々長い間隔で疼痛が再発したため、徐々に間隔をおいて吸引を実施すれば充分であった。極めて意外なことに、本発明に係るポリマーによる治療に際しての疼痛軽減効果または症状軽減効果と同様に、アレルギー性あるいは非アレルギー性にかかわらず喘息、鼻炎等の疾患、さらに慢性的な気管支炎の症状が完治し、ポリマーの使用を中止して数ヵ月後においてもこれらの症状は再発しなかった。
【0042】
さらに、出願人は、肘、手あるいは膝等の腱の患部領域への生体適合性ポリマーの局部注射あるいは軟膏状での使用によって疼痛が迅速かつ持続的に軽減されることを確認した。これに関して、例えば“テニス肘”等の肘の腱炎の多数の症例、物を掴むことを困難にする痛みを伴った手の腱炎の多数の症例、オスグッド−シュラッター病等の虚血性の膝の腱炎の症例、またはスポーツ選手のアキレス腱等の足の腱の症例において、疼痛軽減効果が観察された。同様な治療を脚部関節腱炎の症状を有する競走馬においても実施した。ここで、1ml毎に100μgの生体適合性ポリマーを含んだ数mlの溶液を腱周囲領域に複数箇所投与することによって疼痛が軽減され、この軽減効果によって14日後には被験動物が歩行障害を示さなかった。この治療を週毎に実施し、14日後のトレーニング再開に際して触診による疼痛が消滅していた。多くの症例において触診によって疼痛領域に肥大が確認された。興味深いことに、治療の効果によって疼痛が軽減されるとともに肥大領域が縮小あるいは消滅した。デュプイトラン症状の場合においても、指関節および中手骨の疼痛の軽減が観察されたが、さらに意外なことに、長期間の使用によって腫大の顕著な低下および手掌腱膜の収縮と共に、関節機能が改善され顕著な指運動能力の回復が可能となった。従って、本発明に係るポリマーは、疼痛に対して有効であるばかりでなく、例えば多様な関節炎、腱炎および脊椎の症状等の基質組織の破壊を伴った慢性的な症状において運動器官の機能状態の改善の効果をもたらす。
【0043】
さらに、関節内への生体適合性ポリマーの単独あるいはヒアルロン酸を伴った注射、または経皮的な使用後の関節部のマッサージによって、軟骨損傷に対して生体適合性ポリマーを局部的に使用した後にも軽減効果が観察された。同様な軽減効果あるいは疼痛の消滅が、長年膝、腰および/または背痛の症状を有している患者において、本発明に係る生体適合性ポリマーの溶液の繰り返しの経口摂取によって達成された。さらに、同様な軽減効果が、関節痛および/または手足あるいは臓器の痙攣、多発硬化あるいはパーキンソン等の多様な神経変性疾患あるいは神経筋肉疾患を有している患者においても観察された。意外なことに、本発明に係るポリマーの数週間にわたった日毎の繰り返し経口摂取によって、疼痛が緩和されたばかりでなく、実質的に麻痺した足の多発硬化の場合における運動機能の回復、ならびに消化機能の殆ど正常状態への回復が観察された。これらの運動機能回復によって、本発明に係るポリマーが、疼痛緩和効果と同時に、例えば神経鞘膜等の基質組織の破壊を伴った慢性疾患の改善効果を有することが示されている。
【0044】
本発明に係るポリマーの消化系の疼痛に対する効果は、コーン(Cohn)病あるいは慢性的直腸潅注の場合においても観察された。拡散性の腹痛を伴ったこの疾患を有する複数の患者が水に溶解された本発明に係る生体適合性ポリマーを服用し、腹部内に感じる疼痛に対しても明確な効果が見られた。1ml当たり1μlないし1ml溶液50mlを1ないし2ヶ月にわたって1日2回服用した後に、これらの患者において症状の改善が確認され、改善された消化機能と便通が同時に見られた。すなわち、意外なことに本発明に係るポリマーによる疼痛の治療によって患者の健康状態を数ヶ月にわたって再発することなく改善することができた。従って、本発明に係るポリマーによる増進した消化系基質組織を伴った慢性的な消化器官の疾患の治療によって、疼痛が軽減されるとともに患者の健康状態が顕著に改善された。
【0045】
関節の外科手術治療後においても疼痛緩和効果が観察された。患者の中足骨の外反母趾およびその他の足指の変形を矯正する目的の手術治療は極めて痛みを伴うものであり、患者は麻酔から覚めた時ならびに数日間にわかって疼痛に苦しむ。強力な鎮痛剤の投与にもかかわらず重度であった疼痛が、手術の翌日および一晩後の筋肉内への生体適合性ポリマーの注射によって大幅な軽減が達成され、それが1日維持された。4日目および8日目に繰り返した注射によって疼痛を伴わない患者の回復が可能となり、これに対して生体適合性ポリマーに基づいた治療を実施しない場合は疼痛が数週間継続し継続的な鎮痛剤による治療によってのみ患者の疼痛が軽減された。その他の外科手術においても同様であった。
【0046】
従って、本発明は前述したように、患者の外部環境接触領域の損傷による疼痛、刺激および/または掻痒に対する予防、軽減および/または治療、および/または前記症状に対する組織の保護のための医薬用、皮膚医学用化合物あるいは医療用製品を作成するための生体適合性ポリマーの使用に関する。
【0047】
本発明の枠内において、“外部環境接触領域の損傷または刺激”とは、皮膚損傷あるいは刺激、角膜損傷または刺激または刺痛/灼熱痛、鼓膜の損傷、消化器官の損傷、刺激および/または掻痒(内頬損傷、肛門損傷ならびに掻痒、胃損傷等)、気管および肺組織の損傷等の呼吸器官の損傷または刺激、尿生殖器の外傷または掻痒を意味している。好適には、本発明に係る生体適合ポリマーに基づいた化合物あるいは医療デバイスによって予防、軽減および/または治療されるべき、開いているあるいは瘢痕化している損傷による疼痛、皮膚刺激および/または掻痒は、日焼けあるいはレーザ照射の結果の表面熱傷による損傷、咳を誘発する鼻あるいは喉の刺激および掻痒、血管病あるいは糖尿病と結合した膿瘍、皮膚のひび割れ、熱誠疱疹による膿瘍、虫刺されによる損傷あるいは掻痒、機械的刺激または酸等の化学製品による刺激、乾癬あるいは湿疹等の過角化性疾患、ならびに接触性皮膚疾患から選択される。
【0048】
さらに本発明は前述したように、腱痛、軟骨痛、関節痛、および/または背痛、ならびに一般的な運動器官の疼痛に対する予防、軽減および/または治療のための医薬用、皮膚医学用化合物あるいは医療用製品を作成するための生体適合性ポリマーの使用に関する。
【0049】
本発明の枠内において“腱痛”とは、足の腱、手の腱、肘の腱あるいは関節の腱炎による疼痛、ならびにオスグッド−シュラッター病等の虚血性の腱による痛み、または靭帯裂傷後の痛み(アキレス腱、膝十字靭帯等)を示すものである。
【0050】
本発明の枠内において、“軟骨痛または関節痛”とは、神経によって伝達される疼痛が離れている首、手、足にまで到達する、膝関節、腰関節等の関節の軟骨の損傷による疼痛、ならびに背痛(腰椎、頚椎および椎間板)の双方を示すものである。
【0051】
本発明の枠内において、“運動器官の疼痛”とは、前述した腱痛および関節痛に加えて、例えば多発硬化、パーキンソン、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病)、舞踏病、一般的な運動疾患あるいは交錯した神経もしくは糖尿性神経疾患による運動疾患等の運動支配神経疾患における一般的な拡散性あるいは局部的疼痛を示すものである。
【0052】
さらに本発明は前述したように、筋肉痛、衝撃後の一般的な疼痛、および/または腹痛、(重度の頭痛を含む)頭痛等の拡散性の疼痛に対する予防、軽減および/または治療のための医薬用、皮膚医学用化合物あるいは医療用製品を作成するための生体適合性ポリマーの使用に関する。
【0053】
従って、ラグビーあるいはサッカー等のスポーツ競技中に被った(例えば足への)衝撃の後に生体適合性ポリマーの局部的な使用によって迅速な疼痛の消滅あるいは軽減が達成され、スポーツ選手はその活動を再開することができた。
【0054】
一般的に、種々の癌における拡散性の疼痛に対しても生体適合性ポリマーの経口投与によって、他の治療効果を犠牲にすることなく疼痛軽減効果が得られる。膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、または骨転移あるいは肺転移の症例において軽減効果が観察された。生体適合性ポリマーを用いた治療によって、患者の苦痛を軽減するために必要であったモルヒネ投与量を削減することが可能になった。
【0055】
従って、本発明の目的は、前述した種類の疼痛を防止、軽減および/または治療して、組織を疼痛から保護する新規の方法である。この方法は、前述した生体適合性ポリマーを含んだ医薬化合物を医薬的に有効な量をもって投与する、または前述した生体適合性ポリマーに基づいた医療用製品を適宜な形状で使用することである。
【0056】
意外なことに、生体適合性ポリマーによる疼痛の治療によって、疼痛の原因となっている疾病あるいは損傷の顕著な改善あるいは完治が達成された。このことはここで記述された多数の症例において確認された。
【0057】
すなわち、閉じている新しい瘢痕ならびに古い瘢痕の疼痛および掻痒の治療によって、特に著しい瘢痕の性質改善、瘢痕の腫れ、大きさおよび赤みの低減が達成された。
【0058】
呼吸器官の症状あるいは疼痛の治療によってこの疼痛の原因となっている疾病の改善が達成された。この改善は、嚢胞性繊維症ならびに喘息、鼻炎および肺気腫等の特定の症例において顕著であった。少なくとも数ヶ月間にわたって治癒の状態が観察された。
【0059】
多発硬化、リウマチ性の多発性動脈炎、関節症、または背痛の場合等の、運動器官の疼痛の治療の場合において、観察された治療による疼痛軽減は顕著な運動能力の改善を伴ったものであり、また多くの腱炎の場合完全な機能再生が見られた。さらに意外なことには、多発硬化の場合ならびに四肢に障害のある患者において、本発明に係るポリマーを1ml当たり100μg含んだ溶液の数週間にわたった経口摂取の後に、緩やかであるが確実な運動機能の回復が確認された。
【0060】
本発明に係るポリマーの目的は、疼痛あるいは掻痒を誘発する損傷の原因の治療ではなく、投与後短時間のうちに疼痛のある組織への効果を達成することである。この即効性は、直ちに原因となっている疾患への効果に相当するものではない。それと結合された神経症の軽減は達成されるものの、例えば糖尿病のような疾病の消滅を観察することはできない。
【0061】
一般的に、慢性的であるかあるいは非慢性的疾患であるか、ウィルスあるいは菌による感染症であるか、自己免疫症病であるか、代謝性疾患であるか、虚血性あるいは変性性疾患であるかどうかにかかわらず、損傷した組織上において局部的な細胞外基質の破壊に通じる、前記の原因となる全ての疾患が局部的な酵素活性化の原因となり、これは特に基質のグリコアミノグリカンを破壊する。
【0062】
本発明によれば、この生体適合性ポリマーは、任意、医薬技術上好適、かつ当業者において既知の手段によって、使用される投与形態に対応し、医薬品中(すなわち医薬化合物または医療用製品)に適用される。従って、本発明によれば、この医薬品を全身的、局部的、経口、または軟膏、クリーム、うがい薬、スプレー、あるいは注射等の状態で投与することができる。以下の例において、本発明の枠内で使用される化合物の好適な投与可能性について詳細に記述する。
【0063】
さらに本発明は前述したように、例えば皮膚灼熱症/刺痛、皮膚掻痒、皮膚緊張等の皮膚症状および不快感の予防および軽減、ならびに皮膚、角膜および粘膜等の組織の保護のための緩和化合物ならびに特に美容化合物の生成のための、生体適合性ポリマーの使用に関する。
【0064】
本発明のその他の特徴および利点は以下に記述する例の説明によって明らかにされる。この説明は本発明の枠内で使用される生体適合性ポリマーの製剤および調剤に関するものであり、またその鎮痛効果が記述されている。以下の例は単に説明の目的のものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】追加的なZ基を備えていて本発明の枠内で使用可能な生体適合性ポリマーの一般式を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
例I : 生体適合性ポリマーの製剤、グリカナーゼ耐性の測定ならびに調剤
1) 製剤例
医薬品はデキストラン(アマシャム・ファルマシア社製T40USP)から合成して得られた。合成工程は、カルボキシメチル化およびスルホン酸化の2段階の化学加工からなる。
【0067】
a) カルボキシメチル化プロトコル
75mLのMilli−Q水内のデキストランT40(15g、92.5mmol)溶液と29.6g(740mmol)の炭酸ナトリウムを含んだ48mlの溶液とを同時に用意する。両方の溶液の温度を4℃まで低下させ、それと同時に炭酸ナトリウム溶液をデキストラン溶液に慎重に付加する。反応混合物を4℃の温度で20分間攪拌する。30.6g(323.8mmol)のクロロ酢酸を徐々に添加した後、反応混合物を15分間50℃で加熱し、直後に酢酸(pH7)による中和を実施した。
【0068】
得られた溶液を冷却した後、0.45μmの薄膜(ミリポア社)で濾過し、容積を2lにし、最終的な濃度1Mを得るために塩化ナトリウムをさらに添加する。このカルボキシメチルデキストランのナトリウム塩を10000Daの限界濾過を有する膜上(ミリポア社製のペリコン(登録商標))でタンゲンシャルフロー超濾過によって洗浄する。一定の容量での連続する2回の洗浄を、最初は2.5lの1M塩化ナトリウム溶液によって、その後18lのMilli−Q水によって行う。カルボキシメチルデキストランを濃縮し、その250mlのMilli−Q水で限界濾過システムを洗浄する。
【0069】
最終的な溶液を凍結乾燥によって乾燥させる。
【0070】
b) スルホン化プロトコル
カルボキシメチルデキストラン(CMD)はナトリウム塩の状態においては有機環境で非溶性であるため、CMDHを形成するために、まずイオン交換体(Amberlite IR 120)によってポリマーを酸性化させることが必要となる。続いてこの溶解物を凍結乾燥する。この生成物は白色の細片化した繊維状となる。
【0071】
このCMDH(6g、32mmol)をFA(45ml)、DMF(180ml)ならびに2−メチル−2ブテン(45ml)からなる混合物に30℃で溶解させる。この溶液に三酸化硫黄複合体SO−DMF(24.3g、160mmol)を添加する。30℃で2時間攪拌しながら反応させる。反応混合物を重炭酸ナトリウムによって7pHになるまで中和する。
【0072】
0.45μmの薄膜(ミリポア社)で濾過した後容積を2lにし、最終的な濃度1Mを得るために塩化ナトリウムをさらに添加する。この硫酸カルボキシメチルデキストランのナトリウム塩を10000Daの限界濾過を有する膜上(ミリポア社製のペリコン(登録商標))でタンゲンシャルフロー超濾過によって洗浄する。一定の容量での連続する2回の洗浄を、最初は5lの1M塩化ナトリウム溶液によって、その後18lのMilli−Q水によって行う。硫酸カルボキシメチルデキストランを濃縮し、その250mlのMilli−Q水で限界濾過システムを洗浄する。
【0073】
最終的な溶液を凍結乾燥によって乾燥させる。
【0074】
カルボキシメチル基の置換度(ds)がグルコース単位毎のカルボキシメチル基の置換度として定義され(dsCM)、グルコース単位毎の硫酸塩基の置換度としてdsSが定義される。得られた製品OTD70は、以下の分析要件を満たすものとなる:
dsCM:0.25ないし0.75
dsS:0.80ないし1.30
【0075】
以下の例においては生体適合性ポリマーが生理食塩溶液内に溶解されて製造される。
【0076】
2) グリカナーゼによる消化に対する耐性の測定
以下に、RGTAおよび哺乳類グリコアミノグリカンを形成する自然の基質に対するグリカナーゼの作用の比較検査について記述する。使用されるグリカナーゼはシグマ社(米)製のものであり、コンドロイチナーゼABC、ヘパリチナーゼ1、ならびにヘパリナーゼである。ヒアルロニダーゼは生化学工業社(日本)製である。これらの酵素の全てが細菌性のものである。
【0077】
前記の最初の2つをそれぞれ2ユニットにして100mMおよびpH7.4のアセテート緩衝液100μl内に溶解し、ヘパリチナーゼおよびヘパリナーゼはそれぞれml当たり50ミリユニットとして0.5mMの酢酸カルシウムおよび100μg/mlのBSAと共に10mMおよびpH7.0の酢酸ナトリウム緩衝液内に溶解する。
【0078】
基準のGAG基質は牛の硫酸コンドロイチンA(CSA)、豚のコンドロイチンB(CSB)、鮫の骨の硫酸コンドロイチンC(CSC)、ならびに牛のヘパリン(HS)であった。これらのGAGを200mg/mlで100mMおよびpH7.4のアセテート緩衝液内に溶解する。RGTAは400mg/mlで溶解した。
【0079】
培養条件は37℃で6時間であり、これらの酵素による消化後の断片形成は炭疽酸(Fluka)によって反応環境がGAGをマークした後生じ;HPLC分離は分離搭TSK3000PWXKL No.3 PWXO4B333_を使用して1MのNaCl内において1ml/分の反応量および120分の溶出時間でアセテート緩衝液の移動局面で実施した。測定はイオン励起長310nmおよびイオン放射長410nmに設定可能な赤外線検出器を使用して実施し、分析はEurochromソフトウェアを使用して行った。種々の酵素の分解効果の測定値は、クロマトグラフによって分離されたピークを反応時間で積分して計算した。時間0におけるGAGまたはRGTAのピークの表面値は0%分解の指標である。
【0080】
次の表1は、37℃で6時間反応した後のパーセンテージ分解度を示している。
【0081】
【表1】

【0082】
(6) 調剤
局部的な投与に使用するための製造方法は、特にその他の数値が記載されていない場合は、溶液あるいは軟膏ml(最終的な量)当たり100μgの生体適合性ポリマー濃度を有している。局部的な投与は、疼痛を伴った外傷への直接的な使用、滴下、内頬への適用、うがいによる接触、飲み込み;スプレー、吸引、ガーゼまたは包帯への浸漬および浸漬されたガーゼあるいは包帯による患部への塗付、患部周囲への皮下注射によって実施される。
【0083】
軟膏の調合に際して、100%への補数としての4.5%のカルボキシメチル化ナトリウムセルロースジェル(アクアロン)、あるいは100%への補数としての3%の中性ヒドロキシプロピルセルロースジェル(アクアロン−Kucel 99MF EP)、あるいは100%への補数としての33%のヒドリセリン(Hydricerin)軟膏(H/L(親油性相中に分散した吸水性相、例えばワセリン、パラフィン油、グリセリド、ポリオキシレンエーテル、およびセリジンを含んだ溶剤Roc(登録商標))の化合物が生成される。
【0084】
閉じた皮膚に対する局部的な使用のための極めて好適な調合は、水分を含んでいない市販の手洗い用の殺菌ジェルを使用して達成される(“食器洗浄用でない殺菌ジェル”)。この製品は、ポリエチレングリコール、アルコール、グリセリンをベースにして多様に生成することができる(例えばBlue Skin(登録商標)のAssanis(登録商標))。その中において生体適合性ポリマーは安定的であり、ml当たり0.1ないし1000μgの最終的な濃度、好適にはml当たり100μgの濃度で存在している。
【0085】
全身用として注射することができる溶液においては、他の記載がない場合は、RGTAが1.5mg/kgの生理食塩水内に存在している。
【0086】
次の表2には、種々の例において使用される生体適合性ポリマーが記載されている(分子量、種類、および置換度)。
【0087】
【表2−1】

【0088】
【表2−2】

【0089】
例II : 生体適合性ポリマーの鎮痛効果
1) 例1:表面皮膚熱傷:
+日光浴後
長時間の太陽光への曝露によって引き起こされる1度の熱傷が、少なくとも1種類の生体適合性ポリマーを含んだ化合物によって治療された。この熱傷は、顔面、背、腹、腕、腿、および/または足上に存在していた。両面を日焼けした患者については、日焼けした片面あるいは上下肢部のみを処置し、他方の面あるいは上下肢部は比較のために処置しなかった。この試験の被験者は5ないし60歳の男女成人および未成年であった。日焼けによって紅斑と痛みに対する過敏性が見られ、場合によっては水疱の形成の開始を伴った。全ての患者は、4月上旬の11時から17時の間に異なった時間間隔で、人によっては1時間、人によっては数時間、例えばバハマの日射に曝露されることによって症状に至った。全ての患者において、冬季の後の最初の日光浴であった。夕方21時に中程度あるいは重度しかも継続的な疼痛を患った15人の患者が、軟膏状の粘度を付加して皮膚への塗付および粘着を容易化するためにメチルセルロース溶剤中の生理食塩溶液ml当たりに100μgの生体適合性ポリマーを含んだ溶液による局部的治療を受けた。使用された量は患部面積をカバーするために充分なものであり、塗付は軟膏状の生体適合性ポリマー溶液を広げるために手の表面で行った。
【0090】
全てのケースにおいて、10ないし30分以内に患者の著しい生体適合性ポリマーで治療した面(背、腹、顔面または上下肢)の疼痛軽減、あるいはそれどころか疼痛感の消滅が確認され、一方治療していない別の面は疼痛が持続するとともに極めて接触過敏であった。翌日になると治療した領域では疼痛は無かったが、治療していない領域においては継続していた。熱傷の大きさに従って約20時間後に再度疼痛が発生し、従って再治療した。この試験においては、表面熱傷であったため48時間後には全ての疼痛が消滅した。
【0091】
同様な観察を、単なる生理食塩水に前述と同様な濃度で生体適合性ポリマーを溶解した使用して実施した。
【0092】
別の類似の例においては、予めワセリンあるいはビアフィン(Biaffin(Medix))等の脂質性製品で治療した皮膚への生体適合性ポリマーの適用によっても同様に鎮痛効果が得られた。従って、唯一の限定条件は、生体適合性ポリマーの水溶液の塗付に際して治療すべき領域以外には流出しないようにすることであった。この効果は勿論、生体適合性ポリマーを熱傷の後時間をおいて塗付しても確認された。
【0093】
生体適合性ポリマーの効果は、例えば日焼け後の鎮痛にしばしば用いられるアスピリンあるいはパラセタモールその他の炎症防止剤あるいは鎮痛剤の効果とは関係なく有効である。従って、生体適合性ポリマーの鎮痛効果はこれらの鎮痛剤とは異なっており、またこれらの鎮痛剤の効果に追加して作用し、経口でアスピリンあるいはパラセタモールを服用した(6時間毎に1gまで)1人の患者おいて片方の熱傷面のみを生体適合性ポリマーで治療した場合、疼痛は生体適合性ポリマーで治療した片面において他方の面よりも大きく緩和される。この実験は多数の別の患者においても再現され、いずれも同じ結果が得られた。
【0094】
+レーザ治療後
“リサーフェーシング”プロトコルにおいてレーザ治療された皮膚に生体適合性ポリマーを噴霧によって使用した際に効果が確認された。このポリマーは生理食塩溶液中に100μg/mlで溶解された。
【0095】
2) 例2:深い皮膚熱傷に対する生体適合性ポリマーの鎮痛効果
多くの場合の深い皮膚熱傷において生体適合性ポリマーによる治療の効果が見られ、いずれの場合も適用後約10分内に顕著な疼痛感の軽減あるいはそれどころか消滅が確認され、数時間の持続が確認された。
【0096】
55歳の男性は、21時頃グリルの火を簡単に着火するために使用する重石油派生製品によって右手に熱傷を負った。この熱傷は当日夜および翌日午前に2人の医師によって、実質的に親指、人差し指、中指ならびに手のひらから手関節までの一部を含んだ手の表面の約半分を覆う面積の、第2度の深い熱傷として診断された。
【0097】
疼痛は極めて重いものであり、患者は事故を目撃した熱傷専門の外科医の勧めで病院を訪問し強力な鎮痛剤(Diantalvicあるいはモルヒネ)によって治療され、また組織の機能を回復するために皮膚移植の可能性を示唆された。事故の約2時間後に無菌のガーゼに浸漬させた100μg/mlで生体適合性ポリマーを生理食塩水中に溶解した溶液を熱傷面に塗付した。その後、ワセリンを浸漬させた包帯でこのガーゼを被包した。
【0098】
生体適合性ポリマーの塗付後約15分以内に疼痛が我慢できる程度になりその後さらに軽減され、従って患者は問題無く睡眠するとともに疼痛が殆ど消滅した感覚をもって目が覚めることができた。翌日、前日と同様な方式で包帯を交換した後緩和感はさらに強まった。
【0099】
生体適合性ポリマー溶液を浸漬させた包帯ガーゼで患部を10日間覆うだけで、疼痛の軽減あるいは消滅効果は治療期間略全体にわたって持続された。
【0100】
3) 例3:鼠を使用した第2度深い皮膚熱傷に対する生体適合性ポリマーの鎮痛効果
使用されるモデルは、毛を剃った鼠(無毛鼠)の背に設けた熱傷によるものである。このモデルは予備試験によって統一化されており、それによって試験モデルの再現性が実証されている。元々この試験モデルの目的は、熱傷の瘢痕上への生体適合性ポリマーによる治療の効果、より正確には表皮再生、脈管形成、ならびに真皮再生を判定することであった。以下に記述する試験においては観察された生体適合性ポリマーの鎮痛剤としての効果のみついて説明し、後述する1−5の点数によって評価する。
【0101】
a) モデルの説明
このモデルは、100℃の水槽内で加熱された直径2cmの真鍮製円筒を4秒間圧接して形成された熱傷からなる。この円筒を無毛鼠の皮膚に圧接することによってもたらされた凝固壊死は熱傷の全領域において均一のものではない。3日間にわたる組織学的検査によって、3つの周辺領域が熱傷の中心に対して異なったものとなり、これらの領域において凝固壊死の厚みの変化が熱傷の深さの原因となっている。これらの3つの領域はそれぞれ異なった熱傷度に相当する。
【0102】
凝固壊死が表皮の角下層のみである熱傷領域は第1度の熱傷に相当する。中程度の熱傷領域においては、凝固壊死が表皮から角質層あるいはマルピーギ小体の表面部分まで延在している。この凝固壊死はさらに一定の厚みの毛髪漏斗上皮に相応する。これは、さらに第2度の表面熱傷に相当する。最後に、その全高にわたって表皮が壊死している熱傷の中心領域が全熱傷面積の50ないし60%を形成し、これは第2度の深い熱傷に相当する。
【0103】
従って、領域によって壊死が基底細胞層を含むかあるいは含んでおらず、隣接する真皮乳頭層部分に接続するかあるいはしていない。これは第2度の深い熱傷あるいは中程度の表面熱傷に相当する。表皮と同様な壊死外傷が毛髪漏斗上皮上にも観察され、皮脂腺の内部まである程度完全に延在している。
【0104】
b) 試験プロトコル
体重280ないし300gの14匹の雄の無毛鼠をそれぞれ7匹からなる2つの集団に無作為に分離した。動物実験の規定プロトコルに従って鼠を麻酔した後、前述したプロトコルに従った熱傷を形成した。
【0105】
熱傷を施してから5分後に治療される動物のグループ(G+)および比較グループ(G−)に、それぞれ100μg/mlで生体適合性ポリマーを含んだものと含んでいないものである1mlの生理食塩水溶液を浸漬させた無菌湿布によって局部的な塗付を実施した。数分後に被験動物に、生体適合性ポリマー(1.5mg/kg)を含んだ、あるいは含んでいない生理食塩溶液を300mlの容量で筋肉内(IM)注射した。G+グループの動物には同配量の生体適合性ポリマーからなるIM注射を週毎に実施し、G−グループの動物には生理食塩水を注射した。閉塞包帯は、Jelonet、Opsite(10×14cm、スミス・アンド・ネフュー社製)を使用した、浸漬した包帯の層から形成される。この構造体を絆創膏で被覆し、これを動物の腹全体に巻き付けた。
【0106】
包帯は最初の一週間2日毎に交換し、その後3週間は週毎に交換した。動物は個別の籠に保持し、処理から1ヶ月以降は包帯を付けなかった。
【0107】
c) 動物の疼痛の測定
第1日目、第3日目、第5日目、および第7日目の包帯交換中に、生体適合性ポリマーによって治療された動物(+)の態度と治療されてない動物(−)の態度に差異が確認された。治療された方の動物は著しく静的で試験作業者に抵抗することなく容易に処置することができ、大きな鳴き声も上げなかった。干渉を避けるために、包帯交換は動物を保持する部屋とは別の部屋で実施し、個別の籠は不作為に選択した(生体適合性ポリマーによって治療された鼠と治療されていない鼠の包帯は不規則な順番で交換した)。試験作業者には生体適合性ポリマーを使用した動物の治療について知らされておらず(すなわち二重盲実験)、以下のパラメータをもって点数1−5で評価を行った:
−パラメータ(a):鼠を掴む際の容易性(1は最も容易であることを示す);
−パラメータ(b):鼠の包帯を除去する際の容易性;
−パラメータ(c):熱傷領域への触診(接触)に対する反応;
この触診は、熱傷を形成する際に使用した真鍮円筒を使用して圧力は加えずに患部中心に行ったが、室温下において手で垂直状態を維持しながら5秒間行った。
【0108】
−パラメータ(d):患部の周囲領域への触診に対する反応;
触診検査の後皮膚運動に対する動物の反応を測定した。これは、試験作業者の手の親指と人差し指の間で元の損傷部から約3cmは離間したところで保持された健康な皮膚に、脊椎に対して垂直な軸に沿って約2cmの振幅を有する4回の軽い往復動作を加えることによって実施され、ここで動物は第2の試験作業者によって首と後ろ足の部分で拘束される。
【0109】
−パラメータ(e):傷口の洗浄および包帯交換のために鼠を取り扱う際の容易性;
−パラメータ(f):動物が各ステップにおいて痛みによる鳴き声を上げたかどうか。
【0110】
次の表3に個別の試験結果が示される。
【0111】
【表3】

【0112】
生体適合性ポリマーの鎮痛効果は、このモデルにおいて熱傷の形成から8日ないし10日後に生じた瘢痕形成よりもはるかに早く観察されることが理解され、この瘢痕形成は壊死した組織を排除するために要する時間に相関するものである。
【0113】
4) 例4:各種の原因による重度の皮膚膿瘍ならびに周辺の神経障害を患っている特に糖尿病およびアルコール依存症の人間の患者に対する鎮痛効果
人間における10例の皮膚膿瘍について検査した。これは、治療が効果を示さず、そのため唯一の選択肢として四肢の切断が不可避であと診断された段階IVの動脈炎を含んだ類似のケースに関するものである。
【0114】
2種類のプロトコルが使用された:
a) 第1のプロトコルは、洗浄した後に患部に100μg/mlで生理食塩水中に溶解された5mlの生体適合性ポリマー溶液に浸漬した無菌ガーゼ(10×10)を付加し、10分間患部に保持しておくことからなる。ガーゼを除去して通常通り包帯を装着する。以下に記す例のうちの8例はこのプロトコルによって治療する。
【0115】
第1の例は、内くるぶし大きな面積の膿瘍を有している75歳の男性であり、2年前からいずれの治療でも効果が上がらず、モルヒネ(Skenan、1日2回、90mg/日)を投与している。最初の治療から既に患者は疼痛の軽減を感じ、14日後には完全に消滅した。患者は勿論鎮痛剤の服用を停止した。このことから、生体適合性ポリマーの鎮痛効果は、2ヶ月以上も遅れて始まった瘢痕形成よりも大幅に早く開始されたことが理解される。
【0116】
第2の例は69歳の男性糖尿病患者であり、彼の足裏には腱が見えるほど深い膿瘍が発症している。この膿瘍は6ヶ月前からいずれの治療によっても効果が上がらないものであり、患者はモルヒネを含んだ鎮痛剤を使用している。生体適合性ポリマーによる治療によって、患者が14日後に鎮痛剤の服用を停止できる程の疼痛軽減が達成された。
【0117】
第3の例は、既に切断が施された50歳の女性であり、その切断部に膿瘍が発症している。膿瘍は進行しており腰までの切断部全体の腐食が予想されている。この女性はモルヒネおよびベンゾジアゼピンを使用している。生体適合性ポリマーの使用によって、患者が2週間後にモルヒネおよびベンゾジアゼピンの服用を停止できる程の疼痛軽減が達成された。
【0118】
同様な生体適合性ポリマーの鎮痛効果がその他の5人の患者についても観察された。
【0119】
b) 生体適合性ポリマーを投与するための第2のプロトコルは経口摂取であり、患者に応じて0.01ないし10mg/kg(患者の体重)の濃度を有するポリマーの水溶液70mlを毎朝食事前に経口摂取によって投与することからなる。治療された全ての患者(3人)について15日間の治療後に顕著な疼痛の軽減が得られた。鎮痛効果は服用量を多くする程迅速に現れるが、最終的には最も小さい服用量でも達成される。
【0120】
前述した症例の多くは糖尿患者に関するものである。この試験から、糖尿および/またはアルコール依存症患者、ならびにAIDS患者において、患者が膿瘍を患っていなくても、経口による治療によって神経痛を軽減できることが示された。鎮痛効果は全ての例において観察された。
【0121】
5) 例5:熱性疱疹を原因とする疼痛に対する生体適合性ポリマーの鎮痛効果
唇および生殖器ヘルペスは、唇および粘膜に(熱性)疱疹を形成する広範な感染症である。これは急速に赤くなりながら腫れることによって進行し、その後再び縮小し、それによって表面のひび割れを発生させる。この多様な段階は、ウィルスの増殖段階に相当し、破裂する前に徐々に増大する疼痛をもたらし、その後縮小するまでひび割れが形成される。
【0122】
疱疹上に単に指で引き伸ばすだけの生体適合性ポリマーの局部的な使用によって疼痛が軽減され、この軽減は破裂段階およびひび割れ形成段階においても維持された。
【0123】
ひび割れの瘢痕形成への生体適合性ポリマーの効果は前述した皮膚外傷の瘢痕形成に対する生体適合性ポリマーの効果からも理解することができるが、疱疹の形成、その成長、および破裂の時点において適合性ポリマーの効果が得られることは前述の例からは理解されていなかった。
【0124】
6) 例6:指のひび割れを原因とする疼痛に対する生体適合性ポリマーの鎮痛効果
ひび割れした皮膚の形成はしばしば発症するものであり、男女双方および全ての年齢層に該当する。ひび割れた皮膚によって鈍痛がもたらされ、これは指が乾燥、湿気、および/または寒気に曝されるとさらに増大する。
【0125】
年に数ヶ月皮膚のひび割れに苦しむ40ないし80歳の主に女性に関して、生体適合性ポリマーの溶液をただ一回局部的に使用するだけで疼痛の軽減が達成されることが確認された。これらの患者は全て市販の脂質クリームあるいはノイトロゲーナクリームを使用して効果を得られていなかった。
【0126】
この軽減は最初の30分から顕著に確認され、ひび割れの原因となる微細な皮膚外傷の24ないし48時間以内の迅速な閉鎖を伴っているため、再度生体適合性ポリマーを塗付しなくても効果が維持された。
【0127】
数十人の患者をそのように治療し、いずれも同様な効果を得ることができた。全てのケースにおいて、生体適合性ポリマーはまずひび割れによってもたらされる疼痛および苦痛を治癒し、その後微細皮膚外傷を治癒した。
【0128】
しばしば、生体適合性ポリマーと抗生クリーム(2%のオーレオマイシンまたはネオマイシン)とのシナジー効果が観察された。
【0129】
7) 皮膚の過角化症または乾癬または湿疹ならびに帯状ヘルペスを原因とする疼痛および/または掻痒に対する生体適合性ポリマーの鎮痛効果
異なったケースにおいて、生体適合性ポリマーによる治療の後に多様な原因の皮膚炎によってもたらされる皮膚刺激または掻痒に対する緩和効果が観察された。
【0130】
従って、例えば、手が治療不可能な皮膚炎によって過角化症に至り仕事ができなくなってしまった歯科医師において、生体適合性ポリマーを溶液あるいは軟膏(例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロースを含んだジェル)として使用することによって症状軽減が得られ、それ以外ではコルチコステロイドによってのみ軽減が見られたが、これでは同程度の効果は得られず、何よりもその治療は長期間継続することは不可能である。15日間にわたった連日の生体適合性ポリマーによる治療の後は、症状を恒常的に緩和するために週毎に治療をすれば充分であった。
【0131】
同様に、同様な緩和効果が足裏に深く窪んで形成された裂溝に塗付することによって症状軽減が見られた。この裂溝は極めて疼痛を伴ったものであり得る。生体適合性ポリマーを適用することによって疼痛軽減が達成され、これは複数の患者において観察された。本発明に係る生体適合性ポリマーの最も重要な効果の1つは、局部的なものであるかあるいは一般化したものであるかどうかにかかわらず、掻痒を緩和することである。従って多様な原因からなる多数の局部的あるいは全身的な掻痒のケースにおいて、本発明に係るポリマーの局部的な使用あるいは経口摂取によって緩和が得られた。
【0132】
8) 例8:粘膜あるいは皮膚の刺激に対する生体適合性ポリマーの軽減効果および鎮痛効果、ならびに外科治療後の鎮痛効果
刺激された粘膜および/または刺激された皮膚、または閉じた瘢痕への生体適合性ポリマーの局部的使用によって、刺激あるいはその他の不明の原因によってもたらされた疼痛、掻痒、および灼熱痛が軽減される。このことは、刺激が機械的な原因(鼻の上でのティッシュペーパによる摩擦、唇上での舌の摩擦等)および/または該当する腺(涙腺、唾液腺、膣腺等)による潤滑液の分泌の障害、あるいは鼻炎における過度の分泌等のその他の要因によってもたらされたかどうかにかかわらず、多数の症例において観察された。しばしば腫れたままである閉じた瘢痕上の疼痛および掻痒の軽減は、ジェルあるいはクリーム状のポリマーの局部的な使用によって顕著なものとなった。極めて意外なことに、治療の過程においてこの瘢痕の厚みが縮小するとともに、赤みが大きく低下すると同時に瘢痕が微細なものとなった。これらの両方の期待していなかった効果は、同一人物において比較して大きな瘢痕あるいは対称的な瘢痕上で検査された。腹の臍の両側に延在している腹の上の瘢痕(結腸切除後)、または胸骨上の縦方向の瘢痕(心臓外科手術後)を、ボール紙製遮蔽材上に記された指標によって3つの等しい断片に分割し、これは皮膚全体をスリットの周りで遮蔽し、このスリットが瘢痕とその縁部を約2cmにわたって目視可能およびアクセス可能にする。生体適合性ポリマーによる治療は、本発明に係る生体適合性ポリマー含んだジェルあるいはただのジェルを、瘢痕の上側あるいは下側のいずれかに15日間にわたって指で塗付することによって実施された。ポリマーによって治療した領域において疼痛は著しく軽減されいくつかの場合においては消滅し、一方ポリマーによって治療されていない領域においては疼痛が明らかに継続した。同様に、本発明に係るポリマーによって治療された領域においては瘢痕が著しく縮小し、またその赤みもただの溶剤によって治療された部分と比べて大幅に低下した。類似でありさらに明確な結果が、例えば両方の乳房整形手術によって形成された瘢痕、またはリフティングによって両耳の後に形成された瘢痕等の対称的な領域に形成された瘢痕の場合に観察された。
【0133】
本発明の出願人は勿論、この鎮痛効果が外科手術後に観察されるかどうかも調査した。麻酔から覚める際に経口によるポリマーの摂取を提供し、朝夕の1日2回生体適合性ポリマーの1つを10μgないし10mgの濃度で溶解したそれぞれ25mlの2つのポリマー水溶液を使用した。鎮痛効果は、例えば整形外科手術、腰部補綴材の装入、脛骨の骨折治療、歯のインプラントの目的の手術、開腹手術:虫垂炎および結腸手術等、多様な外科手術について観察された。
【0134】
9) 例9:照射治療を原因とする皮膚外傷における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
放射線照射による癌の治療によって照射領域に痛みを伴った熱傷および微細皮膚外傷が形成される。複数の患者に対して、一部は放射線照射前に、また全員に対して照射後に生体適合性ポリマーの滴下、噴霧(スプレー)またはジェル状のものの塗付によって照射された患部を治療した。全てのケースにおいて照射から1時間以内に疼痛が軽減された。疼痛を予防的に軽減するために、照射の前に軟膏状の生体適合性ポリマーを塗付することも同様に効果的であった。
【0135】
10) 例10:鼓膜障害における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
痛みを伴った左右の耳炎を患っている成人の場合(56歳男性)において、生体適合性ポリマーを片側の鼓膜のみに滴下した。鎮痛効果は治療された側の耳のみで確認された。治療した耳において翌日疼痛が再発したため、次は両方の耳に再び滴下を施し、両耳において疼痛の軽減が確認された。
【0136】
11) 例11:角膜の疼痛における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
使用されたモデルは、NaOH溶液に浸漬させた直径0.5mmの円盤を数秒間の間接触させることによってウサギの角膜に膿瘍を発症させることからなる。膿瘍形成の日に、麻酔をかけたウサギに対して100μg/mlで生理食塩水に溶解した生体適合性ポリマー2滴の滴下、またはただの(調整された)生理食塩水2滴の滴下によって治療を施した。
【0137】
翌日、麻酔の鎮痛効果が無くなった後、ウサギは生体適合性ポリマーによって治療されたかどうかに従って極めて異なった過敏性を示した。治療を受けたウサギは治療された目を全く苦痛の鳴き声を上げずに開けることができ、顕著な光過敏性は見せなかった。生体適合性ポリマーの滴下によって直ちに軽減効果が得られ、一方ただの生理食塩水を投与した比較グループにおいては全く軽減効果が見られなかった。
【0138】
このウサギによって観察された効果はその後人間においても確認された。この緩和および軽減効果は、コンタクトレンズを使用していて掻痒感および灼熱感を示す顕著な苦痛および刺激を被っている患者において観察された。生体適合性ポリマーの溶液の滴下によって即座に疼痛軽減が達成されコンタクトレンズのさらなる使用が可能となり、他方生体適合性ポリマーを使用しない場合はレンズを除去しなければならなかった。この効果は矯正手術としてレーザ治療された患者においてさらに顕著なものとなった。この手術によってもたらされ場合によっては数日間継続する疼痛が、100μg/lの生体適合性ポリマー溶液を1日1回あるいは2回1滴あるいは2滴ずつ滴下することによって簡単に消滅した。
【0139】
12) 例12:気道の熱傷に対する生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
火災の煙の吸引、あるいは毒性ガスの吸引によって引き起こされた肺毒症および肺熱傷においても同様な軽減効果が観察された。この場合、生体適合性ポリマーがスプレー状で吸引された。
【0140】
木材の燃焼によって引き起こされた火災に際して強力な煙が呼吸困難および疼痛を伴った肺熱傷をもたらす。スプレー状の生体適合性ポリマーの吸引によって迅速な疼痛軽減が達成された。この生体適合性ポリマーは生理食塩水溶液内に100μg/mlで含まれており、スプレーは溶液内に支持されたガラス製の毛細管と、毛細管を介して生体適合性ポリマーを噴射するガス圧力システムによって形成された。同様な疼痛軽減効果は、偶然のホルマリン蒸気の吸引後にも観察された。
【0141】
13) 例13:喘息および鼻炎に結合した気道の疾患に対する生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
多様な原因(枯草熱、猫および鼠毛アレルギー)による気道疾患を有する複数の患者について、本発明に係る生体適合性ポリマーの噴霧を直接鼻腔内に噴霧容器を使用して行って治療を実施した。この発作中に直接的に投与する治療によって症状の迅速な軽減が達成された。
【0142】
この試験を同一人物に対して複数回実施し、いずれの場合も軽減が観察された。治療の回数の増加に従って発作の頻度が低下することが観察された。同様に、喫煙あるいはその他の刺激物の使用によって引き起こされた窒息感および咳発作も本発明に係る生体適合性ポリマーを用いた治療によって低減された。
【0143】
全てのケースにおいて、使用された溶液濃度は、スプレーの生成前はまず食塩水溶液内に存在している使用されるポリマーに従って、1ないし100μg/mlとなる。
【0144】
疼痛ならびに苦痛が消滅するに従ってその他の症状も消滅し、意外なことに疼痛の治療によって疾病自体も、少なくとも数ヶ月の時間間隔で治癒した。いくつかの場合において、本発明に係る生体適合性ポリマーの吸引による治療は、既に実施中の治療および服用量を変更することなくこれに追加して実施された。その際、コルチコステロイド、β−2ブロッカーの投与が生体適合性ポリマーの効果に干渉をすることは無かった。
【0145】
14) 例14:気管閉塞に伴った苦痛および疼痛における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
急性あるいは慢性の膵線維症等の、感染症または刺激の結果の気道の閉塞、あるいは気管の閉塞による苦痛および疼痛が、スプレー状のポリマーの吸引、ならびに症状および使用されるポリマーの種類に従って0.01ないし10mg/kgの溶液の経口摂取によって軽減された。
【0146】
疼痛および呼吸障害の治療の過程において、疾病症状の改善も観察された。いくつかの場合においては、疼痛が再発せず呼吸機能も著しく改善したため、肺気腫も治療されたと見られる。
【0147】
15) 例15:咳に対する生体適合性ポリマーの緩和効果
喫煙はしばしば喉、鼻、および気管の刺激の原因となり、慢性の咳または咳発作を誘発し得る。これらは極めて痛みを伴ったものとなり得る。嗽による経口摂取またはスプレー状の生体適合性ポリマーの噴霧あるいは吸引によって、この喫煙によってもたらされた症状の軽減あるいは消滅が達成される。
【0148】
16) 例16:胃潰瘍における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
胃潰瘍における鎮痛効果が2つの例において観察された。
【0149】
一つの例は、胃カメラによって診断されたが未だ治療(ヘリコバクターに対する抗生剤によって)されていない胃潰瘍を患っている45歳のアフリカ人男性に関するものであり、これは疼痛がこの男性に禁酒および胃を刺激する材料(スパイス、コーヒー)を断つダイエットを強制するのに充分なほど重度なものであった。このダイエットにもかかわらず、この男性は慢性的な胃焼けの症状を訴え、これは食事中において特に強いものであった。生理食塩水中に100μg/mlで溶解した生体適合性ポリマー溶液20mlを3日毎に3週間飲用することによって、治療を開始して1日目から既に全ての疼痛が消滅し、6ヶ月の間再発が見られなかった。
【0150】
別の例は57歳の男性に関するものであり、彼の胸焼けは20mlの生体適合性ポリマーを飲用した後数分以内に解消された。
【0151】
17) 例17:拡散性腹痛における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
頻度および強度が高まっており、消滅しても数日後には再び発症する拡散性腹痛を患っている55歳で体重70kgの男性において、本発明に係る生体適合性ポリマーを70ml経口摂取することによって何度も効果的な軽減が達成された。服用した後30分以内で疼痛が消滅した。この男性は腎仙痛を患っており、服用によって達成された鎮痛効果は腎仙痛の第1段階においてのみ有効であった。より重度な疼痛に際してはモルヒネによってのみ効果が得られた。この検査によって、生体適合性ポリマーの経口摂取による全身的な鎮痛効果が確認された。手術不可能な膵臓癌を患っている55歳の女性は、1日50mgのモルヒネの基本服用量を増加する必要なく、また疼痛が我慢できない程になることもなく、100μg/kgで水に溶解したポリマーを経口摂取することによって、極めて末期の段階まで生存することができた。モルヒネとの間に少しの干渉も発生した気配はなく、疼痛に対しての追加的な効果が得られた。
【0152】
18) 例18:頭痛における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
重度の頭痛に対する生体適合性ポリマーの効果は、多数の例において例15と同じ条件における製品の経口摂取後に観察された。ここでも、頭痛が大幅に軽減され、場合によっては完全に消滅した。治療されたうち2つの例においては、患者は通常重度の偏頭痛を患っており、一般的に鎮痛剤(アスピリン、パラセタモール)による軽減効果は得られなかったが、頭痛が無くなった。
【0153】
19) 例19:アフタ性口内炎、粘膜炎、喉痛、および歯痛における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
生体適合性ポリマーに浸漬した綿による頬内のアフタ性口内炎に対する直接的な生体適合性ポリマーの塗付あるいは単純な嗽によって、著しい疼痛の軽減が達成された。
【0154】
緩んだ歯によって誘発された歯痛においても、同様な効果が得られた。この場合、生体適合性ポリマーの溶液に浸漬したブラシによって歯および患部をブラッシングした後により良好な効果が得られた。
【0155】
ハムスターに植え付けた歯根膜炎のモデルにおける一連の実験によって鎮痛効果が観察された。この実験モデルは、エカーティン氏等による“化学的に改変されたデキストランポリマーによって歯根膜炎内の組織破壊を治療する新規の方法”(FASEB J、2003年第17版、第636−643頁)に記載されているものと同等である。この一連の実験において、0.4mg/kgまたは1.5mg/kgの生体適合性ポリマーの筋肉内注射によって治療された動物は、治療されなかった動物よりも少ない症状を患った。疼痛の低減は動態条件および毛皮の外見によって判定され、ストレス、試験作業者の接近、および騒音による興奮に対してあまり過剰な反応を動物が示さず、また配分食料を迅速に摂取し、これは生体適合性ポリマーによって治療された動物がより少ない苦痛を被っていたこと示すものである。
【0156】
同様に、喉痛および嗄声を患っている52歳の女性において、生体適合性ポリマーによる嗽によって軽減効果が得られた。
【0157】
化学あるいは放射線療法の後に生じた粘膜痛の軽減に対する著しい効果が、本発明に係るポリマーによる嗽の後に観察された。第2および第3段階の粘膜炎症を患っている複数の患者が、口内あるいは喉内の膿瘍形成を原因とする極めて不快な疼痛が嗽の後に軽減されることを経験した。ベーチェット病を患っている患者においても、朝夕の嗽によって症状が続いていた昼間の間も著しい軽減が達成された。このポリマーは単純に100μg/mlの水性溶液で使用された。
【0158】
20) 例20:腱に対する生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
多数の例の腱痛が生体適合性ポリマーによって治療され、これは単純な塗り込みによって患部に適用された。それによって、以下の結果が観察された。
【0159】
左利きテニスプレイヤーである57歳の成人男性は、左肘に痛みを伴った腱炎を患って、6ヶ月間隔のコルチコステロイドの局部注射複数回を含んだ多数の治療を受けるとともに2年間全くテニスをプレーしなかった後、このスポーツを断念していた。この疼痛は消滅しても弱い付加が肘の腱にかかると再び発生した。彼の肘に大きな負荷がかかったある日の夕方、この男性は重度の疼痛を肘に感じた。100μg/mlで生理食塩水中に溶解した生体適合性ポリマーをマッサージによって局部的に使用することによって、数十分の間にこの疼痛が完全に消滅した。
【0160】
同様に、肘または膝等の腱の疼痛領域への局部注射あるいは生体適合性ポリマーの軟膏の塗付によって迅速かつ継続的に傷みが軽減されることが観察された。すなわち、生体適合性ポリマーの適用によって、例えば“テニス肘”等の多様な肘の腱炎、オスグッド−シュラッター病における虚血性膝腱症、またはスポーツ選手のアキレス腱等の足の腱の障害等に際して迅速かつ顕著な疼痛軽減が達成される。
【0161】
同様な治療を足関節領域に腱炎を患っている競走馬に実施した。数十mlの生体適合性ポリマーの一連の注射によって、腱周囲領域において疼痛が軽減され、この軽減はこの動物が14日後には既に歩行障害を患っていないことをもたらした。治療は週毎に実施され、2ヵ月後のトレーニングの再開に際して、この動物にもはや歩行障害は無く、触診による疼痛も無く、運動能力を取り戻したことが示された。
【0162】
21) 関節症または関節炎における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
関節症あるいは膝関節の炎症問題から生じた多数の多数の例の疼痛が、生体適合性ポリマーを100μg/mlで生理食塩水中に溶解した溶液か、あるいは同様な濃度で100%への補数としての4.5%のナトリウムカルボキシルメチルセルロースジェル(アクアロン)、または中性ヒドロキシプロピルセルロースジェル(アクアロン−Kucel 99MF EP、100%への補数としての3%)からなる軟膏に混合したものを使用して軽減された。治療された患者は、鎮痛剤を使用していた(1日に3錠のボルタレンLP100)。生体適合性ポリマーを用いた単純なマッサージによって15分後に軽減が見られ、それが2ないし3時間持続した。その治療を繰り返すことによってこの患者はボルタレンの服用を回避することができた。3日間の治療で通常の膝の使用であれば疼痛が常に低頻度となっていった。最終的に14日後には、疼痛を防止するために1日1回生体適合性ポリマーを使用すれば充分になった。
【0163】
生体適合性ポリマーを溶液として飲用して使用した際に、同様な効果が長期間にわたって得られた。0.1mg/kgないし10mg/kgの投与量を50ないし100mlの水に溶解して服用した(好適には朝空腹時)。スポーツ活動を不可能にし、歩行を困難かつ苦痛を伴ったものとする膝痛を数年にわたって患っている患者において軽減が観察された。2ヶ月間の治療の後、これらの患者はこの苦痛および/または疼痛を訴えなくなり、再びスポーツを行うことができた。この期間中に治療の副作用は全く観察されなかった。
【0164】
22) 例22:整形外科手術後における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
足骨の安定化手術を行った直後の50歳の女性において生体適合性ポリマーの鎮痛効果が観察された。これは、足指の軸を適正な方向に保持するために骨内に金属レールを挿入することによる外反母趾矯正ならびに2本の足の指の強制に関するものであった。この手術は同人物において既に3年前に実施され1週間以上の間にわたって極めて重い疼痛が発生しており、今回も3週間にわたって重度の疼痛が継続している。2回目の手術後、この患者に1.5mg/kgのベースの生体適合性ポリマーの筋肉内注射が手術後2,4および8日目に実施された。疼痛は最初の注射後1時間以内に消滅してから2日目に再発し、その後に手術後4日目の第2回目の生体適合性ポリマーの注射を行った後1時間以内に消滅し、第7日目になって再び発生した。疼痛は8日目に再度注射を行った後1時間以内で消滅し、その後再発しなかった。
【0165】
23) 例23:変性性神経病における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
20年以上前から多発性硬化を発症している2人の患者が、痛みを有する周期的な痙攣を伴った定期的な関節痛および腹痛に苦しんでいた。彼らは2人とも同様な段階にあり、片方の足が使えなくなっている。本発明に係るポリマーの水性溶液を1日約30ml服用することによって疼痛が部分的に緩和され、特に片方の患者の手の痛みと別の患者の関節および内蔵の痛みが緩和された。非常に意外なことに、水性溶液に溶解された本発明に係るポリマーを1日3ないし30mg2ヶ月間服用した後、不随であった足の運動機能の緩やかな改善が見られた。踵の持ち上げ、足の持ち上げ、ならびに地面に接触せずに前後に振る能力、さらに膝に接触するように踵を充分に持ち上げられることがこの改善の兆候であった。同様に、第2段階の糖尿患者の足および手の障害または神経症も、数週間にわたった本発明に係る生体適合性ポリマーの水性溶液の経口摂取の後著しく軽減された。
【0166】
24) 例24:嚢腫における生体適合性ポリマーによる鎮痛効果
2人の若い女性において、抗生剤治療で効果が上がらない悪性の嚢腫が、抗生剤治療に加えて本発明に係るポリマーの日毎の経口摂取によって軽減された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦痛、不快感、掻痒、刺激および/または疼痛に対する予防、軽減および/または治療、および/または前記症状に対する組織の保護のための医薬用、皮膚医学用あるいは美容化合物あるいは医療用製品を作成するための、
AaXxYy(I)
ここで:Aはモノマー、
XはRCOOR′基、
YはAに結合されるとともに以下の式のいずれかに相当する酸素あるいは窒素スルホナート基、
−ROSO3R′、−RNSO3R′
ここで:Rは脂肪族炭化水素鎖であり、場合によってこれは分岐しおよび/または非飽和であって、複数の芳香環を有することが可能、
R′は水素原子または陽イオン、
aはモノマー数、
xはX基によるモノマーAの置換率、
yはY基によるモノマーAの置換率
である一般式(I)からなる生体適合性ポリマーの適用法。
【請求項2】
同一あるいは多様なモノマーAは砂糖、エステル、アルコール、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレイン酸または蛋白質から選択する、請求項1記載の適用法。
【請求項3】
式(I)のポリマーの質量が約2000Da超となることを特徴とする請求項1または2記載の適用法。
【請求項4】
xは約20ないし150%となり、特に50%程度の大きさを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の適用法。
【請求項5】
yは約30ないし150%となり、特に100%程度の大きさを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の適用法。
【請求項6】
イオン基Rは線形性あるいは分岐した、アルキル基、アリル基、アリール基から選択することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の適用法。
【請求項7】
生体適合性ポリマーがX基およびY基とは異なっていて前記ポリマーに追加的な生物的あるいは生化学的特性をもたらす別の化学作用を有するZ基を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の適用法。
【請求項8】
“z”によって示される、全てのモノマーAのZ基による置換率が約0ないし50%となり、特に30%程度の大きさを有することを特徴とする請求項7記載の適用法。
【請求項9】
Z基は前記ポリマーにより良好な水溶性あるいは親油性をもたらす物質であることを特徴とする請求項7または8記載の適用法。
【請求項10】
各Z基は同一のものあるいは異なったものであり、アミノ酸、脂肪酸、脂肪アルコール、セラミド、あるいはそれらの派生物もしくはヌクレオチド配列とすることを特徴とする請求項9記載の適用法。
【請求項11】
各Z基は同一のものあるいは異なったものであり、治療効果のある作用物質とすることを特徴とする請求項7または8記載の適用法。
【請求項12】
医薬用、皮膚医学用化合物あるいは医療用製品は患者の外部環境接触領域の損傷あるいは刺激による疼痛および/または掻痒に対する予防、軽減および/または治療を行うよう生成されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の適用法。
【請求項13】
損傷および刺激は皮膚損傷、角膜損傷、鼓膜の損傷、消化器官の損傷、気管および肺組織の損傷等の呼吸器官の損傷、尿生殖器の損傷から選択されることを特徴とする請求項12記載の適用法。
【請求項14】
医薬用、皮膚医学用化合物あるいは医療用製品は腱痛および/または軟骨痛および/または関節痛および/または背痛および/または筋肉痛、ならびに一般的な衝撃後の疼痛および/または、拡散性腹痛、重度の頭痛を含む頭痛等の拡散性の疼痛に対する予防、軽減および/または治療を行うよう生成されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の適用法。
【請求項15】
刺痛および灼熱感、刺激、掻痒および張り等の皮膚症状および不快感の防止および軽減のため、ならびに皮膚、角膜および粘膜等の組織の保護のための、症状軽減化合物および特に美容化合物を生成するための請求項1ないし11のいずれかに記載された生体適合性ポリマーの適用法。
【請求項16】
医薬用、皮膚医学用化合物あるいは医療用製品は:
・特に第2度の深い熱傷等の皮膚熱傷;
・瘢痕および瘢痕組織;
・皮膚膿瘍および/または粘膜膿瘍および/または角膜膿瘍;
・周囲および/または変性性神経症;
・熱性疱疹;
・特に指上のひび割れ肌;
・皮膚の過角化症、乾癬、湿疹または帯状ヘルペス;
・外科手術治療;
・放射線治療;
・鼓膜損傷;
・喘息および/または鼻炎および/または気管閉塞;
・アフタ症および/または喉痛および/または歯痛;
・関節症または関節炎;
−によって引き起こされる疼痛および/または掻痒と;
−粘膜および/または皮膚刺激と;
−例えば周囲および/または変性性神経症、乾癬、湿疹、帯状ヘルペス、喘息、気管支炎、鼻炎、関節症、関節炎、クローン病等の細胞外基質の永久的な破壊および/または変化を特徴とする慢性疾患;
を予防、軽減、および/または治療するために生成される、
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の適用法。
【請求項17】
医薬用、皮膚医学用化合物あるいは医療用製品は閉じた瘢痕の再生を促進するように生成されることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の適用法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−67127(P2012−67127A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286518(P2011−286518)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2006−537359(P2006−537359)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(506147504)
【出願人】(306047538)
【Fターム(参考)】