医療用器具
【課題】線状体などの補強体の浮き上がりを抑制しながら、補強層の端部を細く形成することが可能な医療用器具を提供すること。
【解決手段】アウタ管部31は、アウタ管部31の内周面全体を規定する内層41と、アウタ管部31の外周面全体を規定する外層42と、これら内層41及び外層42に挟まれるようにして設けられた中間層43と、を備えている。中間層43は、金属性の線状体がメッシュ状に編み込まれることで、編組チューブとして形成されている。中間層43の遠位端部には造影環45が設けられている。この場合に、中間層43には、遠位端部に向けて除々に細くなる先細り領域43bが形成されており、当該先細り領域43bを覆うようにして造影環45が設けられている。
【解決手段】アウタ管部31は、アウタ管部31の内周面全体を規定する内層41と、アウタ管部31の外周面全体を規定する外層42と、これら内層41及び外層42に挟まれるようにして設けられた中間層43と、を備えている。中間層43は、金属性の線状体がメッシュ状に編み込まれることで、編組チューブとして形成されている。中間層43の遠位端部には造影環45が設けられている。この場合に、中間層43には、遠位端部に向けて除々に細くなる先細り領域43bが形成されており、当該先細り領域43bを覆うようにして造影環45が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に挿入して用いられるカテーテルなどといった管状の医療用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルなどといった管状の医療用器具は、血管内を押し進めて行く際に付与される折り曲げ力に対する耐性を高くする必要がある。かかる性能要求に応えるために、例えば特許文献1に示すように、カテーテルの樹脂チューブ内に金属編組などの補強層を埋設する構成が知られている。この場合、カテーテルにおいてある程度の柔軟性を確保しながら、耐キンク性を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−319594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のように補強層を有する構成において、当該補強層の端部を中央側よりも細く形成する必要が生じる場合がある。
【0005】
例えば、上記特許文献1の構成では、補強層を内外に挟むようにして樹脂製の内層及び外層が設けられた構成において、補強層よりも遠位側の内層上に造影環を配置して外層により外側から覆うことで、当該造影環を固定する構成が開示されている。この場合、造影環と補強層との間に軸線方向の境界が存在することとなり、その境界ではチューブの強度が局所的に低くなってしまう。その対策としては、補強層を覆うようにして造影環を設ける構成が考えられる。しかしながら、内層及び補強層が存在している箇所は、補強層が存在しておらず内層のみが存在している箇所に比べてチューブの柔軟性が低下するため、造影環を配置しづらくなってしまう。これに対して、補強層の端部を中央側よりも細く形成することで当該造影環の配置作業の容易化が図られる。しかしながら、この場合、補強層の端部を細く形成する工程において、補強層を生じさせている線状体などの補強体が浮き上がってしまうことが懸念される。
【0006】
また、このような補強体の浮き上がりの問題は、上記のように造影環を配置する場合だけでなく、単に補強層の強度を端部側において低くするために、当該補強層の端部を細く形成する場合においても同様に発生する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、線状体などの補強体の浮き上がりを抑制しながら、補強層の端部を細く形成することが可能な医療用器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0009】
第1の発明の医療用器具:補強層を有するチューブ体を備え、前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに軸線方向の一端から中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、補強層の端部側領域は、一端に向けて除々に細くなるように形成されているため、補強層の強度が大きく変化する箇所を生じさせないようにしながら細い領域を形成することができる。よって、補強体の浮き上がりを抑制しながら補強層の端部を細く形成することが可能となる。
【0011】
第2の発明の医療用器具:補強層を有するチューブ体と、前記補強層の一端側に連結される被覆体と、を備え、前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、前記被覆体は、前記補強層の少なくとも一部を外側から覆うようにして設けられているとともに、その被覆に際しては前記端部側領域の側から前記補強層上に配置されており、前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、補強層を外側から覆うようにして被覆体が設けられていることにより、補強層に対して軸線方向にずらして被覆体を設ける構成と異なり、補強層と被覆体との間に軸線方向の隙間が生じないようにすることが可能となる。この場合に、補強層は細くなるように形成された端部側領域を有していることにより、被覆体を補強体に装着する場合の作業の容易化が図られる。また、当該端部側領域は、一端に向けて除々に細くなるように形成されているため、補強層の強度が大きく変化する箇所を生じさせないようにしながら細い領域を形成することができる。よって、上記のように装着作業の容易化を図った構成において、補強体の浮き上がりの発生を抑制することが可能となる。
【0013】
なお、補強層を形成する補強体としては、線状、帯状及び棒状などが挙げられる。
【0014】
第3の発明の医療用器具:第2の発明の医療用器具において、前記被覆体は、前記端部側領域の全体を覆うようにして設けられていることを特徴とする。これにより、補強体が浮き上がろうとしても、それを被覆体により抑えることが可能となる。また、上記第2の発明に係る構成を備え、補強体が浮き上がりづらくなっているため、補強体から被覆体に大きな負荷が加えられることを抑制できる。
【0015】
第4の発明の医療用器具:第2又は第3の発明の医療用器具において、前記補強層は、前記端部側領域に対して軸線方向の中央側にて連続し、外周面が軸線と平行となるように形成された平行領域を備え、前記被覆体は、前記端部側領域の側から前記平行領域の側に延在するようにして設けられていることを特徴とする。これにより、補強層の端部側領域を外側から覆うようにして被覆体が設けられた構成において、当該被覆体を補強層に密着させ易くなる。よって、補強層における被覆体の支持を安定した状態で行うことが可能となる。
【0016】
第5の発明の医療用器具:第4の発明の医療用器具において、前記被覆体と前記補強体との溶接箇所は、前記補強層において前記被覆体により覆われている領域であって前記平行領域に対して形成されていることを特徴とする。これにより、被覆体と補強体との接触面積が広い箇所にて溶接が行われるため、溶接強度の向上が図られる。また、補強体において太い箇所に被覆体を溶接することができるため、被覆体に負荷が加えられたとしても、補強体が切断されてしまうことが抑制される。
【0017】
第6の発明の医療用器具:第2乃至第5のいずれか1の発明の医療用器具において、前記被覆体は、前記端部側領域に追従するように形状付けられていることを特徴とする。これにより、被覆体と補強体との接触面積を広く確保することが可能となり、補強層における被覆体の支持を安定した状態で行うことが可能となる。
【0018】
第7の発明の医療用器具:第6の発明の医療用器具において、前記チューブ体は、前記補強層よりも外周面側に樹脂層を備えており、当該樹脂層は前記端部側領域の外側部分では前記被覆体において前記端部側領域を被覆している箇所の形状に合わせて肉厚が変化していることにより、当該箇所に対応した前記チューブ体の外周面が軸線と平行となっていることを特徴とする。これにより、チューブ体の外周面に凹凸を生じさせないようにしながら、上記のような優れた効果を奏することが可能となる。
【0019】
第8の発明の医療用器具:第2乃至第7のいずれか1の発明の医療用器具において、前記被覆体は、X線不透過性の材料により形成された造影環であることを特徴とする。これにより、補強層を外側から覆うようにして造影環が設けられる構成において、既に説明したような優れた作用効果を奏することが可能となる。
【0020】
第9の発明の医療用器具:第8の発明の医療用器具において、前記補強層が前記チューブ体の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って存在していないことにより、前記チューブ体の遠位端部には柔軟領域が形成されており、前記造影環は、前記補強層の遠位端部を外側から覆うようにして設けられていることを特徴とする。これにより、チューブ体の遠位端部の柔軟性を好適に高めながら、既に説明したような優れた作用効果を奏することが可能となる。
【0021】
なお、「剛性」とは、カテーテルなどを軸線方向に対して直交する方向に曲げようとするときに作用するモーメントの大きさのことをいう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は使用状態におけるカテーテル組立体を説明するための図であり、(b)はアウタカテーテルの正面図であり、(c)はインナカテーテルの正面図である。
【図2】(a)はアウタ管部及びその周辺を拡大して示すアウタカテーテルの正面図であり、(b)はアウタ管部の遠位端側を拡大して示す縦断面図である。
【図3】(a)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(b)は図3(a)において造影環及びその周辺を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(c)は比較例を説明するためのアウタ管部の縦断面図である。
【図4】(a)は遠位端側において外層を除いた状態で示すアウタ管部の正面図であり、(b)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(c)は図4(b)において造影環及びその周辺を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(d)は造影環が設けられた箇所におけるアウタ管部の横断面図である。
【図5】(a)〜(j)はアウタ管部の製造方法を説明するための模式図である。
【図6】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図7】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図8】変形例のアウタ管部であって、遠位端側において外層を除いた状態で示すアウタ管部の正面図である。
【図9】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図10】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図11】変形例のアウタ管部であって、遠位端側において外層及び造影環を除いた状態で示すアウタ管部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、カテーテル組立体に本発明を適用した場合の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は使用状態におけるカテーテル組立体10を説明するための図であり、図1(b)はアウタカテーテル11の正面図であり、図1(c)はインナカテーテル12の正面図である。
【0024】
図1(a)〜図1(c)に示すように、カテーテル組立体10は、アウタカテーテル11と、インナカテーテル12と、を備えている。アウタカテーテル11は、冠動脈の末梢狭窄病変部に図示しないバルーンカテーテルなどを導入するために利用されるデリバリ用のカテーテルである。インナカテーテル12は、アウタカテーテル11を生体内の病変部に挿入する際にアウタカテーテル11内に挿通されて使用され、アウタカテーテル11に対して先行することで当該挿入を補助する挿入補助具である。
【0025】
インナカテーテル12は、図1(c)に示すように、遠位端(先端)から近位端側(基端側)の途中位置までであってインナカテーテル12の遠位端側を構成するインナ管部21と、当該インナ管部21よりも近位端側を構成するインナシャフト部22と、を備えている。インナ管部21は、遠位端部及び近位端部の両方にて開放されるようにして軸線方向の全体に亘って形成されたインナ管孔23を有しており、全体として管状をなしている。インナ管孔23は、ガイドワイヤを挿通させるために利用されるものである。
【0026】
インナ管部21は、ポリエーテルブロックアミド共重合体(PEBAX(登録商標))により形成されており、インナシャフト部22は、ステンレスにより形成されている。但し、これに限定されることはなく、インナ管部21をポリアミド、ポリイミド、ポリイミドエラストマなどといった他の合成樹脂を用いて形成してもよく、インナシャフト部22を、Ni−Ti合金などの他の金属により形成してもよい。また、インナ管部21の遠位端部には、それよりも近位側に比べて柔軟なソフトチップ24が設けられている。
【0027】
インナ管部21のインナ開口25は、インナカテーテル12における軸線方向の途中位置に存在している。つまり、ガイドワイヤを近位端側において外部に引き出すためのインナポートは、インナカテーテル12の軸線方向の途中位置に形成されている。
【0028】
アウタカテーテル11は、図1(b)に示すように、遠位端から近位端側の途中位置までであってアウタカテーテル11の遠位端側を構成するアウタ管部31と、当該アウタ管部31よりも近位端側を構成するアウタシャフト部32と、を備えている。アウタ管部31は、遠位端部及び近位端部の両方にて開放されるようにして軸線方向の全体に亘って形成されたアウタ管孔33を有しており、全体として管状をなしている。このアウタ管孔33はインナカテーテル12及びガイドワイヤを挿通させるために利用されるとともに、インナカテーテル12が取り外された状態においては病変部に対して使用するためのバルーンカテーテルなどのカテーテルが挿通される。なお、アウタ管部31が、本実施形態におけるチューブ体に相当する。
【0029】
アウタ管部31のアウタ開口34は、アウタカテーテル11における軸線方向の途中位置に存在している。ここで、カテーテル組立体10を生体内に挿入する場合に利用されるガイドワイヤは、インナ開口25よりも近位端側においてアウタ管孔33内を通る。そして、アウタ管孔33に通されたガイドワイヤGは、アウタ管部31のアウタ開口34から外部に引き出される。
【0030】
これらアウタカテーテル11及びインナカテーテル12は、図1(a)に示すように、使用に際して組み合わされてカテーテル組立体10を形成する。このカテーテル組立体10の初期状態では、インナカテーテル12のソフトチップ24がアウタ管部31よりも遠位端側に突出している。また、初期状態においては、アウタ開口34はインナ開口25よりも近位端側に配置されている。このアウタ開口34の位置は、カテーテル組立体10の軸線方向の途中位置であり、より詳細にはカテーテル組立体10の全長の中間位置よりも遠位端側である。
【0031】
初期状態におけるインナ開口25とアウタ開口34との相対位置が上記の位置となる構成においては、近位端側から見てガイドワイヤGが通過する領域は、ガイディングカテーテルCに形成されたガイディング管孔C1→アウタ管孔33→インナ管孔23となる。つまり、近位端側からガイドワイヤGを挿入した場合には通過する領域の横断面積が除々に小さくなる。これにより、遠位端側へのガイドワイヤGの導入を行い易くなる。
【0032】
カテーテル組立体10を使用して治療を行う際には、先ず、下行大動脈、大動脈弓及び上行大動脈を経てガイディングカテーテルCの遠位端部を左冠動脈の入口に配置し、その状態から遠位端側にカテーテル組立体10を突出させて左冠動脈への挿入作業を行う。この場合に、アウタカテーテル11からソフトチップ24が突出していることにより、通過性を高めることができる。さらに、閉塞箇所が存在している場合にはソフトチップ24側から除々に閉塞箇所を押し広げることが可能となる。
【0033】
次に、アウタカテーテル11の構成について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
図2(a)はアウタ管部31及びその周辺を拡大して示すアウタカテーテル11の正面図であり、図2(b)はアウタ管部31の遠位端側を拡大して示す縦断面図である。
【0035】
図2(b)に示すように、アウタ管部31は、アウタ管部31の内周面全体を規定する内層41と、アウタ管部31の外周面全体を規定する外層42と、これら内層41及び外層42に挟まれるようにして設けられた中間層43と、を備えている。
【0036】
内層41は、中間層43及び外層42を形成する際のベースとなる層である。内層41は、合成樹脂を用いて形成されている。当該合成樹脂としては、後述する外層42の材料として列挙するものを用いることが可能であるが、具体的には、低摩擦材料を用いて形成されている。このように内層41を低摩擦材料により形成することで、アウタ管孔33内においてインナカテーテル12や他のカテーテルを摺動させる際の抵抗が低減される。
【0037】
内層41を形成する材料として、具体的にはポリテトラフルオロエチレンが用いられている。但し、内層41を形成する材料は、外層42を形成する材料に比べてインナカテーテル12や他のカテーテルとの摺動抵抗を低減させることが可能であれば任意であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレンとは別のフッ素含有樹脂を用いてもよい。当該フッ素含有樹脂としては、例えばポリフッ化ビニリデン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。また、フッ素含有樹脂以外であってもよく、例えば、ポリアミド、ポリイミド、高密度ポリエチレン等を用いてもよい。また、以上列挙した材料等を複数種組合せて使用してもよい。
【0038】
内層41の厚み寸法は任意であるが、外層42の厚み寸法よりも小さいことが好ましい。具体的には、0.01mm〜0.05mmが好ましい。これにより、摺動抵抗の低減化を良好に実現しながら、アウタ管部31の細径化を図ることが可能となる。また、内層41の厚み寸法は、軸線方向の全体に亘って一定となっているが、軸線方向の途中位置で変化していてもよい。
【0039】
中間層43はアウタ管部31を補強する役割を有している。当該中間層43を形成する材料として、具体的にはステンレス鋼が用いられている。但し、中間層43を形成する材料は、上記補強効果が得られるのであれば任意であり、例えば、Ni−Ti合金、Ni−Ti−Co合金等の超弾性合金を用いてもよく、銅、ニッケル、チタン等の他の金属を用いてもよい。また、中間層16は金属に限定されることはなく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン等のポリオレフィンを用いてもよく、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、フッ素含有樹脂、ポリエーテルケトン等の他の合成樹脂を用いてもよい。また、カーボンファイバやグラスファイバを用いてもよい。また、以上列挙した材料等を複数種類組合せて使用してもよい。
【0040】
中間層43は、上記のような材料により形成された線状体43aを用いて形成されている。具体的には、当該線状体43aがメッシュ状に編み込まれることで、編組チューブとして形成されている。このように、中間層43を線状体43aにより形成することで、アウタカテーテル11の補強を行いながら、曲げに対する柔軟性が高められる。ちなみに、中間層43では、一の線状体43aの一部を構成する線状要素が軸線方向及び軸周りに所定の間隔を置いて隣接した状態となっている。
【0041】
中間層43を形成する線状体43aは、その断面形状が矩形状となるように形成されているが、これに限定されることはなく、円形状や楕円形状であってもよい。また、中間層43を形成する線状体43aは、当該中間層43の厚み寸法が内層41と同程度となるように形成されている。当該厚み寸法は任意であるが、外層42の厚み寸法よりも小さいことが好ましい。具体的には、0.01mm〜0.05mmが好ましい。
【0042】
また、軸線方向に隣り合う線状体43a間のピッチは、一定であることが好ましい。当該ピッチの寸法は任意であるが、上記のようにアウタカテーテル11の補強を行いながら、曲げに対する柔軟性を高める上では、0.1mm〜0.5mmが好ましい。なお、上記ピッチは一定であることに限定されることはなく、例えば遠位側の方が広いピッチとなるようにしてもよく、遠位側の方が狭いピッチとなるようにしてもよい。また、ピッチが軸線方向に沿って連続的に変化するようにしてもよい。
【0043】
外層42は、内層41及び中間層43を外側から覆うように設けられている。この場合、外層42は、軸線方向や軸周りに隣接する複数の線状要素間に入り込んでおり、その入り込んだ部分では、外層42と内層41とが接触し熱溶着されている。なお、外層42を形成する材料の種類及び内層41を形成する材料の種類によっては、外層42と内層41とが接触して密着するものの、両者が熱溶着されない構成であってもよい。
【0044】
外層42は、合成樹脂を用いて形成されている。当該合成樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマ、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスチレンエラストマ、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ素系エラストマ、シリコンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。また、これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組合せた混合物を用いてもよい。本アウタ管部31では、外層42として、ポリアミドエラストマを用いている。
【0045】
外層42の厚み寸法は任意であるが、内層41や中間層43の厚み寸法よりも大きいことが好ましい。具体的には、0.1mm〜1.0mmが好ましい。これにより、血管等といった生体内の組織への負荷を低減させることが可能となる。また、外層42の厚み寸法は、アウタ管部31の近位端部にアウタシャフト部32を連結するための金属管が埋設されていることとの関係で当該近位端部側が薄く、それよりも遠位側は当該近位端部側よりも大きい所定の寸法で一定となっているが、軸線方向の全体に亘って一定としてもよい。
【0046】
上記のようにアウタ管部31が、内層41、中間層43及び外層42を有する複数層構造、具体的には3層構造をなす構成において、外層42は軸線方向の全体に亘って延在しているのに対して、内層41及び中間層43は、アウタ管部31の近位端部から軸線方向の途中位置に亘って延在している。詳細には、内層41及び中間層43は、アウタ管部31の遠位端部から軸線方向の所定範囲に亘って存在していない。したがって、アウタ管部31の遠位端部には、外層42のみからなる先端柔軟領域44が存在している。このように先端柔軟領域44が形成されていることにより、アウタ管部31の遠位端部の柔軟性が高められ、血管等といった生体内の組織への負荷を低減させることが可能となる。アウタ管部31の遠位端部の柔軟性を高めながら、中間層43によるアウタ管部31の補強を好適に行うためには、先端柔軟領域44の軸線方向の寸法は、0.3mm〜2.0mmが好ましく、0.5mm〜1.0mmがより好ましい。
【0047】
なお、外層42は遠位端側の方が近位端側よりも硬度が低い材料により形成されていてもよい。例えば、後述するアウタ管部31の製造方法において、カバーチューブ52(図5(h)参照)を、3層チューブ51の外層よりも硬度が低い材料により形成することで、外層42の遠位端側を近位側よりも柔軟に形成することが可能となる。
【0048】
アウタ管部31には、図2(b)に示すように、X線投影下においてアウタ管部31の遠位端側の位置を把握可能とするために環状の造影環45が設けられている。造影環45を形成する材料としては、プラチナ、金、白金、イリジウム、コバルトクロム合金、チタンなどのX線不透過性の材料が挙げられる。本アウタ管部31では、プラチナが用いられている。
【0049】
当該造影環45の設置に関する構成を、図3及び図4を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0050】
図3(a)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図3(b)は図3(a)において造影環45及びその周辺を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図3(c)は比較例を説明するためのアウタ管部81の縦断面図である。なお、図3(a)〜(c)では、説明の便宜上、中間層43を編組チューブとしてではなく内外に貫通する孔部を有しないチューブ状として示す。また、図4(a)は遠位端側において外層42を除いた状態で示すアウタ管部31の正面図であり、図4(b)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図4(c)は図4(b)において造影環45及びその周辺を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図4(d)は造影環45が設けられた箇所におけるアウタ管部31の横断面図である。なお、図4(b)及び図4(c)では、2本の線状体43aが重なっている状態を示す。
【0051】
図3(a)及び図4(b)に示すように、造影環45は、先端柔軟領域44に設けられているのではなく、中間層43の遠位端部を外側から覆うようにして設けられている。詳細には、造影環45は、アウタ管部31と同一軸線上に存在するように設けられており、当該造影環45の遠位端部は中間層43の遠位端部に位置している。この場合、造影環45は、中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って延在していることとなる。また、図4(b)に示すように、造影環45は、その軸線方向の長さ寸法が、中間層43において軸線方向に並ぶ複数の線状要素を跨ぐように設定されている。
【0052】
造影環45は、その内周面が中間層43の外周面に接するようにして設けられている。ここで、造影環45の装着に際しては、外層42により覆われていない内層41及び中間層43に対してその遠位端部から造影環45を被せ、外周面側から外力を付与して加締めることで当該造影環45の装着が行われる。この場合、当該加締めによる固定を好適に行うためには、造影環45の内径を中間層43の外径に予め近付けておくことが好ましく、その反面、このような内径の設定を行うと中間層43に対する造影環45の摺動抵抗が大きくなり、造影環45の配置作業が困難なものとなる。
【0053】
これに対して、本アウタ管部31では、中間層43において造影環45が配置される領域は先細りするように形成されている。当該先細り領域43bについて詳細には、図3(a)に示すように、先細り領域43bは、内径を一定としながら、外径を遠位端部に向けて除々に小さくすることで形成されている。また、当該先細り領域43bは、軸線方向の各位置における軸周りの肉厚を一定としながら、その肉厚を遠位端部に向けて除々に小さくすることで形成されている。
【0054】
先細り領域43bのテーパ面が軸線に対して傾斜する角度A(図3(b)参照)は、先細り領域43bを軸線方向にある程度延在させる観点から30°以下が好ましく、20°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。一方、造影環45の装着作業の容易化を鑑みると、上記角度Aは、1°以上が好ましく、2°以上がより好ましく、3°以上が特に好ましい。
【0055】
先細り領域43bは、その軸線方向の長さ寸法が造影環45の軸線方向の長さ寸法よりも短くなっている。その一方、上記のとおり造影環45の遠位端部は中間層43の遠位端部に存在している。したがって、造影環45には、先細り領域43bの全体を外側から覆う領域45aと、中間層43において先細り領域43bに対して近位側にて連続し且つ外径及び内径が一定の状態で軸線方向に対して平行に延びる平行領域43cを外側から覆う領域45bと、を備えている。
【0056】
先細り領域43bが中間層43に形成されていることにより、造影環45の装着に際しては、造影環45を近位側に押し込むことに伴って当該造影環45と中間層43との接触面積が除々に広くなるようにすることが可能となり、当該装着作業の容易化が図られる。また、造影環45には、先細り領域43bを外側から覆う領域45aだけでなく、平行領域43cを外側から覆う領域45bも存在しているため、加締めに際しての造影環45の変形量を抑えた状態での当該造影環45の固定を可能とする領域が存在することとなる。これにより、上記のように装着作業の容易化を図った構成において、加締め後の造影環45の変形量が抑えられた領域が存在することとなり、造影環45を中間層43に安定した状態で支持させることが可能となる。
【0057】
ここで、中間層43の遠位端側を先細りさせる上では、上記のように遠位端部から軸線方向の途中位置に亘って延在し且つ遠位端部に向けて連続的に外径が小さくなるテーパ状に形成する構成以外にも、図3(c)に示すような比較例の構成が考えられる。詳細には、比較例のアウタ管部81に設けられた中間層82は、その軸線方向の途中位置に段差部83を有しており、当該段差部83よりも遠位側は近位側よりも細くなっているとともに、当該遠位側の領域の外径は一定となっている。そして、この遠位側の領域を外側から覆うようにして造影環84が設けられている。但し、造影環84は、当該遠位側の領域の全体を覆っているのではなく、造影環84と段差部83とは軸線方向に離間されている。
【0058】
編組チューブとして形成された中間層82は、線状体82aを巻くことにより形成されているため、当該線状体82aは外側に広がろうとする力を有している。これに対して、研磨具に中間層82を接触させて物理的に研磨することで上記細径化を行う場合、当該中間層82に熱が加えられることで線状体82aの外側に広がろうとする力は大きくなる。段差部83を利用して中間層82が細径化されている構成においては、中間層82の強度が段差部83を挟んで大きく変化することとなり、強度の弱い側である遠位側の領域が、図3(c)に示すように、外側へと浮き上がってしまうことが懸念される。また、段差部83よりも近位側の方が外側に広がろうとする力が大きいため、段差部83に対して近位側及び遠位側のそれぞれにて連続する領域を含めて、外側へと浮き上がってしまうことが懸念される。この浮き上がりは、研磨に際して線状体82aの一部が切断された場合にも生じ得る。また、後述するアウタ管部31の製造方法において、カバーチューブ52を溶着すべく加熱した際に(図5(i)参照)、線状体82aが外側に広がろうとして生じ得る。このような浮き上がりが外層85の形成前や外層85の形成工程中に発生すると、線状体82aの一部が外層85の表面から露出してしまう。
【0059】
これに対して、本アウタ管部31では、先細り領域43bは遠位端部から近位側に向けた軸線方向の所定範囲に亘って形成されているとともに、遠位端部に向けて除々に外径が小さくなるように形成されている。したがって、上記のように強度の大きな変化が生じにくいため、浮き上がりが生じにくくなる。また、このように先細りさせる場合には、線状体43aが切断されるとしても遠位端側で発生することとなり、この点からも上記浮き上がりが生じにくくなる。
【0060】
さらにまた、先細り領域43bは造影環45によりその全体が覆われているため、線状体43aが浮き上がろうとしてもそれが造影環45により抑えられることが期待される。特に、当該造影環45は、環状をなすとともに、先細り領域43bと平行領域43cとの境界を跨ぐようにして設けられているため、先細り領域43bにおいて線状体43aが浮き上がるための隙間が生じにくくなっている。
【0061】
次に、中間層43に対する造影環45の加締めについての構成を説明する。
【0062】
既に説明したとおり、造影環45は、中間層43の遠位端部を覆うようにして設けられているとともに、当該中間層43の外周面に接するようにして設けられている。この場合に、図4(a)及び図4(b)に示すように、造影環45は、軸線方向や軸周りに並ぶ複数の線状要素間に造影環45の壁部が入り込むように設けられている。そして、この入り込み量は、造影環45の内周面側だけでなく、外周面側にも線状体43aに応じた凹凸が生じるように設定されている。したがって、図4(a)に示すように、造影環45は、中間層43の線状体43aに密着しており、造影環45の外周面には線状体43aの輪郭に沿った凹凸形状45cが生じている。なお、当該凹凸形状45cは、造影環45の外周面において凹凸の存在を目視可能なように形成されている。
【0063】
編組チューブとして形成された中間層43に対して、上記のように凹凸形状45cが生じるように造影環45が加締められていることにより、造影環45の壁部は複数の方向から線状体43aと対向している。具体的には、図4(c)及び図4(d)に示すように、造影環45は、線状体43aに対して近位側から対向する面と、線状体43aに対して遠位側から対向する面と、線状体43aに対して軸周りの所定方向から対向する面と、当該所定方向とは逆方向から対向する面と、を有している。これにより、アウタカテーテル11の使用に際して外層42を通じて造影環45に外力が加わったとしても、当該造影環45の変位が線状体43aにより規制されることとなる。
【0064】
造影環45に凹凸形状45cが生じている構成において、外周面側から見た凹部は、先細り領域43bを覆う箇所では内層41の外周面に接しているが、これに限定されることはなく、平行領域43cを覆う箇所においても内層41の外周面に接している構成としてもよい。また、上記凹部が、内層41の外周面に接していない構成としてもよく、内層41の外周面との間に内層41とは異なる材料、例えば外層42の形成材料が入り込んでいる構成としてもよい。
【0065】
造影環45は、既に説明したとおり、中間層43における先細り領域43bの全体を覆うとともに当該先細り領域43b側から平行領域43c側に入り込んでいるが、造影環45が線状体43aに密着するように設けられていることで、造影環45はこれら先細り領域43b及び平行領域43cに追従した形状となっている。つまり、造影環45は、図4(b)に示すように、先細り領域43bに追従することで、外周面が遠位端部に向けて断続的なテーパ状となる傾向を示す先細り追従領域45aと、平行領域43cに追従することで、外周面が軸線に対して平行となる傾向を示す平行追従領域45bと、を有している。これにより、中間層43の先細り領域43b及び平行領域43cの両方に対して造影環45を密着させることが可能となり、線状体43aを利用した造影環45の変位規制効果が高められる。
【0066】
次に、造影環45のレーザ溶接についての構成を説明する。
【0067】
造影環45は、図4(c)及び図4(d)に示すように、中間層43の線状体43aに溶接されている。この溶接は、レーザ照射を行うことにより行われている。かかる溶接箇所46は、図4(a)に示すように、所定の線状体43aにおける幅方向の全体を含むのではなく、幅方向の一部と、造影環45とを溶接するように形成されている。これにより、溶接箇所46にて線状体43aが切断されてしまわないようにすることができる。
【0068】
溶接箇所46についてより詳細には、当該溶接箇所46は、所定の線状体43aと他の線状体43aとが交差する箇所に形成されている。この場合、所定の線状体43aにおける幅方向の一部と、他の線状体43aにおける幅方向の一部とを、造影環45に溶接させるように、溶接箇所46が形成されている。これにより、溶接に際して線状体43aを切断しないようにした構成において、造影環45と線状体43aとの接触面積を広く確保することが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0069】
なお、溶接箇所46では造影環45に貫通孔が生じているが、線状体43aの切断を生じさせないようにしながら溶接強度を高める上では、当該貫通孔の幅寸法は0.1mm〜1.0mmが好ましく、0.3mm〜0.6mmがより好ましい。
【0070】
ここで、既に説明したとおり造影環45は、その壁部が複数の線状要素間に入り込むように加締められていることにより、造影環45の外周面には線状体43aの配列に対応した凹凸形状45cが生じている。したがって、造影環45により中間層43が覆われた状態であっても、線状体43aの位置を目視により把握することが可能となる。よって、上記のような位置に溶接箇所46を生じさせるためのレーザ照射作業の容易化が図られる。さらにまた、線状体43aに対して造影環45が密着された位置にて溶接が行われるため、溶接強度の向上が図られる。
【0071】
溶接箇所46は、図4(a)に示すように、造影環45における先細り追従領域45a及び平行追従領域45bのうち、平行追従領域45bに形成されている。平行追従領域45bは、先細り追従領域45aに比べて造影環45の加締めに際しての変形量が少ないため、線状体43aに対する密着度合いは先細り追従領域45aよりも高くすることができる。そうすると、造影環45の凹凸形状45cから把握した線状体43aの位置の正確性が高められるため、線状体43aを切断しないようにしながらのレーザ溶接、及び複数の線状体43aの交差部分でのレーザ溶接を行い易くなる。また、密着度合いが高いことに起因して、溶接強度のさらなる向上が図られる。また、仮に、先細り追従領域45aに溶接箇所46が存在する場合、造影環45は中間層43の先細り領域43bに溶接されることとなる。この場合、先細り領域43bの線状体43aは細くなっているため、造影環45に負荷が加わった際に線状体43aが破断してしまう可能性がある。これに対して、上記のように平行追従領域45bに溶接箇所46が存在しているため、細くなっていない線状体43aに造影環45が溶接されることとなるため、このような不都合の発生を抑制することが可能となる。
【0072】
溶接箇所46は、複数形成されている。具体的には、溶接箇所46は、図4(d)に示すように、軸線方向の所定位置において軸周りに複数形成されている。より詳細には、溶接箇所46は、等間隔となるようにして、軸周りに3箇所形成されている。仮に、溶接箇所46が等間隔となるようにして軸周りに2箇所形成されている構成を想定すると、それら溶接箇所46を結ぶ仮想線を中心に造影環45の位置ズレが生じてしまうことが懸念される。これに対して、溶接箇所46を3箇所以上形成することで、そのような造影環45の位置ズレが生じづらくなる。但し、これに限定されることはなく、溶接箇所46は1箇所又は2箇所であってもよい。
【0073】
溶接箇所46では、図4(c)に示すように、少なくとも造影環45に貫通孔46aが生じている。また、この貫通孔46aは、線状体43aを貫通しているとともに、さらに内層41も貫通している。このように内層41を貫通するようにレーザ照射を行うことで、レーザ照射装置の照射強度がある程度変動する場合であっても、造影環45と線状体43aとの溶接を確実に行うことが可能となる。
【0074】
このように内層41も貫通するようにしてレーザ照射が行われている構成において、貫通孔46aは、図4(c)及び図4(d)に示すように、外層42を形成する材料が充填されて埋められている。外層42の当該充填箇所によって、中間層43及び造影環45のそれぞれについて軸線方向の変位規制が行われ、中間層43及び造影環45の接合強度を高めることができ、さらにはこれら中間層43及び造影環45と外層42との間の接合強度を高めることができる。
【0075】
この場合に、上記材料の充填領域46bは、その周囲に対して同一曲面を生じさせるように、換言すれば、アウタ管部31の内周面に、内側に向けた凸部及び外側に向けた凹部の両方が生じないように、充填領域46bが形成されている。これにより、外層42を形成する材料を利用して貫通孔46aが塞がれているだけでなく、アウタ管孔33内に挿入されるインナカテーテル12や他のカテーテルの通過性を低減させないようにすることが可能となる。
【0076】
外層42による被覆についてさらに説明すると、既に説明したとおり、造影環45はその外周面に凹凸形状45cが生じているとともに、先細り追従領域45a及び平行追従領域45bも有している。これに対して、外層42は、これら凹凸の影響がアウタ管部31の外周面に生じないように、外層42の肉厚の変化によってこれら凹凸を吸収している。したがって、造影環45が設けられた位置においてアウタ管部31の外周面に凹凸が生じておらず且つ当該外周面は軸線に対して平行となっている。これにより、アウタ管部31の生体内における通過性を低下させないようにしながら、既に説明したような優れた効果を奏することが可能となる。
【0077】
次に、アウタ管部31の製造方法について、図5を参照しながら説明する。図5(a)〜(j)はアウタ管部31の製造方法を説明するための模式図である。
【0078】
図5(a)に示すように、まず、準備工程を行うことにより、内層41、中間層43及び外層42を有する3層チューブ51を形成する。当該3層チューブ51は、近位端部を除いて外径が一定となっているとともに、軸線方向の全体に亘って内径が一定となっている。なお、当該3層チューブ51には、アウタシャフト部32が既に固定されている。
【0079】
その後、図5(b)に示すように、当該3層チューブ51における一端から所定範囲に亘って外層42を除去するとともに、露出した内層41及び中間層43を外層42の端部から所定長(例えば5mm)となるように切断する露出工程を行う。この場合、外層42が剥がされた領域においては、中間層43の外周面が露出しているが、線状体43aにより形成される複数の線状要素間には外層42の形成材料が入り込んでいる。
【0080】
その後、図5(c)に示すように、中間層43における遠位端部から近位側に向けた所定範囲に先細り領域43bを形成するために研磨工程を行う。研磨工程では、3層チューブ51の軸線方向が研磨具D1の研磨面に対して傾斜した状態となるようにして、当該3層チューブ51の遠位端側を研磨面に当てることにより、物理的な研磨を行う。この際の傾斜角度は、例えば5°となっている。また、研磨具D1を回転させるとともに、3層チューブ51も回転させる。これにより、図5(d)に示すように、中間層43に先細り領域43bが形成される。また、当該先細り領域43bは軸線を基準に対称形状となっており、当該先細り領域43bでは複数の線状要素間に入り込んでいた外層42の形成材料も除去される。なお、上記研磨は、内層41が研磨されない範囲で行われるが、内層41の一部が研磨されてもよい。
【0081】
その後、図5(e)に示すように、中間層43における先細り領域43bの全体及び平行領域43cの遠位端部を外側から覆うようにして、造影環45を配置する配置工程を行う。この場合、造影環45は、3層チューブ51において中間層43が露出された側の端部から装着されることとなるが、上記のとおり先細り領域43bが形成されていることにより、その装着作業の容易化が図られる。また、造影環45の一端側は平行領域43cに対して外側から重なるとともに、造影環45の内径は平行領域43cの外径と近い寸法に設定されているため、中間層43上における造影環45の仮止めを安定した状態で行うことができる。
【0082】
その後、図5(f)に示すように、加締め用装置D2を利用して造影環45に外周面側から外力を加える加締め工程を行う。この際、中間層43の線状体43aにより形成される複数の線状要素間に造影環45の壁部が入り込むように加締めを行う。また、このような加締めを好適に行うには、造影環45の形状が中間層43の形状に沿ったものとなるように、加締め用装置D2と造影環45との間に樹脂シートなどによる緩衝材を介在させるとよい。また、内径が変化しないように、内径固定用のマンドレルD3を3層チューブ51の内側に挿通させた状態で加締めを行う。当該加締め工程を行うことにより、図5(g)に示すように、造影環45に凹凸形状45cが形成されるとともに、造影環45は中間層43の先細り領域43b及び平行領域43cに追従した形状となる。但し、3層チューブ51の内径は軸線方向の全体に亘って同一となっている。
【0083】
その後、図5(g)に示すように、レーザ照射装置D4を利用して造影環45を中間層43に溶接するための溶接工程を行う。この際、造影環45の凹凸形状45cを確認することにより、複数の線状体43aにおける交差部分の一部を含むようにレーザ照射を行う。また、溶接強度に対するレーザ照射強度の変化の影響を低減させるべく、造影環45及び線状体43aだけでなく、内層41も貫通するようにレーザ照射を行う。また、レーザ照射は、造影環45の平行追従領域45bに対して3箇所行う。これにより、造影環45が中間層43に溶接された状態となる。
【0084】
その後、図5(h)に示すように、外層42の形成材料により形成されたカバーチューブ52を、露出された状態の造影環45、中間層43及び内層41に被せる被覆工程を行う。そして、図5(i)に示すように、当該カバーチューブ52を、3層チューブ51において既に存在している外層42及び内層41に熱溶着させる熱溶着工程を行う。この際、内径固定用のマンドレルD5を3層チューブ51の内側に挿通させた状態で、溶着装置D6を利用して、3層チューブ51においてカバーチューブ52と連続している箇所及び当該カバーチューブ52を、外力を加えながら加熱する。これにより、図5(j)に示すように、アウタ管部31の製造が完了する。なお、カバーチューブ52の熱溶着に際しては、当該カバーチューブ52の外周面に熱収縮チューブを被せて当該熱収縮チューブの外周面を加熱することによりカバーチューブ52の熱溶着を行うようにしてもよい。
【0085】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0086】
線状体43aを利用して形成された中間層43を外側から覆うようにして造影環45が設けられていることにより、中間層43に対して軸線方向にずらして造影環45を設ける構成とは異なり、中間層43と造影環45との間に軸線方向の隙間が生じないようにすることが可能となる。また、中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲は、当該遠位端部に向けて先細りするように先細り領域43bとされている。これにより、造影環45を中間層43の外側に配置する場合の作業性の向上が図られる。この場合に、当該先細り領域43bは、肉厚方向に延在する段差部によって形成されているのではなく、遠位端部に向けて除々に細くなるテーパ形状として形成されている。これにより、強度が大きく変化する境界が生じないようにしながら先細り領域43bを形成することができるため、線状体43aの浮き上がりの発生を抑制することが可能となる。
【0087】
先細り領域43bはその全体が造影環45により外側から覆われている。これにより、線状体43aが浮き上がろうとすることを造影環45により外側から抑えることが可能となる。よって、線状体43aの浮き上がりの発生を抑制することが可能となる。
【0088】
特に、造影環45は、中間層43の先細り領域43b側から平行領域43c側へと延在させて設けられている。これにより、先細り領域43bと平行領域43cとの境界部分にて線状体43aが浮き上がろうとしても、それを造影環45により抑えることが可能となる。
【0089】
造影環45が中間層43の先細り領域43b側から平行領域43c側へ入り込むようにして設けられている構成において、加締めに際しての変形量が抑えられる平行領域43c側において造影環45と中間層43との溶接が行われている。これにより、より密着した箇所にて溶接を行うことが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0090】
造影環45は、その壁部が線状体43aにより形成される複数の線状要素間に入り込むように加締められている。これにより、造影環45の軸周りや軸線方向の変位が造影環45と線状体43aとの当接により規制されるため、中間層43に対する造影環45の固定強度が高められる。
【0091】
上記加締めは、造影環45の外周面に複数の線状体43aに対応した凹凸形状45cが生じるようにして行われている。これにより、複数の線状要素間に造影環45の壁部が大きく入り込むこととなり上記固定強度の更なる向上が図られる。さらに、造影環45の外周面側から線状体43aの位置を目視確認することが可能となるため、造影環45と線状体43aとの所望の箇所を造影環45の外周面側から溶接する場合における作業の容易化が図られる。
【0092】
上記のように凹凸形状45cが生じている箇所にて溶接を行うことで、造影環45と線状体43aとが密着している箇所にて当該溶接を行うことが可能となる。したがって、溶接強度の向上が図られる。
【0093】
造影環45と線状体43aとの溶接箇所46は、当該線状体43aの幅方向の全体を含むのではなく、幅方向の一部と造影環45とを溶接するように形成されている。これにより、溶接箇所46にて線状体43aが切断されてしまわないようにすることができる。また、当該溶接箇所46は、所定の線状体43aと他の線状体43aとが交差する箇所に形成されている。これにより、溶接に際して線状体43aを切断しないようにした構成において、造影環45と線状体43aとの接触面積を広く確保することが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0094】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施しても良い。
【0095】
(1)図6に示す変形例では、造影環45は、先細り領域43bの全体を覆うように設けられているのではなく、軸線方向において先細り領域43bの一部の領域のみを覆っている。この場合、先細り領域43bの遠位端部及び近位端部は造影環45により覆われていない状態となっているが、当該先細り領域43bは、上記実施形態と同様に、中間層43において遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って形成されているとともに、遠位端部に向けて除々に細くなるように形成されている。したがって、強度が大きく変化する境界を存在させることなく先細り領域43bが形成されているため、図3(c)に示したような変形例に比べて、線状体の浮き上がりが発生しづらくなる。
【0096】
(2)図7に示す変形例では、先細り領域61は、段差部62を基準として、それよりも遠位側が近位側に比べて細くなるように形成されているとともに、当該遠位側は外径が一定となっている。当該構成において、造影環45は、先細り領域61の全体を覆うようにして設けられているとともに、中間層43において先細り領域61側から平行領域63側へと延在させて設けられている。これにより、中間層43を形成する線状体の浮き上がりを、造影環45により抑えることが可能となる。
【0097】
(3)図8に示す変形例では、中間層43の線状体43aと造影環45との溶接箇所の位置が上記実施形態と異なっており、少なくとも第1の溶接箇所71と第2の溶接箇所72とを有している。
【0098】
第1の溶接箇所71は、所定の線状体43aと他の線状体43aとが交差する箇所の全体を含むようにして形成されている。この場合、溶接箇所71の面積が広くなり、溶接強度の向上が図られる。また、このように線状体43aが交差する箇所は、線状体43aが交差していない箇所に比べて、造影環45の表面に浮き出る部分の面積が広くなるため、レーザ照射による溶接に際しての目印となり易い。
【0099】
第2の溶接箇所72は、交差する箇所とは異なる箇所に形成されている。これにより、複数の線状体43a間の相対的な変位を規制しないようにしながら、溶接箇所72を形成することができる。また、当該第2の溶接箇所72は、所定の線状体43aにおける幅方向の一部のみを含むように形成されている。なお、第1の溶接箇所71及び第2の溶接箇所72のうちいずれか一方のみを有する構成としてもよく、第1の溶接箇所71は造影環45の平行追従領域45bではなく先細り追従領域45aに形成されている構成としてもよく、第2の溶接箇所72は造影環45の先細り追従領域45aではなく平行追従領域45bに形成されている構成としてもよい。
【0100】
(4)図9に示す変形例では、溶接箇所46は、造影環45及び線状体43aを貫通させて形成されている一方、内層41は貫通しないように形成されている。これにより、溶接箇所46が形成された箇所にて、低摩擦化層が消失してしまわないようにすることが可能となる。
【0101】
(5)図10に示す変形例では、溶接箇所46は、造影環45を貫通させて形成されている一方、線状体43a及び内層41を貫通しないように形成されている。これにより、線状体43aの強度低下を抑制しながら溶接箇所46を形成することが可能となる。
【0102】
(6)図11は、中間層43の遠位端側を研磨した後であって造影環45を取り付ける前の状態(図5(d)の状態)における変形例を示す。この場合、遠位端部に存在する線状体43aが切断されて欠損してしまっている。この場合であっても、研磨が斜めに行われているため線状体43aの浮き上がりの発生が抑制されている。また、当該研磨を斜めに行っていることにより、欠損してしまう線状体43aの量が抑えられている。すなわち、より近位側の箇所で線状体43aが切断されるという不具合が抑制されている。線状体43aの欠損は遠位側のみの狭い範囲に抑えられているため、中間層43による補強効果は好適に維持される。
【0103】
(7)造影環45を、中間層43における先細り領域43b側から平行領域43c側に延在させて設けた構成において、加締めにより形状を追従させる対象に先細り領域43bを含まずに平行領域43cにのみ追従させる構成としてもよい。この場合、造影環45の加締めに際して、当該造影環45を大きく変形させないようにすることが可能となる。また、当該構成では、造影環45を安定した状態で支持するために、外層42の形成材料が、造影環45と先細り領域43bとの間に充填されている構成が好ましい。
【0104】
(8)中間層43に先細り領域43bを形成する方法は、物理的な研磨による方法に限定されることはなく、電解研磨といったように他の方法であってもよい。この場合であっても、中間層43の細径化に伴って線状体43aの浮き上がりの発生が懸念されるため、先細り領域43bを中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って形成するとともに、当該先細り領域43bを遠位端部に向けて除々に細くなるように形成する構成、及び先細り領域43bの全体を覆うように造影環45を設ける構成のうち少なくとも一方を適用することが好ましい。
【0105】
(9)中間層43が複数の線状体43aを利用して形成された編組チューブである構成に限定されることはなく、中間層43が一の線状体を利用して形成されたコイル状である構成としてもよい。また、中間層43としては、上記のように線状体43aを利用した編組チューブやコイルに限定されることはなく、棒状体や帯状体を利用した編組チューブやコイルとしてもよい。また、線状体、棒状体及び帯状体の1種又は2種以上を、アウタ管部31の軸線方向に延在させる、当該アウタ管部31の軸周りに周回させる、及び螺旋状に設ける、のうち少なくとも1種の方法により設けることで、軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部を有する中間層43を形成してもよい。なお、かかる構成においては、中間層43において内外に貫通する孔部としては、格子状以外にも、軸線方向に延びるスリット状、軸周りに延びるスリット状及び螺旋状に延びるスリット状が含まれる。
【0106】
この場合であっても、中間層43では、所定の補強体(線状体、棒状体、帯状体)により複数の補強要素(線状要素、棒状要素、帯状要素)が軸線方向に並ぶこととなるため、当該補強要素間に壁部が入り込むように造影環45を設けることが可能である。また、中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って先細り領域43bを形成するとともに当該先細り領域43bを遠位端部に向けて除々に細く形成する構成、及び先細り領域43bの全体を覆うように造影環45を設ける構成のうち少なくとも一方を適用することで、補強体の浮き上がりを抑制しながら、造影環45の装着作業の容易化が図られる。
【0107】
(10)造影環45が中間層43の遠位端部ではなく、近位端部に設けられている構成に、既に説明したような造影環45の加締めに関する構成や、中間層43の先細りの構成を適用してもよい。
【0108】
(11)編組チューブやコイルといった補強層を有するチューブに対して金属製のチューブを連結する構成に、既に説明したような中間層43に対する造影環45の装着についての各構成を適用してもよい。
【0109】
(12)中間層43にその遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って先細り領域43bが形成されているとともに当該先細り領域43bが遠位端部に向けて除々に細くなるように形成されていることで、線状体43aの浮き上がりを抑制しながら造影環45の装着作業の容易化を図ることができる点に着目した場合、造影環45の壁部が複数の線状要素間に入り込む構成は、任意である。但し、当該構成を備えていることにより、上記実施形態にて説明したような作用効果を奏することが可能となる。
【0110】
(13)本発明を、バルーンカテーテルに適用してもよい。例えば、バルーンカテーテルにおいてガイドワイヤ用ルーメンを生じさせるカテーテル体に本発明を適用してもよく、バルーンを膨張又は収縮させる際に圧縮流体が通過する流体用ルーメンを生じさせるカテーテル体に本発明を適用してもよい。なお、当該バルーンカテーテルは、PTCA用,PTA用,IABP用等のいずれであってもよい。また、種々の吸引カテーテルや、血流遮断用のカテーテルや、血栓等による閉塞箇所に遠位端部を押し付けることにより貫通させるためのカテーテルや、ガイディングカテーテル等に本発明を適用してもよい。また、血管以外の尿管や消化管などの生体内の「管」や「体腔」を治療又は検査する場合に使用されるカテーテルに本発明を適用してもよい。
【0111】
(本明細書の開示範囲から抽出される他の発明について)
以下に、本明細書の開示範囲内において課題を解決するための手段欄に記載した発明以外に抽出可能な発明について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0112】
(A1)線状体、帯状体又は棒状体を用いて形成された補強層を有するチューブ体と、前記補強層の一端側に連結される被覆体と、を備え、前記補強層は、前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成されており、前記被覆体は、前記所定範囲の全体を覆うようにして設けられていることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、線状体の浮き上がりの発生を抑制しながら、被覆体を補強層に装着する場合の作業の容易化が図られる。
【0113】
(B1)線状体、帯状体又は棒状体を用いて形成された補強層を有するチューブ体と、前記補強層の一端側に連結される被覆体と、を備え、前記補強層は、前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成されており、前記被覆体は、前記補強層における前記所定範囲の側から軸線方向の中央側の領域に延在するようにして設けられていることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、被覆体を補強層に装着する場合の作業の容易化を図りながら、補強層における被覆体の支持を安定した状態で行うことが可能となる。
【0114】
(B2)前記被覆体と前記補強層との溶接箇所は、当該補強層において前記被覆体により覆われている領域であって前記所定範囲よりも軸線方向の中央側の領域に形成されていることを特徴とする上記(B1)に記載の医療用器具。本構成によれば、被覆体と補強層との接触面積が広い箇所にて溶接が行われるため、溶接強度の向上が図られる。
【0115】
(C1)補強層を有するとともに当該補強層よりも内周側に内層を有するチューブ体と、当該チューブ体に連結される金属製の被覆体と、を備えた医療用器具において、前記被覆体は前記補強層を外側から覆うようにして配置されているとともに、その被覆領域に前記被覆体と前記補強層との溶接箇所が形成されており、当該溶接箇所では、前記被覆体及び前記補強層から通じる孔部が前記内層を貫通していることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、レーザ照射を通じて溶接を行う場合において、レーザ照射装置の照射強度がある程度変動する場合であっても、被覆体と補強層との溶接を確実に行うことが可能となる。
【0116】
(C2)前記チューブ体は、前記補強層を外側から覆うように外層を備えており、前記孔部は、前記外層の形成材料により埋められていることを特徴とする上記(C1)に記載の医療用器具。本構成によれば、上記のように被覆体と補強層との溶接を確実に行えるようにした構成において、内層に生じた貫通孔を外層の形成工程を利用して埋めることが可能となる。
【0117】
(D1)線状体、帯状体又は棒状体を用いて形成された補強層を有するチューブ体と、当該チューブ体に連結される金属製の被覆体と、を備えた医療用器具において、前記被覆体は前記補強層を外側から覆うようにして配置されているとともに、その被覆領域に前記被覆体と前記補強層との溶接箇所が形成されており、当該溶接箇所は、当該溶接箇所を生じさせている補強要素の幅方向の一部のみを含むように形成されていることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、線状体、帯状体又は棒状体を途中位置にて切断しないようにしながら、被覆体と補強層との溶接を行うことが可能となる。
【0118】
(D2)前記溶接箇所は、前記線状体、帯状体又は棒状体により形成される複数の補強要素が交差する箇所を含むように形成されていることを特徴とする上記(D1)に記載の医療用器具。本構成によれば、被覆体と補強層との溶接面積を広く確保することが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0119】
(E1)補強層を有するチューブ体と、当該チューブ体に連結される金属製の被覆体と、を備え、前記補強層には、軸線方向の途中位置にて内外に貫通する孔部が形成されており、前記被覆体は、前記補強層を外側から覆うようにして配置されており、その被覆領域では、前記孔部に、前記被覆体の壁部が入り込んでいることを特徴とする医療用器具。これにより、被覆体の軸周りや軸線方向の変位が被覆体と線状体との当接により規制されるため、補強層に対する被覆体の固定強度が高められる。
【符号の説明】
【0120】
10…カテーテル組立体、11…アウタカテーテル、31…アウタ管部、33…アウタ管孔、41…内層、42…外層、43…中間層、43a…線状体、43b…先細り領域、43c…平行領域、44…先端柔軟領域、45…造影環、45a…先細り追従領域、45b…平行追従領域、45c…凹凸形状、46…溶接箇所。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に挿入して用いられるカテーテルなどといった管状の医療用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルなどといった管状の医療用器具は、血管内を押し進めて行く際に付与される折り曲げ力に対する耐性を高くする必要がある。かかる性能要求に応えるために、例えば特許文献1に示すように、カテーテルの樹脂チューブ内に金属編組などの補強層を埋設する構成が知られている。この場合、カテーテルにおいてある程度の柔軟性を確保しながら、耐キンク性を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−319594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のように補強層を有する構成において、当該補強層の端部を中央側よりも細く形成する必要が生じる場合がある。
【0005】
例えば、上記特許文献1の構成では、補強層を内外に挟むようにして樹脂製の内層及び外層が設けられた構成において、補強層よりも遠位側の内層上に造影環を配置して外層により外側から覆うことで、当該造影環を固定する構成が開示されている。この場合、造影環と補強層との間に軸線方向の境界が存在することとなり、その境界ではチューブの強度が局所的に低くなってしまう。その対策としては、補強層を覆うようにして造影環を設ける構成が考えられる。しかしながら、内層及び補強層が存在している箇所は、補強層が存在しておらず内層のみが存在している箇所に比べてチューブの柔軟性が低下するため、造影環を配置しづらくなってしまう。これに対して、補強層の端部を中央側よりも細く形成することで当該造影環の配置作業の容易化が図られる。しかしながら、この場合、補強層の端部を細く形成する工程において、補強層を生じさせている線状体などの補強体が浮き上がってしまうことが懸念される。
【0006】
また、このような補強体の浮き上がりの問題は、上記のように造影環を配置する場合だけでなく、単に補強層の強度を端部側において低くするために、当該補強層の端部を細く形成する場合においても同様に発生する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、線状体などの補強体の浮き上がりを抑制しながら、補強層の端部を細く形成することが可能な医療用器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0009】
第1の発明の医療用器具:補強層を有するチューブ体を備え、前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに軸線方向の一端から中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、補強層の端部側領域は、一端に向けて除々に細くなるように形成されているため、補強層の強度が大きく変化する箇所を生じさせないようにしながら細い領域を形成することができる。よって、補強体の浮き上がりを抑制しながら補強層の端部を細く形成することが可能となる。
【0011】
第2の発明の医療用器具:補強層を有するチューブ体と、前記補強層の一端側に連結される被覆体と、を備え、前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、前記被覆体は、前記補強層の少なくとも一部を外側から覆うようにして設けられているとともに、その被覆に際しては前記端部側領域の側から前記補強層上に配置されており、前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、補強層を外側から覆うようにして被覆体が設けられていることにより、補強層に対して軸線方向にずらして被覆体を設ける構成と異なり、補強層と被覆体との間に軸線方向の隙間が生じないようにすることが可能となる。この場合に、補強層は細くなるように形成された端部側領域を有していることにより、被覆体を補強体に装着する場合の作業の容易化が図られる。また、当該端部側領域は、一端に向けて除々に細くなるように形成されているため、補強層の強度が大きく変化する箇所を生じさせないようにしながら細い領域を形成することができる。よって、上記のように装着作業の容易化を図った構成において、補強体の浮き上がりの発生を抑制することが可能となる。
【0013】
なお、補強層を形成する補強体としては、線状、帯状及び棒状などが挙げられる。
【0014】
第3の発明の医療用器具:第2の発明の医療用器具において、前記被覆体は、前記端部側領域の全体を覆うようにして設けられていることを特徴とする。これにより、補強体が浮き上がろうとしても、それを被覆体により抑えることが可能となる。また、上記第2の発明に係る構成を備え、補強体が浮き上がりづらくなっているため、補強体から被覆体に大きな負荷が加えられることを抑制できる。
【0015】
第4の発明の医療用器具:第2又は第3の発明の医療用器具において、前記補強層は、前記端部側領域に対して軸線方向の中央側にて連続し、外周面が軸線と平行となるように形成された平行領域を備え、前記被覆体は、前記端部側領域の側から前記平行領域の側に延在するようにして設けられていることを特徴とする。これにより、補強層の端部側領域を外側から覆うようにして被覆体が設けられた構成において、当該被覆体を補強層に密着させ易くなる。よって、補強層における被覆体の支持を安定した状態で行うことが可能となる。
【0016】
第5の発明の医療用器具:第4の発明の医療用器具において、前記被覆体と前記補強体との溶接箇所は、前記補強層において前記被覆体により覆われている領域であって前記平行領域に対して形成されていることを特徴とする。これにより、被覆体と補強体との接触面積が広い箇所にて溶接が行われるため、溶接強度の向上が図られる。また、補強体において太い箇所に被覆体を溶接することができるため、被覆体に負荷が加えられたとしても、補強体が切断されてしまうことが抑制される。
【0017】
第6の発明の医療用器具:第2乃至第5のいずれか1の発明の医療用器具において、前記被覆体は、前記端部側領域に追従するように形状付けられていることを特徴とする。これにより、被覆体と補強体との接触面積を広く確保することが可能となり、補強層における被覆体の支持を安定した状態で行うことが可能となる。
【0018】
第7の発明の医療用器具:第6の発明の医療用器具において、前記チューブ体は、前記補強層よりも外周面側に樹脂層を備えており、当該樹脂層は前記端部側領域の外側部分では前記被覆体において前記端部側領域を被覆している箇所の形状に合わせて肉厚が変化していることにより、当該箇所に対応した前記チューブ体の外周面が軸線と平行となっていることを特徴とする。これにより、チューブ体の外周面に凹凸を生じさせないようにしながら、上記のような優れた効果を奏することが可能となる。
【0019】
第8の発明の医療用器具:第2乃至第7のいずれか1の発明の医療用器具において、前記被覆体は、X線不透過性の材料により形成された造影環であることを特徴とする。これにより、補強層を外側から覆うようにして造影環が設けられる構成において、既に説明したような優れた作用効果を奏することが可能となる。
【0020】
第9の発明の医療用器具:第8の発明の医療用器具において、前記補強層が前記チューブ体の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って存在していないことにより、前記チューブ体の遠位端部には柔軟領域が形成されており、前記造影環は、前記補強層の遠位端部を外側から覆うようにして設けられていることを特徴とする。これにより、チューブ体の遠位端部の柔軟性を好適に高めながら、既に説明したような優れた作用効果を奏することが可能となる。
【0021】
なお、「剛性」とは、カテーテルなどを軸線方向に対して直交する方向に曲げようとするときに作用するモーメントの大きさのことをいう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は使用状態におけるカテーテル組立体を説明するための図であり、(b)はアウタカテーテルの正面図であり、(c)はインナカテーテルの正面図である。
【図2】(a)はアウタ管部及びその周辺を拡大して示すアウタカテーテルの正面図であり、(b)はアウタ管部の遠位端側を拡大して示す縦断面図である。
【図3】(a)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(b)は図3(a)において造影環及びその周辺を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(c)は比較例を説明するためのアウタ管部の縦断面図である。
【図4】(a)は遠位端側において外層を除いた状態で示すアウタ管部の正面図であり、(b)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(c)は図4(b)において造影環及びその周辺を拡大して示すアウタ管部の縦断面図であり、(d)は造影環が設けられた箇所におけるアウタ管部の横断面図である。
【図5】(a)〜(j)はアウタ管部の製造方法を説明するための模式図である。
【図6】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図7】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図8】変形例のアウタ管部であって、遠位端側において外層を除いた状態で示すアウタ管部の正面図である。
【図9】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図10】変形例のアウタ管部であって、遠位端側を拡大して示すアウタ管部の縦断面図である。
【図11】変形例のアウタ管部であって、遠位端側において外層及び造影環を除いた状態で示すアウタ管部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、カテーテル組立体に本発明を適用した場合の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は使用状態におけるカテーテル組立体10を説明するための図であり、図1(b)はアウタカテーテル11の正面図であり、図1(c)はインナカテーテル12の正面図である。
【0024】
図1(a)〜図1(c)に示すように、カテーテル組立体10は、アウタカテーテル11と、インナカテーテル12と、を備えている。アウタカテーテル11は、冠動脈の末梢狭窄病変部に図示しないバルーンカテーテルなどを導入するために利用されるデリバリ用のカテーテルである。インナカテーテル12は、アウタカテーテル11を生体内の病変部に挿入する際にアウタカテーテル11内に挿通されて使用され、アウタカテーテル11に対して先行することで当該挿入を補助する挿入補助具である。
【0025】
インナカテーテル12は、図1(c)に示すように、遠位端(先端)から近位端側(基端側)の途中位置までであってインナカテーテル12の遠位端側を構成するインナ管部21と、当該インナ管部21よりも近位端側を構成するインナシャフト部22と、を備えている。インナ管部21は、遠位端部及び近位端部の両方にて開放されるようにして軸線方向の全体に亘って形成されたインナ管孔23を有しており、全体として管状をなしている。インナ管孔23は、ガイドワイヤを挿通させるために利用されるものである。
【0026】
インナ管部21は、ポリエーテルブロックアミド共重合体(PEBAX(登録商標))により形成されており、インナシャフト部22は、ステンレスにより形成されている。但し、これに限定されることはなく、インナ管部21をポリアミド、ポリイミド、ポリイミドエラストマなどといった他の合成樹脂を用いて形成してもよく、インナシャフト部22を、Ni−Ti合金などの他の金属により形成してもよい。また、インナ管部21の遠位端部には、それよりも近位側に比べて柔軟なソフトチップ24が設けられている。
【0027】
インナ管部21のインナ開口25は、インナカテーテル12における軸線方向の途中位置に存在している。つまり、ガイドワイヤを近位端側において外部に引き出すためのインナポートは、インナカテーテル12の軸線方向の途中位置に形成されている。
【0028】
アウタカテーテル11は、図1(b)に示すように、遠位端から近位端側の途中位置までであってアウタカテーテル11の遠位端側を構成するアウタ管部31と、当該アウタ管部31よりも近位端側を構成するアウタシャフト部32と、を備えている。アウタ管部31は、遠位端部及び近位端部の両方にて開放されるようにして軸線方向の全体に亘って形成されたアウタ管孔33を有しており、全体として管状をなしている。このアウタ管孔33はインナカテーテル12及びガイドワイヤを挿通させるために利用されるとともに、インナカテーテル12が取り外された状態においては病変部に対して使用するためのバルーンカテーテルなどのカテーテルが挿通される。なお、アウタ管部31が、本実施形態におけるチューブ体に相当する。
【0029】
アウタ管部31のアウタ開口34は、アウタカテーテル11における軸線方向の途中位置に存在している。ここで、カテーテル組立体10を生体内に挿入する場合に利用されるガイドワイヤは、インナ開口25よりも近位端側においてアウタ管孔33内を通る。そして、アウタ管孔33に通されたガイドワイヤGは、アウタ管部31のアウタ開口34から外部に引き出される。
【0030】
これらアウタカテーテル11及びインナカテーテル12は、図1(a)に示すように、使用に際して組み合わされてカテーテル組立体10を形成する。このカテーテル組立体10の初期状態では、インナカテーテル12のソフトチップ24がアウタ管部31よりも遠位端側に突出している。また、初期状態においては、アウタ開口34はインナ開口25よりも近位端側に配置されている。このアウタ開口34の位置は、カテーテル組立体10の軸線方向の途中位置であり、より詳細にはカテーテル組立体10の全長の中間位置よりも遠位端側である。
【0031】
初期状態におけるインナ開口25とアウタ開口34との相対位置が上記の位置となる構成においては、近位端側から見てガイドワイヤGが通過する領域は、ガイディングカテーテルCに形成されたガイディング管孔C1→アウタ管孔33→インナ管孔23となる。つまり、近位端側からガイドワイヤGを挿入した場合には通過する領域の横断面積が除々に小さくなる。これにより、遠位端側へのガイドワイヤGの導入を行い易くなる。
【0032】
カテーテル組立体10を使用して治療を行う際には、先ず、下行大動脈、大動脈弓及び上行大動脈を経てガイディングカテーテルCの遠位端部を左冠動脈の入口に配置し、その状態から遠位端側にカテーテル組立体10を突出させて左冠動脈への挿入作業を行う。この場合に、アウタカテーテル11からソフトチップ24が突出していることにより、通過性を高めることができる。さらに、閉塞箇所が存在している場合にはソフトチップ24側から除々に閉塞箇所を押し広げることが可能となる。
【0033】
次に、アウタカテーテル11の構成について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
図2(a)はアウタ管部31及びその周辺を拡大して示すアウタカテーテル11の正面図であり、図2(b)はアウタ管部31の遠位端側を拡大して示す縦断面図である。
【0035】
図2(b)に示すように、アウタ管部31は、アウタ管部31の内周面全体を規定する内層41と、アウタ管部31の外周面全体を規定する外層42と、これら内層41及び外層42に挟まれるようにして設けられた中間層43と、を備えている。
【0036】
内層41は、中間層43及び外層42を形成する際のベースとなる層である。内層41は、合成樹脂を用いて形成されている。当該合成樹脂としては、後述する外層42の材料として列挙するものを用いることが可能であるが、具体的には、低摩擦材料を用いて形成されている。このように内層41を低摩擦材料により形成することで、アウタ管孔33内においてインナカテーテル12や他のカテーテルを摺動させる際の抵抗が低減される。
【0037】
内層41を形成する材料として、具体的にはポリテトラフルオロエチレンが用いられている。但し、内層41を形成する材料は、外層42を形成する材料に比べてインナカテーテル12や他のカテーテルとの摺動抵抗を低減させることが可能であれば任意であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレンとは別のフッ素含有樹脂を用いてもよい。当該フッ素含有樹脂としては、例えばポリフッ化ビニリデン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。また、フッ素含有樹脂以外であってもよく、例えば、ポリアミド、ポリイミド、高密度ポリエチレン等を用いてもよい。また、以上列挙した材料等を複数種組合せて使用してもよい。
【0038】
内層41の厚み寸法は任意であるが、外層42の厚み寸法よりも小さいことが好ましい。具体的には、0.01mm〜0.05mmが好ましい。これにより、摺動抵抗の低減化を良好に実現しながら、アウタ管部31の細径化を図ることが可能となる。また、内層41の厚み寸法は、軸線方向の全体に亘って一定となっているが、軸線方向の途中位置で変化していてもよい。
【0039】
中間層43はアウタ管部31を補強する役割を有している。当該中間層43を形成する材料として、具体的にはステンレス鋼が用いられている。但し、中間層43を形成する材料は、上記補強効果が得られるのであれば任意であり、例えば、Ni−Ti合金、Ni−Ti−Co合金等の超弾性合金を用いてもよく、銅、ニッケル、チタン等の他の金属を用いてもよい。また、中間層16は金属に限定されることはなく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン等のポリオレフィンを用いてもよく、硬質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、フッ素含有樹脂、ポリエーテルケトン等の他の合成樹脂を用いてもよい。また、カーボンファイバやグラスファイバを用いてもよい。また、以上列挙した材料等を複数種類組合せて使用してもよい。
【0040】
中間層43は、上記のような材料により形成された線状体43aを用いて形成されている。具体的には、当該線状体43aがメッシュ状に編み込まれることで、編組チューブとして形成されている。このように、中間層43を線状体43aにより形成することで、アウタカテーテル11の補強を行いながら、曲げに対する柔軟性が高められる。ちなみに、中間層43では、一の線状体43aの一部を構成する線状要素が軸線方向及び軸周りに所定の間隔を置いて隣接した状態となっている。
【0041】
中間層43を形成する線状体43aは、その断面形状が矩形状となるように形成されているが、これに限定されることはなく、円形状や楕円形状であってもよい。また、中間層43を形成する線状体43aは、当該中間層43の厚み寸法が内層41と同程度となるように形成されている。当該厚み寸法は任意であるが、外層42の厚み寸法よりも小さいことが好ましい。具体的には、0.01mm〜0.05mmが好ましい。
【0042】
また、軸線方向に隣り合う線状体43a間のピッチは、一定であることが好ましい。当該ピッチの寸法は任意であるが、上記のようにアウタカテーテル11の補強を行いながら、曲げに対する柔軟性を高める上では、0.1mm〜0.5mmが好ましい。なお、上記ピッチは一定であることに限定されることはなく、例えば遠位側の方が広いピッチとなるようにしてもよく、遠位側の方が狭いピッチとなるようにしてもよい。また、ピッチが軸線方向に沿って連続的に変化するようにしてもよい。
【0043】
外層42は、内層41及び中間層43を外側から覆うように設けられている。この場合、外層42は、軸線方向や軸周りに隣接する複数の線状要素間に入り込んでおり、その入り込んだ部分では、外層42と内層41とが接触し熱溶着されている。なお、外層42を形成する材料の種類及び内層41を形成する材料の種類によっては、外層42と内層41とが接触して密着するものの、両者が熱溶着されない構成であってもよい。
【0044】
外層42は、合成樹脂を用いて形成されている。当該合成樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマ、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスチレンエラストマ、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ素系エラストマ、シリコンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。また、これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組合せた混合物を用いてもよい。本アウタ管部31では、外層42として、ポリアミドエラストマを用いている。
【0045】
外層42の厚み寸法は任意であるが、内層41や中間層43の厚み寸法よりも大きいことが好ましい。具体的には、0.1mm〜1.0mmが好ましい。これにより、血管等といった生体内の組織への負荷を低減させることが可能となる。また、外層42の厚み寸法は、アウタ管部31の近位端部にアウタシャフト部32を連結するための金属管が埋設されていることとの関係で当該近位端部側が薄く、それよりも遠位側は当該近位端部側よりも大きい所定の寸法で一定となっているが、軸線方向の全体に亘って一定としてもよい。
【0046】
上記のようにアウタ管部31が、内層41、中間層43及び外層42を有する複数層構造、具体的には3層構造をなす構成において、外層42は軸線方向の全体に亘って延在しているのに対して、内層41及び中間層43は、アウタ管部31の近位端部から軸線方向の途中位置に亘って延在している。詳細には、内層41及び中間層43は、アウタ管部31の遠位端部から軸線方向の所定範囲に亘って存在していない。したがって、アウタ管部31の遠位端部には、外層42のみからなる先端柔軟領域44が存在している。このように先端柔軟領域44が形成されていることにより、アウタ管部31の遠位端部の柔軟性が高められ、血管等といった生体内の組織への負荷を低減させることが可能となる。アウタ管部31の遠位端部の柔軟性を高めながら、中間層43によるアウタ管部31の補強を好適に行うためには、先端柔軟領域44の軸線方向の寸法は、0.3mm〜2.0mmが好ましく、0.5mm〜1.0mmがより好ましい。
【0047】
なお、外層42は遠位端側の方が近位端側よりも硬度が低い材料により形成されていてもよい。例えば、後述するアウタ管部31の製造方法において、カバーチューブ52(図5(h)参照)を、3層チューブ51の外層よりも硬度が低い材料により形成することで、外層42の遠位端側を近位側よりも柔軟に形成することが可能となる。
【0048】
アウタ管部31には、図2(b)に示すように、X線投影下においてアウタ管部31の遠位端側の位置を把握可能とするために環状の造影環45が設けられている。造影環45を形成する材料としては、プラチナ、金、白金、イリジウム、コバルトクロム合金、チタンなどのX線不透過性の材料が挙げられる。本アウタ管部31では、プラチナが用いられている。
【0049】
当該造影環45の設置に関する構成を、図3及び図4を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0050】
図3(a)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図3(b)は図3(a)において造影環45及びその周辺を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図3(c)は比較例を説明するためのアウタ管部81の縦断面図である。なお、図3(a)〜(c)では、説明の便宜上、中間層43を編組チューブとしてではなく内外に貫通する孔部を有しないチューブ状として示す。また、図4(a)は遠位端側において外層42を除いた状態で示すアウタ管部31の正面図であり、図4(b)は遠位端側を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図4(c)は図4(b)において造影環45及びその周辺を拡大して示すアウタ管部31の縦断面図であり、図4(d)は造影環45が設けられた箇所におけるアウタ管部31の横断面図である。なお、図4(b)及び図4(c)では、2本の線状体43aが重なっている状態を示す。
【0051】
図3(a)及び図4(b)に示すように、造影環45は、先端柔軟領域44に設けられているのではなく、中間層43の遠位端部を外側から覆うようにして設けられている。詳細には、造影環45は、アウタ管部31と同一軸線上に存在するように設けられており、当該造影環45の遠位端部は中間層43の遠位端部に位置している。この場合、造影環45は、中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って延在していることとなる。また、図4(b)に示すように、造影環45は、その軸線方向の長さ寸法が、中間層43において軸線方向に並ぶ複数の線状要素を跨ぐように設定されている。
【0052】
造影環45は、その内周面が中間層43の外周面に接するようにして設けられている。ここで、造影環45の装着に際しては、外層42により覆われていない内層41及び中間層43に対してその遠位端部から造影環45を被せ、外周面側から外力を付与して加締めることで当該造影環45の装着が行われる。この場合、当該加締めによる固定を好適に行うためには、造影環45の内径を中間層43の外径に予め近付けておくことが好ましく、その反面、このような内径の設定を行うと中間層43に対する造影環45の摺動抵抗が大きくなり、造影環45の配置作業が困難なものとなる。
【0053】
これに対して、本アウタ管部31では、中間層43において造影環45が配置される領域は先細りするように形成されている。当該先細り領域43bについて詳細には、図3(a)に示すように、先細り領域43bは、内径を一定としながら、外径を遠位端部に向けて除々に小さくすることで形成されている。また、当該先細り領域43bは、軸線方向の各位置における軸周りの肉厚を一定としながら、その肉厚を遠位端部に向けて除々に小さくすることで形成されている。
【0054】
先細り領域43bのテーパ面が軸線に対して傾斜する角度A(図3(b)参照)は、先細り領域43bを軸線方向にある程度延在させる観点から30°以下が好ましく、20°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。一方、造影環45の装着作業の容易化を鑑みると、上記角度Aは、1°以上が好ましく、2°以上がより好ましく、3°以上が特に好ましい。
【0055】
先細り領域43bは、その軸線方向の長さ寸法が造影環45の軸線方向の長さ寸法よりも短くなっている。その一方、上記のとおり造影環45の遠位端部は中間層43の遠位端部に存在している。したがって、造影環45には、先細り領域43bの全体を外側から覆う領域45aと、中間層43において先細り領域43bに対して近位側にて連続し且つ外径及び内径が一定の状態で軸線方向に対して平行に延びる平行領域43cを外側から覆う領域45bと、を備えている。
【0056】
先細り領域43bが中間層43に形成されていることにより、造影環45の装着に際しては、造影環45を近位側に押し込むことに伴って当該造影環45と中間層43との接触面積が除々に広くなるようにすることが可能となり、当該装着作業の容易化が図られる。また、造影環45には、先細り領域43bを外側から覆う領域45aだけでなく、平行領域43cを外側から覆う領域45bも存在しているため、加締めに際しての造影環45の変形量を抑えた状態での当該造影環45の固定を可能とする領域が存在することとなる。これにより、上記のように装着作業の容易化を図った構成において、加締め後の造影環45の変形量が抑えられた領域が存在することとなり、造影環45を中間層43に安定した状態で支持させることが可能となる。
【0057】
ここで、中間層43の遠位端側を先細りさせる上では、上記のように遠位端部から軸線方向の途中位置に亘って延在し且つ遠位端部に向けて連続的に外径が小さくなるテーパ状に形成する構成以外にも、図3(c)に示すような比較例の構成が考えられる。詳細には、比較例のアウタ管部81に設けられた中間層82は、その軸線方向の途中位置に段差部83を有しており、当該段差部83よりも遠位側は近位側よりも細くなっているとともに、当該遠位側の領域の外径は一定となっている。そして、この遠位側の領域を外側から覆うようにして造影環84が設けられている。但し、造影環84は、当該遠位側の領域の全体を覆っているのではなく、造影環84と段差部83とは軸線方向に離間されている。
【0058】
編組チューブとして形成された中間層82は、線状体82aを巻くことにより形成されているため、当該線状体82aは外側に広がろうとする力を有している。これに対して、研磨具に中間層82を接触させて物理的に研磨することで上記細径化を行う場合、当該中間層82に熱が加えられることで線状体82aの外側に広がろうとする力は大きくなる。段差部83を利用して中間層82が細径化されている構成においては、中間層82の強度が段差部83を挟んで大きく変化することとなり、強度の弱い側である遠位側の領域が、図3(c)に示すように、外側へと浮き上がってしまうことが懸念される。また、段差部83よりも近位側の方が外側に広がろうとする力が大きいため、段差部83に対して近位側及び遠位側のそれぞれにて連続する領域を含めて、外側へと浮き上がってしまうことが懸念される。この浮き上がりは、研磨に際して線状体82aの一部が切断された場合にも生じ得る。また、後述するアウタ管部31の製造方法において、カバーチューブ52を溶着すべく加熱した際に(図5(i)参照)、線状体82aが外側に広がろうとして生じ得る。このような浮き上がりが外層85の形成前や外層85の形成工程中に発生すると、線状体82aの一部が外層85の表面から露出してしまう。
【0059】
これに対して、本アウタ管部31では、先細り領域43bは遠位端部から近位側に向けた軸線方向の所定範囲に亘って形成されているとともに、遠位端部に向けて除々に外径が小さくなるように形成されている。したがって、上記のように強度の大きな変化が生じにくいため、浮き上がりが生じにくくなる。また、このように先細りさせる場合には、線状体43aが切断されるとしても遠位端側で発生することとなり、この点からも上記浮き上がりが生じにくくなる。
【0060】
さらにまた、先細り領域43bは造影環45によりその全体が覆われているため、線状体43aが浮き上がろうとしてもそれが造影環45により抑えられることが期待される。特に、当該造影環45は、環状をなすとともに、先細り領域43bと平行領域43cとの境界を跨ぐようにして設けられているため、先細り領域43bにおいて線状体43aが浮き上がるための隙間が生じにくくなっている。
【0061】
次に、中間層43に対する造影環45の加締めについての構成を説明する。
【0062】
既に説明したとおり、造影環45は、中間層43の遠位端部を覆うようにして設けられているとともに、当該中間層43の外周面に接するようにして設けられている。この場合に、図4(a)及び図4(b)に示すように、造影環45は、軸線方向や軸周りに並ぶ複数の線状要素間に造影環45の壁部が入り込むように設けられている。そして、この入り込み量は、造影環45の内周面側だけでなく、外周面側にも線状体43aに応じた凹凸が生じるように設定されている。したがって、図4(a)に示すように、造影環45は、中間層43の線状体43aに密着しており、造影環45の外周面には線状体43aの輪郭に沿った凹凸形状45cが生じている。なお、当該凹凸形状45cは、造影環45の外周面において凹凸の存在を目視可能なように形成されている。
【0063】
編組チューブとして形成された中間層43に対して、上記のように凹凸形状45cが生じるように造影環45が加締められていることにより、造影環45の壁部は複数の方向から線状体43aと対向している。具体的には、図4(c)及び図4(d)に示すように、造影環45は、線状体43aに対して近位側から対向する面と、線状体43aに対して遠位側から対向する面と、線状体43aに対して軸周りの所定方向から対向する面と、当該所定方向とは逆方向から対向する面と、を有している。これにより、アウタカテーテル11の使用に際して外層42を通じて造影環45に外力が加わったとしても、当該造影環45の変位が線状体43aにより規制されることとなる。
【0064】
造影環45に凹凸形状45cが生じている構成において、外周面側から見た凹部は、先細り領域43bを覆う箇所では内層41の外周面に接しているが、これに限定されることはなく、平行領域43cを覆う箇所においても内層41の外周面に接している構成としてもよい。また、上記凹部が、内層41の外周面に接していない構成としてもよく、内層41の外周面との間に内層41とは異なる材料、例えば外層42の形成材料が入り込んでいる構成としてもよい。
【0065】
造影環45は、既に説明したとおり、中間層43における先細り領域43bの全体を覆うとともに当該先細り領域43b側から平行領域43c側に入り込んでいるが、造影環45が線状体43aに密着するように設けられていることで、造影環45はこれら先細り領域43b及び平行領域43cに追従した形状となっている。つまり、造影環45は、図4(b)に示すように、先細り領域43bに追従することで、外周面が遠位端部に向けて断続的なテーパ状となる傾向を示す先細り追従領域45aと、平行領域43cに追従することで、外周面が軸線に対して平行となる傾向を示す平行追従領域45bと、を有している。これにより、中間層43の先細り領域43b及び平行領域43cの両方に対して造影環45を密着させることが可能となり、線状体43aを利用した造影環45の変位規制効果が高められる。
【0066】
次に、造影環45のレーザ溶接についての構成を説明する。
【0067】
造影環45は、図4(c)及び図4(d)に示すように、中間層43の線状体43aに溶接されている。この溶接は、レーザ照射を行うことにより行われている。かかる溶接箇所46は、図4(a)に示すように、所定の線状体43aにおける幅方向の全体を含むのではなく、幅方向の一部と、造影環45とを溶接するように形成されている。これにより、溶接箇所46にて線状体43aが切断されてしまわないようにすることができる。
【0068】
溶接箇所46についてより詳細には、当該溶接箇所46は、所定の線状体43aと他の線状体43aとが交差する箇所に形成されている。この場合、所定の線状体43aにおける幅方向の一部と、他の線状体43aにおける幅方向の一部とを、造影環45に溶接させるように、溶接箇所46が形成されている。これにより、溶接に際して線状体43aを切断しないようにした構成において、造影環45と線状体43aとの接触面積を広く確保することが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0069】
なお、溶接箇所46では造影環45に貫通孔が生じているが、線状体43aの切断を生じさせないようにしながら溶接強度を高める上では、当該貫通孔の幅寸法は0.1mm〜1.0mmが好ましく、0.3mm〜0.6mmがより好ましい。
【0070】
ここで、既に説明したとおり造影環45は、その壁部が複数の線状要素間に入り込むように加締められていることにより、造影環45の外周面には線状体43aの配列に対応した凹凸形状45cが生じている。したがって、造影環45により中間層43が覆われた状態であっても、線状体43aの位置を目視により把握することが可能となる。よって、上記のような位置に溶接箇所46を生じさせるためのレーザ照射作業の容易化が図られる。さらにまた、線状体43aに対して造影環45が密着された位置にて溶接が行われるため、溶接強度の向上が図られる。
【0071】
溶接箇所46は、図4(a)に示すように、造影環45における先細り追従領域45a及び平行追従領域45bのうち、平行追従領域45bに形成されている。平行追従領域45bは、先細り追従領域45aに比べて造影環45の加締めに際しての変形量が少ないため、線状体43aに対する密着度合いは先細り追従領域45aよりも高くすることができる。そうすると、造影環45の凹凸形状45cから把握した線状体43aの位置の正確性が高められるため、線状体43aを切断しないようにしながらのレーザ溶接、及び複数の線状体43aの交差部分でのレーザ溶接を行い易くなる。また、密着度合いが高いことに起因して、溶接強度のさらなる向上が図られる。また、仮に、先細り追従領域45aに溶接箇所46が存在する場合、造影環45は中間層43の先細り領域43bに溶接されることとなる。この場合、先細り領域43bの線状体43aは細くなっているため、造影環45に負荷が加わった際に線状体43aが破断してしまう可能性がある。これに対して、上記のように平行追従領域45bに溶接箇所46が存在しているため、細くなっていない線状体43aに造影環45が溶接されることとなるため、このような不都合の発生を抑制することが可能となる。
【0072】
溶接箇所46は、複数形成されている。具体的には、溶接箇所46は、図4(d)に示すように、軸線方向の所定位置において軸周りに複数形成されている。より詳細には、溶接箇所46は、等間隔となるようにして、軸周りに3箇所形成されている。仮に、溶接箇所46が等間隔となるようにして軸周りに2箇所形成されている構成を想定すると、それら溶接箇所46を結ぶ仮想線を中心に造影環45の位置ズレが生じてしまうことが懸念される。これに対して、溶接箇所46を3箇所以上形成することで、そのような造影環45の位置ズレが生じづらくなる。但し、これに限定されることはなく、溶接箇所46は1箇所又は2箇所であってもよい。
【0073】
溶接箇所46では、図4(c)に示すように、少なくとも造影環45に貫通孔46aが生じている。また、この貫通孔46aは、線状体43aを貫通しているとともに、さらに内層41も貫通している。このように内層41を貫通するようにレーザ照射を行うことで、レーザ照射装置の照射強度がある程度変動する場合であっても、造影環45と線状体43aとの溶接を確実に行うことが可能となる。
【0074】
このように内層41も貫通するようにしてレーザ照射が行われている構成において、貫通孔46aは、図4(c)及び図4(d)に示すように、外層42を形成する材料が充填されて埋められている。外層42の当該充填箇所によって、中間層43及び造影環45のそれぞれについて軸線方向の変位規制が行われ、中間層43及び造影環45の接合強度を高めることができ、さらにはこれら中間層43及び造影環45と外層42との間の接合強度を高めることができる。
【0075】
この場合に、上記材料の充填領域46bは、その周囲に対して同一曲面を生じさせるように、換言すれば、アウタ管部31の内周面に、内側に向けた凸部及び外側に向けた凹部の両方が生じないように、充填領域46bが形成されている。これにより、外層42を形成する材料を利用して貫通孔46aが塞がれているだけでなく、アウタ管孔33内に挿入されるインナカテーテル12や他のカテーテルの通過性を低減させないようにすることが可能となる。
【0076】
外層42による被覆についてさらに説明すると、既に説明したとおり、造影環45はその外周面に凹凸形状45cが生じているとともに、先細り追従領域45a及び平行追従領域45bも有している。これに対して、外層42は、これら凹凸の影響がアウタ管部31の外周面に生じないように、外層42の肉厚の変化によってこれら凹凸を吸収している。したがって、造影環45が設けられた位置においてアウタ管部31の外周面に凹凸が生じておらず且つ当該外周面は軸線に対して平行となっている。これにより、アウタ管部31の生体内における通過性を低下させないようにしながら、既に説明したような優れた効果を奏することが可能となる。
【0077】
次に、アウタ管部31の製造方法について、図5を参照しながら説明する。図5(a)〜(j)はアウタ管部31の製造方法を説明するための模式図である。
【0078】
図5(a)に示すように、まず、準備工程を行うことにより、内層41、中間層43及び外層42を有する3層チューブ51を形成する。当該3層チューブ51は、近位端部を除いて外径が一定となっているとともに、軸線方向の全体に亘って内径が一定となっている。なお、当該3層チューブ51には、アウタシャフト部32が既に固定されている。
【0079】
その後、図5(b)に示すように、当該3層チューブ51における一端から所定範囲に亘って外層42を除去するとともに、露出した内層41及び中間層43を外層42の端部から所定長(例えば5mm)となるように切断する露出工程を行う。この場合、外層42が剥がされた領域においては、中間層43の外周面が露出しているが、線状体43aにより形成される複数の線状要素間には外層42の形成材料が入り込んでいる。
【0080】
その後、図5(c)に示すように、中間層43における遠位端部から近位側に向けた所定範囲に先細り領域43bを形成するために研磨工程を行う。研磨工程では、3層チューブ51の軸線方向が研磨具D1の研磨面に対して傾斜した状態となるようにして、当該3層チューブ51の遠位端側を研磨面に当てることにより、物理的な研磨を行う。この際の傾斜角度は、例えば5°となっている。また、研磨具D1を回転させるとともに、3層チューブ51も回転させる。これにより、図5(d)に示すように、中間層43に先細り領域43bが形成される。また、当該先細り領域43bは軸線を基準に対称形状となっており、当該先細り領域43bでは複数の線状要素間に入り込んでいた外層42の形成材料も除去される。なお、上記研磨は、内層41が研磨されない範囲で行われるが、内層41の一部が研磨されてもよい。
【0081】
その後、図5(e)に示すように、中間層43における先細り領域43bの全体及び平行領域43cの遠位端部を外側から覆うようにして、造影環45を配置する配置工程を行う。この場合、造影環45は、3層チューブ51において中間層43が露出された側の端部から装着されることとなるが、上記のとおり先細り領域43bが形成されていることにより、その装着作業の容易化が図られる。また、造影環45の一端側は平行領域43cに対して外側から重なるとともに、造影環45の内径は平行領域43cの外径と近い寸法に設定されているため、中間層43上における造影環45の仮止めを安定した状態で行うことができる。
【0082】
その後、図5(f)に示すように、加締め用装置D2を利用して造影環45に外周面側から外力を加える加締め工程を行う。この際、中間層43の線状体43aにより形成される複数の線状要素間に造影環45の壁部が入り込むように加締めを行う。また、このような加締めを好適に行うには、造影環45の形状が中間層43の形状に沿ったものとなるように、加締め用装置D2と造影環45との間に樹脂シートなどによる緩衝材を介在させるとよい。また、内径が変化しないように、内径固定用のマンドレルD3を3層チューブ51の内側に挿通させた状態で加締めを行う。当該加締め工程を行うことにより、図5(g)に示すように、造影環45に凹凸形状45cが形成されるとともに、造影環45は中間層43の先細り領域43b及び平行領域43cに追従した形状となる。但し、3層チューブ51の内径は軸線方向の全体に亘って同一となっている。
【0083】
その後、図5(g)に示すように、レーザ照射装置D4を利用して造影環45を中間層43に溶接するための溶接工程を行う。この際、造影環45の凹凸形状45cを確認することにより、複数の線状体43aにおける交差部分の一部を含むようにレーザ照射を行う。また、溶接強度に対するレーザ照射強度の変化の影響を低減させるべく、造影環45及び線状体43aだけでなく、内層41も貫通するようにレーザ照射を行う。また、レーザ照射は、造影環45の平行追従領域45bに対して3箇所行う。これにより、造影環45が中間層43に溶接された状態となる。
【0084】
その後、図5(h)に示すように、外層42の形成材料により形成されたカバーチューブ52を、露出された状態の造影環45、中間層43及び内層41に被せる被覆工程を行う。そして、図5(i)に示すように、当該カバーチューブ52を、3層チューブ51において既に存在している外層42及び内層41に熱溶着させる熱溶着工程を行う。この際、内径固定用のマンドレルD5を3層チューブ51の内側に挿通させた状態で、溶着装置D6を利用して、3層チューブ51においてカバーチューブ52と連続している箇所及び当該カバーチューブ52を、外力を加えながら加熱する。これにより、図5(j)に示すように、アウタ管部31の製造が完了する。なお、カバーチューブ52の熱溶着に際しては、当該カバーチューブ52の外周面に熱収縮チューブを被せて当該熱収縮チューブの外周面を加熱することによりカバーチューブ52の熱溶着を行うようにしてもよい。
【0085】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0086】
線状体43aを利用して形成された中間層43を外側から覆うようにして造影環45が設けられていることにより、中間層43に対して軸線方向にずらして造影環45を設ける構成とは異なり、中間層43と造影環45との間に軸線方向の隙間が生じないようにすることが可能となる。また、中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲は、当該遠位端部に向けて先細りするように先細り領域43bとされている。これにより、造影環45を中間層43の外側に配置する場合の作業性の向上が図られる。この場合に、当該先細り領域43bは、肉厚方向に延在する段差部によって形成されているのではなく、遠位端部に向けて除々に細くなるテーパ形状として形成されている。これにより、強度が大きく変化する境界が生じないようにしながら先細り領域43bを形成することができるため、線状体43aの浮き上がりの発生を抑制することが可能となる。
【0087】
先細り領域43bはその全体が造影環45により外側から覆われている。これにより、線状体43aが浮き上がろうとすることを造影環45により外側から抑えることが可能となる。よって、線状体43aの浮き上がりの発生を抑制することが可能となる。
【0088】
特に、造影環45は、中間層43の先細り領域43b側から平行領域43c側へと延在させて設けられている。これにより、先細り領域43bと平行領域43cとの境界部分にて線状体43aが浮き上がろうとしても、それを造影環45により抑えることが可能となる。
【0089】
造影環45が中間層43の先細り領域43b側から平行領域43c側へ入り込むようにして設けられている構成において、加締めに際しての変形量が抑えられる平行領域43c側において造影環45と中間層43との溶接が行われている。これにより、より密着した箇所にて溶接を行うことが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0090】
造影環45は、その壁部が線状体43aにより形成される複数の線状要素間に入り込むように加締められている。これにより、造影環45の軸周りや軸線方向の変位が造影環45と線状体43aとの当接により規制されるため、中間層43に対する造影環45の固定強度が高められる。
【0091】
上記加締めは、造影環45の外周面に複数の線状体43aに対応した凹凸形状45cが生じるようにして行われている。これにより、複数の線状要素間に造影環45の壁部が大きく入り込むこととなり上記固定強度の更なる向上が図られる。さらに、造影環45の外周面側から線状体43aの位置を目視確認することが可能となるため、造影環45と線状体43aとの所望の箇所を造影環45の外周面側から溶接する場合における作業の容易化が図られる。
【0092】
上記のように凹凸形状45cが生じている箇所にて溶接を行うことで、造影環45と線状体43aとが密着している箇所にて当該溶接を行うことが可能となる。したがって、溶接強度の向上が図られる。
【0093】
造影環45と線状体43aとの溶接箇所46は、当該線状体43aの幅方向の全体を含むのではなく、幅方向の一部と造影環45とを溶接するように形成されている。これにより、溶接箇所46にて線状体43aが切断されてしまわないようにすることができる。また、当該溶接箇所46は、所定の線状体43aと他の線状体43aとが交差する箇所に形成されている。これにより、溶接に際して線状体43aを切断しないようにした構成において、造影環45と線状体43aとの接触面積を広く確保することが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0094】
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施しても良い。
【0095】
(1)図6に示す変形例では、造影環45は、先細り領域43bの全体を覆うように設けられているのではなく、軸線方向において先細り領域43bの一部の領域のみを覆っている。この場合、先細り領域43bの遠位端部及び近位端部は造影環45により覆われていない状態となっているが、当該先細り領域43bは、上記実施形態と同様に、中間層43において遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って形成されているとともに、遠位端部に向けて除々に細くなるように形成されている。したがって、強度が大きく変化する境界を存在させることなく先細り領域43bが形成されているため、図3(c)に示したような変形例に比べて、線状体の浮き上がりが発生しづらくなる。
【0096】
(2)図7に示す変形例では、先細り領域61は、段差部62を基準として、それよりも遠位側が近位側に比べて細くなるように形成されているとともに、当該遠位側は外径が一定となっている。当該構成において、造影環45は、先細り領域61の全体を覆うようにして設けられているとともに、中間層43において先細り領域61側から平行領域63側へと延在させて設けられている。これにより、中間層43を形成する線状体の浮き上がりを、造影環45により抑えることが可能となる。
【0097】
(3)図8に示す変形例では、中間層43の線状体43aと造影環45との溶接箇所の位置が上記実施形態と異なっており、少なくとも第1の溶接箇所71と第2の溶接箇所72とを有している。
【0098】
第1の溶接箇所71は、所定の線状体43aと他の線状体43aとが交差する箇所の全体を含むようにして形成されている。この場合、溶接箇所71の面積が広くなり、溶接強度の向上が図られる。また、このように線状体43aが交差する箇所は、線状体43aが交差していない箇所に比べて、造影環45の表面に浮き出る部分の面積が広くなるため、レーザ照射による溶接に際しての目印となり易い。
【0099】
第2の溶接箇所72は、交差する箇所とは異なる箇所に形成されている。これにより、複数の線状体43a間の相対的な変位を規制しないようにしながら、溶接箇所72を形成することができる。また、当該第2の溶接箇所72は、所定の線状体43aにおける幅方向の一部のみを含むように形成されている。なお、第1の溶接箇所71及び第2の溶接箇所72のうちいずれか一方のみを有する構成としてもよく、第1の溶接箇所71は造影環45の平行追従領域45bではなく先細り追従領域45aに形成されている構成としてもよく、第2の溶接箇所72は造影環45の先細り追従領域45aではなく平行追従領域45bに形成されている構成としてもよい。
【0100】
(4)図9に示す変形例では、溶接箇所46は、造影環45及び線状体43aを貫通させて形成されている一方、内層41は貫通しないように形成されている。これにより、溶接箇所46が形成された箇所にて、低摩擦化層が消失してしまわないようにすることが可能となる。
【0101】
(5)図10に示す変形例では、溶接箇所46は、造影環45を貫通させて形成されている一方、線状体43a及び内層41を貫通しないように形成されている。これにより、線状体43aの強度低下を抑制しながら溶接箇所46を形成することが可能となる。
【0102】
(6)図11は、中間層43の遠位端側を研磨した後であって造影環45を取り付ける前の状態(図5(d)の状態)における変形例を示す。この場合、遠位端部に存在する線状体43aが切断されて欠損してしまっている。この場合であっても、研磨が斜めに行われているため線状体43aの浮き上がりの発生が抑制されている。また、当該研磨を斜めに行っていることにより、欠損してしまう線状体43aの量が抑えられている。すなわち、より近位側の箇所で線状体43aが切断されるという不具合が抑制されている。線状体43aの欠損は遠位側のみの狭い範囲に抑えられているため、中間層43による補強効果は好適に維持される。
【0103】
(7)造影環45を、中間層43における先細り領域43b側から平行領域43c側に延在させて設けた構成において、加締めにより形状を追従させる対象に先細り領域43bを含まずに平行領域43cにのみ追従させる構成としてもよい。この場合、造影環45の加締めに際して、当該造影環45を大きく変形させないようにすることが可能となる。また、当該構成では、造影環45を安定した状態で支持するために、外層42の形成材料が、造影環45と先細り領域43bとの間に充填されている構成が好ましい。
【0104】
(8)中間層43に先細り領域43bを形成する方法は、物理的な研磨による方法に限定されることはなく、電解研磨といったように他の方法であってもよい。この場合であっても、中間層43の細径化に伴って線状体43aの浮き上がりの発生が懸念されるため、先細り領域43bを中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って形成するとともに、当該先細り領域43bを遠位端部に向けて除々に細くなるように形成する構成、及び先細り領域43bの全体を覆うように造影環45を設ける構成のうち少なくとも一方を適用することが好ましい。
【0105】
(9)中間層43が複数の線状体43aを利用して形成された編組チューブである構成に限定されることはなく、中間層43が一の線状体を利用して形成されたコイル状である構成としてもよい。また、中間層43としては、上記のように線状体43aを利用した編組チューブやコイルに限定されることはなく、棒状体や帯状体を利用した編組チューブやコイルとしてもよい。また、線状体、棒状体及び帯状体の1種又は2種以上を、アウタ管部31の軸線方向に延在させる、当該アウタ管部31の軸周りに周回させる、及び螺旋状に設ける、のうち少なくとも1種の方法により設けることで、軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部を有する中間層43を形成してもよい。なお、かかる構成においては、中間層43において内外に貫通する孔部としては、格子状以外にも、軸線方向に延びるスリット状、軸周りに延びるスリット状及び螺旋状に延びるスリット状が含まれる。
【0106】
この場合であっても、中間層43では、所定の補強体(線状体、棒状体、帯状体)により複数の補強要素(線状要素、棒状要素、帯状要素)が軸線方向に並ぶこととなるため、当該補強要素間に壁部が入り込むように造影環45を設けることが可能である。また、中間層43の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って先細り領域43bを形成するとともに当該先細り領域43bを遠位端部に向けて除々に細く形成する構成、及び先細り領域43bの全体を覆うように造影環45を設ける構成のうち少なくとも一方を適用することで、補強体の浮き上がりを抑制しながら、造影環45の装着作業の容易化が図られる。
【0107】
(10)造影環45が中間層43の遠位端部ではなく、近位端部に設けられている構成に、既に説明したような造影環45の加締めに関する構成や、中間層43の先細りの構成を適用してもよい。
【0108】
(11)編組チューブやコイルといった補強層を有するチューブに対して金属製のチューブを連結する構成に、既に説明したような中間層43に対する造影環45の装着についての各構成を適用してもよい。
【0109】
(12)中間層43にその遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って先細り領域43bが形成されているとともに当該先細り領域43bが遠位端部に向けて除々に細くなるように形成されていることで、線状体43aの浮き上がりを抑制しながら造影環45の装着作業の容易化を図ることができる点に着目した場合、造影環45の壁部が複数の線状要素間に入り込む構成は、任意である。但し、当該構成を備えていることにより、上記実施形態にて説明したような作用効果を奏することが可能となる。
【0110】
(13)本発明を、バルーンカテーテルに適用してもよい。例えば、バルーンカテーテルにおいてガイドワイヤ用ルーメンを生じさせるカテーテル体に本発明を適用してもよく、バルーンを膨張又は収縮させる際に圧縮流体が通過する流体用ルーメンを生じさせるカテーテル体に本発明を適用してもよい。なお、当該バルーンカテーテルは、PTCA用,PTA用,IABP用等のいずれであってもよい。また、種々の吸引カテーテルや、血流遮断用のカテーテルや、血栓等による閉塞箇所に遠位端部を押し付けることにより貫通させるためのカテーテルや、ガイディングカテーテル等に本発明を適用してもよい。また、血管以外の尿管や消化管などの生体内の「管」や「体腔」を治療又は検査する場合に使用されるカテーテルに本発明を適用してもよい。
【0111】
(本明細書の開示範囲から抽出される他の発明について)
以下に、本明細書の開示範囲内において課題を解決するための手段欄に記載した発明以外に抽出可能な発明について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0112】
(A1)線状体、帯状体又は棒状体を用いて形成された補強層を有するチューブ体と、前記補強層の一端側に連結される被覆体と、を備え、前記補強層は、前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成されており、前記被覆体は、前記所定範囲の全体を覆うようにして設けられていることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、線状体の浮き上がりの発生を抑制しながら、被覆体を補強層に装着する場合の作業の容易化が図られる。
【0113】
(B1)線状体、帯状体又は棒状体を用いて形成された補強層を有するチューブ体と、前記補強層の一端側に連結される被覆体と、を備え、前記補強層は、前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成されており、前記被覆体は、前記補強層における前記所定範囲の側から軸線方向の中央側の領域に延在するようにして設けられていることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、被覆体を補強層に装着する場合の作業の容易化を図りながら、補強層における被覆体の支持を安定した状態で行うことが可能となる。
【0114】
(B2)前記被覆体と前記補強層との溶接箇所は、当該補強層において前記被覆体により覆われている領域であって前記所定範囲よりも軸線方向の中央側の領域に形成されていることを特徴とする上記(B1)に記載の医療用器具。本構成によれば、被覆体と補強層との接触面積が広い箇所にて溶接が行われるため、溶接強度の向上が図られる。
【0115】
(C1)補強層を有するとともに当該補強層よりも内周側に内層を有するチューブ体と、当該チューブ体に連結される金属製の被覆体と、を備えた医療用器具において、前記被覆体は前記補強層を外側から覆うようにして配置されているとともに、その被覆領域に前記被覆体と前記補強層との溶接箇所が形成されており、当該溶接箇所では、前記被覆体及び前記補強層から通じる孔部が前記内層を貫通していることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、レーザ照射を通じて溶接を行う場合において、レーザ照射装置の照射強度がある程度変動する場合であっても、被覆体と補強層との溶接を確実に行うことが可能となる。
【0116】
(C2)前記チューブ体は、前記補強層を外側から覆うように外層を備えており、前記孔部は、前記外層の形成材料により埋められていることを特徴とする上記(C1)に記載の医療用器具。本構成によれば、上記のように被覆体と補強層との溶接を確実に行えるようにした構成において、内層に生じた貫通孔を外層の形成工程を利用して埋めることが可能となる。
【0117】
(D1)線状体、帯状体又は棒状体を用いて形成された補強層を有するチューブ体と、当該チューブ体に連結される金属製の被覆体と、を備えた医療用器具において、前記被覆体は前記補強層を外側から覆うようにして配置されているとともに、その被覆領域に前記被覆体と前記補強層との溶接箇所が形成されており、当該溶接箇所は、当該溶接箇所を生じさせている補強要素の幅方向の一部のみを含むように形成されていることを特徴とする医療用器具。本構成によれば、線状体、帯状体又は棒状体を途中位置にて切断しないようにしながら、被覆体と補強層との溶接を行うことが可能となる。
【0118】
(D2)前記溶接箇所は、前記線状体、帯状体又は棒状体により形成される複数の補強要素が交差する箇所を含むように形成されていることを特徴とする上記(D1)に記載の医療用器具。本構成によれば、被覆体と補強層との溶接面積を広く確保することが可能となり、溶接強度の向上が図られる。
【0119】
(E1)補強層を有するチューブ体と、当該チューブ体に連結される金属製の被覆体と、を備え、前記補強層には、軸線方向の途中位置にて内外に貫通する孔部が形成されており、前記被覆体は、前記補強層を外側から覆うようにして配置されており、その被覆領域では、前記孔部に、前記被覆体の壁部が入り込んでいることを特徴とする医療用器具。これにより、被覆体の軸周りや軸線方向の変位が被覆体と線状体との当接により規制されるため、補強層に対する被覆体の固定強度が高められる。
【符号の説明】
【0120】
10…カテーテル組立体、11…アウタカテーテル、31…アウタ管部、33…アウタ管孔、41…内層、42…外層、43…中間層、43a…線状体、43b…先細り領域、43c…平行領域、44…先端柔軟領域、45…造影環、45a…先細り追従領域、45b…平行追従領域、45c…凹凸形状、46…溶接箇所。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強層を有するチューブ体を備え、
前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに軸線方向の一端から中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、
前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする医療用器具。
【請求項2】
補強層を有するチューブ体と、
前記補強層の一端側に連結される被覆体と、
を備え、
前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、
前記被覆体は、前記補強層の少なくとも一部を外側から覆うようにして設けられているとともに、その被覆に際しては前記端部側領域の側から前記補強層上に配置されており、
前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする医療用器具。
【請求項3】
前記被覆体は、前記端部側領域の全体を覆うようにして設けられていることを特徴とする請求項2に記載の医療用器具。
【請求項4】
前記補強層は、前記端部側領域に対して軸線方向の中央側にて連続し、外周面が軸線と平行となるように形成された平行領域を備え、
前記被覆体は、前記端部側領域の側から前記平行領域の側に延在するようにして設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の医療用器具。
【請求項5】
前記被覆体と前記補強体との溶接箇所は、前記補強層において前記被覆体により覆われている領域であって前記平行領域に対して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の医療用器具。
【請求項6】
前記被覆体は、前記端部側領域に追従するように形状付けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1に記載の医療用器具。
【請求項7】
前記チューブ体は、前記補強層よりも外周面側に樹脂層を備えており、
当該樹脂層は前記端部側領域の外側部分では前記被覆体において前記端部側領域を被覆している箇所の形状に合わせて肉厚が変化していることにより、当該箇所に対応した前記チューブ体の外周面が軸線と平行となっていることを特徴とする請求項6に記載の医療用器具。
【請求項8】
前記被覆体は、X線不透過性の材料により形成された造影環であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1に記載の医療用器具。
【請求項9】
前記補強層が前記チューブ体の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って存在していないことにより、前記チューブ体の遠位端部には柔軟領域が形成されており、
前記造影環は、前記補強層の遠位端部を外側から覆うようにして設けられていることを特徴とする請求項8に記載の医療用器具。
【請求項10】
前記補強体は、線状、帯状及び棒状のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の医療用器具。
【請求項1】
補強層を有するチューブ体を備え、
前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに軸線方向の一端から中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、
前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする医療用器具。
【請求項2】
補強層を有するチューブ体と、
前記補強層の一端側に連結される被覆体と、
を備え、
前記補強層は、補強体を用いて形成されているとともに、当該補強体により形成される複数の補強要素により区画形成されるようにして軸線方向の途中位置に内外に貫通する孔部が形成されており、さらに前記一端から軸線方向の中央側に向けた所定範囲がそれよりも軸線方向の中央側に比べて細く形成された端部側領域を備え、
前記被覆体は、前記補強層の少なくとも一部を外側から覆うようにして設けられているとともに、その被覆に際しては前記端部側領域の側から前記補強層上に配置されており、
前記端部側領域は、前記補強層を前記一端に向けて除々に細くすることにより形成されていることを特徴とする医療用器具。
【請求項3】
前記被覆体は、前記端部側領域の全体を覆うようにして設けられていることを特徴とする請求項2に記載の医療用器具。
【請求項4】
前記補強層は、前記端部側領域に対して軸線方向の中央側にて連続し、外周面が軸線と平行となるように形成された平行領域を備え、
前記被覆体は、前記端部側領域の側から前記平行領域の側に延在するようにして設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の医療用器具。
【請求項5】
前記被覆体と前記補強体との溶接箇所は、前記補強層において前記被覆体により覆われている領域であって前記平行領域に対して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の医療用器具。
【請求項6】
前記被覆体は、前記端部側領域に追従するように形状付けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1に記載の医療用器具。
【請求項7】
前記チューブ体は、前記補強層よりも外周面側に樹脂層を備えており、
当該樹脂層は前記端部側領域の外側部分では前記被覆体において前記端部側領域を被覆している箇所の形状に合わせて肉厚が変化していることにより、当該箇所に対応した前記チューブ体の外周面が軸線と平行となっていることを特徴とする請求項6に記載の医療用器具。
【請求項8】
前記被覆体は、X線不透過性の材料により形成された造影環であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1に記載の医療用器具。
【請求項9】
前記補強層が前記チューブ体の遠位端部から近位側に向けた所定範囲に亘って存在していないことにより、前記チューブ体の遠位端部には柔軟領域が形成されており、
前記造影環は、前記補強層の遠位端部を外側から覆うようにして設けられていることを特徴とする請求項8に記載の医療用器具。
【請求項10】
前記補強体は、線状、帯状及び棒状のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の医療用器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−249812(P2012−249812A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124628(P2011−124628)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(393015324)株式会社グツドマン (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(393015324)株式会社グツドマン (56)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]