説明

医療用寝台

【課題】本発明は、簡単な構成により、天板上の被検者を強固に固定することを目的とするものである。
【解決手段】マット5のヒレ部5b,5cの外面には、マット面ファスナ11,17が縫製されている。マット面ファスナ11,17は、マット5の長手方向に沿って連続的又は断続的に設けられている。各固定ベルト6,7の内面には、マット面ファスナ11,17に着脱されるベルト面ファスナ12,18が設けられている。固定ベルト6,7は、面ファスナ11,17,12,18を介してヒレ部5b,5cに接続されている。また、マット面ファスナ11,17へのベルト面ファスナ12,18の着脱により、マット5の長手方向への固定ベルト6,7の接続位置が調節可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばCT装置、MRI装置、X線診断装置、及び量子線治療装置等に設置され、被検者が載置される医療用寝台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の医療用寝台には、天板上に横になった被検者を固定する被検者固定装置が設けられている。具体的には、天板の側部に、パイルテープとフックテープとからなる接着テープにより、アタッチメントベルトの一端部が着脱可能に取り付けられる。また、アタッチメントベルトの他端部に設けられた受け部内に、固定ベルトの一端側に形成された鉤型形状の嵌め込み部が嵌合される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−279460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の被検者固定装置では、鉤型形状の嵌め込み部及び受け部がポリエチレン等の成形品で製作されており、かつ、受け部が被検者の長手方向に沿って摺動自在となるようにアタッチメントベルトに取り付けられているため、構成が複雑であるとともに、受け部が天板の長手方向に大きくなり、コストが高くなる。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成により、天板上の被検者を強固に固定することができる医療用寝台を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る医療用寝台は、天板を有する寝台本体と、天板上に載置されるマットと、マットに接続され、マット上の被検者を固定するための固定ベルトとを備え、マットの側部には、マットの長手方向に沿ってマット面ファスナが設けられており、固定ベルトには、マット面ファスナに着脱されるベルト面ファスナが設けられており、マット面ファスナへのベルト面ファスナの着脱により、マットの長手方向への固定ベルトの接続位置が調節可能になっている。
また、この発明に係る医療用寝台は、天板を有する寝台本体と、天板上に載置されるマットと、マットに接続され、マット上の被検者を固定するための固定ベルトと、マット又は固定ベルトと天板との間に接続されるマット固定バンドとを備え、天板の側部には、天板面ファスナが設けられており、マット固定バンドには、天板面ファスナに着脱されるバンド面ファスナが設けられている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、簡単な構成により、天板上の被検者を強固に固定することができる医療用寝台を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による医療用寝台を用いたX線CT装置を示す正面図である。
【図2】図1の寝台を示す斜視図である。
【図3】図2の寝台上部の断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】この発明の実施の形態2による医療用寝台を示す斜視図である。
【図6】図5の寝台上部の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3による医療用寝台の要部断面図である。
【図8】この発明の実施の形態4による医療用寝台の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による医療用寝台を用いたX線CT装置を示す正面図である。図において、X線CT装置1は、スキャナガントリ部2と、スキャナガントリ部2内に配置された寝台(医療用寝台)3とを有している。
【0010】
図2は図1の寝台3を示す斜視図である。寝台3は、寝台本体4と、寝台本体4上に載置された平板状のマット5と、マット5の幅方向の一端部に接続された複数の第1の固定ベルト6と、マット5の幅方向の他端部に接続された複数の第2の固定ベルト7とを有している。
【0011】
寝台本体4は、基台8と、基台8の上部に設けられた載置部9と、載置部9の中央に水平に設置された天板10とを有している。天板10は、被検者を載置するのに十分な幅と長さとを有している。
【0012】
マット5は、被検者が載置されるマット本体5aと、マット本体5aの幅方向一端部に設けられている布製の第1のヒレ部5bと、マット本体5aの幅方向他端部に設けられている布製の第2のヒレ部5cとを有している。ヒレ部5b,5cは、マット本体5aの長手方向に沿って連続して設けられている。また、ヒレ部5b,5cは、固定ベルト6,7で被検者を固定する際に、被検者を両側から包むようにして押さえ付ける。
【0013】
第1の固定ベルト6は、マット5の長手方向に互いに間隔をおいて、第1のヒレ部5bの外面(被検者を固定したときに被検者とは反対側になる面)に接続されている。第2の固定ベルト7は、マット5の長手方向に互いに間隔をおいて、第2のヒレ部5cの外面に接続されている。固定ベルト6,7は、布等の可撓性の材料により構成されているが、図2では水平に広げた状態を示している。
【0014】
図3は図2の寝台3の上部の断面図、図4は図3の要部拡大図であり、それぞれ天板10の長手方向に直角な断面を示している。第1のヒレ部5bの外面には、第1のマット面ファスナ11が縫製されている。第1のマット面ファスナ11は、マット5の長手方向に沿って連続的又は断続的に設けられている。各第1の固定ベルト6の内面(被検者を固定したときに被検者側になる面)には、第1のマット面ファスナ11に着脱される第1のベルト面ファスナ12が設けられている。
【0015】
第1の固定ベルト6は、面ファスナ11,12を介して第1のヒレ部5bに接続されている。また、第1のマット面ファスナ11への第1のベルト面ファスナ12の着脱により、マット5の長手方向への第1の固定ベルト6の接続位置が調節可能になっている。
【0016】
各第1の固定ベルト6の内面には、第2の固定ベルト7に接続するための第1の接続面ファスナ13が縫製されている。また、各第1の固定ベルト6の外面には、補助面ファスナ14が縫製されている。
【0017】
天板10の一方の側部には、第1の天板面ファスナ15が固着されている。第1の天板面ファスナ15は、天板10の長手方向に沿って連続的又は断続的に設けられている。天板10と第1の固定ベルト6との間には、複数の第1のマット固定バンド16が接続されている。
【0018】
各第1のマット固定バンド16は、面ファスナにより構成され、補助面ファスナ14及び第1の天板面ファスナ15に着脱可能に取り付けられている。また、第1のマット固定バンド16は、天板10の長手方向について、対応する第1の固定ベルト6と同じ位置に配置されている。
【0019】
さらに、天板10の長手方向への第1のマット固定バンド16の接続位置は、マット5への第1の固定ベルト6の接続位置に応じて調節可能になっている。さらにまた、各第1のマット固定バンド16の幅寸法は、第1の固定ベルト6の幅寸法以下となっている。
【0020】
第2のヒレ部5cの外面には、第2のマット面ファスナ17が縫製されている。第2のマット面ファスナ17は、マット5の長手方向に沿って連続的又は断続的に設けられている。各第2の固定ベルト7の内面には、第2のマット面ファスナ17に着脱される第2のベルト面ファスナ18が設けられている。
【0021】
第2の固定ベルト7は、面ファスナ17,18を介して第2のヒレ部5cに接続されている。また、第2のマット面ファスナ17への第2のベルト面ファスナ18の着脱により、マット5の長手方向への第2の固定ベルト7の接続位置が調節可能になっている。
【0022】
各第2の固定ベルト7の外面には、第1の接続面ファスナ13が着脱される第2の接続面ファスナ19が縫製されている。
【0023】
天板10の他方の側部には、第2の天板面ファスナ20が固着されている。第2の天板面ファスナ20は、天板10の長手方向に沿って連続的又は断続的に設けられている。天板10と第2の固定ベルト7との間には、複数の第2のマット固定バンド21が接続されている。
【0024】
各第2のマット固定バンド21は、面ファスナにより構成され、第2の接続面ファスナ19及び第2の天板面ファスナ20に着脱可能に取り付けられている。また、第2のマット固定バンド21は、天板10の長手方向について、対応する第2の固定ベルト7と同じ位置に配置されている。
【0025】
さらに、天板10の長手方向への第2のマット固定バンド21の接続位置は、マット5への第2の固定ベルト7の接続位置に応じて調節可能になっている。さらにまた、各第2のマット固定バンド21の幅寸法は、第2の固定ベルト7の幅寸法以下となっている。
【0026】
天板10の上面には、第3の天板面ファスナ22が固着されている。マット5の裏面には、第3の天板面ファスナ22に着脱される第3のマット面ファスナ23が固着されている。マット5は、面ファスナ22,23を介して天板10に接続されている。
【0027】
このような寝台3では、ポリエステル等の成形品を用いずに、面ファスナ11,12,17,18を用いた簡単な構成により、マット5の長手方向への固定ベルト6,7の接続位置を容易に調節することができ、これにより、被検者に応じた適切な位置に固定ベルト6,7を配置することができ、天板10上の被検者を強固に固定することができる。
【0028】
また、面ファスナ15,20を用いた簡単な構成により、固定ベルト6,7と天板10の側部との間をマット固定バンド16,21で接続したので、被検者の体軸を中心としたローリング方向への動きに対して、マット5の天板10からの引き剥がしに対抗し、マット5を天板10上に強固に固定することができ、これによっても、天板10上の被検者を強固に固定することができる。
【0029】
さらに、マット本体5aの側部から突出したヒレ部5b,5cに固定ベルト6,7を接続したので、被検者に近い位置で固定ベルト6,7の位置調節をさらに容易に行うことができる。また、第1の接続面ファスナ13と第2の接続面ファスナ19とを係止して、第1の固定ベルト6と第2の固定ベルト7とを止着することにより、被検者をヒレ部5b,5c及び固定ベルト6,7により天板10上に強固に固定することができる。
【0030】
なお、マット固定バンド16,21は、固定ベルト6,7に対して着脱可能とせず、例えば固定ベルト6,7に縫製してもよい。
また、上記の例では、マット固定バンド16,21を面ファスナで構成したが、布等で構成されたマット固定バンドに別体の面ファスナを縫製してもよい。
【0031】
実施の形態2.
次に、図5はこの発明の実施の形態2による医療用寝台を示す斜視図、図6は図5の寝台上部の断面図である。実施の形態1では、第1及び第2の固定ベルト6,7を用いたが、実施の形態2では、第1の固定ベルト6(以下、単に固定ベルト6と称する)のみが用いられている。また、第2のヒレ部5cの幅寸法が、第1のヒレ部5bの幅寸法よりも大きくなっている。
【0032】
さらに、接続面ファスナ13は、第2のマット面ファスナ17に着脱される。即ち、固定ベルト6は、面ファスナ13,17を介して第2のヒレ部5cに着脱される。
【0033】
第2のマット固定バンド21は、第2のヒレ部5cと天板10との間に接続されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0034】
このような構成によっても、ポリエステル等の成形品を用いずに、面ファスナ11,12を用いた簡単な構成により、マット5の長手方向への固定ベルト6の接続位置を容易に調節することができ、これにより、被検者に応じた適切な位置に固定ベルト6を配置することができ、天板10上の被検者を強固に固定することができる。
【0035】
また、面ファスナ15,20を用いた簡単な構成により、ヒレ部5c及び固定ベルト6と天板10の側部との間をマット固定バンド16,21で接続したので、被検者の体軸を中心としたローリング方向への動きに対して、マット5の天板10からの引き剥がしに対抗し、マット5を天板10上に強固に固定することができ、これによっても、天板10上の被検者を強固に固定することができる。
【0036】
実施の形態3.
次に、図7はこの発明の実施の形態3による医療用寝台の要部断面図である。実施の形態3では、第1のヒレ部5bに固定ベルト6が縫製されている。他の構成は、実施の形態2と同様である。
【0037】
このような医療用寝台では、面ファスナ15,20を用いた簡単な構成により、ヒレ部5c及び固定ベルト6と天板10の側部との間をマット固定バンド16,21で接続したので、被検者の体軸を中心としたローリング方向への動きに対して、マット5の天板10からの引き剥がしに対抗し、マット5を天板10上に強固に固定することができ、天板10上の被検者を強固に固定することができる。
【0038】
なお、実施の形態3の構成においては、第2のヒレ部5cの全長に渡って第2のマット面ファスナ17を設けることで、固定ベルト6を被検者の体軸に対して斜めに巻き付けて被検者を固定することが可能となる。これにより、被検者の点滴部や創傷部位を避けて固定ベルト6により被検者を固定することが可能となる。
また、実施の形態1において、第1のヒレ部5bに第1の固定ベルト6を縫製するとともに、第2のヒレ部5cに第2の固定ベルト7を縫製してもよい。
さらに、実施の形態1〜3では、ヒレ部5b,5cにマット面ファスナ11,17を設けたが、例えばヒレ部5b,5cがない場合には、マット本体5aの幅方向端部にマット面ファスナ11,17を設けてもよい。
【0039】
実施の形態4.
次に、図8はこの発明の実施の形態4による医療用寝台の要部断面図である。マット本体5aの幅方向両端部には、複数のマット固定バンド31が接続されている。マット固定バンドは、マット本体5aの長手方向に互いに間隔をおいてマット本体5aに縫い付けられている。マット固定バンド31には、天板面ファスナ15,20に着脱されるバンド面ファスナ32が縫製されている。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0040】
このような構成によっても、ポリエステル等の成形品を用いずに、面ファスナ11,12,17,18を用いた簡単な構成により、マット5の長手方向への固定ベルト6,7の接続位置を容易に調節することができ、これにより、被検者に応じた適切な位置に固定ベルト6,7を配置することができ、天板10上の被検者を強固に固定することができる。
【0041】
また、面ファスナ15,20,32を用いた簡単な構成により、マット本体5aと天板10の側部との間をマット固定バンド31で接続したので、被検者の体軸を中心としたローリング方向への動きに対して、マット5の天板10からの引き剥がしに対抗し、マット5を天板10上に強固に固定することができ、これによっても、天板10上の被検者を強固に固定することができる。
【0042】
なお、実施の形態2、3のマット固定バンド16,21を実施の形態4のマット固定バンド31に置き換えてもよい。
また、上記の例では、面ファスナを介して固定ベルト6と固定ベルト7又はヒレ部5cとを接続したが、この部分の接続手段は面ファスナに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
3 寝台(医療用寝台)、4 寝台本体、5 マット、6 第1の固定ベルト、7 第2の固定ベルト、10 天板、11 第1のマット面ファスナ、12 第1のベルト面ファスナ、15 第1の天板面ファスナ、16 第1のマット固定バンド、17 第2のマット面ファスナ、18 第2のベルト面ファスナ、20 第2の天板面ファスナ、21 第2のマット固定バンド、31 マット固定バンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板を有する寝台本体と、
前記天板上に載置されるマットと、
前記マットに接続され、前記マット上の被検者を固定するための固定ベルトと
を備え、
前記マットの側部には、前記マットの長手方向に沿ってマット面ファスナが設けられており、
前記固定ベルトには、前記マット面ファスナに着脱されるベルト面ファスナが設けられており、
前記マット面ファスナへの前記ベルト面ファスナの着脱により、前記マットの長手方向への前記固定ベルトの接続位置が調節可能になっていることを特徴とする医療用寝台。
【請求項2】
前記天板と前記固定ベルトとの間に接続されるマット固定バンドをさらに備え、
前記天板の側部には、前記天板の長手方向に沿って天板面ファスナが設けられており、
前記マット固定バンドには、前記天板面ファスナに着脱されるバンド面ファスナが設けられており、
前記天板の長手方向への前記マット固定バンドの接続位置は、前記マットへの前記固定ベルトの接続位置に応じて調節可能になっていることを特徴とする請求項1記載の医療用寝台。
【請求項3】
前記天板と前記マットとの間に接続されるマット固定バンドをさらに備え、
前記天板の側部には、天板面ファスナが設けられており、
前記マット固定バンドには、前記天板面ファスナに着脱されるバンド面ファスナが設けられていることを特徴とする請求項1記載の医療用寝台。
【請求項4】
前記マットは、マット本体と、前記マット本体の側部に前記マット本体の長手方向に沿って連続して設けられているヒレ部とを有しており、
前記マット面ファスナは、前記ヒレ部に縫製されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の医療用寝台。
【請求項5】
天板を有する寝台本体と、
前記天板上に載置されるマットと、
前記マットに接続され、前記マット上の被検者を固定するための固定ベルトと、
前記マット又は前記固定ベルトと前記天板との間に接続されるマット固定バンドと
を備え、
前記天板の側部には、天板面ファスナが設けられており、
前記マット固定バンドには、前記天板面ファスナに着脱されるバンド面ファスナが設けられていることを特徴とする医療用寝台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9731(P2013−9731A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143047(P2011−143047)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】