説明

医療用材料の製造方法および医療用材料

【課題】本発明は、従来の医療用材料に比べて、抗血栓性、ひいては生体適合性に優れ、かつ安全性の高い医療用材料を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ヘパリンを除く多糖類を溶解した溶液Aとリン脂質を溶解した溶液Bを別々に調製し、攪拌する溶液Bに溶液Aを添加することにより、多糖類分子鎖中にリン脂質をイオン結合により導入することを特徴とする医療用材料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用もしくは化粧品用に用いる新規で安全性の高い組成物、詳しくは生体適合性、親水性に優れた抗血栓材、潤滑材、創傷被覆材、粘膜保護材、免疫抑制材、癒着防止材、薬物徐放基材等の医療用途に好適に用いる事ができる抗血液凝固活性の少ない多糖類とリン脂質をイオン結合させた組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然由来化合物を用いた生体適合性材料は医療業界または化粧品業界で幅広く応用されており、特に医療業界では天然由来化合物が持つ緻密な分子設計や優れた安全性により好適に用いられている。中でも天然由来化合物に代表されるヘパリンは優れた抗血液凝固活性をもつ素材として、医療基材のコーティング材料として幅広く用いられている。
【0003】
抗血液凝固活性が要求される医療基材といえば、人工心臓、人工心臓弁、人工血管、血管カテーテル、カニューレ、人工心肺、血管バイパスチューブ、大動脈バルーンポンピング、輸液用具及び体外循環回路などの血液と直接接触して使用されるものがあげられ、これらの基材に抗血栓性素材を固定化する技術が多く開示されている。
【0004】
基材表面に抗血栓性を発現させる方法として、基材表面を親水性処理し、生体適合性を向上させる方法がある。これは、親水性表面により作り出された水分子のバリアーが血液成分と基材との接触を阻害することによって発現される。なかでも、MPCポリマーと称される2−メタクリロイルオキシエチルホスホコリンを用いたポリマーは生体膜の主要構成成分であるリン脂質に類似した構造を持つため、優れた親水性と生体適合性を発現するとされている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
また、重合開始剤を用いた重合性ポリマーではなく、天然由来の材料を組み合わせた生体適合性の材料の製造方法も開示されている。例えば、グリコサミノグリカン、特にヒアルロン酸のカルボキシル基と脂質のアミノ基を水と環状エーテル混合溶媒中の触媒存在下で反応させることにより、ペプチド結合による誘導体が製造できる(特許文献3参照)。しかし、製造に用いる触媒は生体に毒性があるため、完全に除去する工程が必要となる。また、溶媒に用いる環状エーテルも毒性があるので完全に除去する工程が必要となる。また、これらの天然材料を結合するのは共有結合であって、もし、基材から血液中及び体内中に溶出した場合、個々の天然材料へと分解されることは考えにくく、本来有している安全性を十分に発揮しない可能性は否定できない。
【特許文献1】特許第3207210号公報
【特許文献2】特許第3802656号公報
【特許文献3】特開2006−348071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の医療用材料に比べて、抗血栓性、ひいては生体適合性に優れ、かつ安全性の高い医療用材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、安全性の高い材料の組み合わせからなる複合体であって、優れた抗血栓性、生体適合性、親水性を有し、それらの持続性を有する医療用途に適した材料について鋭意検討した結果、多糖類とリン脂質とをイオン結合により複合体化した材料が前記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の構成を有する。
(1)ヘパリンを除く多糖類を溶解した溶液Aとリン脂質を溶解した溶液Bを別々に調製し、攪拌する溶液Bに溶液Aを添加することにより、多糖類分子鎖中にリン脂質をイオン結合により導入することを特徴とする医療用材料の製造方法。
(2)イオン結合が多糖類分子鎖中のアニオン性基とリン脂質のカチオン性基との結合であることを特徴とする(1)に記載の医療用材料の製造方法。
(3)溶液Bに溶液Aを添加する際の温度が80℃以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の医療用材料の製造方法。
(4)溶液Aが多糖類/アルコール/水=0.01/0/99.9〜20/56/24からなることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
(5)溶液Bがリン脂質/アルコール/水=0.01/99.9/0〜20/32/48であることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
(6)多糖類が、フコイダン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ペクチン酸、ヘキスロン酸、カラギーナン、キサンタンガム、ラムナン硫酸から選ばれる酸性多糖類の少なくとも1種以上であることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
(7)多糖類の分子量が500〜150万であることを特徴とする(1)〜(6)いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
(8)リン脂質が、下記一般式1〜5で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上である(1)〜(7)いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
【化6】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化7】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化8】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化9】

(式中、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示す。)
【化10】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
(9)溶液Bにさらに1価または/および2価イオンを添加することを特徴とする(1)〜(8)いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
(10)(1)〜(9)いずれかに記載の方法により、多糖類分子鎖中にリン脂質がイオン結合により導入された複合体からなることを特徴とする医療用材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により得られる複合体は、水不溶性であるため安全性が高く、親水性と疎水性が高度にバランスされているため生体適合性に優れており、抗血栓性材料、親水化処理材料として好適に用いることができる。また、材料としての物性が水に不溶であるため、長期的な表面処理効果を持続でき、さらには多糖類とリン脂質がイオン結合により複合体化されているので、人体に有害な作用を及ぼすと考えうる薬理的な作用を有しないため、皮膚などの人体組織にも使用できる。また別に、本発明を適用することにより、高収率で複合体を製造することができるので、生産コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、多糖類を溶解した溶液Aとリン脂質を溶解した溶液Bを別々に調製し、溶液Bを攪拌しながら溶液Aを滴下することにより多糖類とリン脂質とを反応させることが好ましい。多糖類とリン脂質をイオン結合させるためには、それぞれの化合物が持つイオン性基のイオン選択性と化合物が溶解状態から不溶状態に変化する際の凝集力とを最適化する必要がある。ここで、親水性の多糖類と疎水性のリン脂質を同一の溶液に溶解させて反応(イオン結合)させようとした場合、化合物を溶解する際にどちらかの化合物が不溶、不均一になってしまうとか、一方の化合物がイオン化せず、イオン結合がなされないことがある。また、共溶解性の強力な溶媒を用いて両方を溶解できたとしても、複合体自身も溶解してしまい、不溶化による凝集効果は得られないとか、回収率を高めることが出来ないなどの問題が生ずることがある。したがって、それぞれの化合物を別々に溶解した溶液を調製し、それらを用いて反応に供することが本発明の第1のポイントである。
【0011】
本発明の製造方法により得られる医療用材料は、先述したように多糖類分子鎖中にリン脂質がイオン結合により導入された複合体からなることが好ましい。多糖類分子鎖中へのリン脂質の導入方法としては、他に共有結合が考えられるが、反応させる際に触媒や酸化剤、還元剤、強酸、強アルカリ等を使用することになるため、医療用途に使用する場合には生体への悪影響を考慮し、これらを完全に除去する必要がある。また、共有結合により複合体の分子構造そのものが変化することがあるため、生体が複合体を異物認識してしまい、多糖類やリン脂質が持つ本来の安全性を損なう可能性がある。
【0012】
また、イオン結合は、結合力は共有結合ほど強くはないが、それ故にそれぞれの分子本来の安全性を保持することができる。イオン結合はそれぞれの化合物が電気的に引き寄せられているだけであり、構造自体は変化していないこと、また、他イオンの存在下であれば、イオンの選択性によって徐々に結合が外れて、最終的には完全に個々の分子に戻ることが考えられる。このことは、生体材料として大きなメリットとなる。生体内、例えば血液中では、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどの多くのイオンが存在するため、イオン結合からなる複合体が仮に血液中に溶出、混入した際にも、徐々に複合体は分解され、本来の安全性の高い個々の分子(化合物)に戻ることができる。よって、安全性の高い化合物、例えば生物由来、植物由来、天然由来等の化合物もしくは安全性がすでに認められている合成物同士のイオン結合体であれば、生体内での吸収、代謝、排出の面での危険性は少ないと思われる。
【0013】
本発明において、多糖類を溶解させた溶液Aは、多糖類を水単独もしくはアルコールと水の混合溶媒に溶解したものであることが好ましい。多糖類は主に水溶性であり水中では大部分がイオン化するので多糖類の溶媒としては水が好ましいが、そうすると疎水性であるリン脂質との反応性が低下してしまう。また、アルコールを混合する理由としては、リン脂質の入った溶液と混合した際に、両液混合溶媒の疎水性を上げ、複合体の凝集を促進させることが挙げられる。疎水性を上げるには他の有機溶媒が考えられるが、生体への安全性や水との混和性を考慮するとアルコールが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどがあるが、エタノールが好ましい。
【0014】
本発明において、リン脂質を溶解させた溶液Bは、溶媒としてアルコール単独あるいはアルコールと水の混合溶媒であることが好ましい。リン脂質は主に水不溶性であり、水中では凝集するため、溶解もしくは均一に分散させるにはアルコールを用いることが好ましい。また、水を混合する理由としては、リン脂質の持つイオン性基はアルコール単独ではイオン化しないため、水を混合しイオン化させることがあげられる。アルコール単独でも、両液を混合した際に瞬間的にイオン化して結合することができるが、あらかじめ水を混合しておいた方が結合率が高く好ましい。溶液Bに用いるアルコールは、前記溶液Aに用いたのと同様のアルコールを用いるのが好ましい。
【0015】
溶液Aにおける水単独もしくはアルコールと水の混合溶媒に溶解させる多糖類の重量は、水単独もしくはアルコールと水の混合溶媒重量100に対して、0.01〜20重量%であることが好ましい。0.01重量%以下である場合は、複合体の収量が極少量になってしまい、コスト面で不利である。また、20重量%以上の場合は粘度が著しく上昇するため、両液を混合しようしても十分に混和することができなくなり不均一な結合になってしまうことがある。
【0016】
溶液Aにおけるアルコールと水の重量比は、アルコール/水=0〜70/30〜100であることが好ましい。アルコールの含有比が70重量%以上もしくは水の含有比が30重量%以下の場合は多糖類が不溶化してしまい、均一な複合体を得ることができないことがある。すなわち、溶液Aにおいて、多糖類/アルコール/水の混合割合は0.01/0/99.9〜20/56/24であることが好ましい。
【0017】
溶液Bにおけるアルコール単独もしくはアルコールと水の混合溶媒に溶解させるリン脂質の重量は、アルコール単独もしくはアルコールと水の混合溶媒重量100に対して、0.01〜20重量%であることが好ましい。0.01重量%以下である場合は、結合された複合体の収量が極少量になってしまい、コスト面で不利である。また、20重量%以上の場合はリン脂質が飽和して不溶分ができてしまい、両液を混合しようしても十分に混和することができなく不均一な結合になってしまう可能性がある。
【0018】
溶液Bにおけるアルコールと水の重量比は、アルコール/水=40〜100/0〜60であることが好ましい。アルコール/水の重量比が40〜100/0〜60であれば、リン脂質を均一に溶解もしくは分散させることができる。アルコールの含量が40重量%以下もしくは水の含量が60重量%以上の場合はリン脂質が著しく不溶化して凝集してしまい、均一な複合体を得ることができない可能性がある。すなわち、本発明の溶液Bはリン脂質/アルコール/水=0.01〜20/40〜100/0〜60の重量比で調整される。すなわち、溶液Bにおいて、リン脂質/アルコール/水の混合割合は0.01/99.9/0〜20/32/48であることが好ましい。
【0019】
本発明において、多糖類の数平均分子量は500〜150万であることが好ましい。数平均分子量が500〜150万であれば、多糖類の構造中に十分な量のリン脂質をイオン結合により導入することができる。数平均分子量が500以下の場合は構成する糖単位が1あるいは2単位しかなく、イオン性基の数も少ないため、結合が十分に行われないとか、リン脂質の絶対量が少ないために医療用材料としての有効性が得られない可能性がある。また、数平均分子量が150万以上である場合は、リン脂質と結合した複合体が超高分子量の複合体となり、溶媒に不溶になるとか、溶解した際にも粘性が高すぎて取扱い性が低下し、コーティング用途等には使用することができない可能性がある。
【0020】
本発明に適用される多糖類はヒアルロン酸、フコイダン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ペクチン酸、ヘキスロン酸、カラギーナン、キサンタンガム、ラムナン硫酸等の酸性多糖類が好ましく、中でもウイルス感染のリスクがなく、安全性の高いとされている植物由来のフコイダン、アルギン酸が好ましい。さらに好ましくは親水性の高い硫酸基を持つフコイダンである。しかし、薬理的な抗凝固作用を強く発現するヘパリンは、リスクの観点から出血傾向のある患者や患部には適用することは好ましくない。患者に何かしらの出血に関する不具合が発生した場合、たとえ溶出しないよう設計されたヘパリン含有複合体であっても、ヘパリンを使用したという事実によって、因果関係を完全に否定することは難しくなる可能性があるからである。
【0021】
本発明に適用される多糖類は上記の多糖類から選ばれる少なくとも1種類以上で構成されており、これらの化合物は医学的に許容される塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩であってもよい。
【0022】
フコイダン、アルギン酸は植物由来の多糖類であり、主に褐藻類に多く含まれている。リン脂質と結合しうるイオン性基は、フコイダンは硫酸基でアルギン酸はカルボキシル基である。また、ヒアルロン酸、ヘパリンは生物由来の多糖類であり、ヒアルロン酸は主に鶏冠、ヘパリンは主に豚の腸や牛の肺に多く含まれている。リン脂質と結合しうるイオン性基は、ヒアルロン酸はカルボキシル基であり、フコイダンは硫酸基である。これらの多糖類は医薬品、医療機器、もしくは食品として広く用いられているので医療材料として好適に用いる事ができる。
【0023】
本発明において、リン脂質は下記一般式1〜5で示される化合物から選ばれる少なくとも1種類以上であり、これらのリン脂質はすべてN+のイオン性基を持つリン脂質であることが好ましい。また、リン脂質末端のアルキル鎖は1ないし2本で、炭素数は10〜24個であるアルキル鎖を有するものが好ましい。この時、アルキル鎖の炭素-炭素結合はすべてが単結合である必要はなく、二重結合が1つ以上ある、すなわち不飽和のアルキル鎖を含んでいてもよい。一般式1のリン脂質はホスファチジルコリン(PC)、一般式2のリン脂質はホスファチジルエタノールアミン(PE)、一般式3のリン脂質はスフィンゴミエリン(SPM)、一般式4のリン脂質はリゾホスファチジルコリン(LysoPC)、一般式5のリン脂質はホスファチジルセリン(PS)と一般的に呼ばれている。
一般式1においてR=14、R=16であれば、ミリストイルパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)と表記される。また、天然に存在するリン脂質、例えば卵由来、大豆由来、牛乳由来のレシチンは一般式1〜5に示されるリン脂質が混合されたものであり、その組成比は由来によって異なる。このように、本発明に適用されるリン脂質は天然由来もしくは合成物の一般式1〜5に示されるリン脂質を少なくとも1種類以上含んでおり、レシチンのように数種類のリン脂質の組み合わせでもよい。これらのリン脂質を選択する理由としては、N+のイオン性基が含まれているため、本発明の製造方法によって多糖類とのイオン結合が可能になるためである。
【化11】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化12】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化13】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化14】

(式中、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示す。)
【化15】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0024】
一般式1〜5におけるR〜Rの炭素数は10〜24が好ましい。炭素数が9以下の場合は疎水性が低下し、本来多糖類に付与するべき性能が得られない可能性がある。また、炭素数が25以上の場合は溶液Bを調整する際、アルコールに不溶になって均一な溶解または分散ができなかったり、イオン結合複合体になった際に疎水性が強すぎて溶剤に溶けなくなってコーティング等の用途で不便になる可能性がある。
【0025】
一方、他のリン脂質、例えば一般式6で示されるホスファチジルグリセロール(PG)、一般式7で示されるホスファチジン酸(PA)はN+のイオン性基を有していないので、そのままでは多糖類とのイオン結合はできない。これらを多糖類に結合させるには、共有結合させることが考えられるが用いる触媒や還元剤の種類によっては生体への為害性に配慮する必要があるとか、共有結合した複合体自体の安全性に疑問がある。
【化16】

(式中、R10、R11は炭素原子数10〜24のアルキル基を示す。)
【化17】

(式中、R12、R13は炭素原子数10〜24のアルキル基を示す。)
【0026】
本発明において、多糖類とリン脂質の結合率は1〜100%である。ここでいう結合率とは、複合体中において、多糖類の持つイオン性基、具体的には硫酸基あるいはカルボキシル基の数に対して、どのぐらいの数のリン脂質が結合しているかを表す。すなわち、結合率=複合体中のリン脂質の数/複合体中の多糖類のイオン性基の数×100となる。結合率が1%未満の場合は、リン脂質の結合量が極微量のため、疎水性付与、分散性付与や生体適合性付与等の効果が十分に得られず、多糖類単独となんら変わりのない複合体になってしまう可能性がある。
【0027】
結合率を決定する一つの要素としては、溶液A中の多糖類の重量と溶液B中のリン脂質の重量の比率が挙げられる。本発明において、溶液A中の多糖類の重量/溶液B中のリン脂質の重量=5〜99/1〜95の比であることが好ましい。多糖類の重量比が99以上、リン脂質の重量比が1以下の場合は、多糖類に結合されるリン脂質の量が極少量になってしまい、結合率を高めることができないことがある。また、多糖類の重量比が5以下、リン脂質の重量比が95以上の場合は、多糖類中に十分にリン脂質が結合され、結合率は十分高くなるが、未結合のリン脂質が過剰に溶液中に残るので、精製が困難になったり、コスト面で不利になったりする。
【0028】
本発明の製造方法において、溶液Aと溶液Bを混合する際の温度は室温以下のような比較的低温でも構わないが、溶液Aと溶液Bをそれぞれ加温しておくことが好ましい。溶液の温度としては、40〜100℃が好ましいが、60〜80℃がより好ましい。溶液を加温する理由としては、溶液中の原料の溶解度を上げることや、溶液の粘度を下げることが挙げられる。溶解度の上昇によりイオン性化合物のイオン化を促進し、イオン結合しやすい状態にすることができる。また、粘度を下げる目的としては、溶液A、Bを混合する際に均一に混合する必要があるため、粘度が著しく高い溶液では均一に混合することができず、複合体間で結合率が不均一になる可能性がある。
【0029】
特に、溶液Aに含まれる高分子量の多糖類は溶液中の濃度が上がるに従い粘度が著しく上昇するため、加温して粘度を下げた状態で混合させることが好ましい。(参考として、フコイダンとアルギン酸について温度と粘度のデータを図1に示す)。複合体間で結合率を均一にするための溶液の粘度としては30,000cP以下が好ましい。溶液の粘度を下げることにより、多糖類分子とリン脂質分子の運動性が高まり、衝突確率が高まり、複合体間での結合率を均一にすることができる。
【0030】
本発明の製造方法において、複合体の収率としては、15〜90%が好ましく、より好ましくは50〜90%である。本発明における収率(%)とは、「得られた複合体の重量/(溶液Aに含まれる多糖類の重量+溶液Bに含まれるリン脂質の重量)×100」によって算出される。収率に影響する要素としては、溶液中の多糖類及びリン脂質の含有量があげられる。収率を高めるには、溶液中に多くの多糖類及びリン脂質を溶解させれば良いが、上述したように、多量に溶解させると各溶液の粘度が高くなるとか、原料の溶解性が低下するなどして、複合体の品質の低下を招くことがあるため、加温して粘度を下げてなるべく多量の多糖類及びリン脂質を含ませるように調製するのが好ましい。
【0031】
また、溶液Bに1価または/および2価の陽イオンを添加することによって、本発明の複合体の収率を高くすることもできる。本発明において使用するリン脂質は、N+のカチオン性基とリン酸基のアニオン性基と両方を有しているため、多糖類のアニオン性基とN+が結合する際に、リン酸基のアニオン性基が結合を阻害してしまうことが考えられる。しかし、リン酸基の含まれる溶液Bに1価または2価の陽イオンを添加することによって、リン酸基のアニオン性基をマスキングすることにより複合体の収率が飛躍的に高まることを見出した。このマスキング効果によって、複合体の形成が促進されて収率が高くなる。この方法を用いることにより、本発明者は複合体の収率を前段の方法に対して最大600%程度高くすることができる、すなわち収率として最大90%程度にまで高めることに成功している。
【0032】
溶液Bに添加する1価または2価の陽イオンとしては、医学的に許容されるイオン、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンが挙げられる。また、抗菌性を付与する等の効果を期待して銀イオンを用いることも考えられる。これらのイオンは塩化物イオンや硫酸イオン等との医学的に許容される塩であってもよい。これらのイオンを添加することによって、複合体の収率を高くすることができるが、患者の健康状態や用途によっては適さないイオンも存在するので、そのような場合はイオンを添加しなくても良い。例えば、高カリウム血症や高カルシウム血症などの患者用にはイオンを添加せずに合成した複合体を使用するとか、血中に直接複合体を注入する際はカリウム以外のイオンを添加したものか、イオンを添加していない複合体を使用するのが好ましい。また、複合体を形成した後に、イオンを除去する方法も取り得る。
【0033】
本発明の方法によって得られる複合体は水不溶性であることが好ましい。ここで、水不溶性であるとは、複合体0.1gを水10gの入ったビーカーに加えて室温で24時間以上十分に攪拌した後に、遠心分離機で3000rpm、15分間遠心し、上澄みを捨てて残った沈殿物を凍結乾燥した後の重量が、初期重量の50%以上であることを差す。水不溶性であることにより、生体組織や医療基材にコーティングし、生体組織や血液等と接触した場合にも、複合体の血液などへの溶出を防ぐ点で好ましい。また、長期間生体組織や医療基材に留まる事ができるため、長期的な効果の持続が期待できる。
【0034】
さらには、本発明の方法によって得られる複合体は水分散性に優れていることが好ましい。水分散性とは、水中もしくは水を多く含む液体中で、不溶でありながらも均一に分散できる性質を指し、白く濁って見えることが特徴である。例えば、一般的に良く知られている牛乳では、成分が水不溶性にも関わらず、沈殿や凝集することもなく均一に分散した状態になっている。これは水不溶性の成分が親水性部と疎水性部とをバランスよく保持しているためである。本発明の方法によって得られる複合体においても多糖類の親水性とリン脂質の疎水性の両方を合わせ持つために水分散性を有している。水分散性の持つ複合体のメリットとしては、コーティング液とした際に水を溶媒とすることができることである。一般的に疎水性の材料を基材にコーティングする際はアルコールや種々の有機溶媒が使われるが、基材を傷つけたり、基材中の添加剤を抽出してしまったりと不便なことが多い。また、これらの有機溶剤系のコーティング液は体外循環用の基材に対してのみコーティングでき、例えば体内に留置してある医療基材にコーティングするとか、皮膚や患部そのものをコーティングする等の用途には用いることができない。よって、水分散性を持つ複合体は、基材のコーティングの際に有利なだけではなく、生体にも使用できるといったメリットがある。もちろん、乾燥時間の効率化等を考慮して、有機溶剤に溶かして使用することも選択肢の一つである。
【0035】
本発明は、医療用もしくは化粧品用に用いる新規で安全性の高い組成物、詳しくは生体適合性、親水性に優れた抗血栓材、潤滑材、創傷被覆材、粘膜保護材、免疫抑制材、癒着防止材、薬物徐放基材等の医療用途に好適に用いる事ができる多糖類とリン脂質を結合させた組成物に関する。得られた複合体を精製するには、複合体不溶の溶媒で再沈殿を行うかあるいは複合体分散液を透析する等の一般的な方法も可能である。
【0036】
溶液A及び溶液Bを混合した溶液中には、イオン結合により得られた複合体の他に、未結合の多糖類及びリン脂質も含まれているため、高純度の複合体を得るには精製が必要となる。得られた複合体を精製するには、複合体不溶の溶媒で再沈殿を行うかあるいは複合体分散液を透析する等の一般的な方法も可能である。本願発明においては、水、アルコール、その他の有機溶媒を用いて再沈殿させることが好ましい。再沈殿に用いる溶媒には、複合体の溶解性が低い、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトンが用いられ、他の溶剤と混合しても良い。
【0037】
実際の再沈殿の処理方法としては例えば、得られた複合体1重量部に対して水を5〜10重量部加え、十分に攪拌して分散させる。得られた分散溶液1重量部に対して10〜20重量部の再沈殿溶媒に滴下することにより実施される。1回の再沈殿で複合体が十分に精製できない時は2回以上同じ操作を行ってよい。また、沈殿が遅かったり、十分に沈殿しない場合は遠心分離等の操作で分別してもよい。
【0038】
精製された複合体を材料として用いるためには乾燥による溶媒の除去が必要となる。乾燥方法としては、凍結乾燥、加温乾燥、減圧乾燥があげられる。本発明の複合体は精製と乾燥が完了すると、白色もしくはやや黄色の白色粉末状になり、保管や運搬、秤量が簡便である。
【0039】
上述した本発明の方法によって得られる複合体は、水不溶性であり、組織や医療基材の表面処理剤として好ましく用いることができる。具体的な態様として、得られた複合体を有機溶媒や水に溶解・分散させることにより得られる溶液を医療用具等の基材表面に塗布した後、溶媒を除去することによって得ることができる。本発明の方法によって得られる複合体を基材表面に担持させる方法としては、他には基材表面で複合体を形成させることもできる。具体的には、リン脂質及びリン脂質と陽イオンを溶解・分散させた溶液を用いて基材をコーティングし、その後に多糖類を溶解した溶液を浸漬させる。すると、基材上で複合体が形成され、基材への接着性が強固になる。このように、複合体を基材に担持させる方法は、あらかじめ複合体を製造しておく必要があるとは限らなく、基材上で複合体を形成させることも可能である。
【0040】
本発明の方法によって得られる複合体は、多糖類とリン脂質との安全性の高い材料の組み合わせであり、医療材料として好適に用いることができる。
【0041】
本発明の方法によって得られる複合体は、多糖類の持つ親水性・保水性、リン脂質のアルキル基が持つ疎水性・耐水性が合わさったものであり、親水性による生体適合性向上、保水性による組織及び基材の保護、さらには疎水性による基材への付着性、耐水性による長期的な効果の持続が発揮できる。一方、多糖類単独では親水性や保水性が発揮できても水に容易に溶解してしまうため、基材等に長く留まる事ができず、短期的な効果しか得られない。また、リン脂質単独では疎水性によって基材等に付着することができるが、親水性表面を形成することができない。また、基材に付着したリン脂質は水圧等の外的圧力によって容易に剥離してしまうことが考えられる。これは、リン脂質単独では基材との接着部が1〜2個しかないためであると考えられる。しかし、多糖類とリン脂質の複合体は一分子が持つ基材との接着面が複数個あるために、リン脂質部のいくつもの疎水性部が基材と強固に接着し、多糖類の親水性部が水中側表面を覆う。さらに、本発明の複合体に陽イオンが含まれている場合は、陽イオンによってリン脂質同士もイオン結合するため、基材との接着性はより高まることとなる(図2〜4)。このように、本発明の複合体は、従来の多糖類やリン脂質単独の材料では獲得し得なかった特性を有することとなる。
【0042】
本発明の方法によって得られる複合体は、水不溶であるにもかかわらず、優れた水中分散性も有している。水中分散性は界面活性剤等の両親媒性分子に多くみられる特徴であり、乳化剤や洗浄剤として用いられる。水不溶性の化合物は有機溶剤等に溶かすことができるが、化粧品等に用いる場合は皮膚への刺激性の強い有機溶剤を用いることができないため、水不溶の化合物を用いる事は好ましくない。しかし、水中分散性に優れた本発明の複合体は、化粧品用水溶液に容易に混合・分散させることができる。また、水中ではミセルを形成し、ミセル内に薬剤を包括させることができるため、薬剤のドラックデリバリーシステムへの応用も考えることができる。
【0043】
本発明によって得られる複合体からなる医療材料は、抗血栓性などの血液適合性に優れているので、血液や体液と接触する医療用具の表面処理に用いることができる。そのような医療用具としては、例えば、血液フィルター、血液保存容器、血液回路、留置針、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、人工肺装置、透析装置、癒着防止材、創傷被覆材、生体組織の粘着材、生体組織再生用の補修材が挙げられる。特に、体外循環回路を有し、そこに血液接触部を有する医療用具が好ましい態様である。
【0044】
ここで医療用具の基材としては通常使用される全ての材料が含まれる。すなわち、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、架橋部を有するポリジメチルシロキサン等のシリコーンゴム、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリスチレン、ABS樹脂およびこれらの樹脂の混合物、ステンレス、チタニウム、アルミニウム等の金属が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0046】
(結合率の測定)
結合率の測定は、ESCA測定(PERKIN ELMER PHI社製のESCA−5500MC)により試料の表面元素組成分析を行い算出した。測定条件は、使用した励起源はAl−Kα線で、出力14kV、150W、モノクロメーター使用、取り出し角65度とした。対照となる元素及び官能基は、多糖類のS元素もしくはCOO基、リン脂質はP元素を測定し、これらの比から結合率を算出した。S元素もしくはCOO基と、P元素が同じ強度であれば、結合率は100%となる。
【0047】
(重量組成比の測定)
重量組成比の測定は、NMR(日本電子 JNM−alpha400)により行い、得られたmol組成比に各組成物の分子量を掛け算し、重量組成比を算出した。
【0048】
(収率の測定)
溶液Aに含まれる多糖類の重量と溶液Bに含まれるリン脂質の重量の和を100%とした時の、得られた複合体の重量を収率とした。すなわち「得られた複合体の重量/(溶液Aに含まれる多糖類の重量+溶液Bに含まれるリン脂質の重量)×100」と算出した。収率が15%未満の場合を△、15〜49%の場合を○、50%以上の場合を◎とした。
【0049】
(水不溶性試験)
複合体0.1gを水10gの入ったビーカーに加えて室温で24時間以上十分に攪拌した後に、遠心分離機で3000rpm、15分間遠心し、上澄みを捨てて残った沈殿物を凍結乾燥した後の重量が、初期重量の50%以上であった場合に水不溶性であると判断し○とした。
【0050】
(水分散性試験)
20mlバイアル中に試料0.1gと蒸留水10gを加え、一時間程度十分に攪拌した後、バイアルの蓋をしめ、室温(25℃)にて24時間静置する。その後溶液を分光光度計にて600nmの波長で測定し、吸光度が1.000以上であった試料を○とした。なお、溶液静置後に沈殿が生じていた場合は上澄みを測定した。例として、吸光度2.313である溶液の写真を示す(図5)。
【0051】
(エージング処理)
25×25×1mmの塩ビシート上に複合体をコーティングして試料とした。この試料を37℃生理食塩水中で30日間エージングを行い、血液適合性及び親水性試験用エージングサンプルとした。
【0052】
(血液適合性試験)
ウサギより脱血した新鮮血を0.2mLとり、60×15mmのシャーレ(コーニング社、ポリスチレン製)内の血液適合性試験用エージングサンプル上面に滴下した後、蓋をして37℃で24時間インキュベートした。その後、2.5重量%のグルタルアルデヒド水溶液5mLを加え、室温で24時間静置した。水でシャーレ内の溶液を置換する操作を3回行った後、水を除去した。水で洗浄した塩ビシートを-5℃で24時間凍結させた後、0.1Torrにて24時間乾燥させた。血液が付着した部分から10×10mm切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)用サンプル台に両面テープで貼り付け、測定サンプルとした。イオン蒸着を行った測定サンプルを用いてSEMにて血液成分(血小板、赤血球、白血球)の付着の様子を撮影した。撮影したSEM写真(×1000倍)を目視により比較観察し、付着血液成分(血小板、赤血球、白血球)が10個以下の場合を◎、10個以上50個未満の場合を○、50個以上の場合を△とした。
【0053】
(親水性表面試験)
オレンジII試薬(Wako製)0.1重量%の着色水溶液を60×15mmのシャーレ(コーニング社、ポリスチレン製)内の親水性試験用エージングサンプルの中央に0.5ml滴下し、1分間静置後の円状水滴領域の直径を測定した。基材であるポリスチレンは疎水性であるため、基材そのものに着色試薬を滴下した場合、疎水性によって円状水滴領域の直径は小さくなる。基材表面に親水性処理が施されていれば、基材表面は親水性となり円状水滴領域の直径は大きくなる。この直径が20mmを超えれば十分な親水性表面であるとみなし、25mm以上の場合を◎、20mm以上25mm未満の場合を○、20mm未満の場合を△とした。また、未処理のシャーレの場合は10.9mmであった。
【0054】
(リスクの評価)
血液に接触する医療基材にコーティングして使用する際、もしくは体内に注入する際に考えうるリスクがあるかどうかを判断し、(1)血中に溶出する可能性は高いか、(2)複合体中に有害な物質が含まれている危険性はあるか、を判断し、(1)と(2)の両方とも考えられない場合は○、(1)と(2)のいずれかもしくは両方の可能性が考えられるものを△と評価した。
【0055】
(実施例1)
数平均分子量が5万のフコイダン(シグマアルドリッチ社)2gを80gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール20gを加えてよく攪拌した。次に卵由来のホスファチジルコリン(Egg-PC、製品名:COATSOME NC−50、日本油脂社)8gを80gのエタノールに溶解させ、さらに攪拌しながら塩化カルシウム(Wako社)0.2gを溶解させた蒸留水20gを加えた。これらの溶液を70℃に加熱し、Egg-PCの入った溶液に攪拌しながらフコイダンの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体1を得た。
【0056】
次に複合体1を基材上にコーティングするため、複合体1を1wt%になるように蒸留水分散させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0057】
(実施例2)
数平均分子量30万のヒアルロン酸ナトリウム(シグマアルドリッチ社)3.3gを70gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール30gを加えてよく攪拌した。次にジエルコイルホスファチジルエタノールアミン(DEPE、製品名:COATSOME ME2121-AL、日本油脂社)6.7gを70gのエタノールに溶解させ、さらに攪拌しながら塩化ナトリウム0.3gを加えた蒸留水30gを加えた。これらの溶液を60℃に加熱し、DEPEの入った溶液に攪拌しながらヘパリンナトリウムの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体2を得た。
【0058】
次に複合体2を基材上にコーティングするため、複合体2を1wt%になるように蒸留水に分散させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0059】
(実施例3)
数平均分子量60万のアルギン酸ナトリウム(シグマアルドリッチ社)5.0gを90gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール10gを加えてよく攪拌した。次にジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC、製品名:COATSOME MC1010、日本油脂社)5.0gを90gのエタノールに溶解させ、さらに攪拌しながら塩化マグネシウム0.3gを加えた蒸留水10gを加えた。これらの溶液を60℃に加熱し、Egg-PCの入った溶液に攪拌しながらフコイダンの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体3を得た。
【0060】
次に複合体3を基材上にコーティングするため、複合体3を1wt%になるようにDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)に溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0061】
(実施例4)
数平均分子量100万のフコイダン(シグマアルドリッチ社)2.5gを50gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール50gを加えてよく攪拌した。次に卵由来のレシチン(Wako社)7.5gを70gのエタノールに溶解させ、さらに攪拌しながら蒸留水30gを加えた。これらの溶液を40℃に加熱し、卵由来のレシチンの入った溶液に攪拌しながらフコイダンの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体4を得た。
【0062】
次に複合体4を基材上にコーティングするため、複合体4を1wt%になるようにシクロヘキサンに溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0063】
(実施例5)
数平均分子量150万のフコイダン(シグマアルドリッチ社)6.7gを100gの蒸留水に溶解させよく攪拌した。次に牛乳由来のスフィンゴミエリン(Milk-SPM、製品名:COATSOME NM−70、日本油脂社)3.3gを50gのエタノールに溶解させ、さらに攪拌しながら硝酸銀0.5gを溶解させた蒸留水50gを加えた。これらの溶液を60℃に加熱し、Milk-SPMの入った溶液に攪拌しながらフコイダンの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体5を得た。
【0064】
次に複合体5を基材上にコーティングするため、複合体5を1wt%になるように蒸留水/エタノール混合溶媒(50wt%対50wt%)に分散させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0065】
(実施例6)
数平均分子量5000のフコイダン(シグマアルドリッチ社)9.9gを40gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール60gを加えてよく攪拌した。次にミリストイルステアロイルホスファチジルコリン(MSPC、製品名:COATSOME MC−4080、日本油脂社)0.1gを40gのエタノールに溶解させ、さらに攪拌しながら塩化カルシウム0.6gを溶解させた蒸留水60gを加えた。これらの溶液を60℃に加熱し、MSPC溶液に攪拌しながらフコイダンの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体6を得た。
【0066】
次に複合体6を基材上にコーティングするため、複合体6を1wt%になるようにEDA(エチレンジアミン)に溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0067】
(実施例7)
数平均分子量3万のアルギン酸ナトリウム(シグマアルドリッチ社)8.9gを60gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール40gを加えてよく攪拌した。ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS、製品名:COATSOME MS−6060LS、日本油脂社)1.1gを80gのエタノールに溶解させ、さらに攪拌しながら塩化カリウム0.2gを溶解させた蒸留水20gを加えた。これらの溶液を60℃に加熱し、DPPS溶液に攪拌しながらアルギン酸ナトリウムの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体7を得た。
【0068】
次に複合体7を基材上にコーティングするため、複合体7を1wt%になるようにシクロヘキサンに溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0069】
(実施例8)
数平均分子量100万のヒアルロン酸ナトリウム(シグマアルドリッチ社)0.5gを30gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール70gを加えてよく攪拌した。ステアロイルリゾホスファチジルコリン(S−LysoPC、製品名:COATSOME MC−80H、日本油脂社)9.5gを100gのエタノールに溶解させた。これらの溶液を60℃に加熱し、S−LysoPC溶液に攪拌しながらヒアルロン酸ナトリウムの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い複合体8を得た。
【0070】
次に複合体8を基材上にコーティングするため、複合体8を1wt%になるようにDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0071】
(比較例1)
ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE、製品名:COATSOME ME-8181、日本油脂社)とヒアルロン酸ナトリウムとEDC、HOBtを用いて特開2006−348071号記載の実施例1に従って、複合体9を得た。
【0072】
次に複合体9を基材上にコーティングするため、複合体9を1wt%になるようにDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)に溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0073】
(比較例2)
数平均分子量200万のフコイダン(シグマアルドリッチ社)5.0gを20gの蒸留水に溶解させ、さらにエタノール80gを加えてよく攪拌した。ジステアロイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DSPG-Na、製品名:COATSOME MG−8080LS、日本油脂社)5.0gを10gのエタノールに溶解させ、塩化カルシウム0.9g溶解させた蒸留水90gを加えよく攪拌した。これらの溶液を60℃に加熱し、DSPG-Na溶液に攪拌しながらフコイダンの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い混合物1を得た。
【0074】
次に混合物1を基材上にコーティングするため、混合物1を1wt%になるようにEDA(エチレンジアミン)に溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0075】
(比較例3)
数平均分子量10万のヘパリンナトリウム(シグマアルドリッチ社)0.5gをエタノール100gを加えてよく攪拌した。ジパルミトイルホスファチジル酸ナトリウム(DPPA-Na、製品名:COATSOME MA−6060LS、日本油脂社)9.5gを100gの蒸留水に加えよく攪拌させた。これらの溶液を60℃に加熱し、DPPA−Na溶液に攪拌しながらヘパリンナトリウムの入った溶液を少しずつ加えた。すべての溶液を混合し1時間攪拌した後、固体の沈殿物を回収した。沈殿物に含まれた溶液を十分に除去し、50gの蒸留水を加え、十分に攪拌し分散させた。この分散溶液を1Lビーカー中のエタノール500g中に攪拌しながら滴下し精製を行い、同じ精製操作を2回行った。精製後に得られた沈殿物のエタノールを十分に除去した後に凍結乾燥を行い混合物2を得た。
【0076】
次に混合物2を基材上にコーティングするため、混合物2を1wt%になるように蒸留水に溶解させた溶液100g中に25×25×1mmの塩ビシートを浸漬させ、温度60℃の乾燥機内で24時間乾燥させて溶媒を除去した。このコーティング済み塩ビシートを用いて、水不溶性テスト、水分散性テスト、血液適合性テスト、親水性表面試験を行った。
【0077】
血液適合性試験では、表1、2に示すように、実施例1〜8においては30日間のエージング処理後も良好な血液適合性を示している。これは、複合体中のリン脂質部が優れた耐水性を示し長期的に基材に残存することができたためであり、また複合体中の多糖類部が基材表面の血液接触部を覆うことによって優れた血液適合性を発揮したためであると考えられる。
【0078】
一方、表3に示す比較例1〜3では十分な効果が発揮されなかった。比較例1においては、触媒の残存による影響か、もしくは共有結合による強靭な結合の影響か定かではないが、血液接触部に用いることは好ましくないようである。また、比較例2〜3では、イオン結合が行われなかったため、エージング処理において速やかに流れ落ちてしまったものと考えられる。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の複合体は、安全性の高い材料から構成された複合体であって、血液適合性、生体適合性に優れ、かつ親水性処理用の医療材料として用いることができる。また、水に不溶な物質であるため、長期的に効果を持続することができる。したがって、産業の発展に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】多糖類水溶液の温度と粘度の関係図
【図2】リン脂質単体における基材付着性の概略図
【図3】本願発明における基材付着性の概略図1
【図4】本願発明における基材付着性の概略図2
【図5】水分散可能な化合物溶液の例図
【図6】実施例1の血液適合性試験の結果を表す写真
【図7】実施例2の血液適合性試験の結果を表す写真
【図8】実施例3の血液適合性試験の結果を表す写真
【図9】実施例4の血液適合性試験の結果を表す写真
【図10】実施例5の血液適合性試験の結果を表す写真
【図11】実施例6の血液適合性試験の結果を表す写真
【図12】実施例7の血液適合性試験の結果を表す写真
【図13】実施例8の血液適合性試験の結果を表す写真
【図14】比較例1の血液適合性試験の結果を表す写真
【図15】比較例2の血液適合性試験の結果を表す写真
【図16】比較例3の血液適合性試験の結果を表す写真
【図17】実施例1の親水性表面試験の結果を表す写真
【図18】実施例2の親水性表面試験の結果を表す写真
【図19】実施例3の親水性表面試験の結果を表す写真
【図20】実施例4の親水性表面試験の結果を表す写真
【図21】実施例5の親水性表面試験の結果を表す写真
【図22】実施例6の親水性表面試験の結果を表す写真
【図23】実施例7の親水性表面試験の結果を表す写真
【図24】実施例8の親水性表面試験の結果を表す写真
【図25】比較例1の親水性表面試験の結果を表す写真
【図26】比較例2の親水性表面試験の結果を表す写真
【図27】比較例3の親水性表面試験の結果を表す写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリンを除く多糖類を溶解した溶液Aとリン脂質を溶解した溶液Bを別々に調製し、攪拌する溶液Bに溶液Aを添加することにより、多糖類分子鎖中にリン脂質をイオン結合により導入することを特徴とする医療用材料の製造方法。
【請求項2】
イオン結合が多糖類分子鎖中のアニオン性基とリン脂質のカチオン性基との結合であることを特徴とする請求項1に記載の医療用材料の製造方法。
【請求項3】
溶液Bに溶液Aを添加する際の温度が80℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用材料の製造方法。
【請求項4】
溶液Aが多糖類/アルコール/水=0.01/0/99.9〜20/56/24からなることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
【請求項5】
溶液Bがリン脂質/アルコール/水=0.01/99.9/0〜20/32/48であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
【請求項6】
多糖類が、フコイダン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ペクチン酸、ヘキスロン酸、カラギーナン、キサンタンガム、ラムナン硫酸から選ばれる酸性多糖類の少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
【請求項7】
多糖類の分子量が500〜150万であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
【請求項8】
リン脂質が、下記一般式1〜5で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜7いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
【化1】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化3】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【化4】

(式中、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示す。)
【化5】

(式中、R、Rは炭素原子数10〜24のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項9】
溶液Bにさらに1価または/および2価イオンを添加することを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の医療用材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれかに記載の方法により、多糖類分子鎖中にリン脂質がイオン結合により導入された複合体からなることを特徴とする医療用材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−75501(P2010−75501A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247941(P2008−247941)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】