説明

医療用液体組成物の高水分遮断容器

少なくとも2つの層を含み、内層がPEフィルム又はPPフィルムから成り、PCTFE層がPCTFEフィルムから成り、PCTFE層の厚さが約40μm〜約100μmであり、必要に応じて液体を容器から押し出す装置を備える透明な装置であって、液状製薬的組成物、特に保存剤を含むインシュリン組成物を保管するのに優れた特性を示す容器。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、溶液又は懸濁液、例えば必要に応じて保存剤を含む医薬品等の保存に用いる事のできる透明なプラスチック容器に関する。
【0002】
発明の背景
医薬品には固形で患者に支給されるものもあれば液体の形で支給されるものもある。液体の医薬品はしばしば容器入りで支給される。容器には、ガラスのみで又は主にガラスでできたものもあれば、プラスチックのようなその他の材料だけで又は主にその他の材料でできたものもある。
固形医薬品はしばしばガラス容器入り又はプラスチック容器入りで市販されている。プラスチック容器の例としてはブリスターパックがある。
液状の製薬的組成物中において、有効成分は溶解された状態又は懸濁された状態で存在する。有効成分に加えて、製薬的組成物中は、製薬的に活性な担体、崩壊剤、安定剤又は緩衝剤を含み得る。
【0003】
投与経路は医薬品の種類により異なる。経口で投薬される医薬品もあれば静脈注射又は皮下注射等の注射によって患者に投薬される医薬品もある。インシュリン等のペプチドである多くの医薬品は注射によって投薬される。以前、注射には注射筒が使用されていたが、インシュリンに関する限り注射にはいわゆる「ペンシステム」を使用するのがますます普通になってきている。更に、注射による投薬にはポンプを使う方法が一般的な方法になってきている。ポンプには、水性組成物がガラス製貯槽又はその他の硬質貯層の中に入るものもあれば、水性組成物が、全部又は主要部がプラスチック等のガラス以外の材料でできた柔軟性のある貯槽の中に入るものもある。
多くの水性組成物の場合、患者が使用するまで前記水性組成物を保管するのに安全に使用できる非ガラス材料を探し出すのは非常に困難な事である。多くの困難の一つは、水性組成物中の保存剤が、溶接層をポリクロロトリフルオロエチレン(以下PCTFEと称する)のような湿潤性のバリヤーに貼り付けるのに用いるポリウレタンを基剤とした汎用接着剤と高い親和性を持つ事により、ポリエチレン(以下PEと称する)、ポリプロピレン(以下PPと称する)、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する)等の重合体を基材とする溶接層において保存剤が高い移動性を有することである。保存剤を含む医薬品溶液を収容する従来技術のプラスチック製品の試験の結果、医薬品溶液中の保存剤含有量に迅速で望ましくない減少が起こる事が判った。本発明者にとっての主要な課題は、フェノール、m−クレゾール及びベンジルアルコール等の保存剤を含む医薬品溶液の保管に関する安全基準を満たす、透明で柔軟性のある容器を調製するのに用いる事のできる材料又は材料の組み合わせを発見する事であった。
【0004】
端的に言えば、本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも一部を克服するか又は改良する事である。従って、下記目的の全てが、完全に克服され又は改良される訳ではない。
本発明の具体的な目的は、容器又は貯槽を提供する事である。
本発明の別の目的は、柔軟性のある容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、透明な容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、殺菌可能な部品を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、上記貯槽を形成するためにそれ自身に溶接される材料を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、必要に応じて保存剤を含む、医薬品の液体の溶液又は懸濁液を保管するのに用いる事のできる容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、容器の中身を検査するのに十分な透明度を有する容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、必要に応じて保存剤を含む医薬品の液体の溶液又は懸濁液を保管するのに用いる事のできる容器であって、材料として全く又は殆どガラスを使っていない容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、水性組成物中の有効成分の濃度が、十分な期間に亘る保管期間に殆ど変化しない事を保証する、遮断特性を有する容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、水性組成物中に存在するいかなる保存剤もその濃度が、十分な期間に亘る保管期間に殆ど変化しない事を保証する、遮断特性を有する容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、適切な隔膜材料に対して強固に溶接する事のできる容器を提供する事である。
本発明のもう一つの目的は、適切な隔膜材料に対して溶接以外の方法で強固に接着する事のできる容器を提供する事である。
【0005】
本発明の更にもう一つの目的は、薬剤組成を基剤とした殺菌水を保管するのに用いる事のできる小袋の材料となるフィルムを提供する事である。
本発明の更にもう一つの目的は、ポンプ用の貯槽として用いる事のできる小袋であって、好ましくは薬剤組成を基剤とした殺菌水を収容する小袋を提供する事である。
本発明の更にもう一つの目的は、殺菌後の材料の物理的特性、殺菌後の材料の化学的要件及び清浄性等の一定の機能上の要件を満たすような前記小袋のフィルム材料を提供する事である。
従って、本発明の一つの目的は、例えばガンマ線照射、電子線、蒸気又は酸化エチレンを用いて殺菌する事のできる前記小袋のフィルム材料を提供する事である。
【0006】
本発明の更にもう一つの目的は、殺菌後、物理的要件:1)材料が透明である事、2)材料が水に対する良好な遮断特性を提供する事、3)材料がガス(例えば、酸素や二酸化炭素)に対する良好な遮断特性を提供する事、4)材料が保存剤(例えば、フェノールやメタクレゾール)に対する良好な遮断特性を提供する事、5)材料が臭気(例えば、保存剤)に対する良好な遮断特性を提供する事、6)材料が環境応力割れ(例えば、油類、香料)に対し抵抗性を有する事、7)材料が屈曲き裂に対し抵抗性を有する事、8)材料が良好なシール性(例えば溶接により)を有する事、9)材料が殺菌後の処理工程又は保管の間に層間剥離を起こさない事、及び10)材料が保管時及び使用時に著しく弛緩しない事、の大部分又は全部を満たすような、前記小袋のフィルム材料を提供する事である。
【0007】
本発明の更にもう一つの目的は、殺菌後、化学的要件:1)材料が、医薬品中に、患者の健康や安全に影響するような物質(浸出可能物質)を放出しない事、2)材料中の抽出可能物質の量が極めて低いレベルである事、及び3)材料が製薬的組成物と化学変化を起こさないものである事、の大部分又は全部を満たすような、前記小袋のフィルム材料を提供する事である。
【0008】
本発明の更にもう一つの目的は、殺菌後、清浄性に対する要件:1)衛生的条件下で材料を調製する事が可能である事、及び2)最終製品が埃及び粒子を含まない事、を満たすような、前記小袋のフィルム材料を提供する事である。
【0009】
本発明の更にもう一つの目的は、一定の健康及び安全に関する要件、好ましくは1)欧州薬局方(Ph. Eur.)2002年第4版、2)The United States Pharmacopeia (USP) 25;3)日本薬局方(JP)第14改正、4)EEC Directive 90/128 + amendments “Relating to plastics materials and articles intended to come into contact with foodstuffs"、5)連邦規則集(CFR)Title21「食品と医薬品」part 170−190、6)III/9090/90 EN. Plastic Primary Packaging Materials. Note for Guidance、及び7)Guidance for Industry. Container Closure Systems for Packaging Human Drugs and Biologics, Chemistry, Manufacturing, and Controls Documentation. FDA、1999年5月に記載の要件の大部分又は全部を満たす前記小袋のフィルム材料を提供する事である。
【0010】
共押し出しは、2以上の重合体材料を2以上の押し出し機中で溶融し、平ノズル又は平ノズルシステムを通して一緒に共押し出しし、冷却して共押し出し箔を形成する工程を含む。
押し出し−積層(共押出し積層とも称される)は、一種類の材料の箔の形状をした供給材料を、一つ又は複数の押し出し機から平ノズル又は平ノズルシステムを通って押し出しながら一層又は複数層の溶融材料で被覆した後、冷却して押し出し−積層箔を形成する工程を含む。
積層は、一つの箔に適切な接着剤を添加し、そこに第二の箔を添加する事により、二種類の箔材料の供給材料を合わせて積層箔を形成する工程を含む。
連結層は、二層を確実に貼り合わせることを目的に二つの重合体層の間に挟む層である。
【0011】
本明細書において小袋又は貯槽とも称される容器という用語は、液体を保管できる物品の意味である。この容器は箔又はフィルムからなる。
前記容器のチャンバの内層は、前記容器中に保管される液体と直に接する。
本明細書において前記容器のチャンバの外層という用語は、前記容器中に保管される液体とは直に接しない層を意味する。即ち、内層が外層と前記液体との間に位置する。二つの層に関連し、内及び外という用語は、二層の位置の相互関係に関し、液体の位置により内と外の方向が決まる。例えばこの用語法は、外層の外側に更なる層を接着する事ができ、その結果、実際、いわゆる外層が、いわゆる内層と、いわゆる外層の外側に接着された追加層との間に位置する、という状態を排除するものではない。
【0012】
柔軟な物品とは、屈曲可能であるか、又は容易に曲げることができ、(極端に曲げない限り)折れない物品である。ガラスは柔軟でない。本明細書において容器に関して柔軟という場合、容器に例えば液体を満たす事により力がかかっても、容器は壊れる事無くその形状を変えるという事を意味する。
【0013】
本明細書において用語「インシュリン」は、ブタのインシュリン、ウシのインシュリン、及びヒトのインシュリン等あらゆる種類のインシュリン、亜鉛塩、プロタミン塩等のインシュリンの塩、さらにはインシュリンの活性誘導体及びインシュリン類似体等を指す。用語「インシュリンの活性誘導体」は、当業者が一般的に誘導体と考えるもの、一般的な教科書にあるもの、例えば本来のインシュリン分子には無い置換基を持つインシュリンを指す。用語「インシュリン類似体」は、インシュリンの一つ以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換された、及び/又は一つ以上のアミノ酸残基が削除された、及び/又は一つ以上のアミノ酸残基が付加されながら、十分なインシュリン活性を維持しているインシュリンを意味する。いわゆる遊離脂肪細胞アッセイの結果を用いる事により、例えば医者などの任意の当業者は、インシュリン類似体の投薬の時期と適量を知ることができる。インシュリン類似体の例は、US5618913、EP254516、EP280534、US5750497及びUS6011007、及びそれらの均等物に記載されている。インシュリン類似体の具体例としては、インシュリンアスパート(即ち、AspB28ヒトインシュリン)、インシュリンリスプロ(即ち、LysB28、ProB29ヒトインシュリン)、及びインシュリングラルジン(即ち、GlyA21、ArgB31、ArgB32ヒトインシュリン)等が挙げられる。本明細書において用語「インシュリン」は、インシュリン誘導体であり且つインシュリン類似体であると考える事のできる化合物をも含む。そのような化合物の例は、US5750497及びUS6011007、及びそれらの均等物に記載されている。インシュリン類似体であり誘導体でもあるものの特定の例として、インシュリンデテミール(即ち、des−ThrB30ヒトインシュリンγLysB29テトラデカノイル)が挙げられる。
【0014】
本明細書で用いられる用語「U」はインシュリン単位を意味する。現在使用(販売)されているインシュリン(ウシ、ブタ、ヒト、リスプロ、アスパート、及びグラルジン)は、6ナノモルに相当する1単位の効力を有している。長時間作用型のアシル化インシュリンはヒトインシュリンに比べて効力が小さい。従って、インシュリンデテミールの場合、1単位は24ナノモルに相当する。その他のインシュリンの場合、Uとナノモルとの関係は、未知である場合、例えばヒトインシュリンの薬理学的(血中ぶどう糖量を低下させる)効果と同等の効果を与える量を測定する事により決定する事ができる。
【0015】
発明の概要
端的に言えば、本発明は、内層及び外層の二層を含むフィルムから成る柔軟で透明な防水性チャンバに関し、本チャンバにおいて、二層は貼り合わされてフィルムを形成しており、フィルムは透明な小袋に形成されており、小袋は十分な耐湿性、耐フェノール性及び耐m−クレゾール性を有し、よって水、フェノール及び/又はm−クレゾールを含むか又はそれらから成る医薬品溶液又は懸濁液を長期間保管しても、水、フェノール及びm−クレゾールの濃度に有意な変化がなく、及び小袋を放射線によって殺菌する事ができる。
別の態様では、本発明は、投与装置で使用するためにインシュリン溶液及び/又は懸濁液を長期間保管する方法に関し、本方法は、十分な耐水性、耐フェノール性及び耐m−クレゾール性を有し、よって2年間に亘りインシュリンに薬理学的特性の劣化を生じさせない透明な重合体フィルムから小袋を形成する工程、小袋を殺菌する工程、及びインシュリン化合物を長期間保管のため小袋に入れ込む工程を含む。
【0016】
好ましい実施形態の説明
驚くべき事に、特許請求の範囲に記載の容器が、水溶液、特にフェノール又はm−クレゾールなどの保存剤を含む医薬品の溶液を保管するのに用いられる容器に課される要件を満足する事が判明した。
【0017】
一つの態様において、本発明は、液体を防水性のチャンバに入れて保管するための柔軟で少なくとも一部が透明な容器に関し、本容器においてチャンバの壁の材料は少なくとも二層から成り、前記チャンバが液体を収容する際は、二層の中の内層は前記液体と直に接触し、外層は全く又は殆ど前記液体と接触せず、前記内層と外層は互いに密着して貼り合わされており、本容器は、前記チャンバに水を満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、容器から発散する水の量はもとの内容量の10重量%未満であり、前記チャンバを約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水で満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、液体中のフェノール濃度の変化は約10%未満である事を特徴とする。
別の態様において、本発明は、液体を防水性のチャンバに入れて保管するための柔軟で少なくとも一部が透明な容器に関し、本容器においてチャンバの壁の材料は少なくとも二層から成り、前記チャンバが液体を収容する際は、二層の中の内層は前記液体と直に接触し、外層は全く又は殆ど前記液体と接触せず、前記内層と外層は互いに密着して貼り合わされており、本容器は、前記チャンバに水を満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、容器から発散する水の量はもとの内容量の10重量%未満であり、前記チャンバを約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水で満たし、約37℃の温度で12週間保管した場合、液体中のフェノール濃度の変化は約10%未満である事を特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、外層だけで、前記チャンバを水で満たし、約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、容器から発散する水の量がもとの内容量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であるという要件を満たす容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、内層だけで、前記チャンバを約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水で満たし、約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、液体中のフェノール濃度の変化が約10%未満であるか、又は前記チャンバを約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水で満たし、約37℃の温度で12週間保管した場合、液体中のフェノール濃度の変化が約10%未満であるという要件を満たす容器に関する。
【0019】
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、内層が溶接可能である容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、内層の厚さが約10μm超、好ましくは約20μm超、且つ約60μm未満、好ましくは約50μm未満、さらに好ましくは約40μm未満である容器に関する。
【0020】
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、水を満たし、約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、容器から発散する水の量はもとの内容量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満である容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たし、約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、フェノール濃度の変化が約10%未満、好ましくは約5%未満、さらに好ましくは約2%未満である容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たし、約37℃の温度で12週間保管した場合、フェノール濃度の変化が約10%未満、好ましくは約5%未満、さらに好ましくは約2%未満である容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、2.06mg/mL(19mM)のm−クレゾールを含む水を満たし、約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、m−クレゾール濃度の変化が約10%未満、好ましくは約5%未満、さらに好ましくは約2%未満である容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、2.06mg/mL(19mM)のm−クレゾールを含む水を満たし、約37℃の温度で12週間保管した場合、m−クレゾール濃度の変化が約10%未満、好ましくは約5%未満、さらに好ましくは約2%未満である容器に関する。
【0021】
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Aで試験した結果のm−クレゾールの最大損失が約10%、好ましくは約5%以下である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Aで試験した結果のpH値の変化が約±0.2未満である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Bで試験した結果の最大重量損失が約2.5%、好ましくは約1%以下である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Bで試験した結果のm−クレゾールの最大損失が約10%、好ましくは約5%以下である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Bで試験した結果のpH値の変化が約±0.2を超える小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Cで試験した結果の最大重量損失が2.5%、好ましくは約2%以下である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Cで試験した結果のm−クレゾールの最大損失が約10%、好ましくは約5%以下である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Cで試験した結果のフェノールの最大損失が約10%、好ましくは約5%以下である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、下記試験Cで試験した結果のpH値の変化が約±0.2以下である小袋用箔で調製された容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、希釈倍率1:50、好ましくは1:100、さらに好ましくは1:200、さらに好ましくは希釈倍率1:400について下記試験Dの基準を満たす小袋用箔で調製された容器に関する。
【0022】
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、柔軟性のある容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、前記液体を前記容器から放出できる装置を備えた容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、第三の重合体層がPCTFE層の外側に追加される容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、液体で完全に満たされた場合、少なくとも約0.5ml、好ましくは少なくとも約1mlで、且つ約10ml以下、好ましくは約5ml以下、さらに好ましくは約2ml以下の液体を収容することができ、好ましくはその容積が約1.5mlである容器に関する。本発明の特定の好ましい実施形態によれば、本発明は、約2ml〜約4ml、好ましくは約3mlの液量を収容する容器に関する。
【0023】
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、一部又は全部が液体製薬的組成物で満たされる容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、容器の内部の少なくとも95容量%、好ましくは少なくとも98容量%、さらに好ましくは少なくとも99容量%、更にさらに好ましくは少なくとも99.9容量%が液体製薬的組成物を収容する容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、含有有効成分をペプチドとする液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、含有有効成分をインシュリンとする液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、前記容器中のインシュリン含有量が約10U/ml〜約1,500U/mlである容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、保存剤を含む溶液または懸濁液を収容する容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、フェノールを含有する液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、m−クレゾールを含有する液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる容器に関する。
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、ベンジルアルコールを含有する液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる容器に関する。
【0024】
また別の態様において、本発明は、上述したような容器を上記液体製薬的組成物の保管に用いる使用法に関する。
【0025】
さらに別の態様において、本発明は、液体を防水性のチャンバに入れて保管するための容器に関し、本容器においてチャンバの壁の材料は少なくとも二層から成り、前記チャンバが液体を収容する際は、二層の中の内層は前記液体と直に接触し、PCTFEフィルムから成る他方の層は全く又は殆ど前記液体と接触せず、前記内層はPEフィルム又はPPフィルムから成り、前記内層と前記PCTFE層は共押し出し又は押し出し−積層により調製されたものであるか又は前記内層と前記PCTFE層とは互いに貼り合わされたものであり、前記PCTFE層の厚さは約40μmを超、且つ約100μm未満、好ましくは約75μm未満である容器に関する。
本発明の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、少なくとも一部が透明である容器に関する。
本発明の好ましい態様によれば、本発明は、上述したような容器であって、全部が透明である容器に関する。
【0026】
本発明の容器の内層は、ポリエチレン(以下PEと称する)、ポリプロピレン(以下PPと称する)又はPEとPPの混合物から成り立っている。PEは少なくとも重量75%、好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%のポリエチレンから成る。PPは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%のポリプロピレンから成る。
本発明の好ましい一実施形態において、PEは欧州薬局方2001、第4版、項目3.1.5に規定されるものであり、その規定内容をここで参照することにより本明細書に包含する。PE中に存在する成分の例としては、高級アルケン族炭化水素(炭素数3〜10)及び上記記載個所にあるその他添加剤が挙げられる。
本発明の好ましい一実施形態において、PPは欧州薬局方2001、第4版、項目3.1.6に規定さされるものであり、その規定内容をここで参照することにより本明細書に包含する。端的にいえば、PPはプロピレンの単独重合体、プロピレンと25%以下のエチレンとの共重合体、又はポリプロピレンと25%以下のポリエチレンとの混合物(合金)から成る。PPは上記項目3.1.6に記載の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の好ましい一実施形態において、内層は少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%のポリクロロトリフルオロエチレンフィルム、例えばアクラー(登録商標)(ハネウェル社/米国ニュージャージー州モリスタウン)から成るPCTFE層である。
本発明の好ましい一実施形態において、外層は少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%のポリクロロトリフルオロエチレンフィルム、例えばアクラー(登録商標)(ハネウェル社/米国ニュージャージー州モリスタウン)から成るPCTFE層である。
【0027】
内層と外層(例えば、PCTFE層)とを確実に互いに貼り合わせるために用いられる連結層は接着剤、例えばポリエチレンイミン(以下PEIと称する)又はその他の適切な連結層から成る。或いは、連結層は、不飽和カルボン酸又はその無水物の少なくとも一つの官能基を有するポリオレフィンであってもよい。その例としては、アトフィナ社製のロテーダー、ロトリル、エヴァテイン及びオレヴァック、バイエル社製のラヴァメルト、イーストマン社製のプロヴィスタ及びイースター、デュポン社製のバイネル、及びダウ社製のアンプリファイ及びインテグラル等が挙げられる。
連結層の更なる例はWO98/25762に記載されており、その内容をここでの参照により本明細書に包含する。特定の連結層の一例として、ハネウェル社製アクラー(登録商標)Cx130に用いられている連結層が言及されている。
最終材料に望ましくない影響を及ぼさない連結層を選択する事が重要である。本発明の好適な一実施形態において、下記試験に示すように、本発明の容器に約1.8mg/mlのフェノールを含む水溶液を入れた場合、5℃で24ヶ月間、又は27℃で12週間の間に、フェノール、m−クレゾール又はベンジルアルコールの損失量がほんの僅かであるような連結層を選択する。
従来の連結層は厚さが例えば2μm又は8μmである。本発明の好ましい一実施形態によれば、本発明は、上述したような容器であって、箔中の一又は複数の連結層の厚さが約1μm〜約10μm、好ましくは約8μm未満、さらに好ましくは約6μm未満である容器に関する。
【0028】
本発明の容器を調製するために、共押し出し−積層製品を用いるのは、上記PP又はPEとPCTFEのような特定の重合体層の一部に限らない。
PP又はPEとPCTFE以外の材料から成る共押し出し−積層製品の例としては、公知の標準的積層技術を用いて調製できる、PCTFEに共押し出しPE−PET箔を積層したものを挙げる事ができる。この構造は、m−クレゾールのような易動性分子に対する顕著な遮断特性を有する。
【0029】
第三の重合体層を外層の外側、例えばPCTFE層の外側に追加できる。そのような第三層の例としては、PP、PE、PET−G(グリセロール変性ポリエチレンテレフタレート)及びTPE(熱可塑性弾性体)の層が挙げられ、これらは貯槽の外側から溶接する事ができる。図5はそのような第三の重合体層が用いられる実施例を示す。この実施例において、追加層は内層と同じでも異なってもよい。本発明の好ましい一実施形態において、追加層と内層とは同一又は殆ど同一である。
本発明の好ましい一実施形態において、内層の厚さは、少なくとも約20μm、好ましくは少なくとも約30μmであり、且つ約100μm以下、好ましくは約75μm以下である。
【0030】
共押し出し体から成る本発明の容器を製造するのに有用な箔は以下のように調製することができる。
PCTFE(ペレット状又は粉末状)の供給材料、連結層の供給材料及びPEの供給材料を三つの別々の押し出し機中で溶融し、平ノズルを通し、溶融状態で好ましい厚みに共押し出しし、冷却した後、箔を形成する。
【0031】
押し出し−積層体から成る本発明の容器を製造するのに有用な箔は以下のように調製される。
溶融連結層を相溶剤として機能するようにPCTFE箔に付加した後、溶融溶接層、例えばPE、PP又は他の重合体を添加することにより、好ましい厚さのPCTFE箔の供給材料を押し出し−積層の工程により加工する。押し出し−積層体を冷却ドラムなどの上で冷却し、通気を行う。連結層の化学的性質は、m−クレゾールやフェノールのような芳香族保存剤に対し低い親和性を有するものである。
【0032】
積層体から成る本発明の容器を製造するのに有用な箔は以下のように調製される。
積層体を製造するもう一つの有用な方法は、好ましい厚さのPCTFE箔の供給材料を接着剤と組み合わせて用い、その後PCTFE箔を好ましい溶接層、例えば共押し出しPET−PE、から成る箔と接着により好ましい厚さに積層する方法である。通常接着剤はm−クレゾールやフェノールのような芳香族保存剤に対し高い親和性を有するポリウレタンを基剤とする。
【0033】
溶接層を用いて二つの層を互いに貼り合わせてできる本発明の容器は以下のように調製される。
二つの溶接層を互いに対向配置し、例えば熱、超音波、又はレーザー等を用いる公知の適切な溶接技術を用いて溶接する。溶接域の内周と外周は、貯槽の寸法と形状を考慮に入れて決定する。
【0034】
本発明の容器は、容器を小袋として使えるように充填できる柔軟性を有していなければならない。
水性組成物が保存剤を含んでいる場合、保存剤が抗菌効力を維持するのに十分な濃度を有する事が重要である。
好ましい一実施形態において、本発明の容器は、例えばβ線又はγ線の照射或いは加熱といった簡便な方法で容器を殺菌できるような材料から成る。
好ましい一実施形態において、本発明の容器は、次のような柔軟性に関する次のような試験に合格するような材料から成る。試験は、試験対象である共に60mm×20mmのサイズを持つ二枚の長方形の材料片を3mmの溶接域を設けて溶接し、試験用の溶接小袋を形成した後、小袋中に1.5mlの水を入れた。過圧が100ミリバール未満である場合、その材料の柔軟性を十分であるとした。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の容器は、水性製薬的組成物、場合によっては薬理学的に活性な化合物の溶液又は懸濁液の保管に用いることを目的とする。
本発明の好ましい一実施形態において、前記製薬的組成物中の有効成分はタンパク質である。本発明の更に好ましい実施形態において、有効成分はインシュリン、成長ホルモン、因子VII又はそれらの類似体である。本発明の好ましい実施形態において、水溶液又は懸濁液中のインシュリンの量は、下限が約10U/ml、好ましくは約40U/ml、さらに好ましくは約100U/ml、さらに好ましくは約150U/ml、上限が約1,500U/ml、好ましくは約1,000U/ml、さらに好ましくは約500U/ml、さらに好ましくは約300U/mlである。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態において、水性組成物は安定剤を含んでいる。本発明の好ましい一実施形態において、水性組成物はフェノールを含む。本発明の別の好ましい一実施形態において、水性組成物はm−クレゾールを含む。本発明の別の好ましい実施形態において、水性組成物はベンジルアルコールを含む。本発明の更に好ましい実施形態において、水性組成物中のフェノール及び/又はm−クレゾールの全濃度は、約20mM〜約50mM、好ましくは約30mM〜約45mMである。フェノール及び/又はm−クレゾールの全濃度は、とりわけ水性組成物中のインシュリンの濃度に依存する。本発明の好ましい実施形態において、水溶液中のフェノールの量は約15mM〜約25mMである。本発明の別の好ましい一実施形態において、水溶液中のm−クレゾールの量は約15mM〜約25mMである。本発明の別の好ましい一実施形態において、水性組成物中のベンジルアルコールの量は約15mM〜約25mMの範囲内である。本発明の別の好ましい一実施形態において、水性組成物中にはベンジルアルコールは存在しない。
本発明の容器を調製するのに用いられる材料の選択に際しては、有効成分や水性製薬的組成物中に存在するその他の成分を余り吸収しない材料を選択する事が重要である。
【0037】
特許請求の範囲に述べるように、本発明の容器は、必要であれば前記液体を前記容器から放出する装置を備えていてもよい。そのような装置の一例に、容器箔の内側又は外側、或いは二枚の箔の間の溶接域に接着されたゴム材料の形態の針侵入用の隔壁を挙げる事ができる。別の例として、容器に接着された正圧又は負圧で閉じるバルブを挙げる事ができる。本発明の容器は、貯槽に外圧をかける事により、又はポンプ装置で吸引する事により、空にする事ができる。
本発明の容器は例えばポンプ、注射器又はペン型注射器等多くの装置に使用する事ができる。都合のよい事に、本発明の容器は使い捨て型である。
【0038】
本発明は又、少なくとも二層から成るフィルム材料であって、前記二層が互いに密に貼り合わされており、本発明の透明の容器を調製するのに用いる事ができるようなフィルム材料に関する。本発明の好ましい実施形態において、本発明の範囲に含まれるフィルム材料は、請求の範囲に記載の容器を調製するのに直接用いる事ができる。例えば、本発明の範囲に含まれるフィルム材料は、その二つの表面の一方の全体に更なるフィルムを付着するように加工されることはない。
【0039】
本明細書における参考文献への言及は、それらが従来技術の構成要素となっている事を承認するものではない。
本明細書で使用する、「から成る」という用語は広義で使用され、「を含む」「を有する」「を備える」等と同義である(欧州特許行審査基準2000、C、III章、4.13」参照)。
【0040】
試験方法
好ましい一実施形態において、本発明の容器は、下記試験の一部又は全てに合格した小袋用箔から調製される。
【0041】
試験A
m−クレゾールの損失とpH変化の試験
最初に、合計厚さ1cm未満の多数の平坦なA4サイズのシート上で、箔に2×25kGyの電子線を照射する。
その後、10cm(2×5cm)の箔から15枚の小さなサイズ(0.7×1cm)の小片を切り出し、これらを約1.80mg/mL(19mM)のフェノール、2.06mg/mL(19mM)のm−クレゾール、16.0mg/mL(174mM)のグリセロール、1.25mg/mL(7mM)のリン酸水素二ナトリウム、及び0.58mg/mL(10mM)の塩化ナトリウムを含むpH7.40の溶液1.5ml中に浸漬する。浸漬した試験片及び対照試験片を37℃のインキュベーターの中に一週間入れる。
クロマトグラフ法を用いて溶液中のm−クレゾール含有量を分析する。
この試験により、境界における接着剤中への直接の吸収を含めたm−クレゾールの総移動量が判る。上記条件で溶液を保管した場合、要件:m−クレゾールの最大損失は10%、好ましくは5%未満でなければならない。また、溶液のpH値の変化が±0.2を超えてはならない。
【0042】
試験B
m−クレゾールの浸透と損失及びpHの試験
規格DS/EN13726−2を一部変更したパディントンカップ試験
この方法では、試験の箔は二枚のフランジの間に配置し、内側の箔(PE、PP又はその他の溶接層)の面積10cmを、フェノール約1.80mg/mL(19mM)、m−クレゾール2.06mg/mL(19mM)、グリセロール16.0mg/mL(174mM)、リン酸水素二ナトリウム1.25mg/mL(7mM)、及び塩化ナトリウム0.58mg/mL(10mM)を含むpH7.40の溶液5mlと接触させる。このパディントンカップを逆さまにして溶液と箔とを直接接触させ、不活性アルミニウムの箔をセットしたパディントンカップから構成される対照試験片と共に、一週間、温度37℃で相対湿度最大15%のインキュベーターの中に置く。二つのパディントンカップの重量を、保管の前後で測定する。m−クレゾールの含有量はクロマトグラフ法を用いて分析する。この試験は、総蒸発量を試験するのに有用で、m−クレゾールやフェノールのような保存剤に対する遮断特性が判かる。上記条件で溶液が保管された場合、要件:最大重量損失が2.5%、好ましくは1%未満である事、m−クレゾールの最大損失が10%、好ましくは5%未満である事、及びpH値の変化が±0.2を超えてはならない事、を満たさなければならない。
【0043】
試験C
賦形剤を有する小袋の試験
この試験では、箔を溶接し小袋に溶液を満たす事により小袋を製造する。一部の小袋は、温度37℃及び相対湿度15%で保管する前と、保管後12週間における重量を測定する。一部の小袋は37℃で保管し、12週間後まで定期的にm−クレゾールとフェノールの含有量について試験する。ガラスビンを対照として用いる。上記条件で溶液を12週間保管したときの、最大重量損失が2.5%以下、好ましくは2%以下である事、m−クレゾールの最大損失が10%以下、好ましくは5%以下である事、フェノールの最大損失が10%以下、好ましくは5%以下である事を要件とする。溶液のpH値の変化は±0.2を超えてはならない。
【0044】
試験D
液体を満たした小袋の透明性
液体を満たした小袋は、非経口注入される水溶液用のプラスチック容器に関して欧州薬局方2001、第4版、3.2.2.1に記載の透明性に対する要件を満たさなければならない。ここに記載の方法では、溶液Sを1:200(PE又はPPの場合)又は1:400(その他の容器の場合)に希釈する。この試験は、1:50又は1:100に希釈した溶液Sを試験するように変更する事もできる。
【0045】
下記実施例は例示として提示されるものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0046】
実施例1
厚さ50ミクロンのPCTFEをエポキシ変性ポリエチレンイミン(連結層)及び厚さ50ミクロンのPEと一緒に共押し出しする。共押し出しされた箔は容積約1.5mlの容器を熱溶接により調製するのに用いられる。
実施例2
PUを基剤とする接着剤を用いてPE−PETの共押し出し体をアクラー(登録商標)UltrRx2000とPETとの積層体に貼りつけ、PE−PET/アクラー(登録商標)UltrRx2000/PET(「/」は接着剤を用いている事を表す)のような構造体を製造する。共押し出しされた箔は容積約1.5mlの容器を熱溶接により調製するのに用いられる。
実施例3
厚さ50ミクロンのPPを実施例1に記載の箔のPCTFE層上に積層する。三つの重合体から成る箔は、PE溶接層を用いて小袋を製造するのに有用であり、それにより小袋外側のPP層に溶接する事のできる材料から成る部材を接着する事ができる。
実施例4
テクニ−プレックスヨーロッパN.V.の特許出願明細書PCT/BE03/000226に従って製造した、厚さ25mμのPEと厚さ50mμのPCTFE(連結層付き)とから成る試験用多層フィルムを、機密遵守合意の下に上記試験A、B及びCにより試験した。試験結果は下記の通りであった。
試験A:m−クレゾールの損失は1%であった。pH値は7.43から7.35へ変化した。
試験B:m−クレゾールの損失は1%であった。重量損失は0.1%であった。
試験C:重量損失は1.3%であった。m−クレゾールの損失は8.7%であった。フェノールの損失は2.1%であった。pH値の変化は、薬剤製品について7.35から7.20であった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例であり、本発明による容器中のチャンバの壁の断面図を示す。内層2は前記容器中に保管される液体と直に接する。通常、外層1(PCTFE層でよい)は容器中の液体とは接触しない。図1に示す本発明の本実施形態において、内層と外層(PCTFE層)は連結層3を用いて貼り合わされている。
【図2】本発明の一実施例であり、図1と同様であるが、図1中の数字を適切な説明文に置き換えた。
【図3】柔軟性のある容器の一側面を示す。この図において、溶接層4により容器の密封性が保証されている。容器の内部5には液体を満たすことができる。
【図4】図3に示す側面を線1−1に沿って垂直に切った断面図を示す。容器の壁6は外層1、内層2、及び連結層3から成る。
【図5】本発明の特定の実施形態におけるチャンバの壁及び隣接する液体の一部の断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を防水性のチャンバに入れて保管するための柔軟で少なくとも一部が透明の容器であって、チャンバの壁の材料は少なくとも二層から成り、前記チャンバが液体を収容する際、二層の中の内層は前記液体と直に接触し、外層は全く又は殆ど前記液体と接触せず、前記内層と外層は互いに密着して貼り合わされており、前記チャンバに水で満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、容器から発散する水の量がもとの内容量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であり、前記チャンバに約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、液体中のフェノール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満である事を特徴とする容器。
【請求項2】
液体を防水性のチャンバに入れて保管するための柔軟で少なくとも一部が透明の容器であって、チャンバの壁の材料は少なくとも二層から成り、前記チャンバが液体を収容する際、二層の中の内層は前記液体と直に接触し、外層は全く又は殆ど前記液体と接触せず、前記内層と外層は互いに密着して貼り合わされており、前記チャンバに水で満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、容器から発散する水の量がもとの内容量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であり、前記チャンバに約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たして約37℃の温度で12週間保管した場合、液体中のフェノール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満である事を特徴とする容器。
【請求項3】
外層だけで、前記チャンバを水で満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合に容器から発散する水の量がもとの内容量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であるという要件を満たす、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
内層だけで、前記チャンバに約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合に液体中のフェノール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であるか、又は前記チャンバに約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たして約37℃の温度で12週間保管した場合、液体中のフェノール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは3重量%未満であるという要件を満たす請求項1又は2に記載の容器。
【請求項5】
内層が溶接可能である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
液体を防水性のチャンバに入れて保管するための容器であって、チャンバの壁の材料は少なくとも二層から成り、前記チャンバが液体を収容する際、二層の中の内層は前記液体と密接し、PCTFEフィルムから成るもう一つの層は全く又は殆ど前記液体と接触せず、前記内層はPEフィルム又はPPフィルムから成り、前記内層と前記PCTFE層は共押し出し又は押し出し−積層により調製されたものであるか又は前記内層と前記PCTFE層とは互いに貼り合わされたものであり、前記PCTFE層の厚さは約40μm超且つ約100μm未満、好ましくは約75μm未満である容器。
【請求項7】
少なくとも一部が透明である請求項6に記載の容器。
【請求項8】
全部が透明である請求項7に記載の容器。
【請求項9】
内層の厚さが約10μm超、好ましくは約20μm超、且つ約60μm未満、好ましくは約50μm未満、さらに好ましくは約40μm未満である、請求項1に記載の容器。
【請求項10】
水を満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、容器から発散する水の量がもとの内容量の10重量%未満、好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは2重量%未満である、請求項1に記載の容器。
【請求項11】
約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、フェノール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、さらに好ましくは約2重量%未満である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項12】
約1.8mg/mL(19mM)のフェノールを含む水を満たして約37℃の温度で12週間保管した場合、フェノール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、さらに好ましくは約2重量%未満である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項13】
2.06mg/mL(19mM)のm−クレゾールを含む水を満たして約5℃の温度で24ヶ月間保管した場合、m−クレゾール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、さらに好ましくは約2重量%未満である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の容器。
【請求項14】
2.06mg/mL(19mM)のm−クレゾールを含む水を満たして約37℃の温度で12週間保管した場合、m−クレゾール濃度の変化が約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、さらに好ましくは約2重量%未満である、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の容器。
【請求項15】
試験Aの結果、m−クレゾールの最大損失が約10重量%、好ましくは約5重量%以下である小袋用箔で調製された、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の容器。
【請求項16】
試験Aの結果、pH値の変化が約±0.2以下である小袋用箔で調製された、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の容器。
【請求項17】
試験Bの結果、最大重量損失が約2.5重量%、好ましくは約1重量%以下である小袋用箔で調製された、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の容器。
【請求項18】
試験Bの結果、m−クレゾールの最大損失が約10重量%、好ましくは約5重量%以下である小袋用箔で調製された、請求項1ないし17のいずれか1項に記載の容器。
【請求項19】
試験Bの結果、pH値の変化が約±0.2を超える小袋用箔で調製された請求項1ないし18のいずれか1項に記載の容器。
【請求項20】
試験Cの結果、最大重量損失が2.5重量%、好ましくは約2重量%以下である小袋用箔で調製された請求項1ないし19のいずれか1項に記載の容器。
【請求項21】
試験Cの結果、m−クレゾールの最大損失が約10重量%、好ましくは約5重量%以下である小袋用箔で調製された、請求項1ないし20のいずれか1項に記載の容器。
【請求項22】
試験Cの結果、フェノールの最大損失が約10重量%、好ましくは約5重量%以下である小袋用箔で調製された、請求項1ないし21のいずれか1項に記載の容器。
【請求項23】
試験Cの結果、pH値の変化が約±0.2以下である小袋用箔で調製された、請求項1ないし22のいずれか1項に記載の容器。
【請求項24】
希釈倍率1:50、好ましくは1:100、さらに好ましくは1:200、さらに好ましくは1:400について試験Dの基準を満たす小袋用箔で調製された、請求項1ないし23のいずれか1項に記載の容器。
【請求項25】
箔中の一又は複数の連結層の厚さが約1μm〜約10μm、好ましくは約8μm未満、さらに好ましくは約6μm未満である、請求項1ないし24のいずれか1項に記載の容器。
【請求項26】
柔軟性を有する、請求項1ないし25のいずれか1項に記載の容器。
【請求項27】
前記容器から前記液体を放出できる装置を備えた、請求項1ないし26のいずれか1項に記載の容器。
【請求項28】
第三の重合体層がPCTFE層の外側に追加される、請求項1ないし27のいずれか1項に記載の容器。
【請求項29】
液体で完全に満たされた場合、少なくとも約0.5ml、好ましくは少なくとも約1ml、且つ約10ml以下、好ましくは約5ml以下、さらに好ましくは約2ml以下の量の液体を収容する事ができ、好ましくはその容積が約1.5mlである、請求項1ないし28のいずれか1項に記載の容器。
【請求項30】
液体で完全に満たされた場合、約2ml〜約4ml、好ましくは約3mlの量の液体を収容する事ができる、請求項1ないし28のいずれか1項に記載の容器。
【請求項31】
請求項1ないし30のいずれか1項に記載の容器を液体製薬的組成物の保管に用いる使用法。
【請求項32】
一部又は全部を液体製薬的組成物で満たす、請求項1ないし30のいずれか1項に記載の容器。
【請求項33】
容器の内部の少なくとも95容量%、好ましくは少なくとも98容量%、さらに好ましくは少なくとも99容量%、さらに好ましくは少なくとも99.9容量%が液体製薬的組成物を収容する、請求項32に記載の容器。
【請求項34】
含有有効成分がペプチドである液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる、請求項1ないし30、32及び33のいずれか1項に記載の容器。
【請求項35】
ペプチドがインシュリンである、請求項34に記載の容器。
【請求項36】
インシュリンの含有量が約10U/ml〜約1500U/mlである、請求項35に記載の容器。
【請求項37】
保存剤を含む、請求項1ないし30及び32ないし36のいずれか1項に記載の容器。
【請求項38】
フェノールを含む液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる、請求項1ないし30及び32ないし37のいずれか1項に記載の容器。
【請求項39】
m−クレゾールを含む液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる、請求項1ないし30及び32ないし38のいずれか1項に記載の容器。
【請求項40】
ベンジルアルコールを含む液体製薬的組成物で一部又は全部が満たされる、請求項1ないし30及び32ないし39のいずれか1項に記載の容器。
【請求項41】
互いに密着して貼り合わされた少なくとも二層から成るフィルム材料であって、請求項1ないし30及び32ないし40のいずれか1項に記載の透明容器の調製に用いる事ができる事を特徴とする、フィルム材料。
【請求項42】
請求項1ないし41のいずれか1項に記載のあらゆる新規な特徴又は特徴の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−506464(P2007−506464A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515727(P2006−515727)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000440
【国際公開番号】WO2005/000580
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】