医療用測定装置
【課題】骨密度測定装置などの医療用測定装置において次回の検診時期を被検者に告知できるようにする。
【解決手段】骨粗鬆症のような特定疾病についての危険因子群が予め特定されており、各危険因子毎に重みが設定される。被検者について得られた測定値(例えば骨密度値)と、その被検者において自己申告された危険因子該当性を示す情報とから次回の検診時期が自動的に演算される。その場合において、危険因子の該当数が多ければ多いほど次回の検診までの期間が短くされ、また該当している危険因子の重みが大きければ大きいほど次回の検診までの期間が短くされる。測定値の他、特定疾病に関わる諸状況を考慮できるので被検者に対して望ましい次回検診時期を指定することが可能となる。
【解決手段】骨粗鬆症のような特定疾病についての危険因子群が予め特定されており、各危険因子毎に重みが設定される。被検者について得られた測定値(例えば骨密度値)と、その被検者において自己申告された危険因子該当性を示す情報とから次回の検診時期が自動的に演算される。その場合において、危険因子の該当数が多ければ多いほど次回の検診までの期間が短くされ、また該当している危険因子の重みが大きければ大きいほど次回の検診までの期間が短くされる。測定値の他、特定疾病に関わる諸状況を考慮できるので被検者に対して望ましい次回検診時期を指定することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用測定装置に関し、特に、被検者の定期的診断を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用測定装置として、X線骨密度測定装置、超音波骨評価装置、超音波画像診断装置、等が知られている。この他、生化学検査等を行う各種の検査装置も医療用測定装置の一種であると言い得る。以下、X線骨密度測定装置を例にとり、測定実行から測定値出力までの過程を説明する。
【0003】
X線骨密度測定装置は、測定ユニットと演算ユニットにより構成される。測定ユニットは、被検者を載せる載置台、X線発生器、X線検出器、走査機構等を有する。演算ユニットは、骨密度画像の形成部、平均骨密度の演算部、平均骨密度が記載された診断レポートを作成する出力部、等を有する。印刷された診断レポート用紙が被検者に配付される。それには、平均骨密度を示す値(測定値)と共に「定期的に検査を受けて下さい。」等の定形メッセージが記載されている。当該メッセージは次回の検査を促すものではあるが、特定の期日を明示するものではない。それ故、被検者にとっては、次回の診断時期の判断に当たって戸惑いが生じることになる。あるいは、次回の診断時期を勝手に判断してしまうという問題を指摘できる。他の医療用測定装置においても同様の問題を指摘し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3810628号明細書
【特許文献2】特開平11−253565号公報
【特許文献3】特許第3288348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、診断レポート上に記載する次回の診断時期(あるいは次回の診断までの期間)を一律に計算で決めてしまうことも考えられる。例えば、今回の診断から一定期間後の時期として次回の診断時期を計算し、それを推奨期日として被検者に提供するものである。その場合、測定値の悪さの程度によって次回の診断時期を早めるようにすることも技術的には可能である。しかしながら、今回の測定値のみに基づいて次回の健診時期を算出すると、場合によっては、妥当性を欠く場合が生じる。例えば、被検者が測定値を悪化させるあるいはその誘因となる危険因子(喫煙、運動不足、閉経等)をもっている場合には次回の診断時期をより早めるのが望ましいからである。該当する危険因子数が多ければ多いほど次回の診断時期を更に早めた方が望ましいとも言える。しかし、従来の医療用測定装置は、危険因子該当性までを考慮できるものとはなっていない。被検者の便宜を図り、また被検者の健康を管理する上で、総合的な見地から次回の診断時期を的確に計算してそれを同人に提示することが強く要望されている。
【0006】
なお、特許文献1には超音波骨評価装置が開示されている。当該装置は被検者の年齢、性別等のファクターを考慮して測定結果の評価を行うものである。評価結果は評価メッセージとして被検者に提供されている。当該装置は次の健診時期を計算する機能を備えていない。特許文献2には放射線治療スケジューリングシステムが開示されている。特許文献3には検査日時自動決定機能が組み込まれた検査予約システムが開示されている。いずれの文献にも、今回の測定値に加えて、特定疾病の危険因子までを考慮して次回の診断(測定、検査)時期を計算する機能は開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、次回の検診時期を計算できる医療用測定装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、被検者についての危険因子該当性までを考慮して次回の検診時期を計算できる医療用測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る医療用測定装置は、被検者に対して特定疾病を診断するための測定を実行して測定値を取得する測定ユニットと、前記特定疾病に関連する危険因子群を構成する各危険因子に前記被検者が該当するか否かを示す調査結果データが入力される入力部と、前記測定ユニットを利用して取得された今回の測定値と前記入力部に入力された今回の調査結果データとに基づいて、前記被検者について推奨される次回の健診時期を演算する演算部と、前記次回の健診時期を含んだ健診レポートを作成するレポート作成部と、を含む。
【0010】
上記構成によれば、今回の測定値のみならず調査結果データの内容に基づいて被検者に指示する次回の健診時期(推奨時期)を演算することができる。調査結果データは、特定疾病に関わる危険因子群について被検者の該当・非該当を示すものである。単に、測定値の良し悪しから次回の健診時期を演算すると、例えば、測定値が現在正常である場合に特定疾病になりやすい状況にある方につき早い健診時期を指定することができないが、本発明によれば、そのような場合でも危険因子群の該当性を考慮して、早めの健診時期を指定することが可能となる。何をもって危険因子群とするのかについては特定疾病との因果関係及びその強さを考慮して定めるのが望ましい。例えば、特定疾病が骨粗鬆症であって、測定値としてX線測定による骨密度値が取得されるような場合、骨の成長に影響を与えうる事項が危険因子として定められる。すなわち、骨粗鬆症の発症又は悪化をもたらすような生活状況又は身体状況に関する複数の項目として危険因子群が定められる。
【0011】
望ましくは、前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子数に基づいて前記次回の健診時期を演算する。該当危険因子数が多いほど次回の健診時期が早まるようにするのが望ましい。望ましくは、前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子に与えられた重みに基づいて前記次回の健診時期を演算する。特定疾病への影響度の大きい危険因子に該当する場合にはそうでない場合と比べて次回の健診時期が早まるようにするのが望ましい。
【0012】
望ましくは、前記被検者ごとに演算された次回の診断時期が記録されるデータベースと、前記データベースを参照し、予測される再診被検者数の時間的な変化を表す予測グラフを作成するグラフ作成手段と、を含む。個々の被検者ごとに且つ健診ごとに次回の診断時期が判明することになるから、それらの情報を統計的に処理して、予測グラフを作成可能である。それは、検査室や検査機器の準備、医師や技師のスケジュール、等に利用可能である。
【0013】
望ましくは、前記出力部は、前記診断レポート内に前記被検者についての該当危険因子の全部又は一部に対応したメッセージを挿入するメッセージ処理手段を含む。自己申告した危険因子の中身に対応して改善や注意を喚起するメッセージを提示するものである。
【0014】
次回の健診時期を特定する期間Tは、例えば、以下の関数Fから演算される。関数F内は関数結果を左右するパラメータを意味する。
【0015】
T=F(測定値、測定値の変化方向、危険因子該当数、該当危険因子の重み、等)
上記において測定値は例えば平均骨密度値である。測定値が健常範囲を超える場合にだけ危険因子該当性を考慮してもよいし、測定値が健常範囲内にあっても常に危険因子該当性を考慮してもよい。測定値の変化方向は、過去の測定値との比較において今回の測定値が改善したのか否かを示すものである。改善方向にあれば期間Tを長くするファクターとして働き、悪化方向にあれば期間Tを短くするファクターとして働く。危険因子該当数は、被検者につき危険因子群の中で該当する危険因子の個数を示すものである。該当数が多ければ期間Tを短くするようにし、該当数が少なければあるいはゼロであれば期間Tを長くするようにする。該当危険因子の重みは、危険因子の軽重を示し、より重視すべき危険因子については大きな重みが事前に与えられ、それに該当した場合には期間Tがより短くされるのが望ましい。該当する因子の重みと該当数の両者を考慮すればより的確に期間計算を行える。データベース上には、危険因子群について該当状況が刻々と蓄積されることになるから、測定値の他、危険因子該当性あるいはその変化も考慮して治療方針を立てることが可能となる。治療方針としては、食事療法、薬物療法、運動療法、等が知られている。上記構成を骨の診断に利用すれば骨折リスクを総合的に判断することが可能となる。
【0016】
次回の健診時期を管理することになる結果、例えば、予定の健診時期を過ぎても健診に現れない被検者を容易に特定することが可能となる。必要に応じて、連絡等の適切な対処を行える。被検者リスト上において健診時期を徒過している被検者を識別表示等するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次回の診断時期を適切に計算した上でそれを被検者に提供できる。あるいは、被検者についての危険因子該当性までを考慮して次回の診断時期を計算した上でそれを被検者に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る医療用測定装置としての骨密度測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】特定の被検者についての危険因子該当性を示す図である。
【図3】特定の被検者についての危険因子該当性を示す図である。
【図4】検査データベースの内容の一部を示す図である。
【図5】次回の検診時期を演算するプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図6】予測グラフを示す図である。
【図7】図1に示す装置の動作例を示す図である。
【図8】検査レポートに含まれるメッセージの第一例を示す図である。
【図9】検査レポートに含まれるメッセージの第二例を示す図である。
【図10】検査レポートに含まれるメッセージの第三例を示す図である。
【図11】検査レポートに含まれるメッセージの第四例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には、本発明に係る医療用測定装置の好適な実施形態が示されている。図1に示される医療用測定装置は骨密度測定装置であり、より具体的にはX線を利用して骨密度を測定する装置である。
【0021】
図1において、骨密度測定装置は測定ユニット10と演算制御部12とを有する。測定ユニット10は載置台14を有し、その載置台14は被検者16を載置するものである。載置台14がブッキーテーブルにより構成されてもよい。被検者16は例えば載置台14上において仰向けに横たわって載置される。X線発生器18は図示される例においてファンビーム形態をもったX線ビームを発生する。X線検出器20は複数の検出センサにより構成されている。X線発生器18とX線検出器20とが1つの可動体を構成し、その可動体が図示されていない走査機構によって体軸方向に移動走査される。これにより例えば腰椎についての透過像を取得することが可能である。
【0022】
次に、演算制御部12について説明する。骨密度画像形成部22は、高エネルギーX線の照射により得られた検出データ及び低エネルギーX線の照射により得られた検出データから骨密度画像を形成するモジュールである。骨密度画像は公知のDEXA法により形成される。骨密度画像における各画素の画素値は骨密度値を示している。
【0023】
プロセッサ24は、CPU及び動作プログラムにより構成され、図1においてはプロセッサ24が有する代表的な機能がブロック図として示されている。具体的にはプロセッサ24は、測定値演算部38、期間演算部42、予測グラフ作成部40、検査レポート作成部44等を備えている。各機能については後に詳述する。
【0024】
プロセッサ24には入力部26が接続されており、その入力部26はキーボードなどによって構成されてもよいし、またネットワーク上からデータを受け入れるモジュールであってもよい。プロセッサ24には出力部28が接続されており、この出力部28は画面表示器であり、あるいは印刷装置である。もちろんネットワークを介してデータが外部に出力されるようにしてもよい。プロセッサ24には危険因子管理テーブル30、定形メッセージテーブル32及び標準値テーブル34が接続されている。危険因子管理テーブル30は後に図2に示すような危険因子群及び各危険因子毎の重みを管理するためのテーブルであり、定形メッセージテーブル32は、検査レポート内に挿入される多種多様の定形文を格納したテーブルである。更に、標準値テーブル34は、測定される骨密度値と対比される年齢や性別に応じた標準的な骨密度値を格納したテーブルである。
【0025】
プロセッサ24には検査データベース36が接続されている。この検査データベース36はログ記憶部として機能し、すなわち被検者から取得した調査データや測定結果などの情報、すなわち各検診毎に入力されるあるいは生成される情報が検査データベース36上において管理される。
【0026】
測定値演算部38は、骨密度画像に対する解析を行って腰椎を構成する各堆体毎に平均骨密度値を演算するモジュールである。このような骨密度値から骨粗鬆症等を診断することが可能である。本実施形態においては骨粗鬆症の危険因子群がテーブルとして管理されている。期間演算部42は、実際に測定された骨密度値(平均骨密度値)の他、骨密度値の前回からの変化方向、危険因子該当数、該当危険因子の重み等を考慮し、それらに基づいて次回の検診時期すなわち次回の検診までの期間を演算するモジュールである。単に骨密度値だけから次回の検診時期を算定するならば、被検者を取り巻く様々な要因を考慮することができず、場合によっては不適切な時期を告知してしまうおそれがあるが、本実施形態によれば、多様な危険因子の該当性をも考慮して次回の検診時期を算定することが可能であるので、被検者に対して適切な検診時期を告知できるという利点が得られる。
【0027】
予測グラフ作成部40は、以上のように各被検者毎に求められる次回の検診日時の情報を利用して時間軸上において検診予定者数の変化を表したグラフ(予測グラフ)を作成するモジュールである。そのような予測グラフは医療機関における機器やスタッフのスケジューリング等に用いることが可能である。検査レポート作成部44は被検者に対して発行する検査レポートを作成するモジュールであり、検査レポートは電子データとしてあるいは紙媒体として被検者に対して提供される。その検査レポートには検査結果としての骨密度値が記録されており、また次回検診日時の目安が記載されている。更に申告した危険因子該当性あるいは過去からの該当性の変化に基づいて選択されたメッセージが検査レポート内に挿入されている。
【0028】
図2には危険因子リスト46が例示されている。これは骨粗鬆症の危険因子群により構成され、図1に示した危険因子管理テーブル30内に登録されている。危険因子群は大別して、改善を期待できる危険因子群48と、改善を期待できない危険因子群50と、からなる。前者は、「過剰喫煙(毎日20本以上)」、「アルコール摂取過多」、「運動不足」、「カルシウムの摂取不足」、「日光浴の不足」、「ビタミンDの摂取不足」、「食塩の過剰摂取」、「コーヒーの過剰摂取」、「スナック菓子の過剰摂取」、「極端な食事制限(ダイエット)」、を含み、後者は、「骨粗しょう症の家族歴有り」、「関節リウマチ有り」、「過去骨折有り」、「閉経後(女性)」、「高齢」、「糖尿病有り」、「胃切除有り」、「慢性肝障害有り」、「ステロイド薬の投与中」、「性別(女性)」、を含んでいる。それぞれの危険因子に対しては、危険値(重み)を設定することが可能であり、各重みを医療機関ごとにあるいは医師ごとに設定するようにしてもよい。危険値はこの例において三段階となっており、すなわち「高」「中」「低」を選択可能である。「無し」は対応する項目を実際の危険因子から外す場合にチェックされるものである。これらの設定内容は実際の骨塩量測定に先立って危険因子管理テーブル内に事前に格納される。
【0029】
図3には、特定の被検者から申告された内容が示されている。すなわち、危険因子群52を構成する各危険因子に該当するか否かが記入されている。これは電子データとして健診データベース上において管理されるものである。個々の健診ごとにこのような調査結果を管理すればその内容及び変化に基づいて治療方針を立てることが容易となる。例えば、実際に測定された骨密度値をも考慮しつつ、薬物療法、運動療法、食事療法のそれぞれについて適切なアドバイスを行える。
【0030】
図4には、健診データベースの内容の一部がリストとして表現されている。このリストは画面上に表示され、また必要に応じて印刷される。このリストには、検査番号を識別子として、被検者の名前、骨密度値、年齢が含まれている。更に、該当する危険因子、検査年月日、次回検査年月日が含まれている。リスト表示に当たって、次回検査年月日を過ぎても検査に現れなかった被検者については符号36A、36Bで示すようにハイライト表示されている。よって、それらの被検者に連絡をとるなどの対処を容易に行える。
【0031】
図5には、次回の検査日時の決定プロセスがフローチャートとして示されている。図5に示されるプロセスは例示にすぎない。まず、S10においては、測定値としての骨密度値が優良範囲内に入っているか否かが判断される。優良範囲は標準値を基準として適宜定めることが可能である。骨密度値が優良範囲内に入っていれば、S12において次回の検診日時として15ヶ月後の日が決定されることになる。もちろん、ここにおいて登場する時期的な数値はいずれも例示である。
【0032】
一方、S10において骨密度値が優良範囲外にあると判断された場合、S14において危険値(高)の個数が判断される。すなわち重みとして高が設定されている危険因子の該当数が調査される。その数が1個以上であればS16において次回の検診日として4ヶ月後が指定される。すなわち通常よりもかなり早い時期に次回の検診日が決定されることになる。
【0033】
一方、S14において危険値(高)の個数が0個であると判断された場合、S18において次に危険値(中)の個数が判断されることになる。その個数が2個以上であれば、S20において次回の検診日として4ヶ月後が指定される。すなわち、この場合においても一定の高いリスクが見積もられるために比較的早期の検診日時が設定されることになる。
【0034】
S18において、危険値(中)の個数が0個であれば、S22に移行し、その数が1個であればS24へ移行する。
【0035】
S22においては、危険値(低)の個数が判断され、その個数が0個であればS26において次回の検診日として12ヶ月後が指定され、その数が1個であればS28で次回の検診日として10ヶ月後が指定され、その数が2個であれば次回の検診日としてS30において8ヶ月後が指定される。更にその数が3個以上であればS32において次回の検診日として4ヶ月後が指定されることになる。S24において、危険値(低)の個数が0個であると判断されたならば、S34において次回の検診日として8ヶ月後が指定され、その数が1個であればS36において次回の検診日として6ヶ月後が指定され、その数が2個以上であればS38において次回の検診日として4ヶ月後が指定されることになる。
【0036】
上記のプロセスにおいては、測定値が優良であれば危険因子該当性を格別考慮していないが、もちろん常に危険因子該当性を考慮してもよい。上記のプロセスにおいては危険因子の該当数に加えてその重みまでを考慮しているので、よりきめ細やかに次回の検診日を指定できるという利点が得られる。すなわち状況を総合考慮することが可能である。
【0037】
図6には上述した予測グラフが明示されている。横軸は将来の日時を表しており、縦軸は検診予定者の数を表している。図4に示したようなデータベースの内容を参照することにより、将来の各日毎に検診予定者の数を見積もることができるので、それを時間軸上に表せば図6に示すようなグラフを構築することが可能である。このようなグラフは医療機関における医療機器やスタッフのスケジューリングに活用することが可能である。また、検診予定者に対して医師混雑度を情報として提供することも可能となる。
【0038】
図7には、図1に示した装置の動作例がフローチャートとして示されている。まずこのようなルーチンが実行される前に、図2に示した危険因子の個々についてすでに重みが設定されているものとする。そのような重みの設定は各医療機関毎に、あるいは各医師毎に自在に設定することが可能である。もちろん個々の疾病毎に学会などで重みを定めるようにしてもよい。
【0039】
S100においては、検査情報が入力される。この場合において被検者情報は名前、生年月日、性別、等であり、更に危険因子該当の有無を表す情報が含まれる。具体的には、図3に示したような調査データが入力されることになる。その入力はキーボードにより行うようにしてもよいし、電子的に入力するようにしてもよい。S102においては、X線の照射を利用して骨密度が測定される。これによりS104において骨密度画像が画面上に表示され、またそれと並行して画像解析による骨密度値が画面上に表示されることになる。S106においては、以上のような測定値を含む検査レポートが生成され、それが出力される。この場合においては電子媒体への出力及び紙媒体への出力が考えられる。その検査レポートには上述したように次回の検診日の目安が含まれている。更に以下に説明するメッセージも含まれる。
【0040】
図8乃至図11には検査レポートに含まれるメッセージが例示されている。図8において、符号58が付されている第1文の内容は「あなたの測定結果は、若年成人平均値と比べるとやや低下しております。」というものであり、これは測定値としての骨密度値を標準骨密度値と比較することによってその差分の大きさから選択されたものである。符号58が付されている第2文の内容は「過度のアルコール摂取は控えましょう。」というものである。これは被検者からアルコール摂取過多の危険因子有りが自己申告された場合にそれに連動して自動的に挿入された文章である。この危険因子は本人努力によって改善可能であるから、それを促す表現となっている。符号60が付されている第3文は「次回検診日は、****年**月**日頃です。」というものである。これは上記のような期間演算によって自動的に特定された次回健診時期の目安を示すものである。
【0041】
図9に示すメッセージは、上記同様の文章56及び文章(次回健診日の告知)60を含んでいる。更に、改善可能な3つの危険因子について被検者の改善努力を促す3つの文章58A,58B,58Cが含まれている。
【0042】
図10に示すメッセージは、上記同様の文章56及び文章60を含み、その他に符号62が付されている「改善できない危険因子である"高齢の女性"に該当いたしますので、転倒などにはご注意ください。」という文章が含まれている。当該文章は自己努力によっても改善できない危険因子であることを考慮してリスクを告知する内容となっている。
【0043】
図11に示すメッセージは、骨密度値が健常範囲内にあることに対応して、符号56が付されている文章が「 あなたの測定結果は、若年成人平均値と比べて同等です。」という内容になっている。続いて、符号58Dが付されている文章は「前回検診時と比較すると、日光浴の改善がされていますので、これからも心掛けましょう。」という内容になっている。これは過去から現在にかけて危険因子に改善が認められたために被検者にそれを自覚させるものである。このメッセージにも符号60で特定されるように次回検診日の告知が含まれている。
【0044】
既に説明したように、定形メッセージテーブル内には多数の定形文が格納されており、危険因子にチェックが入った場合にそれに連動して適切な定型文が選択され、それが検査レポート内に挿入される。その場合、危険因子の内容変化も調査されており、その変化に応じた文章が選択されている。
【符号の説明】
【0045】
10 測定ユニット、12 演算制御部、22 骨密度画像形成部、24 プロセッサ、30 危険因子管理テーブル、32 定形メッセージテーブル、38 測定値演算部、40 予測グラフ作成部、42 期間演算部、44 検査レポート作成部。
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用測定装置に関し、特に、被検者の定期的診断を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用測定装置として、X線骨密度測定装置、超音波骨評価装置、超音波画像診断装置、等が知られている。この他、生化学検査等を行う各種の検査装置も医療用測定装置の一種であると言い得る。以下、X線骨密度測定装置を例にとり、測定実行から測定値出力までの過程を説明する。
【0003】
X線骨密度測定装置は、測定ユニットと演算ユニットにより構成される。測定ユニットは、被検者を載せる載置台、X線発生器、X線検出器、走査機構等を有する。演算ユニットは、骨密度画像の形成部、平均骨密度の演算部、平均骨密度が記載された診断レポートを作成する出力部、等を有する。印刷された診断レポート用紙が被検者に配付される。それには、平均骨密度を示す値(測定値)と共に「定期的に検査を受けて下さい。」等の定形メッセージが記載されている。当該メッセージは次回の検査を促すものではあるが、特定の期日を明示するものではない。それ故、被検者にとっては、次回の診断時期の判断に当たって戸惑いが生じることになる。あるいは、次回の診断時期を勝手に判断してしまうという問題を指摘できる。他の医療用測定装置においても同様の問題を指摘し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3810628号明細書
【特許文献2】特開平11−253565号公報
【特許文献3】特許第3288348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、診断レポート上に記載する次回の診断時期(あるいは次回の診断までの期間)を一律に計算で決めてしまうことも考えられる。例えば、今回の診断から一定期間後の時期として次回の診断時期を計算し、それを推奨期日として被検者に提供するものである。その場合、測定値の悪さの程度によって次回の診断時期を早めるようにすることも技術的には可能である。しかしながら、今回の測定値のみに基づいて次回の健診時期を算出すると、場合によっては、妥当性を欠く場合が生じる。例えば、被検者が測定値を悪化させるあるいはその誘因となる危険因子(喫煙、運動不足、閉経等)をもっている場合には次回の診断時期をより早めるのが望ましいからである。該当する危険因子数が多ければ多いほど次回の診断時期を更に早めた方が望ましいとも言える。しかし、従来の医療用測定装置は、危険因子該当性までを考慮できるものとはなっていない。被検者の便宜を図り、また被検者の健康を管理する上で、総合的な見地から次回の診断時期を的確に計算してそれを同人に提示することが強く要望されている。
【0006】
なお、特許文献1には超音波骨評価装置が開示されている。当該装置は被検者の年齢、性別等のファクターを考慮して測定結果の評価を行うものである。評価結果は評価メッセージとして被検者に提供されている。当該装置は次の健診時期を計算する機能を備えていない。特許文献2には放射線治療スケジューリングシステムが開示されている。特許文献3には検査日時自動決定機能が組み込まれた検査予約システムが開示されている。いずれの文献にも、今回の測定値に加えて、特定疾病の危険因子までを考慮して次回の診断(測定、検査)時期を計算する機能は開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、次回の検診時期を計算できる医療用測定装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、被検者についての危険因子該当性までを考慮して次回の検診時期を計算できる医療用測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る医療用測定装置は、被検者に対して特定疾病を診断するための測定を実行して測定値を取得する測定ユニットと、前記特定疾病に関連する危険因子群を構成する各危険因子に前記被検者が該当するか否かを示す調査結果データが入力される入力部と、前記測定ユニットを利用して取得された今回の測定値と前記入力部に入力された今回の調査結果データとに基づいて、前記被検者について推奨される次回の健診時期を演算する演算部と、前記次回の健診時期を含んだ健診レポートを作成するレポート作成部と、を含む。
【0010】
上記構成によれば、今回の測定値のみならず調査結果データの内容に基づいて被検者に指示する次回の健診時期(推奨時期)を演算することができる。調査結果データは、特定疾病に関わる危険因子群について被検者の該当・非該当を示すものである。単に、測定値の良し悪しから次回の健診時期を演算すると、例えば、測定値が現在正常である場合に特定疾病になりやすい状況にある方につき早い健診時期を指定することができないが、本発明によれば、そのような場合でも危険因子群の該当性を考慮して、早めの健診時期を指定することが可能となる。何をもって危険因子群とするのかについては特定疾病との因果関係及びその強さを考慮して定めるのが望ましい。例えば、特定疾病が骨粗鬆症であって、測定値としてX線測定による骨密度値が取得されるような場合、骨の成長に影響を与えうる事項が危険因子として定められる。すなわち、骨粗鬆症の発症又は悪化をもたらすような生活状況又は身体状況に関する複数の項目として危険因子群が定められる。
【0011】
望ましくは、前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子数に基づいて前記次回の健診時期を演算する。該当危険因子数が多いほど次回の健診時期が早まるようにするのが望ましい。望ましくは、前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子に与えられた重みに基づいて前記次回の健診時期を演算する。特定疾病への影響度の大きい危険因子に該当する場合にはそうでない場合と比べて次回の健診時期が早まるようにするのが望ましい。
【0012】
望ましくは、前記被検者ごとに演算された次回の診断時期が記録されるデータベースと、前記データベースを参照し、予測される再診被検者数の時間的な変化を表す予測グラフを作成するグラフ作成手段と、を含む。個々の被検者ごとに且つ健診ごとに次回の診断時期が判明することになるから、それらの情報を統計的に処理して、予測グラフを作成可能である。それは、検査室や検査機器の準備、医師や技師のスケジュール、等に利用可能である。
【0013】
望ましくは、前記出力部は、前記診断レポート内に前記被検者についての該当危険因子の全部又は一部に対応したメッセージを挿入するメッセージ処理手段を含む。自己申告した危険因子の中身に対応して改善や注意を喚起するメッセージを提示するものである。
【0014】
次回の健診時期を特定する期間Tは、例えば、以下の関数Fから演算される。関数F内は関数結果を左右するパラメータを意味する。
【0015】
T=F(測定値、測定値の変化方向、危険因子該当数、該当危険因子の重み、等)
上記において測定値は例えば平均骨密度値である。測定値が健常範囲を超える場合にだけ危険因子該当性を考慮してもよいし、測定値が健常範囲内にあっても常に危険因子該当性を考慮してもよい。測定値の変化方向は、過去の測定値との比較において今回の測定値が改善したのか否かを示すものである。改善方向にあれば期間Tを長くするファクターとして働き、悪化方向にあれば期間Tを短くするファクターとして働く。危険因子該当数は、被検者につき危険因子群の中で該当する危険因子の個数を示すものである。該当数が多ければ期間Tを短くするようにし、該当数が少なければあるいはゼロであれば期間Tを長くするようにする。該当危険因子の重みは、危険因子の軽重を示し、より重視すべき危険因子については大きな重みが事前に与えられ、それに該当した場合には期間Tがより短くされるのが望ましい。該当する因子の重みと該当数の両者を考慮すればより的確に期間計算を行える。データベース上には、危険因子群について該当状況が刻々と蓄積されることになるから、測定値の他、危険因子該当性あるいはその変化も考慮して治療方針を立てることが可能となる。治療方針としては、食事療法、薬物療法、運動療法、等が知られている。上記構成を骨の診断に利用すれば骨折リスクを総合的に判断することが可能となる。
【0016】
次回の健診時期を管理することになる結果、例えば、予定の健診時期を過ぎても健診に現れない被検者を容易に特定することが可能となる。必要に応じて、連絡等の適切な対処を行える。被検者リスト上において健診時期を徒過している被検者を識別表示等するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、次回の診断時期を適切に計算した上でそれを被検者に提供できる。あるいは、被検者についての危険因子該当性までを考慮して次回の診断時期を計算した上でそれを被検者に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る医療用測定装置としての骨密度測定装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】特定の被検者についての危険因子該当性を示す図である。
【図3】特定の被検者についての危険因子該当性を示す図である。
【図4】検査データベースの内容の一部を示す図である。
【図5】次回の検診時期を演算するプロセスを説明するためのフローチャートである。
【図6】予測グラフを示す図である。
【図7】図1に示す装置の動作例を示す図である。
【図8】検査レポートに含まれるメッセージの第一例を示す図である。
【図9】検査レポートに含まれるメッセージの第二例を示す図である。
【図10】検査レポートに含まれるメッセージの第三例を示す図である。
【図11】検査レポートに含まれるメッセージの第四例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には、本発明に係る医療用測定装置の好適な実施形態が示されている。図1に示される医療用測定装置は骨密度測定装置であり、より具体的にはX線を利用して骨密度を測定する装置である。
【0021】
図1において、骨密度測定装置は測定ユニット10と演算制御部12とを有する。測定ユニット10は載置台14を有し、その載置台14は被検者16を載置するものである。載置台14がブッキーテーブルにより構成されてもよい。被検者16は例えば載置台14上において仰向けに横たわって載置される。X線発生器18は図示される例においてファンビーム形態をもったX線ビームを発生する。X線検出器20は複数の検出センサにより構成されている。X線発生器18とX線検出器20とが1つの可動体を構成し、その可動体が図示されていない走査機構によって体軸方向に移動走査される。これにより例えば腰椎についての透過像を取得することが可能である。
【0022】
次に、演算制御部12について説明する。骨密度画像形成部22は、高エネルギーX線の照射により得られた検出データ及び低エネルギーX線の照射により得られた検出データから骨密度画像を形成するモジュールである。骨密度画像は公知のDEXA法により形成される。骨密度画像における各画素の画素値は骨密度値を示している。
【0023】
プロセッサ24は、CPU及び動作プログラムにより構成され、図1においてはプロセッサ24が有する代表的な機能がブロック図として示されている。具体的にはプロセッサ24は、測定値演算部38、期間演算部42、予測グラフ作成部40、検査レポート作成部44等を備えている。各機能については後に詳述する。
【0024】
プロセッサ24には入力部26が接続されており、その入力部26はキーボードなどによって構成されてもよいし、またネットワーク上からデータを受け入れるモジュールであってもよい。プロセッサ24には出力部28が接続されており、この出力部28は画面表示器であり、あるいは印刷装置である。もちろんネットワークを介してデータが外部に出力されるようにしてもよい。プロセッサ24には危険因子管理テーブル30、定形メッセージテーブル32及び標準値テーブル34が接続されている。危険因子管理テーブル30は後に図2に示すような危険因子群及び各危険因子毎の重みを管理するためのテーブルであり、定形メッセージテーブル32は、検査レポート内に挿入される多種多様の定形文を格納したテーブルである。更に、標準値テーブル34は、測定される骨密度値と対比される年齢や性別に応じた標準的な骨密度値を格納したテーブルである。
【0025】
プロセッサ24には検査データベース36が接続されている。この検査データベース36はログ記憶部として機能し、すなわち被検者から取得した調査データや測定結果などの情報、すなわち各検診毎に入力されるあるいは生成される情報が検査データベース36上において管理される。
【0026】
測定値演算部38は、骨密度画像に対する解析を行って腰椎を構成する各堆体毎に平均骨密度値を演算するモジュールである。このような骨密度値から骨粗鬆症等を診断することが可能である。本実施形態においては骨粗鬆症の危険因子群がテーブルとして管理されている。期間演算部42は、実際に測定された骨密度値(平均骨密度値)の他、骨密度値の前回からの変化方向、危険因子該当数、該当危険因子の重み等を考慮し、それらに基づいて次回の検診時期すなわち次回の検診までの期間を演算するモジュールである。単に骨密度値だけから次回の検診時期を算定するならば、被検者を取り巻く様々な要因を考慮することができず、場合によっては不適切な時期を告知してしまうおそれがあるが、本実施形態によれば、多様な危険因子の該当性をも考慮して次回の検診時期を算定することが可能であるので、被検者に対して適切な検診時期を告知できるという利点が得られる。
【0027】
予測グラフ作成部40は、以上のように各被検者毎に求められる次回の検診日時の情報を利用して時間軸上において検診予定者数の変化を表したグラフ(予測グラフ)を作成するモジュールである。そのような予測グラフは医療機関における機器やスタッフのスケジューリング等に用いることが可能である。検査レポート作成部44は被検者に対して発行する検査レポートを作成するモジュールであり、検査レポートは電子データとしてあるいは紙媒体として被検者に対して提供される。その検査レポートには検査結果としての骨密度値が記録されており、また次回検診日時の目安が記載されている。更に申告した危険因子該当性あるいは過去からの該当性の変化に基づいて選択されたメッセージが検査レポート内に挿入されている。
【0028】
図2には危険因子リスト46が例示されている。これは骨粗鬆症の危険因子群により構成され、図1に示した危険因子管理テーブル30内に登録されている。危険因子群は大別して、改善を期待できる危険因子群48と、改善を期待できない危険因子群50と、からなる。前者は、「過剰喫煙(毎日20本以上)」、「アルコール摂取過多」、「運動不足」、「カルシウムの摂取不足」、「日光浴の不足」、「ビタミンDの摂取不足」、「食塩の過剰摂取」、「コーヒーの過剰摂取」、「スナック菓子の過剰摂取」、「極端な食事制限(ダイエット)」、を含み、後者は、「骨粗しょう症の家族歴有り」、「関節リウマチ有り」、「過去骨折有り」、「閉経後(女性)」、「高齢」、「糖尿病有り」、「胃切除有り」、「慢性肝障害有り」、「ステロイド薬の投与中」、「性別(女性)」、を含んでいる。それぞれの危険因子に対しては、危険値(重み)を設定することが可能であり、各重みを医療機関ごとにあるいは医師ごとに設定するようにしてもよい。危険値はこの例において三段階となっており、すなわち「高」「中」「低」を選択可能である。「無し」は対応する項目を実際の危険因子から外す場合にチェックされるものである。これらの設定内容は実際の骨塩量測定に先立って危険因子管理テーブル内に事前に格納される。
【0029】
図3には、特定の被検者から申告された内容が示されている。すなわち、危険因子群52を構成する各危険因子に該当するか否かが記入されている。これは電子データとして健診データベース上において管理されるものである。個々の健診ごとにこのような調査結果を管理すればその内容及び変化に基づいて治療方針を立てることが容易となる。例えば、実際に測定された骨密度値をも考慮しつつ、薬物療法、運動療法、食事療法のそれぞれについて適切なアドバイスを行える。
【0030】
図4には、健診データベースの内容の一部がリストとして表現されている。このリストは画面上に表示され、また必要に応じて印刷される。このリストには、検査番号を識別子として、被検者の名前、骨密度値、年齢が含まれている。更に、該当する危険因子、検査年月日、次回検査年月日が含まれている。リスト表示に当たって、次回検査年月日を過ぎても検査に現れなかった被検者については符号36A、36Bで示すようにハイライト表示されている。よって、それらの被検者に連絡をとるなどの対処を容易に行える。
【0031】
図5には、次回の検査日時の決定プロセスがフローチャートとして示されている。図5に示されるプロセスは例示にすぎない。まず、S10においては、測定値としての骨密度値が優良範囲内に入っているか否かが判断される。優良範囲は標準値を基準として適宜定めることが可能である。骨密度値が優良範囲内に入っていれば、S12において次回の検診日時として15ヶ月後の日が決定されることになる。もちろん、ここにおいて登場する時期的な数値はいずれも例示である。
【0032】
一方、S10において骨密度値が優良範囲外にあると判断された場合、S14において危険値(高)の個数が判断される。すなわち重みとして高が設定されている危険因子の該当数が調査される。その数が1個以上であればS16において次回の検診日として4ヶ月後が指定される。すなわち通常よりもかなり早い時期に次回の検診日が決定されることになる。
【0033】
一方、S14において危険値(高)の個数が0個であると判断された場合、S18において次に危険値(中)の個数が判断されることになる。その個数が2個以上であれば、S20において次回の検診日として4ヶ月後が指定される。すなわち、この場合においても一定の高いリスクが見積もられるために比較的早期の検診日時が設定されることになる。
【0034】
S18において、危険値(中)の個数が0個であれば、S22に移行し、その数が1個であればS24へ移行する。
【0035】
S22においては、危険値(低)の個数が判断され、その個数が0個であればS26において次回の検診日として12ヶ月後が指定され、その数が1個であればS28で次回の検診日として10ヶ月後が指定され、その数が2個であれば次回の検診日としてS30において8ヶ月後が指定される。更にその数が3個以上であればS32において次回の検診日として4ヶ月後が指定されることになる。S24において、危険値(低)の個数が0個であると判断されたならば、S34において次回の検診日として8ヶ月後が指定され、その数が1個であればS36において次回の検診日として6ヶ月後が指定され、その数が2個以上であればS38において次回の検診日として4ヶ月後が指定されることになる。
【0036】
上記のプロセスにおいては、測定値が優良であれば危険因子該当性を格別考慮していないが、もちろん常に危険因子該当性を考慮してもよい。上記のプロセスにおいては危険因子の該当数に加えてその重みまでを考慮しているので、よりきめ細やかに次回の検診日を指定できるという利点が得られる。すなわち状況を総合考慮することが可能である。
【0037】
図6には上述した予測グラフが明示されている。横軸は将来の日時を表しており、縦軸は検診予定者の数を表している。図4に示したようなデータベースの内容を参照することにより、将来の各日毎に検診予定者の数を見積もることができるので、それを時間軸上に表せば図6に示すようなグラフを構築することが可能である。このようなグラフは医療機関における医療機器やスタッフのスケジューリングに活用することが可能である。また、検診予定者に対して医師混雑度を情報として提供することも可能となる。
【0038】
図7には、図1に示した装置の動作例がフローチャートとして示されている。まずこのようなルーチンが実行される前に、図2に示した危険因子の個々についてすでに重みが設定されているものとする。そのような重みの設定は各医療機関毎に、あるいは各医師毎に自在に設定することが可能である。もちろん個々の疾病毎に学会などで重みを定めるようにしてもよい。
【0039】
S100においては、検査情報が入力される。この場合において被検者情報は名前、生年月日、性別、等であり、更に危険因子該当の有無を表す情報が含まれる。具体的には、図3に示したような調査データが入力されることになる。その入力はキーボードにより行うようにしてもよいし、電子的に入力するようにしてもよい。S102においては、X線の照射を利用して骨密度が測定される。これによりS104において骨密度画像が画面上に表示され、またそれと並行して画像解析による骨密度値が画面上に表示されることになる。S106においては、以上のような測定値を含む検査レポートが生成され、それが出力される。この場合においては電子媒体への出力及び紙媒体への出力が考えられる。その検査レポートには上述したように次回の検診日の目安が含まれている。更に以下に説明するメッセージも含まれる。
【0040】
図8乃至図11には検査レポートに含まれるメッセージが例示されている。図8において、符号58が付されている第1文の内容は「あなたの測定結果は、若年成人平均値と比べるとやや低下しております。」というものであり、これは測定値としての骨密度値を標準骨密度値と比較することによってその差分の大きさから選択されたものである。符号58が付されている第2文の内容は「過度のアルコール摂取は控えましょう。」というものである。これは被検者からアルコール摂取過多の危険因子有りが自己申告された場合にそれに連動して自動的に挿入された文章である。この危険因子は本人努力によって改善可能であるから、それを促す表現となっている。符号60が付されている第3文は「次回検診日は、****年**月**日頃です。」というものである。これは上記のような期間演算によって自動的に特定された次回健診時期の目安を示すものである。
【0041】
図9に示すメッセージは、上記同様の文章56及び文章(次回健診日の告知)60を含んでいる。更に、改善可能な3つの危険因子について被検者の改善努力を促す3つの文章58A,58B,58Cが含まれている。
【0042】
図10に示すメッセージは、上記同様の文章56及び文章60を含み、その他に符号62が付されている「改善できない危険因子である"高齢の女性"に該当いたしますので、転倒などにはご注意ください。」という文章が含まれている。当該文章は自己努力によっても改善できない危険因子であることを考慮してリスクを告知する内容となっている。
【0043】
図11に示すメッセージは、骨密度値が健常範囲内にあることに対応して、符号56が付されている文章が「 あなたの測定結果は、若年成人平均値と比べて同等です。」という内容になっている。続いて、符号58Dが付されている文章は「前回検診時と比較すると、日光浴の改善がされていますので、これからも心掛けましょう。」という内容になっている。これは過去から現在にかけて危険因子に改善が認められたために被検者にそれを自覚させるものである。このメッセージにも符号60で特定されるように次回検診日の告知が含まれている。
【0044】
既に説明したように、定形メッセージテーブル内には多数の定形文が格納されており、危険因子にチェックが入った場合にそれに連動して適切な定型文が選択され、それが検査レポート内に挿入される。その場合、危険因子の内容変化も調査されており、その変化に応じた文章が選択されている。
【符号の説明】
【0045】
10 測定ユニット、12 演算制御部、22 骨密度画像形成部、24 プロセッサ、30 危険因子管理テーブル、32 定形メッセージテーブル、38 測定値演算部、40 予測グラフ作成部、42 期間演算部、44 検査レポート作成部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に対して特定疾病を診断するための測定を実行して測定値を取得する測定ユニットと、
前記特定疾病に関連する危険因子群を構成する各危険因子に前記被検者が該当するか否かを示す調査結果データが入力される入力部と、
前記測定ユニットを利用して取得された今回の測定値と前記入力部に入力された今回の調査結果データとに基づいて、前記被検者について推奨される次回の健診時期を演算する演算部と、
前記次回の健診時期を含んだ健診レポートを作成するレポート作成部と、
を含むことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子数に基づいて前記次回の健診時期を演算する、ことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子に与えられた重みに基づいて前記次回の健診時期を演算する、ことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置において、
前記被検者ごとに演算された次回の診断時期が記録されるデータベースと、
前記データベースを参照し、予測される再診被検者数の時間的な変化を表す予測グラフを作成するグラフ作成手段と、
を含むことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置において、
前記出力部は、前記診断レポート内に前記被検者についての該当危険因子の全部又は一部に対応したメッセージを挿入するメッセージ処理手段を含む、ことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置において、
前記測定ユニットは前記被検体の骨密度測定を行うために前記被検体に対してX線を照射するユニットであり、
前記特定疾病は骨粗鬆症であり、
前記危険因子群は前記骨粗鬆症の発症又は悪化に影響を与える生活状況又は身体状況に関する複数の項目からなる、ことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項1】
被検者に対して特定疾病を診断するための測定を実行して測定値を取得する測定ユニットと、
前記特定疾病に関連する危険因子群を構成する各危険因子に前記被検者が該当するか否かを示す調査結果データが入力される入力部と、
前記測定ユニットを利用して取得された今回の測定値と前記入力部に入力された今回の調査結果データとに基づいて、前記被検者について推奨される次回の健診時期を演算する演算部と、
前記次回の健診時期を含んだ健診レポートを作成するレポート作成部と、
を含むことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子数に基づいて前記次回の健診時期を演算する、ことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記演算部は、前記被検者についての該当危険因子に与えられた重みに基づいて前記次回の健診時期を演算する、ことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置において、
前記被検者ごとに演算された次回の診断時期が記録されるデータベースと、
前記データベースを参照し、予測される再診被検者数の時間的な変化を表す予測グラフを作成するグラフ作成手段と、
を含むことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置において、
前記出力部は、前記診断レポート内に前記被検者についての該当危険因子の全部又は一部に対応したメッセージを挿入するメッセージ処理手段を含む、ことを特徴とする医療用測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置において、
前記測定ユニットは前記被検体の骨密度測定を行うために前記被検体に対してX線を照射するユニットであり、
前記特定疾病は骨粗鬆症であり、
前記危険因子群は前記骨粗鬆症の発症又は悪化に影響を与える生活状況又は身体状況に関する複数の項目からなる、ことを特徴とする医療用測定装置。
【図1】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−139411(P2012−139411A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294545(P2010−294545)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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