医療用粒子線照射装置
【課題】 回転ガントリー胴体の小型化と共に、粒子線照射部周辺での更なる空きスペース確保を同時に図ることが可能な粒子線治療用回転照射室の構造を提供する。
【解決手段】 筒状の一部に粒子線を出射する粒子線照射部を取り付けた回転ガントリー(2)と、回転ガントリーの内部で相対的に回転可能な移動側フレーム(20)と、移動側フレームに取り付けられた移動側移動床ガイド部(21)と、回転ガントリー内において、移動側フレームに対向して配置され固定された固定側フレーム(10)と、固定側フレームに固定された固定側移動床ガイド部と、一端を移動側移動床ガイド部に、他端を固定側移動床ガイド部に係合して移動可能かつ移動方向に屈曲自在な移動床(30)とを備えた粒子線治療用回転照射室において、胴体側移動床ガイド部(51)を、回転ガントリーの内周面上に直接取り付けると共に、所定の位置において、移動床の一端の係合を、移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡す機構(32、35等)を備える。
【解決手段】 筒状の一部に粒子線を出射する粒子線照射部を取り付けた回転ガントリー(2)と、回転ガントリーの内部で相対的に回転可能な移動側フレーム(20)と、移動側フレームに取り付けられた移動側移動床ガイド部(21)と、回転ガントリー内において、移動側フレームに対向して配置され固定された固定側フレーム(10)と、固定側フレームに固定された固定側移動床ガイド部と、一端を移動側移動床ガイド部に、他端を固定側移動床ガイド部に係合して移動可能かつ移動方向に屈曲自在な移動床(30)とを備えた粒子線治療用回転照射室において、胴体側移動床ガイド部(51)を、回転ガントリーの内周面上に直接取り付けると共に、所定の位置において、移動床の一端の係合を、移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡す機構(32、35等)を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用粒子線照射装置に関し、特に、回転ガントリーが回転しても常に水平にされる床(移動床)により形成される粒子線治療用回転照射室の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線による癌治療においては、近年、正常細胞に比較的障害を与えずに治療することができる粒子線(例えば、陽子線)が注目されている。なお、以下の説明では、これら陽子線などの粒子線や放射線などを含め、粒子線として説明する。
【0003】
かかる粒子線を用いた粒子線治療用回転照射室の一例が、例えば、以下の特許文献1に記載されている。即ち、この粒子線治療用回転照射室では、粒子線照射部を挟んで、それぞれ下側が水平な蒲鉾(半円)型の通路を形成した固定側リングレールと移動側リングレールを対向配置し、これらレールの間に、当該蒲鉾(半円)型の通路内にその両端を挿入して、屈曲自在な構造の移動床を渡し、もって、断面蒲鉾(半円)状の室を形成し、そして、蒲鉾(半円)型の通路内に挿入して配置された屈曲自在な構造の移動床を、粒子線照射部の回転と同期して移動させる。更に、粒子線照射部を回転する場合、回転ガントリーに設けた駆動モータによって、粒子線照射部の回転方向と逆方向に、その回転量と同じ量だけ、移動側リングレールを回転させる。これにより、固定側リングレールと移動側リングレールとの対向位置関係を維持しながら、回転ガントリーが回転しても、治療台及び粒子線照射部にアクセスするための床(移動床)を常に水平にすることことが可能となっている。
【0004】
また、粒子線照射部に求められる性能の一つとして、粒子線の照射範囲を患部形状に合わせて成型することが挙げられる。そのための手段の1つとして、マルチリーフコリメータが知られており、その一例が、以下の特許文献2に記載されている。即ち、このマルチリーフコリメータは、粒子線を遮蔽する能力を持つ遮蔽板(リーフ板)を多数枚重ね合わせるように可動に配設したリーフ板駆動体2体を、多数枚のリーフ板が粒子線源から患部へ向かう粒子線ビームの進行経路を挟みこむように配置し、両リーフ板駆動体の多数枚のリーフ板の端部を対向させて、その間に粒子線ビームの照射野を形成するように配置したものである。そして、各リーフ板駆動体において、電動モータ等からなる駆動手段の駆動力を用いて各リーフ板の位置を個々に調整することにより、一方の側におけるリーフ板駆動体の複数のリーフ板と、他方の側におけるリーフ板駆動体の複数のリーフ板との間に、照射範囲に相似した空隙を形成し、もって、希望する照射領域に向かう粒子線のみを通過させることにより、その通過した粒子線ビームが患部位置で整形された照射野を形成することが出来るようになっている。
【0005】
即ち、かかるマルチリーフコリメータを適用することによれば、以前の、照射対象の不規則な形状に合わせて、個別に、鋳造で作製されるコリメータを適用することに比較し、費用が安く、加えて、駆動手段を用いることによって、照射範囲の設定にかかる時間が短縮できるという利点があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−47287号公報
【特許文献2】特開2002−224230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術、特に、上記の特許文献1によれば、回転ガントリーの回転にもかかわらず、治療台や粒子線照射部にアクセスするための床(移動床)を常に水平に維持することが可能ではあるが、しかしながら、上述した特許文献2に開示されたマルチリーフコリメータを適用し、これを駆動手段を用いることによりその位置を個々に調整するためには、装置が複雑となり、かつ、粒子線照射部が大型化するという問題があった。
【0008】
即ち、上記特許文献1により知られた粒子線治療用回転照射室において、その粒子線照射部が大型化した場合、当該大型化した粒子線照射部を配置するためのスペースの確保と共に、そのメンテナンス性の向上のためには、回転ガントリーのすべての回転角度において、当該粒子線照射部の周辺に十分な空きスペースを確保することが必要となるが、その一方では、そのコスト削減のためには、回転ガントリーの小型化も重要な課題となる。
【0009】
しかしながら、上記従来技術の粒子線治療用回転照射室の構造では、粒子線治療用回転照射室の大きさは、前記移動側リングレールに形成された蒲鉾(半円)型のリングレールに形成された通路により決まることから、粒子線治療用回転照射室の大きさを変えずに(換言すれば、移動側リングレールの大きさを変えずに)回転ガントリー胴体内の粒子線照射部周辺の空きスペースを拡大するためには、移動側リングレールと回転ガントリー胴体との隙間を広くすることが、つまりは、回転ガントリーを大型化する必要がある。そのため、上記の従来技術では、粒子線照射部の周辺に更なる空きスペースを確保すると共に、回転ガントリーの小型化とを同時に満たすことは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、上述の従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転ガントリー胴体の小型化と同時に、粒子線照射部の周辺における更なる空きスペースの確保をも図ることが可能な粒子線治療用回転照射室の構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明によれば、筒状の一部に粒子線を出射する粒子線照射部が設置された回転ガントリーと、前記回転ガントリーの内部に相対的に回転可能に支持された移動側フレームと、前記移動側フレームに取り付けられた移動側移動床ガイド部と、前記回転ガントリー内において、前記移動側フレームに対向して配置され固定された固定側フレームと、前記固定側フレームに固定された固定側移動床ガイド部と、一端を前記移動側移動床ガイド部に、他端を前記固定側移動床ガイド部に係合して移動可能に取り付けられた、移動方向に屈曲自在な移動床とを備え、前記回転ガントリーの回転にもかかわらず、当該移動床の下側を実質的に水平に維持することにより粒子線治療用の空間を形成する医療用粒子線照射装置において、胴体側移動床ガイド部を、直接、前記回転ガントリーの内周面上に取り付けると共に、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動側移動床ガイド部に対する前記移動床の一端の係合を、当該移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段を備えた医療用粒子線照射装置が提供される。
【0012】
なお、本発明によれば、前記に記載した医療用粒子線照射装置において、前記引渡し手段は、出し入れ可能なピンを備え、前記移動側移動床ガイド部の溝、あるいは、前記胴体側移動床ガイド部の溝に対して係合自在なぶら下がり装置と、当該ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段とを備えていることが好ましく、更には、前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段は、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動床に対して光制御信号を照射することにより前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御することが好ましく、そして、前記光制御信号を照射する手段は、レーザー光発生手段であることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、前記に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段として、前記移動床を構成する板状部材を、前記回転ガントリーの回転軸方向に移動可能にすることが好ましく、その場合、更に、前記移動床を構成する板状部材にスライド装置を取り付け、当該スライド装置を前記移動側移動床ガイド部及び前記胴体側移動床ガイド部に形成した滑走部を設け、もって、前記スライド装置を当該滑走部に沿って移動させることによって前記板状部材の移動を行うことが好ましい。更には、前記胴体側移動床ガイド部に形成した前記滑走部は、前記回転ガントリー内の所定の位置において傾斜部を備えていることが好ましく、加えて、
前記移動床を構成する各板状部材は、車輪を備えており、当該移動床車輪は、進行方向に傾斜することが可能であることが好ましい。
【0014】
更には、前記に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側フレームは、前記回転ガントリーの回転と同期してその回転方向と反対に回転することが、あるいは、前記移動床は複数の板状部材から構成され、かつ、隣接する板状部材の曲がりを制限するためのストッパーを備えていることが好ましい。
【0015】
即ち、本発明によれば、移動床形成のためのガイドを、回転ガントリーが回転しても固定側リングレールと対向位置関係が維持される移動側リングレールにおけるガイドと、回転ガントリーの回転と動きを共にするガイドに分割する。また、移動側リングレールの大きさを回転ガントリー胴体内径に比較して小さくすることで、移動側リングレールと回転ガントリー胴体との隙間を設ける。さらに、移動側リングレールにおけるガイドを実質的に水平なアクセスフロアを形成する部分の移動床をガイドするのに用いる。
【0016】
また本発明では、回転ガントリーの回転と動きを共にするガイドを、回転ガントリー胴体の内周に比較的近いところの全周もしくは一部除いて、円周上に設ける。移動側リングレールに設けたガイドと回転ガントリー胴体に設けたガイドにおいては、一部、移動床の通路となるガイドがなくなるが、移動床もしくは反対側の固定側リングレールにおいて引渡し機構を設けることで、移動床のガイド上での引渡しを行うことが可能となる。
【0017】
これにより、移動側リングレールと回転ガントリー胴体との隙間を設けることが可能となり、回転ガントリーの全回転角度における粒子線照射部周辺における更なる空きスペースの確保と共に、回転ガントリー胴体の内周に比較的近いガイド部分を使用し、粒子線治療用回転照射室を形成することによれば、従来技術における粒子線治療用回転照射室と大きさが同じ照射室を、回転ガントリー胴体の小型化を実現しながら、得ることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明によれば、粒子線照射装置の回転位置に依存しない粒子線照射部周辺の更なる空きスペース確保と回転ガントリー胴体の小型化を同時に図ることが可能となるという、実用的も優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施の形態(実施例1)になる医療用粒子線照射装置の構造について、添付の図1〜図7を参照しながら説明する。
【0021】
まず、図1は、本発明の第1の実施の形態(実施例1)になる医療用粒子線照射装置に用いられる、特に、回転ガントリーを示す斜視図である。図にも示すように、回転ガントリー1は、フロントリング3及びリアリング8を有する略筒状のガントリー胴体2(回転体)と、当該ガントリー胴体2を回転させるガントリー回転モータ7(回転装置)とを備えている。なお、このガントリー胴体2は、その一端部に設けられた上記フロントリング3とリアリング8において、回転可能に設けられた複数のサポートロール6によって支持される。
【0022】
また、このガントリー胴体2の外部には、偏向電磁石等の電磁石を搭載したビーム輸送装置5が設けられており、更に、照射ビームを患部形状に合わせて調節する粒子線照射部4がその内部に延長して設けられており、これらは回転ガントリー1(ガントリー胴体2)の回転に伴って回転する。他方、ガントリー胴体2の内部には、粒子線治療を行うための粒子線治療用照射室43が構成されている。即ち、この粒子線治療用照射室43は、例えば医療技師が作業するための閉空間を与えるものであり、作業員の足場を確保するため、回転ガントリー1(ガントリー胴体2)の回転にかかわらず、常に、その下面を水平を保っている。
【0023】
なお、この図1において、後にも詳細に説明するが、符号10は、固定側フレームを、11は固定側移動床ガイド部を、22は後面パネルを、25は移動側フレーム支持台を示している。また、符号30は、移動床であり、31は移動床車輪、33はレーザー式信号発生装置を示している。
【0024】
次に、上記粒子線治療用照射室43の詳細構造を、添付の図2〜図4によって説明する。なお、図2は、上記図1に示した回転ガントリーの、特に、粒子線治療用照射室43の要部詳細構造を表す縦断面図であり、図3は、図2に示した回転ガントリーをV−V方向からみた横断面図であり、図4は、図2及び図3に示した回転ガントリーをW−W方向からみた縦断面図である。
【0025】
これらの図からも明らかなように、粒子線治療用照射室43は、粒子線照射部4の回転経路を挟んで配置されてその回転と共に移動する移動床30と、照射室43の奥行き側を閉止する後面パネル22と、更には、サポートフレーム50とでほぼ囲まれた空間であるである。また、その主な構成要素としては、上記のサポートフレーム50と共に、胴体側移動床ガイド部51、固定側フレーム(リング部材)10、移動側フレーム20、及び、移動床30が挙げられる。
【0026】
このうち、サポートフレーム50及び胴体側移動床ガイド部51は、ガントリー胴体2の内周面に固定される。即ち、図4に示す如く、サポートフレーム50及び胴体側移動床ガイド部51は、粒子線照射部4の周囲を除いて、ガントリー胴体2の内周面上に固定されている。
【0027】
一方、固定側フレーム10は、ガントリー胴体2のフロントリング3側に配置され、かつ、図からも明らかなように、建屋42の天井および床に固定されている。また、この固定側フレーム10には、その内側面に沿って、即ち、その下側が水平に、かつ、その上側が円弧状に形成された、所謂、蒲鉾(半円)状の固定側移動床ガイド部11が取り付けられており、かつ、当該ガイド部11には、図示のようにガイド溝が形成されている。
【0028】
移動側フレーム20は、上記固定側フレーム10との間に、粒子線照射部4の移動経路を挟むように(即ち、所定の距離だけ離れて、固定側フレーム10と対向して)、ガントリー胴体2の他端部側(図2の左側端)に配置される。この移動側フレーム20は、上述したサポートフレーム50に固定された移動側フレーム支持台25(図3及び図4参照)上に取り付けられた複数の移動側フレーム支持ローラ26によって、回転自在に支持される。そのため、移動側フレーム20は、これら移動側フレーム支持ローラ26によって、ガントリー胴体2に対し、相対的に回転可能となっている。更に、ガントリー胴体2の端部(図2の左端)の内面には、移動側フレーム駆動装置23が固定されている。即ち、この移動側フレーム駆動装置23は、移動側フレーム駆動ローラ24を介して、上記移動側フレーム20をガントリー胴体2の回転と同期して、当該ガントリー胴体2の回転とは逆方向に、同じ量だけ回転させ、もって、移動側フレーム20の絶対位置、即ち、固定側フレーム10との相対位置(位相)を同一に保つ働きをするものである。
【0029】
また、移動側フレーム20には、上記粒子線治療用照射室43の奥行き側を閉止する後面パネル22が固定されており、当該後面パネル22には、移動側移動床ガイド部21と共に、レーザー式信号発生装置33が保持されている。この移動側移動床ガイド部21は、水平なガイド溝となっており、もって、上記蒲鉾(半円)状の固定側移動床ガイド部11の水平なガイド溝に対して同一の水平面内に保たれている。
【0030】
なお、これらの図における他の符号について、40は治療台を、41は患者を、42は建屋を示している。
【0031】
次に、移動床30は、図7(図4のC部の拡大断面図)で示すように、多数の板状部材38を有しており、かつ、隣接する板状部材38同士がリンク36で連結され、もって、屈曲自在な連設構造となっている。そして、各板状部材38は、上記回転ガントリー1の回転軸方向と平行に(即ち、回転軸方向に沿って)配置され、その一端は、上記固定側移動床ガイド部11のガイド溝と常に係合しており、他方、その他端部は、基本的には、上記移動側移動床ガイド部21のガイド溝、もしくは、胴体側移動床ガイド部51のガイド溝と係合するが、しかしながら、その一部において係合していない箇所も存在している。
【0032】
かかる移動床30の詳細構造について、更に、添付の図5(図2のA部で示される拡大図であり、正面図及び側面図を含む)を用いて説明する。即ち、移動床30を構成する各板状部材38は、その一端側面には移動床車輪31が取り付けられており、移動床30が動く際、当該移動床車輪31が、上記移動側移動床ガイド部21のガイド溝に挿入される。なお、ここでは図示しないが、この移動側移動床ガイド部21の反対側の端側面にも、同様に、移動床車輪31が取り付けられおり、かつ、当該車輪は上記固定側移動床ガイド部11のガイド溝に挿入されている。
【0033】
各板状部材38には、移動床30等により形成される治療空間に面している表面には、信号受光部34が、その反対側のガントリー胴体2の内面と向かい合う面には、ぶら下がり装置32が固定されている。このぶら下がり装置32には、出し入れ可能なぶら下がりピン35が設置されており、上記の信号受光部34に光信号が入射する度に、そのぶら下がりピン35を出し入れする。なお、ぶら下がりピン35が出ている場合は、図6(図3のB部の拡大断面図)に示すように、当該ぶら下がりピン35を胴体側移動床ガイド部51のガイド溝に挿入した状態となる。
【0034】
次に、移動床30の一端部での、特に、移動側移動床ガイド部21と胴体側移動床ガイド部51との間における係合部での引渡し方法について、再び、上記図7を用いて説明する。即ち、板状部材38の一端部が上記移動側移動床ガイド部21と係合されている場合は、上述したように、ぶら下がりピン35は、ぶら下がり装置32内に収納されている。そして、移動床30がガントリー胴体2の回転と共に移動すると、移動側移動床ガイド部21と係合していた板状部材38は、移動側移動床ガイド部21との係合状態から外れることとなる。その後、移動床30が更に移動すると、ぶら下がり装置32が、胴体側移動床ガイド部51を構成する互いに対向するガイドの隙間に徐々に入っていく。そして、当該ぶら下がりピン35が胴体側移動床ガイド部51のガイド溝内に入りきる位置で信号受光部34に光信号を送るよう、レーザー式信号発生装置33は、後面パネル22の所定の位置に取り付けられ、配置されている。
【0035】
より具体的には、例えば、このレーザー式信号発生装置33は、上記ガントリー胴体2の回転中は、常に、光信号を出すように設定することによれば、ぶら下がりピン35をぶら下がり装置32内に収納した状態の板状部材38は、胴体側移動床ガイド部51のガイド溝内に入り、図に破線の矢印で示す位置において、ぶら下がりピン35を突出し、もって、板状部材38の一端部と胴体側移動床ガイド部51とが係合関係となる。一方、ぶら下がりピン35が突出している状態で上記レーザー式信号発生装置33からの光信号を信号受光部34で受け取った板状部材38は、そのぶら下がりピン35をぶら下がり装置32内に収納し、もって、当該板状部材38の一端部と胴体側移動床ガイド部51との係合が外れることとなる。
【0036】
なお、上述したように、上記板状部材38の一部では、その一端部が移動側移動床ガイド部21のガイド溝、もしくは、胴体側移動床ガイド部51のガイド溝と係合していない箇所が存在する。しかしながら、かかる場合においても、その他方の端部は、上記固定側移動床ガイド部と係合されており、また、この移動床30は、隣接する板状部材38同士をリンク36で連結し屈曲自在な連設構造となっているため、スムーズに、胴体側移動床ガイド部51にぶら下がりピン35が挿入されるが、しかしながら、より確実に挿入する手段として、例えば、胴体側移動床ガイド部51の内径を小さくすること、または、隣接する板状部材38同士の間にストッパーを設けて曲がり難くする(隣接する板状部材38同士の間の曲がりを制限する)ことなども可能である。
【0037】
加えて、上記後面パネル22にレーザー式信号発生装置33を、適宜、設置することによれば、移動床30と胴体側移動床ガイド部51との間の結合(連結)関係のオンーオフを適宜制御することが可能となり、これより、移動床30の一端部を、移動側移動床ガイド部21と胴体側移動床ガイド部51との間で、その係合部の引渡しを自在に行うことが可能となる。
【0038】
即ち、上記に詳細構造を説明した、本発明になる医療用粒子線照射装置によれば、添付の図8及び図9の比較例と対比することにより明らかなように、ガントリー胴体2の内部において、移動床30等により形成される空間を、従来の構造よりも大きくすることが可能となる。より具体的には、例えば、図8及び図9の比較例のように、後面パネル22に固定した移動側移動床ガイド部21を、その下側に水平部を有する所謂蒲鉾(半円)形状に形成し、当該移動側移動床ガイド部21と固定側移動床ガイド部11との間に移動床30を張り渡す構造に比較し、本発明になる構成によれば、ガントリー胴体2の内周面に、直接、移動床のガイドとして胴体側移動床ガイド部51を設けているため、移動床30とガントリー胴体2の内面との間の隙間を極めて小さくすることが出来る。換言すれば、上記の従来の構造で本発明の実施の形態と同じ広さの粒子線治療用照射室43と共に、移動側フレーム周辺に空きスペース44を得るためには、その構造から、ガントリー胴体2の径を大きくする必要があるが、これに対して、本発明では、ガントリー胴体2に、直接、胴体側移動床ガイド部51を設ける構造としているため、移動床30とガントリー胴体2の内周面との間の隙間を極力小さくすることが出来る。そのため、移動側フレーム周辺の空きスペース44の広さに関わらず、同程度の粒子線治療用照射室43を形成する場合において、上記の比較例に比べて、ガントリー胴体2の径を大きくする必用がなく、装置の小型化を達成することが可能になる。
【0039】
特に、より大きな広さの粒子線治療用照射室43と共に、移動側フレーム周辺の空きスペース44の広さをも十分に確保することが可能になることによれば、例えば、上述した従来技術である特開2001−353228号公報に開示されるようなマルチリーフコリメータを適用した大型の粒子線照射部を採用しても、その周辺に十分な空間を確保することが可能となることから、駆動手段を用いてその位置を個々に調整し、照射範囲の設定する作業が容易となる。なお、この場合、当該粒子線照射部は、ガントリー胴体2の回転と連動して移動することが出来ることとなり、他方、3つのガイド部(即ち、固定側移動床ガイド部11、移動側移動床ガイド部21、胴体側移動床ガイド部51)によって移動可能に形成される移動床30を当該ガントリー胴体2の回転に連動して移動することによって、粒子線照射部の回転位置にかかわらず、常に、移動床30を平行に保つことが可能な粒子線治療用照射室43を実現することが可能になる。
【0040】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、粒子線照射装置の回転位置に依存することなく、粒子線照射部の周辺に更なる空きスペースを確保すると共に、回転ガントリー胴体の小型化を同時に図ることができる、もって、作業性をも含め、優れた医療用粒子線照射装置を実現することが出来る。
【実施例2】
【0041】
続いて、本発明の第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置について、添付の図10〜図14を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
図10は、本発明の第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置の、特に、粒子線治療用照射室の要部の詳細構造を示す縦断面図であり、図11は、当該図10に示す回転ガントリーをY−Y方向からみた横断面図である。また、図12は、上記図10及び図11に示す回転ガントリーをZ−Z方向からみた横断面図であり、図13は、上記図10のD部に示す移動床の詳細構造を示す図であり、そして、図14は、上記図11のE部における固定側移動床ガイド部内での移動床の動きを説明する説明図である。なお、以下の説明において、上記第1の実施の形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0043】
この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同じく、固定側移動床ガイド部11、移動側移動床ガイド部21、ガントリー胴体2の内周面に取り付けた胴体側移動床ガイド部51の3つのガイド部に対し、移動床30を構成する板状部材38を移動可能にする。しかしながら、本第2の実施の形態では、当該板状部材38に取り付けたぶら下がり装置32とぶら下がりピン35の働きによりガイド部に係合し、もって、移動床30を移動可能にする上述した第1の実施の形態とは異なり、即ち、本第2の実施の形態では、これに代えて、特に、胴体側移動床ガイド部51、移動床30、固定側移動床ガイド部11の構造を変更し、即ち、移動床30を構成する板状部材38を、移動側移動床ガイド部21とガントリー胴体2の内周面に取り付けた胴体側移動床ガイド部51間において、ガントリー胴体2の回転軸方向にスライドさせて、その係合部の引渡しを行うものである。
【0044】
まず、胴体側移動床ガイド部51に関して、ガイド溝は、ガントリー胴体2の回転軸方向に向くよう、サポートフレーム50内に設置されており、一方、移動床30との係合構造については、移動側移動床ガイド部21と同じく、移動床車輪31を含めた各板状部材38の一端部がガイド溝に挿入する構造を採用している。
【0045】
次に、移動床30に関しては、隣接する板状部材38同士を屈曲自在に連結し、かつ、各板状部材38は、ガントリー胴体2の回転軸方向にスライド可能な機構とするため、添付の図13に示す如く、隣接する板状部材38同士を移動床連結部61で固定している。即ち、移動床連結部61は、スライドロッド61a及び筒状スライドロッド受け部61bで構成されており、当該スライドロッド61aが筒状スライドロッド受け部61b内に挿入されることによって、それぞれが、隣接する板状部材38の側面に向き合うように配置される。これにより、隣接する板状部材38同士が屈曲自在に連結され、もって、各板状部材38が、個別に、ガントリー胴体2の回転軸方向にスライド可能となる。
【0046】
なお、実際に移動床30をガントリー胴体2の回転軸方向にスライドさせるためには、固定側移動床ガイド部11と共に、当該固定側移動床ガイド部11と移動床30との間の係合部に工夫を施さなければならない。具体的に、この第2の実施の形態では、添付の図13及び図14にも示すように、上記移動床30を構成する各板状部材38の端面には、バネ付きスライド装置62を固定し(図13を参照)、他方、固定側移動床ガイド部11には、その一部に傾斜付きの固定側移動床滑走部12を設置し(図14を参照)、当該スライド装置62が常に固定側移動床ガイド部11に係合するように配置する。
【0047】
ここで、上記のバネ付きスライド装置62は、上記図13にも示すように、間隔保持ロッド62a、ガイド溝滑走部62b、引きバネ62c、止め部62dで構成されており、当該間隔保持ロッド62aにより、移動床30が移動中に移動床車輪31と固定側移動床滑走部12とが接触しないよう、換言すれば、移動床車輪31と固定側移動床滑走部12との間に一定の間隔が保たれるように構成されている。更に、各板状部材38が上記固定側移動床滑走部12に沿って所定のスライド運動を行うように、ガイド溝滑走部62bと止め部62dとを固定側移動床滑走部12との間に配置し、その間を固定側移動床滑走部12に形成した隙間を通した引きバネ62cで接続している。
【0048】
また、各板状部材38がスムーズにスライド運動するためには、上記図14にも示すように、スライド中の移動床車輪31の向きを進行方向に向ける(傾斜する)必要がある。本例では、各板状部材38と移動床車輪31とを、例えば、ユニバーサルジョイント軸37を用いて固定することにより、各板状部材38が常にガントリー胴体2の回転軸方向を向きながら、かつ、滑走部12に沿って傾斜させ、即ち、板状部材38の進行方向に移動床車輪31の向きを合わせることが可能となる。また、ユニバーサルジョイント軸37の可動領域は、板状部材38の進行方向での変更角度(即ち、滑走部12の傾斜角)を制限することともなる。
【0049】
そして、移動床30を構成する各板状部材38の端部における、移動側移動床ガイド部21から胴体側移動床ガイド部51への係合部の引渡しに関しては、胴体側移動床ガイド部51の内径を小さくする、あるいは、隣接する板38同士の間にストッパーを設けて一定角度以上は曲がらなくすることによって、より確実でスムーズに引渡しが可能となることは、上記第1の実施の形態と同様である。即ち、以上に説明した第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置によって、上記本発明の第1の実施の形態と同様の効果、即ち、粒子線照射装置の回転位置に依存することなく、粒子線照射部の周辺に更なる空きスペース確保すると共に、回転ガントリー胴体の小型化を同時に図ることができる、もって、作業性をも含め、優れた医療用粒子線照射装置を実現することが可能となる。
【0050】
即ち、本発明になる医療用粒子線照射装置によれば、移動床形成のためのガイドに、回転ガントリーが回転しても固定側フレームと対向位置関係が維持される移動側フレームに設けた移動側移動床ガイド部と、回転ガントリーの回転と動きを共にするガントリー胴体に設けた胴体側移動床ガイド部と、更には、固定側フレームに設けた固定側移動床ガイド部を用いる。そして、固定側移動床ガイド部を下側に水平部を有する蒲鉾(半円)型のガイド溝とし、移動側移動床ガイド部を水平なガイド溝とする。また、両ガイド部の水平部は同一水平面内に保たれるものとする。更に、胴体側移動床ガイド部は、ガントリー胴体の内周に比較的近いところの全周もしくは一部除いた円周上に設ける。移動側移動床ガイド部と胴体側移動床ガイド部においては、一部移動床の通路となるガイドがなくなるが、しかしながら、移動床もしくは反対側の固定側移動床ガイド部において引渡し機構を設けることで、移動床のガイド上での引渡しを行うことが可能となる。
【0051】
このように、移動側フレームの大きさを回転ガントリー胴体内径に比較して小さくすることで、移動側フレームと回転ガントリー胴体とに隙間を設ける。また、移動側フレームを支持するガントリー胴体に固定されたサポートフレームは、粒子線照射部付近を除く回転ガントリー胴体の内周に設ける。
【0052】
以上から、回転ガントリーの全回転角度における粒子線照射部周辺の更なる空きスペースの確保と、回転ガントリー胴体の内周に比較的近いところのガイドを使用し粒子線治療用回転照射室を形成することで、従来技術における粒子線治療用回転照射室の大きさが同じ場合でも、回転ガントリー胴体の小型化を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態 による医療用粒子線照射装置を、特に、その回転ガントリーを中心に示す斜視図である。
【図2】上記図1に示す回転ガントリーの粒子線治療用照射室の要部詳細構造を示す縦断面図である。
【図3】上記図2においてV−V方向から見た回転ガントリーの横断面図である。
【図4】上記図2及び図3においてW−W方向から見た回転ガントリーの縦断面図である。
【図5】上記図2におけるA部の移動床を拡大して詳細構造を示す正面及び側面図である。
【図6】上記図3におけるB部を拡大して示す断面図である。
【図7】上記図4におけるC部の詳細を示す拡大断面図である。
【図8】本発明との比較のため、従来の回転ガントリーを含む粒子線治療用照射室の構造を示す縦断面図である。
【図9】同様に、本発明との比較のため、従来の回転ガントリーを含む粒子線治療用照射室の構造を示す横断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置、特に、回転ガントリーの粒子線治療用照射室の要部詳細構造を表す縦断面図である。
【図11】上記図10において回転ガントリーをY−Y方向から見た横断面図である。
【図12】上記図10において回転ガントリーをZ−Z方向から見た横断面図である。
【図13】上記図10におけるD部を拡大して示す移動床の詳細構造斜視図である。
【図14】上記図11におけるE部の固定側移動床ガイド部内での移動床の動きを示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1…回転ガントリー、2…ガントリー胴体、3…フロントリング、4…粒子線照射部、5…ビーム輸送装置、6…サポートロール、7…ガントリー回転モータ、8…リアリング、10…固定側フレーム、11…固定側移動床ガイド部、12…固定側移動床滑走部、20…移動側フレーム、21…移動側移動床ガイド部、22…後面パネル、23…移動側フレーム駆動装置、24…移動側フレーム駆動ローラ、25…移動側フレーム支持台、26…移動側フレーム支持ローラ、30…移動床、31…移動床車輪、32…ぶら下がり装置、33…レーザー式信号発生装置、34…信号受光部、35…ぶら下がりピン、36…リンク、37…ユニバーサルジョイント軸、38…板状部材、40…治療台、41…患者、42…建屋、43…粒子線治療用照射室、44…移動側フレーム周辺空きスペース、50…サポートフレーム、51…胴体側移動床ガイド部、61…移動床連結部、61a…スライドロッド、61b…筒状スライドロッド受け部、62…バネ付きスライド装置、62a…間隔保持ロッド、62b…ガイド溝滑走部、62c…引きバネ、62d…止め部
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用粒子線照射装置に関し、特に、回転ガントリーが回転しても常に水平にされる床(移動床)により形成される粒子線治療用回転照射室の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線による癌治療においては、近年、正常細胞に比較的障害を与えずに治療することができる粒子線(例えば、陽子線)が注目されている。なお、以下の説明では、これら陽子線などの粒子線や放射線などを含め、粒子線として説明する。
【0003】
かかる粒子線を用いた粒子線治療用回転照射室の一例が、例えば、以下の特許文献1に記載されている。即ち、この粒子線治療用回転照射室では、粒子線照射部を挟んで、それぞれ下側が水平な蒲鉾(半円)型の通路を形成した固定側リングレールと移動側リングレールを対向配置し、これらレールの間に、当該蒲鉾(半円)型の通路内にその両端を挿入して、屈曲自在な構造の移動床を渡し、もって、断面蒲鉾(半円)状の室を形成し、そして、蒲鉾(半円)型の通路内に挿入して配置された屈曲自在な構造の移動床を、粒子線照射部の回転と同期して移動させる。更に、粒子線照射部を回転する場合、回転ガントリーに設けた駆動モータによって、粒子線照射部の回転方向と逆方向に、その回転量と同じ量だけ、移動側リングレールを回転させる。これにより、固定側リングレールと移動側リングレールとの対向位置関係を維持しながら、回転ガントリーが回転しても、治療台及び粒子線照射部にアクセスするための床(移動床)を常に水平にすることことが可能となっている。
【0004】
また、粒子線照射部に求められる性能の一つとして、粒子線の照射範囲を患部形状に合わせて成型することが挙げられる。そのための手段の1つとして、マルチリーフコリメータが知られており、その一例が、以下の特許文献2に記載されている。即ち、このマルチリーフコリメータは、粒子線を遮蔽する能力を持つ遮蔽板(リーフ板)を多数枚重ね合わせるように可動に配設したリーフ板駆動体2体を、多数枚のリーフ板が粒子線源から患部へ向かう粒子線ビームの進行経路を挟みこむように配置し、両リーフ板駆動体の多数枚のリーフ板の端部を対向させて、その間に粒子線ビームの照射野を形成するように配置したものである。そして、各リーフ板駆動体において、電動モータ等からなる駆動手段の駆動力を用いて各リーフ板の位置を個々に調整することにより、一方の側におけるリーフ板駆動体の複数のリーフ板と、他方の側におけるリーフ板駆動体の複数のリーフ板との間に、照射範囲に相似した空隙を形成し、もって、希望する照射領域に向かう粒子線のみを通過させることにより、その通過した粒子線ビームが患部位置で整形された照射野を形成することが出来るようになっている。
【0005】
即ち、かかるマルチリーフコリメータを適用することによれば、以前の、照射対象の不規則な形状に合わせて、個別に、鋳造で作製されるコリメータを適用することに比較し、費用が安く、加えて、駆動手段を用いることによって、照射範囲の設定にかかる時間が短縮できるという利点があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−47287号公報
【特許文献2】特開2002−224230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来技術、特に、上記の特許文献1によれば、回転ガントリーの回転にもかかわらず、治療台や粒子線照射部にアクセスするための床(移動床)を常に水平に維持することが可能ではあるが、しかしながら、上述した特許文献2に開示されたマルチリーフコリメータを適用し、これを駆動手段を用いることによりその位置を個々に調整するためには、装置が複雑となり、かつ、粒子線照射部が大型化するという問題があった。
【0008】
即ち、上記特許文献1により知られた粒子線治療用回転照射室において、その粒子線照射部が大型化した場合、当該大型化した粒子線照射部を配置するためのスペースの確保と共に、そのメンテナンス性の向上のためには、回転ガントリーのすべての回転角度において、当該粒子線照射部の周辺に十分な空きスペースを確保することが必要となるが、その一方では、そのコスト削減のためには、回転ガントリーの小型化も重要な課題となる。
【0009】
しかしながら、上記従来技術の粒子線治療用回転照射室の構造では、粒子線治療用回転照射室の大きさは、前記移動側リングレールに形成された蒲鉾(半円)型のリングレールに形成された通路により決まることから、粒子線治療用回転照射室の大きさを変えずに(換言すれば、移動側リングレールの大きさを変えずに)回転ガントリー胴体内の粒子線照射部周辺の空きスペースを拡大するためには、移動側リングレールと回転ガントリー胴体との隙間を広くすることが、つまりは、回転ガントリーを大型化する必要がある。そのため、上記の従来技術では、粒子線照射部の周辺に更なる空きスペースを確保すると共に、回転ガントリーの小型化とを同時に満たすことは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、上述の従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転ガントリー胴体の小型化と同時に、粒子線照射部の周辺における更なる空きスペースの確保をも図ることが可能な粒子線治療用回転照射室の構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明によれば、筒状の一部に粒子線を出射する粒子線照射部が設置された回転ガントリーと、前記回転ガントリーの内部に相対的に回転可能に支持された移動側フレームと、前記移動側フレームに取り付けられた移動側移動床ガイド部と、前記回転ガントリー内において、前記移動側フレームに対向して配置され固定された固定側フレームと、前記固定側フレームに固定された固定側移動床ガイド部と、一端を前記移動側移動床ガイド部に、他端を前記固定側移動床ガイド部に係合して移動可能に取り付けられた、移動方向に屈曲自在な移動床とを備え、前記回転ガントリーの回転にもかかわらず、当該移動床の下側を実質的に水平に維持することにより粒子線治療用の空間を形成する医療用粒子線照射装置において、胴体側移動床ガイド部を、直接、前記回転ガントリーの内周面上に取り付けると共に、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動側移動床ガイド部に対する前記移動床の一端の係合を、当該移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段を備えた医療用粒子線照射装置が提供される。
【0012】
なお、本発明によれば、前記に記載した医療用粒子線照射装置において、前記引渡し手段は、出し入れ可能なピンを備え、前記移動側移動床ガイド部の溝、あるいは、前記胴体側移動床ガイド部の溝に対して係合自在なぶら下がり装置と、当該ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段とを備えていることが好ましく、更には、前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段は、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動床に対して光制御信号を照射することにより前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御することが好ましく、そして、前記光制御信号を照射する手段は、レーザー光発生手段であることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、前記に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段として、前記移動床を構成する板状部材を、前記回転ガントリーの回転軸方向に移動可能にすることが好ましく、その場合、更に、前記移動床を構成する板状部材にスライド装置を取り付け、当該スライド装置を前記移動側移動床ガイド部及び前記胴体側移動床ガイド部に形成した滑走部を設け、もって、前記スライド装置を当該滑走部に沿って移動させることによって前記板状部材の移動を行うことが好ましい。更には、前記胴体側移動床ガイド部に形成した前記滑走部は、前記回転ガントリー内の所定の位置において傾斜部を備えていることが好ましく、加えて、
前記移動床を構成する各板状部材は、車輪を備えており、当該移動床車輪は、進行方向に傾斜することが可能であることが好ましい。
【0014】
更には、前記に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側フレームは、前記回転ガントリーの回転と同期してその回転方向と反対に回転することが、あるいは、前記移動床は複数の板状部材から構成され、かつ、隣接する板状部材の曲がりを制限するためのストッパーを備えていることが好ましい。
【0015】
即ち、本発明によれば、移動床形成のためのガイドを、回転ガントリーが回転しても固定側リングレールと対向位置関係が維持される移動側リングレールにおけるガイドと、回転ガントリーの回転と動きを共にするガイドに分割する。また、移動側リングレールの大きさを回転ガントリー胴体内径に比較して小さくすることで、移動側リングレールと回転ガントリー胴体との隙間を設ける。さらに、移動側リングレールにおけるガイドを実質的に水平なアクセスフロアを形成する部分の移動床をガイドするのに用いる。
【0016】
また本発明では、回転ガントリーの回転と動きを共にするガイドを、回転ガントリー胴体の内周に比較的近いところの全周もしくは一部除いて、円周上に設ける。移動側リングレールに設けたガイドと回転ガントリー胴体に設けたガイドにおいては、一部、移動床の通路となるガイドがなくなるが、移動床もしくは反対側の固定側リングレールにおいて引渡し機構を設けることで、移動床のガイド上での引渡しを行うことが可能となる。
【0017】
これにより、移動側リングレールと回転ガントリー胴体との隙間を設けることが可能となり、回転ガントリーの全回転角度における粒子線照射部周辺における更なる空きスペースの確保と共に、回転ガントリー胴体の内周に比較的近いガイド部分を使用し、粒子線治療用回転照射室を形成することによれば、従来技術における粒子線治療用回転照射室と大きさが同じ照射室を、回転ガントリー胴体の小型化を実現しながら、得ることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明によれば、粒子線照射装置の回転位置に依存しない粒子線照射部周辺の更なる空きスペース確保と回転ガントリー胴体の小型化を同時に図ることが可能となるという、実用的も優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施の形態(実施例1)になる医療用粒子線照射装置の構造について、添付の図1〜図7を参照しながら説明する。
【0021】
まず、図1は、本発明の第1の実施の形態(実施例1)になる医療用粒子線照射装置に用いられる、特に、回転ガントリーを示す斜視図である。図にも示すように、回転ガントリー1は、フロントリング3及びリアリング8を有する略筒状のガントリー胴体2(回転体)と、当該ガントリー胴体2を回転させるガントリー回転モータ7(回転装置)とを備えている。なお、このガントリー胴体2は、その一端部に設けられた上記フロントリング3とリアリング8において、回転可能に設けられた複数のサポートロール6によって支持される。
【0022】
また、このガントリー胴体2の外部には、偏向電磁石等の電磁石を搭載したビーム輸送装置5が設けられており、更に、照射ビームを患部形状に合わせて調節する粒子線照射部4がその内部に延長して設けられており、これらは回転ガントリー1(ガントリー胴体2)の回転に伴って回転する。他方、ガントリー胴体2の内部には、粒子線治療を行うための粒子線治療用照射室43が構成されている。即ち、この粒子線治療用照射室43は、例えば医療技師が作業するための閉空間を与えるものであり、作業員の足場を確保するため、回転ガントリー1(ガントリー胴体2)の回転にかかわらず、常に、その下面を水平を保っている。
【0023】
なお、この図1において、後にも詳細に説明するが、符号10は、固定側フレームを、11は固定側移動床ガイド部を、22は後面パネルを、25は移動側フレーム支持台を示している。また、符号30は、移動床であり、31は移動床車輪、33はレーザー式信号発生装置を示している。
【0024】
次に、上記粒子線治療用照射室43の詳細構造を、添付の図2〜図4によって説明する。なお、図2は、上記図1に示した回転ガントリーの、特に、粒子線治療用照射室43の要部詳細構造を表す縦断面図であり、図3は、図2に示した回転ガントリーをV−V方向からみた横断面図であり、図4は、図2及び図3に示した回転ガントリーをW−W方向からみた縦断面図である。
【0025】
これらの図からも明らかなように、粒子線治療用照射室43は、粒子線照射部4の回転経路を挟んで配置されてその回転と共に移動する移動床30と、照射室43の奥行き側を閉止する後面パネル22と、更には、サポートフレーム50とでほぼ囲まれた空間であるである。また、その主な構成要素としては、上記のサポートフレーム50と共に、胴体側移動床ガイド部51、固定側フレーム(リング部材)10、移動側フレーム20、及び、移動床30が挙げられる。
【0026】
このうち、サポートフレーム50及び胴体側移動床ガイド部51は、ガントリー胴体2の内周面に固定される。即ち、図4に示す如く、サポートフレーム50及び胴体側移動床ガイド部51は、粒子線照射部4の周囲を除いて、ガントリー胴体2の内周面上に固定されている。
【0027】
一方、固定側フレーム10は、ガントリー胴体2のフロントリング3側に配置され、かつ、図からも明らかなように、建屋42の天井および床に固定されている。また、この固定側フレーム10には、その内側面に沿って、即ち、その下側が水平に、かつ、その上側が円弧状に形成された、所謂、蒲鉾(半円)状の固定側移動床ガイド部11が取り付けられており、かつ、当該ガイド部11には、図示のようにガイド溝が形成されている。
【0028】
移動側フレーム20は、上記固定側フレーム10との間に、粒子線照射部4の移動経路を挟むように(即ち、所定の距離だけ離れて、固定側フレーム10と対向して)、ガントリー胴体2の他端部側(図2の左側端)に配置される。この移動側フレーム20は、上述したサポートフレーム50に固定された移動側フレーム支持台25(図3及び図4参照)上に取り付けられた複数の移動側フレーム支持ローラ26によって、回転自在に支持される。そのため、移動側フレーム20は、これら移動側フレーム支持ローラ26によって、ガントリー胴体2に対し、相対的に回転可能となっている。更に、ガントリー胴体2の端部(図2の左端)の内面には、移動側フレーム駆動装置23が固定されている。即ち、この移動側フレーム駆動装置23は、移動側フレーム駆動ローラ24を介して、上記移動側フレーム20をガントリー胴体2の回転と同期して、当該ガントリー胴体2の回転とは逆方向に、同じ量だけ回転させ、もって、移動側フレーム20の絶対位置、即ち、固定側フレーム10との相対位置(位相)を同一に保つ働きをするものである。
【0029】
また、移動側フレーム20には、上記粒子線治療用照射室43の奥行き側を閉止する後面パネル22が固定されており、当該後面パネル22には、移動側移動床ガイド部21と共に、レーザー式信号発生装置33が保持されている。この移動側移動床ガイド部21は、水平なガイド溝となっており、もって、上記蒲鉾(半円)状の固定側移動床ガイド部11の水平なガイド溝に対して同一の水平面内に保たれている。
【0030】
なお、これらの図における他の符号について、40は治療台を、41は患者を、42は建屋を示している。
【0031】
次に、移動床30は、図7(図4のC部の拡大断面図)で示すように、多数の板状部材38を有しており、かつ、隣接する板状部材38同士がリンク36で連結され、もって、屈曲自在な連設構造となっている。そして、各板状部材38は、上記回転ガントリー1の回転軸方向と平行に(即ち、回転軸方向に沿って)配置され、その一端は、上記固定側移動床ガイド部11のガイド溝と常に係合しており、他方、その他端部は、基本的には、上記移動側移動床ガイド部21のガイド溝、もしくは、胴体側移動床ガイド部51のガイド溝と係合するが、しかしながら、その一部において係合していない箇所も存在している。
【0032】
かかる移動床30の詳細構造について、更に、添付の図5(図2のA部で示される拡大図であり、正面図及び側面図を含む)を用いて説明する。即ち、移動床30を構成する各板状部材38は、その一端側面には移動床車輪31が取り付けられており、移動床30が動く際、当該移動床車輪31が、上記移動側移動床ガイド部21のガイド溝に挿入される。なお、ここでは図示しないが、この移動側移動床ガイド部21の反対側の端側面にも、同様に、移動床車輪31が取り付けられおり、かつ、当該車輪は上記固定側移動床ガイド部11のガイド溝に挿入されている。
【0033】
各板状部材38には、移動床30等により形成される治療空間に面している表面には、信号受光部34が、その反対側のガントリー胴体2の内面と向かい合う面には、ぶら下がり装置32が固定されている。このぶら下がり装置32には、出し入れ可能なぶら下がりピン35が設置されており、上記の信号受光部34に光信号が入射する度に、そのぶら下がりピン35を出し入れする。なお、ぶら下がりピン35が出ている場合は、図6(図3のB部の拡大断面図)に示すように、当該ぶら下がりピン35を胴体側移動床ガイド部51のガイド溝に挿入した状態となる。
【0034】
次に、移動床30の一端部での、特に、移動側移動床ガイド部21と胴体側移動床ガイド部51との間における係合部での引渡し方法について、再び、上記図7を用いて説明する。即ち、板状部材38の一端部が上記移動側移動床ガイド部21と係合されている場合は、上述したように、ぶら下がりピン35は、ぶら下がり装置32内に収納されている。そして、移動床30がガントリー胴体2の回転と共に移動すると、移動側移動床ガイド部21と係合していた板状部材38は、移動側移動床ガイド部21との係合状態から外れることとなる。その後、移動床30が更に移動すると、ぶら下がり装置32が、胴体側移動床ガイド部51を構成する互いに対向するガイドの隙間に徐々に入っていく。そして、当該ぶら下がりピン35が胴体側移動床ガイド部51のガイド溝内に入りきる位置で信号受光部34に光信号を送るよう、レーザー式信号発生装置33は、後面パネル22の所定の位置に取り付けられ、配置されている。
【0035】
より具体的には、例えば、このレーザー式信号発生装置33は、上記ガントリー胴体2の回転中は、常に、光信号を出すように設定することによれば、ぶら下がりピン35をぶら下がり装置32内に収納した状態の板状部材38は、胴体側移動床ガイド部51のガイド溝内に入り、図に破線の矢印で示す位置において、ぶら下がりピン35を突出し、もって、板状部材38の一端部と胴体側移動床ガイド部51とが係合関係となる。一方、ぶら下がりピン35が突出している状態で上記レーザー式信号発生装置33からの光信号を信号受光部34で受け取った板状部材38は、そのぶら下がりピン35をぶら下がり装置32内に収納し、もって、当該板状部材38の一端部と胴体側移動床ガイド部51との係合が外れることとなる。
【0036】
なお、上述したように、上記板状部材38の一部では、その一端部が移動側移動床ガイド部21のガイド溝、もしくは、胴体側移動床ガイド部51のガイド溝と係合していない箇所が存在する。しかしながら、かかる場合においても、その他方の端部は、上記固定側移動床ガイド部と係合されており、また、この移動床30は、隣接する板状部材38同士をリンク36で連結し屈曲自在な連設構造となっているため、スムーズに、胴体側移動床ガイド部51にぶら下がりピン35が挿入されるが、しかしながら、より確実に挿入する手段として、例えば、胴体側移動床ガイド部51の内径を小さくすること、または、隣接する板状部材38同士の間にストッパーを設けて曲がり難くする(隣接する板状部材38同士の間の曲がりを制限する)ことなども可能である。
【0037】
加えて、上記後面パネル22にレーザー式信号発生装置33を、適宜、設置することによれば、移動床30と胴体側移動床ガイド部51との間の結合(連結)関係のオンーオフを適宜制御することが可能となり、これより、移動床30の一端部を、移動側移動床ガイド部21と胴体側移動床ガイド部51との間で、その係合部の引渡しを自在に行うことが可能となる。
【0038】
即ち、上記に詳細構造を説明した、本発明になる医療用粒子線照射装置によれば、添付の図8及び図9の比較例と対比することにより明らかなように、ガントリー胴体2の内部において、移動床30等により形成される空間を、従来の構造よりも大きくすることが可能となる。より具体的には、例えば、図8及び図9の比較例のように、後面パネル22に固定した移動側移動床ガイド部21を、その下側に水平部を有する所謂蒲鉾(半円)形状に形成し、当該移動側移動床ガイド部21と固定側移動床ガイド部11との間に移動床30を張り渡す構造に比較し、本発明になる構成によれば、ガントリー胴体2の内周面に、直接、移動床のガイドとして胴体側移動床ガイド部51を設けているため、移動床30とガントリー胴体2の内面との間の隙間を極めて小さくすることが出来る。換言すれば、上記の従来の構造で本発明の実施の形態と同じ広さの粒子線治療用照射室43と共に、移動側フレーム周辺に空きスペース44を得るためには、その構造から、ガントリー胴体2の径を大きくする必要があるが、これに対して、本発明では、ガントリー胴体2に、直接、胴体側移動床ガイド部51を設ける構造としているため、移動床30とガントリー胴体2の内周面との間の隙間を極力小さくすることが出来る。そのため、移動側フレーム周辺の空きスペース44の広さに関わらず、同程度の粒子線治療用照射室43を形成する場合において、上記の比較例に比べて、ガントリー胴体2の径を大きくする必用がなく、装置の小型化を達成することが可能になる。
【0039】
特に、より大きな広さの粒子線治療用照射室43と共に、移動側フレーム周辺の空きスペース44の広さをも十分に確保することが可能になることによれば、例えば、上述した従来技術である特開2001−353228号公報に開示されるようなマルチリーフコリメータを適用した大型の粒子線照射部を採用しても、その周辺に十分な空間を確保することが可能となることから、駆動手段を用いてその位置を個々に調整し、照射範囲の設定する作業が容易となる。なお、この場合、当該粒子線照射部は、ガントリー胴体2の回転と連動して移動することが出来ることとなり、他方、3つのガイド部(即ち、固定側移動床ガイド部11、移動側移動床ガイド部21、胴体側移動床ガイド部51)によって移動可能に形成される移動床30を当該ガントリー胴体2の回転に連動して移動することによって、粒子線照射部の回転位置にかかわらず、常に、移動床30を平行に保つことが可能な粒子線治療用照射室43を実現することが可能になる。
【0040】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、粒子線照射装置の回転位置に依存することなく、粒子線照射部の周辺に更なる空きスペースを確保すると共に、回転ガントリー胴体の小型化を同時に図ることができる、もって、作業性をも含め、優れた医療用粒子線照射装置を実現することが出来る。
【実施例2】
【0041】
続いて、本発明の第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置について、添付の図10〜図14を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
図10は、本発明の第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置の、特に、粒子線治療用照射室の要部の詳細構造を示す縦断面図であり、図11は、当該図10に示す回転ガントリーをY−Y方向からみた横断面図である。また、図12は、上記図10及び図11に示す回転ガントリーをZ−Z方向からみた横断面図であり、図13は、上記図10のD部に示す移動床の詳細構造を示す図であり、そして、図14は、上記図11のE部における固定側移動床ガイド部内での移動床の動きを説明する説明図である。なお、以下の説明において、上記第1の実施の形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0043】
この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同じく、固定側移動床ガイド部11、移動側移動床ガイド部21、ガントリー胴体2の内周面に取り付けた胴体側移動床ガイド部51の3つのガイド部に対し、移動床30を構成する板状部材38を移動可能にする。しかしながら、本第2の実施の形態では、当該板状部材38に取り付けたぶら下がり装置32とぶら下がりピン35の働きによりガイド部に係合し、もって、移動床30を移動可能にする上述した第1の実施の形態とは異なり、即ち、本第2の実施の形態では、これに代えて、特に、胴体側移動床ガイド部51、移動床30、固定側移動床ガイド部11の構造を変更し、即ち、移動床30を構成する板状部材38を、移動側移動床ガイド部21とガントリー胴体2の内周面に取り付けた胴体側移動床ガイド部51間において、ガントリー胴体2の回転軸方向にスライドさせて、その係合部の引渡しを行うものである。
【0044】
まず、胴体側移動床ガイド部51に関して、ガイド溝は、ガントリー胴体2の回転軸方向に向くよう、サポートフレーム50内に設置されており、一方、移動床30との係合構造については、移動側移動床ガイド部21と同じく、移動床車輪31を含めた各板状部材38の一端部がガイド溝に挿入する構造を採用している。
【0045】
次に、移動床30に関しては、隣接する板状部材38同士を屈曲自在に連結し、かつ、各板状部材38は、ガントリー胴体2の回転軸方向にスライド可能な機構とするため、添付の図13に示す如く、隣接する板状部材38同士を移動床連結部61で固定している。即ち、移動床連結部61は、スライドロッド61a及び筒状スライドロッド受け部61bで構成されており、当該スライドロッド61aが筒状スライドロッド受け部61b内に挿入されることによって、それぞれが、隣接する板状部材38の側面に向き合うように配置される。これにより、隣接する板状部材38同士が屈曲自在に連結され、もって、各板状部材38が、個別に、ガントリー胴体2の回転軸方向にスライド可能となる。
【0046】
なお、実際に移動床30をガントリー胴体2の回転軸方向にスライドさせるためには、固定側移動床ガイド部11と共に、当該固定側移動床ガイド部11と移動床30との間の係合部に工夫を施さなければならない。具体的に、この第2の実施の形態では、添付の図13及び図14にも示すように、上記移動床30を構成する各板状部材38の端面には、バネ付きスライド装置62を固定し(図13を参照)、他方、固定側移動床ガイド部11には、その一部に傾斜付きの固定側移動床滑走部12を設置し(図14を参照)、当該スライド装置62が常に固定側移動床ガイド部11に係合するように配置する。
【0047】
ここで、上記のバネ付きスライド装置62は、上記図13にも示すように、間隔保持ロッド62a、ガイド溝滑走部62b、引きバネ62c、止め部62dで構成されており、当該間隔保持ロッド62aにより、移動床30が移動中に移動床車輪31と固定側移動床滑走部12とが接触しないよう、換言すれば、移動床車輪31と固定側移動床滑走部12との間に一定の間隔が保たれるように構成されている。更に、各板状部材38が上記固定側移動床滑走部12に沿って所定のスライド運動を行うように、ガイド溝滑走部62bと止め部62dとを固定側移動床滑走部12との間に配置し、その間を固定側移動床滑走部12に形成した隙間を通した引きバネ62cで接続している。
【0048】
また、各板状部材38がスムーズにスライド運動するためには、上記図14にも示すように、スライド中の移動床車輪31の向きを進行方向に向ける(傾斜する)必要がある。本例では、各板状部材38と移動床車輪31とを、例えば、ユニバーサルジョイント軸37を用いて固定することにより、各板状部材38が常にガントリー胴体2の回転軸方向を向きながら、かつ、滑走部12に沿って傾斜させ、即ち、板状部材38の進行方向に移動床車輪31の向きを合わせることが可能となる。また、ユニバーサルジョイント軸37の可動領域は、板状部材38の進行方向での変更角度(即ち、滑走部12の傾斜角)を制限することともなる。
【0049】
そして、移動床30を構成する各板状部材38の端部における、移動側移動床ガイド部21から胴体側移動床ガイド部51への係合部の引渡しに関しては、胴体側移動床ガイド部51の内径を小さくする、あるいは、隣接する板38同士の間にストッパーを設けて一定角度以上は曲がらなくすることによって、より確実でスムーズに引渡しが可能となることは、上記第1の実施の形態と同様である。即ち、以上に説明した第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置によって、上記本発明の第1の実施の形態と同様の効果、即ち、粒子線照射装置の回転位置に依存することなく、粒子線照射部の周辺に更なる空きスペース確保すると共に、回転ガントリー胴体の小型化を同時に図ることができる、もって、作業性をも含め、優れた医療用粒子線照射装置を実現することが可能となる。
【0050】
即ち、本発明になる医療用粒子線照射装置によれば、移動床形成のためのガイドに、回転ガントリーが回転しても固定側フレームと対向位置関係が維持される移動側フレームに設けた移動側移動床ガイド部と、回転ガントリーの回転と動きを共にするガントリー胴体に設けた胴体側移動床ガイド部と、更には、固定側フレームに設けた固定側移動床ガイド部を用いる。そして、固定側移動床ガイド部を下側に水平部を有する蒲鉾(半円)型のガイド溝とし、移動側移動床ガイド部を水平なガイド溝とする。また、両ガイド部の水平部は同一水平面内に保たれるものとする。更に、胴体側移動床ガイド部は、ガントリー胴体の内周に比較的近いところの全周もしくは一部除いた円周上に設ける。移動側移動床ガイド部と胴体側移動床ガイド部においては、一部移動床の通路となるガイドがなくなるが、しかしながら、移動床もしくは反対側の固定側移動床ガイド部において引渡し機構を設けることで、移動床のガイド上での引渡しを行うことが可能となる。
【0051】
このように、移動側フレームの大きさを回転ガントリー胴体内径に比較して小さくすることで、移動側フレームと回転ガントリー胴体とに隙間を設ける。また、移動側フレームを支持するガントリー胴体に固定されたサポートフレームは、粒子線照射部付近を除く回転ガントリー胴体の内周に設ける。
【0052】
以上から、回転ガントリーの全回転角度における粒子線照射部周辺の更なる空きスペースの確保と、回転ガントリー胴体の内周に比較的近いところのガイドを使用し粒子線治療用回転照射室を形成することで、従来技術における粒子線治療用回転照射室の大きさが同じ場合でも、回転ガントリー胴体の小型化を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態 による医療用粒子線照射装置を、特に、その回転ガントリーを中心に示す斜視図である。
【図2】上記図1に示す回転ガントリーの粒子線治療用照射室の要部詳細構造を示す縦断面図である。
【図3】上記図2においてV−V方向から見た回転ガントリーの横断面図である。
【図4】上記図2及び図3においてW−W方向から見た回転ガントリーの縦断面図である。
【図5】上記図2におけるA部の移動床を拡大して詳細構造を示す正面及び側面図である。
【図6】上記図3におけるB部を拡大して示す断面図である。
【図7】上記図4におけるC部の詳細を示す拡大断面図である。
【図8】本発明との比較のため、従来の回転ガントリーを含む粒子線治療用照射室の構造を示す縦断面図である。
【図9】同様に、本発明との比較のため、従来の回転ガントリーを含む粒子線治療用照射室の構造を示す横断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態になる医療用粒子線照射装置、特に、回転ガントリーの粒子線治療用照射室の要部詳細構造を表す縦断面図である。
【図11】上記図10において回転ガントリーをY−Y方向から見た横断面図である。
【図12】上記図10において回転ガントリーをZ−Z方向から見た横断面図である。
【図13】上記図10におけるD部を拡大して示す移動床の詳細構造斜視図である。
【図14】上記図11におけるE部の固定側移動床ガイド部内での移動床の動きを示す動作説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1…回転ガントリー、2…ガントリー胴体、3…フロントリング、4…粒子線照射部、5…ビーム輸送装置、6…サポートロール、7…ガントリー回転モータ、8…リアリング、10…固定側フレーム、11…固定側移動床ガイド部、12…固定側移動床滑走部、20…移動側フレーム、21…移動側移動床ガイド部、22…後面パネル、23…移動側フレーム駆動装置、24…移動側フレーム駆動ローラ、25…移動側フレーム支持台、26…移動側フレーム支持ローラ、30…移動床、31…移動床車輪、32…ぶら下がり装置、33…レーザー式信号発生装置、34…信号受光部、35…ぶら下がりピン、36…リンク、37…ユニバーサルジョイント軸、38…板状部材、40…治療台、41…患者、42…建屋、43…粒子線治療用照射室、44…移動側フレーム周辺空きスペース、50…サポートフレーム、51…胴体側移動床ガイド部、61…移動床連結部、61a…スライドロッド、61b…筒状スライドロッド受け部、62…バネ付きスライド装置、62a…間隔保持ロッド、62b…ガイド溝滑走部、62c…引きバネ、62d…止め部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の一部に粒子線を出射する粒子線照射部が設置された回転ガントリーと、前記回転ガントリーの内部に相対的に回転可能に支持された移動側フレームと、前記移動側フレームに取り付けられた移動側移動床ガイド部と、前記回転ガントリー内において、前記移動側フレームに対向して配置され固定された固定側フレームと、前記固定側フレームに固定された固定側移動床ガイド部と、一端を前記移動側移動床ガイド部に、他端を前記固定側移動床ガイド部に係合して移動可能に取り付けられた、移動方向に屈曲自在な移動床とを備え、前記回転ガントリーの回転にもかかわらず、当該移動床の下側を実質的に水平に維持することにより粒子線治療用の空間を形成する医療用粒子線照射装置において、
胴体側移動床ガイド部を、直接、前記回転ガントリーの内周面上に取り付けると共に、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動側移動床ガイド部に対する前記移動床の一端の係合を、当該移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段を備えたことを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載した医療用粒子線照射装置において、前記引渡し手段は、出し入れ可能なピンを備え、前記移動側移動床ガイド部の溝、あるいは、前記胴体側移動床ガイド部の溝に対して係合自在なぶら下がり装置と、当該ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段とを備えていることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載した医療用粒子線照射装置において、前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段は、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動床に対して光制御信号を照射することにより前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御することを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載した医療用粒子線照射装置において、前記光制御信号を照射する手段は、レーザー光発生手段であることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段として、前記移動床を構成する板状部材を、前記回転ガントリーの回転軸方向に移動可能にすることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載した医療用粒子線照射装置において、更に、前記移動床を構成する板状部材にスライド装置を取り付け、当該スライド装置を前記移動側移動床ガイド部及び前記胴体側移動床ガイド部に形成した滑走部を設け、もって、前記スライド装置を当該滑走部に沿って移動させることによって前記板状部材の移動を行うことを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載した医療用粒子線照射装置において、前記胴体側移動床ガイド部に形成した前記滑走部は、前記回転ガントリー内の所定の位置において傾斜部を備えていることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項8】
前記請求項6に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動床を構成する各板状部材は、車輪を備えており、当該移動床車輪は、進行方向に傾斜することが可能であることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか一に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側フレームは、前記回転ガントリーの回転と同期してその回転方向と反対に回転することを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項10】
前記請求項1〜8のいずれか一に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動床は複数の板状部材から構成され、かつ、隣接する板状部材の曲がりを制限するためのストッパーを備えていることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項1】
筒状の一部に粒子線を出射する粒子線照射部が設置された回転ガントリーと、前記回転ガントリーの内部に相対的に回転可能に支持された移動側フレームと、前記移動側フレームに取り付けられた移動側移動床ガイド部と、前記回転ガントリー内において、前記移動側フレームに対向して配置され固定された固定側フレームと、前記固定側フレームに固定された固定側移動床ガイド部と、一端を前記移動側移動床ガイド部に、他端を前記固定側移動床ガイド部に係合して移動可能に取り付けられた、移動方向に屈曲自在な移動床とを備え、前記回転ガントリーの回転にもかかわらず、当該移動床の下側を実質的に水平に維持することにより粒子線治療用の空間を形成する医療用粒子線照射装置において、
胴体側移動床ガイド部を、直接、前記回転ガントリーの内周面上に取り付けると共に、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動側移動床ガイド部に対する前記移動床の一端の係合を、当該移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段を備えたことを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載した医療用粒子線照射装置において、前記引渡し手段は、出し入れ可能なピンを備え、前記移動側移動床ガイド部の溝、あるいは、前記胴体側移動床ガイド部の溝に対して係合自在なぶら下がり装置と、当該ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段とを備えていることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載した医療用粒子線照射装置において、前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御する手段は、前記回転ガントリー内の所定の位置において、前記移動床に対して光制御信号を照射することにより前記ぶら下がり装置のピンの出し入れを制御することを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載した医療用粒子線照射装置において、前記光制御信号を照射する手段は、レーザー光発生手段であることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項5】
前記請求項1に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側移動床ガイド部から胴体側移動床ガイド部へ引渡すための手段として、前記移動床を構成する板状部材を、前記回転ガントリーの回転軸方向に移動可能にすることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載した医療用粒子線照射装置において、更に、前記移動床を構成する板状部材にスライド装置を取り付け、当該スライド装置を前記移動側移動床ガイド部及び前記胴体側移動床ガイド部に形成した滑走部を設け、もって、前記スライド装置を当該滑走部に沿って移動させることによって前記板状部材の移動を行うことを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載した医療用粒子線照射装置において、前記胴体側移動床ガイド部に形成した前記滑走部は、前記回転ガントリー内の所定の位置において傾斜部を備えていることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項8】
前記請求項6に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動床を構成する各板状部材は、車輪を備えており、当該移動床車輪は、進行方向に傾斜することが可能であることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか一に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動側フレームは、前記回転ガントリーの回転と同期してその回転方向と反対に回転することを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【請求項10】
前記請求項1〜8のいずれか一に記載した医療用粒子線照射装置において、前記移動床は複数の板状部材から構成され、かつ、隣接する板状部材の曲がりを制限するためのストッパーを備えていることを特徴とする医療用粒子線照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−264311(P2008−264311A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113308(P2007−113308)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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