説明

医療用精製水の製造方法

【課題】常にエンドトキシン濃度が十分に低い高品質の精製水を、使用量の変動があった場合でも安定して安価に供給することができる医療用精製水の製造方法と、その実施に適した医療用精製水の製造装置を提供する。
【解決手段】RO処理水を貯水タンク2に送って貯水する工程、貯水タンク2のRO処理水をEDI装置3に送ってEDI処理水を得る工程、EDI処理水を第3ライン14から貯水タンク2に返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る工程と、前記混合水を第2ライン13から再度EDI装置3に送って処理する工程を繰り返す循環工程を有している。循環工程では、貯水タンク2内のエンドトキシン(ET)濃度を測定装置20でモニターしながらEDI処理水の循環量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用精製水の製造方法と、前記製造方法の実施に適した医薬品の製造用水及び人工透析用水等の医療用精製水を製造するための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工透析液は、精製水(人工透析用水)と透析液原液を混合して製造される。前記精製水は、微生物やエンドトキシンで汚染されていないものを用いる必要があるため(非特許文献1)、製造方法が重要となる。
【0003】
人工透析は医療機関で行われるが、患者の治療スケジュールや症状により、人工透析を受ける患者数は1日の中の午前、午後、夜間の各シフト間、あるいは曜日間で増減することが多く、急患への対応が求められる場合もある。そして、どのような場合でも、常に高品質の精製水を必要量だけ速やかに供給することが求められる。また、通常、深夜には人工透析は行われないため、精製水の製造装置の運転は停止され、翌朝に運転が再開されることになるが、このような運転再開時においても高い品質のものを安定供給できることが重要となる。
【0004】
特許文献1、2には、RO処理装置とEDI装置を組み合わせて、人工透析用水を製造するための装置と製造方法が記載されている。特許文献1には、EDI処理水を逆浸透膜装置の入口に返送して循環させることが記載されているが(段落0039と図1参照)、いずれの特許文献にも、貯水タンクを用いた循環ラインについての記載はない。
非特許文献2には、貯水タンク装置以降のラインに薬剤注入器を設けて循環・洗浄させることが記載されている。この方法では従来から指摘されてきた殺菌薬剤の残留問題が解決されず、また精製水製造を停止させて行う洗浄法であるため、洗浄と同時に精製水製造を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−252396号公報
【特許文献2】特開2007−237062号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】腎と透析別冊2006,p33−36,「透析施設での細菌検査の実際」
【非特許文献2】腎と透析別冊2006,p111−116,「RO水タンクからRO水供給ラインの過酢酸系洗浄剤ヘモクリーンによる洗浄効果」
【非特許文献3】第53回(社)日本透析医学会学術集会(2008年6月22日)の予稿集(電気再生純水装置による透析用水の評価)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者の一部は、第53回(社)日本透析医学会学術集会において、RO処理装置とEDI装置を組み合わせた精製水の製造装置と製造方法について発表している(非特許文献3)。
【0008】
本発明は、前記発表時において未発表の発明を加えると共に、更に改良を加えて、常にエンドトキシン濃度が十分に低い高品質の精製水を、使用量の変動があった場合でも安定して安価に供給することができる医療用精製水の製造方法と、その実施に適した医療用精製水の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題を解決するための手段として、
逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有する医療用精製水の製造装置を用いた医療用精製水の製造方法であって、
前記製造装置が、前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができ、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されたものであり、
RO処理装置にて得られたRO処理水を第1ラインから貯水タンクに送って貯水する第1工程と、
貯水タンクに貯水されたRO処理水を第2ラインからEDI装置に送って処理し、EDI処理水を得る第2工程を有しており、
更にEDI処理水を第3ラインから貯水タンクに返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る第3工程と、前記混合水を第2ラインから再度EDI装置に送って処理する第4工程を繰り返す循環工程を有しており、
循環工程に移行したとき、貯水タンク内のエンドトキシン(以下「ET」という)濃度をモニターしながらEDI処理水の循環量を調節することでET濃度を低下させる、医療用精製水の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、他の課題を解決するための手段として、
逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有しており、
前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができる医療用精製水の製造装置であって、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されており、
前記貯水タンクにエンドトキシン(以下「ET」という)測定装置が接続されている、医療用精製水の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造装置を用いて医療用精製水を製造することにより、殺菌薬剤の残留問題もなく、使用量の変動があった場合でも、エンドトキシン濃度が低く、細菌数も減少された、人体に対して安全な高品質の精製水を安価に安定供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法を説明するための製造フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1により、本発明の医療用精製水の製造方法と、前記製造方法を実施するために適した医療用精製水の製造装置を説明する。図1は、製造フローを示す図である。なお、図示していないが、必要に応じて、各ライン間には送水を停止及び開始するための開閉バルブ(電磁弁等)を設けることができる。
【0014】
<第1工程>
ROポンプ4を作動させ、原水供給ライン11から水道水をRO処理装置1に送って処理して、RO処理水を得る。その後、得られたRO処理水を第1ライン12から貯水タンク2に送って貯水する。なお、原水となる水道水は、必要に応じて、軟水装置、活性炭、ミクロフィルター等で前処理することもできる。
【0015】
RO処理装置1は、公知のものを用いることができ、例えば、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社より販売されている、装置型式VCR40シリーズ、VCR80シリーズ、NER40シリーズ、NER80シリーズ、SHRシリーズのほか、実施例で使用したもの等を用いることができる。
【0016】
RO処理装置1は、処理能力(処理水の製造能力)が30〜5000L/hrのものを用いることができるが、前記範囲に限定されるものではなく、精製水の供給量に応じて、適宜選択することができる。
【0017】
貯水タンク2の貯水容量は100〜3000Lが好ましい。貯水タンク2は、ステンレス等の金属製、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製等にすることができる。
【0018】
貯水タンク2の形状は特に制限されるものではないが、タンク内部への液の残留を防止して液の流れを円滑にする観点から、図示するように底部が円錐あるいは四角錐の錐状構造ものが好ましく、前記錐状の頂点部分にライン13が接続されているものが特に好ましい。
【0019】
貯水タンク2は、外部雰囲気からの雑菌等の混入を防ぐためのエアフィルター付きの通気孔を有しており、必要に応じて、内部には、殺菌を目的として紫外線ランプを取り付けることもできる。
【0020】
貯水タンク2内部には水位計を取り付けておき、水位に応じてRO処理装置1の運転を開始又は停止できるようにすることが好ましい。例えば、予め貯水タンク2内の水位の上限値と下限値を決めておき、上限値に達したときにRO処理装置1の運転を停止させ、逆に下限値に達したときにRO処理装置1の運転を開始させるようにする。
【0021】
貯水タンクの容量(V3)は、後述する第3工程におけるEDI装置による1時間当たりのEDI処理水の量(V1)(L)と、貯水タンクの平均水量(V2)の関係を満たすように、V1/V3が1.5〜10の比率関係にするのが好ましい。貯水タンク2の水量は、循環運転中に変化するものであり、前記平均水量(V2)は、循環運転の開始から全量循環運転および/または一部量循環運転による所定時間経過時までの間の平均値とする。具体的には、5分ごとに貯水タンク2の水量を計測し、その平均値から求める。
【0022】
<第2工程>
次に、EDI供給ポンプ5を作動させて、貯水タンク2に貯水されたRO処理水を第2ライン13からEDI装置3に送って処理し、EDI処理水を得る。
【0023】
EDI装置3は、イオン交換室(脱塩室)、濃縮室、電極室(正及び負の電極室)を有する公知の装置であり、イオン交換室で脱イオン処理して脱塩水(EDI処理水)を取り出すことができるものである。EDI装置としては、例えば、特許文献1、2に記載のもの、特開平11−244853号公報、特開2001−239270号公報、特開2001−353498号公報、特開2004−74109号公報に記載のもののほか、市販のEDI装置である、EDIシステムシリーズ,商品名MOLSEP(登録商標)(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)販売)、実施例で使用したもの等を用いることができる。
【0024】
EDI装置3の運転条件は、
供給液量が、好ましくは50〜4500L/hrであり、
EDI水量(脱塩水量)が、好ましくは30〜4000L/hrであり、
濃縮水流量が、好ましくは供給液量の5%〜20%の流量であり、
印加電圧は30〜1000Vが好ましく、印加電流は0.5〜6A、印加電流密度で0.1〜4A/dm2が好ましい。
【0025】
以上の第1工程と第2工程により、RO処理水をEDI処理したEDI処理水を得ることができるが、本発明の製造方法では、以下において説明するとおり、更に第3工程と第4工程を組み合わせた循環ラインを有していることが特徴である。
【0026】
<第3工程(循環工程)>
次に、EDI処理水を第3ライン14から貯水タンク2に返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る。
【0027】
第3工程の処理の開始は、第3ライン14の洗浄のため第2工程の処理の開始と同時に行うことが好ましい。精製水製造・取水を始める前に精製水の取水ポイントまでの設備、配管を洗浄する場合は、一時的に第3工程を省略してEDI処理水の全量を取水ポイントまでの設備、配管に送水してもよい。
【0028】
本発明の製造方法では、循環工程に移行したとき、貯水タンク2内のRO処理水とEDI処理水の混合水をサンプリング管21で採取し、手動又は自動のET濃度測定装置20にてET濃度を測定する。手動のET濃度測定装置として、例えば市販のトキシノメーターミニ(和光純薬(株)製)、自動のET濃度測定装置としては市販のトキシノメーターET−auto3000(和光純薬(株)製)等を用いることができる。そして、ET濃度をモニターしながらEDI処理水の循環量を調節する。このとき、循環工程における貯水タンク2内のET濃度が20EU/L未満になるようにEDI処理水の循環量を調節することが好ましく、貯水タンク2内のET濃度が10EU/L未満になるようにEDI処理水の循環量を調節することがより好ましい。EDI処理における印加電流密度が高い場合、EDI処理水中のET濃度は低くなるので貯水タンク2内のET濃度を所定値以下にするための必要循環量は少なくて済み、印加電流密度が低い場合は、EDI処理水中のET濃度は高くなるので貯水タンク2内のET濃度を所定値以下にするための必要循環量は増大する。
【0029】
なお、第3工程では、上記のとおり、ET濃度により循環量を調節するものであるが、EDI装置による1時間当たりのEDI処理水の量(V1)(L)と、貯水タンクの平均水量(V2)(L)の比率(V1/V2)が2〜12の関係を満たすように循環運転することが好ましく、より好ましくはV1/V2が3〜10の関係を満たすように循環運転する。V1/V2が2以上では洗浄に要する時間を短くすることができ、必要時に速やかな精製水製造を行うことができ、貯水タンク容量も小さくなり、装置の小型化ができる点で望ましい。V1/V2が12以下であると、EDI処理量と貯水タンク容量のバランスがよく装置の安定運転の観点から望ましい。
【0030】
好ましい実施形態としては、
EDI装置運転時の印加電流密度が0.1〜4A/dm2の範囲であり、貯水タンク2内のET濃度が20EU/L以上であるときには、ET濃度が20EU/L未満になるまでEDI処理水の全量を貯水タンク2に返送し、その後はEDI処理水の一部量を返送しながら医療用精製水を取水する工程と、
貯水タンク2内のET濃度が20EU/L以上になったとき、医療用精製水の取水を中止し、再度、ET濃度が20EU/L未満になるまでEDI処理水の全量を貯水タンク2に返送する工程を繰り返す方法を適用できる。
【0031】
より好ましい実施形態としては、
EDI装置運転時の印加電流密度が0.1〜4A/dm2の範囲であり、貯水タンク2内のET濃度が20EU/L以上であるときには、ET濃度が10EU/L以下になるまでEDI処理水の全量を貯水タンク2に返送し、その後はEDI処理水の一部量を返送しながら医療用精製水を取水する工程と、
貯水タンク2内のET濃度が10EU/Lを超えたとき、医療用精製水の取水量を減少させながら、再度、ET濃度が10EU/L以下になるまでEDI処理水の全量を貯水タンク2に返送する工程を繰り返す方法を適用できる。
【0032】
上記各実施形態においては、印加電流密度が大きい方が同一の処理時間であればET除去率を高くできるため、前記範囲内にて印加電流密度を大きくすると、循環時間を短くすることができ、循環量を少なくすることができる。
【0033】
本発明の製造方法を適用したとき、全量循環運転時における貯水タンク2中のET濃度を上記数値のように低下させると、EDI装置3の処理水(脱塩水)中のET濃度は、医療用精製水(人工透析液等)として十分に安全なレベル(例えば、1EU/L未満)まで低下されている。貯水タンク2中のET濃度は、医療用精製水の品質に対する要望に応じて、5EU/L以下、3EU/L以下等に設定することができる。
【0034】
本発明の製造方法によって、ET濃度を低下させ、人体に対して安全の高品質の精製水を得ることができるが、更に安全性を高めるために、ライン15の途中にイオン交換樹脂片の捕集、エンドトキシンや微生物の除去の役目をするUF装置を設置することもできる。
【0035】
本発明の製造方法は、下記の各方法を実施できるが、これらの実施方法に限定されるものではない。
【0036】
(実施方法1)
(1)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程の開始(貯水タンク2中のET濃度のモニター開始)/RO処理水の貯水タンク2への送水停止(RO処理装置1の運転停止)。
(2)医療用精製水の取水・使用開始/貯水タンク2中のET濃度モニターの継続。
(3)貯水タンク2の水量低下に伴い、RO処理水の貯水タンク2への送水開始(RO処理装置1の運転開始)/EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程の停止(貯水タンク2中のET濃度のモニターは停止又は継続)。
(4)上記(1)〜(3)の繰り返し。(1)のEDI装置3から貯水タンク2へのEDI処理水の返送は、ET濃度に応じて全量返送又は一部量返送を選択実施する。
【0037】
(実施方法2)
(1)EDI装置3と貯水タンク2間の循環工程の開始(貯水タンク2中のET濃度のモニター開始)。
(2)循環工程と並行して、RO処理水の貯水タンク2への送水量の調整(貯水タンク2の水量に応じて、RO処理装置1の運転を適宜停止乃至開始)/貯水タンク2中のET濃度モニターの継続。
(3)医療用精製水の取水・使用開始/貯水タンク2中のET濃度モニターの継続。
(4)RO処理水の貯水タンク2への送水量の調整(貯水タンク2の水量に応じて、RO処理装置1の運転を適宜停止乃至開始)/貯水タンク2中のET濃度モニターの継続。(1)のEDI装置3から貯水タンク2へのEDI処理水の返送は、ET濃度に応じて全量返送又は一部量返送を選択実施する。
【0038】
本発明の製造方法によれば、第3工程と第4工程を組み合わせた循環工程により、貯水タンク2内部やEDI装置3内部を繰り返し洗浄することができ、前記洗浄水も複数回に亘って循環殺菌されることになり、さらに貯水タンク2中のET濃度をモニターしていることから、装置内における精製水は高い品質を維持できるので、高品質の医療用精製水を安定して供給することができる。
また、実施例で使用した生菌数測定装置を用いれば、菌数を直接、蛍光検出して測定するため迅速な菌数測定が可能であり、貯水タンク2中の菌数を該生菌数測定装置でモニターしながら前記の循環工程を行うことによって菌数レベルでも高品質の精製水を安定して供給することができる。
なお、生菌数の測定は、培養法が用いられることが多いが、実施例で使用した直接法の生菌数測定装置は、迅速な測定が可能であると同時に、培養法に比べて10倍以上の感度を有するとされており、最近、血液透析治療で求められている超純粋透析液基準の0.1cfu/ml未満の低濃度レベルの菌数を測定する場合においても好適な測定方法と期待される。
【0039】
また、本発明の製造方法を適用することにより、貯水タンク2には、常時、人体に安全な高品質の精製水を貯水できるため、使用量の変動への対応も容易にできる。
【実施例】
【0040】
1.装置仕様等
RO処理装置1:オルガノ(株)製のRO装置(RO水製造能力:600L/hr)
貯水タンク2:容量2000L、材質:ポリエチレン
EDI装置3:ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製EDI2000(EDI電極面積:4.2dm2
ET濃度測定装置(手動式)20:トキシノメータミニ(和光純薬(株)製)
生菌数測定装置:Panasonic バイオプローラ BP−2(パナソニック(株)製)
2.EDI運転条件
EDI脱塩水量:2000L/hr
EDI濃縮水量:200L/hr
EDI電極水量:10L/hr
印加電圧:407V
印加電流:1.5A(印加電流密度:0.36A/dm2
【0041】
3.運転方法/測定結果
図1に示す製造フローにて医療用精製水を製造した。運転は、貯水タンク2に1000LのRO水が溜まった時点で、EDI装置3の運転を開始した。EDI装置3の運転開始から、EDI処理水の全量を貯水タンク2に循環させながら、貯水タンク2中のET濃度をET濃度測定装置20で測定した。循環運転の詳細は、下記のとおりであった。
【0042】
<全量循環運転開始時のET濃度:45.2EU/L>
<40分間の全量循環運転時>
・EDI装置3から貯水タンク2への返送量総計:1000L
・貯水タンク2の平均水量(循環運転の開始から所定時間経過時までの間の平均値であり、5分ごとに貯水タンク2の水量を計測し、その平均値から求めた。):935L
貯水タンク2中のET濃度と生菌数、EDI装置3の脱塩水中のET濃度と生菌数の測定結果は下記のとおりであった。
・貯水タンク2中のET濃度:18.5EU/L
・EDI装置3の脱塩水中のET濃度:0.89EU/L(ET除去率=95.2%)
・貯水タンク2中の生菌数:4.0個/ml
・EDI装置3の脱塩水中の生菌数:3個/10ml(除菌率92.5%)
【0043】
<40分間の全量循環運転に続く、45分間の一部循環運転及び精製水(EDI装置3の脱塩水)の取水>
・一部量の返送:1150L/hr
貯水タンク2中のET濃度と生菌数、EDI装置3の脱塩水中のET濃度と生菌数の測定結果は下記の通りであった。
・貯水タンク2中のET濃度:9.5EU/L
・EDI装置3の脱塩水中のET濃度:0.44EU/L(ET除去率=95.4%)
・貯水タンク2中の生菌数:1.8個/ml
・EDI装置3の脱塩水中の生菌数:1個/10ml(除菌率94.4%)
【0044】
その後、さらに一部量の循環運転を継続すると、貯水タンク2内のET濃度が上昇して20EU/Lを超えたため、精製水の取水を中止し、全量循環運転に切り替えた。そして、貯水タンク2内のET濃度が10EU/L未満に低下したことを確認の上、精製水の採取を再開し、一部量循環運転に切り替えた。この運転を終日繰り返した。
【0045】
実施例から明らかなとおり、本発明の製造方法を適用して、EDI装置3の処理水(脱塩水)中のET濃度を十分安全なレベルに低減すれば、医療用精製水の水質項目として重要な細菌数に対しても人体に対して十分に安全なレベル(例えば、1個/ml未満)に低下させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の製造方法は、人工透析液の調製に使用する人工透析用水の製造方法として使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 RO処理装置
2 貯水タンク
3 EDI装置
4 ROポンプ
5 EDI供給ポンプ
11 原水(水道水)供給ライン
12 第1ライン
13 第2ライン
14 第3ライン
15 精製水の取水ライン
20 手動又は自動のET濃度測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有する医療用精製水の製造装置を用いた医療用精製水の製造方法であって、
前記製造装置が、前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができ、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されたものであり、
RO処理装置にて得られたRO処理水を第1ラインから貯水タンクに送って貯水する第1工程と、
貯水タンクに貯水されたRO処理水を第2ラインからEDI装置に送って処理し、EDI処理水を得る第2工程を有しており、
更にEDI処理水を第3ラインから貯水タンクに返送して、RO処理水とEDI処理水の混合水を得る第3工程と、前記混合水を第2ラインから再度EDI装置に送って処理する第4工程を繰り返す循環工程を有しており、
循環工程に移行したとき、貯水タンク内のエンドトキシン(以下「ET」という)濃度をモニターしながらEDI処理水の循環量を調節することでET濃度を低下させる、医療用精製水の製造方法。
【請求項2】
循環工程における貯水タンク内のET濃度が20EU/L未満になるようにEDI処理水の循環量を調節する、請求項1記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項3】
循環工程において、
貯水タンク内のET濃度が20EU/L以上であるときには、前記ET濃度が20EU/L未満になるまでEDI処理水の全量を貯水タンクに返送し、その後はEDI処理水の一部量を返送しながら医療用精製水を取水する工程と、
貯水タンク内のET濃度が20EU/L以上になったとき、医療用精製水の取水を中止し、再度、前記ET濃度が20EU/L未満になるまでEDI処理水の全量を貯水タンクに返送する工程を繰り返す、請求項1記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項4】
循環工程において、
貯水タンク内のET濃度が20EU/L以上であるときには、前記ET濃度が10EU/L未満になるまでEDI処理水の全量を貯水タンクに返送し、その後はEDI処理水の一部量を返送しながら医療用精製水を取水する工程と、
貯水タンク内のET濃度が10EU/Lを超えたとき、医療用精製水の取水量を減少させながら、再度、前記ET濃度が10EU/L未満になるまでEDI処理水の全量を貯水タンクに返送する工程を繰り返す、請求項1記載の医療用精製水の製造方法。
【請求項5】
逆浸透膜処理装置(以下「RO処理装置」という)、貯水タンク、電気再生式脱イオン装置(以下「EDI装置」という)を有しており、
前記RO処理装置による処理水(以下「RO処理水」という)を前記貯水タンクに溜めることができ、前記貯水タンクに溜めた処理水を前記EDI装置に供給し、処理水(以下「EDI処理水」という)を得ることができる医療用精製水の製造装置であって、
RO処理装置から貯水タンクにRO処理水を送る第1ラインと、貯水タンク内の水をEDI装置に送る第2ラインと、EDI装置からRO処理水が貯水された貯水タンクにEDI処理水を返送する第3ラインを有し、EDI装置から第3ラインを用いた貯水タンクへの送水と、貯水タンクから第2ラインを用いたEDI装置への送水を組み合わせた循環ラインが形成されており、
前記貯水タンクにエンドトキシン(以下「ET」という)測定装置が接続されている、医療用精製水の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−274031(P2010−274031A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131929(P2009−131929)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【出願人】(594199407)株式会社オスモ (10)
【出願人】(508365768)株式会社ウオーターテクノカサイ (7)
【Fターム(参考)】