説明

医療用途向けの側鎖結晶性ポリマー

本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマー(IRSCCP)は、様々な医療用途に有用である。IRSCCPの一例は、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合している複数の重原子を含むポリマーであって、ポリマーを放射線不透過性にするのに有効な量の重原子が存在するポリマーである。IRSCCPを含むポリマー材料は、体腔を少なくとも部分的に閉塞するのに有用な医用デバイスに作製することができる。例えば、このような医用デバイスは塞栓療法製品とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖結晶性ポリマーに関し、詳細には、医療用途に有用である本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2004年7月8日出願の米国特許仮出願第60/586,796号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー材料は、多数の用途で広く使用されている。例えば、治療的塞栓形成は、血管または患部血管構造の選択的閉塞である。ポリマーの塞栓療法装置および試薬の例としては、例えば子宮筋腫、腫瘍(すなわち、化学塞栓形成)、出血(例えば、出血を伴う外傷の最中)、ならびに動静脈奇形、動静脈瘻(例えば、AVF)、および動静脈瘤について、例えば出血を制御し、外科手技の前もしくはその最中の失血を防止し、腫瘍および血管奇形への血液供給を制限もしくは遮断するために使用される塞栓コイル、ゲルフォーム、糊、および粒状ポリマー塞栓物質が挙げられる。
【0004】
ポリマーの液体塞栓物質には、沈殿性系および反応性系が含まれる。例えば、沈殿性系では、ポリマーを血管送達時に消散する生物学的に許容できる溶媒に溶解し、ポリマーをその場沈殿させておくことができる。反応性系には、例えば液体モノマーおよび/またはオリゴマーのシアノアクリラート混合物がカテーテルにより血管部位に導入され、その場重合されるシアノアクリラート系が含まれる。この系では、重合は、血中の有効水により開始される。
【0005】
いくつかの技術的応用例には、温度変化時に転移を起こすポリマーの使用が含まれる。例えば、医療分野では、固体ポリマーを特定の身体領域に導入する一方法は、ポリマーを流動性状態に加熱し、次いでポリマーを領域に注入し、放冷し、固化させることである。米国特許第5,469,867号は、生きている哺乳類のチャネルを閉塞するのに有用であると言われている側鎖結晶性ポリマーを開示している。このようなポリマーは、体温をわずかに超えて流動性を有するように溶融することができるが、体温に冷却された場合には固化するように設計されていると言われている。
【0006】
[概要]
一実施形態は、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合し、ポリマーを放射線不透過性とするのに有効な量で存在する複数の重原子を含むポリマーを提供する。別の実施形態は、このようなポリマーを含む医用デバイスを提供する。
【0007】
別の実施形態は、生体適合性で本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを有するポリマー材料を含む医用デバイスを提供する。
【0008】
別の実施形態は、治療方法であって、体腔を少なくとも部分的に閉塞するのに有効な量の医用デバイスを哺乳類の体腔に導入することを含み、医用デバイスが生体適合性で本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを含むポリマー材料を備える方法を提供する。
【0009】
別の実施形態は、本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを作製するための方法であって、第1のモノマーと第2のモノマーを共重合するステップを含み、第1のモノマーが重原子を含み、かつ第2のモノマーが結晶性基を含む方法を提供する。
【0010】
別の実施形態は、本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを作製するための方法であって、側鎖結晶性ポリマーと重金属試薬を複数の重原子を側鎖結晶性ポリマーに結合させるように選択された条件下で反応させるステップを含む方法を提供する。上記その他の実施形態を、下記でさらに詳述する。
【0011】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
一実施形態は、本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマー(「IRSCCP」)を提供する。IRSCCPは、その固有の放射線不透過性が著しい利点をもたらすことができる医療用途を含めて、様々な用途で使用することができる。本明細書では、用語「本質的に放射線不透過性のポリマー」は、医用イメージング技法(例えば、X線により、かつ/または蛍光透視中)によるポリマーの検出をより容易にするように、重原子が共有結合またはイオン結合により結合しているポリマーを指すために使用される。この文脈では、「重原子」は、ポリマーに結合された場合に、重原子を含まないポリマーに比べて、イメージング技法によるポリマーの検出を容易にする原子である。多数のポリマーは、水素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、および硫黄など、比較的低い原子番号の原子を含むので、大半の場合、重原子は、原子番号が17以上である。好ましい重原子は、原子番号が35以上であり、これには臭素、ヨウ素、ビスマス、金、白金、タンタル、タングステン、およびバリウムが含まれる。
【0012】
IRSCCPは結晶性側鎖も含む。「櫛状」ポリマーとも呼ばれることがある側鎖結晶性(SCC)ポリマーは、周知である。参照によりその開示が本明細書に組み込まれるN.A.Plate and V.P.Shibaev,J.Polymer Sci.:Macromol.Rev.8:117−253(1974)を参照のこと。IRSCCPは、例えば重原子をSCCポリマーに結合させることによって、かつ/または重原子を含むモノマーを重合させることによってIRSCCPを作製することによって、重原子を含むように変性されたSCCポ
リマーとすることができる。IRSCCPは、様々な構造、例えばホモポリマー、コポリマー(例えば、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー)、様々なタクティシティー(例えば、ランダム、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチック)などを有することができる。IRSCCPは、2つ以上のIRSCCPの混合物またはブレンドとすることができ、混合物またはブレンド中の個々のIRSCCPはそれぞれ、様々な構造、分子量、融点などを有する。結晶性側鎖が結合しているポリマー主鎖、すなわちIRSCCPの主鎖は、様々な方式、例えば線状、分枝状、架橋状、樹状、一本鎖状、二本鎖状などで構成することができる。医療用途向けの好ましいIRSCCPは、生体適合性および/または生体吸収性である。重原子を、IRSCCPの主鎖および/または側鎖に結合させることができる。
【0013】
IRSCCPの結晶性側鎖は、互いと共に結晶化して、結晶領域を形成するように選択されることが好ましく、例えば−(CH2n−基および/または−((CH2m−O−)n基を含むことができる。側鎖は、結晶化を容易にするために線状であることが好ましい。結晶性側鎖中に−(CH2n−基を含むIRSCCPの場合、nは、好ましくは約6〜約30の範囲、より好ましくは約20〜約30の範囲である。結晶性側鎖中に−((CH2m−O−)n基を含むIRSCCPの場合、nは、好ましくは約6〜約30の範囲であり、mは、好ましくは約1〜約8の範囲である。mおよびnは、((CH2m−O−)n基がより好ましくは約6〜約30個の炭素原子、さらにより好ましくは約20〜約30個の炭素原子を含むように選択される。側鎖間の間隔ならびに側鎖の長さおよびタイプは、得られるIRSCCPに所望の融点を与えるように選択されることが好ましい。例えば、医療用途(例えば、塞栓療法)の場合、側鎖間の間隔ならびに側鎖の長さおよびタイプは、IRSCCP(および/またはそれが組み込まれている材料)に約30℃〜約80℃の範囲の融点を与えるように選択されることが好ましい。側鎖間の間隔が増大するにつれて、側鎖が結晶性である傾向は減少しがちである。同様に、側鎖の柔軟性が増大するにつれて、側鎖が結晶性である傾向は減少しがちである。一方、側鎖の長さが増大するにつれて、側鎖が結晶性である傾向は増大しがちである。多くの場合、IRSCCP結晶性側鎖の長さは、結晶性側鎖間の平均距離の約2倍〜約10倍の範囲とすることができる。
【0014】
IRSCCPの例としては、放射線不透過性とするのに十分な重原子を含むように変性され、かつアルキル基が所望の融点を提供するのに十分長い(例えば、約6個を超える炭素)ように選択された下記のポリマーの変形が挙げられる:ポリ(1−アルケン)、ポリ(アルキルアクリラート)、ポリ(アルキルメタクリラート)、ポリ(アルキルビニルエーテル)、およびポリ(アルキルスチレン)。さらに、IRSCCPの例としては、結晶性側鎖、および放射線不透過性とするのに十分な重原子を含む(または含むように変性された)下記の参考文献に開示されているポリマーの変形が挙げられる:米国特許第4,638,045号;第4,863,735号;第5,198,507号;第5,469,867号;第5,912,225号;および第6,238,687号;ならびに2004年8月13日出願の米国特許仮出願第60/601,526号;これらはすべて、その全体が参照により、具体的にはSCCポリマーおよびその作製方法を記述する目的で組み込まれる。
【0015】
一実施形態では、側鎖は、IRSCCP(またはIRSCCPが組み込まれている材料)に制御可能な融点を与えるように選択される。好ましい一実施形態では、ポリマーの塞栓療法製品はIRSCCPを含み、それによって塞栓療法製品がX線などの技法によって検出可能になる。含まれるIRSCCPの側鎖は、ポリマーの塞栓療法製品が対象とする哺乳類の体温を超える融点を有するように選択することができる。このようなポリマーの塞栓療法製品を、例えば融点より高く加熱して、より流動性にし、それによって標的脈管構造への送達が容易になることができ、そこで製品は冷え、固化して、脈管構造を閉塞することができる。
放射線不透過性および制御された融点を提供するためのIRSCCPの使用は、特に医療用途において有利となり得るが、当業者なら追加の用途も認識するであろう。したがって、IRSCCPの使用に関する本明細書中の様々な記述は、医療用途が好ましいことを示唆しているが、医療分野外の様々な技術も、IRSCCPの使用から利益を得られることが理解されよう。
【0016】
さらに、いくつかの実施形態では、本ポリマーを使用して、様々な医用デバイス、例えばプレハブ式既成デバイス、迅速試作デバイス、コンピュータ技術を使用するリアルタイム試作デバイスを開発することができる。さらに、本ポリマーを身体の非内腔または非空洞に直接送達することができる。様々な医用デバイスには、血管内腔および体腔用途向けのステントおよびステントグラフト、骨格または軟部組織の再構築用途向けのピン、ネジ、縫合材、アンカー、およびプレート、軟骨置換物が含まれ得るが、これらに限定されない。IRSCCPを、体組織、例えば皮下および筋肉内の組織に直接配置することができる。
【0017】
IRSCCPの一実施形態は、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合し、ポリマーを放射線不透過性にするのに有効な量で存在する複数の重原子を含むポリマーである。式(I)の繰返し単位を含むポリマー:
【0018】
【化1】

は、このようなIRSCCPの一例である。
【0019】
式(I)では、X1およびX2はそれぞれ独立に、BrおよびIからなる群から選択され;y1およびy2はそれぞれ独立に、0、または1〜4の範囲の整数であり;かつA1は、
【0020】
【化2】

からなる群から選択され;
3は、C1〜C30アルキル、C1〜C30ヘテロアルキル、C5〜C30アリール、C6〜C30アルキルアリール、およびC2〜C30ヘテロアリールからなる群から選択され;R4は、H、C1〜C30アルキル、およびC1〜C30ヘテロアルキルからなる群から選択され;R1は、
【0021】
【化3】

であり;
5およびR6はそれぞれ独立に、−CH=CH−、−CHJ1−CHJ2−、および−(CH2a−からなる群から選択され;aは、0、または1〜8の範囲の整数であり;J1およびJ2はそれぞれ独立に、BrおよびIからなる群から選択され;かつZは、OまたはSであり;かつQは、約6〜約30個の炭素原子、好ましくは約20〜約30個の炭素原子を含む結晶性基である。一実施形態では、Qは、
【0022】
【化4】

である。
【0023】
式(I)のポリマーは、2004年8月13日出願の米国特許仮出願第60/601,526号に記載されている一般的な方法を、適切な側鎖長、側鎖間隔およびハロゲン含有量が選択されるように変性することによって調製することができる。
【0024】
Qおよび/またはR4が結晶性側鎖を含み得ること、X、J1およびJ2がそれぞれ、重原子であること、ならびにポリマー中の重原子の数がポリマーを放射線不透過性とするのに十分であるようにyを調整できることが理解されよう。QおよびR4はそれぞれ独立に、−(CH2n1−および−((CH2m1−O−)n1(式中、m1およびn1はそれぞれ独立に、Qおよび/またはR4はそれぞれ独立に、約1〜約30個の炭素原子、好ましくは約6〜約30個の炭素原子、より好ましくは約20〜30個の炭素原子を含むように選択される)からなる群から選択された単位を含むことができる。さらに、QおよびR4は、エステルやアミドなどの他の官能基、および/またはヨウ素や臭素などの重原子を含むことができる。したがって、QおよびR4の非限定的な例としては、−Cn12n1+1、−CO2−Cn12n1+1、−CONH−Cn12n1+1、−(CH2n1−Br、−(CH2n1−I、−CO2−(CH2n1−Br、−CO2−(CH2n1−I、−CONH−CO2−(CH2n1−Br、および−CONH−CO2−(CH2n1−Iが挙げられる。一実施形態では、R5は、−CH=CH−または−(CH2a−であり;R6は、−(CH2a−であり;かつQは、約10〜約30個の炭素原子を含むエステル基である。
【0025】
式(I)の繰返し単位を含むポリマーは、コポリマー、例えばさらに繰返し単位−R2−A2−を含む式(I)のポリマー(式中、R2は、−(CH2n2−および−((CH2m2−O−)n2(式中、m2およびn2はそれぞれ独立に、R2が約1〜約30個の炭素原子を含むように選択される)からなる群から選択され;かつA2は、上記のA1と同じように定義される)であり得ることが理解されよう。したがって、一実施形態は、式(Ia)の繰返し単位を含むポリマー:
【0026】
【化5】

を提供する。
【0027】
式(Ia)中、X1、X2、y1、y2、R1、およびA1は、式(I)について上記に記載するように定義され;pおよびqはそれぞれ独立に、ルーチンの実験法を用いて、所望の特性、例えば融点、放射線不透過性、および粘度を有するポリマーを提供するために幅広い範囲にわたって異なり得る。一実施形態では、pおよびqはそれぞれ独立に、1〜約10,000の範囲の整数である。式(Ia)の繰返し単位を含むポリマー中の式(I)単位および−(R2−A2)−単位は、様々な方式、例えばブロックコポリマー、ランダムコポリマー、交互コポリマーなどの形で配置できることが理解できよう。
【0028】
IRSCCP(例えば、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合し、ポリマーを放射線不透過性とするのに有効な量で存在する複数の重原子を含むポリマー)の別の実施形態は、式(II)の繰返し単位:
【0029】
【化6】

を含む。
【0030】
式(II)中、R7は、HまたはCH3であり;A3は、約500以下の分子量を有する化学基であり;かつA3は、ポリマーに結合している重原子のうちの少なくとも1個を有する。A3の非限定的な例としては、金属カルボキシラート(例えば、−CO2Cs)、金属スルホナート(例えば、−SO4Ba)、ハロゲン化アルキルエステル(例えば、−CO2−(CH2b−Br)、ハロゲン化アルキルアミド(例えば、−CONH−(CH2b−Br)、およびハロゲン化芳香族(例えば、−C64−I)(式中、bは、約1〜約4の範囲の整数である)が挙げられる。一実施形態では、A3は、臭素およびヨウ素からなる群から選択された少なくとも1個のハロゲン原子を有する芳香族基を含む。別の実施形態では、A3は、式−L1−(CH2n3−L2−Ar1(式中、L1およびL2はそれぞれ独立に、無(すなわち、存在しない)、エステル、エーテル、またはアミド基を表し;n3は、0、または約1〜約30の範囲の整数であり;かつAr1は、約2〜約20個の炭素原子を含むハロゲン化芳香族基を含む)の化学基を含む。式(II)の繰返し単位を含むIRSCCPは、対応するモノマーの重合、または適切なポリマー前駆体の後反応により形成することができる。式(II)の繰返し単位を含むIRSCCPは、追加の繰返し単位を含むコポリマーとすることができる。
【0031】
式(II)の繰返し単位を含むIRSCCP中の側鎖A3基は、結晶性とすることができ、かつ/あるいは式(II)の繰返し単位を含むIRSCCPは、結晶性側鎖を含む第2の繰返し単位をさらに含むことができる。結晶性側鎖を有する適切な第2の繰返し単位の例としては、下記が挙げられる:ポリ(1−アルケン)、ポリ(アルキルアクリラート)、ポリ(アルキルメタクリラート)、ポリ(アルキルビニルエーテル)、およびポリ(アルキルスチレン)。前述の例示的な第2の繰返し単位のアルキル基は、好ましくは6個を超える炭素原子を含み、より好ましくは約6〜約30個の炭素原子を含む。例えば、一実施形態では、第2の繰返し単位は、式(III):
【0032】
【化7】

を有する。
【0033】
式(III)中、R8は、HまたはCH3であり;L3は、エステルまたはアミド結合であり;かつR9は、C6〜C30の炭化水素基を含む。式(II)の繰返し単位および第2の繰返し単位(式(III)の繰返し単位など)を含むIRSCCPは、対応するモノマーの共重合、および/または適切なポリマー前駆体の後反応により形成することができる。
【0034】
IRSCCP(例えば、主鎖、複数の結晶性側鎖、およびポリマーに結合し、ポリマーを放射線不透過性とするのに有効な量で存在する複数の重原子を含むポリマー)の別の実施形態は、式(IV)の繰返し単位:
【0035】
【化8】

(式中、A3は上記に定義される)を含む。
【0036】
式(IV)中、A4は、H、または約1〜約30個の炭素を含む基、例えばC1〜C30の炭化水素を表す。式(IV)の繰返し単位を含むIRSCCP中の側鎖A3および/またはA4基は、結晶性とすることができ、かつ/あるいは式(IV)の繰返し単位を含むIRSCCPは、結晶性側鎖を含む第2の繰返し単位をさらに含むことができる。例えば、一実施形態では、第2の繰返し単位は、式(V):
【0037】
【化9】

(式中、R10は、C6〜C30の炭化水素基を含み、R11は、H、または約1〜約30個の炭素を含む基、例えばC1〜C30の炭化水素を表す)を有する。
【0038】
IRSCCPは、式(I)〜(V)の繰返し単位を含むものに限定されず、これにはさらに、側鎖結晶性基および/または得られたポリマーを放射線不透過性とするのに十分な重原子を含むように変性された周知のポリマーの変形が含まれる。当業者なら、様々な方式、例えばルーチンの実験法を用いて、周知のSCCポリマーの作製方法を変性して、それにより重原子が得られるポリマーに組み込まれることによって、IRSCCPを調製できることを理解するであろう。例えば、米国特許第5,469,867号に記載されている側鎖結晶性ポリマーの本質的に放射線不透過性の変形は、対応するモノマーと、重原子を含むモノマーとを共重合させることによって調製することができる。
【0039】
米国特許第5,469,867号は、参照により、具体的にはモノマー、ポリマー、および重合方法を記述する目的で組み込まれる。重原子を含む適切なモノマーの例は、Kruftら、「Studies On Radio−opaque Polymeric Biomaterials With Potential Applications To Endovascular Prostheses」、Biomaterials 17(1996)1803−1812;およびJayakrishnanら、「Synthesis and Polymerization of Some Iodine−Containing Monomers for Biomedical Applications」、J.Appl.Polm.Sci.,44(1992)743−748に開示されている。IRSCCPは、後反応、例えば米国特許第5,469,867号に記載されているポリマーに重原子を結合させることによって調製することもできる。
【0040】
重原子で変性させて、IRSCCPを作製することができるポリマーの特有の例としては、J.Poly.Sci,10.3347(1972);J.Poly.Sci.10:1657(1972);J.Poly.Sci.9:3367(1971);J.Poly.Sci.9:3349(1971);J.Poly.Sci.9:1835(1971);J.A.C.S.76:6280(1954);J.Poly.Sci.7:3053(1969);Polymer J.17:991(1985)に記載されているアクリラート、フルオロアクリラート、メタクリラート、およびビニルエステルポリマー;対応するアクリルアミド、置換アクリルアミド、およびマレイミドポリマー(J.Poly.Sci.:Poly.Physics Ed.11:2197(1980));J.Poly.Sci.:Macromol.Rev.8:117−253(1974)およびMacromolecules 13:12(1980)に記載されているものなどのポリオレフィンポリマー;ポリアルキルビニルエーテル、Macromolecules 13:15(1980)に記載されているものなどのポリアルキルエチレンオキシド;アルキルホスファゼンポリマー、Poly.Sci.USSR 21:241,Macromolecules 18:2141に記載されているものなどのポリアミノ酸、Macromolecules 12:94(1979)に記載されているものなどのポリイソシアナート;アミンまたはアルコールを含むモノマーを長鎖アルキルイソシアナート、ポリエステル、およびポリエーテルと反応させることによって作製されたポリウレタン;Macromolecules 19:611(1986)に記載されているものなどのポリシロキサンおよびポリシラン、ならびにJ.A.C.S.75:3326(1953)およびJ.Poly.Sci.60:19(1962)に記載されているものなどのp−アルキルスチレンポリマーが挙げられる。
【0041】
前述のポリマーを重原子で変性させて、様々な方式でIRSCCPを作製することができる。例えば、重原子を有するモノマーは、使用するモノマーをヨウ素化および/または臭素化して、前述のポリマーを作製することによって調製することができる。次いで、これらの重原子含有モノマーを非変性モノマーと共重合して、IRSCCPを調製することができる。当業者は、ルーチンの実験法により、重原子含有モノマーおよび対応するIRSCCPを作製するための条件を特定することができる。
【0042】
別の実施形態では、側鎖結晶性ポリマーと重金属試薬を、複数の重原子を側鎖結晶性ポリマーに結合させるように選択された条件下で反応させることによって、IRSCCPを調製する。例えば、臭素および/またはヨウ素を含む重金属試薬に、側鎖結晶性ポリマーを曝露することができる。重金属試薬の例としては、臭素蒸気、ヨウ素蒸気、臭素溶液、およびヨウ素溶液が挙げられる。側鎖結晶性ポリマーは、例えば固体ポリマーと重金属試薬を曝露もしくは混合することによって、かつ/または側鎖結晶性ポリマーを溶媒に溶解もしくは分散し、重金属試薬と混合することによって、重金属試薬に曝露することができる。他の方法も使用することができる。
【0043】
IRSCCPは、ポリマーのために望まれる特性に応じて、様々な量の重原子および結晶性側鎖を含むことができる。好ましくは、結晶性側鎖の含有量は、主鎖結晶化を実質的に低減または防止するのに十分な程度である。多くの場合、IRSCCP中の結晶性側鎖の量は、全ポリマー重量に対して約20%〜約80重量%の範囲であり、場合によっては、同じ基準で約35%〜約65%の範囲とすることができる。IRSCCP結晶性側鎖の長さは、結晶性側鎖間の平均距離の約2倍〜約10倍の範囲であることが好ましい。IRSCCPは、(例えば、ポリマーの融点未満における側鎖の結晶化により形成された)結晶領域、および非結晶領域(例えば、IRSCCPの非結晶性部分により形成されたガラス状またはエラストマー領域)を含むことができる。一実施形態では、非結晶領域は、哺乳類の体温を超える、例えば約37℃を超えるガラス転移温度を有する。
【0044】
別の実施形態では、非結晶領域は、哺乳類の体温より低い、例えば約37℃より低いガラス転移温度を有する。特定のIRSCCP中の重原子の量は、所望の放射線不透過性の程度に基づいて選択することができる。例えば、医療用途の場合、IRSCCPは、IRSCCPの全重量に対して、好ましくは約1重量%〜約90重量%の重原子、より好ましくは約20重量%〜約50重量%の重原子を含む。場合によっては、下記に記載するようにIRSCCPをポリマー材料に組み込み、かつ/または医用デバイスに形成する。このような場合では、IRSCCP中の重原子の量は、得られるポリマー材料および/または医用デバイスに所望の程度の放射線不透過性を与えるように調整することができる。
【0045】
具体的には重原子の組込みのレベルが高く、側鎖が比較的短く、側鎖が比較的柔軟であり、かつ/または側鎖間の距離が比較的大きい場合、重原子を側鎖結晶性ポリマーに無差別に組み込むと、本来が結晶性である側鎖の結晶化がしばしば妨害または防止される。側鎖結晶性の破壊を最小限に抑え、またはなくすように、重原子をIRSCCPに結合させることが好ましい。例えば、一実施形態では、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも 約80%の重原子を、IRSCCPの主鎖に結合させる。別の実施形態では、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約80%の重原子を、IRSCCPの側鎖の末端、例えば結晶性側鎖の末端、および/または非結晶性側鎖に結合させる。別の実施形態では、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約80%の重原子を、IRSCCPの主鎖または(結晶性および/または非結晶性)側鎖のいずれかに結合させる。別の実施形態では、IRSCCPは、結晶質ブロックおよび非晶質ブロックを含むブロックコポリマーであり、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約80%の重原子を非晶質のブロックに結合させる。
【0046】
IRSCCPの分子量は、ポリマーの対象とする用途を考えて選択することができる。例えば、いくつかの医療用途では、例えばある種の塞栓療法用途の場合、IRSCCPがポリマーの融点を超える温度で流動し、かつポリマーの融点未満の温度で固体になることが望ましい。ポリマーの分子量が増大するにつれて、溶融IRSCCPの粘度は一般に増大し、したがって所望の溶融ポリマー粘度をもたらすように特定のIRSCCPの分子量を選択することが好ましい。例えば、塞栓療法製品で使用するIRSCCPの適切な分子量範囲は、約2,000〜約250,000、好ましくは約5,000〜約150,000の範囲とすることができる。分子量は、光散乱検出を使用して高圧サイズ排除クロマトグラフィー(high pressure size exclusion chromatography)により決定した重量平均である。
【0047】
場合によっては、IRSCCPと第2の材料(例えば、第2のポリマー)を混合またはブレンドして、ポリマー材料を形成することが望ましいことがあり、次いでポリマー材料を対象とする用途で使用することができる。例えば、一実施形態は、IRSCCPおよび第2のポリマーを含むポリマー材料を提供する。好ましくは、第2のポリマーは、生体適合性かつ/または生体吸収性である。IRSCCPと混合またはブレンドして、ポリマー材料を形成するのに適した第2のポリマーの例としては、米国特許第5,469,867号に開示されている本質的には放射線不透過性でないポリマー、および2004年8月13日出願の米国特許仮出願第60/601,526号に記載されている放射線不透過性のポリマーが挙げられる。その両方は参照により組み込まれる。
【0048】
対象とする用途に応じて、ポリマー材料中のIRSCCPと第2のポリマーの相対量は、幅広い範囲にわたって異なり得る。例えば、一実施形態では、ポリマー材料は、全量に対して約1重量%〜約100重量%のIRSCCPおよび最高約99重量%の第2のポリマーを含む。ポリマー材料はIRSCCP単独からなり得るので、本明細書では、用語「ポリマー材料」はIRSCCPを包含することが理解されよう。上記に指摘したように、IRSCCP自体は、それぞれ例えば異なる分子量、構造、および/または融点を有する2つ以上の個々のIRSCCPの混合物またはブレンドであり得ることが理解されよう。
【0049】
IRSCCPを含むポリマー材料を、様々な構造または予め形成された形状、例えばロッド、粒子、またはシートに形成することができる。ロッドは、線状、コイル状、中空状、高延伸状(例えば、細片または糸)とすることができ、様々な断面形状、例えば実質的に円形、実質的に楕円、実質的に三角形、実質的に長方形、不均整などであり得る。粒子は、球状粒子、幾何学的に不均一な粒子(例えば、フレークまたはチップ)、多孔質粒子、中空粒子、中実粒子などとすることができる。粒子は、約10ミクロン〜約5,000ミクロンの排除直径(excluded diameter)を有することが好ましい。
【0050】
ポリマー材料の構造は、対象とする用途、輸送上の制約、加工上の制約など様々な要因に依存することがある。例えば、一実施形態は、ポリマー材料を含む医用デバイスを提供する。ポリマー材料はIRSCCPを含むことができる。下記に、様々な医用デバイスの実施形態をさらに詳細に記述する。医用デバイスは、IRSCCP単独からなるポリマー材料単独からなり得ることが理解されよう。例えば、一実施形態では、医用デバイスは、哺乳類の体腔に(例えば、注射、カテーテル、物理的挿入、流込、噴霧、および/または噴射により)送達できるように構成されている。このようなデバイスは、例えば、IRSCCPを含むポリマー材料を主として形成された塞栓療法製品とすることができる。したがって、下記のいくつかの記述は、医用デバイスを対象とすることがあるが、このような記述は、文脈上からそうでないことが示唆されていない限り、ポリマー材料およびIRSCCPにも適用されることが理解されよう。同様に、ポリマー材料およびIRSCCPに関する本明細書の記述は、文脈上からそうでないことが示唆されていない限り、医用デバイスにも適用される。
【0051】
ポリマー材料を含む医用デバイスは、対象とする用途に応じて、1つまたは複数の追加の成分、例えば可塑剤、充填剤、結晶化造核剤、防腐剤、安定剤、光活性化剤などを含むことができる。例えば、一実施形態では、医用デバイスは、有効量の少なくとも1つの治療剤および/または磁気共鳴増強剤を含む。好ましい治療剤の非限定的な例としては、化学療法剤、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、および創傷治癒剤が挙げられる。治療剤をポリマー材料と共投与することができる。好ましい実施形態では、ポリマー材料内に、治療剤の少なくとも一部分を含ませる。別の実施形態では、医用デバイスの表面のコーティング内に、治療剤の少なくとも一部分を含ませる。
【0052】
好ましい化学療法剤の非限定的な例としては、タキサン、タキシニン、タキソール、パクリタキセル、ドキソルビシン、シスプラチン、アドリアマイシノン、およびブレオマイシンが挙げられる。好ましい非ステロイド性抗炎症化合物の非限定的な例としては、アスピリン、デキサメタゾン、イブプロフェン、ナプロキセン、およびCox−2阻害剤(例えば、ロフェックスコキシブ(Rofexcoxib)、セレコキシブ、およびバルデコキシブ)が挙げられる。好ましいステロイド性抗炎症化合物の非限定的な例としては、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、およびプレドニゾンが挙げられる。1つまたは複数の治療剤を含む混合物を使用することができる。好ましい磁気共鳴増強剤の非限定的な例としては、炭酸ガドリニウム、酸化ガドリニウム、塩化ガドリニウム、およびその混合物などのガドリニウム塩が挙げられる。
【0053】
造核剤は、ポリマーの存在下でポリマーの結晶化をより熱力学的に有利にする材料である。例えば、造核剤は、所与の温度でポリマーの結晶化を加速し、かつ/または造核剤が存在しない場合を超える温度で(例えば、過冷却ポリマーの)結晶化を誘導することができる。好ましい造核剤の非限定的な例としては、塊状ポリマーを結晶化させる場合を超える結晶化ピーク温度を有するIRSCCPの低分子量類似体、カルボン酸塩(安息香酸ナトリウムなど)、無機塩(硫酸バリウムなど)、および表面積と体積の比が相対的に高い様々な粒子材料が挙げられる。
【0054】
医用デバイス中に存在する追加の成分の量は、対象とする用途に有効であるように選択されることが好ましい。例えば、治療剤は、医用デバイスを投与または移植した患者において所望の治療効果を実現するのに有効な量が医用デバイスに存在することが好ましい。このような量は、ルーチンの実験法により決定することができる。ある種の実施形態では、所望の治療効果は生物学的応答である。
【0055】
一実施形態では、医用デバイス中の治療剤は、少なくとも1つの生物学的応答、好ましくは血栓症、細胞接着、細胞増殖、炎症細胞の誘引、基質タンパク質の沈着、血栓症の抑制、細胞接着の抑制、細胞増殖の抑制、炎症細胞の抑制、および基質タンパク質の沈着の抑制からなる群から選択された生物学的応答を促進するように選択される。医用デバイス中の磁気共鳴増強剤の量は、放射線イメージングを容易にするのに有効な量であることが好ましく、ルーチンの実験法により決定することができる。
【0056】
IRSCCPを含む医用デバイスの粘度および/または融点は、通常は、医用デバイスに存在するIRSCCPと、他の成分がある場合はそれとの相対量に依存する。医用デバイス(または、医用デバイス中のポリマー材料)の粘度および/または融点は、医用デバイス中のIRSCCPの量を操作することによって、かつ得られる医用デバイスに所望の粘度および/または融点を与えるIRSCCPを選択することによって制御することができる。したがって、例えば40℃の融点を有するポリマー材料を提供するためには、それより幾分高い融点、例えば約45℃を有するIRSCCPをポリマー材料への組込み用として選択して、IRSCCPとの混合物としてある場合にIRSCCPの融点を下げる傾向がある第2のポリマーまたは他の成分の存在を相殺することが望ましくなる可能性がある。一実施形態では、医用デバイスは、約30℃〜約80℃の範囲の融点を有するポリマー材料を含む。
【0057】
医用デバイスのポリマー材料は、融点を超える温度で流動するように構成されていることが好ましい。融点より高い温度におけるポリマー材料の粘度は、対象とする用途などの要因に応じて幅広い範囲にわたって異なり得る。例えば、塞栓療法製品の場合、ポリマー材料は、融点より高温で、注射器による注射および/またはカテーテルによる流動など好都合な技法により医用デバイスが標的脈管構造に送達されることを可能にする粘度を有することが好ましい。このような場合、所望の粘度は、注射器用針またはカテーテルの直径に依存することが多く、例えば、より低い粘度は、通常はより小さい直径に好ましい。一方、粘度が低すぎる場合、ポリマー材料は、冷えて固化する前に標的脈管構造から移動する恐れがある。
【0058】
一実施形態では、医用デバイスのポリマー材料は、融点より高い温度で約50cP〜約500cPの範囲の粘度を有する。別の実施形態では、ポリマー材料は、融点より高い温度で約500cP〜約5,000cPの範囲の粘度を有する。別の実施形態では、ポリマー材料は、融点より高い温度で約5,000cP〜約250,000cPの範囲の粘度を有する。別の実施形態では、ポリマー材料は、融点より高い温度で約250,000cP〜約1,000,000cPの範囲の粘度を有する。
【0059】
一実施形態では、ポリマー材料が、体腔への送達時に固体塊を形成するように構成されている。固体塊は、体腔の内部寸法に完全にまたは部分的に一致することができる。例えば、約40℃の融点を有するポリマー材料を提供する所与の量のIRSCCPを含有するように、ポリマー材料を構成することができる。さらに、体腔に送達できるように、ポリマー材料を構成することができる。例えば、ポリマー材料は、溶融状態に加熱して流動を容易にすることができるロッドの形とすることができる。次いで、溶融ポリマー材料を、送達デバイスにより溶融状態で流動することによって、体腔に送達することができる。体腔に到着した時、溶融ポリマー材料は体腔の内部寸法に少なくとも部分的に一致し、次いで冷えて、固体塊を形成することができる。
【0060】
別の例として、ポリマー材料は、水や生理食塩水など比較的低い粘度の生体適合性キャリヤ液体に懸濁させた小粒子の形とすることができる。次いで、ポリマー材料を、送達デバイスにより標的体腔に流動させることができる。ポリマー材料の小粒子を、送達の前、送達の最中、および/または標的空洞内で加熱し、それによってポリマー材料が流動し、体腔の内部寸法に一致することができる。冷えると、ポリマー材料は固体塊を形成し、体腔の内部寸法に一致し続けることができる。加熱前の様々な構造および配合のポリマー材料は、温められると体腔に一致する能力が変わる可能性があり、したがって、このような理由で選択して、治療に合わせて調整できることが理解されよう。さらに、送達の実現には、ポリマー材料を完全溶融する必要がないことが理解されよう。例えば、ポリマー材料をコイルなど特定の形状に形成し、次いで予め形成された形状を保持しながら、標的体腔に移植することができる。様々な理由、例えばコイルをより弾性にし、したがってより送達しやすくし、かつ/またはコイルが移植されている体腔によりよく一致することを可能とするために、ポリマー材料(例えば、コイル)を移植の前および/または最中に加熱することができる。ポリマー材料は、身体外で流動させられ、次いで流動性状態で体腔に送達されることもある。
【0061】
一実施形態は、IRSCCPを含む形状記憶ポリマー材料を提供する。例えば、IRSCCPを、標準的な熱可塑性形成方法によりコイル化された形状など第1の形状に構成し、架橋して、第1の形状に記憶を固定することができる。次いで、形成されたIRSCCPコイルを加熱して、IRSCCPを溶融することができ、ロッド形状など第2の形状に再構成することが可能となる。IRSCCPが溶融状態である間に、架橋により熱可塑性流動が制限または防止される。次いで、IRSCCPがまだ第2の形状である間に、IRSCCPが再結晶する温度に冷却することができる。IRSCCPの再結晶により、第2の形状(例えば、ロッド形状)が第1の形状(例えば、コイル形状)に戻るのが制限または防止される。温度をIRSCCPの融点より高く再加熱する際に、第2の形状が第1の形状に戻る。例えば、ロッドが、その記憶状態であるコイルに復帰する。IRSCCPの架橋は、当業者に知られている様々な方式で実施することができる。
【0062】
一実施形態は、治療方法であって、体腔を少なくとも部分的に閉塞するのに有効な量の本明細書に記載する医用デバイス(例えば、IRSCCPを含む医用デバイス)を哺乳類の体腔に導入することを含む方法を提供する。一般に、このような方法を使用して、例えば、管(tube)、細管、導管、チャネル、孔、血管、空隙、および流路と一般に呼ばれることがある様々な体腔を含めて、任意のタイプの体腔を閉塞することができる。好ましい一実施形態では、医用デバイスは、塞栓療法製品である。別の好ましい実施形態では、体腔は、脈管構造、例えば動静脈奇形、または拡張蛇行静脈などの血管を含む。医用デバイスを、注射、カテーテル、および外科的移植を含めて様々な方式で体腔に導入することができる。特定の体腔の場合、ポリマーが体腔の常温で固体塊を形成するのに十分なほど高く、かつ軟化または溶融したポリマー材料が導入される哺乳類に対する熱損傷がほとんどまたは全くなしに体腔の寸法に一致することができるように十分に低い融点を、ポリマー材料が有するように、医用デバイスを選択することが好ましい。したがって、このようなポリマー材料を体腔に導入するには、ポリマー材料を、融点を超える温度に加熱し、かつ/または融点より低い温度に冷却することを含み得る。
【0063】
様々なタイプの送達デバイスを使用して、医用デバイスを体腔、例えば一般に医療従事者に知られており、利用可能なプラスチックチューブ、カテーテル、細カニューレ、テーパードカニューレ、ならびに様々なタイプの注射器および皮下注射針に導入することができる。一実施形態は、ポリマー材料および送達デバイスを含む医療機器であって、ポリマー材料がIRSCCPであり、かつポリマー材料および送達デバイスが、送達デバイスによるポリマー材料の体腔への送達が容易になるように相互に構成されている医療機器を提供する。ポリマー材料は、閉塞対象の特定の体腔、ならびに所望の閉塞の量およびタイプに応じて幾分変わることができる量が送達デバイス内に含まれることが好ましい。当業者は、患者のサイズに基づいて閉塞される空洞のサイズ、解剖学の一般知識、したがってX線やMRIなどの診断方法の使用を知っているであろう。
【0064】
当業者は、送達デバイス内に含まれるべきポリマー材料の量を決定することができるであろう。一般に、一定の誤差範囲を与えるために、過剰量のポリマー材料を送達デバイスに含めるべきである。一実施形態では、医療機器は、本明細書に記載するようなIRSCCPを含む塞栓療法製品、および体腔への塞栓療法製品の流動を容易にするように構成されているチューブを含む。例えば、チューブは、針、カニューレ、注射器、および/またはカテーテルを含むことができ、塞栓療法製品をその融点より高い温度、例えば約30℃〜約80℃の範囲の温度に加熱するように構成されているヒーターを装備することができる。ポリマー材料は、固体の形で送達デバイス内に含めることができ、または個別に加熱し、流動性の形で送達デバイスに提供することができる。一実施形態では、医療機器は、送達デバイス内に存在するポリマー材料と共に予め包装することができ、その後、ポリマー材料を流動性にするために加熱することができる。加熱は、空気、水、もしくは油浴、または電気ヒーターなどの外部源から適用することができ、その場合、送達デバイスとポリマー材料を共に加熱することができる。加熱は、例えば固体ポリマー材料の細いロッドを貫通させたカテーテルの端部に小型電気抵抗素子を使用し、またはカテーテルの端部から出ているポリマー材料のロッドの先端部に向けられた小型レーザーを使用する、内部源から適用することもできる。
【0065】
送達デバイスは、直径が、好ましくは閉塞対象の体腔の近傍組織を重篤に損傷しないように比較的小さいが、ポリマー材料をノズルから容易に押し出すことができるように十分大きい押出ノズルを含むことができる。例えば、身体のチャネルの閉塞を必要とする用途では、ノズルのサイズは、一般にそれが配置されるチャネルの内径と関係付けられる。例えば、24ゲージ針は、通常は小管に導く点の開口部内に適合する。2mmのカテーテルは、通常はポリマー材料をファロピウス管に導入するのに適している。1/4インチのカニューレは、ポリマー材料を成人の上腕骨の内腔に導入するのに好ましい。溶融状態で送達する場合、ポリマー材料は、ポリマー材料の押出ノズル通過を容易にする粘度を有するように選択されることが好ましい。一般に、比較的より低い粘度は、比較的より小さい直径のノズルに好ましい。
【0066】
送達デバイスは、1つまたは複数の送達ポートを有する押出ノズルを含み得ることが理解されよう。ポリマー材料は、複数のポートを通して、直列または同時に分配することができる。この手法により、冷えるポリマー材料のよりよい充填および/または安定化に対処することができ、より多くのポリマー材料が大表面積の全体に送達されることが可能となり得る。この様々な構造および配合を、様々な送達ポートの使用により同時に送達することができる。
【0067】
例えば、一実施形態では、体腔に、2つ以上のポリマー材料(それぞれ、IRSCCPを含む)を順次に送達することができる。塞栓療法の一実施形態では、第1のポリマー材料を血管構造に送達する。第1のポリマー材料は、コイルなど第1の構造を有することができる。コイルは、予備成形され、例えばロッド形状(送達時にコイルになる)で送達される上記に記載するような形状記憶コイルとすることができ、または適切に構成されているダイを有する送達デバイスの送達ポートを通してポリマー材料を押し出すことによって、送達中に形成されるコイルとすることができる。第1のポリマー材料は、その融点を超える温度、例えば第1のポリマー材料中の第1のIRSCCPの融点を超える温度で送達されることが好ましい。
【0068】
コイルは、血管構造を部分的に閉塞し、血流を完全に止めずに低減する比較的開放された構造とすることができる。このような部分的閉塞が適切である場合もあるが、更なる閉塞が望ましい場合もある。このような更なる閉塞は、第1のポリマー材料に操作できる程度に近接した血管構造に、第2のポリマー材料を送達することによって、実施することができる。第2のポリマー材料は、その融点を超える温度、例えば第2のポリマー材料中の第2のIRSCCPの融点を超える温度で送達されることが好ましい。第2のポリマー材料は、第1のポリマー材料中および/または第1のポリマー材料と血管構造の内部との間の間隙またはギャップを少なくとも部分的に埋めるように、第1のポリマー材料より低い粘度を有することが好ましい。したがって、例えば、第2のポリマー材料が、送達中にその融点より高い温度でペーストの稠性を有し、第1のポリマー材料のコイルの空間を埋めることが可能になり得る。
【0069】
1つまたは複数の追加のポリマー材料を、第1および第2のポリマー材料に操作できる程度に近接した位置に送達することができる。例えば、第1および第2のポリマー材料は、血管構造を、通常は第1のポリマー単独より優れた程度であるものの部分的にしか閉塞することができない。このような場合、第3のポリマー材料を送達して、更なる閉塞をもたらすことが望ましいことがある。第3のポリマー材料は、その融点を超える温度、例えば第3のポリマー材料中の第3のIRSCCPの融点を超える温度で送達されることが好ましい。第3のポリマー材料は、第1および第2のポリマー材料によって形成されたポリマー塊中ならびに/または塊と血管構造の内部との間の間隙またはギャップを少なくとも部分的に埋めるように、好ましくは第1のポリマー材料より低い、より好ましくは第2のポリマー材料より低い粘度を有する。
【0070】
当業者なら、上記に記載する実施形態の複数の変形が実施できることを理解するであろう。例えば、単一のポリマー材料を複数回投与または様々な形態で、例えば1回目の送達をコイル、2回目の送達をペーストで、もしくは1回目および第2回目の送達を共にペーストで送達することができる。2つ以上のポリマー材料を同時に送達することができる。例えば、コイル形状の第1のポリマー材料を、ペーストもしくは液体の形の第2のポリマー材料で被覆し、またはそれと混合して、両ポリマーを含む複合体を形成し、次いで得られた複合体を体腔に送達することができる。様々な体腔は、送達の標的とすることができ、かつ/または様々なポリマー材料および形が送達される順序は、様々であり得る。IRSCCPを含むポリマー材料の送達は、異なる材料、例えば金属塞栓コイルの送達と順次または同時に組み合わせることができる。したがって、例えば、ポリマー材料を体腔に送達することができ、かつ金属塞栓コイルをポリマー材料と接触している体腔に送達することができる。送達間隔は、様々な期間であり得る。例えば、ポリマー材料コイルを送達して、体腔の部分的閉塞をもたらすことができ、何分か後、何時間か後、何日か後、何週か後、何月か後、または何年か後に、第2のポリマー材料ペーストを、コイルに操作できる程度に近接した位置に送達することができる。
【0071】
ポリマー材料を溶融状態で送達する実施形態の場合、ポリマー材料が送達デバイス内に含まれ、流動性状態に加熱されると、送達デバイスのノズル(例えば、針、カテーテル、および/または噴射ノズルの先端など)を閉塞対象のチャネル開口部に(または、空洞壁を貫通して)挿入することができ、ポリマーをノズルから体腔に分配することができる。注入を、所望量の閉塞(例えば、脈管構造の閉塞)が得られるまで継続することが好ましい。場合によっては、空洞の一部分しか閉塞しないことが望ましいことがある。その後、送達デバイスのノズルを取り除くことができる。
【0072】
ポリマー材料が送達された後、方法は、オペレータの介入なしで続けることができる。例えば、塞栓療法の場合、哺乳類の循環系は、通常は注入されたポリマー材料を冷却する周囲組織への冷却効果を引き起こす。ポリマー材料は、少量だけエネルギーを失った後に冷え、固化する、すなわち数℃だけ温度が下がった後に硬化するように選択することが好ましい。例えば、送達後に骨を整復する場合、冷却がよりゆっくり起こることが望ましいことがあるが、通常は、冷却が起こるには数秒または数分しかかからない。冷却が起こった後、ポリマーは、空洞の形状に一致するように空洞内で固化することが好ましく、チャネルは少なくとも部分的に埋められ、または閉塞される。ポリマー材料は、長期間にわたって空洞の定位置のままであり得る。生体適合性の非免疫原性材料を含む好ましい医用デバイスの場合、有害反応はほとんどまたは全くもたらされない。ある実施形態では、ポリマーは生体吸収性であり、したがって経時的に縮小する恐れがあり、この場合、以前に閉塞された領域を周囲組織が埋めることができる。
【0073】
有効な空洞閉塞は、IRSCCP材料および様々な賦形剤の使用により実現することもできる。例えば、IRSCCP材料を、(1)光の使用により架橋する光重合性材料;(2)コラーゲンやトロンビンなど、凝固を刺激する血液反応性物質、および/または(3)造核剤と共に送達することができる。
【0074】
一実施形態では、正常に機能する空洞を再びもたらすように、ポリマー材料を容易に除去することができる。例えばポリマー材料を輸精管またはファロピウス管から除去して、妊孕性を回復することが望ましいことがある。ポリマー材料は、様々な方式で除去することができる。例えば、ポリマー材料を簡単な機械的抽出により除去することができる。いくつかの場合では、様々なアタッチメント突起を連結させた鉗子および/またはカテーテルなどのデバイスをチャネルに挿入することができ、かつポリマー材料に取り付け、ポリマー材料を空洞から引き出し、または第2の空洞に押し進めるために使用することができ、したがって第1の空洞はもはや閉塞されず、ポリマー材料がいかなる損傷も引き起こさない。あるいは、加熱したワイヤなどのデバイスを、固化したポリマー材料と接触させることができる。再び流動性になるように、ポリマー材料を加熱したワイヤと共に加熱することによって、ポリマー材料の温度をポリマー材料の融点より高く上げる。チャネル(導管や静脈など)の場合、流動性ポリマー材料がチャネルから流動し、チャネルが再び開放されて、正常に機能するまで加熱を継続することができる。ある種の状況では、液体プラグを、例えば、適度の真空による吸引により、または空気または生理食塩水流によって生じる軽度の圧力を使用することによって、かつ/またはトラッピングおよび吸引を伴う機械的破壊により、チャネルから引き出し、吸い出し、または押し出すことができる。
【0075】
固化したポリマー材料をチャネルまたは他の空洞から除去する好ましい一方法は、固化したポリマー材料を取り囲んでいる領域のチャネルに、天然オイルや脂肪酸エステルなどの親油性材料を注入することである。好ましくは、ポリマー材料に拡散して、それによってその融点が下がる傾向がある親油性材料を選択する。親油性材料は、ポリマー材料の融点をポリマーが流動性になる程度の体温未満に下げるのに有効な量を添加することが好ましい。ポリマーが流動性になると、生物のチャネル内で起こる自然な機械的動作により、ポリマーがチャネルから移動し、それによってチャネルの正常な機能が回復する傾向がある。
【実施例】
【0076】
実施例1
温度計、撹拌装置、および還流冷却器を装備した樹脂製フラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン500グラム(g)、オクタフェニルシクロテトラシロキサン250g、および重原子含有モノマーのオクタ(ヨードフェニル)シクロテトラシロキサン250gを添加する。フラスコおよび内容物を150℃に加熱し、水酸化カリウム−イソプロパノール複合体0.11g(中和当量=193.5)を添加する(Si:K比 約4470:1)。溶液を約30分間撹拌する。溶液が粘性になりすぎて効果的に撹拌できなくなると(ポリマー形成のため)、ポリマーを約165℃に3〜4時間加熱し、次いで室温に冷却する。得られたポリマーは、式(IV)の繰返し単位(式中、A3およびA4はヨウ素化フェニル基である)、式(V)の繰返し単位(式中、R10およびR11はフェニル基である)、およびジメチルシロキサン繰返し単位を含むIRSCCPである。
【0077】
実施例2
温度計、撹拌装置、還流冷却器を装備し、キシレン250gを約135℃で撹拌する樹脂製フラスコに、4−ヨードスチレン20g、アクリル酸ドコサニル60g、および過酸化ジ−tert−ブチル11gの溶液を約3時間かけて添加する。添加が完了した後、混合物をさらに約3時間撹拌させ続けて、より完全な変換をもたらし、次いで室温に冷却する。得られたポリマーは、式(II)の繰返し単位(式中、R7およびR8はHであり、A3は、C64−Iである)、および式(III)の繰返し単位(式中、L3はエステル結合であり、R9はC22の炭化水素基を含む)を含むIRSCCPである。
【0078】
実施例3
メカニカルスターラおよびゴムセプタムを装備した500mLの2口丸底フラスコに、式(VI)のモノマー(I2DT−ドコサニル)30gおよび塩化メチレン240mlを添加する。撹拌により、固体を溶解する。塩化メチレン30mLに溶解させたトリホスゲン約4.34gを気密注射器に入れ、シリンジポンプを用いて、定速で約2〜3時間かけて反応フラスコに添加する。得られた粘性ポリマー溶液を、テトラヒドロフラン約150mLおよび水10mLを添加することによって希釈する。ポリマー溶液をイソプロパノール中に沈殿させ、得られた固体を濾過し、および真空乾燥することによって、ポリマーを単離する。ポリマーは、式(I)の繰返し単位(式中、X1はIであり、y1は2であり、y2は0であり、A1は−(C=O)−であり、R5は−CH2CH2−であり、R6は−CH2−であり、Qは23個の炭素を含む結晶性エステル基である)を含むIRSCCPである。
【0079】
【化10】

【0080】
実施例4
塞栓形成を以下の通り実施する。実施例3に記載するように調製されたIRSCCPを、ロッド形状の医用塞栓デバイスに形成し、加熱されたカテーテルに加える。医師が、カテーテルを塞栓対象の動静脈瘻(AVF)に送達させる。ベースラインの血管造影を蛍光透視で行って、塞栓対象の領域をよりよく決定する。IRSCCP塞栓物質のロッドを、カテーテルに通して標的部位に押し進める。カテーテルの局部加熱により、IRSCCPが溶融し、カテーテルを通って液体の形で標的部位に流動して、AVFに一致し、組織を塞栓する。IRSCCPは冷え、標的部位で再び結晶化する。IRSCCPの送達を、血流が標的領域で止むまで継続する。造影剤を注入し、蛍光透視により調べることによって、血流停止を確認する。IRSCCPは、蛍光透視下で目に見える。カテーテルを冷却して、不必要なIRSCCPの流動を止める。カテーテルを取り除く。
【0081】
実施例5
より高い粘度のIRSCCPを利用し、動脈瘤治療のための動脈にIRSCCPを送達する点以外は実施例4に記載するように、塞栓形成を実施する。塞栓形成を実現する。
【0082】
実施例6
送達の前に、IRSCCPをコイルの形状に形成し照射により架橋し、それによって記憶コイルが形成される点以外は一般に実施例4に記載するように、外傷性出血動脈の塞栓形成を実施する。加熱中に、記憶コイルは軟化し、柔軟なロッドを形成し、カテーテルを通して動脈に送達される。送達時に、柔軟なロッドは冷え、動脈内でコイル形状に戻り、それによって血流が下がる。
【0083】
本発明の範囲から逸脱することなく、様々な省略、追加、および修正を上記に記載する材料および方法に対して行うことができ、このような修正および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義されるように本発明の範囲内に含まれるよう意図されていることを、当業者なら理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖;
複数の結晶性側鎖;および
ポリマーに結合し、ポリマーを放射線不透過性とするのに有効な量で存在する複数の重原子を含むポリマー。
【請求項2】
約30℃〜約80℃の範囲の融点を有する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
生体適合性である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
生体吸収性である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項5】
複数の重原子が、原子番号が少なくとも17である原子を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項6】
複数の重原子が、原子番号が少なくとも35である原子を含む、請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
複数の重原子が、臭素、ヨウ素、ビスマス、金、白金、タンタル、タングステン、およびバリウムからなる群から選択された原子を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項8】
複数の重原子が、ポリマーに共有結合している、請求項1に記載のポリマー。
【請求項9】
複数の重原子が、ポリマーにイオン結合している、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
少なくとも2つの異なる繰返し単位を含むコポリマーである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項11】
ランダムコポリマーである、請求項10に記載のポリマー。
【請求項12】
ブロックコポリマーである、請求項10に記載のポリマー。
【請求項13】
重原子が、側鎖結晶性の破壊を最小限に抑える形でポリマーに結合している、請求項1に記載のポリマー。
【請求項14】
式(I)の繰返し単位:
【化1】


(式中、
1およびX2はそれぞれ独立に、BrおよびIからなる群から選択され;
1およびy2はそれぞれ独立に、0、または1〜4の範囲の整数であり;
1は、
【化2】


からなる群から選択され;
3は、C1〜C30アルキル、C1〜C30ヘテロアルキル、C5〜C30アリール、C6〜C30アルキルアリール、およびC2〜C30ヘテロアリールからなる群から選択され;
4は、H、C1〜C30アルキル、およびC1〜C30ヘテロアルキルからなる群から選択され;
1は、
【化3】


であり;
Zは、OまたはSであり;
5およびR6はそれぞれ独立に、−CH=CH−、−CHJ1−CHJ2−、および−(CH2a−からなる群から選択され;
aは、0、または1〜8の範囲の整数であり;
1およびJ2はそれぞれ独立に、BrおよびIからなる群から選択され;かつ
Qは、約6〜約30個の炭素原子を含む結晶性基である)
を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項15】
Qが、約20〜約30個の炭素原子を含む、請求項14に記載のポリマー。
【請求項16】
5が−CH=CH−または−(CH2a−であり;R6が−(CH2a−であり;かつQが、約10〜約30個の炭素原子を含むエステル基である、請求項14に記載のポリマー。
【請求項17】
式(II)の繰返し単位:
【化4】


(式中、R7は、HまたはCH3であり;A3は、約500以下の分子量を有する化学基であり;かつA3は、ポリマーに結合している重原子のうちの少なくとも1個を有する)
を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項18】
3が、金属カルボキシラートまたは金属スルホナートを含む、請求項17に記載のポリマー。
【請求項19】
3がバリウムを含む、請求項18に記載のポリマー。
【請求項20】
3が、エステルまたはアミド結合を含む、請求項17に記載のポリマー。
【請求項21】
3が、臭素およびヨウ素からなる群から選択された少なくとも1個のハロゲン原子を有する芳香族基を含む、請求項17に記載のポリマー。
【請求項22】
3が、式−L1−(CH2n2−L2−Ar1の化学基(式中、L1およびL2はそれぞれ独立に、無、エステル、エーテル、またはアミド基を表し;n2は、0、または約1〜約30の範囲の整数であり;かつAr1は、約2〜約20個の炭素原子を含有するハロゲン化芳香族基を含む)を含む、請求項17に記載のポリマー。
【請求項23】
結晶性側鎖のうちの少なくとも1つを含む第2の繰返し単位を含む、請求項17に記載のポリマー。
【請求項24】
第2の繰返し単位が、式(III):
【化5】


(式中、R8は、HまたはCH3であり;L3は、エステルまたはアミド結合であり;かつR9は、C6〜C30の炭化水素基を含む)
を有する、請求項23に記載のポリマー。
【請求項25】
式(IV)の繰返し単位:
【化6】


(式中、A4は、H、または約1〜約30個の炭素を含む化学基を表し;A3は、約500以下の分子量を有する化学基であり;かつA3は、ポリマーに結合している重原子のうちの少なくとも1個を有する)
を含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項26】
3が、臭素およびヨウ素からなる群から選択された少なくとも1個のハロゲン原子を有する芳香族基を含む、請求項25に記載のポリマー。
【請求項27】
結晶性側鎖のうちの少なくとも1つを含む第2の繰返し単位を含む、請求項25に記載のポリマー。
【請求項28】
第2の繰返し単位が、式(V):
【化7】


(式中、R10は、C6〜C30の炭化水素基を含み、かつR11は、H、またはC1〜C30の炭化水素基を表す)
を有する、請求項27に記載のポリマー。
【請求項29】
請求項1に記載のポリマーを含む医用デバイス。
【請求項30】
有効量の少なくとも1つの治療剤をさらに含む、請求項29に記載の医用デバイス。
【請求項31】
生体適合性で本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを含むポリマー材料を備える医用デバイス。
【請求項32】
ポリマー材料が、本質的に放射線不透過性のポリマーとの混合物として第2のポリマーを含む、請求項31に記載の医用デバイス。
【請求項33】
本質的に放射線不透過性のポリマーが生体吸収性である、請求項31に記載の医用デバイス。
【請求項34】
哺乳類の体腔に送達できるように構成されている、請求項31に記載の医用デバイス。
【請求項35】
注射またはカテーテルにより送達できるように構成されている、請求項34に記載の医用デバイス。
【請求項36】
本質的に放射線不透過性のポリマーの少なくとも一部分を含む塞栓療法製品を備える、請求項34に記載の医用デバイス。
【請求項37】
塞栓療法製品中の本質的に放射線不透過性のポリマーの少なくとも一部分が、ロッド、粒子、またはシートからなる群から選択された少なくとも1つの構造に形成される、請求項36に記載の医用デバイス。
【請求項38】
ロッドがコイル状である、請求項37に記載の医用デバイス。
【請求項39】
コイルが記憶コイルである、請求項38に記載の医用デバイス。
【請求項40】
粒子が、球状粒子、幾何学的に不均一な粒子、多孔質粒子、中空粒子、中実粒子、および排除直径が約10ミクロン〜約5,000ミクロンの粒子からなる群から選択される、請求項37に記載の医用デバイス。
【請求項41】
幾何学的に不均一な粒子が、フレークまたはチップである、請求項40に記載の医用デバイス。
【請求項42】
ポリマー材料が、約30℃〜約80℃の範囲の融点を有する、請求項34に記載の医用デバイス。
【請求項43】
ポリマー材料が、融点より高い温度で流動するように構成されている、請求項42に記載の医用デバイス。
【請求項44】
ポリマー材料が、融点より高い温度で約50cP〜約500cPの範囲の粘度を有する、請求項43に記載の医用デバイス。
【請求項45】
ポリマー材料が、融点より高い温度で約500cP〜約5,000cPの範囲の粘度を有する、請求項43に記載の医用デバイス。
【請求項46】
ポリマー材料が、融点より高い温度で約5,000cP〜約250,000cPの範囲の粘度を有する、請求項43に記載の医用デバイス。
【請求項47】
ポリマー材料が、融点より高い温度で約250,000cP〜約1,000,000cPの範囲の粘度を有する、請求項43に記載の医用デバイス。
【請求項48】
ポリマー材料が、哺乳類の体温より低い温度で結晶領域および非結晶領域を含む、請求項43に記載の医用デバイス。
【請求項49】
非結晶領域が、体温を超えるガラス転移温度を有する、請求項48に記載の医用デバイス。
【請求項50】
非結晶領域が、体温より低いガラス転移温度を有する、請求項48に記載の医用デバイス。
【請求項51】
ポリマー材料が、体腔への送達時に固体塊を形成するように構成され、固体塊が、体腔の内部寸法に少なくとも部分的に一致する、請求項43に記載の医用デバイス。
【請求項52】
ポリマー材料が、光重合性材料、血液反応性物質、および造核剤からなる群から選択された賦形剤を含む、請求項51に記載の医用デバイス。
【請求項53】
固体塊が、予め形成された形状を保持している、請求項51に記載の医用デバイス。
【請求項54】
予め形成された形状がコイルである、請求項53に記載の医用デバイス。
【請求項55】
有効量の少なくとも1つの治療剤をさらに含む、請求項31に記載の医用デバイス。
【請求項56】
治療剤が、化学療法剤、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド性抗炎症剤、および創傷治癒剤からなる群から選択される、請求項55に記載の医用デバイス。
【請求項57】
治療剤が、少なくとも1つの生物学的応答を促進するように選択される、請求項55に記載の医用デバイス。
【請求項58】
生物学的応答が、血栓症、細胞接着、細胞増殖、炎症細胞の誘引、基質タンパク質の沈着、血栓症の抑制、細胞接着の抑制、細胞増殖の抑制、炎症細胞の抑制、および基質タンパク質の沈着の抑制からなる群から選択される、請求項57に記載の医用デバイス。
【請求項59】
治療剤の少なくとも一部分が、ポリマー材料内に含有されている、請求項55に記載の医用デバイス。
【請求項60】
治療剤の少なくとも一部分を、加熱時にポリマー材料から放出できる、請求項59に記載の医用デバイス。
【請求項61】
有効量の少なくとも1つの磁気共鳴増強剤をさらに含む、請求項31に記載の医用デバイス。
【請求項62】
体腔を少なくとも部分的に閉塞するのに有効な量の医用デバイスを哺乳類の体腔に導入することを含み、医用デバイスが生体適合性で本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを含むポリマー材料を備える治療方法。
【請求項63】
体腔が、管、細管、導管、チャネル、孔、血管、空隙、および流路からなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
ポリマー材料が、約30℃〜約80℃の範囲の融点を有する、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
体腔への医用デバイスの導入が、ポリマー材料を、融点を超える温度に加熱することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
体腔への医用デバイスの導入が、ポリマー材料を融点より低い温度に冷却することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
体腔が血管である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
血管が拡張蛇行静脈である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
血管への医用デバイスの導入が、ポリマー材料をカテーテル、注射器、ノズル、またはその組合せにより流動させることを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを作製するための方法であって、重原子を含む第1のモノマーと、結晶性基を含む第2のモノマーとを共重合させることを含む方法。
【請求項71】
重原子が、臭素およびヨウ素からなる群から選択される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
結晶性基が約6〜約30個の炭素原子を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
本質的に放射線不透過性の側鎖結晶性ポリマーを作製するための方法であって、側鎖結晶性ポリマーと重金属試薬を、複数の重原子を側鎖結晶性ポリマーに結合させるように選択された条件下で反応させることを含む方法。
【請求項74】
重金属試薬が臭素を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
重金属試薬がヨウ素を含む、請求項73に記載の方法。

【公表番号】特表2008−506019(P2008−506019A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520544(P2007−520544)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/024289
【国際公開番号】WO2006/014596
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507000316)レヴァ メディカル、 インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】REVA MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】