医療行為評価システム及び方法
【課題】入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中という全ての段階において行われる医療行為を統合的に、エビデンスレベルの高いQIを用いて評価可能な医療行為評価システム及び方法を提供する。
【解決手段】入院前外来通院時医療行為記憶手段14と、入院中医療行為記憶手段16と、退院後外来通院時医療行為記憶手段14と、規定医療行為記憶手段26、28、30から慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出し、入院前外来通院時医療行為記憶手段14、入院中医療行為記憶手段16、退院後外来通院時医療行為記憶手段14に記憶されている全医療行為の内容と、上述の所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較し、全医療行為の質を定量化して評価する。
【解決手段】入院前外来通院時医療行為記憶手段14と、入院中医療行為記憶手段16と、退院後外来通院時医療行為記憶手段14と、規定医療行為記憶手段26、28、30から慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出し、入院前外来通院時医療行為記憶手段14、入院中医療行為記憶手段16、退院後外来通院時医療行為記憶手段14に記憶されている全医療行為の内容と、上述の所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較し、全医療行為の質を定量化して評価する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療行為評価システム及び方法に関し、特に、がん、糖尿病、肝炎、慢性腎不全、高血圧症等の重度の慢性疾患に対して行う医療行為を評価するための医療行為評価システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定の慢性疾患に対して各医療機関で行われた治療や検査等の医療行為が、適切であったかどうかの評価が行われている。このような評価は、行なわれた医療行為が、科学的根拠に基づく一定基準の信憑性、いわゆるエビデンスが高いかどうかを基準として行なわれる。この評価の具体的な手法の一例として、例えば、重度の慢性疾患の一種である大腸がんに対して入院中に行われる医療行為についての評価は、行われた医療行為が、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインやNICE(National institute of health and Clinical Excellence)ガイドライン等の診療ガイドラインに記されている規定医療行為の内容に準拠しているものかどうかを基準として行なわれる。
【0003】
このような診療ガイドラインに記載されている規定医療行為の内容の各項目は、医療行為の模範的指標として、QI(Quality indicator)と呼ばれている。そして、例えば、特許文献1には、自病院内で発生した過去の治療行為に関する臨床データに基づくQIや、インターネットを介して他の医療機関や学会から入手したQIを病院内のEBM(Evidence Based Medicine)データベース保管し、このデータベースに保管されたQIに基づいて患者や医師が治療方針を適切に選択する治療方針決定支援システムが記載されている。
【0004】
一方、一般に任意の疾患に対して入院前の通院時に行われた検査等の医療行為の内容は、外来における医療行為に対する診療報酬を請求するために診療明細情報(Eファイル)や行為明細情報(Fファイル)に詳細に記録され、入院中に行なわれた医療行為は、診断群分類、いわゆるDPC(Diagnosis Procedure Combination)情報として記録される。また、特に上述の大腸がん等の悪性腫瘍については、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中の各段階におけるステージ(進行度)や腫瘍の大きさ等の情報は、医療機関毎に設置されている、いわゆる院内がん登録に記録される。
【0005】
そして、上述の医療行為に対する評価は、上記入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中の各段階において行なわれた医療行為の内容を、上記Eファイル、Fファイル、DPC、及び院内がん登録から実際に患者に対して行なわれた医療行為の内容を抽出し、この医療行為の内容を、上記QIと対比し、この対比の結果の一致点及び相違点を検査することで行われる。
【0006】
このように各医療機関で行なわれた医療行為の内容を評価してその結果を公表することで、患者はこの評価を参考にして質の高い医療行為を自らの意思で選択することができ、一方で医療関係者は、より質の高い医療行為の提供を目指して、その評価を参照し自らが所属する医療機関の医療行為の内容を見直すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】2006−72533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、上記特許文献1に記載されているシステムのように、従来においてもインターネットを介して世界中の他の機関や学会から信頼性が高いとされているQIを入手することは可能である。しかし、一般的に世界中には多数の医療関連や学会で定められたガイドラインや最新の研究結果が存在しており、これらQIの中にはエビデンスレベルが高いものも存在すればそうでないものも存在する。
【0009】
特に、診療ガイドラインにおいては、多数の研究結果に基づいて検証された比較的エビデンスレベルの高いQIが記載されている一方で、例えば、数人の医師が現場の臨床診療において独自に検証した程度のエビデンスレベルしか有していないQIも記載されている。更に、全く同一の状況の疾患に対する一項目の特定のQIであっても、或るガイドラインではエビデンスレベルが高いものとして見なされている一方で、他のガイドラインではあまりエビデンスレベルが高くないものとみなされていることがあったり、或いは、一度はガイドラインでエビデンスレベルが高いと定められた後で最新の臨床研究結果に応じて修正され、エビデンスレベルが高くないものと認定されたりする場合がある。
【0010】
すなわち、医療行為の模範的規定が定めてあるはずの診療ガイドライン等に規定されている複数のQIのエビデンスレベルの基準が曖昧で統一されておらず、客観性が乏しいという問題があった。
【0011】
また、一般に、患者に対して行なわれた医療行為の内容を記録するデータベースは、入院前の外来通院中において行われた医療行為の内容に関するデータ、入院中において行われた医療行為の内容に関するデータ、及び退院後の外来通院中において行なわれた医療行為のデータが、まとまっておらず、複数個のデータベース(例えば、Eファイル、Fファイル、及びDPCなど)に断片的に記録されている。従って、ある患者が特定の一種の疾患に対して、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中において検査や治療を受ける必要がある場合において、これら各段階における医療行為を一連のプロセスとして評価することが難しいという問題があった。特に、がん、糖尿病、肝炎、慢性腎不全、高血圧症等の重度の慢性疾患においては、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中の全ての段階で医療行為を受ける必要があることが多く、この各段階をトータルした一連の医療行為に対する客観的な評価は極めて重要なものとなる。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中という全ての段階において行われる全医療行為を統合的に、エビデンスレベルの高いQIを用いて評価可能な医療行為評価システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の医療行為評価システムは、がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価システムにおいて、入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した入院前外来通院時医療行為記憶手段と、入院中に行われた医療行為の内容を記録した入院中医療行為記憶手段と、退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した退院後外来通院時医療行為記憶手段と、所定の診療ガイドラインにより規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容が記憶された規定医療行為記憶手段と、前記規定医療行為記憶手段に記憶された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段と、前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、前記入院中医療行為記憶手段、及び退院後外来通院時医療行為記憶手段に記憶されている全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較手段と、該医療行為比較手段による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記信頼性を有する規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、入院前の外来通院中に行なわれた医療行為、入院中に行われた医療行為、及び退院後の外来通院中に行なわれた医療行為をトータルして全医療行為とする一方で、診療ガイドライン等で定められている複数の規定医療行為の中から所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出し、上記全医療行為の質をこの所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為と比較することで評価することができる。従って、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の通院等という全段階において行われる医療行為を統合的に、エビデンスレベルの高い規定医療行為(QI)を用いて評価することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療評価システムにおいて、前記慢性疾患に対して推奨されない非推奨医療行為を記録した非推奨規定医療行為記憶手段をさらに備え、前記医療行為比較手段は、前記全医療行為の内容と、前記非推奨医療行為の内容と、を比較し、前記医療行為評価手段は、前記医療行為検出手段による検査結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記非推奨医療行為の内容とどの程度相違しているかを前記評価パラメータの一種として付加することを特徴とする。
【0016】
これによれば、患者に対して実際に行なわれた医療行為が、従来より知られている推奨されない医療行為であるかどうかを判断し、より客観性の高い医療機関に対する評価を行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の医療行為評価システムにおいて、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、複数種の前記診療ガイドラインに規定された規定医療行為毎に付されているエビデンスレベルが所定基準以上高いかどうかに基づいて定められることを特徴とする。
【0018】
これによれば、上記NCCNやGUT等の診療ガイドラインに規定されている規定医療行為毎に付されたエビデンスレベル表示を参照し、そのエビデンスレベルが所定基準以上高いかどうかを確認して、そのエビデンスレベルの高さというより明確な要素に基づいて上記規定医療行為の抽出の基準を設定することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の医療行為評価システムにおいて、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、該規定医療行為が、複数の診療ガイドラインに共通に規定されているかどうかに基づいて定められることを特徴とする。
【0020】
これによれば、複数の診療ガイドラインに共通に規定されているかどうかというより明確な要素に基づいて上記規定医療行為の抽出の基準を設定することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の医療行為評価システムにおいて、前記規定医療行為記憶手段は、前記診療ガイドラインに記載されている前記規定医療行為の内容について記載された学術雑誌等の文献の内容を記録する文献データベースを有し、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、前記文献に付されているインパクトファクターに基づいて定められることを特徴とする。
【0022】
これによれば、診療ガイドラインに規定されている規定医療行為について記載された文献のインパクトファクターが高いかどうかというより明確な要素に基づいて、上記規定医療行為の抽出の基準を設定することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の医療行為評価システムにおいて、前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、及び前記退院後外来通院時医療行為記憶手段は、外来における医療行為に対する明細情報を記録された外来Eファイル、及び/又は外来Fファイルを記憶した外来データベースを有することを特徴とする。
【0024】
これによれば、評価の対象となる入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容、及び退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容の抽出を、外来通院中における医療行為に対する報酬の請求データ作成のための外来Eファイルや外来Fファイルを利用して行うことができる。すなわち、入院前外来通院時医療行為記憶手段、及び退院後外来通院時医療行為記憶手段として従来の外来データベースを使用することができるので、本発明にかかるシステムの構成をより簡易にすることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載の医療評価システムにおいて、前記入院中医療行為記憶手段は、入院中の診断群分類情報を記憶した診断群分類情報記憶データベースを有することを特徴とする。
【0026】
これによれば、評価の対象となる入院前中に行われた医療行為の内容の抽出を、報酬の請求データ作成のための診断群分類情報記憶データベースを利用して行うことができる。すなわち、入院中医療行為記憶手段として従来の診断群分類情報記憶データベースを使用することができるので、本発明にかかるシステムの構成をより簡易にすることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項に記載の医療評価システムにおいて、前記医療行為評価手段は、前記医療行為の質に対する定量化基準として所定の最高評価点を設定する最高評価点設定手段と、前記全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容との間の相違箇所数に応じて、前記最高評価点を減算する評価点減算手段と、該評価点減算手段により前記最高評価点から減算が行なわれて得られた算出評価点を前記全医療行為に対する評価点とし、該評価点に基づいて医療機関を順位付けする医療機関評価手段と、該医療機関評価手段により行われた医療機関の順位付けの結果をWEBに公開する医療機関順位公開手段と、を有することを特徴とする。
【0028】
これによれば、本発明にかかるシステムにより評価された特定の疾患に対する医療行為の内容の質によって、医療機関を順位付けしWEB上にその順位が公開されることで、患者は、どの医療機関が質の高い医療を提供しているかを容易に確認することができる。一方、医療関係者は、自らが所属する医療機関の順位を確認することで、所属する医療機関の医療行為の質を客観的に確認することができる。
【0029】
請求項9に記載の医療システム評価方法は、がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価方法において、入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する入院前外来通院時医療行為記録工程と、入院中に行われた医療行為の内容を記録する入院時医療行為記録工程と、退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する退院後外来通院時医療行為記録工程と、所定の診療ガイドラインや臨床研究により規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容を記録する規定医療行為記録工程と、前記規定医療行為記録工程において記録された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程と、前記入院前外来通院時医療行為記録工程、前記入院中医療行為記録工程、及び退院後外来通院時医療行為記録工程において記録された全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程において抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較工程と、該医療行為比較工程による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記所定基準以上の信頼性の高い規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価工程と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
これによれば、外来通院中に行なわれた医療行為、入院中に行われた医療行為、及び退院後の外来通院中に行なわれた医療行為をトータルして全医療行為とする一方で、診療ガイドライン等で定められている一定水準の有効性が認められている複数の規定医療行為の中からエビデンスレベルの高い一連の規定医療行為を抽出し、上記全医療行為の質をこのエビデンスレベルの高い規定医療行為と比較することで評価することができる。従って、入院、及び退院後の通院等という全段階において行われる医療行為を統合的にエビデンスレベルの高いQIを用いて評価することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる医療行為評価システム及び方法によれば、外来通院中に行われた医療行為の内容、入院中に行われた医療行為の内容、及び退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を一連の統合された全医療行為として、エビデンスレベルの高い規定医療行為の内容(QI)として評価することができる。従って、この評価を参照することで、患者は、客観的に高い質の医療行為を提供する医療機関を自ら選択することができる一方で、医療関係者にとっては、自らが所属する医療機関の客観的な評価を、医療行為の質の向上のための指針とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態にかかる医療評価システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】外来EFデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】DPCデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】がん登録データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】医療行為データベースに記録されているデータ構造の一例を示す図である。
【図6】ガイドラインAデータベースに記録されているデータ構造の一例を示す図である。
【図7】ガイドラインBデータベースに記録されているデータ構造の一例を示す図である。
【図8】医療評価システムにおける実際の医療評価の流れを示すフローチャートである。
【図9】各ガイドラインに記録された規定医療行為の内容についてのエビデンスレベルの調査の流れを示すフローチャートである。
【図10】抽出されたQIの内容を示す図である。
【図11】実際に行なわれた医療行為と抽出されたQIとの対比結果を表す図である。
【図12】医療機関データベースに記録されているデータを示す図である。
【図13】第2の実施の形態にかかる医療評価システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図14】非推奨規定医療行為記憶データベースのデータ構造の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明にかかる第1及び第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、第1及び第2の実施の形態における医療評価システムの各サーバやデータベースは、CPU等の演算装置、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及びメインメモリやハードディスク等の記憶装置からなるパーソナルコンピュータにより実現される。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の医療評価システムの構成を説明する説明図である。図示のように、医療評価システム10は、病院内ネットワーク12と、病院内ネットワーク12とネットワーク100を介して接続された医療行為評価機関ネットワーク13と、この医療行為評価機関ネットワーク13とネットワーク102を介して接続された規定医療情報データベース群15と、を備えている。
【0035】
病院内ネットワーク12は、医療機関である病院内で構成されるネットワークであり、外来時に行われる検査や治療等の診療内容の明細(Eファイル、及び/又はFファイル)を記録する外来EFデータベース14と、入院中に行われる検査や治療の内容、及び患者が患っている傷病名を各患者に対応させて記録するDPCデータベース16と、過去のがんのステージなどのがんに関する種々の情報を記憶したがん登録データベース18と、を備えている。
【0036】
図2は、外来EFデータベース14に記録されているデータ構造の一例を示している。図示のように、本実施の形態では、外来EFデータベース14には、各患者ごとに、外来診療を行なった日付、患者氏名や住所等の個人情報と一意に関連付けされた識別番号、行為点数、及び行った検査の種類が記録される。
【0037】
図3は、DPCデータベース16に記録されているデータ構造の一例を示している。図示のように、本実施の形態では、DPCデータベース16には、各患者の識別番号ごとに、入院年月日、退院年月日、傷病名、適用された手術名、及び化学療法の有無等が記録される。
【0038】
図4は、がん登録データベース18に記録されているデータ構造の一例を示している。図示のように、本実施の形態では、がん登録データベース18には、各患者ごとに、腫瘍のある部位、手術前及び手術後のTMN分類、ステージ(進行具合)、治療情報(化学療法の有無、放射線療法の有無)等が記録されている。
【0039】
なお、言うまでも無く、上記外来EFデータベース14、DPCデータベース16、及びがん登録データベース18には、上述のデータの他にも種々のデータが記録されているが、本実施の形態においては、それらは本質的部分ではないので、その記載を省略している。
【0040】
一方、医療行為評価機関ネットワーク13は、各医療機関で行われる慢性疾患に対する医療行為の評価を行う医療行為評価機関内に設けられるネットワークであり、例えば、相互にLAN接続された、医療行為登録サーバ20と、QI抽出サーバ22と、医療行為評価サーバ24が設置されている。
【0041】
医療行為登録サーバ20は、上述の外来EFデータベース14、DPCデータベース16及びがん登録データベース18の中から共通する患者についてのデータを抽出して統合し、該抽出したデータを全医療行為データベース21に記録する。図5は、全医療行為データベース21に記録されているデータの内容の一例を示している。図示のように、全医療行為データベース21には、入院前の外来通院中における医療行為、入院中における医療行為、及び退院後の外来通院中における医療行為、すなわち、患者に対して行なわれた全医療行為の内容が、上述の外来EFデータベース14、DPCデータベース16、及びがん登録データベース18から抽出され、患者の識別番号(又は氏名との情報)と関連付けされて記憶されている。
【0042】
QI抽出サーバ22は、後述する各ガイドラインデータベース26、28から、特にエビデンスレベルの高い規定医療行為をQIとして設定して抽出する。
【0043】
医療行為比較評価サーバ24は、医療行為登録サーバ20において記録されている各患者に行なわれた医療行為のデータと、QI抽出サーバ22により抽出されたQIを対比し、患者に行われた医療行為がQIとどの程度一致しているかを基準として、当該医療行為に対する評価を数値で算出し医療機関データベース27に記録し、この医療機関データベース27に記録されているデータをWEB200に公開する。
【0044】
一方、医療行為評価機関ネットワーク13は、がんに関する診療ガイドラインをデータ化して保存したガイドラインAデータベース26、及びガイドラインΒデータベース28と、がんに対する医療行為についての最新の研究や試験の結果が記載されている文献の内容を記憶した文献データベース30と、を備えている。
【0045】
ガイドラインAデータベース26は、例えば、NCCNガイドラインやGUT等の各部のがんに対して標準的な規定医療行為の内容が規定されている診療ガイドラインの内容が記憶されている。図6は、本実施の形態におけるガイドラインAデータベース26に記録されているデータ構造の一例を示す。本実施の形態においては、ガイドラインAデータベース26には、大腸がんに対する規定医療行為が、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中ごとに記録されている。また、各規定医療行為の項目の一部には、当該規定医療行為のエビデンスレベルが付されている。なお、このエビデンスレベルは、一般に、信頼性の高い順に、A、B、C1、C2、及びDの5段階で表示されているものである。
【0046】
ガイドラインΒデータベース28は、ガイドラインAとは異なる種類のガイドラインの内容が記憶されている。例えば、ガイドラインAデータベース26にNCCNガイドラインの内容が記録されている場合、ガイドラインBデータベース28には、NCCNガイドラインとは異なるGUTガイドラインの内容が記載されている。図7には、ガイドラインBデータベース28に記録されているデータ構造の一例を示している。本実施の形態においては、ガイドラインBデータベース28には、ガイドラインAデータベース26と同様に、大腸がんに対する規定医療行為が、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中ごとに記録されており、各規定医療行為の項目の一部には、当該規定医療行為のエビデンスレベルが、表示されている。
【0047】
文献データベース30は、上述のように最新の研究結果に基づく医療行為の内容、すなわち、まだ診療ガイドラインに規定されていない規定医療行為の内容や或いは、診療ガイドラインに既に規定されている既知の規定医療行為の内容に対する新たな研究結果が記載されている論文、学術雑誌等の内容を記憶している。
【0048】
以下、上記構成を有する医療評価システムにおける評価処理の流れについて説明する。本実施の形態では、例えば、ステージIII期、TMN分類でT3N2M0に分類される大腸がんを患った患者に対して行なわれる入院前の外来通院時の検査、入院中の治療、及び退院後の治療を経て一連の医療行為が終了したものとし、この医療機関が行った医療行為を評価する。
【0049】
図8は、本実施の形態における医療行為の評価の流れを示すフローチャートである。図示のように、ステップS101において、ガイドラインAデータベース26、及びガイドラインBデータベース28に記録されている医療行為のエビデンスレベルを、本実施の形態における特徴的な工程により設定する。
【0050】
図9は、このエビデンスレベルの設定の流れを説明するフローチャートである。図示のように、ステップS1011において、ガイドラインAデータベース26、及びガイドラインBデータベース28に記録されている大腸がんに対する医療行為についてガイドライン中の各項目に対してエビデンスレベルが表示されているかどうかを確認する。
【0051】
本実施の形態では、図6及び図7から理解されるように、ガイドラインAにおける「検査p」、及びガイドラインBにおける「化学療法s」にエビデンスレベルが付されておらず、他の項目にはエビデンスレベルが付されている。
【0052】
そして、ステップS1012において、エビデンスレベルが付されている項目に関しては、この表示されたエビデンスレベルを付した根拠となる論文を調査する。具体的には、文献データベース30により、ガイドラインA、及びガイドラインBにおけるエビデンスレベルが表示された医療行為の特徴を示す代表的なキーワードを設定し、このキーワードを用いて文献を検索する。
【0053】
次に、ステップS1013において、検索された各文献のインパクトファクターの値を確認する。なお、インパクトファクターとは、当該文献が、学術データベースであるWeb of scienseに記録されている論文にどの程度引用されているかの平均的な値を示す指数である。
【0054】
そして、本実施の形態では、このインパクトファクターが一定以上の数値(例えば、15以上)であるならば、その項目をQIとして設定する(ステップS1014)。その一方で、インパクトファクターが一定値未満の値(例えば、15未満)であるならば、その項目はQIとして設定しない(ステップS1015)。
【0055】
一方、ステップS1011においてエビデンスレベルが付されていないと判断された医療行為の内容については、この医療行為の内容から当該医療行為の特徴を示す代表的なキーワードを抽出する(ステップS1016)。そして、そのキーワードに基づいて文献データベース30から類似の医療行為の内容について記載された文献を検索する(ステップS1017)。
【0056】
ステップS1017で検索された文献についてインパクトファクターを調査する(ステップS1018)。そして、このインパクトファクターが一定以上の数値であるならば、その項目をQIとして設定する(ステップS1020)。
【0057】
一方で、上記文献のインパクトファクターが一定値未満の値であるならば、その項目はQIとして設定しない(ステップS1021)。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、ステップS1011〜ステップS1021を経て、図10に示された内容のQIが設定される。そして、図8のフローチャートのステップS102において、QI抽出サーバ22により、ステップS1011〜ステップS1021を経て設定されたQIが抽出され、QIデータベース23に記録される。
【0059】
上記ステップS101及びS102によれば、ガイドラインデータベース26、28に規定されている規定医療行為毎に付されたエビデンスレベル表示という明確な要素、及びガイドラインデータベース26、28に規定されている規定医療行為について記載された文献データベース30内の文献のインパクトファクターの値という明確な要素に基づいて、実際に行われた医療行為の内容を評価するためのQIの設定が行われている。客観的にエビデンスレベルの高いQIの設定が可能となる。
【0060】
ステップS103において、全医療行為データベース21に記録されている実際に行われた全医療行為の内容とQIデータベース23に記録されている医療行為の内容を対比する。図11に対比の結果における一致点、及び相違点を表した表を示す。図では実際に行なわれた全医療行為の内容の内、設定されているQIと共通する項目部分を塗りつぶしている。
【0061】
ステップS104において、実際に行われた全医療行為の評価点を算出する。本実施の形態では、実際に行われた医療行為の内容とQIとの相違点の数に応じて、最高点10点を減算することにより行われた全医療行為の評価点を算出する。すなわち、各QIに0.1点ずつ振り分け、このQIと相違する実際に行われた医療行為の項目の数に、上記0.1点を乗じ、これを最高点の10点から減ずることで評価点を算出する。
【0062】
本実施の形態では、実際に行なわれた全医療行為の内容においてQIとして設定されている「検査c」と「検査k」の2項目が欠けているので、上記全医療内容の評価点は、10―0.1×2=9.8点と算出される。
【0063】
ステップS105において、医療機関データベース25にステップS104で算出された評価点の情報を記録する。図12には、医療機関データベース25に記録されているデータ構造の一例を示す。図示のように、本実施の形態では、大腸がん(ステージIII、T3N2M0)に対する医療機関毎の医療行為の評価点、及びその順位が記録される。そして、ステップS106において、このデータがWEB200に反映される。
【0064】
このように、医療行為に対する評価点に応じて医療機関を順位付けしWEB上にその順位が公開されることで、患者は、どの医療機関が質の高い医療を提供しているかを容易に確認することができる。一方、医療関係者は、自らが所属する医療機関の順位を確認することで、所属する医療機関の医療行為の質を客観的に確認することができる。
【0065】
従って、本実施の形態にかかる医療評価システム10によれば、入院前の外来通院中に行なわれた医療行為、入院中に行われた医療行為、及び退院後の外来通院中に行なわれた医療行為をトータルして全医療行為とする一方で、ガイドラインAやガイドラインBで定められている複数の規定医療行為の中からエビデンスレベルの高い規定医療行為をQIとして抽出し、上記全医療行為の質をこのQIと比較することで定量的に評価することができる。従って、入院、及び退院後の通院等という全段階において行われる医療行為を統合的に、エビデンスレベルの高いQIを用いて評価することができる。
【0066】
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図13は、本実施の形態における医療行為評価システム10の構成を示す説明図である。図示のように、本実施の形態における医療行為評価システム10の特徴的構成は、規定医療情報データベース群15に、上述の大腸がんに対して推奨されない医療行為を記録した非推奨規定医療行為記憶データベース32が設置されていることである。なお、他の病院内ネットワーク12や医療行為評価機関ネットワーク13の構成は、第1の実施の形態における医療評価システム10と同一であるので、図面簡略化のために、それらの構成は図示しない。
【0068】
一般に、この非推奨規定医療行為記憶データベース32に記録されているデータは、所定の診療ガイドラインに規定されている「不適切な検査、及び治療行為」の内容を記録したものである。図14は、非推奨規定医療行為記憶データベース30のデータ構造の一例を示している。図示のように、「検査y」、「検査x」等の不適切な検査、及び「手術z」等の不適切な治療行為が記録されている。
【0069】
本実施の形態においては、実際に行われた医療行為と抽出されたQIとの比較評価サーバ24による比較、すなわち、上記ステップS103において、非推奨規定医療行為記憶データベース30のデータを参照し、実際に行われた医療行為がこの30のデータと一致しているかどうかが調査される。
【0070】
そして、ステップS104における評価点の算出の際には、QIとの比較で算出された評価点からこのデータの一致の数に応じた点数を減ずる。例えば、実際に行なわれた医療行為において、上記「検査y」、「検査x」等の不適切な医療行為がある場合、この不適切な医療行為の項目数に0.5を乗じた点数分を、上述の算出された評価点から更に減じて、既に算出された評価点を補正する。
【0071】
これによれば、患者に対して実際に行なわれた医療行為が、従来より知られている推奨されない医療行為であるかどうかを判断し、より客観性の高い医療機関に対する評価を行うことができる。
【0072】
なお、本発明は、上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施の形態では、大腸がんに対する医療行為の内容について評価を行うシステムについて説明したが、これに限られるものではなく、本発明にかかるシステムは、他の胃がん、肺がん、及び肝臓がん等の悪性腫瘍や糖尿病等のがん以外の慢性疾患に対しても適用可能である。
【0073】
また、上記実施の形態では、QIの抽出を各ガイドラインに記載されている規定医療行為についてエビデンスレベルの表示、及び論文のインパクトファクターを用いて行っているが、これに限られるものではなく、例えば、多くの診療ガイドラインに共通して記載されている規定医療行為、すなわち、エビデンスレベルが高い可能性のあるものをQIとして設定するようにしても良い。これにより、エビデンスレベルの高いQIの抽出がより容易なものとなる。
【0074】
すなわち、本発明におけるQIの抽出では、診療ガイドラインに記載されている規定医療行為をそのままQIとして採用するのではなく、複数のガイドラインの中からよりエビデンスレベルの高いものを抽出する工程を経ることが必須の要素である。
【0075】
一方、診療ガイドラインデータベースも2個以上の任意の個数設置することが可能である。更に、本実施の形態では、患者に対して行われた全医療行為を抽出するためのソースとなるデータベースとして外来EFデータベース、DPCデータベース、及びがん登録データを用いているが、入院前の外来通院、入院中、及び退院後の外来通院におけるそれぞれの医療行為の内容を記録したものであれば、他の種々のデータソースを採用しても良い。
【0076】
更に、上記実施の形態では、全医療行為に対する評価を点数形式で行い、これをWEB200上に公開しているが、当該評価をA〜Fのような所定のグレード形式で行なって公開するようにしても良い。
【符号の説明】
【0077】
10 医療行為評価システム
14 外来EFデータベース(院前外来通院時医療行為記憶手段、退院後外来通院時医療行為記憶手段)
16 DPCデータベース(入院中医療行為記憶手段)
18 がん登録データベース
22 QI抽出サーバ(高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段)
24 比較評価サーバ(医療行為比較手段、医療行為評価手段)
26 ガイドラインAデータベース(規定医療行為記憶手段)
25 医療機関データベース
28 ガイドラインBデータベース(規定医療行為記憶手段)
30 文献データベース
200 WEB
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療行為評価システム及び方法に関し、特に、がん、糖尿病、肝炎、慢性腎不全、高血圧症等の重度の慢性疾患に対して行う医療行為を評価するための医療行為評価システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定の慢性疾患に対して各医療機関で行われた治療や検査等の医療行為が、適切であったかどうかの評価が行われている。このような評価は、行なわれた医療行為が、科学的根拠に基づく一定基準の信憑性、いわゆるエビデンスが高いかどうかを基準として行なわれる。この評価の具体的な手法の一例として、例えば、重度の慢性疾患の一種である大腸がんに対して入院中に行われる医療行為についての評価は、行われた医療行為が、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインやNICE(National institute of health and Clinical Excellence)ガイドライン等の診療ガイドラインに記されている規定医療行為の内容に準拠しているものかどうかを基準として行なわれる。
【0003】
このような診療ガイドラインに記載されている規定医療行為の内容の各項目は、医療行為の模範的指標として、QI(Quality indicator)と呼ばれている。そして、例えば、特許文献1には、自病院内で発生した過去の治療行為に関する臨床データに基づくQIや、インターネットを介して他の医療機関や学会から入手したQIを病院内のEBM(Evidence Based Medicine)データベース保管し、このデータベースに保管されたQIに基づいて患者や医師が治療方針を適切に選択する治療方針決定支援システムが記載されている。
【0004】
一方、一般に任意の疾患に対して入院前の通院時に行われた検査等の医療行為の内容は、外来における医療行為に対する診療報酬を請求するために診療明細情報(Eファイル)や行為明細情報(Fファイル)に詳細に記録され、入院中に行なわれた医療行為は、診断群分類、いわゆるDPC(Diagnosis Procedure Combination)情報として記録される。また、特に上述の大腸がん等の悪性腫瘍については、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中の各段階におけるステージ(進行度)や腫瘍の大きさ等の情報は、医療機関毎に設置されている、いわゆる院内がん登録に記録される。
【0005】
そして、上述の医療行為に対する評価は、上記入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中の各段階において行なわれた医療行為の内容を、上記Eファイル、Fファイル、DPC、及び院内がん登録から実際に患者に対して行なわれた医療行為の内容を抽出し、この医療行為の内容を、上記QIと対比し、この対比の結果の一致点及び相違点を検査することで行われる。
【0006】
このように各医療機関で行なわれた医療行為の内容を評価してその結果を公表することで、患者はこの評価を参考にして質の高い医療行為を自らの意思で選択することができ、一方で医療関係者は、より質の高い医療行為の提供を目指して、その評価を参照し自らが所属する医療機関の医療行為の内容を見直すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】2006−72533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、上記特許文献1に記載されているシステムのように、従来においてもインターネットを介して世界中の他の機関や学会から信頼性が高いとされているQIを入手することは可能である。しかし、一般的に世界中には多数の医療関連や学会で定められたガイドラインや最新の研究結果が存在しており、これらQIの中にはエビデンスレベルが高いものも存在すればそうでないものも存在する。
【0009】
特に、診療ガイドラインにおいては、多数の研究結果に基づいて検証された比較的エビデンスレベルの高いQIが記載されている一方で、例えば、数人の医師が現場の臨床診療において独自に検証した程度のエビデンスレベルしか有していないQIも記載されている。更に、全く同一の状況の疾患に対する一項目の特定のQIであっても、或るガイドラインではエビデンスレベルが高いものとして見なされている一方で、他のガイドラインではあまりエビデンスレベルが高くないものとみなされていることがあったり、或いは、一度はガイドラインでエビデンスレベルが高いと定められた後で最新の臨床研究結果に応じて修正され、エビデンスレベルが高くないものと認定されたりする場合がある。
【0010】
すなわち、医療行為の模範的規定が定めてあるはずの診療ガイドライン等に規定されている複数のQIのエビデンスレベルの基準が曖昧で統一されておらず、客観性が乏しいという問題があった。
【0011】
また、一般に、患者に対して行なわれた医療行為の内容を記録するデータベースは、入院前の外来通院中において行われた医療行為の内容に関するデータ、入院中において行われた医療行為の内容に関するデータ、及び退院後の外来通院中において行なわれた医療行為のデータが、まとまっておらず、複数個のデータベース(例えば、Eファイル、Fファイル、及びDPCなど)に断片的に記録されている。従って、ある患者が特定の一種の疾患に対して、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中において検査や治療を受ける必要がある場合において、これら各段階における医療行為を一連のプロセスとして評価することが難しいという問題があった。特に、がん、糖尿病、肝炎、慢性腎不全、高血圧症等の重度の慢性疾患においては、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中の全ての段階で医療行為を受ける必要があることが多く、この各段階をトータルした一連の医療行為に対する客観的な評価は極めて重要なものとなる。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中という全ての段階において行われる全医療行為を統合的に、エビデンスレベルの高いQIを用いて評価可能な医療行為評価システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の医療行為評価システムは、がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価システムにおいて、入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した入院前外来通院時医療行為記憶手段と、入院中に行われた医療行為の内容を記録した入院中医療行為記憶手段と、退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した退院後外来通院時医療行為記憶手段と、所定の診療ガイドラインにより規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容が記憶された規定医療行為記憶手段と、前記規定医療行為記憶手段に記憶された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段と、前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、前記入院中医療行為記憶手段、及び退院後外来通院時医療行為記憶手段に記憶されている全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較手段と、該医療行為比較手段による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記信頼性を有する規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
これによれば、入院前の外来通院中に行なわれた医療行為、入院中に行われた医療行為、及び退院後の外来通院中に行なわれた医療行為をトータルして全医療行為とする一方で、診療ガイドライン等で定められている複数の規定医療行為の中から所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出し、上記全医療行為の質をこの所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為と比較することで評価することができる。従って、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の通院等という全段階において行われる医療行為を統合的に、エビデンスレベルの高い規定医療行為(QI)を用いて評価することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療評価システムにおいて、前記慢性疾患に対して推奨されない非推奨医療行為を記録した非推奨規定医療行為記憶手段をさらに備え、前記医療行為比較手段は、前記全医療行為の内容と、前記非推奨医療行為の内容と、を比較し、前記医療行為評価手段は、前記医療行為検出手段による検査結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記非推奨医療行為の内容とどの程度相違しているかを前記評価パラメータの一種として付加することを特徴とする。
【0016】
これによれば、患者に対して実際に行なわれた医療行為が、従来より知られている推奨されない医療行為であるかどうかを判断し、より客観性の高い医療機関に対する評価を行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の医療行為評価システムにおいて、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、複数種の前記診療ガイドラインに規定された規定医療行為毎に付されているエビデンスレベルが所定基準以上高いかどうかに基づいて定められることを特徴とする。
【0018】
これによれば、上記NCCNやGUT等の診療ガイドラインに規定されている規定医療行為毎に付されたエビデンスレベル表示を参照し、そのエビデンスレベルが所定基準以上高いかどうかを確認して、そのエビデンスレベルの高さというより明確な要素に基づいて上記規定医療行為の抽出の基準を設定することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の医療行為評価システムにおいて、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、該規定医療行為が、複数の診療ガイドラインに共通に規定されているかどうかに基づいて定められることを特徴とする。
【0020】
これによれば、複数の診療ガイドラインに共通に規定されているかどうかというより明確な要素に基づいて上記規定医療行為の抽出の基準を設定することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の医療行為評価システムにおいて、前記規定医療行為記憶手段は、前記診療ガイドラインに記載されている前記規定医療行為の内容について記載された学術雑誌等の文献の内容を記録する文献データベースを有し、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、前記文献に付されているインパクトファクターに基づいて定められることを特徴とする。
【0022】
これによれば、診療ガイドラインに規定されている規定医療行為について記載された文献のインパクトファクターが高いかどうかというより明確な要素に基づいて、上記規定医療行為の抽出の基準を設定することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の医療行為評価システムにおいて、前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、及び前記退院後外来通院時医療行為記憶手段は、外来における医療行為に対する明細情報を記録された外来Eファイル、及び/又は外来Fファイルを記憶した外来データベースを有することを特徴とする。
【0024】
これによれば、評価の対象となる入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容、及び退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容の抽出を、外来通院中における医療行為に対する報酬の請求データ作成のための外来Eファイルや外来Fファイルを利用して行うことができる。すなわち、入院前外来通院時医療行為記憶手段、及び退院後外来通院時医療行為記憶手段として従来の外来データベースを使用することができるので、本発明にかかるシステムの構成をより簡易にすることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載の医療評価システムにおいて、前記入院中医療行為記憶手段は、入院中の診断群分類情報を記憶した診断群分類情報記憶データベースを有することを特徴とする。
【0026】
これによれば、評価の対象となる入院前中に行われた医療行為の内容の抽出を、報酬の請求データ作成のための診断群分類情報記憶データベースを利用して行うことができる。すなわち、入院中医療行為記憶手段として従来の診断群分類情報記憶データベースを使用することができるので、本発明にかかるシステムの構成をより簡易にすることができる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項に記載の医療評価システムにおいて、前記医療行為評価手段は、前記医療行為の質に対する定量化基準として所定の最高評価点を設定する最高評価点設定手段と、前記全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容との間の相違箇所数に応じて、前記最高評価点を減算する評価点減算手段と、該評価点減算手段により前記最高評価点から減算が行なわれて得られた算出評価点を前記全医療行為に対する評価点とし、該評価点に基づいて医療機関を順位付けする医療機関評価手段と、該医療機関評価手段により行われた医療機関の順位付けの結果をWEBに公開する医療機関順位公開手段と、を有することを特徴とする。
【0028】
これによれば、本発明にかかるシステムにより評価された特定の疾患に対する医療行為の内容の質によって、医療機関を順位付けしWEB上にその順位が公開されることで、患者は、どの医療機関が質の高い医療を提供しているかを容易に確認することができる。一方、医療関係者は、自らが所属する医療機関の順位を確認することで、所属する医療機関の医療行為の質を客観的に確認することができる。
【0029】
請求項9に記載の医療システム評価方法は、がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価方法において、入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する入院前外来通院時医療行為記録工程と、入院中に行われた医療行為の内容を記録する入院時医療行為記録工程と、退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する退院後外来通院時医療行為記録工程と、所定の診療ガイドラインや臨床研究により規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容を記録する規定医療行為記録工程と、前記規定医療行為記録工程において記録された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程と、前記入院前外来通院時医療行為記録工程、前記入院中医療行為記録工程、及び退院後外来通院時医療行為記録工程において記録された全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程において抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較工程と、該医療行為比較工程による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記所定基準以上の信頼性の高い規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価工程と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
これによれば、外来通院中に行なわれた医療行為、入院中に行われた医療行為、及び退院後の外来通院中に行なわれた医療行為をトータルして全医療行為とする一方で、診療ガイドライン等で定められている一定水準の有効性が認められている複数の規定医療行為の中からエビデンスレベルの高い一連の規定医療行為を抽出し、上記全医療行為の質をこのエビデンスレベルの高い規定医療行為と比較することで評価することができる。従って、入院、及び退院後の通院等という全段階において行われる医療行為を統合的にエビデンスレベルの高いQIを用いて評価することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる医療行為評価システム及び方法によれば、外来通院中に行われた医療行為の内容、入院中に行われた医療行為の内容、及び退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を一連の統合された全医療行為として、エビデンスレベルの高い規定医療行為の内容(QI)として評価することができる。従って、この評価を参照することで、患者は、客観的に高い質の医療行為を提供する医療機関を自ら選択することができる一方で、医療関係者にとっては、自らが所属する医療機関の客観的な評価を、医療行為の質の向上のための指針とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態にかかる医療評価システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】外来EFデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】DPCデータベースのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】がん登録データベースのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】医療行為データベースに記録されているデータ構造の一例を示す図である。
【図6】ガイドラインAデータベースに記録されているデータ構造の一例を示す図である。
【図7】ガイドラインBデータベースに記録されているデータ構造の一例を示す図である。
【図8】医療評価システムにおける実際の医療評価の流れを示すフローチャートである。
【図9】各ガイドラインに記録された規定医療行為の内容についてのエビデンスレベルの調査の流れを示すフローチャートである。
【図10】抽出されたQIの内容を示す図である。
【図11】実際に行なわれた医療行為と抽出されたQIとの対比結果を表す図である。
【図12】医療機関データベースに記録されているデータを示す図である。
【図13】第2の実施の形態にかかる医療評価システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図14】非推奨規定医療行為記憶データベースのデータ構造の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明にかかる第1及び第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、第1及び第2の実施の形態における医療評価システムの各サーバやデータベースは、CPU等の演算装置、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及びメインメモリやハードディスク等の記憶装置からなるパーソナルコンピュータにより実現される。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の医療評価システムの構成を説明する説明図である。図示のように、医療評価システム10は、病院内ネットワーク12と、病院内ネットワーク12とネットワーク100を介して接続された医療行為評価機関ネットワーク13と、この医療行為評価機関ネットワーク13とネットワーク102を介して接続された規定医療情報データベース群15と、を備えている。
【0035】
病院内ネットワーク12は、医療機関である病院内で構成されるネットワークであり、外来時に行われる検査や治療等の診療内容の明細(Eファイル、及び/又はFファイル)を記録する外来EFデータベース14と、入院中に行われる検査や治療の内容、及び患者が患っている傷病名を各患者に対応させて記録するDPCデータベース16と、過去のがんのステージなどのがんに関する種々の情報を記憶したがん登録データベース18と、を備えている。
【0036】
図2は、外来EFデータベース14に記録されているデータ構造の一例を示している。図示のように、本実施の形態では、外来EFデータベース14には、各患者ごとに、外来診療を行なった日付、患者氏名や住所等の個人情報と一意に関連付けされた識別番号、行為点数、及び行った検査の種類が記録される。
【0037】
図3は、DPCデータベース16に記録されているデータ構造の一例を示している。図示のように、本実施の形態では、DPCデータベース16には、各患者の識別番号ごとに、入院年月日、退院年月日、傷病名、適用された手術名、及び化学療法の有無等が記録される。
【0038】
図4は、がん登録データベース18に記録されているデータ構造の一例を示している。図示のように、本実施の形態では、がん登録データベース18には、各患者ごとに、腫瘍のある部位、手術前及び手術後のTMN分類、ステージ(進行具合)、治療情報(化学療法の有無、放射線療法の有無)等が記録されている。
【0039】
なお、言うまでも無く、上記外来EFデータベース14、DPCデータベース16、及びがん登録データベース18には、上述のデータの他にも種々のデータが記録されているが、本実施の形態においては、それらは本質的部分ではないので、その記載を省略している。
【0040】
一方、医療行為評価機関ネットワーク13は、各医療機関で行われる慢性疾患に対する医療行為の評価を行う医療行為評価機関内に設けられるネットワークであり、例えば、相互にLAN接続された、医療行為登録サーバ20と、QI抽出サーバ22と、医療行為評価サーバ24が設置されている。
【0041】
医療行為登録サーバ20は、上述の外来EFデータベース14、DPCデータベース16及びがん登録データベース18の中から共通する患者についてのデータを抽出して統合し、該抽出したデータを全医療行為データベース21に記録する。図5は、全医療行為データベース21に記録されているデータの内容の一例を示している。図示のように、全医療行為データベース21には、入院前の外来通院中における医療行為、入院中における医療行為、及び退院後の外来通院中における医療行為、すなわち、患者に対して行なわれた全医療行為の内容が、上述の外来EFデータベース14、DPCデータベース16、及びがん登録データベース18から抽出され、患者の識別番号(又は氏名との情報)と関連付けされて記憶されている。
【0042】
QI抽出サーバ22は、後述する各ガイドラインデータベース26、28から、特にエビデンスレベルの高い規定医療行為をQIとして設定して抽出する。
【0043】
医療行為比較評価サーバ24は、医療行為登録サーバ20において記録されている各患者に行なわれた医療行為のデータと、QI抽出サーバ22により抽出されたQIを対比し、患者に行われた医療行為がQIとどの程度一致しているかを基準として、当該医療行為に対する評価を数値で算出し医療機関データベース27に記録し、この医療機関データベース27に記録されているデータをWEB200に公開する。
【0044】
一方、医療行為評価機関ネットワーク13は、がんに関する診療ガイドラインをデータ化して保存したガイドラインAデータベース26、及びガイドラインΒデータベース28と、がんに対する医療行為についての最新の研究や試験の結果が記載されている文献の内容を記憶した文献データベース30と、を備えている。
【0045】
ガイドラインAデータベース26は、例えば、NCCNガイドラインやGUT等の各部のがんに対して標準的な規定医療行為の内容が規定されている診療ガイドラインの内容が記憶されている。図6は、本実施の形態におけるガイドラインAデータベース26に記録されているデータ構造の一例を示す。本実施の形態においては、ガイドラインAデータベース26には、大腸がんに対する規定医療行為が、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中ごとに記録されている。また、各規定医療行為の項目の一部には、当該規定医療行為のエビデンスレベルが付されている。なお、このエビデンスレベルは、一般に、信頼性の高い順に、A、B、C1、C2、及びDの5段階で表示されているものである。
【0046】
ガイドラインΒデータベース28は、ガイドラインAとは異なる種類のガイドラインの内容が記憶されている。例えば、ガイドラインAデータベース26にNCCNガイドラインの内容が記録されている場合、ガイドラインBデータベース28には、NCCNガイドラインとは異なるGUTガイドラインの内容が記載されている。図7には、ガイドラインBデータベース28に記録されているデータ構造の一例を示している。本実施の形態においては、ガイドラインBデータベース28には、ガイドラインAデータベース26と同様に、大腸がんに対する規定医療行為が、入院前の外来通院中、入院中、及び退院後の外来通院中ごとに記録されており、各規定医療行為の項目の一部には、当該規定医療行為のエビデンスレベルが、表示されている。
【0047】
文献データベース30は、上述のように最新の研究結果に基づく医療行為の内容、すなわち、まだ診療ガイドラインに規定されていない規定医療行為の内容や或いは、診療ガイドラインに既に規定されている既知の規定医療行為の内容に対する新たな研究結果が記載されている論文、学術雑誌等の内容を記憶している。
【0048】
以下、上記構成を有する医療評価システムにおける評価処理の流れについて説明する。本実施の形態では、例えば、ステージIII期、TMN分類でT3N2M0に分類される大腸がんを患った患者に対して行なわれる入院前の外来通院時の検査、入院中の治療、及び退院後の治療を経て一連の医療行為が終了したものとし、この医療機関が行った医療行為を評価する。
【0049】
図8は、本実施の形態における医療行為の評価の流れを示すフローチャートである。図示のように、ステップS101において、ガイドラインAデータベース26、及びガイドラインBデータベース28に記録されている医療行為のエビデンスレベルを、本実施の形態における特徴的な工程により設定する。
【0050】
図9は、このエビデンスレベルの設定の流れを説明するフローチャートである。図示のように、ステップS1011において、ガイドラインAデータベース26、及びガイドラインBデータベース28に記録されている大腸がんに対する医療行為についてガイドライン中の各項目に対してエビデンスレベルが表示されているかどうかを確認する。
【0051】
本実施の形態では、図6及び図7から理解されるように、ガイドラインAにおける「検査p」、及びガイドラインBにおける「化学療法s」にエビデンスレベルが付されておらず、他の項目にはエビデンスレベルが付されている。
【0052】
そして、ステップS1012において、エビデンスレベルが付されている項目に関しては、この表示されたエビデンスレベルを付した根拠となる論文を調査する。具体的には、文献データベース30により、ガイドラインA、及びガイドラインBにおけるエビデンスレベルが表示された医療行為の特徴を示す代表的なキーワードを設定し、このキーワードを用いて文献を検索する。
【0053】
次に、ステップS1013において、検索された各文献のインパクトファクターの値を確認する。なお、インパクトファクターとは、当該文献が、学術データベースであるWeb of scienseに記録されている論文にどの程度引用されているかの平均的な値を示す指数である。
【0054】
そして、本実施の形態では、このインパクトファクターが一定以上の数値(例えば、15以上)であるならば、その項目をQIとして設定する(ステップS1014)。その一方で、インパクトファクターが一定値未満の値(例えば、15未満)であるならば、その項目はQIとして設定しない(ステップS1015)。
【0055】
一方、ステップS1011においてエビデンスレベルが付されていないと判断された医療行為の内容については、この医療行為の内容から当該医療行為の特徴を示す代表的なキーワードを抽出する(ステップS1016)。そして、そのキーワードに基づいて文献データベース30から類似の医療行為の内容について記載された文献を検索する(ステップS1017)。
【0056】
ステップS1017で検索された文献についてインパクトファクターを調査する(ステップS1018)。そして、このインパクトファクターが一定以上の数値であるならば、その項目をQIとして設定する(ステップS1020)。
【0057】
一方で、上記文献のインパクトファクターが一定値未満の値であるならば、その項目はQIとして設定しない(ステップS1021)。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、ステップS1011〜ステップS1021を経て、図10に示された内容のQIが設定される。そして、図8のフローチャートのステップS102において、QI抽出サーバ22により、ステップS1011〜ステップS1021を経て設定されたQIが抽出され、QIデータベース23に記録される。
【0059】
上記ステップS101及びS102によれば、ガイドラインデータベース26、28に規定されている規定医療行為毎に付されたエビデンスレベル表示という明確な要素、及びガイドラインデータベース26、28に規定されている規定医療行為について記載された文献データベース30内の文献のインパクトファクターの値という明確な要素に基づいて、実際に行われた医療行為の内容を評価するためのQIの設定が行われている。客観的にエビデンスレベルの高いQIの設定が可能となる。
【0060】
ステップS103において、全医療行為データベース21に記録されている実際に行われた全医療行為の内容とQIデータベース23に記録されている医療行為の内容を対比する。図11に対比の結果における一致点、及び相違点を表した表を示す。図では実際に行なわれた全医療行為の内容の内、設定されているQIと共通する項目部分を塗りつぶしている。
【0061】
ステップS104において、実際に行われた全医療行為の評価点を算出する。本実施の形態では、実際に行われた医療行為の内容とQIとの相違点の数に応じて、最高点10点を減算することにより行われた全医療行為の評価点を算出する。すなわち、各QIに0.1点ずつ振り分け、このQIと相違する実際に行われた医療行為の項目の数に、上記0.1点を乗じ、これを最高点の10点から減ずることで評価点を算出する。
【0062】
本実施の形態では、実際に行なわれた全医療行為の内容においてQIとして設定されている「検査c」と「検査k」の2項目が欠けているので、上記全医療内容の評価点は、10―0.1×2=9.8点と算出される。
【0063】
ステップS105において、医療機関データベース25にステップS104で算出された評価点の情報を記録する。図12には、医療機関データベース25に記録されているデータ構造の一例を示す。図示のように、本実施の形態では、大腸がん(ステージIII、T3N2M0)に対する医療機関毎の医療行為の評価点、及びその順位が記録される。そして、ステップS106において、このデータがWEB200に反映される。
【0064】
このように、医療行為に対する評価点に応じて医療機関を順位付けしWEB上にその順位が公開されることで、患者は、どの医療機関が質の高い医療を提供しているかを容易に確認することができる。一方、医療関係者は、自らが所属する医療機関の順位を確認することで、所属する医療機関の医療行為の質を客観的に確認することができる。
【0065】
従って、本実施の形態にかかる医療評価システム10によれば、入院前の外来通院中に行なわれた医療行為、入院中に行われた医療行為、及び退院後の外来通院中に行なわれた医療行為をトータルして全医療行為とする一方で、ガイドラインAやガイドラインBで定められている複数の規定医療行為の中からエビデンスレベルの高い規定医療行為をQIとして抽出し、上記全医療行為の質をこのQIと比較することで定量的に評価することができる。従って、入院、及び退院後の通院等という全段階において行われる医療行為を統合的に、エビデンスレベルの高いQIを用いて評価することができる。
【0066】
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
図13は、本実施の形態における医療行為評価システム10の構成を示す説明図である。図示のように、本実施の形態における医療行為評価システム10の特徴的構成は、規定医療情報データベース群15に、上述の大腸がんに対して推奨されない医療行為を記録した非推奨規定医療行為記憶データベース32が設置されていることである。なお、他の病院内ネットワーク12や医療行為評価機関ネットワーク13の構成は、第1の実施の形態における医療評価システム10と同一であるので、図面簡略化のために、それらの構成は図示しない。
【0068】
一般に、この非推奨規定医療行為記憶データベース32に記録されているデータは、所定の診療ガイドラインに規定されている「不適切な検査、及び治療行為」の内容を記録したものである。図14は、非推奨規定医療行為記憶データベース30のデータ構造の一例を示している。図示のように、「検査y」、「検査x」等の不適切な検査、及び「手術z」等の不適切な治療行為が記録されている。
【0069】
本実施の形態においては、実際に行われた医療行為と抽出されたQIとの比較評価サーバ24による比較、すなわち、上記ステップS103において、非推奨規定医療行為記憶データベース30のデータを参照し、実際に行われた医療行為がこの30のデータと一致しているかどうかが調査される。
【0070】
そして、ステップS104における評価点の算出の際には、QIとの比較で算出された評価点からこのデータの一致の数に応じた点数を減ずる。例えば、実際に行なわれた医療行為において、上記「検査y」、「検査x」等の不適切な医療行為がある場合、この不適切な医療行為の項目数に0.5を乗じた点数分を、上述の算出された評価点から更に減じて、既に算出された評価点を補正する。
【0071】
これによれば、患者に対して実際に行なわれた医療行為が、従来より知られている推奨されない医療行為であるかどうかを判断し、より客観性の高い医療機関に対する評価を行うことができる。
【0072】
なお、本発明は、上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施の形態では、大腸がんに対する医療行為の内容について評価を行うシステムについて説明したが、これに限られるものではなく、本発明にかかるシステムは、他の胃がん、肺がん、及び肝臓がん等の悪性腫瘍や糖尿病等のがん以外の慢性疾患に対しても適用可能である。
【0073】
また、上記実施の形態では、QIの抽出を各ガイドラインに記載されている規定医療行為についてエビデンスレベルの表示、及び論文のインパクトファクターを用いて行っているが、これに限られるものではなく、例えば、多くの診療ガイドラインに共通して記載されている規定医療行為、すなわち、エビデンスレベルが高い可能性のあるものをQIとして設定するようにしても良い。これにより、エビデンスレベルの高いQIの抽出がより容易なものとなる。
【0074】
すなわち、本発明におけるQIの抽出では、診療ガイドラインに記載されている規定医療行為をそのままQIとして採用するのではなく、複数のガイドラインの中からよりエビデンスレベルの高いものを抽出する工程を経ることが必須の要素である。
【0075】
一方、診療ガイドラインデータベースも2個以上の任意の個数設置することが可能である。更に、本実施の形態では、患者に対して行われた全医療行為を抽出するためのソースとなるデータベースとして外来EFデータベース、DPCデータベース、及びがん登録データを用いているが、入院前の外来通院、入院中、及び退院後の外来通院におけるそれぞれの医療行為の内容を記録したものであれば、他の種々のデータソースを採用しても良い。
【0076】
更に、上記実施の形態では、全医療行為に対する評価を点数形式で行い、これをWEB200上に公開しているが、当該評価をA〜Fのような所定のグレード形式で行なって公開するようにしても良い。
【符号の説明】
【0077】
10 医療行為評価システム
14 外来EFデータベース(院前外来通院時医療行為記憶手段、退院後外来通院時医療行為記憶手段)
16 DPCデータベース(入院中医療行為記憶手段)
18 がん登録データベース
22 QI抽出サーバ(高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段)
24 比較評価サーバ(医療行為比較手段、医療行為評価手段)
26 ガイドラインAデータベース(規定医療行為記憶手段)
25 医療機関データベース
28 ガイドラインBデータベース(規定医療行為記憶手段)
30 文献データベース
200 WEB
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価システムにおいて、
入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した入院前外来通院時医療行為記憶手段と、
入院中に行われた医療行為の内容を記録した入院中医療行為記憶手段と、
退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した退院後外来通院時医療行為記憶手段と、
所定の診療ガイドラインにより規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容が記憶された規定医療行為記憶手段と、
前記規定医療行為記憶手段に記憶された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段と、
前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、前記入院中医療行為記憶手段、及び退院後外来通院時医療行為記憶手段に記憶されている全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較手段と、
該医療行為比較手段による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記信頼性を有する規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価手段と、
を備えたことを特徴とする医療行為評価システム。
【請求項2】
前記慢性疾患に対して推奨されない非推奨医療行為を記録した非推奨規定医療行為記憶手段をさらに備え、
前記医療行為比較手段は、前記全医療行為の内容と、前記非推奨医療行為の内容と、を比較し、
前記医療行為評価手段は、前記医療行為検出手段による検査結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記非推奨医療行為の内容とどの程度相違しているかを前記評価パラメータの一種として付加することを特徴とする請求項1に記載の医療行為評価システム。
【請求項3】
前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、
複数種の前記診療ガイドラインに規定された規定医療行為毎に付されているエビデンスレベルが所定基準以上高いかどうかに基づいて定められることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療行為評価システム。
【請求項4】
前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、
該規定医療行為が、複数の診療ガイドラインに共通に規定されているかどうかに基づいて定められることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の医療行為評価システム。
【請求項5】
前記規定医療行為記憶手段は、前記診療ガイドラインに記載されている前記規定医療行為の内容について記載された学術雑誌等の文献の内容を記録する文献データベースを有し、
前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、前記文献に付されているインパクトファクターに基づいて定められることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の医療行為評価システム。
【請求項6】
前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、及び前記退院後外来通院時医療行為記憶手段は、
外来における医療行為に対する明細情報を記録された外来Eファイル、及び/又は外来Fファイルを記憶した外来データベースを有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の医療行為評価システム。
【請求項7】
前記入院中医療行為記憶手段は、
入院中の診断群分類情報を記憶した診断群分類情報記憶データベースを有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の医療評価システム。
【請求項8】
前記医療行為評価手段は、
前記医療行為の質に対する定量化基準として所定の最高評価点を設定する最高評価点設定手段と、
前記全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容との間の相違箇所数に応じて、前記最高評価点を減算する評価点減算手段と、
該評価点減算手段により前記最高評価点から減算が行なわれて得られた算出評価点を前記全医療行為に対する評価点とし、該評価点に基づいて医療機関を順位付けする医療機関評価手段と、
該医療機関評価手段により行われた医療機関の順位付けの結果をWEBに公開する医療機関順位公開手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の医療評価システム。
【請求項9】
がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価方法において、
入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する入院前外来通院時医療行為記録工程と、
入院中に行われた医療行為の内容を記録する入院時医療行為記録工程と、
退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する退院後外来通院時医療行為記録工程と、
所定の診療ガイドラインや臨床研究により規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容を記録する規定医療行為記録工程と、
前記規定医療行為記録工程において記録された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程と、
前記入院前外来通院時医療行為記録工程、前記入院中医療行為記録工程、及び退院後外来通院時医療行為記録工程において記録された全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程において抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較工程と、
該医療行為比較工程による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記所定基準以上の信頼性の高い規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価工程と、
を備えたことを特徴とする医療行為評価方法。
【請求項1】
がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価システムにおいて、
入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した入院前外来通院時医療行為記憶手段と、
入院中に行われた医療行為の内容を記録した入院中医療行為記憶手段と、
退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録した退院後外来通院時医療行為記憶手段と、
所定の診療ガイドラインにより規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容が記憶された規定医療行為記憶手段と、
前記規定医療行為記憶手段に記憶された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段と、
前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、前記入院中医療行為記憶手段、及び退院後外来通院時医療行為記憶手段に記憶されている全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較手段と、
該医療行為比較手段による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記信頼性を有する規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価手段と、
を備えたことを特徴とする医療行為評価システム。
【請求項2】
前記慢性疾患に対して推奨されない非推奨医療行為を記録した非推奨規定医療行為記憶手段をさらに備え、
前記医療行為比較手段は、前記全医療行為の内容と、前記非推奨医療行為の内容と、を比較し、
前記医療行為評価手段は、前記医療行為検出手段による検査結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記非推奨医療行為の内容とどの程度相違しているかを前記評価パラメータの一種として付加することを特徴とする請求項1に記載の医療行為評価システム。
【請求項3】
前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、
複数種の前記診療ガイドラインに規定された規定医療行為毎に付されているエビデンスレベルが所定基準以上高いかどうかに基づいて定められることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療行為評価システム。
【請求項4】
前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、
該規定医療行為が、複数の診療ガイドラインに共通に規定されているかどうかに基づいて定められることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の医療行為評価システム。
【請求項5】
前記規定医療行為記憶手段は、前記診療ガイドラインに記載されている前記規定医療行為の内容について記載された学術雑誌等の文献の内容を記録する文献データベースを有し、
前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段による前記規定医療行為の抽出の基準は、前記文献に付されているインパクトファクターに基づいて定められることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の医療行為評価システム。
【請求項6】
前記入院前外来通院時医療行為記憶手段、及び前記退院後外来通院時医療行為記憶手段は、
外来における医療行為に対する明細情報を記録された外来Eファイル、及び/又は外来Fファイルを記憶した外来データベースを有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の医療行為評価システム。
【請求項7】
前記入院中医療行為記憶手段は、
入院中の診断群分類情報を記憶した診断群分類情報記憶データベースを有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の医療評価システム。
【請求項8】
前記医療行為評価手段は、
前記医療行為の質に対する定量化基準として所定の最高評価点を設定する最高評価点設定手段と、
前記全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出手段により抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容との間の相違箇所数に応じて、前記最高評価点を減算する評価点減算手段と、
該評価点減算手段により前記最高評価点から減算が行なわれて得られた算出評価点を前記全医療行為に対する評価点とし、該評価点に基づいて医療機関を順位付けする医療機関評価手段と、
該医療機関評価手段により行われた医療機関の順位付けの結果をWEBに公開する医療機関順位公開手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の医療評価システム。
【請求項9】
がん、糖尿病等の重度の慢性疾患に対して行われた医療行為の質を評価する医療行為評価方法において、
入院前の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する入院前外来通院時医療行為記録工程と、
入院中に行われた医療行為の内容を記録する入院時医療行為記録工程と、
退院後の外来通院中に行われた医療行為の内容を記録する退院後外来通院時医療行為記録工程と、
所定の診療ガイドラインや臨床研究により規定された前記慢性疾患に対する複数種の規定医療行為の内容を記録する規定医療行為記録工程と、
前記規定医療行為記録工程において記録された複数の規定医療行為の内容の中から前記慢性疾患に対して所定基準以上の信頼性を有する規定医療行為を抽出する高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程と、
前記入院前外来通院時医療行為記録工程、前記入院中医療行為記録工程、及び退院後外来通院時医療行為記録工程において記録された全医療行為の内容と、前記高エビデンスレベル規定医療行為抽出工程において抽出された前記信頼性を有する規定医療行為の内容と、を比較する医療行為比較工程と、
該医療行為比較工程による比較結果に基づいて、前記全医療行為の内容が前記所定基準以上の信頼性の高い規定医療行為の内容とどの程度一致しているかをパラメータとして前記全医療行為の質を定量化して評価する医療行為評価工程と、
を備えたことを特徴とする医療行為評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−191891(P2010−191891A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38231(P2009−38231)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(509050960)グローバルヘルスコンサルティング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(509050960)グローバルヘルスコンサルティング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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