説明

医療装置に結合した改善された疎水性を有した薬剤

【課題】治療的に活性な薬剤の疎水性類縁体でコーティングされたステント等、及びその使用方法の提供。
【解決手段】細胞増殖及び移動を阻害することが知られている薬剤の疎水性類縁体を含む、医療装置。適切な薬剤の例としては、例えば、ゲルダナマイシン抗生物質、コルヒチン、コンブレタスタチン(combrestatins)、カンプトテシン、タキサン、及びラパマイシン、並びにこれらの類縁体が挙げられる。該薬剤は、装置の内部に組み込まれるか、又は装置にコーティングされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願では、2005年2月18日に出願された、米国仮特許出願番号60/654,175の利益
を主張する。
発明の分野
本発明は、治療的に活性な薬剤でコーティングされた送達装置に関する。より詳細には、本発明は、治療的に活性な薬剤の疎水性類縁体でコーティングされたステント等、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
必須物質の流れを可能にする体内の多くの通路がある。これらとしては、例えば、動脈及び静脈、食道、胃、小腸及び大腸、胆道、尿管、膀胱、尿道、鼻孔、気管及び他の気道、並びに男性生殖器及び女性生殖器が挙げられる。傷害、様々な外科的処置、又は疾病は、そのような身体の通路の、狭窄、弱体化及び/又は閉塞を生じ得、重篤な合併症を及び/又は死亡さえを生じ得る。
【0003】
西洋諸国において、冠状動脈性心疾患は、40歳以上の男性及び50歳以上の女性における主要な死因である。冠状動脈が関係する死亡のうち、ほとんどのものは、アテローム性動脈硬化症によるものである。冠血流を制限又は妨害するアテローム硬化性進行病変は、死亡に関係する虚血性心疾患の主要な原因であり、米国において年間500,000-600,000の
死者をもたらしている。心筋自身の障害の発生における、疾病過程を停止させるため、及び心筋自身が危うくなった、より進行した疾病状態を防ぐため、直接介入が、経皮的バルーン血管形成(percutaneous transluminal coronary angioplasty)(PTCA)又は冠状動脈バイパスグラフト(coronary atery bypass graft)(CABG)によってなされてきた。
【0004】
PTCAは、小さなバルーンが先端に付いたカテーテルが、狭窄した冠状動脈を通り、続いて動脈を再び開くために膨張する処置である。本療法の主な利点は、処置が成功した患者は、それ以上の冠状動脈バイパス移植術の侵襲的な外科的処置を受ける必要がないことである。PTCAの主な難点は、PTCA後、即座(急性再閉塞)及び長期(再狭窄)の両方の、血管形成術後の血管閉鎖の問題である。
【0005】
急性再閉塞の機構は、いくつかの要因を伴うと考えられ、動脈の閉鎖及び/又は新たに
開いた血管の損傷距離に沿った、フィブリン/赤血球血栓の形成に続く、血小板の沈着の
結果での血管萎縮に起因し得る。最近、血管内ステントが、PTCA後の急性再閉鎖を防ぐ方法として調査されている。ステントは、足場としての役割を果たし、物理的に開いた状態にする働きをして、必要に応じて、通路の壁を拡げる。典型的に、ステントは、圧縮され得、それにより、カテーテルによって小さな空洞を通して挿入することができ、所望の位置で、元の、より大きな直径に拡げられる。PTCA処置に応用されるステントを開示する特許文献の例としては、Palmazによる特許文献1、 Gianturcoによる特許文献2、及びWiktorによる特許文献3が挙げられる。ステントによる機械的な介入は、バルーン血管形成術と比べて、再狭窄の割合を減らした。それにもかかわらず、再狭窄は、20-40%の範囲の割合のために、いまだ重要な臨床上の問題である。再狭窄がステント部分で起こったとき、その治療は、難しいものであり得る。その理由は、臨床上の選択肢は、バルーンでもっぱら治療される障害に比べて、より限定されるからである。
【0006】
つい最近、解決策は、純粋な機械装置からは離れ、装置と薬理作用のある物質との組み
合わせに移行した。「コーティングされた」又は「薬の入った」ステントと呼ばれることもある、薬剤溶出ステントは、再狭窄の進行を妨げる薬理作用が知られている物質(薬剤)でコーティングされている、通常の金属ステントである。医師及び会社は、再狭窄の原因となる生物学的過程を妨げることが知られている様々な薬剤の試験を開始した。薬剤溶出ステントは、20-30%幅から1桁まで、再狭窄の減少において極めて成功であった。現在、2つの薬剤溶出ステント、Cordis CYPHERTM シロリムス溶出ステント及びBoston Scientific TAXUSTMパクリタキセル溶出ステントシステムが、米国において、FDAの販売認可(2003年4月にはCypherステント;2004年3月にはTaxusTM ステントが認可された)を、及びヨーロッパにおいて販売に関してCEマークを受けた。加えて、Cook V Flex Plusは、ヨーロッパにおいて入手可能である。Medtronic及びGuidantの両者には、臨床試験の初期段階において、薬剤溶出ステントプログラムがあり、2005又は2006年の認可を目指している。
【0007】
再狭窄の機構
通常の動脈壁において、平滑筋細胞(SMC)は、低い速度で増殖する(<0.1%/day; ref)。
血管壁におけるSMCには、上記細胞の細胞質体積の80乃至90%を収縮装置が占めることを特徴とする、「収縮性の」表現型が存在する。小胞体、ゴルジ体、及び遊離リボソームは、ほとんどなく、核周辺領域に位置している。細胞外マトリックスは、SMCを取り囲み、そ
して収縮性の表現型状態のSMCの保持に関与していると考えられている、グリコシルアミ
ノグリカン様のヘパリンが豊富である。
【0008】
血管形成術/ステント留置術の間の冠動脈内バルーンカテーテルの圧力拡張で、動脈壁
内の内皮細胞及び平滑筋細胞は、傷ついた状態になる。細胞由来の成長因子、例えば、血小板由来の成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、上皮成長因子(EGF)等は
、損傷した動脈管腔表面に付着している血小板から放出されるか(例、PDGF)、侵入マクロファージ及び/若しくは白血球から放出されるか、又は直接SMCから放出され(例、BFGF)、内側のSMCで増殖及び移動反応を誘発する。これらの細胞は、収縮性の表現型から、総合
的な(synthetic)表現型までの表現型の変化を経る。この総合的な表現型には、収縮性
のフィラメント束はほとんどないが、しかし幅広い粗面小胞体、ゴルジ、及び遊離リボソームで特徴付けられる。増殖/移動は、通常、損傷後1-2日の内に始まり、中膜において2日でピークを迎え、その後急激に減少する(非特許文献1);非特許文献2。
【0009】
娘総合細胞(Daughter synthetic cells)は、動脈平滑筋の内膜層に移動し、増殖を続ける。増殖及び移動は、内膜での増殖が止まり、損傷を受けた内腔の内皮層が再生するまで(通常損傷後7-14日以内)続く。続く3-6ヶ月に亘って起こる、依然として続く内膜肥
厚の増大は、多くの細胞外マトリックスの増大のためであって、細胞数の増加のためではない。つまり、SMC移動及び増殖は、血管傷害に対する急性反応であり、一方、内膜過形
成は、より慢性的な反応である。(非特許文献3).
【0010】
血管以外での適用におけるステント留置術の使用
多くのタイプの癌(良性及び悪性の両方)は、身体の通路の壁部に損傷をもたらし得るか又は内腔の閉塞をもたらし得、それ故、通路を通した物質の流れを遅くするか、又は妨げる。癌の影響を受ける身体の通路での閉塞は、それ自体で及びおのずと生命を脅かすだけでなく、患者のクオリティ・オブ・ライフを制限する。
【0011】
腫瘍性閉塞を引き起こす主な腫瘍に対する第一の治療は、外科的切除及び/又は化学療
法、放射線療法、又はレーザー療法である。残念なことに、腫瘍が身体の通路で閉塞を引き起こす迄には、しばしば手術不可能であり、一般に従来の治療に対しては効果を表さないであろう。この問題に対する一つのアプローチは、腔内ステントの挿入である。しかしながら、腫瘍性閉塞におけるステントの使用の重大な欠点は、腫瘍がしばしばステントの隙間を通り、内腔に向かって増殖し得ることである。加えて、内腔でのステントの存在は
、ステントの表面での反応組織又は炎症組織(例、血管、線維芽細胞及び白血球の内方成
長(ingrowth)を誘発し得る。この内方成長(腫瘍細胞及び/又は炎症細胞からなる)は、
ステントの内部表面に達し、内腔を傷つけるならば、結果は、是正のためにステントが挿入された身体の通路の再閉塞である。
【0012】
他の疾病(腫瘍性の疾病ではなくとも、それにもかかわらず増殖を伴う疾病)は、同様に身体の通路を妨げ得る。例えば、良性前立腺過形成のための尿道前立腺部の狭窄は、60歳を超える年齢の全ての男性の60%及び80歳を超える年齢の全ての男性の100%に影
響を及ぼす重大な問題である。5α-レダクターゼインヒビター(例、Finasteride(登録商標))、又はα-アドレナリンブロッカー(例、Terazozan(登録商標))のような現在の薬
理学的治療は、一般に限られた患者集団において有効なだけである。
【0013】
さらに、行われうる外科的処置(例、前立腺経尿道的切除術(TURPs);前立腺切除術(open prostatectomy)、又はレーザー前立腺切除術のような泌尿器科的処置(endo-urologic
procedures)マイクロ波の使用、低体温法、凍結外科手術或いはステント留置術)で、多くの合併症(例えば、出血、感染症、失禁、インポテンス、及び再発性の疾病)が、典型的に、結果として生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,733,665号明細書
【特許文献2】米国特許第4,800,882号明細書
【特許文献3】米国特許第4,886,062号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Campbellら, in Vascular Smooth Muscle Cells in Culture, Campbell, J. H. and Campbell, G. R., Eds, CRC Press, Boca Raton, 1987, pp. 39-55
【非特許文献2】Clowes, A. W. and Schwartz, S. M., Circ. Res. 56:139-145, 1985
【非特許文献3】Liuら, Circulation, 79:1374-1387, 1989
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の要旨
本発明は、細胞増殖及び移動を阻害することが知られている薬剤の疎水性類縁体を含む、医療装置を提供する。適切な薬剤の例としては、例えば、ゲルダナマイシン抗生物質、コルヒチン、コンブレタスタチン(combrestatins)、カンプトテシン、タキサン、及び
ラパマイシン、並びにこれらの類縁体が挙げられる。該薬剤は、装置の内部に組み込まれるか、又は装置にコーティングされ得る。
【0017】
本発明は、細胞増殖及び移動を阻害することが公知の薬剤の疎水性類縁体を含む移植可能な医療装置を設置する工程を包含する、身体の通路における狭窄の治療方法も提供する。適切な薬剤の例としては、例えば、ゲルダナマイシン抗生物質、コルヒチン、コンブレタスタチン(combrestatins)、カンプトテシン、タキサン、及びラパマイシン並びにこ
れらの類縁体が挙げられる。該薬剤は、装置の内部に組み込まれるか、又は装置にコーティングされ得る。
【0018】
本発明は、細胞増殖及び移動を阻害することが公知の薬剤の疎水性類縁体を更に提供する。適切な薬剤の例としては、例えば、ゲルダナマイシン抗生物質、コルヒチン、コンブレタスタチン(combrestatins)、カンプトテシン、タキサン、ラパマイシン、並びにこ
れらの類縁体が挙げられる。該薬剤は、装置の組み込まれるか、又は装置にコーティングされ得る。
【0019】
他の具体的態様において、本発明は、式:
【0020】
【化1】

【0021】
[式中、Rは、H又はAcであり;R2は、H、COPh又はCO(CH2)4CH3であり;かつR3は、Ph又はOtBuであって、タキサン類縁体は、パクリタキセル又はドセタキセルではない]のタキサン疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置を提供する。
【0022】
他の具体的態様において、本発明は、式:
【0023】
【化2】

【0024】
[式中Rは、OH、OCOPh又はOCO(CH2)4CH3である]
【0025】
又は、
【0026】
【化3】

【0027】
[式中、Rは、OH、OCOPh又はOCO(CH2)4CH3である]のタキサン疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置を提供する。
【0028】
他の具体的態様において、本発明は、カンプトテシン又は式:
【0029】
【化4】

【0030】
[式中、Rは、H、メチル、又はエチルであり;かつR1は、H又はCO(X)である(式中、Xは、C2-C18アルキル、フェニル、CH2NHC02tBu、CH2OMe、CH2NH2である)]のカンプトテシン疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置を提供する。
【0031】
更なる他の具体的態様において、本発明は、ラパマイシン又は式:
【0032】
【化5】

【0033】
[式中、R1は、Hであり、かつR2は、H又はCOPhである]のラパマイシン疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置を提供する。
【0034】
他の具体的態様において、本発明は、式
【0035】
【化6】

【0036】
[式中Lは:
【0037】
【化7】

である]の疎水性二量体を含む医療装置を提供する。
【0038】
さらなる具体的態様において、本発明は、式:
【0039】
【化8】

【0040】
[式中、Rは、OMe、NHCHCH2、NH(CH2)6CH3、N(CH2)5、NCH2CHCH3、又はNHCH(CH3)(CH2)4CH3である]のゲルダナマイシン又はゲルダナマイシン疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置を提供する。
【0041】
更なる他の具体的態様において、本発明は、コンブレタスタチン(combretastatin)又は式:
【0042】
【化9】

【0043】
[ (a):R1は、Hであり;R2はHである
(b):R1は、CO2Hであり;R2は、Hである
(c):R1は、CO2Hであり;R2は、COCH3である
(d):R1は、Hであり;R2は、COCH3である
(e):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)4CH3である
(f):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)10CH3である
(g):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)6(CH2CH=CH)2(CH2)4CH3である
(h):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3である]のコンブレタスタチン(combretastatin)疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置を提供する。
【0044】
発明の詳細な説明
薬剤の疎水性及び有効性
本発明は、身体の通路における狭窄を治療する医療装置及び治療方法を提供し、該治療方法は、細胞増殖及び移動を阻害することが知られている薬剤の疎水性類縁体を含む医療用デバイスを身体の通路に設置する工程を包含する。本発明の医療装置としては、ステント、カテーテル、バルーン、ワイヤーガイド、カニューレ、セントラルライン(central line)、血管弁(vascular valve)、動脈瘤の治療のための人工装具などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
現在、パクリタキセル及びラパマイシン(シロリムス)でコーティングされたステントは、冠状動脈PTCA処置での使用が認可されており、そのままの金属ステントと比べて、再狭窄の割合を減少させる点において有用である。ステント会社の焦点は、一貫して、ステント位置での過形成及び再狭窄の減少に有効であり得る種々の化合物である一方で、すぐに認識できないことは、一度、薬剤が血管内ステントのような装置から放出されると、該薬剤の疎水性が、組織(例えば、血管)における該薬剤の、透過(penetration)、残存(persistence)、保持(retention)、及び有効性に重要な役割を果たしているということ
である。
【0046】
本発明化合物は、既知の親化合物の新規な類縁体又はプロドラッグであって、既知の細胞毒性の親化合物(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ラパマイシン(シロリムス)、ゲルダナマイシン、コルヒチン、コンブレタスタチン(combretastatin)など)と比較した疎水性の向上を目的とする。驚くべきことに、化合物の疎水性類縁体は、それらの疎水性によって、より強い親和性で、血管で細胞構成因子(例えば、タンパク質、細胞膜、等)に結合することが見出された。そのような化合物は、血管内装置のような装置(ステントが挙げられる)で用いられ、放出された薬剤は、血管壁に残存し(persist in)、再狭窄の発症を防ぐか又は減少させるに違いない。
【0047】
もう一つの側面において、上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害する化合物は、細胞の増殖及び移動の予防、及び再狭窄の治療に有用であることが見出されている。
【0048】
細胞の増殖及び移動におけるEGF受容体の役割
EGF Gen接合体を用いて、ゲニステイン(Gen)(5,7,4'トリヒドロキシイソフラボン)、大豆に天然に存在するチロシン・キナーゼ阻害剤(Aikyamaら, 1987, J. Biol. Chem, 262:5592- 5595;Uckunら, 1995, Science 267:886-891)を乳癌細胞中のEGF受容体/PTK複合体に標的化とすると、EGF受容体チロシン・キナーゼ及びEGF受容体に関連したSrcファミリーPTK の阻害が顕著になった (Uckunら, 1998, Clinical Cancer Research, 4: 901-912)。
【0049】
増殖型血管平滑筋細胞は、また、高い水準のEGF受容体を発現する(Saltisら, 1995, Atheroscleosis, 118:77-87)。さらに、再狭窄の非侵襲的小動物モデル(光活性化ローズベンガルを用いて、C57B 1/6マウスの大腿動脈に対して血管傷害を誘発し、冠状動脈のPTCA後再狭窄擬似的新生内膜の過形成を導く)により、新生内膜の筋線維芽細胞が、分析された8匹中8匹(100%)のマウスにおいて、EGF受容体陽性であることを示した(Trieuら, 200
0, J. Cardiovasc. Pharmacology, 35: 595-605)。とりわけ、傷害を受けた大腿動脈の新生内膜は、傷害を受けていない大腿動脈の中膜及び/又は内膜よりも強力に抗EGF受容体抗体で染色された (Trieuら, 2000, J. Cardiovasc. Pharmacology, 35: 595-605)。概念実証試験では、EGFゲニステインは、再狭窄のこのマウスモデルにおける再狭窄で有効であ
ることが示された (Trieuら, 2000, J. Cardiovasc. Pharmacology, 35: 595-605)。
【0050】
これらの知見は、EGF受容体機能及びEGF受容体が関連したシグナル伝達事象は、血管障害後の新生内膜の過形成に寄与する筋線維芽細胞の移動及び増殖に必須であり得ることを示唆する。次いでチロシン・キナーゼ阻害剤を指向したEGF受容体を用いて、血管平滑筋
細胞上のEGF受容体が、再狭窄の予防に適した標的であり得るということが想定される。
最近、マルチシャペロンヒートショックプロテイン(Hsp)90が、EGF Rを含む様々なタンパク質の成熟及び安定性を仲介していることが示された(Zhangら(2004) J. MoI. Med. 82: 488- 499.)。本発明化合物、特にゲルダナマイシン誘導体及びその類縁体は、HSP 90の有効な阻害剤であり、それ故、細胞の増殖及び移動の低減、並びに再狭窄の治療に有用である。
【0051】
ポリマー及び装置のコーティング
ステント又は他に適した医療装置での薬剤の装填は、いかなる方法、(例えば、Hossainyらによって記載されたもの(米国特許第6,153,252号))によってでも達成され得る。
【0052】
本願でコーティングに用いられ得る皮膜形成ポリマーは、吸収性であっても、非吸収性であってもよく、血管壁に対する刺激を最小にした生体適合性のあるものでなければならない。このポリマーは、所望の放出速度又は所望のポリマー安定度によって、生体安定性(biostable)であっても、生体吸収性(生体吸収性)であってもいずれでもよいが、生
体安定性(biostable)ポリマーとは違って、移植後長く存在して、有害な、慢性の局所
応答の原因とならないので生体吸収性ポリマーが好ましい。さらに、生体吸収性ポリマーには、コーティングを駆逐し得る生物学的環境のストレスにより引き起こされ、ステントが組織に内包化された後でさえさらに問題を引き起こし得る、ステントとコーティングの間の接着の損失の危険が長期間に亘って、存在しない。
【0053】
用いることができる適切な皮膜形成生体吸収性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド
、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミド基を含むポリオキサエステル、ポリ(アンハイドライド)、ポリホスファゼン、生体分子及びこれら混合物から成る群より選ばれるポリマーが挙げられる。本発明の目的では、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸D-、L及びメソ-ラクチドが挙げ
られる)、ε-カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸が挙げられる)、ヒドロキシ酪酸エステル、ヒドロキシ吉草酸エステル、パラ-ジオキサノン、トリメチレンアセテート(及びそのアルキル誘導体)、1,4-ジオキセパン 2 オン、1,5-ジオキセパン 2 オン、6,6-ジ
メチルl,4-ジオキシン-2-オンのホモポリマー及びコポリマー並びにそのポリマー混合物
が挙げられる。ポリ(イミノカーボネート)としては、本発明の目的では、Kemnitzer及びKohnによってthe Handbook of Biodegradable Polymer(Domb、Kost及びWisemen編, Hardwood Academic Press, 1997, 251頁-272頁)において記載されたものが挙げられる。コポ
リ(エーテル エステル)としては、本発明の目的では、Cohn及びYounes及びCohnによる、Journal of Biomaterials Research, 第22巻, 993-1009項, 1988年、Polymer Preprints (ACS Division of Polymer Chemistry) 第30(1)巻, 498項, 1989年(例、PEO/PLA)に記載されているコポリエステルエーテルが挙げられる。シュウ酸ポリアルキレンとしては、本発明の目的では、米国特許第4,208,511号;同第4,141,087号;同第4,130,639号;同第4,140,678号;同第4,105,034号;及び同第4,205,399号が挙げられ、これらは本明細書中に援用され
る。ポリホスファゼン、コ-、ter-、及びより高次の混合モノマー(higher order mixed
monomer)は、L ラクチド、D,L ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ-ジオキサノン、トリメチレンアセテート及びε-カプロラクトン等から製造されるが、上記ポ
リマーは、例えば、AllcockによるThe Encyclopedia of Polymer Science, 第13巻, 31-41, Wiley Intersciences, John Wiley & Sons, 1988年、並びにVandorpe、Schacht、Dejardin及びLemmouchiによるthe Handbook of Biodegradable polymer、Domb、Kost及びWisemen編、Hardwood Academic Press, 1997年, 161-182項に記載されている(これらは本明細書中に援用される)。HOOCC6H4-O-(CH2m-O-C6H4-COOH(式中、mは、2乃至8の範囲の整
数である)の形態の二価酸由来のポリアンハイドライド、及び12炭素までの脂肪族アルファ オメガ二価酸でを有するコポリマー自身。ポリオキサエステルポリオキサアミド並
びにアミン及び/又はアミド基を含むポリオキサエステルは、以下の米国特許第5,464,929;同第5,595,751号;同第5,597,579号;同第5,607,687号; 同第5,618,552号;同第5,620,698
号;同第5,645,850号;同第5,648,088号;同第5,698,213号及び同第5,700,583号;(本明細書
で援用される)のうち一つ以上に記載されている。そのようなポリオルトエステルは、HellerによるHandbook of Biodegradable Polymer,(Domb, Kost and Wisemen編, Hardwood Academic Press, 1997年, 99-118頁)(本明細書で援用される)に記載されている。皮膜形成ポリマー生体分子としては、本発明の目的では、天然由来物質であって人体内で酵素的に劣化し得る可能性があるもの、又は人体内で加水分解的に不安定(例えばフィブリン、フィブリノーゲン、コラーゲン、エラスチン、及び吸収性生体適合性(biocompatable)
ポリサッカライド(例えば、キトサン、でんぷん、脂肪酸(及びそのエステル)、グルコソグリカン(glucoso glycans)及びヒアルロン酸))である天然由来物質が挙げられる。
【0054】
ポリウレタン、シリコーン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリアルキルオキシド(ポリエチレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンのような、慢性の組織反応が比較的少ない適切な皮膜形成生体安定性(biostable)ポリマー、同様に、架橋ポリビニルピロリジノン及びポリエステルから形
成されるようなヒドロゲルもまた、用いられ得る。他のポリマーも、それらが溶解され、硬化され、ステント上にポリマー化され得る場合には、用いられ得る。それらとしては、ポリオレフィン、ポリイソブチレン並びにエチレンアルファオレフィンコポリマー;アク
リルポリマー(例えば、メタクリレート)及びコポリマー、ビニルハライドポリマー及びコポリマー(例えば、ポリビニルクロライド);ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニル
メチルエーテル);ポリビニリデンハライド(例えば、ポリビニリデンフルオライド及び
ポリビニリデンクロライド);ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン);ポリビニルエステル(例えば、ポリビニルアセテート);エチレン(etheylene)メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポ
リマー、ABS樹脂及びエチレンビニルアセテートコポリマーのような、ビニルモノマー同
士及びビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー;ポリアミド(例えば、ナイロン 66及びポリカプロラクタム);アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂、ポリウレタン;レーヨン;レーヨントリアセテート、セルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート;セロファン;セルロースニトレート;セルロースプロピオネート;セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセ
ルロース及びヒドロキシアルキルセルロース);並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本出願の目的では、ポリアミドとしては、式NH(CH2)-CO及びNH(CH2)x-NH-CO-(CH2)y-CO(式中、nは、好ましくは6乃至13の整数であり;xは、6乃至12の範囲の整数であり;かつ、y
は、4乃至16の範囲の整数である)のポリアミドも挙げられる。上記のリストは、例示で
あり限定ではない。
【0055】
コーティングに用いられるポリマーは、蝋状又は粘着性でない程に大きい分子量を有する皮膜形成ポリマーでなければならない。このポリマーは、ステントに付着もしなければならず、血行動態ストレス(hemodynamic stresses)によって動かされる可能性があるために、ステントに沈着後にさほど容易く変形可能ではない必要がある。ポリマー分子量は
、上記ポリマーが、取り扱い又はステントの配置の間に剥がれ落ちず、ステントの拡張の間に割れ目が入らないように十分に頑丈な程に大きくあるべきである。本発明に用いられるポリマーの融点は、40℃を、好ましくは、約45℃を、より好ましくは、50℃を、最も好ましくは55℃を超える融解温度を有する。
【0056】
本願に用いる好ましいコーティングは、生体吸収性エラストマー、より好ましくは、脂肪族ポリエステルエラストマーである。適当な釣り合いでは、脂肪族ポリエステルコポリマーは、エラストマーである。エラストマーは、よく金属ステントに付着する傾向があり、クラッキングなしで大きな変形に耐えることができるという利点を有する。大きな伸長及び良好な接着は、コーティングされたステントが引き伸ばされた時に、他のポリマーコーティングよりも優れた性能を示す。適切な生体吸収性エラストマーの例は、米国特許第5,468,253号に記載されており、これは本明細書に援用される。脂肪族ポリエステルに基
づく生体吸収性生体適合性エラストマーとしては、好ましくは、ε-カプロラクトンとグ
リコリドとのエラストマーコポリマー(好ましくは、約35:65乃至約65:35、より好ましく
は、45:55乃至35:65のε-カプロラクトンのグリコリドに対するモル比を有する)、ε-カ
プロラクトンとラクチド(L-ラクチド、D-ラクチド、その混合物又は乳酸コポリマーが挙げられる)とのエラストマーコポリマー(好ましくは約35:65乃至約90:10、より好ましく
は約35:65乃至約65:35最も好ましくは約45:55乃至30:70又は約90:10乃至約80:20のラクチドに対するε-カプロラクトンのモル比を有する)、p-ジオキサノン(l,4-ジオキシン-2-オン)とラクチド(L-ラクチド、D-ラクチド及び乳酸が挙げられる)とのエラストマーコポ
リマー(好ましくは約40:60乃至約60:40のラクチドに対するp-ジオキサノンのモル比を有
する)ε-カプロラクトンとp-ジオキサノンとのエラストマーコポリマー(好ましくは約30:70乃至約70:30のp-ジオキサノンに対するε-カプロラクトンのモル比を有する)p-ジオキサノン及びトリメチレンアセテートのエラストマーコポリマー(好ましくは約30:70乃至約70:30のトリメチレンアセテートに対するp-ジオキサノンのモル比を有する)、トリメチレンアセテート及びグリコリドのエラストマーコポリマー(好ましくは約30:70乃至約70:30
のグリコリドに対するトリメチレンアセテートのモル比を有する)、トリメチレンアセテ
ート及びラクチド(L-ラクチド、D-ラクチド、その混合物又は乳酸コポリマーが挙げられる)のエラストマーコポリマー(好ましくは約30:70乃至約70:30のラクチドに対するトリ
メチレンアセテートのモル比を有する)並びにそれらの混合物からなる群より選ばれるも
のが挙げられるがこれらに限定されない。当業者に周知のように、これらの脂肪族ポリエステルコポリマーは、異なる加水分解速度を有しており、それ故、エラストマーの選択は、ある程度コーティング吸着のための必要条件に基づかれている。例えば, ε-カプロラ
クトン コ-グリコリドコポリマー(それぞれ、45:55モル百分率)膜は、擬似の(simulated)生理学的バッファー中で、2週間後に初期の強度の90%を失うのに対し、ε-カプロラクトンコ-ラクチドコポリマー(それぞれ、40:60モル百分率)が、同様のバッファーにおいて12から16週の間で強度の全てを失う。速い加水分解ポリマー及び遅い加水分解ポリマーの混合物は、強度保持の時間を調整するために用いられうる。
【0057】
好ましい生体吸収性エラストマーポリマーは、約1.0 dL/gから約4 dL/gまでの固有粘度、好ましくは約1.0 dL/gから約2 dL/gまでの固有粘度、最も好ましくは約1.2 dL/gから約2 dL/gまでの固有粘度(25℃で、デシリットル当たり0.1グラム(g/dL)のヘキサフルオロ
イソプロパノール(HFIP)中のポリマー溶液で決定される)を有する。
【0058】
溶媒は、粘度、ポリマーの沈着の水準、医薬品の溶解性、ステントの湿り、及びステントを適切にコーティングする溶媒の蒸発速度の適性バランスがあるように選ばれる。好ましい具体的態様において、溶媒は、医薬品及びポリマーがいずれも当該溶媒に可溶であるように選ばれる。ある場合には、溶媒は、コーティングポリマーが、医薬品が溶媒中におけるポリマー溶液中で分散されるような溶媒中で可溶なものが選ばれなければならない。その場合、選ばれた溶媒は、用いられた時にステントの隙間の障害物となる微粒子の堆積
に集まるか又は塊になる原因とならずに、医薬品の小粒子を懸濁することができなくてはならない。目的は、処理の間にコーティングから完全に溶媒を乾かすことであるが、溶媒に毒性が無いこと、発癌性が無いこと及び環境面に無害であることは、大きな利点である。混合溶媒系はまた、粘度及び蒸発速度を制御するために用いることができる。すべての場合において、溶媒は、医薬品と反応しても不活性化してもならず、或いはコーティングポリマーと反応してはならない。好ましい溶媒としては、アセトン、N-メチルピロリド
ン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、メチレンクロライド、クロロホルム
、1,1,2-トリクロロエタン(TCE)、様々なフレオン、ジオキサン、酢酸エチル、テトラヒ
ドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルアセトアミド(DMAC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
皮膜形成性の生体適合性のあるポリマーコーティングは、一般的にステントを通った血流における局所乱流や、有害な組織反応を減らすために適用される。コーティングは、ステント配置の場所に医薬上活性な物質を投与するために用いられ得る。一般的に、ステントに取り付けられるポリマーコーティングの量は、ポリマー及びステントのデザイン及び所望のコーティング効果と共に伴って変化する。指針としては、コーティングの量は、コーティング後のステントの総重量のパーセントとして約0.5乃至約20の範囲であってよく
、好ましくは約1乃至約15パーセントの範囲である。ポリマーコーティングは、用いられ
るポリマーの量に依存して、1つ以上のコーティングの工程において適用され得る。異なったポリマーはまた、ステントコーティングにおいて異なった層に用いられ得る。実際、医薬上活性な物質を含有し得る次のコーティング層の接着を促すための下塗りとして、最初のコーティング溶液を希釈するために用いることは、極めて有利である。
【0060】
加えて、最上層のコーティングは、医薬品の放出を遅らせるために用いられ得、医薬上活性な別個の物質の送達のための母体として用いられ得る。ステントの最上層のコーティングの量は、変化し得るが、一般的に、約2000 μg未満であり、好ましくは、最上層のコーティングンの量は、約10 μg乃至約1700 μgの範囲であり、最も好ましくは、約300 μg乃至約1600 μgの範囲である。速い及び遅い加水分解コポリマーのコーティングの層化
は、薬剤の放出を計画的に行うためか、異なる層に位置した異なる薬剤の放出を制御ために用いられ得る。ポリマー混合物はまた、異なる薬剤の放出速度を制御するためか、所望のコーティングのバランス(例、弾力性、強靭性、等)及び薬剤送達特性(例、放出プロフ
ァイル)を備えるために用いられることができる。溶媒において異なる溶解性を有するポ
リマーは、異なる薬剤を送達するためか、薬剤の放出プロファイルを制御するために用いられ得る異なるポリマー層を蓄積するために用いられことができる。例えば、ε-カプロ
ラクトン コ-ラクチドエラストマーは、酢酸エチルに可溶であり、ε-カプロラクトン コ-グリコリドエラストマーは、酢酸エチルに可溶ではない。薬剤を含んだε-カプロラクトン コ-グリコリド エラストマーの第一層は、溶媒として酢酸エチルで作られたコーティ
ング溶媒をもちいて、ε-カプロラクトン コ-グリコリド エラストマーで上塗りされ得る。加えて、コポリマー、ポリマー構造又は分子量におけるモノマー比率が異なると、溶解度が異なり得る。例えば、室温での45/55 ε-カプロラクトン コグリコリドは、アセトンに可溶であるが、一方で、同様の分子量の35/65 ε-カプロラクトン コ-グリコリドのコ
ポリマーは、4重量パーセント溶液の範囲内で実質的に不溶性である。第二のコーティン
グ(又は多重の追加コーティング)は、第一の層に含有される薬剤の薬剤送達を遅らせるために、最上層のコーティングとして用いられ得る。或いは、第二の層は、逐次的な薬剤送達を提供するために、異なった薬剤を含むことができる。異なった薬剤の多重の層は、初めの一層のポリマーと続くその他の交代層によって与えられる。当業者によって容易に理解される通り、多数の層化方法は、所望の薬剤送達を提供するために用いることができる。
【0061】
コーティング
コーティングは、コーティング混合物でのコーティングポリマーと共に1つ以上の治療薬剤の混合によって製剤化され得る。治療薬剤は、液体、微粉固体、又は他のどのような適切な物理形態としても存在し得る。任意に、混合物は、1つ以上の添加物(例、希釈剤、担体、賦形剤、安定剤などのような非毒性の補助剤)を含有し得る。他の適切な添加物は、ポリマー及び医薬上の活性薬剤又は化合物と共に製剤化され得る。例えば、以前に記載した生体適合性のある皮膜形成ポリマーのリストから選ばれる親水性ポリマーは、放出プロファイルを変えるために、生体適合性のある疎水性コーティングに添加され得る(或
いは、疎水性ポリマーは、放出プロファイルを変えるために、親水性コーティングに加えられ得る)。一つの例としては、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエ
チレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる親水性ポリマーが、脂肪族ポリエステルに対して、放出プロファイルを変えるために添加される。適切な相対量は、治療薬剤のインビトロ及び/又はインビボ放出プロファイルの測定によって決定され得る。
【0062】
コーティング適用の最適条件は、ポリマー及び医薬品が共通溶媒を有する場合である。これは、真溶液(true solution)であるウェットコーティングを提供する。望ましくは
ないが、なおまだ使用可能なのは、溶媒中のポリマーの溶液において、固体分散体として薬剤を含有するコーティングである。分散条件下で、分散された医薬品粉末の粒径、主要な粉体サイズ並びにその凝集体及び塊のいずれもが、十分に小さく、コーティングを遊離させ続けるためにコーティング表面が不均一になったり、又は必要なステントの隙間を詰まらせたりすることのないことを保証するように配慮しなければならない。分散物がステントに塗布され、かつコーティング表面の滑らかさを改善するか、又は薬剤の全ての粒子が、全てポリマーに封入されたことを保証することを望む場合、或いは、分散又は溶液のいずれかから溶着された、薬剤の放出速度を遅くすることを望む場合、薬剤の持続放出をもたらすために用いられるのと同じポリマー、或いは、コーティングからの薬剤の拡散をさらに制限する他のポリマーの純粋な(ポリマーのみ)上塗りを適用することができる。上塗りは、前述の通り、心棒との浸漬被覆によって又は、スプレーコーティング(スプレー
利用の間のコーティングの損失は、高価な薬剤は、含有されないので、純粋な上塗りに対して問題が少ない)によって適用されることができる。薬剤がポリマーよりコーティング
溶媒に溶けやすく、純粋なコーティングが、以前に沈着した薬剤に再融解するならば、上塗りの浸漬被覆は、問題となり得る。浸浴中で費やされる時間は、限られる必要があるため、薬剤は薬剤遊離の浴の外に、抽出されない。乾燥は、迅速なため、以前に沈着した薬剤上塗りに、完全には拡散しない。浸漬被覆、スプレーコーティング、ブラシコーティング又は浸漬/スピンコーティング或いはその組み合わせのいずれかによって、ポリマー/薬剤混合物は、ステントの表面に塗布され、溶媒は、蒸発し、ポリマー内に薬剤がトラップされた膜を残す。
【0063】
医療装置のコーティングにおける治療薬剤の量は、用いられる個々の薬剤、治療薬剤を包含する医療装置、及び治療される医療の条件に依存する。典型的に、治療薬剤の量は、コーティングの重量の約0.0001%乃至約70%、より典型的には、約0.0001%乃至約60%、最も典型的には、約0.0001%乃至約45%を表す。より少量の治療薬剤、例えば、コーティングの重量の約0.0001%乃至約30%を用いることもできる。
【0064】
ポリマーは、例えば、ラクトンベースのポリエステル又はコポリエステル(例、ポリラクチド、ポリカプロラクトン-グリコリド、ポリオルトエステル、ポリアンハイドライド
);ポリ-アミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテル-エステル)コポリマー(例、PEO PLLA)、或いはその混合物のように、生体適合性があり(例、いかなる負
の組織反応も惹起せず、壁の血栓の形成を促進しない)、分解可能である。非吸収性生体
適合性ポリマーも、適切な候補である。ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン;ポ
リ(エチレン-ビニルアセテート);アクリレートベースのポリマー又はコポリマー(例、ポ
リ(ヒドロキシエチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリジノン);ポリウレタン;
ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素化ポリマー;セルロース エステル、及び上記任意のポリマーのコポリマー)もまた、適切である。一般的に、当該分野において医療装置上のコーティングに関しての技術中に記載されたポリマーは、本願に適している。
【0065】
ポリマーなしのコーティング
ポリマーは、ステントのような装置であって、本体が微小孔を包含するように修正されているか、或いは通路(channels)が、溶液が微細孔に染み入るように、十分な時間をかけて、アセトン、メチレンクロライド、又は他の溶媒のような有機溶媒中、0.001重量%
乃至飽和の範囲で、治療薬剤の溶液に浸されるものの場合には必ずしも必要ではない。浸漬溶液は、装填効率を改善するために加圧もされる。溶液を蒸発後、ステントは、表面に余分に結合した薬剤を除くため、新たな溶媒に短く漬けられる。ポリマーの溶液は、初めの実験法において確認されたいかなるものからもえらばれ、上記の様にステントに塗布される。ポリマーのこの外層は、薬剤の放出の拡散制御装置として作用するであろう。
【0066】
医薬上の薬剤を含むコーティング層に用いられる、ポリマーの量及び種類は、所望の放出プロファイル及び用いられる薬剤の量に依存して変化する。製品は、異なる分子量を有する、同一又は異なるポリマーの混合物を含んで、得られた製剤の所望の放出プロファイル又は一貫性を提供し得る。
【0067】
血液等を含む体液と接触すると吸収性ポリマーはすぐに、持続若しくは延長した期間(
等張ブライン溶液からの放出に比較して)、分散された薬剤の放出に付随して、漸進的な
崩壊(主として加水分解による)を経る。非吸収性及び吸収性ポリマーは、拡散によって分散された薬剤を放出し得る。これは、有効量の薬剤(例、0.001 μg/cm2 min乃至100 μg/cm2 min)の長期(例、1乃至2,000時間、好ましくは2乃至800時間)に亘る送達をし得る。用量は、治療される被検体、苦痛の激烈度、処方する医師の判断、などに合わせて調整することができる。
【0068】
薬剤及びポリマーの個々の製剤は、所望の薬剤放出プロファイルを得るために、インビトロ及びインビボモデルにおいて試験され得る。例えば、薬剤は、ステントにコーティングされたポリマー(又は混合物)と製剤化され、攪拌されているか、循環している流体系(
例えば、PBS 4%ウシアルブミン)に置かれ得る。循環液体のサンプルが、放出プロファイ
ル(例えば、HPLCによる)を決めるのに必要とされ得る。内腔の内壁へのステントコーティングからの医薬上の化合物の放出は、適切なブタ組織においてモデル化され得る。薬剤放出プロファイルは、適切な手段によって、例えば、特定の時間にサンプルをとり、このサンプルの薬剤濃度をアッセイする(薬剤濃度を検出するためにHPLCを用いる)ことによって続いて測定することができる。血栓の形成は、Hanson及びHarkerらによって、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:3184-3188 (1988)に記載されたIIIIn-血小板画像検査法を用い
て動物モデルにおいてモデル化され得る。これに従うか、又は同様の手順で、当業者は、様々なステント コーティング製剤を製剤化し得る。
【0069】
送達される薬剤
コーティングは、治療上及び薬学的因子、特に、因子の疎水性類縁体又はプロドラッグを送達するために使用され得る。この因子としては、抗増殖/抗有糸分裂剤(天然物、例
えば、ビンカ・アルカロイド(例、コルヒチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及び
ビノレルビン)、タキサン(例、パクリタキセル、ドセタキセル)、エポチロン、コンブレ
タスタチン(combretastatin)、エピジポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins)(例、エトポシド、テニポシド)、カンプトテシン、抗生物質(例、ダクチノマイシン(アク
チノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、ゲルダナマイシン
抗生物質(例、ゲルダナマイシン、17AAG)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブ
レオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン、酵素(例、L-アス
パラギナーゼ)を含む);抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えば、ナイトロジェン・マ
スタード(例、メクロレタミン、シクロホスファミド及び類縁体、メルファラン、クロラ
ムブシル)、エチルエニミン及びメチルメラミン(例、ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルフォネートブスルファン、ニトロソウレア(例、カルムスチン(BCNU)及び類縁体、ストレプトゾシン)、トラゼンスダカルバジニン(trazenes dacarbazinine)(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗物質、例えば、葉酸類縁体(メトトレキサート)、ピリミ
ジン類縁体(例、フルオロウラシル、フロクスウリジン、及びシタラビン)、プリン類縁体及び関連阻害剤(例、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2クロロデオキシアデノシン(cladribine));EGF阻害剤、白金配位錯体(例、シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン(
例、エストロゲン);血液凝固阻止剤(例、ヘパリン、合成ヘパリン塩及びトロンビンの他
の阻害剤);フィブリン溶解剤(例、 組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ);抗血小板物質:(例、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキマブ(abciximab));抗移動物質(antimigratory);抗分泌物質(例、ブレベルジン(breveldin));抗炎症物質、例えば、副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6.α-メチルプ
レドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、及びデキサメタゾン)、非ステロイド
剤(サリチル酸誘導体、(例、アスピリン);パラアミノフェノール誘導体、(例、アセトアミノフェン(acetominophen));インドール及びインデン酢酸(例、インドメタシン、
スリンダク、及びエトドラク(etodalac))、ヘテロアリール酢酸(例、トルメチン、ジクロフェナク、及びケトロラク)、アリールプロピオン酸(例、イブプロフェン及び誘導体)
、アントラニル酸(例、メフェナム酸、及びメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカ
ム、テノキシカム、フェニルブタゾン、及びオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン(nabumetone)、金化合物(例、オーラノフィン、金チオグルコース、
金チオリンゴ酸ナトリウム);免疫抑制薬:(例、シクロスポリン、タクロリムス(FK 506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);脈管形成:
血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF); 酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド及びその組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は、さらに本発明を例示するが、当然、決してその範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0071】
実施例1
タキサン及び類縁体
【0072】
以下のタキサン及び類縁体は、ステント又は他の医療装置での使用に適した発明化合物である。
【0073】
【化10】

【0074】
パクリタキセル:R1=Ac、R2=H、R3=Ph
化合物1:R1=Ac、R2=COPh、R3=Ph
ドセタキセル:R1=H、R2=H、R3=OtBu
化合物2:R1=H、R2=COPh、R3=OtBu
化合物3:R1=H、R2=CO(CH2)4CH3、R3=OtBu
【0075】
【化11】

【0076】
又は
【0077】
【化12】

【0078】
化合物4及び5に加えて、Rが、OH、OCOPh又はOCO(CH2)4CH3であり得る、これらの類縁体は、本発明によりもたらされる。
【0079】
実施例2
ベンゾイル ドセタキセルの調製(2)
本発明のタキサンの一つの合成例は、本明細書中に提供される。メチレンクロライド(6
mL)中のドセタキセル(201 mg, 0.25 mmol)の溶液に、トリエチルアミン(42 μL, 0.30 mmol)、続いてベンゾイルクロライド(29 μL, 0.25 mmol)を0 ℃にて加えた。混合物を室
温で2時間攪拌し、TLCが出発物質の消失を示した。飽和重炭酸ナトリウム溶液を加えて反応を停止した後、混合物をエチルエーテルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して、真空で濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン:DCM, 1 : 1)、生成物を白色泡状物質(181 mg, 80%)として得た。1H NMR (CDC13, 500 MHz): δ 8.10 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.98 (d,
J = 7.6 Hz, 2H), 7.61 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.50 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 7.45 (t, J
= 7.8 Hz, 2H), 7.41 7.36 (m, 4H), 7.29 7.26 (m, 1H), 6.25 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 5.67 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 5.58-5.45 (m, 3H), 5.22 (s, 1H), 4.94 (dd, J = 9.6, 1.9 Hz, 1H), 4.31 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.27 (dd, J = 10.9, 6.6 Hz, 1H), 4.19 (s, 1H), 4.18 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 3.93 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 2.60-2.58 (m, 1H), 2.43 (s, 3H), 2.32-2.25 (m, 1H), 2.17 (s, 3H), 2.15-2.05 (m, 1H), 1.98 (s, 3H), 1.88-1.80 (m, 1H), 1.75 (s, 3H), 1.34 (s, 9H), 1.22 (s, 3H), 1.11 (s, 3H). ESI MS: C50H57NO15Na (M+Na)+に関して計算値: 934.実測値: 934.
【0080】
実施例3
カンプトテシン及び類縁体
以下のカンプトテシン及び類縁体は、ステント又は他の医療装置での使用に適した発明化合物である。同様に米国仮特許出願60/532,231及び60/531,941並びにPCT特許出願PCT/US04/43719及びPCT/US04/43978に記載された類縁体もまた援用される。
【0081】
【化13】

【0082】
化合物32 R=H;R=H
化合物6 R=Et;R1=H
化合物7 R=H;R1=COCH2CH3
化合物8 R=H;R1=COCH2CH2CH3
化合物9 R=H;R1=COCH(CH3)2
化合物10 R=H;R=COCH2CH2CH2CH2CH3
化合物11 R=H;R=COCH2NH-COOtBu
化合物12 R=H;R=COCH2OMe
化合物13 R=H;R=COCH2NH2
化合物14 R=H;R1=COPh
化合物15 R=Et;R=COCH2CH3
化合物16 R=H;R=CO(CH2)4CH3
化合物17 R=Et;R1=CO(CH2)8CH3
化合物18 R=Et;R=CO(CH2)12CH3
化合物19 R=Et;R1=CO(CH2)10CH3
化合物20 R=Et;R1=CO(CH2)16CH3
化合物21 R=Et;R1=CO(CH2)3CH(CH3)CH2CH3
化合物22 R=H;R=CO(CH2)I4CH3
【0083】
実施例4
カンプトテシン 10,20-ジ O ヘキソネート(10)の調製
発明カンプトテシンの一つの合成例は、本明細書中に提供される。丸底フラスコに、10
ヒドロキシカンプトテシン(1.8 g, 4.94 mmol)、無水へキサン酸(50 mL)、及び数滴の濃硫酸を室温で攪拌しながら加えた。反応混合物を、約100 ℃で一晩(〜15時間)攪拌した。室温にまで冷却した後、混合物を少しずつかき混ぜながら300 mLの石油エーテルに注いだ。混合物を約45分間攪拌後、沈殿物を濾過にて捕集し、ジクロロメタン及び5%NaHCO3で分液した。有機層をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濾過して真空で濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してテトラヒドロフラン/ジ
クロロメタン(5 10%)で溶出した、所望の生成物を白色固体(2.4 g, 86%)として得た。1HNMR (500 MHz5 CDC13) 0.83 (t, J=7.5 Hz, 3H), 0.92 (t, J=7.0 Hz, 3H), 0.96 (t, J=7.5 Hz, 3H), 1.31 (m, 4H), 1.40 (m, 4H), 1.64 (m, 2H), 1.79 (m, 2H), 2.13 (dq, J=14.0, 7.5 Hz, 1H), 2.26 (dq, J=14.0, 7.5 Hz, 1H), 2.48 - 2.39 (m, 2H), 2.63 (t, J=7.5 Hz, 2H), 5.25 (d, J = 3.3 Hz, 2H), 5.38 (d, J=17.2, 1H), 5.64 (d, J=17.2, 1H), 7.18 (s, 1H), 7.55 (dd, J=2.5, 9.1 Hz, 1H), 7.66 (d, J=2.5 Hz, 1H), 8.18 (d, J=9.1 Hz, 1H), 8.31 (s, 1H);分析結果(C32H36N2O7 + H)+及び(C32H36N2O7 + Na)+に
関して計算値: 561及び583.実測値: 561及び583.
【0084】
実施例5
ラパマイシン及び類縁体
以下のラパマイシン及び類縁体は、ステント又は他の医療装置での使用に適した発明化合物である。
【0085】
【化14】

【0086】
ラパマイシン:R1=R2=H
化合物23:R1=H,R2=COPh
【0087】
実施例6
コルヒチン及び類縁体
本発明の医療装置は、上記に加えてコルヒチン類縁体を含む。最も好ましいものは、二量体構造である。以下の二量体は、ステント又は他の医療装置での使用に適した発明化合物である。
【0088】
【化15】

【0089】
【化16】

【0090】
【化17】

【0091】
【化18】

【0092】
【化19】

【0093】
実施例7
ゲルダナマイシン及び類縁体
以下のゲルダナマイシン抗生物質、ゲルダナマイシン(geladanamycin)及び類縁体は
、ステント又は他の医療装置での使用に適した発明化合物である。Tianら(Bioorganic and Medicinal Chemistry 2004, 12, 5317-5329)による刊行物に記載されている化合物もまた援用される。
【0094】
【化20】

【0095】
ゲルダナマイシン:R=OMe
17-AAG:R=NHCHCH2
化合物28:R=NH(CH2)6CH3
化合物29:R=N(CH2)5
化合物30:R=NCH2CHCH3
化合物31:R=NHCH(CH3)(CH2)4CH3
【0096】
実施例8
17-メチルアジリジニル-17-デメトキシゲルダナマイシン(30)の調製
本発明のゲルダナマイシンの一つの合成例は、本明細書中に提供される。火炎乾燥した(flame-dried)三口フラスコに、ゲルダナマイシン(425 mg, 0.75 mmol)及び無水THF(40
mL)を加えた。アルゴン雰囲気下、2-メチルアジリジン(719 μL, 4.5 mmol)を溶液に滴
下した。反応混合物を室温で7時間攪拌し、TLCが出発物質の消失を示した。反応混合物をロータリーエバポレーター(rotavapor)で濃縮して乾燥した。得られた褐色油状物を4 mLのイソプロパノールに60 ℃で溶解し、所望の生成物の大部分が上記溶媒から再結晶されるまで最低24時間、室温に保った。グラスピペットで上澄み液を注意深く除去した後、固体を冷却したエチルエーテルで洗浄し、真空で乾燥して、所望の生成物(400 mg, 89.9%)
を得た。1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 8.80 (brs, 1H), 7.27 (s, 1H), 6.93 (d, J= 11.0 Hz, 1H), 6.57 (t, J= 11.1 Hz, 1H), 5.89-5.81 (m, 2H), 5.19 (d, J= 4.4 Hz, 1H), 4.80 (brs, 2H), 4.32 (d, J= 9.6 Hz, 1H), 4.12 (s, 1H), 3.58-3.50 (m, 2H), 3.45-3.40 (m, 1H), 3.35 (s, 3H), 3.28 (s, 3H), 2.78-2.71 (m, 1H), 2.60-2.52 (m, 1H),
2.50-2.40 (m, 2H), 2.33-2.31 (m, 1H), 2.18 (d, J= 5.9 Hz, 1H), 2.02 (s, 3H), 1.60 (s, 3H), 1.46 (t, J= 5.5 Hz, 3H), 1.30-1.26 (m, 1H), 1.02-0.89 (m, 6H), 0.88 (t, J= 6.8 Hz, 1H). ESI-MS:C31H43N3O8+Na (M+Na)+に関して計算: 608. 実測値: 608.
【0097】
実施例9
コンブレタスタチン(COMBRETASTATIN)及び類縁体の調製
以下のコンブレタスタチン(combretastatin)及び類縁体は、ステント又は他の医療装置での使用に適した発明化合物である。コンブレタスタチン及びその類縁体を、合成した。以下は合成した化合物の構造である。同様に、Keira Gaukrongerらによる刊行物(The Journal of Organic Chemistry 2001, 66, 8135-8138)において開示された化合物も援用される。
【0098】
【化21】

【0099】
コンブレタスタチン: R1 = H; R2 = H
化合物33: R1=COOH;R2=H
化合物34: R1=COOH;R2=COCH3
化合物35: R1=H;R2=COCH3
化合物36: R1=H;R2=CO(CH2)4CH3
化合物37: R1=H;R2=CO(CH2)10CH3
化合物38: R1=H;R2=CO(CH2)6(CH2CH=CH)2(CH2)4CH3
化合物39: R=H;R2=CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3
【0100】
実施例10
コンブレタスタチン-ヘキサノイルエステル(36)の調製
本発明のコンブレタスタチンの一つの合成例(combretastatin)は、本明細書中に提供される。火炎乾燥した(flame-dried)丸底フラスコにコンブレタスタチン(combretastatin)(0.19 g, 0.60 mmol)及び無水ジクロロメタン(10 mL)を加えた。トリエチルアミン(0.21 mL5 1.51 mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、混合物を0℃にまで冷却した。ヘキサノイルクロライド(0.13 mL, 0.91 mmol)を添加し、混合物を0℃乃至室温にて一晩攪拌し
、TLCが出発物質の消失を示した。酢酸エチルを加え、混合物を、5% NaHCO3、水で洗浄し
、乾燥し(Na2SO4)、濃縮すると残渣が残った。残渣をシリカゲルでのクロマトグラフィー(溶離溶媒:ヘキサン中の0-20% 酢酸エチル)で精製し、油状物(0.24 g, 97%)として化合物36を得た: 1HNMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.11 (1H, dd, J = 8.51, J = 2.13, H6'), 7.00
(1H, d, J = 2.09, H2'), 6.84 (1H, d, J = 8.51, H5'), 6.51 (2H, s, H2, 6), 6.47 (1H, d, J = 12.23, H1a), 6.44 (1H, d, J = 12.22, H1a'), 3.83 (3H, s, 4-OCH3), 3.80 (3H, s, 4'-OCH3), 3.71 (6H, s, 3,5-OCH3), 2.52 (2H, t, J =7.49, CH2CO), 1.73 (2H, m, CH2CH2CO), 1.37 (4H, m, 2xCH2), 0.91 (3H, t, J = 6.94, CH3); ESI-MS:(C24H3OO6Na)に関して計算値437,実測値437 (MNa+); HPLC 保持時間 28.512分, 99.63%.
【0101】
実施例11
発明化合物の疎水性の増大
血管壁又は他の管若しくは組織の壁へのステントのような装置から放出される薬剤の透過(penetration)及び保持(retention)を増加させるために、いくつかの薬剤を改変して、それらの疎水性を増大させた。増大された疎水性の増大は、保持(retention)の向
上の結果、細胞壁の脂質成分及び標的組織の他の構成因子に対する結合が強固になり、より大きな保持時間が得られる。それ故、例えば、活性(バルーン血管形成術及び血管のステント留置術に続く再狭窄に伴って生じる細胞の増殖及び移動の抑制又は予防における活性)が延長及び改善される。本発明の化合物の疎水性は、移動相としてアセトニトリル(ACN)/水を用いたC18 HPLC カラムからの相対溶出時間によって計測した。より溶出時間が
長ければ、化合物の疎水性がより大きい。同様に、化合物のLogPも計算した。その計算値が大きければ、その化合物の疎水性は大きかった。以下の表は、発明化合物の溶出時間及びlogPを示す。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
条件1 *
移動相
A:アセトニトリル
B:(30% アセトニトリル:70% 75 mM 酢酸アンモニウムバッファー(pH 6.4))及び5mM TBAP 0分から6分にA/B (0:100);続いて6分から20分にA/B (100:0);続いて25分でA/B(0:100)
流速 0.8 mL/min
カラム温度 35℃

条件2*
移動相 A: アセトニトリル
B:水
0分から10分にA/B (50:50);続いて10分から30分にA/B (90:10);続いて40分でA/B (50:50)
流速 1 mL/min
カラム温度 35℃

**カラム温度は、7O℃に設定した
*** LogPは、Molinspiration Property Calculation Services(www.molinspiration.com.)で計算し、ゲルダナマイシン及び類縁体のLogPは、CambridgeSoft CorporationのChemDraw Ultraで計算した。
【0105】
本発明化合物の保持(retention)/溶出時間は、パクリタキセル、ドセタキセル、カンプトテシン、ラパマイシン、コルヒチン及びゲルダナマイシンのような親化合物に比べて
、明らかに疎水性の増加を示す。
【0106】
実施例12
培養液中におけるMX-1 乳房腫瘍細胞での発明疎水性化合物の細胞毒性
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
( )でのデータは、薬剤のナノ粒子アルブミン種を示す。
【0110】
実施例13
組織における残存(PERSISTENCE)のための代用としてのアルブミンに対する化合物の
結合
アルブミンタンパク質に対する発明化合物の結合のKDは、タンパク質及び細胞成分に対する発明化合物の結合アフィニティーの指標として用いられる(以下の表を参照)。より小さな数字が、より大きな結合アフィニティーを示す。
【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
実施例14
ポリマーを用いた装置での薬剤のコーティング
疎水性発明薬剤、例えば、ゲルダナマイシン類縁体、17-AAG、ラパマイシン類縁体、タキサン類縁体、コルヒチン類縁体、又はカンプトテシン類縁体の溶液を、アセトン及びメチレンクロライド中で調製した。この溶液を、ポリマー担体溶液(carrier solution)と共に混合し、薬剤の最終濃度が0.001重量%乃至30重量%の範囲になるようにした。ポリマ
ー/薬剤混合物は、ステントの表面にいずれの浸漬被覆(dip-コーティング)によってで
も塗布され、その溶媒を蒸発させ、ポリマー内に薬剤がトラップされた膜を残した。
【0114】
実施例15
ポリマーを用いない装置での薬剤のコーティング
医療装置(例えば、血管内ステント)を、有機溶媒(例えば、アセトン、メチレンクロライド、酢酸エチル又は他の揮発性溶媒)中の、0.001重量%乃至飽和の範囲のゲルダナ
マイシン類縁体、17-AAG、ラパマイシン類縁体、タキサン類縁体、又はカンプトテシン類縁体の溶液に浸潤し、溶液を当該装置に十分な時間接触させた。この装置を取り除き、その後、溶媒を蒸発させた。任意に、溶媒を蒸発させた後、ポリマーの溶液(これは、上記に定義した任意のものからも選ばれる)は、上記に説明したようにステントに塗布され得る。ポリマーのこの外層は、薬剤の放出に拡散律速として作用した。
【0115】
実施例16
吸収性ポリマーを用いたコーティング
1.58の固有粘度(ヘキサフルオロイソプロパノール [HFIP]中25 ℃で0.1 g/dL)を有する、45:55モル百分率のε´-カプロラクトン及びグリコリドのコポリマーベースの吸収性エラストマーを、アセトン中での重量5パーセント(5%)及び独立して1,1,2-トリクロロエタン中での重量15パーセント(15%)で溶解した。エラストマーの合成は、米国特許第5,468,253号に記載されており、これは本明細書中に参照文献として援用される。他の適切なポリマーは、上記に述べたように、同様に利用され得る。穏やかな加熱は、溶解速度を増加させるために用いられ得る。高濃度コーティングは、医薬品が存在する状態又はしない状態で製剤化され得る。当該ポリマーだけの初めの下塗は、ステントが、0.032インチ(0.81
mm)の直径の心棒に置かれて、5パーセント(5%)溶液での浸漬被覆によって、Guidant Multilink 2.5 x 15mm ステントに塗られる。心棒は、ステントと共に、浸漬浴(dip bath
)から除かれ、コーティングが乾く前に、ステントは、心棒の長さに沿って一方向に動かされる。この拭き取り動作は、ステントと心棒の間にトラップされたコーティングに対し、大きく剪断される。大きな剪断速度により、ステントが形成された管の形にはめる溝を通してコーティングを強制する。この拭き取り行動は、溝の外のコーティングの強制及びそれらをきれいに保つ役割をする。"準備されたステント"は、室温にて風乾される。初めの層は、約100マイクログラムのコーティングである。
【0116】
1-2時間の風乾後、ステントを0.0355インチ(0.9 mm)のきれいな心棒に再度取り付け、
二度目の、濃い塗料溶液に浸した。これは、薬剤が無いか、或いはコーティング溶液の重量の約15パーセント(15%)ポリマーの添加において、薬剤重量の約6パーセントを含有
することができる。浸漬及び拭き取りの工程は、繰り返される。最終のコーティングされたステントは、12時間風乾し、続いて60℃の真空オーブン(30 in Hg vaccum)に24時間
置き、乾燥する。この方法は、約270マイクログラムのポリマー及び約180マイクログラムの薬剤と共にコーティングされたステントをもたらす。
【0117】
本明細書中に引用される、刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参照文献は、それぞれの参照文献が、個々に及び具体的に参照文献に援用されていることが示されて、及びこの全体に記載されているのと同程度に、参照文献によって援用される。
【0118】
用語「ある(a)」及び「ある(an)」並びに「当該(the)」並びに本発明に記載の文脈における同様の指示詞の使用(特に以下の請求項において)は、本明細書中に特段の指示
なき限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈される。用語「成る(comprising)」「有する(having)」「挙げられる(including
)」及び「含む(containing)」は、特に言及しない限り、オープンエンドの用語として解釈される(即ち、「が挙げられるが、これらに限定されない(including, but not limited to)」を意味)。本明細書中における数値の範囲の列挙は、ただ単に、範囲に収まっ
ているそれぞれの分離した数値を個々に指示する簡潔な表現の方法としての役割を果たす意図であり、本明細書中特段の指示なき限り、それぞれの分離した数値は、本明細書中、本明細書中に個々に列挙したかのように組み込まれる。本明細書中に記載の方法は、本明細書中特段の指示なき限り又は特に文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順番で行い得る。特に主張しなければ、いかなる及び全ての例、又は、例となる言い回し(例、"例えば(such as)")の使用は、本明細書中、本発明をより十分に例示するためだけの意
図であり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に係らない任意の構成要件が、本発明の実施に必須のものを示唆するものとして、解釈されるべきではない。
【0119】
本発明の好ましい具体的態様は、本明細書中に記載されている(本発明を実施するための発明者に知られている最良の態様を含む。)。好ましい具体的態様の変形は、前述の記載を読むとすぐに当業者に明らかとなり得る。発明者は、当業者がこのような変形を適切なものとして用いることを予想し、発明者は、本明細書に具体的に記載されたものとは別のやり方で本発明が実施されることを意図する。それ故、本発明は、適用法によって許容されているように本明細書に添付の特許請求の範囲において列挙された要旨のすべての変更物及び均等物を包含する。さらに、本明細書中に特段の指示なき限り又は明らかに文脈に矛盾しない限り、そのすべての可能な変形での上記構成要件のいかなる組み合わせも、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、式:
【化1】


[式中、R1が、H又はAcであり;R2が、H、COPh又はCO(CH2)CH3であり;かつ、R3が、Ph又はOtBuであり、タキサンの類縁体が、パクリタキセルでもドセタキセルでもはない]の該タキサンの疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、前述の薬剤が、前記装置の本体にコーティングされているか、該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医療装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項4】
請求項2の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項5】
請求項3の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物から
成る群より選ばれる、装置。
【請求項6】
請求項3の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項7】
請求項6の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項8】
請求項6の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項9】
請求項7の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で前記コーティングに存在している、装置。
【請求項10】
請求項8の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物から
成る群より選ばれる、装置。
【請求項11】
請求項8の装置であって、前記装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項12】
医療装置であって、式:
【化2】

[式中、Rは、OH、OCOPh又はOCO(CH2)4CH3である。]か、
又は
【化3】

[式中、Rは、OH、OCOPh又はOCO(CH2)4CH3である。]のタキサンの疎水性類縁体を含む薬剤を含有する医療装置。
【請求項13】
請求項12の装置であって、前述の薬剤が、前記装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項14】
請求項12の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項15】
請求項13の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項16】
請求項14の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項17】
請求項14の装置であって、前記装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項18】
請求項17の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項19】
請求項17の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組
み込まれている、装置。
【請求項20】
請求項18の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項21】
請求項19の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項22】
請求項19の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項23】
医療装置であって、式:
【化4】

[式中、Rは、H、メチル、又はエチルであり;かつR1は、H又はCO(X)である(式中、Xは、C2-C18アルキル、フェニル、CH2NHCO2tBu、CH2OMe、CH2NH2である)]のカンプトテシン
又はカンプトテシンの疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置。
【請求項24】
請求項23の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項25】
請求項23の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項26】
請求項24の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で前記コーティングに存在している、装置。
【請求項27】
請求項25の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項28】
請求項25の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項29】
請求項28の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項30】
請求項28の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項31】
請求項29の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項32】
請求項30の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項33】
請求項30の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項34】
医療装置であって、式:
【化5】

[式中、R1が、Hであり、かつR2が、H又はCOPhである]のラパマイシン又はラパマイシンの疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置。
【請求項35】
請求項34の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項36】
請求項34の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項37】
請求項35の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項38】
請求項36の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項39】
請求項36の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジ
メチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項40】
請求項39の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項41】
請求項39の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項42】
請求項40の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項43】
請求項41の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項44】
請求項41の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項45】
医療装置であって、式:
【化6】

[式中、Lは、
【化7】

である]の二量体を含有する薬剤を含む、医療装置。
【請求項46】
請求項45の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項47】
請求項45の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項48】
請求項46の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項49】
請求項47の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項50】
請求項47の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項51】
請求項50の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項52】
請求項50の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項53】
請求項51の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項54】
請求項52の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
らなる群より選ばれる、装置。
【請求項55】
請求項52の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項56】
医療装置であって、式:
【化8】

[式中、Rが、OMe、NHCHCH2、NH(CH2)6CH3、N(CH2)5、NCH2CHCH3、又はNHCH(CH3)(CH2)4CH3である]のゲルダナマイシン又はゲルダナマイシンの疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置。
【請求項57】
請求項56の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項58】
請求項56の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項59】
請求項57の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項60】
請求項58の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項61】
請求項58の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項62】
請求項61の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項63】
請求項61の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項64】
請求項62の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項65】
請求項63の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項66】
請求項63の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項67】
医療装置であって、式:
【化9】

[式中
(a):R1は、Hであり;R2は、Hである
(b):R1は、CO2Hであり;R2は、Hである
(c):R1は、CO2Hであり;R2は、COCH3である
(d):R1は、Hであり;R2は、COCH3である
(e):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)4CH3である
(f):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)10CH3である
(g):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)6(CH2CH=CH)2(CH2)4CH3である
(h):R1は、Hであり;R2は、CO(CH2)7CH=CH(CH2)7CH3である]のコンブレタスタチン又はコンブレタスタチンの疎水性類縁体を含有する薬剤を含む、医療装置。
【請求項68】
請求項67の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項69】
請求項67の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項70】
請求項68の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項71】
請求項69の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項72】
請求項69の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。
【請求項73】
請求項72の装置であって、前述の薬剤が、該装置の本体にコーティングされているか、又は該装置の内部に組み込まれている、装置。
【請求項74】
請求項72の装置であって、前記薬剤が、ポリマーの存在する該装置の表面又は内部に組み込まれている、装置。
【請求項75】
請求項73の装置であって、前述の類縁体が、前述のコーティングの重量に関して、約0.0001%乃至約30%の量で該コーティングに存在している、装置。
【請求項76】
請求項74の装置であって、前述のポリマーが、ラクトンベースのポリエステル、ラクトンベースのコポリエステル;ポリアンハイドライド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスファゼン;ポリ(エーテルエステル)コポリマー、及びそのようなポリマーの混合物か
ら成る群より選ばれる、装置。
【請求項77】
請求項74の装置であって、該装置が、ステントであって、かつ前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサン;ポリ(エチレン)ビニルアセテート;ポリ(ヒドロキシ)エチルメチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン;ポリテトラフルオロエチレン;及びセルロースエステルから成る群より選ばれる、装置。

【公開番号】特開2013−34872(P2013−34872A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−202097(P2012−202097)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2007−556360(P2007−556360)の分割
【原出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】