説明

医薬および動物薬として適切な塩

【課題】モノアミン再取り込み阻害剤として活性を示し、その半クエン酸塩がセロトニン、ノルアドレナリンの阻害が関係する障害たとえば尿失禁、痛み、線維筋痛、ADHDおよびうつ病の処置に有効である医薬および動物薬として許容できる改良された塩およびその組成物を提供する。
【解決手段】2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドおよびその半クエン酸塩であり、CuKα線(波長=1.5406Å)を用いて測定した際に12.9、15.0、15.2、18.4および20.0°の2θ±0.1°に主ピークを示す粉末X線回折図(PXRD)パターンを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの医薬および動物薬として許容できる改良された塩およびその組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドは、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取込み阻害薬としての活性を示し、したがって多様な療法領域で有用性をもつ。たとえば、この化合物はモノアミントランスポーター機能の調節が関係する障害、より具体的にはセロトニンまたはノルアドレナリンの再取込み阻害が関係する障害の処置に有用である。さらにこの化合物は、セロトニンおよびノルアドレナリン両方の阻害が関係する障害、たとえば尿失禁に有用である。さらに、この化合物は、ノルアドレナリンまたはセロトニンのうちいずれか一方の再取込みを他方と比較して優先的に阻害することが望ましいと思われる障害、たとえば痛み、線維筋痛、ADHDおよびうつ病の処置に有用である。
【0003】
国際特許出願公開番号WO2004/110995には、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イル-ベンズアミドを含むモノアミン再取込み阻害薬が開示されている。今回、予想外に2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩が、医薬および動物薬として許容できる配合物の調製に適切なものとなる多数の利点をもつことが見いだされた。したがってこの特定の形の塩は、医薬および動物薬として許容できる配合物の調製に特に適切なものとなる良好な配合特性の特異な組合わせをもつことが見いだされた。これらの多数の特性については、後記の表1、2Aおよび2B中のデータに関連して考察する。
【0004】
本発明によれば、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩が提供される。好ましい態様において、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は、Cu Kα1 X線(波長=1.540562Å)を用いることにより12.9、15.0、15.2、18.4および20.0°(2θ±0.1°)に主2θピークを示す粉末X線回折図(PXRD)パターンを特徴とする。この態様はさらに、走査速度20℃/分で213℃に吸熱ピークを示す示差走査熱量測定(DSC)トレースを特徴とする。
【0005】
本発明の他の態様においては、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を、医薬用または動物薬用として許容できる希釈剤またはキャリヤーと共に含む、医薬または動物薬として許容できる組成物が提供される。
【0006】
特に本発明は、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を賦形剤と共に含む錠剤配合物を提供する。好ましい配合物は、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩、圧縮助剤、たとえば微結晶性セルロース、錠剤に光沢を付与するための添加剤、たとえば無水二塩基性リン酸カルシウム、崩壊剤、たとえばグリコール酸デンプンナトリウム、および滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムを含有する。さらに本発明は、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を賦形剤と混合したものを含むカプセル配合物を提供する。好ましい配合物は、この半クエン酸塩、不活性希釈剤、前記の崩壊剤および滑沢剤を含有する。本発明はさらに、非経口投与用の無菌水性液剤の状態の2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を提供する。好ましくは、そのような液剤は10〜40容量%のプロピレングリコールを含有し、かつ好ましくは、溶血を避けるのに十分な、たとえば約1% w/vの塩化ナトリウムをも含有する。
【0007】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は、ヒトを含めた哺乳類において薬理活性をもつので有用である。したがってこれは、モノアミントランスポーター機能の調節が関係する障害、より具体的にはセロトニンまたはノルアドレナリンの再取込み阻害が関係する障害、特にセロトニンおよびノルアドレナリンの再取込み阻害が関係する障害の治療または予防に有用である。
【0008】
したがって、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は、下記の処置に有用である:尿失禁、たとえば真性ストレス性失禁(GSI)、ストレス性尿失禁(SUI)、または高齢者における尿失禁;過剰反応性膀胱(OAB):特発性不安定排尿筋、神経障害(たとえばパーキンソン病、多発性硬化症、脊髄損傷および卒中)に伴う排尿筋過剰反応、および膀胱排出閉塞(たとえば良性前立腺肥大(BPH)、尿道の狭窄(stricture、stenosis))に伴う排尿筋過剰反応を含む;夜尿症;上記状態の合併による尿失禁(たとえば過剰反応性膀胱に関連するストレス性失禁);ならびに下部尿路症状、たとえば頻尿および尿しぶり。用語OABには湿性OABおよび乾性OABの両方が含まれるものとする。
【0009】
前記の薬理活性からみて、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は、うつ病の処置にも有用である:たとえば大うつ病、再発性うつ病、単一エピソードうつ病、下位症候群(subsyndromal)症候性うつ病、癌患者のうつ病、パーキンソン病患者のうつ病、心筋梗塞後うつ病、小児性うつ病、児童虐待誘発性うつ病、不妊女性におけるうつ病、産後うつ病、月経前不快感、および不機嫌老人症候群(grumpy old man syndrom)。
【0010】
前記の薬理活性からみて、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は、認知障害の処置にも有用である:たとえば認知症、特に変性性認知症(老人性認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびクロイツフェルト-ヤコブ病を含む)および血管性認知症(多発梗塞性認知症を含む)、ならびに頭蓋内空間を占める病変、外傷、感染症および関連状態(HIV感染症を含む)、代謝、毒素、食欲不振症およびビタミン欠乏症に関連する認知症;老化に伴う軽度の認知障害、特に加齢性記憶障害(AAMI)、健忘性障害および加齢性認知衰退(ARCD);精神障害、たとえば統合失調症および躁病;不安障害、たとえば広汎性不安障害、恐怖症(たとえば広場恐怖症、社会恐怖症および単純恐怖症)、パニック障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、混合型不安-うつ病;人格障害、たとえば回避的人格障害および多動性注意欠陥障害(ADHD);性的機能障害、たとえば早漏、雄性勃起機能障害(MED)および雌性性的機能障害(FSD)(たとえば雌性性的覚醒障害(FSAD));月経前症候群;季節感染性障害(SAD);摂食障害、たとえば神経性食欲不振症および神経性食欲異常亢進;肥満症;食欲低下;薬物または乱用物質に対する嗜癖、たとえばニコチン、アルコール、コカイン、ヘロイン、フェノバルビタールおよびベンゾジアゼピン類に対する嗜癖による化学物質依存症;離脱症候群、たとえば上記の化学物質依存症から起きる可能性のあるもの;頭痛、たとえば片頭痛、群発性頭痛、慢性発作性片頭痛、血管障害関連の頭痛、化学物質依存症に関連する頭痛または化学物質依存症による離脱症候群に関連する頭痛、および緊張型頭痛;痛み;パーキンソン病、たとえばパーキンソン病における認知症、神経弛緩薬誘発性パーキンソン症候群および遅発性ジスキネジー;内分泌障害、たとえば高プロラクチン血症;血管痙攣、たとえば脳血管における血管痙攣;小脳性運動失調症;ツーレット症候群;抜毛癖;盗癖;情動不安定;病的号泣;睡眠障害(脱力発作);およびショック。
【0011】
上記状態のうち、ADHDは特に重要である。ADHDの診断は臨床評価に基づく(M. Dulcan, et al. J Am Acad Child Adolesc Psychaitry, Oct. 1997, 36(10 Suppl), 85S-121S; 米国国立衛生研究所, 1998)。”ADHDの本質的特色は、匹敵するレベルの発達状態にある個体に一般にみられるものより高頻度かつ重篤である持続的な注意欠陥および/または活動亢進-衝動のパターンである”(精神障害の診断および統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-IV)、米国精神医学会、ワシントンD.C., 1994)。ADHDと診断するためには、患者は障害を引き起こすADHD症状を7歳以前に示さなければならなず、かつ症状は少なくとも2つの設定(たとえば学校[または職場]と家庭)で、6カ月以上発現しなければならない(DSM-IVを参照)。
【0012】
前記の薬理活性からみて、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は、下記のものを含めた他の多数の状態または障害の処置にも有用である:低血圧症;消化管障害(運動性および分泌の変化を伴うもの)、たとえば過敏性腸症候群(IBS)、腸閉塞(たとえば術後腸閉塞および敗血症に際しての腸閉塞)、胃不全麻痺(たとえば糖尿病性胃不全麻痺)、消化性潰瘍、胃食道逆流疾患(GORD、またはそれの同義語GERD)、鼓腸、ならびに他の腸機能障害、たとえば消化不良(たとえば非潰瘍性消化不良(NUD))および非心臓性胸痛(NCCP)。
【0013】
前記の薬理活性からみて、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は、痛みの処置にも有用である。
生理的痛みは、外部環境からの潜在的な傷害性刺激による危険性を警告するための重要な防御機序である。この系は特異的な一組の一次感覚ニューロンにより作動し、末梢伝達機序を介した侵害刺激により活性化される(概説に関してはMillan, 1999, Prog. Neurobiol., 57, 1-164を参照)。これらの感覚線維は侵害受容器として知られ、伝導速度の遅い特徴的な小径軸索である。侵害受容器は侵害刺激の強さ、持続時間および質をエンコードし、かつ脊髄へ局在組織化された突起により刺激の位置をエンコードする。侵害受容器は侵害受容神経線維上にあり、これには2つの主タイプ、すなわちA-デルタ線維(有髄)とC線維(無髄)がある。侵害受容器入力により発生した活動は、後角における複雑な処理の後、直接に、または脳幹リレー核を介して、視床腹側へ伝達され、次いで皮質へ伝達されて、ここで痛みの感覚が発生する。
【0014】
痛みは一般に急性または慢性として分類される。急性疼痛は突然開始し、短期的である(通常は24時間以下)。これは通常は特定の原因、たとえば特定の傷害を伴い、鋭くかつ重篤である場合が多い。これは、外科処置、歯科医療、挫傷または捻挫から生じる特定の傷害後に起きる可能性をもつ種類の痛みである。急性疼痛は一般に、持続的な精神応答をもたらさない。これに対し、慢性疼痛は長期的な痛みであり、一般に3カ月間以上持続し、精神的および情動的に著しい問題をもたらす。慢性疼痛の一般的な例は神経障害性疼痛(たとえば痛みを伴う糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛)、手根管圧迫症候群、背痛、頭痛、癌性疼痛、関節炎性疼痛、および術後慢性疼痛である。
【0015】
疾患または外傷により身体組織に対する実質的な傷害が起きると、侵害受容器の活性化特性が変化し、末梢では局所的に傷害の周囲で、また中枢ではそれらの侵害受容器の終末で、感受性が増大する。これらの作用によって痛みの感覚が増強する。急性疼痛の場合、これらの機序は防御行動を促進するのに役立ち、これにより修復プロセスの発生がより良好になる。普通の想定は、傷害が治癒した際に感受性が正常に戻ることであろう。しかし、多くの慢性疼痛状態においてこの感受性亢進は治癒プロセスよりはるかに長時間持続する。これは神経系の傷害による場合が多い。この傷害がしばしば、適応不良および異常活動に関連する感覚神経線維異常をもたらす(Woolf & Salter, 2000, Science, 288, 1765-1768)。
【0016】
患者の症状に不快かつ異常な感受性の特徴がみられる場合に臨床疼痛がある。患者はかなり異質になる傾向があり、多様な疼痛症状を示す可能性がある。そのような症状には以下のものが含まれる:1)鈍い、焼けつくような、または刺すような自然痛;2)有害刺激に対する強調された疼痛反応(痛覚過敏);および3)普通は無害な刺激により発生する痛み(異痛−Meyer et al., 1994, Textbook of Pain, 13-44)。多様な形の急性および慢性疼痛を伴う患者が類似の症状を示すけれども原機序は異なるという可能性があり、したがって異なる処置方式が必要な場合がある。したがって、痛みは病態生理の相異に従って、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛および神経障害性疼痛を含めた多数の異なるサブタイプに分けることもできる。
【0017】
侵害受容性疼痛は、組織傷害により、または傷害を引き起こす可能性のある強い刺激により誘発される。傷害部位の侵害受容器による刺激伝達によって疼痛求心神経が活性化され、それらの末端レベルにある脊髄のニューロンを活性化する。次いでこれが脊髄路内をリレーされて脳に達し、ここで痛みが知覚される(Meyer et al., 1994, Textbook of Pain, 13-44)。侵害受容器の活性化により2つのタイプの求心神経線維が活性化される。有髄A-デルタ線維は高速度で伝達し、鋭い刺痛の感覚に関与する。一方、無髄C線維はより低速度で伝達し、鈍痛またはうずく痛みを運搬する。中等度ないし重篤な急性侵害受容性疼痛は、中枢神経系外傷、挫傷/捻挫、火傷、心筋梗塞および急性膵臓炎、術後疼痛(あらゆるタイプの外科処置に伴う痛み)、外傷後疼痛、腎石疝痛、癌性疼痛ならびに背痛による痛みの確実な特徴である。癌性疼痛は、慢性疼痛、たとえば腫瘍関連疼痛(たとえば骨痛、頭痛、顔面痛または内臓痛)または癌療法関連の痛み(たとえば化学療法症候群、術後慢性疼痛症候群または放射線療法後症候群)の場合もある。癌性疼痛は、化学療法、免疫療法、ホルモン療法または放射線療法に応答して起きる場合もある。背痛は、椎間板のヘルニアもしくは破断、または異常な腰椎間関節、仙腸骨関節、傍脊髄筋もしくは後縦靭帯が原因の可能性もある。背痛は自然に消散する可能性があるが、12週間以上持続する若干の患者では慢性状態になり、特に衰弱をもたらす可能性がある。
【0018】
神経障害性疼痛は、現在、神経系の原発性病変または機能不全により発症または発現する痛みと定義されている。神経損傷は外傷および疾患により起きる可能性があり、したがって用語’神経障害性疼痛’には多様な病因をもつ多数の障害が含まれる。これらには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:末梢神経障害、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、背痛、癌性神経障害、HIV性神経障害、幻想肢痛、手根管圧迫症候群、卒中後中枢性疼痛、ならびに慢性アルコール中毒症、甲状腺機能低下症、尿毒症、多発性硬化症、脊髄損傷、パーキンソン病、てんかんおよびビタミン欠乏症に伴う痛み。神経障害性疼痛は防御の役割をもたないので、病的である。それは元の原因が消失したかなり後に存在する場合がしばしばあり、一般に数年間持続し、患者の生活の質を著しく低下させる(Woolf and Mannion, 1999, Lancet, 353, 1959-1964)。神経障害性疼痛の症状は同じ疾患を伴う患者間ですらしばしば異質であるので、処置するのは困難である(Woolf & Decosterd, 1999, Pain Supp., 6, S141-S147; Woolf and Mannion, 1999, Lancet, 353, 1959-1964)。それらには、自然痛(連続的な可能性がある)、および発作性または異常誘発性疼痛、たとえば痛覚過敏(有害刺激に対して増強された感受性)および異痛(普通は無害な刺激に対する感受性)が含まれる。
【0019】
炎症プロセスは一連の複雑な生化学的および細胞性の事象であり、組織傷害または異物の存在に応答して活性化され、その結果、腫脹や痛みが生じる(Levine and Taiwo, 1994, Textbook of Pain, 45-56)。関節炎性疼痛は最も一般的な炎症性疼痛である。リウマチ性疾患は、先進国において最も一般的な慢性炎症状態のひとつであり、慢性関節リウマチは廃疾の一般的な原因である。慢性関節リウマチの正確な病因は分かっていないが、現在の仮説では遺伝的要因と微生物学的要因の両方が重要であることが示唆される(Grennan & Jayson, 1994, Textbook of Pain, 397-407)。ほぼ1600万人の米国人が症候性骨関節炎(OA)または変性性関節疾患を伴うと推定され、それらの大部分は60歳以上である。これは集団の高齢化に伴って4000万人に増加して、膨大な規模の公衆健康問題になると予想されている(Houge & Mersfelder, 2002, Ann Pharmacother., 36, 679-686; McCarthy et al., 1994, Textbook of Pain, 387-395)。骨関節炎患者の大部分は痛みを伴うため、医療措置を求めている。関節炎は精神社会的機能および身体機能に対して著しい影響をもち、老後の廃疾の主因であることが知られている。強直性脊椎炎も脊椎および仙腸骨関節の関節炎の原因となるリウマチ性疾患である。それは、生涯を通して起きる間欠的な背痛エピソードから、脊椎、末梢関節その他の身体臓器を攻撃する重篤な慢性疾患にまで及ぶ。
【0020】
他のタイプの炎症性疼痛は内臓痛であり、これには炎症性腸疾患(IBD)に伴う痛みが含まれる。内臓痛は、腹腔の臓器を含めた内臓に関連する痛みである。これらの臓器には、生殖器、脾臓、および一部の消化器系が含まれる。内臓に関連する痛みは、消化器系内臓痛と非消化器系内臓痛に分けられる。痛みを引き起こす一般にみられる消化器(GI)障害には、機能性腸障害(FBD)および炎症性腸疾患(IBD)が含まれる。これらの消化器障害には、現在では適度にしか制御されていない広範な疾患状態が含まれる。これには、FBDに関して胃-食道逆流症、消化不良症、過敏性腸症候群(IBS)および機能性腹痛症候群(FAPS)、ならびにIBDに関してクローン病、回腸炎および潰瘍性結腸炎が含まれ、これらはすべて通常は内臓痛を発生する。他のタイプの内臓痛には、月経困難症、膀胱炎および膵臓炎に伴う痛み、ならびに骨盤痛が含まれる。
【0021】
あるタイプの痛みは複数の病因をもち、したがって1より多い領域に分類できることを留意すべきである。たとえば背痛および癌性疼痛は、侵害受容性と神経障害性の両方の要素をもつ。
【0022】
他のタイプの痛みには下記のものが含まれる:
・筋-骨格障害から生じる痛み:筋痛、線維筋痛、脊椎炎、血清陰性(非リウマチ性)関節障害、非関節性リウマチ、異栄養性障害、グリコーゲノリシス、多発性筋炎および化膿性筋炎を含む;
・心臓性および血管性疼痛:アンギナ、心筋梗塞、僧帽弁狭窄症、心外膜炎、レイノー現象、スクレロドーマおよび骨格筋虚血により起きる痛みを含む;
・頭痛、たとえば片頭痛(前兆を伴う片頭痛および前兆を伴わない片頭痛)、群発性頭痛、緊張型頭痛、混合型頭痛、および血管障害関連の頭痛;
・口顔痛:歯痛、耳痛、灼熱口症候群および側頭下顎筋筋膜疼痛を含む。
【0023】
特に関心のある障害には、尿失禁、たとえば混合型失禁、GSIおよびSUI;痛み;線維筋痛;ADHDおよびうつ病が含まれる。
本発明はさらに、ヒトにおいて尿失禁、痛み、線維筋痛、ADHD、またはうつ病の処置に使用するための、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を提供する。より具体的には、本発明は、下記の処置に使用するための、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を提供する:尿失禁、たとえば真性ストレス性失禁(GSI)、ストレス性尿失禁(SUI)、または高齢者における尿失禁;過剰反応性膀胱(OAB):特発性不安定排尿筋、神経障害(たとえばパーキンソン病、多発性硬化症、脊髄損傷および卒中)に伴う排尿筋過剰反応、および膀胱排出閉塞(たとえば良性前立腺肥大(BPH)、尿道の狭窄(stricture、stenosis))に伴う排尿筋過剰反応を含む;夜尿症;上記状態の合併による尿失禁(たとえば過剰反応性膀胱に関連するストレス性失禁);ならびに下部尿路症状、たとえば頻尿および尿しぶり。用語OABには湿性OABおよび乾性OABの両方が含まれるものとする。本発明はさらに、動物、特にイヌにおいて尿失禁の処置に使用するための、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を提供する。
【0024】
本発明は、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドを不活性溶媒中でクエン酸と反応させ、半クエン酸塩を回収することにより、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を製造する方法をも提供する。好ましい不活性溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)である。
【0025】
本発明には、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩のすべての適切な同位体変異形も含まれる。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩の同位体変異形は、少なくとも1個の原子が、同一原子番号をもつけれども自然界で通常みられる原子質量と異なる原子質量をもつ原子で交換されたものと定義される。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩に取り込ませることができる同位体の例には、水素、炭素、窒素および酸素の同位体、たとえばそれぞれ2H、3H、13C、14C、15N、17Oおよび18Oが含まれる。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩の特定の同位体変異形、たとえば3Hまたは14Cなどの放射性同位体を取り込ませたものは、薬物および/または基質の組織分布試験に有用である。トリチウム化、すなわち3H、および炭素-14、すなわち14C同位体は、それらの製造しやすさおよび検出適性のため特に好ましい。さらに、重水素、すなわち2Hによる置換は、より大きな代謝安定性から生じる療法上のある利点、たとえばインビボ半減期の延長または投与必要量の減少をもたらし、したがって状況によっては好ましい場合がある。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩の同位体変異形は、一般にたとえば後記の例および製造例に記載した常法により、適切な試薬の適宜な同位体変異形を用いて製造できる。
【0026】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドはそれの遊離塩基形でも実際に配合のために有効ではあるが、医薬用および/または動物薬用として許容できる酸の塩形で投与するのが最良である。医薬的に許容できる可能性のある幾つかの異なる塩形の2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドが同定された。特に、医薬用および/または動物薬用として許容できるアニオンを含有する酸付加塩、たとえば塩酸塩、臭化水素酸塩、半-エタン-1,2-ジスルホン酸塩(半エジシル酸塩)、エタン-1,2-ジスルホン酸塩(エジシル酸塩)、フマル酸塩、D-酒石酸塩、L-酒石酸塩、酢酸塩、および半硫酸塩が適切であることが認められた。
【0027】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの医薬用および/または動物薬用として許容できる塩が容易に配合されるには、下記の4つの物理化学的基準を満たさなければならない:(1)良好な溶解性;(2)適切な安定性;(3)非吸湿性;(4)医薬用または動物薬用配合物としての良好な加工適性。前記に概説した多くの塩類がこれらのうちのある基準を満たすが、それらをすべて満たし、かつ要求される化学的および物理的安定性を共に備えたものは、好ましい半クエン酸塩以外にはないことが見いだされた。こうして、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩は2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの医薬配合物の調製に特に適切なものとなる多数の利点をもつことが認められた。本発明化合物の方が配合上の利点をもつと認められた塩類には、下記のものが含まれる:塩酸塩、臭化水素酸塩、半エジシル酸塩、エジシル酸塩、フマル酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、酢酸塩および半硫酸塩。半エジシル酸塩は、国際特許出願PCT/ IB05/ 003643 (WO 2006/056884として2006年6月1日に公開)の例1に開示された方法に従って製造できる。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの他の塩類は、酸付加塩の製造に関して当技術分野で既知の方法に従って、または後記(例3〜11)に詳述する方法に従って製造できる。たとえば、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの他の塩類は、この化合物の溶液と目的とする酸または塩基の溶液を適宜混合することによって容易に製造できる。そのような他の塩類は、溶液から沈殿して濾過により回収できるか、あるいは溶媒の蒸発により回収することができる。
【0028】
表1は、非吸湿性および非溶媒和性を含めて、本発明に従って製造した塩形[例2]の特定の配合特性の有利な組合わせを示す。
【0029】
【表1】

【0030】
後記のPXRDにより測定した結晶化度;
図4および5に関して後記に述べる方法に従ってDSCにより測定した融点;
TA Instruments Hi-Res TGA 2950計測器を用いて開放白金皿内の6.3mgの試料の重量減少を測定する熱重量分析(TGA)により評価した溶媒和/水和。炉パージ用窒素ガスを用いて試料を20℃/分で周囲温度から300℃まで加熱した;
Surface Measurement Systems Ltdの動的蒸気収着装置DVS-1型を用いて評価した吸湿性。30℃で200cc/分の窒素ガス流を用いて分析を行った。水の収着と脱着を0〜90%の相対湿度(RH)範囲で15% RH間隔を用いて測定した。曝露は、各湿度で最低2時間、または重量変化率が0.0003%/分未満になるまで(平均して10分間以上)であった。試料重量は12.6mgであった。試料をCAHN D-200、7カ所デジタル記録式はかり(この装置の一体部品)により秤量した。
【0031】
表2Aおよび2Bは、本発明に従った塩形[例2A]の特定の配合特性を他の塩形と比較した実験室規模での試験の結果を示す。
【0032】
【表2】

【0033】
結晶性、熱的事象および溶媒和/水和を前記に示した方法(表1)に従って測定した。
表2Aおよび2Bは、試験したすべての塩類のうち2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩のみが有利な組合わせの特性を示すことを表わす:すなわち目的とする結晶性;単一の鋭い吸熱;および溶媒和していないこと。加工しやすいためには高い融点ほど望ましいので、この熱的結果は有利である。
【0034】
本発明化合物は単独で、または組合わせ療法の一部として投与できる。組合わせ療法薬を投与する場合、有効成分を逐次、または別個の医薬配合物もしくは組合わせ医薬配合物中において同時に、投与することができる。
【0035】
補助療法に適切な薬剤の例には、下記のものが含まれる:
・オピオイド系鎮痛薬、たとえばモルフィン、ヘロイン、ヒドロモルホン(hydromorphone)、オキシモルホン(oxymorphone)、レボルファノール(levorphanol)、レバロルファン(levallorphan)、メサドン(methadone)、メペリジン(meperidine)、フェンタニル(fentanyl)、コカイン、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシコドン(oxycodone)、ヒドロコドン(hydrocodone)、プロポキシフェン(propoxyphene)、ナルメフェン(nalmefene)、ナロルフィン(nalorphine)、ナロキソン(naloxone)、ナルトレキソン(naltrexone)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、ナルブフィン(nalbuphine)またはペンタゾシン(pentazocine);
・非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、たとえばアスピリン、ジクロフェナク(diclofenac)、ジフルシナール(diflusinal)、エトドラク(etodolac)、フェンブフェン(fenbufen)、フェノプロフェン(fenoprofen)、フルフェニサール(flufenisal)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、インドメタシン(indomethacin)、ケトプロフェン(ketoprofen)、ケトドラク(ketorolac)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、メフェナム酸(mefenamic acid)、メロキシカム(meloxicam)、ナブメトン(nabumetone)、ナプロキセン(naproxen)、ニメスリド(nimesulide)、ニトロフルルビプロフェン(nitroflurbiprofen)、オルサラジン(olsalazine)、オキサプロジン(oxaprozin)、フェニルブタゾン(phenyl butazone)、ピロキシカム(piroxicam)、スルファサラジン(sulfasalazine)、スリンダク(sulindac)、トルメチン(tolmetin)またはゾメピラク(zomepirac);
・バルビツレート系鎮静薬、たとえばアモバルビタール(amobarbital)、アプロバルビタール(aprobarbital)、ブタバルビタール(butabarbital)、ブタビタール(butabital)、メフォバルビタール(mephobarbital)、メタルビタール(metharbital)、メトヘキシタール(methohexital)、ペントバルビタール(pentobarbital)、フェノバルビタール(phenobartital)、セコバルビタール(secobarbital)、タルブタール(talbutal)、テアミラール(theamylal)またはチオペンタール(thiopental);
・鎮静作用をもつベンゾジアゼピン、たとえばクロルジアゼポキシド(chlordiazepoxide)、クロラゼペート(clorazepate)、ジアゼパム(diazepam)、フルラゼパム(flurazepam)、ロラゼパム(lorazepam)、オキサゼパム(oxazepam)、テマゼパム(temazepam)またはトリアゾラム(triazolam);
・鎮静作用をもつH1アンタゴニスト、たとえばジフェンヒドラミン(diphenhydramine)、ピリラミン(pyrilamine)、プロメタジン(promethazine)、クロルフェニラミン(chlorpheniramine)またはクロルシクリジン(chlorcyclizine);
・鎮静薬、たとえばグルテチミド(glutethimide)、メプロバメート(meprobamate)、メタカロン(methaqualone)またはジクロルアルフェナゾン(dichloralphenazone);
・骨格筋弛緩薬、たとえばバクロフェン(baclofen)、カリソプロドール(carisoprodol)、クロルゾキサゾン(chlorzoxazone)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、メトカルバモール(methocarbamol)またはオルフェナジン(orphrenadine);
・NMDA受容体アンタゴニスト、たとえばデキストロメトルファン(dextromethorphan)((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)またはその代謝産物デキストロルファン(dextrorphan)((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、ケタミン(ketamine)、メマンチン(memantine)、ピロロキノリンキニン(pyrroloquinoline quinine)、(シス-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸、ブディピン(budipine)、EN-3231 (MorphiDex(登録商標)、モルフィンとデキストロメトルファンの組合わせ配合物)、トピラメート(topiramate)、ネラメキサン(neramexane)またはペルジンフォテル(perzinfotel):NR2Bアンタゴニスト、たとえばイフェンプロジル(ifenprodil)、トラキソプロジル(traxoprodil)または(-)-(R)-6-{2-[4-(3-フルオロフェニル)-4-ヒドロキシ-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシエチル-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノンを含む;
・アルファ-アドレナリン作動薬、たとえばドキサゾシン(doxazosin)、タムスロシン(tamsulosin)、クロニジン(clonidine)、グアンファシン(guanfacine)、デクスメタトミジン(dexmetatomidine)、モダフィニル(modafinil)、フェントラミン(phentolamine)、テラザシン(terazasin)、プラザシン(prazasin)または4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-(5-メタン-スルホンアミド-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノール-2-イル)-5-(2-ピリジル)キナゾリン;
・三環系抗うつ薬、たとえばデシプラミン(desipramine)、イミプラミン(imipramine)、アミトリプチリン(amitriptyline)またはノルトリプチリン(nortriptyline);
・抗痙攣薬、たとえばカルバマゼピン(carbamazepine)、ラモトリジン(lamotrigine)、トピラトメート(topiratmate)またはバルプロエート(valproate);
・タキキニン(NK)アンタゴニスト、特にNK-3、NK-2またはNK-1アンタゴニスト、たとえば(αR,9R)-7-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-8,9,10,11-テトラヒドロ-9-メチル-5-(4-メチルフェニル)-7H-[1,4]ジアゾシノ[2,1-g][1,7]-ナフチリジン-6-13-ジオン(TAK-637)、5-[[(2R,3S)-2-[(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ-3-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニル]-メチル]-1,2-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾール-3-オン(MK-869)、アプレピタント(aprepitant)、ラネピタント(lanepitant)、ダピタント(dapitant)または3-[[2-メトキシ-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-メチルアミノ]-2-フェニルピペリジン(2S,3S);
・ムスカリンアンタゴニスト、たとえばオキシブチニン(oxybutynin)、トルテロジン(tolterodine)、プロピベリン(propiverine)、トロプシウムクロリド(tropsium chloride)、ダリフェナシン(darifenacin)、ソリフェナシン(solifenacin)、テミベリン(temiverine)およびイプラトロピウム(ipratropium);
・COX-2選択的阻害薬、たとえばセレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、パレコキシブ(parecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、デラコキシブ(deracoxib)、エトリコキシブ(etoricoxib)またはルミラコキシブ(lumiracoxib);
・コールタール系鎮痛薬、特にパラセタモール(paracetamol);
・神経弛緩薬、たとえばドロペリドール(droperidol)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、ハロペリドール(haloperidol)、ペルフェナジン(perphenazine)、チオリダジン(thioridazine)、メソリダジン(mesoridazine)、トリフルオペラジン(trifluoperazine)、フルフェナジン(fluphenazine)、クロザピン(clozapine)、オランザピン(olanzapine)、リスペリドン(risperidone)、ジプラシドン(ziprasidone)、クエチアピン(quetiapine)、セルチンドール(sertindole)、アリピプラゾール(aripiprazole)、ソネピプラゾール(sonepiprazole)、ブロナンセリン(blonanserin)、イロペリドン(iloperidone)、ペロスピロン(perospirone)、ラクロプリド(raclopride)、ゾテピン(zotepine)、ビフェプルノックス(bifeprunox)、アセナピン(asenapine)、ルラシドン(lurasidone)、アミスルプリド(amisulpride)、バラペリドン(balaperidone)、パリンドール(palindore)、エプリバンセリン(eplivanserin)、オサネタント(osanetant)、リモナバント(rimonabant)、メクリネルタント(meclinertant)、ミラキション(Miraxion)(登録商標)またはサリゾタン(sarizotan);
・バニロイド(vanilloid)受容体アゴニスト(たとえばレジンフェナトキシン(resinferatoxin))またはアンタゴニスト(たとえばカプサゼピン(capsazepine));
・ベータ-アドレナリン作動薬、たとえばプロプラノロール(propranolol);
・局所麻酔薬、たとえばメキシレチン(mexiletine);
・コルチコステロイド、たとえばデキサメタゾン(dexamethasone);
・5-HT受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、特に5-HT1B/1Dアゴニスト、たとえばエレトリプタン(eletriptan)、スマトリプタン(sumatriptan)、ナラトリプタン(naratriptan)、ゾルミトリプタン(zolmitriptan)またはリザトリプタン(rizatriptan);
・5-HT2A受容体アンタゴニスト、たとえばR(+)-アルファ-(2,3-ジメトキシ-フェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニルエチル)]-4-ピペリジンメタノール(MDL-100907);
・コリン作動性(ニコチン性)鎮痛薬、たとえばイスプロニクリン(ispronicline)(TC-1734)、(E)-N-メチル-4-(3-ピリジニル)-3-ブテン-1-アミン(RJR-2403)、(R)-5-(2-アゼチジニルメトキシ)-2-クロロピリジン(ABT-594)またはニコチン;
・トラマドール(Tramadol)(登録商標);
・PDEV阻害薬、たとえば5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニル-スルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン(シルデナフィル(sildenafil))、(6R,12aR)-2,3,6,7,12,12a-ヘキサヒドロ-2-メチル-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-ピラジノ[2',1':6,1]-ピリド[3,4-b]インドール-1,4-ジオン(IC-351またはタダラフィル(tadalafil))、2-[2-エトキシ-5-(4-エチル-ピペラジン-1-イル-1-スルホニル)-フェニル]-5-メチル-7-プロピル-3H-イミダゾ[5,1-f][1,2,4]トリアジン-4-オン(バルデナフィル(vardenafil))、5-(5-アセチル-2-ブトキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-エチル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-(5-アセチル-2-プロポキシ-3-ピリジニル)-3-エチル-2-(1-イソプロピル-3-アゼチジニル)-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、5-[2-エトキシ-5-(4-エチルピペラジニルピペラジン-1-イルスルホニル)ピリジン-3-イル]-3-エチル-2-[2-メトキシエチル]-2,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン、4-[(3-クロロ-4-メトキベンジル)アミノ]-2-[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]-N-(ピリミジン-2-イルメチル)ピリミジン-5-カルボキサミド、3-(1-メチル-7-オキソ-3-プロピル-6,7-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-N-[2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル]-4-プロポキシベンゼンスルホンアミド;
・アルファ-2-デルタリガンド、たとえばガバペンチン(gabapentin)、プレガバリン(pregabalin)、3-メチルガバペンチン、(1α,3α,5α)(3-アミノ-メチル-ビシクロ[3.2.0]ヘプタ-3-イル)-酢酸、(3S,5R)-3-アミノメチル-5-メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-ヘプタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-オクタン酸、(2S,4S)-4-(3-クロロフェノキシ)プロリン、(2S,4S)-4-(3-フルオロベンジル)-プロリン、[(1R,5R,6S)-6-(アミノメチル)ビシクロ[3.2.0]ヘプタ-6-イル]酢酸、3-(1-アミノメチル-シクロヘキシルメチル)-4H-[1,2,4]オキサジアゾール-5-オン、C-[1-(1H-テトラゾール-5-イルメチル)-シクロヘプチル]-メチルアミン、(3S,4S)-(1-アミノメチル-3,4-ジメチル-シクロペンチル)-酢酸、(3S,5R)-3-アミノメチル-5-メチル-オクタン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-ノナン酸、(3S,5R)-3-アミノ-5-メチル-オクタン酸、(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-ヘプタン酸および(3R,4R,5R)-3-アミノ-4,5-ジメチル-オクタン酸;
・カンナビノイド;
・代謝共役型グルタミン酸サブタイプ1受容体(mGluR1)アンタゴニスト;
・セロトニン再取込み阻害薬、たとえばセルトラリン(sertraline)、セルトラリン代謝産物デメチルセルトラリン、フルオキセチン(fluoxetine)、ノルフルオキセチン(norfluoxetine)(フルキセチンデスメチル代謝産物)、フルバキサミン(fluvoxamine)、パロキセチン(paroxetine)、シタロプラム(citalopram)、シタロプラム代謝産物デスメチルシタロプラム、エスシタロプラム(escitalopram)、d,l-フェンフルラミン(d,l-fenfluramine)、フェモキセチン(femoxetine)、イホキセチン(ifoxetine)、シアノドチエピン(cyanodothiepin)、リトキセチン(litoxetine)、ダポキセチン(dapoxetine)、ネファゾドン(nefazodone)、セリクラミン(cericlamine)およびトラゾドン(trazodone);
・ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)再取込み阻害薬、たとえばマプロチリン(maprotiline)、ロフェプラミン(lofepramine)、ミトラゼピン(mirtazepine)、オキサプロチリン(oxaprotiline)、フェゾラミン(fezolamine)、トモキセチン(tomoxetine)、ミアンセリン(mianserin)、ブプロプリオン(buproprion)、ブプロプリオン代謝産物ヒドロキシブプロプリオン、ノミフェンシン(nomifensine)およびビロキサジン(viloxazine)(ビバラン(Vivalan)(登録商標))、特に選択的ノルアドレナリン再取込み阻害薬、たとえばレボキセチン(reboxetine)、特に(S,S)-レボキセチン;
・二重セロトニン-ノルアドレナリン再取込み阻害薬、たとえばベンラファキシン(venlafaxine)、ベンラファキシン代謝産物O-デスメチルベンラファキシン、クロミプラミン(clomipramine)、クロミプラミン代謝産物デスメチルクロミプラミン、デュロキセチン(duloxetine)、ミルナシプラン(milnacipran)およびイミプラミン(imipramine);
・誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)阻害薬、たとえばS-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-L-ホモシステイン、S-[2-[(1-イミノエチル)-アミノ]エチル]-4,4-ジオキソ-L-システイン、S-[2-[(1-イミノエチル)アミノ]エチル]-2-メチル-L-システイン、(2S,5Z)-2-アミノ-2-メチル-7-[(1-イミノエチル)アミノ]-5-ヘプテン酸、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)-ブチル]チオ]-5-クロロ-3-ピリジンカルボニトリル;2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-4-クロロベンゾニトリル、(2S,4R)-2-アミノ-4-[[2-クロロ-5-(triフルオロメチル)フェニル]チオ]-5-チアゾールブタノール、2-[[(1R,3S)-3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジンカルボニトリル、2-[[(1R,3S)-3- アミノ-4-ヒドロキシ-1-(5-チアゾリル)ブチル]チオ]-5-クロロベンゾニトリル、N-[4-[2-(3-クロロベンジルアミノ)エチル]フェニル]チオフェン-2-カルボキサミジン、またはグアニジノエチルジスルフィド;
・アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、たとえばドネペジル(donepezil);
・プロスタグランジンE2サブタイプ4 (EP4)アンタゴニスト、たとえばN-[({2-[4-(2-エチル-4,6-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-1-イル)フェニル]エチル}アミノ)-カルボニル]-4-メチルベンゼンスルホンアミドまたは4-[(1S)-1-({[5-クロロ-2-(3-フルオロフェノキシ)ピリジン-3-イル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸;
・ロイコトリエンB4アンタゴニスト;たとえば1-(3-ビフェニル-4-イルメチル-4-ヒドロキシ-クロマン-7-イル)-シクロペンタンカルボン酸 (CP-105696)、(5-[2-(2-カルボキシエチル)-3-[6-(4-メトキシフェニル)-5E-ヘキセニル]オキシフェノキシ]-吉草酸(ONO-4057)またはDPC-11870;
・5-リポキシゲナーゼ阻害薬、たとえばジロイトン(zileuton)、6-[(3-フルオロ-5-[4-メトキシ-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル])フェノキシ-メチル]-1-メチル-2-キノロン(ZD-2138))、または2,3,5-トリメチル-6-(3-ピリジルメチル)1,4-ベンゾキノン(CV-6504);
・ナトリウムチャンネル遮断薬、たとえばリドカイン(lidocaine);
・5-HT3アンタゴニスト、たとえばオンダンセトロン(ondansetron)、グラニセトロン(granisetron)、トロピセトロン(tropisetron)、アザセトロン(azasetron)、ドラセトロン(dolasetron)またはアロセトロン(alosetron);
・エストロゲンアゴニストまたは選択的エストロゲン受容体調節薬(たとえばHRT療法またはラソホキシフェン(lasofoxifene);
・アルファ-アドレナリン作動性受容体アゴニスト、たとえばフェニルプロパノールアミンまたはR-450;
・ドーパミン受容体アゴニスト(たとえばアポモルフィン:医薬としてのその使用についての教示はUS-A-5945117中にみられる):ドーパミンD2受容体アゴニスト(たとえばプレミプリキサール(premiprixal)、Pharmacia Upjohn化合物番号PNU95666;またはロピニロール(ropinirole))を含む;
・PGE1アゴニスト(たとえばアルプロスタジル(alprostadil));
ならびにその医薬的に許容できる塩類および溶媒和物。
【0036】
したがって本発明は、他の観点において、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を他の療法薬と共に含む組合わせを提供する。
【0037】
ヒトに使用するために、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を単独で投与できるが、ヒトの療法においては一般に、意図する投与経路および医薬標準法に関して選択された適切な医薬用の賦形剤、希釈剤またはキャリヤーと混合して投与されるであろう。
【0038】
たとえば、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を、錠剤、カプセル剤(ソフトゲルカプセル剤を含む)、卵形錠剤、エリキシル剤、液剤または懸濁液剤の形で、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、二重放出、制御放出またはパルス送達用として、経口、口腔または舌下投与することができ、これらは着香剤または着色剤を含有することができる。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を陰茎海綿体内注射により投与することもできる。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を速やかに分散または溶解する剤形で投与することもできる。
【0039】
そのような錠剤は、賦形剤、たとえば微結晶性セルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、グリシンおよびデンプン(好ましくはトウモロコシ、バレイショまたはタピオカのデンプン)、崩壊剤、たとえばグリコール酸デンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合ケイ酸塩、ならびに造粒結合剤、たとえばポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチンおよびアラビアゴムを含有することができる。さらに滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクを含有することもできる。
【0040】
同様なタイプの固体組成物をゼラチンカプセル内の充填物として用いることもできる。これに関して好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁液剤および/またはエリキシル剤について、本発明化合物およびそれらの医薬的に許容できる塩類を、種々の甘味剤または着香剤、着色剤または色素、乳化剤および/または懸濁化剤、ならびに希釈剤、たとえば水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリン、ならびにその組合わせと混和することができる。
【0041】
調節放出およびパルス放出剤形は、即時放出剤形について詳述した賦形剤と共に、放出速度調節剤として作用する追加賦形剤を含有することができ、これらを剤形本体にコーティングおよび/または含有させる。放出速度調節剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、サキンタンガム、カルボマー(Carbomer)、メタクリル酸アンモニオコポリマー、水素化ひまし油、カルナウバワックス、パラフィンワックス、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、およびその混合物が含まれるが、これらのみに限定されない。調節放出およびパルス放出剤形は、放出速度調節用賦形剤のうち1種類または組合わせを含有することができる。放出速度調節用賦形剤は、剤形内部、すなわちマトリックス内部、および/または剤形上、すなわち表面もしくはコーティング上の両方に存在してもよい。
【0042】
速やかに分散または溶解する製剤(fast dispersing or dissolving dosage formulation、FDDF)は、下記の成分を含有することができる:アスパルテーム、アセスルファムカリウム(acesulfame potassium)、クエン酸、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジアスコルビン酸(diascorbic acid)、アクリル酸エチル、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、メタクリル酸メチル、ミントフレーバー、ポリエチレングリコール、ヒュームドシリカ、二酸化ケイ素、グリコール酸デンプンナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ソルビトール、キシリトール。本明細書中でFDDFを記述するために用いる分散または溶解という用語は、用いる薬物の溶解度に依存する。すなわち、薬物が不溶性である場合は速やかに分散する剤形を調製し、薬物が可溶性である場合は速やかに溶解する剤形を調製することができる。
【0043】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を非経口的に、たとえば静脈内、動脈内、腹腔内、クモ膜下(髄腔内)、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与することもでき、あるいはそれらを注入法により投与することもできる。そのような非経口投与のためには、それらを無菌水性液剤の形で用いるのが最良であり、これらは他の物質、たとえば液剤を血液と等張にするのに十分な塩類またはグルコースを含有してもよい。水性液剤は、必要ならば適切に緩衝化すべきである(好ましくはpH 3〜9)。無菌条件下での適切な非経口配合物の調製は、当業者に周知の医薬標準法によって容易に達成できる。
【0044】
ヒト患者への経口および非経口投与について、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩の1日量は、通常は10〜500 mg(1回量または分割量で)であろう。
【0045】
したがって、たとえば2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩の錠剤またはカプセル剤は、一度に適宜1個または2個以上を投与するために、5〜250 mgの有効化合物を含有することができる。いずれにしろ、個々の患者に最適な実際の用量は医師が決定し、これはその患者の年齢、体重および応答に応じて異なるであろう。前記の用量は平均的な場合の例示である。もちろん、これより高いまたは低い用量範囲が有益な個々の場合もあり、それらも本発明の範囲に含まれる。ある状態(PEを含む)の処置に際して、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を”必要に応じて”(すなわち必要性または要望に応じて)1回量として摂取できることも、当業者には認識されるであろう。
【0046】
錠剤配合例
一般に、錠剤配合物は一般的に2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を約0.01〜500mg含有することができ、一方、錠剤の充填重量は50〜1000mgであろう。10mg錠についての配合例を示す:
【0047】
【表3】

【0048】
・この量は一般に薬物活性に従って調整され、遊離塩基の重量を基準とする。
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を鼻内に、または吸入により投与することもでき、乾燥粉末吸入器またはエアゾルスプレー剤の形で、加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、適切な噴射剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、たとえば1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A [商標])または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA [商標])、二酸化炭素または他の適切なガスを用いて送達するのが好都合である。加圧エアゾル剤の場合、用量単位は計量された量を送達するための弁を設けることにより決定できる。加圧容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、たとえばエタノールと噴射剤の混合物を溶剤として用いた、有効化合物の液剤または懸濁液剤を収容することができる。これはさらに滑沢剤、たとえばトリオレイン酸ソルビタンを含有してもよい。吸入器または吹入器に用いるためのカプセル剤およびカートリッジ(たとえばゼラチン製)は、本発明化合物と適切な粉末基剤、たとえば乳糖またはデンプンとの、粉末ミックスを収容するように配合できる。
【0049】
エアゾル剤または乾燥粉末配合物は、好ましくは計量された各量、すなわち”一吹き”が患者に送達するために2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を1〜50 mg含有するように調整される。エアゾル剤による全1日量は1〜50 mgであり、これを1回量で、またはより普通にはその日全体を通して分割量で投与することができる。
【0050】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を、アトマイザーによる送達用として配合することもできる。アトマイザー器具用の配合物は、たとえば下記の成分を可溶化剤、乳化剤または懸濁化剤として含有することができる:水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、フルオロカーボン、ポリエチレングリコールエーテル、トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸。
【0051】
あるいは2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を坐剤またはペッサリーの形で投与することができ、あるいはそれらをゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤または散粉剤の形で局所適用することができる。2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を、たとえば皮膚パッチの使用により皮膚投与または経皮投与することもできる。この化合物を眼、肺または直腸経路で投与してもよい。
【0052】
眼に使用するためには、本発明化合物を、pH調整した等張無菌塩類溶液中の微細懸濁液剤として、または好ましくはpH調整した等張無菌塩類溶液中の液剤として、所望により保存剤、たとえば塩化ベンザルコニウムと組み合わせて、配合することができる。あるいは、本発明化合物をワセリンなどの軟膏剤中に配合することができる。
【0053】
皮膚に局所適用するためには、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を、たとえば下記のもの1種類以上を含む混合物に懸濁または溶解した有効化合物を含有する適切な軟膏剤として配合することができる:鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン配合物、乳化用ワックスおよび水。
【0054】
あるいは本発明化合物を、下記のもの1種類以上の混合物に懸濁または溶解した適切なローション剤またはクリーム剤として配合することができる:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステル、ワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。
【0055】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩をシクロデキストリンと組み合わせて用いることもできる。シクロデキストリンは、薬物分子と包接複合体および非包接複合体を形成することが知られている。薬物-シクロデキストリン複合体の形成により、薬物分子の溶解度、溶解速度、生物学的利用能および/または安定性などの特性を改変することができる。薬物-シクロデキストリン複合体は、一般に大部分の剤形および投与経路に有用である。薬物との直接複合体形成の代わりに、シクロデキストリンを補助添加剤として、たとえばキャリヤー、希釈剤または可溶化剤として用いることもできる。アルファ-、ベータ-およびガンマ-シクロデキストリンが最も一般的に用いられ、適切な例がWO-A-91/11172、WO-A-94/02518およびWO-A-98/55148に記載されている。
【0056】
ヒト患者に経口または非経口投与するために、本発明化合物の1日量は0.01〜30 mg/kg(1回量または分割量で)、好ましくは0.01〜5 mg/kgであろう。したがって、錠剤は、一度に適宜1個または2個以上投与するために、1mg〜0.4gの化合物を含有するであろう。いずれにしろ、個々の患者に最適な実際の用量は医師が決定し、これはその患者の年齢、体重および応答に応じて異なるであろう。前記の用量はもちろん平均的な場合の例示にすぎず、これより高いまたは低い用量が有益な場合もあり、それらも本発明の範囲に含まれる。
【0057】
経口投与が好ましい。
動物に用いるためには、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を普通の動物医療に従って適切に許容できる配合物として投与し、その動物に最適な投与方式および投与経路を獣医が決定するであろう。
【0058】
したがって他の観点において本発明は、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩、および医薬的に許容できる佐剤、希釈剤またはキャリヤーを含有する、医薬配合物を提供する。
【0059】
前記の組合わせを医薬配合物の形で使用するために提供することも好都合である。したがって、前記の組合わせを医薬的に許容できる佐剤、希釈剤またはキャリヤーと共に含む医薬配合物は、本発明の他の観点を構成する。そのような組合わせの個々の成分を、逐次、または別個の医薬配合物もしくは組合わせ医薬配合物中において同時に、投与することができる。
【0060】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの半クエン酸塩を第2療法薬と組み合わせて用いる場合、各化合物の用量はその化合物を単独で用いる場合と異なる可能性がある。適切な用量は当業者に容易に認識されるであろう。
【0061】
製造例および例:
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドは、国際特許出願公開番号WO2004/110995および国際特許出願番号PCT/ IB05/ 003643 (WO 2006/ 056884として2006年6月1日に公開)の例1に開示された方法、または下記に従って製造できる。
【0062】
温度はすべて℃である。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Merckシリカゲル60 (9385)を用いて実施された。固相抽出(SPE)クロマトグラフィーは、Varian Mega Bond Elut (Si)カートリッジ(Anachem)を用いて15mmHgの真空下で実施された。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merckシリカゲル60プレート(5729)上で実施された。融点はGallenkamp MPD350装置を用いて測定され、未補正である。NMRはVarian-Unity Inova 300MHzおよび400MHz Nmr分光光度計またはVarian Mercury 400MHz nmr分光光度計を用いて実施された。質量分析はFinnigan Navigator一連四重極(single quadrupole)エレクトロスプレー質量分析計またはFinnigan aQa APCI質量分析計を用いて実施された。
【0063】
製造例1:(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボン酸t-ブチルの製造
【0064】
【化1】

【0065】
1時間かけて、2N HCl (水溶液) (21.81L, 43.62mole)を、(3S)-3-アミノピロリジン1(3.76kg, 43.62 mole)の、メタノール(18.8L)中における溶液に、0℃で添加した。反応物を15分間撹拌した時点で、Boc2O (9.52kg, 43.62mole)の、メタノール(3.8L)中における溶液を、反応温度を5℃より低く維持しながら添加した。反応混合物を2時間かけて室温に高めた時点で、メタノールを真空蒸留により除去した。得られた水溶液のpHを2N HCl (水溶液)で6未満に調整し、次いでTBME (7.52L)で洗浄し、有機相を分離して廃棄した。水相を5℃に冷却し、炭酸カリウム水溶液(6.63kg, 48 mole, 水7.52L中)で塩基性にし、生成物をジクロロメタン(DCM) (3回,18.8L)で抽出した。DCM層を合わせて水(7.52L)で洗浄し、溶媒を蒸留し、真空下でイソプロピルアルコール(IPA) (31.3L)と置換して、約15LのIPA中における表題化合物のIPA溶液(5.81kgの生成物, 31.2 mole, 71%)を得た;
1H NMR (MeOD, 400MHz)δ: 1.45 (br s, 9H), 1.69 (m, 1H), 2.05 (m, 1H), 3.03 (m, 1H), 3.33 (m, 1H), 3.49 (m, 3H);
1 Fluorochemを介してTCI Japanから入手できる。
【0066】
製造例2:(3S)-3-(シクロペンチルアミノ)ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル
【0067】
【化2】

【0068】
WO 2006/056884の製造1に詳述されるように、シクロペンタノン(12.7ml, 143mmol)を、メタノール:トルエン3:1 (600ml:200ml)の混合物中の(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル(26.6g, 143mmol)に添加し、反応混合物を室温で窒素下に1.5時間撹拌した。次いで反応混合物を50mlにまで蒸発させ、メタノール:トルエン3:1 (600ml:200ml)と3回共沸させ、真空濃縮した。次いで得られた残留物をメタノール(250ml)に装入し、0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(7.5g, 200.2mmol)を少量ずつ添加した。反応終了後、水(50ml)を添加し、溶媒を蒸発させた。残留物をさらに水(150ml)で希釈し、ジクロロメタン(250ml)で3回抽出した。有機相を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮して、表題化合物をガム36.1g (99.4%)として得た;
1HNMR (CDCl3, 400MHz)δ: 1.18(brs, 1H), 1.28(m, 2H), 1.44(s, 9H), 1.52(m, 2H), 1.67(m, 3H), 1.83(m, 2H), 2.05(m, 1H), 2.98(m, 1H), 3.08(m, 1H), 3.30(m, 2H), 3.45(m, 1H), 3.58(m, 1H); MS APCI+ m/z 255 [MH]+
【0069】
製造例2A:(3S)-3-(シクロペンチルアミノ)ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル製造の別法
IPA中の(3S)-3-アミノピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル溶液(約5.81kg, 31.2mole, 合計約15LのIPA中)を、イソプロピルアルコール(IPA) (17.1L)で希釈した。温度が30℃を超えないように30分間かけてシクロペンタノン(2.62kg, 31.2mole)を添加し、添加の残りをIPA (3L)で洗い入れた。このイミン反応混合物を室温で最低5時間、撹拌した。NaBH4(1.3kg, 34.3mole)の、t-ブチルメチルエーテル(TBME) (11.62L)およびIPA (3L)中におけるスラリーを5℃に冷却し、反応温度を10℃より低く維持する速度でメタノール(5.2L)を添加した。次いで、反応温度を5℃より低く維持する速度で、IPA中の上記イミン溶液を水素化ホウ素ナトリウム混合物に添加し、ラインをIPA (3L)で洗浄した。次いで反応混合物を室温に高め、少なくとも8時間撹拌した。水(11.6L)で慎重に反応を停止し、次いでTBME (11.6L)で希釈すると、相が分離した。有機相を水(11.6L)で洗浄し、水性洗液を合わせてTBME (11.6L)で逆抽出した。次いでTBME層を合わせて真空中で蒸発させると油が得られた。これを酢酸エチルに溶解し、再び蒸発させて、表題化合物を油(7.75kg;生成物7.61kgA, 29.9mole, 96%に相当)として得た。
【0070】
製造例3:(3S)-3-(シクロペンチルアミノ)ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル・トルエンスルホン酸塩
【0071】
【化3】

【0072】
(3S)-3-(シクロペンチルアミノ)ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル(7.61kgA, 29.9mole)の、酢酸エチル(38L)中における溶液を、0℃に冷却した時点で、トルエンスルホン酸(5.69kg, 29.9mole)の、酢酸エチル(85.4L)中における溶液を添加した。得られたスラリーを0℃で1時間撹拌し、室温に高め、一夜撹拌した。スラリーを濾過し、酢酸エチル(7.6L)で洗浄し、真空中、55℃で一夜乾燥させて、表題化合物を白色固体(10.48kg, 24.6mole, 82%)として得た;
1H NMR (MeOD, 300MHz)δ: 1.49 (s, 9H), 1.68 -1.83 (br m, 6H), 2.18 (br m, 3H), 2.38 (br s, 4H), 3.44-3.63 (br m, 4H), 3.77 (m, 1H), 3.92 (m, 1H), 7.24 (d, J= 7.9Hz, 2H), 7.72 (d, J= 7.9Hz, 2H)。
【0073】
製造例4:(3S)-3-[シクロペンチル(2,3-ジクロロベンゾイル)アミノ]ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル
【0074】
【化4】

【0075】
WO 2006/056884の製造2に詳述されるように、トリエチルアミン(24ml, 170mmol)を、製造例2のアミン(36.1g, 142mmol)の、ジクロロメタン(350ml)中における溶液に、窒素下で添加した。反応混合物を0℃に冷却し、温度を5℃より低く維持しながらジクロロメタン中の2,3-ジクロロ-ベンゾイルクロリド(29.8g, 142mmol)を滴加した。次いで反応混合物を6時間撹拌した後、水(200ml)を添加し、有機相を分離した。次いで水層をジクロロメタン(250ml)で抽出した。有機相を合わせて2M水酸化ナトリウム水溶液および10%クエン酸溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。粗生成物をシリカゲル上で酢酸エチル:シクロヘキサン(1:6−1:4−1:2−1:1容量比)により溶離するカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題生成物50g (82.4%)を得た;
1HNMR (CDCl3, 400MHz, 回転異性体)δ: 1.43-1.47(d, 9H), 1.56-1.66(m, 5H), 1.79(m, 0.5H), 1.98(m, 3H), 2.37(m, 1H), 2.92(m, 0.5H), 3.15(m, 0.5H), 3.40(m, 1H), 3.58(m, 1.5H), 3.74(m, 2H), 3.97(m, 1H), 7.10(m, 1H), 7.24(m, 1H), 7.46(d, 1H); MS APCI+m/z 427 [MH]+ およびm/z 327 [MH-Boc]+
【0076】
製造例4:(3S)-3-[シクロペンチル(2,3-ジクロロベンゾイル)アミノ]ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル製造の別法
水酸化ナトリウム溶液([2M水溶液], 31.4L, 62.8mole)を、製造例3の化合物(3S)-3-(シクロペンチルアミノ)ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル・トルエンスルホン酸塩(10.48kg, 24.6mole)の、トルエン(34.54L)中における撹拌スラリーに添加した。この二相混合物を0℃に冷却し、2,3-ジクロロベンゾイルクロリド(5.66kg, 27.0mole)の、トルエン(5.4L)中における溶液、およびトルエンによる容器すすぎ液(3L)を、反応温度が15℃を超えない速度で添加した。得られた混合物を室温に高め、最低5時間撹拌した時点で相を分離した。有機相を塩酸([1M]), 31.4L, 31.4mole)および水(31.4L)で洗浄し、次いで追加分のトルエン(20L)の添加および減圧蒸留により共沸乾燥させた。表題生成物をトルエン溶液(溶液38.25kg, 生成物10.4kgA, 24.3mole, 99%を含有)として保持した。
【0077】
例1:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド
【0078】
【化5】

【0079】
WO 2006/056884の例1に詳述されるように(遊離塩基の表題生成物)、製造例4のt-ブトキシカルボニル(Boc)保護生成物(46g, 107mmol)を窒素下でジクロロメタン(85ml)に溶解し、反応混合物をトリフルオロ酢酸(85ml, 1mol)で処理した;これを0で滴加した。次いで反応混合物を室温で4時間撹拌した後、これを減圧下で蒸発させ、トルエンと2回共沸させ、真空濃縮した。得られた残留物をジクロロメタン(400ml)に装入し、1M水酸化ナトリウム水溶液(200ml)で洗浄した。有機相を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。残留物を酢酸エチル(10x)と共沸させ、次いで真空下で乾燥させて、遊離塩基の表題生成物をガム34g (97%)として得た。
【0080】
例1A:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド製造の別法
トルエン(4.4L)を、トルエン中における前記(3S)-3-[シクロペンチル(2,3-ジクロロベンゾイル)アミノ]ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチル(製造例4A)の溶液に添加し、溶液を0℃に冷却した。反応温度を15℃より低く維持する速度で、トリフルオロ酢酸(TFA) (13.85 kg, 121.5mole, 5当量)を添加し、ラインをトルエン(5L)ですすぎ入れた。反応混合物を45℃に3時間加熱した。反応が終了した時点で、2回の減圧蒸留およびトルエン置換(2回,20L)によりTFAを除去し、20Lの留出液を2回採集して廃棄した。トルエン溶液を室温に冷却し、水相がpH 10を超えるまで水酸化ナトリウム水溶液([2M], 36.4L, 36.4mole)で塩基性にした。相を分離し、生成物を塩酸水溶液([1M], 31.2L, 31.2mole)中に逆抽出した。有機相を水(10.4L)でさらに抽出し、塩酸抽出液と合わせた。この合わせた酸性の水相をトルエン(10.4L)で洗浄し、次いでpH 9を超えるまで水酸化ナトリウム水溶液([5M], 10.4L, 52mole)で塩基性にした。水相をTBME (2回,31.2L)で抽出し、有機相を合わせて水(20.8L)で洗浄した。TBMEを蒸留し、減圧下でIPA (2回,20L)に置換して、表題化合物をIPA溶液(溶液26.2kg, 生成物6.95kgA, 21.2mole, 87%)として得た;
1H NMR (MeOD, 300MHz)δ: 1.37-1.98 (br m, 8H), 2.07-2.42 (br m, 2H), 2.84-3.03 (br m, 2H), 3.36 (m, 2H), 3.77 (m, 1H), 3.96 (m, 1H), 7.27 (m, 1H), 7.41 (br t, J= 7.9Hz, 1H), 7.62 (br d, J=8.0Hz, 1H)。
【0081】
例2:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩の製造
【0082】
【化6】

【0083】
クエン酸(2.04kg, 0.5当量)の、水(2L)中における溶液を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(6.95kg, 1当量)の、イソプロピルアルコール(35L)中における溶液に、内部温度が25℃を超えない速度で添加した。得られたスラリーを25℃で2時間撹拌した後、濾過した。フィルターケークを吸引乾燥させ、イソプロピルアルコール(20.8L)で洗浄し、再び可能な限り吸引乾燥させた。この湿潤生成物を50℃で一夜真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド半クエン酸塩を白色固体(7.7kg, 86%)として得た;
1H NMR (MeOD, 300MHz)δ: 1.37-2.04 (br m, 8H), 2.49 (m, 2H), 2.69 (d, J= 15.2Hz, 1H), 2.78 (d, J= 15.2Hz, 1H), 3.27 (m, 1H), 3.56 (m, 1H), 3.75 (br m, 3H), 4.29 (m, 1H), 7.33 (m, 1H), 7.43 (br t, J= 7.9Hz, 1H), 7.64 (br d, J= 7.9Hz, 1H)。
【0084】
例2A:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩の製造
【0085】
【化7】

【0086】
クエン酸(30 mg, 0.16 mmol, 0.5当量)の、メタノール(2mL)中における溶液を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物をメタノール(2 mL)-ジ-イソプロピルエーテル(10 mL)から結晶化させた。固体をジ-イソプロピルエーテル(2 mL)で洗浄し、真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド半クエン酸塩を白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.72 (2H, dd), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0087】
例3:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド塩酸塩の製造
【0088】
【化8】

【0089】
塩酸水溶液(0.32 mL, 1.0 M, 0.32 mmol, 1.0当量)を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物をメタノール(2 mL)-ジ-イソプロピルエーテル(10 mL)から結晶化させた。固体をジ-イソプロピルエーテル(2 mL)で洗浄し、真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド塩酸塩を無色結晶として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0090】
例4:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド臭化水素酸塩の製造
【0091】
【化9】

【0092】
臭化水素酸水溶液(0.32 mL, 1.0 M, 0.32 mmol, 1.0当量)を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物をメタノール(2 mL)-ジ-イソプロピルエーテル(10 mL)から結晶化させた。固体をジ-イソプロピルエーテル(2 mL)で洗浄し、真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド臭化水素酸塩を無色結晶として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0093】
例5:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半エジシル酸塩の製造
【0094】
【化10】

【0095】
1,2-エタンジスルホン酸(30 mg, 0.16 mmol, 0.5当量)の、メタノール(2mL)中における溶液を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(5 mL)から結晶化させた。固体を真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド半エジシル酸塩を白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 3.22 (2H, s), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0096】
例6:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド・エジシル酸塩の製造
【0097】
【化11】

【0098】
1,2-エタンジスルホン酸(61 mg, 0.32 mmol, 1.0当量)の、メタノール(2mL)中における溶液を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(5 mL)から結晶化させた。固体を真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド・エジシル酸塩を白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 3.22 (4H, s), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0099】
例7:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド・フマル酸塩の製造
【0100】
【化12】

【0101】
フマル酸(37 mg, 0.32 mmol, 1.0当量)の、メタノール(2mL)中における溶液を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(5 mL)から結晶化させた。固体を真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド・フマル酸塩を白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 6.70 (2H, s), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0102】
例8:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドL-酒石酸塩の製造
【0103】
【化13】

【0104】
L-(+)-酒石酸(48 mg, 0.32 mmol, 1.0当量)の、メタノール(2mL)中における溶液を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(5 mL)から結晶化させた。固体を真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミドL-酒石酸塩を白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.40 (2H, s), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0105】
例9:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドD-酒石酸塩の製造
【0106】
【化14】

【0107】
D-(-)-酒石酸(48 mg, 0.32 mmol, 1.0当量)の、メタノール(2mL)中における溶液を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(5 mL)から結晶化させた。固体を真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミドD-酒石酸塩を白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6) δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.40 (2H, s), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0108】
例10:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半硫酸塩の製造
【0109】
【化15】

【0110】
硫酸水溶液(0.16 mL, 1.0 M, 0.16 mmol, 0.5当量)を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(5 mL)から結晶化させた。固体を真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド半硫酸塩を結晶質白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6) δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.60-2.42 (2H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0111】
例11:2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド酢酸塩の製造
【0112】
【化16】

【0113】
酢酸水溶液(0.32 mL, 1.0 M, 0.32 mmol, 1.0当量)を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド遊離塩基(105 mg, 0.32 mmol)の、メタノール(2.5 mL)中における溶液に添加した。溶媒を真空中で蒸発させ、残留物を酢酸エチル(5 mL)から結晶化させた。固体を真空乾燥させて、(S)-2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-ピロリジン-3-イルベンズアミド酢酸塩を結晶質白色固体として得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d6)δ: 7.65 (1H, d), 7.43 (1H, dd), 7.30 (1H, dd), 4.34 (1H, m), 3.85-3.68 (3H, m), 3.52 (1H, m), 3.26 (1H, m), 2.60-2.42 (2H, m), 1.96 (3H, m), 1.95 (1H, m), 1.92-1.65 (3H, m), 1.65-1.40 (4H, m)。
【0114】
PXRDおよびDSCによる2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩の特性分析
(a)PXRD分析
(i)計算
シミュレートした粉末X線回折図(図1)を、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの単結晶構造から、室温でAccelrys Materials Studio(商標)[バージョン3]の”反射粉末回折”モジュールにより計算した。関連の計算パラメーターはそれぞれの場合下記のとおりであった:
波長 = 1.540562Å(Cu Kα1)
分極係数 = 0.5
擬ヴォイト(Pseudo-Voigt)プロフィール(U = 0.01, V = -0.001, W = 0.002)
得られた相対強度20%を超える粉末X線回折ピークおよびそれらの2θ値を表3に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
結晶学の専門家に認識されるように、上記表中の種々のピークの相対強度は、多数の要因、たとえばX線ビーム中での結晶の配向効果、または分析される物質の純度、または試料の結晶化度により変化する可能性がある。ピーク位置も試料高さの変化に伴ってシフトする可能性はあるが、ピーク位置は実質的には上記表に定めたままであろう。
【0117】
結晶学の専門家には、異なる波長を用いて測定すると、ブラグ(Bragg)方程式−nλ = 2d sin θに従ってシフトが異なることも認識されるであろう。
他の波長を用いて得られたそのような他のPXRDパターンは、本発明の結晶性物質のPXRDパターンの他の代表例であると考えられ、したがって本発明の範囲に含まれる。
【0118】
(ii)測定
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩[試料A]の粉末X線回折図(図2)を、粉末α-石英(ICDD 46-1045)標準品により検量したBruker D5000回折計(λ= 1.54178Å)を用いて得た。室温で2θ角度範囲2〜40°にわたってステップサイズ0.02°でデータを収集した。各ステップで3.5秒間、データを収集した。得られた20%を超える相対強度をもつ粉末X線回折ピークおよびそれらの2θ値±0.1°を表4に示す。図1に示す計算した粉末X線回折図とのアラインメントによりピーク位置をさらに検量した。
【0119】
【表5】

【0120】
あるいは、2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩[試料B]の粉末X線回折図(図3)を、自動試料交換器、θ-θ角度計、自動ビーム変更スリットおよびPSD Vantec-1検出器を備えたBruker -AXS Ltd. D4粉末X線回折計を用いて得た。低バックグラウンドキャビティウェーハ検体台上に固定することにより試料を分析のために用意した。検体を銅K−α1X線(波長= 1.5406Å)で照射しながら回転させ、X線管を40kV/35mAで操作した。2〜55°の2θ範囲にわたって0.018°のステップ当たり0.2秒間のカウントに設定した連続モードで角度計を作動させて、分析を実施した。得られた25%を超える相対強度をもつ粉末X線回折ピークおよびそれらの2θ値±0.1°を表5に示す。図1に示す計算した粉末X線回折図とのアラインメントによりピーク位置を検量した。
【0121】
【表6】

【0122】
(b)DSC分析
2.382mgの2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩試料[試料A]から、蓋付きアルミニウム皿内で、TA Instruments Q1000示差走査熱量計により、DSCサーモグラム(図4)を作成した。50 cm3/分でパージした窒素炉雰囲気において、試料を30℃から300℃まで20℃/分の速度で加熱した。206℃に鋭い融解吸熱ピークがみられ、続いて多数の分解事象がみられた。
【0123】
あるいは、3.008mgの2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩試料[試料B]から、通気アルミニウム皿内で、Perkin Elmer Diamond示差走査熱量計により、DSCサーモグラム(図5)を作成した。40 cm3/分でパージした窒素炉雰囲気において、試料を周囲温度から300℃まで20℃/分の速度で加熱した。213℃に鋭い融解吸熱ピークがみられ、続いて多数の分解事象がみられた。DSCピーク温度が206℃(図4)から213℃(図5)に上昇したのは、被験試料A(図4)と対比して被験試料B(図5)の純度が増したことによるものと思われ、形態の変化を示唆するものではないと考えられた。
【0124】
生物活性
薬理活性部分2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミドの生物活性は、国際特許出願PCT/ IB05/ 003643 (WO 2006/056884として2006年6月1日に公開)に記載されている。それの例1に、15 nMのNRI Kiおよび5nMのSRI Kiが示されている。それらの例の化合物のNRI KiおよびSRI Kiは下記に従って測定された。
【0125】
シンチレーション近接アッセイ(SPA)法を用いて、化合物がヒトのセロトニンおよびノルアドレナリントランスポーター(それぞれSERTおよびNET)における選択的放射性リガンドの結合を阻害する能力により、化合物の生物活性を試験した。SERTまたはNETをコードするヒトcDNA(hSERT、hNET)を発現する細胞系から調製した細胞膜調製物を用い、放射性リガンド3H-シタロプラム(citalopram)および3H-ニソキセチン(nisoxetine)を用いて、SPA結合を実施した。
【0126】
i)細胞培養法
各トランスポーターを発現するヒト胚性腎細胞(HEK-293)を、標準細胞培養法により225 cm2のフラスコ内で50 mLの増殖培地(組成については培地および緩衝液を参照)中に、37℃で5 % CO2が存在する加湿雰囲気下に連続培養物として維持した。細胞を90 %周密単層から1:3〜1:4の比率で継代した。
【0127】
細胞を収穫するために、増殖培地を単層から分離し、細胞を細胞溶解液(Sigma)と共に、解離の徴候がみられるまでインキュベートした。次いで細胞をフラスコの底から叩き出し、貯蔵(-80℃で凍結)のために遠心分離によりペレット化し、のちに使用した。
【0128】
ii)細胞膜の調製
細胞ペレットを氷上で融解し、充填細胞容量1 mL当たり3 mLの膜調製用緩衝液(組成については培地および緩衝液を参照)中に渦撹拌式ミキサーで再懸濁して細胞ペレットを分散させた。
【0129】
氷上で10分間のインキュベーション後、懸濁液をそれぞれ10秒間隔で4回、手持ち式ホモジナイザーによりホモジナイズした。次いでホモジェネートを1075×gで20分間、4℃において遠心した。
【0130】
次いで上清を採集し、保存した。細胞と核の初回ペレット(P1)を次いで上記の条件で再びホモジナイズし、上清を採集し、初回遠心から保存したものと共にプールした。
プールした上清を35000×gで30分間、4℃において遠心し、上清を廃棄した。このペレット(P2)を次いで元の充填細胞容量1 mL当たり1 mLの膜調製用緩衝液中に再懸濁した。次いでタンパク質濃度を測定し、最後に膜懸濁液を一定の小容量ずつに分割して凍結し、アッセイに使用するまで-80℃で保存した。
【0131】
iii)アッセイ法
A.膜の各バッチについての最適アッセイ条件の判定
特異的なSPAビーズのタイプは各トランスポーターについて異なり、hSERTには小麦胚芽凝集素でコーティングしたケイ酸イットリウム(YSi WGA) SPAビーズを用い、hNETアッセイにはWGA-コーティングしたポリビニルトルエン(PVT WGA) SPAビーズを用いた。使用した膜の各バッチについて、ビーズおよび膜の最適濃度を判定した。
【0132】
各トランスポーターに特異的なトリチウム化放射性リガンド(hSERTについては3H-シタロプラム、hNETについては3H-ニソキセチン)を用いた。放射性リガンド枯渇度を推定するために、アッセイの遊離放射性リガンド濃度を全遊離放射性リガンド濃度に対する%として表わした。結合に十分な放射性リガンドがあるためには、両トランスポーターについてアッセイ中の放射性リガンド枯渇度は30%未満であった。このリガンド枯渇値を、膜の新たなバッチを用いる際の最適アッセイ条件の選択にも用いた。
【0133】
膜の各バッチについて、選択したタンパク質およびビーズの濃度において各トランスポーターに対する特異的放射性リガンドの親和性を判定した。これは、KD、すなわちトランスポーター結合部位の50 %が占有された遊離放射性リガンド濃度の判定により達成された。1バッチの膜における放射性リガンドについての平均KDを、最低3回の別個のアッセイより得たデータから判定した。その後この平均KDを、被験化合物のKi値を判定できるように想定した膜バッチを用いるすべてのアッセイに採用した;ChengおよびPrussoffが決定した方法を採用(Cheng YC and Prusoff WH. 阻害定数(Ki)と酵素反応を50%阻害する阻害薬濃度との関係. Biochem Pharmacol 1973; 22:2099-3108)。
【0134】
B.アッセイプロトコル
ビーズ/膜複合体の調製
必要量の膜を氷上で融解し、予め定めた容量のアッセイ用緩衝液中ビーズ懸濁液に添加した。次いで、ビーズのmg当たり予め定めた量のタンパク質を振とう機により4℃の温度で2時間インキュベートすることにより、ビーズを予め結合させた。
【0135】
次いでこのビーズ/膜複合体を865×gで5分間、遠心した。得られたペレットをアッセイ用緩衝液に再懸濁し、次いでこの遠心/洗浄工程を繰り返した。次いで最終ペレットを、最終アッセイに必要な特定濃度でアッセイ用緩衝液に再懸濁した。
【0136】
リガンドの調製
[3H]-放射性リガンド原液の一部をアッセイ用緩衝液中に希釈して、平衡解離定数(KD)値未満の予め判定した最終アッセイ濃度にした。
【0137】
化合物プレートの調製
すべての被験化合物を乾燥試料から100 %ジメチルスルホキシド(DMSO)中4 mMの濃度で調製した。化合物を384ウェルプレート内でddH2O中の0.75 % DMSO中に希釈して適切な試験濃度とし、最終容量20μLにした。
【0138】
同一容量のアッセイ用緩衝液をプレートの個々のウェルに添加して、その後の全放射性リガンド結合測定ができるようにした。さらに、各トランスポーターアッセイに特異的な高濃度の化合物20μLを予め定めたウェルに添加して、非特異的結合(NSB)を測定した。hSERTについてはフルオキセチン(fluoxetine)(最終アッセイ濃度10μMn)、hNETについてはデシプラミン(desipramine)(最終アッセイ濃度40μM)を用いた。
【0139】
各トランスポーターのアッセイそれぞれについて、調製した特異的放射性リガンド20μLを最終アッセイプレート(化合物溶液を収容)の各ウェルに添加した。次いで対応するビーズ/膜複合体20μLを最終アッセイプレートの各ウェルに添加し、懸濁液を確実に十分に混合した。次いでプレートをシールし、振とうしながら室温で1時間、インキュベートした。次いでプレートをさらに6時間インキュベートして暗所に適応させた後、読み取った。
【0140】
C.データ分析
全結合の読みから平均NSBの読み(毎分のカウント数、すなわちcpm)を差し引くことにより、プレート当たりのアッセイウインドー(特異的結合)を計算した。次いでウェル当たりのcpmの読み(平均NSBを差し引いたもの)をプレートウインドーに対する%として表わして、トランスポーターに結合した放射性リガンドの量を判定した。
【0141】
これらの数値を被験化合物濃度に対してプロットし、S状阻害濃度効果曲線を4パラメーター算定方程式および自由当てはめパラメーターによりデータに当てはめて、IC50値(神経伝達物質トランスポーターにおける特異的結合を50%阻害するのに必要な化合物濃度)を得た。
【0142】
次いでIC50値からCheng-Prussoff方程式により阻害解離定数(Ki)値を計算した。
被験化合物についての各Ki値の判定に続いて、全幾何平均ならびに95%信頼区間およびn値を計算した。ここで、nは各Ki値の総数である。
【0143】
iv)培地および緩衝液
hSERT細胞増殖培地
DMEM、10 % (w/v)透析FCS
2 mMのL-グルタミン(200 mM原液から希釈)
25 mMのHEPES (1 M原液から希釈)
250 μg/mLのゲネチシン(genetecin)
hNET細胞増殖培地
DMEM、10 % (w/v) FCS
2 mMのL-グルタミン(200 mM原液から希釈)
25 mMのHEPES (1 M原液から希釈)
250 μg/mLのゲネチシン
膜調製用緩衝液
20 mMのHEPES (1M原液からddH2Oで希釈)、pH 7.4、室温で4℃に保存。使用前に、緩衝液50 mL当たり1個の完全プロテアーゼ阻害薬錠を溶解した;
アッセイ用緩衝液(最終アッセイ濃度の1.5倍)
30 mMのHEPES (1M原液からddH2Oで希釈)および180 mMのNaCl (5M原液からddH2Oで希釈)、pH 7.4、室温で4℃に保存。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩の計算した粉末X線回折図である。
【図2】2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩、試料A[例2A]の測定した粉末X線回折図である(Bruker-AXS ltd D5000粉末X線回折計を使用)。
【図3】2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩、試料B[例2]の測定した粉末X線回折図である(Bruker-AXS ltd D4粉末X線回折計を使用)。
【図4】2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩、試料A[例2A]のDSCサーモグラムである(TA Instruments Q1000示差走査熱量計を使用)。
【図5】2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩、試料B[例2]のDSCサーモグラムである(Perkin Elmer Diamond示差走査熱量計を使用)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3-ジクロロ-N-シクロペンチル-N-[(3S)-ピロリジン-3-イル]ベンズアミド半クエン酸塩。
【請求項2】
Cu Kα線(波長=1.5406Å)を用いて測定した際に12.9、15.0、15.2、18.4および20.0°の2θ±0.1°に主ピークを示す粉末X線回折図(PXRD)パターンを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物を、医薬用または動物薬用として許容できる希釈剤および他の任意賦形剤と共に含む、医薬組成物または動物薬組成物。
【請求項4】
錠剤の形である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
他の任意賦形剤が、圧縮助剤、錠剤に光沢を付与するための添加剤、崩壊剤、および滑沢剤から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
カプセル剤の形である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
他の任意賦形剤が、不活性希釈剤、乾燥した崩壊剤、および滑沢剤から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の化合物を含む、非経口投与用として適切な無菌水性液剤。
【請求項9】
ヒトにおいて尿失禁、痛み、線維筋痛、ADHD、またはうつ病の処置に使用するための、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項10】
ヒトにおいて尿失禁の処置に使用するための、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
動物において尿失禁の処置に使用するための、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項12】
尿失禁が、真性ストレス性失禁(GSI)、ストレス性尿失禁(SUI)、または高齢のヒトもしくは動物における尿失禁である、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
ヒトにおいて尿失禁、痛み、線維筋痛、ADHD、またはうつ病を処置するための医薬の製造における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項14】
ヒトにおいて尿失禁を処置するための、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
動物において尿失禁を処置するための医薬の製造における、請求項1または2に記載の化合物の使用。
【請求項16】
尿失禁が、真性ストレス性失禁(GSI)、ストレス性尿失禁(SUI)、または高齢のヒトもしくは動物における尿失禁である、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
尿失禁、痛み、線維筋痛、ADHD、またはうつ病を処置する方法であって、その処置を必要とするヒト患者に療法有効量の請求項1または2に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項18】
ヒトにおいて尿失禁を処置する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
尿失禁を処置する方法であって、その処置を必要とする動物患者に請求項1または2に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項20】
尿失禁が、真性ストレス性失禁(GSI)、ストレス性尿失禁(SUI)、または高齢のヒトもしくは動物における尿失禁である、請求項18または19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−314534(P2007−314534A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−133943(P2007−133943)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】