説明

医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者登録方法

【課題】医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者を登録する方法を提供する。
【解決手段】比較対象要因と登録調整因子を決定し、前記被験者の比較対象要因と登録調整因子の水準を記録する。そして、各比較集団において既に登録された被験者のうち各登録調整因子の同一水準に属する被験者数の総和と、各比較集団の目標とする登録被験者数とに基づいて、事前に仮登録された被験者について仮登録から本登録へ移行する確率を設定し、前記確率に従って、仮登録された被験者を本登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者として、患者を分類して登録するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
新医薬品の承認申請において、患者を被験者とした臨床試験が行われる。この臨床試験では、被験者となり得る研究対象者を、予後に影響を与えると考えられる要因(以下、比較対象要因という)で構成された群(以下、比較群という)に、作為又は無作為に割付ける。そして、割付けられた比較群間で予後の結果を比較することによって比較対象要因を評価することが行われる。ここで、比較対象要因とは、例えば、新治療法の有無、従来治療法と新治療法、従来予防法と新予防法であり、割付とは、予め定められた規則に基づき被験者を特定の群に所属させていくこと(介入)或いはその作業を指す。割付は、被験者の背景因子が比較群の間で均一になるように実施される。
【0003】
上記のような臨床試験等を経て製造承認された医薬品は、製造販売後に製造業者によって観察研究が行われる。観察研究は、臨床試験のような介入を行わず、日常診療下で被験者の情報を収集することにより、医薬品の有効性・安全性を確認すると共に、開発段階では得られなかった医薬の適正使用に関する情報の収集及び提供を目的としている。
【0004】
また、費用や倫理的配慮などの点から、介入を伴う臨床試験の実施が不可能な場合にも、観察研究が実施される。観察研究では、被験者を特定の群に所属させるという割付を行わず(介入がない)、被験者の状態に応じて、比較対象要因が医師の判断で決定されるため、比較対象要因の水準で構成された集団(以下、比較集団という)間で背景因子に偏りが生じる。このため、介入のないことが比較対象要因に関する情報の比較を困難にしているという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記のような医薬の観察研究又は疫学研究において、被験者の登録を行う際に、有効性及び安全性に影響があると考えられる背景因子に関して比較群間のバランスを計算し、比較群間のアンバランスを最小化することによって、比較集団の比較可能性を向上させる方法を提供することである。
【0006】
また、上記の比較対象要因で構成された比較集団に登録することにより、比較集団間での被験者の背景因子の偏りを小さくして、比較集団の比較可能性を向上させることで、比較対象要因に関する的確な情報が得られる登録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、医薬品の安全性及び有効性を確認するために、観察研究又は疫学研究において、比較集団間の背景因子の分布に偏りをなくすように登録を制御する方法として用いられる。
【0008】
以下、調査対象となる被験者を登録する手順について説明するが、ここで用いられる用語の意味は、次のとおりである。
(1)比較対象要因と登録調整因子
本発明において、比較対象要因は、被験者が保有する要因のうち、観察研究又は疫学研究で比較しようと考えるものである。その要因の差異によって、治療の効果や副作用等が変化するか否か、変化する場合は、その変化の度合がどの程度であるか等について調査研究を行う。
【0009】
比較対象要因としては、被験者の遺伝子多型、嗜好、既往症、合併症、運動頻度、学歴等が挙げられるが、観察研究又は疫学研究の目的に応じて適宜設定すればよく、これらに限定されない。
【0010】
また、上記比較対象要因に臨床的に影響すると考えられる因子を登録調整因子といい、被験者の性別、年齢、遺伝子型、患者状態、癌の転移状態、前治療の有無・種類などが挙げられる。登録調整因子は、観察研究又は疫学研究の目的や比較対象要因に応じて適宜設定されればよく、これらに限定されない。
(2)比較対象要因と登録調整因子の調整及び確率の決定
本発明においては、比較対象要因ごとに被験者を分類するが、その分類時には、被験者の背景情報について水準を記録していく。水準は、登録調整因子ごとに設定されるものであり、各登録調整因子についての被験者の特徴を分類するための符牒である。例えば、登録調整因子が「性別」の場合、水準は、男性1、女性2と設定される。この場合、新たに登録する被験者が男性であれば、「性別」は「1」と記録する。
【0011】
水準ごとに分けて既に登録された被験者の登録調整因子の各々について同一水準に属する被験者数の総和と比較対象要因に基づいて、被験者を本登録へ移行する確率を設定し、当該確率に従って、該当する比較集団に登録する。
【0012】
ここで、当該「確率」は、比較集団間の登録調整因子のずれをどの程度まで許容するか等、研究において必要とされる精度や目的に応じて適宜決定すればよい。
(3)登録の手順
本発明は、複数の比較集団について適用可能である。初めに、2つの集団を比較評価する場合を考える。この場合、比較対象要因をAとBの2つとして説明する。
【0013】
図1に示すように、初めに、対象の被験者をスクリーニングし(STEP1)、被験者に研究の説明をして同意を取得する(STEP2)。次に、比較対象要因A,Bに応じて被験者を分類する(STEP3)。Aの対象者は全て登録する(STEP5)。
【0014】
一方、Bの登録をする場合、次のような採択を行い(STEP4)、それによって逐次、その時点でAとBの間で患者背景等の要因(登録調整因子)が近似するように動的(時間と共に可変)に登録する。このような登録手順を「動的登録」と称する。
【0015】
なお、AとBの間で登録調整因子が近似するということは、Aに分類される被験者の集団における登録調整因子の水準の分布(度数分布)と、Bに分類される被験者の集団における登録調整因子の水準の分布(度数分布)とが近似することを意味する。例えば、登録調整因子が「性別」である場合、Aに分類される被験者の集団における「性別」の水準の分布、すなわち、男性の人数と女性の人数との割合と、Bに分類される被験者の集団における男性の人数と女性の人数との割合とが近似することを意味する。
【0016】
詳細には、本発明の方法で以下のように設定される確率に基づき、採択か否か(本登録の可否)を判定し(STEP4)、「否」であれば当該被験者は不参加とし(STEP6)、「採択」のとき本登録(STEP5)を行う。こうして登録(本登録)された被験者は、以後の治療等の経過について追跡される(STEP7)。一方、STEP4で不採択とされた被験者は本調査の対象から除外されるため、以後の追跡は行わない。
【0017】
既に登録された被験者の各登録調整因子に対し、比較対象要因Bの被験者の集団に新たに組み入れようとする被験者と同じ水準に属する比較対象要因Aの被験者数の総和をSa、同様にBの被験者数をSbとし、A、Bにおいて登録する被験者数(目標とする登録症例数)をca,cbとし、Xi(i=1,2,…,n)を、比較対象要因A、Bの集団間(比較集団間)のバランスの度合を表す区分値として、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数(登録確率)としたとき、
前記確率は、Bにおいては、例えばいずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c2)×S2のときYi[%]、それ以外では0[%]とし(登録しない)、Aにおいては、100[%]とする(全登録)。つまり、被験者の登録は既に登録された被験者からなる比較対象要因の集団間(比較集団間)のバランスの程度区分とそれに付随する登録確率に基づき実行される訳である。例えば、n=3、X1=1、X2=0.9、X3=0.8、Y1=100、Y2=10、Y3=5というように、比較対象要因の集団間のバランスの程度は4区分(〜1.0、1.0〜0.9、0.9〜0.8、0.8〜)、各区分に割り当てる確率はそれぞれ100%、10%、5%、0%となる。なお、Bの選択条件の追加及び選択確率、あるいは選択確率の種類数は、変更可能である。また、Sa及びSbは被験者数だけでなく、既に登録された被験者数に対し、新たに組み入れようとする被験者と同じ水準に属する比較対象要因A、Bの被験者数の割合としてもよい。
【0018】
次に、集団が3つの場合は、次のようになる。
【0019】
複数の集団のうち第1の集団における前記被験者数の総和をS1、第2の集団における前記被験者数の総和をS2、第3の集団における前記被験者数の総和をS3とし、各3つの集団において登録する被験者数をそれぞれc1,c2,c3とし、Xi(i=1,2,…,n)を、比較対象要因の集団間(比較集団間)のバランスの度合を表す区分値として、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数(登録確率)としたとき、
前記確率は、前記第3の集団においては、例えばいずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c3)×S3のときYi[%]、それ以外では0[%]とし、
前記第2の集団においては、いずれかのiに対してXi×S2≦(c2/c1)×S1のときYi[%]、それ以外では0[%]とし、前記第3の集団においては、100%とする。なお、Xi及びYiは前記第2、3の集団で異なる値を設定してもよい。
【0020】
本発明によれば、上記のように、各集団において既に登録された被験者のうち、前記登録調整因子の各々について仮登録された被験者と同一水準の被験者数の総和と、各集団において登録する被験者数とに基づいて、仮登録された被験者を本登録へ移行する確率を設定し、当該確率に従って、仮登録された被験者を該当する集団に登録するようにしたので、比較集団間で被験者の背景等の要因の偏りが小さくなって、比較対象要因に関する的確な情報が得られる。
【0021】
また、本発明によれば、医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者を登録する登録処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。これは、前記のすべてのステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0022】
更に、本発明によれば、医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者を登録する被験者登録システムは、比較対象要因の水準で分けた比較集団を設定し、前記集団の各々に属する被験者を、予め定めた複数の登録調整因子について当該被験者の水準と共に記録する記憶装置と、前記各集団において既に登録された被験者のうち各登録調整因子の同一水準に属する被験者数の総和と、前記各集団において登録する被験者数とに基づいて、仮登録された被験者を本登録へ移行する確率を設定し、前記確率に従って、仮登録された被験者を該当する集団に登録する登録処理装置とを備えたことを特徴とする。
【0023】
更に、上記被験者登録システムは、前記複数の比較集団のうち第1の集団における前記被験者数の総和をS1、第2の集団における前記被験者数の総和をS2とし、該第1、第2の集団において登録する被験者数をc1,c2とし、Xi(i=1,2,…,n)を、比較対象要因の集団間(比較集団間)のバランスの度合を表す区分値として、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数(登録確率)としたとき、
前記登録処理装置は、前記確率を、前記第1の集団においては、いずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c2)×S2のときYi[%]、それ以外では0[%]に設定し、前記第2の集団においては、100[%]に設定する手段を備えることを特徴とする。
【0024】
あるいは、上記被験者登録システムは、前記複数の比較集団のうち第1の集団における前記被験者数の総和をS1、第2の集団における前記被験者数の総和をS2、第3の集団における前記被験者数の総和をS3とし、該3つの集団において登録する被験者数をc1,c2,c3とし、Xi(i=1,2,…,n)を、比較対象要因の集団間(比較集団間)のバランスの度合を表す区分値として、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数(登録確率)としたとき、
前記登録処理装置は、前記確率を、前記第1の集団においては、いずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c3)×S3のときYi[%]、それ以外では0[%]に設定し、前記第2の集団においては、いずれかのiに対してXi×S2≦(c2/c1)×S1のときYi[%]、それ以外では0[%]に設定し、前記第3の集団においては、100[%]に設定する手段を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明のコンピュータプログラム及び被験者登録システムによれば、コンピュータで本発明の方法を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の方法を用いて、観察対象となる被験者を登録する一般的な症例登録の手順を示す図。
【図2】本発明の方法を用いて、CPT-11などの抗がん剤の副作用を観察研究する図。比較対象要因をUGT1A1遺伝子多型とし、登録調整因子を性別、年齢、PS (performance status)、レジメン、分子標的薬、施設とした研究の登録事例を示す図。
【図3】本発明の方法を実行する登録処理システムの主要部の構成を示す図。
【図4】遺伝子の型によって分けて登録される複数の症例登録群の例を示す図。
【図5】本発明に関するシミュレーションより得られたデータの代表例を示す図。
【図6】本発明に関するシミュレーションより得られたデータの代表例を示す図。
【図7】本発明に関するシミュレーションより得られたデータの代表例を示す図。
【図8】本発明に関するシミュレーションより得られたデータの代表例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態は、例えば、次のような観察研究に用いられる。但し、これらの例に限定されるわけではなく、医薬の承認申請後の製造販売段階で行われる観察研究又は疫学研究における全ての症例登録に適用可能である。
(1)CPT-11などの抗がん剤の副作用
比較対象要因:UGT1A1遺伝子多型
登録調整因子:性別、年齢、PS (performance status)、レジメン、分子標的薬、施設
(2)プラスグレルやクロピドグレルなどの抗血小板薬の心血管系疾患発症抑制作用
比較対象要因:P2Y12遺伝子多型
登録調整因子:性別、年齢、LDLコレステロール値、糖尿病、高血圧、前治療薬、喫煙
(3)オルメサルタンやロサルタンなどの降圧薬の脳血管系疾患発症への影響
比較対象要因:嗜好(高塩分メニューの接種頻度あるいは塩分摂取量など)
登録調整因子:性別、年齢、LDLコレステロール値、血圧値、糖尿病、喫煙
(4)患者属性の服薬コンプライアンス遵守状況への影響
比較対象要因:学歴や既往歴・合併症、血液型など
登録調整因子:性別、年齢、前治療薬
(5)運動習慣の脳血管系疾患発症への影響
比較対象要因:運動頻度
登録調整因子:性別、年齢、LDLコレステロール値、糖尿病、高血圧、前治療薬、喫煙

上記の観察研究のうち、抗がん剤の観察研究である使用成績調査に本発明の方法を適用する場合について、具体的に説明する。本実施形態では、特定の抗がん剤の副作用について調査し、治療など必要な措置をとるために、調査対象となる被験者(この場合、患者)の症例登録を行う。
【0028】
前提として、比較集団間の患者背景で、副作用の危険性が患者のUGT1A1遺伝子多型(ワイルド型、ヘテロ型、ホモ型に分けられている)によって異なることが知られている。そして、臨床現場における遺伝子多型別の患者は、ホモ型が非常に少ない。そこで、抗がん剤の有効性及び安全性をUGT1A1遺伝子多型間で比較評価するために、数の少ないホモ型の患者を積極的に登録し、ワイルド型とヘテロ型の登録を制御し、登録調整因子について、比較集団間の患者背景の分布に偏りをなくすように登録を制御する方法として、本発明が用いられる。この場合、登録調整因子としては、上記(1)に記載した如く、性別、年齢、PS (performance status)、レジメン、分子標的薬、施設が用いられる。
【0029】
ここで、「UGT1A1」とは、肝臓に存在する代謝酵素UDPグルクロン酸転移酵素(UGT: uridine diphosphate glucuronosyl transferase)の一種であり、その遺伝子多型(UGT1A1*28、UGT1A1*6)は、ある種の抗癌剤の副作用発現に関与することが知られている。
【0030】
本明細書においては、被験者の遺伝子多型について、いずれもが野生型としてもつ場合をワイルド型、いずれかをヘテロ接合体としてもつ場合をヘテロ型、いずれかがホモ接合体(UGT1A1*6/*6、UGT1A1*28/*28)としてもつか或いはいずれもヘテロ接合体(UGT1A1*6/*28)としてもつ場合をホモ型と称する。
【0031】
以下、調査対象となる被験者を登録する症例登録の手順を説明する。
【0032】
図2に示すように、調査担当者(医師)は、患者スクリーニング(ST11)を経て遺伝子多型検査を行い(ST12)、その検査結果により選択基準に合致した患者に対して、本調査への参加について患者に説明し同意を得る(ST13)。
【0033】
次に、本発明の方法を用いて遺伝子多型別の症例登録を行う。その前提として、各UGT1A1遺伝子多型(ワイルド型、ヘテロ型、ホモ型)の調査予定症例数c1,c2,c3を、臨床的及び統計的背景に基づいてそれぞれ600、1100、300とする。これらの中で、ホモ型の患者は人口の10%程度と少ないことから、ホモ型の目標症例数が300例に達するように、各施設との契約時にホモ型の目標症例数を明らかにする。
【0034】
各施設において、契約時に定めたホモ型の症例数に達した場合は、それ以降の当該施設におけるホモ型の症例登録可否については調査依頼者と協議する。同様に、ホモ型以外の遺伝子多型(ワイルド型及びヘテロ型)の症例数が契約時に定めた例数に達した場合には、それ以降の当該施設におけるホモ型以外の遺伝子多型の症例登録は受け付けないものとする。
【0035】
調査担当者は、上記ST13での同意取得後、治療開始(予定)日から14日経過するまでの間に、登録処理システム(EDC:Electrical Data Capturing )の入力装置(具体的には、入力端末の表示画面)から登録を行う(但し、治療開始日から15日以上経過してからの登録は受け付けない)。
【0036】
次に、遺伝子多型別の症例登録を行う。この登録処理は、例えば、ホストコンピュータとこれに接続する入力端末(表示装置を含む)で構成される登録処理システムによって実行される。図3は、その主要部の構成を示す。
【0037】
図3に示す登録処理システムは、CPU1と、ここで演算処理されるデータや演算結果を格納(記憶)する記憶装置2とを備えている。CPU1は、本発明の方法を実現する機能実現手段として格納されたコンピュータプログラムに従って、後述の動的登録処理を実行する。なお、入力端末(表示装置を含む)には、例えば、調査実施施設に設置されたコンピュータ端末等を用いることができる。
【0038】
図2に戻ると、上記ST13で同意を得た患者(被験者)の比較対象要因(遺伝子多型)と登録調整要因とを含む情報が入力端末からコンピュータに入力される。このとき、コンピュータのCPU1は、以下に説明する処理(ST14〜ST18の動的登録の処理)を実行する。
【0039】
CPU1は、各々の遺伝子型により2群(ホモ型の群と、ワイルド型又はヘテロ型の群)に分ける(ST14)。
【0040】
さらにCPU1は、ワイルド型又はヘテロ型の対象者(症例)については、全例を一次登録(ST15:仮登録)後、本発明の方法で設定される確率に基づき採択か否か(本登録の可否)を判定し(ST16)、「否」であれば当該患者は不参加とし(ST18)、「採択」のとき本登録(ST17)を行う。この本登録では、CPU1は、当該患者の情報(遺伝子多型、登録調整要因を含む)を遺伝子多型別に記憶装置2に記録する。こうして登録(本登録)された症例は、以後の治療等の経過について追跡される(ST19)。一方、ST16で不採択とされた症例は本調査の対象から除外されるため、以後の追跡は行わない。
【0041】
ホモ型については、全例を本登録する(ST17)。従って、全症例が追跡の対象となる(ST19)。
【0042】
上記の症例登録では、ST14からST18までの手順(動的登録)において、ワイルド型又はヘテロ型については、それまで登録されたホモ型の患者背景(施設、性別、年齢、登録時パフォーマンス(PS)、レジメン(化学療法ステージ1次、2次)、分子標的薬(有、無))を登録調整因子として、仮登録されたワイルド型又はヘテロ型の患者を本登録に移行するかどうか判定する。その際、ワイルド型又はヘテロ型とホモ型との間で上記患者背景の分布が類似するように、ワイルド型又はヘテロ型の本登録への移行確率を動的に変化させる。その動的確率は、後述のように設定される。
【0043】
まず、新たに組み入れられたワイルド型又はヘテロ型の患者(仮登録)について、既に登録されたワイルド型の中で各登録調整因子の水準に属する患者数の総和をSwildとし、同様にヘテロ型、ホモ型の患者数をそれぞれShete、Shomoとする。これら3つの数値は、次式で算出される。
<遺伝子多型毎の患者数の総和>
Swild = 同一性別のワイルド型の患者数
+同一年齢区分のワイルド型の患者数
+同一PSのワイルド型の患者数
+同一レジメンのワイルド型の患者数
+同一の分子標的薬をもつワイルド型の患者数
+同一施設のワイルド型の患者数
Shete = 同一性別のヘテロ型の患者数
+同一年齢区分のヘテロ型の患者数
+同一PSのヘテロ型の患者数
+同一レジメンのヘテロ型の患者数
+同一の分子標的薬をもつヘテロ型の患者数
+同一施設のヘテロ型の患者数
Shomo = 同一性別のホモ型の患者数
+同一年齢区分のホモ型の患者数
+同一PSのホモ型の患者数
+同一レジメンのホモ型の患者数
+同一の分子標的薬をもつホモ型の患者数
+同一施設のホモ型の患者数
なお、上記の「同一」というのは、仮登録された患者の各登録調整因子と同一であることを意味する。
<動的確率>
上記のSwild、Shete、Shomoを用いて、新たに仮登録された患者に対して、仮登録から登録への移行確率を、以下のように定める。調査の主目的はワイルド型とホモ型、及びワイルド型とヘテロ型の有効性及び安全性を比較することであるため、各々の比較の遺伝子型(SwildとShomo、SwildとShete)を用いて移行確率を設定する。
【0044】
なお、目標症例数は、前述のように、c1(ワイルド型):c2(ヘテロ型):c3(ホモ型)=600:1100:300である。
【0045】
ワイルド型の場合:
Swild ≦2(=c1/c3)×Shomoであれば、確率100%で登録する
0.9×Swild <2×Shomoであれば、確率10%で登録する
0.8×Swild <2×Shomoであれば、確率5%で登録する
上記以外の場合であれば、確率0%とする(登録しない)。
【0046】
ヘテロ型の場合:
Shete ≦11/6(=c2/c1)×Swildであれば、確率100%で登録する
0.9×Shete < 11/6 ×Swildであれば、確率10%で登録する
0.8×Shete < 11/6 ×Swildであれば、確率5%で登録する
上記以外の場合であれば、確率0%とする(登録しない)。
【0047】
ホモ型の場合:
確率100%で登録する(全例登録)。
【0048】
補足すると、上記のように確率を設定する例は、本発明におけるn、Xi(i=1,2,…,n)、Yi(i=1,2,…,n)を、n=3、X1=1、X2=0.9,X3=0.8、Y1=100、Y2=10、Y3=5とした場合の例である。
【0049】
また、確率P%で登録(本登録)するという処理は、例えば1から100までの値の範囲内の乱数を発生し、その乱数の値がP以下の値であるか否かによって、登録するか否かを決定するようにすればよい。なお、乱数の発生は、公知の乱数発生器により行なうようにすればよい。
【0050】
また、登録調整因子(水準を1、2、・・・で表わす)は、次のように定められる。
(A)性別(男性を1、女性を2とする)
(B)年齢(65歳未満を1、65歳以上を2とする)
(C)PS(PS0を1、PS1−2を2とする)
(D)レジメン(FOLFIRI(1次治療)を1、IRIS(1次治療))を2、FOLFIRI(2次治療)を3、IRIS(2次治療)を4、CPT-11単独(2次治療)を5とする)
(E)分子標的薬(無し(1次治療)を1、ベバシズマブ(1次治療)を2、無し(2次治療)を3、セツキシマブ(2次治療)を4、ベバシズマブ(2次治療)を5とする)
(F)施設(全国の施設番号1〜)
<動的登録>
図3に示す登録処理システムは、新たに仮登録された患者(被験者)について遺伝子多型別に登録条件を定める。そのため、CPU1は、前述のように設定した確率に基づき、本登録する否かを判定し、本登録と判定した患者を、上記登録調整因子A〜Fの水準と共に、遺伝子多型別の集団(a)(b)(c)に登録する。ここで、(a)は対照登録、(b)及び(c)は比較登録の集団であり、本実施形態では、ホモ型(Homo)を対照登録、ワイルド型(Wild)及びヘテロ型(Hetero)を比較登録の集団とする。
【0051】
具体的には、前述の手順で仮登録の患者を本登録する場合は、遺伝子多型別の登録群(a)(b)(c)のいずれかに、図4に示すように、当該患者の番号と、これに対応して登録調整因子A〜Fの水準を表わす値とが格納される。
【0052】
本実施形態によれば、遺伝子多型別の各集団において既に登録された被験者のうち登録調整因子A〜Fについて同一水準(値)の被験者数の総和Swild、Shete、Shomoと、各集団において登録する被験者数c1、c2、c3とに基づいて、事前に仮登録された被験者について仮登録から本登録へ移行する確率を設定し、当該確率に従って、仮登録された被験者をその型に対応する集団(a)(b)(c)に登録するようにしたので、比較する集団(a)と(c)あるいは(b)と(c)の間で被験者の背景等の要因(登録調整因子)の偏りが小さくなって、的確な情報が得られる。
【0053】
以上のとおり、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限られない。例えば、被験者を登録する集団は遺伝子多型によって分けているが、分ける条件は、調査の目的や対象によって異なるものであり、例えば、血液型で分けることも考えられる。
【0054】
次に、本発明の効果を検証するためのシミュレーションについて以下に説明する。
【0055】
本願発明者は、比較対象要因の例として遺伝子多型を用い、被験者をその遺伝子多型に応じてワイルド型とホモ型とに分類して登録する場合について以下のシミュレーションを行なった。
【0056】
このシミュレーションでは、ワイルド型及びホモ型のトータルの目標症例数と、ワイルド型の登録確率(Yi)と、ワイルド型及びホモ型のそれぞれの発生確率(以降、遺伝子多型別発生確率という)とをそれぞれ3種類のパターンで設定した。従って、目標症例数、ワイルド型の登録確率、遺伝子多型別発生確率の組合せのパターン数をトータル27種類とした。
【0057】
この目標症例数、ワイルド型の登録確率(Yi)、遺伝子多型別発生確率のそれぞれの3種類の設定パターンは次の通りである。
【0058】
目標症例数;
(A1)200(1群当たり、100例)
(A2)1500(1群当たり、750例)
(A3)4000(1群当たり、2000例)
ワイルド型の登録確率;
(B1)100%,80%,50%,0%
(B2)100%,50%,25%,0%
(B3)100%,10%,5%,0%
遺伝子多型別発生確率;
(C1)ワイルド型:ホモ型=85%:15%
(C2)ワイルド型:ホモ型=50%:50%
(C3)ワイルド型:ホモ型=65%:35%

ここで、上記目標症例数に関する「1群当たり」の症例数は、各遺伝子多型(ワイルド型及びホモ型のそれぞれ)の目標症例数を意味している。従って、シミュレーションでは、ワイルド型及びホモ型のそれぞれの目標症例数は、同じである。
【0059】
また、前記遺伝子多型別発生確率は、シミュレーション上で仮想的に出現させる被験者の遺伝子多型がワイルド型及びホモ型のいずれであるかを規定する確率である。また、ホモ型の被験者の登録確率は、前記した実施形態と同様に100%である。
【0060】
なお、以降の説明では、上記(B1)、(B2)、(B3)のそれぞれにおける4個の登録確率の値をそれぞれ大きい値から順にBB1,BB2,BB3,BB4という参照符号により表す。
【0061】
また、シミュレーションでは、登録調整要因を性別のみとし、仮想的に出現させる被験者の性別を、確率的に決定するものとした。この場合、仮想的に出願させる被験者がワイルド型である場合とホモ型である場合とのそれぞれの場合において、該被験者が男性である確率(以下、男性発生確率という)を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の9種類のパターンで設定した。従って、ワイルド型における男性発生確率とホモ型における男性発生確率との組合せのパターン数は、トータル81種類とした。
【0062】
そして、本シミューレーションは、目標症例数、ワイルド型の登録確率及び遺伝子多型別発生確率と、ワイルド型及びホモ型のそれぞれにおける男性発生確率とを上記の組合せパターンで設定し、その各組合せパターン毎に、次のようにシミューレーションを実行した。
【0063】
すなわち、コンピュータによって仮想的な被験者を出現させる。この場合、仮想的に出現させる各被験者の遺伝子多型と、性別とをそれぞれ、設定された遺伝子多型別発生確率、男性発生確率に従って決定する。
【0064】
次いで、図2のST14〜ST18と同様の処理によって、仮想的な被験者の登録を行なう。この場合、仮想的な被験者がホモ型である場合には、100%の登録確率で登録(本登録)される。
【0065】
一方、仮想的な被験者がワイルド型である場合には、次のように登録確率を決定し、その決定した登録確率に従って、当該仮想的な被験者を登録(本登録)するか否か(採択するか否か)決定する。そして、採択する場合には、当該被験者を登録し、採択しない場合には、当該被験者を登録しない。
【0066】
0.98×Swild≦Shomoであれば、登録確率=BB1[%](=100%)
0.95×Swild≦Shomo<0.98×Swildであれば、登録確率=BB2[%]
0.9×Swild≦Shomo<0.95×Swildであれば、登録確率=BB3[%]
上記以外の場合であれば、登録確率=BB4[%](=0%)
なお、このように登録確率を設定する例は、本発明におけるn、X1、X2、X3、Y1、Y2、Y3の値をそれぞれ、n=3、X1=0.98、X2=0.95、X3=0.9、Y1=BB1(=100)、Y2=BB2、Y3=BB3とした場合に相当する。
【0067】
本シミューションでは、以上の登録処理が、ホモ型の被験者の登録数(症例数)と、ワイルド型の被験者の登録数(症例数)とがそれぞれ設定された目標症例数(1群当たりの目標症例数)に達するまで行なわれる。この場合、ホモ型及びワイルド型の一方が目標症例数に達すると、その一方の遺伝子多型については、以後の登録(本登録)が禁止される。そして、ホモ型及びワイルド型の両方が目標症例数に達すると、本シミュレーションを終了する。
【0068】
さらに、本シミュレーションは、目標症例数、ワイルド型の登録確率(Yi)及び遺伝子多型別発生確率と、ワイルド型及びホモ型のそれぞれにおける男性発生確率との各組合せパターン毎に、所定の反復回数だけ繰り返される。このシミュレーションの反復回数(目標症例数、ワイルド型の登録確率(Yi)及び遺伝子多型別発生確率と、ワイルド型及びホモ型のそれぞれにおける男性発生確率とをある1つの組合せパターンに設定した状態での反復回数)は、1000回とした。
【0069】
次に、以上のシミュレーション結果を基に、評価指標を算出した。本例では、目標症例数、ワイルド型の登録確率(Yi)及び遺伝子多型別発生確率と、ワイルド型及びホモ型のそれぞれにおける男性発生確率との各組合せパターン毎に、各シミュレーションで登録されたワイルド型の被験者の集団における男性の割合とホモ型のワイルド型の被験者の集団における男性の割合との差(以下、割合差という)の平均値AVE_FIG(b)と標準偏差SD_FIG(c)とを上記評価指標として算出した。
【0070】
上記割合差の平均値AVE_FIG(b)と標準偏差SD_FIG(c)とは、次式1,2により算出される。
【0071】
【数1】

ここで、Rはシミュレーションの反復回数(=1000)、Pw_iは、第i番目の反復回数におけるシミュレーションで登録されたワイルド型の被験者の集団での男性の割合[%]、Ph_iは、第i番目の反復回数におけるシミュレーションで登録されたホモ型の被験者の集団での男性の割合[%]、Pdiff_iは、上記Pw_iとPh_iの差、すなわち、第i番目の反復回数におけるシミュレーションでの前記割合差である。
【0072】
上記割合差の平均値AVE_FIG(b)は、その値の大きさ(絶対値)が小さいほど、比較集団間のバランスがとれていること、より詳しくは、登録されたワイルド型の被験者の集団における性別(登録調整因子)の度数分布と、ホモ型の被験者の集団における性別(登録調整因子)の度数分布とが近似度合いの高い分布となることを表す。
【0073】
また、上記標準偏差SD_FIG(c)は、その値が小さいほど、比較集団間のアンバランスの軽減の効果が安定して得られる(再現性がある)こと、より詳しくは、登録されたワイルド型の被験者の集団における性別(登録調整因子)の度数分布と、ホモ型の被験者の集団における性別(登録調整因子)の度数分布とが高い再現性で安定に近似した分布となることを表す。
【0074】
以上のシミュレーション結果の代表例を図5〜図8にそれぞれ示す。
【0075】
図5(a),(b),(c)は、目標症例数、ワイルド型の登録確率及び遺伝子多型別発生確率を前記(A1)、(B3)、(C1)としたシミュレーションから得られたデータを示しており、図5(a)は、ワイルド型及びホモ型のそれぞれにおける男性発生確率の各組合せパターン(トータル81種類)毎の、割合差の平均値AVE_FIG(b)及び標準偏差SD_FIG(c)の算出値(SD_FIG(c)の算出値は括弧書き)を示す表、図5(b)はワイルド型の男性発生確率とホモ型の男性発生確率とをそれぞれ横軸、縦軸とするマップにおける割合差の平均値AVE_FIG(b)の分布を等高線で示したグラフ、図5(c)は上記マップにおける割合差の標準偏差SD_FIG(c)の分布を等高線で示したグラフである。
【0076】
同様に、図6(a),(b),(c)は、目標症例数、ワイルド型の登録確率及び遺伝子多型別発生確率を前記(A1)、(B3)、(C2)としたシミュレーションから得られたデータ、図7(a),(b),(c)は目標症例数、ワイルド型の登録確率及び遺伝子多型別発生確率を前記(A3)、(B3)、(C1)としたシミュレーションから得られたデータ、図8(a),(b),(c)は目標症例数、ワイルド型の登録確率及び遺伝子多型別発生確率を前記(A3)、(B3)、(C2)としたシミュレーションから得られたデータである。
【0077】
以上のシミュレーションによって、以下の事項が確認された。すなわち、目標症例数の違いによって、割合差の平均値AVE_FIG(b)はほとんど変化しないが、割合差の標準偏差SD_FIG(c)は、目標症例数が多いほど、小さくなった。このことから、目標症例数が多いほど、比較集団間の登録調整要因(背景要因)の分布のアンバランスを安定して軽減できることが判る。
【0078】
また、遺伝子多型別発生確率に関しては、ホモ型に対するワイルド型の比率が大きくなるほど、割合差の平均値AVE_FIG(b)は小さくなった。このことから、動的登録を行なう被験者(ここではワイルド型の被験者)の登録候補が多くなるほど、比較集団間の登録調整要因の分布のアンバランスをより軽減できることが判る。
【0079】
また、動的登録を行なうワイルド型の登録確率の違い(詳しくは、BB2,BB3の違い)によって、割合差の平均値AVE_FIG(b)はほとんど変化しなかったが、登録確率が厳しくなると、非登録例数が増えた。
【符号の説明】
【0080】
1…CPU、2…記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者を登録する方法であって、
被験者について比較対象要因及び登録調整因子を決定するステップと、
決定された比較対象要因及び登録調整因子について、当該被験者の情報を記録するステップと、
比較対象要因に応じて分類してなる複数の比較集団のそれぞれにおいて既に登録された被験者のうち登録調整因子の同一水準に属する被験者数の総和、及び各比較集団の目標とする登録被験者数に基づいて、事前に仮登録された被験者について仮登録から本登録へ移行する確率を設定するステップと、
前記確率に従って、仮登録された被験者を本登録するステップと
を備えることを特徴とする被験者登録方法。
【請求項2】
請求項1記載の被験者登録方法において、
前記複数の比較集団のうち第1の集団における前記被験者数の総和をS1、第2の集団における前記被験者数の総和をS2とし、該第1、第2の集団において登録する被験者数をc1,c2とし、Xi(i=1,2,…,n)を、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数としたとき、
前記確率は、前記第1の集団においては、いずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c2)×S2のときYi[%]、それ以外では0[%]とし、前記第2の集団においては、100[%]とすることを特徴とする被験者登録方法。
【請求項3】
請求項1記載の被験者登録方法において、
前記複数の比較集団のうち第1の集団における前記被験者数の総和をS1、第2の集団における前記被験者数の総和をS2、第3の集団における前記被験者数の総和をS3とし、該3つの集団において登録する被験者数をc1,c2,c3とし、Xi(i=1,2,…,n)を、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数としたとき、
前記確率は、前記第1の集団においては、いずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c3)×S3のときYi[%]、それ以外では0[%]とし、
前記第2の集団においては、いずれかのiに対してXi×S2≦(c2/c1)×S1のときYi[%]、それ以外では0[%]とし、
前記第3の集団においては、100[%]とすることを特徴とする被験者登録方法。
【請求項4】
医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者を登録する登録処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
比較対象要因と登録調整因子を取得し、前記被験者の比較対象要因と登録調整因子の水準を記録するステップと、
前記比較対象要因に応じて分類してなる複数の比較集団のそれぞれにおいて既に登録された被験者のうち各登録調整因子の同一水準に属する被験者数の総和と、各比較集団の目標とする登録被験者数とに基づいて、事前に仮登録された被験者について仮登録から本登録へ移行する確率を設定するステップと、
前記確率に従って、仮登録された被験者を本登録するステップと
を備えることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項5】
医薬の観察研究又は疫学研究のための被験者を登録する被験者登録システムにおいて、比較対象要因と登録調整因子を取得し、前記被験者の比較対象要因と登録調整因子の水準を記録する記憶装置と、比較対象要因に応じて分類してなる複数の比較集団のそれぞれにおいて既に登録された被験者のうち各登録調整因子の同一水準に属する被験者数の総和と、各比較集団の目標とする登録被験者数とに基づいて、事前に仮登録された被験者について仮登録から本登録へ移行する確率を設定し、前記確率に従って、仮登録された被験者を本登録する登録処理装置とを備えたことを特徴とする被験者登録システム。
【請求項6】
請求項5記載の被験者登録システムにおいて、
前記複数の比較集団のうち第1の集団における前記被験者数の総和をS1、第2の集団における前記被験者数の総和をS2とし、該第1、第2の集団において登録する被験者数をc1,c2とし、Xi(i=1,2,…,n)を、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数としたとき、
前記登録処理装置は、前記確率を、前記第1の集団においては、いずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c2)×S2のときYi[%]、それ以外では0[%]に設定し、前記第2の集団においては、100[%]に設定する手段を備えることを特徴とする被験者登録システム。
【請求項7】
請求項5記載の被験者登録システムにおいて、
前記複数の比較集団のうち第1の集団における前記被験者数の総和をS1、第2の集団における前記被験者数の総和をS2、第3の集団における前記被験者数の総和をS3とし、該3つの集団において登録する被験者数をc1,c2,c3とし、Xi(i=1,2,…,n)を、X1>X2>……>Xn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数とし、Yi(i=1,2,…,n)を、100≧Y1>Y2>……>Yn>0となるようにあらかじめ設定したn個の定数としたとき、
前記登録処理装置は、前記確率を、前記第1の集団においては、いずれかのiに対してXi×S1≦(c1/c3)×S3のときYi[%]、それ以外では0[%]に設定し、前記第2の集団においては、いずれかのiに対してXi×S2≦(c2/c1)×S1のときYi[%]、それ以外では0[%]に設定し、前記第3の集団においては、100[%]に設定する手段を備えることを特徴とする被験者登録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−118885(P2011−118885A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245655(P2010−245655)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)