説明

医薬中間体の異性化

本発明は、ビタミンD類似体、例えばカルシポトリオールの合成に有用な化合物の異性化方法、およびそのようなビタミンD類似体を合成するための流通または連続流光反応器の使用に関する。本発明は、さらに、該方法で合成した中間体を、カルシポトリオールもしくはカルシポトリオール一水和物またはそれらの医薬製剤の製造に使用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシポトリオール{(5Z,7E,22E,24S)−24−シクロプロピル−9,10−セココラ−5,7,10(19),22−テトラエン−1α−3β−24−トリオール}の合成に有用なビタミンD類似体の異性化方法、およびそのようなビタミンD類似体を合成するための流通または連続流光反応器の使用に関する。本発明は、さらに、該方法で合成した中間体を、カルシポトリオールもしくはカルシポトリオール一水和物またはそれらの医薬製剤の製造に使用することにも関する。
【背景技術】
【0002】
カルシポトリオールまたはカルシポトリエン(構造I)[CAS 112965-21-6]は、表皮ケラチノサイトの望ましくない増殖の阻害に強い活性を示す[F.A.C.M. Castelijins, M.J. Gerritsen, I.M.J.J. van Vlijmen-Willems, P.J. van Erp, P.C.M. van de Kerkhof;Acta Derm. Venereol. 79, 11, 1999]。乾癬の治療における、カルシポトリオールおよびカルシポトリオール一水和物(I−水和物)の有効性が、多くの臨床試験において示されており[D.M. Ashcroftら;Brit. Med. J. 320, 963-67, 2000]、カルシポトリオールは、現在、いくつかの市販医薬製剤に使用されている。
【0003】
【化1】

【0004】
カルシポトリオールの合成において、その生物学的活性が充分に発揮されるためにはC−5の二重結合が(Z)−立体化学である必要がある。従来開示されたカルシポトリオールIの合成法においては、C−5の立体化学が(E)であるヒドロキシ保護中間体IIaaaを、光触媒としてアントラセンを用いる不特定の方法で実験室規模で光異性して、対応する(Z)異性体IIIaaaとし、次いでシリル保護基を除去してカルシポトリオールIを得る[WO87/00834、M.J. Calverley; Tetrahedron,43(20), 4609-19, 1987; E. Binderup, Drugs of the Future, 第15巻, 第1号, 1990, “Calcipotriol”, M.P. Folkmann, Ph.D. Thesis, The Danish Academy of Technical Science (ATV) EF 488, 1996]。
【0005】
【化2】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献は、化合物IIaaaまたは関連化合物の異性化をスケールアップして大規模製造に適用可能な方法とするにはどうすればよいかを教示していない。したがって、カルシポトリオールの合成に有用なビタミンD類似体を異性化するための、大規模製造に適用可能なルーチンな方法が必要とされている。
【0007】
実験規模の合成光化学を大規模で実施することに伴う問題点が、それを工業的規模にルーチンに適用することを妨げるものとして認識されている。光化学変換は通例、スケールアップすることが不可能ではないとしても困難である。また、特定の光化学反応の有効性はしばしば、特定の反応器および光源の設計などの多くの条件に依存し、それらはいずれも規模に依存する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は、カルシポトリオールの合成に有用なビタミンD類似体の光異性化を行うための、大規模製造に適した方法に関する。本発明者は驚くべきことに、流動式光反応器、例えば流通光反応器または連続流光反応器を使用することにより、式IIIa、IIIb、IIIcおよびIIIdの所望の5(Z)異性体を、好都合な大規模製法において高収率で得られることを見出した。さらに、限定容積のバッチ式反応器を用いる方法と直接比較すると、本発明の方法では照射時間を短縮でき、光異性化生成物をより高い純度で得ることができる。
【0009】
一態様においては、本発明は式IIa、IIb、IIc、IIdまたはIIe:
【化3】

で示されるビタミンD誘導体の溶液を異性化に付して、それぞれ式IIIa、IIIb、IIIc、IIIdまたはIIIe:
【0010】
【化4】

で示されるビタミンD誘導体を生成する方法であって、流通光反応器または連続流光反応器内で光触媒の存在下に適当な光源を用いて、式IIa、IIb、IIcまたはIIdで示されるビタミンD誘導体の溶液を照射することを含んで成る方法に関する。
【0011】
上記式中、
Xは水素または−ORを表し;
、RおよびRは同一または異なっていてよく、独立に、水素またはヒドロキシ保護基を表す。
【0012】
他の一態様においては、本発明は、カルシポトリオール{(5Z,7E,22E,24S)−24−シクロプロピル−9,10−セココラ−5,7,10(19),22−テトラエン−1α−3β−24−トリオール}またはカルシポトリオール一水和物を製造する方法であって、
【0013】
(i)式IIaa:
【化5】

で示されるビタミンD誘導体を、光触媒の存在下に適当な光源を用いて異性化して、式IIIaa:
【化6】

で示されるビタミンD誘導体を生成する工程であって、溶液を流通光反応器または連続流光反応器内で、光源に対して1回通過する連続流として移動させるかまたは複数回通過する連続流として循環させることを特徴とする工程[上記式中、R、RおよびRは同一または異なっていてよく、独立に、水素またはヒドロキシ保護基を表す。];
【0014】
(ii)Rおよび/またはRおよび/またはRが水素でない場合、式IIIaの化合物のヒドロキシ保護基Rおよび/またはRおよび/またはRを除去してカルシポトリオールを生成する工程;および
(iv)場合により、カルシポトリオールを有機溶媒および水の混合物から結晶化して、カルシポトリオール一水和物を生成する工程
を含んで成る方法に関する。
【0015】
更に別の一態様においては、本発明は、上記方法の一つまたはそれ以上の工程を含んで成るカルシポトリオールまたはカルシポトリオール一水和物の製造方法に関する。
【0016】
更に別の一態様においては、本発明は、式IIaaa:
【化7】

で示されるビタミンD誘導体の溶液を異性化に付して、式IIIaaa:
【化8】

で示されるビタミンD誘導体を生成する方法であって、光触媒の存在下に適当な光源を用いて、式IIaaaのビタミンD誘導体の溶液を照射することを含んで成り;
前記溶液を流通光反応器または連続流光反応器内で光源に対して複数回通過連続流として移動させ、
溶液全体のフラクションを、貯留部から流通光反応器または連続流光反応器を経て貯留部に戻すように連続的および反復的に循環させることを特徴とする方法に関する。
【0017】
更に別の一態様においては、本発明は、カルシポトリオールまたはカルシポトリオール水和物の製造における流通光反応器または連続流光反応器の使用に関する。
【0018】
更に別の一態様においては、本発明は、カルシポトリオールまたはカルシポトリオール一水和物を含有する医薬製剤または薬剤、例えばクリーム、軟膏またはゲルを製造するための、前記方法を含んで成る方法に関する。
【0019】
(発明の詳細な説明)
従来の化合物IIaaaの光異性化方法は、工業的規模では特に、多くの欠点を有し、例えば光触媒を多量に必要とし、反応はかなり希釈して行われるので大量の溶媒を必要とする。
【0020】
溶媒コストおよび製造装置体積の点から、工業化学においては反応物質濃度を高くすることが通例好ましい。しかし、光化学において非常に高濃度の反応溶液を使用することは容易ではない。合成有機光化学は通例、イマージョンウェル反応器を用いて溶液中で行われる。それは最も一般的には容積の定められた複数のバッチ式反応器で、1個の水銀放電ランプを用いて内側から照射されるものである。このようなタイプのバッチ式装置は、大規模光化学合成のためには適用が制限される。というのは、光化学の多くは光源からの半径の短い範囲内でしか起こらないので、効果的に光源で照射できる溶液の量が規模に依存するからである。高濃度の吸光性物質はさらに光反応域の厚さを減少し得(光触媒反応は光照射された光触媒の表面上でしか進行しない)、光源から発せられる光子に対する液体の曝露の均一性を低下しうる。バッチ法における高濃度溶液は副反応を助長し得、その結果、希溶液中では多くの光反応が起こるはずである。
【0021】
さらに、従来のバッチ式光異性化方法(例えば化合物IIaaaの)では通例、未反応出発物質(例えば化合物IIaaa)を含有する混合物が得られ、また、しばしば、望ましくない分解物(例えば下記式IVで示される化合物)を多量に含有することが避けられず、それを後でクロマトグラフィーによって除去する手間が必要である:
【化9】

【0022】
通例、適当な反応器設計と、特定の光化学反応のための条件との間の関係は、未だよくわかっていない。したがって、特定の光化学装置および適当な反応条件、例えば反応物質および光触媒濃度、照射時間、および反応器設計の選択は、未だ予測不可能であり、未解決の課題であり、工業的規模の場合には特にそうである。
【0023】
定義
本明細書において使用する「ヒドロキシ保護基」は、目的とする反応に安定な誘導体を形成する任意の基であって、該ヒドロキシ保護基は、再生ヒドロキシ基を攻撃しない試薬によって選択的に除去することができる。該誘導体は、ヒドロキシ保護剤とヒドロキシ基との選択的反応によって得ることができる。シリル誘導体、例えばt−ブチルジメチルシリル形成シリルエーテルは、ヒドロキシ保護基の例である。シリルクロリド、例えば、t−ブチルジメチルシリルクロリド(TBSCl)、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、ジフェニルメチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、およびt−ブチルジフェニルシリルクロリドは、ヒドロキシ保護剤の例である。弗化水素、例えば、アセトニトリル中の水性HF、またはテトラn−ブチルアンモニウムフルオリドは、シリル基を除去することができる試薬の例である。他のヒドロキシ保護基は、エーテル、例えば、テトラヒドロピラニル(THP)エーテル、アルコキシアルキルエーテル(アセタール)、例えばメトキシメチル(MOM)エーテル、もしくはベンジルエーテル、またはエステル、例えば、クロロアセテートエステル、トリメチルアセテート、アセテートもしくはベンゾエートエステルを包含する。全て本発明の範囲に含まれるヒドロキシ保護基ならびに保護および除去の方法の非限定的な例は、例えば“Protective Groups in Organic Synthesis”、第3版、T. W. Greene & P. G. M. Wuts編、John Wiley 1999および“Protecting Groups”、第1版、P. J. Kocienski, G. Thieme 2000に見出すことができ、それらはいずれも引用により本発明の一部とする。
【0024】
本発明において、用語「アルキル」は、炭化水素から水素原子1個を除去して得られる基を意味するものとする。該アルキルは、炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、例えば1〜7個、例えば1〜4個を有する。「アルキル」は、そのサブクラスである直鎖アルキル(n−アルキル)、第二級および第三級アルキル、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基およびt−ブチルジメチル基を包含する。
【0025】
本発明において、用語「実質的な溶解」とは、EもしくはZ体またはそれらの混合物としてのビタミンD誘導体が、完全に溶解しうるか、または部分的に溶解しうる(例えば懸濁液、エマルジョンに)ことを意味するものとする。用語「溶液」は、実質的に溶解した物質を含む。
【0026】
態様
本発明に適当な光化学反応器は、流通(例えば連続流)に適するかまたは適応した光化学に通常用いられる任意の反応器でありうる。そのような反応器は光化学分野でよく知られており、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Photochemistry, A19, 第576〜582頁および第B4巻第116〜120頁、またはInternational Chemical Engineering, 第12巻, 第1号, 1972, 第131〜143に記載されている。光反応器の例は、限定するわけではないが、管型反応器、気泡塔反応器、撹拌槽型反応器、流下膜式反応器またはベルト反応器を包含し、それらはいずれも流通または連続流に適合しうる。異なる反応器の様々な組み合わせを含み、直列または並列のものとして反応器を使用しうる。通例、適当な流通光反応器または連続流光反応器は、長手方向に延びるチャネルを限定する反応器本体を含みうる。チャネルは通例、環状の断面を有し、例えば反応器本体の内壁と、光子透過管(例えば、反応器の内部に、反応器内壁に対して本質的に同軸配置に(すなわち長手方向に中心をおいて、同心配列で)配置される)の外壁との間を通る流体を収容する。適当な光反応器の他の一例は、全体的に円筒形の内壁を有し、その中に同軸配置に中心をおく光ハウジング管を有する直列式反応器である。光反応器は、チャネルを通過する流体内に受動的に乱流を起こすように、機械的に静止した流体力学要素を有しうる。これは例えばWO96/35508およびその中で引用された文献に記載されており、それを引用により本発明の一部とする。
【0027】
本発明の一つまたはそれ以上の態様において、流通光反応器または連続流光反応器は、本質的に軸対称なチューブ状流動反応器であり、その中で溶液が、中心長手方向軸に平行に移動する。本発明の一つまたはそれ以上の態様において、実質的に軸対称なチューブ状流動反応器は、同軸的に配置された少なくとも二つの同心チューブ状空間を有し、例えば長手方向に延びている複数のシリンダまたはチューブの一つがもう一つの内側に配置され、例えば内側のチューブ状空間が光透過性の光源ハウジングを提供し、外側のチューブ状空間が反応チャンバーを提供する。
【0028】
本発明の他の一態様においては、本質的に軸対称なチューブ状流動反応器は少なくとも三つの同心チューブ状空間を有し、例えば三つの同心シリンダまたはチューブの一つが他の一つの内側に配置され、第1のチューブ状空間を作る内側のチューブが光源ハウジングを提供し、第2のチューブ状空間が反応チャンバーを提供し、第3のチューブ状空間が冷却マントルとしての使用に適合している。中心軸に並ぶ照射体積は、例えば約5〜100cm(例えば50〜70cm、例えば60cm)の長さのものでありうる。
【0029】
一つまたはそれ以上の態様において、本発明は、ビタミンD類似体の溶液を光源に対して、1回の通過で移動させるか、または複数回通過の連続流をなして循環させる流通光反応器または連続流光反応器の使用に関する。これにより、好都合な大規模製法として光異性化を実施することが可能となり、多くの利点がもたらされる。この操作モードはまた、光接触流通の調節により、光照射の調節も可能としうる。さらに、いつでも好都合なときに(例えばランプ交換または修理に関連して)、流動を中断および再開しうる。固定バッチ式方法とは異なり、工程の効率が規模に依存しなくなりうる。連続流反応器では、より多量の生成物を得るために反応器を再設計することなく、より長い時間流動させることによって、任意の所望量の原料を処理しうる。すなわち、固定バッチ式反応器と比較して、比較的小さい流通光反応器または連続流光反応器を使用して、より多量のものを光異性化することができる。
【0030】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、ビタミンD類似体の溶液を、流通光化学反応器内で複数回採取および再循環し得、例えば溶液全体のフラクションをレザバ(貯留部)から流通光化学反応器を経てレザバに戻るように連続的および反復的に循環しうる。流通光反応器または連続流光反応器内の溶液循環は、例えば一つまたはそれ以上のレザバに関連して、製造プラントにおける大きな操作上の融通性を与える。例えば、一つまたはそれ以上のさまざまな大きさのバッチ式反応器(レザバ)を用いる製造に関連して、一つの光反応器を使用することができ、例えば一つまたはそれ以上の光反応器を一つまたはそれ以上のレザバユニット(場合により直列または並列に連結しうる)とホースまたはパイプで直列または並列に連結することによって使用しうる。特定の光反応器への供給を、例えば、任意の離れた位置の化学反応器またはレザバから、例えば適当なチューブ、パイプまたはホースによってもたらしうる。さらに、主として流速によって決定される照射時間(滞留時間)を、工程管理によって容易に制御または操作的に調節(バッチ間の基準で)しうる。すなわち、流速または再循環速度の調節によって、溶液の光源曝露時間(光子量)を調節しうる。このようにして、バッチ間変動およびランプの減衰を補正または修正することができ、過照射による分解の危険性を低下することができる。本発明の一つまたはそれ以上の態様において、光反応チャンバー内の反応混合物流が乱流となるような流速を採用する。
【0031】
装置の設計および寸法にとりわけ依存しうる適当な流速は、例えば2〜200L/分、例えば3.6〜100L/分、例えば48〜70L/分、例えば10〜65L/分の範囲、例えば40L/分、41L/分、42L/分、43L/分、44L/分、45L/分、46L/分、47L/分、47.1L/分、47.2L/分、47.3L/分、47.4L/分、47.5L/分、47.6L/分、47.7L/分、47.8L/分、47.9L/分、48L/分、48L/分、48.1L/分、48.2L/分、48.3L/分、48.4L/分、48.5L/分、48.6L/分、48.7L/分、48.8L/分、48.9L/分、49L/分、50L/分、51L/分、52L/分、53L/分、54L/分、55L/分、56L/分、57L/分、58L/分、59L/分、または60L/分でありうる。
【0032】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、流通光反応器または連続流光反応器において、溶液を複数回採取し、再循環させる。
【0033】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、溶液全体のフラクションを、連続的および反復的に、一つまたはそれ以上のレザバから流通光反応器または連続流光反応器を経てレザバに戻すよう循環させ、その溶液は場合によりレザバ内で混合および温度調節する。
【0034】
溶液全体に対する、光反応器内に存在し、実際に照射されている量、例えば光反応器内に見られる量の割合は、通例、溶液全体の0.5〜99%、例えば溶液全体の1〜35%、例えば2〜30%、例えば3〜25%、例えば4〜20%、例えば5〜10%、例えば6〜7%の間で変化しうる。本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、光反応器の照射の体積は約10Lであり、レザバの体積は約170Lである。
【0035】
本発明において、使用する光触媒および反応物質に適したスペクトル範囲および強度を提供する任意の光源またはランプ(複数のランプの群を包含する)を、場合により適当なカットオフフィルタと組み合わせて使用しうる。すなわち、光源なる用語は、適当なカットオフフィルタと組み合わせたランプを包含する。光源はさまざまな形状のものであってよく、ハウジングおよび/または反応チャンバーの形状に適合すること(例えば長さのある光源)が好ましい。適当な光源は、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Photochemistry, A19, 第576〜582頁に記載されたものでありうる。一つまたはそれ以上の態様において、光源は多色光(UV光を包含する)、例えば230〜400nm、例えば270〜350、300〜340、290〜320nm、300〜315nmまたは310〜312nmの範囲の光を提供する。適当な光源は、いくつかの販売元、例えばHeraeus、HanauまたはGuenter H. Peschl(ドイツ、ボーデンハイム)から市販されている。
【0036】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、光源は水銀ランプ、例えば高圧ランプまたは低圧ランプ、とりわけ中圧水銀ランプを含んで成る。中圧または高圧水銀ランプは、他の金属、例えばアンチモン、ビスマス、インジウム、タリウムまたは鉄でドープされていてよい。中圧水銀ランプは例えば、約2〜60kW、例えば3〜20kWまたは3.4〜10kW、例えば3〜7kW、例えば6kWの電力で使用しうる。ランプはとりわけ、例えばTQ718 Hanauランプ、Guenther M. Peschl Z0、Z2またはZ4ランプ、あるいは同様の光子放出特性を有するランプでありうる。ランプの長さは通例、約5〜100cm、例えば約50〜70cm、例えば約55〜65cm、例えば60cmでありうる。
【0037】
光源は、内部に、または反応チャンバーの内側部分から適用し得、例えばランプを取り囲んで照射体積を決定する二つの同心チューブの内側に配置するか、または反応溶液中に浸漬させることができる。反応混合物を反応チャンバーの外側から照射することもでき、例えばそれは、集光反射材の使用または複数のランプの使用によって、例えばRayonet型装置の使用によって行いうる。本発明は、例えば同一または異なる複数の光源またはランプを使用するすべての態様を包含し、光源を反応チャンバーに対してさまざまな位置に配置するすべての態様を包含する。
【0038】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、光化学反応器は光源用のハウジングを有する。そのような光源ハウジングを有することの利点の一つは、光源へのアクセスおよび光源の交換が容易であることでありうる。
【0039】
本発明の一つまたはそれ以上の態様において、ランプハウジングは、反応器流を連続しながらランプハウジングへのランプの出し入れを行うのに適した開口を、一方の長手方向末端に有する。これにより反応器全体を組み立て直す必要なくランプの挿入が可能となるので、循環流を中断することなくランプを交換しうる製造規模に関して特に有利である。さらに、該ハウジングは、適当な冷却手段が与えられている場合、光源の冷却を可能にしうる。例えば、ハウジングを通るかまたはハウジングの周囲で流動する冷却液またはガス、例えば水によって、光源を冷却しうる。例えば、ランプを取り囲む内外壁の間に水を流動させうる。あるいは、ランプに冷却システムを取り付けておくことができる。光源の形状は、ハウジングに適合することが有利でありうる。光源が発する光を照射体積に届けるために、ハウジングは、光源を取り囲む光透過性壁、例えば石英または硼珪酸塩ガラス製の壁を有して成りうる。本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、ランプハウジング内で不活性ガス(例えば窒素)流によって光源を冷却し、さらに、ランプハウジングを外部から冷却流体(例えば水)によって冷却する。
【0040】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、光源表面もしくは光源ハウジング表面から垂直方向に発せられる光が横断しうる照射体積中の最短距離、または反応チャンバーの平均直径、またはチューブ状壁間距離はそれぞれ、約30cm未満、例えば約25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9.7、9、8、7、6、5、4、または3cm未満、例えば2.5、2.0、1.5、1.0、0.9、0.85、0.8、0.75、0.6,0.5、0.4、0.3、0.2cmまたは0.15cmである。本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、反応チャンバーは、内側境界のチューブと外側境界のチューブとの間の約2mmないし約15cm、例えば約25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9.7、9、8、7、6、5、4、または3cm、例えば2.5、2.0、1.5、1.0、0.9、0.85、0.8、0.75、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2cmまたは0.15cmの距離によって規定される。
【0041】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、光異性化反応を実質的に無酸素の条件下に行う。反応混合物に酸素が存在すると一重頃酸素が生成することがあり、これはビタミンD誘導体を分解するように作用しうる。実質的に無酸素の条件は、異性化を不活性ガス雰囲気中、例えばアルゴン、ヘリウムまたはSF雰囲気中、好ましくは窒素雰囲気中で行うことによって達成しうる。酸素濃度を低下するために、照射前に、すべての試薬および溶媒を脱気し得、および/または反応チャンバーを排気し、不活性ガスでパージしうる。
【0042】
光反応器および光源並びにそれらの組み合わせの例が、例えばUS5012106、US3554887、US4456512、DE3625006、DE10236717、EP0000773、US4087342、US4454835、J. Org. Chem. 2005, 70, 7558-7564、US5126111、US4296066、Adv. in Photochemistry, 第18巻, 235-313, 1993に記載されており(それらに限定されない)、それらいずれも引用により本発明の一部とする。
【0043】
本発明の実施に適当な光反応器の非限定的な例を示す添付図面の図1および図2を参照すれば、本発明をより理解し易いと考えられる。
【0044】
光反応器101は、反応器125、外部光源ハウジング109、内部光源ハウジング110、光源またはランプ102、上部カバー106、および連結部材124を有する。
【0045】
反応器125、外部光源ハウジング109、内部光源ハウジング110、上部カバー106、光源102および連結部材124はすべて、それらを同心円状に連結させる連結手段123との嵌合に適合する。適当な連結手段は、コネクタまたはファスナ、例えばボルトとナット、ジョイント、クリップ、クランプ、ねじ、またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない。
【0046】
外部光源ハウジング109は連結手段123によって反応器125内に配置されるよう適合し、連結部材124は連結手段123によって反応器125上に配置されるよう適合し、内部光源ハウジング110は連結手段123によって連結部材124内に配置されるよう適合し、上部カバー106は連結手段123によって連結部材124上に配置されるように適合する。内部光源ハウジング、上部カバー106および連結部材124によって、光源102を収容するのに適合した内部光源コンパートメント111の容積が決まる。内部光源コンパートメント111には、該コンパートメント111内にガスを拡散させるように、ガス供給手段、例えば上部カバー106に配置したガス導入口104およびガス排出口105を設ける。内部光源コンパートメント111にはさらに、光源102の電力供給手段103も設ける。内部光源ハウジング110、連結部材124、外部光源ハウジング109および反応器125によって、外部光源コンパートメント112の容積が決まる。外部光源コンパートメント112は、光源102が発生する熱を放散する冷却手段、例えば該コンパートメント112内に冷却液またはガス(例えば水)を拡散させるように連結部材124に配置した冷却液またはガス導入口107および冷却液またはガス排出口108を設けるのに適合する。
【0047】
好ましくは、ガス供給手段および冷却液供給手段はそれぞれ冷却液またはガスの供給用の導入管122または126を含んで成り、該管の末端はそれぞれ光源コンパートメント111および112の底部に位置し、ガスまたは冷却液排出口105および108はそれぞれ光源コンパートメント111および112の上部に配置する。
【0048】
反応器125は、冷却マントルの外壁121、および反応チャンバーの内壁119を有し、それによって二重壁冷却マントル120の容積が規定される。反応器125に、冷却手段を設ける。例えば、冷却マントルの外壁121に、冷却液導入口または排出口114、および冷却液排出口または導入口115を設け、それらは好ましくは冷却マントルの隔たった位置に配置し、例えば冷却液排出口115を反応器125の下部に、冷却液導入口114を反応器125の上部に配置して、光源102が発生する熱を放散することによって反応チャンバー113内の光異性化を受ける溶液を温度調節するように冷却水を循環させる。反応器125にはさらに、材料供給手段、例えば材料導入口116および材料排出口117を設ける。好ましくは、材料導入口116は反応器125の底部に、材料排出口117は反応器125の上部に配置する。導入口および排出口はいずれも、場合によりバルブおよび/またはノズルを含んで成りうる。
【0049】
外部光源ハウジング109および反応器125によって、中心対称同心反応チャンバー113が規定される。これはとりわけ、反応チャンバーの内壁119と外部光源ハウジング109の外壁との平行な配置によって規定され、所定光化学反応のための反応物質を収容するのに適合する。外部光源ハウジング109、反応器125、内部光源ハウジング110および光源102は、外部光源ハウジングの外表面127から垂直方向に等しい距離で、反応チャンバー113内の光強度が本質的に均等に分布しうるように配置しうる。
【0050】
場合により、光源から発せられる光が垂直下方向を照射するのを防ぐ光バリア128を、光源102の下端部に取り付けうる。
【0051】
場合により、光を吸収しうるコーティング118(例えば光反射を減弱しうる黒テフロン)を、反応チャンバーの内壁119の内面に取り付けうる。
【0052】
反応チャンバー113、冷却マントル120、外部光源コンパートメント112および内部光源コンパートメント111は、その一つが他の一つの内側に重ねられた一連の同心シリンダまたはチューブを構成しうる。
【0053】
光源ハウジングおよび反応チャンバーは好ましくは、実質的に光透過性石英またはガラス製である。通例、非金属材料が好ましく、その例は、ポリ(メチルメタクリレート)、標準的な窓ガラス、Pyrex(Corning 774)、Vycor 791、Suprasil I(Heraeus)、Suprasil-W(Heraeus)、硼珪酸塩ガラス、例えば硼珪酸塩ガラス3.3(ISO3585;1998)である。本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、光源ハウジングがいずれも実質的に石英から成り、光源に最も近い反応チャンバーの部分または壁109が実質的に硼珪酸塩ガラスから成る。石英は、その透過性および熱的性質の故に、内部光源ハウジング110を構成するのに好ましい材料である。本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、外部光源ハウジング109の材料は硼珪酸塩ガラス3.3(ISO3585;1998およびEN1595)である。反応器125、連結部材124および上部カバー106に適当な材料はステンレススチールである。
【0054】
本発明の特定の一態様においては、内部光源ハウジング110の外径が約61mmであり、外部光源ハウジング109の内径が約72mmであり、外径は、外部光源ハウジング壁の厚さ約3.5mmに対応して約79mmである。本発明の他の特定の一態様においては、外部光源ハウジングの長さが約100cmである。本発明の更に別の特定の一態様においては、反応チャンバーの内壁119によって規定されるチューブ状空間の内径が約95mmで、それにより照射層の厚さが約8mmとなる。本発明の更に別の特定の一態様においては、ランプ102の長さが約60cmであり、該光源の下端が内部光源ハウジング110の底から約10cm上方に位置し、該光源ハウジング110の長さが例えば約130cmである。
【0055】
適当な光触媒の例は、150〜270kJ/モルの範囲、例えば185kJ/モル未満、例えば170〜180kJ/モル、例えば176〜178kJ/モルの三重頃エネルギーを有する三重頃増感剤である。適当なエネルギーの三重頃増感剤を選択することによって、異性化平衡E/Z比を調節しうる。そのような光触媒は、アントラセン、9−アセチルアントラセン、アントラセン−9−カルボン酸、アントラセンカルボキサルデヒド、フェナジン、アントラセン−9−スルホン酸、4,4−ビス(ジメトキシ)チオベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)チオベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、または9,10−ジフェニルアントラセンを包含するが、それらに限定されない。光触媒は混合物として使用しうるが、好ましくは単一の化合物として使用する。本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、光触媒はビタミンD誘導体1モル当たり約0.08〜0.35モル、例えば約0.1〜0.2モル、例えば約0.15〜0.18モル、例えば0.175モルの比で存在する。
【0056】
適当な溶媒は、任意の溶媒または溶媒混合物であって、ビタミンD誘導体および光増感剤を少なくとも部分的に溶解することができ、実質的に反応条件を妨害せず、光源から発せられる光の光反応に必要なスペクトル範囲の光を顕著に吸収しないものを包含する。適当な溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、エーテル、例えばt−ブチルメチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびトリエチルアミン、またはそれらの混合物を包含する。ビタミンD誘導体は通例酸感受性であるから、少量の塩基、例えばトリエチルアミンを加えることが有利でありうる。好ましい溶媒はジクロロメタンまたはMTBEである。光触媒として9−アセチルアントラセンを用いる場合は特に、溶媒がMTBEであることが好ましく、これは場合によりトリエチルアミンを含有する。本発明は、あらゆる組成の前記溶媒の混合物をも包含する。光反応に関与しないプロトン性溶媒(例えばt−ブタノール)を溶媒に加えることによって、帯電を回避しうる。
【0057】
本発明の一つまたはそれ以上の態様においては、式IIで示されるビタミンD誘導体を溶媒に、下記範囲の濃度またはそれ以上で溶解する:溶媒1ml当たり約0.003〜0.0134g、例えば約0.025〜0.1g、例えば約0.04〜0.06g、例えば0.05g。
【0058】
光異性化は、約−20〜50℃、−10〜40℃、例えば0〜30℃、例えば5〜25℃の範囲の温度、例えば約10〜15℃の温度、例えば約10、11、12、13、14または15℃で行いうる。
【0059】
所望の光異性化生成物の収率を最適化するために、式IIa、IIb、IIcまたはIIdのビタミンD誘導体の少なくとも80%、例えば90%、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%が、化合物IIIa、IIIb、IIIcまたはIIIdにそれぞれ異性化されるまで照射を行いうる。光照射は通例、採用する特定の反応条件に応じて、約1〜25時間、例えば6〜20時間または7〜10時間または5〜8時間行い得、照射時間はより長いかまたは短くてもよい。
【0060】
本願において記載される数値範囲は、より特定された本発明の態様として、該範囲に含まれる特定の値またはより狭い範囲のいずれをも包含するものとする。用語「約」は、その通常の意義に加えて、該用語の係る値または数値の10%低いかまたは高い数値範囲を包含することを意図する。
【0061】
本発明の光異性化方法は、他のビタミンD誘導体の合成においても有用であり得、例えば、カルシトリオールまたはアルファカルシドールの合成に有用な中間体を異性化するために、例えば1個もしくはそれ以上のヒドロキシル基が(例えばt−ブチルジメチルシリルで)保護されているかもしくは保護されていない5−Eカルシトリオール前駆体を5−Zカルシトリオールに異性化するために;あるいは、5−Eジヒドロキシ保護アルファカルシドール前駆体を5−Zジヒドロキシ保護アルファカルシドールに異性化するため、例えば(1α,3β,5E,7E)−9,10−セココラ−5,7,10(19)−トリエン−1,3−ビス(((1,1−ジメチルエチル)ジメチルシリル)オキシを対応する5Z−異性体に異性化し、次いで保護基を除去して(5Z,7E)−9,10−セココレスタ−5,7,10(19)−トリエン−1α,3β−ジオールを生成するのに有用でありうる。
【0062】
合成方法
式IIa、IIb、IIc、IIdまたはIIeの化合物は、例えば、M. J. Calverley, Tetrahedron, 第43巻, 第20号, 第4609〜4619頁, 1987、WO87/00834、WO2005/095336、WO2005/087719、US5763426、WO03/106412、Drugs of the Future, 第15巻, 第1号, 1990, 第15頁、またはBioorg. Chem. Lett., 第3巻,第9号,1841-184, 1993に開示された方法に従って合成しうる。これらの文献には、式IIIa、IIIb、IIIc、IIIdまたはIIIeの化合物を、カルシポトリオールまたはカルシポトリオール合成に有用な中間体に変換する方法も開示されている。
【0063】
ビタミンD誘導体、例えば式IIa、IIb、IIc、IIdまたはIIeの化合物の一般合成方法は、“Vitamin D”, D. Feldman編,Academic Press, 米国サンディゴ, 1997およびG.-D. Zhuら,Chem. Rev., 1995, 95, 1877-1952、並びにそれらにおいて引用された文献にも記載されている。カルシポトリオールまたはカルシポトリオール水和物の医薬製剤、例えばクリーム、軟膏、溶液、ローションなどが、US6753013、US5763426、US6787529およびUS4866048に記載されており、また、当分野で知られた任意の方法、例えばLawrence M. Block, Medicated Applications, II Remington: The Sciences and Practice of Pharmacy 1577, 1585-91(第19版, Alfonso R. Gennaro編, 1995)に記載された方法で調製することができる。
【0064】
本明細書に記載するカルシポトリオールまたはその一水和物の製造方法は、一つもしくはそれ以上の反応工程を省略することによるか、または反応経路の任意の段階で更なる精製もしくは反応工程を追加することによって、反応工程の順序に関して変更を加えることができる。本発明は、そのような変更をいずれも包含する。本明細書中に記載するカルシポトリオール製造方法は、Rおよび/またはRおよび/またはRが水素ではない化合物または中間体のヒドロキシ保護基Rおよび/またはRおよび/またはRを、反応経路の任意の段階で除去するかまたは一つもしくはそれ以上の他の保護基で置き替えた、更なる変化形態のいずれをも包含する。Rおよび/またはRおよび/またはRが水素である化合物または中間体は、反応経路の任意の段階で、保護剤(反応経路において先に除去した保護基とは異なる保護基を形成する保護剤を包含する)で保護しうる。本発明は、純粋な形態またはそれらの混合物としての異性体形のいずれにも関する。本発明の化合物または中間体の式または名称において配座または配置を特定する場合は、その特定の配座または配置が本発明の好ましい態様であることを意味する。本発明の化合物または中間体の式または名称において配座または配置を特定する場合、特定されたもの以外のいずれの異性体も、純粋な形態またはそれらの混合物として、本発明の他の態様に包含される。当分野で知られた方法を用いることによって、例えばクロマトグラフィーもしくは結晶化によって、または立体選択的合成によって、純粋な立体異性体形の本発明化合物および中間体を得ることができる。
【0065】
例えばビタミンD誘導体、特にカルシポトリオールを結晶化する方法は、例えば、M. J. Calverley, Tetrahedron, 第43巻,第20号,第4609〜4619頁,1987、WO94/15912、WO2004/046097に記載されており、酢酸エチルおよびヘキサンまたはヘプタンの適当な極性の混合物からの結晶化を包含する。カルシポトリオール水和物は、例えばWO94/15912に記載の方法によって、カルシポトリオールを有機溶媒および水の混合物から結晶化することによって得ることができる。したがって、本発明は、アルファカルシドールまたはカルシトリオールの製造における流通光反応器または連続流光反応器の使用に関する。
【0066】
(実施例)
一般:
化学物質はいずれも、特記しない限り市販品として入手した。HPLC分析は、Merck-Hitachi装置:ポンプ:L-6200またはL-6000A、検出器:L-4000、インテグレータ:D-2500、ノイズレベル6、感度10で行った。クロマトグラフィーは、シリカゲル上で、場合によりフラッシュ法を用いて行った。好ましくは、クロマトグラフィーに使用したシリカは、Merck KGaA(ドイツ)のLiChroprep(登録商標)Si60(15〜25μm)であった。溶離剤として、特記しない限り、酢酸エチル、ジクロロメタン、または適当な混合物としての酢酸エチル、ジクロロメタン、メタノール、および石油エーテル(40−60)またはヘプタンを使用した。H核磁気共鳴(NMR)スペクトル(300MHz)は、Bruker DRX装置で記録した。化学シフト値(δ)(ppm)は、特記しない限り、内部標準テトラメチルシラン(δ=0.00)またはクロロホルム(δ=7.26)に対しジュウテリオクロロホルム溶液について示す。
【実施例1】
【0067】
流通光化学反応器を使用する連続光異性化
M. J. Calverley, Tetrahedron, 第43巻, 第20号, 第4609〜4619頁, 1987、またはWO87/00834に記載されたように合成した1(S),3(R)−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−20(R)−(3'−シクロプロピル−3'(S)−ヒドロキシプロパ−1'(E)−エニル)−9,10−セコプレグナ−5(E),7(E),10(19)−トリエン(IIa:X=OR;R、R=t−ブチルジメチルシリル;R=水素)7.5kgと、9−アセチルアントラセン45gを、窒素雰囲気中で、実質的に酸素不含有のメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)150Lに撹拌しながら溶解した。混合物を、180L撹拌バッチ式反応器から、鉄ドープ中圧水銀ランプ(電力6kW、UVH5822F-1、電力供給/バラストユニット:10kW Heraeus)を含む、明細書中に前記した寸法の連続流光反応器を経て、バッチ式反応器に戻すように、連続的にポンプ輸送した(流速約48L/分)。撹拌バッチ式反応器および光反応器を冷却することによって、反応混合物の温度を約10℃に保った。
【0068】
HPLC(溶離剤:n−ヘプタン:EtOAc(100:2);流速3.0ml/分;カラム:LiChrosorb Si60 5μm;UV検出器:270nm)により検出する出発物質が1.5%未満になったら、循環および光照射を中止した。光反応器に残った内容物を撹拌バッチ式反応器に移し、光反応器を10LのMTBEで1回洗い、洗液も撹拌バッチ式反応器に移した。溶媒を減圧除去し、クロマトグラフィーに付して、M. J. Calverley, Tetrahedron, 第43巻, 第20号, 第4618頁, 1987に記載される化合物28のデータと完全に一致する1(S),3(R)−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−20(R)−(3'−シクロプロピル−3'(S)−ヒドロキシプロパ−1'(E)−エニル)−9,10−セコプレグナ−5(Z),7(E),10(19)−トリエン(IIa:X=OR;R、R=t−ブチルジメチルシリル;R=水素)を得た。
【実施例2】
【0069】
カルシポトリオール
実施例1で得た1(S),3(R)−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−20(R)−(3'−シクロプロピル−3'(S)−ヒドロキシプロパ−1'(E)−エニル)−9,10−セコプレグナ−5(Z),7(E),10(19)−トリエン(IIa:X=OR;R、R=t−ブチルジメチルシリル;R=水素)を、M. J. Calverley, Tetrahedron, 第43巻, 第20号, 第4609-4619頁, 1987またはWO87/00834に記載されるように、テトラヒドロフラン中60℃でテトラブチルアンモニウムフルオリドを使用して脱保護し、次いでクロマトグラフィーに付す。数滴のトリエチルアミンを含有する酢酸エチル/ヘキサンからの結晶化によって、M. J. Calverley, Tetrahedron, 第43巻, 第20号, 第4618頁, 1987に記載される化合物4のデータと完全に一致するカルシポトリオールを得る。
【実施例3】
【0070】
カルシポトリオール一水和物
実施例2に記載のように得られるカルシポトリオールを、WO94/15912に記載されるように酢酸エチル/水から結晶化して、該特許に記載されている特性データと完全に一致するカルシポトリオール一水和物を得る。
【実施例4】
【0071】
撹拌バッチ式反応器による光異性化と、連続流光異性化の比較
バッチ式と連続流とを直接比較するために、9−アセチルアントラセン(450mg)を含有するMTBE中の1(S),3(R)−ビス(t−ブチルジメチルシリルオキシ)−20(R)−(3'−シクロプロピル−3'(S)−ヒドロキシプロパ−1'(E)−エニル)−9,10−セコプレグナ−5(E),7(E),10(19)−トリエン(IIaaa)(1g/20ml)の酸素不含有溶液を、二つの異なる設定で光異性化に付した。光反応の装置は、バッチモード、および光反応器の長手方向軸に平行な光反応器内の連続流の両方に適合するよう設計した。いずれの設定においても、UV光を発するランプ(Heraensの鉄ドープ中圧水銀ランプ:TQ718Z4、800W、電力供給Best. Nr. 56002316)を、水冷用の内部および外部ジャケットを含んで成る石英製ランプハウジングで取り囲み、標準的なイマージョンウェル光反応器の中心部に配置した。反応器は、閉鎖可能な導入口および排出口を備えることで、撹拌バッチおよび連続流通の操作モードに適合させた。光反応器の導入口は光反応器底部に配置し、排出口は光反応器上部の、操作中に反応器が満たされたときの表面レベルのすぐ下に配置して、溶液をポンプ送りしたときに浸漬ランプの長手方向軸に沿って反応器内を流れるようにした。ランプハウジングを冷却水(10℃)で冷却することによってランプの温度を調節した。光反応器の照射層厚さは9.7mmであった。反応混合物を常時窒素雰囲気中に保った。
【0072】
a)連続流モード
本設定では、光反応器の導入口および排出口を、ポンプを介してホースでレザバに連結した。ポンプ操作中に、レザバから溶液のフラクションを、レザバから流通光化学反応器を経てレザバに戻すように連続的にポンプ送りし、反復して循環させた。約450mlの反応混合物が光反応器内を移動し、約1050mlの反応混合物が主にレザバ内に存在した(それ以外の少量は連結ホース内を循環していた)。流速を3600〜4800ml/分の範囲内に入るように調節した。反応混合物の温度は、レザバの冷却によって常に10℃に保った。
【0073】
b)撹拌バッチモード
本設定でも上記と同じ光反応器を用いたが、導入口および排出口はいずれも閉鎖し、ポンプも作動させなかった。反応混合物の温度は、光反応器を外側から冷却することによって常に10℃に保った。さらに、底部磁石および磁気撹拌子を用いて450mlの体積の反応混合物を撹拌して、確実に激しく混合し、光反応器の全容積の内側にあるランプの周囲に循環させた。垂直方向および水平方向の両方の有効な混合を目視により確認した。
【0074】
適当な間隔でサンプルを採り、HPLC(溶離剤:n−ヘプタン:EtOAc(100:2);流速:3.0ml/分;カラム:LiChrosorb Si60 5μm;UV検出器:270nm)で分析することによって、反応の進行をモニターした。同じ方法で純度も測定した。式IVの不純物の含量を、H−NMRによって、5.45ppmにおけるトリエン系の水素22/23の積分値と、3.42ppmにおける側鎖水素−24の積分値とを比較することによって求めた。実験結果を次表に示す:
【0075】

* a):98.9%; b):99.2%
# (R=t−ブチルジメチルシリル、X=t−ブチルジメチルシリルオキシ、R=水素)
【0076】
これらの結果は驚くべきことに、化合物IIaaaのE−Z光異性化により生成物IIIaを、より高い純度で、体積−時間収率の改善されたより効率的なプロセスで得られることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による適当な流通光反応器または連続流光反応器の例の縦断面図。
【図2】図1に示す光反応器反応器例の点線における横断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIa、IIb、IIc、IIdまたはIIe:
【化1】

で示されるビタミンD誘導体の溶液を異性化に付して、それぞれ式IIIa、IIIb、IIIc、IIIdまたはIIIe:
【化2】

で示されるビタミンD誘導体を生成する方法であって、
流通光反応器または連続流光反応器内で光触媒の存在下に適当な光源を用いて、式IIa、IIb、IIc、IIdまたはIIeで示されるビタミンD誘導体の溶液を照射することを含んで成る方法
[上記式中、
Xは水素または−ORを表し;
、RおよびRは同一または異なっていてよく、独立に、水素またはヒドロキシ保護基を表す。]。
【請求項2】
溶液を、流通光反応器または連続流光反応器内で、光源に対して1回通過する連続流として移動させるかまたは複数回通過する連続流として循環させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルシポトリオール{(5Z,7E,22E,24S)−24−シクロプロピル−9,10−セココラ−5,7,10(19),22−テトラエン−1α−3β−24−トリオール}またはカルシポトリオール一水和物を製造する方法であって、
(i)式IIaa:
【化3】

で示されるビタミンD誘導体を、光触媒の存在下に適当な光源を用いて異性化して、式IIIaa:
【化4】

で示されるビタミンD誘導体を生成する工程であって、
溶液を、流通光反応器または連続流光反応器内で、光源に対して1回通過または複数回通過する連続流として移動させることを特徴とする工程
[上記式中、R、RおよびRは同一または異なっていてよく、独立に、水素またはヒドロキシ保護基を表す。];
(ii)Rおよび/またはRおよび/またはRが水素でない場合、式IIIaの化合物のヒドロキシ保護基Rおよび/またはRおよび/またはRを除去してカルシポトリオールを生成する工程;および
(iv)場合により、カルシポトリオールを有機溶媒および水の混合物から結晶化して、カルシポトリオール一水和物を生成する工程
を含んで成る方法。
【請求項4】
が水素を表し、Xが−ORを表す請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
およびRがアルキルシリルまたは水素を表す請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
およびRがt−ブチルジメチルシリルを表し、Rが水素を表す請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
流通光反応器または連続流光反応器が、実質的に軸対称なチューブ状流動反応器であり、その中で溶液が、中心長手方向軸に平行に移動する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
流通光反応器または連続流光反応器において、溶液を複数回採取し、再循環させる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
溶液全体のフラクションを、連続的および反復的に、一つまたはそれ以上の貯留部から流通光反応器または連続流光反応器を経て貯留部に戻すよう循環させ、場合により貯留部内で溶液を混合および温度調節する請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
光源が鉄ドープ中圧水銀ランプを含む請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
光源が、特に約300〜340nmの範囲のUV光を発する請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
中圧水銀ランプを約3〜7kWの電力で作動させる請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
光触媒を、アントラセン、9−アセチルアントラセン、アントラセン−9−カルボン酸、アントラセンカルボキサルデヒド、フェナジン、アントラセン−9−スルホン酸、4,4−ビス(ジメトキシ)チオベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)チオベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメトキシ)ベンゾフェノン、および9,10−ジフェニルアントラセン、またはそれらの混合物を含んで成る群から選択する請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
溶媒を、ジクロロメタン、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、トリエチルアミン、またはそれらの混合物から成る群から選択する請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
不活性雰囲気中、約0〜35℃の温度で異性化を行う請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
実質的に軸対称なチューブ状流動反応器が、同軸的に配置された少なくとも二つの同心チューブ状空間を有し、例えば長手方向に延びている複数のシリンダまたはチューブの一つがもう一つの内側に配置され、内側のチューブ状空間が光透過性の光源ハウジングを提供し、外側のチューブ状空間が反応チャンバーを提供する請求項7〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
反応チャンバーが、内側境界のチューブと外側境界のチューブとの間の約2mmないし約15cmの距離によって規定される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
光触媒がビタミンD誘導体1モル当たり約0.08〜0.35モルの比で存在し、ビタミンD誘導体が溶媒に溶媒1ml当たり約0.025〜0.1gの範囲の濃度で溶解する請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
一つまたはそれ以上の工程において請求項1〜18のいずれかに記載の方法を含んで成るカルシポトリオールまたはカルシポトリオール一水和物の製法。
【請求項20】
式IIaaa:
【化5】

で示されるビタミンD誘導体の溶液を異性化に付して、式IIIaaa:
【化6】

で示されるビタミンD誘導体を生成する方法であって、光触媒の存在下に適当な光源を用いて、式IIaaaのビタミンD誘導体の溶液を照射することを含んで成り;
前記溶液を流通光反応器または連続流光反応器内で光源に対して複数回通過連続流として移動させ、
溶液全体のフラクションを、貯留部から流通光反応器または連続流光反応器を経て貯留部に戻すように連続的および反復的に循環させることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の方法を含んで成る、カルシポトリオールまたはカルシポトリオール一水和物を含有する医薬製剤または薬剤、例えばクリーム、軟膏またはゲルを製造する方法。
【請求項22】
カルシポトリオールまたはカルシポトリオール水和物の製造における流通光反応器または連続流光反応器の使用。
【請求項23】
アルファカルシドールまたはカルシトリオールの製造における流通光反応器または連続流光反応器の使用。
【請求項24】
流通光反応器または連続流光反応器が実質的に軸対象なチューブ状流動反応器であり、該反応器において長いランプハウジングが反応チャンバーの内部に実質的に中心に配置されており、該ランプハウジングが長手方向に流動方向に沿って配置されている請求項22に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−530317(P2009−530317A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500699(P2009−500699)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000244
【国際公開番号】WO2007/082533
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.PYREX
【出願人】(508069752)レオ ファーマ アクティーゼルスカブ (22)
【Fターム(参考)】