説明

医薬剤形の活性コーティング

本発明は、1つの実施形態において、フィルムコーティング内に、20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される活性医薬成分、およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマーを含有するコーティング組成物について記載する。好ましくは、前記活性医薬成分は、任意に同一もしくは相違する活性医薬成分を含むコア上に水性コーティングビヒクル内に分散させて適用されている。本発明はさらにまた、医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、単一単位剤形のコアを提供する工程と;任意に前記コア上に1つ以上のサブコーティング層を提供する工程と;前記コアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクル上に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかける工程とを含み、このとき前記コポリマーは前記組成物の少なくとも7.0重量%、好ましくは少なくとも9.4重量%を占め、前記コポリマー対前記活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にある方法について記載する。その他の方法実施形態もまた記載されている。高薬物装填量、薬物装填量の均一性、および医薬単一単位剤形のフィルムコーティングからの活性医薬成分の高速の溶解速度が本発明によると達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物の分野、特に活性医薬成分(APIと略記されることもある)、即ち医薬製剤のために治療用活性化合物(成分)として使用されることが意図される物質もしくは化合物を含むフィルムコーティング、およびこのような医薬組成物もしくはフィルムコーティングを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不適合性の活性医薬成分(API)の場合、または修飾された放出プロファイルを達成するため、または例えばより優れた薬効などの他の目的のために2つ以上の相違するタイプのAPIを単に組み合わせるためには、活性医薬成分を含むフィルムコーティングを備える医薬組成物を提供することが望ましい。フィルムコーティング内に活性医薬成分を組み込み、これをコア内の化合物から分離することは常に困難な問題を提示したが、これは特に医薬組成物が例えば残留有機溶媒、安定性、API含量の均一性、経済および環境に配慮した製造などの問題に関する製薬専門家および工業界の厳しい精査に曝されるからである。当分野におけるこのような問題の実現可能性に関しては限定された知識しかなく、上記の要件に適合するであろう市販品は基本的に存在しない。
【0003】
活性医薬成分を含有するフィルムコーティングのために幾つかの試みが企てられた。US6,656,503B1は、コアおよびフィルムコーティングを含む医薬錠剤を製造することに関しており、ここでコアは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含み、フィルムコーティングはポリマーおよびミソプロストールを含む。水はコーティングビヒクルとして可能な成分であると言及されているが、しかしこれは結果として生じる溶媒系がミソプロストールを溶解させる状況に限られ、このためこの文献は特に、溶媒系としての塩素化炭化水素とアルコールとの混合液の好ましい使用について開示している。さらに、US6,656,503B1に従って選択された好ましいポリマーは、約10から約100部のポリマー対1部のミソプロストールの重量比にあるポビドンおよび水溶性セルロース誘導体である。
【0004】
US2004/0131791A1は、単一または複数の剤形をコーティングするための特殊な方法および装置について開示している。特殊装置を使用する必要性は不利点である。また別の不利点は、2004/0131791A1の開示から理解されるように、このコーティングが低用量の活性物質しか含んでいないことである。
【0005】
国際公開WO03/059327および国際公開WO2006/048208は各々、二層錠剤を開示しているが、このとき各層は相違する活性医薬成分、つまり国際公開WO03/059327に記載のテルミサルタン/ヒドロクロロチアジドおよび国際公開WO2006/048208に記載のテルミサルタン/アムロジピンを含有する。どちらの文献においても、第1錠剤層および第2錠剤層は別個に調製され、その後で錠剤プレス内で圧縮される。
【0006】
US5601843は、NSAIDを含有するコアを包含する医薬組成物を開示しており、このコアはプロスタグランジンのマントルコーティングによって取り囲まれている。マントルコーティングの不利点は、最終錠剤が内部コアより実質的に大きく、マントルコーティングは流動性および圧縮性の要件を満たさなければならないのでマントルの組成が錠剤コアの組成と似ていることにある。
【0007】
国際公開WO2007/144175は、第1APIを備えるコアおよび第2APIを含む少なくとも1つのコーティングを含む医薬組成物を開示している。この明細書からは、APIのエタノール溶液がフィルムコーティングのために使用されたことは明白である。この明細書はさらにまた、フィルムコーティングのために使用可能なポリマーとしてセルロース誘導体、アクリルポリマー類、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールを開示している。
【0008】
US2005/0013863は、コア内に第1APIおよびフィルムコーティング内に第2APIを含むフィルムコーティング錠を開示している。このフィルムを形成する際に使用するためのポリマーとして、US2005/0013863は、ポリ(エチレンオキシド)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースの組み合わせ、ならびにポリ(ビニルアルコール)およびポリ(エチレンオキシド)の組み合わせについて言及している。ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーもまた、使用可能なポリマーとして言及されている。しかしコーティング内のAPI装填量は低い;APIとしてグリメピリドを使用した場合は、ポリマー対APIの重量比は、1つのコーティング内では18を越え、また別のコーティング内では37を越える。
【0009】
US2008/020055A1は、フェニレフリンもしくはこの医薬的に許容される塩、つまり親水性API、浸食性層および任意に同様にフェニレフリンを含むことのできるアウターコーティングを含む医薬組成物について開示している。1つの実施形態では、アウターコーティングは、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを含有することができる。この医薬組成物は経口投与用であり、この組成物はフェニレフリンまたはこの医薬的に許容される塩を腸内での吸収によって送達する。この医薬組成物は、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、解熱剤、および非ステロイド性抗炎症剤からなる群の1つ以上から選択される1つ以上の追加の治療用活性薬剤をさらに含むことができる。抗ヒスタミン剤の1つの例は、ロラタジンである。
【0010】
US2008/0299186A1は、錠剤基剤に塗布できる、水、Kollicoat(登録商標)IR(ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマー)、ロラタジンおよびフェニレフリンHClを含有する活性成分分散液について開示している。
【0011】
単一単位剤形をコーティングするための特殊な方法および装置について開示している上記のUS2004/0131791A1を除いて、API含量の均一性に関する満足できるデータを提供している文献はなく、これはコーティングパン内でフィルムコーティングを使用する場合、特に分散したAPIが使用される場合には達成するのが極めて困難であることを証明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,656,503号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0131791号明細書
【特許文献3】国際公開第03/059327号
【特許文献4】国際公開第2006/048208号
【特許文献5】米国特許第5601843号明細書
【特許文献6】国際公開第2007/144175号
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0013863号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/020055号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0299186号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、APIがコーティング内に存在する改良された医薬経口単一単位剤形を提供すること、ならびに医薬組成物、例えば医薬単一単位剤形、および特に錠剤などの経口剤形のフィルムコーティングのための改良された方法を提供することである。特に、本発明の目的は、コアおよびフィルムコーティングを含む安定した、頑丈および安全な医薬単一単位剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様では、本発明は、医薬単一単位剤形であって:
(i)任意に第1活性医薬成分を含むコアと;
(ii)20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される第2活性医薬成分、およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマーを含むフィルムコーティングであって、フィルムコーティング内の前記コポリマー対第2活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあるフィルムコーティングとを含む医薬単一単位剤形を提供する。
【0015】
またさらなる態様では、本発明は、医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、
(aa)単一単位剤形のコアを提供する工程と;
(ba)任意にコア上に1つ以上のサブコーティング層を提供する工程と;
(ca)任意に1つ以上のサブコーティング層が提供されたコアに水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクル上に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかける工程とを含み、このとき前記コポリマーは前記組成物の少なくとも7.0重量%、好ましくは少なくとも9.4重量%を占め、前記コポリマー対前記活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にある方法を提供する。
【0016】
また別の態様では、本発明はさらに、医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、
(ab)コーティングパン内に単一単位剤形のコアを提供する工程と、
(bb)任意にコア上に1つ以上のサブコーティング層を提供する工程と、
(cb)任意に1つ以上のサブコーティング層が提供されたコアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクル内に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかける工程とを含み、このとき前記コポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、およびコーティングパンは10回転/分以上の速さで回転する方法をさらに提供する。
【0017】
本発明は、1セットの複数の医薬単一単位剤形をさらに提供するが、このセットの各剤形単位は少なくとも1つの活性医薬成分およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを含むフィルムコーティングからなり、フィルムコーティング内のコポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、および前記セットのフィルムコーティング内の活性医薬成分の含量変動の相対標準偏差は≦7%である。
【0018】
本発明は、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび少なくとも1つの活性医薬成分を含む水性コーティングビヒクルを含む組成物の使用をさらに提供するが、このとき前記少なくとも1つの活性医薬成分は20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される、および医薬単一単位剤形上への前記活性医薬成分のフィルムコーティング内で前記コポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にある。
【0019】
本発明では、驚くべきことに、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを含むフィルムコーティングは、フィルムコーティング内に包含されるべきAPIの安定性に、API自体が低水溶性を有する場合でさえ、および相対的に高いAPI装填量の実現可能性にもかかわらず大きく寄与することが見いだされた。これは特に、フィルムコーティング内に1つ以上の親油性APIしか包含されない場合、特に第2APIがフィルムコーティング内に包含される唯一のAPIである状況において極めて重要である。さらに驚くべきことに、結果として生じるAPI含有コーティングフィルムは、高用量で装填された場合でさえ、得られた剤形の様々なサンプル間でAPI含量の高い均一性を示す。予想外にも、API含量の均一性は、フィルムコーティング内の5:1に過ぎないポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマー対APIの重量比を用いて、および3:1まで、2:1まで、または1:1までさえの重量比によって規定されるより高いAPI装填量でさえ可能となることが見いだされた。この重量比は、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび20℃、約pH7の水中で測定した約10mg/mL以下の低水溶性を有する、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定されるAPIの比率を規定するが、これはこのようなAPIが通常はコーティング溶液中に分散されたままで留まり、最終剤形内での迅速な溶解および/または含有量の均一性を達成するには困難を有しているからであり、これはコーティング溶液中に容易に溶解し、制御されたより単純な方法においてコアに均一に塗布することのできるAPIとは正反対である。API含量の極めて優れた均一性を達成するために適用できるまた別の重要な方法関連要素は特異的な方法パラメータを使用することであり、このときポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを含有する水性コーティングビヒクル内においてAPIの存在を一般に観察する間に、(i)前記ビヒクル中の少なくとも7.0重量%、好ましくは少なくとも9.4重量%の十分な比率の前記コポリマー、または(ii)フィルムコーティングのためにコーティングパンを使用し、10回転/分を越えるコーティングパンの回転速度を適用するというAPIの改良された均一性を一般に達成するための代替の技術的手段が観察されなければならない。これはAPI装填量均一性が、分散状態にあるAPIを使用する好ましい可能性にもかかわらず、少なくとも25(w/w)%、好ましくは少なくとも40(w/w)%、より好ましくは少なくとも50(w/w)%、特に少なくとも60(w/w)%およびより特に少なくとも80(w/w)%の水を含有するコーティングビヒクルを使用する、または前記コーティングビヒクルが本質的に水から、または水だけからなることによって達成できるという研究成果を考慮するといっそうより驚くべきことである。または水中での分散状態は、低水溶性を有するAPIを使用した場合の極めて重要な状況と同様に、本発明の概念および効果を利用するためにAPIの適正な選択を規定する。
【0020】
使用される活性医薬成分(API)は、動物、特に哺乳動物、特異的にはヒトにおける治療または予防のための任意の薬物であってよい。本明細書で言及できる活性医薬成分の例は、鎮痛剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈薬、抗喘息薬、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風薬、降圧剤、抗マラリア薬、抗偏頭痛薬、抗ムスカリン剤、抗腫瘍薬および免疫抑制薬、抗原虫薬、抗甲状腺剤薬、鎮咳剤、抗不安薬、鎮静剤、線維素溶解剤、睡眠剤、神経弛緩薬、βブロッカー、心変力剤、コルチコステロイド剤、利尿剤、抗パーキンソン剤、胃腸薬、ヒスタミン受容体アンタゴニスト、角質溶解剤、脂質調節剤、筋弛緩薬、抗狭心症薬、栄養剤、鎮痛剤、性ホルモン、興奮剤、ペプチド剤、ペプチド模倣剤、DNA、RNA、オリゴデオキシヌクレオチド、遺伝物質、タンパク質、オリゴヌクレオチド、診断補助剤およびワクチン類である。コーティング内に組み込まれる少なくとも1つの医薬API、つまり第2活性医薬成分は、追加して、20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下、好ましくは約5mg/mL以下、およびより好ましくは約1.5mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される。好ましいAPIは、サルタン類(好ましくはテルミサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、バルサルタンおよびカンデサルタン)、コレステロール吸収阻害剤(好ましくはエゼチミブ);およびスタチン類(好ましくはアトロバスタチン、シムバスタチン、ロスバスタチンおよびロバスタチン)からなる群から選択されるが、最も好ましくはテルミサルタンである。さらに好ましいのは、特にコーティング内に第2医薬成分として存在する場合は、好ましくはヒドロクロロチアジド、クロロチアジドおよびトリクロロチアジドならびにこれらの塩、より好ましくはヒドロクロロチアジド;またはカルシウムチャネルブロッカー、好ましくはアムロジピン、レルカニジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ベラパミルおよびジルチアゼムからなる群から選択される利尿薬である;特に前記第2医薬成分は、ヒドロクロロチアジドまたはこの塩である。
【0021】
フィルムコーティングのための特定のコポリマーを使用することとコポリマー対APIの重量比との組み合わせは、特に有益であることが見いだされた。さらに驚くべき研究成果として、本発明では、コーティング組成物のフィルムコーティング内で低水溶性を有するAPIの親油性の性質にもかかわらず、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーと組み合わせて使用されると、組成物自体はこのように選択されたAPIの親油性に起因して余り湿潤しないが、この溶解は促進されると決定されている。驚くべきことに、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーをヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはポリビニルピロリドンなどのより親水性ポリマーの代わりに使用すると相対的に親油性のAPIの溶解を加速すると思われる。特に水を主成分とするコーティング系上でフィルムコーティングのために使用されるポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーは、コーティングフィルムの溶解速度が有益にも高速であることに従ってフィルムコーティングの迅速な崩壊を導き、それによって例えば、単一剤形のコア内に存在するAPIの早期放出開始を可能にする。
【0022】
さらにまた例示的な実施例においてフィルムコーティングのために低水溶性を有する親油性APIとしてヒドロクロロチアジドを使用する経過において驚くべきことに、ヒドロクロロチアジドとポリエチレングリコールが組み合わされる場合には安定性問題が周知であるにもかかわらず、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを含むフィルムコーティングはAPIの安定性を傷つけないことが見いだされている。本発明は、ヒドロクロロチアジドもしくはこの塩がフィルムコーティング内に包含するべきAPIとして選択される場合に特に貴重である。
【0023】
本発明はさらに、本組成物が、さもなければ最終医薬剤形の表面に露出させられるであろう高腐食性もしくは一般的反応性の化合物を含む場合における安全性の問題もまた解決する。この状況は、二層錠剤が1つの層内では第1API安定化のための強塩基性物質、例えば水酸化ナトリウムを必要とする所定の第1APIおよび別の層内では別のAPIを含んでいる先行技術から公知である。塩基性安定化物質を含有するこのような組成物は吸湿性となる傾向があり、手中に二層錠剤を保持している間に水分を吸い上げ、取扱い中に強塩基性物質、例えば水酸化ナトリウムが皮膚を浸食することを許容する。このような欠陥は、コアを提示する医薬剤形の表面上にフィルムコーティングを沈着させ、これにより最終使用者をコア内の潜在的反応性化合物から保護することによって容易に克服することができる。結果として、本発明のコーティングの概念は、コーティング組成物また別のAPIを結合する場合に適用できるが、または、コアは第1APIを含んでいないがコア組成物を外部に対して保護するために有用である場合にさえ、特に上述したようにコア組成物が吸湿性の強酸性物質もしくは強塩基性物質からなる群から選択される任意の成分を含有する場合に適用することができる。本明細書で使用する「強酸性物質」は、5未満の、好ましくは4未満のpKaを有する物質を意味する。本明細書で使用する「強塩基性物質」は、9を超える、好ましくは10を超えるpKaを有する物質を意味する。本明細書で使用する「吸湿性」は、1つの物質についての、前記物質を24時間以上にわたり90%の相対湿度に曝露させるとこの重量の少なくとも5重量%の水を吸収する特性を意味する。
【0024】
このような問題が発生する可能性がある、従って本発明に記載の特殊なコーティング概念を適用することができる典型的な状況は、コーティング対象のコアがサルタンタイプのAPI、例えばテルミサルタンを含有する場合である。
【0025】
そこで本発明は、単一単位剤形、例えば錠剤のコアをフィルムコーティングするための改良された方法を提供し、少なくとも1つのAPIを含有するフィルムコーティングを有する医薬製剤を、これも合理的に低コストで製造するための便宜的で迅速に工業的に適用可能および信頼性のシステムに対する必要を満たす。本発明はさらに、特に有益な特性、例えば安全性、フィルムコーティング内への高いAPI用量の装填、高度の含量均一性および高速もしくは制御された溶解速度を提示する改良された単回単位剤形を提供するが、これは驚くべきことに、コーティングされるAPIが低水溶性の特性を有する、または水中で分散状態で存在する臨界的場合においてさえ達成される。
【0026】
発明の説明、この利点および好ましい実施形態:
下記の項目に要約した本発明の態様、有益な特徴および好ましい実施形態は、各々単独または組み合わせて、本発明の課題を解決するためにさらに寄与する:
(1)医薬単一単位剤形であって、
(i)任意に第1活性医薬成分を含むコアと;
(ii)20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される第2活性医薬成分、およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマーを含むフィルムコーティングであって、フィルムコーティング内のコポリマー対第2活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあるフィルムコーティングとを含む医薬単一単位剤形。
【0027】
(2)(1)による医薬単一単位剤形であって、前記フィルムコーティングはアウターコーティングである医薬単一単位剤形。
【0028】
(3)(1)または(2)による医薬単一単位剤形であって、前記フィルムコーティングは前記第2医薬活性成分として、約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される少なくとも1つの活性医薬成分だけを含む、つまり易水溶性である任意の親水性活性医薬成分を含んでいない医薬単一単位剤形。
【0029】
(4)(1)から(3)のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、フィルムコーティング内のコポリマー対第2活性医薬成分の重量比は1:1から3:1の範囲内にある、より好ましくは1:1から2:1の範囲内にある、特に1:1である医薬単一単位剤形。
【0030】
(5)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、フィルムコーティングがコアの全表面にわたって沈着させられている医薬単一単位剤形。
【0031】
(6)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、フィルムコーティングは第2活性医薬成分がこの中に分散している水性コーティングビヒクルを使用することによって形成される医薬単一単位剤形。
【0032】
(7)項目(6)による医薬単一単位剤形であって、水性コーティングビヒクルは本質的に水からなる、または水だけから、もしくは有機溶媒と少なくとも25%w/wの、好ましくは少なくとも40%w/wの、より好ましくは少なくとも50%w/wの、特に少なくとも60%w/wの、より特に少なくとも80%w/wの水との混合液からなる単一単位剤形。
【0033】
(8)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、フィルムコーティングは賦形剤として、前記コポリマーの他に任意に別のポリマー、さらに前記第2活性医薬成分のための安定剤だけを含有する医薬単一単位剤形。
【0034】
(9)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、フィルムコーティングはクエン酸をさらに含む医薬単一単位剤形。
【0035】
(10)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、フィルムコーティングは少なくとも1mg、好ましくは少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10mgおよびいっそうより好ましくは少なくとも20mgの第2活性医薬成分を含むことを特徴とする医薬単一単位剤形。
【0036】
(11)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、これによるとフィルムコーティング内に含まれる20%より多い、特に40%より多い、さらにより特に70%より多い第2医薬活性成分が、USP装置2を使用して、37℃の900mLのリン酸カリウム緩衝液(pH=7.5)内に医薬単一単位剤形を配置し、75rpmのパドル速度を用いると10分間以内、特に5分間以内に放出される溶解プロファイルを示すことを特徴とする医薬活性成分。
【0037】
(12)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、前記第1活性医薬成分は前記第2活性医薬成分と同一である、または相違する医薬単一単位剤形。
【0038】
(13)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、前記第1および第2活性医薬成分は相違しており、不適合性である医薬単一単位剤形。
【0039】
(14)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、前記第1活性医薬成分は、好ましくはサルタン類(好ましくはテルミサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、バルサルタンおよびカンデサルタン、特にテルミサルタン);コレステロール吸収阻害剤(好ましくはエゼチミブ);およびスタチン類(好ましくはアトロバスタチン、シムバスタチン、ロスバスタチンおよびロバスタチン)からなる群から選択されるアンジオテンシンIIアンタゴニストである医薬単一単位剤形。
【0040】
(15)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、前記第2活性医薬成分は、好ましくはヒドロクロロチアジド、クロロチアジドおよびトリクロロチアジドならびにこれらの塩、特にヒドロクロロチアジド;またはカルシウムチャネルブロッカー、好ましくはアムロジピン、レルカニジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ベラパミルおよびジルチアゼムからなる群から選択される利尿薬である医薬単一単位剤形。
【0041】
(16)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、第1活性医薬成分はテルミサルタンであり、第2活性医薬成分はヒドロクロロチアジドである;または第1活性医薬成分はロバスタチンであり、第2活性医薬成分はナイアシンである;または第1活性医薬成分はシンバスタチンであり、第2活性医薬成分はナイアシンである医薬単一単位剤形。
【0042】
(17)医薬単一単位剤形であって、
(i)第1活性医薬成分としてテルミサルタンを含むコアと;
(ii)第2活性医薬成分としてのヒドロクロロチアジド、およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーとを含むフィルムコーティングであって、フィルムコーティング内の前記コポリマー対ヒドロクロロチアジドの重量比は1:1から5:1の範囲内にあるフィルムコーティングとを含む医薬単一単位剤形。
【0043】
(18)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、経口用である医薬単一単位剤形。
【0044】
(19)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、コア対フィルムコーティングの質量比は、150:1から2.5:1の間にあることを特徴とする医薬単一単位剤形。
【0045】
(20)先行項目のいずれか1つによる医薬単一単位剤形であって、1つ以上のサブコーティング層がコアとフィルムコーティングとの間に提供される医薬単一単位剤形。
【0046】
(21)医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、
単一単位剤形のコアを提供する工程と;
任意に1つ以上のサブコーティング層をコア上に提供する工程と;
任意に1つ以上のサブコーティング層が提供されたコアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび前記水性コーティングビヒクル内に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングを受けさせる工程とを含み、このとき前記コポリマーは前記組成物の少なくとも7.0重量%、好ましくは少なくとも9.4重量%を占め、前記コポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にある方法。
【0047】
(22)医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、
コーティングパン内に単一単位剤形のコアを提供する工程と;
任意に1つ以上のサブコーティング層をコア上に提供する工程と、
任意に1つ以上のサブコーティング層が提供されたコアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクル内に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかける工程とを含み、このとき前記コポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、コーティングパンは10回転/分以上の速さで回転する方法。
【0048】
(23)項目(22)による医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、コーティングパンは12回転/分以上、好ましくは15回転/分以上、より好ましくは17回転/分以上、いっそうより好ましくは19回転/分以上の速さで回転する方法。
【0049】
(24)項目(22)から(23)のいずれか1つによる医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、コアおよびフィルムコーティングは各々、同一、または好ましくは相違する活性医薬成分を含有する方法。
【0050】
(25)項目(22)から(24)のいずれか1つによる医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、コアは活性医薬成分として、好ましくはサルタン類、例えばテルミサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、バルサルタンおよびカンデサルタン、より好ましくはテルミサルタン;コレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ;およびスタチン類、好ましくはアトロバスタチン、シムバスタチン、ロスバスタチンおよびロバスタチンからなる群から選択されるアンジオテンシンIIアンタゴニストを含む方法。
【0051】
(26)項目(22)から(25)のいずれか1つによる医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、フィルムコーティングは、活性医薬成分として、好ましくはヒドロクロロチアジド、クロロチアジドおよびトリクロロチアジドならびにこれらの塩、より好ましくはヒドロクロロチアジド;またはカルシウムチャネルブロッカー、好ましくはアムロジピン、レルカニジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ベラパミルおよびジルチアゼムからなる群から選択される利尿薬を含む方法。
【0052】
(27)項目(22)から(26)のいずれか1つによる方法であって、医薬単一単位剤形は、経口用である方法。
【0053】
(28)項目(22)から(27)のいずれか1つによる方法であって、水性コーティングビヒクルは、本質的に水からなる、または水だけから、もしくは有機溶媒と少なくとも25%w/w、好ましくは少なくとも40%w/w、より好ましくは少なくとも50%w/w、特に少なくとも60%w/w、より特に少なくとも80%w/wの水との混合液からなる方法。
【0054】
(29)項目(22)から(28)のいずれか1つによる方法であって、コア対フィルムコーティングの質量比は、150:1から2.5:1の範囲内にあることを特徴とする方法。
【0055】
(30)項目(22)から(29)のいずれか1つによる方法であって、組成物は、少なくとも1mg、好ましくは少なくとも5mg、より好ましくは少なくとも10mgおよびいっそうより好ましくは少なくとも20mgの前記少なくとも1つの活性医薬成分を含む方法。
【0056】
(31)複数の医薬単一単位剤形のセットであって、セットの各剤形単位は、少なくとも1つの活性医薬成分およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを含むフィルムコーティングを含み、フィルムコーティング内のコポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、前記セットのフィルムコーティング内の活性医薬成分の含量変動の相対標準偏差は≦7%である複数の医薬単一単位剤形のセット。
【0057】
(32)項目(31)による複数の医薬単一単位剤形のセットであって、セットの各剤形単位はコーティングパン内に単一単位剤形のコアを提供し、任意に1つ以上のサブコーティング層をコア上に提供し、および任意に1つ以上のサブコーティング層が提供されたコアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクル内に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかけることにより得られるフィルムコーティングからなり、このときコーティングパンは15回転/分以上の速さで回転する複数の医薬単一単位剤形のセット。
【0058】
(33)項目(31)または(32)による複数の医薬単一単位剤形のセットであって、複数の医薬単一単位剤形の前記セット中の前記活性医薬成分の含量変動の相対標準偏差は≦6%、より好ましくは≦5%であることを特徴とする複数の医薬単一単位剤形のセット。
【0059】
(34)項目(31)から(33)のいずれか1つによる複数の医薬単一単位剤形のセットであって、セットの各剤形単位のフィルムコーティングは、1mgより多い、好ましくは5mgより多い、より好ましくは10mgより多い、およびいっそうより好ましくは少なくとも20mgの前記少なくとも1つの活性医薬成分を含むことを特徴とする複数の医薬単一単位剤形のセット。
【0060】
(35)項目(31)から(34)のいずれか1つによる複数の医薬単一単位剤形のセットであって、前記少なくとも1つの活性医薬成分は、好ましくはヒドロクロロチアジド、クロロチアジドおよびこの塩、ならびにトリクロロチアジドからなる群から選択される、より好ましくはヒドロクロロチアジドである利尿薬である複数の医薬単一単位剤形のセット。
【0061】
(36)ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび水性コーティングビヒクルを含む組成物であって、少なくとも1つの活性医薬成分を含み、ビヒクル中の前記コポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、前記活性医薬成分を医薬単一単位剤形上にフィルムコーティングする方法における組成物の使用。
【0062】
(37)項目(36)によるポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび水性コーティングビヒクルを含む組成物の使用であって、前記少なくとも1つの活性医薬成分は、20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される組成物の使用。
【0063】
(38)項目(36)から(37)のいずれか1つによるポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび水性コーティングビヒクルを含む組成物の使用であって、活性医薬成分は、好ましくはヒドロクロロチアジド、クロロチアジドおよびこれらの塩からなる群から選択される、より好ましくはヒドロクロロチアジドである利尿薬である組成物の使用。
【0064】
(39)項目(36)から(37)のいずれか1つによる使用であって、フィルムコーティングはスプレーコーティングである使用。
【0065】
(40)項目(36)から(38)のいずれか1つによる使用であって、医薬単一単位剤形は経口用であり、好ましくは錠剤として設計される使用。
【0066】
(41)項目(36)から(39)のいずれか1つによる使用であって、医薬単一単位剤形は活性医薬成分を含むコアであり、コアおよびフィルムコーティングは各々、同一または相違する活性医薬成分を含む使用。
【0067】
(42)ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび水性コーティングビヒクルを含む組成物であって、少なくとも1つの活性医薬成分を含み、ビヒクル中の前記コポリマー対活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、医薬単一単位剤形上の前記活性医薬成分のアウターフィルムコーティングにおける組成物の使用。
【0068】
(43)項目(42)によるポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび水性コーティングビヒクルを含む組成物の使用であって、前記少なくとも1つの活性医薬成分は、20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される組成物の使用。
【0069】
(44)項目(42)から(43)のいずれか1つによる使用であって、前記少なくとも1つの活性医薬成分は、ヒドロクロロチアジドである使用。
【0070】
本発明の各態様は、フィルムコーティングのための従来型装置を使用することによって、例えば有孔パンまたはスプレーを使用する任意の装置またはコーティングのための流動層技術などを使用することによって遂行できると意図されている。本発明に記載の流体および特に液体コーティング組成物のスプレーコーティングは、特に好ましい。これは、本発明によると有益にも回避できる、例えば1つの錠剤層の別の錠剤層への圧縮またはマントルコーティングとは明確に異なる。そこで、本発明によって得られる単一単位剤形の最終サイズは、対応するマントルまたは圧縮コーティング単一単位剤形と比較して縮小することができる。
【0071】
本明細書で使用する用語「フィルムコーティング」は、任意に連続工程である剤形のコアをコーティングする工程においてAPIおよび1つ以上のポリマーを沈着させる工程を意味しており、このときAPIおよび任意に1つ以上のポリマーはコア上に沈着させられる間にコーティングビヒクル内に溶解または分散させられている。フィルムコーティングのために使用される組成物は、典型的には液体状態にある。そうであれば、実質的に乾燥組成物が使用されるマントルまたは圧縮コーティングのために使用される組成物とは別個である。各組成物の状態における相違は、各工程のための非関連性の賦形剤もしくは物質の必要性をもたらす。例えば、マントルまたは圧縮コーティングのための組成物は、通常は圧縮性を改良して流動特性を提供するが接着性を制限する賦形剤を必要とするが、上記の特性だけを提供する賦形剤はフィルムコーティングにおいては不要である。この代りに、可溶化剤または可塑剤のような賦形剤、および例えば水もしくは水性溶媒混合液などの液体物質がフィルムコーティングの方法において役割を見いだすことができる。本発明によって意図されたフィルムコーティングは、達成すべき所望の溶解特性に基づき、通常は医薬単一単位剤形のアウターフィルムコーティングを構成する。
【0072】
本明細書で使用する用語「コーティングビヒクル」は、ポリマーおよび/または他の賦形剤成分もしくは添加物とは相違する、および活性医薬成分を溶解させるため、完全にではなく溶解または分散させるために使用されるフィルムコーティング組成物の成分を意味している。ポリマーおよび/または他の賦形剤成分もしくは添加物は、使用される場合は、さらにまたコーティングビヒクル内に溶解させる、完全にではなく溶解または分散させることができる。
【0073】
本明細書で使用する用語「複数の医薬単一単位剤形のセット」は、単一単位剤形、例えば同一製造バッチもしくはロットのサンプルから収集された錠剤、カプレット剤もしくはカプセル剤などの群を意味する。前記セット間の少なくとも1つの活性医薬成分の含量の変動、特に相対標準偏差は、各セットを十分に代表している10種の相違するサンプル、例えば10種の剤形(錠剤/カプレット剤/カプセル剤)から計算することができる。
【0074】
本明細書で使用する用語「低水溶性」は、(20℃、約pH7の)水中で約10mg/mL以下、好ましくは約5mg/mL以下、およびより好ましくは約1.5mg/mL以下の水溶性を意味する。本発明の概念のためにコーティングフィルム内に好都合にも包含されるAPIの特徴についてのまた別の定義は、APIが、上述の比率の水を含有する、または本質的もしくは完全に水からなるコーティングビヒクル内で完全には溶解しない、または少なくとも部分的に分散していることである。相対的に親油性の第2APIの溶解、任意にAPI含量の均一性に及ぼすこの所望の作用を提示するために、本発明に記載のコーティングフィルムは、低水溶性によって規定される、または水中での分散状態によって規定されるAPIだけを含有することができる。即ち、本発明の利点は、フィルムコーティングが易水溶性である任意の親水性活性医薬成分を全く含んでいない場合に特に有効である。
【0075】
本明細書に記載の活性医薬成分の高い用量もしくは装填量は、少なくとも1mg、特に少なくとも5mg、より特に少なくとも10mgおよびいっそうより特に少なくとも20mgの任意の用量であると理解されている。含量の均一性は、本明細書では、剤形コーティングの複数の10種の個別にアッセイされた活性医薬成分含量の相対標準偏差が7%未満、特に6%未満、より特に5%未満であることを意味する。活性医薬成分含量の相対標準偏差を決定するための方法は、一般に特定量の媒体内でのフィルムコーティングの完全溶解を含んでいる。媒体の組成、pHおよびその他の条件は、各活性成分に対して選択され、この完全な溶解を提供することは当業者には明白である。フィルムコーティング由来の全活性医薬成分が媒体中に溶解した後、前記溶液中の濃度は、当業者には公知である装置、例えばHPLCもしくはこの派生品を用いて測定され、およびフィルムコーティング内の活性医薬成分の出発含量が計算される。10種の個別コーティング剤形の測定値を用いて、算術平均、標準偏差およびそれから相対標準偏差(RSD)が計算される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】アウターフィルムコーティング内に存在するAPIとしてのヒドロクロロチアジドを使用することによって例示された、実施例1、2および3に従って調製された錠剤フィルムコーティング由来のAPIの溶解プロファイルを示す図である。
【図2】コア内に存在するAPIとしてのテルミサルタンを使用することによって例示された、実施例1、2および3に従って調製された錠剤コア由来のAPIの溶解プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
化合物の不適合性のような理由から最終剤形内で1つの活性医薬成分を同一もしくは他の活性医薬成分もしくは賦形剤から分離すること、活性医薬成分の修飾された放出を探求すること、患者への化合物の同時適用の有益な作用を保証することなどは、常に挑戦課題を提示してきた。驚くべきことに本発明者らは、活性医薬成分を高用量で医薬経口単一単位剤形のフィルムコーティング内に組み込めることを観察したが、このときコアは少なくとも1つの活性医薬成分を含み、フィルムコーティングもまたコア内の前記活性医薬成分と同一もしくは相違する少なくとも1つの活性医薬成分、およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーとを含み、フィルムコーティング内のコポリマー対前記活性医薬成分の重量比は少なくとも1から5までである。さらに、複数の医薬単一単位剤形、例えば本発明の方法において得られる複数の錠剤のセットは、セットの代表的な10種のアッセイされたサンプルを用いて適切に測定された、セットの相違するサンプルのフィルムコーティング内で少なくとも1つの活性医薬成分の含量の7%未満、特に6%未満、より特に5%未満の相対標準偏差を有することによって、コーティングに関する含量の均一性に適合する。
【0078】
特に、フィルムコーティング内に共存するポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマー対活性医薬成分の重量比が1:1から5:1の範囲内、これ以上に1:1から3:1の範囲内、およびいっそうこれ以上に1:1から2:1の範囲内、および特に重量比が1:1にあるように留意することが幾つかの利点:この比率が低いほど、薄いコーティングフィルムを作製できる、に寄与することが見いだされている。これが例えばヒドロクロロチアジドによって例示されるように相対的に親油性のAPIの場合にさえ実現可能となることは、本発明の驚くべき結果の1つである。同時に、より多くのポリマーが存在する場合に比較して、コア内に存在するAPIの溶解はより早期に開始することができる。さらに、この方法は、これをより強固にすることで全体としてより短くすることができる。全てこれらの効果は、APIの均一な含量にさらに寄与する。
【0079】
医薬経口単一単位剤形は、全ての医薬組成物内で、患者の観点から、および製造の観点から最も好ましい剤形である。医薬経口単一単位剤形は、単一または活性成分を組み合わせて投与するために使用され、錠剤、カプレット剤、カプセル剤などを包含する。医薬経口単一単位剤形は、様々な形態にあってよい。例えば、医薬経口単一単位剤形は、二層または多層錠剤である。このため、本発明では、上記の医薬経口単一単位剤形、ならびに任意にさらにコーティングされる、または任意に当業者には公知の任意の方法で修飾される医薬経口単一単位剤形は、本発明に記載のコアおよびフィルムコーティングを含む医薬単一単位剤形を入手するためにフィルムコーティングされるコアとして機能する。
【0080】
医薬製剤、例えば錠剤は通常、コア内もしくはコーティングフィルム内のいずれかまたはこの両方に数種の成分を含有しており、活性医薬成分がこの中で最も重要である。活性医薬成分の機械的特性、例えばバルク、改良された流動、優れた圧縮性、改良された崩壊特性、フレーバー付け、または増強された外観を改良するための成分を使用できる。このため、錠剤製剤内では適切な製造に十分であるように多数のタイプの賦形剤が使用される。多数の賦形剤には、結合剤、充填剤、潤滑剤、錠剤分解剤、界面活性剤、着色剤、ならびに流動、圧縮、硬度、味覚および錠剤性能を改良する可能性のある他の賦形剤が包含される。このことはカプレット剤にも同様に当てはまる。他方カプセル剤の製造はより少ない賦形剤を含む可能性があるが、これは活性成分を充填剤とのみブレンドして、アウターカプセル材料、例えばゼラチン、デンプン、またはセルロース材料内にカプセル封入できるからである。活性主組成物は、液体または固体の形態でカプセル封入することができる。カプセル剤に顆粒、ペレットまたは小さな錠剤さえが充填される場合には、錠剤を入手するためと同様の技術が、最後の追加のカプセル封入とともに適用される。
【0081】
本発明に記載の医薬単一単位剤形、例えば錠剤、カプセル剤などのコアは、標準方法および装置を用いて調製することができる。詳細には、錠剤は、1群の成分をブレンドし、錠剤プレス上に配置し、成分のいずれも変化させる必要なく錠剤に作製できる場合は、直接圧縮によって入手できる。さもなければ、この代りに乾式または湿式造粒が使用される。乾式造粒方法は、液体溶液を使用せずに顆粒を形成する工程を含む。活性成分および賦形剤の粉末が圧縮および圧密される。乾式造粒は、スラッギングツーリングを使用する錠剤プレス上またはローラー圧縮機上で実施することができる。得られたブリケットもしくは小さなペレットは、低剪断ミルを通してさらに製粉され、最後にブレンドされ、錠剤圧縮のために導かれる。粉末単独では圧縮されない場合、これらは湿式造粒されなければならない。湿式造粒は、液体溶液を粉末に添加する方法である。液体溶液は、水、有機溶媒または水および有機溶媒の混合液を含む溶媒系を含むことができる。湿式造粒のためには、結合剤のような賦形剤を液体溶液に添加することができる。入手された顆粒は、任意に乾燥され、スクリーニングされ、ふるいにかけられ、例えば回転式錠剤プレスであってよい錠剤プレスに装填される。さらに、ペレットもまた乾式または湿式造粒技術を使用して調製できる。ペレットを調製するためのその他の考えられる方法は、例えば押出−球形化法である。同様に、ペレットは錠剤に圧縮する、またはカプセル内に封入することができる。
【0082】
本発明によると、フィルムコーティングのために使用される賦形剤は、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーであり、このときフィルムコーティング内で使用されるコポリマー対活性医薬成分の重量比は少なくとも1:1から5:1までである。前記コポリマーは、フィルムコーティング構造を入手して、本発明に記載の特定の特性を達成するために特に必要とされる。医薬経口単一単位剤形のコアもしくはフィルムコーティングのいずれかまたはこの両方のために使用できる、任意に追加される賦形剤は、当業者には明白であろう。適切な賦形剤は、デンプン(例えばコーンスターチおよびα化デンプン)、ゼラチン、糖類(例えばスクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトース、粉砂糖)、糖アルコール類(例えばマンニトール、ソルビトール、キシロール)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポビドン、ワックス類、天然および合成ゴム類、ポリビニルピロリドン、セルロースポリマー類(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、粉末状セルロース、微結晶セルロース)、有機塩類および有機酸類(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、クエン酸)、無機塩類および無機酸類(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化ナトリウム)、二酸化ケイ素(例えばコロイド状二酸化ケイ素、特にAerosil(登録商標))、二酸化チタン、タルクおよびアルミナ、抗酸化物質、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、もしくは非イオン性)、ならびに顔料であるが、これらに限定されない。上述した賦形剤の派生品もまた本発明において使用できる。クエン酸は、好ましくはコーティング層の追加の賦形剤として選択される。クエン酸は、フィルムコーティング内のAPIとしてヒドロクロロチアジドを使用することで例示されるように、安定性に関して有益であることが見いだされている。
【0083】
例えば賦形剤の低総量およびコーティングフィルムの薄さなどの利点に好都合であるように、コーティングフィルムはポリマーの他には唯一の有効なタイプの賦形剤だけ、より好ましくはフィルムコーティング内に存在するAPIのための安定剤だけ、特にクエン酸を含有することがさらに好ましい。
【0084】
好ましい実施形態によると、フィルムコーティング内に包含される少なくとも1つの活性医薬成分の他に、同一もしくは相違する活性医薬成分が、コーティングおよびコア内のAPIが医薬経口単一単位剤形内で分離しているようにコア内に組み込まれている。このことによって、1つまたは相違するAPIの所望の溶解プロファイルを達成でき、不適合性の問題なども回避できる。所望の溶解プロファイルは、例えば、フィルムコーティングが迅速に崩壊して迅速に活性医薬成分を放出すれば達成されるが、他方コアは制御放出組成物として設計されており、制御された方法、例えば徐放性マトリックスで活性医薬成分を放出する。例えば、この溶解プロファイルは疾患、例えば一部の感染症もしくは睡眠障害を治療するために特に有用であるが、このとき活性医薬成分に初期装填量は即時もしくはすぐに(特にコーティングから)放出され、活性医薬成分のその後の(特にコアからの)制御放出が発生する。本実施形態は、さらにまたコーティング内に存在する1つの活性医薬成分がコア内に存在する1つの活性医薬成分より前に放出される必要がある状況においても有用である。例えば、このことは、コア内の活性医薬成分が消化管内でのP−糖タンパク質流出に曝され、コーティング内の活性医薬成分がP−糖タンパク質の阻害剤として作用する場合に有用である。つまり、P−糖タンパク質はコア内に存在する活性医薬成分のバイオアベイラビリティを減少させるが、この作用はコーティングから放出された活性医薬成分によるP−糖タンパク質の事前の阻害によって最小限に抑えることができる。本発明はさらに、コアからの活性医薬成分をフィルムコーティングからの活性医薬成分とほぼ同時に放出させる必要がある状況にとっての解決策も提供する。本実施形態は、コアからの活性医薬成分の放出の遅延時間を減少させられる特性を提供することができる。溶解プロファイルに影響を及ぼす他の考えられる条件および変化は、当業者には明白であろう。本発明は、そこで好ましくは医薬経口単一単位剤形を含むが、このとき2つ以上の活性医薬成分は、少なくとも1つはコア内および少なくとも1つはフィルムコーティング内で医薬剤形内に組み込まれる。
【0085】
さらに、2つ以上の活性医薬成分が単一医薬経口単一単位剤形内で組み合わせている場合は、活性成分間、および/または活性成分と賦形剤との間での考えられる相互作用または不適合性が発生する可能性がある。本明細書のなかの相違する第1および第2活性医薬成分間で考えられる不適合性は、任意の活性医薬成分のいずれかの任意の化学的または物理的変化を含む可能性がある。このような相互作用または不適合性は、活性成分を相互に分離することによって、例えば1つをコア内およびもう1つをフィルムコーティング内に導入することによって回避できる。活性医薬成分を含有するコアおよびコーティングは、中間コーティングによって分離されてよい。活性医薬成分の不適合性または相互作用およびこれらを分離する必要は、当業者には明白であろう。例えば、降圧化合物であるテルミサルタンと利尿薬であるヒドロクロロチアジドの特定のAPI組み合わせを考察すると、テルミサルタンは通常はこの溶解を促進するために水酸化ナトリウムおよびメグルミンのような塩基性賦形剤とブレンドされるが、他方ヒドロクロロチアジドは高pHの環境には不適合であることを留意しなければならない、つまり高pH環境はヒドロクロロチアジドの分解を引き起こすので、このため高pH環境から保護されなければならない。
【0086】
一般に、不適合性問題を評価するためには、1:1から最終剤形において後に意図される任意の比率までの比率で2つの活性原理または1つの活性原理と1つの賦形剤の二元混合物を使用して安定性試験を実施することができる。この混合物は1日、1週、1カ月、6カ月または1年の期間にわたり標準またはストレス条件下に放置されるが、このとき標準条件は室温(22℃)および65%までの相対湿度を意味し、ストレス条件は40℃もしくは60℃への加熱および65%を超える、特に85%、より特に95%の相対湿度を意味する。上述の期間が経過した後、当技術分野において公知の分析方法、例えばHPLCまたはX線を使用して混合物を検査し、および不適合性の結果、つまり分解生成物、濃度の低下、色の変化、臭い、結晶構造などを評価することができる。そこで本発明は、医薬経口単一単位剤形を特に含むが、このとき2つ以上の活性医薬成分は、コアおよびフィルムコーティング内に別個に不適合性化合物を組み込むことによって医薬剤形内で相互に分離される。
【0087】
本発明においては、医薬経口単一単位剤形またはコアのためのフィルムコーティングが提供されるが、このときフィルムコーティングは少なくとも1つの活性医薬成分を含む。フィルムコーティング内で使用されるポリマーはポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーであり、このときフィルムコーティング内で使用されるコポリマー対活性医薬成分の重量比は、少なくとも1:1から5:1までである。さらに、適切なコーティング材料であることが証明されている任意の天然もしくは合成ポリマーは、コア上にスプレーされた場合に、活性医薬成分の安定性および所望の放出挙動と適合することを前提に使用することができる。適切なポリマーには、ポビドン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、これらの誘導体およびコポリマー、ならびにこれらの混合物が包含されるが、これらに限定されない。追加のポリマーは、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアルコール、アセテートエステル類のようなこれらのエステル類、例えばポリビニルアセテート、ならびにこれらのコポリマーからなる群から選択される。追加のポリマーは、特にポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーとの好都合の組み合わせ、例えば各々が高水溶性特性を有するタイプのポリビニルアルコールポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロースもしくはポリエチレングリコールのように高水溶性であるように選択することができる。特に好ましいポリマーは、ポリビニルアルコール、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、およびこれらの誘導体もしくはコポリマーからなる群から選択することができる。
【0088】
活性医薬成分および/またはポリマーを分散させるのに適切なコーティングビヒクルは、全コーティングビヒクルに対して少なくとも25%、特に少なくとも40%、より特に少なくとも50%、さらにより特に少なくとも60%、およびいっそう少なくとも80%の水を含有するが、このとき%はw/wを意味する。好ましくは、コーティングビヒクルは、水と1つ以上の有機溶媒との混合液である。活性医薬成分および/またはポリマーを分散させるためのコーティングビヒクルとしては、本質的に水だけ、または完全に水だけを使用することができる。使用される場合、水以外に使用される最も適切な有機溶媒は、アルコール、特にエタノールである。
【0089】
本発明は、実際に任意の活性医薬成分(API)に適合するが、これは同一物を含むフィルムコーティングが、コーティングビヒクル内に分散したAPI化合物が本発明に記載のフィルムコーティング内で使用される場合でさえ別個に管理可能であるからである。フィルムコーティング内で使用されるコポリマー対活性医薬成分の重量比が少なくとも1:1から5:1までであるポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーの選択は、実際的に全活性医薬成分のコーティングを許容する。コーティングビヒクル内へ活性成分を分散させることが可能であり、好ましくはこれを利用することは、フィルムコーティング内へのより高量の活性医薬成分の装填をもたらす。フィルムコーティング内の活性医薬成分の含量は、低API装填量または1ミリグラム(mg)未満の用量さえに限定されることはもはやないが、これは従来型フィルムコーティングの問題である。むしろ、単一単位剤形当たり、例えば単一錠剤当たり、1mgを超える、好ましくは5mgを超える、およびいっそう10mgを超える用量をフィルムコーティング内に容易に組み込むことができる。単一単位剤形当たり1mgを超える用量を入手するためには、活性医薬成分は本発明によって使用されるフィルムコーティング組成物内に分散させられる。このため、より高含量の活性成分を達成することは、本明細書に開示した方法によって実現可能である。得られるフィルムコーティングもまた、本発明によって提供される。フィルムコーティング内で使用されるコポリマー対活性医薬成分の重量比が少なくとも1から5までである、コーティングビヒクルとしての少なくとも25%w/w、特に少なくとも40%w/w、より特に少なくとも50%w/w、さらにより特に少なくとも60%w/w、最も好ましくは少なくとも80%w/wの水と組み合わせたポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーの使用、またはコーティングポリマーの好ましい使用の他は水だけからなるコーティングビヒクルの使用は、厳しく有益な経済的、環境的および製薬的必要に合致する。これによって有機溶媒の使用を最小限に抑えることができる。
【0090】
本発明の特に好ましい実施形態および任意の先行技術の二重API系に比して極めて有益な特徴は、テルミサルタンが医薬単一剤形のコア内に使用され、ヒドロクロロチアジドがフィルムコーティング内の活性医薬成分として使用される場合である。1mgを超える、好ましくは5mgを超える、より好ましくは10mgを超えるおよび20mgさえを超える用量のヒドロクロロチアジドをフィルムコーティング内に組み込むことができるが、このとき有機溶媒を含まない水がコーティングビヒクルとして使用され、ヒドロクロロチアジドはコア上にスプレーされる前に前記コーティングビヒクル内に分散させられる。ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマー対ヒドロクロロチアジドの重量比は、好ましくは少なくとも1から5まで、好ましくは3まで、より好ましくは2までの範囲内で調節することができ、特に1である。この比率は、達成することが望ましい薬物装填量に左右される。フィルムコーティングが例えば1mgを少し超える(5mg未満の)活性医薬成分を含むことが意図される場合には、この比率は高くなるが3を超えると限定されず、他方5mgを超える用量を組み込むためには、この比率は小さくなるが、3を下回るとは限定されない。この比率はさらにまた使用されるコーティングビヒクル、任意に添加される可塑剤、および所望の放出プロファイルにも左右される。可塑剤は、例えばポリオール(例えばグリセロール、マクロゴール、プロピレングリコール)、有機エステル(例えばクエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル)、油/グリセリド)例えばヒマシ油、アセチル化モノグリセリド類)、またはこれらの組み合わせであってよい。任意に、着色剤、顔料、乳白剤、フレーバー剤、界面活性剤、酸性化剤(例えば、クエン酸)およびワックス類を添加できる。様々な製剤および加工処理パラメーター、例えばコーティングビヒクル、ポリマーのタイプならびに添加される可塑剤もしくは他の上述した賦形剤のタイプおよび量は変化させることができる。活性医薬成分による様々な製剤およびパラメーターが及ぼす作用、この用量および所望の放出プロファイルは、医薬製剤の分野の当業者の技術の範囲内に明確に含まれる。さらに本発明によると、フィルムコーティングの全ての特別な特性、例えば耐酸性、製剤の外観、光線もしくは酸素からの製剤の保護、組成物中の活性成分からの患者の保護を、例えば前記特性を達成するためには追加の工程が必要とされるマントルもしくは圧縮錠剤の場合に比較して最も有益である単一工程でコアへ活性成分をスプレーする工程と同時に提供することが可能である。本開示から、本発明によるフィルムコーティングは、追加してコーティングできる、もしくはサブコーティング上にコーティングできる、または別のフィルムコーティング上もしくは医薬成分を含む相違するコーティングされたベース上にピリングできることは明白である。
【0091】
その他の二重API組み合わせは、本明細書に開示した条件および利点に注意を払えば当業者であれば予期できるが、また別の好ましい実施形態には、ロバスタチンがコア内に使用され、ナイアシンがフィルムコーティング内に使用される、またはシンバスタチンがコア内に使用され、ナイアシンがフィルムコーティング内に使用される場合が包含される。
【0092】
単一単位剤形当たりフィルムコーティング内への1mgを超える活性成分の装填は、コーティングビヒクルとして少なくとも25%w/w、好ましくは少なくとも40%w/w、より好ましくは少なくとも50%w/w、特に少なくとも60%w/w、さらにより特に少なくとも80%w/wの水を使用する、およびいっそう最も好ましくは本質的もしくは完全に水だけからなる結果として分散している、フィルムコーティング内で分散した活性医薬成分を使用する場合は、困難な作業であるが、これは活性成分のより高い質量装填量は、通常は、水がフィルムコーティングの乾燥を困難にさせるのでコーティング工程の長期化を意味するからである。工程中の生成物の不適切な連続乾燥は不均一にコーティングされたコアを生じさせ、これは順に含量の均一性を伴わない最終剤形を生み出す。この状況は、有機溶媒が使用される場合ほど厄介ではない。このためコーティングビヒクルとして少なくとも25%w/w、好ましくは少なくとも40%w/w、より好ましくは少なくとも50%w/w、さらにより好ましくは少なくとも60%w/w、特に少なくとも80%w/wの水が使用される、およびいっそう最も好ましくは本質的もしくは完全に水だけからなる場合は、フィルムコーティング内で使用されるコポリマー対活性医薬成分の重量比が使用されるAPI化合物装填量およびコーティング組成物中の水の比率に従って少なくとも1から5まで、好ましくは少なくとも1から3まで、より好ましくは少なくとも1から2まで、特に約1であるポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーが選択されなければならない。
【0093】
本発明の生成物は、有益な含量基準の均一性を満たすことができる。複数の10種の剤形−コーティングのコーティングフィルム内の少なくとも1つの活性医薬成分の含量の相対標準偏差は、7%未満、特に6%未満、より特に5%未満に制御することができる。含量の均一性基準を満たすために、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーがコーティングの工程においてコーティングビヒクルとして使用されるが、このときフィルムコーティング内で使用されるコポリマー対活性医薬成分の重量比は、少なくとも1:1から5:1まで、好ましくは少なくとも1:1から3:1まで、より好ましくは少なくとも1:1から2:1まで、および特に約1:1である。さらに、活性医薬成分の用量は、1mg超、好ましくは5mg超、より好ましくは10mg超、およびいっそうより好ましくは20mg超に設定することができる。本明細書に開示した本発明の方法および生成物は、1mg超の少なくとも1つの活性医薬成分を含むことによってフィルムコーティングを入手する先行技術の試みに比して高度に有益であり、有益な含量基準の均一性を満たし、およびさらにコア対フィルムコーティングの質量比が150:1から2.5:1の範囲内にあることを可能にする。最良の結果を生じさせる医薬単一単位剤形を調製するための方法は、単一単位剤形のコアを提供する工程と、該コアを、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび分散した少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用したフィルムコーティングにかける工程とを含み、このとき前記コポリマーは前記組成物の少なくとも7.0重量%、好ましくは少なくとも9.4重量%を占め、前記コポリマー対前記活性医薬成分の重量比は少なくとも1:1から5:1までである方法である。また別の考えられる変動、または結果を達成するために適用された方法と組み合わせた条件セットは、コーティングパン内に単一単位剤形のコアを提供する工程と、該コアを、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよびコーティングビヒクル内に分散した少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を用いてフィルムコーティングにかける工程であり、このとき前記コポリマー対活性医薬成分の重量比は少なくとも1:1から5:1までであり、コーティングパンは10回転/分以上の速さで回転する。回転速度は、API含量の最終均一性に寄与することが見いだされた。10回転/分以上、および好ましくは12回転/分以上の回転が有益であり、17回転/分以上が好ましく、19回転/分以上がいっそうより好ましい。回転速度は、さらにまたコーティングドラムの容量に左右される場合がある。詳細には、コーティング装置が4.9L以上のコーティングドラム容量を有する場合、例えばO’Hara研究所コートもしくはまた別の研究所コートを使用する場合、回転速度はより速くてよく、例えば少なくとも13回転/分、より好ましくは17回転/分以上またはいっそうより好ましくは19回転/分以上であってよい。他方コーティング装置がより高度のコーティングドラム容量、例えば30L以上またはいっそう50L以上を有する場合、例えばGlatt GC 750を使用する場合、回転速度は10から13回転/分の範囲内に調整することができる。一般に、回転速度はそれでもなおAPI含量の望ましい均一性を達成するためによりコーティングドラム容量をより高くする傾向に伴ってより低く調整することができる。
【0094】
フィルムコーティングの工程において使用される上記の水性コーティングビヒクルは、少なくとも25%w/w、好ましくは少なくとも40%w/w、より好ましくは少なくとも50%w/w、さらにより好ましくは少なくとも60%w/w、特に少なくとも80%w/wの水を含む、およびいっそう最も好ましくは本質的もしくは完全に水だけからなるビヒクルである。本発明に記載の方法は、たとえ本質的もしくは完全に水だけの水性ビヒクルが使用された場合でさえ、公知の先行技術剤形に匹敵して乾燥しているフィルムコーティングされた医薬単一単位剤形を提供する。例えば、1つの錠剤層内にテルミサルタンを含有し、もう1つの錠剤層内にヒドロクロロチアジドを含有する二層錠Micardis(登録商標)および本発明に記載のフィルムコーティングされた錠剤の水の含量は、乾燥減量(loss−on−drying)試験法によって測定した。両剤についての結果は、約2.7%までの水分を示し、有意には相違しなかった。
【0095】
本発明のまた別の利点は、1mgを超える少なくとも1つの活性医薬成分を含むフィルムコーティングからのAPI化合物の即時の溶解である。フィルムコーティングは、それによると20%より多い、特に30%より多い、より特に40%より多い、さらにより特に70%より多い活性医薬成分が、USP装置2を使用し、37℃で900mLのリン酸カリウム緩衝液(pH=7.5)中に錠剤を配置し、75rpmのパドル速度を用いて標準物質によって決定した場合に10分間以内、特に5分間以内に放出される溶解プロファイルを示すことができる。この溶解プロファイルは、上記の試験方法を使用すると最初の5分間で活性医薬成分の85%までの放出を示す。溶解プロファイルを決定する媒体は、前記活性医薬成分は溶解媒体内に溶解性でなければならないので、活性医薬成分に従って変化させることができると理解されている。コーティングの迅速な溶解速度の利点は、コアの溶解は通常はフィルムコーティングを溶解させた後にのみ進行できるので、特に重要である。好ましい溶解プロファイルは、好ましいAPIであるヒドロクロロチアジドによって例示されるように、フィルムコーティング内でむしろ親油性のAPIが使用される場合でさえ入手できよう。
【0096】
本発明の特定の実施形態は、コア内にテルミサルタンおよびコーティング内にヒドロクロロチアジドを含むフィルムコーティング錠剤である。コーティングは、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを使用して実施するが、このときフィルムコーティング内のコポリマー対ヒドロクロロチアジドの重量比は少なくとも1:1から5:1までである。この好ましい実施形態では、ヒドロクロロチアジドは少なくとも60%の水を含み、残りはエタノールである、または本質的に水だけもしくは完全に水だけを該ポリマーと一緒に含むコーティングビヒクル内に分散しており、錠剤コア上にスプレーされる。
【0097】
一般に、本発明は、製造において標準コーティング方法および装置を用いて使用できる。このような方法は当業者には公知であり、有孔コーティングパン、スプレーもしくは流動層コーティング装置などを使用して適用することができる。
【0098】
以下の実施例は、本発明の単に例示であり、これらは本発明の範囲を決して限定すると見なされるべきではないが、なぜならこれらの実施例、これらの変形および他の同等物は、本開示、および添付の請求項に照らせば当業者には明白になるからである。
【0099】
(実施例1)
コアの組成
【0100】
【表1】

【0101】
コアの調製
錠剤コアの製造の方法は、テルミサルタンを1N NaOH内に溶解させる工程と、メグルミンを添加する工程とを包含した。エタノールおよびポビドンをさらに溶液に加え、ポビドンを徐々に溶解させた。調製された溶液を流動層チャンバー内でスプレーする工程によってLudipress(登録商標)上に適用した。得られた顆粒を乾燥させ、ふるいに通してスクリーニングした。さらに、顆粒は無水ラクトースを用いてホモジナイズした。このブレンドにステアリン酸マグネシウムを加え、短時間にわたり混合した。最後に、錠剤を圧縮した。
【0102】
フィルムコーティング錠の調製
サブコーティング
ポリビニルピロリドン 10.00mg
10.00mg
【0103】
コーティング
ポリビニルアルコール−ポリエチレン
グリコールコポリマー(Kollicoat(登録商標)IR) 30.00mg
クエン酸 1.00mg
ヒドロクロロチアジド 12.50mg
43.50mg
【0104】
1バッチのフィルムコーティング錠は以下の方法によって調製した:
サブコーティングのための分散液は、精製水(66.00g)およびエタノール(220.00g)の混合液内にポリビニルピロリドン(110.00g;K25、Basf社)を(10分間)溶解させることによって作製した。活性成分を備えるコーティングのための分散液は、以下の通りに調製した:
第1のビーカーで330.00gのKollicoat(登録商標)IR(白色;Basf社)を、35分間にわたり混合しながら室温で871.00gの水中に分散させたが、室温は22℃であると理解されている。また別のビーカー内で11.00gのクエン酸を22.00gの精製水中に5分間にわたり混合しながら溶解させた。第3のビーカー内で137.50gのヒドロクロロチアジドは、ホモジナイザー(Ultraturax社)を30分間にわたり使用して206.30gの精製水中に分散させてホモジナイズした。全3つのビーカーの混合物を一緒に混合した後、さらに20分間以上攪拌した。
【0105】
最初に、サブコーティングのための分散液は、コーティングされたコアに関して約2.0(w/w)%の重量比にあるフィルムコーティングが得られるように有孔パン内でコア上にスプレーした。
【0106】
次の工程では、活性成分を含む分散液は、フィルム質量に関して約8.2(w/w)%の重量比にあるフィルムコーティングが得られるように同一有孔パン内で第1コーティングを含むコア上にスプレーした。コーティング工程中、錠剤重量およびフィルムコーティング錠の乾燥による消失が制御されたが、これは重量の増加が乾燥したコアおよび乾燥したコーティングされたコア各々について常に計算されたことを意味する。
【0107】
(比較例2)
コアの組成およびこれらの調製方法は、実施例1に提示したものと同一である。
【0108】
フィルムコーティング錠の調製
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)コーティング
ヒドロクロロチアジド 12.50mg
Pharmacoat(登録商標)606 18.00mg
Klucel(登録商標)EF 9.00mg
PEG 400 6.00mg
顔料 0.50mg
46.00mg
【0109】
全成分は精製水(80mg/錠)およびエタノール(240mg/錠)の溶液中に分散させた。結果として生じた分散液は、典型的な錠剤の重量が乾燥後に決定される46mg/錠を獲得するまで有孔パン内の錠剤コア上にスプレーした。コーティング錠は、引き続いてパン内で乾燥させた。
【0110】
(比較例3)
コアの組成およびこれらの調製方法は、実施例1に提示したものと同一であった。
【0111】
フィルムコーティング錠の調製
ポリビニルピロリドン(PVP)コーティング
ヒドロクロロチアジド 12.50mg
Aerosil(登録商標)200 12.50mg
無水クエン酸 1.26mg
ポビドン(K25) 43.70mg
顔料 0.04mg
70.0 mg
【0112】
全成分は、脱塩水(57mg/錠)およびエタノール(130mg/錠)の溶液中に分散させた。結果として生じた分散液は、乾燥後に70mg/錠の重量利得が決定されるまで有孔パン内の錠剤コア上にスプレーした。コーティング錠は、引き続いてパン内で乾燥させた。
【0113】
(実施例4)
様々な調製の錠剤のフィルムコーティング内のヒドロクロロチアジド(HCTZ)の含量の均一性は、実施例1および2の下で記載したように、調製したコーティング錠内で決定した。10個のコーティング錠を無作為に選択し、ヒドロクロロチアジドの含量をこれらのコーティング内で測定した。複数の10個の含量の平均、標準偏差および相対標準偏差を計算した。
【0114】
【表2】

【0115】
これらの結果は、含量の均一性が、本発明の方法の要件にしたがった場合に達成できることを明白に証明している。コーティングポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する工程は、7.2%の相対標準偏差を備えるHCTZ含量を備えるコーティングを生成した。ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーへの変更は、結果を改良し、たった4.6%という優れた相対標準偏差を示すHCTZ含量を備えるコーティングを入手した。
【0116】
(実施例5)
実施例1、2および3によって調製されたフィルムコーティング錠をUSP装置2に装填し、37℃の900mLのリン酸カリウム緩衝液(pH=7.5)内に錠剤を配置し、75rpmのパドル速度を用いてこれらの溶解プロファイルを決定した。図1および図2は、各々フィルムコーティングからのHCTZ溶解およびコアからのテルミサルタン溶解の溶解プロファイルを示している。
【0117】
図1に示したように、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを用いて調製したコーティング錠(実施例1)からのヒドロクロロチアジドの放出は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(実施例2)またはポリビニルピロリドン(実施例3)を用いて調製したコーティング錠と比較して有意に速い。錠剤のフィルムコーティングのより速い溶解の結果として、コーティング錠の錠剤コアからのテルミサルタンの放出もまた速い。これらの結果は、より強固な技術の他に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンと比較してポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを用いた場合は、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーはさらにまたコーティング錠からの薬物のはるかに速い放出もまた許容することを明白に証明している。
【0118】
(実施例6から8)
コアの組成およびこれらの調製方法は、実施例1に提示したものと同一であった。同様に、フィルムコーティングを調製するための方法を、以下に示した組成物を入手するために繰り返した。実施例4に記載の10個の含量の相対標準偏差を実施例6から8の組成物について計算した。
【0119】
【表3】

【0120】
実施例6から8は、フィルムコーティング内のコポリマー対活性医薬成分の重量比が最も好ましくは少なくとも1から2までであるポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを使用する工程が、7未満の活性医薬成分含量の均一性を備える医薬最終剤形を産生することを示している。活性医薬成分含量の均一性は、さらにコーティングパンの回転速度を上昇させることによって低下するように影響を及ぼすことができる。17rpmの速度を使用すると6.3の相対標準偏差に表示された活性医薬含量の均一性を提供したが、他方コーティングパンの回転速度を19もしくは20rpmにさえ上昇させると各々4.5および4.3の相対標準偏差を生じさせた。
【0121】
(実施例9)
コアの組成
【0122】
【表4】

【0123】
錠剤コアは、実施例1と同様に製造した。
【0124】
フィルムコーティング錠の調製
サブコーティング
ポリビニルアルコール−ポリエチレン
グリコールコポリマー(Kollicoat(登録商標)IR) 6.00mg
6.00mg
【0125】
コーティング
ポリビニルアルコール−ポリエチレン
グリコールコポリマー(Kollicoat(登録商標)IR) 25.00mg
クエン酸 2.00mg
ヒドロクロロチアジド 25.00mg
52.00mg
【0126】
1バッチのフィルムコーティング錠は以下の方法によって調製した:
サブコーティングのための分散液は、精製水(450.00g)中にKollicoat(登録商標)IR(75.00g、Basf社)を溶解させる(60分間)ことによって作製した。
【0127】
活性成分を備えるコーティングのための分散液は、以下の通りに調製した:
第1のビーカーで234.38gのKollicoat(登録商標)IR(Basf社)を、60分間にわたり混合しながら室温で1100.00gの水中に分散させたが、室温は22℃であると理解されている。
【0128】
また別のビーカー内で18.75gのクエン酸を1043.75gの精製水中に10分間にわたり混合することによって溶解させた。234.38gのヒドロクロロチアジドを加え、ホモジナイザー(Ultraturax社)を30分間にわたり使用してホモジナイズした。200.00gの水を使用して、ポリマー分散液および薬物懸濁液を混合するときにbakerをすすぎ洗った。均一な分散液を調製するためにはさらに10分間の混合が必要であった。
【0129】
最初に、サブコーティングのための分散液は、コーティングされたコアに関して約1.1(w/w)%の重量比にあるフィルムコーティングが得られるように有孔パン内でコア上にスプレーした。次の工程では、活性成分を含む分散液は、フィルム質量に関して約9.7(w/w)%の重量比にあるフィルムコーティングが得られるように同一有孔パン内で第1コーティングを含むコア上にスプレーした。コーティング工程中、錠剤重量およびフィルムコーティング錠の乾燥による消失が制御されたが、これは重量の増加が乾燥したコアおよび乾燥したコーティングされたコア各々について常に計算されたことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬単一単位剤形であって:
(i)任意に第1活性医薬成分を含むコアと;
(ii)20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定される第2活性医薬成分、およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマーを含むフィルムコーティングであって、このとき前記フィルムコーティング内の前記コポリマー対第2活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあるフィルムコーティングとを含む医薬単一単位剤形。
【請求項2】
フィルムコーティング内の前記コポリマー対前記第2活性医薬成分の重量比は1:1から3:1の範囲内にある、より好ましくは1:1から2:1の範囲内にある、特に1:1である、請求項1に記載の医薬単一単位剤形。
【請求項3】
フィルムコーティングは、分散した第2活性医薬成分を含む水性コーティングビヒクルを使用することによって形成され、水性コーティングビヒクルは本質的に水もしくは水だけ、または有機溶媒と少なくとも25(w/w)%、好ましくは少なくとも40(w/w)%、より好ましくは少なくとも50(w/w)%、特に少なくとも60(w/w)%およびより特に少なくとも80(w/w)%の水との混合液を含む、請求項1または2に記載の医薬単一単位剤形。
【請求項4】
フィルムコーティングは、クエン酸をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬単一単位剤形。
【請求項5】
それによるとフィルムコーティング内に含まれる20%より多い、特に40%より多い、さらにより特に70%より多い第2医薬活性成分が、USP装置2を使用して、37℃で900mLのリン酸カリウム緩衝液(pH=7.5)内に医薬単一単位剤形を配置して、75rpmのパドル速度を用いて10分間以内、特に5分間以内に放出される溶解プロファイルを示すことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬単一単位剤形。
【請求項6】
前記第1活性医薬成分が含まれ、および前記第1活性医薬成分は好ましくはサルタン類(好ましくはテルミサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、バルサルタンおよびカンデサルタン)、コレステロール吸収阻害剤(好ましくはエゼチミブ);およびスタチン類(好ましくはアトロバスタチン、シムバスタチン、ロスバスタチンおよびロバスタチン)からなる群から選択され、最も好ましくはテルミサルタンであるアンジオテンシンIIアンタゴニストである、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬単一単位剤形。
【請求項7】
前記第2活性医薬成分は、好ましくはヒドロクロロチアジド、クロロチアジドおよびトリクロロチアジドならびにこれらの塩、より好ましくはヒドロクロロチアジド;またはカルシウムチャネルブロッカー、好ましくはアムロジピン、レルカニジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ベラパミルおよびジルチアゼムからなる群から選択される利尿薬である;特に前記第2医薬成分は、ヒドロクロロチアジドまたはこの塩である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬単一単位剤形。
【請求項8】
医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、
(aa)単一単位剤形のコアを提供する工程と;
(ba)任意に前記コア上に1つ以上のサブコーティング層を提供する工程と;
(ca)任意に1つ以上のサブコーティング層が提供された前記コアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクルに分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかける工程とを含み、このとき前記コポリマーは前記組成物の少なくとも7.0重量%、好ましくは少なくとも9.4重量%を占め、前記コポリマー対前記活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にある方法。
【請求項9】
医薬単一単位剤形を調製するための方法であって、
(ab)コーティングパン内に単一単位剤形のコアを提供する工程と、
(bb)任意に前記コア上に1つ以上のサブコーティング層を提供する工程と、
(cb)任意に1つ以上のサブコーティング層が提供された前記コアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクル内に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかける工程とを含み、このとき前記コポリマー対前記活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、前記コーティングパンは10回転/分以上の速さで回転する方法。
【請求項10】
コアは活性医薬成分として好ましくはサルタン類(好ましくはテルミサルタン、ロサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、バルサルタンおよびカンデサルタン)、コレステロール吸収阻害剤(好ましくはエゼチミブ);およびスタチン類(好ましくはアトロバスタチン、シムバスタチン、ロスバスタチンおよびロバスタチン)からなる群から選択され、最も好ましくはテルミサルタンであるアンジオテンシンIIアンタゴニストを含む、請求項8または9に記載の医薬単一単位剤形を調製するための方法。
【請求項11】
フィルムコーティングは、活性医薬成分として、好ましくはヒドロクロロチアジド、クロロチアジドおよびトリクロロチアジドならびにこれらの塩、より好ましくはヒドロクロロチアジド;またはカルシウムチャネルブロッカー、好ましくはアムロジピン、レルカニジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ベラパミルおよびジルチアゼムからなる群から選択される利尿薬を含み、特に前記第2医薬成分は、ヒドロクロロチアジドまたはこの塩である、請求項8から10のいずれか一項に記載の医薬単一単位剤形を調製するための方法。
【請求項12】
複数の医薬単一単位剤形のセットであって、前記セットの各剤形単位は、少なくとも1つの活性医薬成分およびポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーを含むフィルムコーティングからなり、このときフィルムコーティング内の前記コポリマー対前記活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にあり、前記セットのフィルムコーティング内の活性医薬成分の含量変動の相対標準偏差は≦7%である複数の医薬単一単位剤形のセット。
【請求項13】
セットの各剤形単位は、コーティングパン内に単一単位剤形のコアを提供し、任意にコア上に1つ以上のサブコーティング層を提供し、および任意に1つ以上のサブコーティング層が提供された前記コアに、水性コーティングビヒクル、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールのコポリマー、および前記水性コーティングビヒクル内に分散させた少なくとも1つの活性医薬成分を含む組成物を使用するフィルムコーティングにかけることによって得られるフィルムコーティングからなり、このとき前記コーティングパンは10回転/分以上の速さで回転する、請求項12に記載の複数の医薬単一単位剤形のセット。
【請求項14】
ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールとのコポリマーおよび少なくとも1つの活性医薬成分を含む水性コーティングビヒクルを含む組成物の使用であって、このとき前記少なくとも1つの活性医薬成分は20℃、約pH7の水中で測定した場合に約10mg/mL以下の低水溶性によって規定される、または20℃、約pH7の水中に置かれた場合に分散状態を提示することによって規定され、および医薬単一単位剤形上への活性医薬成分のフィルムコーティング内で、前記ビヒクル中の前記コポリマー対前記活性医薬成分の重量比は1:1から5:1の範囲内にある、組成物の使用。
【請求項15】
少なくとも1つの活性医薬成分は、ヒドロクロロチアジドである、請求項14に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−515185(P2012−515185A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545726(P2011−545726)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050349
【国際公開番号】WO2010/081824
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】