説明

医薬品組成物

【課題】長期保存及び過酷条件下の保存においても、β遮断薬であり、本態性高血圧症、腎実質性高血圧症、狭心症、虚血性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全患者に対して効果を有する、安定なカルベジロール含有固形製剤を提供する。
【解決手段】カルベジロールを含有する固形製剤に、抗酸化剤であるトコフェロールを配合し、カルベジロールの酸化を防止することにより、長期保存及び過酷条件下の保存においても、カルベジロールの類縁物質の発生を格段に低減することを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定なカルベジロールを含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
β遮断薬であるカルベジロールを有効成分として含有する製剤として、セルロース系の
結合剤と崩壊剤が配合された固形製剤がすでに知られている(例えば、特許文献1参照)
。また、アーチスト錠(第一三共株式会社製)は、ヒドロキシプロピルセルロースおよび
クロスカルメロースナトリウムを含有する錠剤として市販されている。
【0003】
本発明者らは、前記錠剤について研究を進め、安定性試験(長期、加速、過酷)を実施
した結果、カルベジロールの類縁物質が発生するという問題点を見出した。しかしながら
、カルベジロールを含有する固形製剤において、カルベジロールの類縁物質の発生を低減
する方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−187464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カルベジロールを含有する固形製剤(以下、カルベジロール含有固形製剤と
も称す)において、該固形製剤を長期保存並びに過酷な条件下で保存した場合のカルベジ
ロールの類縁物質の発生が、より低減された固形製剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カルベジロール含有固形製剤に抗酸化剤を配合することにより、カルベ
ジロールの類縁物質の発生が格段に低減することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、
1.カルベジロールおよび抗酸化剤を含有する固形製剤、
2.カルベジロールの含有量が、0.1%〜20%である1に記載の固形製剤、
3.抗酸化剤の含有量が、固形製剤の全重量の0.1%〜2%である1または2に記載の
固形製剤、
4.抗酸化剤が、トコフェロールである1〜3のいずれか1に記載の固形製剤、
5.剤形が錠剤である1〜4のいずれか1に記載の固形製剤、
6.抗酸化剤を配合することを特徴とする、固形製剤におけるカルベジロールの類縁物質
の発生を低減する方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
カルベジロールを含有する固形製剤に抗酸化剤を配合することにより、該固形製剤中に
おけるカルベジロールの類縁物質の発生を低減させることできた。すなわち、抗酸化剤を
配合することにより、長期保存並びに過酷な条件下で保存された場合においても、安定し
たカルベジロール含有固形製剤を製造し提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にかかるカルベジロールは、化学名を(±)−1−(carbazol−4−y
loxy)−3−[[2−(o−methoxyphenoxy)ethyl]amino]
−2−propanolといい、β遮断作用等を有する化合物として知られている。また
、本発明にかかるカルベジロールは、本態性高血圧症、腎実質性高血圧症、狭心症、虚血
性心疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全患者に対して効果を有する医療用医薬品
(第一三共株式会社製、商品名:アーチスト)の有効成分である。本発明の固形製剤は、
該カルベジロールを有効成分として含有する。
【0010】
本発明にかかるカルベジロールの含有量は、特に限定されるものではない。本発明にお
いては、固形製剤におけるカルベジロールの含有量は低含有量であることが好ましく、カ
ルベジロールの固形製剤における含有比が、固形製剤全重量の0.1%〜20%であるこ
とが好ましく、0.1%〜2%であることが好ましい。特に本発明の固形製剤の剤形が錠
剤の場合、1錠当たりのカルベジロールの含有量は、1.25mg〜50mgが好ましく
、1.25mg〜20mgがより好ましく、1.25〜6.25mgがさらに好ましく、
1.25mg〜2.5mgが特に好ましい。
【0011】
本発明にかかる抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸類またはその塩(アスコルビン酸
、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ステアリン酸エステル類またはその塩等)
、トコフェロール類またはその塩(天然ビタミンE、トコフェロール(dl−α−トコフ
ェロール)、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、σ−トコフェロールや、トコフ
ェロール・酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステル、トコフェロールコハク酸
エステルカルシウム、濃縮混合トコフェロール等)、エデト酸ナトリウム、エリソルビン
酸、塩酸システイン、乾燥亜硫酸ナトリウム、クエン酸、ジクロルイソシアヌール酸カリ
ウム、ジブチルヒドロキシトルエン、大豆レシチン、チオグリコール酸ナトリウム、チオ
リンゴ酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、1,3-
ブチレングリコール、ベンゾトリアゾール、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミ
ダゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル
)プロピオネート]、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜
硫酸水素ナトリウム、アルファチオグリセリン、β−カロテン等を挙げることができる。
【0012】
これらの抗酸化剤は公知の化合物であり、市販のものを用いることもできるし、例えば
、第十五改正日本薬局方に記載の製法にて製造したものを用いることもできる。本発明に
かかる抗酸化剤としては、トコフェロール類が好ましく、トコフェロールがより好ましい

【0013】
本発明の固形製剤に配合する抗酸化剤の含有量は、通常、固形製剤の全重量の0.01
%〜10%であり、0.1%〜2%が好ましい。本発明にかかる抗酸化剤がトコフェロー
ルの場合、トコフェロールの含有量は、通常、固形製剤の全重量の0.01%〜10%で
あり、0.1%〜2%が好ましい。
【0014】
本発明の固形製剤においては、カルベジロールおよび抗酸化剤の他、必要に応じて、適
当な医薬品添加物を配合することができる。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等
を配合できる。本発明の固形製剤に配合可能な賦形剤としては、例えば、糖類(乳糖、マ
ンニトール等)、デンプン類(トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等)、
セルロース類(結晶セルロース等)を挙げることができる。また、本発明の固形製剤に配
合可能な結合剤としては、セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリビニ
ルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、マクロゴー
ル、トラガント、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。また、本発明の固形製
剤に配合可能な崩壊剤としては、例えば、セルロース類(低置換度ヒドロキシプロピルセ
ルロース、クロスカルメロースナトリウム等)、クロスポビドン、デンプン類(カルボキ
シメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプン等)を挙げることができる。ま
た、本発明の固形製剤に配合可能な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステア
リン酸カルシウム、ステアリン酸、硬化油、タルク、軽質無水ケイ酸、マクロゴール、シ
ョ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0015】
本発明の固形製剤の剤形としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を挙げることが
できる。これらの固形製剤は、通常用いられる公知の固形製剤の製造方法により製造でき
、例えば、第15改正日本薬局方の製剤の項に記載の方法等で製造することができる。本
発明の固形製剤の剤形が、顆粒剤や散剤の場合は、カルベジロール、抗酸化剤および所望
の医薬品添加物を公知の方法にて混合し、必要に応じて流動層造粒法、攪拌造粒法、転動
流動法造粒法、押し出し造粒法、噴霧造粒法、または破砕造粒法等により造粒することが
できる。さらに本発明の固形製剤の剤形が錠剤の場合は、カルベジロール、抗酸化剤およ
び所望の医薬品添加物を公知の方法にて混合し、必要に応じて造粒した後適当な打錠圧に
て圧縮成型することにより製造することができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限
定されるものではない。
【0017】
(試験例)
表1に示す成分を各々混合し、打錠機を用いて実施例1、実施例2、及び比較例1の錠
剤とした。これらの錠剤を各々ビン包装にて60℃で保存し、2日後の類縁物質の増加量
を調べた。その結果を表2に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】



類縁物質の測定方法
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:240nm)
カラム:内径4mm, 長さ15cm のステンレス管に5μm の液体クロマトグラフ用オクチ
ルシリル化シリカゲルを充てんしたもの
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相:メタノール/pH5.0リン酸緩衝液混液(11:9)
流速:約1mL/min
試料量:50μL

表2の結果から、抗酸化剤であるα−トコフェロールを添加したカルベジロール含有固
形製剤(実施例1、2)は、α−トコフェロールを含有しないカルベジロール含有固形製
剤(比較例1)に比べ、過酷条件下におけるカルベジロールの類縁物質の発生を格段に低
減することが判明した。すなわち、抗酸化剤を添加したカルベジロール含有製剤は、安定
性において極めて優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明により、カルベジロールを含有する製剤において、長期保存及び過酷な条件下で
保存された場合におけるカルベジロールの類縁物質の発生を格段に低減させた。本発明に
より、安定したカルベジロール含有製剤を提供することができるので、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルベジロールおよび抗酸化剤を含有する固形製剤。
【請求項2】
カルベジロールの含有量が、0.1%〜20%である請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
抗酸化剤の含有量が、固形製剤の全重量の0.1%〜2%である請求項1または2に記載
の固形製剤。
【請求項4】
抗酸化剤が、トコフェロールである請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項5】
剤形が錠剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項6】
抗酸化剤を配合することを特徴とする、固形製剤におけるカルベジロールの類縁物質の発
生を低減する方法。

【公開番号】特開2009−275041(P2009−275041A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100091(P2009−100091)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】