説明

医薬品組成物

【課題】本発明の目的は、ルラシドンを有効成分とし、該有効成分の含量が広い範囲で異なっても速溶解性を示し、かつ、同等の溶出挙動を示す経口用の製剤、とくに有効成分の含量を増大した場合に低含量の製剤の複数錠と同様の溶出挙動を示し、有効成分を所望の濃度に放出し得る経口製剤を提供することにある。
【解決手段】式(1)


で表されるN−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩(ルラシドン)を有効成分とするアルファ化デンプン類、水溶性賦形剤、水溶性高分子結合剤を含有する経口製剤において、有効成分の含量が変動しても、同等の溶出挙動を示す経口投与用製剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩(ルラシドン)を有効成分とする崩壊性が良好な経口製剤に関する。詳しくはルラシドンを有効成分とする経口製剤において、有効成分の含量が変動しても、同等の溶出挙動を示す経口投与用製剤、特に錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルラシドン等の化合物について、経口的に投与することができること、また通常の担体・賦形剤・結合剤・安定剤等と有効成分とを配合することにより製造できることの記載はあるが、該有効成分の含量が広い範囲で異なっても速溶解性を示し、かつ、同等の溶出挙動を示す経口用の製剤、とくに有効成分の含量を増大した場合に低含量の製剤の複数錠と同様の溶出挙動を示す経口製剤に関する記載はない。
【0003】
含量が異なる製剤を同一用量服用したときの生物学的同等性を保証することを目的として医薬審第64号(平成12年2月14日公布)にて『含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン』が示され、含量が異なる製剤において、胃、腸および口腔内の各pH値に対応するpH1.2、3.0〜5.0および6.8の緩衝液、水、生理食塩水などの各試験液で同等の溶出挙動を示すことが求められるようになった。
【0004】
ルラシドンを有効成分とする薬剤について、該有効成分の含量が異なっても速溶解性を示し、かつ、同等の溶出挙動を示す経口製剤、とくに有効成分の含量を増大した場合に低含量の製剤の複数錠と同様の溶出挙動を示し、水難溶性の有効成分を所望の濃度に放出し得る経口製剤については特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献2には有効成分の含量が数mg〜数十mgの範囲、例えば5mg〜20mgまたは5mg〜40mgの範囲、で変動しても、速溶解性を示し、かつ、同一組成比において同等の溶出挙動を示す経口製剤、特に錠剤が開示されている。経口製剤においては、より高い臨床効果を得るためにさらに高い含量の製剤、又は患者の症状に応じて臨床効果を調節するためにより広い含量範囲で、複数錠と同様の挙動を示し、有効成分を所望の濃度に放出し得る製剤が必要とされる場合が多い。特許文献2の開示技術では図1に示すようにルラシドンが1錠あたり5mgから40mgまでは同等の溶出挙動を示す経口製剤を提供することができる。しかしながら、図2に示すように、製剤中の有効成分の含有率を2倍にすることにより一錠中の有効成分の含有量を増やした場合、80mg錠では同等の溶出挙動を示すことができなかった。従って、複数錠を一度に服用するか、服用に困難な大きさの錠剤にせざるを得ない状況であった。よって、水難溶性の有効成分であるルラシドンについては、高含量の経口製剤あるいはさらに広い範囲で溶出挙動が同等な経口製剤の提供は困難であった。
【0006】
また、特許文献2には水溶性高分子結合剤としてデンプンが挙げられているが、アルファ化デンプンについての記載はない。アルファ化デンプンは、例えば、特許文献3に記載されているように、医薬品組成物の崩壊性及び溶出性が顕著に改善することが知られているが、非特許文献1の中でも記述されるように通常、10%以下の含有量で用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2800953
【特許文献2】WO2002/024166
【特許文献3】特開2000−26292
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 491, 1994, The Pharmaceutical Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ルラシドンを有効成分とし、該有効成分の含量が広い範囲で異なっても速溶解性を示し、かつ、同等の溶出挙動を示す経口用の製剤、とくに有効成分の含量を増大した場合に低含量の製剤の複数錠と同様の溶出挙動を示し、有効成分を所望の濃度に放出し得る経口製剤を提供することにある。
【0010】
N−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩(以下、ルラシドン)を有効成分とする経口製剤において、有効成分の含量が変動しても、同等の溶出挙動を示す経口投与用製剤の提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討したところ、以下の手段により当該課題を解決することを見いだすに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)式(1)
【0013】
【化1】

で表されるN−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩(ルラシドン)、アルファ化デンプン類、水溶性賦形剤、水溶性高分子結合剤を含有する経口製剤。
(2)ルラシドン、アルファ化デンプン類及び水溶性賦形剤を含む混合末を、水溶性高分子結合剤を溶解した溶液を用いて造粒した経口製剤。
(3)アルファ化デンプン類及び水溶性賦形剤を含む混合末を、ルラシドン及び水溶性高分子結合剤を溶解又は分散した液により、造粒した経口製剤。
(4)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖である(1)〜(3)いずれか記載の経口製剤。
(5)ルラシドン、アルファ化デンプン類及び水溶性賦形剤を含む混合末を、水溶性高分子結合剤を溶解した溶液を用いることにより造粒する方法。
(6)アルファ化デンプン類及び水溶性賦形剤を含む混合末を、ルラシドン及び水溶性高分子結合剤を溶解又は分散した液を用いることにより造粒する方法。
(7)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖である(5)記載の造粒方法。
(8)アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して10〜50%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(9)アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して20〜30%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(10)製剤中のルラシドン含有量が、20〜45%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(11)製剤中のルラシドン含有量が、25〜40%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(12)ルラシドンの1錠中の含量が、10〜160mgである(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(13)ルラシドンの1錠中の含量が、20〜120mgである(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(14)ルラシドンの1錠中の含量が、40〜120mgである(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(15)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して10〜50%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(16)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、製剤中のルラシドン含有量が25〜40%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(17)アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して10〜50%(wt/wt)であり、製剤中のルラシドン含有量が25〜40%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(18)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して10〜50%(wt/wt)であり、製剤中のルラシドン含有量が25〜40%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(19)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して20〜30%(wt/wt)であり、製剤中のルラシドン含有量が25〜40%(wt/wt)である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(20)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して20〜30%(wt/wt)であり、ルラシドンの1錠中の含量が40〜120mgである(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(21)アルファ化デンプン類のアルファ化率が50〜95%である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(22)ルラシドンの平均粒子径が0.1〜8μmである(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
(23)アルファ化デンプン類中の水可溶分が、30%以下である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤
(24)水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して20〜30%(wt/wt)であり、製剤中のルラシドン含有量が25〜40%(wt/wt)であり、ルラシドンの1錠中の含量が20〜120 mg である(1)から(4)いずれか記載の経口製剤。
【発明の効果】
【0014】
特許文献2の開示技術では、1錠中にルラシドンを40mgまでしか含有しない低含有量製剤では溶出挙動をそろえた経口製剤を提供できることが確認できている。しかし、より高含有量のルラシドンを含む製剤においては、溶出挙動をそろえることができなかった。そのためルラシドンの高投与量が必要な患者においては倍量以上の低含量製剤を服用することになり、患者への負担が大きくなるため改善が求められていた。アルファ化デンプン類を含むことを特徴とする本発明製剤により、ルラシドンをより高含有量含む、患者への負担が少ない経口製剤の提供が可能となった。さらに、本発明により、ルラシドンを高含有量含む経口製剤の提供が、またルラシドンの含量が変動しても同等の溶出挙動を示す経口投与用製剤を提供することが可能となった。また、長期保存性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はルラシドンを異なる含有量を有する製剤の溶出プロファイルの比較を示したものである。特許文献2の開示技術を用いて試作した1錠中のルラシドンの含有量が10mg(4錠)と40mg(1錠)の製剤について溶出プロファイルを測定した。
【図2】図2は、ルラシドンを異なる含有量を有する製剤の溶出プロファイルの比較を示したものである。特許文献2の開示技術を用いて試作した1錠中のルラシドンの含有量が40mg(2錠)と80mg(1錠)の製剤について溶出プロファイルを測定した。
【図3】図3は、ルラシドンを異なる含有量を有する製剤の溶出プロファイルの比較を示したものである。本発明の技術を用いて試作した1錠中のルラシドンの含有量が20mg(4錠)、40mg(2錠)と80mg(1錠)の製剤について溶出プロファイルを測定した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
N−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩(ルラシドン)は下記式:
【0017】
【化2】

で示される化合物である(特許第2800953号参照)。ルラシドンは向精神病作用を持つことが知られており、統合失調症等の治療薬として有効である。本化合物の配合量としては、錠剤全重量に基づいて、例えば、10〜50重量%の範囲、好ましくは20〜45重量%の範囲、特に好ましくは20〜45重量%の範囲から選択される。更に、微粉砕されていることが好ましく、例えば体積比90%以上の粒子が27μm以下であり、体積比による平均粒子径(50%粒子径)としては例えば、0.1〜8μmの範囲が挙げられる。好ましくは、1〜4μmの範囲が挙げられる。1錠中に含まれるルラシドンの含量としては、10−160mg、好ましくは20−120mg、さらに好ましくは40−120mgが挙げられる。
【0018】
「アルファ化デンプン類」とは例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、タピオカデンプン等各種デンプン類をアルファ化したものであり、このようなものとしては例えば医薬品添加物規格にあるアルファ化デンプン(英語名:Pregelatinized Starch)又は部分アルファ化デンプン(英語名:Partly Pregelatinized Starch)等を挙げることができる。アルファ化デンプン類のアルファ化率は、例えば50〜100%、好ましくは50〜95%、さらに好ましくは80〜95%である。更に、アルファ化デンプン類中の水可溶分は、例えば40%以下、より好ましくは30%以下である。これらアルファ化デンプン類は、通常、平均粒径が1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは10〜100μmの粉末が用いられる。本発明に適する市販のアルファ化デンプン類としては、例えばPCS(商品名、旭化成工業株式会社製)若しくはスターチ1500(商品名、カラコン)等の部分アルファ化デンプンが挙げられる。上記アルファ化デンプン類の中でも部分アルファ化デンプン、例えばPCS(商品名、旭化成工業株式会社製)が好ましく用いられる。部分アルファ化デンプンのアルファ化率は、好ましくは50〜95%、さらに好ましくは80〜95%である。本発明において用いられるアルファ化デンプン類は、製剤重量に対して10%以上50%以下であり、好ましくは10%以上40%以下であり、特に好ましくは、20%以上30%以下である。
【0019】
「水溶性賦形剤」としては、例えばマンニトール、乳糖、白糖、ソルビトール、D−ソルビトール、エリスリトール、キシリトール等が挙げられる。より好ましいものとしてはマンニトール及び乳糖が挙げられる。さらに好ましくはマンニトールを挙げることができる。また、該水溶性賦形剤は、1種または同時に2種以上を使用することができる。水溶性賦形剤の配合量としては、錠剤全重量に基づいて、例えば、30〜80重量%の範囲、好ましくは40〜60重量%の範囲から選択される。また、マンニトールの平均粒子径としては、例えば10〜200μmの範囲が挙げられる。
【0020】
「水溶性高分子結合剤」としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。より好ましいものとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールが挙げられる。該水溶性高分子結合剤は、これらの1種または同時に2種類以上を用いることができる。水溶性高分子結合剤の配合量としては錠剤全重量に基づいて、例えば、0.5〜10重量%の範囲、好ましくは1〜5重量%の範囲から選択される。
本発明の医薬品組成物から成る経口製剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤に製剤化されるものをいう。慣用手段によって、水溶性賦形剤に加えて非水溶性賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等を使用して、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤に製剤化されるものであってもよい。また、以下のものを加えることもできる。
【0021】
「非水溶性賦形剤」としては、例えばコーンスターチ、結晶セルロース等が挙げられる。また、1種または同時に2種以上を使用することができる。
【0022】
「崩壊剤」としては、例えば、コーンスターチ、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポピドン等が挙げられる。該崩壊剤は、1種または同時に2種以上を使用することができる。崩壊剤の配合量としては、錠剤全重量に基づいて、例えば、0〜10重量%の範囲、好ましくは0.5〜5重量%の範囲が挙げられる。
【0023】
「滑沢剤」としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等が挙げられる。
【0024】
本発明の経口製剤の調製は、所望の剤形により異なるが、常法にしたがって所望の剤形にすることができる。
(1)水溶性高分子結合剤の水溶液の調製:
水溶性高分子結合剤を精製水に溶解する。水溶性高分子結合剤の量としては、精製水の量に対し、例えば1〜20重量%の範囲、好ましくは2〜8重量%の範囲から選択される。
(2)ルラシドン含有造粒物の調製:
ルラシドン、マンニトール、部分アルファ化デンプンを含む賦形剤および崩壊剤を仕込んだ流動層造粒機に、上記(1)の工程で調製された水溶性高分子結合剤を散布しながら造粒する。

【0025】
造粒装置としては、例えば、流動層造粒(Fluid Bed Granulation)、高速攪拌造粒(High share granulation)、転動型流動層造粒(Roto Fluid Bed Granulation)等に分類される造粒装置が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
(3)造粒物の乾燥:
上記造粒物を、減圧または常圧にて乾燥する。この乾燥は、赤外線水分計にて測定される乾燥減量値が、例えば、3重量%以内、好ましくは1〜2重量%以内になるように行う。
(4)滑沢剤の配合:
上記(3)で乾燥した造粒物に滑沢剤を加えて混合する。混合は、例えば、攪拌ミキサー[タンブル](Diffusion mixers [Tumble])に分類される混合機が用いられる。具体的には、タンブラーブレンダー(Tumble Blender)、Vブレンダー(V Blenders)、ダブルコーン(Double Cone)、ビンタンブラー(Bin Tumble)等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
(5)打錠:
上記混合物を打錠して錠剤を調製する。
【0026】
打錠装置としては、例えば、錠剤プレス(Tablet Press)に分類される打錠機等が挙げられる。打錠硬度としては、例えば30〜200N範囲から選択される。
(6)所望によりフィルムコーティングを施す:
上記錠剤には、必要に応じてフィルムコーティングしてもよい。コーティング装置としては、例えばコーティングパンに分類される装置が挙げられる。好ましくは、通気式コーティングシステム(Perforated Coating System)で分類される装置が挙げられる。
【0027】
コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の基剤と、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等の可塑剤を組み合わせたものが挙げられる。また、必要に応じて、酸化チタン等の添加剤を加え調製することもできる。また、フィルムコーティング後に、光沢化剤としてカルナバロウ等を加えることもできる。
(7)乾燥:
上記のようにして得られた錠剤を乾燥する。乾燥は減圧または常圧で行い、赤外線水分計にて測定される乾燥減量値が、例えば、3重量%以内、好ましくは1〜2重量%以内になるように行う。
【0028】
以下に本発明の実施例を挙げるが、本実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明をなんら限定するものではない。
【実施例1】
【0029】
A.ルラシドンを80mg含有するフィルムコート錠(実施例1)
下記組成からなる顆粒、裸錠およびFC錠を順次調製する。尚、説明文中の括弧内に示す仕込み量は実施例1に示す処方の製剤を調製するための一例を示すものである。
原則としてこの製造方法に準じれば、その他に示す実施例についても調製できる。但し、仕込み量は処方に基づき変更する必要がある。
【0030】
B.製造方法
(1)結合液の調製(5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液):
水溶性高分子結合剤のヒドロキシプロピルメチルセルロース(32g)を精製水(608g)に溶解し、これを結合液とした。
(2)造粒:
ルラシドン(320g)、マンニトール(576g)、部分アルファ化デンプン(320g)、クロスカルメロースナトリウム(16g)を流動層造粒機(マルチプレックスMP−01/パウレック製)に仕込み、上記(1)で調製した結合液を用いて、下記条件でスプレー造粒し造粒末を得た。得られた造粒末にステアリン酸マグネシウムを加えて混合後(40rpm、5分)に、処方(b)を有する打錠用顆粒を得た。尚、ステアリン酸マグネシウムの仕込み量は造粒末の収量に基づき処方から算出される量を混合した。
造粒条件
給気温度:60℃
風量:50−65m3/hr
スプレー速度:13g/分
スプレーノズル径:1.2mm
スプレー圧力:0.12MPa
ガン位置:中段
(3)打錠:
上記(2)で調製した打錠用顆粒をHT-AP12SS-II(畑鉄工所)を用いて錠剤を成形した。
杵サイズ:φ10mm14R
厚み:4.20〜4.30mm
打錠圧縮圧力:10KN
(4)コーティング:
上記(3)で調製した裸錠をハイコーターHCT30N(フロイント産業)で皮膜量が5mgになるように下記条件でコーティングを行い、コーティング後にカルナバロウを添加しフィルムコート錠を得た。
FC条件
給気温度 :80℃
風量 :0.6m3/分
パン回転数:25rpm
スプレー圧:0.15MPa
液速 :5g/分
上述の方法により得られた製剤は以下の方法により品質を評価し、そこで得られた知見をもとに本発明を見出すに至った。
【0031】
C.品質評価
(1)溶出試験
日本薬局方溶出試験法第2法に従い、試作した製剤の溶出試験を実施した。以下に測定条件を示す。
試験溶液:希釈マックイルベイン緩衝液(diluted McIlvaine buffer、pH4.0)
パドル回転数:50rpm
試験液:900ml
(2)溶出プロファイルの類似性
溶出プロファイルの類似性を評価するための指標としてScale-Up and Past-Approval Changes for Intermediate Release Products(SUPAC-IR)に示される類似因子f2を用いた。f2は以下の式により算出される。SUPAC-IRにより各製剤の溶出率から算出されるf2値が50≦f2≦100の範囲にある場合、試作した各製剤は類似の溶出プロファイルであると判定した。また、f2値の算出に当っては試験開始後15分、30分および45分の3ポイントの時点での溶出率を用いた。
【0032】
【数1】

Ti and Ri are the percent dissolved at each point.
n is the number of points to be compared.
(3)粒度分布
レーザー回折粒度分布測定装置(SLAD-3000/島津製作所)の乾式噴射法にてルラシドンの粒度分布を測定した。以下に測定条件を示す。

【0033】
<試験1>
実施例1、2,3で、1錠中にルラシドンを20mg、40mgおよび80mg含有する水溶性賦形剤、部分アルファ化デンプンおよび水溶性高分子結合剤から成る特定の医薬品組成物を含む錠剤を試作した。また、比較例1、2で、特許文献2の開示処方に基づき1錠中にルラシドンを40mgおよび80mg含有する錠剤を試作した。
試作した製剤を(d)および(e)に示す条件で溶出試験を実施し、溶出プロファイルの類似性を評価した。なお、比較例1、2の試作については試験8にて示した。
結果は、表4,5に示した。なお、(d)については経時的な溶出率についても図2,3で示した。
【0034】
(a) 造粒末の処方
【0035】
【表1】

【0036】
(b) 打錠用顆粒/裸錠の処方
【0037】
【表2】

【0038】
(c)FC錠の処方
【0039】
【表3】

【0040】
(d)1ベッセル当りルラシドンが80mgとなる系での溶出試験
1ベッセル当りルラシドンが80mgとなる系でルラシドンを80mg、40mgおよび20mgを含有する各フィルムコート錠の溶出試験を実施し、それぞれの溶出プロファイルの類似性をf2値により評価した。
【0041】
表4から明らかなように、実施例2,3のf2値は実施例1に対する類似性を示したが、比較例2のf2値は比較例1に対する類似性を示さなかった。即ち、表4,図3から明らかなように、実施例1乃至3は溶出プロファイルの類似性を示すf2値が50≦f2≦100の範囲となり、含量の異なる製剤においても、錠剤の含量(力価)に依存することなく溶出プロファイルの類似性を示す製剤が得られた。一方、表4,図2から明らかにように、詳細を試験8に記載したが、特許文献2開示処方の比較例2は比較例1からなる製剤2錠の溶出よりも明らかに遅く、溶出プロファイルの類似性は示さなかった。
【0042】
【表4】

【0043】
(e)1ベッセル当りルラシドンが40mgとなる系での溶出試験
1ベッセル当りルラシドンが40mgとなる系でルラシドンを40mgおよび20mgを含有する各フィルムコート錠の溶出試験を実施し、それぞれの溶出プロファイルの類似性を同様にf2値を用いて評価した。
【0044】
表5から明らかなように、実施例3,比較例1のf2値は実施例2に対する類似性を示した。即ち、1ベッセル当りルラシドンが40mgである系においても、f2値は50≦f2≦100の範囲となり、錠剤の含量(力価)に依存することなく溶出プロファイルの類似性が示された。
【0045】
【表5】

【0046】
<試験2>
実施例1および4で、水溶性賦形剤と水溶性高分子結合剤および部分アルファ化デンプンから成る医薬品組成物を含む製剤を調製した。また、比較例3,4および5で、水溶性賦形剤と水溶性高分子結合剤およびアルファ化していないデンプンであるコーンスターチから成る医薬品組成物を含む製剤を調製した。各製剤の溶出試験を実施し、溶出プロファイルの類似性をf2値により評価した。結果は、表9に示した。
(a) 造粒末の処方
【0047】
【表6】

【0048】
(b) 打錠用顆粒/裸錠の処方
【0049】
【表7】

【0050】
(c)FC錠の処方
【0051】
【表8】

【0052】
(d)溶出試験
表9から明らかなように、実施例4は実施例1に対する類似性を示したが、比較例3、4、5のf2値は実施例1に対して類似性を示さなかった。即ち、比較例3,4および5のコーンスターチを含む製剤は、実施例1および4の部分アルファ化デンプンを含む製剤と比較して、溶出プロファイルが異なり、溶出の遅い製剤であった。
【0053】
【表9】

【0054】
<試験3>
実施例4,5,6,7で、部分アルファ化デンプンの配合量の溶出性に及ぼす影響を評価した。結果は表13に示した。
(a) 造粒末の処方
【0055】
【表10】

【0056】
(b) 打錠用顆粒/裸錠の処方
【0057】
【表11】

【0058】
(c)FC錠の処方
【0059】
【表12】

【0060】
(d)溶出試験
表13から明らかなように、実施例4、5、6、7のf2値は実施例1に対する類似性を示した。即ち、部分アルファ化デンプンを製剤組成中の10%wt/wt以上含有する医薬品組成物から成る製剤は、速溶解性を示し、かつ、類似の溶出プロファイルを示した。
【0061】
【表13】

【0062】
<試験4>
比較例6で、水溶性賦形剤と部分アルファ化デンプンを含むが、水溶性高分子結合剤を含まない錠剤の製剤化を試みたが、打錠工程において、キャッピングとスティッキングが発生し打錠できず、類似の溶出プロファイルを得るどころか錠剤すら得られなかった。実施例8,9,10および11で、水溶性賦形剤および部分アルファ化デンプンと水溶性高分子結合剤の配合量の異なる医薬品組成物を含む製剤を調製した。結果は、表17に示した。
(a) 造粒末の処方
【0063】
【表14】

【0064】
(b) 打錠用顆粒/裸錠の処方
【0065】
【表15】

【0066】
(c)FC錠の処方
【0067】
【表16】

【0068】
(d)溶出試験
表17から明らかなように、実施例8,9、10、11のf2値は実施例1に対する類似性を示した。即ち、水溶性高分子結合剤を1.8 %wt/wtから3.8%wt/wtの範囲において含有する医薬品組成物から成る製剤は、速溶解性を示し、かつ、類似の溶出プロファイルを示した。
【0069】
【表17】

【0070】
<試験5>
実施例12で、水溶性賦形剤として乳糖を用い、水溶性高分子結合剤および部分アルファ化デンプンから成る医薬品組成物を含む製剤を調製した。結果は、表21に示した。
(a) 造粒末の処方
【0071】
【表18】

【0072】
(b) 打錠用顆粒/裸錠の処方
【0073】
【表19】

【0074】
(c)FC錠の処方
【0075】
【表20】

【0076】
(d)溶出試験
表21から明らかなように、実施例6および12のf2値は実施例1に対する類似性を示した。即ち、水溶性賦形剤としてマンニトールおよび乳糖にて速溶解性を示し、かつ、類似の溶出プロファイルを示した。
【0077】
【表21】

【0078】
<試験6>
実施例4,13,14および15で、粒度分布の異なるルラシドン原末を用いて、水溶性賦形剤と水溶性高分子結合剤および部分アルファ化デンプンから成る特定の医薬品組成物を含む製剤を調製した。結果は、表25に示した。
(a) ルラシドン原末の粒度分布
D50 %(50%粒子径)とは体積基準により算出される積算分布が50%となるポイントでの粒子径を示し、D90 %(90%粒子径)とは、体積基準により算出される積算分布が90%(ふるい下)となるポイントでの粒子径を表す。
【0079】
【表22】

【0080】
(b) 打錠用顆粒/裸錠の処方
【0081】
【表23】

【0082】
(c)FC錠の処方
【0083】
【表24】

【0084】
(d)溶出試験
表25から明らかなように、実施例13,14、15のf2値は実施例4に対する類似性を示した。即ち、50%粒子径が1〜8μmの範囲、90%粒子径が27μm以下の粒度分布のルラシドン原末を用いて調製した製剤で類似の溶出プロファイルが得られることを見出した。
【0085】
【表25】

【0086】
<試験7>
特許文献2の開示技術を用いて1錠中のルラシドンの含有量が10mgと40mgとなる製剤を試作し、開示文献2の通り、1錠中のルラシドン含量が10mgから40mgまでは同等の溶出挙動を示す経口製剤を提供できるかどうか検証した。結果は、図1に示した。
【0087】
図1から明らかなように、特許文献2の開示技術により得られるルラシドンを異なる含有量を有する製剤の溶出プロファイルは、f2の値から明らかなように、1錠中にルラシドンを10mg含有する錠剤と40mg含有する製剤は、特許文献2のとおり同等の溶出挙動を示す経口製剤を提供できた。
(a)顆粒の処方
【0088】
【表26】

(b)裸錠の処方
【0089】
【表27】

(c)FC錠の処方
【0090】
【表28】

【0091】
<試験8>
特許文献2の開示技術では1錠中にルラシドンを40mgまで含有する製剤では同等の溶出挙動を示す経口製剤を提供できることを確認できた。ここでは、特許文献2の開示技術を用いて、部分アルファー化デンプンを含まない1錠中のルラシドン含有量が80mgとなる製剤を試作した。錠剤の大型化は患者への負担を大きくするため、40mg錠と同じ錠剤重量となるように、有効成分の含有率を2倍にすることにより製した。比較例1および2の結果は表4および図2に示した。
【0092】
表4および図2から明らかなように、特許文献2の開示技術では、f2の値から明らかなように、ルラシドンの含有率を2倍にしたアルファ化デンプンを含まない80mg錠では40mg錠2錠と同等の溶出性を示すことはできなかった。
(a)顆粒の処方
【0093】
【表29】

(b)裸錠の処方
【0094】
【表30】

(c)FC錠の処方
【0095】
【表31】

【0096】
<試験9>
試験1の実施例1〜3にて試作した含量の異なる3種類の製剤の溶出性を評価した。結果は、図3に示した。
図3から明らかなように、本発明により1錠中にルラシドンを20mgから80mgを含有する製剤においても、錠剤の含量(力価)に依存しない同等の溶出性が確認された。
(a) 造粒末の処方
【0097】
【表32】

(b) 打錠用顆粒/裸錠の処方
【0098】
【表33】


(c)FC錠の処方
【0099】
【表34】

【0100】
<試験10>
本願発明の開示技術並びに特許文献2の開示技術を用いて、錠剤重量がそれぞれ等しいルラシドン 120mg錠を作製し、両製剤の溶出挙動を評価した。

(a)実験方法
本願発明の製造方法ならびに特許文献2の製造方法2(以下に記載)に基づいてルラシドン 120mg錠製剤を試作した(表35)。これら試作した製剤について本願明細書実施例のC.品質評価(1)溶出試験に記載の条件を一部変更して溶出試験を実施した。
溶出試験は、試験溶液である希釈マックイルベイン緩衝液のpHをpH4.0からpH3.8に変更して実施した。
【0101】
(b)本願発明の製造方法
ルラシドン 8000g、D-マンニトール 14200g、部分α化デンプン 8000g、クロスカルメロースナトリウム 400gを、流動層造粒機(フローコーター FLF−30/フロイント産業)に仕込み、あらかじめ調製しておいた5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液を散布しながら、吸気温度80℃、吸気風量 7 m3/min、スプレー液速度200mL/min、アトマイズエアー流量 200L/minという条件で造粒した。得られた造粒物を造粒機内で、乾燥温度80℃、乾燥時間10分という条件で乾燥し、乾燥減量値が2%以内となっていることをハロゲン水分計で確認した。得られた造粒物は整粒機(フィオーレF-0型)を用いて整粒した。次に得られた整粒物18000gとステアリン酸マグネシウム 228gを、混合機(コンテナーサイズ110 L)を用いて回転数20rpm、混合時間5分という条件で混合した。最後に得られたこの混合物を、打錠機(HT-AP12SS-II/畑鉄工所)を用いて打錠圧12.5kNで打錠してルラシドン 120mg錠裸錠を作製した。
【0102】
(c)特許文献2の製造方法2
ルラシドン 160g、D-マンニトール 296g、クロスカルメロースナトリウム 32gを、流動層造粒機(マルチプレックスMP-01/パウレック)に仕込み、あらかじめ調製しておいた5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液を散布しながら、給気温度60℃、造粒時間45分という条件で造粒した。得られた造粒物を造粒機内で、乾燥温度80℃、乾燥時間5分という条件で乾燥し、乾燥減量値が1%以内となっていることをハロゲン水分計で確認した。次に得られた造粒物254gと乳糖62gを、混合機(筒井理化学器械)を用いて回転数40rpm、混合時間30分という条件で混合した。その後、得られた混合物316gとステアリン酸マグネシウム 4gを、混合機(筒井理化学器械)を用いて回転数40rpm、混合時間5分という条件で混合した。最後に得られたこの混合物を、打錠機(HT-AP12SS-II/畑鉄工所)を用いて打錠圧12.5kNで打錠してルラシドン 120mg錠裸錠を作製した。
【0103】
(d)実験結果
試作した製剤の組成と溶出試験の結果を以下に示す。
【0104】
【表35】


この結果、特許文献2の開示技術を基に試作したルラシドン 120mg錠と比較して、本出願の開示技術を基に試作したルラシドン 120mg錠が速溶解性を示すことが確認された。
【0105】
<試験11>
本願発明の原薬含量の適用範囲について、製剤の溶出挙動を基に評価した。

(a)実験方法
本願発明の製造方法に基づいてルラシドン 80mg錠を試作した(表36)。これら試作した製剤について本願明細書実施例のC.品質評価(1)溶出試験に記載の条件で溶出試験を実施した。
【0106】
(b)製造方法
ルラシドン、D-マンニトール、部分α化デンプン、クロスカルメロースナトリウムを、流動層造粒機(マルチプレックスMP-01/パウレック)に仕込み、あらかじめ調製しておいた5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液を散布しながら、給気温度60℃、造粒時間45分あるいは60分という条件で造粒した。得られた造粒物を造粒機内で、乾燥温度80℃、乾燥時間5分という条件で乾燥し、乾燥減量値が2%以内となっていることをハロゲン水分計で確認した。次に得られた造粒物とステアリン酸マグネシウムを、混合機(筒井理化学器械)を用いて回転数40rpm、混合時間5分という条件で混合した。最後に得られたこの混合物を、打錠機(HT-AP12SS-II/畑鉄工所)を用いて打錠圧10kNで打錠してルラシドン 80mg錠裸錠を作製した。
【0107】
(c)実験結果
試作した製剤の組成と溶出試験の結果を以下に示した。
【0108】
【表36】


この結果、ルラシドンの製剤中の含有量としては25〜40%の範囲で類似の溶出プロファイルを示す製剤組成であることが確認できた。
【0109】
<試験12>
本願発明の水溶性高分子結合剤について、製剤の溶出挙動を評価した。

(a)実験方法
本願発明の製造方法に基づいてルラシドン 80mg錠を試作した(表37)。これら試作した製剤について本願明細書実施例のC.品質評価(1)溶出試験に記載の条件で溶出試験を実施した。
【0110】
(b)製造方法
ルラシドン 160 g、D-マンニトール 284 g、部分α化デンプン160 g、クロスカルメロースナトリウム 8 gを、流動層造粒機(マルチプレックスMP-01/パウレック)に仕込み、あらかじめ調製しておいた5% 水溶性高分子結合剤溶液を散布しながら、給気温度60℃、造粒時間45分という条件で造粒した。得られた造粒物を造粒機内で、乾燥温度80℃、乾燥時間5分という条件で乾燥し、乾燥減量値が2%以内となっていることをハロゲン水分計で確認した。次に得られた造粒物とステアリン酸マグネシウムを、混合機(筒井理化学器械)を用いて回転数40rpm、混合時間5分という条件で混合した。最後に得られたこの混合物を、打錠機(HT-AP12SS-II/畑鉄工所)を用いて打錠圧10kNで打錠してルラシドン 80mg錠裸錠を作製した。
【0111】
(c)実験結果
試作した製剤の組成と溶出試験の結果を以下に示す。
【0112】
【表37】


この結果、水溶性高分子結合剤にポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースを用いた製剤においても、本明細書P.6「C. 品質評価(2)溶出プロファイルの類似性」の基準を満たす製剤(類似の溶出プロファイル)となることを確認した。
【0113】
<試験13>
本願発明の開示技術を用いて作製したルラシドン 20、40、80、120 mg錠FC錠の溶出挙動を評価した。

(a)実験方法
本願発明の製造方法に基づいてルラシドン 20、40、80、120 mg錠FC錠を試作した(表38)。
【0114】
(b)製造方法
ルラシドン 8000g、D-マンニトール 14200g、部分α化デンプン 8000g、クロスカルメロースナトリウム 400gを、流動層造粒機(フローコーター FLF−30/フロイント産業)に仕込み、あらかじめ調製しておいた5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液を散布しながら、吸気温度80℃、吸気風量 7 m3/min、スプレー液速度200 mL/min、アトマイズエアー流量 200 L/minという条件で造粒した。スプレー終了後、乾燥温度80℃、乾燥時間10分という条件で乾燥し、乾燥減量値が2%以内となっていることをハロゲン水分計で確認した。得られた造粒末は整粒機(フィオーレF-0型/徳寿工作所)を用いて整粒した。次に得られた整粒末18000gとステアリン酸マグネシウム 228gを、混合機(コンテナーサイズ110 L/古河アルテック)を用いて回転数20rpm、混合時間5分という条件で混合した。得られたこの混合末を、打錠機(ルラシドン 20、40、80錠裸錠についてはCLEANPRESS Correct 12HUK/菊水製作所、ルラシドン 120mg錠裸錠についてはHT-AP12SS-II/畑鉄工所)を用いて打錠圧約10kNで打錠してルラシドン 20、40、80、120mg錠裸錠を作製した。次に、給気温度80℃、風量0.6m/min、パン回転数25rpm、スプレー圧0.15MPa、液速5g/minという条件で裸錠をコーティングしてルラシドン 20、40、80、120mg錠FC錠を得た。
【0115】
(c)溶出試験
日本薬局方溶出試験法第2法に従い、試作した製剤の溶出試験を実施した。以下に測定条件を示す。
試験溶液:希釈マックイルベイン緩衝液(diluted McIlvaine buffer、pH3.8および4.0)
パドル回転数:50rpm
試験液:900ml
【0116】
(d)実験結果
試作した製剤の組成と溶出試験の結果を以下に示した。
【0117】
【表38】


この結果、本出願の開示技術を基に試作したルラシドン 20,40,80,120mg錠FC錠が速溶解性を示すことが確認された。
【0118】
<試験13>
40 mg錠FC錠1錠/20 mg錠FC錠2錠、80 mg錠FC錠1錠/40 mg錠FC錠2錠/20 mg錠FC錠4錠、120 mg錠FC錠1錠/40 mg錠FC錠3錠/20 mg錠FC錠6錠の溶出挙動の類似性を評価した。

(a)実験方法
製造方法、試験方法は、試験12の溶出挙動」と同様なので省略した。
【0119】
(b)実験結果
試作した製剤の溶出挙動とその類似性を以下に示した。
【0120】
【表39】


この結果、すべての製剤において本明細書P.6「C. 品質評価(2)溶出プロファイルの類似性」の基準を満たすことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によりN−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩(ルラシドン)を有効成分とする崩壊性が良好な経口製剤において、有効成分の含量が変動しても、同等の溶出挙動を示す経口投与用製剤を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)ないし(5)を含む、錠剤の製造方法:
(1)水溶性高分子結合剤を精製水に溶解することにより、水溶性高分子結合剤の水溶液を調製する工程、
(2)ルラシドン(N−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩)、マンニトール、および部分アルファ化デンプンを仕込んだ流動層造粒機に、(1)の工程で調製された水溶性高分子結合剤の水溶液を散布しながら造粒することにより、ルラシドン含有造粒物を調製する工程、
(3)(2)の工程で調製されたルラシドン含有造粒物を、減圧または常圧にて乾燥する工程であって、乾燥減量値が3重量%以内になるように乾燥する工程、
(4)(3)で乾燥したルラシドン含有造粒物に滑沢剤を加えて混合する工程、
(5)(4)で得られた混合物を打錠して錠剤を調製する工程。
【請求項2】
工程(1)で調製された水溶性高分子結合剤の水溶液が、精製水の量に対し1〜20重量%の水溶性高分子結合剤を含有する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(5)における打錠硬度が、30〜200Nの範囲である、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
式(1)
【化1】

で表されるN−[4−〔4−(1,2−ベンズイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル〕−(2R,3R)−2,3−テトラメチレン−ブチル]−(1'R,2'S,3'R,4'S)−2,3−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタンジカルボキシイミド・塩酸塩(ルラシドン)、アルファ化デンプン類、水溶性賦形剤及び1.8%wt/wtから3.8%wt/wtの水溶性高分子結合剤を含有する経口製剤。
【請求項5】
アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して10〜50%(wt/wt)である、請求項4記載の経口製剤。
【請求項6】
製剤中のルラシドン含有量が、20〜45%(wt/wt)である、請求項4または5いずれか記載の経口製剤。
【請求項7】
水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して20〜30%(wt/wt)であり、製剤中のルラシドン含有量が20〜45%(wt/wt)であり、ルラシドンの1錠中の含量が20〜120 mg である、請求項4〜6いずれか記載の経口製剤。
【請求項8】
製剤中のルラシドン含有量が20〜45%(wt/wt)であり、
ルラシドンの1錠中の含量が、20〜120mgであり、
ルラシドンの50%粒子径が0.1〜8μmであり、
水溶性賦形剤がマンニトールもしくは乳糖であり、
アルファ化デンプン類の配合量が製剤重量に対して20〜30%(wt/wt)であり、
アルファ化デンプン類のアルファ化率が50〜95%であり、
アルファ化デンプン類中の水可溶分が、30%以下であり、
水溶性賦形剤の配合量が錠剤全重量に基づいて30〜80重量%の範囲であり、
水溶性高分子結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールからなる群から選択される1種または2種以上であり、
水溶性高分子結合剤の配合量が錠剤全重量に基づいて0.5〜10重量%の範囲である、請求項4記載の経口製剤。
【請求項9】
請求項4記載の経口製剤を含有する、統合失調症の治療剤。
【請求項10】
請求項4記載の経口製剤を投与することを含む、統合失調症の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126915(P2011−126915A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61211(P2011−61211)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2007−517921(P2007−517921)の分割
【原出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】