説明

医薬定量噴霧式吸入器及び前記吸引器に関連する方法

定量噴霧式吸入器中で使用される1以上の抽出性化合物を含む弾性ガスケット材料を、前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも一部を前記弾性ガスケット材料から抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させることを含む、定量噴霧式吸入器中で使用するための弾性ガスケット材料の製造方法が記載されている。この方法により作製したシーリングガスケット並びに前記ガスケットを含む計量弁、定量噴霧式吸入器及び医薬製品も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴霧式吸入器(MDI)シーリングガスケットの処理方法、及び処理した材料から作成したMDIシーリングガスケットに関する。本発明は更に、高い特性を有するMDI用容器及びそれに関連する方法に関する。前記MDIは通常、呼吸器または他の疾患の治療に使用することができるある量の薬物含有製剤を分配する際に使用するためのものである。
【背景技術】
【0002】
薬物を投与するためにエアゾールを使用することは数十年間にわたり公知である。そのようなエアゾールは通常薬物、1以上のクロロフルオロカーボン噴射剤及び1以上の添加剤、例えば界面活性剤またはエタノールのような補助溶媒を含んでいる。従来、薬物用エアゾール噴射剤として噴射剤11(CClF)、噴射剤114(CFClCFCl)、噴射剤12(CCl)またはそれらの組み合わせが最も一般的に使用されてきた。しかしながら、これらの噴射剤の大気中への放出が成層圏オゾンの破壊の原因となると現在考えられており、よって所謂“オゾンにやさしい”噴射剤を用いる薬物用エアゾール製剤の提供が要望されている。
【0003】
エアゾール製剤用容器は通常、バイアル本体(缶またはキャニスター)からなり、この本体に弁が連結されている。前記弁は弁軸を含み、この弁軸を通って製剤が分配される。通常、弁は、弁軸の往復運動を可能にするように意図された1つ以上のゴム弁シールを含み、このシールが容器からの噴射剤の漏れを防止している。定量噴霧式吸入器は、1回の作動で計量された量のエアゾール製剤をレシピエントにデリバリーするように設計されている弁を含む。この計量弁は通常、所定容量を有し、1回の作動あたりの用量を正確な所定量とする計量チャンバを含む。
【0004】
容器中の計量弁は通常、シーリングガスケットを介してキャニスターに接触・連結し、接合箇所での容器からの噴射剤及び/または薬物の漏れを防止している。前記ガスケットは通常、弾性材料、例えば低密度ポリエチレン、クロロブチル、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)のポリマー、ネオプレンまたはクロロプレンからなる。そのような弾性材料はカーボンブラックまたは無機充填剤入りであってもよい。
【0005】
MDIにおいて使用するための弁は、エアゾール業界で知られている様々な製品を利用可能である。例えば、フランスのValois(例:DF10、DF30、DF60)、英国のBespak plc(例:BK300、BK356、BK357)、または英国の3M-Neotechnic Limited(例:SpraymiserTM)から入手可能である。計量弁は、エアゾール医薬製剤をデリバリーするのに適している市販のキャニスター、例えばアルミニウム製キャニスターのような金属製キャニスターと共同して使用されている。
【0006】
上記したような弁シールまたはシーリングガスケットを組み込んだMDIは、通常噴射剤11(CClF)、噴射剤114(CFClCFCl)、噴射剤12(CCl)のようなCFC噴射剤によって適切に機能する。しかしながら、上記したようにエアゾール中のCFC噴射剤は、所謂オゾンにやさしい噴射剤に置き換えなければならない。従来のクロロフルオロカーボン類に比してオゾン破壊作用がごく小さいと考えられている噴射剤の種類にはフルオロカーボン類及び水素含有クロロフルオロカーボン類がある。この種の噴射剤にはヒドロフルオロアルカン類(HFA)、例えば1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(HFA227)及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。しかしながら、HFA噴射剤を用いて製造したエアゾール医薬製剤の場合、いろいろな問題、特に組成物の安定性に関する問題が生じている。
【0007】
エアゾール医薬製剤は通常、溶液または懸濁液からなる。懸濁液と少量の溶解薬物との混合物も可能であるが、(下記のように)一般的には望ましくない。幾つかの溶液製剤は、その製剤中に含まれる薬物が固体形態に比してより分解を受けやすいという欠点を有している。さらに、溶液製剤は液滴サイズのコントロールの問題を伴い、言い換えると治療プロファイルに影響を与える可能性がある。従って、一般的には懸濁液製剤が好ましい。
【0008】
規制承認を得るためには、エアゾール医薬製剤の製品は厳しい規格を満足しなければならない。一般的に満足しなければならず、そのレベルが通常規定されている1つのパラメーターは微粒子状物質量(FPM)である。FPMは、特定範囲内(一般的には、5ミクロン未満)の直径を有する薬物粒子の割合に基づく内肺(細気管支及び肺胞)に到達する可能性がある薬物の量の尺度である。MDIからの作動のFPMは通常、標準的なHPLC分析により測定されるアンダーセン型カスケードインパクションスタックの3段、4段及び5段上に沈着した薬物の量の合計に基づいて計算される。FPMが薬物の総量のできるだけ多くのパーセンテージを構成するならば、考えられる副作用は最小限に抑えられ、無駄になる薬物の量はより少量となる。
【0009】
懸濁液製剤の場合、放出される薬物の粒径は通常製造中に、微粉化により固体薬物が縮小されるサイズでコントロールされる。しかしながら、HFA中の医薬懸濁液の幾つかは、貯蔵の間に、FPMを低下させる各種変化が起こることが判明している。FPMが低下すると、患者が利用できる薬物の治療有効量が少なくなる。このことは望ましくなく、最終的には薬物の有効性に影響を及ぼし得る。この問題は、分配しようとする用量が少ない場合、すなわち気管支拡張剤である長時間作用性β-アゴニストのようなある種の強力薬物の場合には特に深刻である。
【0010】
FPMを低下させ得るメカニズムはいろいろ提案されている。オストワルド熟成として公知のプロセス、すなわち懸濁させた薬物が噴射剤中に十分な溶解性を有しているならば粒子サイズの成長が起こり得る。あるいはまたは加えて、小さい粒子は凝集したり、キャニスターまたは弁のようなMDIの内側の部品に付着する傾向を有し得る。小粒子が弁のゴム部品中に吸収されるようになったり、弁のゴム部品上に吸着される可能性がある。付着及び吸収プロセスは小さい粒子の間でより優勢であり、これらのプロセスによって投与された薬物の画分としてのFPMが減少し、患者が利用できるキャニスターの総薬物含量(TDC)が減少する。さらに、付着及び吸収プロセスにより、利用可能な薬物が損失するだけでなく、デバイスの機能が悪影響を受けて、弁がくっついたり、オリフィスが詰まったりするようになることがあり得る。
【0011】
MDIから患者にデリバリーされるエアゾール薬物の処方用量は常に製造業者が規定する規格を満たし、FDA及び規制当局の要件に従うことが必須である。すなわち、MDIから分配される各用量は精密許容差の範囲内で同じでなければならない。従って、製剤がキャニスター及び計量弁の作動時の投与用量の全体を通して実質的に均一であること、及び貯蔵後でも製剤が実質的同一性を保持していることが重要である。
【0012】
上記した問題に対処するため様々なアプローチが取られてきた。1つのアプローチは、医薬懸濁液への1以上のアジュバントの添加である。例えば、アルコール類、アルカン類、ジメチルエーテル、界面活性剤(例:フッ素化または非フッ素化界面活性剤、カルボン酸類、ポリエトキシレート類等)から選択されるアジュバント、及び少量の(起こり得るオゾンダメージを最小に保つことを意図したレベルで)いまだ使用されているクロロフルオロカーボン噴射剤が、FPM問題の軽減に若干の効果を有していることが判明している。このアプローチは、例えば欧州特許出願公開第0372777号明細書、国際公開第91/04011号パンフレット、国際公開第91/11173号パンフレット、国際公開第91/11495号パンフレット及び国際公開第91/14422号パンフレットに開示されている。国際公開第92/00061号パンフレットは、フルオロカーボン噴射剤と併用するための非フッ素化界面活性剤を開示している。フッ素化界面活性剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(P134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(P227)のようなフルオロカーボン噴射剤中の微粉化医薬懸濁液を安定化するために使用され得る。例えば、米国特許第4352789号明細書、米国特許第5126123号明細書、米国特許第5376359号明細書、米国出願第09/580008号、国際公開第91/11173号パンフレット、国際公開第91/14422号パンフレット、国際公開第92/00062号パンフレット及び国際公開第96/09816号パンフレットを参照されたい。
【0013】
国際公開第96/32345号パンフレット、国際公開第96/32151号パンフレット、国際公開第96/32150号パンフレット及び国際公開第96/32099号パンフレットには、場合により1以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせた1以上のフルオロカーボンポリマーでコーティングされ、キャニスター中に収容されている代替噴射剤エアゾール医薬製剤の薬物粒子の前記キャニスター壁への沈着を低減するエアゾールキャニスターが開示されている。
【0014】
国際公開第03/049786号パンフレットには、弾性シール上への薬物の沈着及び弾性シールの潤滑化、可撓性及びシーリング能力に関連する幾つかの他の問題が、シール表面に有機チタンの低摩擦バリヤーコーティングを付加することにより解消され得ることが記載されている。ここには、下記のような弾性シールを処理する予備処理ステップも開示されている。すなわち、アルコール及びアルカリ性材料を含み、処理に有効な浴温度を有する浴中に弾性基材を供給し、この浴に対して処理に有効な周波数及びパワーレベルで弾性基材を処理するのに十分な時間超音波エネルギーを加え、処理した弾性基材を脱イオン水ですすぎ、そして処理及びすすいだ基材を乾燥させる。この予備処理ステップは、有機チタンをベースとするコーティングをうまく付着、結合させ得ると言われている。しかしながら、一般的には、追加の材料コーティングステップにより最終医薬品の製造費用が高くなり、またコーティングの存在によって追加の毒性・安全性試験が必要となることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、MDIシールを処理するための、より負担が少ない代替手段、並びにその手段に関連する方法及び物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態によれば、定量噴霧式吸入器中で使用するための弾性ガスケット材料の製造方法は、定量噴霧式吸入器中で使用される1以上の抽出性化合物を含む弾性ガスケット材料を、前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの一部を前記弾性ガスケット材料から抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させることを含む。幾つかの実施形態では、1以上の抽出性化合物の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50%またはそれ以上が弾性ガスケット材料から抽出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
驚くことに、本発明の実施形態に従って処理したMDIシーリングガスケットは使用時に有利な特性を有することが知見された。本発明の実施形態のシーリングガスケットを1つ以上含むMDIでは、未処理ガスケットを有するMDIで貯蔵後観察される影響と比較して薬物を長期間貯蔵した後のFPMの低下が抑えられた。また、本発明の実施形態の処理シーリングガスケットを1つ以上含むMDIでは、未処理ガスケットを有するMDIと比して、(貯蔵前または貯蔵後の)絶対FPM測定値が高かったことも知見された。特定の理論に束縛されないが、出願時では、本発明の実施形態は次のような1つ以上の効果、すなわち薬物沈着の減少、貯蔵後でもFPMの安定性が改善すること、貯蔵中の平均質量空気力学的粒径(MMAD)の増加の抑制、及び/またはGSD(幾何標準偏差)の減少により、エアゾール組成物の有利な安定化を与えると仮定される。さらに、1つ以上の効果が、ガスケットから脂肪酸及び/または他の侵出性材料を除去することにより生ずると仮定される。
【0018】
計量弁中に使用する前に、MDIシーリングガスケットを本発明の方法の実施形態に従って作製することが好ましい。あるいは、MDIシーリングガスケットは計量弁の部品として本発明の方法の実施形態に従って作製され得る。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、定量噴霧式吸入器中で使用するための弾性シーリングガスケットの作製方法は、定量噴霧式吸入器中で使用されるように構成された1以上の抽出性化合物を含む弾性ガスケット材料を、前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの一部を前記弾性ガスケット材料から抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させ、前記弾性ガスケット材料からシーリングガスケットを形成することを含む。幾つかの実施形態では、シーリングガスケットを形成した後に弾性ガスケット材料を接触させる。シーリングガスケットの形成方法は当業者が理解しているような各種方法を含むことができ、この中にはシーリングガスケットを提供するためのシーリングガスケット材料の裁断または打抜きが含まれる。
【0020】
好ましくは、エラストマーはシートとして提供される。このシートは、好ましくは0.5〜2mmの厚さを有する。場合により、エラストマーをチューブの形態で提供してもよい。
【0021】
本発明のさらに他の実施形態によれば、弾性MDIシーリングガスケットの作製方法は、1以上の抽出性化合物を含み且つ弾性ガスケット材料からその1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの一部を抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させたエラストマー片からMDIガスケットを形成することを含む。
【0022】
本発明のさらに他の実施形態によれば、弾性MDIシーリングガスケットの作製方法は、1以上の抽出性化合物を含むベースポリマー出発材料を、前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも一部を前記ベースポリマー出発材料から抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させて、処理したポリマー原料を得、この処理したポリマー原料からエラストマーを生成し、このエラストマーからMDIガスケットを形成することを含む。
【0023】
本発明のさらに他の実施形態によれば、弾性MDIシーリングガスケットの作製方法は、1以上の抽出性化合物を含むベースポリマー出発材料から生成し、このベースポリマー出発材料から前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも一部を抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させたエラストマー片からMDIガスケットを形成することを含む。
【0024】
前記溶液は、弾性ガスケット材料及び/またはベースポリマー出発材料から1以上の抽出性化合物を抽出することができる各種有機溶媒を含み得る。そのような溶媒には低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール(例:イソプロパノール)、ブタノール(すべての異性体)もしくはペンタノール(すべての異性体);またはテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン及び他の低級ケトン(例:メチルエチルケトン、イソプロピルメチルケトン等)、エーテル(例:エチルエーテル、他の脂肪族及び芳香族エーテル)、芳香族溶媒(例:ベンゼン、トルエン等)のような溶媒及び他の一般的な溶媒が含まれるが、これらに限定されない。有機溶媒は好ましくは低級アルコールであり、より好ましくはエタノールまたはイソプロパノールであり、さらに好ましくはエタノールである。低級アルコール(例:エタノール)は好ましくは無水低級アルコールである。幾つかの実施形態では、前記溶液は本質的に有機溶媒から構成される。他の実施形態では、前記溶液は有機溶媒から構成される。好ましい実施形態では、前記溶液は無水エタノールから構成される。
【0025】
幾つかの実施形態では、前記溶液は、弾性ガスケット材料及び/またはベースポリマー出発材料から1以上の抽出性化合物を抽出する溶液の能力を向上し得る添加剤を含む。例えば、溶液はさらに酸または塩基を含み得る。前記酸は各種酸から選択することができ、これらの酸には塩酸、酢酸、硫酸、硝酸及びリン酸が含まれるが、これらに限定されない。溶液が2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9または6.0の下限値から、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8または6.9の上限値までの範囲のpHを有するような濃度で前記酸を使用することが好ましい。前記塩基は各種塩基から選択することができ、これらの塩基にはアルカリ金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム)が含まれるが、これに限定されない。溶液が7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、11.0、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8または11.9の下限値から、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、11.0、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9、12.0、12.1、12.2、12.3、12.4、12.5、12.6、12.7、12.8、12.9または13.0の上限値までの範囲のpHを有するような濃度で前記塩基を使用することが好ましい。
【0026】
好ましくは、本発明の実施形態の方法における、弾性ガスケット材料またはベースポリマー出発材料と溶液との接触を20℃〜溶液の沸点の範囲の温度で実施する。より好ましくは、接触プロセスを40℃〜沸点の範囲の温度で実施する。さらに好ましくは、接触プロセスを60℃〜沸点の範囲の温度で実施する。さらに好ましくは、接触プロセスを還流下で実施する。本発明者らは、所与の時間で弾性ガスケット材料から除去される各種抽出性化合物の量が温度に依存し、一般的に温度が高いとより多くの量の抽出性化合物が除去されることを知見した。
【0027】
幾つかの実施形態では、接触プロセスは15分以上(例えば、15分〜48時間)実施する。接触プロセスを好ましくは1〜12時間、より好ましくは2〜10時間、さらに好ましくは4〜8時間(例えば、約6時間)実施する。
【0028】
MDI中のシーリングガスケットとして有用である本発明の実施形態の方法により処理した特定の弾性ガスケット材料の場合、時間、温度及び溶媒の接触プロセスパラメーターは、弾性ガスケット材料から1以上の抽出性化合物を除去することによりエアゾール製剤を安定化したい要望とMDI用シーリングガスケットとして機能し得るように弾性ガスケット材料がその物理的特性を保持しなければならない必要性とのバランスがとれるように選択されなければならない。例えば、弾性ガスケット材料がEPDMであり、溶液がエタノールのときには、接触プロセスは、MDI用シーリングガスケットとしての物理的特性を保持しながらエアゾール製剤の安定化を助けるシーリングガスケットを提供すべく、60℃〜エタノールの沸点の範囲で12〜30時間実施され得る。MDI用シーリングガスケットとして物理的特性を保持する弾性ガスケット材料の能力は当業者が理解しているような各種方法により調べることができる。例えば、処理したガスケットをMDI中に配置し、MDIにHFA噴射剤(単独で、または薬物と組み合わせて)を充填し、噴射剤の漏れ速度及び/またはMDIへの水分の侵入を調べる。漏れ速度及び水分侵入は当業者に知られた方法により調べることができる。当業者ならば、所与の弾性ガスケット材料及び所与のエアゾール医薬製剤に対する適切なプロセスパラメーターを容易に決めるために本明細書の開示内容を使用することができるであろう。
【0029】
本発明の実施形態の接触プロセスは、当業者に理解されるようなバッチプロセスまたは連続プロセスとして実施され得る。接触プロセスをバッチプロセスとして実施する場合、本発明の方法は同一の弾性材料を2回以上接触させる2回以上の接触プロセス(例えば、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の接触プロセス)を含み得る。連続接触プロセスが好ましい。バッチまたは連続接触プロセスに使用するための装置は当業者に知られている。
【0030】
本発明の実施形態では、弾性ガスケット材料を含むシーリングガスケットの製造方法は、1以上の抽出性化合物を含むシーリングガスケットを、前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも一部をシーリングガスケットから抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させ、シーリングガスケットを撹拌することを含む。この撹拌プロセスは、接触プロセスと同時にまたは接触プロセスに続いて実施され得る。幾つかの実施形態では、シーリングガスケット形態の弾性ガスケット材料をカラム中に配置し、有機溶媒を含む溶液をカラム中に流す。2、3、4、5または6時間等の時間経過後、弾性シーリングガスケットをカラムから取り出し、5、10、15または20分〜30、40、50または60分等の時間撹拌する。撹拌は当業者が理解しているような各種手段により実施され得、この中にはシーリングガスケットを防爆乾燥機中に置くことが含まれるが、これに限定されない。接触プロセス及び撹拌プロセスを2、3、4、5、6、7、8回またはそれ以上繰り返すことができる。
【0031】
本発明による方法は、溶液を弾性ガスケット材料またはベースポリマー出発材料と接触させた後にその溶液を蒸留し、蒸留した溶液を材料と再び接触させる(例えば、同一または後続のバッチ接触プロセスにおいて、あるいは連続接触プロセスの一部として)プロセスを含むことができる。材料が、溶液(または、幾つかの実施形態では溶液中の有機溶媒)の蒸気圧よりも高い蒸気圧を有する抽出性材料を含むときには、溶液を蒸留も再利用もせず、その代わりに接触プロセスのための新たな溶液(すなわち、弾性ガスケット材料またはベースポリマー出発材料を接触させるために今まで使用されたことのない溶液)を使用することが好ましい。
【0032】
本発明の実施形態による接触プロセスは酸素含有雰囲気(例えば、空気)または不活性雰囲気中で実施され得る。不活性雰囲気は、不活性ガスのような各種手段によるかまたは密閉された連続プロセスの一部として接触プロセスを実施することによって提供され得る。
【0033】
弾性ガスケット材料は、低密度ポリエチレン、クロロブチルまたはアクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)のポリマー、ネオプレンまたはクロロプレンからなるものであり得る。その弾性材料はカーボンブラックまたは無機充填剤入りであり得る。好ましくは、弾性ガスケット材料は、アクリロニトリルブタジエンポリマー(アクリロニトリルブタジエンゴムとしても知られる)またはエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)のポリマーから作製されたものである。より好ましくは、前記材料はアクリロニトリルブタジエンポリマーである。
【0034】
本発明の実施形態による抽出性化合物には、一般的に弾性ガスケット材料中に見出され、該材料から有機溶媒を用いて抽出され得るような各種化合物が含まれる。そのような化合物には脂肪酸、酸化防止剤、光安定化化合物、ゴム合成副生成物及び他のゴム抽出物が含まれるが、これらに限定されない。この抽出性化合物は、好ましくはノニルフェノール異性体、2,2’-メチレンビス(6-tertブチル-4-メチルフェノール)、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタ-3-エン、3’-オキシビスプロパニトリル、オレイン酸、パルミチン酸、エライジン酸及びステアリン酸であり、より好ましくは2,2’-メチレンビス(6-tertブチル-4-メチルフェノール)、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタ-3-エン、3’-オキシビスプロパニトリル及びオレイン酸である。幾つかの実施形態では、抽出性化合物には、上記した抽出性化合物の1以上に加えて、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、3,5-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール及び/または4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが含まれる。他の実施形態では、抽出性化合物には上記した抽出性化合物の1以上に加えて、エイコサノール、ドコサノール、ドデカノールまたは他の脂肪族アルコールが含まれる。本発明の幾つかの実施形態では、前記抽出性化合物には45torr(6,000Pa)以上の蒸気圧を有する化合物の1以上、例えば2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタ-3-エン及び3’-オキシビスプロパニトリルが含まれる。
【0035】
幾つかの実施形態では、接触プロセスは弾性ガスケット材料の特性に大きく影響を与える最終処理プロセスである。さらなる任意的なステップには、処理した弾性ガスケット材料を中和溶液ですすいだり(溶液がpH調節剤を含むと好ましい)、処理した弾性ガスケット材料を水(例えば、蒸留水または脱イオン水)ですすいだり、または処理した弾性ガスケット材料を、接触プロセスに関して上述したような有機溶媒を含むすすぎ溶液ですすぎ、すすいだ弾性ガスケット材料を(例えば、この材料を例として乾燥オーブン中で熱に曝すことにより)乾燥することが含まれ得る。すすぎ溶液中の有機溶媒は、接触溶液中の有機溶媒と同一でも異なっていてもよい。好ましくは、すすぎ溶液及び接触溶液中の有機溶媒は同一である。本発明の実施形態では、接触溶液は本質的に上記の有機溶媒から構成され、作製または処理方法はすすぎプロセスを含まない。本発明の好ましい実施形態では、接触溶液は本質的に上記の有機溶媒から構成され、作製または処理方法は、処理した弾性ガスケット材料を有機溶媒を含むすすぎ溶液ですすぐことからなるすすぎプロセスを含む。そのような方法では、乾燥プロセスは弾性ガスケット材料を真空(例えば、1、2、3、4または5mmHg未満の真空)に曝すことにより実施され得る。この真空乾燥プロセスは、すすぎプロセスを用いたならば必要となり得る熱乾燥プロセスよりも効率的(例えば、エネルギー及び/または時間の点で効率的)であり得る。
【0036】
全体の処理プロセスに他の処理プロセスを含めてもよい。弾性ガスケット材料を例えば洗剤及び/または漂白剤で洗浄してもよい。好ましくは、弾性ガスケット材料を有機溶媒を含む溶液と接触させる前にそのような洗浄プロセスを実施する。弾性ガスケット材料が有機チタンコーティングでコーティングされていないことが好ましい。本発明に従う処理は、好ましくはエラストマーに超音波エネルギーを与えることを含まない。
【0037】
本発明の実施形態によれば、吸入器中で使用するためのシーリングガスケットは本発明の実施形態の方法により調製したかまたは本発明の実施形態の方法により作製したシールを備えている。本明細書中に使用する場合、用語「ガスケット」は用語「シーリングガスケット」または「シール」と同義的に使用される。
【0038】
幾つかの実施形態では、定量噴霧式吸入器中で使用するためのシーリングガスケットは1以上の抽出性化合物を含む処理された弾性ガスケット材料を含み、この処理された弾性ガスケット材料中に存在する1以上の抽出性化合物の少なくとも1つのレベルは、弾性ガスケット材料を処理しなかったときに存在するであろう1以上の抽出性化合物の少なくとも1つのレベルより少なくとも5%小さい。本明細書中で使用する場合、用語「処理された弾性ガスケット材料」には本発明の実施形態に従って調製または作製した弾性ガスケット材料が含まれる。幾つかの実施形態では、1以上の抽出性化合物の少なくとも1つのレベルは、弾性ガスケット材料を処理しなかったときに存在するであろう1以上の抽出性化合物の少なくとも1つのレベルより少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50%またはそれ以上小さい。抽出性化合物は上記したものである。幾つかの実施形態では、1以上の抽出性化合物の少なくとも1つは上記したように45torr(6,000Pa)を越える蒸気圧を有する。
【0039】
幾つかの実施形態では、定量噴霧式吸入器中で使用するためのガスケットは、弾性ガスケット材料及び(ガスケットの重量の)約0.001〜1%である1以上の抽出性化合物
からなる。抽出性化合物は上記したものである。幾つかの実施形態では、ガスケットは(ガスケットの重量に対して)0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85または0.9%の下限値から、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10%の上限値の範囲の量の1以上の抽出性化合物を含む。幾つかの実施形態では、1以上の抽出性化合物の少なくとも1つは上記したように45torr(6,000Pa)以上の蒸気圧を有する。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態によれば、MDIの製造方法は、本発明に従って処理されたMDIシーリングガスケットを用意し、他のMDIの部品及びエアゾール医薬製剤を用意し、MDIを組み立てることを含む。当業者は、従来のMDI中の未処理ガスケットの代わりに本発明の実施形態のシーリングガスケットを使用できることを理解するであろう。
【0041】
エアゾール医薬製剤は、肺において局所的治療作用を有し及び/または血液に吸収された後全身作用を有する適当な薬物、例えば抗喘息薬、例えば気管支拡張薬または抗炎症薬(特にステロイドタイプのもの)を含み得る。エアゾール医薬製剤は、サルブタモール(特に、硫酸塩として)、3-(4-{[6-({(2R)-2-ヒドロキシ-2-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、3-(3-{[7-({(2R)-2-ヒドロキシ-2-[4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}-アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミド、4-{(1R)-2-[(6-{2-[(2,6-ジクロロベンジル)オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]-1-ヒドロキシエチル}-2-(ヒドロキシメチル)フェノール、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル、N-(3,5-ジクロロピリジン-4-イル)-2-[1-(4-フルオロベンジル)-5-ヒドロキシインドル-3-イル]-2-オキソアセトアミド、国際公開第01/42193号パンフレットに記載されている式(II)の化合物、国際公開第03/042160号パンフレットに記載されている式(I)の化合物、または国際公開第03/042164号パンフレットに記載されている式(I)の化合物を含み得る。
【0042】
好ましくは、エアゾール医薬製剤はキシナホ酸サルメテロール、プロピオン酸フルチカゾン、あるいはそれらの相互及び/または1以上の別の薬物との組み合わせを含む。
【0043】
本発明の他の実施形態によれば、容器は計量弁及びシーリングガスケットでシールされているキャニスターを有し、前記キャニスターは噴射剤及び薬物を含むエアゾール医薬製剤を収容しており、前記シーリングガスケットは本発明によるものである。本発明の実施形態の容器は、好ましくは噴射剤を液体として維持するのに必要な圧力に耐えることができる密封容器である。幾つかの実施形態では、キャニスターは、噴射剤、薬物及び40℃で2、4、8週間またはそれ以上貯蔵した後に0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5μgの下限値から、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0μgの上限値の範囲のパルミチン酸を含むエアゾール医薬製剤を収容している。他の実施形態では、キャニスターは、噴射剤、薬物及び40℃で2、4、8週間またはそれ以上貯蔵した後に0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5μgの下限値から、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9または7.0μgの上限値の範囲のオレイン酸を含むエアゾール医薬製剤を収容している。さらに他の実施形態では、キャニスターは噴射剤、薬物及び40℃で2、4、8週間またはそれ以上貯蔵した後に0.0、0.1または0.2μgの下限値から、0.2、0.3または0.4μgの上限値の範囲のエライジン酸を含むエアゾール医薬製剤を収容している。幾つかの実施形態では、キャニスターは、噴射剤、薬物及び40℃で2、4、8週間またはそれ以上貯蔵後0.0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5μgの下限値から、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0μgの上限値の範囲のステアリン酸を含むエアゾール医薬製剤を収容している。本発明の幾つかの実施形態によれば、キャニスターは噴射剤、薬物及びパルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸及びステアリン酸の2つ以上を含むエアゾール医薬製剤を収容しており、これらの脂肪酸は製剤中に上記した適用量で存在している。
【0044】
弁軸が通る上部及び下部シーリングガスケット及び壁により画定される計量チャンバを含む計量弁を有する容器が特に好ましい。場合により、計量弁内の1つ以上のシーリングガスケットを本発明によるシーリングガスケットとすることができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、定量噴霧式吸入器中で使用するための薬物容器は、開放端及び閉鎖端を有するキャニスター;弁胴、弁軸及び該弁軸と接触している1つ以上の軸シールを含む計量弁(前記した弁胴及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つが計量チャンバを画定する);キャニスターの開放端をシールして、密封されたキャニスターがエアゾール医薬組成物を収容するように構成されるキャップ;及びキャニスターの開放端とキャップの間に位置しているキャニスターシールを含み、前記キャニスターシール及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つが本発明のシーリングガスケットからなる。幾つかの実施形態では、薬物容器は本明細書中に記載されているエアゾール医薬製剤を収容している。他の実施形態では、薬物容器は空であり、エアゾール医薬製剤がまだ充填されていない。
【0046】
本発明の他の実施形態によれば、エアゾール医薬製剤を収容し、その計量された用量を与えるように構成されている容器の作製方法は、1つ以上の軸シールを含む計量弁をキャニスターに連結して容器を提供することを含み、前記した1つ以上の軸シールの少なくとも1つは本発明によるシーリングガスケットからなる。連結プロセスは、キャップ(またはフェルール)、及びキャニスターをシールしてキャニスターがエアゾール医薬組成物を収容するように構成されるキャニスターシールを用いて、計量弁をキャニスターに連結させることを含むことが好ましい。
【0047】
本発明の更に他の実施形態によれば、薬物及び噴射剤を含む医薬懸濁液を計量するのに適した計量弁が提供され、この計量弁は弁胴、計量チャンバ、弁軸及び1つ以上の本発明によるシーリングガスケットを有している。本発明の実施形態による計量弁には、噴射剤が弁を介して漏れるのを防ぐためのガスケットが組み込まれている。そのような計量弁は、1作動あたり計量された用量の製剤をデリバリーするように設計することが好ましい。
【0048】
幾つかの実施形態では、計量弁は弁胴、弁軸及び前記弁軸と接触している1つ以上の軸シールを含み、前記した1つ以上の軸シールの少なくとも1つは本発明のシーリングガスケットからなり、前記した弁胴及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つが計量チャンバを画定している。
【0049】
他の実施形態では、弁胴、弁軸及び1つ以上の軸シールを組み立てて計量弁を形成することを含む計量弁の作製方法が提供され、前記した弁胴及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つが計量チャンバを画定し、1つ以上の軸シールの少なくとも1つは本発明によるシーリングガスケットである。
【0050】
本発明のさらに他の実施形態によれば、定量噴霧式吸入器は薬物及び液体噴射剤を含む医薬懸濁液を計量するのに適した計量弁と連通しているキャニスターを含み、前記計量弁は本発明のシーリングガスケットを含み及び/または前記キャニスターは本発明のシーリングガスケットでシールされている。定量噴霧式吸入器は、1作動または“一吹き”で一定の単位用量の薬物、例えば一吹きで2.5〜5000μgの薬物、好ましくは一吹きで5.0〜2500μgの薬物がデリバリーされるように設計されている。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態によれば、医薬製品は、噴射剤及び薬物を含む医薬懸濁液を収容しており、薬物及び液体噴射剤を含む医薬懸濁液を計量するのに適した計量弁と連通しているキャニスターを含み、前記計量弁及び/またはキャニスターは1つ以上の本発明によるシーリングガスケットでシールされている。
【0052】
幾つかの実施形態では、医薬製品は、開放端及び閉鎖端を有するキャニスター;弁胴、弁軸及び前記弁軸と接触している1つ以上の軸シールを含む計量弁(前記弁胴及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つは計量チャンバを画定する);密封されたキャニスターがエアゾール医薬組成物を収容するのに適合するようにキャニスターの開放端をシールするように構成されているキャップ;キャニスターの開放端とキャップの間に位置するキャニスターシール;及び計量弁を作動させ、計量されたエアゾール医薬製剤の服用分を分配するように構成されている弁アクチュエーターを含み、前記キャニスターシール及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つは本発明のシーリングガスケットからなる。
【0053】
他の実施形態では、医薬製品の製造方法は、アクチュエーターとエアゾール医薬製剤を収容しているキャニスターとを組み立てて医薬製品を提供することを含み、前記キャニスターはキャニスターシール及び1つ以上の軸シールを有する計量弁を含み、前記キャニスターシール及び1つ以上の軸シールの1つ以上は本発明のシーリングガスケットからなる。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態によれば、パッケージは、例えば米国特許第6,119,853号明細書に記載されているような噴射剤ガスの排出に対して実質的に透過性であり且つ大気水分の侵入に対して実質的に不透過性である材料から構成されている可撓性ラッパー内に収容されてなる本発明の定量噴霧式吸入器からなる。好ましくは、前記パッケージはその中に乾燥物質をも含む。前記乾燥物質はMDIの内側及び/またはMDIの外側に存在させ得る。
【0055】
本発明の実施形態によれば、患者における呼吸器疾患(例えば、喘息、鼻炎またはCOPD)の治療方法が、前記患者が本発明の定量噴霧式吸入器を使用することを含む。
【0056】
幾つかの実施形態では、呼吸器疾患の発症を治療及び/または予防する方法が、呼吸器疾患の治療または予防を要する患者に対してエアゾール医薬製剤を収容しているキャニスターを含む定量噴霧式吸入器から有効量のエアゾール医薬製剤を投与することを含み、前記キャニスターはキャニスターシールと1つ以上の軸シールを有する計量弁とを含み、前記キャニスターシール及び1つ以上の軸シールの1つ以上が本発明のシーリングガスケットからなる。
【0057】
さらなる態様では、本発明の実施形態は本発明のシーリングガスケットを1つ以上含む部品から定量噴霧式吸入器を組み立てることを含む、定量噴霧式吸入器医薬製品の貯蔵寿命を延長させる方法を提供する。
【0058】
幾つかの実施形態では、定量噴霧式吸入器医薬製品の貯蔵寿命を延長させる方法は、アクチュエーターとエアゾール医薬製剤を収容しているキャニスターとを組み立てて定量噴霧式吸入器医薬製品を提供することを含み、前記キャニスターはキャニスターシールと1つ以上の軸シールを有する計量弁とを含み、前記1つ以上のキャニスターシール及び1つ以上の軸シールは本発明のシーリングガスケットからなる。
【0059】
本発明の幾つかの実施形態は、未処理シールまたはガスケットを有するMDIよりも高いFPMで薬物エアゾールを分配するためのMDIの製造方法における本発明のガスケットの使用を提供する。本発明の実施形態は、未処理シーリングガスケットを有するMDIに比して改善されたFPM貯蔵安定性でエアゾールを分配するためのMDIの製造方法における本発明の実施形態のガスケットの使用を提供する。本発明の幾つかの実施形態は、未処理シーリングガスケットを有するMDI中に貯蔵されている対応する製剤に比してHFA懸濁液製剤の貯蔵寿命を延長させるための本発明の実施形態によるガスケットの使用を提供する。
【0060】
本発明の実施形態は、エラストマーからなるシーリングガスケットを提供するものであり、該ガスケットは、その0.5重量%以下(例えば、0.001〜0.1重量%)が有機溶媒を含む溶液で抽出されている洗浄ガスケットであることを特徴とする。
【0061】
本発明の他の実施形態によれば、容器は本発明のシーリングガスケットを含み、前記容器が計量弁でシールされ、粒状薬物及び液化HFA噴射剤を含むエアゾール医薬製剤を収容している。前記容器の特徴は、粒状薬物のFPMが40℃/相対湿度75%で4、8または好ましくは12週間貯蔵後、初期レベルの15%以内、より好ましくは10%以内、特に5%以内に維持されることである。本発明の幾つかの実施形態では、粒状薬物はサルメテロールまたはその塩(例えば、キシナホ酸塩)及びプロピオン酸フルチカゾンを含む。定量噴霧式吸入器のパッケージングに関して上記した可撓性ラッパー内に容器が包装されている本発明の実施形態では、前記容器の特徴は粒状薬物のFPMが40℃で4、8または好ましくは12週間貯蔵後、あるいは室温で8、24または52週間後に初期レベルの15%以内、より好ましくは10%以内、特に5%以内に維持されていることが好ましい。
【0062】
本発明のさらに他の実施形態によれば、定量噴霧式吸入器は、開放端及び閉鎖端を有するキャニスター;弁胴、弁軸及び前記弁軸と接触している1つ以上の軸シールを含む計量弁(前記した弁胴及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つが計量チャンバを画定する);密封されたキャニスターがエアゾール医薬組成物を収容するのに適合するようにキャニスターの開放端をシールするように構成されているキャップ;キャニスターの開放端とキャップの間に位置するキャニスターシール;及び計量弁を作動させ、計量されたエアゾール医薬製剤の服用分を分配するように構成されている弁アクチュエーターを含む。キャニスターシール及び1つ以上の軸シールの少なくとも1つは本発明のシーリングガスケットからなり、定量噴霧式吸入器における、40℃/湿度75%で少なくとも4、8または12週間貯蔵した後の微粒子状物質量(FPM)の変化は初期FPMの1、5、10、15、20、30、40または50%未満である。
【0063】
本発明の実施形態によれば、MDI中に使用するためのシーリングガスケットは、弾性ガスケット材料及びガスケットの重量の0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13または0.14%の下限値から0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16または0.17%の上限値までの範囲の量のオレイン酸を含む。本発明の他の実施形態では、MDI中で使用するためのシーリングガスケットは、上記した弾性ガスケット材料及びガスケットの重量の0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14または0.15%の下限値から0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34または0.35%の上限値までの範囲の量のパルミチン酸を含む。本発明のさらに他の実施形態によれば、MDI中で使用するためのシーリングガスケットは、上記した弾性ガスケット材料及びガスケットの重量の0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12または0.13%の下限値から0.08、0.09、0.10、0.11または0.12%の上限値までの範囲の量のエライジン酸を含む。本発明のさらに他の実施形態によれば、MDI中で使用するためのシーリングガスケットは、上記した弾性ガスケット材料及びガスケットの重量の0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20%の下限値から0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34または0.35%の上限値までの範囲の量のステアリン酸を含む。本発明のさらに他の実施形態によれば、MDI中で使用するためのシーリングガスケットは、上記した弾性ガスケット材料及び上記した適用量で存在するオレイン酸、パルミチン酸、エライジン酸及びステアリン酸の2つ以上の混合物を含む。好ましい実施形態では、MDI中で使用するためのシーリングガスケットは、EPDM及び上記した適用量で存在するオレイン酸、パルミチン酸、エライジン酸及びステアリン酸の2、3または4つを含む。理論に束縛されるつもりはないが、MDI中で使用するためのシーリングガスケットが、1以上の上記脂肪酸が上述の下限以下の量しか存在しない程度にその脂肪酸を除去する抽出プロセスを受けると、シーリングガスケット材料を安定化させるように作用する他の化合物(例えば、酸化防止剤)も除去される恐れがあることが現在考えられている。これら他の化合物を除去すると、シーリングガスケットは物理的特性の低下を被ることがあり、こうなるとシーリングガスケットはMDI中で使用するのに不適当となる。また、MDI中で使用するためのシーリングガスケットに上述の量以上の脂肪酸が含まれているとエアゾール医薬製剤の経時安定性が低下することがあるとも考えられている。
【0064】
本発明はさらに、MDI中に組み込んだとき未処理のシーリングガスケットを有するMDIよりも高いFPMで分配される薬物エアゾールを有するMDIを提供する、シールまたはガスケットを提供するためのガスケット抽出プロセスにおける純エタノールの使用を提供する。MDI中に組み込んだとき未処理のシーリングガスケットを有するMDIに比して改善されたFPM貯蔵安定性で分配される薬物エアゾールを有するMDIを提供する、シールまたはガスケットを提供するためのガスケット抽出プロセスにおける純エタノールの使用も提供する。
【0065】
本発明は、肺において局所的な治療作用及び/または血液に吸収された後に全身治療作用を有する、気管支拡張薬や抗炎症薬を含めた抗喘息薬、特にステロイドタイプの抗喘息薬である治療薬と使用するためにMDI中で特に適用される。4-ヒドロキシ-α-[[[6-(4-フェニルブトキシ)ヘキシル]アミノ]メチル]-1,3-ベンゼンジメタノールは英国特許出願公開第2140800号明細書中に広範囲の気管支拡張薬の1つとして記載されていた。この化合物はサルメテロールの一般名で公知であり、そのキシナホ酸塩は喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような炎症性疾患の治療に対して非常に有効であるとして広く知られるようになった。プロピオン酸フルチカゾンは、英国特許出願公開第2088877号明細書に記載されている望ましくない全身的副作用の不利益が少ない局所的抗炎症性コルチコステロイドの1つであり、系統的に6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-プロピオニルオキシ-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルと命名されている。
【0066】
好ましくは、薬物はキシナホ酸サルメテロールとプロピオン酸フルチカゾンの組み合わせである。追加の薬物が存在しないことが好ましい。
【0067】
しかしながら、本明細書に既に記載されている薬物に加えて、本発明のMDIは、エアゾール製剤として投与され、吸入治療において有用であり得る任意の薬物、例えば抗アレルギー薬、例えばクロモグリクケート(例えば、ナトリウム塩として)、ケトチフェンまたはネドクロミル(例えば、ナトリウム塩として);抗炎症性ステロイド、例えばベクロメタゾン(例えば、ジプロピオネートとして)、フルチカゾン(例えば、プロピオネートとして)、フルニソリド、ブデソニド、ロフレポニド、モメタゾン(例えば、フロエートとして)、シクレソニド、トリアムシノロンアセトニド;抗コリン作用薬、例えばイプラトロピウム(例えば、臭化物として)、チオトロピウム、アトロピンまたはオキシトロピウム、並びにそれらの塩を分配するのにも適している。当業者には明白であるように、適切ならば、薬物の活性及び/または安定性を最適化するため、及び/または噴射剤中の薬物の溶解性を最小限とするために、薬物を塩の形態(例えば、アルカリ金属塩またはアミン塩として、または酸付加塩として)、あるいはエステル(例えば、低級アルキルエステル)として、または溶媒和物(例えば、水和物)として用いてもよい。薬物をラセミ体の形態または純粋な異性体の形態、例えばR-サルメテロールまたはS-サルメテロールの形態で用いてもよい。開示されている薬物の1つ以上を組み合わせた組成物も本発明の開示内容の範囲内である。
【0068】
本明細書に記載されている容器、MDI及び弁は、例えば水侵入、薬物沈着及び他の薬物の損失に対する感受性のために、上記したものと同様の製剤の困難性を呈している薬物に対し特に使用される。通常、前記困難性は、低用量(すなわち、1回投与あたり約1mg未満)で投与される強力な薬物にとって特に深刻である。
【0069】
粒状(例えば、微粉化)薬物の粒子サイズは、エアゾール製剤の投与時に実質的に全ての薬物が肺に吸入できるようでなければならず、よって100ミクロン未満、望ましく20ミクロン未満、好ましくは1〜10ミクロン(例えば、1〜5ミクロン)の範囲である。
【0070】
製剤中の薬物の濃度は、通常0.01〜10%、例えば0.01〜2%、具体的には0.01〜1%、特に0.03〜0.25%w/wである。キシナホ酸サルメテロールが唯一の薬物の場合、製剤中のその濃度は通常0.03〜0.15%w/wである。
【0071】
場合により、本発明の製剤はエアゾール医薬製剤の分野で慣用されている1以上の別の成分を含み得る。こうした任意成分には、味覚マスキング剤、糖、バッファー、酸化防止剤、水及び化学安定剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
本発明の製剤が成層圏オゾンの破壊を引き起こす恐れがある成分を含んでいないことが望ましい。特に、本製剤がCClF、CClやCFCClのようなクロロフルオロカーボン類を実質的に含まないことが望ましい。所望により、噴射剤がさらに揮発性アジュバント、例えば飽和炭化水素(例:プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタン及びイソペンタン)またはジアルキルエーテル(例:ジメチルエーテル)を含んでいてもよい。通常、噴射剤の最高50%w/w(例えば、1〜30%w/w)まで揮発性炭化水素を含み得る。しかしながら、揮発性アジュバントを実質的に含まない製剤が好ましい。特定の場合には、適量の水を配合することが望ましいことがある。水は噴射剤の誘電性を変化させるのに有利となり得る。
【0073】
所望により、本発明の製剤中に配合してもよい極性アジュバントの例には、C2-6脂肪族アルコール及びポリオール(例えば、エタノール、イソプロパノール及びプロピレングリコール)、並びにその混合物が含まれる。エタノールが好ましく使用される。通常少量(例えば、0.05〜3.0%w/w)のみの極性アジュバントが必要であり、5%w/wを越える量を使用すると薬物を溶解させる傾向を呈することがあり不利である。好ましくは、製剤は1%w/w未満(例えば、約0.1%w/w)の極性アジュバントを含有する。極性は、例えば欧州特許出願公開第0327777号明細書に記載されている方法により測定され得る。幾つかの実施形態では、本発明の製剤が極性アジュバントを実質的に含まないことが望ましい。通常、「実質的に含まない」とは、製剤の重量に基づいて0.01%未満、特に0.0001%未満しか含有しないことを意味すると理解される。
【0074】
好ましくは、単一の噴射剤、例えば1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134a)または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパン(HFA 227)、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタンが使用される。本発明の製剤が成層圏オゾンの破壊を引き起こす恐れがある成分を含まないことが望ましい。特に、本製剤がCClF、CClやCFCClのようなクロロフルオロカーボン類を実質的に含まないことが望ましい。
【0075】
適当な界面活性剤を使用してもよいが、本発明の製剤が界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。通常、「実質的に含まない」とは、製剤の重量に基づいて0.01%w/w未満、特に0.0001%未満しか含有しないことを意味すると理解される。
【0076】
本発明において使用される製剤は、薬物を適切な容器中の選定された特定噴射剤中に、例えば音波処理または高剪断ミキサーを用いて分散させることにより調製され得る。このプロセスは制御された湿度条件下で実施されることが望ましい。
【0077】
本明細書中で使用するとき、用語「シーリングガスケット」は、ネック/キャニスターガスケット及び/または下部シーリングガスケット及び/または上部シーリングガスケットを意味すると理解される。後者の2つのガスケットは計量チャンバに関連しているものである。幾つかの実施形態によれば、本発明のキャニスターにおいてネック/キャニスターガスケットが本発明に従って作製された唯一のガスケットである。
【0078】
用語「定量噴霧式吸入器」または「MDI」は、キャニスター、前記キャニスターを覆う固定キャップ及び前記キャップ中に位置している製剤計量弁を含むユニットを意味する。完全に組み立てられたMDIは適当なチャネリングデバイスを含む。適当なチャネリングデバイスは、例えば弁アクチュエーター及び円筒形または円錐状通路を含み、この通路を通って薬物が、充填されているキャニスターから計量弁を介して患者の鼻または口(例えば、マウスピースアクチュエーター)にデリバリーされ得る。
【0079】
通常、MDIキャニスターは、使用する噴射剤の蒸気圧に耐えることができる容器、例えばプラスチック製瓶またはプラスチックコーティングを施したガラス製瓶、または好ましくは場合により陽極酸化処理、ラッカーコーティング及び/またはプラスチックコーティングを施していていてもよい金属製(例えば、アルミニウムまたはその合金製)キャニスターからなる(例えば、缶の内面の全部または一部が場合により1以上の非フルオロカーボンポリマー類と組み合わせた1以上のフルオロカーボンポリマー類でコーティングされている国際公開第96/32150号パンフレットを参照により本明細書に組み入れる)。
【0080】
キャップは、溶接(例えば、超音波溶接またはレーザー溶接)、スクリュー嵌合またはクリンプ加工によりキャニスターに固定され得る。本明細書中に教示されているMDIは当技術分野の方法(例えば、上掲したByron及び国際公開第96/32150号パンフレット参照)により作製され得る。好ましくは、製剤計量弁がキャップ内に位置しているキャップアセンブリをキャニスターに取り付け、前記キャップを適所にクリンプする。
【0081】
実質的にフッ素化された表面を製剤に向けるように、計量チャンバ(特にプラスチック材料から作製した場合)を表面処理してもよい。あるいは、計量チャンバ(特にプラスチック材料から作製した場合)をシロキサソン(例えば、ジメチルシロキサン)で表面処理することができる。さらなる代替例として、計量チャンバは、適当な実質的にフッ素化されている材料から構成することにより実質的にフッ素化された表面を製剤に向ける。適切な計量チャンバ及び計量チャンバに対する表面処理は国際公開第02/51483号パンフレットの7ページ、15行目〜11ページ、18行目に記載されている。
【0082】
本発明の幾つかの実施形態によれば、上記した容器は実質的にフッ素化された表面が製剤に向いている弁軸を含む。適切な弁軸及び弁軸に対する表面処理は国際公開第02/51483号パンフレットの11ページ、21行目〜12ページ、3行目に記載されている。
【0083】
好ましくは、本発明の実施形態の容器はアルミニウムから構成したキャニスターからなる。キャニスターに対する適切な表面処理は国際公開第02/51483号パンフレットの12ページ、10〜16行目に記載されている。
【0084】
医薬エアゾール製造の当業者に公知である従来のバルク製造方法及び装置を、充填キャニスターを商業的に製造するための大規模バッチの作製のために使用することができる。例えば、1つのバルク製造方法では、計量弁をアルミニウム缶上にクリンプして、空キャニスターを形成する。粒状薬物を充填管に添加し、液化噴射剤を界面活性剤を含有する液化噴射剤と一緒に充填管を介して製造ベッセルに圧入する。医薬懸濁液を混合した後、充填機に再循環させ、その後医薬懸濁液のアリコートを計量弁を介してキャニスターに充填する。
【0085】
代替方法では、液化製剤のアリコートを、該製剤が気化しないように十分に冷たい条件下で開いているキャニスターに加え、その後計量弁をキャニスターにクリンプする。
【0086】
典型的には、医薬用に作製したバッチでは、各充填キャニスターの重量をチェックし、バッチ番号を付し、放出試験前に貯蔵用トレーに詰める。
【0087】
使用前に、各充填キャニスターを適当なチャネリングデバイスに取り付けて、薬物を患者の肺または鼻腔に投与するための定量噴霧式吸入器システムを形成する。
【0088】
本発明のエアゾール製剤の化学的/物理的安定性及び医薬許容性は、当業者に公知である技術により測定され得る。すなわち、成分の化学的安定性は、例えば製品を長期間貯蔵した後にHPLCアッセイにより測定され得る。物理的安定性データは他の一般的な分析技術、例えば漏れ試験、弁デリバリーアッセイ(平均発射重量/作動)、用量再現性アッセイ(活性成分/作動)、及びスプレー分布分析等から得ることができる。
【0089】
本発明のエアゾール組成物の懸濁安定性は一般的な技術により、例えばバックライト散乱機器を用いて凝集サイズ分布を測定することにより、あるいはカスケードインパクション、次世代インパクター、多段液体インピンジャーにより、または“ツインインピンジャー”分析方法によって空気力学的粒子サイズ分布を測定することにより調べることができる。本明細書中で使用する場合、“ツインインピンジャー”アッセイの言及は英国薬局方(1988年)、ページA204-207、付録XVII Cに規定されている“Determination of the deposition of the emitted dose in pressurised inhalations using apparatus A”を意味する。前記技術により、エアゾール製剤の“呼吸可能分”を計算することができる。“呼吸可能分”を計算するために使用される1つの方法では“微粒子割合”を参照する。この“微粒子割合”は、1回の作動で下部インピンジメントチャンバ中に集められた活性成分の量であり、上記したツインインピンジャー法を用いて1回の作動あたりにデリバリーされる活性成分の総量のパーセンテージとして表される。上記したように、絶対“粒子状物質量”(FPM)は本発明に関連して重要なパラメーターである。FPMは同一装置を用いて微粒子割合として評価され得る。
【0090】
本発明による容器またはMDI中の薬物の投与は、軽度、中程度または重篤な急性もしくは慢性症状を治療するため、または予防処置のために適応され得る。正確な投与量は患者の年齢及び状態、使用される特定の粒状薬物及び投与頻度に依存し、最終的には担当医の裁量である。薬物の組み合わせを使用する場合、その組み合わせの各成分の用量は一般的に単独で使用されるときの各成分の使用量である。典型的には、例えば毎回1、2、3または4吹きを与えるとして1日1回以上(例えば、1〜8回)投与され得る。
【0091】
適切な1日の用量は、例えば病気の重篤度に応じて、50〜200μgのサルメテロールまたは50〜2000μgのプロピオン酸フルチカゾンであり得る。例えば、1回の弁作動で25μgのサルメテロールまたは25、50、125または250μgのプロピオン酸フルチカゾンがデリバリーされ得る。サルメテロール(例えば、キシナホ酸塩として)とプロピオン酸フルチカゾンの組み合わせであるSeretide(商標)の用量は、通常は対応する各薬成分に対する量である。典型的には、定量噴霧式吸入器中で使用するための各充填キャニスターは60、100、120、160または240の計量用量または吹き出しの薬物を収容している。
【0092】
他の薬物に対する適切な投薬方式は当業者に公知であるかまたは容易に知ることができる。
【0093】
別段の記載を除いて、特許明細書及び特許出願公開明細書を含めた全ての参考文献が全体として参照により本明細書に組み入れるとする。
【0094】
下記実施例を参照して本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するためであって、限定するものと意図されない。
【0095】
図1を参照すると、弁胴1が、その下部に計量チャンバ4、その上部にサンプリングチャンバ5を有して形成されており、前記サンプリングチャンバ5はリターンスプリング6用ハウジングとしても機能する。計量チャンバは少なくとも一部分がフッ素化ポリマー及び/またはフッ素化コーティングから構成されている。“上部”及び“下部”の語は、使用時に図1に示す弁の向きに対応する方向に向いている容器の首及び容器の下端の弁を有する容器に対して使用される。弁胴1の内部には、部分8が下部軸シール9及びフェルール2を介して弁の外側に延びている弁軸7が配置されている。軸部分8は、軸の外側端部で開放されており、半径方向の通路11と連通している内軸または縦路10を有して形成されている。
【0096】
軸7の上部は、軸7が上部軸シール12中の開口を通って摺動することができ、前記開口の周囲と十分に係合してシールを与えるような直径を有している。上部軸シール12は、スリーブ14により弁胴1中の下部と上部との間に形成されているステップ13に対して適所に保持されており、スリーブ14は下部軸シール9及び上部軸シール12間の計量チャンバ4を画定している。弁軸7は通路15を有しており、この通路15は弁軸が図示する作動不能位置にあるときには計量チャンバ4とサンプリングチャンバ5間の連通を与える。サンプリングチャンバ5それ自体は弁胴1の側面に形成されているオリフィス26を介して容器の内部と連通している。
【0097】
弁軸7は、リターンスプリング6により作動不能位置に下向きに偏っており、下部軸シール9に接する肩部17を備えている。図1に示す作動不能位置では、肩部17は下部軸シール9に接しており、半径方向の通路11は下部軸シール9の下で開いており、計量チャンバ4は管10から分離されており、内部の懸濁液が漏れることができない。
【0098】
半径方向に延びているU形断面を有するリング18は、弁胴の周りにトラフ19を形成するようにオリフィス26の下の弁胴の周りに配置されている。図1に示すように、リングは弁胴1の上部全体に摩擦嵌合を与えるのに適した直径を有する内側環状接触リムを有する別個の部品として形成されており、リングはオリフィス26の下のステップ13に対して位置している。しかしながら、リング18をあるいは弁胴1の一体成形部品として形成してもよい。
【0099】
デバイスを使用するためには、容器をまず振って、容器内の懸濁液をホモジナイズする。次いで、使用者はスプリング6の力に抗して弁軸7を押し下げる。弁軸を押し下げると、通路15の両端が計量チャンバ4から分離された上部軸シール12の面の上に載るようになる。こうして、服用分がフッ素化計量チャンバ内で計量される。弁軸を押し続けると、上部軸シール12は弁軸本体をシールしながら半径方向の通路11は計量チャンバ4の中に動く。よって、計量された用量が半径方向の通路11及び出口管10を介して出ていくことができる。
【0100】
弁軸をゆるめると、スプリング6の力で図示した位置に戻る。その後、通路15は再び計量チャンバ4とサンプリングチャンバ5間の連通を与える。従って、この段階で、液体は加圧下で容器からオリフィス26、通路15を通って計量チャンバ4中に流れて、そこに充填される。
【0101】
図2は、ガスケットシール、下部軸シール及び上部軸シールがそれぞれ3、9及び12で表示されている異なる弁の図を示す。
【実施例】
【0102】
(実施例1)
1.弁ガスケットの処理
以下の実験で使用した弁はValois(フランス)製DF60弁であった。処理するためにキャップシーリングガスケット(アクリロニトリルブタジエンポリマー)を弁から取り外した。
【0103】
実験A
250mlの丸底フラスコに120mlのエタノール(無水USP等級)を入れた。40個のガスケットを溶液中に配置し、凝縮器をフラスコに取り付けた。その後、空気を排除しながら溶液を1.5時間還流加熱した。熱エタノールをデカントし、ガスケットを同一手順を用いて再抽出した。次いで、ガスケットを50mlのエタノール(無水USP等級)で1回洗浄し、丸底フラスコから取り出し、真空中CaSOで乾燥した。
次いで、ガスケットを弁に再び取り付けた。
【0104】
実験B
実験Aに関して上記した処理を、HCl濃度が0.01M HClのエタノール-塩酸溶液を用いて繰り返した。
【0105】
実験C
実験Aに関して上記した処理を、AcOH濃度が5%(v/v)のエタノール-酢酸溶液を用いて繰り返した。
【0106】
実験D
実験Bに関して上記した処理を繰り返した。ガスケットをエタノールですすぐ代わりに、ガスケットを脱イオン水中に浸し、溶液及びガスケットが中和されるまで水酸化ナトリウムを添加した。ガスケットを真空中五酸化リンで乾燥した。
【0107】
実験E
実験Cに関して上記した処理を繰り返した。ガスケットをエタノールですすぐ代わりに、ガスケットを脱イオン水中に浸し、溶液及びガスケットが中和されるまで水酸化ナトリウムを添加した。ガスケットを真空中五酸化リンで乾燥した。
【0108】
実験F
ネックガスケットをデュラン瓶中に配置し、全体を覆うのに十分なエタノール中に浸した。その後、この瓶を超音波浴(Decon FS200B)中に置き、高設定で59分間音波処理した。エタノールをデカントして除去した後、新鮮なエタノールと交換し、ときどき撹拌しながら2時間放置した。エタノールを再びデカントして除去した後、部品を新鮮なエタノールで2回すすぎ、その部品を乾燥した。その後、処理したガスケットを弁に挿入した。
【0109】
比較実験G
弁を未処理のままとした。
【0110】
2.サンプル作成
国際公開第96/32150号パンフレットに記載されているPTFE/PESポリマーブレンドでコーティングされ、上記1に記載したように作製した弁でシールされたアルミニウムキャニスターで、表1及び2にデータを示すMDIを作製した。前記アルミニウムキャニスターは、キシナホ酸塩の形態のサルメテロール(4.2mg)、プロピオン酸フルチカゾン(8.4mg)及びHFA 134a(12g)からなるエアゾール医薬製剤を収容していた。
【0111】
3.サンプル貯蔵条件
別段の記載がない限り、各デバイスを40℃/相対湿度75%で貯蔵した。作製した直後(初期)、及び指定時間経過後にFPMを測定した。
【0112】
4.FPMの測定方法
試験する各MDIキャニスターをきれいなアクチュエーター中に入れ、4発を発射することにより準備した。次いで、10発を定量的に洗浄したアンダーセン型カスケードインパクター中に発射し、その上に沈着した薬物の量を洗浄液のHPLC分析により定量した。これから、デリバリーされた用量(カスケードインパクター上に沈着した薬物の量の合計)及びFPM(3段、4段及び5段上に沈着した薬物の合計)データを計算した。
【0113】
5.上記1のガスケットについてのFPM研究の結果
【表1】

【0114】
表1中のデータは、本発明に従って処理したガスケットを有するMDIの場合、初期FPM及び貯蔵後のFPMの両方が、未処理ガスケットを用いた対照MDIの場合よりも高いことを示している。これらのデータは、本発明に従って処理したガスケットを含むMDIの場合、FPMが対照MDIの場合よりも安定であることも示している。
【表2】

【0115】
表2中のデータは、本発明に従って処理したガスケットを有するMDIの場合、FPMは対照MDIの場合よりも安定であることを示している。
【0116】
(実施例2)
1.弁ガスケットの処理
以下の実験で使用した弁はValois(フランス)製DF60弁であった。処理するためにキャップシーリングガスケット(アクリロニトリルブタジエンポリマー)を弁から取り外した。
【0117】
処理弁
ガスケットを流動カラム中60℃においてエタノールで抽出した。このエタノールを抽出性材料を除去するためのプロセスの間中蒸留し、再循環させた。ネックガスケットは15〜24時間抽出し、軸ガスケットは4〜8時間抽出した。すべてのデータを結果の中に組み入れた。
次いで、ガスケットを弁に再び取り付けた。
【0118】
対照
弁を未処理のままとした。
【0119】
2.サンプル作製
国際公開第96/32150号パンフレットに記載されているPTFE/PESポリマーブレンドでコーティングされ、上記1に記載したように作製した弁でシールされたアルミニウムキャニスターで、図1にデータを示すMDIを作製した。前記アルミニウムキャニスターは、キシナホ酸塩の形態のサルメテロール(4.2mg)、プロピオン酸フルチカゾン(8.4mg)及びHFA 134a(12g)からなるエアゾール医薬製剤を収容していた。
【0120】
3.サンプル貯蔵条件
別段の記載がない限り、各デバイスを40℃/相対湿度75%で貯蔵した。作製した直後(初期)、及び指定時間経過後にFPMを測定した。
【0121】
4.FPMの測定方法
試験する各MDIキャニスターをきれいなアクチュエーター中に入れ、4発を発射することにより準備した。次いで、10発を定量的に洗浄したアンダーセン型カスケードインパクターに発射し、その上に沈着した薬物の量を洗浄液のHPLC分析により定量した。これから、デリバリーされた用量(カスケードインパクター上に沈着した薬物の量の合計)及びFPM(3段、4段、5段上に沈着した薬物の合計)データを計算した。
【0122】
5.FPM研究の結果(プロピオン酸フルチカゾン(FP)について示したFPM)
図3のデータは、本発明に従って処理したガスケットを含むMDIの場合、FPMは対照MDIの場合よりも安定であることを示している。
【0123】
(実施例3)
1.弁ガスケットの処理
以下の実験で使用した弁はValois(フランス)製DF60弁であった。処理するためにキャップシーリングガスケット(アクリロニトリルブタジエンポリマー)を弁から取り外した。
【0124】
処理弁
キャップシーリングガスケットをガラスカラム中でガスケット上にエタノール(60〜80℃)を24時間流すことにより抽出し、その後市販の乾燥機中で部分真空下で乾燥した。軸ガスケットを実施例1に記載されている方法により60℃で8時間抽出した。
次いで、ガスケットを弁に再び取り付けた。
【0125】
対照
弁を未処理のままとした。
【0126】
2.サンプル作製
国際公開第96/32150号パンフレットに記載されているPTFE/PESポリマーブレンドでコーティングされ、上記1に記載したように作製した弁でシールされたアルミニウムキャニスターで、図1に示すデータをMDIを作製した。前記アルミニウムキャニスターは、キシナホ酸塩の形態のサルメテロール(4.2mg)、プロピオン酸フルチカゾン(8.4mg)及びHFA 134a(12g)からなるエアゾール医薬製剤を収容していた。
【0127】
3.サンプル貯蔵条件
各デバイスを逆向き(弁を下に)で室温/相対湿度<30%で貯蔵した。作製した直後(初期)、及び指定時間経過後にFPMを測定した。
【0128】
4.FPMの測定方法
試験する各MDIキャニスターをきれいなアクチュエーター中に入れ、4発を発射することにより準備した。次いで、10発を定量的に洗浄したアンダーセン型カスケードインパクターに発射し、その上に沈着した薬物の量を洗浄液のHPLC分析により定量した。これから、デリバリーされた用量(カスケードインパクター上に沈着した薬物の量の合計)及びFPM(3段、4段、5段上に沈着した薬物の合計)データを計算した。
【0129】
5.FPM研究の結果(プロピオン酸フルチカゾン(FP)について示したFPM)
図4のデータは、本発明に従って処理したガスケットを含むMDIの場合、FPMは対照MDIの場合よりも安定であることを示している。
【0130】
(実施例4)
1.弁ガスケットの処理
以下の実験で使用した弁はValois(フランス)製DF60弁であった。処理するためにキャップシーリングガスケット及び軸シーリングガスケット(いずれもアクリロニトリルブタジエンポリマー)を弁から取り外した。
【0131】
実験H
メッシュバッグ中の約10kgのネックガスケットをカラム中に入れた。60℃のエタノールをカラム中に4時間流し、カラムを出たエタノールはカラムに戻す前に蒸留した。ガスケットが収容されているメッシュバッグをカラムから取り出し、防爆乾燥機中に置き、ガスケットを20℃で5分間撹拌させた。次いで、ガスケットをカラムに戻し、エタノール抽出及び撹拌プロセスを4回繰り返した。次いで、抽出プロセスを繰り返すためにガスケットをカラムに戻した。その後、このガスケットをカラムから取り出し、エタノールで2回すすぎ、真空下で乾燥した。軸ガスケットも同様に調製し、ただし全抽出時間を8時間とした。
次いで、ガスケットを弁に再び取り付けた。
【0132】
実験I
250mlの丸底フラスコに120mlのエタノール(無水USP等級)を入れた。40個のネックガスケットを溶液中に配置し、凝縮器をフラスコに取り付けた。その後、空気を排除しながら溶液を1.5時間還流加熱した。熱エタノールをデカントし、ガスケットを同一手順を用いて再抽出した。次いで、ガスケットを50mlのエタノール(無水USP等級)で1回洗浄し、丸底フラスコから取り出し、真空中CaSOで乾燥した。軸ガスケットも同様に、ただし8時間抽出した。
次いで、ガスケットを弁に再び取り付けた。
【0133】
実験J
約140,000個のネックガスケットをカラム中に置いた。60℃のエタノールをカラム中に24時間流し、カラムを出たエタノールはカラムに戻す前に蒸留した。軸ガスケットも同様に、ただし8時間抽出した。
次いで、ガスケットを弁に再び取り付けた。
【0134】
対照
弁を未処理のままとした。
【0135】
2.サンプル作製
国際公開第96/32150号パンフレットに記載されているPTFE/PESポリマーブレンドでコーティングされ、上記1に記載したように作製した弁でシールされたアルミニウムキャニスターで、図5〜8にデータを示すMDIを作製した。前記アルミニウムキャニスターは、キシナホ酸塩の形態のサルメテロール(4.2mg)、プロピオン酸フルチカゾン(8.4mg)及びHFA 134a(12g)からなるエアゾール医薬製剤を収容していた。
【0136】
3.サンプル貯蔵条件
各デバイスを逆向き(弁を下に)で40℃/相対湿度75%で貯蔵した。作製した直後(初期)、及び指定時間経過後にFPMを測定した。
【0137】
4.FPMの測定方法
試験する各MDIキャニスターをきれいなアクチュエーター中に入れ、4発を発射することにより準備した。次いで、10発を定量的に洗浄したアンダーセン型カスケードインパクターに発射し、その上に沈着した薬物の量を洗浄液のHPLC分析により定量した。これから、デリバリーされた用量(カスケードインパクター上に沈着した薬物の量の合計)及びFPM(3段、4段及び5段上に沈着した薬物の合計)データを計算した。
【0138】
5.総脂肪酸(FA)の測定方法
脂肪酸を4-ブロモフェニルアセチルブロミドでのプレカラム誘導化を用いて測定し、C18カラム、ACN勾配及び260nmでのUV検出を用いるHPLCにより分析した。
【0139】
6.FPM研究の結果
FPMはプロピオン酸フルチカゾン(FP)について示した。
FAは吸入器中の総脂肪酸含量である。
【0140】
図5に示す対照データと図6〜8に示す本発明のデータの比較は、本発明に従って作製したガスケットを用いるMDIが未処理ガスケットを用いる従来のMDIよりも安定なFPMを示すことを示している。図5〜8のデータは、エアゾール医薬製剤中の全脂肪酸含量と製剤のFPM結果との間に相関関係があることも示している。
【0141】
(実施例5)
1.弁ガスケットの処理
以下の実験で使用した弁はValois(フランス)製MK96弁であった。処理するためにキャップシーリングガスケット(EPDM)を弁から取り外した。
【0142】
実験K
約140,000個のネックガスケットをカラム中に配置した。60℃のエタノールをカラム中に24時間流し、カラムを出たエタノールはカラムに戻す前に蒸留した。
次いで、ガスケットを弁に再び取り付けた。
【0143】
対照
弁を未処理のままとした。対照は比較目的で用意されたものであり、本発明の一部ではない。
【0144】
2.サンプル作製
国際公開第96/32150号パンフレットに記載されているPTFE/PESポリマーブレンドでコーティングされ、上記1に記載したように作製した弁でシールされたアルミニウムキャニスターで、表3及び4にデータを示すMDIを作製した。前記アルミニウムキャニスターは、キシナホ酸塩の形態のサルメテロール(4.2mg)、プロピオン酸フルチカゾン(8.4mg)及びHFA 134a(12g)からなるエアゾール医薬製剤を収容していた。各貯蔵条件について、対照及び実験Kのキャニスターには同一懸濁液から充填した。
【0145】
3.サンプル貯蔵条件
各デバイスを指定条件下で貯蔵した。透過性及び漏れ速度を、初期時点では自然貯蔵で7日間にわたる重量変化から測定し、他の時点では全て貯蔵中の重量変化により測定した。
【0146】
4.透過性測定方法
サンプルを、制御された温度及び相対湿度条件(表に特定する)で指定する時間貯蔵した後、修正カールフィッシャー滴定を用いて水分についてアッセイする。
【0147】
5.漏れ速度の測定方法
サンプルを秤量し、指定条件下で貯蔵する。試験期間終了時に、サンプルを再度秤量し、漏れ速度を初期重量と試験日の重量の差を時間で割って計算し、漏れた噴射剤(mg)/貯蔵年数に正規化する。
【0148】
6.結果
【表3】

【表4】

【0149】
これらのデータは、MDI中でシーリングガスケットとして機能し得るガスケットの物理的特性がネックガスケットのエタノール抽出により悪影響を受けないことを示している。
【0150】
本発明は本明細書中に上記した特定のグループ及び好ましいグループの全ての組み合わせを包含すると理解される。
【0151】
この明細書及び請求の範囲が一部を形成する本出願は後続の出願に対する優先権の基礎として使用され得る。後続の出願の請求の範囲は本明細書に記載されている任意の特徴または特徴の組み合わせを対象とし得る。前記請求の範囲は製品、組成物、方法または使用の請求の範囲の形態をとり得、例として限定することなく本特許請求の範囲を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】弁を下に向けた、MDI容器の弁端部の部分断面図を示す。主要なシーリングガスケットは3で示される缶/ネックシールである。この図はまた下部計量チャンバシール9及び上部計量チャンバシール12も示す。
【図2】弁を下に向けた、代替MDI容器の弁端部の部分断面図を示す。
【図3】プロピオン酸フルチカゾン(FP)について示したFPMである。
【図4】プロピオン酸フルチカゾン(FP)について示したFPMである。
【図5】FPM研究の結果(対照)である。
【図6】FPM研究の結果(実験H)である。
【図7】FPM研究の結果(実験I)である。
【図8】FPM研究の結果(実験J)である。
【符号の説明】
【0153】
1 弁胴
2 フェルール
4 計量チャンバ
5 サンプリングチャンバ
6 スプリング
7 弁軸
9 下部軸シール
12 上部軸シール
14 スリーブ
18 リング
26 オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量噴霧式吸入器中で使用され1以上の抽出性化合物を含む弾性ガスケット材料を、少なくとも40℃の温度である有機溶媒を含む溶液と接触させ、前記弾性ガスケット材料から前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも一部を抽出することを含む、定量噴霧式吸入器中に使用するための弾性ガスケット材料の製造方法。
【請求項2】
弾性ガスケット材料がアクリロニトリルブタジエンゴムからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1以上の抽出性化合物の少なくとも1つがノニルフェノール異性体、2,2’-メチレンビス(6-tertブチル-4-メチルフェノール)、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタ-3-エン、3’-オキシビスプロパニトリル、オレイン酸、パルミチン酸及びステアリン酸からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1以上の抽出性化合物の少なくとも1つが20℃の温度で45torr(6000Pa)以上の蒸気圧を有している請求項1に記載の方法。
【請求項5】
溶液が低級アルコールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶液がさらに酸を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶液が5.5未満のpHを有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶液が2.5〜6.0のpHを有する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
低級アルコールがエタノールまたはイソプロパノールである請求項5に記載の方法。
【請求項10】
溶液が本質的にエタノールからなる請求項5に記載の方法。
【請求項11】
弾性ガスケット材料を溶液と少なくとも1時間接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
弾性ガスケット材料を少なくとも60℃の溶液と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
弾性ガスケット材料を溶液と該溶液の還流条件下で接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
弾性ガスケット材料を溶液と超音波エネルギーの存在下で接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
弾性ガスケット材料を、1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも20%を抽出するのに十分な条件下で溶液と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
弾性ガスケット材料を、1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも40%を抽出するのに十分な条件下で溶液と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
さらに、弾性ガスケット材料を撹拌することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
弾性ガスケット材料を溶液と接触させた後にその弾性ガスケット材料を撹拌する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
さらに、弾性ガスケット材料を撹拌した後にその弾性ガスケット材料を溶液と接触させることを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
定量噴霧式吸入器中で使用するように構成され1以上の抽出性化合物を含む弾性ガスケット材料を、前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの一部を前記弾性ガスケット材料から抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させ、弾性ガスケット材料からシーリングガスケットを形成することを含む、定量噴霧式吸入器中で使用するための弾性シーリングガスケットの作製方法。
【請求項21】
シーリングガスケットを形成した後に弾性ガスケット材料を接触させる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
シーリングガスケットの形成が、シーリングガスケット材料を切断してシーリングガスケットを提供することを含む請求項20に記載の方法。
【請求項23】
シーリングガスケット材料がシート状シーリングガスケット材料の形をしている請求項21に記載の方法。
【請求項24】
シーリングガスケット材料が0.5〜2mmの厚さを有している請求項21に記載の方法。
【請求項25】
1以上の抽出性化合物を含むベースポリマー出発材料を、前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも一部を前記ベースポリマー出発材料から抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させて処理されたポリマー原料を提供し、この処理されたポリマー原料からエラストマーを生成し、このエラストマーからMDIガスケットを形成することを含む、弾性MDIシーリングガスケットの作製方法。
【請求項26】
1以上の抽出性化合物を含むベースポリマー出発材料から生成され、そのベースポリマー出発材料から前記1以上の抽出性化合物の少なくとも1つの少なくとも一部を抽出するのに十分な条件下で有機溶媒を含む溶液と接触させたエラストマー片からMDIガスケットを形成することを含む、弾性MDIシーリングガスケットの作製方法。
【請求項27】
MDI中で使用するための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法により処理したかまたは請求項20〜26のいずれか1項に記載の方法に従って作製したシーリングガスケット。
【請求項28】
弾性ガスケット材料及び0.04〜0.17%のオレイン酸を含む、MDI中で使用するためのシーリングガスケット。
【請求項29】
さらに、0.05〜0.35のパルミチン酸を含む請求項28に記載のシーリングガスケット。
【請求項30】
さらに、0.03〜0.12のエライジン酸を含む請求項28または29に記載のシーリングガスケット。
【請求項31】
さらに、0.06〜0.12のステアリン酸を含む請求項28〜30のいずれかに記載のシーリングガスケット。
【請求項32】
請求項27に記載のMDIシーリングガスケットを用意し、他のMDIの部品及びエアゾール医薬製剤を用意し、MDIを組み立てることを含むMDIの製造方法。
【請求項33】
エアゾール医薬製剤がキシナホ酸サルメテロール、プロピオン酸フルチカゾン、それらの相互の組み合わせまたは1以上の別の薬物との組み合わせを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
弁胴、計量チャンバ、弁軸及び1つ以上の請求項27〜31のいずれか1項に記載のシーリングガスケットを含む、薬物及び噴射剤を含む医薬懸濁液を計量するのに適した計量弁。
【請求項35】
計量弁、及び請求項27〜31のいずれか1項に記載のシーリングガスケットでシールされており、噴射剤及び薬物を含むエアゾール医薬製剤を収容しているキャニスターからなる容器。
【請求項36】
エアゾール医薬製剤が40℃で2週間貯蔵した後に0.7μgの下限値から7.0μgの上限値の間のパルミチン酸を含む請求項35に記載の容器。
【請求項37】
エアゾール医薬製剤が40℃で2週間貯蔵した後に0.7μgの下限値から7.0μgの上限値の間のオレイン酸を含む請求項35または36に記載の容器。
【請求項38】
エアゾール医薬製剤が40℃で2週間貯蔵した後に0.0μgの下限値から0.4μgの上限値の間のエライジン酸を含む請求項35〜37のいずれか1項に記載の容器。
【請求項39】
エアゾール医薬製剤が40℃で2週間貯蔵した後に0.0μgの下限値から0.4μgの上限値の間のステアリン酸を含む請求項35〜38のいずれか1項に記載の容器。
【請求項40】
薬物及び液体噴射剤を含む医薬懸濁液を計量するのに適した計量弁と連通しているキャニスターを有し、前記計量弁及びキャニスターが請求項27〜31のいずれか1項に記載のシーリングガスケットでシールされている定量噴霧式吸入器。
【請求項41】
噴射剤及び薬物を含む医薬懸濁液を収容しており、且つ薬物及び液体噴射剤を含む医薬懸濁液を計量するのに適した計量弁と連通しているキャニスターを含み、前記計量弁及びキャニスターが請求項27〜31のいずれか1項に記載の1つ以上のシーリングガスケットでシールされている医薬品。
【請求項42】
請求項32に記載の定量噴霧式吸入器が可撓性ラッパー内に収容されてなるパッケージであって、前記ラッパーが、噴射剤ガスの排出に対して実質的に透過性であり且つ大気水分の侵入に対して実質的に不透過性の材料からなるパッケージ。
【請求項43】
患者が請求項32に記載の定量噴霧式吸入器を使用することを含む患者における喘息またはCOPDを治療する方法。
【請求項44】
請求項27〜31のいずれか1項に記載のシーリングガスケットを1つ以上含む部品から定量噴霧式吸入器を組み立てることを含む定量噴霧式吸入器医薬製品の貯蔵期限を延長する方法。
【請求項45】
未処理シーリングガスケットを有するMDIよりも高いFPMで分配される医薬エアゾールを提供するためのMDIの製造方法における、請求項27〜31のいずれか1項に記載のシーリングガスケットの使用。
【請求項46】
未処理シーリングガスケットを有するMDIよりも高いFPM貯蔵安定性で分配される医薬エアゾールを提供するためのMDIの製造方法における請求項27〜31のいずれか1項に記載のシーリングガスケットの使用。
【請求項47】
MDIに組み込んだとき未処理シーリングガスケットを有するMDIよりも高いFPMで分配される薬物エアゾールを有するMDIを提供するシールまたはガスケットを与えるための、シールまたはガスケット抽出における純エタノールの使用。
【請求項48】
MDIに組み込んだとき未処理シーリングガスケットを有するMDIよりも高いFPM貯蔵安定性で分配される医薬エアゾールを有するMDIを提供するシールまたはガスケットを与えるための、シールまたはガスケット抽出における純エタノールの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−502170(P2007−502170A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523389(P2006−523389)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/026252
【国際公開番号】WO2005/016410
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】