説明

医薬微粒子

【課題】医薬的有効成分を含む新規微粒子、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】(a)(a1)少なくとも1つの疎水性の生分解性ポリマー、および(a2)必要に応じて少なくとも1つの水溶性ポリマーの混合物を有するマトリックス、(b)マトリックス中に分散された医薬的有効成分、および(c)さらに、マトリックス中に分散されたレシチンおよびリン脂質の群からの少なくとも1つの水不溶性、界面活性物質からなる微粒子、およびそれを製造するための3相乳化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの生分解性ポリマー、必要に応じて少なくとも1つの水溶性ポリマー、およびリン脂質またはレシチンを含有するポリマー中に分散させた少なくとも1つの医薬的有効成分、を含む微粒子、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性ポリマーおよび水溶性ポリマーの混合物を含む微粒子(医薬的有効成分、好ましくはペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含有する)が、US−A−5 869 103により既知である。粒子製造中に、安定剤、例えば、モノステアリン酸ソルビタンまたはモノステアリン酸グリセリルの様な界面活性剤が、有効成分乳濁液または懸濁液の有機相に添加されると、有効成分、特に界面活性タンパク質の好ましくない初期高放出が抑制され得ることが、記載されている。有効成分が生理的媒体と接触して放出されるとき、該界面活性剤は特に迅速に洗い流されるので、微粒子組成が変化する。それゆえ、この界面活性物質は非常に短期間ポリマーマトリックス中にとどまり、そして放出期間中に医薬物質がポリマーマトリックスに吸着する可能性を妨げない。それゆえ、長期間に渡る有効成分の放出は達成されない。
【0003】
Pharmaceutical Research, Vol.14, No. 4, pages 420 to 425 (1997)において、J. L. Clelandは、生分解性ポリマー、例えば、乳酸およびグリコール酸を含む共縮合重合体での組換えヒト成長ホルモンの被覆について記載している。このシステムでは、有効成分の初期高放出のみが減少し、ホルモンの変性の可能性はトレハロースまたはマンニトールの添加により回避される。
【0004】
Biotechnology and Bioengineering , Vol. 65, No. 6, pages 659 to 667 (1999)において、H. K. Tim等は、乳酸およびグリコール酸を含む共縮合重合体中の組換えヒト成長ホルモンの被覆が、最大50%のホルモンを初期に高放出し、そしてその後は有効成分を放出しないシステムを与えることを記載している。M. Morlock等[European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 43 (1997), pages 29-36]およびB. Bittner等[European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 45 (1998), pages 295-305]は、組換えヒトエリスロポエチンが乳酸およびグリコール酸の共縮合重合体中に被覆された場合の同様の挙動について記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pharmaceutical Research, Vol.14, No. 4, pages 420 to 425 (1997)
【非特許文献2】Biotechnology and Bioengineering , Vol. 65, No. 6, pages 659 to 667 (1999)
【非特許文献3】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 43 (1997), pages 29-36
【非特許文献4】European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 45 (1998), pages 295-305
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製造中、および貯蔵および投与中に活性が減少することなく、長期間に渡る有効成分の一定の放出を達成するために、生分解性ポリマー中に医薬的有効成分、特に界面活性ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質を被覆する問題は、未だ満足な方法で解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、レシチンおよびリン脂質の群からの少なくとも1つの水不溶性界面活性物質を微粒子製造用ポリマーと共に用いると、微粒子の表面領域での医薬的有効成分の高濃縮が回避され得ることが分かった。連続的放出は、周囲の生物学的媒体への医薬的有効成分の完全急漏出を見ることなく、少なくとも長期間に渡り続き得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1つの態様において、本発明は、
a)少なくとも1つの生分解性ポリマー、および
b)必要に応じて少なくとも1つの水溶性ポリマー、および
c)該ポリマー中に分散された少なくとも1つの医薬有効成分、
d)該ポリマーはリン脂質またはレシチンを含有する、
を含む微粒子を提供する。
【0009】
微粒子は、イレギュラーな形を有してよく、そして好ましくは本質的に球形である。個々の微粒子の粒子径は、0.1から200μm、好ましくは1から100μm、最も好ましくは1から50μmであり得る。5から80μm、好ましくは30から70μmの範囲の平均粒子径を有する微粒子が好ましい。該粒子の大きさは、例えば、方法パラメーターの調整、および溶媒、ポリマー、および利用されるポリマーの分子量の選択により、コントロールされ得る。
【0010】
製造方法および組成に依存して、該微粒子は緻密でかつ本質的に孔のない粒子、または緻密または多孔性表面を有する多孔性粒子であってもよい。
【0011】
本明細書で用いられる「生分解性ポリマー」は、例えば、生理的媒体中で分解されるポリマーを意味する。加水分解的に分解されるポリマーが基本的にこれに適している。
【0012】
生分解性ポリマーは既知であり、一部市販されている。それらは、例えば、ジカルボン酸、アルキレンジオール、ポリアルキレングリコール、および/または脂肪族ヒドロキシカルボン酸のホモ−またはコポリエステル;ジカルボン酸、アルキレンジアミン、および/または脂肪族アミノカルボン酸のホモ−またはコポリアミド;対応するポリエステル−ポリアミドコポリマー、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、およびポリカーボネートであり得る。適当なジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、そして特に式HOOC−(C2n)−COOH(式中、nは、0、または1から6の数(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、またはアジピン酸)である)の飽和脂肪族酸であり得る。アルキレンジオールは、例えば、HO−(C2x)−OH(式中、xは、1から6の数(エタン−、プロパン−、ブタン−、ペンタン−、またはヘキサンジオール)である)に対応する。ヒドロキシカルボン酸は、式HO−(C2x)−COOH(式中、xは1から6の数(ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸)である)に対応し得る。アミノカルボン酸は、式HN−(C2x)−COOH(式中、xは、1から6の数(アミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノブタン酸、アミノペンタ酸、アミノヘキサン酸)である)に対応し得る。問題のポリアルキレングリコールは、例えば、約2から100、好ましくは2から50のモノマー単位を有するエチレングリコールまたはプロピレングリコールのオリゴマーであり得る。ポリカーボネートは、式−CO−(C2x)−O−(式中、xは、1から6の数である)の繰り返し構造エレメントを含有し得る。ポリマーの分子量は、例えば、500から1,000,000ダルトン、好ましくは1000から500,000ダルトン、最も好ましくは2000から100,000ダルトンであり得る。
【0013】
生分解性ポリマーは直鎖、分枝、および必要に応じて架橋であり得る。本発明により、スターポリマーも用いられ得る。ここでポリマー鎖は、糖類の様な中心モノマーの官能基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、および/またはカルボキシル基)と結合している。該ポリマーは既知であり、一部市販されている。
【0014】
好ましい生分解性ポリマーは、ポリカーボネート、および特に脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはアミノカルボン酸のポリエステルおよびポリアミドからなる群から選択される。α−ヒドロキシカルボン酸、例えば、グリコール酸および乳酸のホモ−および共縮合重合体が特に好ましい。共縮合重合体に対するモノマーの比は、例えば、10:1から1:10、好ましくは1:4から4:1であり得る。特に好ましい縮合重合体は、ポリ−L−またはポリ−D,L−乳酸である。好ましい共縮合重合体は、約1:1のモノマー比および5000から100,000ダルトンの分子量を有するポリ−D,L−ラクチド/グリコリドである。生分解性ポリマーの混合物も用いられ得る。生分解性ポリマーは、本質的に水に不溶性である。
【0015】
水溶性ポリマーは同じく既知であり、市販されている。それらは、例えば、好ましくはエチレンおよび/またはプロピレングリコールのホモ−またはコポリオキサ−アルキレンオキシド、ポリアクリルアミドおよびヒドロキシアルキル化ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸およびその部分エステルまたはアミド、ポリアクリル酸およびその部分エステルまたはアミド、ポリビニルアルコールおよびその部分エステルまたはエーテル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、および天然ポリマー、例えば、でんぷんまたはキトサンであり得る。ポリビニルピロリドンが好ましい。水溶性ポリマーは、1000から500,000ダルトン、好ましくは1000から100,000ダルトン、最も好ましくは1000から20,000ダルトンの分子量を有し得る。水溶性ポリマーの混合物も用いられ得る。水溶性ポリマーは、有機溶媒にも可溶性である。
【0016】
ポリマーの組成物に対して、生分解性ポリマーの量は、例えば、99から1重量%、好ましくは90から50重量%であり、そして水溶性ポリマーの量は、1から99重量%、好ましくは10から50重量%であり得る。
【0017】
微粒子は、レシチンおよびリン脂質の群からの少なくとも1つの水不溶性界面活性剤を含有し、この添加により、有効成分が、全放出期間中、ポリマーマトリックスへの吸着から確実に保護される。この作用により、本発明は、有効成分の延長放出を伴う微粒子を提供する。レシチンおよびリン脂質は既知であり、市販されている。該界面活性剤は、卵または大豆の様な天然産物から抽出され得る。ここでのレシチンは天然のものであり、部分水素化、および水素化レシチンまたはスフィンゴリピドである。天然のレシチンは、異なるリン脂質の混合物である。リン脂質の例は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジン酸、およびホスファチジルセリン、ならびにそれらの部分的または完全水素化誘導体である。一定の脂肪酸を有するリン脂質の例は、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−グリセリン、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−グリセリン、および1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−グリセリンである。好ましくは、レシチンおよびホスファチジルコリンが用いられる。
【0018】
レシチンおよび/またはリン脂質の量は、全微粒子組成物に対して、0.01から90重量%、好ましくは0.1から70重量%、最も好ましくは0.1から20重量%であり得る。レシチンおよびリン脂質は本質的に、微粒子容量の至るところに均等に分散される。レシチンまたはリン脂質は、ポリマー溶液の溶媒中に部分的にのみ溶解性であるかまたは不溶性である限り、ポリマー溶液における該物質の分散液の形成は、本発明による効果を達成するのに十分であろう。
【0019】
医薬的有効成分は一般的に、製造条件下で安定なものである。水溶性有効成分が好ましい。本発明により、ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質、特にその界面活性特性のため微粒子の表面に接着し、凝集塊(agglomerates)の形成を起こすものが好ましい。さらなる例は、炭水化物、オリゴヌクレオチド、RNA、およびDNAである。ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質のいくつかの例としては、抗体、成長ホルモン、インシュリン、インターフェロン、エリスロポエチン、カルシトニン、ヘパリン、ソマトスタチン、細胞刺激因子、および副甲状腺ホルモンがある。水溶液は、バッファーおよび電解質、例えば、NaClを含有してもよい。インターフェロンの例は、αグループのインターフェロン、好ましくはインターフェロンα2aまたはα2b、最も好ましくはインターフェロンα2bである。
【0020】
微粒子中の有効成分の量は、微粒子の重量に対して、0.1から90重量%、好ましくは1から70重量%、最も好ましくは1から20重量%であり得る。
【0021】
微粒子の製造方法はそれ自体既知であり、適切な文献に記載されている。本発明により、水不溶性かつ界面活性物質がポリマー溶液中に添加され、これにより、被覆中の医薬的有効成分の最適保護、および微粒子のポリマー中の該物質の良好な分散が提供される。
【0022】
粒子は、例えば、少なくとも1つの界面活性物質を含有するポリマー溶液中に、固体有効成分を分散させ、または液体有効成分または有効成分を生理的に受け入れ可能な溶媒中に溶かした溶液を乳化させること、および続いて該溶媒を取り除くことにより製造され得る。蒸発は、粒子を形成するために高速攪拌で行われてもよい。スプレー乾燥法を行うことは好都合である。
【0023】
微粒子は、溶媒(該溶媒にポリマーは不溶性である)の添加によりポリマーを高速攪拌で沈殿させ、これにより、医薬的有効成分または有効成分の溶液を形成微粒子のポリマー中に包含させることでも製造され得る。
【0024】
別の態様において、本発明は、ポリマー前駆体(例えば、モノマーおよび/またはプレポリマー)からポリマーを、有効成分の分散液または乳濁液中で、またはポリマー前駆体を含む有効成分溶液中で、高速攪拌で形成して、微粒子を製造する方法を提供する。分散または乳化医薬有効成分がこれにより被覆され、そしてポリマーを分離させることで沈殿させられる。
【0025】
本発明のさらなる態様において、微粒子は、水溶液および有機媒体の複数相システムにおけるポリマー分離による被覆を用いることで形成してよく、これも同様に既知である。例えば、有機ポリマー溶液において、有効成分の水溶液、分散液、または乳濁液を乳化すること、次いでこの乳濁液を水に乳化すること、そして該溶媒を取り除くことで微粒子を形成することが可能である。または、有機溶媒中の有効成分の溶液、分散液、または乳濁液を水中で乳化し、続いて該乳濁液を有機ポリマー溶液中で乳化させ、そしてその後該ポリマーを、ポリマー溶液と混和しない溶媒を添加することで沈殿させる。
【0026】
水不溶性かつ界面活性の物質がここでポリマー溶液に添加され、これにより微粒子のポリマー中に該物質が良好に分散し、被覆中に有効成分の最適保護を提供する。
【0027】
水溶性医薬的有効成分、および特に水溶性、必要に応じて界面活性ペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質が、好ましくは、被覆用の水性組成物として用いられ、これにより、3相システムにおいて微粒子を形成することが特に有利である。
【0028】
本発明のさらなる対象は、微粒子の製造方法であり、これは、
a)水溶液、例えば、少なくとも1つの医薬的有効成分のリン酸緩衝液を製造すること、
b)生分解性ポリマー、および必要に応じて水溶性ポリマー、ならびに界面活性物質、例えば、リン脂質またはレシチンの、水に不溶性の有機溶媒、例えば、塩化メチレン溶液を製造すること、
c)水溶液を形成するために、界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコールをリン酸緩衝液と混合すること、
d)乳濁液を形成するためにギアポンプを用いて、溶液a)とb)を混合すること、
e)乳濁液d)と水溶液c)をギアポンプでスタティックミキサーまで移送すること、および水中油中水型乳濁液を形成するためにスタティックミキサー中でそれらを混合すること、
f)乳濁液e)から、例えば、蒸発させることにより溶媒を取り除くこと、
g)沈殿(必要に応じて濾過)により微粒子を分離すること、および凍結乾燥すること、
の段階を含む。
【0029】
医薬的有効成分の溶解性、およびその所望の用量に依存して、段階a)の水溶液は、該水溶液に対して、0.01から80重量%、好ましくは0.1から60重量%、最も好ましくは0.1から30重量%の医薬的有効成分を含有し得る。該溶液は、安定化剤および/または水溶性増粘剤を含有してもよい。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が用いられる場合、pHバッファー、例えば、リン酸緩衝液を添加することは好都合である。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の場合、保護剤、例えば、グリシンまたは糖を添加することも利点がある。該成分を、必要に応じて加熱しながら攪拌することで、混合し、溶解させてよい。次段階での使用前に不溶性成分を濾去できる。
【0030】
ポリマーおよび界面活性物質は、必要に応じて加熱しながら攪拌することにより都合良く溶解される。次段階での使用前に不溶性成分を濾去する。溶液中の生分解性ポリマーの量は、例えば、1から60重量%、好ましくは0から50重量%であってよく、水溶性ポリマーの量は、0から50重量%、および界面活性物質の量は、1から80重量%、好ましくは2から40重量%であり、これらにより、重量%は合計100重量%となるようにする。水と混合不可能な適当な溶媒は、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、およびケトンである。好ましい溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えば、クロロホルム、三塩化または四塩化エタン、および特に二塩化メチレンである。
【0031】
ポリマー溶液中の有効成分溶液(a)と界面活性物質(b)の乳濁液を形成するために、該溶液は高速攪拌で混合される。溶液b)に対する溶液a)の容量比は、例えば、1:1から1:50、好ましくは1:2から1:10であり得る。我々は、この乳濁液形成段階が、ギアポンプを用いることによる特に好都合な方法で行われ得ることを見出した。
【0032】
ギアポンプ技術はよく知られている。ロータリーギアポンプは、かみ合ったギアを利用し得る。ギアポンプは、移送装置として1組のギアを利用する正移送ポンプである。流体ポンプは、例えば、らせん状ギア(角度のある歯)、拍車状ギア(直線状の歯)、またはやまば歯車を有し得る。
【0033】
典型的なギアポンプは、駆動ギア、およびポンプチャンバーに収納された被駆動ギアを含む、少なくとも2個、時として少なくとも3個のギアを含む。その静かな操作、圧力効力、機械的動作の連携、ギアのかみ合い側面間の表面の定常的封入、および歯の間の流体の最小取り込みのため、ギアポンプは本発明者に好まれている。該ギアポンプは、高負荷運転容量を有し、スムーズに作動し得る。
【0034】
ギアポンプはキャビティー(cavity)技術を利用し得る。かかるギアポンプは、典型的には、吸入口、液体流路、および排出口を有するハウジングからなる。ハウジングの中にギアキャビティーがあり、その中でギアはかみ合い、そして回転する。液体は、ギアのかみ合い部の近くでかつギア歯のかみ合いが離れる側で、ギアキャビティーに入る。液体がギアキャビティーに入ると、それはギア歯とギアキャビティー壁面との間に引き込まれ、ギア歯がかみ合うポイントに至るまで、ギアキャビティー周辺に沿って移動する。この動きが、液体吸入口と液体排出口間の圧力差を形成し、液体の流れを生じる。
【0035】
該ギアは歯で互いにかみ合い、乳濁液を形成するための強い局所剪断力を生じる。該ギアポンプは、タンパク質およびペプチドの様な繊細な有効成分の安定性に有害な気体/液体境界面を生じることなく、密閉されたチャンバー内において剪断力を生じるために好ましいポンプである。
【0036】
好ましくは、磁気駆動を有するポンプが微粒子の無菌製造のために用いられる。ポンプヘッドは駆動ポンプと結合されており、滅菌のために容易に取り外され得る。磁気駆動ポンプは、モーターにより回されるかまたは回転される外側輪状磁石を有し得る。内側輪状磁石は外側輪状磁石内に位置してよく、ポンプ軸に運ばれ得る。該内側輪状磁石は、薄い金属製またはプラスチック製カップにより外側輪状磁石と分離され得る。該ポンプの内側輪状磁石は、ポンプによるシステムによって移送される液体中で作動する、磁石および環状流路アセンブリーを含み得る。
【0037】
ギアポンプは、米国特許番号第4,127,365号に示される種類の吸引シューを有してよく、該吸引シューの端が各ギアの溝に合い、溝に対向して位置している。該シューは、ギアブロック(シューで覆われている)における液体吸入口管から、ギア歯のかみ合い点に至る通路を形成し得る。該シューは、ギアのかみ合い点を覆い、かつ少なくともそのいずれかの側の2歯間分の幅に合っていてよく、また吸入口管を覆い、従ってポンプキャビティー内の小ポンプチャンバーを確立するために、主要ポンプキャビティーから該領域を独立させている。ポンプが作動しているときの、主要ポンプキャビティー内よりシューの下側でより低くなる圧力差が存在するため、シューがポンプブロックに対して維持される。シューは、液体の流れを受け入れる際に、解放圧から吸入口管を隔離する。
【0038】
磁気駆動を用いる該ギアポンプ技術は、例えば、USP 4414523および6007312に記載されている。該ギアポンプは、例えば、USP 4846641、4414523、5702234、5908067、4493625、6007312、および6033193に記載されている。これらの特許明細書の内容は、引用により本明細書に取り込まれる。
【0039】
該ポンプは、例えば、Ismatec AG, GermanyまたはAllschwil, Basel Switzerlandから得られるMicropump Ismatex brandであり得る。典型的なモデルはIP65である。
【0040】
典型的な流速は、例えば、約1ml/分から約12000ml/分、例えば、300ml/分であり得る。
典型的な駆動速度は、例えば、約60rpmから約6000rpm、例えば、3000rpmであり得る。
典型的な圧力差は、例えば、約0.1から約5.2bar(75psi)であり得る。
【0041】
本発明は、乳濁液を形成するためにギアポンプの予想外の使用を提供する。該ギアポンプを用いることで、乳濁液は無菌環境下で形成され得る。
【0042】
乳濁液(d)は、続いて、水中油中水型乳濁液を形成するために、高速攪拌で水溶液(c)と混合される。該水溶液は、安定剤、例えば、ポリビニルアルコールまたはゼラチン、およびバッファーを含有してもよい。安定剤の量は、安定剤水溶液に対して、0.01から20重量%、好ましくは0.01から10重量%であり得る。有利には、該乳化段階はスタティックミキサーを用いて行われる。
【0043】
スタティックミキサー、例えば、スタティック層流混合装置(static laminar mixing device)を用いることで、均質化はミキサーを通した流れにより達成され得る。一般的に、該装置は、いわゆるスタティックミキサーエレメントで構成されている。該エレメントは、液体の流れを乱し、そしてそれらを混合するためのものであり得る。剪断力は、ミキサーエレメントの数および種類により、およびスタティックミキサーを通る液体の流れにより決定され得る。
【0044】
該層流ミキサーは、高粘性液体への低粘性の溶解性添加剤の混合用装置で用いられ得る。混合中、低粘性(透明)液体が、高粘性(粘着性)液体の主流に、例えば、ミキサーの吸入口の前または直接吸入口に配置され得る管を経由して、送られ得る。
【0045】
我々は、スタティックミキサーを用いることで、制御され、予測可能でかつ狭い粒子経分散を有する乳濁液および微粒子を得ることができることを見出した。
液体の流れに必要なエネルギーは、ポンプなどで生成され得る。
典型的なミキサーは、Sulzer AG, Winterthur, Switzerlandから入手可能なSulzerミキサーSMXS DN6である。
【0046】
有機溶媒を含有している第1の液体(例えば、内部相)の典型的な流速は、例えば、約1ml/分から約12000ml/分、例えば、20ml/分であり得る。
水を含有している第2の液体(例えば、連続相)の典型的な流速は、例えば、約1ml/分から約12000ml/分、例えば、400ml/分であり得る。
典型的な圧力低下は、例えば、約0.1から約5.2bar(75psi)であり得る。
【0047】
段階b)からf)は、好ましくは室温で行われる。
有機溶媒の除去は、さらなる攪拌で、および真空を適用して有利に行われる。加熱は、最高約60℃の温度を意味する。
【0048】
微粒子は、必要に応じて洗浄されて精製(有機溶媒、およびポリビニルアルコールまたはゼラチンの様な界面活性剤を除去すること)され、続いて沈殿または必要に応じて濾過により分離され、そして乾燥させて、水およびすべての残留溶媒を除去し得る。既知の凍結乾燥方法は、これに特に適した方法である。
【0049】
段階f)は、クロス−フロー濾過で置き換えてもよい。クロス−フロー濾過は、膜、例えば、ポリマー膜(ポリエーテルスルホンPall膜Omega型)、例えば、セラミック膜、例えば、中空糸、または例えば、らせん巻き(spiral wound)システムに接する方向での微粒子懸濁液の循環を行う。該膜の孔の大きさは、精密濾過用に0.1から1μm、好ましくは0.8μmであり得る。限外濾過用には、100から1,000,000ダルトンの範囲の分子量カットオフ値を有する膜が用いられる。有機溶媒、および例えば、ポリビニルアルコール、または例えば、ゼラチンの様な界面活性剤が除去されるまで、懸濁液は再循環される。微粒子は沈殿により、または濾過により集められ得る。
【0050】
我々は、そこから制御され、予測可能でかつ狭い粒子経分散を有する微粒子を得ることができることを見出した。
膜に接する方向での典型的な流速は、例えば、約1ml/分から約100,000ml/分、例えば、15,000ml/分である。
典型的な圧力低下は、例えば、約0.01から5barであり得る。
【0051】
乾燥後、微粒子は、取り扱いが容易で、その後の加工に適し得る、流動性粉剤の形で得られる。該微粒子は本質的に凝集塊を含まない。
該微粒子は、増量剤(例えば、マンニトールまたはスクロース)含有水溶液に再懸濁され得る。該懸濁液は凍結乾燥され、有利な貯蔵特性を有する凍結乾燥微粒子を得ることができる。
【0052】
微粒子の構造は主に、製造方法、有効成分またはその溶液の濃度、およびポリマーまたはポリマー混合物の選択に依存する。
【0053】
ポリマー溶液中に分散された固体有効成分、および有効成分の被覆は、ほとんど孔がないか全くない、特に緻密な粒子を与える。生理的媒体と接触したときの有効成分の放出は、この種の微粒子の場合、該ポリマーの崩壊によって決定される。有孔構造は水溶性ポリマーの溶解によって形成され得るため、放出は水溶性ポリマーを添加することで増進される。次いで、界面活性物質が有効成分を保護するので、有効成分の放出遅延が保証され続ける。
【0054】
水中油中水型方法を用いて、有効成分含有水溶液をポリマー溶液中で乳化する。乾燥後、該1次乳濁液の液滴中に含有される水が除去され、続いて先の液滴が乾燥ポリマーマトリックス中に空洞を形成する。該空洞は、全体に無作意に分散される。全体に分散された空洞の大きさは、粒子の大きさ、方法のパラメーター、選択されたポリマー、組成物の量、および界面活性物質の種類および量に依存する。空洞の直径は、微粒子の大きさに依存して、例えば、0.01から100μmであり得る。空洞は、少なくとも1つの医薬的有効成分の水溶液、溶液で部分的または全体的に満たされている。特に水溶性ポリマーが製造中に一緒に用いられている場合、または有効成分の溶液、乳濁液、および分散液が表面領域で完全には被覆されていない場合、微粒子は表面領域に孔を有し得る。
【0055】
本発明による微粒子は、生理的媒体中での医薬的有効成分の遅延放出(delayed release)作用で注目に値する。たとえ、界面活性ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が用いられる場合でも、初期過剰放出(初期破裂(initial burst)とも言う)、および続いての有効成分の放出である完全崩壊は観察されない。特に用いられるポリマーおよびその量に依存して、有効成分の、例えば血漿中での遅延放出は、粒子中の医薬的有効成分が使い果たされるまで、数日から最大12ヶ月まで維持され得る。第1および第2段階において、有効成分の放出は本質的に一定であり得て、これにより、第1段階においてより大量、例えば、有効成分の全量の10から70%がより短時間で送達される。組成物の種類、および粒子中の有効成分の量で、単回または多回投与での長期作用を満足する最適用量が設定され得る。例えば、スターポリマーのポリ−D,L−ラクチド/グリコリドを用いることで、有効成分の放出は数日から最大8週間続き得る。スターポリマーのポリ−D,L−ラクチド/グリコリドをインターフェロンα2bと共に用いることで、本発明は少なくとも21日間に渡る好ましい放出特性を提供する。有効成分の10%から60%は2から5日目に放出され、そして残りの有効成分は少なくとも21日間持続する。
【0056】
微粒子が生分解性ポリマー中にレシチンまたはリン脂質を含有しない場合、本発明の微粒子と異なって、初期破裂期の後、有効成分の送達は行われない。水溶性ポリマーが、生分解性ポリマーおよびレシチンまたはリン脂質からなるポリマーマトリックス中にさらに混和される場合、ポリマーマトリックス中に孔がさらに生じるせいで、活性物質がより速く放出される。従って、放出期間が短くなり、放出過程は本質的に拡散には基づくが、拡散とポリマー分散との組合せには基づかなくなる。
【0057】
本発明により微粒子は、経口投与用の固体、ペースト状、および液体製剤(錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、内服液剤、または懸濁剤)、非経腸用(懸濁剤での静脈内または筋肉内投与用シリンジ)、直腸または膣投与用座剤、吸入による投与用噴霧剤、粉剤、クリーム剤、ゲル剤、および皮下投与用の経皮システム、および鼻または眼用投与用滴剤に適している。
【0058】
以下は、例示目的の非限定的な記載である。
A)製造例
実施例A1:微粒子の製造
a)有効成分溶液の製造
組換えヒトインターフェロンα2b216.36mgおよびグリシン43.27mgを、リン酸緩衝液(pH7.5、25mM リン酸水素カリウムおよびナトリウム、130mM NaCl、0.3mM エチレンジアミンテトラ酢酸)3mlに溶解する。
【0059】
b)ポリマー溶液の製造
D,L−乳酸およびグリコール酸(50:50)の共縮合重合体2561.5mg、ポリビニルピロリドン(PVP K12)640.4mg、およびレシチン(Epikuron[登録商標]200)865.4mgを、塩化メチレン20mlに溶解する。
【0060】
c)水相の製造
リン酸緩衝液(1/15M、pH7.4、7.24g KHPO、および30.28g NaHPO)中のポリビニルアルコール(PVA Mowiol[登録商標]18−88)40gを水4Lに20℃で溶解する。
【0061】
d)1次乳濁液の製造
溶液a)およびb)を、270ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP1830)を用いて、200rpmで、10分間乳化する。
【0062】
e)微粒子の製造
1次乳濁液を、20ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP1830)により、200rpmでポンプ処理し、そして水相を、混合容器(Statischemischer[登録商標]SMXS DN6)中で575rpmおよび400ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP130)により、200rpmでポンプ処理する。
【0063】
f)塩化メチレンを攪拌しながら蒸発させる。
g)微粒子を濾取し、真空乾燥し、そしてこの一次乾燥した微粒子を凍結乾燥する。平均直径60〜70μmの微粒子からなる流動性粉剤を得る。
【0064】
実施例A2:微粒子の製造
実施例A1の方法を、次の溶液を用いて行う:
a)有効成分溶液の製造
組換えヒトインターフェロンα2b216.36mgおよびグリシン43.27mgを、リン酸緩衝液(pH7.5、25mM リン酸水素カリウムおよびナトリウム、130mM NaCl、0.3mM エチレンジアミンテトラ酢酸)2mlに溶解する。
【0065】
b)ポリマー溶液の製造
D,L−乳酸およびグリコール酸(50:50)の共縮合重合体2134.6mg、ポリビニルピロリドン(PVP K12)1067.3mg、およびレシチン(Epikuron[登録商標]200)865.4mgを、塩化メチレン20mlに溶解する。
【0066】
c)水相の製造
リン酸緩衝液(1/15M、pH7.4、7.24g KHPO、および30.28g NaHPO)中のポリビニルアルコール(PVA Mowiol[登録商標]18−88)40gを、水4Lに20℃で溶解する。
【0067】
実施例A1に記載の段階dからgを行う。
平均直径60〜70μmの微粒子を含む流動性粉剤を得る。
【0068】
実施例A3:微粒子の製造
実施例A1の方法を、次の溶液を用いて行う:
a)有効成分溶液の製造
組換えヒトインターフェロンα2b50.6mgおよびグリシン10.12mgを、リン酸緩衝液(pH7.5、25mM リン酸水素カリウムおよびナトリウム、130mM NaCl、0.3mM エチレンジアミンテトラ酢酸)3mlに溶解する。
【0069】
b)ポリマー溶液の製造
D,L−乳酸およびグリコール酸(50:50)共縮合重合体2000mg、ポリビニルピロリドン(PVP K12)2000mg、およびレシチン(Epikuron[登録商標]200)1000mgを、塩化メチレン20mlに溶解する。
【0070】
c)水相の製造
リン酸緩衝液(1/15M、pH7.4、7.24g KHPO、および30.28g NaHPO)中のポリビニルアルコール(PVA Mowiol[登録商標]18−88)40gを、水4Lに20℃で溶解する。
実施例A1に記載の段階dからgを行う。
平均直径60〜70μmの微粒子を含む流動性粉剤を得る。
【0071】
実施例A4:微粒子の製造:水溶液外相の浸透圧の調整
a)有効成分溶液の製造
組換えヒトインターフェロンα2b216.36mgおよびグリシン43.27mgを、リン酸緩衝液(pH7.5、25mM リン酸水素カリウムおよびナトリウム、130mM NaCl、0.3mM エチレンジアミンテトラ酢酸)3mlに溶解する。
【0072】
b)ポリマー溶液の製造
D,L−乳酸およびグリコール酸(50:50)の共縮合重合体2561.5mg、ポリビニルピロリドン(PVP K12)640.4mg、およびレシチン(Epikuron[登録商標]200)865.4mgを、塩化メチレン20mlに溶解する。
【0073】
c)水相の製造
リン酸緩衝液(1/15M、pH7.4、7.24g KHPO、および30.28g NaHPO)中のポリビニルアルコール(PVA Mowiol[登録商標]18−88)40gを、水4Lに20℃で溶解する。続いて、該溶液の浸透圧を、約600mOsmのタンパク質水溶液a)の浸透圧に調整する。
【0074】
d)1次乳濁液の製造
溶液a)およびb)を、270ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP1830)を用いて、200rpmで、10分間乳化する。
【0075】
e)微粒子の製造
1次乳濁液を、20ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP1830)により、200rpmでポンプ処理し、そして水相を、混合容器(Statischemischer[登録商標]SMXS DN6)中で、400ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP130)により、575rpmでポンプ処理する。
【0076】
f)塩化メチレンを攪拌しながら蒸発させる。
g)微粒子を、沈殿/上清の吸引/新しい水の添加の別サイクルを用いることで、洗浄し(フィルター上での濾過および洗浄が代わりとなる)、洗浄微粒子を、濾過後の粉末または懸濁液として凍結乾燥し得る。平均直径60〜70μmの微粒子からなる流動性粉剤を得る。洗浄および凍結乾燥のため、該微粒子を緩衝溶液中に懸濁し、懸濁液としてバイアルに充填し、凍結乾燥する。該緩衝溶液が水溶液c)のために用いる溶液であり、ポリビニルアルコールまたは他の界面活性物質なしで用いられる:
リン酸緩衝液(1/15M、pH7.4、7.24g KHPO、および30.28g NaHPO)を、4Lの水で20℃で製造する。続いて、該溶液の浸透圧を、マンニトールで約600mOsmのタンパク質水溶液a)の浸透圧に調整する。
【0077】
実施例A5:微粒子の製造:微粒子懸濁液を洗浄するためのクロス−フロー濾過技術の使用
a)有効成分溶液の製造
組換えヒトインターフェロンα2b216.36mgおよびグリシン43.27mgを、リン酸緩衝液(pH7.5、25mM リン酸水素カリウムおよびナトリウム、130mM NaCl、0.3mM エチレンジアミンテトラ酢酸)3mlに溶解する。
【0078】
b)ポリマー溶液の製造
D,L−乳酸およびグリコール酸(50:50)の共縮合重合体2561.5mg、ポリビニルピロリドン(PVP K12)640.4mg、およびレシチン(Epikuron[登録商標]200)865.4mgを、塩化メチレン20mlに溶解する。
【0079】
c)水相の製造
リン酸緩衝液(1/15M、pH7.4、7.24g KHPO、および30.28g NaHPO)中のポリビニルアルコール(PVA Mowiol[登録商標]18−88)40gを、水4Lに20℃で溶解する。
【0080】
d)1次乳濁液の製造
溶液a)およびb)を、270ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP1830)を用いて、200rpmで、20分間乳化する。
【0081】
e)微粒子の製造
1次乳濁液を、20ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP1830)により200rpmで、ポンプ処理し、そして水相を、混合容器(Statischemischer[登録商標]SMXS DN6)において、400ml/分のポンプ能力のギアポンプ(Ismatec[登録商標]MCP−Z、ポンプヘッドP130)により575rpmで、ポンプ処理する。
【0082】
f)続いて、タンク中に回収した全微粒子懸濁液を、クロス−フロー濾過技術により洗浄し、水溶液外相c)に含有された塩化メチレン、および全ての塩、および添加物を取り除く:該微粒子懸濁液をループに移送し、0.8μm孔径のポリマー膜、例えば、低結合特性のポリエーテルスルホン、または例えば、セラミック膜の膜に接する方向で循環させる。塩化メチレン、塩、および添加物を、クロス−フロー濾過のダイアフィルトレーション方法により、膜を介して取り除く。それらを濾過し、通過物として取り除く一方で、膜を通りぬけることができない微粒子が、懸濁液中にとどまり、保留物(retentat)としてループに戻ってくる。通過物と共に取り除かれる塩化メチレン、塩、およびPVAの様な添加物含有水を、初期微粒子懸濁液の容量を一定のレベルで保つために、新しい水で連続して置き換える。
【0083】
g)微粒子を濾取し、真空乾燥し、そして一次乾燥した微粒子を凍結乾燥する。該微粒子懸濁液を懸濁液としてバイアルに充填し、凍結乾燥する。平均直径60〜70μmの微粒子からなる流動性粉剤を得る。
【0084】
B)適用例
実施例B1:試験管内での薬剤放出
実施例A1による微粒子50mgを、リン酸緩衝液(pH7.4、1/15M、pH7.4、7.24g KHPO、および30.28g NaHPO)に添加し、そして該混合物を37℃で維持する。続いて、一定の間隔で、リン酸緩衝液中のインターフェロンα2b量を測定する。結果を表1に挙げる。
【0085】
表1
【表1】

【0086】
実施例B2
実施例A2による微粒子で実施例B1の方法を行う。結果を表2に挙げる。
【0087】
表2
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの生分解性ポリマー、および
b)必要に応じて少なくとも1つの水溶性ポリマー、および
c)該ポリマーに分散された少なくとも1つの医薬的有効成分、
d)該ポリマーはリン脂質またはレシチンを含有する、
を含む微粒子。
【請求項2】
リン脂質またはレシチンの量が、最終微粒子重量の約0.01から約90重量%、好ましくは約0.1から約70重量%、最も好ましくは約0.1から約20重量%である、請求項1に記載の微粒子。
【請求項3】
0.1から200μmの直径を有する、請求項1に記載の微粒子。
【請求項4】
生分解性ポリマーが、ジカルボン酸、アルキレンジオール、ポリアルキレングリコールおよび/または脂肪族ヒドロキシカルボン酸のホモ−またはコポリエステル;ジカルボン酸、アルキレンジアミンおよび/または脂肪族アミノカルボン酸のホモ−またはコポリアミド;対応するポリエステル−ポリアミドコポリマー;ポリアンヒドリド;ポリオルトエステル;ポリホスファゼン;およびポリカーボネートを含む、請求項1に記載の微粒子。
【請求項5】
ポリマーが、約1:1のモノマー比および5000から100,000ダルトンの分子量を有する、ポリ−L−またはポリ−D,L−乳酸、またはポリ−D,L−ラクチド/グリコリドである、請求項4に記載の微粒子。
【請求項6】
必要に応じて少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む、請求項5に記載の微粒子。
【請求項7】
水溶性ポリマーがポリビニルピロリドンである、請求項6に記載の微粒子。
【請求項8】
ポリマー組成物に対して、生分解性ポリマーの量が99から1重量%、および水溶性ポリマーの量が1から99重量%である、請求項1に記載の微粒子。
【請求項9】
リン脂質がホスファチジルコリンである、請求項1に記載の微粒子。
【請求項10】
有効成分がペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質である、請求項1に記載の微粒子。
【請求項11】
有効成分が、抗体、成長ホルモン、インシュリン、インターフェロン、エリスロポエチン、カルシトニン、ヘパリン、ソマトスタチン、細胞刺激因子、および副甲状腺ホルモンである、請求項10に記載の微粒子。
【請求項12】
インターフェロンがインターフェロンα2bである、請求項11に記載の微粒子。
【請求項13】
微粒子の重量に対して、1から20重量%の有効成分を含有する、請求項1に記載の微粒子。
【請求項14】
a)リン酸緩衝液中に有効成分を溶解すること、
b)塩化メチレン中に生分解性ポリマーおよびリン脂質を溶解すること、
c)水溶液を形成するために、界面活性剤をリン酸緩衝液と混合すること、
d)乳濁液を形成するために、溶液a)とb)をギアポンプを用いて混合すること、
e)乳濁液d)と水溶液c)をギアポンプでスタティックミキサーまで移送すること、および水中油中水型乳濁液を形成するためにスタティックミキサー中でそれらを混合すること、
f)乳濁液e)から、例えば蒸発させることにより溶媒を取り除くこと、
g)濾過により微粒子を分離すること、および凍結乾燥すること、
の段階を含む、微粒子製造方法。
【請求項15】
a)乳濁液e)を、膜、例えばポリマー膜、例えばセラミック膜、例えば中空糸、または例えばらせん巻きシステムに接する向きで、一定の流れで循環させること(ここで塩化メチレン、塩、および添加物が膜を介して取り除かれる)、
b)膜を介して取り除かれた水を新しい水で置き換えること、
c)濾過により微粒子を分離すること、および凍結乾燥すること、
によるクロス濾過技術を用いて、溶媒が微粒子から取り除かれる、請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2010−248271(P2010−248271A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177655(P2010−177655)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2003−574167(P2003−574167)の分割
【原出願日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】