説明

医薬用カプセル

【課題】偽造防止が困難な医薬用カプセルを提供すること。
【解決手段】薬剤を充填するための医薬用カプセル1であって、医薬用カプセルに特定の塩基配列をコードするポリヌクレオチドが含有されている。また、前記ポリヌクレオチドは、天然または合成起源のDNAまたはRNAであること、医薬用カプセルの嵌合部に貼付される封止帯5に含有されていること、医薬用カプセルに設けられるホログラムパターンに含まれること、また、前記ホログラムパターンが医薬用カプセルの内面に形成されていることなどを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬用カプセルに関するものである。詳しく述べると本発明は、医薬製剤の偽造、変造を有効に阻止することの可能な医薬用カプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、ITの進展や物流技術の拡大に伴い、情報や物の物流グローバル化が一層進展している。物流グローバル化は、医薬業界についても例外ではなく未承認の医薬品等を海外からインターネット等を利用して取り寄せ、又は外国の旅行先で購入して持ち帰る等(いわゆる個人輸入)の取引が活発に行われている。
【0003】
個人輸入による取引は簡単に医薬品等を取得することができる利便性があるものの、個人輸入によって取引される医薬品には日本国内で薬事法を遵守して販売等されている医薬品(真正品)と外観(カプセル形状等)の見分けが困難な「偽薬」も多く取引されているのも現状である。取得した医薬品が「偽薬」であっても、その成分が真正品とほぼ同一である場合や、あらゆる疾患に対して無害な成分(例えば、小麦粉や澱粉などの食品粉末)である場合には保健衛生上の危険性(リスク)はないか、または少ないと考えられる。一方で、「偽薬」に人体に影響がある成分や特定の疾患に対する禁忌成分が含まれている場合には、最悪の場合死亡に至るケースにつながってしまうことも考えられ、真正品を取り扱う製薬メーカーにとって大きな脅威となっている。このとき、服用した薬が薬を収容するパッケージ(ブリスターパック等)に残っている場合には、残った薬を分析調査することでその原因を特定することが可能であるが、「真正品」と「偽物」との比較が分析調査を行わなければ見分けがつかない場合には個人輸入により医薬品を購入した購入者は自ら「真正品」か「偽物」かの見分けをつけることができず、服用した結果重大な健康被害を引き起こす場合も生ずる。
【0004】
このような状況下、製薬メーカーは分析を行うことなく「真正品」と「偽薬」との見分けをつけることができるように、医薬用カプセルの外表面にホログラム画像情報を有する微起状を設けることによる偽造防止対策を施し(例えば、特許文献1)、その識別方法を公開し注意喚起をしたり、薬を収容するパッケージ等を不定期にモデルチェンジしたりすることで、「偽薬」の取引を防止する試みを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−506415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら「偽薬」を製造する製造業者は、モデルチェンジ後の容器に変更し、また公開された識別方法によって見分けがつかないように製薬メーカーが施した偽造防止対策と同様の修正を行うことで「偽薬」を容易に製造し市場に再度流通させてしまうことから、「真正品」の偽造を防止できるほどの決定的な解決には至っていない。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、医薬製剤の偽造、変造を有効に阻止することの可能な医薬用カプセルを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、薬剤を充填するための医薬用カプセルであって、前記医薬用カプセルが、特定の塩基配列をコードするポリヌクレオチドを含有するものであることを特徴とする。
【0009】
また、前記ポリヌクレオチドは、天然または合成起源のDNAまたはRNAであることを特徴とする。
【0010】
また、前記ポリヌクレオチドは、医薬用カプセルの嵌合部に貼付される封止帯に含有されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記ポリヌクレオチドは、医薬用カプセルに設けられるホログラムパターンに含まれることを特徴とする。
【0012】
また、前記ポリヌクレオチドを含むホログラムパターンが医薬用カプセルの内面に形成されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記ホログラムパターンが医薬用カプセルに充填される薬剤の情報を示すホログラムパターンであってもよい。
【0014】
また、前記ホログラムパターンが医薬用カプセルの外面側から認識可能なホログラムパターンであってもよく、前記ホログラムパターンが、検査機器により認識可能なホログラムパターンであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の医薬用カプセルによれば、カプセルが特定の塩基配列をコードするポリヌクレオチドを含有するものであるので、例えば、PCR増幅やハイブリダイゼーション法などといった方法により、当該塩基配列を特定することができるために、カプセル中に含まれる薬の真贋判定が可能であるとともに偽造が困難であることから「偽薬」の流通を抑えることが可能となる。さらに、このようなポリヌクレオチドを含有するホログラムを形成することによって、さらに高度な偽造変造防止策を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の医薬用カプセルの一例を示す側面図である。
【図2】本発明の医薬用カプセルの別の一例を示す側面図である。
【図3】本発明の医薬用カプセルのさらに別の一例を示す側面図である。
【図4】図3に示す本発明の医薬用カプセルのA−A断面図である。
【図5】本発明の医薬用カプセルの製造方法の一例を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る医薬用カプセルについて、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明は、薬剤を充填するための医薬用カプセルであって、前記医薬用カプセルが、特定の塩基配列をコードするポリヌクレオチドを含有するものであることを特徴とする。
【0019】
なお、「特定の塩基配列をコードする」とは、医薬用カプセルに含有されるポリヌクレオチドがコードする塩基配列が、既知のものであって、後述するように、このカプセルに含まれるポリヌクレオチドを分析することによって、その真偽判定が可能となるものであることを意味する。従って、このように、医薬用カプセルに配合されるポリヌクレオチドの塩基配列が既知ないし予め特定可能であるものである限り、特段その塩基配列自体に制限のあるものではない。そして、例えば、そのカプセルを使用する製薬会社別、その内部に収納される医薬の種類別、医薬の製造日別等によって、適宜、使用するポリヌクレオチドを変えることによって、これらの医薬の真偽判定、製品品質管理等が容易に行えるものとなる。
【0020】
本発明において、上記ポリヌクレオチドは、医薬用カプセル自体に含有させることも、また、医薬用カプセル本体の表面側あるいは内面側に形成されるコーティング層ないし印刷層、医薬用カプセル本体の表面あるいは内面に貼付される各種の貼付帯ないし貼付フィルム等へ含有させることも可能である。
【0021】
このうち、ポリヌクレオチドの配合の容易性および使用量の低減化などといった観点から、好ましくは、医薬用カプセル本体の嵌合部に貼付される封止帯や、医薬用カプセル本体に貼付されるあるいは医薬用カプセルの壁面のいずれかの場所に形成されるホログラムパターンの部分に含有させることが望ましい。
【0022】
なお、このようなポリヌクレオチドの配合形態の相違による、本発明に係る医薬用カプセルの具体的態様については、後述する。
【0023】
一方、本発明の医薬用カプセルにおいて用いられる、特定の塩基配列をコードするポリヌクレオチドとしては、特に限定されるものではなく、例えば、天然または合成起源のDNAまたはRNA、あるいはこれらのフラグメント、ないしはこれらの誘導体などを用いることが可能である。
【0024】
<DNAの調製>
本発明において用いられるポリヌクレオチドとしてのDNAの調製は、特に限定されるものではないが、例えば以下の様な方法で行うことができる。
【0025】
(I) 天然物由来
天然物からDNAを抽出する。天然物としては、特に限定されるものではないが、例えば、鮭の精巣(白子)やホタテ貝の生殖巣に代表される魚類、貝類の他、哺乳動物などの動物細胞および植物細胞などの染色体、ミトコンドリア及び葉緑体などのオルガネラ等を用いることができる。その他、昆虫、酵母、真菌、細菌等に由来のものを用いることも可能であるが、カプセルに配合されることによって医薬品とともに摂取されるものであるため、生体安全性が十分に保証されているものに限定される。
【0026】
このような染色体、オルガネラ等を例えば、水に懸濁し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の存在下で、proteinase Kにより細胞タンパク質を消化する。この時、SDSにより核が破壊され、DNAが水溶液中に溶出する。proteinase Kは、DNaseの作用を阻害するSDSとEDTAの存在下でも活性を失わない。このようにしてDNAを可溶化し、これらの抽出液を例えばフェノール法などにより除蛋白処理したのち、必要に応じて糖およびRNA等を除去し、例えばクロマトグラム法および超遠心法などでDNAを回収する。この後、必要に応じて、エタノール及びプロパノール等で再結晶することで、高純度のDNAを得ることができる。
【0027】
また、このようにして得られるDNAを、例えば、制限酵素、リボザイム等の酵素や、ジメチル硫酸などの化学的試薬を用いた限定分解法により、部分分解することで得られるDNAフラグメントも本発明におけるポリヌクレオチドとして用いることができる。逆にDNAリガーゼ等により連結されたDNAも、ポリヌクレオチドとして用いることができる。
【0028】
このようにして調製されたDNAは、マキサム−ギルバート法、サンガー法およびDNAチップ法などにより、塩基配列および重合度を確認する。
【0029】
なお、天然由来のDNAについては、例えば、鮭の精巣由来のDNAなどのように、いくつかのものが市販されており、これらの市販品をそのまま用いて、あるいは市販品をさらに部分分解、修飾等行って用いることも、もちろん可能である。
【0030】
(II)化学合成
また、固相合成法および液相合成法などにより化学合成されたDNAを、ポリヌクレオチドとして用いることもできる。
【0031】
固相合成法においては、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリアミド、ポリオレフィン等の樹脂製のビーズ等の支持担体上でリン酸ジエステル法、リン酸トリエステル法、ホスファイト法などによりDNAを化学合成する。
【0032】
リン酸トリエステル法およびホスファイト法による固相合成法の場合、樹脂製支持担体に結合した保護基の導入されたヌクレオシドに対して3'から5'方向にヌクレオチド鎖を延長する。ヌクレオシドの結合したヌクレオチド鎖の5'水酸基の保護基を除去し、それに対してヌクレオチドを縮合する。この2つの操作を繰返すことにより樹脂製支持担体上でヌクレオチド鎖を延長し、縮合反応の後で未反応の水酸基をブロックする。その後、目的とするDNAを支持担体から切り離し回収し精製する。
【0033】
また、液相合成法においては、縮合反応を均一系で行う毎に反応生成物を単離精製し、次のヌクレオチドを縮合する。
【0034】
また、このように化学合成して得られるDNAを、前記したと同様の限定分解法により、部分分解することでDNAフラグメントを得ることができる。逆にDNAリガーゼ等により連結されたDNAも、ポリヌクレオチドとして用いることができる。
【0035】
化学合成して得られるDNAも、前記したと同様の配列決定法により塩基配列および重合度を確認する。
【0036】
(III)PCR法
また、DNAとしては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅されたDNAも使用できる。PCR法においては、耐熱性のDNAポリメラーゼと1対のプライマーと呼ばれるオリゴヌクレオチドと標的DNAとを含む反応溶液の温度を昇降させることにより、鋳型DNAを増幅する。
【0037】
PCR法では、増幅したい標的DNA配列と、その両端の配列に相補的な一対のプライマーの過剰量と、耐熱性DNAポリメラーゼを含む反応溶液とを用いて三段階の温度変化、例えば、94〜96℃で約30秒〜1分間程度、55〜65℃への急速冷却(約30〜1分間程度)、72〜74℃で1分〜2分間、を1サイクルとしてnサイクル、例えば、20〜40サイクル程度反応させる。94〜96℃の第一段階において、増幅したい標的DNAを熱変性して一本鎖とし、55〜65℃の第二段階において、プライマーを一本鎖DNAにアニーリングさせ、その後、酵素の反応温度(72〜74℃)である第三段階で、伸長反応を実行させる。この1サイクルの反応により、標的DNAは1対プライマーから伸張した新しいDNA鎖と合わせて、2倍に増幅される。従って、理論的にはnサイクルの反応で、標的DNAは2n倍に増幅されることとなる。
【0038】
PCR法で増幅される標的DNAを含む材料としては、前記したと同様の動物細胞および植物細胞などの染色体、動物細胞および植物細胞などのミトコンドリア及び葉緑体などのオルガネラ、その他、昆虫、酵母、真菌、細菌等に由来のものを使用することができる。また、ヒトを含む哺乳動物などの血液、体毛および唾液などの動物組織;ワイン用ブドウ、ウイスキー用ムギ、酒用イネ等の植物組織などからDNAを増幅し、所期のポリヌクレオチドを得ることができる。
【0039】
また、このようにPCR法で得られるDNAを、前記したと同様の限定分解法により、部分分解することでDNAフラグメントを得ることができる。逆にDNAリガーゼ等により連結されたDNAも、ポリヌクレオチドとして用いることができる。
【0040】
PCR法で得られるDNAも、前記したと同様の配列決定法により塩基配列および重合度を確認する。
【0041】
<RNAの調製>
一方、RNAの調製は、例えば以下の様な方法で行う。
【0042】
(I) 天然物由来
天然物からリボソームRNA、トランスファーRNA、メッセンジャーRNA等のRNAを抽出する。天然物としては、特に限定されるものではないが、上記RNAの場合と同様の動物細胞および植物細胞などの染色体、動物細胞および植物細胞などのミトコンドリ及び葉緑体などのオルガネラ、その他、昆虫、酵母、真菌、細菌等に由来のものを使用し、これらの抽出液を例えばフェノール法などにより除蛋白処理したのち、必要に応じて糖およびDNA等を除去し、例えばクロマトグラム法および超遠心法などでRNAを回収する。この後、必要に応じて、エタノール及びプロパノール等で再結晶することで、高純度のRNAを得ることができる。
【0043】
また、この様にして得られるRNAを、RNase及びリボザイム等の酵素を用いる方法や、化学的試薬を用いた限定分解法により、部分分解することで得られるRNAフラグメントも本発明におけるポリヌクレオチドとして用いることができる。逆に、RNAリガーゼ等により連結されたRNAも、ポリヌクレオチドとして用いることができる。
【0044】
このようにして得られるRNAは、ドニス−ケラー(Donis−Keller)法などにより、塩基配列および重合度を確認する。また、RNAを逆転写してDNAを合成し、このDNAの塩基配列および重合度を、マキサム−ギルバート法、サンガー法およびDNAチップ法などにより確認して、元のRNAの塩基配列および重合度を確認することも可能である。
【0045】
RNAについても、いくつかのものが市販されており、これらの市販品をそのまま用いて、あるいは市販品をさらに部分分解、修飾等行って用いることも、もちろん可能である。
【0046】
(II)化学合成
また、固相合成法および液相合成法などにより化学合成されたRNAを、ヌクレオチド重合体として用いることもできる。
【0047】
固相合成法においては、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリアミド、ポリオレフィン等の樹脂製のビーズ等の支持担体上でリン酸ジエステル法、リン酸トリエステル法、ホスファイト法などによりRNAを化学合成する。その後、目的とするRNAを支持担体から切り離し回収し精製する。
【0048】
また、液相合成法においては、縮合反応を均一系で行う毎に反応生成物を単離精製し、次のヌクレオチドを縮合する。
【0049】
また、このように化学合成して得られるRNAを、前記したと同様の限定分解法により、部分分解することでRNAフラグメントを得ることができる。逆にRNAリガーゼ等により連結されたRNAも、ポリヌクレオチドとして用いることができる。
【0050】
化学合成により得られるRNAの塩基配列および重合度については、前記天然由来のRNAの場合と同様の手法により行うことができる。
【0051】
(III)RT−PCR法
また、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法により増幅されたRNAも、本発明に係るポリヌクレオチドとして用いることができる。RT−PCR法においては、標的RNAを逆転写して標的DNAを合成し、この標的DNAを、上述したようなPCR法により増幅し、増幅されたDNAを転写して標的RNAに戻すことにより、標的RNAを増幅する。標的RNAを逆転写して標的DNAを合成する逆転写酵素としては、ウイルス等に由来とするものなどを使用することができる。また、DNAからRNAを転写する酵素としては、細菌由来のRNAポリメラーゼ等を使用する。
【0052】
RT−PCR法で増幅される標的RNAを含む材料としては、前記PCR法で増幅される標的DNAを含む材料として例示したものとほぼ同様のものを用いることができる。
【0053】
また、RT−PCR法で得られるRNAも、前記したと同様の限定分解法により、部分分解することでRNAフラグメントを得ることができる。逆にRNAリガーゼ等により連結されたRNAも、ポリヌクレオチドとして用いることができる。さらにそのRNAの塩基配列および重合度についても、前記天然由来のRNAの場合と同様の手法により行うことができる。
【0054】
以上では、ポリヌクレオチドとしてDNA及びRNAの調製方法を説明したが、以上の方法で得られたDNAをRNAポリメラーゼ等を用いて転写されたRNAや、以上の方法で得られたRNAを逆転写酵素などを用いて逆転写されたDNAも、ポリヌクレオチドとして使用可能である。
【0055】
さらに、以上のようにして得られるDNA及びRNAないしはこれらのフラグメント等を、化学的および酵素的に修飾、例えば、紫外線発色基、放射線識別マーカー、蛋白結合基、リンカー、官能基などが導入された誘導体;抗体抗原反応、レクチンなどの接着分子、特異的受容体とそのリガンド、DNAやRNAの相補的相互作用基、抗体、抗原または受容体など標識プローブなどが導入された誘導体も、ポリヌクレオチドとして使用できる。また、DNAとRNAとのキメラヌクレオチド重合体も使用可能である。
【0056】
なお、本発明において、ポリヌクレオチドは、必要に応じて、2種以上を併用することも可能である。
【0057】
さらに本発明において用いられるポリヌクレオチドの鎖長としては、特に限定されるものではないが、あまり低分子量のものであると、製造工程時および製品の保存時における安定性、可撓性(屈曲性・柔軟性)、製膜性等の観点から、十分満足できる特性を発揮できない虞れも生じるため、平均分子量が約100万程度以上のもの、より好ましくは、平均分子量が約300万〜1000万程度、さらに好ましくは、平均分子量が約500万〜800万程度のものであることが好ましい。
【0058】
次に、本発明に係る医薬用カプセルの具体的態様について、いくつかの代表的例につき、図面を参照にしつつ説明する。
【0059】
<医薬用カプセルの表面あるいは内面に貼付される各種の貼付帯ないし貼付フィルム>
上記したように、本発明の医薬用カプセルにおいて、ポリヌクレオチドは、医薬用カプセルの表面あるいは内面に貼付される各種の貼付帯ないし貼付フィルム中に含有させることが可能である。
【0060】
図1および図2は、このような実施形態の例を示す図面であり、図1においては、医薬用カプセル本体1のキャップ部2とボディ部3との嵌合部4をその周面全体にわたり覆うようにポリヌクレオチドを含有する貼付フィルム5が、貼付されている。また、図2においては、同様の貼付フィルム5が、嵌合部4の一部を覆うように、カプセル本体1の長手方向に沿って貼付されている。特に、図1に示す実施形態においては、嵌合部4の周面全体にわたり貼付フィルム5が覆っているため、内部に収納された薬剤の入れ替え等の偽造行為を抑制する上で、有効であるが、本発明において、このような貼付フィルムの添付位置等は、特に限定されるものではなく、カプセル本体の内面および外面のいかなる位置に添付されたものであっても良い。
【0061】
なお、「医薬用カプセル本体」とは、本明細書中で用いられる場合、キャップ部2とボディ部3を別々に成形し、薬剤を充填した後にはめ込まれるカプセル被膜を指し、キャップ部2、ボディ部3単体も医薬用カプセルに含まれる。また、本発明の医薬用カプセル本体は、薬剤を充填する機能を有するものであればその形状についていかなる限定もされない。また、充填される薬剤は、液状であっても顆粒状であってもよい。
【0062】
また、この実施形態において、貼付フィルム5は、いずれもその表面にホログラムパターンが形成され、ポリヌクレオチドの分析による真偽判断のみならず、目視による真偽判断が可能とされている。なお、ホログラムパターンの詳細については、後術する。
【0063】
このように、ポリヌクレオチドを医薬用カプセル本体に貼付する貼付フィルムに配合する場合、例えば、DNAのようなポリヌクレオチドの溶液を、膜状に展開し、これを乾燥ゲル化させることによって、ポリヌクレオチド自体からなるフィルムを作製して用いることが可能である。あるいはまた、その他の可食フィルムを形成し得る材料中にポリヌクレオチドを配合して、ポリヌクレオチドを含有する可食フィルムを作製して用いることも可能である。
【0064】
後者の可食フィルムの場合、これに配合されるポリヌクレオチドの含有量としては、特に限定されるものではないが、検査機器におけるポリヌクレオチドの検出感度はかなり高いものであるため、微量で十分であり、十分な分子生物学的識別性を実現する観点からしても、0.00001質量%以上程度でも十分であり、好ましくは、0.0001質量%以上、さらに好ましくは、0.001質量%以上である。上限としては、ポリヌクレオチドそのもののフィルムでも良いことから、何ら制限はないが、コスト面からすると、例えば、1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に0.01質量%以下であることが望ましい。
【0065】
ポリヌクレオチドを含有する可食フィルムを調製する場合において、その他の成分としては、従来、可食フィルムの原料として知られるもののいずれを用いることができ、代表的には、例えば、デンプン、寒天オリゴ糖、黒酵母菌の一種である微生物によるデンプン分解生成物(プルラン)を利用したもの、ゼラチン、コラーゲンなどの天然タンパクを利用したもの、さらにはグルコース、キシロースなどの単糖類を重合した高分子化合物(ポリサッカライド)を利用したものなどの、種々の天然多糖質を利用したものを例示することができる。
【0066】
なお、このような貼付フィルムに、ホログラムパターンを形成するには、例えば、フィルム原料溶液を、ホログラム原版のホログラム面上に展開して、製膜と同時にホログラムパターンを形成することができる。あるいはまた、一旦、可食フィルムを製膜した後、この可食フィルムの所定部位を、水ないし水溶液によって膨潤ないし一部可溶化した状態で、ホログラム原版をこの部位に押し当てて、ホログラムパターンを形成することも可能である。
【0067】
貼付フィルムをカプセル本体に貼付する方法としても、特に限定されるものではないが、例えば、フィルムの貼付面側の所定部位を、水ないし水溶液によって膨潤ないし一部可溶化させて、カプセル本体に貼付し、その後乾燥させれば十分であり、必要に応じて、デンプン糊等の可食性接着剤を用いることで、より強固に被着させることができる。
【0068】
<医薬用カプセルの表面あるいは内面へのコーティング>
上記したように、本発明の医薬用カプセルにおいて、ポリヌクレオチドは、医薬用カプセルの表面あるいは内面へのコーティング層中に含有させることが可能である。
【0069】
この場合、前記貼付フィルムを製膜する場合と同様に、DNAのようなポリヌクレオチドの溶液をそのまま用いる、あるいは、その他の可食フィルムを形成し得る材料中にポリヌクレオチドを配合してなる溶液を用い、これらをカプセル本体にコーティングすることによって、本発明に係る医薬用カプセルを製造することが可能である。
【0070】
他の可食フィルムを形成し得る材料としては、上記した貼付フィルムの場合と同様のものを用いることができ、また、この場合のポリヌクレオチドの配合量としても、特に限定されるものではなく、例えば、上記した貼付フィルムの場合と同様のものとすることができる。
【0071】
<医薬用カプセルの表面あるいは内面への印刷層>
上記したように、本発明の医薬用カプセルにおいて、ポリヌクレオチドは、医薬用カプセルの表面あるいは内面への印刷層中に含有させることも可能である。
【0072】
この場合、印刷層を形成する印刷インキとしては、従来公知の天然ないし合成の可食色素を主成分とし、澱粉等を定着成分とする各種可食インキ組成物を用いることができ、このインキ組成物中に、特に限定されるものではないが、ポリヌクレオチドを、例えば、0.00001質量%以上、好ましくは、0.0001質量%以上、さらに好ましくは、0.001質量%以上配合し、カプセル本体の内面あるい外面の任意の位置に、インクジェット方式、シルクスクリーン印刷または静電スクリーン印刷、その他、凸版、平板等の各種方法により印刷を施すことによって、本発明に係る医薬用カプセルを調製することが可能である。
【0073】
<医薬用カプセル自体への添加>
上記したように、本発明の医薬用カプセルにおいて、ポリヌクレオチドは、医薬用カプセル自体へ含有させることももちろん可能である。
【0074】
医薬用カプセルの材料は、人体に有害な成分や特定の疾患に対する禁忌成分が含まれない材料からなれば特に限定はなく医薬用カプセルの分野で用いられるあらゆる材料を好適に用いることができる。また、内部に収納される薬剤に必要とされる経口投与後における薬剤放出特性に応じて、適宜その種類等を変更することが可能である。代表的には、例えば、ゼラチンや寒天を主成分とするものを例示することができるが、これ以外にも、例えば、プロタミン、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、キトサン、ポリ-(L)-リジン、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ヘパリン、ヒアルロニックアシッド、コンドロイチンサルフェート、カラギーナン、デキストランサルフェート、ポリ-(L)-グルタミックアシッドその他の生体適合性高分子、生分解性高分子、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリジアリールジメチルアンモニウムその他の合成高分子又はそれらが適当な架橋剤で架橋された電解質高分子などを1ないし複数組み合わせて用いることができ、また、必要に応じて、可食色素等を配合し所定色に調整されたものであってもよい。また、必要に応じてゲル化剤、ゲル化補助剤、賦形剤、液剤、吸収促進剤、その他の各種目的のための添加剤が配合してもよい。
【0075】
このようなカプセル本体を形成する組成物中に配合されるポリヌクレオチドの含有量としては、特に限定されるものではないが、上記した別の実施形態の場合と同様に、検査機器におけるポリヌクレオチドの検出感度はかなり高いものであるため、微量で十分であり、十分な分子生物学的識別性を実現する観点からしても、0.00001質量%以上程度でも十分であり、好ましくは、0.0001質量%以上、さらに好ましくは、0.001質量%以上である。上限としては、ポリヌクレオチドそのもののフィルムでも良いことから、何ら制限はないが、コスト面からすると、例えば、1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に0.01質量%以下であることが望ましい。
【0076】
(内面ホログラム付カプセル)
図3、図4は、このような医薬用カプセル自体にポリヌクレオチドを配合した形態において、特に、この医薬用カプセル本体の内面にホログラムパターンを形成した例を示す図面である。
【0077】
図3、図4に示すように本実施形態の医薬用カプセル本体10は、キャップ部11とボディ部12とからなるとともにその内面(薬剤と接する側の面)にホログラムパターン20が形成されていることを特徴とする。本発明の医薬用カプセル本体10はこの要件を具備するものであれば特に限定されるものではなく図示する形態に限定されるものではない。
【0078】
医薬用カプセル本体10の材料としては、上記したように、ポリヌクレオチドを少なくとも含有し、かつ医薬用カプセルの分野で用いられる任意の材料を用いることができる。しかしながら、医薬用カプセル本体10が透明性を有しない材料からなる場合には医薬用カプセル本体10の内面に形成されたホログラムパターン20を医薬用カプセル本体10の外面から認識することが困難となってしまう。このような点を考慮すると、医薬用カプセル本体10の材料は透明性を有する材料からなることが好ましい。
【0079】
なお、本発明でいう透明性とは、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。また、医薬用カプセル本体10全体が透明性を有している必要はなく、少なくともホログラムパターン20が形成されている位置において透明性を有していればよい。例えば、キャップ部11の内面にホログラムパターン20を形成する場合には、該キャップ部11が透明性を有していればよく、この場合ボディ部12は透明性を有していなくともよい。
【0080】
このように、医薬用カプセル本体10の外面側から内面に形成されたホログラムパターン20が認識可能となるように透明性を有する医薬用カプセル本体10とすることで、含有されるポリヌクレオチドの機器分析による真贋判定のみならず、目視により容易に真贋判定が可能となる。
【0081】
(ホログラムパターン)
ホログラムパターン20は、2次元画像または3次元画像を再生可能なホログラムパターンであり医薬用カプセル本体10の内面(薬剤と接する面)の少なくとも一部の領域を凹凸構造とすることにより形成される。なお、本発明ホログラムパターン20にはホログラム及び回折格子が含まれ、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞で表現された3次元画像のレリーフホログラムや、2次元画像による回折格子、白色光再生ホログラムであるレインボーホログラム,カラーホログラム,電子線等を用いて機械的に画像を描写する計算機ホログラム、さらに、これらのホログラムに文字,図形,記号等を結合させて作製される合成ホログラム等を好適に使用することができる。特に限定されるものではないが、回折格子やレインボーホログラムなどが特に好適に利用できる。このように、医薬用カプセル本体10の内面にホログラムパターン20を形成することで、該医薬用カプセル本体10の外面を手で触れることで油分が接触した場合であってもホログラム機能を損ねることなく、真贋判定を行うことが可能となる。さらには、医薬用カプセル本体10の外面側からホログラムパターンを改ざんすることができないことから、偽造を効果的に防止することが可能となる。
【0082】
また、ホログラムパターン20が、カプセルに充填される薬剤の情報を示すホログラムパターン20であることが好ましい。薬剤の情報を示すホログラムパターン20とすることで、「真正品」と「偽薬」との識別をより迅速に行うことが可能となる。薬剤の情報について特に限定はなく、例えば、製造番号、製造年月日、薬剤の成分、薬剤の種類等の情報が挙げられる。また、ホログラムパターン20中に上記の薬剤の情報を示す隠し情報を組み込ますこととしてもよい。
【0083】
ホログラムパターン20が形成される領域についても特に限定はなく、医薬用カプセル本体10の内面であればいずれの位置であってもよい。例えば、上述したように医薬用カプセル本体10を構成するキャップ部11、ボディ部12のいずれかの内面にホログラムパターン20を形成してもよく、キャップ部11及びボディ部12の双方の内面にそれぞれホログラムパターン20を形成することとしてもよい。
【0084】
また、ホログラムパターン20は、必ずしも目視により認識可能である必要はなく検査機器により認識可能なホログラムパターン20であってもよい。検査機器によって認識可能なホログラムパターン20とすることで、該パターンの偽造を困難にすることが可能となる。このようなホログラムパターン20としては、MRH(Machine Readable Hologram)が挙げられる。MRHは、医薬用カプセルの内面側に形成されたレリーフホログラムパターン上に、反射層が設けられたホログラムパターン20であり、レリーフホログラムパターン側、(すなわち、医薬用カプセルの外面側)から、半導体レーザーを照射し、レリーフホログラムパターンで回折し、更に反射層で反射したレーザー光を、検査機器であるフォトダイオードで検出することで、ホログラムパターン情報(薬剤情報)を認識することが可能なホログラムパターン20である。反射層は、金属をレリーフホログラムパターン上に蒸着することにより形成可能であり、従来公知の蒸着方法を適宜選択して形成することができる。また、反射層の金属は、人体に影響のない金属であればよく、例えば、金等を好適に用いることができる。
【0085】
なお、上記した貼付フィルムの実施形態の場合において、形成されるホログラムパターンに関しても、その形成位置の違い以外の部分に関しては、基本的にここに説明するものと同様のものである。
【0086】
(カプセルの製造方法)
次に、上記図3、図4に示す実施形態の医薬用カプセルの製造方法について図5を用いて具体的に説明する。本発明の医薬用カプセルの製造方法は、カプセルの材料となる溶液中にカプセル成形ピンを浸漬する浸漬工程と、前記溶液中から前記カプセル成形ピンを引き上げる引き上げ工程と、前記カプセル成形ピンに付着した溶液を冷却して硬化させる硬化工程と、得られた硬化物をカプセル前記カプセル成形ピンから取り外す取り外し工程とを有することを特徴とする。特に本発明の医薬用カプセルの製造方法は、上記カプセル成形ピンがホログラムパターンを有する成形ピンである点に特徴を有する。
【0087】
まず初めに、本発明の医薬用カプセルの製造方法に用いられるホログラムパターン20を有するカプセル成形ピン40について具体的に説明する。
【0088】
図5に示すようにカプセル成形ピン40は、その表面にレリーフホログラムパターン50を備える。レリーフホログラムパターン50は、上記で説明した医薬用カプセルの内面に形成されるホログラムパターン20に対応する干渉縞が凹凸の形で記録されたレリーフホログラムパターン50であり、従来公知のレリーフホログラムパターンを適宜選択して用いることができる。また、カプセル成形ピン40の表面にレリーフホログラムパターン50を設ける方法についても特に限定はなく、図2に示すようにカプセル成形ピン40の表面に、レリーフホログラムパターン50が記憶されたホログラム原版21を付着又は埋設させることとしてもよい。
【0089】
なお、本願発明におけるレリーフホログラムパターン50が記憶されたホログラム原版21には、該ホログラム原版から複製されるホログラム複製版も含まれる。ホログラム複製版は、従来公知の複製方法を適宜選択して作成可能であり、例えば、基材上に熱可塑性樹脂(例えば、アクリル樹脂)を塗布し、これに、干渉縞が凹凸の形で記録されたホログラム原版を重ね合わせて加熱、加圧した後、該ホログラム原版を剥がすことで、熱可塑性樹脂の表面に凹凸形状が形成されたホログラム複製版を作成することができる。
【0090】
このように、レリーフホログラムパターン50を備えたカプセル成形ピン40を用いることで、医薬用カプセル30を成形した後にホログラムパターン20を別途設けることなく、通常のカプセル成形工程により医薬用カプセルの内面にホログラムパターン20を形成することできる。特に、本発明の医薬用カプセルの製造方法によれば、医薬用カプセル30の外面側を手で触れることにより該医薬用カプセルの外面に油分が付着した場合であってもホログラム機能を低下させることのない(ホログラムが消失(不可視化)することのない)医薬用カプセルを製造することが可能となる。また、ホログラム原版21は非常に高価であるとともに複製が困難であることから、ホログラム原版21を備えたカプセル成形ピン40を用いて医薬用カプセルの内面にホログラムパターン20を生成することで偽造を大幅に防止することができる。
【0091】
(浸漬工程)
図5(A)に示すように浸漬工程は、医薬用カプセル30の材料となる溶液31中にレリーフホログラムパターン50を有するカプセル成形ピン40を浸漬する工程である。
【0092】
医薬用カプセル30の製造に用いられる溶液31について特に限定はなく、人体に有害な成分や特定の疾患に対する禁忌成分が含まれていなければ医薬用カプセルの分野で用いられる溶液を好適に用いることができる。このような溶液としては、溶媒としての水にゼラチン又は寒天が主成分となるように溶解させた溶液31が挙げられる。ゼラチン又は寒天を主成分とする溶液は透明性を有することから医薬用カプセルの内面に形成されるホログラムパターンを医薬用カプセルの外面から目視で認識することができる。また、必要に応じてゲル化剤、ゲル化補助剤、賦形剤、液剤、吸収促進剤、その他の各種目的のための添加剤が配合してもよい。
【0093】
溶液31の温度及び浸漬時間について限定はされず、溶液31の成分等に応じて適宜設定することができる。
【0094】
(引き上げ工程)
図5(B)に示す引き上げ工程は、溶液31中に浸漬されたレリーフホログラムパターン50を有する成形ピン40を所定の浸漬時間が経過したことに基づいて引き上げる工程である。
【0095】
(硬化工程)
図5(C)に示す硬化工程は、成形ピン40に付着した溶液を成形ピン40の形状にしたがって硬化させる工程である。硬化(乾燥)時間及び硬化温度についても特に限定はなく、溶液の成分や成形ピン40の形状等に応じて適宜設定することができる。
【0096】
(取り外し工程)
図5(D)に示す取り外し工程は、成形ピン40に付着した溶液が硬化されることで得られる硬化物をカプセル成形ピン40から取り外す工程である。硬化物を成形ピン40から取り外すことで医薬用カプセルであるキャップ部11又はボディ部12が形成される。
【0097】
以上説明した本発明の医薬用カプセルの製造方法によれば、医薬用カプセル(キャップ部11又はボディ部12)を形成するための型である成形ピン40が、その表面にレリーフホログラムパターン50を備えることから、別途ホログラムパターン20を設ける工程を行うことなく、その内面にホログラムパターン20が形成された医薬用カプセル30を製造することができる。
【0098】
<真偽判定>
以上述べたように、本発明の医薬用カプセルは、ポリヌクレオチドを含有するものである限り、種々の態様のものとすることができるが、本発明の医薬用カプセルを用いた医薬品の真偽判定については、いずれも共通するものであり、医薬品を収納した医薬用カプセルに含まれるポリヌクレオチドを抽出し、これを生化学の分野において公知である、ポリヌクレオチドの同定方法を応用して分析することにより実施可能である。例えば、前記ポリヌクレオチドの調製の説明において述べた、塩基配列決定法等を用いて容易に行うことができる。例えば、ポリヌクレオチドがDNAの場合、マキサム−ギルバート法、サンガー法およびDNAチップ法などを用いて実施可能である。またRNAの場合、ドニス−ケラー(Donis−Keller)法などを用いて実施可能である。あるいは、RNAを逆転写してDNAを合成し、このDNAの塩基配列および重合度を、マキサム−ギルバート法、サンガー法およびDNAチップ法などにより確認して、元のRNAの塩基配列および重合度を確認することもできる。さらに、前述したPCR法ないしRT−PCR法、あるいは各種ハイブリダイゼーション法を応用することによっても、カプセル中に含まれるポリヌクレオチドの同定は可能である。
【0099】
また、ポリヌクレオチドが配合されているのみならず、ホログラムパターンが形成されている場合には、その真偽判定が目視によっても可能となり、より利便性が高くなる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明する。
【0101】
実施例1
十分に滅菌処理したホログラム原版を用意し、このホログラム面上に、分子量約660万の高純度高分子量DNA(日本化学飼料株式会社製、商品名「高純度DNA」、鮭白子由来DNA)の1質量%水溶液を吐出し、これを自然乾燥させて製膜した後、ホログラム面から引き剥がして、厚さ0.01mmの可食ホログラムフィルムを得た(以下、ホログラム加工された面を表面、その反対面を裏面と呼ぶ。)。
【0102】
このDNAホログラムフィルムを約3mm幅にカットし、薬剤を収容した状態のカプセルに対して、カプセルのボディとキャップの嵌合部分を覆うように貼りあわせた(図1参照)。貼り合せの方法としては、ホログラムフィルムの裏面に温水(約40℃)を適量、適切な位置に塗布し、表面のホログラムフィルム絵柄を破損しないように貼り合せた。
【0103】
このようにして製造されたDNAホログラムフィルム付カプセル製剤は、患者としては、薬を飲む前に、そのホログラムによって本物であることが目視によって確認できるとともに、その経口摂取の方法自体は、通常のカプセル製剤と全く変わらないため利便性が高いものであった。また、上記したようにカプセルのボディとキャップの嵌合部分を覆うようにDNAホログラムフィルムを貼付することにより、形跡を残さず、当該フィルムを剥がすことが極めて難しくなるので、カプセル内の薬剤の入れ替えも困難となるという格別の効果を有する。また、貼付されたホログラムフィルムは、そのホログラムによって上記したように目視によって容易にその真偽判断が可能であるのみならず、DNAを含有しているため、検査機器によってその塩基配列そのものを特定することで、さらにその製品の真正製を担保させることができるものである。加えて、製造者側からしても、DNAホログラムフィルムをロール状に作製すれば、液体カプセルの封止装置がそのまま転用できるため、非常に製造しやすいものとなる。
【0104】
実施例2
実施例1のホログラムフィルムの形成方法を以下の通り変更した。
【0105】
すなわち、DNA水溶液を塗布後乾燥製膜して、DNA可食フィルムをロール状に形成したものに対して、適度な水分を与え、この状態でホログラム原版を加圧して可食フィルム面に押し当てることによって、DNA可食ホログラムフィルムを得た。
【0106】
このようにして得られたDNA可食ホログラムフィルムを実施例1と同様に薬剤を収容した状態のカプセルに対して、カプセルのボディとキャップの嵌合部分を覆うように貼りあわせた(図1参照)。その結果、実施例1と同様の効果が期待されるものとなった。
【0107】
実施例3
実施例2において調製したDNA可食フィルムを、ホログラム加工することなく、そのまま用いて、実施例1と同様に薬剤を収容した状態のカプセルに対して、カプセルのボディとキャップの嵌合部分を覆うように貼りあわせた(図1参照)。その結果、ホログラムの目視による真偽判断はできないものの、検査機器によってDNAの塩基配列そのものを特定することができ、その製品の真正性を担保させることができるものであった。
【0108】
実施例4
ゼラチンの2質量%水溶液に対し、実施例1で用いたものと同様のDNAを、ゼラチン(乾燥質量)の10質量%となるように配合してカプセル形成用組成物を調製した。この組成物を用いて、上述した図5に示すような製造方法に基づき、内面にホログラムパターンを有するDNA含有カプセルを製造した。その結果、実施例1と同様な効果が期待でき、さらにホログラムパターンがカプセル内面に形成されているため、医薬用カプセルのハンドリングによって、ホログラムパターンが損傷を受ける虞れも解消された。
【符号の説明】
【0109】
1、10、30…医薬用カプセル本体
2、11…キャップ部
3、12…ボディ部
4…嵌合部
5…貼付フィルム
20…ホログラムパターン
21…ホログラム原版
31…溶液
40…成形ピン
50…レリーフホログラムパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を充填するための医薬用カプセルであって、前記医薬用カプセルが、特定の塩基配列をコードするポリヌクレオチドを含有するものであることを特徴とする医薬用カプセル。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが、天然または合成起源のDNAまたはRNAであることを特徴とする請求項1に記載の医薬用カプセル。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドは、医薬用カプセルの嵌合部に貼付される封止帯に含有されていることを特徴とする請求項1または2に記載の医薬用カプセル。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドは、医薬用カプセルに設けられるホログラムパターンに含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の医薬用カプセル。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドを含むホログラムパターンが医薬用カプセルの内面に形成されていることを特徴とする請求項1、2および4のいずれか1つに記載の医薬用カプセル。
【請求項6】
さらに、前記ホログラムパターンが医薬用カプセルに充填される薬剤の情報を示すホログラムパターンであることを特徴とする請求項4または5に記載の医薬用カプセル。
【請求項7】
前記カプセルの外面側から前記ホログラムパターンを認識可能であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の医薬用カプセル。
【請求項8】
前記ホログラムパターンが、検査機器により認識可能なホログラムパターンであることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の医薬用カプセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−36278(P2011−36278A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183508(P2009−183508)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】