説明

医薬用組成物

【課題】優れた眼精疲労改善効果を有し、特に即効性にも優れている眼科用剤(洗眼薬、点眼薬など)などの医薬用組成物を提供する。
【解決手段】ビタミンB12と、ベルベリン及び/又はその塩とを含有することを特徴とする医薬用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用剤などに用いられる医薬用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンの普及によるVDT作業の増加などの生活様式の変化に伴い、眼精疲労を訴える人が増加している。眼精疲労は、視作業により、眼の痛み、かすみ、眩しさ、充血などの眼の症状や、頭痛、肩こり、吐き気などの全身症状を伴う不快症状であり、その原因は種々報告されているが、眼の酷使に起因するものが多い。
【0003】
眼精疲労の対応策として、内服薬、点眼薬、洗眼薬などの眼科用剤、眼周辺のマッサージ機など、多岐にわたる製品が開発され、点眼薬としては、ビタミン類、タウリン、メントール、カフェインなどを配合した眼精疲労用点眼薬が市販されている。
【0004】
例えば、特許文献1および2には、ビタミン類であるシアノコバラミンが眼精疲労改善効果を有し、点眼薬に使用できることが開示されている。しかしながら、このような点眼薬を用いても、改善効果は不十分であり、特に即効性について満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−75438号公報
【特許文献2】特開平3−145421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、優れた眼精疲労改善効果を有し、特に即効性にも優れた眼科用剤(洗眼薬、点眼薬など)などの医薬用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、医薬用組成物において、従来では抗菌、抗炎症作用を有することが知られているにすぎないベルベリンやその塩を、ビタミンB12とともに組み合わせて使用すると、眼精疲労改善効果が相乗的に発揮され、即効性にも優れているという知見を見出した。更に、これら両成分を併用した医薬用組成物の粘度を1〜60cpに調整することで、より高い改善効果が発揮されることも見出した。本発明は、以上の知見により完成されたものである。
【0008】
本発明は、ビタミンB12と、ベルベリン及び/又はその塩とを含有することを特徴とする医薬用組成物である。
上記医薬用組成物は、25℃における粘度が1〜60cpであることが好ましい。
上記医薬用組成物は、眼科用剤であることが好ましい。また、上記医薬用組成物は、眼精疲労改善剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医薬用組成物は、ビタミンB12と、ベルベリン及び/又はその塩とを併用しているため、相乗的に眼精疲労改善効果が発揮され、また、組成物を特定粘度に調整することでより高い改善効果を発揮させることができる。更に、改善効果の即効性にも優れている。従って、特に点眼薬、洗眼薬などの眼科用剤として使用した場合、顕著で、かつ即効性にも優れた眼精疲労改善効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の医薬用組成物は、ビタミンB12と、ベルベリン及び/又はその塩とを含有する。
本発明において、ビタミンB12はコリン環の中にコバルトイオンを含む構造を持つ水溶性ビタミンである。ビタミンB12としては、コバルトイオンに対する配位子の種類により、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、アココバラミン、ニトリトコバラミン、スルフィトコバラミン等が存在することが知られているが、本発明では、いずれの形態をも用いることができる。また、これら化合物の有機塩又は無機塩もビタミンB12として用いることができる(以下、これらを合わせて「ビタミンB12類」とも称する)。なかでも、眼精疲労改善効果に優れるという点から、シアノコバラミン、メチルコバラミン(メコバラミン)、酢酸ヒドロキソコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミンが好ましい。これらのビタミンB12類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
本発明の医薬用組成物において、ビタミンB12類の含有濃度は、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、組成物全体100g中に、好ましくは0.02mg以上、より好ましくは0.1〜50mg、更に好ましくは0.2〜20mgである。点眼薬や洗眼薬などの液状の眼科用剤の場合は、組成物全体100ml中に、好ましくは0.2mg以上、より好ましくは0.2〜20mgであり、点眼薬の場合は5〜20mgがさらに好ましく、洗眼薬の場合は0.5〜2mgがさらに好ましい。この範囲内であると、ベルベリン及び/又はその塩と組み合わせることで、特に優れた眼精疲労改善効果が得られる。
【0012】
本発明ではベルベリン及び/又はその塩(以下、これらを合わせて「ベルベリン類」とも称する)を使用する。ベルベリンは骨格としてベンジルイソキノリンを有する公知の化合物である。また、ベルベリンの塩は、薬理学的に又は生理学的に許容される塩であり、特に限定されないが、例えば、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、タンニン酸ベルベリン、安息香酸ベルベリン、臭化ベルベリン、ヨウ化ベルベリンなどが挙げられる。更に、オウバク、オウレンなどのベルベリン類を含有する生薬の抽出物やエキスも使用できる。なかでも、眼精疲労改善効果に優れるという点から、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、タンニン酸ベルベリンが好ましい。これらのベルベリン類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明の医薬用組成物において、ベルベリン類の含有濃度は、本発明の効果が得られれば特に限定されないが、組成物全体100g中に、好ましくは0.05mg以上、より好ましくは0.25〜25mg、更に好ましくは0.5〜25mgである。点眼薬や洗眼薬などの液状の眼科用剤の場合は、組成物全体100ml中に、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは0.5〜25mgであり、点眼薬の場合は5〜10mgがさらに好ましく、洗眼薬の場合は0.5〜2.5mgがさらに好ましい。この範囲内であると、ビタミンB12類と組み合わせることで、特に優れた眼精疲労改善効果が得られる。
【0014】
また、本発明の医薬用組成物において、ビタミンB12類とベルベリン類の含有割合は、ビタミンB12類1重量部に対して、ベルベリン類が0.05〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましく、0.2〜3重量部であることがさらに好ましく、0.5〜1.8重量部であることが特に好ましい。この含有割合であると、ベルベリン類の配合量あたりの眼精疲労改善効果に優れる。また、医薬組成物を液状としたときに、液の色調が淡オレンジ色〜濃オレンジ色となり、ビタミンB12類の光安定性に優れる製剤とすることができる。
【0015】
本発明の医薬用組成物は、目的に応じて例えば、内服又は外用の形態で使用することができる。内服の形態としては内科用等として、外用の形態としては眼科用又は皮膚科用等として、それぞれ様々な用途の局所投与製剤として提供することができる。
本発明の医薬用組成物は、その剤形は特に限定されないが、例えば、液剤、ゲル剤、軟膏剤(油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏)、散剤、顆粒剤、錠剤などがあげられ、用途に応じて適宜選択され得る。
【0016】
とくに眼科用剤としては医薬用の製剤に限らず、コンタクトレンズ用剤などの非医薬用の製剤としても利用できる。眼科用剤の具体例としては、点眼薬(コンタクトレンズ装用中にも使用できる点眼薬を含む)、洗眼薬(コンタクトレンズ装用中にも使用できる洗眼薬を含む)、眼軟膏、コンタクトレンズ装着液、並びにコンタクトレンズ用剤(洗浄液、保存液、すすぎ液、消毒液、及びマルチパーパスソリューション等)等が挙げられる。なお、本明細書において、コンタクトレンズとは、ハードコンタクトレンズ(酸素透過性ハードコンタクトレンズも含む)、ソフトコンタクトレンズ等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを意味する。また、本発明の医薬用組成物は、眼精疲労改善剤として好適に使用できる。
【0017】
本発明の医薬用組成物は有効成分の安定性が高いので、複数回に亘り投与する形態で包装され、かつ使用者が継続的に使用するマルチドーズの水性液剤、例えば、点眼薬、洗眼薬、液状内服薬(液状胃腸薬、液状風邪薬等)、並びに皮膚外用薬等としても有用である。
【0018】
本発明の医薬用組成物は、その剤形が液状である場合、その粘度は特に限定されないが、眼科用剤においては、眼精疲労改善効果が優れるという点から、25℃における粘度が好ましくは1〜60cp、より好ましくは1〜50cp、更に好ましくは2〜50cpである。特に洗眼薬の場合は、粘度(25℃)は2〜20cpが好ましく、2〜15cpがより好ましく、2〜10cpが更に好ましい。また、点眼薬の場合の粘度(25℃)は、2〜50cpが好ましく、5〜50cpがより好ましく、10〜50cpが更に好ましい。
本発明において、医薬用組成物の粘度は、実施例にも記載しているとおり、B型粘度計であるデジタル粘度計(型名:DV−II+、ブルックフィールド社製)を用い、スピンドルはULAを用いて、回転数6〜30rpm、液温25℃の条件で行った。
【0019】
本発明の医薬用組成物のpHは、内服用液剤では、服用感及び有効成分の安定性という点から、好ましくは2.0〜10.0、より好ましくは4.0〜9.0、更に好ましくは6.0〜8.0である。外皮用組成物では、通常、皮膚に対する低刺激性、使用感のよさ及び有効成分の安定性という点から、pHは、好ましくは3.0〜10.0、より好ましくは3.0〜9.0、更に好ましくは4.0〜9.0である。特に洗眼薬、点眼薬などの眼科用剤の場合、通常、粘膜に対する低刺激性及び有効成分の安定性という点から、pHは、好ましくは5.0〜9.5、より好ましくは5.5〜9.0、更に好ましくは5.5〜8.0である。
【0020】
本発明の医薬用組成物には、必要に応じて、当該分野において通常用いられる他の成分を更に含有させることができる。ただし、既に説明した含有成分と重複する場合はこの限りでない。他の成分としては、例えば、充血除去成分、眼調節成分、抗炎症成分、収斂成分、抗ヒスタミン成分、抗アレルギー成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌成分、殺菌成分、糖類、多糖類及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、水溶性高分子、局所麻酔成分、ステロイド成分、緑内障治療成分、並びに白内障治療成分等が挙げられる。本発明において好ましい他の成分としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0021】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリンなどが挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0022】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミンなどの第4級アンモニウム化合物及びそれらの薬理学的に許容される塩類などが挙げられる。
【0023】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、サリチル酸メチルなどが挙げられる。
【0024】
ビタミン類:例えば、ビタミンA類、ビタミンB類(ビタミンB12類以外)、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、及びその他のビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種のビタミン類を含有することができる。ビタミンA類としては、例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン及びその薬理学的に許容される塩類などが挙げられる。ビタミンB類としては、例えば、チアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、コリン、イノシトール及びその薬理学的に許容されるこれらの塩類が挙げられる。ビタミンC類としては、例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸及びその誘導体及びその薬理学的に許容される塩類などが挙げられる。ビタミンD類としては、例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール及びその薬理学的に許容される塩類などが挙げられる。ビタミンE類としては、例えば、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン誘導体及びその薬理学的に許容される塩類などが挙げられる。その他のビタミン類としては、例えば、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン及びその薬理学的に許容される塩類などが挙げられる。
【0025】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、グルタミン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アスパラギン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0026】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:例えば、硫酸アミノデオキシカナマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ストレプトマイシン、トブラマイシン、硫酸ミクロノマイシン、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スルベニシンナトリウム、塩酸セフメノキシム、ベンジルペニシリンカリウム、コリスチンメタスルホン酸ナトリウム、エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸ポリミキシン、ジベカシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アシクロビル、イオドデオキシサイチジン、イドクスウリジン、シクロサイチジン、シトシンアラビノシド、トリフルオロチミジン、ブロモデオキシウリジン、ポリビニルアルコールヨウ素、ヨウ素、アムホテリシンB、イソコナゾール、エコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、ピマリシン、フルオロシトシン、ミコナゾールなどが挙げられる。
【0027】
糖類:例えば、単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、トレハロース、ラクトース、フルクトースなどが挙げられる。
【0028】
多糖類又はその誘導体:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0029】
セルロース又はその誘導体又はそれらの塩:例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。
【0030】
前述以外の水溶性高分子:例えば、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、デキストリン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0031】
局所麻酔薬成分:例えば、リドカイン、オキシブプロカイン、ジブカイン、プロカイン、アミノ安息香酸エチル、メプリルカイン、及びそれらの塩などが挙げられる。
【0032】
ステロイド成分:例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、及びそれらの塩などが挙げられる。
【0033】
緑内障治療成分:例えば、レボブノロール、チモロール、及びそれらの塩などが挙げられる。
【0034】
白内障治療成分:例えば、ピレノキシンなどが挙げられる。
【0035】
本発明の医薬用組成物において、これらの成分の含有割合は、用途及び含有成分の種類等に応じて適宜決定される。例えば、液状眼科用剤の場合、組成物全体に対して、好ましくは0.0001〜50w/v%、より好ましくは0.0001〜25w/v%、更に好ましくは0.001〜10w/v%である。
【0036】
また、本発明の医薬用組成物には、必要に応じて、眼精疲労改善効果を損なわない範囲で、当該分野において通常用いられる添加剤を更に含有させることができる。ただし、既に説明した含有成分と重複する場合はこの限りでない。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、増粘剤、可溶化剤又は溶解補助剤、pH調節剤、等張化剤、香料、清涼化剤、キレート剤、緩衝剤、安定化剤、基剤等が挙げられる。本発明において好ましい添加物としては、例えば、次のような添加物が挙げられる。
【0037】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物、アクリノールなどが挙げられる。
【0038】
増粘剤:例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストラン、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
可溶化剤又は溶解補助剤:例えば、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤、アルキルエーテルカルボン酸塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、N−ココイルメチルタウリンナトリウムなどのN−アシルタウリン塩、POE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテルリン酸及びその塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのN−アシルアミノ酸塩、POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などの陰イオン界面活性剤などが挙げられる。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40、ショ糖ステアリン酸エステル、モノステアリン酸デカグリセリル、ラウリルグルコシド、マクロゴール4000。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0040】
pH調整剤:例えば、塩酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどが挙げられる。
【0041】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコールなどが挙げられる。
【0042】
香料又は清涼化剤:例えば、テルペン類(具体的には、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオ−ル、メントール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)精油(具体的には、ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント池、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)などが挙げられる。
【0043】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
【0044】
緩衝剤:例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。
【0045】
安定剤:例えば、シクロデキストリン、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0046】
基剤:例えば、オクチルドデカノール、オリブ油、ゴマ油、酸化チタン、臭化カリウム、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パラフィン、ヒマシ油、プラスチベース、ラッカセイ油、ラノリン、ワセリンなどが挙げられる。
【0047】
本発明の医薬用組成物は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節する。生理食塩液に対する浸透圧比は、通常0.3〜4.0、好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.5〜1.4である。浸透圧比の調節は前記pH調整剤の他に、緩衝剤、等張化剤、及び塩類等を適宜用いて行うことができる。
【0048】
本発明の医薬用組成物は、公知の方法により製造できる。例えば、点眼薬、洗眼薬などの場合は、先ず各成分を混合してから、更に必要によりろ過滅菌処理を行い、最後に容器へと充填することにより調製できる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例、比較例及び処方例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0050】
実施例及び比較例
試験例1 眼精疲労度の評価(1)
(医薬用組成物(洗眼薬)の調製)
表1に示す処方に従い、各成分を滅菌精製水に溶解し、実施例1〜3及び比較例1〜3の医薬用組成物を調製した。pHは6.0に調整した。実施例1は、実施例2の組成にHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(信越化学工業株式会社製「メトローズ60SH−4000」)を適量加え、粘度が3cpとなるように調製した。
【0051】
組成物の粘度の測定は、B型粘度計であるデジタル粘度計(型名:DV−II+、ブルックフィールド社製)を用い、スピンドルはULAを用いて、回転数6〜30rpm、液温25℃の条件で行った。
【0052】
(評価方法)
調製した洗眼薬の眼精疲労改善効果を以下の測定機器、測定指標、方法、判定基準により評価した。
測定機器:
調節微動解析装置MF−1(株式会社ライト製作所製)
測定指標:
眼精疲労度をHFC(High Frequency Component)で評価する(HFC値が大きいほど疲労度が高いことを示す)。なお、焦点距離40cmの値を採用する。
方法:
(1)被験者の眼精疲労度を測定する(初期値)。
(2)眼精疲労負荷をかける(15分間のVDT作業)。
(3)各組成物5mLを用い、洗眼を行う。
(4)被験者の眼精疲労度を測定する(洗眼後の測定値)。
洗眼に使用する洗眼カップは、「アイボン」(小林製薬株式会社製)に付属の洗眼カップを使用した。なお、(3)で洗眼を行わない場合の評価も行う(無処置)。
判定基準:
無処置時(VDT作業後無処置での測定値/初期値)×100と、各組成物使用時(各組成物の洗眼後の測定値/初期値)×100との差を算出し、眼精疲労改善効果を求める。
比較例3の眼精疲労改善効果の値を100%(基準)とし、これに対する各例の値(相対的改善効果(%))を算出した。
【0053】
試験例2 眼精疲労度の評価(2)
医薬用組成物(洗眼薬及び点眼薬)の調製
(洗眼薬の調製)
実施例4〜14は、表1の実施例2の組成にHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(信越化学工業株式会社製「メトローズ60SH−4000」)を適量加え、表2に記載の粘度となるように調製した。また、比較例4および5は、実施例5において、それぞれシアノコバラミン又は塩化ベルベリンを配合しない以外は同様に調製した。
(点眼薬の調製)
表2に記載の成分(シアノコバラミンおよび塩化ベルベリン)を10倍濃度とした以外は、上記洗眼薬と同様に調製した。
【0054】
(評価方法)
調製した洗眼薬及び点眼薬の眼精疲労改善効果について、眼精疲労の自覚症状のあるパネラー10名がそれぞれ点眼(1回使用量:2滴)と洗眼(1回使用量:5mL)を、3時間おきに3回行い、以下の方法、判定基準により評価した。
方法:
各組成物を使用(点眼又は洗眼)した後の眼精疲労改善度合いを使用前と比較し、下記5段階でそれぞれ評価する。
5点:改善した。
4点:やや改善した。
3点:どちらともいえない。
2点:あまり改善しなかった。
1点:改善しなかった。
判定基準:
点眼及び洗眼のそれぞれについて10人の合計点を算出し、下記基準で判定する。
◎:41〜50点
○:31〜40点
△:30点以下
【0055】
【表1】

【0056】
表1により、塩化ベルベリン及びシアノコバラミンをともに使用していない比較例3に比べ、これらを併用した実施例1〜3では、約3.6〜8.1倍もの眼精疲労改善効果がみられた。特に、粘度3cpに調製した実施例1では、極めて大きな改善効果がみられた。また、シアノコバラミンのみを使用した比較例1、塩化ベルベリンのみを配合した比較例2では、比較例3に比べて改善効果はみられなかったので、塩化ベルベリン及びシアノコバラミンを併用することで大きな相乗効果が発現し、顕著な眼精疲労改善効果が得られることが明らかとなった。更に、このような効果は洗眼後すぐにみられ、即効性にも優れていた。
【0057】
【表2】

【0058】
粘度の影響を調べた表2により、洗眼による眼精疲労改善効果については、2〜20cpの組成物の合計点が高く、そのなかでも2〜15cpの組成物が高く、2〜10cpの組成物が極めて高かった。点眼による眼精疲労改善効果については、2〜50cpの組成物の合計点が高く、そのなかでも5〜50cpの組成物が高く、10〜50cpの組成物が極めて高かった。また、同粘度の洗眼と点眼の結果を比較すると、2〜20cpでは洗眼の方が改善効果が高かった。
【0059】
処方例
表3〜11に示す処方に従い、常法により、医薬用組成物(洗眼薬)を調製し(pHは6.0に調整した)、無菌環境下、ろ過滅菌処理し、洗浄滅菌済みの透明容器(ポリエチレンテレフタレート)に充填し、製造した。
また、表3〜9に示す処方におけるビタミンB12類およびベルベリン類の配合量を10倍量とした医薬組成物(点眼薬)を調製し、無菌環境下、ろ過滅菌処理し、洗浄滅菌済みの透明容器(ポリエチレンテレフタレート)に充填し、製造した。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
【表9】

【0067】
【表10】

【0068】
【表11】

【0069】
製造した医薬組成物について、眼精疲労改善効果を評価したところ、実施例と同様に相乗効果がみられた。特に、ビタミンB12類を0.5〜2.0mg/100ml、ベルベリン類を0.5〜2.5mg/100ml含有した洗眼薬を使用したときの眼精疲労改善効果がより優れていた。なかでも、ビタミンB12類1重量部に対するベルベリン類の配合量が0.5〜1.8重量部であると、ベルベリン類の配合量あたりの眼精疲労改善効果が優れていた。また、ビタミンB12類の光安定性にも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB12と、ベルベリン及び/又はその塩とを含有することを特徴とする医薬用組成物。
【請求項2】
25℃における粘度が1〜60cpである請求項1記載の医薬用組成物。
【請求項3】
眼科用剤である請求項1又は2記載の医薬用組成物。
【請求項4】
眼精疲労改善剤である請求項1〜3のいずれかに記載の医薬用組成物。

【公開番号】特開2011−213667(P2011−213667A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84103(P2010−84103)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】