説明

医薬用途のためのプロテアーゼ変異体

本発明は、ノカルジオプシス属に由来するプロテアーゼ(配列番号1)の新規変異体及び類縁のプロテアーゼ、並びにそれらの医薬用途に関する。前記変異体は、膵臓外分泌機能不全症(PEI)の処置において改善された性能を示す。前記変異体は、リパーゼ及び/又はアミラーゼと組み合わされてもよい。医学的適応のその他の例は:消化障害、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表への言及
本出願は、コンピューター読み取り可能な形式の配列表を含む。そのコンピューターが読み取り可能な形式は、本明細書中に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換:A1T;I3V;G12;R14I;T22A;N23D;G34A;R38;T41A;T44K;N47;G48D;E53K;Q54L, D;T68A, R, S;S69T;L73P;V88A;S99P;P124L;E125;M131V;T151I;R165;及びT166Aから選択された少なくとも1つの置換を含んで成る前記プロテアーゼに関する。配列番号1のプロテアーゼは、ノカルジオプシス属(Nocardiopsis sp.)由来の野性型プロテアーゼである。
【0003】
本発明はまた、任意にリパーゼ及び/又はアミラーゼと組み合わせた、これらのプロテアーゼの医薬用途にも関する。医学的適応の例は:消化障害、膵臓外分泌機能不全症(PEI)、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置である。
【背景技術】
【0004】
膵臓酵素サプリメントの形でのいくつかの市販の医薬品が、膵臓外分泌機能不全症の処置のために知られている。それらの製品中の有効成分は、消化酵素、主にアミラーゼ、リパーゼ及びプロテアーゼであり、そしてそれらは膵臓において通常産生され、そして小腸上部(十二指腸)に分泌される。このような医薬品に使用される酵素は、ウシ又はブタの膵臓に由来する。
【0005】
WO 2005/115445は、医薬用途、例えばPEIの処置のための、配列番号1のプロテアーゼ及び関連するプロテアーゼの使用を説明する。
【0006】
WO 2006/136159は、医薬用途、例えばPEIの処置のための、配列番号2のリパーゼ及び関連するリパーゼの使用を説明する。
【0007】
WO 2006/136161は、医薬用途、例えばPEIの処置のための、配列番号3、4、及び5のアミラーゼ、並びに関連するアミラーゼの使用を説明する。
【0008】
ノカルジオプシス属由来のプロテアーゼ(配列番号1)、並びにその調製及び様々な工業的応用は、WO 88/03947及びWO 01/58276において説明される。関連するプロテアーゼは、WO 2004/111220、WO 2004/111222、WO 2004/111223、WO 2004/111221、WO 2005/035747、WO 2004/111219、WO 2005/123911、及びJP 2003284571-A(GENESEQP:ADF43564)において説明される。
【0009】
本発明は、改善された性能、例えばインビボにおける改善された見掛けのタンパク質消化率、改善されたpH比(pH5.6/pH8)、及び/又は低減された毒性の新規プロテアーゼを提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換:A1T;I3V;G12;R14I;T22A;N23D;G34A;R38;T41A;T44K;N47;G48D;E53K;Q54L, D;T68A, R, S;S69T;L73P;V88A;S99P;P124L;E125;M131V;T151I;R165;及びT166Aから選択された少なくとも1つの置換を含んで成る前記プロテアーゼに関する。
【0011】
本発明は、任意にリパーゼ及び/又はアミラーゼと組み合わせた、医薬品としての使用のための前記プロテアーゼにさらに関する。
【0012】
さらに、本発明は、消化障害、膵臓外分泌機能不全症、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置のための医薬品の製造のための、任意にリパーゼ及び/又はアミラーゼと組み合わせた前記プロテアーゼの使用に関する。
【0013】
本発明はまた、消化障害、膵臓外分泌機能不全症、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置における使用のための、任意にリパーゼ及び/又はアミラーゼと組み合わせた前記プロテアーゼにも関する。
【0014】
本発明は、少なくとも1つの医薬的に許容し得る助剤(auxiliary material)と一緒に、任意にリパーゼ及び/又はアミラーゼと組み合わせた前記プロテアーゼを含んで成る医薬組成物にさらに関する。
【0015】
最後に、本発明は、任意にリパーゼ及び/又はアミラーゼと組み合わせた前記プロテアーゼの治療的有効量を投与することによる、消化障害、膵臓外分泌機能不全症、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置方法に関する。
【0016】
本発明の詳細な説明
酵素
「プロテアーゼ」という用語は、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドと本明細書中に規定される。プロテアーゼは、ペプチド結合を加水分解する酵素である。それは、EC 3.4酵素グループ(それらの13個のサブクラスのそれぞれを含み、これらの酵素は以降「EC 3.4.‐.‐グループに属する」と言及される)に属するあらゆる酵素を含む。EC 番号は、それぞれEur. J. Biochem. 1994, 223, 1-5; Eur. J. Biochem. 1995, 232, 1-6; Eur. J. Biochem. 1996, 237, 1-5; Eur. J. Biochem. 1997, 250, 1-6;及びEur. J. Biochem. 1999, 264, 610-650において公開された付録1〜5を含めた、NC-IUBMB, Academic Press、San Diego, Californiaからの酵素命名法1992を参照する。前記命名法は、定期的に補足及び更新される;例えばhttp://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzymeのワールドワイドウェブを参照のこと。
【0017】
特定の実施形態では、本発明のプロテアーゼは、ノカルジオプシス属の菌株由来のプロテアーゼから成る群から選択される。
【0018】
2種類のアミノ酸配列間の関連性は、「同一性」というパラメーターによって記載される。
【0019】
本発明の目的のために、2種類のアミノ酸配列が、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)バージョン2.8.0からのNeedleプログラムを使用して整列される。このNeedleプログラムは、Needleman, S. B. and Wunsch, C. D. (1970) J. Mol. Biol. 48, 443-453に記載の広範囲アラインメント・アルゴリズムを実装する。使用される置換マトリックスは、BLOSUM62であり、ギャップ開始ペナルティーは10であり、そしてギャップ伸長ペナルティーは0.5である。
【0020】
本発明のアミノ酸配列(「発明の配列」;例えば配列番号6の第1〜188アミノ酸)と、異なるアミノ酸配列(「外来の配列」;例えば配列番号1の第1〜188アミノ酸)の間の同一性の程度は、いずれか最も短い方の「発明の配列」の長さ又は「外来の配列」の長さにより割り算した、上記2種類の配列のこのアラインメントにおける完全な一致の数として計算される。結果は、パーセント同一性で表される。
【0021】
「発明の配列」と「外来の配列」が重複部分の同じ位置に同一のアミノ酸残基を持っているとき、完全な一致が生じる(以下のアラインメントの例では、これが「|」によって表される)。配列の長さは、配列内のアミノ酸残基の数である(例えば配列番号6の長さは188である)。以下の単なる仮想上のアラインメントの例において、重複部分は、配列1のアミノ酸配列「HTWGER‐NL」;又は配列2のアミノ酸配列「HGWGEDANL」である。その例において、ギャップは「‐」によって示される。
【0022】
【化1】

【0023】
従って、配列2に対する配列1の同一性のパーセンテージは、6/12=0.5であり、50%に相当する。特定の実施形態では、例えば配列番号1の第1〜188アミノ酸との、若しくはそれに対するポリペプチドのアミノ酸配列の同一性のパーセンテージは、i)BLOSUM62置換マトリックス、10のギャップ開始ペナルティー、及び0.5のギャップ伸長ペナルティーを用いたNeedleプログラムを使用して上記2種類のアミノ酸配列を整列し;ii)上記アラインメントにおいて完全な一致の数をカウントし;iii)上記の完全な一致の数を上記2種類のアミノ酸配列のうち最も短い長さによって割り算し;そしてiv)iii)の割り算の結果をパーセンテージに変換することによって測定される。本発明の他の配列、例えば配列番号2の第1〜269アミノ酸などとの、若しくはそれに対する同一性のパーセンテージは、類似の方法で計算される。
【0024】
追加の特定の実施形態では、本発明のプロテアーゼは、配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、又は少なくとも92%;少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は99%の同一性の程度を有する。
【0025】
本発明では、アミノ酸残基位置の特定の番号付けを採用している。番号付けシステムは、別のプロテアーゼのアミノ酸配列と、(先に記載した)置換マトリックスBLOSUM62、ギャップ開始ペナルティー10、及びギャップ伸長ペナルティー0.5を用いたNeedleプログラムを使用して整列させた配列番号1に開示されたプロテアーゼのアミノ酸配列が起源である。
【0026】
アミノ酸置換に関して、配列番号1と比較して、以下の命名法が使用される:(配列番号1における)本来のアミノ酸、(アラインメントにおける)位置、(他のプロテアーゼにおける)置換されたアミノ酸。従って、配列番号1を基準にして、例えば配列番号6の125位におけるアスパラギン酸(D)での、配列番号1におけるグルタミン酸(E)の置換は、「E125D」と示される。多重突然変異は、加法記号(「+」)によって切り離される、例えば「T44K+S99P」は、(例えば配列番号8におけるような)それぞれトレオニン(T)をリジン(K)で、及びセリン(S)をプロリン(P)で置換する44位及び99位における突然変異を表す。さらに、G12D, N, Hなどの表現は、12位のグリシン(G)がアスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、又はヒスチジン(H)のいずれかによって交換されることを意味する。
【0027】
配列番号1の12位におけるグリシンの、その他のアミノ酸への置換は、「G12」で示される。
【0028】
配列番号1の38位におけるアルギニンの、その他のアミノ酸への置換は、「R38」で示される。
【0029】
配列番号1の47位におけるアスパラギンの、その他のアミノ酸への置換は、「N47」で示される。
【0030】
配列番号1の125位におけるグルタミン酸の、その他のアミノ酸への置換は、「E125」で示される。
【0031】
配列番号1の165位におけるアルギニンの、その他のアミノ酸への置換は、「R165」で示される。
【0032】
さらなる特定の実施形態では、本発明のプロテアーゼは酸‐安定性であり、そしてそれは、A280=1.0に相当する希釈溶液の状態で、そして以下のバッファー:100mMのコハク酸、100mMのHEPES、100mMのCHES、100mMのCABS、1mMのCaCl2、150mMのKCl、0.01%のTriton(登録商標)X-100、pH3.5;中、37℃にて2時間インキュベーションに続く純粋なプロテアーゼ酵素のプロテアーゼ活性が、WO 01/58276の実施例2Cに記載のアッセイ(基質:Suc-AAPF-pNA、pH9.0、25℃)を使用して計測される場合に、基準活性の少なくとも40%(又は少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは少なくとも97%)であることを意味する。基準活性という用語は、純粋な形の、A280=1.0に相当する希釈溶液の状態での、そして以下のバッファー:100mMのコハク酸、100mMのHEPES、100mMのCHES、100mMのCABS、1mMのCaCl2、150mMのKCl、0.01%のTriton(登録商標)X-100、pH9.0中、5℃にて2時間のインキュベーションに続く、同じプロテアーゼのプロテアーゼ活性を指す(その活性は先に記載の通り測定される)。A280=1.0という用語は、バッファーブランクに対して1cmの路長のキュベットにおいて280nmにて1.0の吸光度をもたらす前述の純粋なプロテアーゼのそのような濃度(希釈度)を意味する。
【0033】
純粋なプロテアーゼという用語は、1.70超又はそれに等しいA280/A260比を有し(WO 01/58276の実施例2Eを参照のこと)、且つ、クーマシー染色されたSDS-PAGEゲルのスキャンによって、前述のプロテアーゼに相当するバンドにおいてそのスキャン強度の少なくとも95%を有することが計測される(WO 01/58276の実施例2Aを参照のこと)サンプルを指す。
【0034】
本発明の好ましいプロテアーゼ:
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換:A1T;I3V;G12;R14I;T22A;N23D;G34A;R38;T41A;T44K;N47;G48D;E53K;Q54L, D;T68A, R, S;S69T;L73P;V88A;S99P;P124L;E125;M131V;T151I;R165;及びT166Aから選択された少なくとも1つの置換を含んで成る前記プロテアーゼである。
【0035】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換:G12D, N, H;R38T;N47H, T, S;E125D及びR165S, H, G, Tから選択された少なくとも1つの置換を含んで成る前記プロテアーゼである。
【0036】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、少なくとも1つの置換:G12D, N, H;特にG12Dを含んで成る前記プロテアーゼである。
【0037】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、少なくとも1つの置換:N47H, T, S;特にN47Hを含んで成る前記プロテアーゼである。
【0038】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、少なくとも1つの置換:R165S, H, G, T;特にN165Hを含んで成る前記プロテアーゼである。
【0039】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換又は置換の組み合わせ:G12D;及び(N47H+G48D)から選択された少なくとも1つの置換を含んで成る前記プロテアーゼである。
【0040】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、置換の組み合わせ:(T41A+T68R+V88A);(G12N+T22A+N23D+N47T+R165H);及び(R14I+R38T+T151I)から選択された少なくとも1つの置換を含んで成る前記プロテアーゼである。
【0041】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換又は置換の組み合わせ:R38T、(T44K+S99P)、S69T、(S69T+E125D)、E125D、及びR165Sから選択された少なくとも1つの置換を含んで成る前記プロテアーゼである。
【0042】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するプロテアーゼであって、そして配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換又は置換の組み合わせ物:R38T;T44KとS99P;S69T;S69TとE125D;E125D;及びR165Sのうちの少なくとも1つを含んで成る前記プロテアーゼである。
【0043】
配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換:A1T;I3V;G12;R14I;T22A;N23D;G34A;R38;T41A;T44K;N47;G48D;E53K;Q54L, D;T68A, R, S;S69T;L73P;V88A;S99P;P124L;E125;M131V;T151I;R165;及びT166Aのうちの少なくとも1つを含んで成るプロテアーゼであって;さらに、以下の:
【0044】
(a)配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含んで成る、好ましくはそれを持っているプロテアーゼ;
(b)非常に低い(好ましくは低い、中程度、中程度に高い、高い、又は最も好ましくは非常に高い)ストリンジェンシー条件下、(i)配列番号1((本明細書中に援用される)WO 2005/035747の配列番号1のヌクレオチド900〜1463)のコード配列又は(ii)(i)の完全長の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるプロテアーゼ;及び
(c)好ましくは保存的な性質の、配列番号1の成熟ポリペプチドのアミノ酸の1つ以上(例えば数個)の置換、欠失、及び/又は挿入を加えて含んで成る変異体、から成る群から選択される前記プロテアーゼである。
【0045】
非常に低い〜非常に高いストリンジェンシー条件は、標準的なサザンブロッティング手順に従って、最適には12〜24時間の、5×SSPE、0.3%のSDS、200マイクロg/mlの剪断及び変性サケ精子DNA、そして非常に低い若しくは低いストリンジェンシー向きの25%のホルムアミド、中程度若しくは中程度に高いストリンジェンシー向きの35%のホルムアミド、又は高い若しくは非常に高いストリンジェンシー向きの50%のホルムアミドのいずれかの中での42℃のプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションと規定される。担体材料は、最終的に、2×SSC、0.2%のSDSを用いて、好ましくは45℃にて(非常に低いストリンジェンシー)、より好ましくは50℃にて(低いストリンジェンシー)、より好ましくは55℃にて(中程度のストリンジェンシー)、より好ましくは60℃にて(中程度に高いストリンジェンシー)、より一層好ましくは65℃にて(高ストリンジェンシー)、そして最も好ましくは70℃にて(非常に高いストリンジェンシー)それぞれ15分間3回洗浄される。
【0046】
保存的な性質のアミノ酸変化は、タンパク質の折りたたみ及び/又は活性に有意に影響を与えず、一般的に、1〜約30個のアミノ酸の小さい欠失;小さなアミノ末端又はカルボキシル末端伸長、例えばアミノ末端メチオニン残基など;最大で約20〜25残基の小さなリンカー・ペプチド;又は実効電荷又は他の機能、例えばポリ‐ヒスチジン路、抗原性エピトープ若しくは結合ドメインなどを変えることによって精製を容易にする小さな伸長を含む。
【0047】
変異体における変更の総数は、好ましくは18、17、又は16個である。より好ましくは、変更の総数は、15個であり、より一層好ましくは14個であり、より一層好ましくは13個であり、より一層好ましくは12個であり、より一層好ましくは11個であり、より一層好ましくは10個であり、より一層好ましくは9個であり、より一層好ましくは8個であり、より一層好ましくは7個であり、より一層好ましくは6個であり、より一層好ましくは5個であり、より一層好ましくは4個であり、より一層好ましくは3個であり、より一層好ましくは2個であり、そして最も好ましくは1個のアミノ酸である。
【0048】
1以上の相同親プロテアーゼをコードする1つ以上のポリヌクレオチドのシャフリングによって作り出された変異体であり;ここで、上記変異体は:38、44、69、99、125、及び165位から成る群から選択された親プロテアーゼ内の1以上の位置に対応する1つ以上の位置における変更を含んで成り、ここで、上記の(単数若しくは複数の)変更はその位置を占有するアミノ酸の置換に独立に対応し、且つ、ここで、上記変異体がプロテアーゼ活性を有する。
【0049】
「親」プロテアーゼという用語は、それに対する修飾、例えば(単数若しくは複数の)置換、挿入、欠失、及び/又は切断が、本発明の酵素変異体を作り出すために行われるプロテアーゼを意味する。この用語はまた、変異体が比較され、そして整列されるポリペプチドも指す。親は、天然の(野性型)ポリペプチドであるか、又はそれは、いずれかの好適な手段によって調製されたその変異体でさえあり得る。例えば親タンパク質は、アミノ酸配列が修飾されたか又は変更された天然のポリペプチドの変異体であってもよい。親はまた、同じ染色体遺伝子座を占有する遺伝子の2つ以上の別の形態(alternative form)のいずれかによってコードされるポリペプチドである対立遺伝子変異体であることもできる。
【0050】
用語「シャフリング」は、出発ヌクレオチド配列と比較して、交換された多くのヌクレオチドを持つ組み換えヌクレオチド配列(すなわち、シャフリング・サイクルに晒されたヌクレオチド配列)をもたらす2つ以上の相同ヌクレオチド配列の間の(単数若しくは複数の)ヌクレオチド配列の組み換えを意味する。
【0051】
先の実施例及び追加の実施例のそれぞれによるプロテアーゼ及びプロテアーゼ変異体は、本明細書中及び請求項で明確に述べる本発明の組み合わせ、使用、組成物及び方法で使用されるのが好ましい。
【0052】
インビボにおけるタンパク質消化率(Protein digestibility)、pH比(pH5.6/pH8)、及び/又は低減された毒性
【0053】
本発明のプロテアーゼ及びプロテアーゼ変異体は、改善された性能、例えばインビボにおける改善された見掛けのタンパク質消化率、改善/変更されたpH比(pH5.6/pH8)、及び/又は低減された毒性を示す。
【0054】
インビボにおける見掛けのタンパク質消化率は、誘発されたPEIを患っている雌Gottingenミニブタ(Ellegaard)において測定することもできる。そのブタに、好ましくは実施例4に記載の通り構成された21.3%のタンパク質、51.9%デンプン、2.6%の脂質を含む1日あたり2回の食餌を与える。そのブタには、水を自由に摂取させ、そして12:12時間の明暗サイクルのケージ内で飼育するのが好ましい。そのブタに、異なった量の配列番号1の参照プロテアーゼ(0mg、20mg、50mg及び120mg酵素タンパク質/食餌)を給餌直前にその中に混合した、1リットルの水、0.625gのCr2O3(マーカー)と混合した単回の250gの試験食を最初に与える。試験のために、本発明のプロテアーゼを、20mg、50mg及び120mg/食餌で投与する。回腸キームス(ileal chyme)を、回腸における食餌マーカー(緑色のキームス)の最初の出現後、合計8時間、氷上に回収し、そして分析まで−20℃にて保存する。別個の測定の間で、少なくとも1日間のウオッシュアウトが認められた。凍結回腸キームス・サンプルを、凍結乾燥し、粉砕し、そして乾物量(DM)と粗タンパク質について分析する。凍結乾燥とそれに続く103℃にて8時間のインキュベーションの後、DMを重量により評価する。粗タンパク質を、係数6.25を掛け算した窒素(N)として計算する。窒素含量は、燃焼によって、好ましくはDumas燃焼法を用いて、より好ましくは「Vario MAX CNS」元素分析装置を使用して測定される。Cr2O3は、クロマートに酸化され、そしてクロム含有量は、365nmの減衰により計算される。見掛けの前盲腸タンパク質消化率は、実施例4に示した式により計算され、そこでは、Cr2O3及びタンパク質は、g/100g乾物と表現される。
【0055】
本発明のプロテアーゼに関して、消化率(例えば見掛けの前盲腸タンパク質消化率など)は、投与量20、50及び120mg酵素タンパク質/食餌のうちの少なくとも1つで参照プロテアーゼの消化率と比較して、改善されていることが好ましい。その改善は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、又は少なくとも10%であることが好ましい。より好ましくは、前記改善は、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、又は少なくとも20%である。より一層好ましくは、前記改善は、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、又は少なくとも26%である。
【0056】
さらに、50%及び60%のタンパク質消化率(%CNA)を達成するのに必要とされるプロテアーゼの量(mg)は、個々の回帰曲線(見掛けの前盲腸タンパク質消化率対酵素投与量)からそれぞれ推定され得る。改善度50及び60(IF50及びIF60)は、50%及び60%のタンパク質消化率(%CNA)を達成するのに必要とされる参照プロテアーゼの量(mg)を、それぞれ、50%及び60%のタンパク質消化率(%CNA)を達成するのに必要とされる変異プロテアーゼの量(mg)で割り算することによって計算される。よって、参照プロテアーゼについて、IF50及びIF60は共に1.00である。
【0057】
本発明のプロテアーゼに関して、IF50及び/又はIF60値は、少なくとも1.05、少なくとも1.10、少なくとも1.15、少なくとも1.20、少なくとも1.25、少なくとも1.30、少なくとも1.35、少なくとも1.40、少なくとも1.45、又は少なくとも1.50であることが好ましい。
さらなる詳細に関しては、実施例4を参照のこと。
【0058】
pH比は、基質としてカゼインを用いて、より特に好適な赤色螢光染料で標識したカゼイン誘導体を用いて測定されるが、上記染料は(例えばpH5.6〜8.0の領域内で)pHに無反応であることが好ましい。蛍光の増大は、プロテアーゼ活性に比例する。好ましいpH8.0アッセイ・バッファーは100mMのTris/塩基であり、そして好ましいpH5.6アッセイ・バッファーは、25mlの0.2Mコハク酸を37.5mlの0.2M NaOHと混合することによって調製される。インキュベーションは、適温(例えば室温、例えば22℃)にて、好適な期間(例えば60分間)行われる。好ましい蛍光色素は、その場合、標準的なフルオレセイン・フィルタ(励起=590nm、発光=635nm)を使用することで得られた蛍光ペプチドを測定し得るBODIPY TR-Xである。pH5.6における活性対pH8.0における活性の比を、本発明のプロテアーゼと配列番号1の参照プロテアーゼについて測定し、そして本発明のプロテアーゼの比を、参照プロテアーゼの比に対して計算する。好ましい本発明のプロテアーゼは、参照プロテアーゼのそれに対して1超、好ましくは少なくとも1.05、少なくとも1.10、少なくとも1.15、少なくとも1.20、又は少なくとも1.25のそのような比を有する。さらなる詳細に関しては、実施例3を参照のこと。
【0059】
毒性は、ヒト結腸腺癌細胞株、例えばHT-29細胞(例えばDSMZ番号ACC 299)などに対するインビトロにおける毒性として測定し得る。その細胞を、96ウェル培養プレート内で、10%のFBS(例えばSigma製、カタログ番号F-6178)を補ったMcCoy’s 5A培地(例えばCambrex製)中、好ましくは4×104細胞/ウェル/200μlの密度で培養する。24時間の細胞のウェルへの順応後に、プロテアーゼを、0.5g/lのプロブミン(probumin)(Millipore)、1%のインスリン/トランスフェリン/セレニウム・サプリメント(例えばInvitrogen製)及び1%のペニシリンとストレプトマイシン(例えばInvitrogen製)を補った無血清培地(例えばDMEM:F12、Invitrogen)中に、三重反復試験において倍数希釈の9つの異なった濃度(w/vol酵素タンパク質)で添加し、そしてあと24時間インキュベートする。生存率を、Alamar Blue(例えばInvitrogen製)測定を使用することにより、細胞の代謝能力によって計測する。
【0060】
最大の代謝活性(100%)は、(プロテアーゼを加えなかった)対照の代謝活性として測定される。試験される所定のプロテアーゼに関して、その毒性比(toxicity ratio)は、参照プロテアーゼ(配列番号1)について最大代謝活性の50%が得られる濃度によって割り算された、このプロテアーゼについて最大代謝活性の50%が得られる濃度として計算される。本発明のプロテアーゼに関して、毒性比は、好ましくは少なくとも1.1、好ましくは少なくとも1.2、好ましくは少なくとも1.3、好ましくは少なくとも1.4、好ましくは少なくとも1.5、好ましくは少なくとも1.6、好ましくは少なくとも1.7、好ましくは少なくとも1.8、好ましくは少なくとも1.9、最も好ましくは少なくとも2.0である。毒性比については、実施例6に例示されている。良好な相関関係が、インビボ及びインビトロにおける毒性結果に関して見られた。
【0061】
より一層さらなる特定の実施形態では、任意に、追加のプロテアーゼ、例えば、哺乳動物のプロテアーゼ、例えばブタの膵臓抽出の形態のもの、又は微生物のプロテアーゼ、例えば細菌又は真菌の菌株、例えばバチルス(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、アスペルギルス(Aspergillus)、若しくはリゾプス(Rhizopus)などから得られたものを使用してもよい。プロテアーゼは、特にアスペルギルス、例えばアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)又はアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)などの菌株に由来することができ、特にAmano Pharmaceuticals、Japanから市販されている製品Prozyme 6(商標)(中性、アルカリ・プロテアーゼ EC 3.4.21.63)であることができる。
【0062】
遺伝子のクローニングと突然変異の導入
本発明のプロテアーゼ変異体などの酵素及び酵素変異体を得るために、遺伝子のクローニング及び(ランダム及び/又は部位特異的な)突然変異の導入のための標準的な手続きが使用できる。着目の遺伝子(例えば本明細書中の配列番号1をコードする遺伝子であるWO 2005/035747の配列番号1)は、制限部位を含むように設計されたプライマーを使用して増幅されることもできる。好適な技術のさらなる説明に関しては、Sambrook et al. (1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor lab., Cold Spring Harbor, NY; Ausubel, F. M. et al. (eds.) "Current protocols in Molecular Biology". John Wiley and Sons, 1995; Harwood, C. R., and Cutting, S. M. (eds.) "Molecular Biological Methods for Bacillus". John Wiley and Sons, 1990、及びWO 96/34946に言及されている。クローニング目的の関連する制限エンドヌクレアーゼを使用した着目の遺伝子と先のプラスミドの消化の後に、リガーゼを必要とする連結手順において、着目の遺伝子と上記プラスミドを繋ぐことができる。リガーゼ反応後に、連結混合物を、Ausubel, F. M. et al.に記載のようにE.コリ(E. coli)細胞を形質転換するのに使用し得る。形質転換したE.コリ細胞を液体培地中又は固形寒天プレート上で増殖させることができ、プラスミドをその形質転換細胞から取り出すことができ、そしてB.ズブチリス(B.subtilis)細胞を形質転換するのに使用できる。好適なコンピテント・バチルス細胞、例えばMB1510、168誘導体など(例えば受入番号1A1 168 trpC2でBGSCから入手可能である)を、WO 03/095658に記載の通り形質転換することもできる。
【0063】
ライブラリー構築のためのE.コリ・プラスミドに担持された組込みカセットをバチルスの形質転換に使用してもよい。方法は、WO 03/095658に詳細に記載されている。あるいは、インビトロにおいて増幅されたPCR-SOE産物(Melnikov and Youngman, Nucleic Acid Research 27, 1056)が使用されてもよい。
【0064】
プラスミド・ベクターは以下の要素:
i)シグナル・ペプチド・コード領域(例えば、バチルスNCIB 11837マルトース生成型アミラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)α‐アミラーゼ、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)ズブチリシン、バチルス・リケニホルミスα‐アミラーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス中性プロテアーゼ(nprT、nprS、nprM)、及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)prsA遺伝子から得られるもの)とそれに続く、配列番号1のノカルジオプシス属のプロテアーゼのプロドメイン(WO 2005/035747の配列番号1の第405〜899残基)及び成熟プロテアーゼ変異体遺伝子、
を含むこともできる。この配列は、以下の:
【0065】
ii)mRNA安定化セグメント(例えばWO 1999/043835に示されている、CryIIIa遺伝子由来のもの)を含んで成るDNA配列;
iii)マーカー遺伝子(例えばクロラムフェニコール耐性遺伝子);及び
iv)隣接セグメントとバチルス・ゲノムの間の相同組み換えによってゲノム組み込みを可能にするための、ポリヌクレオチドの上流と下流それぞれの5’及び3’隣接セグメントとしてのバチルス・ズブチリスからのゲノムDNA、
によって先行されていてもよく、且つ、それらに作動できるように連結されてもよい。
【0066】
本発明のプロテアーゼは、リパーゼと組み合わせて使用されてもよい。本明細書中では、リパーゼはカルボン酸エステル加水分解酵素EC 3.1.1.‐を意味し、そしてEC 3.1.1.3のトリアシルグリセロール・リパーゼ、EC 3.1.1.4のホスホリパーゼA1、EC 3.1.1.5のリゾホスホリパーゼ、EC 3.1.1.26のガラクトリパーゼ、EC 3.1.1.32のホスホリパーゼA1、EC 3.1.1.73のフェルロイル・エステラーゼなどの活性を含む。特定の実施形態では、リパーゼはEC 3.1.1.3のトリアシルグリセロール・リパーゼである。
【0067】
特定の実施形態では、リパーゼは、哺乳動物のリパーゼ、例えばブタの膵臓抽出物の形態のもの、又は微生物リパーゼ、例えば細菌又は真菌の菌株、例えばバチルス、シュードモナス、アスペルギルス、又はリゾプスなどに由来するものである。リパーゼは、特にリゾプスの菌株、例えばリゾプス・ジャバニカス(Rhizopus javanicus)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)、又はリゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)などに由来することができ、例えばAmano Pharmaceuticals、Japanから市販されている製品Lipase D Amano 2000(商標)(Lipase D2とも示される)であることができる。
【0068】
さらなる特定の実施形態では、本発明における使用のためのリパーゼは、例えばフミコーラ(Humicola)又はリゾムコール(Rhizomucor)などの真菌、カンジダ(Candida)などの酵母、又はシュードモナス(Pseudomonas)などの細菌に由来する、組み換えによって作り出された微生物リパーゼである。好ましい実施形態では、リパーゼは、フミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)又はリゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)の菌株に由来する。
【0069】
フミコーラ・ラヌギノサ(異名はサーモマイセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus))リパーゼは、例えばEP 305216に記載されており、特定のリパーゼ変異体は、例えばWO 92/05249、WO 92/19726、WO 94/25577、WO 95/22615、WO 97/04079、WO 97/07202、WO 99/42566、WO 00/32758、WO 00/60063、WO 01/83770、WO 02/055679、WO 02/066622、及びWO 2006/136159に記載されている。真菌リパーゼのより一層さらなる例は、EP 785994に記載されているフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)からのクチナーゼ、及びEP 869167に記載されているフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのホスホリパーゼである。酵母リパーゼの例は、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)からのリパーゼA及びB(リパーゼAはEP 652945に記載され、リパーゼBはUppenberg et al(Structure, 2 (1994), 293中)により記載されている)である。細菌リパーゼの例は、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)(EP214761に記載されている)に由来するリパーゼである。
【0070】
好ましい実施形態では、リパーゼは、WO 2006/136159にも記載されている配列番号2の第1〜269アミノ酸のリパーゼに対して少なくとも70%同一である。追加の好ましい実施形態では、配列番号2の第1〜269アミノ酸に対する同一性の程度は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%である。以下のアミノ酸配列:(i)配列番号2の第+1〜+269アミノ酸、(ii)配列番号2の第−5〜+269アミノ酸、(iii)配列番号2の第−4〜+269アミノ酸、(iv)配列番号2の第−3〜+269アミノ酸、(v)配列番号2の第−2〜+269アミノ酸、(vi)配列番号2の第−1〜+269アミノ酸、(vii)配列番号2の第+2〜+269アミノ酸、並びに(viii)(i)〜(vii)のリパーゼのうちの2つ以上の混合物のいずれかを含んで成る、好ましくはそれを持っているリパーゼが好ましい。特定の実施形態では、リパーゼは、(i)、(ii)、及び(i)と(ii)の混合物のいずれかのリパーゼから選択される。(i)と(ii)の好ましい混合物は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は少なくとも95%のリパーゼ(i)を含んで成り、そのパーセンテージは、WO 2006/136159の実施例5に記載の通り、エドマン法を使用したN末端配列決定法によって測定される。他の好ましい混合物は:(a)35〜75%、好ましくは40〜70%、より好ましくは45〜65%のリパーゼ(ii)を含んで成る組成物;(b)20〜60%、好ましくは25〜55%、より好ましくは30〜50%、最も好ましくは35〜47%のリパーゼ(i)を含んで成る組成物;(c)最大30%、好ましくは25%、より好ましくは20%、最も好ましくは最大16%のリパーゼ(vii)を含んで成る組成物;そして(d)(a)、(b)、及び/又は(c)のいずれかの組み合わせ物、例えば45〜65%のリパーゼ(ii)、35〜47%のリパーゼ(i)、及び最大16%のリパーゼ(vii)を含んで成る組成物である。
【0071】
より一層さらなる好ましい実施形態では、哺乳動物膵リパーゼの様なリパーゼは、1,3‐位特異的リパーゼである。
【0072】
本発明のプロテアーゼはまた、先に記載のリパーゼの有無にかかわらず、アミラーゼと組み合わせて使用されてもよい。
【0073】
本明細書中では、アミラーゼは、デンプン、並びに他の直鎖及び分岐オリゴ‐及び多糖の末端‐加水分解を触媒する酵素である。デンプンのアミロース部分は1,4‐α‐グルコシド結合に富んでおり、そしてアミロペクチン部分は1,4‐αだけでなく、1,6‐α‐グルコシド結合も含みより多くの分岐がある。特定の実施形態では、アミラーゼは、EC 3.2.1.1グループに属する酵素である。
【0074】
特定の実施形態では、アミラーゼは、哺乳動物のアミラーゼ、例えばブタの膵臓抽出物の形態のもの、又は微生物のアミラーゼ、例えば細菌又は真菌の菌株、例えばバチルス、シュードモナス、アスペルギルス、又はリゾプスなどに由来するものである。
【0075】
アミラーゼは、特に、アスペルギルスの菌株、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)又はアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)などに由来することができ、例えばAmano Pharmaceuticals、Japanから市販されているアスペルギルス・オリゼ由来の製品Amylase A1(商標)、又はExtract-Chemie、Germanyから市販されているアスペルギルス・メレウス由来のAmylase EC(商標)のどちらかであることができる。
【0076】
真菌アミラーゼの他の例は、WO 89/01969の実施例3にも記載されているアスペルギルス・ニガー・アミラーゼ(SWISSPROT P56271)、及びアスペルギルス・オリゼ・アミラーゼである。アスペルギルス・オリゼ・アミラーゼの変異体の例は、WO 01/34784に記載されている。
【0077】
バチルス・リケニホルミスに由来するα‐アミラーゼは、細菌のα‐アミラーゼの例である。このアミラーゼは、例えばバチルス・アミロリキファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、及びバチルス・ステアロサーモフィルスに由来する他の相同細菌α‐アミラーゼ、並びにその変異体と共に、例えばWO 99/19467に記載されている。追加のアミラーゼ変異体の例は、米国特許番号第4,933,279号、EP 722490、EP 904360、及びWO 2006/136161に記載されているものである。
【0078】
好ましいアミラーゼは、(i)配列番号5(例えばその第1〜481、1〜484、又は1〜486アミノ酸など)の第1〜481アミノ酸、配列番号3の第1〜481アミノ酸、及び/又は配列番号4の第1〜483アミノ酸を含んで成るアミラーゼである。好ましい実施形態では、アミラーゼは、(i)配列番号5の第1〜513アミノ酸、(ii)配列番号3の第1〜481アミノ酸、及び/又は(iii)配列番号4の第1〜483アミノ酸のいずれかに対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を持つか、又はそれらを含んで成るアミラーゼである。配列番号3〜5のアミラーゼは、例えばWO 2006/136161に記載の通り調製され得る。
【0079】
(i)、(ii)、又は(iii)のいずれかの追加の好ましい実施形態では、同一性の程度は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%である。
【0080】
ほとんどの場合、本発明の使用のためのプロテアーゼ、リパーゼ、及びアミラーゼ酵素(以下「酵素(群)」)は、動物、特に哺乳動物に由来する天然又は野生型の酵素、例えばヒト又はブタの酵素;植物、又は微生物に由来する天然又は野生型の酵素であることができるが、所望の酵素活性を示すいずれかのその突然変異体、変異体、断片など、並びに合成酵素、例えばシャッフルされた酵素、及びコンセンサス酵素などであることもできる。
【0081】
特定の実施形態では、酵素(群)は、ヒトを含めた動物に晒された場合に、低減された免疫応答しか生じないように設計された低アレルゲン性変異体である。免疫応答という用語は、酵素(群)に晒された動物の免疫系によるいずれかの反応として理解される。免疫応答の1つのタイプは、晒した動物においてIgEレベルの増大を引き起こすアレルギー応答である。低いアレルゲン性変異体は、当該技術分野で知られている技術を使用して調製され得る。例えば酵素(群)を、免疫応答に関連する酵素(群)の部分又はエピトープを遮蔽するポリマー部分と複合(conjugate)させてもよい。ポリマーとの複合体形成は、酵素(群)へのポリマーのインビトロにおける化学的カップリングを伴ってもよい(例えばWO 96/17929、WO 98/30682、WO 98/35026、及び/又はWO 99/00489に記載の通りである)。複合体形成は、それに加えて又はその代わりに、酵素(群)へのポリマーのインビボにおけるカップリングを伴ってもよい。そのような複合体形成は、酵素(群)をコードするヌクレオチド配列の遺伝子組み換えし、酵素(群)の中に追加のグリコシル化部位をコードするコンセンサス配列を挿入し、そして酵素(群)をグリコシル化することができる宿主において酵素(群)を発現することによって達成され得る、例えばWO 00/26354を参照のこと。低アレルゲン性変異体を提供する別の方法は、酵素(群)の自己オリゴマー化を引き起こすような酵素(群)をコードするヌクレオチド配列の遺伝子組み換えであり、酵素(群)モノマーが他の酵素(群)モノマーのエピトープを遮蔽できるようにし、その結果、オリゴマーの抗原性を低下させる。このような生成物とその調製方法は、例えばWO 96/16177に記載されている。免疫応答にかかわるエピトープは、様々な方法、例えばWO 00/26230及びWO 01/83559に記載のファージ・ディスプレイ法、又はEP 561907に記載のランダム・アプローチなどで同定され得る。エピトープがいったん同定されると、部位特異的突然変異誘発(例えばWO 00/26230、WO 00/26354及び/又はWO 00/22103を参照のこと)などの既知の遺伝子操作技術によりそのアミノ酸配列を変更して、免疫的性質が変化した酵素(群)を作り出すこともでき、及び/又はポリマーがエピトープを遮蔽するのに十分にエピトープに近接してポリマーの複合体形成を行うことができる。
【0082】
特定の実施形態では、プロテアーゼ、リパーゼ、及び/又はアミラーゼ酵素は、(i)pH4〜8、好ましくはpH3〜4、より好ましくはpH3.5にて安定であり;(ii)pH4〜9、好ましくはpH4〜8、より好ましくはpH6.5にて活性であり;(iii)ペプシンや他の消化プロテアーゼ(例えば膵臓プロテアーゼなど、すなわち、主にトリプシンやキモトリプシン)による分解に対して安定であり;及び/又は(iv)胆汁塩の存在下で安定及び/又は活性である。
【0083】
用語「と組み合わせて」は、プロテアーゼ、リパーゼ、及び/又はアミラーゼの本発明による併用を指す。併用は、同時、重複、又は連続であることができ、この3つの用語は、医師により作成された処方に照らして一般的に解釈される。
【0084】
用語「同時」は、例えば酵素群を1つ以上の別々の医薬製品として同時に投与する場合、又はそれらを同じ医薬組成物において投与する場合に、酵素群が同時に活性を有する状況を指す。
【0085】
用語「連続」は、1つ及び/又は2つの酵素群が最初に作用し、そして続いて2番目及び/又は3番目の酵素が作用するような事例を指す。所望の間隔で別々の医薬製剤として問題の酵素群を投与することにより、又は(例えば異なる放出時間を得る、改善された製品安定性を提供する、若しくは酵素投与量を最適化する観点から)問題の酵素群が別々に処方された(区画化された)1つの医薬組成物として問題の酵素群を投与することにより連続した作用を得ることができる。
【0086】
用語「重複」は、酵素の活性期間が完全に同時又は完全に連続するわけではない場合、すなわち、酵素群の両方又はすべてが活性である一定の期間が存在するような事例を指す。
【0087】
用語「a」は、例えば本発明のプロテアーゼ、リパーゼ、及び/又はアミラーゼとの関連で使用される場合、少なくとも1つを意味する。特定の実施形態では、「a」は、「1以上」又は「少なくとも1つ」を意味し、これはさらに1、2、3、4、5などを意味する。
【0088】
2つのアミノ酸配列の間の関連性は、(プロテアーゼの項において)先に詳細に記載したパラメーター「同一性」により説明される。定義と手順は、本発明による使用のためのリパーゼ及びアミラーゼにも類推して適用できる。
【0089】
本発明の酵素(群)の活性は、いずれかの好適なアッセイを使用して計測できる。ほとんどの場合、アッセイ‐pH及びアッセイ‐温度を問題の酵素に適合される。アッセイ‐pH値の例は、pH2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12である。アッセイ‐温度の例は、30、35、37、40、45、50、55、60、65、70、80、90、又は95℃である。
【0090】
好適な酵素(主にプロテアーゼ)アッセイの例は、本明細書中の実施例1に含まれており、好適なリパーゼ及びアミラーゼ・アッセイに関しては、それぞれWO 2006/136159及びWO 2006/136161にも言及されている。
【0091】
医薬品
本明細書では、用語「医薬品」は、疾患の症状を処置、予防及び/又は緩和する、好ましくは疾患の症状を処置及び/又は緩和する化合物、又は化合物の混合物を意味する。医薬品は、医師により処方されてもよく、又はそれは店頭販売の製品であってもよい。
【0092】
医薬組成物
本発明の酵素(群)の分離、精製、及び濃度は、従来の手段によって実施され得る。例えばそれらは、これだけに限定されるものではないが、遠心分離、濾過、抽出、スプレードライ、留去、又は沈殿を含めた従来の手順によって発酵ブロスから回収され、そしてこれだけに限定されるものではないが、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動方法(例えば分取用等電点電気泳動)、示差溶解度(例えば硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE又は抽出を含めた当該技術分野で知られている様々な手順によってさらに精製され得る(例えばProtein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照のこと)。
【0093】
例えば、配列番号2のリパーゼは、例えば米国特許番号第5,869,438号に基づいて、すなわち、上記米国特許の配列番号1の対応する修飾であるDNA配列の好適な宿主細胞における組み換え発現により調製され得る。このような修飾は、当該技術分野で知られているように、部位特異的突然変異誘発により行われることができる。
【0094】
特定の実施形態では、それぞれの酵素(群)の濃縮された固体又は液体の調製物が、別々に調製される。それらの濃縮物はまた、以下でさらに詳細に説明するように、少なくとも一部が、別々に処方されることもできる。
【0095】
さらなる特定の実施形態では、酵素(群)は、固形濃縮物の形で、本発明の医薬組成物に組み込まれる。酵素(群)は、当該技術分野で知られている様々な方法によって固体状態にできる。例えば、固体状態は、酵素分子が高度に規則形(ordered form)で配置されている結晶であるか、酵素分子が低い程度の規則形か若しくは不規則な形で配置されている沈殿物のいずれかであることができる。
【0096】
結晶化は、例えばEP 691982に記載されているように酵素(群)のpIに近いpHにおいて、及び例えば10mS/cm以下の低い導電率で行われ得る。特定の実施形態では、本発明による使用のためのリパーゼは、EP 600868B1の実施例1に記載のように調製できる結晶性リパーゼである。さらに、リパーゼ結晶は、WO 2006/044529に記載のように架橋され得る。
【0097】
塩、例えば硫酸アンモニウム及び/又は硫酸ナトリウムなどを用いた沈殿;有機溶剤、例えばエタノール及び/又はイソプロパノールなどを用いた沈殿;ポリマー、例えばPEG(ポリエチレングリコール)などを用いた沈殿を含めた様々な沈殿方法が当該技術分野で知られている。代替手段では、酵素(群)は、当該技術分野で知られている様々な方法(例えば凍結乾燥、(例えば減圧における)留去、及び/又はスプレードライ)により溶媒(通常、水)を取り除くことにより溶液から沈殿することができる。
【0098】
さらなる特定の実施形態では、酵素(群)の固体濃縮物は、その固体濃縮物の総タンパク質含量を基準にして、少なくとも50%(w/w)の活性酵素タンパク質含量を有する。より一層さらなる特定の実施形態では、固体濃縮物の総タンパク質含量に対する活性酵素タンパク質含量は、少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、又は少なくとも95%(w/w)である。タンパク質含量は、BIO-RAD製のGS-800較正濃度計を使用して、クーマシー染色したSDS-PAGEゲルの濃度計走査により;Rocheから市販されている市販のキット、例えばProtein Assay ESL(注文番号1767003)などを使用することによって;又は、WO 01/58276の実施例8に記載の方法に基づいて、当該技術分野で知られている通りに計測できる。
【0099】
好ましくは、酵素タンパク質は、クーマシー染色されたSDS-PAGEゲルの濃度計走査により計測される場合、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、92、94、95、96、又は少なくとも97%の本発明による使用のための固体酵素濃縮物のタンパク質範囲を構成する。そのような酵素群は、「単離された」酵素群又はポリペプチドに指定され得る。
【0100】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの医薬的に許容し得る助剤又は補助材料、例えば(i)少なくとも1つの担体及び/又は賦形剤;又は(ii)少なくとも1つの担体、賦形剤、希釈剤、及び/又はアジュバントと共に、好ましくは濃縮された酵素調製品、好ましくは固体濃縮物の形態で酵素(群)を含んで成る。任意の他の成分の限定されることのない例(すべて医薬的に許容し得る)は、崩壊剤、滑沢剤、緩衝剤、保湿剤、保存料、香味料、溶媒、可溶化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、噴射剤、及びビヒクルである。
【0101】
ほとんどの場合、とりわけ、問題の医学的適応に依存して、本発明の組成物は、好ましくは、経内投与(消化管を通した)を含めた当該技術分野で知られているすべての投与様式に対して設計され得る。よって、組成物は、固体、半固体、液体、又はガス状の形態であり得、例えば錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、微小球体、軟膏、クリーム、発泡体、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、ローション、及びエアゾールなどであり得る。医師は、最も好適な投与経路を選択し、そしてもちろん、危険である可能性があるかそうでなければ不利な投与経路を回避することを知っているであろう。
【0102】
そのため、以下の方法及び助剤もまた、単なる例示であるので、決して限定するものではない。
【0103】
固体経口調製物に関して、酵素(群)は、単独で、又はペレット、微小ペレット、錠剤、微小錠剤、散剤、顆粒剤又はカプセルを製造するための適切な添加物、例えば従来の担体、例えばラクトース、マンニトール、トウモロコシ・デンプン、若しくはジャガイモ・デンプンなどと;賦形剤若しくは結合剤、例えば結晶性若しくは微結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシ・デンプン、若しくはゼラチンなどと;崩壊剤、例えばトウモロコシ・デンプン、ジャガイモ・デンプン、若しくはカルボキシメチルセルロース・ナトリウムなどと;滑沢剤、例えばカナウバ蝋、ホワイト蝋セラック、水を含まないコロイド状シリカ、ポリエチレングリコール(PEGs、Macrogolという用語でも知られている)1500〜20000、特にPEG4000、PEG6000、PEG8000、ポビドン、タルク、モノレイン、若しくはステアリン酸マグネシウムなどと;並びに所望により、希釈剤、アジュバント、緩衝剤、保湿剤、保存料、例えばメチルパラヒドロキシベンゾアート(E218)など、着色料、例えば二酸化チタン(E171)など、及び香味料、例えばサッカロース、サッカリン、オレンジ・オイル、レモン・オイル、及びバニリンなどと組み合わせて使用され得る。経口調製物は、PEIの医学的適応の処置のための好ましい調製物の例である。
【0104】
酵素(群)はまた、ごく一般的に、水性溶媒、例えば水など、あるいは非水溶媒、例えば植物油又は他の類似するオイル、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばPEG4000など、若しくは低級アルコール、例えば直鎖か分枝C1-C4アルコール類など、例えば2‐プロパノール中;そして所望であれば、従来の補助材料(subsidiary material)又は添加物、例えば可溶化剤、アジュバント、希釈剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、及び保存料などと共に、それらを溶解、懸濁、又は乳化することによって液体経口調製物に処方されることができる。
【0105】
送達ビヒクルとしてのリポソームの使用は、可能性のある一般的な注目のもう1つの方法である。リポソームは、標的部位の細胞を融合し、そして内腔の内容物を細胞内に送達する。リポソームは、接触を維持する様々な手段、単離、結合剤及び同様のものを使用して、融合のために十分な時間、細胞に接触して維持される。本発明の1つの側面では、リポソームは肺内投与のためにエアゾール化されるように設計される。リポソームは、膜の融合を媒介する精製タンパク質又はペプチド、例えばセンダイウイルス又はインフルエンザウイルスなどにより調製され得る。脂質は、カチオン性又は両性イオン脂質、例えばホスファチジルコリンなどを含めた既知のリポソーム形成脂質のいずれかの有用な組み合わせであり得る。残る脂質は、通常、中性又は酸性脂質、例えばコレステロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール及び同等のものであろう。リポソームを調製するためには、Kato et al. (1991) J. Biol. Chem. 266:3361により記載された手順が使用され得る。
【0106】
各投与単位、例えば茶さじ一杯、大さじ一杯、カプセル、錠剤又は坐剤があらかじめ決まった量の酵素(群)を含む、例えばシロップ、エリキシル剤、散剤、及び懸濁液などの経口又は直腸投与のための単位剤形を提供し得る。同様に、注射又は静脈内投与のための単位剤形は、滅菌水、通常の生理的食塩水、又は別の医薬的に許容し得る担体中の溶液としての組成物中に酵素(群)を含んで成ることも可能である。
【0107】
用語「単位剤形」は、本明細書中に使用される場合、ヒト及び動物対象のための単位投与量として好適な物理的に別々の単位を指し、個々の単位は、所望する効果を生じるのに十分なあらかじめ決まった量の酵素(群)を含む。
【0108】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、経腸、好ましくは経口投与用である。
さらなる特定の実施形態では、経口組成物は、(i)酵素(群)の結晶を含む液体組成物;(ii)(高度に)精製された酵素(群)の沈殿物の液体懸濁液;(iii)固形又は可溶化された形で酵素(群)を含むゲル;(iv)固定された酵素(群)又は粒子及び同様のものに吸着された酵素(群)の液体懸濁液;あるいは(v)酵素(群)含有の散剤、ペレット、顆粒剤、又は微小球体の形、所望であれば酸性安定性コーティングで任意にコーティングされる錠剤、カプセル、又は同様のものの形での固体組成物である。
【0109】
組成物の別の特定の実施形態では、酵素(群)は区分され、すなわち、例えば分離用コーティングにより互いに分離される。
【0110】
組成物のより一層さらなる特定の実施形態では、プロテアーゼは、組成物中の他の酵素成分、例えばリパーゼ及び/又はアミラーゼなどと分離される。
【0111】
酵素(群)の投与量は、投与される特定の酵素(群)、投与の頻度、投与の様式、症状の重症度、及び副作用に対する対象の感受性、及び同様のものに依存して大きく変化するであろう。いくつかの特定の酵素群が、他のものより有力であり得る。
【0112】
本発明の酵素(群)の固体経口調製物の例は、次のものを含んで成る:(i)配列番号6、7、8、9、10、又は11を持つプロテアーゼ;(ii)配列番号2の第1〜269アミノ酸に対して少なくとも70%の同一性を有するリパーゼ;及び/又は(iii)a)配列番号5の第1〜513アミノ酸を持つアミラーゼ、b)配列番号3の第1〜481アミノ酸を持つアミラーゼ及びc)配列番号4の第1〜483アミノ酸を持つアミラーゼから成る群から選択されるアミラーゼに対して少なくとも70%の同一性を有するアミラーゼである。本発明のより好ましい固体経口調製物では、(ii)上記リパーゼは、が配列番号2の第1〜269アミノ酸を含んで成り、且つ、(iii)アミラーゼは、配列番号5の第1〜486アミノ酸を含んで成る。
【0113】
(i)、(ii)、及び(iii)の酵素(群)の予測される毎日の臨床額的投与量の例は、以下の通りである(すべてmg酵素タンパク質/kg体重(bw)である):(i)のプロテアーゼに関しては:0.005〜500、0.01〜250、0.05〜100、又は0.1〜50mg/kg bw;(ii)のリパーゼに関しては:0.01〜1000、0.05〜500、0.1〜250、又は0.5〜100mg/kg bw;(iii)のアミラーゼに関しては:0.001〜250、0.005〜100、0.01〜50、又は0.05〜10mg/kg bw、好ましくは(i)のプロテアーゼに関しては:0.05〜100、0.1〜50、又は0.5〜25mg/kg bw;(ii)のリパーゼに関しては:0.1〜250、0.5〜100、又は1〜50mg/kg bw;(iii)のアミラーゼに関しては:0.01〜50、0.05〜10、又は0.1〜5mg/kg bwである。
【0114】
アミド(ペプチド)結合、並びにアミノ及びカルボキシ末端は、経口投与におけるより高い安定性のために修飾され得る。例えばカルボキシ末端はアミド化され得る。
【0115】
消化障害、PEI、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置に好適な本発明の医薬組成物の特定の実施形態は、本発明の酵素(群)をペレット中に組み入れることによって調製され得る。ペレットは、ほとんどの場合、10〜90 %(w/w、得られるペレットの乾燥重量に対して)生理学的に許容されるの有機ポリマー、10〜90%(w/w、得られるペレットの乾燥重量に対して)のセルロース又はセルロース誘導体、及び80〜20%(w/w、得られるペレットの乾燥重量に対して)の酵素(群)を含んで成ることができ、有機ポリマー、セルロース又はセルロース誘導体及び酵素(群)の合計量をいずれの場合にも100%に調整する。
【0116】
生理学的に許容し得る有機ポリマーは、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール8000、ポリエチレングリコール10000、ポリエチレングリコール20000、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンのコポリマー、及び上述の有機ポリマーの混合物から成る群から選択され得る。ポリエチレングリコール4000が、生理学的に許容し得る有機ポリマーとして好ましい。
【0117】
セルロース又はセルロース誘導体は、例えばセルロース、酢酸セルロース、セルロース脂肪酸エステル、硝酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、及びメチルヒドロキシプロピルセルロースから選択され得る。セルロース、特に微結晶性セルロースが、セルロース又はセルロース誘導体として好ましい。
【0118】
得られるペレットは、好適な腸溶性コーティング、他の非機能性コーティングによりコートされるか、又はそのようなコーティングなしに直接的に使用され得る。さらに、得られるペレットは、先により詳細に記載された障害又は疾患の処置のために好適なサイズのカプセル、例えばハード・ゼラチン・カプセル又はゼラチン不含カプセルの中に充填され得る。本発明のある実施形態では、異なった酵素タイプ、特にリパーゼ、プロテアーゼ、及び/又はアミラーゼから作り出されたペレットが、前述のカプセル中に充填され得る。異なった酵素タイプでカプセルを充填したが、単一酵素タイプ(すなわち、リパーゼ、プロテアーゼ又はアミラーゼ)の用量が、特定された量のいずれかのリパーゼ、プロテアーゼ、及び/又はアミラーゼをカプセルに添加することによって、特定の適応症グループ又は特定の患者サブグループの特定のニーズに適合され得る、すなわち、リパーゼ:プロテアーゼ:アミラーゼのそれらの特定の比率で変化するカプセルが作り出され得る。
【0119】
本発明のプロテアーゼの好ましい医薬組成物、特に本明細書中において触れた好ましい賦形剤を含んで成る処方が、WO 2005/092370に記載されている。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、モノ‐、ジ‐、トリ‐アシルグリセリド及びポリエチレングリコール(PEG)のMacrogolグリセリド混合物、脂肪族C6-C22カルボン酸のモノ‐及びジ‐エステル、及びもしかするとわずかな割合のグリセロールと遊離ポリエチレングリコールを含んで成る。
【0120】
Macrogolグリセリド混合物に含まれるポリエチレングリコール(PEG)は、好ましくは1分子あたり平均して6〜多くとも40の酸化エチレン単位、又は200〜2000の分子量を有するPEGである。
【0121】
本発明のもう1つのさらなる側面では、界面活性剤、補助‐界面活性剤及び親油性相から成る、10以上のHLB値(親水性‐親油性バランス)及び30℃以上の融点を有するシステムを含んで成る本発明の酵素(群)の医薬組成物を提供する。好ましい実施形態では、前記システムは、10〜16、好ましくは12〜15のHLB値を有し、そして30〜600℃、好ましくは40〜500℃の融点を有する。特に、HLB値と融点によって特徴づけられるシステムは、モノ‐、ジ‐、及びトリアシルグリセリド並びにポリエチレングリコール(PEG)のモノ‐及びジエステルと、8〜20、好ましくは8〜18個の炭素原子を持つ脂肪族カルボン酸との混合物であり、それにより、上記ポリエチレングリコールは、好ましくは1分子あたり約6〜約32の酸化エチレン単位を有し、そして上記システムは任意に遊離グリセリン及び/又は遊離ポリエチレングリコールを含む。そのようなシステムのHLB値は、好ましくはPEGの鎖長によって調節される。Macrogolグリセリド混合物の調製のためにそのようなシステムの融点は、脂肪酸の鎖長、PEGの鎖長及び脂肪酸鎖の飽和度によって調節される、したがって、出発オイルにより調節される。
【0122】
「脂肪族C8-C18カルボン酸」とは、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)及びステアリン酸(C18)が、それらの酸が飽和されている場合、かなりの、そして様々な割合で含まれる混合物、及びその対応する不飽和C8-C18カルボン酸を示す。それらの脂肪酸の割合は、出発オイルに従って変化し得る。
【0123】
モノ‐、ジ‐、及びトリアシルグリセリド並びにポリエチレングリコール(PEG)のモノ‐及びジエステルと、8〜18個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸とのそのような混合物は、例えば200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコールと出発オイルとの間の反応によって得られ、上記出発オイルは、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノレン酸を、個別に含むか又は混合物として含む群から選択される脂肪酸とのトリグリセリド混合物から成る。任意に、そのような反応の生成物はまた、低い割合のグリセリン及び遊離ポリエチレングリコールを含むこともできる。
【0124】
そのような混合物は、例えば商品名Gelucire(登録商標)として市販されている。本発明の1つの好都合な実施形態は、Gelucire(登録商標)という商品名で知られている製品のうち、特に「Gelucire(登録商標)50/13」及び/又は「Gelucire(登録商標)44/14」が本発明の医薬調製物への使用のために好適な混合物を表すことを提供する。
【0125】
Gelucire(登録商標)50/13は、モノ‐、ジ‐、及びトリアシルグリセリド並びにポリエチレングリコールのモノ‐及びジエステルと、それぞれ結合された脂肪酸の主な割合を調整する、40%〜50%及び48%〜58%でのパルミチン酸(C16)及びステアリン酸(C18)との混合物である。カプリル酸(C8)及びカプリン酸(C10)の割合は、いずれの場合にも3%未満であり、そしてラウリン酸(C12)及びミリスチン酸(C14)の割合は、いずれの場合にも5%未満である。
【0126】
Gelucire(登録商標)44/14は、モノ‐、ジ‐、及びトリアシルグリセリド並びにポリエチレングリコールのモノ‐及びジエステルの混合物であり、パルミチン酸(C16)のそれぞれの割合が4〜25%であり、ステアリン酸(C18)は5〜35%であり、カプリル酸(C8)は15%未満であり、カプリン酸(C10)は12%未満であり、ラウリン酸(C12)は30〜50%であり、そしてミリスチン酸(C14)は5〜25%である。Gelucire(登録商標)44/14は、例えばパーム核油及びポリエチレングリコール1500を使用してアルコール分解/エステル化反応によって調製され得る。
【0127】
本発明の好ましい実施形態では、モノ‐、ジ‐、及びトリアシルグリセリド及びポリエチレングリコールの混合物、脂肪族C8-C18カルボン酸のモノ‐及びジエステル、及びおそらく低い割合のグリセリンと遊離ポリエチレングリコールを含むシステムを含んで成る本発明の酵素(群)の医薬組成物を提供し、そのシステムは、40℃〜55℃の融点及び12〜15の範囲のHLB値を有する。より好ましくは、前記システムは、44℃〜50℃の融点及び13〜14の範囲のHLB値を有する。あるいは、前記システムは、約44℃の融点及び14のHLB値を有するか、又は前記システムは、約50℃の融点及び13のHLB値を有する。
【0128】
処置方法:
本発明による使用のためのプロテアーゼは、任意に、リパーゼ及び/又はアミラーゼ(本発明の酵素(群))と組み合わせて、動物の種々疾患又は障害の治療的及び/又は予防的処置において有効である。用語「動物」は、すべての動物、そして特にヒトを含んでいる。動物の例は、非反芻動物及び反芻動物、例えばヒツジ、ヤギ、ウシ、例えば肉牛及び乳牛などである。特定の実施形態では、動物は非反芻類動物である。非反芻動物としては、単一の胃しか持たない動物、例えばウマ、(これだけに限定されるものではないが、子ブタ、成長したブタ、及び雌ブタを含めた)ブタ;家禽類、例えばシチメンチョウ、アヒル及び(これだけに限定されるものではないが、ブロイラー鶏、産卵鶏を含めた)ニワトリなど;仔牛;ペット、例えばネコ及びイヌなど;そして(これだけに限定されるものではないが、サケ、マス、ティラピア、ナマズ、及びコイを含めた)魚;及び(これだけに限定されるものではないが、小エビ及び車エビを含めた)甲殻類が挙げられる。特定の実施形態では、動物は哺乳動物、より特にヒトである。
【0129】
例えば、酵素(群)は、例えば胃及び膵臓から通常分泌される消化酵素群の不十分な産生及び/又は胃腸管への分泌によって、しばしば引き起こされる消化不良又は消化機能減退のような消化障害の処置において有用である。
【0130】
さらに、酵素(群)は、PEIの処置において特に有用である。PEIは、とりわけ、Borgstromテスト(JOP. J Pancreas (Online) 2002; 3(5):116-125)を用いて確かめることができ、そしてそれは、疾患及び病状、例えば膵臓癌、膵臓及び/又は胃の手術、例えば膵臓の全体的又は部分的切除、胃切除、後胃腸バイパス手術(例えばBillroth II胃腸吻合術);慢性膵炎;熱帯性膵炎;遺伝性膵炎;Shwachman Diamond症候群;膵臓又は総胆管の(例えば新生物からの)管閉塞症;及び/又は嚢胞性繊維症(多量の粘液が膵臓の管を塞ぐ遺伝病)により引き起こされ得る。酵素(群)はまた、急性膵炎の処置においても有用であり得る。
【0131】
消化障害に対する酵素(群)の効果は、EP 0600868に一般的に記載されているように計測でき、ここで、実施例2は、胃の条件下でのリパーゼの安定性を計測するためのインビトロにおける消化試験を説明し、そして実施例3は、胆汁酸塩の存在下でのリパーゼ活性についてのインビトロにおける消化試験を説明している。対応する試験が、プロテアーゼとアミラーゼのために構築され得る。また、WO 02/060474は、好適な試験、例えば(1)ブタ試験飼料における脂質消化を計測するためのインビトロ試験、及び(2)脂肪、タンパク質及びデンプンの消化が計測される、膵臓の不十分なブタによるインビボ試験を開示する。
【0132】
特定の実施形態では、本発明のプロテアーゼの効果は、実施例4のインビボにおけるスクリーニング試験を使用して計測される。
【0133】
もう1つの例として、酵素(群)は、I型及び/又はII型糖尿病の処置において、特に後期合併症を低減する観点から、通常この疾患に付随する消化障害の糖尿病処置における補助療法のために有用である。
【0134】
酵素(群)の糖尿病への効果が、WO 00/54799に記載の1つ以上の方法により、例えばグリコシル化されたヘモグロビンのレベル、血糖値、低血糖発作、脂溶性ビタミン、例えばビタミンA、D及びEなどの状態、必要とされるインスリンの日用量、体重指数、及び高血糖期間を制御することによって決定され得る。
【0135】
本明細書中に記載し、主張する本発明は、本明細書中に開示する具体的な実施形態によって範囲を限定されない。何故ならば、それらの実施形態は、本発明のいくつかの側面の例示として意図されるためである。いずれかの同等な実施形態が、本願発明の範囲内に存在することが意図されている。実際に、本明細書中に示され、そして記載されたものに加えて、本発明の様々な修飾が、前述の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような修飾もまた、添付の請求項の範囲内に存在することが意図されている。抵触する場合には、定義を含めた本開示が制御されるであろう。
【0136】
様々な引用文献が本明細書中に引用され、その開示がそれらの全体を本明細書中に援用する。
【実施例】
【0137】
使用される化学物質は、少なくとも試薬グレードの市販の製品であった。
実施例1:酵素アッセイ
ブタのパンクレアチンのリパーゼ、プロテアーゼ、及びアミラーゼ活性についてのアッセイは、FIP(Federation Internationale Pharmaceutique)並びに欧州薬局方及び米国薬局方によって公開されている。1FIP単位=1Ph.Eur.単位(欧州薬局方)。アッセイは、例えば:医薬酵素の標準化については、Federation Internationale Pharmaceutique, Scientific Section: International Commissionに記載されている。a) “Pharmaceutical Enzymes,” Editors: R. Ruyssen and A. Lauwers, E. Story Scientia, Ghent, Belgium (1978), b) European Pharmacopoeia。また、Deemester et al in Lauwers A, Scharpe S (eds.): Pharmaceutical Enzymes, New York, Marcel Dekker, 1997, p. 343-385も参照のこと。適切な酵素標準は、International Commission on Pharmaceutical Enzymes, Centre for Standards, Harelbekestraat 72, B-9000 Ghentから調達できる。
プロテアーゼFIPアッセイ、並びにプロテアーゼ、リパーゼ及びアミラーゼについての他の好適なアッセイを以下に記載する。
【0138】
プロテアーゼFIPアッセイ
プロテアーゼ活性を、FIPアッセイ(Federation Internationale Pharmaceutique)、1FIP単位=1Ph.Eur.単位(欧州薬局方)を使用して測定し得る。このアッセイは、他のFIPアッセイと共に以下に記載されている:Federation Internationale Pharmaceutique, Scientific Section: 医薬酵素の標準化のためのInternational Commission。a) “Pharmaceutical Enzymes,” Editors: R. Ruyssen and A. Lauwers, E. Story Scientia, Ghent, Belgium (1978), b) European Pharmacopoeia。また、Deemester et al in Lauwers A, Scharpe S (eds.): Pharmaceutical Enzymes, New York, Marcel Dekker, 1997, p. 343-385も参照のこと。このアッセイを、パンクレアチンにおけるプロテアーゼ活性を測定するのに使用した。微生物プロテアーゼのFIP活性を測定するために、エンテロキナーゼを添加することによって活性化段階を削除した。
【0139】
原理:基質カゼインを、pH7.5及び35℃の温度にてプロテアーゼにより加水分解する。反応を、トリクロロ酢酸の添加により停止させ、そして分解されなかったカゼインを濾過する。溶液に残るペプチドの量を、275nmにて分光測定によって測定する。
【0140】
活性の定義:プロテアーゼ活性を、既知のFIP活性の膵臓参照粉末(プロテアーゼ参照標準)に対する参照により、トリクロロ酢酸の5.0%(wt/vol、すなわち、5.0g/100ml)溶液により沈殿しないペプチドの量として測定する。
【0141】
材料と方法:
カゼイン溶液:
1.25gのカゼイン(乾物)、例えばCalbiochem番号218680を、実質的に透明な溶液が得られるまで水に懸濁する。pHを8.0に調整し、そしてその溶液を水で希釈し、100mlの終量にする。これ以降、水とは脱イオン水を意味する。
【0142】
ホウ酸バッファーpH7.5:
2.5gの塩化ナトリウム、2.85gの四ホウ酸二ナトリウム及び10.5gのホウ酸を、900mlの水に溶解し、pHをpH7.5+/−0.1に調整し、そして水で1000mlに希釈する。
【0143】
濾紙:
125mmの直径の折り畳まれたフィルター、例えばSchleicher & Schuell番号1573 1/2。濾紙の試験:フイルターを通して5mlの5.0% トリクロロ酢酸を濾過する。濾液の275nmでの吸光度は、ブランクとして濾過していないトリクロロ酢酸溶液を使用して、0.04未満であるべきである。
【0144】
プロテアーゼ参照標準:
International Commission on Pharmaceutical Enzymes, Centre for Standards, Harelbekestraat 72, B-9000 Ghent, Belgiumからの市販されているプロテアーゼ(膵臓)。標準はFIP/Ph.Eur.単位/gでラベルに表示されている活性(A)を有する。約130プロテアーゼ‐FIP/Ph.Eur.単位に相当する数量の正確に計量する。へらの先の海砂を加え、数滴の氷冷した0.02Mの塩化カルシウム(pH6.0〜6.2)により湿らせ、そして平らな先端のガラス棒で全体を粉砕する。約90mlの同じ氷冷した塩化カルシウム溶液により希釈し、そしてその懸濁液を氷浴中、15〜30分間撹拌する。pHを6.1に調整し、そしてその体積を、同じ塩化カルシウム溶液により100mlに調整する。5.0mlのこの懸濁液を、ホウ酸バッファーpH7.5により100mlに希釈する。活性試験のために、1.0、2.0及び3.0mlのこの溶液を基準として使用する(以下では、S1、S2及びS3と表す、標準(Standard)にちなんでS)。
【0145】
試験懸濁液:
約260FIP/Ph.Eur.単位に等しいサンプル量を使用して、プロテアーゼ参照標準について先に記載したように、サンプルの懸濁液を調製する。pHを6.1に調整し、そして水を100mlまで加える。5.0mlのこの溶液を、5mlの塩化カルシウム溶液と混合する。5mlのこの希釈を、ホウ酸バッファーにより100mlにさらに希釈する。アッセイのために2.0mlのこの溶液を使用する(以下では、サンプルをUnと表す、未知の活性(unknown activity)、番号(number)nのサンプル)
【0146】
アッセイ手順(活性試験):
このアッセイを、3種類の参照懸濁液(S1、S2、S3)及びサンプル懸濁液(Un)に対して、すべて三重反復試験で実施する。1サンプルあたり1つのブランクで十分である(それぞれS1b、S2b、S3b、及びUnbと示す)。ブラインド(B)を、分光光度計のための補正液体としてサンプル/標準を含まないで調製する。ホウ酸バッファーを、以下の通り試験管に加える:ブラインド(B)3.0ml;サンプル(Un)1.0ml;標準(S1、S2及びS3)それぞれ2.0、1.0及び0ml。プロテアーゼ参照標準を、S1、S2、及びS3に、以下の通りに加える:それぞれ1.0、2.0、及び3.0ml。試験懸濁液を、以下の通りに試料管に加える(Un):2.0ml。5mlのトリクロロ酢酸を、すべてのブラインドに加え(S1b、S2b、S3b、Unb及びB)、続いてすぐに混合する。すべての試験管を、ガラス・ストッパーで止め、基質溶液と一緒に一定温度(35+/−0.5℃)の水浴中に置く。
【0147】
温度が平衡にに達したら、時間0にて、2.0mlのカゼイン溶液を、試験管S1、S2、S3及びUnに加え、続いてすぐに混合する。正確に30分後、5.0mlのトリクロロ酢酸を、それぞれの試験管S1、S2、S3及びUnに加える。試験管を、水浴から取り出し、そして20分間室温にて放置して、タンパク質の沈殿を完了させる。それぞれの試験管の内容物を、同じフイルターを通して2度濾過し、そして濾液の吸光度を、補正液体として試験管Bからの濾液を使用して275nmにて計測する。FIP単位でのサンプル(Un)の活性を、標準(S1、S2、S3)の既知のラベルに示された活性(A)に対して計算する。それぞれのブラインドを引き算した吸光度(例えばS1の吸光度−S1bの吸光度)は、0.15〜0.60の間に存在すべきである。
【0148】
プロテアーゼ プロタザイム(Protazyme)AKアッセイ
基質:2.0mlの0.01% Triton X-100中に懸濁さした1錠のプロタザイムAK錠剤(Megazyme T-PRAK 1000)。均質な懸濁液を、撹拌することによって調製した。
温度:37℃
アッセイ・バッファー:100mMのHEPES/NaOH、0.01%のTriton X-100、pH7.0。
【0149】
500ul(マイクロ・リットル)のプロタザイムAK基質懸濁液と500ulのアッセイ・バッファーを、エッペンドルフチューブ内で混合し、そして氷上に置いた。20ulの(0.01%のTriton X-100中に希釈した)プロテアーゼ・サンプルを加えた。前記エッペンドルフチューブを、37℃に合わせたエッペンドルフ・サーモミキサーに移すことによって、アッセイを開始した。チューブを、その最も高い振盪速度(1400rpm)にてエッペンドル・サーモミキサーにより15分間インキュベートした。チューブを氷浴中に戻すことによって、インキュベーションを止めた。数分後に、チューブを冷やした遠心分離機(15000rpm、3分間)で遠心分離した。200ulの上清をマイクロタイタープレートに移した。OD650を、プロテアーゼ活性の測定値として読み取った。バッファー・ブラインドを、(酵素の代わりに)アッセイの中に含めた。
【0150】
プロテアーゼSuc-AAPF-pNAアッセイ
基質:Suc-AAPF-pNA(Sigma(登録商標) S-7388)。
アッセイ・バッファー:100mMのコハク酸、100mMのHEPES、100mMのCHES、100mMのCABS、1mMのCaCl2、150mMのKCl、0.01%のTriton(登録商標)X-100、HCl又はNaOHでpH9.0に調整した。
アッセイ温度:25℃。
【0151】
300μlの希釈したプロテアーゼ・サンプルを、1.5mlのアッセイ・バッファーと混合し、そして活性反応を、1.5mlのpNA基質(50mgを1.0mlのDMSOに溶解し、そして0.01%のTriton(登録商標)X-100により45倍にさらに希釈した)を加えることにより開始し、そして混合後に、A405の上昇を、プロテアーゼ活性の計測として、分光光度計によって観察した。すべての活性測定値がアッセイの用量‐応答曲線の直線部分の中にあることを確実にするために、プロテアーゼ・サンプルを活性測定前に希釈した。
【0152】
リパーゼ
基質:パラ‐ニトロフェニル(pNP)バレラート。
アッセイpH:7.7。
アッセイ温度:40℃。
反応時間:25分。
【0153】
黄色の消化された生成物は、405nmに独特の吸光度を有する。その量を分光測定によって測定する。リパーゼ活性を、既知の活性の酵素標準に対して決定し得る。活性をリポラーゼ単位(LU)で表し得る。1LU(リポラーゼ単位)は、先の標準状態下で1分あたり1mmolの滴定酪酸を放出する酵素の量である。1KLU=1000LU。
【0154】
アミラーゼ
基質:Phadebas錠剤(Pharmacia Diagnostics;架橋された不溶性の青色に着色されたデンプン・ポリマー、それはウシ血清アルブミン及び緩衝物質と混合され、そして錠剤に製造される)。
アッセイ温度:37℃。
アッセイpH:4.3。
反応時間:20分。
【0155】
水中に懸濁後に、デンプンをα‐アミラーゼにより加水分解し、可溶性青色フラグメントを得る。620nmで計測される、その得られる青色溶液の吸光度は、α‐アミラーゼ活性の関数である。1真菌α‐アミラーゼ単位(1FAU)は、標準のアッセイ条件下で1時間あたり5.26gのデンプン(Merck, Amylum solubile Erg. B. 6, Batch 9947275)を分解する酵素の量である。
【0156】
実施例2:プロテアーゼの調製
配列番号6、7、8、9、10、及び11のプロテアーゼ変異体を、標準的な手順で調製した、要するに:遺伝子内にランダム及び/又は部位特異的突然変異を導入し、、バチルス・ズブチリス宿主細胞を突然変異遺伝子で形質転換し、(例えばWO 2004/111220の実施例1に記載のとおり)形質転換宿主細胞を発酵させ、そしてその発酵ブロスからプロテアーゼを精製する。参照プロテアーゼ(配列番号1)を、同じような様式でバチルス・ズブチリスにおいて遺伝子組み換えにより作り出した。
【0157】
大量のプロテアーゼを精製するために、培養ブロスを、遠心分離(13.000rpm、20分間)して、澄んだ上清を得、そしてその上清を0.45μmのフイルターに通して濾過して、残りのバチルス宿主細胞を取り除いた。濾液のpHを、3MのTrisでpH9.0に調整し、そしてプロテアーゼ溶液を50mMのTris/HCl(pH9.0)により平衡化したMEP Hypercelカラム(PALL Life Sciences)に供した。カラム体積の数倍の平衡バッファーでカラムを洗浄した後、プロテアーゼを、50mMのCH3COOH/NaOH(pH4.0)で溶出した。溶出中に回収した画分を、(実施例1のエンドポイント・プロタザイムAKアッセイを使用して)プロテアーゼ活性について試験した。活性画分を、貯留し、そしてpHをpH4.5に調整し、そしてその貯留物を、20mMのCH3COOH/NaOH、50mMのH3BO3、1mMのCaCl2、pH4.5(SP平衡化バッファー)と同じ電導度を与えるために脱イオン水で希釈した。調整した貯留物を、SP平衡化バッファーで平衡化したSPセファロースHPカラムに供した。カラム体積の数倍のSP平衡バッファーでカラムを洗浄した後、カラムを、同じバッファー中、リニアなNaClグラジエント(0→0.5M)により5カラム体積にわたって溶出した。溶出中に回収した画分を、(プロタザイムAKアッセイを使用して)プロテアーゼ活性について試験した。カラムからの活性画分を、精製プロテアーゼ生成物として貯留した。
【0158】
より少量のプロテアーゼを調製するために(微量精製)、培養ブロスを、0.45μmのフイルターを通して濾過し細菌を取り除いた。フィルター・プレート(Whatman、Unifilter 800μl、25〜30μm MBPP)の各ウェルに、約100μlのMEP-HyperCelクロマトグラフィー媒体スラリーを加えた。クロマトグラフィー媒体を、クロマトグラフィー媒体をかき回すために激しく振盪(Heidolph、Titramax 101、1000rpm)しながら室温にて5分間インキュベートし、その後の吸引(Whatman、UniVac 3)により液体を除去することによって、200μlの25mM Tris、25mMのホウ酸ナトリウム、2mMのCaCl2、pH8.5で2回洗浄する。そして、100μlの結合バッファー(0.5MのTris、25mMのホウ酸ナトリウム、10mMのCaCl2、pH8.5)及び400μlの培養上清をフィルター・プレートのウェルに移した。各プロテアーゼについて、4つのウェルを、通常、微量精製した。プロテアーゼをクロマトグラフィー媒体に結合させるために、フィルター・プレートを、激しく振盪しながら30分間インキュベートした。吸引によって非結合材料を取り除いた後、結合ステップを繰り返した:100μlの結合バッファー及び400μlの培養上清を加え、振盪しながら30分間インキュベートし、そして吸引によって非結合材料を取り除いた。次に、MEP-HyperCel媒体を、0.1MのTris、25mMのホウ酸ナトリウム、2mMのCaCl2、pH8.5で1回洗浄し、25mMのTris、25mMのホウ酸ナトリウム、2mMのCaCl2、pH8.5で1回洗浄し、10mMのTris、25mMのホウ酸ナトリウム、2mMのCaCl2、pH8.5で1回洗浄した。それぞれの洗浄ステップの際には、200μlのバッファーを加え、そして、プレートを激しい振盪下、室温にて10分間インキュベートし、そしてバッファーを吸引により取り除いた。クロマトグラフィー媒体からのプロテアーゼを遊離させるために、100μlの溶出バッファー(50mMの酢酸ナトリウム、2mMのCaCl2、pH4.3)を加え、そしてフィルター・プレートを激しく振盪しながら室温にて10分間インキュベートした。プロテアーゼを含む溶出バッファーを、吸引によって96ウェル・プレートに移した。溶出ステップを、100μlの溶出バッファーを加え、室温にて10分間浸透し、そして同じ96ウェル・プレートに回収することによって繰り返した。貯留した微量精製したプロテアーゼを、−18℃にて保存した。
【0159】
酵素タンパク質濃度は、以下に記載の通り活性部位滴定によって決定されたか、又はS.C.Gill & P.H. von Hippel, Analytical Biochemistry 182, 319-326, (1989)により概説された原理を使って、A280値とアミノ酸配列(アミノ酸組成)に基づいて計算された。酵素タンパク質濃度はまた、例えばWO 2004/111221の実施例3に記載の通り、アミノ酸分析によって決定されてもよい。
【0160】
活性部位滴定による酵素濃度の測定を、以下の通り、強結合オオムギ・キモトリプシン・インヒビター2A(CI-2A;Ludvigsen, S., Shen, H.Y., Kjaer, M., Madsen, J.C., Poulsen, F.M.: Refinement of the three-dimensional solution structure of barley serine proteinase inhibitor 2 and comparison with the structures in crystals. J. Mol. Biol., vol 222, pp. 621-635, 1991を参照のこと)を使用して行った。マイクロタイタープレート内で、微量精製したプロテアーゼ(0.1MのTris、0.0225%のBrij 35(ポリオキシエチレン(23)ラウリル・エーテル)、pH8.6で適切に希釈した)の20μlのアリコートを、20μlのCI-2A(通常、0.1MのTris、0.0225%のBrij 35、pH8.6で2、1.5、1、0.5、0.25、0.125、0.0625及び0μmに希釈した)と混合した。振盪しながらの1時間のインキュベーション後に、残留活性を、160μlの基質溶液(通常、DMSO中、200mg/mlのストックから作られる0.1MのTris、0.0225%のBrij 35、pH8.6中、0.4mg/mlのSuc-Ala-Ala-Ala-pNA)を加え、そして405nmにて3分間、10秒ごとに吸光度を計測することによって計測した(Spectramax, Molecular Devices)。活性プロテアーゼ濃度を、残留活性対(有意な)残留活性を有するウェルの阻害剤濃度の線形回帰法から計算した。
表1は、選択された本発明の変異体の一覧である。これらのプロテアーゼを、以下の実施例に記載の通り試験した。
【0161】
【表1】

【0162】
実施例3:改善されたpH比を有するプロテアーゼ
プロテアーゼ変異体VAR294(配列番号6)を、pH5.6及びpH8.0におけるプロテアーゼ活性について試験し、そして以下に記載の通り、参照プロテアーゼ(配列番号1)の対応する活性と比較した。
【0163】
プロテアーゼ・アッセイ
Molecular Probes製のEnzChek(登録商標)Protease Assay Kit(Invitrogen、カタログ番号E6639)を使用した。基質として、それは、pH非感受性の赤色蛍光BODIPY(登録商標)TR-X色素で濃密に標識されているカゼイン誘導体を使用し、複合体の蛍光のほぼすべてのクエンチングをもたらした。プロテアーゼに触媒された加水分解は、高度に蛍光BODIPY TR-X色素標識されたペプチドを放出する。付随する蛍光の増大は、プロテアーゼ活性に比例している。
【0164】
試薬:
赤色蛍光(200μg)のためのEnzChek Protease Assay Kitの1本のチューブを、200μlの0.1M NaHCO3(pH8)中に可溶化して、1mg/mLの原液を得る。
【0165】
アッセイ・バッファーpH8を、100mMのTris/塩基をHClでpH8.0に調整することによって調製する。6.25μg/mlの標識基質を加える。
【0166】
アッセイ・バッファーpH5.6を、25mlの0.2Mコハク酸と37.5mlの0.2M NaOHとを混合することによって調製する(参考文献:Gomori, Meth. Enzymol. 1, 141 (1955))。添加したプロテアーゼを相殺するために、1.143mlの1M HClを、アッセイ・バッファー100mlに対して加える。その結果、バッファーのpHは約5.0に下げられる。5μg/mlの標識基質を加える。
【0167】
サンプル分析:
10μlの0.5μM プロテアーゼ溶液(参照プロテアーゼ、プロテアーゼ変異体、すべて二重反復試験)を、384ウェル・プレート内で40μlのそれぞれのバッファーと混合する。室温にて60分間のインキュベーション;750rpm/分にて激しく振盪。蛍光を、t=0及びt=60分にて蛍光マイクロ・プレート・リーダーにより読み取る。BODIPY TR-X標識ペプチドは、589/617nmの励起/発光最大値を有する。標準フルオレセイン・フィルター(励起=590nm、発光=635nm)を、BODIPY TR-X色素標識ペプチドを検出するのに使用した。
【0168】
計算:
t=60分の時点のpH5.6における読み取りは、t=0と比較して4倍高くなければならない。pH5.6における読み取りとpH8における読み取りの間の比を計算する。得られた数は、参照酵素のそれぞれの数より1.4倍大きくなければならない。変異体についての比を、各96ウェル・プレート上の8種類の参照ウェルの平均比と比較する。計算のために、両pH値においてt=0をt=60から引き算する。
【0169】
結果
以下の表2に挙げた変異体は、1.00のpH5.6/pH8比を有する参照プロテアーゼと比較して、pH5.6/pH8.0にて異なった活性比を有する。
【0170】
【表2】

【0171】
実施例4:プロテアーゼ有効性についてのインビボ・スクリーニング試験
精製プロテアーゼ変異体VAR294、VAR295、VAR375、VAR213、及びVAR307(配列番号6、7、8、9、及び10)を、誘発された膵臓外分泌機能不全症(PEI)を患っている3〜4匹の雌Gottingenミニブタ(Ellegaard)の群におけるプロテアーゼ・スクリーニング試験において研究した。Tabeling et al. (Tabeling et al. (1999): “Studies on nutrient digestibilities (pre-caecal and total) in pancreatic duct-ligated pigs and the effects of enzyme substitution”, J. Anim. Physiol. A. Anim. Nutr. 82: 251-263)及びGregory et al. (Gregory et al. (1999): “Growth and digestion in pancreatic duct ligated pigs, Effect of enzyme supplementation” in “Biology of the Pancreas in Growing Animals” (SG Pierzynowski & R. Zabielski eds), Elsevier Science BV, Amsterdam, pp 381-393)に別段の記載があるとおり、すべてイソフルオラン麻酔下、且つ、約25kgの体重にて、ミニブタにおいて膵管の結紮により膵臓外分泌機能不全症(PEI)を誘発し、そしてまた、それらに回腸‐盲腸リエントリー・カニューレも取り付けた。研究を開始する前、少なくとも4週間の期間を、手術からの回復に割り当てた。研究開始前に、それぞれのブタのPEI状態を、便キモトリプシン試験(Immundiagnostik AG、Wiesenstrasse 4, D-64625 Bensheim, Germanyからカタログ番号K6990で市販されている)により確認した。
【0172】
アッセイ
研究の間、ブタを、12:12時間の明暗サイクルの改良した代謝ケージ内で飼育し、水を自由摂取させ、そして1日に2回の食餌を与えた。
【0173】
試験食
試験食は、21.3%のタンパク質、51.9%のデンプン、2.6%の脂肪を含み、そして以下の組成(g/100g乾物)を有した:魚粉3.5、家禽肉粉10.2、小麦粉29.5、玄米14、ジャガイモ・デンプン11、トウモロコシ・デンプン14、カゼイン5.9、セルロース粉末4.3、ビタミン、ミネラル及び微量元素7.6(ブタ/仔ブタに対する栄養所要量による、例えばWO 01/58276の表Aを参照のこと)。
【0174】
実行
プロテアーゼ有効性を評価するために、1リットルの水、0.625gのCr2O3(酸化クロム・マーカー)と混合した単回の250g試験食であって、与える直前に異なる量の配列番号1の参照プロテアーゼ(0mg、20mg、50mg及び120mgの酵素タンパク質、0、500、1250、及び3000FIP Uのプロテアーゼ/食餌と同等)を混合したものをブタに与えた。試験自体に関しては、参照プロテアーゼのそれとインビボにおける有効性を比較するために、本発明のプロテアーゼ変異体をmg酵素タンパク質に応じて投与した(20mg、50mg及び120mg/食餌)。
【0175】
回腸中の食餌マーカー(緑色のキームス)の最初の出現後、合計8時間、回腸キームスを氷上に回収し、分析まで−20℃にて保存した。少なくとも1日間、分離測定の間にウオッシュアウトを行った。
【0176】
分析
凍結回腸キームス・サンプルを凍結乾燥し、粉砕し、そして乾物量(DM)及び粗タンパク質について分析した。
【0177】
DMを、凍結乾燥とそれに続く103℃にて8時間のインキュベーション後に重量によって測定した。
【0178】
粗タンパク質を、係数6.25を掛け算した窒素(N)として計算した、すなわち、Animal Nutrition, 4th edition, Chapter 13 (Eds. P. McDonald, R. A. Edwards and J. F. D. Greenhalgh, Longman Scientific and Technical, 1988, ISBN 0-582-40903-9)で述べられているように、粗タンパク質(g/kg)=N(g/kg)並びに6.25である。窒素含量を、「Vario MAX CNS」元素分析装置(Elementar Analysensysteme GmbH)を使用して、Dumas燃焼法を用いて測定した(PG Wiles, IK Gray, RC Kissling, J AOAC Int. 1998 May-Jun; 81(3):620-32)。
【0179】
Cr2O3をクロマートに酸化し、そしてクロム含量を、365nm(分光光度計)の減衰によって、Petry and Rapp in Zeitung fur Tierphysiologie (1970), vol. 27, p. 181-189. (Petry & Rapp 1970; Z. Tierphysiol. 27; 181-189)によって記載の通り計算した。
見掛けの前盲腸タンパク質消化率の計算を、以下の式に従ってマーカ法によって行った:
【0180】
【化2】

【0181】
ここで、Cr2O3及びタンパク質を、g/100g乾物として表した。
さらに、それぞれ、50%及び60%のタンパク質消化率(%CNA)を達成するのに必要とされるプロテアーゼの量(mg)を、個々の回帰曲線から推定した(excel)。参照プロテアーゼの50%及び60%のタンパク質消化率(%CNA)とより効率的に比較するために、いわゆる改善度「IF」を計算した。各プロテアーゼ変異体についてのIF50及びIF60値を、50%及び60%のタンパク質消化率(%CNA)を達成するのに必要とされる参照プロテアーゼの量(mg)を、それぞれ50%及び60%のタンパク質消化率(%CNA)を達成するのに必要とされるプロテアーゼ変異体の量(mg)で割り算することによって決定した。
【0182】
結果と結論
回腸タンパク質消化率の結果を、以下の表3に示す。プロテアーゼ投与量を、食餌(mg/食餌)あたりの酵素タンパク質のミリグラムで示す。
表4で触れたすべての変異体もまた、試験した。それらはすべて、0.8以上のIFを有していた。
【0183】
【表3】

【0184】
実施例5:医薬プロテアーゼ組成物
ペレット
プロテアーゼ変異体VAR295(配列番号7)の液体濃縮物を、実施例2に記載の通り調製する。その液体濃縮物を、病原体を濾過し、そしてスプレー・ドライし、そして乾燥粉末のプロテアーゼ・タンパク質量を計測する。(規制上の要件に従って)50%超のプロテアーゼ・タンパク質量であることが好ましい。500gの乾燥プロテアーゼ粉末を、200gの微結晶性セルロース及び300gのポリエチレングリコール4000(Macrogol(商標)4000)と市販のミキサーで予混合した。十分な量の一般的に使用される湿潤剤を加え、そして得られた湿った塊状物を室温にて十分に混合する。次に、均質化された塊状物を、(特定の穴径を有する、例えば約0.8mmの穴径を有する穴あけダイを備えた)市販の押出機で押出成形して、円柱状のペレットを形成する。作り出された押出物を、必要な量の一般的に使用される湿潤剤を添加することによって、市販のスフェロナイザー(spheronizer)を用いて、球状ペレットに丸める。ペレットを、市販の真空乾燥機内で約40℃の生成物温度にて乾燥させる。次に、乾燥したペレットを、適切なサイズのふるい、例えば0.7及び1.4mmのふるいを備えた機械的なふるい分け機を使用することによって分離し、所望のふるい分け画分を得る。例えば≧0.7mm且つ≦1.4mmの回収したふるい分け画分を、回収し、そして所望の標準化された作用物質含量を含んで成る量で適切なサイズのカプセル内に充填する。
【0185】
得られたペレットを、実施例1に記載の通り活性化ステップが除かれる変更点がある、膵臓粉末からのプロテアーゼについてのFIP法を適用することによって、タンパク質分解活性について試験する。
次に、得られたペレットを、Pharm. Eur. 2.9.1.(「錠剤とカプセルの崩壊」という項)(試験溶液:水‐500mL、37℃)に従って、崩壊について試験する。
【0186】
実施例6:インビトロにおける毒性
ヒト結腸腺癌細胞株を用いた細胞アッセイを、プロテアーゼの毒性のインビトロスクリーニングのために使用した。このアッセイは、細胞の代謝能力を計測し、従って生存率を計測する。
HT-29及びCaco2細胞を用いたインビトロ毒性アッセイ
【0187】
HT-29細胞(German collection of micro-organisms and Cell Cultures、DSMZからのACC299)を、10%のFBS(Sigma、カタログ番号F-6178)を補ったMcCoy’s 5A培地(Cambrex)中で培養した。実験のために、細胞を、96ウェル培養プレート内に4・104細胞/ウェル/200μlの密度で培養した。24時間の細胞のウェルへの順応後に、試験成分(プロテアーゼ)を、0.5g/lのプロブミン(Millipore)、1%のインスリン/トランスフェリン/セレニウム・サプリメント(Invitrogen)及び1%ペニシリンとストレプトマイシン(Invitrogen)を補った無血清培地(DMEM:F12、Invitrogen)中に、三重反復試験における倍数希釈の9つの異なった濃度(重量/体積の酵素タンパク質)で添加し、そして後24時間インキュベートした。生存率を、Alamar Blue(Invitrogen)測定を使用して細胞の代謝能力によって計測した。Caco2細胞を、10%のウシ胎仔血清、2mMのグルタミン及び1%の非必須アミノ酸を補ったDMEM(Invitrogen 11960-044)中で培養し、そして加湿された5%のCO2雰囲気内で育てた。実験のために、細胞を、96ウェル・プレート内に3・104細胞/ウェル/200μlの密度で培養した。24時間のウェルへの順応後に、血清中に存在するプロテアーゼ・インヒビターによるプロテアーゼの結合を避けるために試験成分を無血清培地中に添加し、そしてあと24時間インキュベートし、この後、生存率を計測した。細胞生存率は、Alamar Blueが細胞によって代謝される能力を計測することによって計測した。プロテアーゼ変異体の試験を伴ったすべての実験を、無血清条件下で行った。
【0188】
最大代謝活性は、まったくプロテアーゼを加えなかったウェルにおいて観察された(そしてそれを100%に設定する)。試験プロテアーゼについて最大代謝活性の50%を得られる濃度を、参照プロテアーゼについて最大代謝活性の50%が得られる濃度によって割り算し、そして得られた「毒性比」は以下の表4から明らかである。濃度が高ければ高いほど、毒性は低く;そして参照プロテアーゼに対する比が高ければ高いほど、毒性が低減される。従って、プロテアーゼVAR203の毒性は、参照プロテアーゼと比較して低減される。変異体を、Caco-2及びHT-29細胞の両方で試験した。
【0189】
【表4】

【0190】
実施例7:インビトロにおける消化性能
プロテアーゼVAR203(配列番号11)及び表4で触れた他の変異体の性能を、1時間のpH3(胃)ステップ、並びに2時間のpH6(腸)ステップを含んで成るインビトロ消化モデルにおいて測定し、そして参照プロテアーゼ(配列番号1)の性能と比較した。プロテアーゼを、実施例2に記載の通り精製し、そして、mg/ml単位の酵素タンパク質含量をA280によって測定した。
【0191】
(実施例4の試験食と同一である)食餌を、0.1MのHCl中に溶解し、0.2g食餌/mlの作業スラリーを得た。pHを、HClを用いてpH2.5に調整した。100μlの食餌スラリーを、MTP(マイクロタイタープレート)内の各ウェルに加え、そして20μlのペプシン(Merck VL 317492437、カタログ番号1.0792.0001、700mg/l、93μg/mlの終濃度)及び30μlの希釈した酵素(10μM(0.2mg/ml)に希釈した)と混合した。すべてのウェルの最終的なpHは、2.8〜3.0であった。4つの濃度(0.2、0.1、0.05及び0.025mg/ml)の二重反復試験を、(20mMのアセタート、0.01%のTriton X-100、pH5柱に希釈した)各酵素について作製した。これを、750rpm(Eppendorf Thermomixer)、37℃にて1時間インキュベートし、そしてインビトロ消化モデルの胃のステップに規定する。
【0192】
腸ステップを開始するために、25μlのバッファー(0.8MのMES、0.8Mのイミダゾール、0.8Mのアセタート、40%/60%で混合したpH5/9)を各ウェルに加え、pHを6.0〜6.05に上げた。加えて、25μlの胆汁酸塩(脱イオン水、Millipore milliQ中に溶解した、80mMの胆汁酸塩、Solvay Pharmaceuticals製の胆汁酸塩混合物、バッチ176.01-PA-7374)を、10mMの終濃度まで加え、続いて750rpm、37℃にて2時間インキュベーションを行った。腸ステップは、2700rpm、4℃にて10分間の遠心分離によって食餌スラリーとプロテアーゼを分離することによって終わらせた。
【0193】
プロテアーゼ活性を、OPA法(O‐フタルジアルデヒド)を使用した上清中の遊離アミノ基の定量化によって測定した。「ペプシンのみ」のウェルから引き算した(substratced)酵素を含むウェル中の遊離アミノ酸の数が、プロテアーゼ性能を反映している。上清を、酵素希釈バッファー(20mMのアセタアート pH5、0.01%のTriton X-100)により10倍に希釈し、そして20μl希釈した上清を、200μlのOPA試薬(3.81gの四ホウ酸二ナトリウム十水和物、1mLの10% SDS、88mgのDTTを混合し、そして、2mLの96% エタノール中に溶解させた80mgのOPAを加え、その後、100mlの総量までの脱イオン水を加えた)と混合した。
セリン希釈列(0.5mg/mlのストックを2倍に希釈する)を、遊離アミノ基の定量のための標準として含めた。340nmにて吸光度を計測した。
【0194】
参照プロテアーゼに対する試験変異体の見掛けの改善度(IF)の計算を、酵素なしに対して補正した(OPA測定によって得られる)加水分解されたアミノ基に関する絶対データを以下の3‐パラメーター‐ロジスティック方程式:
【0195】
【化3】

【0196】
に当てはめることによって実施する。ここで、NH2は遊離アミノ基の量(mM)であり、NH2(最大)は、そのプロテアーゼが食餌から遊離させる遊離アミノ基の最大量であり、濃度はプロテアーゼ濃度(mg酵素/食餌(250g))であり、傾きは、平行曲線(以下を参照のこと)の傾きであり、そしてI(50)はIFが算出される変数である。逆V字は指数関数を意味する。NH2(最大)を、非常に高い投与量の参照プロテアーゼを使用して20mMに実験的に決定した。
【0197】
得られたデータをこの方程式に当てはめるために、2つの仮定をする。1つ目に、加水分解されたアミノ基対投与されたmg酵素に関して得られる曲線のすべてが平行であると仮定する(傾き定数)。2つ目に、基質利用能が活性の制限因子であり、そのため、加水分解されたアミノ基の量のプラトー(NH2(最大))がかなり高い酵素濃度にて得られる。改善度(IF)を以下の通り規定する:
IF=I(50)(参照)/I(50)(変異体)
【0198】
ここで、I(50)(参照)は、NH2(最大)の半分を得るのに必要とされる参照酵素の濃度であり、そしてI(50)(変異体)は、NH2(最大)の半分を得るのに必要とされる変異体濃度である。
【0199】
プロテアーゼ変異体VAR203は2.6の改善度を有し、参照プロテアーゼは、定義により、1.0の改善度を有する。これは、参照プロテアーゼと類似の効果を得るために、2.6倍も少ない量のVAR203プロテアーゼしか必要としないことを意味する。表4に記載したすべての変異体が、0.7以上のIFを有する。
【0200】
実施例8
胃にカテーテルを挿入したラット・モデルを使用した毒性学的評価
試験系
経験的に、ラットへのプロテアーゼの強制飼養によって経口投与後の予期しない肺への曝露の続発リスクを伴った被験物質の反芻の高いリスクが明らかであった。そのため、専門的な実験的方法を、胃腸に対する野性型(配列番号1)からのプロテアーゼ変異体のインビボ毒性を判断するために使用した。Charles River Laboratories Germany GmbHによって供給された胃にカテーテルを挿入されたラットを、これらの実験に使用した。被験物質を、胃‐カテーテルを通して14日間毎日胃内に直接投与し、気管内への誤投与のリスクを排除し、且つ、胃からの被験物質の反芻のリスクを減少させた。適用容量はすべてのプロテアーゼに関して10ml/kgであり、食餌は投与の約4時間前に回収し、そして投与の4時間後に再び提供された。動物は単独で飼育し、そしてカテーテルの閉塞を予防するために;それを、各投与の後と週に1度の午後に水道水によってすすいだ。
【0201】
測定値
投与の前後に、行動の変化、処置に対する反応又は病気のあらゆる兆候について、ラットを個別に観察した。すべての動物の体温を、研究中に3回、投与前と投与の1時間後において肛門プローブを用いて計測した。体重と食餌消費量を1週間間隔で計測し、そして水の消費量を毎日、水容器の目視検査によって計測した。
【0202】
終了時に、すべての動物を詳細な剖検にかけ、そして組織病理を、胃、気管、及び肺を含めた見込まれる標的臓器に対して実施した。
【0203】
結果
本研究で観察された死亡率は、呼吸管への被験物質の反芻に主に関連し、そして適用部位(胃)からの被験物質の漏出を含めた技術的争点にも関連している。死亡率は、700mg/kgの用量レベルにおいて野性型プロテアーゼ投与群が最も顕著である。
【0204】
病理組織学的試験では、上皮の扁平上皮細胞の過形成に関連する噴門洞の炎症が、標的毒性と見なされる。胃粘膜に対してこれらの被験物質に誘発された局所的影響に基づいて、野性型プロテアーゼは、グループとして変異体と比較して、より有毒である。
結論として、死亡率と組織病理学データは共に、野性型が変異体より有毒であることを示す。
【0205】
【表5】

【0206】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の第1〜188アミノ酸に対して少なくとも90%の同一性を有し、且つ、配列番号1の第1〜188アミノ酸と比較して、以下の置換:A1T;I3V;G12;R14I;T22A;N23D;G34A;R38;T41A;T44K;N47;G48D;E53K;Q54L, D;T68A, R, S;S69T;L73P;V88A;S99P;P124L;E125;M131V;T151I;R165;及びT166Aから選択された少なくとも1つの置換を含んで成るプロテアーゼ。
【請求項2】
以下の置換:G12D, N, H;R38T;N47H, T, S;E125D及びR165S, H, G, Tのうちの少なくとも1つを含んで成る、請求項1に記載のプロテアーゼ。
【請求項3】
以下の置換又は置換の組み合わせ:G12D;及び(N47H+G48D)のうちの少なくとも1つを含んで成る、請求項2に記載のプロテアーゼ。
【請求項4】
以下の置換又は置換の組み合わせ:R38T、(T44K+S99P)、S69T、(S69T+E125D)、E125D、及びR165Sのうちの少なくとも1つを含んで成る、請求項1に記載のプロテアーゼ。
【請求項5】
医薬品としての使用のための、請求項1に記載のプロテアーゼ。
【請求項6】
医薬品として使用するための、リパーゼ又はアミラーゼと組み合わせた、請求項1に記載のプロテアーゼ。
【請求項7】
(i)前記リパーゼが、配列番号2の第1〜269アミノ酸を持つリパーゼに対して少なくとも70%の同一性を有し;及び/又は
(ii)前記アミラーゼが、以下の:
a)配列番号3の第1〜481アミノ酸を持つアミラーゼ、
b)配列番号4の第1〜483アミノ酸を持つアミラーゼ、及び
c)配列番号5の第1〜513アミノ酸を持つアミラーゼ、
から成る群から選択されるアミラーゼに対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項6に記載のリパーゼ又はアミラーゼと組み合わせたプロテアーゼ。
【請求項8】
消化障害、膵臓外分泌機能不全症、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置における使用のための、請求項1に記載のプロテアーゼ。
【請求項9】
リパーゼ又はアミラーゼと組み合わせた、請求項8に記載のプロテアーゼ。
【請求項10】
(i)前記リパーゼが、配列番号2の第1〜269アミノ酸を持つリパーゼに対して少なくとも70%の同一性を有し;及び/又は
(ii)前記アミラーゼが、以下の:
a)配列番号3の第1〜481アミノ酸を持つアミラーゼ、
b)配列番号4の第1〜483アミノ酸を持つアミラーゼ、及び
c)配列番号5の第1〜513アミノ酸を持つアミラーゼ、
から成る群から選択されるアミラーゼに対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項9に記載のリパーゼ又はアミラーゼと組み合わせたプロテアーゼ。
【請求項11】
少なくとも1つの医薬的に許容し得る助剤と一緒に、請求項1に記載のプロテアーゼを含んで成る医薬組成物。
【請求項12】
リパーゼ又はアミラーゼをさらに含んで成る、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(i)前記リパーゼが、配列番号2の第1〜269アミノ酸を持つリパーゼに対して少なくとも70%の同一性を有し;及び/又は
(ii)前記アミラーゼが、以下の:
a)配列番号3の第1〜481アミノ酸を持つアミラーゼ、
b)配列番号4の第1〜483アミノ酸を持つアミラーゼ、及び
c)配列番号5の第1〜513アミノ酸を持つアミラーゼ、
から成る群から選択されるアミラーゼに対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
治療的有効量の請求項1又は2に記載のプロテアーゼを投与することによる、消化障害、膵臓外分泌機能不全症、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置方法。
【請求項15】
治療的有効量のリパーゼ又はアミラーゼを投与することをさらに含んで成る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i)前記リパーゼが、配列番号2の第1〜269アミノ酸を持つリパーゼに対して少なくとも70%の同一性を有し;及び/又は
(ii)前記アミラーゼが、以下の:
a)配列番号3の第1〜481アミノ酸を持つアミラーゼ、
b)配列番号4の第1〜483アミノ酸を持つアミラーゼ、及び
c)配列番号5の第1〜513アミノ酸を持つアミラーゼ、
から成る群から選択されるアミラーゼに対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
消化障害、膵臓外分泌機能不全症、膵炎、嚢胞性繊維症、I型糖尿病、及び/又はII型糖尿病の処置のための医薬品の製造のための、請求項1に記載のプロテアーゼの使用。
【請求項18】
リパーゼ又はアミラーゼの使用をさらに含んで成る、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
(i)前記リパーゼが、配列番号2の第1〜269アミノ酸を持つリパーゼに対して少なくとも70%の同一性を有し;及び/又は
(ii)前記アミラーゼが、以下の:
a)配列番号3の第1〜481アミノ酸を持つアミラーゼ、
b)配列番号4の第1〜483アミノ酸を持つアミラーゼ、及び
c)配列番号5の第1〜513アミノ酸を持つアミラーゼ、
から成る群から選択されるアミラーゼに対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2011−505160(P2011−505160A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536427(P2010−536427)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066646
【国際公開番号】WO2009/071550
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【出願人】(507416997)ゾルファイ ファーマシューティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【Fターム(参考)】