説明

医薬用途用の1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール誘導体、および前記1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール誘導体を調製するための、実質的に不定の結晶形状を有する1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール誘導体の使用

本発明は、ボリコナゾール、ボリコナゾールの調製方法、ならびにその医薬組成物および治療的使用に関する。特に、本発明は、実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールから調製されるボリコナゾール生成物ならびに調整された比表面積および/またはザウター径および/または必要に応じて球形係数を有する、本発明に係るボリコナゾールの提供に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリコナゾール、ボリコナゾールの調製方法、ならびにその医薬組成物および治療的使用に関する。特に、本発明は、実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールから調製されるボリコナゾール生成物、ひいては従来技術から公知のボリコナゾールと比較して、調整された比表面積および/またはザウター径および/または必要に応じて球形係数を有する、本発明に係るボリコナゾールの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
ボリコナゾールは、C1614Oの実験式および349.31の分子量を有する有効な医薬物質である。ボリコナゾールは、(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オールの一般に認められている国際一般名であり、式(I)によって表される。

【0003】
ボリコナゾールは、いくつかの真菌感染症の治療に有用であることが知られている市販の医薬品として有効な物質である。米国では、ボリコナゾールは、Vfend(商標)の商標で販売されている。Vfend(商標)製品は、静脈内投与用(I.V.)溶液、経口懸濁液用の粉末(ひいては経口懸濁液)、および経口投与用のフィルムコート錠として入手可能である。
【0004】
ボリコナゾールは、欧州特許第0440372B1号明細書に開示されている。正確には、欧州特許第0440372B1号明細書の実施例7において、最終生成物であるボリコナゾールは、127℃の融点および−62°の比旋光度(c=1mg/mL)を示す結晶性固体として得られる。
【0005】
ボリコナゾールの使用に関連する問題は、ボリコナゾールがほとんど水に溶けないことである。具体的には、Drug Metab.Dispos.2003,31,731において、ボリコナゾールの0.7mg/mLの水溶解度が報告されており、これは、米国薬局方(US Pharmacopoeia)の基準による極めて溶けにくい薬剤に相当する。
【0006】
水難溶性薬剤(すなわち、1mg/mL未満の溶解度を有する薬剤)の薬剤吸収速度は、粒度によって特に影響され得るが、その理由は、これらの薬剤では、ほとんどの場合、バイオアベイラビリティが溶出速度に左右されるためである(Pharm.Dev.Technol.2004,9,1−13)。これに基づいて、メカニカルミリングが、水難溶性薬剤の溶解を向上させる一般的な技術である(J.Control.Release,2006,111,56)。しかしながら、Org.Process Res.Dev.2004,8,674において、ボリコナゾールは、非常に可塑性が高く、ミリングするのが難しいため、250μm未満の破砕が、一般に、標準的なミリング条件を用いて達成されないことが記載されている。
【0007】
小さい粒度分布を有するボリコナゾールを得るための方法を記載している文献においていくつかの参考例が存在する。
【0008】
米国特許第6,558,435B2号明細書には、流体ジェット流を用いて、医薬品、例えば、ジプラシドンおよびボリコナゾールを調製し、結晶化する方法が記載されており、この方法は、高表面積の生成物結晶を直接生成する。正確には、米国特許第6,558,435B2号明細書の実施例4には、エタノール/水の50:50体積比の混合物に溶解させたボリコナゾール(1R)−(−)−10−カンファースルホネートの溶液と、塩基の別の溶液(すなわち、酢酸ナトリウムの水溶液)とを、両方の溶液が個々のジェットによって別々に送られ、容器中でジェット流として接触されるように混合することからなる技術によって、制御される粒度を有するボリコナゾールを調製し、結晶化する方法が記載されている。米国特許第6,558,435B2号明細書の実施例4において提供されるボリコナゾール粒子は、600μmの篩を通して篩過した後、乾燥粒子の粒度分析(dry particle sizing analysis)(SympaTec)によって測定した際に、22μmの体積平均径D[4,3]、41μm未満のD[v,0.9]、および18μm未満のD[v,0.5]を示したことが記載されている。ジェットミリングによって通常得られる生成物の仕様は、90%が130μm未満および50%が50μm未満であることも記載されている。
【0009】
米国特許第6,558,435B2号明細書によって実際に開示されている内容の理解に関するいくつかの問題があり、実際には、従来技術に対する米国特許第6,558,435B2号明細書の寄与を十分に評価することができないほどの開示内容である。第1に、米国特許第6,558,435B2号明細書の上記の粒度測定技術は、特殊な技術であり、それによって得られる測定は、本発明についてより詳細に後述されるようなより標準的なMalvern粒度測定技術と比較できない。これが本発明に関して具体的に意味するのは、米国特許第6,558,435B2号明細書の粒度測定は、本発明について以下に提供される特定の粒度測定と十分に相関し得ないということである。第2に、米国特許第6,558,435B2号明細書によって提供される開示のレベルは、実施可能要件を満たさず(non−enabling)、米国特許第6,558,435B2号明細書によって提供される開示を後に比較および評価することができるように、独立して再現することができない。これは、例えば、米国特許第6,558,435B2号明細書に開示される装置(図1および2を参照のこと)が、市販の標準的な装置でないためである。また、米国特許第6,558,435B2号明細書に用いられる粒度測定技術が、十分に開示されていない。すなわち、米国特許第6,558,435B2号明細書の実施例4は、Sympatec粒度分析器を用いた乾式分析によって粒度分析を行ったことを開示しているに過ぎず、用いられる具体的なSympatec分析器を開示していない。これに関して、入手可能な多くのSympatec分析器が存在しており、具体的な機器の選択により、粒度の特性評価に用いられる技術[すなわち、レーザー回折(LD)、超音波減衰(USE)、画像解析(IA)および光子相互相関分光法(PCCS)]が決まり、各技術により、異なる比較できない粒度値が得られる。また、乾式分析については、特定の乾式分散ユニットを、Sympatecから入手可能な乾式分散ユニットから選択しなければならない。第3に、米国特許第6,558,435B2号明細書に開示されている装置が特殊であり、また、米国特許第6,558,435B2号明細書を理解できる程度のそれに関する実施可能な開示が欠如していることに基づいて、米国特許第6,558,435B2号明細書に記載される結晶化方法が、ジェット流に基づいたものであり、特殊な装置および機器の使用を必要とすることが分かる。このような装置および関連する機器のため、米国特許第6,558,435B2号明細書に記載の方法は、不経済でかつ工業生産に適さないであろう。
【0010】
国際特許出願の国際公開第2007/132354号パンフレットには、水性溶媒に溶解させたボリコナゾール(1R)−(−)−10−カンファースルホネートを、好ましくは室温から55℃の範囲の温度で好適な塩基で処理し、懸濁液を、およそ20℃〜25℃の範囲の温度まで冷まし、得られた固体をろ過し、それを水で洗浄し、固体を乾燥させることからなる結晶化技術によって、小さい粒度分布を有する、すなわち、全体積の約5〜15%が約6μm以下の直径を有する粒子で構成され、全体積の約45〜55%が約20μm以下の直径を有する粒子で構成され、全体積の約85〜95%が約40μm以下の直径を有する粒子で構成される粒度分布を有することを特徴とするボリコナゾールを得る方法が記載されている。特に、国際公開第2007/132354号パンフレットの実施例18〜23および25は、表1に示される関連する粒度パラメータとともに、以下に示される。
【0011】
国際公開第2007/132354号パンフレットには、ボリコナゾール(1R)−(−)−10−カンファースルホネートを、非塩素化有機溶媒およびアルカリ性水溶液で処理し、有機相を単離し、任意に水で1回以上洗浄し、任意に有機溶液を脱色剤で処理し、ボリコナゾールを含有する有機溶液を部分蒸留し、得られた残渣をアルコール溶媒、好ましくはイソプロパノールで処理し、部分蒸留することでボリコナゾールを残渣として得て、残渣をアルコール溶媒、好ましくはイソプロパノールから結晶化し、ろ過し、乾燥させることによって、ボリコナゾールを単離することができることがさらに記載されている。具体的には、国際公開第2007/132354号パンフレットの実施例24には、イソプロパノールからの結晶化、ミリング、篩過、および混合が記載されており、これにより、同様に表1に示される粒度分布が得られる。また、国際公開第2007/132354号パンフレットの実施例2にも、イソプロパノールから結晶化した後のボリコナゾールが報告されているが、ただし、実施例24について開示されている微粉化技術は記載されておらず、実施例2についての粒度パラメータも表1に示される。

【0012】
国際公開第2007/132354号パンフレットについて、実施例24が、イソプロパノールからの結晶化とその後の微粉化(これは、一般に、本発明にしたがって望ましい流動特性を有するボリコナゾールを得るためにより詳細に後述される、本発明において用いられる処理条件である)を開示している唯一の特定の実施例であることに留意されたい。しかしながら、国際公開第2007/132354号パンフレットおよび上記の表1に報告される関連するD90から、国際公開第2007/132354号パンフレットの実施例24に関連して得られる粒度が、実質的に後述される本発明によって得られる粒度に相関していないことが分かる。このように、国際公開第2007/132354号パンフレットにおいて用いられる具体的なミリング条件が、本発明の教示にしたがって実質的に後述される望ましい流動特性を有するボリコナゾールを得るために、本発明にしたがって用いられる、ミリング、またはより一般に、微粉化条件および/または技術に対応していないことがさらに理解され得る。
【0013】
さらに、米国特許第6,558,435B2号明細書または国際公開第2007/132354号パンフレットの何れかにおいて提供される、小さい粒度分布を有するボリコナゾールを調製するための結晶化方法が、このような結晶化方法の後に得られるボリコナゾールの比表面積を開示していないことも確認される。これに関して、粒度および/または粒度分布が、粒子の比表面積と直接関連し得ないことは、粒度測定の分野において実証され、十分理解されており、その理由は、粒子の形状、ひいては比表面積についてのいかなる仮定も、粒子の単位体積あたりの(specific)表面テキスチャおよび/または単位体積あたりの表面輪郭および/または単位体積あたりの表面欠陥および/または局部的な表面特性を説明できず、それらの全てが比表面積および関連する特性に影響を与え得るためである。
【0014】
表面特性、特に比表面積は、例えば、微粉化のための機械的な粉砕プロセスに付随する高エネルギーの投入によって大きな影響を受け得る。例えば、高エネルギーの投入は、粒子表面における結晶格子の崩壊を招くことがあり、結晶欠陥が生じることで、同様の粒度分布を有するが、制御された結晶化プロセスによって得られる粒子と比較して比表面積が増大され得る。これに関して、結晶化プロセスは、ほぼ規則的な形状の結晶を提供する可能性がより高い。さらには、制御された結晶化によって得られる結晶の形状の規則性は、溶媒の性質および他の共溶媒または貧溶媒(anti−solvent)の存在、化学的不純物の性質および濃度、飽和溶液の温度および濃度、過飽和条件下での核生成結晶のエージング時間、撹拌のタイプならびに反応器の形状および寸法、冷却速度などのいくつかの結晶化要因に応じて決まることになる。上記を考慮すると、米国特許第6,558,435B2号明細書または国際公開第2007/132354号パンフレットの何れかにおいて提供されるボリコナゾールの結晶の比表面積は、少なくとも米国特許第6,558,435B2号明細書の場合、予測することも明確に再現することもできない。さらに、国際公開第2007/132354号パンフレットの場合、上で説明されるように、それによって得られる粒度は、より詳細に実質的に後述される本発明によって得られる粒度と異なることが理解され得る。
【0015】
国際公開第2007/132354号パンフレットにおいて提供される、小さい粒度分布を有するボリコナゾールを調製するための結晶化方法が実験室規模の作業に好適で有効である一方、パイロットプラント規模で行われる場合、この方法には、長い冷却時間、ひいては反応器の長い占有時間が必要であることにも留意されたい。パイロットプラントでの作業用のこのような条件のため、国際公開第2007/132354号パンフレットに開示されている方法は、不経済であり、したがって、規模拡大のために望ましくない。
【0016】
IP.com Journal,2005,5,38(No.IPCOM000125373D)は、ボリコナゾールを含有する医薬組成物へと処理するための微粉化ボリコナゾールを有する必要性に対処している。具体的には、この参照文献において、ボリコナゾールが、3つの異なる晶癖(すなわち、板状晶癖、針状晶癖、および不定の形状を有する結晶)で結晶化する能力を有することが開示されており、板状晶癖のボリコナゾールが、望ましい粒度、比表面積、および流動特性を有する粉末を得るために微粉化される晶癖であることが教示されている。さらに、この参照文献において、針状結晶は、例えば、このような針状結晶の懸濁液のろ過が難しいと言われているため望ましくないことが記載されており、このような針状結晶を含む当該バルク材料では、装置の秤量、取り扱い、および運搬の際にブロッキング(blocking)または架橋が生じ得る。不定の結晶形状の結晶を有する晶癖が、イソプロパノール、メチルエチルケトン/シクロヘキサン混合物、エタノール/シクロヘキサン混合物および炭酸ジメチル/シクロヘキサン混合物からなる群から選択される溶媒系からの結晶化によって得られるものとして、実施例に示されるが、以下のような板状晶癖のボリコナゾールの好ましい微粉化と対照的に、その微粉化の開示も示唆もない。
【0017】
より詳細には、IP.com Journal,2005,5,38(No.IPCOM000125373D)に記載される、医薬用途に適した微粉化ボリコナゾールは、エアジェットミルを用いて板状晶癖のボリコナゾールを微粉化することによって調製される。ボリコナゾールの板状結晶から調製される微粉化ボリコナゾールは、約40μm、好ましくは約20μmの粒度、および約3m/g〜5m/g、好ましくは約4m/gの比表面積を示す。
【0018】
米国特許第6,586,594B1号明細書には、置換トリアゾールを調製する方法も開示されており、ボリコナゾールの調製は、調製例2、4および8に特に記載される。これらの調製例の各々には、組み合わされた有機抽出物へのイソプロパノールの添加、連続蒸留(調製例2)、冷却、顆粒化、ろ過、さらなるイソプロパノールでの洗浄および乾燥により固体ボリコナゾールが得られることが記載されている。米国特許第6,586,594B1号明細書は、このように得られるボリコナゾールの粒度調整についてのさらなる教示を何ら提供していない。
【0019】
ここで、従来技術に基づいて、医薬製剤のための改良された特性を有するボリコナゾールが必要とされており、このようなボリコナゾールは、より詳細に実質的に後述される本発明によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、比較例1において得られる板状ボリコナゾール結晶を示す。
【図2】図2は、実施例1において得られる不定の形状を有するボリコナゾール結晶を示す。
【図3】図3は、実施例2において得られる微粉化ボリコナゾールを示す。
【図4】図4は、実施例10において得られる溶解速度グラフを示す。
【図5】図5は、比較例1において得られるボリコナゾール形態Iの粉末X線回折図(XRD)を示す。
【図6】図6は、比較例2において得られるボリコナゾール形態Iの粉末X線回折図(XRD)を示す。
【図7】図7は、実施例1において得られるボリコナゾール形態Iの粉末X線回折図(XRD)を示す。
【図8】図8は、実施例3において得られるボリコナゾール形態Iの粉末X線回折図(XRD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールと比較して改良された特性を有するボリコナゾールが、本発明によって提供される。
【0022】
まず、本発明者らは、IPCOM000125373Dに記載される内容に対して、ボリコナゾールの板状結晶から得られる微粉化ボリコナゾール(IPCOM000125373Dに記載される)が、望ましくない流動特性を示すため、医薬製剤に望ましくないことを見出した。これに関して、本発明者らは、板状結晶から得られる上記の従来技術の微粉化ボリコナゾールが、約0.13の球形係数を有することを見出した。0.2未満の球形係数は、低い流動特性を示し、一般に、医薬製剤に望ましくないことが認識されている。
【0023】
流動性は、医薬品へと処理する際の材料の取り扱い易さに影響する。流動性が低いと、製剤化の際の取り扱いおよび処理に問題が生じる。粒子の形状が、その取り扱いおよび流動特性に影響することが知られている。しかしながら、粒子の形状の定量化は、不規則なおよび/または微粉化された粒子では非常に難しい。粒子の不規則性の程度を表す最も一般的な方法の1つは、球形係数(Ψ)によるものであり、これは、一般に、粒子と同じ体積を有する球形の表面積と、粒子の表面積との比率として定義される:

式中、dおよびdは、それぞれ等体積球相当径(equivalent volume diameter)および等表面積球相当径(equivalent surface diameter)である(Part.Part.Syst.Charact.1996,13,368−373)。
【0024】
球形係数は、各粒子について計算されず、粒子の集合体について計算されるため、平均径を基準にする必要がある。したがって、球形係数は、下式によって与えられる:

式中、Sは、粉末比表面積であり、ρは、粒子密度であり、DMVSは、平均体積−表面直径、ザウター径またはD[3,2]とも呼ばれる表面積平均直径である。ザウター径は、対象とする粒子と同じ体積/表面積比率を有する球形の直径として定義される。上式の正確性がいかなる仮定にも左右されず、実験条件のみによって制限されることに留意することが重要である。
【0025】
1.0の球形係数は、最高の流れ易さを有する完全な球形を表す(Encapsulated and powdered foods,CRC Press 2005)。粒子が球形から外れる(すなわち、球形係数が1.0から減少する)につれて、摩擦力および凝集力が強くなり、したがって流動性が低下する。これに関して、0.2未満の球形係数値は、通常、板または針の形状の低流動性固体について見られる。したがって、0.2より大きい球形係数は、一般に、許容できる流動性材料を示す。
【0026】
IPCOM000125373Dに記載されるように、板状結晶の形態の出発材料から得られる微粉化ボリコナゾールは、約20μmの粒度および約4m/gの比表面積(S)を有する。本発明者らは、ここで、IPCOM000125373Dに記載されるようなボリコナゾールの板状結晶から得られる微粉化ボリコナゾールを調製しており、この従来技術のボリコナゾールをさらに特徴付けている。特に、従来技術の微粉化ボリコナゾールは、比重瓶法によって測定した際の約1.400g/cmの実験粒子密度(ρ)、および約8.3μmのザウター径(DMVS)(以下の比較例2に記載される)を示す。固体の真密度は、固体材料の質量を、間隙を含まないその正確な体積で除算した値を指し、結晶構造が得られない場合、比重瓶を用いて実験的に測定することができる。しかしながら、真密度のより正確な値は、X線結晶解析(F.M.Richards,P.F.Lindley,Determination of the density of solids,International Tables for Crystallography,Springer,2006を参照のこと)によって測定されるように、化合物の単結晶構造に基づいて直接計算することができる。したがって、結晶の密度(ρ)が、ボリコナゾールの特定の結晶形態について一定値であることが知られている。これに関して、K.Ravikumar et al.in Acta Cryst.(2007),E63,o565−o567では、ボリコナゾールのメタノール−水溶液のゆっくりとした蒸発から得られるようなボリコナゾールの単結晶X線研究を行っており、対応する結晶データを報告している。この報告されたデータは、結晶の密度を含み、21℃(294K)で1.442g/cmの値を示す。この単結晶データを用いて、本発明者らは、粉末X線回折パターンをシミュレーションし、上述したActa Cryst.(2007)に示される単結晶データが、IPCOM000125373Dにおいて得られるボリコナゾールの同じ結晶形態(本明細書においてボリコナゾール形態Iと呼ばれる)に対応することを確認した。これに関して、本発明者らは、国際特許出願公開番号、国際公開第2008/075205号パンフレットに記載される形態I、および国際特許出願公開番号、国際公開第2006/065726号パンフレットに記載される形態Bにも言及する。
【0027】
上記に基づいて、IPCOM000125373Dにおいて得られるボリコナゾールの結晶の正確な結晶密度(ρ)値が、21℃で1.442g/cmであり、それはK.Ravikumar et al.によって報告されるのと同じ結晶形態に対応することが理解される。したがって、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾール(すなわち、板状結晶の形態の出発材料から得られる)が、実験粒子密度またはより正確な結晶密度の報告値の何れかを用いて計算した際に、約0.13(すなわち0.2未満)の球形係数を有する。したがって、上記の球形度値に基づいて、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾール(すなわち、板状結晶の形態の出発材料から得られる)が、望ましくない流動特性を示すため、医薬製剤に使用するのに望ましくないことが理解され得る。
【0028】
さらに、およびIPCOM000125373Dに教示されている内容と対照的に、本発明者らは、実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールが、微粉化ボリコナゾールを調製するのにより適した出発材料であることを見出したが、その理由は、得られる微粉化ボリコナゾールが、その溶解度特性を実質的に保ちながら、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールと比較して改良された流動特性を示すためである。したがって、本発明者らは、IPCOM000125373Dの教示と対照的に、実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾール結晶が、板状晶癖のボリコナゾール結晶より、微粉化のための出発材料として好ましいことを見出したが、その理由は、実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾール結晶の使用により、向上した特性を有する微粉化ボリコナゾールが提供されるためである。
【0029】
本明細書において使用される際の、「実質的に不定の結晶形状および/または晶癖」という用語は、IPCOM000125373Dに記載され、調製される針状または板状の結晶でない結晶を表す。このような「実質的に不定の結晶形状および/または晶癖」は、その調製方法、および特に、「実質的に不定の結晶形状および/または晶癖」を有するこのような結晶の形成を促進する、用いられる特定の結晶化溶媒に言及することによってさらに理解され得る。したがって、特に、本明細書に記載される「実質的に不定の結晶形状および/または晶癖」を有するボリコナゾールは、イソプロパノール、メチルエチルケトン/シクロヘキサン混合物、エタノール/シクロヘキサン混合物および炭酸ジメチル/シクロヘキサン混合物からなる群から選択される溶媒系、特にイソプロパノールからの結晶化によって得られるボリコナゾールとして、さらにより好適には、本明細書の実施例1に実質的に記載されるかまたはIPCOM000125373Dに記載される方法を用いた、結晶化溶媒としてのイソプロパノールからの結晶化によって得られるボリコナゾールとしてさらに特徴付けられ得る。「実質的に不定の結晶形状および/または晶癖」を示すことによって、本発明に係るボリコナゾール生成物を得るための出発材料として用いられるボリコナゾールが、結晶格子を含むが、当該技術分野において既に特徴付けられ、規定されている規則的な晶癖と比べて不完全なまたは不定の外形、特に、針状または板状結晶と比べて不完全なまたは不定の外形を有する材料としてさらに特徴付けられ得ることがさらに理解され得る。
【0030】
上で言及される実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールは、球形係数に関して規定され得る、改良された流動特性を有するボリコナゾールを調製するのに好適に用いることができる。したがって、本発明によれば、少なくとも0.20の球形係数を特徴とし、より好ましくは、約0.20〜0.70、好ましくは0.20〜0.60、好ましくは0.20〜0.50の範囲の球形係数を特徴とし、さらにより好ましくは、約0.22〜0.60、または0.22〜0.50の範囲の球形係数を特徴とする、医薬用途に適したボリコナゾールが提供される。
【0031】
本発明に係るボリコナゾールは、その比表面積に言及することによって、さらに特徴付けられ、従来技術と区別され得る。したがって、本発明によれば、約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積を特徴とし、より好ましくは、約0.9m/g〜1.7m/gの範囲の比表面積、ある実施形態において、約0.9m/g〜1.6m/gの範囲の比表面積を特徴とする、医薬用途に適したボリコナゾールがさらに提供される。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明に係るボリコナゾールは、医薬用途に適しており、(i)少なくとも0.20の球形係数(より好ましくは、約0.20〜0.70の範囲の球形係数、さらにより好ましくは、約0.22〜0.60の範囲の球形係数)および(ii)約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積(より好ましくは、約0.9m/g〜1.7m/gの範囲の比表面積)を特徴とする。
【0033】
本発明に係るボリコナゾールは、そのザウター径に言及することによってさらに特徴付けられ得る。本発明によれば、医薬用途に適したボリコナゾールは、約4μm〜20μmの範囲のザウター径をさらに特徴とし、より好ましくは、約5μm〜18μmの範囲のザウター径を特徴とする。
【0034】
他の好ましい実施形態において、(i)少なくとも0.20の球形係数(より好ましくは、約0.20〜0.70の範囲の球形係数、さらにより好ましくは、約0.22〜0.60の範囲の球形係数)、および(ii)約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積(より好ましくは、約0.9m/g〜1.7m/gの範囲の比表面積)、および(iii)約4μm〜20μmの範囲(より好ましくは、約5μm〜18μmの範囲)のザウター径を特徴とする、医薬用途に適したボリコナゾールも提供される。
【0035】
さらに他の好ましい実施形態において、(i)約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積(より好ましくは、約0.9m/g〜1.7m/gの範囲の比表面積)、および(ii)約4μm〜20μmの範囲(より好ましくは、約5μm〜18μmの範囲)のザウター径を特徴とする、医薬用途に適したボリコナゾールも提供される。
【0036】
本発明によって提供される好適なボリコナゾールは、機械的破砕にかけられ、さらにより好ましくは、上述したような実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの切断、チッピング、グラインディング、圧壊、摩砕などの、微粉化、ミリングまたは機械的に微粉化する(すなわち機械的粉砕)ための当該技術分野で公知の任意の他の方法によって得られる。好ましい実施形態において、本発明は、実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールから得られる、医薬用途に適した微粉化ボリコナゾールを提供する。本明細書において使用される際の「微粉化」という用語は、本発明の範囲を、小粒子を作製するための特定の方法に限定することを意図していない。したがって、本明細書において使用される際の「微粉化」という用語は、小粒子で形成される材料、典型的に、約250μm未満、典型的に、約150μm未満、より典型的に、約100μm未満のD90粒度を有するボリコナゾール粒子を表すことを意図している。したがって、より一般に、および上述したように、本発明に係るボリコナゾールの小粒子は、上述した実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールを機械的に微粉化する(すなわち機械的粉砕)ための当該技術分野で公知の任意の方法から得られ、これらの方法としては、切断、チッピング、グラインディング、圧壊、ミリング、微粉化、および摩砕のうちの1つ以上が挙げられる。好ましくは、ボリコナゾール小粒子は、上述した実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの微粉化またはミリングから得られる。
【0037】
上述したように、結晶の密度(ρ)は、ボリコナゾールの特定の結晶形態について一定値である。これに関して、本発明にしたがって得られるボリコナゾールは、ボリコナゾール形態Iに相当するため、IPCOM000125373Dに記載されるX線回折図と実質的に同一の、したがって、K.Ravikumar et al.,Acta Cryst.(2007),E63,o565−o567によって報告される結晶データから計算される、シミュレーションされた粉末X線回折図と実質的に同一の粉末X線回折図を示す。したがって、本発明に係るボリコナゾールは、好適には、21℃で1.442g/cmの結晶密度値をさらに特徴とすることができ、これは、ボリコナゾール形態Iの全ての試料について一定の報告値である。実質的に上述されるこの報告される結晶密度は、ボリコナゾール形態Iの結晶構造に基づくものであるため、典型的に結晶形態Iに相当する、本発明にしたがって得られるボリコナゾールについての正確なさらなる特徴値であることが理解される。結晶構造が得られない場合、固体の密度は、比重瓶を用いて実験的に測定することができることも理解される。しかしながら、実質的に上述したように、真密度および正確な密度は、固体材料の質量を、間隙を含まないその正確な体積で除算した値を指し、X線結晶解析(F.M.Richards,P.F.Lindley、Determination of the density of solids,International Tables for Crystallography,Springer,2006を参照のこと)によって測定されるように、化合物の結晶構造に基づいて直接計算することができる。したがって、結晶の密度(ρ)が、ボリコナゾールの特定の結晶形態について一定値であることが知られている。
【0038】
本発明に係るボリコナゾールは、好適には、約1.300g/cm〜1.450g/cmの範囲の実験粒子密度、より典型的に、約1.320g/cm〜1.400g/cmの範囲の測定される実験粒子密度、さらにより典型的に、約1.36g/cmの測定される実験粒子密度をさらに特徴とすることができ、この値は、比重瓶法によって測定される。当該技術分野で認識されているように、このような測定される実験粒子密度の値は、結晶構造に基づく密度の上述した正確な特徴値といくらかずれがある可能性が高い。
【0039】
本発明は、実質的に上述されるボリコナゾールを調製する方法をさらに提供し、したがって、(a)実質的に上述される実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールを提供するステップと;(b)ステップ(a)のボリコナゾールに機械的微粉化(すなわち機械的粉砕)を行って、少なくともその球形係数および/または比表面積、および任意に必要に応じてザウター径および/またはD90も調整し、それによって、実質的に上述されるボリコナゾールを得るステップと、を含む方法が提供される。
【0040】
特に、本発明は、実質的に上述されるボリコナゾールを調製する方法をさらに提供し、したがって、(a)イソプロパノール、メチルエチルケトン/シクロヘキサン混合物、エタノール/シクロヘキサン混合物および炭酸ジメチル/シクロヘキサン混合物からなる群から選択される溶媒系、特にイソプロパノールからボリコナゾールを再結晶化するステップと;(b)ステップ(a)のボリコナゾールに機械的微粉化(すなわち機械的粉砕)を行って、少なくともその球形係数および/または比表面積、および任意に必要に応じてザウター径および/またはD90も調整し、それによって、実質的に上述されるボリコナゾールを得るステップと、を含む方法が提供される。
【0041】
典型的に、ステップ(b)において言及される機械的微粉化/粉砕は、ステップ(a)のボリコナゾールの、切断、チッピング、グラインディング、圧壊、ミリング、微粉化、または破砕を含み、好ましくは、ミリングまたは微粉化を含み、典型的に、ミリングの実施は、エアジェットミリングまたはピンミリングを含む。
【0042】
さらに、本出願人は、ボリコナゾールが、非常に可塑性が高く、ミリングするのが難しいため、250μm未満の破砕が、一般に、標準的なミリング条件を用いて達成されないことが記載されているOrg.Process Res.Dev.2004,8,674の教示と対照的に、実質的に上述される不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールは、好適には、IPCOM000125373Dに記載される微粉化条件と比較して、標準的なミリング条件(すなわち、7,000rpmにおけるピンミリング)を用いてミリングされて、実質的に上述される本発明に係る微粉化ボリコナゾールが得られることを見出した。好ましくは、ミリング条件は、以下のステップ:(i)実質的に上述される不定の形状および/または晶癖を有するボリコナゾールをミリングするステップと;(ii)ミリングされた結晶を、250μm以下の篩を通して篩過するステップと;(iii)篩過された結晶を分けるステップと;(iv)篩過されていない結晶が残っている場合、ステップ(i)〜(iii)を繰り返すステップと;(v)篩過された結晶を組み合わせるステップと、を含む。ミリングは、好ましくは、ピンミリングを含み、より好ましくは、7,000rpmで動作するステンレス鋼のピンミルで行われる。250μm以下の篩は、好ましくは150μm以下の篩であり、より好ましくは100μm以下の篩である。
【0043】
ステップ(a)において言及される実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールが、イソプロパノール、メチルエチルケトン/シクロヘキサン混合物、エタノール/シクロヘキサン混合物および炭酸ジメチル/シクロヘキサン混合物からなる群から選択される溶媒系からボリコナゾールを結晶化することによって得られることが特に好ましい。イソプロパノールの使用が特に好ましい。
【0044】
本発明は、実質的に上述される方法によって得られる、医薬用途に適したボリコナゾールをさらに提供する。実質的に上述される微粉化ボリコナゾールを調製するための、実質的に不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの使用がさらに提供される。
【0045】
実質的に不定の結晶形状を有するボリコナゾールの結晶の、例えば、微粉化またはミリングによる機械的微粉化により、有利には、実質的に上述したように、0.5m/g〜2m/g、好ましくは0.9m/g〜1.7m/gの比表面積(S)を有するボリコナゾールが提供され、これは、意外なことに、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールの比表面積(すなわち、3m/g〜5m/g、好ましくは約4m/g)よりはるかに小さい。さらに、本発明にしたがって提供される微粉化ボリコナゾールの球形係数は、好ましくは約0.20〜0.70の範囲、好ましくは0.22〜0.60である。したがって、本発明の微粉化ボリコナゾールは、望ましい流動特性を有し、したがって、製剤化に特に適している。最後に、本発明に係る微粉化ボリコナゾールは、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールと比較して望ましい改良された流動特性を示すだけでなく、実質的に同じ溶解度プロファイルも示す。したがって、本発明の微粉化ボリコナゾールの比表面積が、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールの比表面積より小さいため、本発明の微粉化ボリコナゾールは、より低い溶解特性を示すことが予測されるはずであるが、本発明者らは、本発明に係る微粉化ボリコナゾールの溶解速度が、意外なことに、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールの溶解速度と同様であることを見出した。これは、以下の実施例10および図4によってさらに示され、実施例10および図4から、溶解速度について、本発明の微粉化ボリコナゾールおよびIPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールは、比表面積の差にもかかわらず、実質的に同等であることが理解され得る。
【0046】
上に言及される本発明に係るボリコナゾールと関連する望ましい溶解度および/または溶出について、好ましくは、球形係数;球形係数および比表面積;球形係数、比表面積、およびザウター径のうちの1つ以上を特徴とする実質的に上述されるボリコナゾール;ならびに同様に実質的に上述される調製方法が提供されることがさらに好ましく、このボリコナゾールは、少なくとも50%のボリコナゾールが、約100mgのボリコナゾールの試験試料から30分以内に溶解され、25℃、pH7.0で、300rpmで撹拌しながら、100mLの水に懸濁または溶解されるような溶出プロファイルをさらに特徴とする。本発明に係るボリコナゾールに関連する溶出プロファイルは、好ましくは、実施例10および/または図4を参照することによってさらに特徴付けられ得る。
【0047】
実質的に上述される本発明に係る微粉化ボリコナゾール(すなわち、好ましくは、球形係数;球形係数および比表面積;球形係数、比表面積および比ザウター径のうちの1つ以上を特徴とし;好ましくは、上述したように、不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの大型結晶から機械的粉砕によって調製される)は、以下のように、IPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾールと比較していくつかの改良された特性を示す。
【0048】
特に、実質的に上述される本発明に係る微粉化ボリコナゾールは、改良された流動特性を示す。これに関して、本発明者らは、同じ質的および量的処方(qualitative and quantitative formula)を有する(すなわち、50mgの微粉化ボリコナゾールおよび50mgのラクトース一水和物を含有する)、本発明の微粉化ボリコナゾールの医薬ブレンドおよびIPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールの医薬ブレンドを調製し、本発明の微粉化ボリコナゾールを含有する医薬ブレンドが、33のCarr指数値および1.50のHausner比値を示す一方、IPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾールを含有する固体医薬ブレンドは、48のCarr指数値および1.92のHausner比値を示すことを見出した。
【0049】
圧縮性指数(またはCarr指数、以後、「CI」と呼ばれる)およびそれと密接に関連するHausner比(以後、「HR」と呼ばれる)は、医薬品粉末の粉末流れを測定するための広く受け入れられている方法である(欧州薬方局(European Pharmacopoeia)6.6,2.9.36 Powder flowを参照のこと)。CIは、粉末が固化する傾向の尺度であり、このため、粒子間相互作用の相対的重要性の尺度であり、これは特に、低流動性の材料に関連する。CI方法は、粉末流動性の単独の尺度として用いることができないが、計算が簡単であるという利点を有し、APIと、賦形剤と、製剤との間の迅速な比較を提供する(Developing Solid Oral Dosage Forms Pharmaceutical Theory & Practice,Academic Press 2009.Y.Qiu,L.Liu,Y.Chen,G.G.Z.Zhang,W.Porterを参照のこと)。CIおよびHRを測定するための基本的手順は、体積変化がさらに生じなくなるまで材料をタップした後の粉末の、沈降させていない状態での(unsettled)見掛け体積(V)、および最終的なタップ体積(V)を測定することである。CIおよびHRは、以下のように計算される:
圧縮性指数(またはCarr指数)=100×[(V−V)/V
Hausner比=V/V
【0050】
あるいは、CIおよびHRは、かさ密度(ρbulk)およびタップ密度(ρtapped)の測定値を用いて、以下のように計算され得る:
圧縮性指数(またはCarr指数)=100×[(ρtapped−ρbulk)/ρtapped
Hausner比=ρtapped/ρbulk
【0051】
CIおよびHRについて、流動性の一般に認められている尺度は、表2に示される。欧州薬局方(European Pharmacopoeia)の9.36.−2は以下のとおりである:

【0052】
したがって、微粉化ボリコナゾール自体が固有の低い流動性を示すが、本発明の微粉化ボリコナゾールを含有する医薬ブレンド、ひいては本発明の微粉化ボリコナゾール自体も、IPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾールを含有する医薬ブレンド、およびIPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾール自体とそれぞれ比較した際に、改良された流動特性を示すことが上記から理解され得る。
【0053】
また、上記のブレンドについて得られるCarr指数値は、実質的に上述される本発明に係る微粉化ボリコナゾールが、上述した従来技術の微粉化ボリコナゾールと比較して改良された圧縮特性を示すことをさらに示し、これは、本発明に係る微粉化ボリコナゾールがより良好な固化傾向を示し、したがって、錠剤形成により適していることを意味する。
【0054】
さらに、実質的に上述される本発明に係る微粉化ボリコナゾールは、同様のザウター径を示すが、従来技術の微粉化ボリコナゾールと比較してより小さい比表面積を示し、したがって、より低い帯電性などのいくつかの改良された特性を示す。固体形態の薬剤物質は、接触による静電帯電あるいは粒子間または粒子とそれを含む表面との間の相互作用によって生じる摩擦帯電(トリボ帯電)を受け得る。これらの相互作用は、製剤化、製造、粉末流れ、および充填挙動に影響を与え得る。さらに、静電帯電が混合均一性における問題の原因にもなることが報告されている。乾燥粉末が静電的に帯電する正味の正電荷または負電荷傾向は帯電性と呼ばれる。乾燥粉末の帯電性を測定するための標準的な機器はない(AAPS PharmSciTech 2006,7,Article 103を参照のこと)。正味電荷および質量を容易に測定することができるため、トリボ帯電は、電荷対質量比で一般的に報告される。しかしながら、トリボ帯電および誘導帯電は、体積または質量よりむしろ粒子の表面積に密接に関連する(S.L.Soo,Instrumentation for fluid−particle flow,Noyes Publications 1999,page 64を参照のこと)。これに関して、粒子の表面積が、乾燥粉末の帯電性に重要な役割を果たし、したがって、より大きい比表面積を有する粒子がより大きな電荷を保持し得ることが周知である。したがって、本発明に係る微粉化ボリコナゾールの結晶は、IPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾールと比較して、より減少した比表面積、したがってより減少した帯電性も示す。
【0055】
有効量の実質的に上述されるボリコナゾールを、その薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤とともに含む医薬組成物も、本発明によって提供される。本明細書において使用される際の「有効量」という用語は、真菌感染症を予防し、改善し、または解消することが可能なボリコナゾールの量を意味し、この真菌感染症は、非好中球減少患者のカンジダ血症、または侵襲性アスペルギルス症、またはC.クルセイ(C.krusei)などのフルコナゾール耐性侵襲性カンジダ感染症、あるいはスケドスポリウム属(Scedosporium spp.)およびフザリウム属(Fusarium spp.)に起因するものであり得る。場合によっては、このような真菌感染症は、進行性感染症であり得る。「薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤」とは、担体、希釈剤または賦形剤が、薬学的に不活性でかつボリコナゾールと相溶性であり、そのレシピエントに対して無害でなければならないことを意味する。本発明に係る好適な薬学的に許容できる組成物は、好ましくは、注射用組成物のための懸濁液または分散体に含めるための粉末または凍結乾燥製剤、または経口懸濁液用の粉末、錠剤、フィルムコート錠などの被覆錠剤、非被覆錠剤、口腔内崩壊錠、小丸薬、丸薬、顆粒剤、カプセル剤、またはカプセル中の微小錠剤などの固体組成物;あるいは溶液の形態の液体非経口または経口組成物などの液体組成物である。
【0056】
実質的に後述される有効量の本発明に係る微粉化ボリコナゾール(すなわち、好ましくは、球形係数;球形係数および比表面積;球形係数、比表面積および比ザウター径のうちの1つ以上を特徴とし;好ましくは、上述したように、不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの大型結晶から機械的粉砕によって調製される)を含む固体医薬組成物も、以下のように、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールを有効量で含む従来技術の固体医薬組成物と比較して、改良された流動特性を示す。
【0057】
これに関して、本発明者らは、直接圧縮法によって、両方とも同じ質的および量的処方を有する(すなわち、50mgの微粉化ボリコナゾールおよび50mgのラクトース一水和物を含有する)、本発明の微粉化ボリコナゾールの固体医薬組成物およびIPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾールの固体医薬組成物を調製し、固体医薬製剤のいくつかのパラメータを分析し、本発明の微粉化ボリコナゾールを含有する固体医薬組成物が、62.9mgの質量均一性値、11.4mgの質量均一性の偏差の値、および9.52%の錠剤の非形成率を示すが、IPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾールを含有する固体医薬組成物は、6.9mgの質量均一性値、18.7mgの質量均一性の偏差の値、および90.00%の固体組成物の非形成率を示すことを見出した。これらの結果は、本発明の微粉化ボリコナゾールを含有する固体医薬組成物の質量均一性が、従来技術と比較して改良されるだけでなく、その調製のずれ(deviation)がより小さく、ひいては、本発明に係るボリコナゾールと関連する改良された流動性につながり得ることも示す。
【0058】
実質的に上述される本発明に係る微粉化ボリコナゾール(すなわち、好ましくは、球形係数;球形係数および比表面積;球形係数、比表面積および比ザウター径のうちの1つ以上を特徴とし;好ましくは、上述したように、不定の結晶形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの大型結晶から機械的粉砕によって調製される)は、意外なことに、対応する液体組成物に含まれるときの、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールと比較して、本発明によって提供される液体組成物に含まれるときの改良された溶解速度も示す。
【0059】
これに関して、本発明者らは、同じ条件下で、両方とも同じ質的および量的処方を有する、本発明の微粉化ボリコナゾールの液体医薬組成物およびIPCOM000125373Dに記載される従来技術の微粉化ボリコナゾールの液体医薬組成物[すなわち、注射用の、10.0mg/mLの微粉化ボリコナゾール、120.0mg/mLの2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPBCD)、20.8mg/mLのグリシン、および十分な量(適量)の水の濃度を含有する100mLの製剤]を調製し、前記液体医薬組成物への微粉化ボリコナゾールの溶解特性を測定した。意外なことに、前記医薬溶液に微粉化ボリコナゾールが全て溶解するための時間(time for the total solution)は、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールを含有する医薬溶液の対応する時間(すなわち109分間)と比較して本発明の微粉化ボリコナゾールを含有する医薬溶液についてははるかに短い(すなわち60分間)。したがって、前記医薬溶液中の本発明の微粉化ボリコナゾールの溶解速度は、IPCOM000125373Dに記載される微粉化ボリコナゾールの溶解速度よりはるかに速い(すなわち、9.17mg/分と比較して16.67mg/分)。
【0060】
本発明は、上述した真菌感染症の治療に使用するため、または上述した真菌感染症の治療用の薬剤の製造のための、実質的に上述されるボリコナゾール、あるいはその薬学的に許容できる塩または溶媒和物をさらに提供する。本発明は、真菌感染症の治療方法も提供し、この方法は、有効量の実質的に上述されるボリコナゾールを患者に投与するステップを含む。
【0061】
本発明において測定される粒度パラメータは、レーザー光回折技術によって、特に、以下に示される特徴を有するMalvern Mastersizer S粒度分析器によって得られた。すなわち、用いられるレーザー光源は、2ミリワットのヘリウム/ネオンレーザー(633nmの波長)であり;検出系は、Fourier Transformレンズ系であり;試料は、2.40mmレンズを用いて試験され;試料単位は、湿式測定用の試料単位であり、具体的にはMS1−Small volume Sample Dispersion Unit撹拌セル(stirred cell)であった。湿式分散体を、分散剤として脱イオン水を用いて調製し、分散体を、単位セルを撹拌することによって制御した。分析される試料に関して、秤量した量のボリコナゾール(約250mg)を、脱イオン水に溶解させたTween 20の0.1%溶液(20mL)で湿潤し;試料を2分間超音波処理し、オブスキュレーション(obscuration)が所望のレベルに達するまで分散剤(脱イオン水)を充填した予めバックグラウンド補正された(previously background and corrected)測定セルに試料を滴下して供給することによってこれらを調製した。特性評価パラメータ(体積分布)を、各試料について少なくとも6回測定し、結果は、各試料の前記測定値の平均である。
【0062】
本発明に開示される比表面積値を、BET(Brunauer、EmmettおよびTeller)理論に基づく比表面積分析技術によって得た。BET理論は、気体分子の固体への物理吸着を測定することによって固体の表面積を計算するための、当該技術分野で公知の広く受け入れられている理論である(S.Brunauer,P.H.Emmett and E.Teller,J.Am.Chem.Soc.,1938,60,309を参照のこと)。特に、77Kで0.05〜0.3の範囲内の異なる相対圧力(P/P)で、秤量された量の固体によって吸着される窒素気体分子の量を測定することによって得られるBET表面積グラフから、本発明において測定される比表面積値を計算した。正確には、気体分子の吸着の測定を、以下に示される特徴を有するMicromeritics(商標)Gemini V装置によって行った。すなわち、吸着の測定に用いられる気体は、窒素気体であった。分析される試料を、ボリコナゾール(約0.5g)を秤量することによって準備した。分析用の試料を脱気した(30℃で10分間および80℃で1時間)。窒素の吸着の判定を、77Kでおよび0.05〜0.3の範囲内で十分に分散させた12の相対圧力(すなわち、764,480mmHgの飽和圧力に対する38.425mmHg〜230.000mmHgの範囲の12の絶対圧力)について測定した。
【0063】
粒子密度の実験値を、比重瓶、特に50mLのガラスの比重瓶によって得た。以下に示される技術的特徴の下で測定を行った。すなわち、判定を25℃で行い;対照の液体はn−ヘプタンであり;測定を3回行い、結果は、前記測定値の平均である。
【0064】
数字の前に付き、数字について言及している本発明において使用される「約」という用語は、その値の数±10%によって規定される範囲内、好ましくは、数±5%によって規定される範囲内、より好ましくは、数±2%によって規定される範囲内、さらにより好ましくは、数±1%によって規定される範囲内にある任意の値を表すことを意味する。例えば、「約10」は、9〜11の範囲内、好ましくは、9.5〜10.5の範囲内、より好ましくは、9.8〜10.2の範囲内、さらにより好ましくは、9.9〜10.1の範囲内の意味として解釈されるべきである。
【0065】
これより、本発明は、以下の実施例を参照してさらに示される。これらの実施例は、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【実施例】
【0066】
具体的な実施例
一般的な実験条件
粒度分布方法:
ボリコナゾールの粒度測定を、2ミリワットのヘリウム/ネオンレーザーおよびFourier Transformレンズ系を装着したMalvern Mastersizer S粒度分析器を用いて得た。試料を、2.40mmレンズを用いて試験した。試料単位は、MS1−Small Volume Sample Dispersion Unit撹拌セルであった。分散剤は脱イオン水であった。試料の粒度分布は、正規分布をたどるものと考えられた。
【0067】
分析モデル:多分散(polydisperse)。設定表示(Setup presentation):3_WATERF。粒子R.I.=(1.6800,0.01)。分散剤R.I.=1.33。
【0068】
秤量した量のボリコナゾール(約250mg)を、脱イオン水に溶解させたTween 20の0.1%溶液20mLで湿潤することによって、分析用試料を調製した。この試料を、2分間超音波処理し、オブスキュレーションが所望のレベルに達するまで分散剤(脱イオン水)を充填した予めバックグラウンド補正された測定セルに滴下して供給した。少なくとも6回の測定についての体積分布を得た。特性評価について、D10、D50およびD90(体積基準)、D[4,3](体積基準の平均径)およびD[3,2](表面積対体積基準の平均径、すなわちザウター径)の値を、特に列挙した。各値は、各特性評価パラメータについて得られる測定値の平均である。
【0069】
表記D[D(v,0.X)とも表記される]は、粒子のX%が、規定の直径D未満の直径を有することを意味する。したがって、100μmのD90[またはD(v,0.9)]は、粒子の90%が、100μm未満の直径を有することを意味する。
【0070】
光学顕微鏡法:
固体試料(ボリコナゾール結晶を含有する)を、スライドに載せ、Olympus BX41顕微鏡を用いて分析した。40倍の倍率で顕微鏡写真を撮影した。
【0071】
比表面積方法:
ボリコナゾールのBET(Brunauer、EmmettおよびTeller)比表面積を、Micromeritics(商標)GEMINI V装置(GEMINI CONFIRM V2.00 Software(商標))を用いて測定した。分析用試料を、30℃で10分間、および80℃で1時間脱気した。77KでのNの吸着の判定を、秤量された量のボリコナゾール(すなわち、約0.5g)について0.02〜0.2の範囲の相対圧力について測定した。
【0072】
密度(比重瓶法):
ボリコナゾール試料の密度を、50mLのガラスの比重瓶を用いて、25℃で測定した。予め秤量された量の約1gのボリコナゾールを比重瓶に入れ、体積をn−ヘプタンで満たした。この場合、ボリコナゾールは、使用温度でほとんど溶けない。ボリコナゾール試料の密度(ρ)を、n−ヘプタンの公知の密度(ρ:0.685g/cm)、n−ヘプタンのみを充填した比重瓶の重量

、ボリコナゾールおよびn−ヘプタンの両方を含む充填された比重瓶の重量(WS+H)、およびボリコナゾールの重量(W)から測定することができる:

【0073】
ボリコナゾール試料の密度を、3回測定した。列挙される結果は、各試料について得られる3つの値の平均である。
【0074】
粉末X線回折(XRD):
垂直ゴニオメータおよび銅陽極管、放射線CuKα、λ=1,54056Åを用いて、RX SIEMENS D5000回折計を用いて、X線回折図を得た。
【0075】
HPLC方法:
クロマトグラフ分離を、Symmetry C18、3.5μm、4.6mm×150mmのカラム中で行った。
【0076】
移動相Aは、ギ酸を用いてpHを4.0に調整した、1000mLの水に溶解させた0.63gのHCOONHから調製した0.010Mのギ酸アンモニウム緩衝液、pH4.0であった。移動相を混合し、0.22μmのナイロン膜を通して減圧下でろ過した。
【0077】
移動相Bはアセトニトリルであった。
【0078】
クロマトグラフを以下のように設定した:
【0079】
最初の0〜13分間、75%の移動相A、13〜25分間、40%への直線勾配を有する移動相A、25〜35分間、無勾配の40%の移動相A、35〜40分間、25%への直線勾配を有する移動相A、40〜55分間、無勾配の25%の移動相A、55〜60分間、75%への直線勾配を有する移動相Aおよび60〜65分間、75%の移動相Aで平衡。
【0080】
クロマトグラフは、254nmの検出器を備え、流量は、20〜25℃で1.0mL/分であった。
【0081】
溶解速度方法:
約100mgのボリコナゾールを、希釈されたHClまたはNaOHを用いてpH7.0に予め調整された、25℃の100mLの脱イオン水に懸濁した。懸濁液を300rpmで撹拌した。アリコートを取り、2〜60分間の撹拌時間の後にろ過した。アリコートに溶解されるボリコナゾールの量を、HPLCによって測定し、少なくとも24時間撹拌した後に測定した際の熱力学的溶解度の値(100%の溶解度)を調べた。
【0082】
比較例1:
この比較例は、IPCOM000125373Dの実施例1.2の再現であり、板状結晶の形態のボリコナゾールを調製する。
【0083】
68mlの無水エタノールを、40gのボリコナゾールに加えた。懸濁液を還流温度(約80℃)まで加熱し、最終的な溶液を、その温度で30分間撹拌した。混合物を、約2時間で20〜25℃まで冷まし、2時間撹拌し、得られた懸濁液をろ過し、エタノール3mlずつで2回ケーキを洗浄した。乾燥させた後、表題の生成物に対応する34.02gの白色の固体が得られた(85%の収率)。光学顕微鏡法:板状結晶。XRD:形態I、図5を参照のこと。
【0084】
比較例2:
実施例1において得られる板状結晶の形態のボリコナゾールを、6バールのベンチュリ圧力および5バールのミル圧力で動作するステンレス鋼のRinajet微粉砕機を用いて微粉化した。密度(比重瓶法):1.40g/cm。粒度分布:D50:15.2μm;D[4,3]:28.7μm;D[3,2]:8.3μm。XRD:形態I、図6を参照のこと。
【0085】
実施例1:
6.32Kgのボリコナゾールを、16.6Lのイソプロパノールを用いて還流温度で溶解させた。溶液を0〜2℃まで冷却し、その温度で1時間撹拌した。得られた懸濁液をろ過し、2.5Lのイソプロパノールでケーキを洗浄した。乾燥させた後、ボリコナゾールに対応する4.90Kgの白色の固体が得られた(77.5%の収率)。光学顕微鏡法:不定の結晶形状を有する結晶。XRD:形態I、図7を参照のこと。
【0086】
実施例2:
実施例1において得られるような不定の形状を有する結晶の形態のボリコナゾールを、5バールのベンチュリ圧力および3バールのミル圧力で動作するステンレス鋼のTL微粉砕機を用いて微粉化した。密度(比重瓶法):1.35g/cm。粒度分布:D10:7.4μm、D50:29.7μm、D90:102.8μm;D[4,3]:44.5μm;D[3,2]:15.4μm。比表面積(BET):0.9319m/g。光学顕微鏡法:微粉化された生成物。
【0087】
実施例3〜6:
実施例1において得られる不定の結晶形状を有する結晶の形態のボリコナゾールを、5バールのベンチュリ圧力および3バールのミル圧力で動作するステンレス鋼のTL微粉砕機を用いて微粉化した。
【0088】
4つの異なるバッチの結果が、表2にまとめられている。

【0089】
実施例7
実施例1において得られる不定の結晶形状を有する結晶の形態のボリコナゾールをミリングし、100μmの篩を通して篩過した。篩過した結晶を分け、結晶の残りをミリングし、100μmの篩を通して再度篩過した。全ての結晶を、100μmの篩を通して篩過するまで、結晶の残り(すなわち、100μmの篩を通過しない結晶)に関してこのミリングおよび篩過を繰り返した。最後に、篩過された結晶を組み合わせた。7,000rpmで動作するステンレス鋼のピンミルを用いて、ミリングを行った。粒度分布:D10:7.5μm、D50:25.3μm、D90:57.4μm;D[4,3]:24.9μm;D[3,2]:14.3μm;比表面積(BET):1.1032m/g。
【0090】
実施例8
実施例7において得られるボリコナゾールを、7バールのベンチュリ圧力および5バールのミル圧力で動作するステンレス鋼のTL微粉砕機を用いて2回微粉化した。粒度分布:D10:2.5μm、D50:7.3μm、D90:29.9μm;D[4,3]:14.2μm;D[3,2]:5.2μm;比表面積(BET):1.5910m/g。
【0091】
実施例9:
不定の形状を有する結晶から得られる微粉化ボリコナゾールのいくつかのバッチの球形係数を、測定された粒子密度値または報告された結晶密度値の何れかを用いて計算し、それぞれ表3および4にまとめている。


【0092】
当該技術分野で認識されているように、および実質的に上述したように、測定された粒子密度の値は、結晶構造に基づく密度の上述した正確な特徴値からいくらか外れている可能性が高く、当業者は、何れかの値に基づいて球形度を計算し得ることを認識するであろう。しかしながら、本発明者らにとっては、結晶構造に基づく密度の正確な特徴値に基づいて球形度を求める方が好ましい。
【0093】
実施例10:
比較例2において得られる板状結晶からの微粉化ボリコナゾールおよび実施例3において得られる不定の形状を有する結晶からの微粉化ボリコナゾールの溶解速度を試験した。結果が図4に示される。
【0094】
実施例11:微粉化ボリコナゾールを含む医薬ブレンドの比較試験
微粉化ボリコナゾールおよびラクトース一水和物1:1の医薬ブレンドを、以下のプロセスに記載されるとおりに調製した:
1)全ての成分:ラクトース一水和物および微粉化ボリコナゾールを秤量する。
2)0.8mmの篩を通して全ての成分を篩過する。
3)実験用混合器で、15分間混合する。
【0095】
欧州薬局方(European Pharmacopeia)に準拠した方法にしたがって得られる体積および密度値から、HRおよびCIによって評価される流動特性値を得た。結果が以下の表5に示される:

【0096】
実施例12:微粉化ボリコナゾールを含む固体医薬組成物の比較試験
ボリコナゾールおよびラクトース一水和物1:1の医薬組成物(すなわち錠剤)を、以下のプロセスに記載されるとおりに調製した。
1)全ての成分:ラクトース一水和物および微粉化ボリコナゾールを秤量する。
2)0.8mmの篩を通して全ての成分を篩過する。
3)実験用混合器で、15分間混合する。
4)打錠機によって、100mg±7.5%を目標重量として6mmの抜き型(punch)に押し抜く。
5)抜き型の体積高さを調整する(試料の密度によって計算する)。
【0097】
欧州薬局方(European Pharmacopeia)に準拠した方法にしたがって結果が得られ、以下の表6に示される:

【0098】
実施例13:微粉化ボリコナゾールを含む液体医薬組成物の調製の比較試験
以下の表7に示される以下の処方を有する微粉化ボリコナゾールの医薬溶液(100mL)を調製した:

【0099】
水中で磁気撹拌しながら成分を混合し、全て溶解するまで30±4℃で加熱することによって、上記の調製を行った。全てが溶解した終点の判定:目視判定(透明な溶液)、およびHPLCによるアッセイ(95〜105%)。溶解度の結果が以下の表8に示される:


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.20の球形係数を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項2】
請求項1に記載のボリコナゾールにおいて、約0.20〜0.70の範囲の球形係数を特徴とするボリコナゾール。
【請求項3】
請求項2に記載のボリコナゾールにおいて、約0.22〜0.60の範囲の球形係数を特徴とするボリコナゾール。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のボリコナゾールにおいて、約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積を有することを特徴とするボリコナゾール。
【請求項5】
約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項6】
請求項4または5に記載のボリコナゾールにおいて、約0.9m/g〜1.7m/gの範囲の比表面積を有することを特徴とするボリコナゾール。
【請求項7】
少なくとも0.20の球形係数および約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のボリコナゾールにおいて、約4μm〜20μmの範囲のザウター径を有することを特徴とするボリコナゾール。
【請求項9】
請求項8に記載のボリコナゾールにおいて、約5μm〜18μmの範囲のザウター径を有することを特徴とするボリコナゾール。
【請求項10】
約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積および約4μm〜20μmの範囲のザウター径を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項11】
少なくとも0.20の球形係数、約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積および約4μm〜20μmの範囲のザウター径を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のボリコナゾールにおいて、機械的破砕を行ったことを特徴とするボリコナゾール。
【請求項13】
請求項12に記載のボリコナゾールにおいて、前記機械的破砕が、切断、チッピング、グラインディング、圧壊、ミリング、微粉化および摩砕からなる群から選択されることを特徴とするボリコナゾール。
【請求項14】
請求項13に記載のボリコナゾールにおいて、前記機械的破砕が、ミリングまたは微粉化であることを特徴とするボリコナゾール。
【請求項15】
請求項12乃至14の何れか1項に記載のボリコナゾールにおいて、実質的に不定の形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの機械的破砕によって得られることを特徴とするボリコナゾール。
【請求項16】
請求項15に記載のボリコナゾールにおいて、実質的に不定の形状および/または晶癖を有するボリコナゾールの微粉化またはミリングによって得られることを特徴とするボリコナゾール。
【請求項17】
実質的に不定の形状および/または晶癖を有するボリコナゾールから得られることを特徴とする医薬用途に適した微粉化またはミリングされたボリコナゾール。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項に記載のボリコナゾールにおいて、21℃で約1.442g/cmの密度を特徴とするボリコナゾール。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか1項に記載のボリコナゾールにおいて、約250μm未満のD90を特徴とするボリコナゾール。
【請求項20】
請求項19に記載のボリコナゾールにおいて、約150μm未満のD90を特徴とするボリコナゾール。
【請求項21】
請求項20に記載のボリコナゾールにおいて、約100μm未満のD90を特徴とするボリコナゾール。
【請求項22】
少なくとも0.20の球形係数および約250μm未満のD90を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項23】
約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積および約250μm未満のD90を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項24】
少なくとも0.20の球形係数、約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積および約250μm未満のD90を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項25】
約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積、約4μm〜20μmの範囲のザウター径および約250μm未満のD90を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項26】
少なくとも0.20の球形係数、約0.5m/g〜2m/gの範囲の比表面積、約4μm〜20μmの範囲のザウター径および約250μm未満のD90を特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項27】
請求項1乃至26の何れか1項に記載のボリコナゾールを調製する方法において、(a)実質的に不定の形状および/または晶癖を有するボリコナゾールを提供するステップと;(b)ステップ(a)の前記ボリコナゾールに機械的微粉化を行って、少なくともその球形係数および/または比表面積、および任意に必要に応じてザウター径および/またはD90も調整し、それによって、請求項1乃至26の何れか1項に記載のボリコナゾールを得るステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記機械的微粉化が、切断、チッピング、グラインディング、圧壊、ミリング、微粉化および摩砕からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記機械的微粉化が、ステップ(a)の前記ボリコナゾールをミリングまたは微粉化することであることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記ミリングが、以下のステップ:(i)実質的に不定の形状および/または晶癖を有するボリコナゾールをミリングするステップと;(ii)前記ミリングされた結晶を、250μm以下の篩を通して篩過するステップと;(iii)前記篩過された結晶を分けるステップと;(iv)篩過されていない結晶が残っている場合、ステップ(i)〜(iii)を繰り返すステップと;(v)前記篩過された結晶を組み合わせるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、前記ミリングが、エアジェットミリングまたはピンミリングを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27乃至31の何れか1項に記載の方法において、イソプロパノール、メチルエチルケトン/シクロヘキサン混合物、エタノール/シクロヘキサン混合物および炭酸ジメチル/シクロヘキサン混合物からなる群から選択される溶媒系からステップ(a)のボリコナゾールを結晶化するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、イソプロパノールからボリコナゾールを結晶化するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項27乃至33の何れか1項に記載の方法によって得られることを特徴とする医薬用途に適したボリコナゾール。
【請求項35】
請求項1乃至26、または34の何れか1項に記載のボリコナゾールを調製するためのものであることを特徴とする、実質的に不定の形状および/または晶癖を有するボリコナゾール結晶の使用。
【請求項36】
真菌感染症の治療のためのものであることを特徴とする、請求項1乃至26、または34の何れか1項に記載のボリコナゾールの使用。
【請求項37】
請求項36に記載のボリコナゾールの使用において、前記治療が、侵襲性アスペルギルス症の治療であることを特徴とする使用。
【請求項38】
請求項36に記載のボリコナゾールの使用において、前記治療が、非好中球減少患者のカンジダ血症の治療であることを特徴とする使用。
【請求項39】
請求項36に記載のボリコナゾールの使用において、前記治療が、C.クルセイ(C.krusei)などのフルコナゾール耐性侵襲性カンジダ感染症の治療であることを特徴とする使用。
【請求項40】
請求項36に記載のボリコナゾールの使用において、前記治療が、スケドスポリウム属(Scedosporium spp.)およびフザリウム属(Fusarium spp.)に起因する真菌感染症の治療であることを特徴とする使用。
【請求項41】
請求項36乃至40の何れか1項に記載のボリコナゾールの使用において、進行性感染症の治療のためのものであることを特徴とする使用。
【請求項42】
1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤とともに、請求項1乃至26、または34の何れか1項に記載のボリコナゾールを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項43】
請求項42に記載の医薬組成物において、注射用組成物のための懸濁液または分散体に含めるための粉末または凍結乾燥製剤であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項44】
請求項42に記載の医薬組成物において、経口懸濁液用の粉末、被覆錠剤、非被覆錠剤、口腔内崩壊錠、小丸薬、丸薬、顆粒剤、カプセル剤、およびカプセル中の微小錠剤からなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項45】
請求項42に記載の医薬組成物において、液体組成物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項46】
患者の真菌感染症を治療する方法において、治療的に有効な用量の請求項1乃至26、または34の何れか1項に記載のボリコナゾールを前記患者に投与するステップを含むことを特徴とする治療方法。
【請求項47】
請求項46に記載の治療方法において、前記真菌感染症が、非好中球減少患者のカンジダ血症であることを特徴とする治療方法。
【請求項48】
請求項46に記載の治療方法において、前記真菌感染症が侵襲性アスペルギルス症であることを特徴とする治療方法。
【請求項49】
請求項46に記載の治療方法において、前記真菌感染症が、C.クルセイ(C.krusei)などのフルコナゾール耐性侵襲性カンジダ感染症であることを特徴とする治療方法。
【請求項50】
請求項46に記載の治療方法において、前記真菌感染症が、スケドスポリウム属(Scedosporium spp.)およびフザリウム属(Fusarium spp.)に起因することを特徴とする治療方法。
【請求項51】
請求項46乃至50の何れか1項に記載の治療方法において、前記治療が、進行性感染症の治療であることを特徴とする治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−516394(P2013−516394A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546390(P2012−546390)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060702
【国際公開番号】WO2011/079969
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512166511)メディケム ソシエダ アノニマ (1)
【氏名又は名称原語表記】MEDICHEM S.A.
【Fターム(参考)】