説明

医薬的に活性な化合物の制御された送達方法

本発明は医薬的に活性な化合物の放出時間を延ばし、毒性を低下させるための組成物及び方法を提供する。この化合物は、医薬的に活性な化合物と親油性対イオンの塩及び医薬的に受容される水に非混合性の溶媒を含む。ある実施形態では、組成物は注射可能な組成物として提供される。親油性対イオンは飽和又は不飽和C8-C22脂肪酸であってよく、好ましくは飽和又は不飽和C10-C18脂肪酸である。組成物は哺乳動物に投与されたとき、長時間にわたって放出される。したがって、本発明は、活性化合物を15日間、又はそれ以上にわたって制御された用量で投与することを可能にする。多くの化合物、例えばそれだけに限定されないが、チルミコシン、オキシテトラサイクリン、フルオキセチン、ロキシスロマイシン、及びツルビナフィンなどが、本発明に従って投与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬的に活性な化合物の放出時間を延ばし毒性を減少させる方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景についての以下の説明は、単に読者が本発明を理解するのを助けるためのものであり、本発明に対する従来技術を記述又は構成するものではない。
【0003】
注射された薬の放出時間を延ばし、その作用の持続時間を増加させ、あるいは有毒な影響を低減することがしばしば望まれる。体内で直ちに溶解する製剤は、通常急速に吸収され、医薬的に活性な製品を望ましい形でゆっくりと放出するのとは反対に、利用できる薬を突然爆発的に放出する。医薬化合物の放出を制御し引き延ばすためにいろいろな試みがなされたが、この技術に関連する問題点、例えば、放出時間の延長、最大の安定性と効力、毒性の低減、調剤の高い再現性、及び望ましくないマトリックス材料によって導入される望まれない物理的、化学的、又は毒物学的な影響の排除、などを達成するという問題、をすべて解決することに成功していない。さらに、患者が動物である場合、一般に投薬されたものを消費したがらない。したがって、投与の回数を少なくするような組成物と方法は治療される動物に加わるストレスを小さくし、動物を世話する人たちにとって容易で確実な投薬方法となる。
【0004】
オキシテトラサイクリンは広く用いられており、哺乳動物におけるいろいろな感染症を治療するのに有用な抗生物質である。特に、これは家畜における呼吸器感染の治療と予防に用いられる。しかし、通常の手段で繰り返し投与する場合、かなりのコストがかかる。
【0005】
チルミコシンは二つの第三級アミンを有するマクロライド系抗生物質である。これは、組織内の半減期が長く、広範なバクテリアに効果的であり、ウシの呼吸器疾患の治療に用いられる。高レベルでは、チルミコシンは心臓毒性がある。したがって、敏感な種、例えばネコ、ヤギ、ブタ、及びウマなどでは、もっぱら安全性の理由からその使用は回避されている。市販の製品、MICOTIL(登録商標) (Eli Lilly & Co., Indianapolis, IN)は、チルミコシンの二リン酸塩であり、米国特許第5,574,020号に記載されている。この製剤はウシで効果的であるが、抗生物質は急速に放出され、多くの種で、特にイヌ及びネコなどの小動物で毒性が生ずる。
【0006】
フルオキセチン(PROZAC(登録商標), Eli Lilly & Co., Indianapolis, IN)は、抗鬱剤、抗強迫神経症剤、そして抗過食症剤である。フルオキセチンの有益な作用は、神経のセロトニン再取り込みを阻害する能力に関連すると考えられている。フルオキセチンは、脳のシナプトゾ−ムとプレートレットへのセロトニン再取り込みを優先的に阻害する。ヒトにおけるこの効果の他に、フルオキセチンはまた、イヌにおける分離不安と過剰攻撃性の抑制、及びネコにおける尿スプレー行動を抑制するのにも有用である。
【0007】
テルビナフィン(LAMISIL(登録商標), Novartis, Basel, Switzerland)は、合成抗カビ剤である。構造的には、それはナフチフィンと関連したアルキルアミンである。その性質はきわめて親油性で、皮膚、爪、及び脂肪組織にたまる傾向がある。テルビナフィンは、主に皮膚糸状菌と呼ばれる菌のグループに効果的であり、したがって、ネコのタムシなど、角化上皮の感染の治療に用いられる。
【0008】
上述の薬、並びにその他の多くの薬、は時間をかけて放出される形で利用できるならば、もっと安全に便利に利用できるであろう。
【発明の開示】
【0009】
ある様態で、本発明は哺乳動物への医薬的に活性な化合物の投与のための組成物を提供する。この組成物は医薬的に活性な化合物の親油性対イオンとの塩、及び医薬的に受容される水と混合しない溶媒を含む。これらの成分を一緒にして、その哺乳動物に投与されたときに活性化合物を長時間にわたって放出する注射可能な組成物を形成する。ある実施の形態では、この組成物は哺乳動物に注射される。医薬的に活性な化合物は抗生物質であってもよい。いろいろな実施形態で、医薬的に活性な化合物は、チルミコシン、フルオキセチン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン、テルビナフィン、トリメトプリム、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、ジブカイン、ブピバカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、アセプロマジン、イトラコナゾール、テトラサイクリン、スルフォンアミド、又はアミノグリコシド、である。いくつかの実施形態では、親油性対イオンはC10-C22飽和又は不飽和脂肪酸のイオン化形態であるが、他の実施形態では、親油性対イオンはC10-C18飽和又は不飽和脂肪酸のイオン化形態である。適当な脂肪酸の例としては、ラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、又はそれらの組み合わせ、などがあるがそれだけに限定されない。ある実施形態では、組成物は透明な溶液である。
【0010】
別の実施形態では、親油性対イオンは、例えばセバシン酸、ポリセバシン酸、ポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸、又はポリ安息香酸、又はそれらの組み合わせ、などのポリカルボン酸のイオン化形態である。いろいろな実施形態で、医薬的に受容される水に混合しない溶媒は、ソウフラワー(saw flower)油、サフラワー油、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、ダイズ油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、オリーブ油、中鎖又は長鎖脂肪酸、オレイン酸エチル、リノール酸、パルミチン酸イソプロピル、グリセロール・エステル、ポリオキシル水素添加ヒマシ油、タラ肝油、魚油、ココナッツ油、又はそれらの組み合わせ、である。本発明において使用できるその他の水に非混合性の溶媒も見つけられる。ある実施形態では、活性化合物と水に非混合性の溶媒の混合物は室温で透明な溶液を形成する。
【0011】
本発明のある実施形態では、医薬的に活性な化合物はチルミコシンであり、親油性の対イオンはリノール酸のイオン化形態であり、医薬的に受容される溶媒はソウフラワー(saw flower)油、サフラワー油、ヒマシ油、及びミリスチン酸イソプロピルの一つ以上である。さらに別の実施形態では、医薬的に活性な化合物はフルオキセチンであり、親油性の対イオンはデカン酸のイオン化形態であり、医薬的に受容される溶媒はサフラワー油、ヒマシ油、及びミリスチン酸イソプロピルの一つ又は組み合わせである。別の実施形態では、本発明の組成物は水に注入されたときに二相混合物を形成する。“二相”とは、異なる分配係数を有する二つの相が形成されるということを意味する。すなわち、組成物は水に溶けず、水に注入されると付着性のオイル状のマスを形成する。付着性のオイル状のマスは水性相とはっきりと異なる相分離を保つ。
【0012】
“塩”とは、共有結合で結ばれるのではなく、イオンの引力によって化学的に結合される二つの化合物を意味する。塩における結合は、イオン結合と水素結合の組み合わせの結果であってもよい。したがって、例えば、チルミコシンの“リノール酸塩”とは、イオン引力によってリノール酸のイオン化形態と結合したチルミコシンを指す。ある実施形態では、本発明の製剤は非水性である。“水に非混合性の”とは、溶媒が98°Fで水の中に1%以上の比で混合すると必ず二つの相に分離することを意味する。“ポリカルボン酸”とは、少なくとも二つのカルボキシル基を含む分子を意味する。いろいろな実施形態で、ポリカルボン酸は、ポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸、セバシン酸、ドデカン二酸。ポリセバシン酸、ポリ安息香酸、又はそれらの組み合わせ、である。“ポリ”とは二つ以上を意味する。本明細書で用いる場合、“約”とは、示された値プラス又はマイナス10%を含む範囲を指す。“透明な溶液”とは、溶液をフィルターに通すことができ、フィルターに何も沈澱が集められないことを意味する。ある実施形態では、このフィルターは孔のサイズが0.22 μmであり、別の実施形態では、フィルターは孔のサイズが0.45 μmである。透明な溶液は懸濁液ではない。透明な溶液は0.22 μmフィルター又は0.45 μmフィルターによる濾過によって得られる。
【0013】
“親油性対イオン”とは、油脂に可溶な分子のイオン化形態を指す。親油性対イオンは、脂肪酸のイオン化形態であることも、別の油脂可溶分子であることもある。対イオンは、対向する塩メンバーの化学グループの電荷と反対の少なくとも一つの電荷を有し、それによって二つの分子の間にイオン引力が生ずる。親油性対イオンの特定の水/オクタノール分配係数は異なる。ある実施形態では、親油性対イオンは水/オクタノール分配係数が100以上である。別の実施形態では、この係数は50以上(例えば安息香酸)、又は40以上、又は25以上、又は10以上である。
【0014】
別の観点で、本発明は、チルミコシンのリノール酸塩と医薬的に受容される水に非混合性の溶媒の組成物を提供する。チルミコシンのリノール酸塩の少なくとも一部分はその溶媒に溶解する。チルミコシンのリノール酸塩のある実施形態はその溶媒に完全に溶解して透明な溶液を形成する。医薬的に受容される溶媒は、サフラワー油、ヒマシ油、又はミリスチン酸イソプロピル、又はそれらの組み合わせである。ある実施形態では、リノール酸はチルミコシンに対して2モル当量で存在し、別の実施形態では約1.5モル当量乃至約2.5モル当量以上で存在する。“ジ(リノール)”酸とは、チルミコシンに結合した二つのリノール酸分子を意味する。“少なくとも一部分”とは、少なくとも10%を意味する。他のいろいろな実施形態では、“少なくとも一部分”とは、少なくとも25%又は35%又は50%又は65%又は75%又は90%の塩が溶媒に溶解して水中で二相溶液を形成することを意味する。塩は、サンプルを溶媒と混合して98°F±2°Fで濾過したときに0.22μmフィルターに保持されるのが塩の10%以下であるとき、その溶媒に“溶解する”。
【0015】
別の観点で、本発明は、医薬的に活性な化合物を哺乳動物に投与する方法を提供する。この方法は、ここで記載される本発明の組成物を哺乳動物に投与するステップを含む。ある実施形態では、この組成物はそれを哺乳動物に注射することによって投与される。いろいろな実施形態では、医薬的に活性な化合物は、例えば、チルミコシン、テルビナフィン、トリメトプリム、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、スルフォンアミド、チルミコシン、及びアミノグリコシド、などの抗生物質である。別の実施形態では、医薬的に活性な化合物はフルオロキセチンである。この方法は、以前利用できた形態で提供された場合には治療される哺乳動物に毒性を生ずる活性化合物を投与するステップを含む。すなわち、本発明の製剤及び方法は、以前は安全性の理由により特に哺乳動物で広く用いることができなかった化合物を投与することを可能にする。別の実施形態では、組成物は経口で、皮下に、腹腔内に、皮内に、筋肉内に、粘膜に、又はその他の手段で、投与できる。
【0016】
医薬的に活性な化合物を“長時間にわたって”放出するとは、活性化合物が哺乳動物の血液中に又は治療される組織に医薬的に有効な量で少なくとも3日、少なくとも3日、少なくとも4日、又は少なくとも5日、又は少なくとも6日、又は少なくとも7日、又は少なくとも8日、少なくとも9日、又は少なくとも10日、又は少なくとも11日、少なくとも12日、又は少なくとも13日、又は少なくとも14日、又は少なくとも15日、又は少なくとも20日、又は少なくとも25日、又は少なくとも30日、又は少なくとも35日、又は少なくとも40日、又は少なくとも45日、又は少なくとも50日、又は少なくとも55日、又は少なくとも60日、にわたって存在する。したがって、この方法は、化合物の放出時間を延ばし、制御された用量の活性化合物を治療される患者に提供することを可能にする。正確な時間は、いくつかの変数に依存し、それらを操作して特定の医薬的に活性な化合物又は用途に対して最適化することができる。いろいろな実施形態で、注射後、化合物は血液中又は治療される組織の中に医薬的に有効な量で、上述した期間にわたって存在する。別の実施形態では、医薬的に有効な量が、一回の注射の後に上記の日数にわたって治療される組織の中に存在する。“治療される組織”とは、治療しようとする組織、例えばその活性化合物を送達しようとする肺組織又はその他の組織である。“医薬的に有効な量”とは、治療される動物に測定できる医学的に意味のある影響を生じて問題の疾患の治癒、進行停止、又は予防をもたらす、又は治療の理由であった症状を軽減又は予防するような量を意味する。薬によっては(例えばチルミコシン)、組織に蓄積して血清中には低量で存在するものもある。したがって、血液中には測定できる医学的に意味のある影響を生じないような量しか存在しないが、血液中の薬の量が標的組織に蓄積されたもっと高い濃度と相関していて、医薬的に有効な量になることがある。“医薬的に受容される溶媒”とは、医薬的に活性な化合物の塩と親油性対イオンを溶解する液体であって、ヒト及び/又は動物で用いるのに適し、有害なひどい副作用(例えば、毒性、刺激、及びアレルギー反応)を引き起こさず、妥当な利益/リスク比に見合うものである。
【0017】
別の観点で、本発明は、本発明の製剤を製造する方法を提供する。この方法は、医薬的に活性な化合物の親油性対イオンとの塩を医薬的に受容される水に混じらない溶媒中に生成して本発明の製剤を製造することによって本発明の組成物を製造するステップを含む。この製剤は、ここで記載される哺乳動物に投与されたとき、活性化合物を長時間にわたって放出する。ある実施形態では、製剤は注射可能な製剤である。別の実施形態では、製剤は経口で、皮下に、腹腔内に、皮内に、粘膜に、又はその他の方法によって投与できる。
【0018】
別の観点で、本発明は、哺乳動物に投与される医薬的に活性な化合物の放出時間を延ばし毒性を低下させる方法を提供する。この方法は、本発明の製剤を調製するステップ、及びその組成物をここで記載されるように哺乳動物に投与するステップを含む。組成物は、医薬的に活性な化合物を哺乳動物に投与した後で長時間にわたって放出し、その化合物の放出時間を延ばす。したがって、本発明は、治療される哺乳動物に活性化合物を制御して投薬することができる。本発明は、少なくとも2-15日、又は少なくとも20日、又は少なくとも30日、又は少なくとも40日、又は少なくとも50日、又は少なくとも60日、又はそれ以上の期間にわたる、上述のような活性化合物の制御された用量投与を可能にする。
【0019】
別の観点で、本発明は、哺乳動物に医薬的に活性な化合物を投与するための組成物を提供する。この組成物は、医薬的に活性な化合物と親油性対イオンの塩、及び水に非混合性の医薬的に受容される溶媒を含み、それらが合体してここで記載されるような注射可能な組成物を形成する。したがって、本発明は従来利用された製剤に比べて大きな利点を有する。本発明は、医薬的に活性な化合物の制御された放出を可能にし、その結果その毒性が、特にイヌやネコなどの小動物における毒性が減少する。本発明はまた、効率的な仕方で化合物を家畜に投与することができ、従来のやり方による薬の投与に比べて時間と資源への小さな投資しか必要としないという利点を有する。医薬的に活性な化合物は、安定な注射可能な製剤として利用でき、それは哺乳動物に注射された後長時間にわたって活性化合物をゆっくりと放出する。“注射可能な製剤”又は“注射可能な組成物”とは、注射できる、すなわち、注射器に吸い込み、哺乳動物に皮下へ、腹腔内に、又は筋肉内に注射することができ、組成物中に固体が存在することによる有害な影響を生じない製剤又は組成物を意味する。固体物質としては、粒子、結晶、ガム状塊、及びゲルなどがあるが、それだけに限定されない。“医薬的に活性な化合物”とは、治療される哺乳動物に医薬的な効果を生ずる化合物を意味する。例えば、効果としては、バクテリア又は寄生物を破壊、その増殖を阻害、又は防止すること、炎症を減らすこと、哺乳動物における症状を鎮め、鎮静し、又は減少させること、又は治療された哺乳動物におけるその他の医薬的な測定できる効果、があげられる。
【0020】
ある実施形態では、本発明の組成物はチルミコシン濃度が約100 mg/ml乃至約600 mg/mlであり、哺乳動物の体重に対して約10 mgのチルミコシン/kg体重乃至約45 mgのチルミコシン/kg体重という用量で注射される。組成物は、チルミコシン濃度が約300 mg/mlであってもよい。いろいろな実施形態で、この組成物は、チルミコシン濃度が約200 mg/ml、約300 mg/ml、約400 mg/ml、又は約500 mg/mlである。さらに別の実施形態では、用量は約20 mg/kg、約30 mg/kg、又は約40 mg/kgである。哺乳動物は、イヌ又はネコ、例えば普通の家ネコ(Felis catus)である。
【0021】
別の様態で、本発明は、そのような治療を必要とする哺乳動物を治療する方法を提供する。この方法は、哺乳動物に本発明の組成物をここで記載された方法に従って投与するステップを含む。この方法は、いろいろな疾病や症状、例えばライム病、接触感染性膿疱性皮膚炎、柔組織感染症、耳の感染症、及び尿管感染症、などを治療するのに用いることができる。ライム病は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシで発生し、スピロヘータ ボレリア(Borrelia)(例えばBorrelia burgdorferi)菌によって生ずる。接触感染性膿疱性皮膚炎は(“orf”とも呼ばれ)、ヒツジで発生する丘疹性口炎ウイルスによって生ずる皮膚病である。臨床的な特徴は、ヒツジの乳房と乳首に拡がる一つ以上の赤い病変である。柔組織感染症は、皮膚、皮下脂肪、筋肉鞘(筋膜)、及び筋肉に関わる重症の組織感染症である。これらの感染症は壊疽性変化、組織死滅、全身性疾患、そしてしばしば死亡、に至る。柔組織感染症は、最も多くの場合黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(グラム陽性球菌のクラスター)及び化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(グラム陽性連鎖球菌)によって起こる。本発明はまた、他のタイプの感染症にも適用でき、本明細書で記述されるものは具体的な例として示される。
【0022】
別の様態で、本発明は哺乳動物における呼吸器疾患を治療する方法を提供する。この方法は、その哺乳動物に本発明の組成物をここで記載される方法に従って投与するステップを含む。いろいろな実施形態で、呼吸器疾患は生物のボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)によって起こる。この生物はグラム陰性菌、好気性の球桿菌であり、多くの動物種における呼吸器疾患の主な病因である。この菌は上方気道に住みつくが、上方及び下方気道の両方の疾患に関連している。この菌は、いろいろな呼吸器疾患の原因である。例えば、イヌで、この菌はケンネルコフ(気管気管支炎)、鼻炎、及びシニタス(sinitus)、を引き起こす。ネコで、この菌は気管炎、化膿性気管支肺炎、及びリンパ節炎を引き起こす。ブタで、この菌は萎縮性鼻炎、及びブタの肺炎を引き起こし、またウサギでも“スナッフル”及び漿液性から化膿性鼻炎までを引き起こす。モルモットで、この菌は漿液性から化膿性中耳炎まで、壊死性気管炎、化膿性壊死性気管支肺炎を引き起こす。ラットで、この菌は急性及び亜急性気管支肺炎、及び萎縮性鼻炎を引き起こし、霊長類でも呼吸器疾患を引き起こす。この菌は、動物同士の直接接触、並びに空気感染で伝染する。上述の疾患の用語はそれらの標準的な臨床的定義に従うものとする。
【0023】
他の実施形態では、本発明の組成物と方法は、マイコプラズマに関連した哺乳動物における呼吸器疾患を治療するのに有用である。例えば、マイコプラズマ・ハイポニューモニアエ(mycoplasma hypopneumoniae)はブタとげっ歯類の呼吸器気道における不可避的病原体である。この菌歯呼吸器の気道に感染し、他の一次又は偶発的病原体によって引き起こされる重大な呼吸器疾患のイニシエーター又はポテンシエーターとして認識されている。マイコプラズマと“関連した”トハ、マイコプラズマの存在がその疾患のイニシエーター又はポテンシエーターであるという意味である。
【0024】
上述した発明の要約は制限的なものではなく、本発明の他の特徴及び利点は、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明、並びに図面、から明らかになる。
【0025】
発明の詳細な説明
本発明の組成物は、医薬的に活性な化合物と塩基性の官能基との塩を用いて調製できる。これらは、医薬的に活性な親油性の酸、飽和又は不飽和脂肪酸、コール酸、ホスファチジン酸、ジカルボン酸、例えばセバシン酸、又は医薬的に活性な化合物と結合して生ずる塩が水に不溶であるが水に混じらない溶媒に可溶にする酸、を用いて作られる。“水に混じらない”とは、その溶媒が水性溶液ではっきりと認められるレベルの溶解度を有しないということを意味する。
【0026】
本発明の組成物はいくつかの利点を有する。組成物は高濃度の活性化合物を含む。いろいろな実施形態で、医薬的に活性な化合物は組成物中に10%-60%(w/v)の範囲で含まれる。しかし、この範囲は、医薬的に活性な化合物の溶解度又は不溶性、選ばれる親油性の対イオン、選ばれる水に非混合性の溶媒、最終生成物が注射可能性(又は不可能性)、及び個々の用途のその他の関連ニーズ、によって大きく異なる。例えば、医薬的に活性な化合物は組成物中に、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%(w/v)、という濃度で含まれることができ、また10%、又は5%、又は1%という低濃度で存在しても有用な効果を生み出すことがある。同様に、活性化合物はニーズに応じて、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれよりも高い濃度で存在することもできる。エキゾチックな賦型剤やキャリアは何も必要でない。組成物は容易に濾過されるので製造プロセスが簡単になる。製剤から水を排除したことによって製剤の安定性が高まり、微生物の増殖が阻止されると考えられる。ここで記載される組成物を調製するプロセスは単純である。注射したとき、本発明による組成物の投与は、医薬的に活性な化合物が中和されているため注射部位にずっと穏やかな反応を生ずる。
【0027】
本発明の組成物の別の利点は、それが水に非混合性の溶媒で送達されるということである。こうして、溶媒は体の中に拡散せず、ある期間、体の中で付着性のオイル状塊として存在し、したがって、薬のデポー(貯蔵所)として作用する。水に非混合性の溶媒は親油性であり、したがって、親油性の薬を高濃度で溶かす。こうして、水に不溶な医薬的に活性な物質を本発明に従って送達することができる。例えば、抗カビ剤テルビナフィンはそのような物質である。
【0028】
本発明は、医薬的に活性な化合物の放出速度を変調し、放出時間を変調する能力を提供する。放出速度は、塩を形成するために用いる対イオンの親油性と分子量を変えることによって変調することができる。例えば、チルミコシンのリノール酸塩は通常、デカン酸塩よりもゆっくりと放出される。さらに、通常、製剤中の塩の濃度が高いほど、放出速度は遅くなる。例えば、チルミコシンのデカン酸塩は、30%チルミコシン−脂肪酸塩製剤よりも60%チルミコシン−脂肪酸塩製剤からゆっくりと放出される。同様に、ここで説明されるように、親油性対イオンの選択、溶媒の選択、塩濃度、その他の変数を操作することによって、所望の点への活性化合物の放出時間を延ばしたり、縮めたりすることができる。一般に、塩は荷電グループのモル比に基づくことが望ましい。しかし、半塩(hemi-salt)を用いたり、その他の仕方で1:1比から変化させることによって塩を作ることもできる。医薬的に受容される溶媒は、水に非混合性の溶媒又は水に不溶な溶媒であってもよい。水に不溶な溶媒/水に非混合性の溶媒の混合物を用いることもできる。いろいろな水に不溶な溶媒を混合して、特定の目的で最適な結果を得ることもできる。例えば、サフラワー油、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、又はその他の水に非混合性の溶媒をいろいろな比で混合して最適な溶媒を得るようにしてもよい。いくつかの実施形態では、ほぼ等量での混合で適当な溶媒が得られる。
【0029】
別の実施形態では、医薬的に活性な化合物と親油性対イオンの塩を含む本発明の製剤を活性化合物の塩にされない形態と組み合わせて、活性化合物の最初の用量を大きくすることができる。
【0030】
特定の理論によって束縛されることは望まないが、医薬的に活性な物質と親油性対イオンの塩を形成し、非経口有機溶媒と組み合わせたときに注射可能な組成物を得ることができる。この製剤を哺乳動物に注射すると、この製剤(医薬的に活性な化合物と親油性対イオンの塩及び水に非混合性の溶媒)が哺乳動物の体の中で薬のデポーを形成すると考えられる。ある実施形態では、薬のデポーは組成物の全体を含んで皮膚の下に形成される。この薬デポーから医薬的に活性な化合物がある期間にわたって拡散して体の中に放出される。こうして、活性化合物の濃縮物が存在して、活性化合物は医薬的に有効な量で所望の期間にわたって放出される。放出時間は、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、少なくとも45日、少なくとも50日、少なくとも55日、少なくとも60日、又はそれより長く、望むように選ぶことができる。組成物は水に混じらないので、それは哺乳動物の体内で、血液などの体液とはっきり異なる相として存在すると考えられる。すなわち、二つの相が存在する。
【0031】
“薬デポー”とは、治療される哺乳動物の体の内部の医薬的に活性な化合物の濃縮物又は沈澱であって、医薬的に有効な量の活性化合物を長時間にわたって放出するものを意味する。ある実施形態では、医薬的に活性な化合物は2日以上の期間にわたって放出され、その哺乳動物の血液又は組織の中に、その期間の間、医薬的に有効な量で存在する。別の実施形態では、化合物は上述のように3日間、又は4日間、又は5日間以上、の期間にわたって放出され、医薬的に有効な量で存在する。薬デポーは、任意のタイプの注射によって形成することができ、組成物が哺乳動物の体の中にデポー又はプールを形成する。薬デポーはまた、他の投与の仕方で、例えば経口投与でも形成することができる。この実施形態では、薬デポーは哺乳動物の消化管に存在する付着性のオイル状塊から成る濃縮物である。組成物はまた、哺乳動物の皮下に注射されることによって薬デポーを形成することもできる。
【0032】
別の実施形態では、この組成物が哺乳動物に経口的に投与される。組成物はその哺乳動物の消化管に付着性のオイル状塊として存在し、ゆっくりと消化管を移動する。組成物はまた、消化管内部である距離にわたって拡がるようになる。医薬的に活性な化合物は腸管を通してゆっくりと吸収され、化合物の長時間放出が達成される。
【0033】
脂肪酸の鎖の長さ、脂肪酸の特定の組み合わせ、製剤内の医薬的に活性な化合物:親油性対イオン塩のパーセント、及び選択された医薬的に受容される水に非混合性の溶媒、などすべてが、医薬的に活性な化合物の放出速度に影響する。本発明に関して言うと、医薬的に活性な化合物の放出速度はこれらの変数及びその他の変数を操作することによって好適にかつ容易に管理できる。また、製剤は加圧減菌器による殺菌の間も安定性を保持することが見出された。本発明は、適当な溶解度と化学的官能性を有する多くの医薬的に活性な化合物に適用できる。このように、本発明は、薬剤、医薬、栄養剤、その他の哺乳動物に投与するのに望ましい化合物、などの広範な医薬的に活性な化合物に適用できる。
【0034】
本明細書で開示される方法には、用いられる医薬的に活性な化合物の個々の特性に基づいてある程度の変更が望ましいことがある。以下の非限定的な実施例は、本発明の応用をさらに説明するものであり、単に例として示されるだけである。
【実施例】
【0035】
実施例1:オキシテトラサイクリン
【化1】

オキシテトラサイクリンは、第三級アミン基を一つ有し、オキシテトラサイクリンの塩酸塩は水に容易に溶ける。1モルのオキシテトラサイクリンに1モルの脂肪酸を加えると、修飾されないオキシテトラサイクリンよりも良くミリスチン酸イソプロピルに溶ける塩が生ずる。
【0036】
本発明によるオキシテトラサイクリン組成物が、0.464グラムのオキシテトラサイクリンと0.203グラムのラウリン酸を3 mlのミリスチン酸イソプロピルに加えることによって調製された。混合物は60分間攪拌されて、25℃で透明な溶液が得られた。
【0037】
実施例2:チルミコシン
チルミコシンはマクロライド系の抗生物質で以下の構造を有する:
【化2】

【0038】
これは広範囲のバクテリアに対して効果的であり、ウシの呼吸器疾患の治療に用いられる。基本形態は水性溶媒にわずかに可溶であるが、塩化物及びリン酸塩はきわめて溶けやすい。高レベルでチルミコシンは心臓毒性があり、したがって静脈内に投与されない。安全性の理由から、その使用は、ネコ、ヤギ、ブタ、及びウマなどの敏感な種に対しては全く回避される。
【0039】
チルミコシンの二つのアミン基がいくつかの脂肪酸(例えば、デカン酸C10、ラウリン酸C12、ミリスチン酸C14、パルミチン酸C16、ステアリン酸C18、オレイン酸C18、エライジン酸C18、リノール酸C18、及びエルカ酸C22、セバシン酸、ドデカン二酸)のいずれかによって中和されると、生ずる塩は医薬的に受容される水に非混合性の溶媒に可溶である。この塩(チルミコシン−リノール酸)の製剤を透析カセットに封入して食塩水に入れると、チルミコシン塩は付着性のマスとして残り、このバッグからチルミコシンがゆっくりと放出される。放出速度は、脂肪酸の鎖の長さ、溶媒、及びチルミコシン−脂肪酸塩の濃度の関数である。
【0040】
実施例3−ロキシスロマイシン
ロキシスロマイシンは、以下の構造を有するマクロライド系の抗生物質である:
【化3】

【0041】
ロキシスロマイシンは、広範囲のバクテリアに対して有効であり、ウシの呼吸器疾患の治療に用いられる。ロキシスロマイシンのアミン基はミリスチン酸イソプロピル中でリノール酸で中和することができ、200 mg/mlで透明な溶液が得られる。
【0042】
実施例4−テルビナフィン
テルビナフィンは抗カビ剤であり、その構造を下に示す:
【化4】

【0043】
テルビナフィンは、カビのエルゴステロール生合成の主要酵素であるスクアリン・エポキシダーゼの特異的阻害剤である。テルビナフィンのアミン基がミリスチン酸イソプロピル中でリノール酸によって中和され、150 mg/mlで透明な溶液が得られた。生じた塩は水にきわめて不溶であった。
【0044】
実施例5−アジスロマイシン
アジスロマイシンはマクロライド系の抗生物質であり、以下の構造を有する:
【化5】

【0045】
基本形態は水性溶媒にわずかに可溶であるが、塩化物及びリン酸塩はきわめて溶けやすい。アジスロマイシンの二つの塩基性アミン基を疎水性の脂肪酸で中和すると、医薬的に受容される水に非混合性の溶媒にかような塩を生じた。
【0046】
典型的な水に非混合性の溶媒中の10%アジスロマイシン−リノール酸脂肪酸塩製剤の調製が次のようにして実行された:5グラムのアジスロマイシンと3.4グラムのリノール酸を秤量して50 ml体積計量フラスコに入れ、ミリスチン酸イソプロピルで体積を90%に調整した。フラスコをシェーカーに載せて透明な溶液が得られるまで攪拌した。体積はミリスチン酸イソプロピルで50 mlに調整された。
【0047】
実施例6−チルミコシン−脂肪酸塩の調製
疎水性の水に不要なチルミコシン−脂肪酸塩が、ヒマシ油、サフラワー油、及びミリスチン酸イソプロピルなどの水に非混合性の溶媒中に製剤された。製剤はまた、リノール酸自身を医薬的に受容される水に非混合性の溶媒として用いて調製された。
【0048】
典型的な水に非混合性の溶媒中の10%チルミコシン−リノール酸FAS製剤の調製が次のようにして実行された:5グラムのチルミコシンと3.4グラムのリノール酸を50 ml体積計量フラスコに入れ、適当な溶媒(例えばヒマシ油、サフラワー油、又はミリスチン酸イソプロピル)で体積を50 mlに調整した。フラスコをシェーカーに載せて透明な溶液が得られるまで攪拌した。
【0049】
リノール酸を医薬的に受容される水に非混合性の溶媒として20%チルミコシン−リノール酸FASの調製が次のように実行された:5グラムのチルミコシン粉末を25 ml体積計量フラスコに入れ、リノール酸で体積を25 mlに調整した。フラスコをシェーカーに載せて透明な溶液が得られるまで攪拌した。
【0050】
実施例7−チルミコシン−脂肪酸塩のIn Vitro放出カイネティックス
水に非混合性の溶媒中のチルミコシン−FASのin vitro放出カイネティックスを次のようにして調べた:サフラワー油、ヒマシ油、及びミリスチン酸イソプロピルなどのいろいろな水に非混合性の溶媒中の10%チルミコシン−リノール酸製剤0.5 ml。この製剤をいろいろな透析カセット(Pierce)に注入して放出カイネティックスを修飾されないMICOTIL(登録商標)(Eli Lilly, Indianapolis, IN)(これは市販のチルミコシン・リン酸塩である)の放出カイネティックスと比較した。カセットは、インキュベーター・シェーカー内で37℃の異なるリン酸緩衝食塩水(PBS)の貯蔵容器に入れられた。いくつかの時点で、1mlの分量のPBSを貯蔵容器から取り出してHPLCを用いてチルミコシンを分析シタ。データが図1に示されている。結果は、MICOTIL(登録商標)の半減期が約90分であるのに対して、本発明のチルミコシン製剤ではそれが40-55時間であることを示している。活性化合物のin vitro放出は本発明の組成物を用いて約1週間にわたって観測されたが、それに対してMICOTIL(登録商標)の場合は放出は数時間で完了した。
【0051】
実施例8−リノール酸中のチルミコシン−リノール酸塩のIn Vivo放出カイネティックス
リノール酸を水に非混合性の溶媒としてリノール酸塩としての20%チルミコシンが製剤された。この製剤が1匹のイヌと1匹のネコに10 mg/kgで皮下に注射された。いくつかの時点で血清サンプルを採取し、固体相抽出とHPLC法を用いてチルミコシン濃度が分析された。データは図2に示されており、チルミコシンが約4日間イヌとネコの血清中に検出されたことを示し、この薬が血清にコントロールされて放出されたことを示している。
【0052】
実施例9−ミリスチン酸イソプロピル中のチルミコシン−リノール酸塩のIn Vivo放出カイネティックス
ミリスチン酸イソプロピルを水に非混合性の溶媒としてリノール酸塩としての20%チルミコシンが製剤された。この製剤が1匹のイヌに50 mg/kgで皮下に注射された。いくつかの時点で血清サンプルを採取し、固体相抽出とHPLC法を用いてチルミコシン濃度が分析された。データは図3に示されており、チルミコシンが約5日間イヌの血清中に医薬的に有効な量で検出されたことを示している。
【0053】
50 mg/kgという用量はイヌにおいて通常は致死的であり、したがって、これらのデータは、本発明によればチルミコシンがイヌに安全に投与でき、チルミコシンの制御された放出を実現できることを証明している。イヌの血清中に5日間存在するということもこの薬が血清に制御されて放出されることを示す。
【0054】
実施例10−フルオキセチン−FAS製剤の調製
【化6】

フルオキセチン(PROZAC(登録商標), Eli Lilly, Indianapolis, IN)は選択的セロトニン再取り込み阻害剤であり、ヒトにおける強迫神経症などの精神疾患を治療するために広く用いられている。これはまた、イヌにおける攻撃行動と分離不安、及びネコにおける尿スプレー行動を治療するにも有効である。
【0055】
以下で述べるように10%フルオキセチン−FASがいろいろな水に非混合性の溶媒中で製剤された。
【0056】
2.5 gのフルオキセチンと1.529 gのデカン酸が25 mlの体積計量フラスコに入れられ、ミリスチン酸イソプロピルで体積が25 mlに調整された。フラスコをシェーカーに載せて、透明な溶液が得られるまで攪拌した。
【0057】
2.5 gのフルオキセチンと2.512 gのオレイン酸が25 mlの体積計量フラスコに入れられ、サフラワー油で体積が25 mlに調整された。フラスコをシェーカーに載せて、透明な溶液が得られるまで攪拌した。
【0058】
本発明を当業者がそれを作り用いるために十分な詳細にまでわたって説明し例示してきたが、いろいろな代替方法、変更、及び改良が本発明の精神と範囲から逸脱することなく可能であることは明らかである。
【0059】
本発明は、上述した、並びにそこに内在している目的を実行し、目標と利点を達成するように十分に適合させられることを当業者は容易に理解されるであろう。当業者はそれらの変更及びその他の利用に想到するであろう。それらの変更は本発明の精神に包含されるものであり、それは特許請求の範囲において明確にされる。
【0060】
この開示に関連して、ここで開示した発明に、本発明の精神と範囲を逸脱することなくいろいろな代用及び変更を加えることができることは当業者には直ちに明らかであろう。
【0061】
本明細書で言及したすべての特許及び刊行物は本発明に関わる分野における通常の技術のレベルを示している。
【0062】
ここで適切に図示して説明された発明は、ここで特に開示されなかった何らかの要素(単数又は複数)、制限(単数又は複数)なしで実行することができる。用いられた用語と表現は、説明のための用語であり、制限するためのものではなく、それらの用語と表現の使用においては、示されて説明された特徴の等価物、又はその一部、を排除する意図はなく、発明の特許請求の範囲内でいろいろな変更が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態とオプションとしての特徴によって具体的に説明されたけれども、ここで開示されたコンセプトの変更や変型を当業者が用いることができることはいうまでもなく、それらの変更や変型は添付されたクレームで定められる本発明の特許請求の範囲内にあると考えられる。
【0063】
さらに、本発明の特徴又は様態がマーカッシュ群によって記載されている場合、当業者は、それによって本発明がまた、マーカッシュ群の個々のメンバー又はメンバーのサブグループによっても記載されるということを認識されるであろう。例えば、もしもXが臭素、塩素、及びヨウ素から成る群から選択されると記載された場合、Xが臭素であるというクレーム、Xが臭素と塩素であるというクレーム、が完全に記載される。
【0064】
その他の実施形態は以下の特許請求の範囲において示される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】いろいろな水に非混合性の溶媒中の本発明のチルミコシン−リノール酸脂肪酸塩のin vitro放出キネティックスを示すグラフである。この図は、本発明に従って調製されたチルミコシンが食塩水に遊離チルミコシン(MICOTIL(登録商標), Elanco, Indianapolis, IN)に比べてゆっくりした速さで放出されることを示す。溶媒はサフラワー油、ヒマシ油、及びミリスチン酸イソプロピルである。
【図2】イヌ及びネコ血清中のリノール酸を水に混じらない溶媒とするチルミコシン−リノール脂肪酸塩(FAS)の薬理カイネティックスを示すグラフである。
【図3】イヌ血清中のミリスチン酸イソプロピルを水に混じらない溶媒とするチルミコシン−脂肪酸塩(FAS)の薬理カイネティックスを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物に医薬的に活性な化合物を投与するための組成物であって:
該医薬的に活性な化合物と親油性対イオンとの塩;及び
医薬的に受容される、水に非混合性の溶媒;
を含み、それらが組み合わされて該哺乳動物に投与されたときに該活性化合物を長時間にわたって放出する組成物を形成することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記組成物が注射可能な組成物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記医薬的に活性な化合物が抗生物質であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記医薬的に活性な化合物が、チルミコシン、フルオキセチン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ロキシスロマイシン、テルビナフィン、トリメトプリム、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、ジブカイン、ブピバカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、アセプロマジン、イトラコナゾール、テトラサイクリン、スルフォンアミド、及びアミノグリコシドから成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記医薬的に活性な化合物が、チルミコシン、テルビナフィン、又はフルオキセチンであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記親油性対イオンがC10-C22飽和又は不飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記親油性対イオンがC10-C18飽和又は不飽和脂肪酸のイオン化形態であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記脂肪酸が:ラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、及びリノール酸、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記親油性対イオンがポリカルボン酸のイオン化形態であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリカルボン酸が:セバシン酸、ポリセバシン酸、及びポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸、及びポリ安息香酸、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記医薬的に受容される水に非混合性の溶媒が、ソウフラワー(saw flower)油、サフラワー油、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル、ダイズ油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ヤシ油、ココナッツ油、ヘンプシードオイル、カノーラ油、アーモンド油、グリセリン、中鎖又は長鎖脂肪酸、オレイン酸エチル、リノール酸、パルミチン酸イソプロピル、グリセロール・エステル、ポリオキシル水素添加ヒマシ油、タラ肝油、魚油、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記医薬的に受容される水に非混合性の溶媒が、サフラワー油、ヒマシ油、リノール酸、及びミリスチン酸イソプロピル、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記医薬的に活性な化合物がチルミコシンであり、前記親油性対イオンがリノール酸であり、前記医薬的に受容される溶媒がサフラワー油、ヒマシ油、リノール酸、及びミリスチン酸イソプロピル、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
前記医薬的に活性な化合物がフルオキセチンであり、前記親油性対イオンがデカン酸であり、前記医薬的に受容される溶媒がサフラワー油、ヒマシ油、リノール酸、及びミリスチン酸イソプロピル、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
哺乳動物に医薬的に活性な化合物を投与する方法であって:
該哺乳動物に医薬的に受容される水に非混合性の溶媒中の該医薬的に活性な化合物と親油性対イオンの塩を含む組成物を投与するステップを含み;
該組成物が該哺乳動物に投与されたときに該活性化合物を長時間にわたって放出することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記組成物が注射によって前記哺乳動物に投与されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬的に活性な化合物が抗生物質であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記抗生物質がチルミコシン、テルビナフィン、トリメトプリム、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、スルフォンアミド、及びアミノグリコシドから成る群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬的に活性な化合物が、チルミコシン、テルビナフィン、及びフルオキセチンから成る群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記親油性対イオンが脂肪酸のイオン化形態であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記脂肪酸がC10-C22脂肪酸のイオン化形態であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記脂肪酸が:ラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、及びリノール酸の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記親油性対イオンがセバシン酸のイオン化形態であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬的に受容される水に非混合性の溶媒が:ソウフラワー(saw flower)油、サフラワー油、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル、ダイズ油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、オリーブ油、中鎖又は長鎖脂肪酸、オレイン酸エチル、リノール酸、パルミチン酸イソプロピル、グリセロール・エステル、ポリオキシル水素添加ヒマシ油、タラ肝油、魚油、及びココナッツ油、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬的に受容される水に非混合性の溶媒がサフラワー油、ミリスチン酸イソプロピル、及びヒマシ油の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬的に活性な化合物がチルミコシンであり、前記親油性対イオンがリノール酸であり、前記医薬的に受容される溶媒がサフラワー油、ヒマシ油、リノール酸、及びミリスチン酸イソプロピル、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬的に活性な化合物がフルオキセチンであり、前記親油性対イオンがデカン酸であり、前記医薬的に受容される溶媒がサフラワー油、ミリスチン酸イソプロピル、及びヒマシ油の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記活性化合物が前記哺乳動物の血液中に少なくとも3日間医薬的に有効な量で存在することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記活性化合物が前記哺乳動物の血液中に少なくとも5日間医薬的に有効な量で存在することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が該哺乳動物に経口で投与されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物に医薬的に活性な化合物投与するための組成物であって:
該医薬的に活性な化合物と親油性対イオンの塩;及び
医薬的に受容される水に非混合性の溶媒;
を含み、それらが組み合わされて水に注入されたときに二相混合物を形成する組成物を形成することを特徴とする組成物。
【請求項32】
前記医薬的に活性な化合物が抗生物質であることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記医薬的に活性な化合物が、チルミコシン、テルビナフィン、フルオキセチン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ロキシスロマイシン、テルビナフィン、トリメトプリム、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、ジブカイン、ブピバカイン、ベンゾカイン、テトラカイン、アセプロマジン、イトラコナゾール、テトラサイクリン、スルフォンアミド、及びアミノグリコシドから成る群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
前期医薬的に活性な化合物が、チルミコシン、テルビナフィン、又はフルオキセチンであることを特徴とする請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記親油性対イオンがC10-C22飽和又は不飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項36】
前記親油性対イオンがC10-C18飽和又は不飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
前記脂肪酸が:ラウリン酸、デカン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、及びリノール酸の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記親油性対イオンがポリカルボン酸のイオン化形態であることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項39】
前記ポリカルボン酸が:セバシン酸、ポリセバシン酸、及びポリアスパラギン酸、ポリアクリル酸、及びポリ安息香酸、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記医薬的に受容される水に非混合性の溶媒が:ソウフラワー(saw flower)油、サフラワー油、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル、ダイズ油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、オリーブ油、中鎖又は長鎖脂肪酸、オレイン酸エチル、リノール酸、パルミチン酸イソプロピル、グリセロール・エステル、ポリオキシル水素添加ヒマシ油、タラ肝油、魚油、及びココナッツ油、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記医薬的に受容される水に非混合性の溶媒が、サフラワー油、ヒマシ油、リノール酸、及びミリスチン酸イソプロピルから成る群から選択されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記医薬的に活性な化合物がチルミコシンであり、前記親油性対イオンがリノール酸であり、前記医薬的に受容される溶媒がサフラワー油、ヒマシ油、リノール酸、及びミリスチン酸イソプロピル、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項43】
前記医薬的に活性な化合物がフルオキセチンであり、前記親油性対イオンがデカン酸であり、前記医薬的に受容される溶媒がサフラワー油、ヒマシ油、及びミリスチン酸イソプロピル、の一つ以上から成る群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の組成物。
【請求項44】
哺乳動物に医薬的に活性な化合物を投与するための組成物であって:
該医薬的に活性な化合物と親油性対イオンの塩;及び
医薬的に受容される水に非混合性の溶媒、を含み、それらが一緒に組み合わされて透明な溶液を形成する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−503433(P2007−503433A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524614(P2006−524614)
【出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/011823
【国際公開番号】WO2005/025488
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(505388551)アイデックス ラボラトリーズ,インコーポレイティド (11)
【Fターム(参考)】