説明

医薬組合せ剤

【課題】心血管疾患の治療に好適でありかつレニン−アンギオテンシン系阻害剤(RAS阻害剤)とエンドセリン拮抗剤とから成る、新規医薬組合せ剤の提供。
【解決手段】式I:


[式中、置換基は以下の意味を有する:R1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシであり;R2は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシであり;R3は、フェニル基で置換されていてよいC1〜C8−アルキルであり、該フェニル基はさらに、1つまたは2つのC1〜C4−アルコキシ基で置換されていてよく;Zは、酸素または単結合である]のエンドセリン拮抗剤とRAS阻害剤とを含む、冠動脈障害、高血圧、心不全、虚血および血管痙攣から選択される疾患を治療するための組合せ剤。ただし、RAS阻害剤からトランドラプリルは除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管疾患の治療に好適でありかつレニン−アンギオテンシン系阻害剤(RAS阻害剤)とエンドセリン拮抗剤とから成る、新規医薬組合せ剤に関する。心血管障害の治療に好適でありかつレニン−アンギオテンシン系阻害剤(RAS阻害剤)とエンドセリン拮抗剤とから成る新規医薬組合せ剤は、これまでにも記載されている(EP−A−634175、EP−A−617001)。しかし、このような活性成分の混合物の効果は、満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】欧州特許出願公開第634175号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第617001号明細書
【発明の概要】
【0003】
改良された特性を有する組合せ剤が見出された。
【0004】
本発明は、式I:
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、置換基は以下の意味を有する:
1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシであり;
2は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシであり;
3は、フェニル基で置換されていてよいC1〜C8−アルキルであり、該フェニル基はさらに、1つまたは2つのC1〜C4−アルコキシ基で置換されていてよく;
Zは、酸素または単結合である]のエンドセリン拮抗剤とRAS阻害剤との組合せ剤に関する。
【0007】
有利なエンドセリン拮抗剤は、置換基が以下の意味を有する式Iの化合物である:すなわち、式I中、
1は、C1〜C2−アルキル、C1〜C2−アルコキシであり;
2は、C1〜C2−アルキル、C1〜C2−アルコキシであり;
3は、フェニル基で置換されていてよいC1〜C2−アルキルであり、該フェニルは、さらに、1つまたは2つのC1〜C2−アルコキシ基で置換されていてよく;
Zは、酸素または単結合である。
【0008】
特に有利なエンドセリン拮抗剤は、以下の化合物である:
【0009】
【化2】

【0010】
好適なレニン−アンギオテンシン系阻害剤は、特にアンギオテンシンII拮抗剤であり、有利にACE阻害剤である。
【0011】
本発明の目的に好適なACE阻害剤は、アラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、シラザプリラット、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラット、ホシノプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、スピラプリル、トランドラプリルおよびゼフェノプリルである。中でも有利なのはラミプリルであり、特に有利にはトランドラプリルである。
【0012】
本発明の目的に好適なアンギオテンシンII拮抗剤は:ロザルタン、2−ブチル−4−クロロ−1−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]−メチル−1H−イミダゾール−5−メタノールのカリウム塩;バルサルタン、N−(1−オキソペンチル)−N−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル−4−イル]メチル−L−バリン;
カンデサルタン、2−エトキシ−1−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸;
4'−[(2−n−ブチル−6−シクロヘキシルアミノカルボニルアミノ−ベンズイミダゾール−1−イル)−メチル]ビフェニル−2−カルボン酸;
2−n−ブチル−1−[4−(6−カルボキシ−2,5−ジクロロベンゾイルアミノ)ベンジル]−6−N−(メチルアミノカルボニル)−n−ペンチルアミノベンズイミダゾール;
4'−[(1,4'−ジメチル−2'−プロピル−[2,6'−ビ−1H−ベンズイミダゾール]−1'−イル)−メチル]−[1,1'−ビフェニル]−2−カルボン酸;
4−(ペンタフルオロエチル)−2−プロピル−1−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1H−イミダゾール−5−カルボン酸;
4'−[[2−ブチル−4−クロロ−5−(ヒドロキシメチル)−1H−イミダゾール−1−イル]メチル]−[1,1'−ビフェニル]−2−カルボン酸;
2−エチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−4−([2'−(−H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メトキシ)キノリン;
2−エチル−4−[(2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル)メトキシ」キノリン塩酸塩;
1−[[3−ブロモ−2−(2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル)−5−ベンゾフラニル]−メチル]−2−ブチル−4−クロロ−1H−イミダゾール−5−カルボン酸;
1−[[3−ブロモ−2−[2−[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミノ]フェニル−5−ベンゾフラニル]メチル]−4−シクロプロピル−2−エチル−1H−イミダゾール−5−カルボキサミド;
5,7−ジメチル−2−エチル−3−(2'−(1H−テトラゾール−5−イル)(1,1'−ビフェニル)−4−イル)−メチル)−3H−イミダゾ−(4,5−b)ピリジン;
5−[4'−(3,5−ジブチル−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ビフェニル−2−イル]−1H−テトラゾール;
1,4−ジブチル−3−[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−オン;
2−n−ブチル−4−スピロシクロペンタン−1−[(2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル)メチル]−2−イミダゾリン−5−オン;
(E)−α−[[2−ブチル−1−[(4−カルボキシフェニル)メチル]−1H−イミダゾール−5−イル]−メチレン]−2−チオフェンプロパノン酸;
2−エトキシ−1−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸;
1−[[(シクロヘキシロキシ)カルボニル]オキシ]エチルエステル;
2−プロピル−4−[(3−トリフルオロアセチル)ピロール−1−イル]−1−[[2'−(2H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−1H−イミダゾール−5−カルボン酸;および
2,7−ジエチル−5−[[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1'−ビフェニル]−4−イル]メチル]−5H−ピラゾロ[1,5−b][1,2,4]−トリアゾールのカリウム塩である。
【0013】
特に言及すべき血管収縮またはエンドセリンおよび/またはアンギオテンシンIIのその他の生物学的効果に関連した疾患は、冠動脈障害、高血圧のような心血管疾患、心不全、虚血(心臓、能、胃腸管、肝臓および/または腎臓)または血管痙攣の制御および予防である。治療できる疾患の更なる例は、腎機能不全および腎不全、人工透析、くも膜下出血、レイノー病、門脈高圧症および肺性高血圧であり、また、血管収縮が関連している胃および十二指腸の潰瘍ならびに下肢無痛潰瘍の治療である。本発明の組合せ剤は、アテローム性動脈硬化症およびバルーン誘導血管拡張後に起こる再狭窄の予防にも使用できる。最後に、喘息患者の気管支分泌物中のエンドセリン濃度は上昇する。偏頭痛発作中にも、血液血漿中のエンドセリンレベルの増加が認められる。従って、組合せ剤をこの2つの症例においても使用できる。
【0014】
本発明の組合せ剤の投与時には、単一物質の投与時よりも、血圧−降下特性および作用持続性が、相加効果以上の効果をもって強化されている。ゆえに、個々の活性成分の投与量をかなり下げることができる。これは、投与時の副作用がより減少するであろうことを意味する。
【0015】
エンドセリン拮抗剤に対するレニンーアンギオテンシン系阻害剤の質量割合は、通常50:1〜1:500、有利に10:1〜1:100、非常に有利に、2:1〜1:50である。
【0016】
本発明の組合せ剤は、通常経口投与され、たとえば錠剤、被覆錠剤、糖衣錠剤、硬または軟ゼラチンカプセル剤、溶剤、乳剤または懸濁剤の形である。しかし、坐剤のような形で直腸投与、あるいは注射溶剤の形で非経口投与してもよい。活性成分は、両方の活性成分をいっしょに含んだ、錠剤またはカプセル剤のような製剤の形で投与してもよく、または単一成分の特殊組合せ剤として個別にして、同時にまたは時間的にずらせて投与してもよい。
【0017】
錠剤、被覆錠剤、糖衣錠剤および硬ゼラチンカプセル剤を製造するために、製薬学的に不活性な無機賦形剤または有機賦形剤を用いて、本発明の組合せ剤を加工することもできる。錠剤、糖衣錠剤および硬ゼラチンカプセル剤に使用できる賦形剤は、ラクトース、とうもろこしデンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩である。軟ゼラチンカプセル剤に好適な賦形剤は、植物油、ワックス、脂肪、半固形および液体ポリオールである。
【0018】
溶剤およびシロップ剤を製造するのに好適な賦形剤は、たとえば、水、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコースおよびその類似物質である。注射溶剤に好適な賦形剤は、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、野菜油である。坐剤に好適な賦形剤は、天然油または硬化油、ワックス、脂肪、半液体または液体ポリオールおよびその類似体である。
【0019】
医薬品組成物は、付加的に、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変化させるための塩、バッファー、被覆剤および/または抗酸化剤を含む。
【0020】
以下の試験は、本発明の組合せ剤が有する、予期しない有利な特性を示している。
【0021】
交差試験において、試験物質を、慢性的に装置を接続した雄のビーグル犬(約14kg)にカプセル剤として経口投与した。カプセル剤は、何も含有しないか(コントロールn=10)、トランドラプリル(2mg/kg;N=10)、化合物A(10mg/kg;N=10)またはトランドラプリル+化合物A(2+10mg/kg;N=10;および2+0.5mg/kg;N=5)の組合せ剤を含有する。各投与の間に、少なくとも1週間の洗い出し期間を置く。血圧の変化を6時間の間記録した。収縮期(SAP)および拡張期(DAP)の腹部動脈の血圧[mmHg]を測定し、その結果から、動脈血圧の平均値(MAP)を決定した。血圧シグナルの収縮期のピークから心拍数[min-1]を計測した。
【0022】
表1は、コントロール群およびトランドラプリル処理群において血圧の降下が認められないことを示している。化合物Aでは血圧のわずかな降下が認められ、ある時点では有意である。トランドラプリルとET拮抗剤である化合物Aとの組合せ剤(2+10mg/kg)は血圧を顕著に降下させ、このことは、より少ない割合でETA拮抗剤(2mg/kgのところを0.5mg/kgだけにする)を含有する組合せ剤第2群でさえも同様に顕著であった。
【0023】
表1:様々な物質を投与した後の、意識のある正常血圧イヌにおける平均動脈血圧(MAP、mmHg)の変化を、平均値で示している。
【0024】
【表1】

【0025】
観察期間中にコントロール群では心拍数の変化が見られない(表2)。化合物Aでは、心拍数が約11ビート上昇するが、これは血圧降下を反映した応答として説明できる。トランドラプリルは、血圧への効果を示さないにもかかわらず、同様に心拍数を増加させ、このことは組合せ剤群においてより顕著である。
【0026】
表2:様々な物質を投与した後の意識のある正常血圧イヌの心拍数(min-1)の変化を平均値で示している。
【0027】
【表2】

【0028】
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0029】
例1
以下の組成物から成る被覆錠剤を製造した:
化合物A 200.0mg
トランドラプリル 2.0mg
ラクトース、無水物 30.0mg
微晶質セルロース 30.0mg
ポリビニルピロリドン 20.0mg
ステアリン酸マグネシウム 5.0mg
ポリエチレングリコール6000 0.8mg
酸化鉄、黄 1.2mg
二酸化チタン 0.3mg
タルク 0.7mg
化合物A、トランドラプリル、ラクトース、セルロースおよびポリビニルピロリドンを湿式造粒し、乾燥する。篩にかけた顆粒をステアリン酸マグネシウムと混合し、この錠剤用の混合物を次に、それぞれが290.0mgである長型錠剤核へと圧縮する。この核を次に、被膜錠剤が終質量300mgになるまで被覆剤でコートする。
【0030】
例2
以下の組成物から成る硬ゼラチンカプセル剤の製造:
化合物A 250.0mg
ラミプリル 2.5mg
結晶ラクトース 18.0mg
ポリビニルピロリドン 15.0mg
微晶質セルロース 17.5mg
ナトリウムカルボキシメチルデンプン 10.0mg
タルク 9.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
初めの5つの成分を、湿式造粒し、乾燥する。この顆粒をナトリウムカルボキシメチルデンプン、タルクおよびステアリン酸マグネシウムと混合し、この混合物をサイズ1の硬ゼラチンカプセルへ充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、置換基は以下の意味を有する:R1は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシであり;
2は、C1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシであり;
3は、フェニル基で置換されていてよいC1〜C8−アルキルであり、該フェニル基はさらに、1つまたは2つのC1〜C4−アルコキシ基で置換されていてよく;
Zは、酸素または単結合である]のエンドセリン拮抗剤とRAS阻害剤との組合せ剤。
【請求項2】
請求項1記載の組合せ剤を含有する医薬組成物。
【請求項3】
請求項1記載のRAS阻害剤とエンドセリン拮抗剤との混合物を医薬品投与剤形に変換することから成る、医薬組成物の製造方法。
【請求項4】
血管収縮あるいはエンドセリンおよび/またはアンギオテンシンIIのその他の生物学的効果に関連した疾患の治療に、同時に、別個にまたは逐次的に使用する、請求項1記載のRAS阻害剤とエンドセリン拮抗剤との組合せ剤または請求項1記載のRAS阻害剤とエンドセリン拮抗剤とを含有する医薬組成物の使用。

【公開番号】特開2012−46531(P2012−46531A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−210241(P2011−210241)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2000−513581(P2000−513581)の分割
【原出願日】平成10年9月10日(1998.9.10)
【出願人】(502159343)アボット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (24)
【氏名又は名称原語表記】Abbott GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Max−Planck−Ring 2, D−65205 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】