説明

医薬組成物からの活性材料の放出率を選択的に増加させるための方法

本発明は、活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物からの活性材料の放出期の後期における放出率を選択的に増加させるための方法であって、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤を、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて3〜20重量パーセントの量で、脂質材料中に包埋されている活性材料を含む親油性マトリクスに添加するステップを含む方法、ならびに活性材料、前記活性材料を包埋している脂質材料、および3〜20重量パーセントの量で、上述の膨潤性有機崩壊剤を含むそのような修正された放出プロファイルを有する放出制御医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放出制御医薬組成物からの活性材料の放出期の後期における放出率を選択的に増加させるための方法、および活性材料の放出期の後期において活性材料の放出率の選択的増加を示す放出制御医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性材料を含有する放出制御医薬組成物は、より高濃度の活性材料を含むように設計され、長期間にわたってヒトまたは動物の胃腸消化管内への放出制御を行うように調製される。容易に吸収される放出制御治療薬剤形は、従来の即時放出性剤形を上回る固有の利点を有する。それらの利点には、薬物の投与頻度の低下および結果として生じる患者の投薬計画順守、より制御された薬物血中レベル応答、少ない摂取薬物で治療作用を生じる可能性ならびに副作用の軽減が含まれる。ある期間にわたり活性材料の放出制御を提供することにより、吸収される薬物濃度の急上昇は、より滑らかかつより制御された血中レベル応答をもたらすことによって軽減または解消される。
【0003】
このために、放出制御医薬組成物は、特定の基準、すなわち、長期間有効である遅延性溶解を引き起こすという基準を満たさなければならない。そのような製剤を簡単に製造できること、および製造プロセスに再現性があり、多くの異なる活性材料のために使用できることも重要である。
【0004】
錠剤などの固形経口剤形の形態で放出制御医薬組成物を調製するために、不溶性プラスチック(例えば、アクリル酸−メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、またはポリエチレン)、親水性ポリマー(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム)、または脂肪族化合物(例えば、カルナウバワックスなどの様々なワックス、またはステアリン酸グリセリル)が利用されてきた。
【0005】
例えば、EP−A−0068446は、溶融顆粒からの活性材料の時間放出制御のための様々な粘度(0.02〜40Pa・s)を有するメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなどの親水性膨潤性可溶性ポリマーの添加を開示している。詳細には、0.1〜10重量パーセントの量で親水性メチルセルロースおよび/またはカルボキシメチルセルロースポリマーが添加された場合、放出率は、親水性ポリマーの粘度段階の増加の結果として上昇し、それを経験的に判断することができ、望ましい放出特性を、決められた値を用いて調整することができる。
【0006】
Flanders他(Flanders,P.;Dyer,G.A.;Jordan,D.:The Control of Drug Release from Conventional Melt Granulation Matrices.Drug Development and Industrial Pharmacy、13(6)、1001〜1022(1987))は、溶融顆粒錠剤からの活性材料の放出を制御するためのウィッキング剤(wicking agent)としてのコロイド状シリカの使用について記載している。これによれば、コロイド状シリカ(アエロジル(登録商標))は、所定の粘度に水の粘性を増加させる点で、EP−A−0068446に記載の親水性膨潤性可溶性ポリマーの効果と類似した効果を有する。したがって、コロイド状シリカは、放出の初めから放出制御組成物からの活性材料の放出率に等しく影響を及ぼすため、活性材料の全放出期間にわたって放出率曲線の一様な上昇をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、活性材料の全放出期間中の放出率の一様な上昇がしばしば望ましくないことある。例えば、患者の胃腸系の特定部分における放出率を増加させるためなどの、放出期中の放出制御医薬組成物からの活性材料の放出率を選択的に増加させるために放出率が具体的に操作されることがあれば有利かもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚いたことに、本発明者他は、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される不溶性有機崩壊剤の、親油性マトリクス中に包埋されている(embedded)活性材料を含む放出制御医薬組成物への添加により、活性材料の放出率を、放出期の後期において選択的に増加させることができること、すなわち、放出期の初めから約3時間後に、活性材料の放出率の増加を達成できることを見いだした。
【0009】
したがって、第一の態様において、本発明は、活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物からの活性材料の放出期の後期における放出率を選択的に増加させるための方法であって、
ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤を、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて3〜20重量パーセントの量で、脂質材料中に包埋されている活性材料を含む親油性マトリクスに添加するステップを含む方法を提供する。
【0010】
第二の態様において、本発明は、活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物であって、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤を、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて3〜20重量パーセントの量でさらに含むことを特徴とする医薬組成物に関する。
【0011】
したがって、第三の態様において、本発明は、活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物からの活性材料の放出期の後期における放出率を選択的に増加させるための、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一態様において、本発明は、活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物からの活性材料の放出期の後期における放出率を選択的に増加させるための方法であって、
上記で定義した膨潤性有機崩壊剤を、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて3〜20重量パーセントの量で、脂質材料中に包埋されている活性材料を含む親油性マトリクスに添加するステップを含む方法を提供する。
【0013】
本発明の医薬組成物において必要とされる成分、例えば、活性材料、脂質材料、崩壊剤および他の成分のパーセントは、乾燥重量に基づいて計算される。
【0014】
他の態様において、本発明は、活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物であって、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤を、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて3〜20重量パーセントの量でさらに含むことを特徴とする医薬組成物に関する。
【0015】
本発明のために、用語「放出制御」は、治療上の活性材料すなわち薬物が、活性材料の治療上有益な血中レベル(しかし、毒性レベル未満)が長期間にわたり維持されるように、制御された速度で医薬組成物から放出されること、例えば、10、12、16または24時間剤形を提供することを意味する。
【0016】
本医薬組成物は、単位剤形中に医薬組成物を含む。本明細書で用いる用語「単位剤形」は、ヒトを含む哺乳類に対する単位用量として適している物理的に分離した単位を指し、各単位は、本明細書に記載のように、製剤の担体、崩壊剤および他の成分の協力によって望ましい効果を生み出すように計算された所定量の活性材料を含有する。
【0017】
本医薬組成物は、欧州薬局方(欧州薬局方、第4版、2002年、欧州評議会、ストラスブール/フランス)に定義されている極めて溶けやすい活性材料(活性材料1gが、水などの溶媒1ml未満に溶ける)(例えば、塩酸ジルチアゼム(登録商標))からやや溶けにくい活性材料(活性材料1gが、水などの溶媒30〜100mlに溶ける)(例えば、プレガバリン)まで及ぶ活性材料の群から選択される放出制御医薬組成物における使用に適している多種多様な薬物すなわち活性材料に適用可能である。
【0018】
上述の定義に含まれる代表的活性材料には、制酸剤、抗炎症性物質、冠血管拡張薬、脳血管拡張薬、向精神薬、抗躁薬、刺激薬、抗ヒスタミン薬、緩下薬、充血除去剤、ビタミン、胃腸鎮静薬、止瀉製剤、抗狭心症薬、血管拡張性抗不整脈薬、抗高血圧薬、血管収縮薬、片頭痛治療剤、抗凝血薬、抗血栓薬、鎮痛薬、解熱薬、催眠薬、鎮静薬、制吐薬、抗嘔吐薬、抗痙攣薬、神経筋薬、血糖上昇および血糖降下剤、甲状腺および抗甲状腺製剤、利尿薬、鎮痙薬、子宮弛緩薬、鉱質および栄養添加物、抗肥満薬、同化薬、赤血球生成薬、抗喘息薬、去痰薬、鎮咳剤、粘液溶解薬、抗尿酸血症薬、および局所鎮痛薬などの口内で局所的に作用する他の薬物すなわち活性材料、またはそれらの組合せなどが含まれてよい。本医薬組成物は、2種以上の活性材料を含有することがある。
【0019】
活性材料は、治療有効量で存在する。活性材料は、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて約0.5重量パーセントから約80重量パーセント、好ましくは約65重量パーセントまでの量で存在することが好ましい。
【0020】
本発明に従って使用される脂質材料として、40〜100℃の範囲の融点を有し通常用いられる1種または複数の脂質または類脂質材料を使用することができる。通常、水不溶性の支持材料、例えば、脂肪アルコール、特に、セチルおよびステアリルアルコールなどの13個を超え、特に、16〜22個の炭素原子を含む高級アルカノール、ならびにそれらの混合物を使用することができる。pHに応じて活性材料の遊離を引き起こす脂肪酸、特に、高級アルカンカルボン酸、例えばステアリン酸も使用することができる。
【0021】
グリセリド、特に水素化綿実油またはヒマシ油、ならびにグリセロールのパルミチン酸もしくはステアリン酸もしくはベヘン酸とのモノ、ジもしくはトリエステルまたはそれらの混合物も使用することができる。さらに、植物、動物、鉱質または合成起源の微粉化されたワックス様材料も使用することができる。ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の親油性塩も極めて適している。包埋している脂質または類脂質材料は、意図された温度範囲で安定であり、生理学的に不活性であり、薬学的に活性な材料と反応しないことだけが必要である。
【0022】
驚いたことに、活性材料の放出率は、使用される活性材料の種類とはほとんど関係なく上述のように挙動し、たとえ放出される活性材料が異なる溶解性クラスに属していても、本発明に従って使用される崩壊剤を用いることにより、活性材料の放出率は、放出期の初めではなく、後期にのみ変化することを意味する。
【0023】
本発明に従って使用される崩壊剤は、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される。本発明による崩壊剤として、トウモロコシデンプンを使用することが好ましい。
【0024】
上述のように、上述の崩壊剤のうちの1種または複数を添加することにより、放出期の初めの放出率を、本発明に従って特許請求の範囲に記載されるような崩壊剤を含まない放出制御組成物の場合と同じレベルに維持しながら、放出期の後期における放出制御医薬組成物の放出率を選択的に増加させることができる。
【0025】
本発明のために、「放出期の後期における放出率の選択的増加」は、放出制御医薬組成物からの活性材料の放出率が、全放出期の最初の2時間以内は、本発明に従って使用される崩壊剤を含まない放出制御医薬組成物の場合とほぼ同じレベルで維持されるが、本発明に従って使用される崩壊剤を含まない放出制御医薬組成物に比べ、全放出期の3時間目から7時間目に増加することを意味する。
【0026】
このことは、本発明に従って使用される崩壊剤を使用することにより、全放出期の3時間目から7時間目、好ましくは3時間目から6時間目に、本発明に従って使用される崩壊剤を含まない放出制御医薬組成物に比べて好ましくは約5%、より好ましくは約7%、最も好ましくは約10%の放出率の上昇が達成されることを意味する。
【0027】
また、本製剤は、任意選択の成分を含有することができる。例えば、必ずではないが、好ましい実施形態において、本製剤は、経口錠剤のために製薬技術において通常使用される滑沢剤をさらに含有する。本明細書で使用する用語「滑沢剤」は、錠剤の圧縮および排出中に起きるダイ壁とパンチ面の間の摩擦を軽減することができる材料を指す。滑沢剤は、パンチ面およびダイ壁に錠剤材料が固着するのを防ぐ。
【0028】
本明細書で使用する用語「滑沢剤」には、固結防止剤(anti−adherents)が含まれる。滑沢剤の例には、ステアリン酸塩、例えば、そのアルカリ土類、および遷移金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、または亜鉛;ステアリン酸、ポリエチレンオキシド、タルク、水素化植物油、および植物油誘導体、シリカ、シリコーン、高分子量ポリアルキレングリコール、例えば、高分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコールのモノエステル、約8〜22個の炭素原子、好ましくは16〜20個の炭素原子を含む飽和脂肪酸が含まれる。好ましい滑沢剤は、ステアリン酸塩、ステアリン酸、タルクなどである。作製および/または排出中の錠剤固着を避けるため、本製剤は、潤滑有効量の滑沢剤を利用することを企図している。滑沢剤は、錠剤の約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約1重量%〜約4重量%の量で存在することが好ましい。
【0029】
別の任意選択成分は、不活性な充填剤である。充填剤は、実質的に水可溶性または水不溶性であってよい。充填剤は、必要に応じてか、あるいは望ましい場合に使用されるが、本製剤にとって必要ではない。本製剤において使用される充填剤は、経口錠剤のために製薬技術において通常使用される充填剤である。例には、硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどのカルシウム塩、グリセロールリン酸;クエン酸塩;ならびにそれらの混合物などが含まれる。しかし、本発明の放出制御製剤の不活性充填剤は、単糖、二糖、または多価アルコールおよび/または上記のいずれかの混合物を含む薬学的に許容できる糖類を含むことが好ましい。それらの例には、スクロース、ブドウ糖、ラクトース、微結晶性セルロース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、それらの混合物などが含まれる。充填剤は、存在する場合、約1重量%〜約90重量%の量で存在する。
【0030】
着色剤、保存剤(例えば、メチルパラベン)、人工甘味料、矯味剤、抗酸化剤などの医薬品でも通常使用される他の任意選択成分も存在することができる。人工甘味料には、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、タウマチンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。矯味剤には、レモン、ライム、オレンジおよびメントールが含まれるが、これらに限定されるものではない。着色剤には、様々な食品色素、例えば、FD & C黄色6号などのFD & C色素、食品レーキなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウムなどが含まれる。これらの任意選択成分は、存在する場合、錠剤の約0.1重量%〜約5重量%の量で存在することが好ましく、錠剤の約3%(w/w)未満の量で存在することが最も好ましい。
【0031】
通常、本発明の医薬組成物は、部分押出プロセスを使用することによって調製される。前記プロセスは、脂質材料と共に活性材料を押し出す第一ステップを含む。これによって、上述の成分を、ホバートミキサー、Vブレンダー、プラネタリーミキサー、ドラムフープミキサー、シェーカーミキサー、ツインシェルブレンダーなどの製薬技術において通常利用される典型的ブレンダー中で混合することができる。また、混合は、押出機デザイン(例えば、2つの別々に制御可能な重量フィーダーおよび押出機スクリューに混合エレメントのある2軸押出機)および押出機の混合ゾーン内で加えられる温度(溶融可能な成分の融点以下)に応じて、押出機中で直接行うことができる。その後、成分は、通常約60℃〜約90℃の温度にて2軸押出機などの押出機を使用することにより押し出される。その後、得られる均一な組成物を冷却することができ、固形の押出物を顆粒化することができる。
【0032】
次いで、顆粒化された押出物は、製薬技術でよく知られている技法を用い、混合物が均一になるまで、大きなバッチで上述の崩壊剤および他の任意選択成分と密に混合されることが好ましい。
【0033】
用語「均一な」は、様々な成分が、本発明を通じて実質的に一様であること、すなわち、実質的に均一なブレンドが形成されることを示すために使用される。
【0034】
混合物が均一である場合、混合物の単位用量を、製薬技術において通常利用される錠剤機を用いて錠剤形態に圧縮することができる。より具体的には、混合物を錠剤プレスのダイに送り込み、十分な圧力を加えて固形錠剤を作製する。そのような圧力は変わることがあり、通常は約1,000psi(6.9MPa)〜約6,000psi(41.4MPa)、好ましくは約2,000psi(13.8MPa)の圧縮圧力である。本発明による固形医薬組成物は、十分な硬さに圧縮され、錠剤中への水性媒体の早過ぎる進入を防ぐ。医薬組成物は、Schleuniger硬さ試験により測定してほぼ5〜25Kp(50〜250N)程度、より好ましくは8〜20Kp(80〜200N)の錠剤形態に圧縮されることが好ましい。
【0035】
実質的に一様にブレンドされた混合物を場合により粉砕し、例えば、スクリーン、ふるいなどに通してそれらの粒子のサイズを縮小することができる。スクリーンまたはふるいなどは、約140メッシュ未満であることが好ましく、約100メッシュ未満であることがより好ましく、約40メッシュ未満であることがより好ましく、約20メッシュ未満であることが最も好ましい。
【0036】
次に、ブレンドを乾燥する。このステップにおいて、溶媒は、当業者に知られている物理的手段、例えば、蒸発によりブレンドから除去される。得られる顆粒を再び粉砕し、例えば、スクリーンまたはふるいに通し、粒子のサイズを望ましいサイズまで縮小する。
【0037】
錠剤が作製された後、望ましい場合には、錠剤を、医薬品において通常使用される材料でコーティングすることができる。コーティングする場合、コーティングは、当技術分野で知られている技法によって調製される。しかし、本発明の製剤は、コーティングされていないことが好ましい。
【0038】
医薬錠剤に通常見いだされる望ましい硬さおよびもろさを有する錠剤製品が得られる。硬さは、好ましくは5〜25Kp(50〜250N)、より好ましくは8〜20Kp(80〜200N)である。錠剤形態の本製剤は、優れた薬物放出プロファイルを有する。より具体的には、本製剤は、正確な錠剤サイズ、活性材料の特性、活性材料の水溶性、硬さおよび特定の担体組成物に応じて、36時間までの期間にわたって薬物が利用可能であるように、所定の制御および持続作用ならびに規則的な遅延性パターンを有する。例えば、本発明の方法により、要望通りに、放出時間が8〜10時間、15〜18時間、20〜24時間などである放出制御ダイエットサプリメントを調製することができる。さらに、各医薬組成物の放出プロファイルは、実質的に一様である。最後に、本発明に従って調製される錠剤は、硬くかつ高密度であり、低いもろさを有し、長期間にわたって制御されかつ持続性の放出を提供する。本発明によって調製される固形乾燥形態は、安定であり、それらの放出率は、長い保存期間にわたり、たとえあったにしても、有意な程度に変化することはない。
【0039】
放出制御医薬組成物は、固形で、好都合には単位剤形で提供される。経口投与のための固形単位剤形、特に錠剤形態での放出制御薬物の提供が好ましい。体内への摂取後に製剤が胃腸管に沿って進むにつれて、上述のように薬理学的に活性な材料を放出するように意図されていることが好ましい。この点で、胃腸管は、消化管の腹部、すなわち、食道の下端、胃および腸であると考えられる。
【0040】
本発明による製剤の用量は、当業者に知られている特定の活性成分の普通の用量に対応している。患者に投与される活性材料すなわち薬物の正確な量は、他にも要素はあるが、患者の年齢、状態の重症度および既往歴を含む多くの要素によって異なり、常に、投与する医師の健全な判断力の範囲内にある。適当な用量のガイドラインとして、Physicians Desk Referenceを参照されたい。
【0041】
他に指示がない限り、すべての百分率は、錠剤に対する重量百分率である。
【0042】
下記の非限定的実施例は、本発明をさらに説明するものである。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
医薬組成物の放出率に対するトウモロコシデンプンの影響
製造プロセス:
1.)第一ステップにおいて、塩酸ジルチアゼム(4部)およびベヘン酸グリセリル(1部)からなる共通の押出物7.12kgを調製した。詳細には、2種の出発材料を秤量し、次いで、Engelsmann Rhonradmischer ELTE 650ミキサー中で10分間混合した。その後、80〜85℃の温度にて、共回転型2軸押出機Haake Rheomex PTW 16/25p中で混合物を押し出した。その後、均一な組成物を移動ベルト上で冷却した。追加の冷却期間後、Frewitt GLA造粒機の1.25mmふるいを介して、固化した押出物を顆粒化した。
2.)異なる量的組成(下表1を参照)を有する錠剤チャージ(チャージ量各580g)を、共通の押出物から調製した。詳細には、任意選択成分マンニトール、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、高分散シリカを秤量し、1mm手ふるいを介して秤量した押出物に添加し、T2C Turbulaミキサーで5分間混合した。その後、秤量した量のステアリン酸マグネシウムを、0.5mm手ふるいを介して混合物に添加し、全組成物を、同一ミキサー中で5分間混合した。得られた混合物を、16×9mmダイおよび11mmの曲率を有するKorsch EKO−DMS計装化錠剤プレスを用いることにより圧縮した。
【0044】
【表1】

【0045】
トウモロコシデンプンの量は、1.7%〜6.9%の範囲で変化させる。
【0046】
放出率の結果:
驚いたことに、活性材料の放出期の3時間目と7時間目の間に放出率の選択的増加が達成されるように、トウモロコシデンプンによって活性材料の放出率が制御されることが判明した。
【0047】
【表2】

【0048】
異なる量の崩壊剤トウモロコシデンプンを使用することにより、上述の期間内に放出率を選択的に制御することができる。放出期の最初の2時間は、放出率の有意な変化(最大でも1%の変化)は観察できなかった。しかし、その後、放出期の4.5時間後には9%にまで達する有意差を認めることができた。したがって、本発明に従って特許請求の範囲に記載されている崩壊剤を使用することにより、放出曲線の形を明確に修正することができる。
【0049】
(実施例2)
この実施例は、極めて水に溶けやすい活性材料(活性材料1gが、水1ml未満に溶ける)からやや水に溶けにくい活性材料(活性材料1gが、水30〜100mlに溶ける)(上述の欧州薬局方に示されている水溶性に関する条件も参照)まで及ぶ群から選択される大量の異なる活性材料について、実施例1に示される効果が達成されることを示している。
【0050】
下記では、プレガバリンおよび塩酸ジルチアゼムを使用した。
a)プレガバリン
プレガバリンの構造式
【0051】
【化1】

溶解性 水1mlに32.1mg、すなわちプレガバリン1gが水31mlに溶けるため、前記活性材料は、欧州薬局方の定義に従い、やや溶けにくい材料とされる。
b)塩酸ジルチアゼム
塩酸ジルチアゼムの構造式
【0052】
【化2】

欧州薬局方によれば、この活性材料は水に溶けやすい。
【0053】
製造プロセス:
1.)第一ステップにおいて、塩酸ジルチアゼムまたはプレガバリン(4部)およびベヘン酸グリセリル(1部)からなる押出物を調製した。詳細には、2種の出発材料を秤量し、それらを、Engelsmann Rhonradmischer ELTE 650ミキサー中で10分間混合した。その後、80〜85℃の温度にて、Haake Rheomex PTW 16/25p共回転型2軸押出機中で混合物を押し出した。その後、均一な組成物を移動ベルト上で冷却した。追加の冷却期間後、Frewitt GLA造粒機の1.25mmふるいを介して、固化した押出物を顆粒化した。
2.)異なる量的組成(下表3を参照)を有する錠剤チャージ(チャージ量各580g)を押出物から調製した。詳細には、任意選択成分マンニトール、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、および高分散シリカを秤量し、秤量した押出物に1mm手ふるいを介して添加し、T2C Turbulaミキサーで5分間混合した。その後、秤量した量のステアリン酸マグネシウムを、0.5mm手ふるいを介して混合物に添加し、全組成物を、同一ミキサー中で5分間混合した。得られた混合物を、16×9mmダイおよび11mmの曲率を有する計装化Korsch EKO−DMS錠剤プレスを用いることにより圧縮した。
【0054】
【表3】

【0055】
放出率の結果:
【0056】
【表4】

【0057】
(実施例3)
現況技術の溶けやすい親水性崩壊剤の量の変化
【0058】
【表5】

【0059】
極めて溶けやすい親水性助剤マンニトールの量を減らす(11から0%まで)ことにより、活性材料の比を51%から60%まで増加させることができる。
【0060】
製造プロセス:
1.)第一ステップにおいて、塩酸ジルチアゼム(4部)およびベヘン酸グリセリル(1部)からなる押出物を調製した。詳細には、2種の出発材料を秤量し、それらを、Engelsmann Rhonradmischer ELTE 650ミキサー中で10分間混合した。その後、80〜85℃の温度にて、Haake Rheomex PTW 16/25p共回転型2軸押出機中で混合物を押し出した。その後、均一な組成物を移動ベルト上で冷却した。追加の冷却期間後、造粒機Frewitt GLAの1.25mmふるいを介して、固化した押出物を顆粒化した。
2.)異なる量的組成(上表5を参照)を有する錠剤チャージ(チャージ量各580g)を押出物から調製した。詳細には、任意選択成分マンニトール(必要ならば)、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、および高分散シリカを秤量し、1mm手ふるいを介して秤量した押出物に添加し、T2C Turbulaミキサーで5分間混合した。その後、秤量した量のステアリン酸マグネシウムを、0.5mm手ふるいを介して混合物に添加し、全組成物を、同一ミキサー中で5分間混合した。得られた混合物を、16×9mmダイおよび11mmの曲率を有する計装化Korsch EKO−DMS錠剤プレスを用いることにより圧縮した。
【0061】
放出率の結果:
【0062】
【表6】

【0063】
本発明に従って使用される崩壊剤の使用とは対照的に、様々な量のマンニトールなどの可溶性親水性成分の添加は、すでに放出期の最初の2時間で活性材料の放出率に有意な変化(最大4%)を引き起こす。前記変化は、活性材料の放出率に対して持続的影響を有する(4.5時間後に10%までの増加)。
【0064】
対照的に、本発明に従って使用される崩壊剤は、活性材料の放出期の後期に放出率を選択的に修正するに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1において調製された放出制御医薬組成物からの水性媒体(酢酸塩緩衝液pH4.5)における塩酸ジルチアゼムの放出プロファイルを示す図である。
【図2】実施例2において調製された放出制御医薬組成物からの水性媒体における塩酸ジルチアゼムおよびプレガバリンの放出プロファイルを示す図である。
【図3】実施例3において調製された放出制御医薬組成物からの水性媒体(酢酸塩緩衝液pH4.5)における塩酸ジルチアゼムの放出プロファイルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物からの活性材料の放出期の後期における放出率を選択的に増加させるための方法であって、
ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤を、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて3〜20重量パーセントの量で、脂質材料中に包埋されている活性材料を含む親油性マトリクスに添加するステップを含む方法。
【請求項2】
活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物であって、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤を、放出制御医薬組成物の全重量に基づいて3〜20重量パーセントの量でさらに含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
活性材料および前記活性材料を包埋している脂質材料を含む放出制御医薬組成物からの活性材料の放出期の後期における放出率を選択的に増加させるための、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、タピオカデンプン、アルファ化デンプン、物理的修飾アミロース、ジャガイモ加工デンプン、アミロペクチン、デンプングリコール酸ナトリウム、アミロペクチングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルギン酸カルシウム、架橋デキストランおよびホルムアルデヒド−カゼインからなる群から選択される膨潤性有機崩壊剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−534741(P2007−534741A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510143(P2007−510143)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【国際出願番号】PCT/IB2005/001063
【国際公開番号】WO2005/105048
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】