説明

医薬組成物用ペレットの製造方法

【課題】異なる範囲のサイズを有する粒子を製造する。
【構成】レオロジー改質剤ならびに可能であれば糖およびセルロースを含む成分組成物と混合してペーストを生成することを含む方法において、水を用いることにより、粒子サイズを制御する。当該ペーストを押出成形して粒子を形成し、次いでこれを球状化し乾燥する。水を用いて粒子サイズを制御することの利点の1つは、所望の範囲(例えば、約800μm〜約1500μmの範囲の間)の直径を有する粒子の数が増加し得ることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子、特に医薬組成物に用いるための粒子を製造する方法に関する。詳細には、本発明は、粒子サイズを制御するための水の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第5834021号明細書(Speirs;1998年11月10日公開)は、5重量%のプレドニゾロン メタスルホベンゾエート(「Pred−MSB」)を40重量%の微結晶セルロース、35重量%のラクトースおよび20重量%のクロスカルメロースナトリウムを含む賦形剤マトリックス中に含む、非崩壊性固体腸溶性組成物を開示する。当該組成物は、1000μm〜1400μmの範囲の直径を有するペレットの形態である。当該ペレットは、Pred−MSBを、セルロース、ラクトースおよびクロスカルメロースナトリウムと乾燥混合することにより形成される。水を当該混合物に添加し、次いで、これを10分間撹拌して、押出成形可能なペーストを形成する。当該ペーストを、直径25mmのボウルから、長さ約5mm、直径1mmの管を通して約100mm/分の速度で押出成形し、約1000rpmで回転する8インチ(20cm)のプレート上で10分〜15分間球状化して、当該ペレットを得る。得られたペレットを、流動床上で50℃にて30分間乾燥させる。次いで、当該ペレットを、Eudragit(商標)SlO0(Roehm Pharma GmbH, Darmstadt, Germanyから入手可能)コーティングでコーティングして、コーティングの理論上の重量増加を11.6%とし、サイズ1のハードゼラチンカプセルに充填する(1カプセル当たり15.7mg)。当該充填したカプセルを、Eudragit(商標)L100(これもまたRoehm Pharma GmbHから入手可能である)コーティングでコーティングして、コーティングの理論上の重量増加を10.2%とする。コーティングされたカプセルは、炎症性腸疾患(「IBD」)の遅延性又は徐放性の経口的治療に用いられ得る。
【0003】
同様のIBDの処置は、英国特許出願第0215656.0号および同第0215657.8号(Speirs;未公開)に記載されている。米国特許出願公開第5834021号明細書、英国特許出願第0215656.0号明細書および同第0215657.8号明細書は、番号を明記したことによりそれらの内容を本明細書の一部とする。
【0004】
ペレットの直径は、通常、約500μm〜2500μm、好ましくは800μm〜1700μm、さらに好ましくは800μm〜1500μm、なおさらに好ましくは1000μm〜1500μmの間の範囲内にある。しかしながら、ペレットは上記範囲内のいずれの直径も有し得、かつ、カプセルは一定の範囲の直径を有するペレットを有し得ることを理解すべきである。このサイズのペレットが好ましい理由の1つは、それらが、例えば、腸溶性コーティングで十分にコーティングされ得るからである。このように腸溶性コーティングされたペレットは、腸内で必要とされる放出プロファイルを示す。ペレットがより小さくなると、球形がより少なくなり、より細長くなる傾向があり、腸全体にわたって分布するのに十分な数を保持しながら、必要とされるサイズよりも小さくなってカプセルの均一な充填を可能にする。好ましいサイズ範囲は、バイオシンチグラフィーによって立証され、その結果は、得られた200個程度のペレットが、腸全体に適切に分布することを示す。
【0005】
米国特許出願公開第5834021号明細書に記載の方法では、一定の範囲のペレットサイズを生じている。ペレットは、所望のサイズのペレットが得られるように、篩にかける必要がある。遅延性および徐放性カプセルに効率的に用いるには大きすぎるか又は小さすぎるペレットは、通常は廃棄されて、かなりの廃棄物が生じる。このような廃棄物は、明らかに望ましくない。従って、所望の直径範囲内により多くの粒子が存在するようなより好ましい粒子サイズ分布を有する粒子が製造され、その結果、廃棄物の量が減少する、改良された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記方法に用いられる水の量のわずかな変更(例えば、5重量%)が、粒子サイズおよび粒子サイズ分布の顕著な変化を引き起こすことを見出した。このことに注目し、本発明者らは、粒子サイズ、およびより重要には粒子サイズ分布が、用いる水の量に依存すると結論付けた。従って、本発明者らは、水の量を、粒子サイズおよび粒子サイズ分布の制御に用い得ることを見出した。このようにして、異なる範囲のサイズを有する粒子を製造することができた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の局面によれば、医薬組成物に用いるための粒子の製造方法において粒子サイズを制御するための水の使用であって、当該方法が、
水を、少なくともレオロジー改質剤を含む成分組成物と混合して、ペーストを生成すること;
当該ペーストの少なくとも一部を押出成形して、押出成形物を形成すること;
押出成形物の少なくとも一部を球状化して、球状化粒子を形成すること;および
当該球状化粒子の少なくとも一部を乾燥すること
を含む、使用が提供される。
【0008】
用語「ペースト」は、湿潤顆粒を含むことを意図する。
【0009】
本発明の粒子は、代表的には、ペレット又は顆粒である。好ましい実施態様では、組成物は、さらに糖およびセルロースを含む。
【0010】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、水の量は、粒子のマトリックスの水和状態に起因して、粒子サイズに影響を及ぼす。一旦、水の量がある点を超えると、マトリックスは湿りすぎて大きな凝集物を形成する。多量の水は、レオロジー改質剤に取り込まれているように思われる。この方法の飽和点を超えると、水の量が重要であると思われる。
【0011】
本発明の1つの利点は、所望される範囲、通常は800μm〜1500μmの範囲内の直径を有する粒子が、より多く製造されることである。異なる複数のこのサイズの好ましいペレットは、腸の特定の領域で放出を達成するために、遅延放出型コーティング材料の異なる様式又は厚みを用いて処置/コーティングされ得る。このようなコーティングされた複数のペレットの例は、国際特許出願第GB03/02911号に開示されている。
【0012】
このようなコーティングされた複数のペレットは、多くの臨床対象の適合を可能にする。例えば、それらは、薬物がすぐに放出されると吸収されるか代謝される場合に、薬物を連続的に送達して腸の広い領域を治療することを可能にする。さらに、それらは、薬物を1つの部分で放出すると薬物が分解する可能性がある場合に、腸の1つの部分に薬物を連続的に送達して吸収粘膜との接触を増加させ、それによって最大の吸収を可能にする。さらに、高濃度の薬物が内臓粘膜に対して毒性であると思われる場合、ペレットにより、薬物を低濃度で連続的に利用することが可能になり、それによって無毒性又は低毒性での吸収が可能になる。
【0013】
水は、通常、成分組成物の約180重量%〜約190重量%の間の量で用いられ、好ましくは成分組成物の約185重量%の量で用いられる。本発明者らは、吸収によってマトリックスを形成する方法に用いられる水の量が、驚くほど多いことを見出した。本発明は、この多量の水により、本発明者らが知っている他の全てのペレット化方法と区別される。
【0014】
通常約80%〜約98%の粒子、代表的には約90%〜98%の間の粒子が、約800ミクロン〜約1500ミクロンの範囲の間の直径を有する。その直径が所望の範囲内にある粒子の数は、米国特許出願公開第5834021号明細書に開示される方法の数よりも多いが、乾燥粒子を篩にかけて約800μm〜約1500μmの範囲の直径を有する粒子を得、かつ直径がこの範囲内にない粒子を除去してもよい。
【0015】
約5重量%未満の水の使用により、通常は、粒子サイズが顕著に低下する。一方、5重量%を超える水の使用により、粒子サイズが増加し、その結果、100%の粒子が1500μmを超える直径を有するが、ペレットを腸溶性コーティングして活性剤を腸に放出するのに用いる場合には役に立たない。
【0016】
少ない水の使用により、粒子サイズ分布が減少し、その結果、所望される800μm〜1500μmの範囲内の直径を有する粒子がより少なくなり、かつ、平均粒子サイズが減少する。より多い水の使用により、全てのペレットが1500μmより大きくなるまで粒子サイズ分布が増加する。従って、本発明の好ましい実施態様は、有用な粒子の数を増加させ、かつ廃棄物の量を低減させる。
【0017】
本発明に従って製造したペレットは、三次構造の完全性が化合物の効力および安全性に重要である場合、例えば、タンパク質又はペプチドなどの高分子量化合物の送達に特に適用可能である。これらのペレットの特定の利点は、多くの医薬上の方法と比べて穏やかな条件下で経口医薬組成物を製造し得る一方、腸管中での化合物の所望の放出プロファイルを提供することである。
【0018】
本発明の組成物の処方から有益な高分子量化合物の例は、エリスロポエチン、グリコシル化タンパク質ホルモンおよび造血成長因子であり、これらは他の症状のなかでもとりわけ慢性腎不全における貧血の処置に有用であると考えられており、炎症性腸疾患の貧血の処置および他の正球性正色素性貧血の処置において研究されてきた。エリスロポエチンの錠剤剤形が開示されている(ロシア国特許出願公開第2152206号明細書)が、エリスロポエチンは、従来、皮下的に又は経静脈的に投与されてきた。
【0019】
本発明から有益であり得る他の分類の高分子量化合物には、インターフェロン、TNFアンタゴニスト、ならびに免疫系の特定のタンパク質およびポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニスト、ヒト成長ホルモンのようなホルモン、ならびにサイトカインおよびサイトカインアンタゴニストが挙げられる。用いられ得る他の高分子量化合物には、ワクチンが挙げられる。
【0020】
本発明によって製造される粒子はまた、メトロニダゾールのような抗感染症化合物の送達に特に有用である。このようなペレットは、内臓の管腔中および内臓壁で高濃度の抗感染症化合物を達成し、抗感染症薬が内臓の適切な拡張領域を通って広まることが可能になる。さらに、抗炎症剤を含むペレットはまた、内臓壁中での高濃度の薬物を達成する。
【0021】
他の化合物およびその投与が本発明から有益であり得る分類の化合物には、鎮痛剤および解熱剤;抗菌剤および抗原虫剤(例えば、メトロニダゾール、アルベナゾール、メベンダゾール、プラジンカンテル(prazinquantel))ならびに他のニトロイミダゾール抗生物質および嫌気性細菌に活性な抗生物質;クラリスロマイシンおよび他のマクロライド抗生物質;ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、リファブチン、および一般に腸の障害に関連するか又は当該障害を引き起こす感染性生物に対して活性な他の抗生物質;抗真菌剤;抗炎症剤[例、サリチル酸塩(例えば、5−アミノサリチル酸、4−アミノサリチル酸)および誘導体(例えば、バルサラジド、ステロイド、特にプレドニゾロン メタスルホベンゾエート)];炎症性腸疾患および過敏性腸症候群の症状ならびに抗生物質が関連する下痢からの回復に影響することが知られているプロバイオティクスおよびプレバイオティクスが挙げられる。同様に、特に、内臓中の局所的な部位における神経伝達に影響を与えることにより、過敏性腸症候群の症状に影響することが知られている薬理学上活性な薬物(例えば、セロトニン作動系に影響を与える薬剤および内臓中の鎮静剤受容体の部位において活性な薬剤)が挙げられる。α−アミラーゼおよびパラセタモールもまた、本発明の組成物を用いて投与され得る。
【0022】
本発明から有益であり得る他の化合物には、特に、胃腸管の特定の領域で局所毒性を引き起こすことにより有毒な影響を有するために、その臨床での有用性が限られている特定の化合物が挙げられる。このような化合物には、例えば、抗生物質、ビスフォスフォネートおよび抗炎症薬が挙げられる。特定の例はメトフォルミンであり、これは、胃腸管での副作用のために多くの患者が耐えられない。本発明は、毒性の特定の部位における化合物の濃度を最小化するのに用いることができ、有害な事象が少ない投与すべき有効治療用量を可能にする。
【0023】
炎症性腸疾患又は腸の感染性障害の処置に有効な抗生物質は、吸収されたときにしばしば有毒であるが、本発明は、それらを腸内のそれらの作用部位に投与して、全身での取り込みを最小化しながら十分な局所濃度を達成するのに適用され得る。本発明の特定の用途は、ゲンタマイシンのような有毒な抗生物質を、特に腎不全を有する患者のような、当該薬物の有毒な影響を受けやすい患者に投与する場合である。特定の抗生物質(例えば、メトロニダゾール)を長期間にわたって連続的に投与する必要がある慢性の腸疾患(例えば、クローン病および回腸嚢炎)を有する患者は、おそらく、特に本発明から利益を受けるであろう。
【0024】
他の用い得る活性剤には、抗癌剤又は細胞傷害剤(例えば、シクロフォスファミド、シスプラチンおよび他の白金剤およびビンクリスチンおよび他のビンカアルカロイド);免疫調節剤(例えば、メトトレキサート、アザチオプリンおよびシクロスポリン);ならびに抗寄生虫剤(例えば、アルベナゾール)が挙げられる。
【0025】
活性化合物の薬理学上許容され得る塩および誘導体もまた用いることができる。
【0026】
本発明における使用に好ましい化合物は、プレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート、5−アミノサリチル酸、メトロニダゾール、クラリスロマイシン、メトフォルミン、パラセタモール、α−アミラーゼおよびエリスロポエチンである。プレドニゾロンペレットの場合、粒子は、例えば遅延放出性および徐放性経口医薬として、炎症性腸疾患の治療に用いられ得る。
【0027】
治療上活性な化合物は、好ましくは、治療有効量で存在し、通常、成分組成物の0重量%を超え約90重量%までの間の量で、好ましくは、成分組成物の0重量%を超え40重量%までの間の量で存在する。活性剤の最終的な量は、活性剤の効力に依存する。従って、相対的に高い効力を有する活性剤、例えば、エリスロポエチンは、0重量%を超え約1重量%までの間の量で存在し得る。さらに、相対的に低い効力を有する活性剤、例えば、プレドニゾロン又はメトロニダゾールは、約5重量%〜約20重量%の量で存在し得る。
【0028】
1つの好ましい組成物は、プレドニゾロン又はその薬理学上許容され得る塩(例えば、プレジゾロン(predisolone)ナトリウム メタスルホベンゾエート)もしくは誘導体、レオロジー改質剤、糖およびセルロースから実質的になる。
【0029】
第二の好ましい組成物は、メトロニダゾール又はその薬理学上許容され得る塩もしくは誘導体、レオロジー改質剤、糖およびセルロースから実質的になる。
【0030】
第三の好ましい組成物は、エリスロポエチン又はその薬理学上許容され得る塩もしくは誘導体、レオロジー改質剤、糖およびセルロースから実質的になる。
【0031】
レオロジー改質剤は、水和の際に膨潤して、粘弾性を有するゲル様マトリックスを形成する。ペレットを乾燥させたとき、それらはあまり収縮しない。従って、本発明者らは、一旦水が除去されると特定の構造が形成されるが、このことがペレットの放出特性に関与するのではないかと結論付けている。レオロジー改質剤は、通常、デンプン又はヒドロプロピルメチルセルロースのような親水性ゲル化剤である。
【0032】
レオロジー改質剤は、例えば、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコレート又はクロスカルメロースナトリウム、すなわちAc-Di-Sol(商標)(FMC Biopolymer,1735 Market Street, Philadelphia, PA 19103,USA)であり得る。クロスカルメロースナトリウムは、通常、スーパー崩壊剤、すなわち、組成物の溶解を補助する化合物として用いられる。従って、スーパー崩壊剤がゲル様マトリックスを形成するであろうことは驚くべきことでありかつ全く予測できなかったことである。レオロジー改質剤は、成分組成物の少なくとも5重量%の量、好ましくは、成分組成物の少なくとも10重量%、より好ましくは、成分組成物の約10重量%〜約40重量%の間の量(例えば、20重量%)で存在する。
【0033】
糖は、好ましくは、ラクトース一水和物である。糖は、好ましくは、成分組成物の約30重量%〜約50重量%の間の量(例えば、35重量%)で存在する。
【0034】
セルロースは、好ましくは微結晶セルロースである。
【0035】
セルロースは、好ましくは、成分組成物の約35重量%〜約45重量%の間の量(例えば、35重量%)で存在する。
【0036】
球状化装置の速度は、公知のペレットの製造方法における速度と比べて非常に遅い。本発明の目的のため、球状化プレートは、通常、約125rpm〜1800rpmの間で、好ましくは200rpm〜1000rpmの間で回転し、用いられる回転速度がこの範囲外である場合は、球状化装置は通常、ペレットを製造できない。さらに、公知の方法の知識では、より小さな球状化プレートを用いることにより、直観的に、より速い回転速度が必要とされるであろう。しかしながら、本発明においては逆もまた真であり、より小さなプレートはより速い回転速度を必要とする。本発明者らの知識では、この観察はペレットの製造に独特のものである。
【0037】
用いる水の量を制御することにより、粒子サイズ分布を、最大のプロセス収率で最適化することが可能になる。粒子は、例えば、IBDなどの症状の医療的処置のような特定の用途が意図される。
【0038】
得られた粒子は、Eudragit(商標)Sのような腸溶性コーティングでコーティングされ得るが、これは、遊離のカルボキシル基のエステル基に対する比が約1:2でありかつ平均分子量が135,000であるメタクリル酸およびメタクリル酸メチルエステルのアニオン性コポリマーである。複数のコーティングされた粒子は、カプセル中に封入され得るか、又は錠剤に圧縮され得る。カプセル又は錠剤は、Eudragit(商標)Lのような他の腸溶性コーティングでコーティングされてもよく、これは遊離のカルボキシル基のエステル基に対する比が約1:1である点でEudragit Sとは異なる。Eudragit(商標)LおよびEudragit(商標)Sのいずれも胃液(約pH 6)には不溶であるが、Eudragit(商標)Lのみが約pH7未満で腸液に容易に溶解し得る。このようにして、活性成分の放出は腸まで遅延されて、活性剤の有効性を増加させるように制御される。放出制御は、次第に透過可能になるコーティングを少なくとも部分的に通過して達成されると考えられる。
【0039】
現在のところ、ゲル様マトリックスは、再水和の際にペレットのセルロース成分から形成されると考えられている。好ましい実施態様では、セルロース成分は、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウム(セルロース誘導体)である。再水和の際、ペレットは膨潤し、活性成分を、制御された様式で経時的に放出する。ペレットはまた、再水和の際に「べたつき」、内臓壁に付着する。その結果、膨潤したペレットは内臓の標的部位に付着して、それにより活性剤の有効性を増加させる。さらに、内臓内のpHは、内臓管腔の中心から内臓壁に向かって増加する。ペレットがpH依存性放出コーティング材料でコーティングされる場合、活性剤の放出速度は、ペレットが内臓壁に近づくにつれて増加する。本発明の好ましい実施態様のこの特徴はまた、活性剤の有効性を増加させ得る。
【0040】
この結果はまた、水の使用量が最適量に近づくにつれ、粒子の全収率(乾燥後)が増加することを示す。
【0041】
本発明の第二の局面では、医薬組成物に用いるための粒子の製造方法であって、当該方法が、
水を、少なくともレオロジー改質剤を含む成分組成物と混合して、ペーストを生成すること;
当該ペーストの少なくとも一部を押出成形して、押出成形物を形成すること;
押出成形物の少なくとも一部を球状化して、球状化粒子を形成すること;および
当該球状化粒子の少なくとも一部を乾燥すること
を含む、方法が提供される。
【0042】
好ましくは、水の使用量は、前記成分組成物の重量の約180重量%〜約190重量%の間であり、前記球状化工程では、回転70cmプレートが用いられるが、当該プレートは約33rpmで回転しない。
【0043】
第二の局面の方法は、上述の方法の好ましい特徴のいずれか又は全てを、任意の好ましい組み合わせで有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の好ましい実施態様を、例示のみを目的として、添付の図面を参照しながらここで説明する。
【図1】実施例1で製造された未コーティングペレットの写真である。
【図2】実施例2で製造された未コーティングペレットの写真である。
【図3】実施例3で製造された未コーティングペレットの写真である
【実施例1】
【0045】
5重量%のプレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート
プレドニゾロン メタスルホベンゾエートのペレットを、5重量%のプレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート、40重量%の微結晶セルロース(Avicel(商標)PH 101)、35重量%のラクトース一水和物(D80 200 Mesh)および20重量%のクロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol(商標))の乾燥混合物を製造することにより製造した。精製水(185重量%の乾燥混合成分)を添加し、得られた混合物を10分間混合して、押出成形可能なペーストを形成し、次いでこれを押出成形および球状化した。次いで、ペレットを流動床造粒機中で乾燥し、篩にかけて、粒子サイズが800μm〜1500μmの範囲内にあることを確認した。
【0046】
図1は、実施例1により形成されたペレットを図示する。これらのペレットの大部分は、所望される800μm〜1500μmの範囲内にある。
【実施例2】
【0047】
5重量%のプレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート
単に180重量%の水を、185重量%の代わりに用いた以外は、実施例1に記載の工程を用いて、ペレットを形成した。ペレットの収率(乾燥後)は91%であった。
【0048】
図2は、実施例2により形成されたペレットを図示する。この写真は、少ない水を用いた場合、ペレットのサイズが顕著に減少することを明示する。
【実施例3】
【0049】
5重量%のプレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート
190重量%の水を、185重量%の代わりに用いた以外は、実施例1に記載の工程を用いて、ペレットを形成した。
【0050】
図3は、実施例3により形成されたペレットを図示する。この写真は、用いる水が多い場合、ペレットのサイズが顕著に増加することを明示する。
【実施例4】
【0051】
5重量%のプレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート
単に182.5重量%の水を、185重量%の代わりに用いた以外は、実施例1に記載の工程を用いて、ペレットを形成した。ペレットの収率(乾燥後)は96.5%であった。
【実施例5】
【0052】
5重量%のプレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート
単に177.5重量%の水を、185重量%の代わりに用いた以外は、実施例1に記載の工程を用いて、ペレットを形成した。ペレットの収率(乾燥後)は85%であった。
【実施例6】
【0053】
20重量%のメトロニダゾール
0.50kgのメトロニダゾール、1.00kgの微結晶セルロース(「MCC」)、0.50kgのラクトースおよび0.50kgのクロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol(商標))からなる乾燥混合物のバッチを製造した。乾燥混合物に最適な量の水は5.10kgであると決定された。90%(4.59kg)の最適な量の水を乾燥混合物に添加し、得られた混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。加工後、得られたペレットの少量のサンプルを保持し、残りのペレットを、混合物の残りの部分に戻した。追加の5%(0.26kg)の最適な量の水を混合物と混合し、この新たな混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。この手順をさらに3回繰り返し、ペレット製造の実施の結果を、90重量%、95重量%、100重量%、105重量%又は110重量%の最適な量の水を有する混合物について得た。この5つのペレット製造の実施の結果を、表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
当該結果は、プレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート以外の活性成分を含むペレットが製造され得ることのみならず、メトロニダゾールペレットのサイズが、存在する水の量を制御することによって制御され得ることを示す。これに関し、当該結果は、水の量のそれぞれの増加によって、製造されるペレットの平均サイズが増加することをさらに示す。
【実施例7】
【0056】
40重量%のメトロニダゾール(ラクトースなし)
1.00kgのメトロニダゾール、1.00kgのMCCおよび0.50kgのクロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol(商標))からなる乾燥混合物のバッチを製造した。実施例7の乾燥混合物は、実施例6のラクトースが追加のメトロニダゾールで置き換えられたこと以外は実施例6の乾燥混合物と同じであった。乾燥混合物のための最適な水の量は、再び5.10kgであると決定された。約84%(4.3kg)の最適な量の水を乾燥混合物に添加し、得られた混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。加工後、得られたペレットの少量のサンプルを保持し、残りのペレットを、混合物の残りの部分に戻した。追加の約10%(0.5kg)の最適な量の水を混合物と混合し、この新たな混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。加工後、得られたペレットの少量のサンプルを保持し、残りのペレットを、混合物の残りの部分に戻した。追加の約6%(0.3kg)の最適な量の水(合計100%)を混合物と混合し、この追加の新たな混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。この3つのペレット製造の実施の結果を、表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
当該結果は、プレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート以外の活性成分を含むペレットが製造され得ることのみならず、メトロニダゾールペレットのサイズが、存在する水の量を制御することによって制御され得ることを示す。実施例6におけるように、当該結果は、水の量のそれぞれの増加によって、製造されるペレットの平均サイズが増加することをさらに示す。
【実施例8】
【0059】
20重量%のパラセタモール
1.00kgのパラセタモール、2.00kgのMCC、1.00kgのラクトースおよび1.00kgのクロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol(商標))からなる乾燥混合物のバッチを製造した。乾燥混合物に最適な量の水は9.50kgであると決定された。100%(9.5kg)の最適な量の水を乾燥混合物に添加し、得られた混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。加工後、得られたペレットの少量のサンプルを保持し、残りのペレットを、混合物の残りの部分に戻した。追加の5%(約0.48kg)の最適な量の水を混合物と混合し、この新たな混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。加工後、得られたペレットの少量のサンプルを保持し、残りのペレットを、混合物の残りの部分に戻した。追加の5%(約0.48kg)の最適な量の水(計約10.5kg)を混合物と混合し、この追加の新たな混合物の一部を実施例1に記載のように加工した。この3つのペレット製造の実施の結果を、表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
当該結果は、プレドニゾロン ナトリウム メタスルホベンゾエート又はメトロニダゾール以外の活性成分を含むペレットが製造され得ることのみならず、パラセタモールペレットのサイズが、存在する水の量を制御することによって制御され得ることを示す。実施例6および7におけるように、当該結果は、水の量のそれぞれの増加によって、製造されるペレットの平均サイズが増加することをさらに示す。
【0062】
本発明は、好ましい実施態様を参照して上記に記載した詳細に限定されず、多くの変更および変動が、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなくなされ得ることが理解されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】米国特許公開第5834021号
【特許文献2】英国特許第0215656.0号
【特許文献3】英国特許第0215657.8号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物に用いるための粒子の製造方法であって、当該方法が、
少なくとも一種の抗炎症剤、および、デンプン、ヒドロプロピルセルロース、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコレートおよびクロスカルメロースナトリウムから選択されるレオロジー改質剤を含む成分組成物と、所定量の水を混合して、ペーストを生成すること;
当該ペーストの少なくとも一部を押出成形して、押出成形物を形成すること;
当該押出成形物の少なくとも一部を球状化して、球状化粒子を形成すること;および
当該球状化粒子の少なくとも一部を乾燥すること
からなり、
前記成分組成物と共に使用される前記所定量の水が、前記成分組成物の180重量%〜190重量%の間の量で用いられ、それにより80%〜98%の間の粒子が、800μm〜1500μmの範囲の間の直径を有するような粒子サイズ分布を得る
ことを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項2】
前記所定量の水が、前記成分組成物の185重量%用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
90%〜98%の間の粒子が、800μm〜1500μmの範囲の間の直径を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
95%〜98%の間の粒子が、800μm〜1500μmの範囲の間の直径を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
乾燥粒子を篩にかけて、800μm〜1500μmの範囲の間の直径を有する前記粒子を得る、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記抗炎症剤が、メトロニダゾール、プレドニゾロン メタスルホベンゾエート、又はそれらの薬理学上許容され得る塩から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記抗炎症剤が、プレドニゾロン又はその薬理学上許容され得る塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗炎症剤が、メトロニダゾール又はその薬理学上許容され得る塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗炎症剤が、パラセタモール又はその薬理学上許容され得る塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗炎症剤が、前記組成物中に治療上の量で存在する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記抗炎症剤が、前記成分組成物の0重量%を超え90重量%までの間の量で存在する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記抗炎症剤が、前記成分組成物の0重量%を超え40重量%までの間の量で存在する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記抗炎症剤が、前記成分組成物の5重量%を超え20重量%までの間の量で存在する、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記レオロジー改質剤がクロスカルメロースナトリウムを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記レオロジー改質剤が、前記成分組成物の少なくとも5重量%の量で存在する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記レオロジー改質剤が、前記成分組成物の少なくとも10重量%の量で存在する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記レオロジー改質剤が、前記成分組成物の10重量%〜40重量%の量で存在する、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記レオロジー改質剤が、前記成分組成物の20重量%の量で存在する、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記成分組成物が、さらに糖を含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記糖がラクトース一水和物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記糖が、前記成分組成物の30重量%〜50重量%の間の量で存在する、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記糖が、前記成分組成物の35重量%の量で存在する、請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記成分組成物が、さらにセルロースを含む、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記セルロースが、微結晶セルロースである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記セルロースが、前記成分組成物の35重量%〜45重量%の量で存在する、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記セルロースが、前記成分組成物の30重量%の量で存在する、請求項23〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が、プレドニゾロン又はその薬理学上許容され得る塩、前記レオロジー改質剤、糖およびセルロースからなる、請求項1〜6及び10〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、メトロニダゾール又はその薬理学上許容され得る塩、前記レオロジー改質剤、糖およびセルロースからなる、請求項1〜6及び10〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、パラセタモール又はその薬理学上許容され得る塩、前記レオロジー改質剤、糖およびセルロースからなる、請求項1〜6及び10〜26のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87147(P2012−87147A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14751(P2012−14751)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2006−546298(P2006−546298)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(504473027)テムレル・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】TEMREL LIMITED
【Fターム(参考)】