説明

医薬組成物

VX−950の形態および製剤ならびにそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、35 USC §119(e)の下、2004年6月8日出願の米国特許仮出願番号60/578,043の優先権を主張し、その全ての内容を、引用により本明細書に包含させる。
【0002】
技術分野
本発明は医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
C型肝炎ウイルス(“HCV”)による感染は、切実なヒトの医学的問題である。HCVは、非A、非B肝炎のほとんどの症例の原因因子として認識されており、全世界で、概算で3%のヒト血清陽性率である[A. Alberti et al., “Natural History of Hepatitis C,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 17-24 (1999)]。米国だけでも400万名近くが、感染している可能性がある[M.J. Alter et al., “The Epidemiology of Viral Hepatitis in the United States, Gastroenterol. Clin. North Am., 23, pp. 437-455 (1994); M. J. Alter “Hepatitis C Virus 感染 in the United States,” J. Hepatology, 31., (Suppl. 1), pp. 88-91 (1999)]。
【0004】
HCVに最初に暴露されると、感染個体の約20%のみが急性臨床的肝炎を発症し、残りは自然に感染が消散するようである。症例のほぼ70%において、本ウイルスは数十年持続する慢性感染を確立する[S. Iwarson, “The Natural Course of Chronic Hepatitis,” FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 201-204 (1994); D. Lavanchy, “Global Surveillance and Control of Hepatitis C,” J. Viral Hepatitis, 6, pp. 35-47 (1999)]。これは、通常、再発し、進行性に肝炎を悪化させ、しばしば、硬変および肝細胞癌腫のようなより重篤な疾患状態に至る[M.C. Kew, “Hepatitis C and Hepatocellular Carcinoma”, FEMS Microbiology Reviews, 14, pp. 211-220 (1994); I. Saito et. al., “Hepatitis C Virus Infection is Associated with the Development of Hepatocellular Carcinoma,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, pp. 6547-6549 (1990)]。HCV感染者は、世界中で1億7000万名と概算される。次の十年で、現在感染している患者の大多数が感染して30年目に入り、C型肝炎が原因である死亡数は有意に増加すると予測される。不運なことに、慢性HCVの進行を減弱させるための広く有効な処置は存在しない。
【0005】
現在、十分に満足のいく抗HCV剤または処置は何ら存在しない。インターフェロン、ならびにペグ化インターフェロンはHCVの処置の処置に使用されとり、それはまたリバビリンと組み合わせて投与できる。インターフェロンを含む全ての処置は著しい副作用を有することが知られており、故に、C型肝炎ウイルスを処置するために安全で、有効で、経口治療である医学的要求を著しく満たしていない。さらに、有効な抗HCVワクチンのための見通しは不確かなままである。
【0006】
VX−950は3nMの定常状態結合定数(ki*)(および8nMのKi)を有する、競合的、可逆性ペプチド摸倣HCVNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤である[WO02/018369]。
【化1】

VX−950は非常に水に不溶性である。
【0007】
要約
本発明者らは、結晶性VX−950と比較して、改善されたバイオアベイラビリティを有する、VX−950の形態および製剤を発見した。これらの形態および製剤は、HCV感染処置に有用である。
【0008】
従って、一つの局面において、本発明は無定形VX−950の製造、例えば不純物および/または結晶性VX−950で実質的に汚染されていないVX−950の製造を特徴とする。例えば、一つの態様において、本発明は、結晶形態と比較して、VX−950の準安定溶解度を高め、故に改善されたバイオアベイラビリティを提供する、無定形形態のVX−950を含む製剤を特徴とする。本発明は多くの可能性のある製剤を含み、その全てが無定形形態のVX−950を含む。
【0009】
一つの局面において、本発明は無定形VX−950および第二成分を含む組成物と特徴とする。本第二成分は、例えば、界面活性剤、ポリマー、または不活性な薬学的に許容される物質を含む、種々の成分から選択され得る。ある好ましい態様において、本組成物は固体分散体、混合物または液体分散体を構成する。ある態様において、本組成物は固体(例えば、錠剤またはカプセル)の形である。
【0010】
他の局面において、本発明は無定形VX−950の固体分散体を特徴とする。
ある態様において、本固体分散体は約40%未満(例えば、約35%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、または約1%未満)の結晶性VX−950を含む。例えば、ある態様において、本固体分散体は、実質的に結晶性VX−950を含まない。
【0011】
ある態様において、本固体分散体は界面活性剤、ポリマー、または不活性な薬学的に許容される物質をさらに含む。例えば、本固体分散体はポリマーを含み、該ポリマーは1個または1個以上の水溶性ポリマーまたは部分的に水溶性ポリマーを含み得る。
【0012】
ある態様において、本VX−950は、ポリマーの非存在下で、無定形VX−950と比較して改善された物理的または化学的安定性を有する。ある態様において、本固体分散体は、そのままの(neat)無定形VX−950のガラス遷移温度と比較して高いガラス遷移温度を有する。ある態様において、本VX−950は、そのままの無定形VX−950の緩和率よりも低い緩和率を有する。
【0013】
ある態様において、本固体分散体は、ポリマーを含み、それは、本固体分散体の投与後、ラットの血中のVX−950濃度が、ポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも少なくとも約20%高くなる、例えば、少なくとも約50%高くなる、少なくとも約100%高くなる、少なくとも約200%高くなる、少なくとも約300%高くなるまたは少なくとも約400%高くなるのに十分な量で存在する。
【0014】
ある態様において、本固体分散体はHPMCポリマーまたはHPMCASポリマーのようなセルロース誘導体ポリマーを含む。
【0015】
ある態様において、本ポリマーは、本固体分散体中約10重量%から約80%、例えば約30%から約75%、例えば、約70%、約50%、または約49.5重量%の量で存在する。
【0016】
ある態様において、VX−950は、本固体分散体中、約10重量%から約80重量%、例えば約30%から約75%、例えば、約70%、約50%、または約49.5重量%の量で存在する。ある態様において、VX−950は、本固体分散体中、約80%より多い量で存在する。
【0017】
ある態様において、本固体分散体は界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSを含む。
【0018】
本固体分散体中に存在する本界面活性剤の量は、例えば、界面活性剤の化学的性質を含む種々の因子に依存する。ある態様において、本界面活性剤は、約0.1から約15%、例えば約0.1%から約5%、好ましくは約1%の量で存在する。
【0019】
ある態様において、実質的に全ての本VX−950が、無定形形態で本固体分散体中に存在する。
【0020】
ある態様において、本VX−950はL異性体とD異性体の混合物である。
ある態様において、本VX−950は実質的に純粋なL異性体である。
ある態様において、本固体分散体は噴霧乾燥により得られる。
【0021】
一つの態様において、本発明は、VX−950の固体分散体、例えば無定形固体分散体を提供する。例えば、VX−950、少なくとも1種のポリマー、および所望により1個以上の溶解度を高める界面活性剤を含む無定形固体分散体を提供する。本分散体は、哺乳動物(例えば、ラット、イヌまたはヒト)への、本固体分散体の投与により、VX−950の水溶性およびバイオアベイラビリティを高める。ある局面において、本固体分散体中のVX−950の少なくとも一部が無定形状態である(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%)。好ましい態様において、本固体分散体は本質的にまたは実質的に結晶性VX−950を含まない。
【0022】
ある固体分散体において、VX−950(例えば、無定形VX−950)が固体分散体の約99%まで、例えば約98%まで、約95%まで、約90%まで、約85%まで、約80%まで、約70%まで、好ましくは約70%まで、約65%まで、約60%まで、約55%まで、およびより好ましくは約50%までの量で存在する。他の態様において、VX−950は、固体分散体の少なくとも約1%、例えば少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、好ましくは少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、より好ましくは少なくとも約10%、およびさらにより好ましくは少なくとも約50%の量で存在する。本明細書の実施例で示す通り、VX−950が約50重量%(およびより具体的には約49.5%)の量で存在する固体分散体は本発明の範囲内である。
【0023】
ある態様において、VX−950が固体分散体であるとき、少なくとも約60重量%、例えば、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のVX−950が無定形形態である。全てのまたは実質的に全ての本VX−950が無定形形態である分散体もまた含まれる。
【0024】
ある態様において、VX−950を含む分散体は、VX−950のL異性体とD異性体の混合物(例えば、1:1)を含むか、またはVX−950は、いずれかの異性体の実質的に純粋な形であり得る。例えば、L:D 約60:40(+/−5%)の混合物が含まれる。ある態様において、本VX−950は、L異性体が約95%、約98%、または約98%より多い量である。
【0025】
無定形固体分散体は一般にガラス遷移温度を示し、それは分散体がガラス状固体からゴム状組成物に遷移する点である。一般に、ガラス遷移温度が高いほど、分散体の物理的安定性は高い。ガラス遷移温度の存在は、一般に組成物(例えば、分散体)の少なくとも大部分が無定形状態にあることを示す。医薬適用に適当な固体分散体のガラス遷移温度(T)は、一般に少なくとも約50℃である。ある態様において、より高い温度が好ましい。故に、ある態様において、本発明の固体分散体は、少なくとも約100℃(例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約115℃、少なくとも約120℃、少なくとも約125℃、少なくとも約130℃、少なくとも約135℃、少なくとも約140℃、少なくとも約150℃、少なくとも約160℃、少なくとも約170℃、少なくとも約175℃、少なくとも約180℃、または少なくとも約190℃)のTを有する。ある好ましい態様において、Tは約200℃までである。特記されない限り、ここに記載のガラス遷移温度は乾燥条件下で測定する。
【0026】
他の局面において、本発明は無定形VX−950を提供する。無定形VX−950は、何らかのポリマーまたは他の賦形剤の添加または存在なしで、哺乳動物に経口投与したとき、VX−950の水溶性およびバイオアベイラビリティを高める(結晶性VX−950と比較して)。
【0027】
他の局面において、本発明は、無定形VX−950の医薬組成物を特徴とする。ある態様において、本無定形VX−950は、実質的に結晶性VX−950を含まない。
【0028】
他の局面において、本発明は、固体分散体としての無定形VX−950および1個以上の界面活性剤、ポリマー、不活性な薬学的に許容される物質、または薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を特徴とする。
【0029】
ある態様において、本組成物はポリマーを含み、該ポリマーは1個または1個以上の水溶性ポリマーまたは部分的に水溶性ポリマーである。
【0030】
ある態様において、本VX−950は、結晶性VX−950と比較して改善された物理的または化学的安定性を有する。ある態様において、本固体分散体は、そのままの無定形VX−950のガラス遷移温度と比較して、高いガラス遷移温度を有する。ある態様において、本VX−950は、そのままの無定形VX−950の緩和率よりも低い緩和率を有する。
【0031】
ある態様において、本医薬組成物は、本固体分散体の投与後、ラットの血中のVX−950濃度が、ポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも少なくとも約20%高くなる、例えば、少なくとも約50%高くなる、少なくとも約100%高くなる、少なくとも約200%高くなる、少なくとも約300%高くなるまたは少なくとも約400%高くなるのに十分な量でポリマーを含む。
【0032】
ある態様において、本ポリマーはHPMCまたはHPMCASのようなセルロース誘導体ポリマーである。
【0033】
ある態様において、本発明は、VX−950の無定形固体分散体(ここで、該VX−950は、医薬組成物の約30−75%wt/wtを構成する)、HPMCおよびHPMCASから成る群から選択される1個以上のポリマー(ここで、該ポリマーは、医薬組成物の約30−75%wt/wtを構成する)、および界面活性剤(ここで、該界面活性剤は、医薬組成物の約0.5−2%wt/wtを構成する)を含む、医薬組成物を特徴とする。上記の通り、成分の重量%は固体分散体の重量に関し、該分散体は、さらに、例えば、液体懸濁液または錠剤に製剤できる。
【0034】
ある態様において、本ポリマーはHPMCまたはHPMCASである。
ある態様において、本界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSである。
【0035】
ある態様において、本医薬組成物は、下記成分を含み、ここで:該VX−950は本医薬組成物の約49.5%wt/wt含まれ、該ポリマーは、HPMCであり、そして本医薬組成物の約49.5%wt/wt含まれ、そして該界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSであり、そして本医薬組成物の約1%wt/wt含まれる。上記の通り、成分の重量%は固体分散体の重量に関し、該分散体は、さらに、例えば、液体懸濁液または錠剤に製剤できる。
【0036】
ある態様において、本医薬組成物は、下記成分を含み、ここで:該VX−950は本医薬組成物の約49.5%wt/wt含まれ、該ポリマーはHPMCASであり、そして本医薬組成物の約49.5%wt/wt含まれ、そして該界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSであり、そして本医薬組成物の約1%wt/wt含まれる。上記の通り、成分の重量%は固体分散体の重量に関し、該分散体は、さらに、例えば、液体懸濁液または錠剤に製剤できる。
【0037】
ある態様において、本医薬組成物は、下記成分を含み、ここで該VX−950は本医薬組成物の約70%wt/wt含まれ、該ポリマーはHPMCまたはHPMCASであり、そして本医薬組成物の約29%wt/wt含まれ、そして該界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSであり、本医薬組成物の約1%wt/wt含まれる。上記の通り、成分の重量%は固体分散体の重量に関し、該分散体は、さらに、例えば、液体懸濁液または錠剤に製剤できる。
【0038】
他の局面において、本発明は、HPMCおよびHPMCASの群から選択される溶液中に無定形VX−950粒子およびポリマーを含む水性懸濁液を含む、医薬組成物を特徴とする。
【0039】
ある態様において、本無定形VX−950は固体分散体の形である。
ある態様において、本医薬組成物はまた界面活性剤を、溶液中にまたはVX−950粒子の成分としてまたはその両方で含む。本界面活性剤は、例えば、SLSまたはビタミンE TPGSであり得る。
【0040】
ある態様において、本ポリマーは溶液中またはVX−950粒子の成分としてまたはその両方であり得る。
【0041】
ある態様において、本水性懸濁液は約0.1%から約20重量%の界面活性剤を含む。ある態様において、本水性懸濁液は、無定形VX−950を、重量で約1mg/mlから約100mg/ml含む。ある態様において、本水性懸濁液は、約0.1%から約2.0重量%のポリマー、例えば約1重量%のポリマーを含む。
【0042】
ある態様において、本発明は、ここに記載の形態、分散体、組成物、または製剤の製造法を含む。
【0043】
従って、噴霧乾燥を含む、VX−950の無定形形態の製造法を記載する。一つの態様は、VX−950と適当な溶媒を合わせて混合物を形成させ、次いで、該混合物を噴霧乾燥してVX−950の無定形形態を得ることによる、VX−950の無定形形態の製造法を提供する。本混合物は溶液または懸濁液であってよい。
【0044】
他の局面において、本発明は、VX−950を噴霧乾燥してVX−950の無定形形態を得ることを含む、VX−950の無定形形態の製造法を特徴とする。
【0045】
ある態様において、本方法はVX−950と適当な溶媒を合わせて混合物を形成させ、次いで該混合物を噴霧乾燥してVX−950の無定形形態を得ることを含む。
【0046】
ある態様において、本方法は
a)VX−950、ポリマー、および溶媒を含む混合物を形成させ;そして
b)該混合物を噴霧乾燥してVX−950を含む固体分散体を形成させることを含む。
【0047】
ある態様において、本ポリマーはHPMCまたはHPMCASである。
ある態様において、本ポリマーが固体分散体中約30%から約70重量%の量で存在する。
【0048】
ある態様において、本混合物はまた界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)またはビタミンE TPGSを含む。
【0049】
ある態様において、本溶媒は塩化メチレンを含む。ある態様において、本溶媒はアセトンを含む。ある態様において、本溶媒は塩化メチレンとアセトンの混合物を含む。例えば、本溶媒は、約0%から約30%アセトンおよび約70%から約100%塩化メチレンを含み得るか、または本溶媒は約0%から約40%アセトンおよび約60%から約100%塩化メチレンを含み得る。塩化メチレン対アセトン比の他の例は、80:20、75:25、および70:30を含む。
【0050】
他の局面において、本発明は、ここに記載の方法に従い製造した固体分散体を特徴とする。
【0051】
本発明はまた:
a)VX−950、ポリマー(例えば、結晶化を阻害するまたは安定化するポリマー)、および溶媒の溶液を形成させ;
b)該溶液から溶媒を急速に除去して、VX−950および結晶化を阻害するポリマーを含む固体無定形分散体を形成させることを含む、
VX−950の固体分散体の製造法を提供する。ある態様において、本溶媒は噴霧乾燥により除去する。
【0052】
認識される通り、噴霧乾燥は不活性なガスの存在下で行い得る。ある態様において、噴霧乾燥を含む方法は、二酸化炭素または二酸化炭素の混合物を含む超臨界流体の存在下で行い得る。
【0053】
従って、他の態様において、本発明は
a)VX−950、ポリマー(例えば、支持するためのポリマー、結晶化を阻害するポリマー、または安定化するポリマー)、および溶媒の混合物を形成させ;そして
b)該混合物を噴霧乾燥して、VX−950を含む固体分散体を形成させることを含む、
VX−950の固体分散体の製造法を提供する。
【0054】
これらの方法は、本発明の組成物を製造するために使用できる。本方法に使用する成分の量および性質は、ここに記載の通りである。
【0055】
他の局面において、本発明は、哺乳動物におけるHCV感染の処置法を特徴とする。一つの態様において、本方法は無定形VX−950の投与を含み、ここで、本無定形VX−950はここで定義の通りである。他の態様において、本方法は、ここに記載の固体分散体の投与を含む。
【0056】
他の態様において、本方法は、免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVNS3/4Aプロテアーゼの他の阻害剤;IMPDHの他の阻害剤;HCVライフ・サイクルにおけるNS3/4Aプロテアーゼ以外の標的の阻害剤;内部リボソーム侵入阻害剤、広域ウイルス阻害剤;チトクロームP−450阻害剤;またはこれらの組合せから選択される付加的薬剤の投与を含む。
【0057】
他の局面において、本発明は、ここに記載のVX−950組成物または無定形VX−950を含む、医薬包装物またはキットを特徴とする。
【0058】
薬剤の無定形形態は、結晶形態と異なる特性を示し得る(US6,627,760参照)。本発明の態様は、熱力学的にその対応する結晶形態よりも高いエネルギーレベルにある無定形VX−950である。故に、それはエネルギー的により活性であり、故にしばしば高い準安定溶解度、速い溶解行動、ならびに低い安定性の物理的特性を示す。最初の二つの特性は、薬剤の水溶性およびバイオアベイラビリティを高めるように作用するが、一方最後のものは物理的に低い安定性の組成物を提供することによりこの目的には有害であるかもしれず、その中で、バイオアベイラビリティは貯蔵中の、またはヒトもしくは動物への投与による、無定形状態からの再結晶により代わり得る。
【0059】
無定形固体の安定性(これは結晶形態よりも一般に安定性が低い)を改善するために、ポリマーまたは重合混合物を、薬剤と共に無定形固体分散系の形成に使用できる。ある態様において、薬剤の再結晶が、環境温度で、薬学的に著しく長時間(例えば、二年)有効に阻害される、長時間にわたり相分離しない系である“固溶体”、または固体分散体を、製剤できる。
【0060】
好ましい態様において、ポリマーの固体分散体(ここで、本固体分散体はVX−950およびポリマーの両方を含む)から水性溶液への遊離は、固体分散体から放出された後水性媒体に可溶性であるVX−950の溶液介在結晶化を減少できる。例えば、VX−950の固体分散体を、例えば胃または小腸に見られるような水性生物学的流体に入れたとき、ポリマー、例えば、HMPCまたはHPMCASと無定形VX−950の共遊離または前もっての遊離は、水性生物学的流体中のVX−950の結晶化を減少させ、それによりVX−950のバイオアベイラビリティ、溶解度および吸収の1個以上を高める。さらに、このようなポリマーの、水性媒体中へのまたはVX−950との組合せとしての挿入は、インビトロで、例えば、VX−950の液体製剤の製造において、水性媒体中のVX−950の結晶化を減少できる。
【0061】
VX−950を含む無定形固体分散体の製造は、いくつかのチャレンジを伴った。第一に、VX−950は、水にまたはアセトン、酢酸エチル、およびアセトニトリルを含むほとんどの慣用の有機溶媒に、顕著な量まで溶解しない。VX−950の室温での水溶性は、事実上HPLCで検出できず、本水溶性はpH依存性ではない。第二に、VX−950は、数種のアルコール類、例えば、MeOH、EtOH、およびiPrOHと化学的反応性を示し、これらが不適当な溶媒となる。第三に、VX−950の融点は約240℃であり、ホット−メルト技術が、この高温でのVX−950の分解の可能性のために幾分実用的ではなくなる。故に、適当な溶媒または溶媒混合物が、固体分散体の加工および製造の最適化のために重大である。
【0062】
本発明の無定形固体分散体は、VX−950の経口バイオアベイラビリティを著しく改善できる。適当な界面活性剤または界面活性剤混合物(例えば、SLSまたはビタミンE d−アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(ビタミンE TPGS))の存在により、本バイオアベイラビリティはさらに高められ得る。
【0063】
本発明の無定形固体分散体は、経口投与したとき、結晶性VX−950の投与と比較して、VX−950の改善されたバイオアベイラビリティを提供できる。ある態様において、これらの固体分散体は、簡便に貯蔵および投与できる固体状態である。本固体分散体の製造は、有機溶媒または溶媒混合物(例えば、塩化メチレン、アセトンなど)または超臨界流体(例えば、二酸化炭素を含む)の選択により、十分に処理およびスケールアップできる。ある態様において、固体分散体は、改善された化学的および物理的安定性を有し得る。例えば、いくつかの例において、本固体分散体は、慣用の貯蔵条件(室温)で化学的におよび/または物理的に、少なくとも2年間安定であり得る。
【0064】
1個以上の本発明の態様の詳細は、下記に添付の記載により示す。本発明の他の特性、目的、および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【0065】
図面の説明
図1は、種々のVX−950組成物間の比較を記載する。
図2は、VX−950を含む種々の組成物間のラットpKの比較を記載する。
図3−6は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての安定性データの比較を記載する。
図7−10は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての動的溶解度データの比較を記載する。
【0066】
詳細な記載
一般に、ラットにVX−950の微粉化した結晶性薬剤粉末を経口投与した後の絶対的バイオアベイラビリティは、0.5%未満であることが判明している。VX−950と慣用の医薬賦形剤の単純な混合物は、哺乳動物への経口投与により、類似の低いバイオアベイラビリティを示す。結晶形態のVX−950(すなわち、有意な割合のVX−950が結晶形態である)を含む組成物は、一般に、VX−950の十分な治療的有効性を提供する程度までの薬剤吸収を達成しない。ここに記載の組成物は、相対的に改善されたバイオアベイラビリティを提供する。従って、ある態様において、無定形VX−950の製剤を提供する。例えば、結晶性VX−950を含む不純物を実質的に含まない精製製剤が提供される。ある態様において、本発明は、VX−950を含む固体分散体の形の医薬組成物を含む。本発明の組成物は安定で、投与が容易であり、かつ投与によりVX−950の高いバイオアベイラビリティを与える。
【0067】
ある態様において、本VX−950は、約5%から約90重量%、例えば約5%から約70%、好ましくは約50重量%までの量で存在する。本VX−950は、D異性体およびL異性体の混合物であるか、またはいずれかの異性体の実質的に純粋な生成物である。本VX−950は、好ましくは実質的に無定形であり、例えば、少なくとも約50%のVX−950が無定形、少なくとも約55%のVX−950が無定形、少なくとも約60%のVX−950が無定形、少なくとも約65%のVX−950が無定形、少なくとも約70%のVX−950が無定形、少なくとも約75%のVX−950が無定形、少なくとも約80%のVX−950が無定形、少なくとも約85%のVX−950が無定形、少なくとも約90%のVX−950が無定形、少なくとも約95%のVX−950が無定形、少なくとも約98%のVX−950が無定形、少なくとも約99%のVX−950が無定形、または実質的に全てのVX−950が無定形である。
【0068】
本明細書で使用する用語“無定形”は、その原子の位置について、長距離秩序を有さない固体物質を意味する。無定形固体は、一般に過冷却液体であり、その中で、分子が定義された配置を有さず、長距離秩序がないような無作為な方法で配置されている。無定形固体は、一般に等方性であり、すなわち全ての方向で同じ特性を示し、明確な融点を有さない。例えば、無定形物質は、そのX線粉末回折(XRPD)パターンにおいて、鋭利な特徴的結晶ピークを有さない固体物質である(すなわち、XRPDで測定して、結晶性ではない)。代わりに、1個または数個の幅広ピーク(例えば、ハロ)が、そのXRPDパターンで見られる。幅広ピークは、無定形固体の特徴である。無定形物質と結晶性物質のXRPDの比較についてはUS2004/0006237を参照のこと。
【0069】
本明細書で使用する“結晶性固体”は、結晶性固体が厳密な長距離秩序を有するように、構造単位が、固定された幾何学的パターンまたは格子で配置されている、化合物または組成物を意味する。結晶構造を構築する単位は、原子、分子、またはイオンであり得る。結晶性固体は明確な融点を示す。
【0070】
本明細書で使用する“分散体”は、1個の物質、すなわち分散相が、第二の物質(連続相または媒体)中を、不連続単位として分散している、分散系を意味する。本分散相のサイズは相当変化し得る(例えばナノメーター直径のコロイド状粒子から、数ミクロンサイズまで)。一般に、本分散相は固体、液体、またはガスであり得る。固体分散体の場合、本分散体および連続相は両方とも固体である。医薬適用において、固体分散体は無定形ポリマー(連続相)中に結晶性薬剤(分散相)を、または別に、無定形ポリマー(連続相)中に無定形薬剤(分散相)を含み得る。ある態様において、無定形固体分散体は、分散相を構成するポリマー、および連続相を構成する薬剤を含む。
【0071】
用語“無定形固体分散体”は、一般に2個以上の成分、通常薬剤およびポリマーを含むが、界面活性剤または他の医薬賦形剤を含む可能性もあり、ここで、本薬剤が無定形相であり、本無定形薬剤の物理的安定性および/または溶解および/または溶解度が他の成分により高められる、固体分散体を意味する。
【0072】
本明細書で提供される固体分散体は、特に有利な本発明の態様である。固体分散体は、固体状態担体のような適当な担体媒体中に分散された化合物を含む。一つの態様において、本発明の担体は、ポリマー、好ましくは、水溶性ポリマーまたは部分的に水溶性ポリマーを含む。1個または1個以上の水溶性ポリマーを本発明の固体分散体に使用できることは理解されるべきである。
【0073】
固体分散体の例は、VX−950と少なくとも1個のポリマーの共沈殿物または共融解物である。“共沈殿物”は、薬剤およびポリマーを溶媒または溶媒混合物に溶解し、その後溶媒または溶媒混合物を除去した後の生成物である。本ポリマーを溶媒または溶媒混合物に懸濁できるときがある。本溶媒または溶媒混合物は、有機溶媒および超臨界流体を含む。“共融解物”は、薬剤およびポリマーを、所望により溶媒または溶媒混合物存在下で融点まで加熱し、その後混合し、妥当あれば溶媒の少なくとも少なくとも一部を除去し、そして選択した速度で室温まで冷却した後の生成物である。ある場合、本固体分散体は、薬剤および固体ポリマーの溶液を添加し、その後混合し、溶媒を除去することにより製造する。溶媒除去のために、真空乾燥、噴霧乾燥、トレイ乾燥、凍結乾燥、および他の乾燥法を適用できる。本発明に従った、適当な処理パラメーターを使用したこれらの方法のいずれかの適用は、最終固体分散体生成物中に無定形状態のVX−950を提供する。
【0074】
無定形VX−950の製造
無定形形態および固体分散体を得るための任意の方法が、本発明に関連して使用でき、例えば、US2003/0186952(その中で1092段落に引用の文献参照)およびUS2003/0185891に記載のものを含む。一般に、使用できる方法は、溶媒の混合物からの急速な除去または融解したサンプルの冷却を含む。このような方法は、回転蒸発、フリーズ−ドライ(すなわち、凍結乾燥)、真空乾燥、融解凝固、および融解押し出しを含むが、これらに限定されない。しかしながら、好ましい本発明の態様は、噴霧乾燥により得た無定形固体分散体を含む。従って、他の態様において、本発明は、溶媒を除去するために、得られた生成物の噴霧乾燥による乾燥を提供する。
【0075】
ここに記載の製剤、例えば、医薬組成物は、VX−950、適当なポリマー、および適当な溶媒を含む混合物の噴霧乾燥により得ることができる。噴霧乾燥は、例えば、固体および溶媒を含む液体混合物の霧化、および該溶媒の除去を含む方法である。霧化は、例えば、ノズルを通してまたは回転ディスク上で行い得る。
【0076】
噴霧乾燥は、液体供給物を乾燥した粒子形態に変換する工程である。所望により流動床乾燥または真空乾燥のような二次的乾燥工程を、薬学的に許容されるまで残留溶媒を減少させるために使用できる。典型的に、噴霧乾燥は、高度に分散した液体懸濁液または溶液、および、蒸発および液滴を産生するのに十分量の熱空気を摂食させることを含む。噴霧乾燥すべき製剤は、選択した噴霧乾燥装置を使用して霧化し得る全ての溶液、粗製懸濁液、スラリー、コロイド状分散体、またはペーストであり得る。標準法において、本製剤は、溶媒を蒸発させ、所望の生成物をコレクター(例えば、サイクロン)に輸送する、暖かい濾過空気の流れの中に噴霧する。消費された空気を次いで溶媒と共に廃棄させるか、あるいは消費された空気を、溶媒を捕捉し、リサイクルする可能性を秘めて凝集器に送る。市販されているタイプの装置を本噴霧乾燥の実行に使用できる。例えば、市販の噴霧乾燥機はBuchi Ltd. およびNiroにより製造されている(例えば、Niroにより製造されているPSDラインの噴霧乾燥機)(US2004/0105820;US2003/0144257参照)。
【0077】
噴霧乾燥は、典型的に約5%から約30%、好ましくは少なくとも約10%の固体負荷量(すなわち、薬剤+賦形剤)を用いる。ある態様において、10%未満の負荷量は低い収率および許容できない長い運転時間をもたらし得る。一般に、固体負荷量の上限は得られる溶液の粘性(例えば、ポンプ輸送できる能力)および溶液中の成分の溶解度により決定される。一般に、溶液の粘性は、得られる粉末生成物の粒子サイズを決定し得る。
【0078】
噴霧乾燥の技術および方法は、 Perry's Chemical Engineering Handbook, 6th Ed., R.H. Perry, D.W. Green & J.O. Maloney, eds.), McGraw-Hill book co. (1984);およびMarshall “Atomization and Spray-Drying” 50, Chem. Eng. Prog. Monogr. Series 2 (1954)に見ることができる。一般に、本噴霧乾燥は、約60℃から約200℃、例えば、約70℃から約150℃、好ましくは約80℃から約110℃、例えば、約90℃の入口温度で行う。本噴霧乾燥は、一般に約40℃から約100℃、例えば約50℃から約65℃、例えば、約56℃または58℃の出口温度で行う。
【0079】
溶媒の除去は、トレイ乾燥、流動床乾燥(例えば、ほぼ室温から約100℃)、真空乾燥、マイクロ波乾燥、回転ドラム乾燥または双円錐形真空乾燥(例えば、ほぼ室温から約200℃)のような続く乾燥段階を必要とし得る。
【0080】
ある例において、PVP K29/32は、固体内に溶媒を捕捉するように見えることが判明した。かさ密度/流動および残留溶媒の間に直接の相関関係が存在する;かさ密度が高いほど/流動がよいほど、残留溶媒が多い。残留溶媒を除去するために粉末流動およびかさ密度を最適化し、二次的乾燥を使用することが遊離であり得る。本発明の一つの態様において、本固体分散体は、流動床乾燥する。約75℃で約8時間の流動床乾燥は、ある種のVX−950の固体分散体において最適効果を提供するための、ある態様において有効であることが判明した。例えば固体分散体中にHPMCASをポリマーとして使用した、他の態様において、45℃で約4時間の流動床乾燥が、最終生成物における許容されるレベルの残留溶媒を提供するために有効である。
【0081】
好ましい方法において、本溶媒は揮発性溶媒を含む。ある態様において、本溶媒は揮発性溶媒の混合物を含む。好ましい溶媒は、VX−950およびポリマーの両方を溶解できるものである。適当な溶媒は上記のもの、例えば、塩化メチレン、アセトンなどを含む。より好ましい方法において、本溶媒は塩化メチレンとアセトンの混合物である。アルコール性溶媒を本発明と関連して使用できるが、アルコール類はVX−950を反応して、ケタールを形成することが判明している。従って、VX−950と(特にケタールを形成するために)反応しない溶媒が好ましい。このような溶媒はOH基または類似の反応性部分を含んではならない。これらの方法において、故に、好ましい溶媒はアルコール以外である。
【0082】
VX−950の反応性のために、本発明と関連して使用するための好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 8000)以外である(すなわち、遊離ヒドロキシル部分を有するポリマー以外)。
【0083】
粒子サイズおよび乾燥温度範囲は、最適な固体分散体を製造するために修飾し得る。当業者には認識される通り、小粒子サイズは改善された溶媒除去に至る。出願人らは、しかしながら、小さい粒子は綿毛状粒子に至り、それは打錠のような顆粒工程のためのVX−950の最適な固体分散体を提供しないことを発見した。高い温度で、VX−950の結晶化または化学的分解が起こり得る。低い温度では、十分量の溶媒が除去されないかもしれない。ここに記載の方法は、最適粒子サイズおよび最適乾燥温度を提供する。
【0084】
ポリマー
VX−950およびポリマー(または固体状態担体)を含む固体分散体はここに包含される。
【0085】
一つの態様において、本発明のポリマーは、水性媒体中に溶解できる。ポリマーの溶解度は、pH非依存性またはpH依存性であり得る。後者は、1個以上の腸溶性ポリマーを含む。用語“腸溶性ポリマー”は、胃のより酸性の環境よりも、腸の低い酸性の環境下で、優先的に溶解するポリマー、例えば、酸性水性媒体には不溶性であるが、pHが5−6を超えたときに可溶性となるポリマーを意味する。適当なポリマーは、化学的におよび生物学的に不活性である。本固体分散体の物理的安定性を改善するために、本ポリマーのガラス遷移温度(T)はできるだけ高くなければならない。例えば、好ましいポリマーは、薬剤(例えば、VX−950)のガラス遷移温度と少なくとも等しいかまたは高いガラス遷移温度を有する。他の好ましいポリマーは、薬剤(例えば、VX−950)の約10から約15℃内のガラス遷移温度を有する。本ポリマーの適当なガラス遷移温度の例は、少なくとも約90℃、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約115℃、少なくとも約120℃、少なくとも約125℃、少なくとも約130℃、少なくとも約135℃、少なくとも約140℃、少なくとも約145℃、少なくとも約150℃、少なくとも約155℃、少なくとも約160℃、少なくとも約165℃、少なくとも約170℃、または少なくとも約175℃を含む(乾燥条件下で測定して)。理論に縛られることを望むことなく、根底の機構は、高いTのポリマーが一般に室温で低い分子移動性を有し、それが、無定形固体分散体の物理的安定性の安定化に重要な因子であり得ると考えられる。
【0086】
加えて、本ポリマーの吸湿性はできるだけ低くなければならない。この適応における比較の目的で、ポリマーまたは組成物の吸湿性は、約60%相対湿度と特徴付けられる。ある好ましい態様において、本ポリマーは、約10%未満の吸水率、例えば約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、または約2%未満の吸水率を有する。セルロース誘導体ポリマーは、一般に約3%吸水率を有し、一方PVPは一般に約9%吸水率を有する。本吸湿性は、本固体分散体の物理的安定性にも影響し得る。一般に、ポリマー中に吸収された湿気は、ポリマーならびに得られる固体分散体のTを大きく低下させ得、それは上記の通り本固体分散体の物理的安定性をさらに低下させる。
【0087】
一つの態様において、本ポリマーは、1個以上の水溶性ポリマー(複数もある)または部分的に水溶性ポリマー(複数もある)である。水溶性のまたは部分的に水溶性のポリマーは、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))またはエチルセルロース;ポリビニルピロリドン(PVP);ポリエチレングリコール(PEG);ポリビニルアルコール(PVA);アクリレート、例えばポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標) E);シクロデキストリン(例えば、β−シクロデキストリン)ならびにコポリマーおよび例えばPVP−VA(ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート)を含むそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。ある好ましい態様において、本ポリマーはHPMC E50またはHPMCE15のようなヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。ここに記載の通り、本ポリマーはpH依存性腸溶性ポリマーである。このようなpH依存性腸溶性ポリマーは、セルロース誘導体(例えば、酢酸・フタル酸セルロース(CAP))、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはそれらの塩(例えば、(CMC−Na)のようなナトリウム塩);セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピル酢酸・フタル酸セルロース(HPCAP)、ヒドロキシプロピルメチル−酢酸・フタル酸セルロース(HPMCAP)、およびメチル酢酸・フタル酸セルロース(MCAP)、またはポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標) S)を含むが、これらに限定されない。ある好ましい態様において、本ポリマーは酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)である。
【0088】
さらに別の態様において、本ポリマーは不溶性架橋ポリマー、例えばポリビニルピロリドン(例えば、Crospovidone)である。
【0089】
薬剤がポリマーと、例えばVX−950とHPMCまたはHPMCASポリマーと固体分散体を形成する態様において、本固体分散体の総重量に対するポリマーの量は、典型的に少なくとも約20%、および好ましくは少なくとも約30%、例えば、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または約50%(例えば、49.5%)である。本量は、典型的に約99%またはそれ未満、および好ましくは約80%またはそれ未満、例えば約75%またはそれ未満、約70%またはそれ未満、約65%またはそれ未満、約60%またはそれ未満、または約55%またはそれ未満である。一つの態様において、本ポリマーは、本分散体の総重量の約50%まで(およびさらにより具体的に約48%から52%の間、例えば約49%、約49.5%、約50%、約50.5%、または約51%)である。
【0090】
より具体的な本発明の態様の一つにおいて、本ポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)(例えば、PVP29/32)であり、約50%まで(またはより具体的に、約50%)の量で存在する。ここに記載の通り、約49.5%PVP K29/32を含む分散体は本発明の範囲内である。
【0091】
他の態様において、本発明は、VX−950およびセルロース誘導体ポリマー、例えばHPMCまたはHPMCASポリマーの固体分散体を含む。ある好ましい態様において、本薬剤(すなわち、VX−950)は本分散体の少なくとも約20%の、例えば少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれより多く存在する。ある好ましい態様において、本薬剤は、約48%から52%の間、例えば約49%、約49.5%、約50%、約50.5%、または約51%の量で存在する。上記の通り、本ポリマーは少なくとも約20%、および好ましくは少なくとも約30%、例えば、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または約50%(例えば、49.5%)の量で存在する。本量は、典型的に約99%またはそれ未満、および好ましくは約80%またはそれ未満、例えば約75%またはそれ未満、約70%またはそれ未満、約65%またはそれ未満、約60%またはそれ未満、または約55%またはそれ未満である。一つの態様において、本ポリマーは、本分散体の総重量の約50%まで(およびさらにより具体的に、約48%から52%の間、例えば約49%、約49.5%、約50%、約50.5%、または約51%)の量である。ある好ましい態様において、本薬剤およびポリマーは、大まかに等量で存在し、例えば本ポリマーおよび本薬剤の各々が、本分散体の重量%のほぼ半分を構成する。ある好ましい態様において、本分散体は、界面活性剤(例えば、SLSまたはビタミンE TPGS)のようなさらなる微量成分を含む。ある好ましい態様において、本界面活性剤は、本分散体の約10重量%未満、例えば約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、または約1重量%存在する。
【0092】
ポリマーを含む態様において、本ポリマーは、本固体分散体を安定化するのに十分量存在しなければならない。安定化は、VX−950の結晶化の阻止または防止を含む。このような安定化は、VX−950の無定形から結晶形態への変換を阻止する。例えば、本ポリマーは、VX−950が無定形から結晶形態になるのを少なくとも一部(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、またはそれ以上)防止する。安定化は、例えば、本固体分散体のガラス遷移温度の測定、無定形物質の緩和率の測定、またはVX−950の溶解度もしくはバイオアベイラビリティの測定により、測定できる。
【0093】
VX−950と、例えば無定形固体分散体のような固体分散体を形成させるために、組み合わせて使用するための適当なポリマーは、下記特性の1個以上を有しなければならない:
1. ポリマーのガラス遷移温度は、VX−950のガラス遷移温度より約10−15℃以上低い温度でなければならない。好ましくは、本ポリマーのガラス遷移温度は、VX−950のガラス遷移温度より高く、一般に薬剤生成物の望む貯蔵温度より少なくとも50℃高い。例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約120℃、少なくとも約130℃、少なくとも約140℃、少なくとも約150℃、少なくとも約160℃、少なくとも約160℃、またはそれ以上である。
【0094】
2. 本ポリマーは相対的に非吸湿性でなければならない。例えば、本ポリマーは、標準条件下で貯蔵したとき、約10%未満の吸水率、例えば、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、または約5%未満、約4%未満、または約3%未満の吸水率でなければならない。好ましくは本ポリマーは、標準条件下で貯蔵したとき、実質的に水を吸収しない。
【0095】
3. 本ポリマーは、噴霧乾燥法に適当な溶媒中に、VX−950と同程度のまたはそれより高い溶解度を有しなければならない。好ましい態様において、本ポリマーは、VX−950と同じ溶媒または溶媒系の1個以上に溶解する。本ポリマーが、塩化メチレン、アセトン、またはそれらの組合せのような少なくとも1個の非ヒドロキシ含有溶媒に可溶性であることが好ましい。
【0096】
4. 本ポリマーは、例えば固体分散体中または液体懸濁液中でVX−950と組み合わせたとき、水性かつ生理学的に関連する媒体へのVX−950の溶解度を、ポリマー非存在下でのVX−950の溶解度と比較して、または参照ポリマーと組み合わせたときのVX−950の溶解度と比較して増加できる。例えば、本ポリマーは、無定形VX−950の溶解度を、固体無定形分散体または液体懸濁液のいずれかから、結晶性VX−950に変換する無定形VX−950の量を減少することにより増加する。
【0097】
5. 本ポリマーは、本無定形物質の緩和率を減少させなければならない。
【0098】
6. 本ポリマーはVX−950の物理的および/または化学的安定性を高めなければならない。
【0099】
7. 本ポリマーはVX−950の製造可能性を改善しなければならない。
【0100】
8. 本ポリマーは、VX−950の取り扱い、投与または貯蔵特性の1個以上を改善しなければならない。
【0101】
9. 本ポリマーは、他の医薬成分、例えば賦形剤と不利に相互作用をしてはならない。
【0102】
候補ポリマー(または他の成分)の適性は、無定形組成物を形成させるために、ここに記載の噴霧乾燥法(または他の方法)を使用して試験できる。候補組成物を、安定性、結晶の形成に対する抵抗性、または他の特性について比較でき、そして参照製剤、例えば、49.5%無定形VX−950、49.5%HPMCまたはHPMCAS、および1%の界面活性剤、例えば、SLSまたはビタミンE TPGS;または結晶性VX−950の製剤と比較できる。例えば、候補組成物は、それが溶媒媒体結晶化が起こるまでの時間を阻止するか否か、または制御された条件下で一定時間の変換%を少なくとも50%、75%、100%、または110%まで阻止するか否かを決定することにより試験でき、ならびに参照製剤、または候補組成物を、それが結晶性VX−950と比較して改善されたバイオアベイラビリティまたは溶解度を有するかどうか試験できる。
【0103】
界面活性剤
固体分散体または他の組成物は、界面活性剤を含み得る。界面活性剤または界面活性剤混合物は、一般に本固体分散体と水性媒体の間の界面張力を減少させる。適当な界面活性剤または界面活性剤混合物はまた、固体分散体からのVX−950の水溶性およびバイオアベイラビリティを高め得る。本発明と関連して使用するための界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Spans(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tweens(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)ジオクチルナトリウムスルホスクシネート(Docusate)、ジオキシコール酸ナトリウム塩(DOSS)、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(HTAB)、ナトリウムN−ラウロイルサルコシン、ナトリウムオレエート、ナトリウムミリステート、ナトリウムステアレート、ナトリウムパルミテート、Gelucire 44/14、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ビタミンE d−アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS)、レシチン、MW 677−692、グルタミン酸一ナトリウム一水和物、Labrasol、PEG 8 カプリリック/カプリックグリセリド、Transcutol、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、Solutol HS-15、ポリエチレングリコール/ヒドロキシステアレート、タウロコール酸、Pluronic F68、Pluronic F108、およびPluronic F127(または任意の他のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共ポリマー(Pluronics(登録商標))または飽和ポリグリコール化グリセリド(Gelucirs(登録商標)))を含むが、これらに限定されない。本発明と関連して使用できるこのような界面活性剤の具体例は、Span 65、Span 25、Tween 20、Capryol 90、Pluronic F108、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ビタミンE TPGS、Pluronicsおよびコポリマーを含むが、これらに限定されない。SLSおよびビタミンE TPGSが好ましい。
【0104】
本固体分散体の総重量に対する界面活性剤(例えば、SLSまたはビタミンE TPGS)の量は0.1−15%の間であり得る。好ましくは、それは約1から約10%、より好ましくは約1から約5%、例えば、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%である。
【0105】
ある態様において、本固体分散体の総重量に対する界面活性剤の量は、少なくとも約0.1、好ましくは少なくとも約0.5%、およびより好ましくは少なくとも約1%(例えば、約1%)である。これらの態様において、本界面活性剤は、約15%を超えない、および好ましくは約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%または約1%を超えないで存在する。本明細書の実施例で示す通り、本界面活性剤が約1重量%の量である態様が好ましい。
【0106】
とりわけ好ましい態様は、VX−950の固体分散体、HPMC、および界面活性剤を含む。例えば49.5%のVX−950を含む固体分散体、49.5%のHPMC E50のようなHPMCポリマー、および1%のSLSのような界面活性剤。
【0107】
他のとりわけ好ましい態様は、VX−950の固体分散体、HPMCAS、および界面活性剤を含む。例えば49.5%のVX−950を含む固体分散体、49.5%のHPMCASポリマー、および1%のSLSのような界面活性剤。
【0108】
HPMCASは、信越から種々のグレードで入手可能であり、AS−LF、AS−MF、AS−HF、AS−LG、AS−MG、AS−HGを含む。これらのグレードの各々は、アセテートおよびスクシネートの置換割合が異なる。
【0109】
候補界面活性剤(または他の成分)を、ポリマーの試験について記載したのと類似の方法で、本発明において使用するための適性を試験できる。
【0110】
組成物/投与量/包装/使用
医薬組成物もここで提供される。本発明に従うVX−950および本固体分散体の形態は、患者に投与するための医薬組成物への製造のためにさらに加工できる。固体分散体は医薬組成物と見なし得るが、投与前にはさらなる加工が必要であるかもしれない(例えば、本固体分散体は錠剤または液体懸濁液にさらに製剤できる)。全てのこのような医薬組成物、投与形態、および医薬製剤(例えば、持続放出型または即時放出型製剤)は本発明の範囲内である。本製剤は、既知の方法に従い、既知成分を使用して製造できる(Handbook of Pharmaceutical Excipients参照)。認識される通り、経口製剤は、しばしば医薬投与に好ましい。
【0111】
従って、VX−950を含む医薬組成物をここに提供する。このような組成物は、典型的に薬学的に許容される担体、希釈剤、または媒体を含む。ある態様において、本VX−950は無定形形態である。ある態様において、本VX−950は固体分散体の形(例えば、無定形固体分散体)である。これらのVX−950形態および分散体を、好ましくはここに記載の通り製造する。
【0112】
一つの態様において、本発明は、液体媒体に懸濁された固体分散体を含む懸濁液製剤である、医薬組成物を含む。好ましい組成物は、本固体分散体の成分としてである必要はなく、おそらく、液体媒体との物理的混合物としてまたはその溶液中、少なくとも1個のポリマー(例えば、HPMCまたはHPMCASのようなセルロース誘導体ポリマー)が添加されたものである。
【0113】
ある態様において、本ポリマーは、溶液中過飽和VX−950の結晶化を、例えば、無定形VX−950を液体媒体(例えば、水または他の水性媒体)に懸濁させたとき、防止することを助ける。例えば、ポリマーを液体媒体(例えば、水)に添加し、液体媒体中に溶解しているVX−950が、液体媒体から晶出するのを減少するか防止することを助けることができる。この安定化は、それが、液体投薬における改善された一貫性を提供できるため、有利であり得る。例えば、ある態様において、0時に無定形VX−950固体分散体と共に調製したポリマーを含む液体懸濁液は、2時間、4時間、12時間、または24時間後に無定形VX−950を維持し、故に同じ時間間隔での無定形VX−950分散体を含むが、液体媒体にポリマーが添加されていない液体分散体と比較して、液体媒体(例えば、水性媒体)中に高濃度の可溶化VX−950を有する。この可溶化無定形VX−950の濃度の一貫性の改善は、一般に本ポリマーが、過飽和可溶化VX−950が液体媒体に結晶化して出てくることを阻害するためである。ある好ましい態様において、本ポリマーは、液体懸濁液に製剤された無定形VX−950が、結晶性VX−950になるのを、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間防止することを助けることができる。
【0114】
故に、他の態様において、医薬組成物は、液体媒体中に包含された、セルロース誘導体ポリマーまたはPVPのようなポリマーを含む。液体分散体製剤中の適当なポリマーの例は、上で固体分散体での使用について記載したものを含む。HPMCは、結晶化を阻害するポリマーとして当業者には既知である(例えば、US2004/0030151参照)。
【0115】
ある好ましい態様において、1個以上のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)ポリマーが、固体分散体の懸濁に使用する液体媒体中に存在する。例えば、HPMC E50が、液体媒体中に、約10重量%未満(例えば、約7重量%、約5重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%、約0.5重量%、約0.25重量%、約0.1重量%、または約0.05重量%)の量で存在する。ある好ましい態様において、本液体媒体は、約0.1%から約5重量%、例えば約0.2%から約3重量%、好ましくは約0.5%から約1.5重量%、例えば、約1重量%で存在するHPMCポリマーを含む。あるより好ましい態様において、本液体媒体は、HPMCAS、例えば約10重量%未満(約7重量%、約5重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%、約0.5重量%、約0.25重量%、約0.1重量%、または約0.05重量%)のHPMCASを含む。ある好ましい態様において、本液体媒体は、約0.1%から約5重量%、例えば約0.2%から約3重量%、好ましくは約0.5%から約1.5重量%、例えば、約1重量%で存在するHPMCASポリマーを含む。
【0116】
ある態様において、本液体媒体は界面活性剤を含む。このような界面活性剤は、ここに記載の本固体分散体について記載した通りである(例えば、Span 65、Span 25、Tween 20、Capryol 90、Pluronic F108、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、およびビタミンE TPGS)。液体媒体に含まれる界面活性剤の量は、界面活性剤の化学的性質を含む種々の因子に依存する。界面活性剤は、一般に約0%から約20重量%(例えば、約14重量%、約13重量%、約12重量%、約11重量%、約10重量%、約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、約1重量%、またはそれ未満)の量で存在する。ある好ましい態様において、本界面活性剤はシメチコン(好ましくは約0.002重量%の量)、SLS(例えば、約0.25%から約5重量%、好ましくは約1重量%)、またはビタミンE TPGS(例えば、約0.1%から約20重量%、好ましくは約5%から約10重量%)である。シメチコンは、主として泡立ちを減少させるために添加する。
【0117】
本発明の組成物および方法は、所望により1個以上の賦形剤を含み得る(USP6,720,003、US2004/0030151、および/またはWO99/02542参照)。賦形剤は、投与形態中で担体または媒体として使用する、または医薬組成物に取り扱い、貯蔵、または投与形態の製造の改善のために添加する物質である。賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、接着剤、湿潤剤、滑剤、流動促進剤、結晶化阻害剤、界面修飾剤、不快な味または臭いをマスクするまたは中和する薬剤、香味剤、着色剤、芳香剤、増量剤、結合剤、安定化剤および組成物の見かけを改善するための物質を含むが、これらに限定されない。
【0118】
VX−950の無定形形態、またはそれらの分散体または組成物を含む製剤の、哺乳動物への投与に適当な投与形態への製造法もここに含まれる。好ましくは、本製剤は、ここに記載の通りに製造した固体分散体を含む。
【0119】
従って、他の本発明の態様は、VX−950、または薬学的に許容されるその塩を含む組成物を提供する。好ましい態様によって、VX−950は、サンプル中または患者中のウイルス量を(例えば、ウイルスの血漿濃度を少なくとも約3ログ(log)、少なくとも約4ログ、または少なくとも約5ログ)減少させるのに有効な量で薬学的に許容される担体と共に存在する。あるいは、本発明の組成物は、ここに記載の通りの他の付加的薬剤(例えば、CYP阻害剤)を含む。各成分は、個々の組成物、組合せ組成物、または単独組成物中に存在し得る。
【0120】
本明細書で使用する用語“含む”は、制限なしであることを意図し、故に、明記した薬剤に加えて、他の薬剤を含む可能性を示唆する。
【0121】
本明細書で使用するVX−950を含む本発明の化合物は、その薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグを含むと定義する。“薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ”は、受け手に投与したら、(直接的または間接的)に本発明の化合物を提供できる、全ての薬学的に許容される塩、エステル、エステルの塩、または本発明の化合物の他の誘導体(例えばアミドのイミデートエステル)を意味する。特に好適な誘導体およびプロドラッグは、そのような化合物を、哺乳動物に投与したときに本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増加させる(例えば、経口投与した化合物をより容易に血中に吸収させることにより)、または親化合物と比較して、親化合物の生物学的区画(例えば、肝臓、脳またはリンパ系)への送達を促進させるものである。好ましいプロドラッグは、水溶性を高めるかまたは腸膜を介した能動的輸送を促進する基が、ここに記載の構造式に付加された誘導体を含む。
【0122】
本発明の組成物および方法で使用するVX−950は、選択的生物学的特性を高めるために適当な官能基を付加することによりまた修飾し得る。このような修飾は当分野で既知であり、一定の生物学的系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を高める、経口利用能を高める、注射による投与を可能にするために溶解度を高める、代謝を変えるおよび排泄速度を変えるものを含む。
【0123】
これらの組成物中で使用できる薬学的に許容される担体は、イオン交換体、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、ホスフェートのような緩衝材、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含むが、これらに限定されない。
【0124】
本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、ピル、粉末、顆粒、水性懸濁液または溶液を含むが、これらに限定されない任意の経口で許容される投与形態で経口投与できる。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体は、ラクトース、微晶性セルロース、マンニトール、第2リン酸カルシウム、炭酸カルシウムおよびコーンデンプンを含むが、これらに限定されない。ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムステアリルフマレート、またはステアリン酸のような滑剤も典型的に添加される。他の成分は、クロスカルメロールナトリウムまたはナトリウムデンプングリコラートのような崩壊剤、コロイド状シリカのような流動助剤、ならびにSLSのような界面活性剤を含み得、そしてビタミンEを含み得る。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤はラクトース、微晶性セルロース、マンニトール、第2リン酸カルシウム、炭酸カルシウムおよび乾燥コーンデンプンを含む。上記の錠剤製剤と同様、カプセル製剤も滑剤、崩壊剤、界面活性剤、または流動助剤を含み得る。ある態様において、錠剤をフィルムでコートする。水性懸濁液が経口使用のために必要であるとき、活性成分を乳化または懸濁化剤と合わせる。所望により、ある種の甘味剤、香味剤または着色剤も添加できる。許容される液体投与形態は、エマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤を含む。
【0125】
好ましい態様によって、本発明の組成物は、哺乳動物、好ましくはヒトへの医薬投与のために製剤する。ここに提供されるVX−950の形態および分散体は、好ましくは経口投与用に製剤するが、他の製剤を得ることができる。
【0126】
他の医薬本発明の組成物(ならびに、本発明の方法、組合せ剤、キットおよび包装物で使用する組成物)を、経口で、非経腸的に、舌下に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸に、鼻腔内に、頬側に、膣内にまたはインプラントされた貯蔵部を介して投与できる。本明細書で使用する用語“非経腸”は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、大槽内、くも膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または輸液技術を含む。好ましくは、本組成物は経口でまたは静脈内で投与する。
【0127】
約0.01から約100mg/体重kg/日、好ましくは約10から約100mg/体重kg/日のVX−950の投与量レベルが、HCV介在疾患の予防および処置に有用である。ある態様において、ヒトあたり約0.4から約10g/日、例えば約1から約4g/日、好ましくは約2から約3.5g/日である(約70kgと計算したヒトの平均サイズに基づいて)の投与量レベルが含まれる。典型的に、本発明のおよび本発明に従う医薬組成物は、約1から約5回/日、好ましくは約1から約3回/日、またはあるいは、連続輸液として投与する。ある態様において、VX−950は、制御放出製剤を使用して投与する。ある態様において、これは、VX−950の相対的に安定な血中濃度の維持を助けることができる。
【0128】
このような投与は、慢性または急性治療として使用できる。単一の投与形態を製造するために担体物質と組み合わせるべき活性成分の量は、処置する宿主および特定の投与形態に依存して変化する。典型的な製剤は、約5%から約95%活性化合物(w/w)を含む。好ましくは、このような製剤は、約20%から約80%活性化合物を含む。
【0129】
本発明の組成物または方法が、VX−950と1個以上の付加的治療剤もしくは予防剤との組合せ剤を含むとき、本化合物および本付加的薬剤の両方とも、単剤療法レジメンにおいて通常使用される投与量の約10から100%、およびより好ましくは約10から80%の投与量レベルで存在すべきである。
【0130】
患者の状態が改善すれば、本発明の化合物、組成物または組合せ剤の維持量を、必要であれば投与できる。その後、投与量または投与頻度、または両方を、例えば、症状の関数として、改善された状態が維持されるレベルまで、約1/2または1/4またはそれ未満の投与量または投与頻度まで減少でき、症状が所望のレベルまで改善したとき、処置は止めるべきである。患者は、しかしながら、疾患症状の何らかの再発に基づいて、長期に断続的処置を必要とするかもしれない。
【0131】
任意の特定の患者のための具体的投与量および処置レジメンは、用いる特異的化合物の活性、年齢、体重、一般的健康、性別、食事、投与の時間、排泄速度、薬剤組合せ、および処置医の判断ならびに、処置している特定の疾患の重症度を含む、種々の因子に依存する。活性成分の量も特定の記載の化合物および組成物中への付加的抗ウイルス剤の存在または非存在もしくはその性質に依存する。
【0132】
本発明はまた、ここに記載のいずれかの態様に従う無定形VX−950、固体分散体、または医薬組成物を含む、医薬包装物およびキットを提供する。
【0133】
本発明は、患者に本医薬組成物を投与することを含む、患者におけるC型肝炎ウイルス感染の処置または予防法を提供する。本医薬組成物は、本発明に従うVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または任意の組成物を含む。
【0134】
他の態様によって、本発明はウイルスのライフ・サイクルに必須であるウイルス性にコードされたNS3/4Aセリンプロテアーゼにより特徴付けられるウイルス、例えば、HCVに感染した患者の処置法であって、該患者に、本発明に従うVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または組成物を投与することを含む方法を提供する。好ましくは、本発明の方法は、HCV感染に罹患している患者の処置に使用する。このような処置は、ウイルス感染の撲滅またはその重症度の低下を含む。より好ましくは、本患者はヒトである。
【0135】
さらに別の態様において、本発明は、患者への投与を意図された生物学的物質の前処置法であって、該生物学的物質と、本発明の化合物を含む薬学的に許容される組成物を摂食させる段階を含む方法を提供する。このような生物学的物質は、血液および血漿、血小板、血液細胞の下位集団などのようなその成分;腎臓、肝臓、心臓、肺などの臓器;精子および卵子;骨髄およびその成分、ならびに食塩水、デキストロースなどのような患者へ注入される他の流体を含むが、これらに限定されない。ある態様において、VX−950を、患者へ挿入されるデバイス上またはデバイス中に置き得る。
【0136】
医薬組成物は、患者に、1回以上の用量、および好ましくは処置の全コースを、1個の包装物(例えば、ブリスターパック)中に含む、“患者包装物”としても処方され得る。患者包装物は、薬剤師が大きな供給物から患者への供給物を分けていた従来法よりも、患者が、患者包装物中に含まれる、従来の処方では通常存在しない添付文書を常に利用できる点で有利である。添付文書の包含は、医師の指示に対する患者コンプライアンスを改善することが示されている。好ましくは本薬剤は経口投与形態である。
【0137】
添付文書内に患者に対する本発明の正しい使用法の指示が含まれる、単一の患者包装物、または各製剤の患者包装物の手段による本発明の組合せ剤の投与は、本発明の望ましいさらなる特徴であることは理解すべきである。
【0138】
本発明のさらなる局面により、包装物は、少なくとも本発明に従うVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または任意の組成物および本発明の組合せ剤の使用指示を含む添付文書を含む。別の本発明の態様において、本医薬包装物は、上記の通りの1個以上の付加的薬剤をさらに含む。本付加的薬剤(複数もある)は、同じ包装物または別の包装物中に提供され得る。
【0139】
この他の局面は、HCVの阻害のための、またはHCV感染の処置またはHCV感染の予防において使用するための患者のための:各医薬成分の1個または複数の医薬製剤;貯蔵中および投与前に医薬製剤(複数もある)を入れるための容器;およびHCV感染の処置または予防に有効な方法で薬剤投与を行うための指示書を含む、包装されたキットを含む。好ましくは本薬剤は経口投与形態である。
【0140】
従って、本発明は、VX−950(および所望により付加的薬剤)またはその誘導体の同時のまたは別々の投与用のキットを提供し、慣用法で製造する。典型的に、このようなキットは、例えば、薬学的に許容される担体中(および1個または複数の医薬製剤中)の各阻害剤および所望により付加的薬剤(複数もある)の組成物および同時または連続的投与のための指示書を含む。好ましくは本薬剤は経口投与形態である。
【0141】
他の態様において、包装されたキットは、自己投与用の1個以上の投与形態(好ましくは経口投与形態);貯蔵中および投与前に本投与形態を入れるための、好ましくは密閉された容器;および薬剤投与を行うための患者用指示書を含んで提供される。本指示書は、典型的に添付文書中、ラベル、および/またはキットの他の成分上の印刷された指示であり、そして本投与形態(複数もある)はここに記載の通りである。各投与形態は、各投与形態が個々のセルまたは泡で他のものから離されている金属ホイル−プラスチックラミネートのシート中に個々に入れてよく、または本投与形態は、プラスチックビンまたはバイアルにおける通り1個の容器に入れてよい。本キットはまた典型的に個々のキット成分、すなわち、本投与形態、本コンテナ、および本使用指示書を包装するための手段も含む。このような包装手段は、厚紙または紙箱、プラスチックまたはホイル小袋などの形を取り得る。
【0142】
本発明の態様はまた付加的薬剤を含み得る。故に、本発明の方法は、このような付加的薬剤を投与する段階も含み得る。
【0143】
組合せ治療
本発明の方法は、免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVプロテアーゼ阻害剤;HCVライフ・サイクルにおける他の標的の阻害剤;内部リボソーム侵入阻害剤、広域ウイルス阻害剤;他のチトクロームP−450阻害剤;またはこれらの組合せから選択される付加的薬剤を含む、他の成分の投与も含み得る。
【0144】
従って、他の態様において、本発明は、本発明に従うVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または任意の組成物、CYP阻害剤、および他の抗ウイルス剤、好ましくは抗HCV剤の投与を含む方法を提供する。このような抗ウイルス剤は、α−、β−、およびγ−インターフェロン、ペグ化誘導体化インターフェロン−α化合物、およびチモシンのような免疫調節剤;リバビリン、アマンタジン、およびテルビブジンのような他の抗ウイルス剤;C型肝炎プロテアーゼの他の阻害剤(NS2−NS3阻害剤およびNS3/NS4A阻害剤);ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、およびメタロプロテイナーゼ阻害剤を含むHCVライフ・サイクルにおける他の標的の阻害剤;内部リボソーム侵入阻害剤;IMPDH阻害剤のような広域ウイルス阻害剤(例えば、米国特許5,807,876、6,498,178、6,344,465、6,054,472、WO97/40028、WO98/40381、WO00/56331の化合物、およびミコフェノール酸およびVX−497、VX−148、および/またはVX−944を含むがそれらに限定されないその誘導体);または上記の任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0145】
各薬剤は、別々の投与形態に製剤できる。あるいは、患者に投与する投与形態の数を減らすために、各薬剤を任意の組合せで一緒に製剤できる。例えば、本VX−950を1個の投与形態に製剤し、任意の付加的薬剤を一緒にまたは他の投与形態に製剤できる。VX−950は、例えば、付加的薬剤投与の前、後、またはその間に投与できる。
【0146】
本発明の方法はまた、チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤の投与の段階を含み得る。CYP阻害剤は、CYPにより阻害される化合物(例えば、VX−950)の肝臓濃度の増加および/または血中濃度の増加に有用であり得る。
【0147】
薬剤の薬物動力学の(例えば、CYP阻害剤投与による)改善の利点は、当分野で十分認められている。CYP阻害剤の投与により、本発明は、プロテアーゼ阻害剤、VX−950の減少した代謝のために提供する。本プロテアーゼ阻害剤の薬物動力学は、故に改善される。薬剤の薬物動力学の改善の利点は、当分野で十分認められている。このような改善は、本プロテアーゼ阻害剤の血中濃度の増加に至る。HCV治療のためにより重要なことに、この改善は、肝臓におけるプロテアーゼ阻害剤の濃度の増加に至り得る。
【0148】
本発明の方法において、投与するCYP阻害剤の量は、このプロテアーゼ阻害剤をCYP阻害剤なしに投与したときの血中濃度と比較して、本VX−950の血中濃度を有意に上昇させるのに十分である。有利なことに、本発明の方法において、プロテアーゼ阻害剤のさらにより低い量が、故に使用できる(プロテアーゼ阻害剤単独投与と比較して)。
【0149】
従って、他の本発明の態様は、VX−950を受けている患者におけるVX−950の血中濃度を増加させるまたは肝臓濃度を増加させるための方法であって、本患者に治療的有効量のVX−950およびチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤を投与する方法を提供する。
【0150】
C型肝炎に感染した患者の処置に加えて、本発明の方法は、患者がC型肝炎に感染するのを予防するために使用できる。従って、本発明の一つの態様は、患者におけるC型肝炎ウイルス感染の予防法であって、患者にa)本発明に従うVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または任意の組成物;およびb)チトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0151】
当業者には認識される通り、本発明の方法を患者の予防的処置に使用し、そしてその患者がC型肝炎ウイルスに感染したとき、本方法は、感染を処置し得る。故に、本発明の一つの態様は、本発明に従うVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または任意の組成物およびチトクロームP450モノオキシゲナーゼ阻害剤(ここで、阻害剤の組合せ剤は、患者におけるC型肝炎感染の処置または予防に治療的有効量である)を提供する。
【0152】
本発明の態様がCYP阻害剤を含むとき、VX−950の薬物動力学を改善する全てのCYP阻害剤を本発明の方法において使用できる。これらのCYP阻害剤は、リトナビル(WO94/14436)、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、クロメチアゾール、シメチジン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、フルボキサミン、フルオキセチン、ネファゾドン、セルトラリン、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、フォサンプレナビル、サキナビル、ロピナビル、デラビルジン、エリスロマイシン、VX−944およびVX−497を含むが、これらに限定されない。好ましいCYP阻害剤はリトナビル、ケトコナゾール、トロレアンドマイシン、4−メチルピラゾール、シクロスポリン、およびクロメチアゾールを含む。リトナビルの好ましい投与形態について、米国特許6,037、157、およびその中に引用されている文献:米国特許5,484,801、米国特許出願08/402,690、および国際出願WO95/07696およびWO95/09614参照。
【0153】
VX−944の構造式を下記に提供する。
【化2】

【0154】
VX−497はIMPDH阻害剤である。VX−497、ペグ化IFN−α、およびリバビリンの組合せ剤が、現在HCV処置のために臨床開発されている[W. Markland et al., Antimicrobial & Antiviral Chemotherapy, 44, p. 859 (2000);米国特許6,541,496]。
【化3】

【0155】
化合物がチトクロームP50モノオキシゲナーゼ活性を阻害する能力の測定法は既知である(US6,037,157およびYun, et al. Drug Metabolism & Disposition, vol. 21, pp. 403-407 (1993)参照)。
【0156】
本発明で用いるCYP阻害剤は、アイソザイムの1個のみまたは1個以上のアイソザイムの阻害剤であり得る。CYP阻害剤が1個以上のアイソザイムを阻害するでも、本阻害剤は、1個のアイソザイムを他のアイソザイムよりも選択的に阻害し得る。全てのこのようなCYP阻害剤を本発明の方法において使用できる。
【0157】
本発明の方法において、本CYP阻害剤は、本発明に従うVX−950の任意の形態、任意の固体分散体、または任意の組成物と共に、同じ投与形態中または別々の投与形態で投与できる。
【0158】
CYP阻害剤および組合せ剤中の他の成分を別々の投与形態で投与するとき、各阻害剤をほぼ同時に投与できる。あるいは、本CYP阻害剤を、組合せ剤の投与周辺の任意の時点で投与できる。すなわち、本CYP阻害剤を、組合せ剤の各成文の投与前に、一緒にまたは後に投与できる。投与時間は、CYP阻害剤が組合せ剤の成分の、好ましくは、VX−950の代謝に影響するようなものでなければならない。例えば、VX−950を最初に投与したとき、本CYP阻害剤を、VX−950が実質的に代謝および/または排泄される前に投与すべきである(例えば、VX−950の半減期以内)。
【0159】
本発明をより完全に理解するために、下記実施例を記載する・これらの実施例は説明のみの目的であり、本発明の範囲をいかなる意味でも限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0160】
VX−950は、一般に当業者に既知の方法で製造できる(例えば、WO02/18369参照)。HCV阻害は、既知方法に従ったHCVアッセイで試験できる。
【0161】
実施例1
下記成分を含む固体分散体を製造した(総重量のパーセンテージ):
【表1】

本組成物1を、VX−950、HPMC、およびSLSをメタノール:塩化メチレン(1:1)に溶解し、続いて真空下回転蒸発を使用して溶媒を蒸発させることにより製造した。本生成物を、平均粒子サイズ約200μmの粒子まで挽いた。
【0162】
実施例2
下記成分を含む固体分散体を製造した(総重量のパーセンテージ):
【表2】

本組成物2を、VX−950およびHPCを塩化メチレンに溶解することにより製造した。SLSを該溶液に懸濁させた。次いで、溶媒を真空下回転蒸発により除去した。本生成物を、平均粒子サイズ約200μmの粒子まで挽いた。
【0163】
実施例3
下記成分を含む固体分散体を製造した(総重量のパーセンテージ):
【表3】

本組成物3を、メタノール:塩化メチレン中にVX−950、PVP K30を溶解し、SLSを懸濁させ、その後、溶媒除去のために噴霧乾燥して製造した。本生成物の平均粒子サイズは約150μmである。
【0164】
実施例4
下記成分を含む固体分散体を製造した(総重量のパーセンテージ):
【表4】

本組成物4を実施例3と同様の方法を使用して製造した。本生成物の平均粒子サイズは約150μmである。
【0165】
他のタイプのポリマーおよび界面活性剤も試験した(下記実施例参照)。VX−950対ポリマーの比率および界面活性剤の量も種々のアッセイで試験した(下記実施例参照)。
【0166】
実施例5
VX−950の種々の組成物をラット薬物動力学(PK)アッセイにおいて試験した。
【表5】

【0167】
実施例6
VX−950の種々の組成物をイヌ薬物動力学アッセイにおいて試験した。本試験において、試験したVX−950化合物は、L:D異性体の60:40(+/−5%)混合物であった。
【表6】

【0168】
実施例7
種々の組成物の物理的安定性を試験した。結果は、下記表2にある。
【表7】

【0169】
実施例8
種々の組成物のキラル安定性を試験した。結果は下記表3にある。
【表8】

【0170】
実施例9
種々の組成物の溶解度を試験した。結果は下記表4にある。
【表9】

【0171】
実施例10
VX−950固体分散体の見かけの溶解度に対するSLS濃度の影響を試験した。結果は下記表5にある。
【表10】

【0172】
実施例11
経口投与製剤を下記の通り製造した。VX−950およびPVP K29/32を塩化メチレンに溶解し、次いでラウリル硫酸ナトリウムを添加し、溶液中で分散させて均質懸濁液を形成させた。この懸濁液を、90℃の入口温度および56℃の出口温度を使用して噴霧乾燥し、生成物をサイクロンから回収した。本噴霧乾燥分散体を、75℃で8時間流動床乾燥させた。
【表11】

【0173】
本固体分散体を1%HPMC、0.002%シメチコン溶液にスチール製回転混合機を使用して懸濁させた。得られた懸濁液は、0.8−50mg/ml VX−950濃度で少なくとも24時間物理的および化学的に安定である。本粉末を次いで懸濁させ、下記表に記載の通りに24時間以内に調薬する。
【0174】
【表12】

【0175】
実施例12
1回投与量ガラスバイアル中の1%HPMC媒体と混合した分散体を調薬した。バイアルに残った固体残渣は0.8%−4%であり、シリンジ中で水と混合して調薬したときの28%−56%と対照的であった(下記1月20日調薬)。分散体調薬は:VX950/PVPK−30/SLS(tox. lot、リフレッシュ)、VX950/HPMCAS/SLS/SDBS(5%PVPK−30含有結晶性DSから出発して、ISPで噴霧乾燥)、VX950/HPMC E15/10%Vit E TPGS、VX950/PVP−VA/10%Vit E TPGSであった。これらの試験の結果は下記に示す。
【表13】

【0176】
上記表および図2に見られる通り、HPMC E−15/10%Vit ETPGS は最大Cmaxおよび%Fを有した(図2)。PVP−VA/10%Vit ETPGS は2番目に高いCmaxおよび%Fを有した。HPMCASは、幾分持続放出プロフィールを示し、CmaxはPVPK−30リフレッシュ分散体と同等であり、%FはPVP−VAと同等であった。
【0177】
実施例13
3製剤を、SD Micro噴霧乾燥機(100g)で製造した。最初の2製剤は同じ成分であるが、アセトン濃度が異なった。3番目の製剤は、HPCおよびHPMCフタレート(2:1)のポリマー混合物であった。全3製剤は1%SLSおよび1%SDBSならびに5%PVPK−30を有する薬剤物質を含んだ。
【0178】
ポリマーの溶解は均質化を必要とし、全3製剤とも非常に容易に噴霧乾燥した。全製剤とも製造後に検出可能な残留溶媒を含んだが、両方の溶媒ともオーブン乾燥(60℃)で容易に除去された。アセトンの添加は、塩化メチレンの最初の含量を低下させるように見えた。残留溶媒レベルを下記に要約する。
【表14】

【0179】
実施例14
HPMCE 50/1%SLSを含む液体分散体を、下記の通りの室温または冷蔵条件下、数種の媒体中の懸濁液として、広範に調査した:
1. 1%HPMC媒体と、種々のレベルのVit E TPGS、3mg/mLのVX950濃度。
【0180】
0.067%、1%、5%、および10%Vit E TPGS含有懸濁液中のHPMC E50/1%SLS分散体の溶解度および物理的安定性を、実際の毒性試験における投薬(b.i.d. 投薬、8−12時間間隔)と類似のいくつかの方法に従い、HPLCおよびXRDを使用して評価した。
【0181】
方法1:RTで懸濁液を製造し、貯蔵し、1、3、24、48時間に評価した(3時間撹拌、次いで、24時間の時点まで撹拌せずに貯蔵し、その時点でサンプル回収前に15分撹拌した)。
【0182】
方法2:懸濁液をRTで製造したが、3時間後5℃で撹拌せずに貯蔵した。24時間の時点で、サンプル回収前に懸濁液を5℃(氷中)で撹拌した。
【0183】
方法3:懸濁液をRTで製造したが、3時間後5℃で撹拌せずに貯蔵した。24時間の時点で、サンプル回収前に懸濁液を15分、RT(温めた)で撹拌した。
【0184】
方法4:10%Vit E TPGS含有媒体についてのみ評価した。懸濁液を5℃で製造および貯蔵し、1、3、24、48時間に評価した(3時間撹拌、次いで、24時間の時点まで撹拌せずに貯蔵し、その時点でサンプル回収前に氷中で15分撹拌した)
上記の全てについて、人工腸液(SIF)における37℃での動的溶解度を、製造1時間後、および上記の条件下貯蔵24時間後に評価した。
【0185】
結果:
A. 1%HPMC媒体中のVit E TPGS濃度の懸濁液溶解度に対する影響を、異なる評価/貯蔵法について図3−6に証明する。
【0186】
・方法1:溶解度は%Vit E TPGSの関数として上昇する(1および3時間目)。溶解度の有意な減少が、最高濃度のVit E TPGS(10%および5%)の懸濁液で1時間後に胃管殺されるが、実際の溶解度値は高い600−700μg/mLのままである。24−48時間乾燥させた回収した固体残渣は、幾分結晶性を示した。溶解度のわずかな減少ならびにわずかな結晶性が1%Vit E TPGS含有懸濁液で見られた。0.067%Vit E TPGS濃度では溶解度の減少は見られず、固体残渣は無定形であった。
【0187】
・方法2:溶解度の減少(変化)は、いずれのVit E TPGS濃度でも観察されなかった。
【0188】
・方法3(加温):溶解度の減少(低下)は、いずれのVit E TPGS濃度でも観察されず、値は方法2と同等であった。
【0189】
・方法4:1および3時間目に、おそらく、低温での遅い拡散/高い粘性のため、溶解度は方法2と比較して低かった(すなわち5℃で製造対RTで製造)。溶解度の減少は48時間まで観察されず、値は、24時間後まで方法2と同等であった。
【0190】
B. 1%HPMC媒体中のVit E TPGS濃度の、37℃でのSIF中の懸濁液における動的溶解度に対する影響を、異なる評価/貯蔵法について図7−9に証明する(50mL SIF中、3mg/mL VX950の5mLの懸濁液、37℃)。
【0191】
・方法1、1時間後:溶解度の有意な低下が、1時間後に10%Vit E TPGS濃度で観察され、5%Vit E TPGS濃度では3時間後にわずかな減少が見られるのみである。低濃度(1%および0.067%)では5時間にわたる減少は観察されなかった。比較して、氷上(5℃)で製造し、1時間撹拌した10%Vit E TPGS含有懸濁液は、5時間にわたる溶解度の低下を示さなかったが、しかしながら、実際の溶解度値はRTで製造したものよりも有意に低い。これは、ラットにおける後者の低下した%Fを説明する。
【0192】
・方法1、24時間後:製造し、1時間後に評価した懸濁液と比較して、溶解度/溶解は、1%および5%Vit E TPGS濃度について有意に低い。0.067%懸濁液は。新たに調製した懸濁液(1時間後試験)で観察されるのと同程度の溶解度を示すが、しかしながらわずかに低下した溶解度が2時間後にSIFで観察され、これは新たに調製した懸濁液では観察されなかった。
【0193】
・方法2、24時間:低い%Vit E TPGS(0.067%および1%)を含む懸濁液は、5時間後に溶解度/溶解の減少を示さない点で方法1で観察されたのと類似の結果であり、絶対値も、製造1時間後に試験したものと同じであった。
【0194】
結論:SIF中、37℃での懸濁液溶解度および動的溶解度から、0.067%Vit E TPGS含有懸濁液は、RTまたは5℃のいずれで貯蔵しても性能に変化はなかった(24時間にわたり懸濁液溶解度の減少はなく、新たに調製したおよび24時間経ったサンプルについて5時間にわたる溶解に減少はない)。同様の行動が、1%および5%Vit E TPGS含有懸濁液について、5℃で貯蔵したときのみ(RTで製造)観察された。
【0195】
図10は、媒体中10%Vit E TPGS含有懸濁液の全4種の評価/貯蔵法について、SIF(37℃)での動的溶解度を比較する。評価前にRTに温めても温めなくても5℃で貯蔵した24時間経ったサンプルについて、37℃でSIF中の動的溶解度の漸進的な減少が5時間にわたり観察された。5℃で製造した懸濁液は、おそらく、5℃で貯蔵中の継続する溶解のため、製造後1時間で評価したとき、24時間と比較してSIFにおける低い溶解/溶解度を示した。
【0196】
全ての引用文献は、参照により本明細書に包含する。
多くの本発明の態様を記載している。それにも係わらず、種々の修飾が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなし得ることは、理解される。従って、他の態様は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】図1は、種々のVX−950組成物間の比較を記載する。
【図2】図2は、VX−950を含む種々の組成物間のラットpKの比較を記載する。
【図3】図3は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての安定性データの比較を記載する。
【図4】図4は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての安定性データの比較を記載する。
【図5】図5は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての安定性データの比較を記載する。
【図6】図6は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての安定性データの比較を記載する。
【図7】図7は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての動的溶解度データの比較を記載する。
【図8】図8は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての動的溶解度データの比較を記載する。
【図9】図9は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての動的溶解度データの比較を記載する。
【図10】図10は、VX−950およびビタミンE TPGSを含む種々の懸濁液についての動的溶解度データの比較を記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無定形VX−950および第二成分を含む、組成物。
【請求項2】
第二成分が界面活性剤、ポリマー、または不活性な薬学的に許容される物質である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該組成物が固体分散体、混合物または液体分散体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該組成物が固体である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
無定形VX−950を含む、固体分散体。
【請求項6】
該固体分散体が約40%未満の結晶性VX−950を含む、請求項5記載の固体分散体。
【請求項7】
該固体分散体が、実質的に結晶性VX−950を含まない、請求項5記載の固体分散体。
【請求項8】
界面活性剤、ポリマー、または不活性な薬学的に許容される物質をさらに含む、請求項5記載の固体分散体。
【請求項9】
ポリマーを含み、該ポリマーが1個または1個以上の水溶性ポリマーまたは部分的に水溶性ポリマーである、請求項5記載の固体分散体。
【請求項10】
該VX−950が、ポリマーの非存在下で、無定形VX−950と比較して改善された物理的または化学的安定性を有する、請求項5記載の固体分散体。
【請求項11】
固体分散体がそのままの(neat)無定形VX−950のガラス遷移温度と比較して高いガラス遷移温度を有する、請求項5記載の固体分散体。
【請求項12】
該VX−950が、そのままの無定形VX−950の緩和率と比較して低い緩和率を有する、請求項5記載の固体分散体。
【請求項13】
ポリマーを含み、該ポリマーが、固体分散体の投与後、ラットの血中のVX−950濃度が、ポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも少なくとも約20%高くなるのに十分な量で存在する、請求項5記載の固体分散体。
【請求項14】
対象ラットにおける血中のVX−950濃度が、ポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも少なくとも約200%高い、請求項13記載の固体分散体。
【請求項15】
対象ラットにおける血中のVX−950濃度が、ポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも少なくとも約400%高い、請求項13記載の固体分散体。
【請求項16】
該ポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である、請求項5記載の固体分散体。
【請求項17】
該ポリマーが酢酸・コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)である、請求項5記載の固体分散体。
【請求項18】
該ポリマーが約10重量%から約80重量%の量で存在する、請求項5記載の固体分散体。
【請求項19】
該ポリマーが約70重量%の量で存在する、請求項18記載の固体分散体。
【請求項20】
該ポリマーが約50重量%の量で存在する、請求項18記載の固体分散体。
【請求項21】
該ポリマーが約49.5重量%の量で存在する、請求項18記載の固体分散体。
【請求項22】
該VX−950が約10重量%から約80重量%の量で存在する、請求項5記載の固体分散体。
【請求項23】
該VX−950が約70重量%の量で存在する、請求項22記載の固体分散体。
【請求項24】
該VX−950が約50重量%の量で存在する、請求項22記載の固体分散体。
【請求項25】
界面活性剤を含む、請求項5記載の固体分散体。
【請求項26】
該界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSである、請求項25記載の固体分散体。
【請求項27】
界面活性剤が約0.1から約15%の量で存在する、請求項25記載の固体分散体。
【請求項28】
該界面活性剤が約1%から約5%の量で存在する、請求項27記載の固体分散体。
【請求項29】
少なくとも約80重量%の該VX−950が無定形形態である、請求項5記載の固体分散体。
【請求項30】
実質的に全ての該VX−950が無定形形態である、請求項29記載の固体分散体。
【請求項31】
該VX−950がL異性体とD異性体の混合物である、請求項5記載の固体分散体。
【請求項32】
VX−950が実質的に純粋なL異性体である、請求項5記載の固体分散体。
【請求項33】
該固体分散体が噴霧乾燥により得られる、請求項5記載の固体分散体。
【請求項34】
無定形VX−950の医薬組成物。
【請求項35】
該無定形VX−950が、実質的に結晶性VX−950を含まない、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
固体分散体としての無定形VX−950および1個以上の界面活性剤、ポリマー、不活性な薬学的に許容される物質、または薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項37】
ポリマーを含み、該ポリマーが1個または1個以上の水溶性ポリマーまたは部分的に水溶性ポリマーである、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項38】
該VX−950が結晶性VX−950と比較して改善された物理的または化学的安定性を有する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項39】
固体分散体が、そのままの無定形VX−950のガラス遷移温度よりも高いガラス遷移温度を有する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項40】
該VX−950が、そのままの無定形VX−950の緩和率よりも低い緩和率を有する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項41】
ポリマーを含み、該ポリマーが、固体分散体の投与後、ラットの血中のVX−950濃度が、ポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも少なくとも約20%高くなるのに十分な量で存在する、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項42】
対象ラットにおける血中のVX−950濃度が、少なくともポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも約200%高い、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項43】
対象ラットにおける血中のVX−950濃度が、ポリマーを含まないVX−950の投与で見られるよりも少なくとも約400%高い、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項44】
該ポリマーがHPMCである、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項45】
該ポリマーがHPMCASである、請求項36記載の医薬組成物。
【請求項46】
VX−950の無定形固体分散体(ここで、該VX−950は、医薬組成物の約30−75%wt/wtを構成する)、
HPMCおよびHPMCASから成る群から選択される1個以上のポリマー(ここで、該ポリマーは、医薬組成物の約30−75%wt/wtを構成する)、および
界面活性剤(ここで、該界面活性剤は、医薬組成物の約0.5−2%wt/wtを構成する)
を含む、医薬組成物。
【請求項47】
該ポリマーがHPMCである、請求項46記載の医薬組成物。
【請求項48】
該ポリマーがHPMCASである、請求項46記載の医薬組成物。
【請求項49】
該界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSである、請求項46記載の医薬組成物。
【請求項50】
該VX−950が医薬組成物の約49.5%wt/wtを構成し、
該ポリマーがHPMCであって、医薬組成物の約49.5%wt/wtを構成し、そして
該界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSであって、医薬組成物の約1%wt/wtを構成する、
請求項46記載の医薬組成物。
【請求項51】
該VX−950が医薬組成物の約49.5%wt/wtを構成し、
該ポリマーがHPMCASであって、医薬組成物の約49.5%wt/wtを構成し、そして
該界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムまたはビタミンE TPGSであって、医薬組成物の約1%wt/wtを構成する、
請求項46記載の医薬組成物。
【請求項52】
医薬組成物の約70%wt/wtのVX−950、
HPMCおよびHPMCASから選択されるポリマー(これは、医薬組成物の約29%wt/wtを構成する)、および
ラウリル硫酸ナトリウムおよびビタミンE TPGSから選択される界面活性剤(これは、医薬組成物の約1%wt/wtを構成する)
を含む、医薬組成物。
【請求項53】
HPMCおよびHPMCASの群から選択される溶液中に無定形VX−950粒子およびポリマーを含む水性懸濁液を含む、医薬組成物。
【請求項54】
該無定形VX−950が固体分散体の形である、請求項53記載の医薬組成物。
【請求項55】
界面活性剤を溶液中に、もしくはVX−950粒子の成分としてまたはその両方でさらに含む、請求項53記載の医薬組成物。
【請求項56】
該界面活性剤がSLSおよびビタミンE TPGSの群から選択される、請求項55記載の医薬組成物。
【請求項57】
該ポリマーが溶液中にあるかもしくはVX−950粒子の成分としてであるか、またはその両方である、請求項53記載の医薬組成物。
【請求項58】
該水性懸濁液が界面活性剤の約0.1%から約20重量%を構成する、請求項53記載の医薬組成物。
【請求項59】
該水性懸濁液が、無定形VX−950を重量で約1mg/mlから約100mg/mlを含む、請求項53記載の医薬組成物。
【請求項60】
該水性懸濁液が約0.1%から約2.0重量%のポリマーを含む、請求項53記載の医薬組成物。
【請求項61】
水性懸濁液が約1重量%のポリマーを含む、請求項60記載の医薬組成物。
【請求項62】
VX−950の無定形形態を提供するためにVX−950の噴霧乾燥を含む、VX−950の無定形形態の製造法。
【請求項63】
VX−950と適当な溶媒を合わせて混合物を形成させ、次いで該混合物を噴霧乾燥してVX−950の無定形形態を得ることを含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
a)VX−950、ポリマー、および溶媒を含む混合物を形成させ;
b)該混合物を噴霧乾燥してVX−950を含む固体分散体を形成させることを含む、
請求項62記載の方法。
【請求項65】
該ポリマーがHPMCおよびHPMCASから選択される、請求項64記載の方法。
【請求項66】
該ポリマーが固体分散体中約30%から約70重量%の量で存在する、請求項64記載の方法。
【請求項67】
該混合物が界面活性剤をさらに含む、請求項62記載の方法。
【請求項68】
該界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウム(SLS)またはビタミンE TPGSである、請求項67記載の方法。
【請求項69】
該溶媒が塩化メチレンを含む、請求項64記載の方法。
【請求項70】
該溶媒がアセトンを含む、請求項64記載の方法。
【請求項71】
該溶媒が約0%から約30%アセトンおよび約70%から約100%塩化メチレンを含む、請求項64記載の方法。
【請求項72】
該溶媒が約0%から約40%アセトンおよび約60%から約100%塩化メチレンを含む、請求項64記載の方法。
【請求項73】
請求項64記載の方法に従い製造された、固体分散体。
【請求項74】
請求項1に記載の無定形VX−950を投与することを含む、哺乳動物におけるC型肝炎ウイルス(HCV)感染の処置法。
【請求項75】
請求項1に記載の固体分散体を投与することを含む、哺乳動物におけるHCV感染の処置法。
【請求項76】
免疫調節剤;抗ウイルス剤;HCVNS3/4Aプロテアーゼの他の阻害剤;IMPDHの他の阻害剤;HCVライフ・サイクルにおけるNS3/4Aプロテアーゼ以外の標的の阻害剤;内部リボソーム侵入阻害剤、広域ウイルス阻害剤;チトクロームP−450阻害剤;またはこれらの組合せから選択される付加的薬剤の投与を含む、請求項75記載の方法。
【請求項77】
請求項5記載の無定形VX−950を含む、医薬包装物またはキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−501802(P2008−501802A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527639(P2007−527639)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/019929
【国際公開番号】WO2005/123076
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】