説明

医薬組成物

本発明は、パクリタキセルをはじめとする有機化合物の小型粒子を調製する方法、および上記方法の結果得られる組成物に関し、上記方法は、(i)有機化合物をエタノールに溶解させ、(ii)該溶液を滅菌し、(iii)該溶液を水と混合して、有機化合物を沈殿させ、かつ(iv)懸濁液を凍結乾燥により乾燥粉末に変換することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物の調製方法、および上記薬物の凍結乾燥形態を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不水溶性薬物の非経口製剤は、製薬分野において困難な課題である。非経口投与用として一般的に安全と考えられている賦形剤を用いて不水溶性薬物を可溶化することは、複雑な問題である。とりわけ、溶解度を向上させる従来手段が必ずしも適しているとは限らないためである。薬物の溶液形態に付随する安定性の問題のため、再構成用の投薬形態で提供される必要のある薬物にとって、これはより大きな問題である。薬物の再構成は、投与を簡略化するため、最小の労力で、かつ、なし得る最小の時間で提供されるべきである。再構成時に形成される溶液は、透明で、粒子を含まず、物理的かつ化学的に安定しているべきであり、さらに、安全かつ有効であるべきである。これらの目標を達成することは処方者にとって課題である。
【0003】
不水溶性薬物の溶解度を改良するために様々な技法が用いられてきた。例えば、最も一般的な技法は、液体媒質との相互作用に使用できる表面積を増やすための薬物のサイズリダクションの技法である。サイズリダクションは、従来の方法、例えば磨砕、粉砕(液体媒体を含むまたは含まない)、非溶媒への沈殿等を用いて行ってもよい。しかしながら、これらの磨砕した粒子は通常、時間とともに凝集する傾向があり、その結果、溶解または分散させることの困難な凝集体を形成する。この問題は、細かく砕いた薬物の表面に、その大きさが縮小した直後に表面安定剤を吸着させること、または、適した表面安定剤の存在下で粒径の縮小を行うことにより処理されてきた。これにより、粒子が塊となって大きな凝集体とならないことが確保される。かかる技法の典型的な例は、米国特許第4,107,288号、同第4,880,623号、同第5,202,129号、同第4,329,332号、同第5,560,932号、同第5,662,883号、同第5,510,118号などに開示されている。しかしながら、表面安定剤の使用は、非経口製剤には適さない可能性がある。また、この方法は両極を要し時間がかかる。薬物の可溶性はサイズリダクションで改良されるかもしれないが、薬物を可溶化または再構成するために必要な時間は、依然として問題でありうる。
【0004】
さらに、一部の薬物に関して、従来の技法を用いるサイズリダクションは、薬物の処方中に溶媒または水と接触すると、望ましくない着色の発生、化学分解などの安定性の問題が起こりうるような形で結晶格子を破砕させることが観察されている。
【0005】
フリーズドライまたは凍結乾燥により急速分散性または可溶性の凍結乾燥形態の水溶性薬物を形成することは当技術分野において常識である。この際、薬物は水性媒体に溶解され、溶液は凍結されて高真空に供され、それにより氷は直接蒸気に変換され(昇華)、即時に再構成され、綿毛のような(fluffy)塊が残る。しかしながら、不水溶性薬物は、この方法に従わない。この方法は、Niらにより、水をt−ブタノールに置換することにより適用された。
【0006】
インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics)、第226巻(2001年)、39〜46頁において、Niらは抗腫瘍薬物、SarCNUの静脈注射を開示している。ここで、SarCNUはニートなt−ブタノール中で凍結乾燥されて、針状の結晶の均質なケーキが得られている。この論文には、たった0.001%または10ppmのt−ブタノールが凍結乾燥したケーキの状態において残存することが開示されている。しかしながら、本発明者らが、Niらに詳述される凍結乾燥サイクルを用いて、ドセタキセル、パクリタキセルおよびシクロスポリンなどの他の薬物とt−ブタノールの凍結乾燥の実験を繰り返した結果、非経口組成物において有害であり得る、多量の残留溶媒が生じた。従って、この方法は一般的に上手くいかなかったが、SarCNUという薬物に対してのみ有効であった。
【0007】
これまで使用されているその他の技法には、薬物に結合しているポリマーの添加が挙げられる。例えば、米国特許出願公開第20050152979号には、疎水性の生理活性物質、つまり前記疎水性活性物質を水溶液中で可溶性にするポリマー、および再構成促進剤を含む凍結乾燥組成物(前記組成物の水溶液中の再構成の時間は、前記促進剤を含まない前記組成物のそれよりも少ない)が開示されている。組成物は、疎水性活性物質、ポリマーおよび1以上の再構成促進剤を精製水中で可溶化し、溶液を凍結乾燥して最終生成物を得ることにより調製される。この凍結乾燥させた生成物は、精製水中、60秒未満で再構成され、再構成促進剤が迅速な再構成の原因であることが見出された。しかし、以前に非経口投薬形態で用いられたことのない新規なポリマーなどの新規な賦形剤の使用には、静脈経路により静脈循環に所望の量のポリマーを直接投与することの安全性および有効性の詳細な調査が必要とされる。
【0008】
凍結乾燥形態の薬物を調製する際のもう一つの懸念は、例えば「用意のできた溶液(ready solution)」であること、分解不純物の少ないこと、および粒子間の凝集または結晶成長によるケーキの形成のないことなどの特性を維持する凍結乾燥形態の能力である。
【0009】
故に、安全性評価を必要とする新規な添加剤または助剤を使用せずに、滅菌液体媒体中で急速に再構成する凍結乾燥形態の不水溶性薬物を調製するための、容易かつ簡略化された方法を提供する必要性がある。さらに、好適な水性の非経口注入溶液(parenteral infusion solution)でさらに希釈する、再構成された溶液は、少なくとも薬物が体液に注入される間の期間は、溶液から沈殿すべきではない。また、安定していて、残留有機溶媒を実質的に含まず、非経口投与に適している、凍結乾燥形態の不水溶性薬物を提供するさらなる必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物の調製方法、および、該凍結乾燥形態の薬物を含む医薬組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、非経口的に許容される適切な媒体中で、便宜にかつ急速に溶液に再構成される、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、非経口的に許容される媒体で再構成されて溶液を形成した後、沈殿せずに水性注入媒体(sterile liquid vehicle)でさらに希釈される、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、安定な凍結乾燥させたドセタキセルを提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を含む滅菌組成物を提供することにある。
【0015】
さらに本発明の目的は、可溶化剤、およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択される溶媒から本質的になる滅菌液体媒体(sterile liquid vehicle)を、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物に添加することにより調製される滅菌組成物を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、第1の容器中の、本発明の方法により調製される安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を含む滅菌組成物と、第2の容器中の、可溶化剤および溶媒から本質的になる滅菌液体媒体とを含む、キットを提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、可溶化剤、およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択される溶媒から本質的になる液体媒体中の、安定な、凍結乾燥した不水溶性薬物の滅菌組成物を含むキットにおける組成物を、水性注入媒体で希釈することを含む方法により調製される注入溶液を提供することである。
【0018】
本発明のなおその他の目的は、当業者には明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一つの態様によれば、非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物の調製方法であって、
a)不水溶性薬物を十分な量のエタノールと混合して上記薬物を溶解させ、
b)溶液を滅菌し、
c)十分な量の滅菌水を添加することにより薬物を沈殿させ、かつ
d)得られた滅菌懸濁液を凍結乾燥させること
を含む方法が提供される。
【0020】
本発明のもう一つの態様によれば、好適な非経口的に許容される媒体中の溶液に便宜にかつ急速に再構成される、安定した凍結乾燥形態の不水溶性薬物が提供される。
【0021】
本発明のもう一つの態様によれば、非経口的に許容される媒体に再構成されて溶液を形成した後、沈殿せずに水性注入媒体でさらに希釈される、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物が提供される。
【0022】
本発明のさらにもう一つの態様によれば、安定な凍結乾燥したドセタキセルが提供される。
【0023】
本発明のもう一つの態様によれば、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を含む滅菌組成物が提供される。
【0024】
本発明のなおさらなる態様によれば、可溶化剤およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択される溶媒から本質的になる滅菌液体媒体を、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物に添加することにより調製される滅菌組成物が提供される。
【0025】
本発明のもう一つの態様によれば、第1の容器中の、本発明の方法により調製される安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を含む滅菌組成物と、第2の容器中の、可溶化剤および溶媒から本質的になる滅菌液体媒体とを含むキットが提供される。
【0026】
本発明のもう一つの態様によれば、可溶化剤、およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択される溶媒から本質的になる液体媒体中の、安定な凍結乾燥させた不水溶性薬物の滅菌組成物を含むキット中の組成物を、水性注入媒体に希釈することを含む方法により調製される注入溶液が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の多くの態様は、以下の図面を参照してより理解することができる。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を明確に説明することに重点を置いている。
【図1】凍結乾燥後の、実施例2で得た乾燥状態のドセタキセルのXRDを示す図である。
【図2】25±2℃、相対湿度60±5%で保存し、3ヶ月で分析した、実施例2で得た乾燥状態のドセタキセルのXRDを示す図である。
【図3】25±2℃、相対湿度60±5%で保存し、6ヶ月で分析した、実施例2で得た乾燥状態のドセタキセルのXRDを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物の調製方法であって、
a)不水溶性薬物を十分な量のエタノールと混合して前記薬物を溶解させ、
b)溶液を滅菌し、
c)十分な量の滅菌水を添加することにより薬物を沈殿させ、かつ
d)そのようにして得た滅菌懸濁液を凍結乾燥に供すること、
を含む方法が提供される。
【0029】
用語「不水溶性薬物」とは、本明細書において、溶解するのが困難な薬物、すなわち、20mgの不水溶性薬物を、520mgのポリソルベート80および0.2mlのエタノールから本質的になる滅菌液体媒体と混合する場合、例えば、バイアル中で混合し、そのバイアルを手動で攪拌する場合、またはバイアル中で混合し、そのバイアルを瓶回転装置中で50rpmにて攪拌する場合、またはバイアル中で混合し、そのバイアルをマルチパルスシェーカー(multipulse shaker)中で50rpmにて攪拌する場合に、透明な溶液(すなわち、目に見える粒子が存在しない)を形成するのに120秒以上要する不水溶性薬物を含む。かかる薬物の例としては、限定されるものではないが、ドセタキセルおよびパクリタキセルなどのタキソイド、フルニソリド、シクロスポリンなどのステロイド、ならびにそれらの製薬上許容される塩、誘導体、類似体および異性体が挙げられる。
【0030】
用語「凍結乾燥形態」とは、本明細書において、添加した賦形剤がなく、非経口投与に適した滅菌液体媒体中の溶液に即時に再構成される、不水溶性薬物の形態をさす。即時の溶液への再構成は、「凍結乾燥形態」が透明な溶液を形成するのに120秒未満を要することを除いて、上記と同じ試験を用いて試験することができる。
【0031】
用語「安定な」とは、本明細書において、バイアルに詰めて25±2℃、相対湿度60±5%で6ヶ月間保存した場合、全部の不純物の量が3.0%未満である、凍結乾燥形態の不水溶性薬物をさす。さらに、用語「安定な」とはまた、本明細書において、滅菌液体媒体に再構成した場合、120秒未満で再構成し、再構成された溶液が、滅菌液体媒体の添加後少なくとも2時間は不水溶性薬物の沈殿がなく透明である、凍結乾燥形態の不水溶性薬物もさす。
【0032】
用語「非経口使用に適した」とは、本明細書において、残留有機溶媒およびその他の不純物を実質的に含まず、かつ、注射用経路を介するヒト投与に安全である、凍結乾燥形態の不水溶性薬物をさす。
【0033】
本発明に好ましい薬物はドセタキセルである。ドセタキセルは、タキソイドファミリーに属する抗悪性腫瘍薬である。それは、イチイ植物の再生可能な針葉バイオマスから抽出された前駆体から出発する半合成により調製される。ドセタキセルの化学名は、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステルの、5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキス−11−エン−9−オン 4−アセテート 2−ベンゾエートとの13−エステルである。ドセタキセルは、タキソテール(登録商標)注射用濃縮液として米国で市販されている。タキソテール(ドセタキセル)注射用濃縮液は、透明な黄色から茶色がかった黄色の粘稠な溶液である。タキソテールは、無菌で、非発熱性であり、20mg(0.5mL)または80mg(2mL)のドセタキセル(無水)を含有する単一用量バイアルで使用できる。1mLにつき40mgのドセタキセル(無水)および1040mgのポリソルベート80が含まれる。タキソテール注射用濃縮液は、使用前に希釈する必要がある。タキソテールは単一の薬剤として、従前の白金を用いた化学療法が不成功であった後に、局所進行性もしくは転移性非小細胞肺癌の患者の治療に適応される。シスプラチンと併用したタキソテールは、切除不能な、局所進行性もしくは転移性非小細胞肺癌の、この状態に対する化学療法を前に受けていない患者の治療に適応される。プレドニゾンと併用したタキソテールは、アンドロゲン非依存性(ホルモン不応性)転移性前立腺癌の患者の治療に適応される。シスプラチンおよびフルオロウラシルと併用したタキソテールは、胃食道接合部の腺癌を含む進行胃腺癌の、進行疾患に対する化学療法を前に受けていない患者の治療に適応される。シスプラチンおよびフルオロウラシルと併用したタキソテールは、手術不可能な頭頚部の局所進行性扁平上皮癌の患者の導入療法に適応される。
【0034】
パクリタキセルは抗腫瘍活性をもつ天然産物である。パクリタキセルは、ヨーロッパイチイ(Taxus baccata)から半合成法により得られる。パクリタキセルの化学名は、5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキス−11−エン−9−オン 4、10−ジアセテート 2−ベンゾエートの(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの13−エステルである。それはタキソール注射薬として米国で市販されている。タキソールは、静脈内注入の前に適した非経口用液で希釈するための非水溶液として供給される。タキソールは、卵巣の進行癌の治療のための第一線の、およびその後の治療法として適応される。一次治療法として、タキソールはシスプラチンと併用して適応される。タキソールは、標準的なドキソルビシンを含む併用化学療法に順次投与される、節陽性乳癌の補助療法に適応される。タキソールは、6ヶ月の補助化学療法の中で転移性疾患または再発に対する併用化学療法が不成功であった後の乳癌の治療に適応される。タキソールは、シスプラチンと併用して、治癒の可能性のある手術および/または放射線療法の候補でない患者における非小細胞肺癌の一次治療に適応される。タキソールは、エイズ関連カポジ肉腫の二次治療に適応される。
【0035】
シクロスポリンは、11アミノ酸からなる環状ポリペプチド免疫抑制薬である。それは真菌種ビューベリア・ニベア(Beauveria nivea)による代謝産物として産生される。化学的に、シクロスポリンは、[R−[R,R−(E)]]−環状(L−アラニル−D−アラニル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−バリル−3−ヒドロキシ−N,4−ジメチル−L−2−アミノ−6−オクテノイル−L−α−アミノ−ブチリル−N メチルグリシル−N−メチル−L−ロイシル−L−バリル−N−メチル−Lロイシル)と表される。それは米国において、サンディミュン(登録商標)注射薬として入手可能である。サンディミュン(登録商標)注射薬は、静脈投与用の5mL滅菌アンプルで使用できる。サンディミュン(登録商標)(シクロスポリン)は、腎臓、肝臓、および心臓の同種移植片における臓器拒絶の予防のために適応される。
【0036】
本発明は、溶解して即時に非経口投与に適した所望の液体媒体中で透明な溶液を形成するのに適した物理的な形態に、薬物を変換することにより、不水溶性薬物の溶解度を改良する手段を提供するための、非経口使用に適した安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物の調製方法を提供する。この物理的形態の薬物(本明細書において凍結乾燥形態の薬物とも称される)は、最小限の労力で120秒未満で液体媒体に溶解することができる。例えば、適した物理的形態への変換の際に、薬物は、液体媒体の添加直後に、または薬物組成物を再構成する当業者が非経口投与に適した滅菌液体媒体および/または水性注入媒体を用いて容器を最低限攪拌することにより、液体媒体に溶解する。さらに、適した物理的形態の薬物を使用することにより、再構成後少なくとも2時間、薬物は液体媒体中の溶液にとどまることが確保される。好ましくは、薬物は、保存の通常条件下で、例えば周囲室温で保存した場合、再構成後8時間とどまる。
【0037】
用語「非経口投与に適した滅菌液体媒体」(この用語は「滅菌液体媒体(sterile liquid vehicle)」および「液体媒体(liquid vehicle)」と同義的に使用されている)とは、本明細書において、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を溶解させることができ、患者に何ら有害事象を引き起こさず、非経口投与に適した媒体を意味する。滅菌液体媒体は、可溶化剤およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択される溶媒から本質的になる。本発明の滅菌液体媒体での使用に適した溶媒の例としては、限定されるものではないが、アルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコール、イソプロピルアルコール、および同類のもの、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および同類のものならびにそれらの混合物が挙げられる。滅菌液体媒体での使用に適した可溶化剤としては、限定されるものではないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、脂肪酸−ポリエチレングリコールエステル、ビタミンEトコフェロールプロピレングリコールスクシネート(ビタミンE TPGS)、スクロース−脂肪酸エステル等およびそれらの混合物が挙げられる。使用される溶媒および可溶化剤は、ヒト被験体に投与された市販製剤に既に用いられているものである。
【0038】
本発明の液体媒体中の可溶化剤として使用することのできるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、モノラウリン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン(ポリソルベート40)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン20ソルビタン(ポリソルベート80)およびそれらの混合物から選択されてもよい。これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)は、1モルのソルビトールおよびその無水物につきおよそ20モルのエチレンオキシドと共重合した、一連のソルビトールの部分脂肪酸エステルおよびその無水物である。好ましくは、最適なポリソルベートは、45〜55の範囲内の鹸化価、3%以下の含水量、65〜80のヒドロキシル価および2%以下の酸価を有する、ポリソルベート80である。それは、約250mg/mlの液体媒体〜約1000mg/mlの液体媒体の範囲の量で使用されてもよい。
【0039】
ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は、様々な量のエチレンオキシドとヒマシ油かまたは硬化ヒマシ油のいずれかの反応により得られる一連の物質であり、その結果疎水性成分と親水性成分の複雑な混合物を形成する。それは、主に、30〜50分子のエチレンオキシドでエトキシル化したリシノレイルグリセロール(ricinoleyl glycerol)を含む。商業的に入手可能な等級のポリオキシル40硬化ヒマシ油、Cremophor RH 40は、2%以下の含水量、45〜69の鹸化価、2.0以下のヨウ素価および60〜80のヒドロキシル価を有し、液体媒体として好ましい。
【0040】
滅菌液体媒体は、非経口使用に適した、安定した凍結乾燥形態の不水溶性薬物を溶解させるために十分な量で、かつ非経口投与に安全かつ無毒な量で使用される。好ましくは、使用される液体媒体およびその使用される量は、安定した組成物、すなわち、液体媒体が薬物に添加された後少なくとも2時間は薬物を沈殿させない組成物が得られるように選択される。本発明の一実施形態によれば、520mgのポリソルベート80が液体媒体として0.2mlのエタノールと併用して用いられる。本発明の滅菌液体媒体は別個の容器に提供されてもよい。媒体を単位用量容器に充填し、滅菌に供する。滅菌は、当分野で公知の従来法のいずれか、例えば、蒸気滅菌、乾熱滅菌、放射線滅菌、濾過滅菌、または使用する特定の液体媒体に適した任意のその他の滅菌手段で行ってもよい。
【0041】
本発明の方法によれば、不水溶性薬物は、最初に不水溶性薬物と十分な量のエタノールを混合して薬物を溶解させ、次に、得られた溶液を滅菌することにより、滅菌液体媒体中での溶解および透明な溶液の即時形成に適した物理的形態に変換される。滅菌は、一般に溶液の膜濾過により行われてもよい。あるいは、それは滅菌液体媒体に適しているであろう任意のその他の従来の滅菌手段により滅菌されてもよい。次に、十分な量の滅菌水、またはその他の滅菌非溶媒を加えて薬物を溶液から沈殿させる。そのようにして得た滅菌懸濁液を凍結乾燥に供する。得られる凍結乾燥生成物は、滅菌液体媒体中での溶解および透明な溶液の即時形成に適している。
【0042】
実施形態によれば、エタノール中のドセタキセルの濃度が約90mg/ml〜約98mg/mlの範囲になるような量で、ドセタキセルをエタノールに溶解する。ドセタキセルは室温にて滅菌水を添加することによりエタノールから沈殿する。エタノールの水に対する比は、約1:1〜約1:10の範囲であり、好ましくはこの比は約1:5である。
【0043】
凍結乾燥またはフリーズドライは、市販の凍結乾燥機、例えば多様な供給源から入手可能なものを製造業者の推奨する設定で用いて行ってもよい。一般に、生成物は、安定した凍結乾燥生成物が約3000ppm未満の有機溶媒を含むように凍結乾燥される。水性懸濁液を凍結乾燥に供する方法では、生成物は約1.5% w/vの水分が存在するように凍結乾燥される。一つの例では、生成物は約5℃にて装填され、約−40℃に凍結され、−40℃にて約7〜約8時間保持される;次に、棚温度を−20℃〜−25℃に上昇させ、その温度で2〜8時間保持することにより、凍結した溶液を熱処理する。その後、冷却器を開始させ、真空度を調節し、棚温度を+25℃に上昇させてもよい。所望により、生成物の温度が+25℃に達したら、生成物は二次乾燥に供される。適切に、この凍結乾燥法は、凍結乾燥させた生成物中の固体の最終重量の2重量%未満の量の残留溶媒を有する生成物をもたらす。第2段階に加えて、またはその代わりに、その他の処理技法を得られた凍結乾燥材料中の残留溶媒をさらに減らすために用いてもよい。かかる処理技法としては、数ある中で、窒素掃引が挙げられる。
【0044】
凍結乾燥は、バルクでまたは単位用量容器で行ってもよい。例えば、滅菌水を添加して得られる不水溶性薬物の滅菌懸濁液をバルク凍結乾燥し、それに続いて必要量の凍結乾燥生成物を滅菌単位用量容器の中に無菌充填する。これは、一般に乾燥粉末充填と呼ばれる。バルク凍結乾燥で得られるケーキは、あらゆる凝集塊を破壊し、必要量の生成物の滅菌容器の中への容易な充填を促進するために、単位用量容器の中に充填するより前に無菌条件下で機械的篩い分けに供されてもよい。あるいは、不水溶性薬物の懸濁液を、各々の容器が等しい量の懸濁液を含有する単位用量容器の中に充填する。凍結乾燥生成物が単位用量容器で得られるように、次にこれらの個別の容器を凍結乾燥に供してもよい。本発明の一実施形態によれば、エタノール中の不水溶性薬物の滅菌溶液は、無菌で滅菌単位用量容器の中に充填され、必要な量の滅菌水を各々の容器に添加して薬物を沈殿させる、すなわち、懸濁液を形成する。滅菌懸濁液を含有する単位用量容器を次に凍結乾燥させる。本発明の方法では、凍結乾燥は、凍結乾燥形態が約3000ppm未満の残留有機溶媒を含むように、水不溶性の薬物の滅菌懸濁液を凍結乾燥に供することにより行われる。本発明の好ましい実施形態によれば、凍結乾燥は、凍結乾燥形態が約3000ppm未満のエタノールを含むように、水不溶性の薬物の滅菌懸濁液を凍結乾燥に供することにより行われる。
【0045】
本発明の方法により調製される安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物をバイアルに詰め、25±2℃、相対湿度60±%にて6ヶ月間保存した。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて、1、2、3および6ヶ月の間隔での総不純物量およびアッセイについてバイアルを分析した。凍結乾燥不水溶性薬物は、25±2℃、相対湿度60±%にて6ヶ月間保存後、3.0%未満の総不純物を有することが見出された。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、安定した凍結乾燥ドセタキセルが提供される。凍結乾燥ドセタキセルは、特に良好な薬剤的特性を有する。それは特に安定しており、3.0%以下の含水量を有する。凍結乾燥ドセタキセルは良好な保存特性を有し、安全性評価を必要とする新規な添加剤または助剤を使用せずに、滅菌液体媒体を用いて急速に再構成することができる。さらに、再構成した溶液を適した水性非経口注入溶液でさらに希釈しても、少なくとも薬物が体液内に注入される間は再構成した溶液は注入溶液から沈殿しない。安定した凍結乾燥ドセタキセルは、3000ppm未満の残留有機溶媒を有する。好ましくは、有機溶媒はエタノールである。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、
第1の容器中の、本明細書に記載される方法により調製される非経口使用に適した安定した凍結乾燥形態の不水溶性薬物を含む滅菌組成物と、
第2の容器中の、滅菌液体媒体であって、可溶化剤、およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択されるおよび溶媒から本質的になる滅菌液体媒体と
を含むキットが提供される。
【0048】
第1の容器中の非経口使用に適した安定した凍結乾燥形態の不水溶性薬物を含む滅菌組成物は、第2の容器中に提供される滅菌液体媒体を添加すると直ちに溶解する。一般に、本発明の方法により得られる、非経口使用に適した、安定した凍結乾燥形態の不水溶性薬物は、滅菌液体媒体を添加して180秒未満で溶解する。好ましくは、不水溶性薬物の安定した凍結乾燥形態は、120秒未満で溶解する。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、滅菌組成物を希釈することにより注入溶液、すなわち、水性注入媒体を含む滅菌液体媒体に溶解した、非経口使用に適した安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物、が提供される。かかる水性注入媒体の例としては、限定されるものではないが、病院で投与用に従来使用されている、5%デキストロース溶液、0.9%生理食塩水、注射用滅菌水、および同類のものが挙げられる。本発明の滅菌組成物を希釈するために用いることのできる注入液の選択は、使用する注入溶液と薬物の相溶性に依存する。
【0050】
一部の実施形態は本発明の凍結乾燥方法において補助賦形剤の使用を避けているが、全ての補助賦形剤が排除される必要があるというわけではない。従って要求通り、材料のいずれかの沈殿の前に、かつ、いずれかの凍結乾燥段階の前に調製された溶液は、例えば、抗酸化薬、キレート化剤、等張剤、緩衝液、pH調節剤、抗凍結剤、凍結乾燥に役立つ充填剤、希釈剤および非経口製剤に従来使用されている様々なその他の医薬品などの適した補助賦形剤を有してもよく、それらは製薬分野で従来用いられる量で使用されてもよい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態によれば、タキサン誘導体が本発明の医薬組成物を得るための不水溶性薬物として使用される。特に、ドセタキセルが好ましいタキサン誘導体として使用されて、安定した凍結乾燥ドセタキセルが提供される。先行技術のドセタキセルの非経口製剤は、Cremophorおよびエタノールの混合物にドセタキセルを溶解することによって得た(米国特許第4,814,470号の実施例1に開示される通り)。しかし、ドセタキセルの溶解度は非常に低いため、大量のCremophorおよびエタノール(すなわち、50容積%のCremophorと50容積%のエタノール)が溶液形成に必要とされる。高い量のCremophorは、患者においてアナフィラキシー反応を引き起こしたことが見出され、一方、高い量のエタノールはアルコール依存症を引き起こした(Rowinsky, Lorraine, Cazenave and Donehower, Journal of the National Cancer Institute, vol. 82. No. 15. pages 1247 to 1259 参照)。Cremophorおよびエタノールに関連するこれらの問題を回避するため、Rhone−Poulenc Rorer(米国特許第5,438,072号に記載される通り)により新規な製剤が調製された。それは本質的にエタノールを含まず、Cremophorを、ポリソルベート80、エチレンオキシドエステル−エーテルおよび脂肪酸グリセリドから選択される別の界面活性剤と置き換えたものであった。市販の製品であるタキソテール(登録商標)には、ポリソルベート80が界面活性剤として含まれている。生成物は、キット−第1のバイアルは、ポリソルベート80中のドセタキセルの溶液を含み、第2のバイアルは希釈剤として水と13%エタノールを含む−の形態で利用可能である。本発明は、好ましい実施形態では、ドセタキセルの安定した医薬組成物(下の実施例1および2を参照)が提供され、それは投与の前の再構成が容易であり、かつ、先行技術の欠点、例えばアルコール依存症およびアナフィラキシー反応などを克服する。
【0052】
次に続く実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、単なる例証として使用される。
【0053】
比較例1
ドセタキセル(20mg)を、25±2℃の制御温度にて第3級ブタノール(1ml)に溶解させた。このようにして得た溶液を、次に滅菌濾過し、滅菌バイアルに充填し、凍結乾燥させて白色のケーキを形成した。下の表1に詳述される凍結乾燥サイクルを使用した。
【表1】

このようにして得た凍結乾燥ドセタキセルの残留溶媒(t−ブタノール)含量は約50000ppmであり、これを5000ppm未満に減らすことは困難であった。かかる高い量の残留溶媒は明らかに使用には許容されないであろう。
【0054】
実施例1
本発明に従う医薬組成物を下記のように調製して、1バイアルあたり20mgの凍結乾燥ドセタキセルを含む最終投薬形態を得た。ドセタキセル(97.6mg)を中速で攪拌しながら1mlのエタノール、すなわち、無水アルコールに溶解させた。このようにして得た溶液を濾過膜を介して滅菌濾過し、0.25mlの濾過された溶液を滅菌バイアルの中に充填した。これに、1.25mlの注射水を添加し、このようにして得た懸濁液を下の表2に詳述される凍結乾燥サイクルにより凍結乾燥させた。凍結乾燥は、水分含量が1.55%より低く、エタノール含量が3000ppmより低くなるまで行った。凍結乾燥で多孔性のケーキが得られた。
【表2】

【0055】
実施例2
本発明に従う医薬組成物を下記のように調製して、1バイアルあたり80mgの凍結乾燥ドセタキセルを含む最終投薬形態を得た。ドセタキセル(94.4mg)を中速で攪拌しながら1mlのエタノール、すなわち、無水アルコールに溶解させた。このようにして得た溶液を濾過膜を介して滅菌濾過し、1.0mlの濾過された溶液を滅菌バイアルの中に充填した。これに、5.0mlの注射水を添加し、このようにして得た懸濁液を下の表3に詳述される凍結乾燥サイクルにより凍結乾燥させた。凍結乾燥は、水分含量が1.55%より低く、エタノール含量が3000ppmより低くなるまで行った。凍結乾燥で多孔性のケーキが得られた。
【表3】

【0056】
組成物は、上記凍結乾燥サイクルにより得た80mgドセタキセルを含有する第1のバイアル、および、64.6% w/wポリソルベート80と35.4% w/wのエタノールの混合物を含有する第2のバイアルを含むキットの形態で提供された。第1のバイアルの多孔性のドセタキセルケーキは、(第2のバイアルの)ポリソルベート80とエタノールの混合物に90秒未満で溶解されて透明な溶液を得、それは必要な場合にさらなる希釈液を調製するための保存液として使用することができる。
【0057】
実施例3
溶解度の比較研究を、上記実施例1で得た凍結乾燥形態のドセタキセルおよび非凍結乾燥形態のドセタキセルを用いて行って、ポリソルベート80およびエタノールからなる液体媒体中での完全な可溶化に要する時間を調べた。この実験は、制御された室温(25±2℃)で、瓶回転装置およびマルチパルスシェーカーを用いて行った。ドセタキセルの完全な可溶化(すなわち、目に見える粒子が存在しない、透明な溶液の形成)に要した時間を記録し、下の表4に示す。
実験の詳細:
(a)瓶回転装置:20mgのドセタキセルを5mlのバイアルにとった。これに、0.7mlの液体媒体を添加した。次に、バイアルを瓶回転装置の中に保持し、50RPMで回転させる。連続的にモニタリングを行って薬物の可溶化を確認した。
(b)マルチパルスシェーカー装置:20mgのドセタキセルをストッパーの付いた試験管にとった。これに、0.7mlの液体媒体を添加した。次に、試験管をマルチパルスシェーカーの中に保持し、50RPM50RPMで回転させる。連続的にモニタリングを行って薬物の可溶化を確認した。
【表4】

上記の調査から、凍結乾燥形態のドセタキセルの完全な可溶化に要した時間は、非凍結乾燥形態のドセタキセルよりも有意に少ないことが見出され得る。
【0058】
実施例4
80mg/バイアルの、上記実施例2のように調製されたドセタキセルを含有する本発明に従う医薬組成物をバイアルに詰め、25±2℃、相対湿度60±5%(%RH)にて最大6ヶ月間保存した。高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いてサンプルを分析した。ポリソルベート80およびエタノールの滅菌液体媒体で再構成した場合に、完全な可溶化に要した時間(再構成時間)についてもサンプルを分析した。分析で使用したパラメータを下に示す。総不純物パーセント、アッセイおよび再構成時間の結果を下の表5に要約する。
【0059】
ドセタキセルのアッセイ/含量に関して:
カラム:YMC−Pack ODS−AQ(150mm×4.6mm)、3μ(YMC Corporation,JAPAN)
流速:1.0ml/分
カラム温度:40℃
検出:230nmのUV
注入量:20μl
保持時間:約17分
実行時間:約35分
移動相:550ml:450mlの混合比の水およびアセトニトリル
希釈剤:1:1の混合比の水およびアセトニトリル
標準試料:12.5mg(11.25〜13.75mg)のドセタキセルを希釈剤と混合して25mlとし、超音波処理し、5mlのこの溶液をさらに希釈剤で50mlに希釈。
試験調製物:5本の注射用のドセタキセルのバイアルを10mlの希釈剤で個別に構成し、これら全ての構成バイアルの内容物を混合し、希釈剤で50mlに構成し、5mlのこの構成溶液をさらに希釈剤で200mlに希釈。
【0060】
関連物質に関して:
カラム:Waters Sunfire C18、150mm×4.6mm、3.5μ(Waters Corporation,USA)
流速:1.2ml/分
カラム温度:40℃
検出:230nmのUV
注入量:10μl
実行時間:53分
移動相A:水、0.45μ濾紙で濾過
移動相B:アセトニトリル、0.45μ濾紙で濾過
保持時間:約19分
標準試料:5mgのドセタキセルを希釈剤と混合して100mlとし、2mlのこの溶液をさらに希釈剤で100mlに希釈。
試験調製物:5本の注射用のドセタキセルのバイアルを5mlの希釈剤で個別に構成し、これら全ての構成バイアルの内容物を混合し、希釈剤で100mlに構成。
【表5】

【0061】
上の調査から、凍結乾燥ドセタキセルは、25±2℃、相対湿度60±5%で6ヶ月間保存した後も安定していること、また、凍結乾燥形態のドセタキセルは、滅菌液体媒体で再構成した後、急速に(すなわち、120秒未満で)再構成されたことを見出すことができる。
【0062】
実施例5
実施例2で得た凍結乾燥形態のデセタキセルをXRDで分析した。図1は凍結乾燥後のXRDを示す。
【0063】
実施例6
実施例2で得た凍結乾燥形態のデセタキセルをXRDで分析した。図2および図3は、25±2℃、相対湿度60±5%で保存し、それぞれ3ヶ月および6ヶ月で分析した、乾燥状態のドセタキセルのXRDを示す。
【0064】
本発明を具体的な実施形態を参照して説明したが、これは単に説明目的のために行ったものであり、本発明の精神または範囲を制限すると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物の調製方法であって、
a.不水溶性薬物を十分な量のエタノールと混合して前記薬物を溶解させ、
b.前記溶液を滅菌し、
c.十分な量の滅菌水を添加することにより前記薬物を沈殿させ、
d.得られた滅菌懸濁液を凍結乾燥させること
を含む、方法。
【請求項2】
前記不水溶性薬物が、ドセタキセル、パクリタキセル、シクロスポリンおよびフルニソリドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凍結乾燥させる前記懸濁液を、単位用量容器に充填し、凍結乾燥させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記凍結乾燥形態の不水溶性薬物が、単位用量容器に充填された乾燥粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物がドセタキセルであり、エタノール中のドセタキセルの濃度が約90mg/ml〜約98mg/mlであり、エタノールの水に対する比が約1:5であり、かつ、沈殿が室温にて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法により調製される、非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物。
【請求項7】
請求項1に記載の非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物を含む、滅菌組成物。
【請求項8】
a)第1の容器中の、請求項7に記載の滅菌組成物と、
b)第2の容器中の、滅菌液体媒体であって、可溶化剤、およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択される溶媒から本質的になる、滅菌液体媒体と
を含む、キット。
【請求項9】
可溶化剤、およびヒドロキシル基を有しかつ分子量が200未満である有機化合物から選択される溶媒から本質的になる滅菌液体媒体を、請求項6に記載の非経口使用に適した、安定な凍結乾燥形態の不水溶性薬物に添加することにより調製される、滅菌組成物。
【請求項10】
前記可溶化剤が、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエートであり、前記溶媒がエタノールである、請求項9に記載の滅菌組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の滅菌組成物を水性注入媒体で希釈することを含む方法により調製される、注入溶液。
【請求項12】
安定な凍結乾燥したドセタキセル。
【請求項13】
3000ppm未満の残留有機溶媒を有する、請求項12に記載の安定な凍結乾燥したドセタキセル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−524919(P2010−524919A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503666(P2010−503666)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000252
【国際公開番号】WO2009/007992
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(503422000)サン、ファーマスーティカル、インダストリーズ、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMACEUTICAL INDUSTRIES LTD.
【Fターム(参考)】