説明

医薬組成物

オキシ水酸化鉄を高担持量で含有する、特に直接嚥下または口腔で崩壊可能な経口伝達システムとしての経口投与用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与、特に完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)投与形態、または迅速な崩壊が可能な投与形態として、経口伝達システムに投与するのに適した形態にオキシ水酸化鉄を高担持量で含有する医薬組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎不全患者では、糸球体ろ過率の低下により、病理的に増加した血清リン酸塩レベルが発生する。それとともに始まる続発性副甲状腺機能高進症は、腎臓骨症の発生原因の一つであると考えなければならない。透析によって、または、胃腸管での食品リン酸塩の再吸収を抑制する経口リン酸塩吸着剤の投与によって、または、これらの二つの組合せによって、リン酸塩均衡を平衡に維持するための試みが一般に行われるが、当業界の現状では、これらのいずれも、十分に効率的ではなく、経済的でもなく、副作用の負担があった。
【0003】
最近、新規かつ有効なオキシ水酸化鉄基材の、特に炭水化物及び/またはフミン酸のような安定化剤で安定化したベータ‐オキシ水酸化鉄を含有するリン酸塩吸着剤が記載されている(EP 0 868 125)。これらの吸着剤は、例えば無機リン酸塩及び食品に結合されているリン酸塩の吸着について、水溶液からの優れたリン酸塩吸着能を示し(EP 0 868 125)、高リン血症の治療において、効率的な経口リン吸着薬であるものと示されている(Neophrol. Dial. Transplant 14, 863, 1999)。
【0004】
良好な患者のコンプライアンスを維持するとともに最大の効率性を達成するためには、前記吸着剤を高投与量で投与可能なことが好ましい。しかしながら、鉄担持量の多いリン酸塩吸着剤は、未だ利用可能ではない。一般の投与容易性や受け入れ難い味のみならず、貯蔵及び安定性の問題のような要因が、現在利用可能なリン吸着薬の適用可能性を制限している。
【0005】
本出願人のWO2006/000547は、高リン血症状態を予防または治療するために用いられる、硫酸鉄基材のリン酸塩吸着剤の製造方法を開示する。フミン酸及び炭水化物から選ばれる安定化剤を含有する鉄硫酸塩及び/または硝酸塩から製造され、鉄含量が高々20.3〜22.3重量%であるオキシ水酸化鉄組成物が記載されている。前記組成物は、回転蒸発によって得られる。錠剤のような具体的な経口剤形物は開示されていない。鉄組成物が一般的な賦形剤及びアジュバントとともに、錠剤またはその他の経口剤形物に剤形化され得ることが記述されている。これは、オキシ水酸化鉄組成物から得られる錠剤の鉄含量が、32%(w/w)オキシ水酸化鉄に該当する高々20%(w/w)であり得ることを意味する。
【0006】
本出願人のEP1 757 299は、鉄(III)炭水化物錯化合物、及び慢性炎症性腸疾患のある患者における鉄欠乏を経口的または非経口的に治療するためのその用途を記載している。前記参考文献において、100mg鉄(III)を含有するMaltofer(登録商標)フィルムコート錠について説明されている。錠剤の鉄含量は、25.6%w/wオキシ水酸化鉄に該当する16重量%である。前記製剤は、鉄欠乏の治療を意図としており、すなわち、本発明内に定義の通りのリン酸塩吸着剤とは異なり、鉄(III)の遊離のためのものである。乾燥過程は、記載されていない。
【0007】
WO92/01458では、リン酸塩吸着剤としての用途のための治療投与形態として剤形化されるオキシ‐鉄化合物、特に鉄酸化物、鉄水酸化物、及びオキシ水酸化鉄を開示する。具体的な経口剤形物は開示されておらず、具体的な鉄担持量については言及されていない。さらに、賦形剤及び製造方法が具体的に開示されていないが、「許容可能な方法及び賦形剤」について説明されている。それぞれの経口投与量は、50mg〜約500mgまたはそれ以上のオキシ‐鉄化合物を含有することができると言及されている。当業界の状況によると、所望の程度のリン酸塩吸着を達成するために必要な500mgオキシ‐鉄化合物を含有する錠剤は、患者が飲み込めないほどの大型のものとなる。前記文献は、高担持量の鉄を得ることについては開示していない。
【0008】
US5,514,281には、けん化ジビニルエチレン尿素酢酸ビニル共重合体、LewatitR(登録商標)、シリカ、ガラス、及びデキストランで改質された有機多孔性担体のような担体に結合された多核オキシ水酸化鉄を開示している。鉄(III)を保有した担体の最大鉄担持量は、乾燥重量で29.3重量%であると報告されている。製品は、膨張した乾燥担体から成形されるが、これは、透析物からリン酸塩が除去されなければ、全く作用することができないので、以降乾燥させることができない。US 5,514,281の全ての実施例においては、経口投与用無水/錠剤剤形物は記載していない。吸着剤を記述した実施例は、全て体外用途に関するものであり、その製造に用いた担体は、医薬用途に適用可能ではない。経口剤形物の製造は、単に「…のために粉末に圧縮された」とのみ記載されている。上記製品は、鉄放出のために開発された。
【0009】
広範囲な薬物について、錠剤のような経口投与形態が投与の好適な形態であることは明らかである。これは、患者の高水準の受容性及び適応性(これらは、正確な投与量を提供し、また投与が容易であるため)のみならず、製造中及び製造後の有利な特徴、例えば、満足のいく物理的及び化学的安定性を典型的に示すこと、包装、輸送、及び投与が便利であり、そして製造速度及び費用において長所を有することによるものである。
【0010】
しかしながら、経口投与形態は、混入される薬物に対する所望の生物学的利用能を達成するためには、注意深く設計された崩壊特性が必要であり、すなわち、薬物の溶解を促進するために迅速放出錠が摂取後迅速に崩壊しなければならない場合は、溶解が吸収に先行されなければならない。さらに、通常の錠剤剤形物の薬物担持量は、潜在的な胃腸刺激(局所的高濃度による)及び/または患者のコンプライアンス(容易な嚥下を達成するため、大きさ及び形態を制限する)によって度々制限される。
【0011】
前記制限は、リン吸着薬としての高担持量のオキシ水酸化鉄に対する有効な経口伝達システムの開発を妨害した。
【0012】
本願は、オキシ水酸化鉄(以降、活性剤ともいう)及びベータ‐オキシ水酸化鉄を含有するオキシ水酸化鉄、及び特にEP0 868 125 B1に記載のとおり安定化剤として作用可能な炭水化物及び/またはフミン酸をさらに含有するオキシ水酸化鉄が、好ましくは完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)投与形態、または(口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊が可能な投与形態として、高担持量で経口伝達システム(以降、医薬組成物または本発明の組成物ともいう)の形態に成功的に剤形化され得るという点を発見した。したがって、本発明の医薬組成物は、最小限の大きさを維持するとともに、高担持量及び適切な崩壊特徴の両方を達成することができ、これにより、現在周知の剤形物の短所を克服することができる。
【0013】
本発明の組成物は、リン酸塩吸着剤として核心的な2.5%w/w未満の低い鉄放出率を有している。これに対して、鉄欠乏治療に用いられる組成物は、高い鉄放出率を有しているので、本発明の組成物とは全く相違している。
【0014】
さらに、本発明の医薬組成物は、好ましくは通常の成形及び打錠法、より好ましくは直接打錠法を通じて、一つ以上の賦形剤、例えば、結合剤及び/または充填剤及び/または崩壊剤を一度で充足させる一つ以上の賦形剤の存在下で得られる。
【0015】
口腔で崩壊可能な投与形態として投与される場合、活性剤と関連した任意の悪味は、適した味マスキング剤、甘味料、及び/または味増強剤を用いて除去され得ることを発見した。
【0016】
さらに、成分の水性懸濁液の噴射・乾燥で製造された実質的な量の流動性粉末を含めてなる場合、特に高いオキシ水酸化鉄‐担持量を有する好ましい錠剤剤形物が得られることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】EP0 868 125号公報
【特許文献2】WO2006/000547号公報
【特許文献3】EP1 757 299号公報
【特許文献4】WO 92/01458号公報
【特許文献5】US 5,514,281号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Neophrol. Dial. Transplant 14, 863, 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、好ましくは、完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)投与形態、または(口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊が可能な投与形態として、特に高担持量を有する経口伝達システムにおいて、経口投与に適した形態にオキシ水酸化鉄を含有する医薬組成物を提供することである。
【0020】
好ましい実施例において、オキシ水酸化鉄‐含有医薬組成物は、一つ以上の炭水化物及び/またはフミン酸、好ましくは炭水化物、例えば、単糖類、二糖類、多糖類、好ましくは、蔗糖(スクロース)、でんぷん、アガロース、デキストラン、デキストリン、セルロース、及びこれらのそれぞれの誘導体を含有する。前記炭水化物及び/またはフミン酸は、EP0 868 125 B1に記載のとおり、安定化剤として作用することができる。これとは別途にまたはこれに加えて、炭水化物(等)及び/またはフミン酸は、結合剤及び/または充填材及び/または崩壊剤として作用することができる。
【0021】
また他の実施例において、本発明の組成物は、一つ以上の味マスキング及び/または着色添加剤、例えば、風味剤、甘味料、味増強剤、着色剤等を含有する。
【0022】
錠剤の意図する用途によって、すなわち、完全な嚥下のためのものであるか、または、例えば、咀嚼可能な錠剤のように(口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊のためのものであるかによって、所望の場合、一般の賦形剤、例えば、超崩壊剤、流動促進剤、滑剤、酸化防止剤、打錠補助剤等が添加されてもよい。錠剤は、所望の場合、一般の塗膜形成剤でコートされてもよい。
【0023】
また他の実施例において、本発明の医薬組成物は、経口投与に適した任意の投与形態であり、特に、咀嚼可能な形態、乾燥粉末、顆粒、前記顆粒を含むカプセルまたはサシェ、ウエハ、フィルム、トローチ剤等を含む、完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)形態、または(摂取後口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊が可能な形態の錠剤及び丸薬を含む。
【0024】
本発明のさらなる目的は、通常の成形または打錠法、好ましくは直接打錠法によって、オキシ水酸化鉄を高担持量で含有する本発明の経口伝達システム、特に完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)投与形態として、あるいは(口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊が可能な形態として経口伝達システムを考案する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
したがって、本発明の第一の特徴は、活性剤としてのオキシ水酸化鉄を高担持量で含有し、所望の崩壊特徴を示す経口投与に適した形態の医薬組成物に関するものである。
【0026】
特に、本発明は、完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)投与形態として、または(口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊が可能な投与形態として、高担持量の活性剤を有する前記経口投与可能な医薬組成物に関するものである。
【0027】
前記の通り、本願に用いられる用語の「活性剤」には、鉄(III)‐オキシ‐水酸化物が含まれる。鉄(III)‐オキシ‐水酸化物または鉄(III)‐オキシド‐水酸化物は、一般にFeO(OH)またはFe×HOと称される。本発明によって用いられる前記オキシ水酸化鉄は、一般に鉄(III)‐塩水溶液での加水崩壊及び沈殿の際に形成される(参考文献は、例えば、Ro:mpp Lexikon Chemie, 10. Auflage, 1997; U.Schwertmann, R.M.Cornell“Iron Oxides in the Laboratory”,VCH Verlagsgesellschaft mbH,1991,Seiten 95-100)。したがって、本願に用いられた用語の「オキシ水酸化鉄」は、α、β、γ、及びδFeOOH、及びこれらの混合物を含む。好ましくは、オキシ水酸化鉄は、任意ではその他のオキシ水酸化鉄(等)と混合物である、βFeOOHを含有する。
【0028】
本発明によって用いられるオキシ水酸化鉄は、好ましくはEP 0868125 B1に記載のとおり、塩基を鉄(III)‐塩水溶液に添加し、後続して乾燥させることにより製造する。
【0029】
好ましくは、安定化剤で安定化したオキシ水酸化鉄が用いられる。
【0030】
用語「安定化剤で安定化したオキシ水酸化鉄」は、好ましくは特に炭水化物及びフミン酸を含む安定化剤と一緒にオキシ水酸化鉄を含む。EP 0868125 B1に記載のとおり、前記安定化剤は、一般にオキシ水酸化鉄に錯化合物として結合されておらず、これは、例えば安定化したオキシ水酸化鉄を水で洗浄することにより、水溶性安定化剤が除去され得ることを意味する。さらに、EP 0868125 B1に記載のとおり、前記安定化剤は、オキシ水酸化鉄をエイジングから安定化させることにより、そのリン酸吸着能を保存するものと推定される。これは、安定化したオキシ水酸化鉄が、一般に非安定化したオキシ水酸化鉄に比べてさらに高いリン酸吸着能を有すること(EP 0868125 B1において測定されている)を意味する。本発明によると、好ましい「安定化剤で安定化したオキシ水酸化鉄」は、EP 0868125 B1に記載のとおり、少なくとも一つ以上の炭水化物及び/またはフミン酸で安定化したベータオキシ水酸化鉄を含有する。
【0031】
一般に、本発明によって利用及び投与されるオキシ水酸化鉄は、その化学的特徴のため、本質的に人体に吸収されず、すなわち、これらは本質的に非生体吸収性である。
【0032】
したがって、本願に用いられた用語の「安定化剤」は、好ましくは、特にEP 0868125 B1に記載のような少なくとも一つ以上の炭水化物及び/またはフミン酸を含む。一実施例において、少なくとも一つ以上の炭水化物は可溶性であり、少なくとも一つ以上の単糖類、二糖類、または多糖類、例えば、アガロース、デキストラン、デキストリン、デキストラン誘導体、セルロース及びセルロース誘導体、蔗糖(スクロース)、マルトース、またはラクトース、好ましくは、蔗糖(スクロース)、デキストリン、またはでんぷんを含む。
【0033】
本願に用いられた用語の「でんぷん」には、任意の通常に用いられる天然、予備ゲル化、崩壊、改質、及び誘導体の形態である、好ましくは直接打錠法に適したでんぷん製品(例えば、ジャガイモでんぷん、コーンスターチ、米でんぷん、タピオカでんぷん)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0034】
好ましい製品には、天然及び予備ゲル化でんぷんの、例えば、10:1〜0.5:1の範囲、好ましくは3:1〜0.5:1の範囲、より好ましくは2:1〜1:1の範囲にある割合(天然:予備ゲル化)の混合物であるものを含む。天然及び予備ゲル化でんぷんの混合物の利用は、高担持量の鉄のある錠剤の製造に特に有利なものと考えられるが、これは、これが直接または極めて少量の追加の賦形剤とともに、適した錠剤に打錠され得る安定化した予備混合物の製造を可能にするからである。
【0035】
一つの特定な実施例において、選択した安定化剤は、1.0〜50%(w/w)、好ましくは5.0〜30%(w/w)の量で存在してもよい。
【0036】
本明細書における全ての%重量(w/w)は、特に拘りがない限り、医薬組成物の全重量に関して表現される。
【0037】
本願に用いられた用語の「高担持量」は、オキシ水酸化鉄が、10〜80%(w/w)、より好ましくは30〜65%(w/w)の量で存在することを示す。オキシ水酸化鉄の含量は、鉄の約1.6倍で計算される。
【0038】
したがって、上記の値は、6〜50%w/w、より好ましくは19〜41%(w/w)の鉄含量に該当する。
【0039】
本発明の好適な実施例において、さらに高い鉄担持量、すなわち、31〜56%(w/w)、好ましくは35〜41%(w/w)の鉄に該当する50〜90%(w/w)のオキシ水酸化鉄、好ましくは56〜65%(w/w)が実現される。
【0040】
また、その他、前記オキシ水酸化鉄は、好ましくは投与形態当たり300mg超過、より好ましくは投与形態当たり300〜2,000mgの量で存在する。活性剤の量は、意図する投与経路に左右されるということが理解されるが、すなわち、完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)錠剤に存在する量は、好ましくは350〜850mgであるのに対して、(口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊が可能な経口投与の形態に存在する量は、好ましくは700〜1,700mgである。
【0041】
活性剤に加えて、通常の医薬組成物は、典型的には賦形剤及び/または添加剤として知られている多数の追加の非活性成分を含む。特に、所望の治療、栄養、または化学効果を達成するために必要な活性剤の量が極めて少ない場合、正確かつ有効な活性剤投与の達成のための経口投与形態の製造の実現性及び便宜性を保障するために、不活性希釈剤、充填材、結合剤、賦形剤、及び崩壊剤、滑剤、流動促進剤、及び甘味料、味マスキング剤、着色剤等の存在が一般に極めて重要である。
【0042】
対照的に、本発明におけるように高担持量の活性剤を有する、経口投与される医薬組成物の場合、前記の付加的な非活性成分は最小化するが、これは、経口投与される医薬組成物の大きさが、良好な患者のコンプライアンス達成に極めて重要な特徴であるからである。
【0043】
上述のとおり、単糖類、二糖類、または多糖類、好ましくは、蔗糖(スクロース)、でんぷん、アガロース、デキストラン、デキストリン、セルロース、及びこれらのそれぞれの誘導体、より好ましくは、蔗糖(スクロース)、デキストリン、またはでんぷんのような炭水化物が、オキシ水酸化鉄に対するその安定化効果にかかわらず、またはそれに加えて、本発明の医薬組成物において、結合剤及び/または充填材及び/または崩壊剤として作用する
【0044】
したがって、本発明の好適な組成物は、上記した量のオキシ水酸化鉄、それぞれ組成物の全重量に対して明示した、1.0〜50%(w/w)、好ましくは5.0〜30%(w/w)の量の選択した安定化剤、及び1.0〜50%(w/w)、好ましくは5.0〜30%(w/w)の量の、安定化剤とは異なる選択した賦形剤を含有する。
【0045】
また他の実施例において、本発明の組成物は、経口投与形態に一般に用いられる一つ以上の味マスキング及び着色添加剤、例えば、風味剤、甘味料、味増強剤、着色剤等を含有する。
【0046】
味マスキング剤、例えば、味増強剤、風味剤、及び/または高甘味度の甘味料を含む天然または非天然甘味料が、投与形態、例えば咀嚼可能な投与形態に混入されて、これらにさらに良い味を付与しまたは不快な味を遮蔽する。
【0047】
典型的な甘味料には、これに制限されないが、デキストロース、スクロース、フルクトース、ラクトース、錠剤砂糖、粉糖である糖類であり、または、ソルビトール(例えば、Neosorb)、キシリトール、マルチトール、マルトース及びポリデキストロース、またはこれらの混合物であるポリオールが含まれる。典型的な高甘味度の甘味料には、これに制限されないが、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファミンK、及び/またはサッカリン誘導体、またはこれらの混合物が含まれてもよい。さらに、適した甘味料または味増強剤には、グリコシド、例えば、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン(ネオヘスペリジンDCまたはNHDC)、グリシルリジン、グルタミン酸塩等が含まれる。後者は、極めて少量で用いられ、したがって、以降は味増強剤と称することもある。上記したものは全て、単独またはその他の甘味料及び/または風味剤と一緒に用いるのに適している。前記物質は、前記甘味の相当な持続を保障し、任意の好ましくない後味を遮蔽する。好ましい甘味料及び/または味増強剤には、グリコシド、例えばネオヘスペリジンジヒドロカルコンが含まれる。
【0048】
一実施例において、選択した甘味料は、前記組成物の全重量に対して、0.01〜2.5%(w/w)、好ましくは0.1〜1.5%(w/w)、最も好ましくは0.2〜1.0%(w/w)の量で存在してもよい。
【0049】
選択した味増強剤は、前記組成物の全重量に対して、0.1〜50ppm、好ましくは1〜10ppm、最も好ましくは1〜5ppmの量で存在してもよい。
【0050】
典型的な風味剤には、医薬の適用に適した任意の天然または非天然の風味剤、例えば、香辛料、果物または果汁、野菜または野菜汁等、例えば、ココア、カラメル、バニラ、りんご、アンズ、ベリー類(例えば、ブラックベリー、アカフサスグリ、クロフサスグリ、イチゴ、ラズベリー、ウッドベリー等)、ミント、パネットーネ、はち蜜、ナッツ、麦芽、コーラ、ベルベーヌ(バーベナ)、または、例えば、カラメル/バニラ、果物/クリーム(例えば、イチゴ/クリーム)の組み合わせ等を基材とする風味等に由来する風味剤が含まれる。
【0051】
一実施例において、選択された風味剤は、前記組成物の全重量に対して、0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)、最も好ましくは0.1〜1%(w/w)の量で存在してもよい。
【0052】
したがって、本発明の他の組成物は、上記量のオキシ水酸化鉄、それぞれ前記組成物の全重量に対して、1.0〜50%(w/w)、好ましくは5.0〜30%(w/w)の量の選択した安定化剤、1.0〜50%(w/w)、好ましくは5.0〜30%(w/w)の量の、安定化剤とは異なる選択した賦形剤、及び0.1〜50ppm、好ましくは1〜10ppm、最も好ましくは1〜5ppmの量で存在してもよい選択した味増強剤、及び/または0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)、最も好ましくは0.1〜1%(w/w)の量で存在する選択した風味剤を含有してもよい。
【0053】
また他の実施例において、賦形剤、例えば、超崩壊剤、流動促進剤、滑剤、酸化防止剤等は、錠剤の意図する用途によって、すなわち、完全な嚥下のためのものであるか、または(口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊のためのものであるかによって、必要な場合、本発明の組成物に添加されてもよい。
【0054】
したがって、特定の実施例において、本発明の組成物は、超崩壊剤をさらに含有してもよい。
【0055】
本願に用いられた用語の「超崩壊剤」は、当業者に周知の崩壊剤の群を指すものであって、一般の崩壊剤よりも極めて少量でも、投与後、投与形態の崩壊または「ブレークアップ」を促進する同一の効果を得るために用いられてもよい。適合例では、これに制限されないが、架橋ポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標) CL及びPolyplasdone(登録商標) XLとして市販され入手可能である)、特に、crospovidone(登録商標)、改質でんぷん、特に、デンプングリコール酸ナトリウム(商品名:Primojel(登録商標)及びExplotab(登録商標)として市販され入手可能である)、Starch 1500、改質セルロース、特に、クロスカルメローセナトリウム(架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース、商品名:Ac‐Di‐Solとして市販され入手可能である)、LHPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)及びVeegum(登録商標)が含まれる。
【0056】
本発明の錠剤に用いるのに好適な例示には、架橋ポリビニルピロリドン、及び改質でんぷん、特にデンプングリコール酸ナトリウムが含まれる。
【0057】
本発明によると、前記超崩壊剤は、前記組成物の全重量に対して、0.1〜10%(w/w)、好ましくは0.5〜8%(w/w)、より好ましくは2.5〜6%(w/w)の量で錠剤に存在する。前記超崩壊剤は、単一の超崩壊剤または超崩壊剤の組合せであってもよく、または、例えば、でんぷん、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメローセナトリウム、予備ゲル化でんぷん、クレイ、セルロース、粉末セルロース、予備ゲル化でんぷん、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、グアーガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ポラクリリンカリウム等のような一つ以上の通常の崩壊剤と組み合わせて用いられてもよい。
【0058】
したがって、本発明の他の組成物は、上記量のオキシ水酸化鉄、1.0〜50%(w/w)、好ましくは5.0〜30%(w/w)の量の選択した安定化剤、1.0〜50%(w/w)、好ましくは5.0〜30%(w/w)の量の安定化剤とは異なる選択した賦形剤として、0.1〜10%、好ましくは0.5〜8%(w/w)、より好ましくは2.5〜6%(w/w)の量の超崩壊剤を含有する賦形剤、及び0.1〜50ppm(w/w)、好ましくは1〜10ppm(w/w)、より好ましくは1〜5ppm(w/w)の量の選択した味増強剤、及び/または0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)、より好ましくは0.1〜1%(w/w)の量の選択した風味剤を含有してもよく、前記全ての重量範囲は、前記組成物の全重量に対する相対値である。
【0059】
また他の実施例において、本発明の組成物は、さらに流動促進剤及び/または滑剤を含有してもよい。
【0060】
本願に用いられた用語の「流動促進剤」及び/または「滑剤」は、適した流動性、圧縮率等を達成することにより、錠剤の製造を円滑に行うために用いられる添加剤の群を指す。適した流動促進剤としては、これに制限されないが、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリン、グリセリルパルミトステアレート、水添ヒマシ油、硬化植物油タイプI、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、滑石、ステアリン酸亜鉛、シリカ誘導体、例えば、コロイド状シリカ(例えば、Aerosil(登録商標))、焼成シリカ、ケイアルミン酸ナトリウム水和物、コロイド状二酸化ケイ素、及び鉱油及び軽油が挙げられる。
【0061】
好ましい流動促進剤としては、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、コロイド状シリカが挙げられる。
【0062】
一実施例において、選択した流動促進剤は、前記組成物の全重量に対して、0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)、最も好ましくは1〜2%(w/w)の量で存在してもよい。
【0063】
口腔で迅速な崩壊が可能な経口投与形態に特に用いられる追加の添加剤は、嚥下を容易にする唾液分泌促進剤(唾液生成を刺激する化合物)を含有してもよい。これらは、一般に薬剤学的に許容される酸であり、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸塩、または化合物Optamint(登録商標)及びOptaflow(登録商標)である。前記酸性化合物、例えば、クエン酸の使用により鉄放出が増加しないように注意を要し、このため、前記物質の量は適宜選択されなければならない。一実施例において、選択した酸は、前記組成物の全重量に対して、0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)、最も好ましくは2〜5%(w/w)の量で存在してもよい。
【0064】
上述のように、医薬組成物は、無機リン酸塩の選択的な除去のための経口投与、特に、完全な嚥下のためのフィルムコートされた投与形態として、または(口腔または摂取前少量の液体での)崩壊可能な投与形態として、経口伝達システムとしての投与に適した形態である。
【0065】
したがって、本発明の医薬組成物は、経口投与に適した任意の投与形態を含めて、特に、完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)投与形態、または咀嚼可能な形態、乾燥粉末、顆粒、前記顆粒を含むカプセルまたはサシェ、ウエハ、フィルム、トローチ剤等を含む、(摂取後口腔または摂取前少量の液体での)迅速な崩壊が可能な形態の錠剤及び丸薬を含む。
【0066】
好ましい投与形態には、完全な嚥下のための(例えば、フィルムコートされた)形態、または咀嚼可能な形態の錠剤及び丸薬、顆粒、及び前記顆粒を含むカプセルまたはサシェ、及びトローチ剤が含まれる。
【0067】
所望の場合、フィルムコートされた、経口投与可能な投与形態の場合、これらは完全に嚥下され、崩壊は胃腸で行われ、ここで、リン酸塩吸着のための活性剤が放出され、その全身吸収を減少させる。
【0068】
本願に用いられた用語の「フィルムコートされた」は、打錠される錠剤、ビーズ、顆粒、または錠剤に打錠される活性成分の粒子に一般に適用される薬剤学的に許容される賦形剤の混合物に関するものである。あるいは、これは、活性成分と組合せ、混合、または添加されてもよい。選択したコーティングは活性剤と必ず相溶性でなければならないことが理解されている。当業者が、コーティングを作る賦形剤、その類型及び/またはその厚さを選択することにより、胃腸で崩壊されるコーティングの取扱い方法が分かることが理解されている。
【0069】
好ましい実施例において、フィルムコーティングは、オキシ水酸化鉄及び少なくとも一つ以上の圧縮形態の賦形剤を含有する医薬組成物に適用される。
【0070】
本発明によるフィルムコーティングに適した重合体は、例えば、単独及び/またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)と組み合わせたヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂、及びポリビニルピロリドン及びゼラチン、またはその他市販されて入手可能なフィルムコーティング製剤、例えば、Dri−Klear(登録商標)(Crompton &Knowles Corp.,Mahwah, N.J.)またはOpadry(登録商標)(Colorcon, West Point Pa.)のように、約1.2〜5のpHにおいて可溶性である。
【0071】
本発明の好ましいフィルムコーティングは、水溶性の、フィルム形成樹脂、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリエチレングリコール(またはその他の適した可塑剤、例えば、プロピレングリコールまたはグリセリン)を含有し、任意では二酸化チタン(またはその他の着色剤または乳白剤)を含有する水性フィルムコーティングについて考案された市販のフィルムコーティング製品を含めてなる。前記製品は、商品名Opadry(登録商標) White(Colorcon, West Point Pa.)で市販されており入手可能である。
【0072】
コーティングに適したブレンドは、0〜約20%w/wの二酸化チタンまたは着色剤、約5〜95%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び0〜約25%w/wのポリエチレングリコールを含有してもよい。最も好ましい実施例は、コーティングの全重量に対して、7.5%がOpadry(登録商標)である、10.5%の非水添加剤を含有する。
【0073】
前記コーティング用ブレンドは、さらに風味剤、味マスキング剤、及び上記定義された唾液分泌促進剤を、例えば、コーティングブレンドの全重量に対して、0.1〜1.0%(w/w)、好ましくは0.1〜0.4%のように少量で含有してもよい。好ましい風味剤及び/または味マスキング剤は、上記定義された薬剤の群から選ばれてもよい。好ましい量は、核錠の味を遮蔽し、それとは関係ない、特徴的かつ良い味を提供するのに十分な量を添加するという目標と、錠剤が砂糖菓子製品とあまり類似しないようにするという目標とのバランスを取ることにより容易に決定される。風味剤及び/または味マスキング剤の所望の強度は、錠剤の類型、対象とする受容者、及び風味剤及び/または味マスキング剤の独自性によって異なり得る。
【0074】
錠剤に沈着されるコーティングの量は、一般に約1.0%〜約6.0%重量増加、好ましくは2.0%〜4.0%重量増加の範囲であり、これは、コーティングされていない錠剤に対するコーティング時の錠剤の重量増加を意味する。
【0075】
経口投与可能な、迅速に崩壊する投与形態の場合、投与後、直ちに崩壊が行われ、活性剤の迅速な放出を可能にし、または口腔内に活性剤を含む小さな粒子を形成する。適した崩壊速度は、1秒〜3分の範囲である。好ましい崩壊時間は、一般に標準ヨーロッパ薬局方の試験方法で測定された30秒未満である。
【0076】
したがって、一実施例において、剤形物は、特に1つ以上の甘味料、味増強剤、風味剤、超崩壊剤、流動促進剤、酸化防止剤等を含む、オキシ水酸化鉄、安定化剤、賦形剤(安定化剤とは異なる)を含有し、直接打錠法のような標準打錠技法及び乾式造粒によって製造される錠剤である。湿式加工技法は、避けなければならない。これは、有機溶媒、一般的にイソプロパノールを用いる場合、製品仕様と相溶的ではない溶媒が乾燥後顆粒に残るからである。湿式造粒に対する溶媒として水を用いる場合、本発明のリン酸塩吸着組成物に対して、いずれの状況でも避けなければならない、製品からの鉄放出が増加する。押出技法は、高担持量の鉄を用いたとき、リン酸塩吸着特性を殆ど示さないため、本発明には適しない小さく硬いボールを形成するという問題を引き起こす。
【0077】
乾式造粒時、粉末化成分は、一般に予備打錠と言われる圧縮前に混合され、残りの成分の添加及び最終打錠前に粉砕及び篩いにかけられる硬いスラグを提供する。
【0078】
好ましくは、本発明の組成物は、直接打錠法で製造するが、これは、錠剤製造のための最も単純かつ経済的なプロセスとみなされる。
【0079】
本発明の好ましい実施例において、本発明の組成物は、殆どの成分(成分の全重量の50%超過、好ましくは70%超過、最も好ましくは90〜100%)例えば、表1に示す成分を水性懸濁液(乾燥物質の量は、例えば、1〜50%(w/w)、好ましくは10〜40%(w/w)、より好ましくは20〜30%(w/w))の形態で混合し、前記懸濁液を空気または好ましくは窒素に135〜200℃の温度に露出させる通常の条件下の公知された噴射乾燥法に適用させ、流動性粉末を得るが、これは、任意では後続的に追加の成分(例えば、表2に示すもの)と混合し、後続して10〜20kNの圧力の範囲下で直接打錠して錠剤を得る。
【0080】
好ましくは、懸濁液は、3〜9%(w/w)、より好ましくは4〜8%(w/w)、最も好ましくは6%(w/w)の鉄を含有する。
【0081】
噴射乾燥カラムの直径及び高さは、十分大きくするように注意を払う。さらに、温度は、賦形剤及びその他の成分が、溶融もされず、カラメルにもならない範囲内で選択しなければならない。このように製造されたものは全て、本発明には適しない乾燥粉末に誘導せず、溶融固化物に誘導する。
【0082】
好ましくは、打錠前の流動性粉末は、先ず乾式加圧成形で圧縮して、微細粉末(ダスト)の量を減らし、粒径を均質にする。かくして得られた錠剤では、25〜400Nの範囲の硬度が達成される。圧縮される混合物から得られる錠剤の硬度が、咀嚼可能な錠剤については50〜100N、コートされた錠剤または嚥下錠剤の場合は、100〜200Nの範囲に圧力を調整する。前記範囲を用いる場合、得られた錠剤の崩壊速度は、ヨーロッパ薬局方で要求する仕様以内である。
【0083】
驚くべきことに、特に本発明の方法によって、例えば、錠剤強度、崩壊挙動等の側面において適した特性を有する錠剤を得るために必要な賦形剤の量が減少され、これにより、高担持量のオキシ水酸化鉄を有する、特に錠剤形態である医薬組成物を製造することができることを発見した。
【0084】
成分の正確な量は、錠剤の大きさ及び深さを決定するということが分かった。迅速な崩壊が(口腔で、例えば咀嚼可能な錠剤または摂取前少量の溶液で)可能な錠剤は、任意の幾何学的形態、例えば、円形、四角形、三角形等を有してもよい。一般に、これらは円形であり、好ましくは15〜30mm、最も好ましくは20mmの直径、及び2〜8mm、好ましくは4〜6mmの高さを有する。完全な嚥下のためにフィルムコートされた錠剤は、一般に、例えば約19mmの長さ、10mmの幅、及び8mmの高さを有する楕円形である。これらの例示は、単に説明のためのものであり、制限のためのものではない。当業者は、全体成分の量によって適切な形態を選択することができる。
【0085】
投与量を投与する間、成分を結びつけるとともに、口腔では容易な崩壊を可能にする十分な圧縮が必要である。一般に10〜20kNが用いられる。
【0086】
また他の実施例において、医薬組成物は、口腔での崩壊または少量の水での迅速な溶解に十分な顆粒の形態である。顆粒は、高せん断造粒または好ましくは流動層造粒または(乾式)混合過程によって製造される。上述のように、溶媒を用いる湿式技法は避けなければならない。顆粒は、貯蔵及び口腔への投与のために、カプセルまたはサシェに充填されてもよい。
【0087】
追加の実施例において、噴射乾燥に対する代案として、医薬組成物は、ウエハの形態で提供されてもよい。ウエハは、粉末を圧縮し、またはケーキを凍結乾燥し、または懸濁液、エマルション、またはゲルを蒸発させて成形することができる。代案としては、混合された乾燥材料は、圧縮機またはローラ間で平坦にし、または圧縮させて粉末を、例えば、口腔に挿入可能な適当な大きさに切断されるシートに成形する。一実施例において、ウエハは、活性剤、溶媒、結合剤、またはその他の添加剤を水のような溶媒に懸濁させて成形する。所定量の懸濁液をプラスチック用金型内のウェルに入れ、ウェル内で凍結乾燥させ、水を除去してウエハを成形する。
【0088】
上述のように、本発明の組成物は、本質的に非生体吸収性であるオキシ水酸化鉄の周知の適応症での使用、特に高リン血症の治療のような無機リン酸塩の選択的な除去のために示すものである。
【0089】
したがって、追加の面において、本発明は、高リン血症の治療での使用のための組成物を提供する。
【0090】
また他の面において、本発明は、高リン血症の治療が必要な患者に本発明の組成物を投与することを含む、高リン血症の治療方法を提供する。
また他の面において、本発明は、高リン血症治療用の薬剤製造における本発明の組成物の用途を提供する。
【0091】
本発明の組成物の有用性は、標準臨床試験で観察することができる。
【0092】
投与すべきオキシ水酸化鉄及び組成物の正確な量は、いくつかの因子、例えば、疾患の重症度、所望の治療期間等に左右される。
【0093】
本発明は、下記の具体的な、非制限的である実施例に基づいてさらに詳述される。
【実施例】
【0094】
直接打錠法は、10〜20kNの圧力で標準打錠機を用いて行った。噴射乾燥法は、135〜200℃の温度で行った。
【0095】
錠剤試験方法:
錠剤軽度及び崩壊時間は、標準ヨーロッパ薬局方の試験法によって測定した。
【0096】
実施例1:安定化したオキシ水酸化鉄予備混合物の製造
表1による量/比率のオキシ水酸化鉄懸濁液(EP0 868 125 B1によって製造する)及び賦形剤を混合して、安定化したオキシ水酸化鉄予備混合物を製造した。前記懸濁液を135〜200℃の噴射乾燥に適用し、流動性粉末状の予備混合物を得た。前記予備混合物を直接打錠法に適用し、表1に示す組成の錠剤を得た。
【0097】
【表1】

1)安定化剤
2)充填材/崩壊剤
3)安定化剤/結合剤/充填材/崩壊剤
4)超崩壊剤
5)約5%の乾燥重量(その他の成分の総合)の残量部分を除き、乾燥後の予備混合物には、水はこれ以上存在しない。
【0098】
実施例2:錠剤の製造
表2による成分を混合して乾燥混合物を得、直接打錠法に適用して錠剤を得た。
【表2】

【0099】
実施例3:錠剤のフィルムコーティング
実施例2により得られたが、単に50%の分量のみを有する錠剤を矩形状に打錠し、後続して下記表による成分を混合してフィルムコートした(2〜5%の重量増加)。
【0100】
【表3】

【0101】
実施例4:顆粒
下記表による成分を添加することにより、実施例1eによって得た粉末を、造粒液体としてイソプロパノールを用いた高せん断造粒によって湿潤造粒した。
【0102】
【表4】

【0103】
実施例5:サシェまたはスティックパックへの充填のための、最終的な即時分散可能な顆粒の製造:
下記表による成分を混合して乾燥混合物を製造し、次に、サシェまたはスティックパックへの充填に適用した。
【0104】
【表5】

※コーラ、バーベナ、ブラックベリーのような「さわやかな風味」
【0105】
実施例6:サシェまたはスティックパックへの充填のための、最終的な即時分散可能な顆粒の製造:
下記表による成分を混合して乾燥混合物を製造し、次に、サシェまたはスティックパックへの充填に適用した。
【0106】
実施例7:流動性粉末の製造
9.6kgFeOOH(6.0kgFeに該当)を表7aに示す量の賦形剤及びアジュバントと一緒に水に懸濁させた。100kgの懸濁液を噴射乾燥に適用させた。得られた粉末の鉄含量を7bに示す。
【0107】
【表7a】

1)ジャガイモでんぷん
2)予備ゲル化でんぷん、Roquetteから入手可能である
【0108】
【表8】

1)ハロゲン水分分析機で測定した乾燥時損失量(不変質量;質量での変化は180秒当たり1mg以下である)
【0109】
実施例8:得られた流動性粉末の打錠
実施例7a)乃至g)で得られた製品を表9aに示す成分と混合し、得られた混合物の錠剤を成形した。Fe含量、pH3でのFe放出量、及び得られた錠剤のリン酸塩吸着は、表9bに示す。
【0110】
Fe放出量は、論文に記載された標準溶解装備及び基準を用いて、ヨーロッパ薬局方第2.9.3章に基づいて測定した。試験媒質は水であり、pH3は塩酸を用いて調整した。試料を2時間後取り、鉄含量を滴定分析した。
【0111】
リン酸塩吸着は、得られた錠剤を規定量の特定濃度のリン酸塩溶液に溶解させ、pHを3に調整し、2時間の間37℃で反応させ、遠心分離し、上澄みを取り出し、イオンクロマトグラフィまたは光度定量によって、リン酸塩含有量を測定することにより、WO 2006/000547に記載のとおり測定した。
【0112】
【表9a】

【0113】
【表9b】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与に適した形態である高担持量のオキシ水酸化鉄を含有する医薬組成物。
【請求項2】
完全な嚥下のためのフィルムコーティング投与形態、または口腔での崩壊が可能な投与形態としての経口投与に適した形態である高担持量のオキシ水酸化鉄を含有する医薬組成物。
【請求項3】
少なくとも一つ以上の炭水化物及び/またはフミン酸を含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
炭水化物が、単糖類、二糖類、または多糖類、例えば、アガロース、デキストラン、デキストリン、デキストラン誘導体、セルロース及びセルロース誘導体、蔗糖、マルトース、またはラクトース、好ましくは、蔗糖、デキストリン、及びでんぷんからなる群より選ばれる請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
オキシ水酸化鉄が、ベータオキシ水酸化鉄を含有している請求項1乃至4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
オキシ水酸化鉄が、組成物の全重量に対して、10〜80%(w/w)、好ましくは30〜65%(w/w)の量で存在する請求項1乃至5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
炭水化物及び/またはフミン酸が、組成物の全重量に対して、1〜50%(w/w)、好ましくは5〜30%(w/w)の総量で存在する請求項1乃至6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
一つ以上の風味剤、甘味料、味増強剤、及び/または着色剤をさらに含有する請求項1乃至7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
甘味料が、糖、ポリオール、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファミンK、及び/またはサッカリンから選ばれる天然または非天然の甘味料であり、味増強剤が、グリコシド、例えば、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、グルタミン酸塩から選ばれる請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
それぞれ組成物の全重量に対して、甘味料が0.01〜2.5%(w/w)の量で存在し、味増強剤が0.1〜10ppmの量で存在する請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
風味剤が、組成物の全重量に対して、0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)、最も好ましくは0.1〜1%(w/w)の量で存在する請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
一つ以上の賦形剤、例えば、超崩壊剤、流動促進剤、酸化防止剤をさらに含有する請求項1乃至11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
超崩壊剤が、架橋ポリビニルピロリドン、改質でんぷん、及び改質セルロースからなる群より選ばれる請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
超崩壊剤が、組成物の全重量に対して、0.1〜10%(w/w)、好ましくは0.5〜8%(w/w)、より好ましくは2.5〜6%(w/w)の量で存在する請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
流動促進剤が、ステアリン酸マグネシウム、シリカ誘導体、例えば、コロイド状シリカ、焼成シリカ、ケイアルミン酸ナトリウム水和物、コロイド状二酸化ケイ素、滑石、及びこれらの混合物、好ましくは、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状シリカ、または滑石からなる群より選ばれる請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
流動促進剤が、組成物の全重量に対して、0.01〜10%(w/w)、好ましくは0.1〜5%(w/w)の量で存在する請求項12または15に記載の組成物。
【請求項17】
それぞれ組成物の全重量に対して、オキシ水酸化鉄を10〜80%(w/w)の量で、少なくとも一つ以上の炭水化物及び/またはフミン酸を合計1.0〜50%(w/w)の量で、任意では一つ以上の賦形剤を合計1.0〜50%(w/w)の量で、一つ以上の味増強剤を合計0.1〜10ppmの量で、及び/または一つ以上の風味剤を合計0.01〜10%(w/w)の量で含有する請求項1乃至16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
一つ以上の超崩壊剤を合計0.1〜10重量%(w/w)で含有する請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
完全な嚥下のための形態または迅速な崩壊が可能な形態、例えば、咀嚼可能な錠剤または丸薬、乾燥粉末、顆粒、前記顆粒を含むカプセルまたはサシェ、ウエハ、またはトローチ剤である請求項1乃至18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
高リン血症治療用の薬剤製造のための請求項1乃至19のいずれかによる組成物の用途。
【請求項21】
慢性腎不全患者治療用の薬剤製造のための請求項1乃至20のいずれかによる組成物の用途。
【請求項22】
直接打錠法または乾式造粒によって、組成物を錠剤の形態にする請求項1乃至21のいずれかに記載の製造方法。
【請求項23】
最終組成物の全重量に対して少なくとも90%(w/w)の成分を含有する水性懸濁液を製造し、これを噴射乾燥に適用させて流動性粉末を得、これを任意で残りの成分と混合し、次いで打錠して錠剤を得る請求項1乃至22のいずれかに記載の組成物を錠剤の形態にする製造方法。
【請求項24】
請求項23による方法で得られる錠剤。
【請求項25】
任意で存在する錠剤コーティングの重量を除いた錠剤組成物の全重量に対して、オキシ水酸化鉄を40〜65%(w/w)の量で、蔗糖を5〜30%(w/w)の量で、でんぷんを5〜30%(w/w)の量で含有する錠剤。



【公表番号】特表2011−503148(P2011−503148A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533575(P2010−533575)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065444
【国際公開番号】WO2009/062993
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(505150084)ヴィフォー・インターナショナル・アーゲー (10)
【Fターム(参考)】