説明

医薬組成物

a)プロスタグランジン化合物、b)糖アルコール、c)ポリオール、d)医薬上許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。本発明の組成物はポリエチレン容器中でも安定に保存することができる。さらに、本発明の組成物はごく少量の保存剤しか含まなくとも長期間安定に保存できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジン化合物を含有する安定な医薬組成物に関する。さらに本発明は、ポリエチレン容器で保存する場合でもプロスタグランジン化合物が安定な医薬組成物に関する。また、本発明は、低濃度の防腐剤の存在下でも、十分な保存効力を有するプロスタグランジン化合物含有医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジン類(以後PG(類)として示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】

【0003】
一方天然PG類の幾つかの合成類似体は修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和結合の数と位置によって、以下の3つのタイプに分類される。
下付1:13,14−不飽和−15−OH
下付2:5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
下付3:5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
【0004】
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
【0005】
幾つかの15−ケト(すなわち、水酸基の代わりに15位にオキソ基を持つ)−PG類および13,14−ジヒドロ(すなわち、13位と14位の間が単結合である)−15−ケト−PG類は、天然PG類の代謝中に酵素の作用によって自然に産生する物質として知られており、いくらかの治療効果を有する。15−ケト−PG類は、米国特許第5073569号、米国特許5534547号、米国特許第5225439号、米国特許第5166174号、米国特許第5428062号、米国特許5380709号、米国特許第5886034号、米国特許第6265440号、米国特許第5106869号、米国特許第5221763号、米国特許5591887号、米国特許第5770759号、米国特許第5739161号明細書に開示されている。これらの公報の内容は引用により本明細書に含まれる。
【0006】
幾つかのPG化合物は、眼科領域において用いられる、例えば眼圧降下または緑内障治療のための薬物として知られている。例えば、13,14−ジヒドロ−17−フェニル−18,19,20−トリノール−PGF2αイソプロピルエステル(一般名:ラタノプロスト)、16−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−17,18,19,20−トリノール−PGF2αイソプロピルエステル(一般名:トラボプロスト)および17−フェニル−18,19,20−トリノール−PGF2αN−エチルアミド(一般名:ビマトプロスト)は、それぞれキサラタン(登録商標)、トラバタン(登録商標)およびルミガン(登録商標)なる名称の緑内障および/または高眼圧症治療用点眼液として既に市販されている。
【0007】
さらに、15−ケト−プロスタグランジン化合物は、眼圧降下剤および緑内障治療薬(米国特許第5001153号、米国特許第5151444号、米国特許第5166178号、米国特許第5194429号、米国特許第5236907号明細書)、白内障処置剤(米国特許第5212324号、米国特許第5686487号明細書)、脈絡膜血流量増加剤(米国特許第5221690号明細書)、視神経障害改善剤(米国特許第5773471号明細書)などの眼科領域の医薬品として有用であることも知られている(これらの公報の内容は引用により本明細書に含まれる)。特に13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αイソプロピルエステル(一般名イソプロピルウノプロストン)を含む点眼液が、レスキュラ(登録商標)という名称で、緑内障および高眼圧症治療用の医薬品として既に市販されている。
【0008】
緑内障および/または高眼圧症治療に用いられているいくつかのプロスタグランジン化合物は、ポリエチレン容器での保存では不安定であるため、ポリプロピレン容器で保存されている。また、例えば国際公開第00/03736号パンフレットおよび米国出願公開第2002/0058049号明細書に開示の実施例において用いられている医薬組成物は全て糖アルコールであるマンニトールが配合されている。
【発明の概要】
【0009】
[発明の開示]
本発明は、ポリエチレン容器でも安定に保存できるプロスタグランジン化合物を含む医薬組成物を提供することを目的とする。さらに、プロスタグランジン化合物および比較的低濃度の防腐剤を含む、十分な安定性をもって保存可能な医薬組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明者は、PG化合物に糖アルコールおよびポリオールを配合した医薬組成物が、ポリエチレン容器での保存においてもPG化合物の安定性に優れた効果を発現することを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)(a)プロスタグランジン化合物、(b)糖アルコール、(c)ポリオールおよび(d)医薬上許容し得る担体を含有する医薬組成物。
(2)プロスタグランジン化合物が下記一般式(I)で表される化合物である、(1)記載の医薬組成物:
【化2】

[式中、W、WおよびWは、炭素または酸素原子であり;
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソであり(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは水素以外の基であり、W、WまたはWが酸素原子である場合はその酸素原子に結合するL、MまたはMは存在せず、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−であり;
Zは
【化3】

であり(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシまたは低級アルコキシとなることはない);
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい);
Raは非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;または複素環オキシ基である(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい)]。
(3)プロスタグランジン化合物が下記一般式(II)で表される化合物である、(1)記載の医薬組成物:
【化4】

[式中、LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソであり(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−であり;
Zは
【化5】

であり(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシまたは低級アルコキシとなることはない);
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲンであり;
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい);
は、単結合または低級アルキレンであり;
は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環-オキシ基である]。
(4)プロスタグランジン化合物が、イソプロピルウノプロストンである、(1)記載の医薬組成物。
(5)さらに非イオン性界面活性剤を含有する、(1)記載の医薬組成物。
(6)緑内障および/または高眼圧症または網膜色素変性症の処置に用いられるものである、(1)記載の医薬組成物。
(7)糖アルコールがマンニトール、ソルビトール、マルチトール、トウモロコシデンプン由来糖アルコール液あるいは還元麦芽糖デンプン水アメである、(1)記載の医薬組成物。
(8)糖アルコールがマンニトールである、(7)記載の医薬組成物。
(9)ポリオールがグリセリン、プロピレングリコールあるいはポリエチレングリコールである、(1)記載の医薬組成物。
(10)ポリオールがグリセリンである、(9)記載の医薬組成物。
(11)眼局所投与に適した製剤である、(1)記載の医薬組成物。
(12)点眼剤として調製されている、(1)記載の医薬組成物。
(13)ポリエチレン容器に保存された、(1)記載の医薬組成物。
(14)ポリエチレン容器が低密度ポリエチレンでできている、(13)記載の医薬組成物。
(15)医薬上許容し得る担体が水である、(1)記載の医薬組成物。
【0012】
本発明のPG化合物の命名に際しては前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
【0013】
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向って順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消し、α鎖上で増加する場合2位にカルボキシル基(1位)に代わる置換基がついたものとして命名する。同様に、炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から炭素の番号を順次減じ、ω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は20位における置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特にことわりのないかぎり、上記式(A)の基本骨格の有する立体配置に従うものとする。
【0014】
また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有する化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デオキシ−9−置換体あるいは11−デオキシ−11−置換体の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有する場合は、単に9あるいは11−デオキシ化合物と称する。
【0015】
前述のように、本発明ではプロスタグランジン化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、化合物が天然プロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、即ち、α鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−PG化合物と命名する。同様にα鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
【0016】
本発明で使用するPG化合物は、あらゆるPGの置換体あるいは誘導体を包含してよい。従って、例えば13−14位に二重結合を有し、15位に水酸基を有するPG化合物、さらに5−6位にもう一つの二重結合を有するPG化合物、さらに17−18位に二重結合を有するPG化合物、15位の水酸基の代わりにオキソ基を有する15−ケト−PG化合物、15位の水酸基の代わりに水素を有する15−デオキシ−PG化合物、15位の水酸基の代わりにフッ素を有する15−フルオロ−PG化合物あるいはこれらの13−14位の二重結合が単結合となった13,14−ジヒドロ−PG化合物もしくは13−14位の二重結合が三重結合となった13,14−ジデヒドロ−PG化合物のいずれであってもよい。また、置換体または誘導体を含む類似体の例としては、上記化合物のα鎖の末端カルボキシル基がエステル化あるいはアミド化された化合物、生理学的に許容し得る塩、α鎖またはω鎖の炭素数が減少あるいは延長された化合物、α鎖またはω鎖上に側鎖(例えば炭素数1〜3)を有する化合物、5員環上にヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルおよびオキソ等の置換基あるいは二重結合を有する化合物、α鎖上にハロゲン、オキソ、アリールおよび複素環基等の置換基を有する化合物、ω鎖上にハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環および複素環-オキシ基等の置換基を有する化合物、ω鎖が通常のプロスタン酸より短い化合物のω鎖末端に低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基および複素環-オキシ基等の置換基を有する化合物などが挙げられる。
【0017】
本発明で使用される好ましいプロスタグランジン化合物は、下記式(I)によって示されるものである:
【化6】

[式中、W、WおよびWは、炭素または酸素原子であり;
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソであり(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは水素以外の基であり、W、WまたはWが酸素原子である場合はその酸素原子に結合するL、MまたはMは存在せず、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−であり;
Zは
【化7】

であり(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシまたは低級アルコキシとなることはない);
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい);
Raは非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;または複素環オキシ基である(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい)]。
【0018】
本発明において用いられるより好ましいPG化合物は、下記式(II)によって示されるものである:
【化8】

[式中、LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソであり(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−であり;
Zは
【化9】

であり(RおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシまたは低級アルコキシとなることはない);
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲンであり;
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい);
は、単結合または低級アルキレンであり;
は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環-オキシ基である]。
【0019】
[発明を実施するための最良の形態]
上式(I)中、RおよびRaにおける「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、少なくとも1つまたはそれ以上の2重結合および/または3重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和は両方の位置番号を表示して示す。
【0020】
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素基を意味し、好ましくはRの場合炭素数1〜10、特に好ましくは6〜10の炭化水素であり、Raの場合炭素数1〜10、特に好ましくは1〜8の炭化水素である。
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
【0021】
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−の基を意味する。
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルである。
【0022】
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキル基が酸化されて生じるアシル基、例えばアセチル)で示される基を意味する。
「低級シクロアルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
「低級シクロアルキルオキシ」の語は、低級シクロアルキルが上述と同意語である低級シクロアルキル−O−の基を意味する。
【0023】
「アリール」の語は、非置換または置換芳香性炭化水素環(好ましくは単環性の基)を包含し得、例えばフェニル、トリル、キシリルを含む。置換基としては、ハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲン原子および低級アルキル基は前記の意味)が含まれる。
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール基)で示される基を意味する。
【0024】
「複素環基」の語は、置換されていてよい炭素原子および、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される1〜4、好ましくは1〜3の1または2種のヘテロ原子を有する5〜14、好ましくは5〜10員環である単環から三環、好ましくは単環複素環基を含み得る。複素環基の例には、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、2−ピロリニル、ピロリジニル、2−イミダゾリニル、イミダゾリジニル、2−ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、インドリル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、プリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナントリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンゾチアゾリル、フェノチアジニルが含まれる。この場合の置換基の例には、ハロゲンおよびハロゲン置換低級アルキル基(ここでハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が含まれる。
【0025】
「複素環−オキシ基」の語は、式HcO−(ここでHcは前記の複素環基である)により表される基を意味する。
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
【0026】
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩基との塩を含み、例えば無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等があげられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の方法によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0027】
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、sec−ブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル;オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル;オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル;ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル;エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル;ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテル等のヒドロキシ(低級)アルキルエーテル;メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル;および例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の随意により置換されたアリールエーテル;ベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルがあげられる。
【0028】
エステルの例としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル;ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル;エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル;ヒドロキシエチルエステル等のヒドロキシ(低級)アルキルエステル;メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステル;のような脂肪族エステル;および例えばフェニルエステル、トシルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の随意により置換されたアリールエステル;ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルがあげられる。
【0029】
Aのアミドとしては、式−CONR’R’’で表される基を意味する。ここで、R’およびR’’はそれぞれ水素原子、低級アルキル、アリール、アルキル−あるいはアリール−スルホニル、低級アルケニル及び低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド;アニリド、トルイジド等のアリールアミド;メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミド、トリルスルホニルアミド等のアルキル−もしくはアリール−スルホニルアミド等があげられる。
【0030】
好ましいLおよびMの例は、ヒドロキシまたはオキソであり、いわゆるPGEまたはPGFタイプと称される5員環構造を有するものである。
【0031】
好ましいAの例は−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステルまたはアミドである。
好ましいBの例は−CH−CH−であり、いわゆる13,14−ジヒドロタイプと称される構造を有するものである。
【0032】
好ましいXおよびXは水素または少なくとも一方がハロゲンであり、好ましくは両方がハロゲンである。特に好ましくは両方がフッ素であり、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を有するものである。
【0033】
好ましいZは=O、または
【化10】

(RおよびRの一方が水素、他方がヒドロキシである)であり、より好ましくはZは=Oであり、いわゆる15−ケトタイプと称される構造を有するものである。
【0034】
好ましいRは非置換の二価の飽和または不飽和、低〜中級脂肪族炭化水素残基である。特に好ましくは1〜10の炭素原子、最も好ましくは6〜8の炭素原子を含有する(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい)。
【0035】
の具体例としては、例えば、次のものがあげられる。
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH−、
−CH−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
など。
【0036】
好ましいRaは炭素数1〜10の炭化水素であり、より好ましくは1〜8の炭化水素であり、特に好ましくは5〜7の炭化水素であり、さらに炭素数1の側鎖を1または2有していてもよい。
【0037】
好ましいRは単結合である。
【0038】
好ましいRは低級アルキルであり、特に好ましくは炭素数4〜6の低級アルキルであり、さらに炭素数1の側鎖を1または2有していてもよい。
【0039】
上記式(I)および(II)中、環、αおよび/またはω鎖の配置は、天然のPG類の配置と同様かまたは異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然の配置を有する化合物および非天然の配置を有する化合物の混合物も包含する。
【0040】
本発明の典型的な化合物の例は、13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF化合物、13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE化合物、11−デオキシ−13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE化合物、18,19,20−トリノル−17−フェニル−PGF化合物およびそれらの誘導体あるいは類似体である。
【0041】
本発明で用いる15−ケト−PG化合物において、11位のヒドロキシと15位のオキソ間のへミアセタール形成により、ケト−ヘミアセタール平衡を生ずる場合がある。
【0042】
例えば、XおよびXの両方がハロゲン、特にフッ素の場合は、互変異性体として、二環式化合物が存在することが確認されている。
【0043】
このような互変異性体が存在する場合、両異性体の存在比率は他の部分の構造または置換基の種類により変動し、場合によっては一方の異性体が圧倒的に存在することもあるが、本発明で用いる15−ケト−PG化合物はこれら両者を含むものとする。
【0044】
さらに、本発明に用いられる15−ケト−PG化合物は、二環式化合物およびその類似体または誘導体を含む。二環式化合物は下記式(III)で示される。
【化11】

(III)
【0045】
[式中、Aは−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
’およびX’は水素、低級アルキル、またはハロゲンであり;
Yは
【化12】

であり(R’およびR’は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R’およびR’は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない);
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよく;
’は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;または複素環オキシ基であり;
’は水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基である]。
【0046】
さらに本発明に用いられる化合物は、異性体の存在の有無にかかわりなくケト型の構造式または命名法によって表わすことがあるが、これは便宜上のものであってヘミアセタール型の化合物を排除しようとするものではない。
【0047】
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
【0048】
本発明に使用する化合物のあるものは、米国特許第5073569号、米国特許第5166174号、米国特許第5221763号、米国特許第5212324号、米国特許第5739161号、米国特許第6242485号明細書(これらの公報の内容は引用により本願明細書に含まれる)等に記載の方法によって製造し得る。
【0049】
以下に示す13,14−ジヒドロ−15−ケト−プロスタグランジン化合物(互変異性体I)においては、その互変異性体として互変異性体IIの式で表される二環式化合物と平行状態で存在し得ることが知られている(米国特許第5166174号、米国特許第5225439号、米国特許第5284858号、米国特許第5380709号、米国特許第5428062号および第5886034号明細書を参照)(これらの公報の内容は引用により本願明細書に含まれる)。
【化13】

【0050】
本発明のPG化合物は、種々の用途の医薬品の製造に有用であり、特に緑内障および/または高眼圧症、網膜変性症などの眼科領域の症状に対する処置剤として有用である。
【0051】
本発明にいう「処置」には、予防、治療、症状の軽減、症状の減退、進行停止等、あらゆる管理が含まれる。
【0052】
本発明の医薬組成物において、有効成分となるPG化合物は、前記に詳述した化合物を用いることができる。
本発明の水性組成物中における15−ケト−PG化合物の濃度は、使用する化合物、対象の種類、年齢、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与容量、処置期間等により異なり、適宜適切な濃度を選択しうるが、典型的には1日1〜4分割用量または持続形態で全身投与する場合は、1日あたり0.00001〜100mg/kgの投与量で通常十分な効果が得られうる。
【0053】
本発明の「医薬組成物」は、PG化合物を有効成分とする医療用製剤を意味し、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、吸入剤、噴霧剤、経口剤、注射剤(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、眼内等)などの形態で使用することができる。本発明の水性組成物中に配合されるPG化合物の濃度は、通常、組成物の総容積に対して0.0001〜10w/v%程度、好ましくは0.0001〜5w/v%程度、より好ましくは0.001〜1w/v%程度でありうる。
【0054】
本発明において用いられる糖アルコールとは、糖分子のアルデヒド基を水素還元して得られる水酸基を有する糖質であり、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、キシリトール、エリスリトールやトウモロコシデンプン由来糖アルコール液(ソルビトール、ソルビタン、マンニトール、デンプン加水分解の水素添加生成物の混合物)、還元麦芽糖デンプン水アメ(マルチトール、ソルビトール、オリゴ糖アルコールの混合物)などがあげられ、マンニトールが特に好ましい。本発明の医薬組成物に配合される糖アルコールの濃度は、通常、0.1〜5w/v%程度でありうる。
【0055】
本発明に用いられるポリオールは、多価アルコールであり、特に二価あるいは三価のアルコールが好ましく、例えばグリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどがあげられ、グリセリンが特に好ましい。本発明の医薬組成物に配合されるポリオールの濃度は、通常、0.1〜5w/v%程度でありうる。
【0056】
本発明の目的である「ポリエチレン容器で保存する場合でもPG化合物が安定な医薬組成物」を得るためには、PG化合物とともに糖アルコールとポリオールを含有しなければならない。糖アルコールとポリオールの存在比は、1:10〜10:1程度であれば良く、好ましくは1:5〜5:1程度である。
【0057】
本発明において、医薬上許容し得る担体とは、PG化合物を溶解あるいは懸濁させることのできる媒体であれば良く、蒸留水または生理食塩水の形態の水、あるいは食用油、鉱物油、流動パラフィン、これらの混合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0058】
本発明の医薬組成物が眼科製剤として提供される場合には、医薬上許容し得る担体は、蒸留水または生理食塩水の形態の水であることが好ましい場合がある。
【0059】
本発明の医薬組成物において、PG化合物の溶解度を改善する目的で、非イオン性界面活性剤を配合することができる。非イオン性界面活性剤とは、容易にイオン化される基を含まない界面活性剤を意味する。好ましい非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート20、60、80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などのポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類、ステアリン酸ポリオキシ類などが挙げられる。
【0060】
本発明の医薬組成物において、さらに例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの抗酸化剤;ホウ酸、ホウ砂、クエン酸などの緩衝剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジンなどの防腐剤を配合してもよい。塩化ベンザルコニウムが好ましい。本発明の医薬組成物中の保存剤の濃度は、組成物の総容積に対して0.001−0.05w/v%程度、好ましくは0.002−0.02w/v%程度でありうる。
【0061】
本発明の医薬組成物においては、1種類の有効成分を単独で当該組成物に含めることもできるし、また2種類以上の有効成分を併用して含めることもできる。複数の有効成分を併用する場合には、各々の含有量は、それらの治療効果や安全性等を考慮して適宜増減することができる。
【0062】
さらに、本発明の医薬組成物においては、本発明の目的に反しない限り、他の薬理活性成分を適宜含有させることもできる。
【0063】
本発明の医薬組成物において、PG化合物に糖アルコールとポリオールを配合することで、高度に安定な医薬組成物を提供することが可能となった。PG化合物と糖アルコールのみからなる従来の医薬組成物では安定性が乏しいために不可能であったが、本発明の医薬組成物はポリエチレン容器中でも安定に保存できる。また、本発明の医薬組成物は、より低濃度の防腐剤の存在下でも、十分な保存効力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明を実施例および比較例により、さらに詳細に説明するが、これらは例証のためにのみ示すのであって、決して本発明を限定するものではない。
[実施例1]
以下に示すw/v%となるように各成分を精製水に溶解し、無菌濾過して、以下の組成からなる被験液1を得た。
化合物A(13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2αイソプロピルエステル)
0.12% 化合物A
1.0% ポリソルベート80
1.0% マンニトール
1.9% グリセリン
0.05% エデト酸二ナトリウム
0.003% 塩化ベンザルコニウム
【0065】
得られた被験液1を無菌条件下において滅菌した低密度ポリエチレン(LDPE)容器に移し、25℃で12ヶ月および40℃で6ヶ月保存し、化合物Aの濃度を液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表1および表2に示す。
【0066】
【表1】

【表2】

【0067】
以上の結果より、被験液1中の化合物Aは、LDPE容器中で保存しても安定であり、よって本組成物は非常に安定で、かつ室温で長期間保存できることがわかる。
【0068】
[比較例1]
実施例1と同様にして以下の組成からなる被験液2を得た。
0.12% 化合物A
1.0% ポリソルベート80
4.86% マンニトール
0.1% エデト酸二ナトリウム
0.01% 塩化ベンザルコニウム
【0069】
[比較例2]
実施例1と同様にして以下の組成からなる被験液3を得た。
0.12% 化合物A
1.0% ポリソルベート80
2.43% マンニトール
0.43% 塩化ナトリウム
0.1% エデト酸二ナトリウム
0.01% 塩化ベンザルコニウム
【0070】
得られた被験液2および3をそれぞれ滅菌したLDPE容器に移し、55℃にて1ヶ月保存し、化合物Aの濃度を液体クロマトグラフを用いて測定した。結果を表3に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
比較例1および2の結果より、グリセリンを含まない被験液2および3では、化合物Aの安定性は担保できないことがわかる。
【0073】
[実施例2]
実施例1と同様にして以下の組成からなる被験液4を得た。
0.12% 化合物A
1.0% ポリソルベート80
2.0% マンニトール
1.49% グリセリン
0.05% エデト酸二ナトリウム
0.005% 塩化ベンザルコニウム
【0074】
[比較例3]
実施例1と同様にして以下の組成からなる被験液5を得た。
0.12% 化合物A
1.0% ポリソルベート80
2.0% マンニトール
0.52% 塩化ナトリウム
0.05% エデト酸ナトリウム
0.01% 塩化ベンザルコニウム
【0075】
こうして得られた被験液4および5を無菌条件下、滅菌された容器に詰め、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を注入し、均等に混合した。容器を20〜25℃で保存し、14および28日後に生菌数を測定した。生菌数測定は、カンテン平板混釈法を用いた。最初に混合した菌数からの経時的変化を、対数減少(log reduction)で表した。結果を表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
以上の結果より、マンニトールおよびグリセリンを含む被験液4においては、塩化ベンザルコニウムの量を低減しても抗菌力が良好に保たれることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロスタグランジン化合物、(b)糖アルコール、(c)ポリオールおよび(d)医薬上許容し得る担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
プロスタグランジン化合物が下記式(I)で表される化合物である、請求項1記載の医薬組成物:
【化1】

[式中、W、WおよびWは、炭素または酸素原子であり;
L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソであり、ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは水素以外の基であり、W、WまたはWが酸素原子である場合はその酸素原子に結合するL、MまたはMは存在せず、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−であり;
Zは
【化2】

であり、ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシまたは低級アルコキシとなることはなく;
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよく;
Raは非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環オキシ基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル;シクロ(低級)アルキルオキシ;アリール;アリールオキシ;複素環基;または複素環オキシであり、脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい]。
【請求項3】
プロスタグランジン化合物が下記式(II)で表される化合物である、請求項1記載の医薬組成物:
【化3】

[式中、LおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソであり、ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよく;
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体であり;
Bは、単結合、−CH−CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH−CH−CH−、−CH=CH−CH−、−CH−CH=CH−、−C≡C−CH−または−CH−C≡C−であり;
Zは
【化4】

であり、ここでRおよびRは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、RおよびRが同時にヒドロキシまたは低級アルコキシとなることはなく;
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲンであり;
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環基で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよく;
は、単結合または低級アルキレンであり;
は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環基または複素環-オキシ基である]。
【請求項4】
プロスタグランジン化合物が、イソプロピルウノプロストンである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
さらに非イオン性界面活性剤を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
緑内障および/または高眼圧症または網膜色素変性症の処置に用いられる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
糖アルコールがマンニトール、ソルビトール、マルチトール、トウモロコシデンプン由来糖アルコール液または還元麦芽糖デンプン水アメである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
糖アルコールがマンニトールである、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
ポリオールがグリセリン、ポリエチレングリコールまたはプロピレングリコールである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
ポリオールがグリセリンである、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
眼局所投与に適した製剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項12】
点眼剤として製剤化されている、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項13】
ポリエチレン容器に保存された、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項14】
ポリエチレン容器が低密度ポリエチレンでできている、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬上許容し得る担体が水である、請求項1記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2011−509237(P2011−509237A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507751(P2010−507751)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/JP2009/067586
【国際公開番号】WO2010/041722
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(592060271)株式会社アールテック・ウエノ (22)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】