説明

医薬組成物

【課題】インスリンの透過性が改善されたインスリンの経鼻送達するのに適した形状の薬学的組成物を提供する。
【解決手段】大環状浸透エンハンサ、水を含む液体担体、乳化剤、及び治療学的有効量の、ペプチド、ペプチドミメチック及びタンパク質からなる群より選ばれる、インスリン以外の医薬活性物質を含み、更に、ビタミンEアセテート、ヘキサデカン、オクチルパルミテート、ゴマ油、大豆油、ベニバナ油、アボガド油、パーム油及び綿実油からなる群から選択される、前記大環状浸透エンハンサのための結晶化阻害剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤送達に有用な組成物に関する。より詳細には、本発明は、エンハンサ、即ち、体内の膜を通る医薬活性化合物の通過速度を増大させる能力を有した材料、を含有する医薬組成物に関する。
【0002】
本発明は、最初にインスリンの鼻内送達に対する用途に関連して説明されている。しかし、本発明は、発明の詳細な説明に例示されるとおり、他の用途でも使用されうるものと解釈されるべきである。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、米国における上位4番目の死因である。I型糖尿病は、体内でのインスリン産生に伴う問題に関する。II型糖尿病は、体内でのインスリンの使用での問題に関し、そしてそのような問題は、体によるインスリン産生に伴う問題にも結びつき得る。インスリンは血液から細胞の内側にグルコースを輸送する機能を果たすホルモンであり、そこでグルコースは体にエネルギー源を提供する。糖尿病患者は多くの場合において、外因性インスリンの投与を要する。
【0004】
糖尿病を治療する種々の方法が開発されてきた。例えば、糖尿病は、インスリンの毎日の注射によって治療されてきた。しかし、この形態の治療は、不快であり、そして患者の遵守の問題を引き起こす。糖尿病を治療する別の方法は、インスリンを含む組成物の鼻内投与を含む。この形態の投与は比較的快適である。さらに最近では、注射によって投与された場合には抗原的影響を生じるある種の薬剤が、鼻内投与した場合には抗原的影響を生じないことが判明した。したがって、鼻内投与は、患者にとって免疫上の問題をほとんど引き起さない。本発明は、その範囲内に、糖尿病を治療するための鼻内法及び薬剤送達の他の態様を含む。
【0005】
研究報告
医薬活性化合物を含有する鼻内噴霧の形態として組成物を使用することによる、患者症状の治療が公知である。例えば、米国特許第5,989,535号では、インスリンを含む鼻内噴霧が開示される。しかし、例えば、インスリンを含む種々の医薬活性化合物は、効率的に鼻腔の粘膜を浸透しないため、このような鼻内スプレーによる成果は限定されている。
【0006】
医薬活性化合物の標的領域への送達を改善するエンハンサの使用が提案されている。例えば、本発明と同一譲受人に譲渡された、米国特許第5,023,252号(ディ.サイア(D.Hsieh))には、インスリンを含む組成物の鼻内スプレーを、エンハンサを含む組成物のスプレーで補足することを特徴とする二相システム(2つの別個の組成物)が開示されている。’252特許に開示される二相システムは、親油性であるエンハンサの溶液、及び親水性であるインスリンの溶液から構成され、そしてその溶液は、互いに非混和性である。しかし、このような二相システムの使用は、快適でない。
【0007】
医薬活性化合物の送達を改善するために、界面活性剤を使用することも提案されている。このような界面活性剤の例は、胆汁酸塩及びリン脂質である。界面活性剤が使用される系は、二相送達を必要としないかもしれないが、エンハンサとして界面活性剤を使用することは、このような界面活性剤によって粘膜へ刺激が与えられることが公知である点で不利である。実際に、有効量のインスリンの鼻内送達は、粘膜での刺激を示す量での界面活性剤の使用を必要とするという報告がある。例えば、ケイ.ドライアー(K.Drier)ら、ダイアベティック メディシン、第9巻、335−340頁(1992年)、並びにエム.ヒンチクリフ(M.Hinchcliffe)及びエル.イラム(L.Illum)、アドバンスト ドラッグ デリバリー レビュー、第35巻、199−234頁(1999年)参照。
【0008】
ミナスカニアンらに対する米国特許第5,118,676号、フランクールらに対する米国特許第5,196,410号、及び上記の’252号特許には、界面活性剤が、親油性エンハンサ及び医薬活性化合物を含有する、均質組成物の形成を促進する目的のために使用される組成物が開示されている。しかし、これを有効に達成するために必要とされる界面活性剤の量は、粘膜を刺激する量である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、患者症状を治療するために、インスリンなどの医薬活性化合物とエンハンサとを、例えば鼻内塗布によって送達するための改善された刺激のない手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エマルジョンの形態にあるとともに、(A)液体連続相と、(B)該連続相に分散された液滴と、(C)医薬活性化合物と、(D)サイア式エンハンサと、(E)親水コロイド乳化剤とを備える医薬組成物を提供する。好適な実施形態では、組成物は、例えばインスリンなどの医薬活性化合物の水性溶液からなる連続相、及びエンハンサの有機溶液からなる液滴を含有する。
【0011】
本発明の別の態様は、エマルジョンの形態にあるとともに、(A)連続相と、(B)該連続相に分散される液滴と、(C)医薬活性化合物と、(D)サイア式エンハンサと、(E)親水コロイド乳化剤とを備える医薬組成物を、上記患者に送達する工程を有することを特徴とする、患者症状の治療方法を提供する。このような方法は、例えば、組成物を、患者の鼻孔に噴霧する工程か、又は医薬組成物を、患者の眼の中、又は眼嚢に、滴下又は噴霧する工程を有し得る。
【0012】
本発明の範囲内の組成物は、患者の体の膜における医薬活性化合物及びエンハンサの均等な散布を提供すべく、噴霧、エアゾル化、又はネブライズされることが可能であるような、刺激のない、安定かつ均質な形態に製造可能である。本発明の組成物は、エンハンサが親油性であり、及び医薬活性化合物が親水性又は両親媒性である場合により好適である。
【0013】
本発明の組成物は、親油性エンハンサからなる第1の組成物と、親水性又は両親媒性の医薬活性化合物からなる第2の組成物とが別個に投与される、従来技術の二相送達システムに比べて多数の利点を有する単相システムの形態で製造されうる。従来技術の系のいくつかの不利益は、エンハンサ及び医薬活性化合物の均質な分布が確保されず、そしてエンハンサ及び医薬活性化合物が、標的の膜と同時に接触しないことである。対照的に、本発明はこのような親油性エンハンサ及び非親油性の医薬活性化合物が、安定かつ均質な組成で、その膜に同時に送達されうることを特徴とする単相送達システムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の組成物は、医薬活性化合物からなる。体の膜を通って送達されることが可能である、基本的に全ての医薬活性化合物、又は2種又はそれ以上のこのような化合物の混合物も、本発明の実施に使用できる。用語「医薬活性化合物」には、薬剤及び上記薬剤の前駆体、同種、塩、複合体、類似体及び誘導体を含む。化合物は、現実に、治療上、予防上、又は診断上のものでありうる。本出願の目的のために、用語「膜」は、皮膚及び粘膜を含む意味である。
【0015】
本発明の実施に使用されうる医薬活性化合物の例としては、インスリン、プロインスリン、プレプロインスリン、及びグルカゴン様ペプチド(GLP)などの糖尿病治療に有用な化合物と、カルシトニン及びカルシトニン遺伝子関連ペプチドと、成長ホルモンと、成長ホルモン放出剤と、ソマトスタチン(SRIF)及びそれの類似体などの癌治療剤と、ゴナドトロピン放出剤(GnRH、ルテイン化ホルモン放出ホルモンアゴニスト(LHRH)としても公知)と、アンチド(Antide)などのゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニストと、デルタ睡眠誘導ペプチド(DSIP)と、オピオイドと、抗肥満薬と、ハンバーガ・ペプチド及びその類似体などの抗炎症剤と、アンギオゲニン・アンタゴニストと、モルフィン調節ニューロペプチドなどの抗オピエートペプチドと、アルブテロールなどのベータ−アンタゴニストと、ジアゼパム、ミダゾラム、バルビツレート、パロキセチン、イミプラミン、及び関連向精神性化合物などの抗不安薬と、ベータ−ブロッカーと、食欲増進性化合物と、麻酔薬及びオピオイド鎮痛薬と、テストステロン、プロゲステロン、及びエストラジオールなどの性ホルモンと、甲状腺傍ホルモン(PTH)、甲状腺刺激ホルモン、胸腺液性因子(THF)及び小胞刺激ホルモン(FSH)などの代謝調節ペプチドが挙げられる。
【0016】
インスリンが使用される本発明の実施態様では、組成物は、患者におけるインスリン不全を治療可能な薬理有効量のインスリンを備える。基本的に全ての適切な形態のインスリン、その前駆体、コンジナー、及びその塩、複合体、類似体、及び誘導体を使用しうる。本発明の実施に使用可能なインスリンの塩の例は、インスリンの亜鉛塩である。本発明の実施に使用されうるインスリンの誘導体の例は、修飾形態の内部又は末端アミノ酸、例えば、リシン/プロリン置換インスリン誘導体を含むものである。このような誘導体は、合成で誘導されうる。水溶性形態のインスリン、その前駆体、コンジナー、及びその塩、複合体、類似体及び誘導体を、本発明の実施に使用しうる。ヒト組み換え型インスリンが最適である。本発明のインスリン含有組成物のpHは、インスリンがpH5〜pH7の間で臨界的な水溶性を示すため、好適には約7を超える。
【0017】
本発明の別の実施態様では、組成物は、薬理上有効量の成長ホルモンであり、或いはより好適には子供の成長を刺激するか、又は例えば、成人における筋肉弱体、体脂肪増加、及び皮膚脆弱などの加齢の破壊効果を打消す能力のある成長ホルモン放出剤を備える。基本的に全ての適切な成長ホルモン又は成長ホルモン放出剤を使用可能である。このような成長ホルモン放出剤の例としては、ソマトリベリン及び例えば、hGRF(1−29)アミド及びヘキサレリン(GHRP−6)などの成長ホルモン放出ホルモン活性フラグメントが挙げられる。特に好適な実施態様では、1種以上の成長ホルモン放出剤を組み合わせて使用しうる。好適な組み合わせは、成長ホルモン放出因子(GRF)及び成長ホルモン放出ペプチド(GHRP)を備える。この組み合わせは、内因性成長ホルモンの放出についての個々の機構によって作用することが報告されてきた。
【0018】
ホルモンの別の実施態様では、組成物は、前立腺癌を治療するか、又は線維症又は子宮内膜症の症状を軽減する能力がある、薬理上有効量の生殖ホルモンペプチドを含む。黄体形成ホルモン(LH)及びそれの類似体、小胞刺激ホルモン(FSH)及びそれの類似体、及びゴナンドトロピン放出ホルモン(GnRH−黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)としても知られる)及びその類似体、例えば、ゴセレリン、ナファレリン、ブセレリン、及びレウプロライドを含めて、基本的に全ての適切な生殖ホルモンペプチドを使用しうる。適切な生殖ホルモンペプチドの例は、ケイ.サエブ−パーシー(K.Saeb−Parsy)ら、インスタント ファーマコロジー、第57−62頁(1999年)にも記述されている。LHRH−ランプレイIII及びそれの密接に関連した類似体が、それらの比較的高い活性のために特に好ましい(ユ(Yu)ら、PNAS、94巻、9499頁(1997年))。
【0019】
本発明のさらに別の実施態様では、組成物は、痛みを減少させる能力のある医薬上有効量のオピオイドペプチド又はペプチドミメチック(合成ペプチド)を備える。基本的に全ての適切なオピオイドペプチド又はペプチドミメチックを使用しうる。適切なオピオイドペプチドの例としては、エンケファリン、エンドルフィン、エキソルフィン、ダイノルフィン、エンドモルフィン、シンジファリン、BAMペプチド、メトロファミド、及びバロルフィンが挙げられる。短いペプチドが好適であり、そして例えば、エンドモルフィンのような特に効能のある短いペプチドが特に好ましい。本発明のエマルジョンでの用途のために、このようなアルカロイドの遊離塩基が、酸性乳化剤を使用して形成されるエマルジョンを安定化する能力があるので、モルフィンクラスのオピエートアルカロイドが好適である。これは、さらにpH改質剤を必要とせず、結果として得られるエマルジョンを安定化する機能を発揮する。このようなオピエートアルカロイドの例は、モルフィン、コデイン、オキシコドン、ヒドロモルホン、フェンタニル、スフェンタニル、レボルファノール、メペリジン、メタドン及び同等物である。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様は、哺乳類、特にヒトにおける肥満を引き起こす障害を緩和する能力のある薬理上有効量の抗肥満薬を備える組成物である。基本的に全ての適切な抗肥満剤を使用しうる。このような剤の例としては、ガラニン、ボンベシン、グルカゴン及びグルカゴン様ペプチドのようなインクレチン、インスリン様成長因子、レプチン、メラノトロピン、メラノコルチン受容体と相互作用するペプチド、及びそれの類似体が挙げられる。グルカゴン及びグルカゴン様ペプチドが好ましく、そしてGLP−1は、特に好適である。レプチンも好適であり、そしてレプチン22−56(肥満遺伝子ペプチド)のようなレプチンフラグメントが特に好適である。例えば、アルファ−MSH及びそれらの類似体のようなメラノコルチン受容体と相互作用するペプチドが好適である(このようなペプチドは、食欲を減少させると報告されている(サイエンス、291巻、1691頁(2001年))。
【0021】
本発明の別の実施態様は、哺乳類、特にヒトにおける食欲を増大する能力のある、薬理上有効量の食欲増進化合物を含む組成物である。基本的に全ての適切な食欲増進化合物を使用しうる。このような食欲増進化合物の例としては、前述の抗肥満剤の拮抗薬として役割を果たす化合物が挙げられる(サイエンス、291巻、1691頁(2001年))。
【0022】
その遊離塩基が、酸性乳化剤のpHを改質する能力があり、したがって、結果として得られるエマルジョンの安定化を助けるブロンステッド−ローリー塩基(例えば、オピエートアルカロイド)である本発明に使用するための医薬活性化合物の種がある。このような塩基が使用される場合、エマルジョンの安定化を助ける目的のために、別のpH改質剤の使用を必要としないこともある。このような医薬活性化合物に関して、約9を超えるpKaを示す遊離塩基が好適であり、約9.5を超えるpKaを示すものは、特に好適である。
【0023】
本発明における医薬活性化合物として使用するためにも好適であるのは、中程度のサイズのペプチド、好ましくは約20キロダルトンより大きくない量の、最も好ましくは約10キロダルトンより大きくないペプチドである。このようなペプチドは、膜を通してさらに容易に送達されうる。
【0024】
医薬活性化合物は、医薬上有効な濃度で組成物中に存在する。好適には、その濃度は、組成物中で溶解性を残す最大量を超えない。方向付けの目的のために、ほとんどの使用法は、組成物の約0.005〜約10重量%までの量、より好適には、組成物の約0.01〜約5重量%までの量、及び最適には、組成物の約0.1〜約2重量%までの量で、医薬活性化合物を使用することを含むことが考えられる。
【0025】
本発明の組成物は、医薬活性化合物が膜を通過する速度を増大する能力のあるエンハンサも備える。基本的に全ての適切な固形又は液体エンハンサ又はそのようなエンハンサの混合物を、本発明の実施に使用しうる。好適なエンハンサは、膜適合性と、親油特性と、標的膜に対する低レベルの刺激を有するか又は刺激がないことと、緩和性と、純粋な形態にあるときに室温で固形であることとのうちの少なくとも1つの特徴を有する。
【0026】
膜適合性浸透エンハンサが、本発明に使用するために特に好適である。用語「膜適合性浸透エンハンサ」は、損傷なしに、医薬活性化合物が膜を通して送達する速度を増大する化合物を意味する。本発明に使用するための親油性膜適合性エンハンサの例としては、脂肪酸と、脂肪族アルコールと、イソプロピルミリステート及びミリスチルミリステートのようなアルキルエステルと、脂環式エンハンサ、例えば、サイアに対する米国特許第5,023,252号に記述されるエンハンサ(以降、「サイア式エンハンサ」という)とが挙げられる。好適なエンハンサは、通常には固形親油性エンハンサである。特定の医薬活性化合物と使用するためのエンハンサの選択は、当業界の技術の範囲内にある。
【0027】
サイア式エンハンサは、膜適合性及び親油性であることに加えて、標的膜に対して刺激性を示さないので、本発明に使用するために特に好適である。サイア式エンハンサは化学式
【0028】
【化1】

のエンハンサであり、式中、X及びYは、酸素、硫黄又は構造式
【0029】
【化2】

又は=N−Rを示すイミノ基であり、そして、Yがイミノ基であるという条件で、Xはイミノ基であり、そしてYが硫黄である場合、Xは硫黄又はイミノ基であり、Aは、構造式
【0030】
【化3】

を有する基であり、X及びYは、上記に定義されるとおりであり、m及びnは、1〜20の整数であり、m+nの総計は25を超えず、pは0又は1の整数であり、qは0又は1の整数であり、rは0又は1の整数である。R,R1,R2,R3,R4,R5,R6の各々は、独立に、水素、又は直鎖又は分岐鎖でありうる1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、ただしR1〜R6のただ1つが、アルキル基であり得る。ここで、p,q,rは0、かつYが酸素であるという条件ではm+nは少なくとも11であり、そしてさらに、Xがイミノ基であり、qは、1に等しく、Yは酸素であり、そしてp及びrは0であるという条件で、それによりm+nは少なくとも11である)
本発明に使用するための特に好適なサイア式エンハンサは、大環状エンハンサである。用語「大環状」は、環中に少なくとも12個の炭素を有する環状化合物をいう。本発明に使用されうる好適なマクロ環状エンハンサの例としては、例えば3−メチルシクロペンタデカノン(ムスコン)、9−シクロヘプタデセン−1−オン(シベトン)、及びシクロペンタデカノン(ノルムスコン)などの大環状ケトンと、例えばオキサシクロヘキサデカン−2−オン(シクロペンタデカノライド;ω−ペンタデカラクトン)などのペンタデカラクトン環状エステルが挙げられる。
【0031】
オキサシクロヘキサデカン−2−オンは、皮膚、粘膜、及び眼に対する刺激を驚異的に有しないことが示されたため特に好適である。ウサギ眼での100%オキサシクロヘキサデカン−2−オンの使用は、刺激を生じない。高濃度でのウサギ及びモルモットにおける閉塞パッチ研究は、刺激の欠如も示した。さらに、インスリンも含む2%オキサシクロヘキサデカン−2−オン処方の24日間の毎日の使用を含むラットにおける鼻内研究は、局所、及び全身の両方で不都合な影響が完全に存在しないことを示した。
【0032】
エンハンサは、送達されるべき医薬活性化合物の膜を通した浸透を増進するために有効な濃度にて、ある組成物に存在する。種々の配慮を、使用するエンハンサの量を決定する上で考慮すべきである。このような配慮としては、例えば、達成される流量(膜を通過する速度)及び配合物中の成分の安定性及び適合性が挙げられる。ガイドラインとしては、ほとんどの用途では、約0.05〜約10重量%の組成物量、より好適には約0.1〜約5重量%の組成物量で、及び最適には約1.0〜約3重量%の組成物量で、エンハンサを使用するものと考えられる。
【0033】
本発明の組成物は、エマルジョンの形成を促進すべく使用するための乳化剤も備える。基本的に全ての適切な親水コロイド乳化剤、一般的には固形の材料、又は2種又はそれ以上のこのような乳化剤の混合物を、本発明の実施に使用可能である。親水コロイド乳化剤としては、例えばアカシア、トラガカント、寒天、ペクチン及びカラゲナンなどの植物性誘導体や、例えばゼラチン、ラノリン、コレステロール、及びレシチンなどの動物性誘導体や、例えばメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースなどの半合成の薬剤や、例えばカルボマーのようなアクリル酸乳化剤などの合成薬剤が挙げられる。親水コロイド乳化剤は、エマルジョンの乳化液滴の周りに親水コロイド(水和親油性コロイド)を形成する。親水コロイドは、他の液滴を物理的に撃退し、それによりオストワルト熟成(乳化液滴が凝集する傾向)を妨害する各々の乳化液滴の周囲で、保護層としての役割を果たす。対照的に、他の乳化剤は、乳化液滴の周りに液晶層を形成することによって、一般的に乳化液滴を保護する。液晶層を形成する乳化剤を使用する組成物では、エマルジョンの油層の親水性−親油性平衡(HLB)は、安定なエマルジョンを形成する乳化剤のものと適合するものを見つける必要があり、そしてしばしば、1種又はそれ以上の追加の乳化剤(二次乳化剤)を、エマルジョンをさらに安定化するために添加する必要がある。前述の液晶層は、標的基質と接触して分散相の化合物の放出をも遅らせる。
【0034】
本発明の組成物に使用するための親水コロイド乳化剤としては、標的膜に対して低レベルの刺激を示すか、又は刺激がなく、そして優れて生物付着性及び粘膜付着特性を示す化合物が挙げられる。このような性質を示すヒドロキシコロイド乳化剤の例としては、セルロース性乳化剤及びアクリル酸乳化剤が挙げられ、そして例えば、約10〜約50個までの炭素原子を含むアルキル基を有するものを含む。本発明に使用するための特に好適なアクリル酸乳化剤は、カルボン酸とアクリル酸エステルの共重合体(例えば、米国特許第3,915,921号(シュラツァー)及び米国特許第4,509,949号(ハンら)に記述される)であり、そして架橋結合しているものは、特に好適である。水中油状物を形成するのに使用するためのこのような特に好ましい乳化剤の例としては、アクリル酸と(C10-30)アクリルアクリレートの架橋結合重合体である「アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体」である。アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体は、ノベオン インコーポレイテッド(Noveon,Inc.)(以前はビー.エフ.グッドリッチ(B.F.Goodrich))から入手可能であり、そして登録商標ペムレンの取引名の下に販売される。アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体は、少しの親油性部分及び多くの親水性部分を有し、それによりそれを、水中油状エマルジョンの形成のために一次乳化剤として機能させる。さらに、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体は、基質、特に生物学的膜又は粘膜と接触して分散相の化合物を放出する能力があり、そして再湿潤化しない(油相が、水と接触して再乳化しない)。米国薬局方に列挙されるアクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体に関する別の情報は、ノベオン出版物TDS−114、117、118、124、232−3、及び237、及びPDSペムレン1662に提供される。
【0035】
水不溶性エンハンサが、正常には固形材料であるエマルジョンを形成する上で、エンハンサは、適切な溶媒に溶解される。エンハンサが、通常は水と混合不能な液体材料である場合、エンハンサのために適切な溶媒は、適切な場合、使用してもしなくてもよい。
【0036】
乳化剤は、望ましい液体エマルジョンを形成するのに有効である濃度で、組成物に存在する。ガイドラインとしては、ほとんどの用途において、約0.001〜約5重量%の組成物量、より好適には約0.01〜約5重量%の組成物量、最適には約0.1〜約2重量%までの組成物量で乳化剤を使用する。
【0037】
本発明の組成物は、種々の形態、例えば、水中油状エマルジョン、油中水性エマルジョン、及び水中油中水性エマルジョンで存在しうる。本発明の組成物の活性化合物は、化合物が、親水性、親油性、又は両親媒性であるか否かによって、連続相又は分散相のいずれか、又は両方の相で存在しうる。本発明の好適実施態様の例では、エマルジョンは連続水相に分散された油滴を備え、そして親油性エンハンサは、油滴に含まれ、そして水溶性医薬活性化合物は、連続水相に溶解される。
【0038】
本発明の組成物は、最適な成分として、組成物中に分散される固形粒子を備える。例えば、組成物は、微晶性固形物又はナノ粒子の形態で、エマルジョンの液体連続相に分散された別の医薬活性化合物を備え得る。
【0039】
親水コロイド乳化剤が、乳化液滴の周りに保護層を形成し、したがって、別の安定化剤の必要なしに、オストワルト熟成を妨害することによって、安定なエマルジョンを形成するときに、ある例では、エマルジョンの安定性をさらに改善することが期待され得る。このようなことは、オストワルト熟成阻害剤及び/又は界面活性剤の添加によって達成されうる。
【0040】
オストワルト熟成阻害剤は、乳化液滴が、大型液滴を凝集及び形成する傾向を減少させる材料である。基本的に全ての適切なオストワルト熟成阻害剤又はそのような阻害剤の混合物は、エマルジョンの物理的安定化をさらに改善するために使用されうる。好適なオストワルト熟成阻害剤は、炭化水素及び炭化水素蝋のような疎水性剤である。疎水性剤の例は、ペトロラタム、ヘキサデカン、及び長鎖エステル、例えば、オクチルパルミテートである。オストワルト熟成阻害剤は、乳化液滴、特に比較的小さな液滴(例えば、直径1ミクロン)が、硬化(底に沈殿する材料)するか、又はクリーム状(頂部に上る油状物)になる可能性のある大型液滴に凝集するのを防ぐために有効な濃度で、組成物中に存在する。ガイドラインとしては、ほとんどの用途において、約0.001〜約5重量%の組成物量で、より好適には約0.1〜約1重量%の組成物量で、オストワルト熟成阻害剤を使用することを含むと考えられる。
【0041】
乳化剤の使用によって生じたものより小さなサイズまで乳化液滴のサイズを減少させるために、界面活性剤を使用し得る。基本的に全ての適切な界面活性剤又は界面活性剤の混合物を、本発明の実施に使用でき、そして例えば、陰イオン性、陽イオン性、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。好適な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であり、そして約7〜約14の親水性−親油性平衡(HLB)を示すものが、特に好ましい。このような非イオン性界面活性剤の例は、PEG−60トウモロコシグリセリド、PEG−20ソルビタンモノステアレート、フェノキシ−ポリ(エチレンオキシ)エタノール、ソルビタンモノオレート、及び同等物である。特に好ましいのは、食品化合物コーデックス(the Food Chemicals Codex)、米国国民医薬品集、米国薬局方、及び連邦行政命令集のような一覧表に記述されるもののような一覧表の界面活性剤である。エマルジョンの液滴の平均直径は、好適には約500nm〜約20μm、より好適には約1μm〜約10μmである。ガイドラインとしてはほとんどの用途において、組成物の約2重量%を超えない量で、より好適には組成物の約0.5重量%を超えない量で、界面活性剤を使用することが含まれるものと考えられる。
【0042】
本発明の組成物は、本発明の組成物の化合物の少なくとも1つを溶媒和する能力のある溶媒も備え得る。基本的に全てのこのような溶媒及び溶媒の混合物は、本発明の実施に使用しうる。本発明に使用するための溶媒としては、水及び非水性溶媒が挙げられる。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、綿実油、ペトロラタム、及びビタミンEアセテートが挙げられる。溶媒は好適には、一覧表の溶媒、例えば、米国国民医薬品集又は米国薬局方に列挙されるものである。特に好適な溶媒は、組成物中で別の機能を発揮する、例えば、緩和薬、湿潤剤、タンパク質安定化剤、オストワルト熟成阻害剤、及び/又は結晶化阻害剤として機能するものである。このような溶媒の例としては、グリセリン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン、綿実油、ペトロラタム、及びビタミンEアセテートが挙げられる。
【0043】
溶媒は、溶解されるべき特定の化合物、例えば、固形の医薬活性化合物、エンハンサ、及び/又は他の成分を安定化させるのに十分な濃度で組成物中に存在する。ガイドラインとしてはほとんどの用途において、約0.1〜約10重量%の組成物量、より好適には約0.5〜約8重量%までの組成物量、最適には約1.0〜約5重量%の組成物量で(水のほかに)非水性溶媒を使用することが考えられる。水は、一般に主要な代替物として存在し、そして例えば、組成物の約99重量%程度の高さの濃度で存在しうる。
【0044】
本発明の組成物は、本発明の組成物の化合物の結晶化を阻害する能力のある結晶化阻害剤をも備え得る。基本的に全ての適切な結晶化阻害剤又はこのような阻害剤の混合物を、本発明の実施に使用しうる。進行される場合、結晶化は、エマルションを不安定にさせ、そして貯蔵寿命に有害な影響を示す。好適な結晶化阻害剤は、関与した化合物が結晶化する温度を低下させることによって機能する。このような結晶化阻害剤の例としては、天然油、油状物質、蝋、エステル、及び炭化水素が挙げられる。天然油又は油状物質の例としては、ビタミンEアセテート、オクチルパルミテート、ゴマ油、大豆油、ベニバナ油、アボガド油、パーム油及び綿実油が挙げられる。溶媒及び結晶化阻害剤の両方として機能する化合物があることを、本発明の組成物を処方する上で使用されうる溶媒の上記説明から認識すべきである。
【0045】
使用した化合物の結晶化温度を、約25℃より下に低下させる能力のある阻害剤が特に好ましく、そして使用した化合物の結晶化温度を、約5℃より下に低下させる能力のあるものが特に好ましい。オキサシクロヘキサデカン−2−オンの結晶化を阻害するのに使用するための特に好ましい結晶化阻害剤の例としては、ヘキサデカン、イソプロピルミリステート、オクチルパルミテート、綿実油、ベニバナ油、及びビタミンEアセテートが挙げられる。
【0046】
結晶化阻害剤は、目的の化合物の結晶化を阻害するために有効な濃度で組成物中に存在する。ガイドラインとしては、ほとんどの使用法は、約0.001〜約5重量%の組成物量、より好適には約0.01〜約2重量%の組成物量、最適には約0.1〜約1重量%の組成物量で結晶化阻害剤を使用することを含むものと考えられる。
【0047】
本発明の組成物のさらに別の任意の成分は、酸化、微生物成長、又は混入を防ぐ能力のある保存剤である。基本的に全ての適切な保存剤又は保存剤の混合物を、本発明の実施に使用しうる。好ましい保存剤は、食品添加用抗微生物剤、例えば、第四アンモニウム塩、ソルビン酸、酢酸、及び安息香酸又はそれの塩;及び抗酸化剤、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、及びブチルヒドロキシトルエン(BHT)である。好適な抗微生物保存剤の例は、塩化ベンズアルコニウム及び塩化セチルピリジニウムである。
【0048】
保存剤は、微生物成長、組成物の成分の酸化、又は組成物の混入を阻害するのに有効な濃度で組成物中に存在する。ガイドラインとしては、ほとんどの使用法は、約0.0001〜約1.0重量%の組成物量、より好適には約0.005〜約0.1重量%の組成物量で、保存剤を使用することを含むものと考えられる。
【0049】
ペプチド又はタンパク質を備える本発明の実施態様では、組成物は、例えば、吸収の部位で、ペプチド又はタンパク質の崩壊を防ぐ能力のある酵素阻害剤をも備え得る。基本的に全ての適切な酵素阻害剤又は酵素阻害剤の混合物を、本発明の実施に使用しうる。好適な酵素阻害剤は、ビー エム.(Bi,M.)及びジェイ.シン(J.Singh)、ファーマスーティカル デベロップメント アンド テクノロジー、第5巻、417−22頁(2000年)に記載されているように、ロイペプチン、ベスタチン、及びアプロチニンである。任意の所定のペプチド又はタンパク質での酵素切断部位により、様々の酵素阻害剤を使用しうる。例えば、LHRHを備える本発明の実施態様では、ベスタチンが好適である。
【0050】
投与の部位で、酵素的分解を阻害するのに有効な濃度で、酵素阻害剤を使用しうる。ガイドラインとして、ほとんどの使用法は、約0.0001〜約1.0重量%の組成物量で、より好適には約0.005〜約0.1重量%の組成物量で、酵素阻害剤を使用することを含むものと考えられる。
【0051】
本発明の液体エマルジョンの粘度は、広範囲、例えば、約100〜60,000cpの間にわたって変化する可能性がある。25℃の温度で、インストロン粘時計を使用して、粘度を測定する。一般的、粘度が高いほど、エマルジョンはいっそう安定で、非滴下特性がよくなり、そして徐放特性がよくなる。組成物の粘度の値を選択する上での決定因子である重要な因子の内の1つは、組成物を、体の膜に塗布する手段である。例えば、患者の外鼻孔に、例えば、予備圧縮ポンプを含めた例えば手持ちサイズのポンプの使用により、組成物を噴霧することによって、組成物を、広範に使用することが考えられる。このような使用法のために、組成物の粘度は、約500〜約20,000cp、好適には約1,000〜約10,000cpであることが推奨される。エマルジョンを、ローション又はクリームの形態で使用する使用法について、組成物の粘度は、約5,000〜約60,000、好適には約10,000〜約30,000cpであることが推奨される。組成物の粘度を増大させる目的のために、増粘剤を使用しうる。基本的に全ての適切な増粘剤を、本発明の実施に使用しうる。好ましい増粘剤は、アクリル酸及びセルロース性増粘剤、例えば、カルボマー、ヒドロキシエチル−セルロース、及びヒドロキシプロピルメチル−セルロースである。所望の範囲、例えば、約0.1〜約5重量%まで、好適には約0.25〜約3重量%までで、組成物の粘度を増大させるのに有効な濃度で増粘剤を使用しうる。
【0052】
組成物のpHは、組成物を含む種々の化合物における、例えば、化合物の活性又は溶解性における効果を示しうる。例えば、組成物のpHは、組成物に所望の安定特性を付与する乳化剤の能力における、又は組成物に所望の粘度を付与する増粘剤の能力における効果を示しうる。組成物の所望のpHは、組成物に、pH改質剤を含めることにより制御又は調節されうる。基本的に全てのpH改質剤又はpH改質剤の混合物を、本発明の実施に使用しうる。アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体を使用して形成さるエマルジョンの安定性を最適化する上で使用するために、好ましいpH改質剤は、約9を超えるpKaを示し、そして約9.5を超えるpKaが、特に好ましく、及び/又は一覧になっており、そして食品及び製薬処方における政府の省により使用することが認可されている。上記特性の両方を示すpH改質剤の例としては、トリエタノールアミン、トリスアミノ、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、及び水酸化カリウムが挙げられる。
【0053】
pH改質剤は、組成物に所望のpHを付与するのに有効な濃度で組成物中に存在する。ガイドラインとして、ほとんどの使用法は、約0.01〜約5重量%の組成物量で、より好適には約0.1〜約2重量%の組成物量で、pH改質剤を使用することを含むことと考えられる。
【0054】
本発明の組成物は、当業界で認識されており、そして当業界で認識された量で、他の任意の成分をも含みうる。例えば、当業者が望ましいと考えうる、流動学、感触、すべりやすさ、湿潤性、及び他の所望の物理的特性を改質するために、材料を添加しうる。
【0055】
例えば、皮下で、経皮で、膣で、口内に、眼に、そして鼻内に、を含めて種々の経路の投与によって、本発明の組成物を、医薬上有効な量で使用しうる。眼及び鼻内投与が好ましい。所望の医薬投与量計画を維持するために、経時的使用が必要とされうる。
【0056】
鼻内使用が望ましい場合、鼻内噴霧投与デバイス又はアトマイザーに入れ、そして外鼻孔の粘膜に送達するために、患者の外鼻孔に噴霧することによって、組成物を塗布しうる。眼科使用が望ましい場合、組成物を、眼科用滴下デバイスに入れ、そして患者の眼又は眼の嚢に噴霧することにより塗布しうる。所望の全身又は局在薬剤濃度を達成するために、十分な量を塗布する。鼻内噴霧のためには、一般に、約200マイクロリットルまでを塗布し、そして約50から約150ミリリットルまでの使用が好ましい。1回又はそれ以上の外鼻孔を適量に分け、そして使用法は、所望と同様に頻繁に、又は必要とされるほど頻繁に生じうる。
【0057】
本発明の組成物は、従来の手段の使用により、例えば、成分を混合、攪拌、積重ね、スラリー化、及び超音波処理することによって、処方されうる。従来の装置を使用しうる。本発明の利益の内の1つは、所望の結果を達成するために通常でない手段に頼ることなく、組成物を処方する能力である。比較的小さなそして均質な液滴を達成するために、高エネルギーの混合及び超音波処理を使用することなく、組成物の種々の実施態様を行いうることが観察された。簡単なガラス製又はステンレス混合容器を使用しうる。一般に、室温又は僅かに上(約60℃より下)で、そして大気圧で、組成物を配合しうる。
実施例
以下の実施例は、本発明の組成物を示す。組成物を含む成分の濃度は、組成物の総重量に比べた重量パーセントで示される。
【0058】
実施例1〜5は、鼻内スプレーに使用するための本発明の組成物の例である。
実施例1〜3において、パートAの成分を、均質になるまで、40℃で、機械的に攪拌することにより混合した。パートBの成分は、均質になるまで、40℃で磁石攪拌を使用して別個に混合し、そしてその後、パートAに加えた。得られる混合物を、激しく攪拌し、そしてパートCを、その混合物にゆっくりと添加した。パートCの添加に続いて、パートDを添加し、そして得られる混合物を、40℃で、4時間攪拌した。さらに18時間攪拌しながら、混合物を、室温まで冷却させた。その後、4時間、振蘯及び攪拌させながら、パートEを添加した。得られる混合物は、「プレミックス」と称される。
【0059】
所望の濃度にある医薬活性化合物の溶液を、別々に製造した。医薬活性化合物を混合し、そして均質になるまで、通気により水に溶解させた。その後、pH改質剤を添加し、そして溶液が均質になるまで、室温で、120rpmで、ローラー機で回転させることにより、得られる混合物を混合した。
【0060】
室温で、プレミックスを、医薬活性化合物の水性溶液に添加し、そして最終混合組成物が均質になるまで、室温で、120rpmで、ローラー機で回転させることにより、得られる混合物を混合した。
【0061】
(第1実施例)
この実施例には、ヒト組換えインスリンの送達のための鼻内スプレーとして使用されうる組成物の製造が記述されている。
【0062】
(プレミックス)
パートA 重量%
オキサシクロヘキサデカン−2−オン(フィルメニチ)−エンハンサ 2.00%
綿実油(超精製(クロダ(Croda)))−溶媒、結晶化阻害剤 0.67%
ペトロラタム−プロトペツ(Protopet)(ウィッコ(Witco))−溶媒、オ
ストワルト熟成阻害剤 0.14%
パートB
プロピレングリコール、USP(米国薬局方)−溶媒 1.00%
グリセリン、USP−補助溶媒、緩和剤、湿潤剤及びタンパク質安定化剤 2.00%
水(滅菌及び脱イオン化) 44.05%
パートC
アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体−ペムレン−TR2、NFグレ
ード(ノベノン,インク.)−乳化剤及び増粘剤 0.10%
パートD
塩化ベンザルコニウム(50%水性溶液−マクアット(Maquat)(メーソン)−保
存剤 0.01%
パートE
トリエタノールアミン(NF−pH改質剤) 0.03%
(医薬活性化合物の溶液)
水(滅菌及び脱イオン化) 49.10%
インスリン(ヒト組換え体)28.5単位/mg(バイオブラス(Biobras)) 0.87%
トリエタノールアミン(NF−pH改質剤) 0.03%
得られる組成物は、分散相が、組成物中に均質に分散され、そして結晶化阻害剤及びオストワルト熟成阻害剤を含む溶媒に溶解されるエンハンサを含む液滴から構成される、安定なエマルジョンであった。連続相は、プロピレングリコール、グリセリン、保存剤、及び医薬活性化合物の水溶液から構成される。pH改質剤を、乳化剤と合せた。100マイクロリットルの組成物は、およそ25国際単位(IU)のヒト組換えインスリンを含んだ。組成物は、7.81のpHを示した。
【0063】
(第2実施例)
この実施例では、GHRP−6(H−His−D−Trp−Ala−Trp−D−Phe−Lys−NH2)の送達のための鼻内スプレーとして使用されうる組成物の製造が記述されている。
【0064】
(プレミックス)
パートA 重量%
オキサシクロヘキサデカン−2−オン(フィルメニチ)−エンハンサ 2.00%
綿実油(超精製(クロダ(Croda)))−溶媒、結晶化阻害剤 0.67%
ペトロラタム−プロトペツ(Protopet)(ウィッコ(Witco))−溶媒、オ
ストワルト熟成阻害剤 0.14%
パートB
プロピレングリコール、USP(米国薬局方)−溶媒 1.00%
グリセリン、USP−補助溶媒、緩和剤、湿潤剤及びタンパク質安定化剤 2.00%
水(滅菌及び脱イオン化) 44.05%
パートC
アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体−ペムレン−TR2、NFグレ
ード(ノベノン,インク.)−乳化剤及び増粘剤 0.10%
パートD
塩化ベンザルコニウム(50%水性溶液−マクアット(Maquat)(メーソン)−保
存剤 0.01%
パートE
トリエタノールアミン(NF−pH改質剤) 0.03%
(医薬活性化合物の溶液)
水(滅菌及び脱イオン化) 49.10%
GHRP−6(ベーチェム(Bachem))−医薬活性化合物 0.87%
トリエタノールアミン(NF−pH改質剤) 0.03%
得られる組成物は、分散相が、組成物中に均質に分散され、そして結晶化阻害剤及びオストワルト熟成阻害剤を含む溶媒に溶解されるエンハンサから構成される液滴から構成される、安定なエマルジョンであった。連続相は、プロピレングリコール、グリセリン、保存剤、及び医薬活性化合物の水溶液から構成される。pH改質剤を、乳化剤と合せることが考えられた。100マイクロリットルの組成物は、およそ100マイクログラムのGHRP−6を含んだ。
【0065】
(第3実施例)
この実施例では、ヒト組換えインスリンの送達のための鼻内スプレーとして使用されうる組成物の製造が記述されている。本組成物は、エマルジョンの液滴の粒子サイズを減少させる界面活性剤を含有するという点で、実施例番号1に記述されるものと異なる。界面活性剤の使用は、連続相での分散相のいっそう均質な分配に備え、そしてオクトワルド熟成の防止を援助する、より小さな粒子サイズを生じる。本実施例に使用される界面活性剤は、刺激を引起しうるものより下の濃度にある。
【0066】
(プレミックス)
パートA 重量%
オキサシクロヘキサデカン−2−オン(フィルメニチ)−エンハンサ 2.00%
綿実油(超精製(クロダ(Croda)))−溶媒、結晶化阻害剤 0.41%
ペトロラタム−プロトペツ(Protopet)(ウィッコ(Witco))−溶媒、オ
ストワルト熟成阻害剤 0.28%
PEG−20ソルビタンモノステアレート−クリレット3(クロダ)−界面活性剤
0.20%
パートB
プロピレングリコール、USP(米国薬局方)−溶媒 1.00%
グリセリン、USP−補助溶媒、緩和剤、湿潤剤及びタンパク質安定化剤 2.00%
PEG−60トウモロコシグリセリド−クロボール−70(クロダ)−界面活性剤
0.20%
水(滅菌及び脱イオン化) 43.77%
パートC
アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体−ペムレン−TR2、NFグレ
ード−乳化剤及び増粘剤 0.10%
パートD
塩化ベンザルコニウム(50%水性溶液−マクアット(Maquat)(メーソン)−保
存剤 0.01%
パートE
トリエタノールアミン(NF−pH改質剤) 0.03%
(医薬活性化合物の溶液)
水(滅菌及び脱イオン化) 49.10%
インスリン(ヒト組換え体)28.5単位/mg(バイオブラス) 0.87%
トリエタノールアミン(NF−pH改質剤) 0.03%
得られる組成物は、分散相が、組成物中に均質に分散され、そして結晶化阻害剤及びオストワルト熟成阻害剤を含む溶媒に溶解されるエンハンサを含む液滴から構成される、安定なエマルジョンであった。連続相は、プロピレングリコール、グリセリン、保存剤、及び医薬活性化合物の水溶液から構成される。pH改質剤及び界面活性剤を、重合体乳化剤と合せることが考えられた。100マイクロリットルの組成物は、およそ25IUのヒト組換えインスリンを含んだ。組成物は、7.7のpHを示した。
【0067】
(第4実施例)
この実施例では、インスリンの送達のための鼻内スプレーとして使用されうる組成物の製造が記述されている。本組成物は、結晶化阻害剤と保存剤の両方として使用されるビタミンEアセテート溶媒を含む。本組成物は、市販の水性インスリン溶液を使用するという点で、実施例番号1及び3に記述されるものと異なる。さらに、本組成物は、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体乳化剤が、別個のオストワルト熟成阻害剤についての必要なしに、オストワルト熟成を実質的に阻害する能力があることを示す。
【0068】
(プレミックス)
パートA 重量%
オキサシクロヘキサデカン−2−オン(フィルメニチ)−エンハンサ 2.00%
ビタミンEアセテート、USP(VGF)−溶媒、結晶化阻害剤及び保存剤 0.25%
パートB
グリセリン、USP−補助溶媒、緩和剤、湿潤剤及びタンパク質安定化剤 1.00%
水(滅菌及び脱イオン化) 46.59%
パートC
アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体−ペムレン−TR2、NFグレ
ード(ノベノン,インク.)−乳化剤及び増粘剤 0.08%
パートD
トリスアミノ、USP−pH改質剤 0.08%
プレミックスを以下のとおり製造した。均質になるまで、40℃で機械的に攪拌することによって、パートAの成分を混合した。均質になるまで40℃で磁石攪拌を使用して、パートBの成分を別個に混合し、そしてその後、パートAに添加した。得られる混合物を、激しく攪拌し、そしてパートCを、その混合物にゆっくりと添加した。18時間攪拌しながら、混合物を、室温まで冷却させた。その後、パートDを添加し、そして得られた混合物を、4時間、振蘯及び攪拌させた。
【0069】
50グラムのプレミックス及び50.0mLの500単位/mL登録商標ヒュムリン 500(リリー(Lilly))(ヒト組換えインスリン)を混合し、そして1時間、ローラー機で、120rpmで回転させた。得られた均質で安定なエマルジョンは、エンハンサが、ビタミンEアセテートに溶解されことを特徴とする液滴の分散相、及びインスリン、グリセリン及び水の水性溶液から構成される連続相から構成される。pH改質剤は、乳化剤と合せると考えられる。分散相は、組成物中に均質に分配された。
【0070】
(第5実施例)
この実施例では、オキシコドンの送達のための鼻内スプレーとして使用されうる組成物の製造が記述されている。20部の水及び化学量論的量の1.0N塩化ナトリウムに溶解させることによって、オキシコドンを、市販で入手可能な塩酸塩から製造されるそれの遊離塩基の形態で使用した。沈殿物を収集し、そして水で洗浄した。その後、沈殿物を、真空ポンプを使用して室温で乾燥させた。
【0071】
(オキシコドン鼻内製品)
パートA 重量%
オキサシクロヘキサデカン−2−オン(フィルメニチ)−エンハンサ 2.00%
綿実油(超精製(クロダ(Croda)))−溶媒、結晶化阻害剤 0.67%
ペトロラタム−プロトペツ(Protopet)(ウィッコ(Witco))−溶媒、オ
ストワルト熟成阻害剤 0.14%
オキシコドン(遊離塩基−医薬活性化合物) 2.00%
パートB
アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体−ペムレン−TR2、NFグレ
ード(ノベノン,インク.)−乳化剤及び増粘剤 0.08%
パートC
グリセリン、USP−補助溶媒、緩和剤、湿潤剤及びタンパク質安定化剤 2.10%
水(滅菌及び脱イオン化) 93.00%
塩化ベンザルコニウム(50%水性溶液−マクアット(マソン)−保存剤) 0.01%
ペーストが形成されるまで、機械的攪拌によって、パートAの成分を、40℃で合せた。その後、均質なペーストが形成されるまで、40℃での機械的攪拌により、パートBを、パートAと合せた。その後、パートCを添加し、そして白色の均質なエマルジョンが形成されるまで、得られた混合物を、室温で機械的に攪拌した。
【0072】
水に不溶性である遊離塩基のオキシコドンは、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート乳化剤を使用して形成されるエマルジョンを安定化するのに十分に強力である。これは、さらにpH改質剤を使用する必要なく、そして無機塩の形成を避けるために、組成物が、粘着性の均質なエマルジョンの形態で存在させることができる。分散相は、結晶化阻害剤及びオストワルト熟成阻害剤を含む溶媒に溶解されるエンハンサから構成された。連続相は、グリセリン、保存剤、及び水から構成された。医薬活性化合物は、アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体乳化剤と合せると考えられた。
【0073】
100マイクリットルの組成物は、およそ2ミリグラムのオキシコドンを含んだ。
【0074】
なお、本発明は、好ましい特徴は、以下の通りである。
1.エマルジョンの形態にあるとともに、(A)連続液相と、(B)該液相に分散される液滴と、(C)医薬活性化合物と、(D)化学式
【化4】

を有し、式中、X及びYは、酸素、硫黄又は構造式
【化5】

又は=N−Rを示すイミノ基であり、Yがイミノ基であるという条件で、Xはイミノ基であり、及び、Yが硫黄である場合、Xは硫黄又はイミノ基であり、Aは、構造式
【化6】

【0075】
を有する基であり、m及びnは、1〜20の整数であり、m+nの総計は25を超えず、pは0又は1の整数であり、qは0又は1の整数であり、rは0又は1の整数あり、R,R1,R2,R3,R4,R5,R6の各々は、独立に、水素、又は直鎖又は分岐鎖でありうる1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、ただしR1〜R6のただ1つが、アルキル基であり、p,q,rは0、かつYが酸素であるという条件ではm+nは少なくとも11であり、或いは、Xがイミノ基であり、qは、1に等しく、Yは酸素であり、p及びrは0であるという条件で、それによりm+nは少なくとも11である、サイア式エンハンサと、(E)親水コロイド乳化剤とを備える医薬組成物。
2.前記液相は医薬活性化合物の水性溶液からなり、及び前記液滴はサイア式エンハンサ及びそのための溶媒の溶液からなる上記1に記載の組成物。
3.前記液相は水からなり、及び前記液滴は医薬活性化合物の水性溶液及び、サイア式エンハンサ及びそのための溶媒からなる上記1に記載の組成物。
4.10〜50個の炭素原子を有したアルキル基を有する親水コロイド乳化剤を含有する上記1に上記の組成物。
5.10〜50個の炭素原子を有したアルキル基を有する親水コロイド乳化剤を含有する上記2に上記の組成物。
6.アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体である親水コロイド乳化剤を含有する上記4に記載の組成物。
【0076】
7.アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体である親水コロイド乳化剤を含有する上記5に記載の組成物。
8.10〜50個の炭素原子を有したアルキル基を有する親水コロイド乳化剤を含有する上記3に記載の組成物。
9.アクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体である親水コロイド乳化剤を含有する上記8に記載の組成物。
10.医薬活性化合物はインスリンである上記2に記載の組成物。
11.医薬活性化合物は水溶性ペプチドである上記2に記載の組成物。
12.医薬活性化合物はインスリンの前駆体、コンジナー、塩、複合体、類似体又は誘導体である上記2に記載の組成物。
13.前記インスリンはヒト組換え型インスリンである上記10に記載の組成物。
14.前記エンハンサは大環状エンハンサである上記1に記載の組成物。
【0077】
15.前記エンハンサは環状エステルである上記14に記載の組成物。
16.前記エンハンサはペンタデカラクトンである上記14に記載の組成物。
17.前記エンハンサはオキサシクロヘキサデカン−2−オンである上記16に記載の組成物。
18.前記医薬活性化合物はインスリンであり、前記エンハンサはオキサシクロヘキサデカン−2−オンであり、及び前記乳化剤はアクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体である上記2に記載の組成物。
19.前記インスリンはヒト組換え型インスリンである上記18に記載の組成物。
20.前記医薬活性化合物はインスリンの前駆体、コンジナー、塩、複合体、類似体又は誘導体であり、前記エンハンサはオキサシクロヘキサデカン−2−オンであり、及び前記乳化剤はアクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体である上記2に記載の組成物。
【0078】
21.前記医薬活性化合物はオピエートアルカロイドである上記3に記載の組成物。
22.前記医薬活性化合物はオキシコドンである上記3に記載の組成物。
23.前記医薬活性化合物はオキシコドンであり、前記エンハンサはオキサシクロヘキサデカン−2−オンであり、及び前記乳化剤はアクリレート/C10-30アルキルアクリレート架橋重合体である上記3に記載の組成物。
24.患者の膜に送達させるための、上記1に記載の組成物を含有する医薬組成物。
25.患者の外鼻孔に噴霧するための、上記10に記載の組成物を含有する医薬組成物。
26.糖尿病に罹患している患者の外鼻孔に噴霧するための、上記12に記載の組成物を含有する医薬組成物。
【0079】
27.患者の眼、又は眼の嚢に、滴下又は噴霧するための、上記2に記載の組成物。
28.前記サイア式エンハンサは、3−メチルシクロペンタデカノン(ムスコン)、9−シクロヘプタデセン−1−オン(シベトン)、及びシクロペンタデカノン(ノルムスコン)などの大環状ケトンと、例えばオキサシクロヘキサデカン−2−オン(シクロペンタデカノライド;ω−ペンタデカラクトン)などのペンタデカラクトン環状エステルとからなる群から選択される、上記1に記載の組成物。
29.前記液滴が、500nm〜20μmの平均直径を有する上記1に記載の組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルジョン化された鼻腔用スプレーの形態にある医薬組成物であって、
大環状浸透エンハンサ、
水を含む液体担体、
乳化剤、及び
治療学的有効量の、ペプチド、ペプチドミメチック及びタンパク質からなる群より選ばれる、インスリン以外の医薬活性物質
を含み、
ビタミンEアセテート、ヘキサデカン、オクチルパルミテート、ゴマ油、大豆油、ベニバナ油、アボガド油、パーム油及び綿実油からなる群から選択される、前記大環状浸透エンハンサのための結晶化阻害剤、及び
該大環状浸透エンハンサは、該液体担体でエマルジョン化されたサイア式エンハンサであり、
該サイア式エンハンサは以下の構造:
【化1】

を有し、式中、Xは、酸素、硫黄又は構造式
【化2】

を示すイミノ基であり、
Yは酸素、硫黄又は構造式:=N−Rを示すイミノ基であり、
Yがイミノ基であるという条件で、Xはイミノ基であり、及び、Yが硫黄である場合、Xは硫黄又はイミノ基であり、Aは、構造式
【化3】

を有する基(式中、X及びYは、上記に定義されるとおりである)であり、m及びnは、1〜20の整数であり、m+nの総計は25を超えず、pは0又は1の整数であり、qは0又は1の整数であり、rは0又は1の整数あり、R,R1,R2,R3,R4,R5,R6の各々は、独立に、水素、又は直鎖又は分岐鎖でありうる1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、ただしR1〜R6のただ1つが、アルキル基であり、p,q,rは0、かつYが酸素であるという条件ではm+nは少なくとも11であり、或いは、Xがイミノ基であり、qは、1に等しく、Yは酸素であり、p及びrは0であるという条件で、それによりm+nは少なくとも11である、医薬組成物。
【請求項2】
前記サイア式エンハンサがシクロペンタデカラクトン又はシクロヘキサデカノンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
更に酵素阻害剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記酵素阻害剤が、ロイペプチン及びアプロチニンからなる群より選ばれる、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が非イオン性である、請求項1に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2011−6487(P2011−6487A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229786(P2010−229786)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【分割の表示】特願2009−192039(P2009−192039)の分割
【原出願日】平成14年6月24日(2002.6.24)
【出願人】(508361818)シーペックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】