説明

医薬組成物

【課題】スタチン類のラクトン体生成を抑制する新たな手段を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)


[式中、Rは有機基を示し、Xは−CH2−CH2−又は−CH=CH−を示す。]
で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物(但し、ピタバスタチンを除く)又はその塩、及びアルカリ土類金属塩化物を含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタチン類などのHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物の安定性が良好な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高脂血症治療剤や高コレステロール血症治療剤として、HMG−CoA還元酵素阻害活性を有するスタチン類を有効成分とする医薬品が多数開発・上市されている。こうしたスタチン類としては、具体的には例えば、プラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物、ピタバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウムが挙げられ、これらの化合物はいずれもジヒドロキシカルボン酸(3,5−ジヒドロキシヘプタン酸又は3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸)骨格を共通骨格として有している。
【0003】
上記スタチン類の共通骨格であるジヒドロキシカルボン酸骨格は分子内で環化し、HMG−CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体を生成することが知られている。医薬品製剤中でのラクトン体の生成は、医薬品の有効性の低下や医薬品間での有効性の不均一性の原因ともなり得る。そのため、従来スタチン類の医薬品製剤中での安定性を向上させる試みが種々なされているが、その多くは低pH環境下におけるジヒドロキシカルボン酸骨格の不安定性を考慮して炭酸カルシウムなどの塩基性物質を配合してスタチン類のpH環境を塩基性にする、というものである。具体的には例えば、特許文献1には、フルバスタチンに代表される下記式(a)のHMG−CoAリダクターゼ抑制活性を有する化合物が中性〜酸性pHにおいてラクトン体等の分解生成物を生成する旨、及び炭酸カルシウム等のアルカリ性媒体を組み合わせることにより安定化し得る旨記載されている。
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、Raは有機基であり、Xaは−CH=CH−であり、Maは生理学的に許容しうるカチオンである。]
【0006】
また、特許文献2には、アトルバスタチンに代表される下記式(b)で表される化合物が酸性環境においてラクトン体に変化する旨、及び炭酸カルシウムなどの塩基性の安定化金属塩添加剤を組み合わせることにより安定化し得る旨記載されている。
【0007】
【化2】

【0008】
[式中、Xbは−CH2−などであり、R1は1−ナフチルなどであり、R2、R3は−CONH2、水素原子などであり、R4は炭素数1〜6のアルキルなどであり、Mbは医薬的に許容し得る金属塩である。]
【0009】
しかしながら、これらのいずれの文献にも、アルカリ土類金属塩化物がスタチン類のラクトン体生成を抑制することについては、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2774037号明細書
【特許文献2】特許第3254219号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、スタチン類のラクトン体生成を抑制する新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、驚くべきことに、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩化物が、スタチン類をはじめとする下記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物のラクトン体生成を抑制する作用を有することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物(但し、ピタバスタチンを除く)又はその塩、及びアルカリ土類金属塩化物を含有する医薬組成物を提供するものである。
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、Rは有機基を示し、Xは−CH2−CH2−又は−CH=CH−を示す。]
【0016】
また、本発明は、有効成分として上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩を、安定化剤としてアルカリ土類金属塩化物を、それぞれ含有する医薬組成物を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、アルカリ土類金属塩化物を有効成分とする、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩の安定化剤(好適には、ラクトン体生成抑制剤)を提供するものである。
また、本発明は、アルカリ土類金属塩化物の、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩の安定化剤としての使用(好適には、ラクトン体生成抑制剤としての使用)に関する。
また、本発明は、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩に、アルカリ土類金属塩化物を共存せしめる、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩の安定化方法(好適には、ラクトン体生成抑制方法)に関する。
また、本発明は、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩のラクトン体生成が抑制された医薬組成物の製造方法であって、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩に、アルカリ土類金属塩化物を含有せしめる工程を含む製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の医薬組成物は、有効成分である上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩のラクトン体生成が抑制されているため、有効成分の安定性が良好な医薬品として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において、「一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物(以下、単に「化合物(1)」とも称する。)又はその塩」には、化合物(1)そのもののほか、化合物(1)の薬学上許容される塩も含まれる。
【0020】
【化4】

【0021】
[式中、Rは有機基を示し、Xは−CH2−CH2−又は−CH=CH−を示す。]
【0022】
化合物(1)の塩の具体例としては例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等が挙げられる。また、化合物(1)には不斉炭素が存するため、種々の光学異性体が存在するが、本発明において化合物(1)又はその塩は、いずれの光学異性体をも含み、単一の光学異性体でもよく、各種光学異性体の混合物でもよい。さらに、化合物(1)又はその塩は溶媒和物の状態にあってもよく、化合物(1)又はその塩と、水又はアルコール等との溶媒和物も「一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩」に含まれる。
【0023】
本発明において、一般式(1)中、Rで表される「有機基」としては、炭素環式基、複素環式基などの環式基が挙げられる。なお、当該環式基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0024】
上記「炭素環式基」としては、例えば、3〜15員の単環式、二環式又は三環式の、飽和炭素環式基又は不飽和炭素環式基などが挙げられる。当該炭素環式基の具体例としては例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、インデニル、インダニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ヘキサヒドロナフチルなどが挙げられる。
【0025】
上記「複素環式基」としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含有する3〜15員の単環式又は二環式の、飽和複素環式基又は不飽和複素環式基などが挙げられる。当該複素環式基の具体例としては例えば、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、フリル、ピラニル、オキセピニル、チエニル、チアピラニル、チエピニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、フラザニル、オキサジアゾリル、オキサジニル、オキサジアジニル、オキサゼピニル、オキサジアゼピニル、チアジアゾリル、チアジニル、チアジアジニル、チアゼピニル、チアジアゼピニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、ジヒドロピラジニル、テトラヒドロピラジニル、ジヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリミジニル、ジヒドロアゼピニル、テトラヒドロアゼピニル、ジヒドロジアゼピニル、テトラヒドロジアゼピニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロチアピラニル、テトラヒドロチアピラニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、ホモピペリジルなどが挙げられる。
【0026】
上記環式基が有していてもよい「置換基」としては、具体的には例えば、アルキル基;ヒドロキシ基;アシルオキシ基;アルキル基及びアルキルスルホニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアミノ基;ハロゲン原子を置換基として有していてもよいアリール基;アリール基を置換基として有していてもよいカルバモイル基などが挙げられる。
本発明においては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基;環状の炭素数3〜8のアルキル基;ヒドロキシ基;直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアシルオキシ基;直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキル基、及び直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアミノ基;フッ素原子を置換基として有していてもよいフェニル基;フェニル基を置換基として有していてもよいカルバモイル基が好ましく、メチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ヒドロキシ基、2−メチルブタノイルオキシ基、メタンスルホニル(メチル)アミノ基、フェニル基、4−フルオロフェニル基、フェニルカルバモイル基が特に好ましい。
【0027】
本発明において、「有機基」としては、置換基を有してもよいキノリニル基、置換基を有してもよいヘキサヒドロナフチル基、置換基を有してもよいインドリル基、置換基を有してもよいピロリル基及び置換基を有してもよいピリミジニル基から選ばれる環式基が好ましく、置換基を有する上記5種の環式基のいずれかであることが特に好ましい。
【0028】
本発明において、化合物(1)又はその塩としては、特開平1−279866号公報及び米国特許第5856336号明細書に記載の、Rが置換基を有してもよいキノリニル基である化合物又はその塩;特開昭57−2240号公報及び米国特許第4346227号明細書に記載の、Rが置換基を有してもよいヘキサヒドロナフチル基である化合物又はその塩;特表昭60−500015号公報及び米国特許第5354772号明細書に記載の、Rが置換基を有してもよいインドリル基である化合物又はその塩;特開昭62−289577号公報、特開平3−58967号公報及び米国特許第5273995号明細書に記載の、Rが置換基を有してもよいピロリル基である化合物又はその塩;特開平5−178841号公報及び米国特許第5260440号明細書に記載の、Rが置換基を有してもよいピリミジニル基である化合物又はその塩が好ましい。なお、これらの文献の記載は、参照により本明細書に引用する。
【0029】
本発明の医薬組成物における化合物(1)又はその塩の含有量は特に限定されず、化合物の薬理活性の強弱、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、適宜検討して決定することができるが、例えば、1日あたり、0.1〜160mg、より好適には0.5〜120mg、特に好適には1〜80mg服用できるものが好ましい。
本発明においては、化合物(1)又はその塩を医薬組成物全質量に対して、0.01〜80質量%含有する医薬組成物が好ましく、0.05〜70質量%含有する医薬組成物がより好ましく、0.1〜60質量%含有する医薬組成物が特に好ましい。
【0030】
本発明において、化合物(1)又はその塩としては、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチンから選ばれる化合物又はその塩が好ましく、ピタバスタチン又はその塩が特に好ましい。後記試験例2に具体的に記載されているとおり、アルカリ土類金属塩化物が、ピタバスタチン又はその塩に対して、ラクトン体のみならず他の分解物に対してもその生成抑制作用を有することが明らかとなった。したがって、アルカリ土類金属塩化物は、ピタバスタチン又はその塩の安定化剤として特に好適に使用できる。
【0031】
本発明において、「ピタバスタチン又はその塩」には、ピタバスタチンそのもののほか、ピタバスタチンの薬学上許容される塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等)、さらにはピタバスタチンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれ、本発明においてはこれらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、ピタバスタチンカルシウム(化学名:(+)-monocalcium bis[(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})が好ましい。
ピタバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開平1−279866号公報、米国特許第5856336号明細書等に記載の方法により製造することができる。
【0032】
本発明の医薬組成物におけるピタバスタチン又はその塩の含有量は特に限定されず、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、適宜検討して決定することができるが、例えば、1日あたり、ピタバスタチンカルシウム換算で0.1〜16mg、より好適には0.5〜8mg、特に好適には1〜4mg服用できるものが好ましい。
本発明においては、ピタバスタチン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、ピタバスタチンカルシウム換算で0.01〜30質量%含有する医薬組成物が好ましく、0.05〜20質量%含有する医薬組成物がより好ましく、0.1〜15質量%含有する医薬組成物が特に好ましい。
【0033】
本発明において、「プラバスタチン又はその塩」には、プラバスタチンそのもののほか、プラバスタチンの薬学上許容される塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等)、さらにはプラバスタチンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれ、本発明においてはこれらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、プラバスタチンナトリウム(化学名:Monosodium(3R,5R)-3,5-dihydroxy-7-[(1S,2S,6S,8S,8aR)-6-hydroxy-2-methyl-8[-(2S)-2-methylbutanoyloxy]-1,2,6,7,8,8a-hexahydronaphthalen-1-yl]heptanoate)が好ましい。
プラバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開昭57−2240号公報、米国特許第4346227号明細書等に記載の方法により製造することができる。
【0034】
本発明の医薬組成物におけるプラバスタチン又はその塩の含有量は特に限定されず、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、適宜検討して決定することができるが、例えば、1日あたり、プラバスタチンナトリウム換算で1〜160mg、より好適には2〜120mg、特に好適には5〜80mg服用できるものが好ましい。
本発明においては、プラバスタチン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、プラバスタチンナトリウム換算で0.1〜80質量%含有する医薬組成物が好ましく、0.2〜70質量%含有する医薬組成物がより好ましく、0.5〜60質量%含有する医薬組成物が特に好ましい。
【0035】
本発明において、「フルバスタチン又はその塩」には、フルバスタチンそのもののほか、フルバスタチンの薬学上許容される塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等)、さらにはフルバスタチンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれ、本発明においてはこれらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、フルバスタチンナトリウム(化学名:(±)-(3RS,5SR,6E)-sodium-7-[3-(4-fluorophenyl)-1-(1-methylethyl)-1H-indol-2-yl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate)が好ましい。
フルバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特表昭60−500015号公報、米国特許第5354772号明細書等に記載の方法により製造することができる。
【0036】
本発明の医薬組成物におけるフルバスタチン又はその塩の含有量は特に限定されず、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、適宜検討して決定することができるが、例えば、1日あたり、フルバスタチンのフリー体換算で1〜160mg、より好適には5〜120mg、特に好適には10〜80mg服用できるものが好ましい。
本発明においては、フルバスタチン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、フルバスタチンのフリー体換算で0.1〜80質量%含有する医薬組成物が好ましく、0.5〜70質量%含有する医薬組成物がより好ましく、1〜60質量%含有する医薬組成物が特に好ましい。
【0037】
本発明において、「アトルバスタチン又はその塩」には、アトルバスタチンそのもののほか、アトルバスタチンの薬学上許容される塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等)、さらにはアトルバスタチンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれ、本発明においてはこれらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、アトルバスタチンカルシウム水和物(化学名:(-)-Monocalcium bis[(3R,5R)-7-[2-(4-fluorophenyl)-5-isopropyl-3-phenyl-4-phenylcarbamoyl-1H-pyrrol-1-yl]-3,5-dihydroxyheptanoate]trihydrate)が好ましい。
アトルバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開平3−58967号公報、米国特許第5273995号明細書等に記載の方法により製造することができる。
【0038】
本発明の医薬組成物におけるアトルバスタチン又はその塩の含有量は特に限定されず、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、適宜検討して決定することができるが、例えば、1日あたり、アトルバスタチンのフリー体換算で1〜160mg、より好適には2〜120mg、特に好適には5〜80mg服用できるものが好ましい。
本発明においては、アトルバスタチン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、アトルバスタチンのフリー体換算で0.1〜80質量%含有する医薬組成物が好ましく、0.2〜70質量%含有する医薬組成物がより好ましく、0.5〜60質量%含有する医薬組成物が特に好ましい。
【0039】
本発明において、「ロスバスタチン又はその塩」には、ロスバスタチンそのもののほか、ロスバスタチンの薬学上許容される塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;フェネチルアミン塩等の有機アミン塩;アンモニウム塩等)、さらにはロスバスタチンやその薬学上許容される塩と水やアルコール等との溶媒和物も含まれ、本発明においてはこれらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、ロスバスタチンカルシウム(化学名:Monocalcium bis ((3R,5S,6E)-7-[4-(4-fluorophenyl)-6-isopropyl-2-[methanesulfonyl(methyl)amino]pyrimidin-5-yl]-3,5-dihydroxyhept-6-enoate))が好ましい。
ロスバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開平5−178841号公報、米国特許第5260440号明細書等に記載の方法により製造することができる。
【0040】
本発明の医薬組成物におけるロスバスタチン又はその塩の含有量は特に限定されず、服用者の性別、年齢、症状等に応じて、適宜検討して決定することができるが、例えば、1日あたり、ロスバスタチンのフリー体換算で0.5〜80mg、より好適には1〜60mg、特に好適には2.5〜40mg服用できるものが好ましい。
本発明においては、ロスバスタチン又はその塩を医薬組成物全質量に対して、ロスバスタチンのフリー体換算で0.05〜80質量%含有する医薬組成物が好ましく、0.1〜70質量%含有する医薬組成物がより好ましく、0.25〜60質量%含有する医薬組成物が特に好ましい。
【0041】
本発明において、「アルカリ土類金属塩化物」としては例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。ここで、本明細書において「アルカリ土類金属塩化物」とは、水和物を包含する概念である。
本発明においてアルカリ土類金属塩化物としては、具体的には例えば、塩化カルシウム 無水物、塩化カルシウム 一水和物、塩化カルシウム 二水和物、塩化カルシウム 四水和物、塩化カルシウム 六水和物などの塩化カルシウム;塩化マグネシウム 無水物、塩化マグネシウム 六水和物などの塩化マグネシウムなどが挙げられ、本発明においては、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明においては、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、塩化カルシウムがより好ましく、塩化カルシウム 二水和物が特に好ましい。
【0042】
本発明の医薬組成物におけるアルカリ土類金属塩化物の含有量は特に限定されず、化合物(1)又はその塩の安定性に応じて適宜検討して決定すればよいが、ラクトン体の生成抑制の観点から、アルカリ土類金属塩化物を医薬組成物全質量に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で0.01〜40質量%含有する医薬組成物が好ましく、0.02〜30質量%含有する医薬組成物がより好ましく、0.05〜20質量%含有する医薬組成物が特に好ましい。
【0043】
本発明の医薬組成物における、化合物(1)又はその塩とアルカリ土類金属塩化物の含有質量比率は特に限定されず、化合物(1)又はその塩の安定性に応じて適宜検討して決定すればよいが、ラクトン体の生成抑制の観点から、化合物(1)又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物を無水物換算で0.005〜60質量部、更に0.01〜40質量部、特に0.02〜20質量部含有することが好ましい。特に、化合物(1)又はその塩がピタバスタチン又はその塩である場合においては、ラクトン体の生成抑制、及びラクトン体以外の分解物の生成抑制の観点から、ピタバスタチンカルシウム換算したピタバスタチン又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物を無水物換算で0.005〜30質量部、更に0.01〜20質量部、特に0.02〜10質量部含有することが好ましい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、その具体的形態(剤形)に応じて、当該技術分野において通常用いられている添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、可塑剤、フィルム形成剤、難水溶性高分子物質、抗酸化剤、矯味剤、甘味剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、香料、流動化剤、液状媒体などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。なお、各添加剤の使用量は本発明の目的を妨げない範囲内で適宜決定することができる。
【0045】
賦形剤としては、例えば、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素、無水硫酸ナトリウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、含水無晶形酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、酸化マグネシウム等の無機系賦形剤;アメ粉、デンプン(コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等)、果糖、カラメル、カンテン、キシリトール、パラフィン、結晶セルロース、ショ糖、果糖、麦芽糖、乳糖、白糖、ブドウ糖、プルラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、マルチトール、還元麦芽糖水アメ、粉末還元麦芽糖水アメ、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、トレハロース、還元パラチノース、マルトース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、クエン酸カルシウム等の有機系賦形剤等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等のスーパー崩壊剤やカルメロース、カルメロースカルシウム、デンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ゼラチン、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、デヒドロ酢酸及びその塩、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられる。
【0046】
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、デンプン(コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン等)、デキストリン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポビドン、ポリビニルアルコール、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0047】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、カラメル、黒酸化鉄、酸化チタン、三二酸化鉄、タール色素、アルミニウムレーキ色素、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、グリセリン、ゴマ油、ソルビトール、ヒマシ油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)、ポリエチレングリコール[例えば、マクロゴール400(オキシエチレン単位の重合度nが7〜9:以下、「n」は重合度を示す)、マクロゴール600(nが11〜13)、マクロゴール1500(nが5〜6と、nが28〜36との等量混合物)、マクロゴール4000(nが59〜84)、マクロゴール6000(nが165〜210)]等が挙げられる。可塑剤としては、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが好ましく、グリセリン、プロピレングリコール及びマクロゴール400からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
【0048】
フィルム形成剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロース;アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸又はその塩;カラギーナン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;キサンタンガム;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのヒドロキシアルキルセルロースフタレート;プルラン;ポリ酢酸ビニル;ポリ酢酸ビニルフタレート;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが好ましい。
【0049】
難水溶性高分子物質としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、天然ビタミンE、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0050】
矯味剤としては、例えば、リモネン、ピネン、カンフェン、サイメン、シネオール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、メントール、テルピネオール、ロジノール、ボルネオール、イソボルネオール、メントン、カンフル、オイゲノール、シンゼイラノールなどのテルペン;トウヒ油、オレンジ油、ハッカ油、樟脳白油、ユーカリ油、テレピン油、レモン油、ショウキョウ油、チョウジ油、ケイヒ油、ラベンダー油、ウイキョウ油、カミツレ油、シソ油、スペアミント油などのテルペンを含有する精油(以下、テルペン及びテルペンを含有する精油をまとめて「テルペン類」と称する。);アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びこれらの塩などの酸味剤などが挙げられる。中でも、テルペン類が好ましく、メントールがより好ましく、l−メントールが特に好ましい。
【0051】
甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸、ソーマチン、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウムなどが挙げられ、中でも、スクラロースが好ましい。
【0052】
本発明の医薬組成物のpHは特に限定されるものではないが、4以上、好ましくは4〜13、より好ましくは5〜12、さらに好ましくは6〜11、特に好ましくは7〜11である。なお、本明細書において、医薬組成物のpHとは、医薬組成物1投与単位を精製水4mLに溶解又は分散して得られる液のpHを、第15改正 日本薬局方 一般試験法の項に記載のpH測定法に従って測定するときの値を意味する。
【0053】
本発明の医薬組成物の剤形は特に限定されるものではなく、固形状、半固形状、液状のいずれの形態であってもよく、医薬品において通常利用される形態とすることができる。具体的には例えば、錠剤(チュアブル錠、発泡錠、口腔内崩壊型錠剤などを含む)、フィルム剤、トローチ剤、ドロップ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、ドライシロップ剤、坐剤、パップ剤、プラスター剤などの固形状の医薬組成物;舐剤、チューインガム剤、ゼリー剤、ゼリー状ドロップ剤、ホイップ剤、軟膏剤、クリーム剤、フォーム剤、インへラー剤、ナザールジェル剤などの半固形状の医薬組成物;シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、酒精剤、液剤、点眼剤、エアゾール剤、噴霧剤、スプレー剤などの液状の医薬組成物などの、日本薬局方、米国薬局方、欧州薬局方等に記載の剤形とすることができる。
【0054】
本発明の医薬組成物の剤形としては、固形状の医薬組成物が好ましい。後記試験例3に具体的に記載されているとおり、アルカリ土類金属塩化物が、化合物(1)又はその塩を含有する固形状の医薬組成物に対して十分な速さの口腔内崩壊性を付与することが明らかとなった。したがって、本発明の医薬組成物が固形状の組成物である場合、当該組成物の崩壊が速やかになされるため、速やかな有効成分の放出及び薬効発現を期待できる。特に、本発明の医薬組成物が口腔内崩壊型の固形製剤(好適には、口腔内崩壊型錠剤又は口腔内崩壊型フィルム剤)である場合においては、本発明の医薬組成物が口腔内で速やかに崩壊するため服用が容易となり、引いては服用コンプライアンスの向上につながるという優れた効果を有する。
なお、本発明において、口腔内崩壊型の固形製剤の、口腔内での崩壊時間(健常人の口腔内の唾液で固形製剤が完全に崩壊するまでの時間)は特に限定されず、固形製剤の剤形、大きさなどによって異なるが、例えば、90秒以内、好ましくは60秒以内、特に好ましくは30秒以内である。
【0055】
本発明の医薬組成物は、剤形に応じて、日本薬局方、米国薬局方、欧州薬局方等に記載の公知の方法により、製造することができる。
具体的には例えば、本発明の好適な一剤形である口腔内崩壊型錠剤(以下、「OD錠」と称する。)の場合、化合物(1)又はその塩と、アルカリ土類金属塩化物と、所望により添加剤等を用いて、直接圧縮成形する方法;化合物(1)又はその塩と、アルカリ土類金属塩化物と、所望により添加剤等を混合し、板状圧縮成形又はスラッグ錠に圧縮成形した後、粉砕し、所望により添加剤等を混合し、乾燥状態の混合物を圧縮成形する方法;化合物(1)又はその塩と、アルカリ土類金属塩化物と、所望により添加剤等を混合後、適当な方法で造粒し、乾燥状態の混合物を圧縮成形する方法等により製造できる。
【0056】
また、本発明のOD錠は、化合物(1)又はその塩と、アルカリ土類金属塩化物を含有する懸濁液や溶液をブリスターポケット等の鋳型に充填し、凍結乾燥し、乾燥凝固する方法により製造できる。なお、前記懸濁液や溶液には、更にゼラチン、デキストラン、アルギン酸やアルギン酸の塩、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等)、グリシン等を含有せしめることができる。
【0057】
更に、本発明のOD錠は、化合物(1)又はその塩と、アルカリ土類金属塩化物と、糖類及び/又は糖アルコールを含有する混合物を水やアルコール水溶液等で湿潤して低圧で成形する方法、いわゆる湿式打錠することにより製造できる。
また更に、本発明のOD錠は、化合物(1)又はその塩と、アルカリ土類金属塩化物と、結晶セルロース等のセルロース系化合物と、アクリル酸系化合物やゼラチン等の易成形性の添加剤や微細化した添加剤等と、所望により、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン等のスーパー崩壊剤を用いて、乾式打錠することにより製造できる。
【0058】
また、本発明のOD錠は、乳糖水和物、マンニトール、ブドウ糖水和物、白糖やキシリトール等の成形性の低い糖類及びマルトース、マルチトール、ソルビトールや、乳糖、果糖等のオリゴ糖等の成形性の高い糖類を用いて造粒物を製し、次いで造粒物を打錠する方法により製造できる。なお、当該方法においては、化合物(1)又はその塩と、アルカリ土類金属塩化物は前記造粒物中に含有せしめてもよいし、造粒物を製した後に混合してもよいが、前記造粒物中に含有せしめたものが好ましい。
【0059】
さらに、本発明のOD錠は、化合物(1)又はその塩や他の添加剤の融点や分解点よりも低い、キシリトール、トレハロース、マルトース、ソルビトール、エリスリトール、グルコース、マルチトール、マンニトール、白糖、乳糖水和物等の相対的低融点糖類を用いて、化合物(1)又はその塩や他の添加剤との溶融固化物を製造し、次いで溶融固化物を打錠する方法により製造できる。なお、当該方法においては、化合物(1)又はその塩は前記溶融固化物中に含有せしめてもよいし、溶融固化物を製した後に混合してもよいが、溶融固化物中に含有せしめたものが好ましい。
【0060】
本発明のOD錠において用いられる賦形剤や崩壊剤等の添加剤の含有量は特に限定されないが、本発明のOD錠の全質量に対して、賦形剤は20〜95質量%、更に30〜90質量%、特に35〜85質量%含有することが好ましい。また、崩壊剤は、本発明のOD錠の全質量に対して、0.5〜25質量%、更に1〜20質量%、特に2〜15質量%含有することが特に好ましい。
【0061】
本発明の好適な他の剤形である口腔内崩壊型フィルム剤(以下、単に「フィルム剤」と称する。)は、公知の方法により適宜製造できる。
具体的には例えば、プラスチックフィルム、台紙等の保持基材の上に、化合物(1)又はその塩、アルカリ土類金属塩化物、所望により添加剤等を配合した懸濁液を塗布・噴霧等した後、これを乾燥させることにより製造することができる。なお、懸濁液における溶媒としては、水、アルコール(エタノール等)及びそれらの混液などが挙げられる。
また、本発明のフィルム剤は、複数の層を積層した多層型のフィルム(multi-layer film)剤であってもよく、複数の層のうち少なくとも一層に化合物(1)又はその塩とアルカリ土類金属塩化物を含有していればよい。さらに、化合物(1)又はその塩とアルカリ土類金属塩化物はそれぞれ異なる層に含有していてもよいが、ラクトン体の生成抑制の観点から、化合物(1)又はその塩とアルカリ土類金属塩化物を同一の層に含有せしめることが好ましい。なお、多層型のフィルム剤を製造する場合においては、例えば、保持基材の上に複数の層を別々に形成した後、各層を圧着することにより積層して製造してもよいし、懸濁液の塗布・噴霧、乾燥を順次繰り返すことにより積層して製造してもよい。
【0062】
本発明のフィルム剤において用いられるフィルム形成剤や可塑剤等の添加剤の含有量は特に限定されないが、本発明のフィルム剤の全質量に対して、フィルム形成剤は25〜95質量%、更に30〜80質量%、特に35〜65質量%含有することが好ましい。また、可塑剤は、本発明のフィルム剤の全質量に対して、1〜25質量%、更に3〜20質量%、特に5〜15質量%含有することが好ましい。
【0063】
本発明の医薬組成物は、一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩を含有することから、例えば、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤、家族性高コレステロール血症治療剤などとして利用できる。
本発明の医薬組成物の服用経路としては、経口及び経直腸や経膣等の非経口が挙げられ、経口投与が好ましい。また、本発明の医薬組成物は、1日につき1〜4回程度に分けて、食前、食間、食後、就寝前等に服用することができる。
【0064】
本発明の好ましい態様は、以下のとおりである。
〔1−1〕上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩、及びアルカリ土類金属塩化物を含有する医薬組成物。
〔1−2〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔1−1〕記載の医薬組成物。
〔1−3〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、ピタバスタチンである、上記〔1−1〕記載の医薬組成物。
〔1−4〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩が、ピタバスタチンカルシウムである、上記〔1−1〕記載の医薬組成物。
〔1−5〕当該医薬組成物の全質量に対するピタバスタチン又はその塩の含有量が、ピタバスタチンカルシウム換算で、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%である、上記〔1−3〕又は〔1−4〕記載の医薬組成物。
〔1−6〕前記アルカリ土類金属塩化物が、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔1−1〕〜〔1−5〕のいずれか一に記載の医薬組成物。
〔1−7〕pHが、4以上、好ましくは4〜13、より好ましくは5〜12、更に好ましくは6〜11、特に好ましくは7〜11である、上記〔1−1〕〜〔1−6〕のいずれか一に記載の医薬組成物。
〔1−8〕前記アルカリ土類金属塩化物の含有量が、前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜60質量部、更に好ましくは0.01〜40質量部、特に好ましくは0.02〜20質量部である、上記〔1−1〕〜〔1−7〕のいずれか一に記載の医薬組成物。
〔1−9〕前記アルカリ土類金属塩化物の含有量が、ピタバスタチンカルシウム換算したピタバスタチン又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜30質量部、更に好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.02〜10質量部である、上記〔1−3〕〜〔1−7〕のいずれか一に記載の医薬組成物。
〔1−10〕固形状の医薬組成物である、上記〔1−1〕〜〔1−9〕のいずれか一に記載の医薬組成物。
〔1−11〕口腔内崩壊型の固形製剤である、上記〔1−10〕に記載の医薬組成物。
〔1−12〕前記口腔内崩壊型の固形製剤の形態が、口腔内崩壊型錠剤又は口腔内崩壊型フィルム剤である、上記〔1−11〕に記載の医薬組成物。
〔1−13〕1日につき1〜4回程度に分けて、食前、食間、食後及び就寝前のいずれかに服用する、上記〔1−1〕〜〔1−12〕のいずれか一に記載の医薬組成物。
〔1−14〕高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤又は家族性高コレステロール血症治療剤である、上記〔1−1〕〜〔1−13〕のいずれか一に記載の医薬組成物。
【0065】
〔2−1〕アルカリ土類金属塩化物を有効成分とする、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩の安定化剤。
〔2−2〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔2−1〕記載の安定化剤。
〔2−3〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、ピタバスタチンである、上記〔2−1〕記載の安定化剤。
〔2−4〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩が、ピタバスタチンカルシウムである、上記〔2−1〕記載の安定化剤。
〔2−5〕前記アルカリ土類金属塩化物が、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔2−1〕〜〔2−4〕のいずれか一に記載の安定化剤。
〔2−6〕前記アルカリ土類金属塩化物の含有量が、前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜60質量部、更に好ましくは0.01〜40質量部、特に好ましくは0.02〜20質量部である、上記〔2−1〕〜〔2−5〕のいずれか一に記載の安定化剤。
〔2−7〕前記アルカリ土類金属塩化物の含有量が、ピタバスタチンカルシウム換算したピタバスタチン又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜30質量部、更に好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.02〜10質量部である、上記〔2−3〕〜〔2−5〕のいずれか一に記載の安定化剤。
〔2−8〕ラクトン体生成抑制剤である、上記〔2−1〕〜〔2−7〕のいずれか一に記載の安定化剤。
【0066】
〔3−1〕アルカリ土類金属塩化物の、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩の安定化剤としての使用。
〔3−2〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔3−1〕記載の安定化剤としての使用。
〔3−3〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、ピタバスタチンである、上記〔3−1〕記載の安定化剤としての使用。
〔3−4〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩が、ピタバスタチンカルシウムである、上記〔3−1〕記載の安定化剤としての使用。
〔3−5〕前記アルカリ土類金属塩化物が、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔3−1〕〜〔3−4〕のいずれか一に記載の安定化剤としての使用。
〔3−6〕前記アルカリ土類金属塩化物の使用量が、前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜60質量部、更に好ましくは0.01〜40質量部、特に好ましくは0.02〜20質量部である、上記〔3−1〕〜〔3−5〕のいずれか一に記載の安定化剤としての使用。
〔3−7〕前記アルカリ土類金属塩化物の使用量が、ピタバスタチンカルシウム換算したピタバスタチン又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜30質量部、更に好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.02〜10質量部である、上記〔3−3〕〜〔3−5〕のいずれか一に記載の安定化剤としての使用。
〔3−8〕安定化剤が、ラクトン体生成抑制剤である、上記〔3−1〕〜〔3−7〕のいずれか一に記載の安定化剤としての使用。
【0067】
〔4−1〕上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩に、アルカリ土類金属塩化物を共存せしめる、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩の安定化方法。
〔4−2〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔4−1〕記載の安定化方法。
〔4−3〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、ピタバスタチンである、上記〔4−1〕記載の安定化方法。
〔4−4〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩が、ピタバスタチンカルシウムである、上記〔4−1〕記載の安定化方法。
〔4−5〕前記アルカリ土類金属塩化物が、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔4−1〕〜〔4−4〕のいずれか一に記載の安定化方法。
〔4−6〕前記アルカリ土類金属塩化物の使用量が、前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜60質量部、更に好ましくは0.01〜40質量部、特に好ましくは0.02〜20質量部である、上記〔4−1〕〜〔4−5〕のいずれか一に記載の安定化方法。
〔4−7〕前記アルカリ土類金属塩化物の使用量が、ピタバスタチンカルシウム換算したピタバスタチン又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜30質量部、更に好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.02〜10質量部である、上記〔4−3〕〜〔4−5〕のいずれか一に記載の安定化方法。
〔4−8〕ラクトン体の生成抑制方法である、上記〔4−1〕〜〔4−7〕のいずれか一に記載の安定化方法。
【0068】
〔5−1〕上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩のラクトン体生成が抑制された医薬組成物の製造方法であって、上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩に、アルカリ土類金属塩化物を含有せしめる工程を含む製造方法。
〔5−2〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔5−1〕記載の製造方法。
〔5−3〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、ピタバスタチンである、上記〔5−1〕記載の製造方法。
〔5−4〕前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩が、ピタバスタチンカルシウムである、上記〔5−1〕記載の製造方法。
〔5−5〕当該医薬組成物の全質量に対するピタバスタチン又はその塩の含有量が、ピタバスタチンカルシウム換算で、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%である、上記〔5−3〕又は〔5−4〕記載の製造方法。
〔5−6〕前記アルカリ土類金属塩化物が、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上である、上記〔5−1〕〜〔5−5〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔5−7〕pHが、4以上、好ましくは4〜13、より好ましくは5〜12、更に好ましくは6〜11、特に好ましくは7〜11である、上記〔5−1〕〜〔5−6〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔5−8〕前記アルカリ土類金属塩化物の含有量が、前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜60質量部、更に好ましくは0.01〜40質量部、特に好ましくは0.02〜20質量部である、上記〔5−1〕〜〔5−7〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔5−9〕前記アルカリ土類金属塩化物の含有量が、ピタバスタチンカルシウム換算したピタバスタチン又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で好ましくは0.005〜30質量部、更に好ましくは0.01〜20質量部、特に好ましくは0.02〜10質量部である、上記〔5−3〕〜〔5−7〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔5−10〕医薬組成物が、固形状である、上記〔5−1〕〜〔5−9〕のいずれか一に記載の製造方法。
〔5−11〕医薬組成物が、口腔内崩壊型の固形製剤である、上記〔5−10〕に記載の製造方法。
〔5−12〕前記口腔内崩壊型の固形製剤の形態が、口腔内崩壊型錠剤又は口腔内崩壊型フィルム剤である、上記〔5−11〕に記載の製造方法。
〔5−13〕医薬組成物が、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤又は家族性高コレステロール血症治療剤である、上記〔5−1〕〜〔5−12〕のいずれか一に記載の製造方法。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
水4.8gと無水エタノール11.2gを混合し、スクラロース0.8g、l−メントール0.06g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE 1.6g、塩化カルシウム 二水和物(第15改正 日本薬局方に記載の塩化カルシウム水和物)0.4gを溶解し、ピタバスタチンカルシウム0.4gを分散した。この液にヒプロメロース4.74gを溶解し、調製液を得た。
PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム上に調製液を均一に塗布した後、温風にて乾燥し、面積2.8cm2あたりの質量が10mgの層を形成し、中間製品1を得た。
中間製品1を2式用意し、層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、片側のPETフィルムを剥離し、中間製品2とした。中間製品2を2式用意し、層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、中間製品3を得た。
中間製品3を面積2.8cm2に裁断し、PETフィルムを剥離して、実施例1のフィルム剤を得た。
【0071】
[実施例2]
実施例1において、塩化カルシウム 二水和物の代わりに塩化マグネシウム 六水和物(日本薬局方外医薬品規格2002に記載の塩化マグネシウム)を用いたほかは同様の方法により、実施例2のフィルム剤を得た。
【0072】
[比較例1]
実施例1において、塩化カルシウム 二水和物の代わりにヒプロメロースを用いたほかは同様の方法により、比較例1のフィルム剤を得た。
【0073】
[比較例2]
実施例1において、塩化カルシウム 二水和物の代わりに炭酸カルシウムを用いたほかは同様の方法により、比較例2のフィルム剤を得た。
【0074】
[比較例3]
実施例1において、塩化カルシウム 二水和物の代わりにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いたほかは同様の方法により、比較例3のフィルム剤を得た。
【0075】
[試験例1]ラクトン体の生成抑制試験
実施例1、2及び比較例1〜3のフィルム剤について、調製直後及び60℃、1週間保存後のラクトン体の生成率を評価した。
ラクトン体の生成率は、実施例1、2及び比較例1〜3のフィルム剤につき、HPLC装置(アライアンス2695セパレーションモジュール及び2996フォトダイオードアレー検出器を装備したHPLCシステム:Waters製)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。その結果を、各フィルム剤の組成(フィルム剤1枚当たりの成分量(mg))とともに表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示す試験結果より、アルカリ土類金属塩化物を含有しない比較例1においては、時間の経過に伴い多量のラクトン体の生成が確認された。また、アルカリ土類金属塩化物の代わりに塩基性物質である炭酸カルシウムを含有する比較例2、同じく塩基性物質であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する比較例3においては、ラクトン体の生成量は比較例1と大差なかった。
一方、実施例1、2及び比較例1〜3に係るフィルム剤は、いずれもそのpHが8.5前後に調整されたものであるにも拘わらず、アルカリ土類金属塩化物である塩化カルシウムを含有する実施例1、同じくアルカリ土類金属塩化物である塩化マグネシウムを含有する実施例2においては、比較例1〜3に比して特異的にラクトン体の生成が抑制されることが明らかとなった。なお、本発明は当該推察に何ら拘泥されるものではないが、同程度のpH環境においてアルカリ土類金属塩化物が特異的にラクトン体の生成を抑制したことから、当該作用はpHの上昇に伴うラクトン体生成抑制とは全く異なるメカニズムによるものであることが推察された。
【0078】
以上の試験結果から、アルカリ土類金属塩化物が、ピタバスタチンをはじめとする化合物(1)又はその塩のラクトン体生成を抑制する作用を有することが明らかとなった。
【0079】
[試験例2]ラクトン体以外の分解物の生成抑制試験
実施例1、2及び比較例1〜3のフィルム剤について、調製直後及び60℃、1週間保存後のラクトン体以外の総分解物の生成率を、試験例1におけるラクトン体の生成率の測定法と同様、HPLC装置によりピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。
結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表2に示す試験結果より、アルカリ土類金属塩化物である塩化カルシウムを含有する実施例1、同じくアルカリ土類金属塩化物である塩化マグネシウムを含有する実施例2においては、ラクトン体以外の分解物の生成も顕著に抑制されることが明らかとなった。
【0082】
以上の試験結果から、アルカリ土類金属塩化物が、特にピタバスタチン又はその塩に対して優れた安定化作用を有することが明らかとなった。
【0083】
[実施例3]
水20gと無水エタノール20gを混合し、マクロゴール3g、トレハロース7.5gを溶解し、酸化チタン3g、三二酸化鉄0.3gを分散した。この液にヒプロメロース18gを溶解し、薬物非含有層調製液を得た。
水20gと無水エタノール20gを混合し、マクロゴール3g、塩化カルシウム 二水和物(第15改正 日本薬局方に記載の塩化カルシウム水和物)6g、スクラロース6g、l−メントール0.9gを溶解し、ピタバスタチンカルシウム6g、酸化マグネシウム3gを分散した。この液にヒドロキシプロピルセルロース15gを溶解し、薬物含有層調製液を得た。
PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム上に薬物非含有層調製液を均一に塗布した後、温風にて乾燥し、面積2.8cm2あたりの質量が5.3mgの薬物非含有層を形成した。薬物非含有層の上方に薬物含有層調製液を均一に塗布した後、温風にて乾燥し、面積2.8cm2あたりの質量が6.65mgの薬物含有層を形成し、中間製品1を得た。
中間製品1を2式作成し、薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、2つのPETフィルムの間に、薬物非含有層、薬物含有層、薬物非含有層が順次積層された中間製品2を得た。
中間製品2を面積2.8cm2に裁断し、PETフィルムを剥離して、実施例3のフィルム剤を得た。
【0084】
[試験例3]崩壊試験
実施例3のフィルム剤につき、10名の健常成人により口腔内崩壊時間(フィルム剤を口に含み、噛まずに放置し、完全に崩壊するまでの時間)を測定し、その平均値を算出した。結果を、フィルム剤の組成(フィルム剤1枚当たりの成分量(mg))とともに表3に示す。
【0085】


【表3】

【0086】
表3に示す試験結果より、実施例3のフィルム剤は口腔内崩壊剤として十分な速さの崩壊性を有することが確認された。
【0087】
[製造例1]
D−マンニトール597.6質量部とクロスポビドン201.6質量部の混合物に、ピタバスタチンカルシウム72質量部、ヒプロメロース86.4質量部、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE 108質量部、スクラロース72質量部、l−メントール14.4質量部、塩化カルシウム 二水和物(第15改正 日本薬局方に記載の塩化カルシウム水和物)72質量部、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム43.2質量部を含む70%エタノール溶液又は分散液を噴霧し、造粒して、造粒物を得る。
造粒物に、ヒプロメロース72質量部、黄色三二酸化鉄36質量部及び酸化チタン266.4質量部を含む70%エタノール溶液又は分散液のコーティング液を噴霧して、コーティング顆粒を得る。
コーティング顆粒456質量部、D−マンニトール400質量部、キシリトール30質量部、結晶セルロース550質量部、クロスポビドン129質量部、無水リン酸水素カルシウム25質量部及びヨーグルトミクロン2質量部を混合し、さらにステアリン酸カルシウム8質量部を混合し、ロータリー式打錠機にて打錠することにより、直径8mm、質量160mgの口腔内崩壊型錠剤を得ることができる。
【0088】
[製造例2〜15]
製造例1と同様の方法により、下記表4〜表6記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を得ることができる。
【0089】


【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
[製造例16]
水480質量部と無水エタノール480質量部を混合し、マクロゴール30質量部、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE 120質量部、トレハロース30質量部を溶解し、酸化チタン30質量部、黄色三二酸化鉄3質量部を分散する。この液にヒプロメロース240質量部を溶解し、薬物非含有層調製液を得る。
水600質量部と無水エタノール600質量部を混合し、マクロゴール30質量部、スクラロース30質量部、l−メントール15質量部、塩化カルシウム 二水和物(第15改正 日本薬局方に記載の塩化カルシウム水和物)60質量部を溶解し、ピタバスタチンカルシウム60質量部、酸化マグネシウム6質量部を分散する。この液にヒドロキシプロピルセルロース300質量部を溶解し、薬物含有層調製液を得る。
PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム上に薬物非含有層調製液を均一に塗布した後、温風にて乾燥し、面積2.8cm2あたりの質量が7.55mgの薬物非含有層を形成する。薬物非含有層の上方に薬物含有層調製液を均一に塗布した後、温風にて乾燥し、面積2.8cm2あたりの質量が8.35mgの薬物含有層を形成し、中間製品1を得る。
中間製品1を2式作成し、薬物含有層同士が対向するように貼り合わせ圧着し、2つのPETフィルムの間に、薬物非含有層、薬物含有層、薬物非含有層が順次積層された中間製品2を得る。
中間製品2を面積2.8cm2に裁断し、PETフィルムを剥離して、口腔内崩壊型フィルム剤を得ることができる。
【0093】
[製造例17〜30]
製造例16と同様の方法により、下記表7〜9記載の成分及び分量(mg)を1枚中に含有する口腔内崩壊型フィルム剤を得ることができる。
【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
【表9】

【0097】
[製造例31〜35]
常法により、下記表10記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を得ることができる。
【0098】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、スタチン類をはじめとする上記一般式(1)で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩のラクトン体生成が抑制されることから、有効成分の安定性が良好な医薬組成物を提供することができ、医薬品産業等において利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、Rは有機基を示し、Xは−CH2−CH2−又は−CH=CH−を示す。]
で表されるHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物(但し、ピタバスタチンを除く)又はその塩、及びアルカリ土類金属塩化物を含有する医薬組成物。
【請求項2】
前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物が、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン及びロスバスタチンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属塩化物が、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項4】
pHが、4以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項5】
pHが、7〜11である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アルカリ土類金属塩化物の含有量が、前記HMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物の無水物換算で0.005〜60質量部である、請求項1〜5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
固形状の医薬組成物である、請求項1〜6のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
口腔内崩壊型の固形製剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記口腔内崩壊型の固形製剤の形態が、口腔内崩壊型錠剤又は口腔内崩壊型フィルム剤である、請求項8に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2012−144564(P2012−144564A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95518(P2012−95518)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2011−548476(P2011−548476)の分割
【原出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】