説明

医薬組成物

【課題】生物学的利用能が、患者が喫食状態か絶食状態かに依存して異なる有効成分であるオクスカルバゼピンを含有する薬剤であって、患者の喫食状態あるいは絶食状態に関わらず、患者に投与することができる薬剤を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明は平均粒子サイズが2から12ミクロンであって、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下のオクスカルバゼピンを有効成分として含有することに特徴を有する薬剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オクスカルバゼピンを含む製剤に関する。
オクスカルバゼピン(10,11−ジヒドロ−10−オキソ−5H−ジベンゾ(b,f)アゼピン−5−カルボキシイミド)は、痙攣の処置における第一選択薬である。
【背景技術】
【0002】
薬物の生物学的利用能および生物学的同等性は、溶解性や薬物動力学的性質(例えば吸収の速度や程度)などの物理化学的性質に依存している。さらに、食物は消化管(GI)の生理機能に変化を引き起こすことが知られている。この変化は、とりわけ胃内容物の排出の遅れ、胆汁分泌の刺激およびpHの変化を引き起こし得る。食物はまた、腸管代謝を変化させ、生理的および化学的に薬物と相互作用し得る。従って、食物が薬物の生物学的利用能に影響を与え得るとしても驚くべきことではない。
【0003】
食物の影響は、複雑で予想し難く、また、例えば栄養素、容積、熱量、温度などの食物の性質に依存する。従って、与えられた薬物に対する食物の影響の存在は、徹底的な試験の後でのみ決定し得る。
【0004】
薬物の生物学的利用能が、患者が喫食状態か絶食状態かどうかに依存して異なることは望ましくない。これは、少なくとも食事に服薬の時間を合わせる必要がある患者にとって不便である。しかし、これは例えば食事の摂取の結果指示と合わない服薬をした場合に、例えば発作などの有害事象を引き起こし得るオクスカルバゼピンのような抗痙攣薬に関して特に懸念されることとなり得る。
【0005】
水性の溶媒、例えば胃液様溶媒に対して溶解性が低い中性分子であり、一度溶解させれば本質的に完全に吸収され、また比較的大用量(例えばオクスカルバゼピンを300から600mg まで)投薬するオクスカルバゼピンの場合、共に食物の摂取と関連するオクスカルバゼピンの消化管内における滞留時間の延長および消化管内の胆汁酸塩の濃度の増加が、溶解を助けその結果生物学的利用能に影響を与えると期待される。
【0006】
上記の考察は、現在市販されているオクスカルバゼピンの製剤が食物の影響に対して注意を喚起し、食事に関する用法指示が特記して(例えば本錠剤は食事中または食後に液体と共に服用すべきであるとラベルに記されて)、販売されていることで支持される。
【0007】
従って、オクスカルバゼピンの経口投与形が、例えば喫食状態か絶食状態かといった患者の状態に関わらず、患者に投薬し得ることが発見されたことは、驚くべきことである。
【0008】
それゆえに、本発明は、本発明の一態様として、患者に投薬する際に食物の影響がないオクスカルバゼピンを含む経口投与形を提供する。
【0009】
本発明による経口投与形は、患者にとって使用する際により便利であり、かつ/またはより安全であるという点で、現在市販されている製剤よりも多くの利点を与える。
【0010】
それゆえに、本発明の他の態様として、上記のような経口投与形と、該投与剤形が食後または絶食状態の患者によって同様に服用され得るという指示を述べた使用指示書からなるパッケージを提供する。
【0011】
さらに詳しくは、本発明は、投与形が、食物と共にであっても無しであっても同様に服用され得るという指示を記載した指示書と共に包装されたオクスカルバゼピンを含む経口投与形を提供する。
【0012】
ここで使用する「食物の影響」という用語は、オクスカルバゼピンの喫食状態の生物学的利用能が、絶食状態の生物学的利用能と異なることを意味することを意図されている。食物の影響が存在するか否かは、当業界で周知の方法に従い、曲線下面積(AUC)および/またはCmaxを測定することによって定量され得る。通常、AUC測定およびCmax測定は、一定時間毎に生物学的体液試料を採取し、血清中のオクスカルバゼピン(またはその活性体)の濃度を時間に対してプロットすることによって行われる。得られた値は、ひとつの患者集団の中からとった対象のいくつかの値を代表し、それゆえに、全患者集団の平均値として表わされる。AUCおよび/またはCmaxの平均値を比較することによって、オクスカルバゼピンが食物の影響を示すかどうかを決定する。
【0013】
食物の影響の試験は、十分な数の、すなわち適切な統計的評価をなし得るための十分なデータを得るに足る数の、健康な志願者で都合よく行い得る。好ましくは、対象者の数は12以上であるべきである。
【0014】
オクスカルバゼピンの製剤の生物学的利用能への食物の影響を検討するために、当業界で既知のあらゆる慣用の研究計画を、例えば無作為化バランス化1回用量2回投与2期間2連続クロスオーバー法を用い得る。分析は、例えば Carolina 州 Cary North の SAS 研究所のソフトウェア SAS PROC GLM を用いて行い得る。
【0015】
定量的な観点では、オクスカルバゼピンは、喫食状態と絶食状態の平均値(対数変換データに基づく幾何学的平均値)の比に対する90% 信頼区間値(CI)が、AUCで0.8から1.25、またはCmaxで0.7から1.43の範囲にはいっていれば、食物の影響を示さないと言える。
【0016】
それゆえに、本発明は、オクスカルバゼピンを含む経口投与形の1回投与後のAUC喫食状態/絶食状態 の比が0.8から1.25であり、または1回投与後のCmax喫食状態/絶食状態 の比が0.7から1.43である、本発明による経口投与形の使用を提供する。
【0017】
本発明の教示の応用によって、経口投与形は、オクスカルバゼピンの治療を受けている各個人間および各個人内で達成される吸収/生物学的利用能のレベルの変動性を減少させることによって得られる。
【0018】
従って、一態様において、本発明は、喫食状態または絶食状態の区別なく(例えば、如何なる時間でも)患者に投薬した際に、食物の影響を示さないオクスカルバゼピンを含む経口投与形を経口で投与する方法であって、オクスカルバゼピンの経口治療中の患者において、患者内での生物学的利用能の変動性を減少させる方法を提供する。
【0019】
「喫食状態の」患者は、便宜上、標準的FDA認定の高脂質食を摂取する前少なくとも10時間は絶食状態にあった患者として考えられてよい。次いで、オクスカルバゼピンは食事の終了後すぐ、例えば食後5分以内に、水で服用され得る。好ましくは、オクスカルバゼピンの服用後、例えば4時間後までの間は食事をとることを許されない。しかし例えば2時間後ならば少量の水をとることを許される。
【0020】
「絶食状態の」患者は、便宜上、少なくとも10時間絶食状態にあった後、オクスカルバゼピンを水で服用し得る。その後、オクスカルバゼピンを服用後、例えば4時間後までの間は食事をとることを許されない。しかし例えば2時間後ならば少量の水をとることを許される。
【0021】
上記の標準的なFDA高脂質食は、消化管に食物が存在するために最大の撹乱を起こすと期待されるあらゆる食物を含み得る。該高脂質食は、概してカロリー値の50%が脂肪である。代表的な例では、バターで炒めた卵2個、ベーコン2枚、バターを塗ったトースト2枚、フライドポテト4オンス、ミルク8オンスである。
【発明の概要】
【0022】
本発明による経口投与形は、摂取すると急速に崩壊し、急速な溶解のためにオクスカルバゼピンを提供する。その後、オクスカルバゼピンは、食物の影響を残さないような時間内に溶解する。オクスカルバゼピンを含む経口投与形において、食物の影響が見られないのは、一部は薬物固有の性質によるものであり、また一部は、例えば薬の粒子サイズや粒度分布等の薬物の特性といった製剤の面、および/または賦形剤の性質や特性、および/または例えば経口投与形の形成等の加工要因によるものである。本発明による経口投与形の各製造バッチがその性質において一定であることを確実にするためには、簡単に測定できるパラメーターを持つことが望ましい。この点に関しては、出願人はオクスカルバゼピンの経口投与形の in vitro / in vivo の溶解速度相関がレベルCであることを見出している。従って、in vitro での溶解性のデータは製造された経口投与形の質の重要な制御手段であり得る。
【0023】
それゆえに、本発明による好ましい経口投与形は、下記の溶解度テストによって測定したとき、30分後に70%以上、60分後に80%以上溶解する、in vitro 溶解速度を示す。
【0024】
従って、さらなる態様において、本発明は、経口投与形が、30分後に70%以上溶解するオクスカルバゼピンの in vitro 溶解速度を示す、本発明による経口投与形の使用を提供する。
【0025】
オクスカルバゼピンは、溶解すればすばやくほぼ完全に吸収される。さらに、in vivo での溶解は、オクスカルバゼピンの吸収と代謝と比べて速い。in vitro での溶解度のデータは、品質保証の信頼性ある手段というだけではなく、同成分を含む製剤に特徴的な生物学的利用能を予測し得る、例えば一定の in vitro 溶解プロファイルを持つ製剤は、食物の影響を示さないと考え得るものであると結論付けられる。
【0026】
本発明による特に好ましい製剤は、30分後に少なくとも90%溶解する in vitro 溶解速度を示す。
【0027】
in vitro 溶解速度は、アメリカ薬局方の National Formulary 18 (1995)の 1791−1792 ページで示されたパドルテストに基づく溶解度試験法に従って、溶媒をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の水溶液とする(好ましくは900ml の水にドデシル硫酸ナトリウム濃度0.3から1.0%)ように適当に修飾して測定した。SDSの濃度は、溶解度試験に用いる錠剤の大きさによって決定し得る。例えば、150mg の錠剤には0.3%のSDSを用い;300mgの錠剤には0.6%のSDSを用い;600mg の錠剤には1.0%のSDSを用い得る。パドルのスピードは好ましくは60rpm にセットし、温度は37℃にセットする。
【0028】
本発明による経口投与形は抗痙攣作用のために有用であり、単剤療法もしくは併合療法として、例えば結果としての癲癇、癲癇症状、脳血管障害、頭部損傷またはアルコール禁断症状などの発症による二次性広汎化を伴うもしくは伴わない一次広汎化硬直間代性発作および部分発作といった発作の制御、予防もしくは処置に使用され得る。
【0029】
それゆえに、他の態様において、本発明は、二次性広汎化を伴うもしくは伴わない一次広汎化強直間代性発作や部分発作の処置のために、喫食状態もしくは絶食状態の患者に投薬し得る経口投与形医薬の製造のためのオクスカルバゼピンの使用を提供する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、二次性広汎化を伴うもしくは伴わない一次広汎化強直間代性発作や部分発作の処置のために、絶食状態の患者に投薬し得る経口投与形医薬の製造のためのオクスカルバゼピンの使用を提供する。
【0031】
投薬すべきオクスカルバゼピンの正確な用量および特定の製剤は、処置すべき状態、処置の望ましい持続時間、オクスカルバゼピンの放出速度などのいくつかの要因に依存する。例えば、必要なオクスカルバゼピンの量とその放出速度は、血漿中のある特定の活性成分の濃度が、満足な治療効果をもたらすレベルで、いかに長く残留するかを決めるin vitro および in vivo の方法によって決定され得る。
【0032】
本発明による好ましいレジメは、150から600mg の、例えば日に2回300mgずつの単剤療法を含む。1200から2400mg / 日の用量は、耐用性である。併合療法の好ましいレジメは、初期用量300mg / 日を含む。600から2400mg / 日の用量は耐用性である。
【0033】
それゆえに、さらなる態様において、本発明は、経口投与形が300から600mgのオクスカルバゼピンを含む、本発明による経口投与形の使用を提供する。
【0034】
本発明による経口投与形は、例えばカプセル、粉末もしくは懸濁剤などの固体の経口投与形であり得るが、経口投与形が錠剤の形であるのが好ましい。
【0035】
慣用的に、錠剤は、標準的な錠剤用賦形剤と混合し、打錠したオクスカルバゼピンの錠剤核からなり得る。
【0036】
オクスカルバゼピンとその製剤の方法は、当業界で周知である。その製造と治療上の使用は、ここに引用することによって包含させたドイツ特許公開第2 011 087号に記載されている。商業的に有利なオクスカルバゼピンの製造方法は、ここに引用することによって包含させた欧州特許出願第0 028 028号に記載されている。
【0037】
好ましくは、微粉砕してあり、メジアン径(median particle size)が約2から12ミクロン、特により好ましくは4から12ミクロン、さらにより好ましくは4から10ミクロンであり、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下、例えば2%のオクスカルバゼピンを用いる。
【0038】
それゆえに、本発明は、微粉砕してありメジアン径が約4から10ミクロンであり、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下であるオクスカルバゼピンを含む経口投与形である、もしくは微粉砕してありメジアン径が約4から10ミクロンであり、40ミクロンのふるいで最大の残さが5%以下であるもの以外のオクスカルバゼピンを含む経口投与形である、本発明による経口投与形の使用を提供する。
【0039】
既知の粒子サイズ分析法は、メジアン径の測定に適している。粒子サイズ測定法には、例えば光分散法や比濁分析法などの光を用いた方法、例えばアンドレアゼンピペットを用いたピペット分析、沈降分離計、光沈降分離計または遠心力による沈降分離等による沈降分離法、例えばコールターカウンターを用いた、もしくは重力または遠心力の手段で区分するパルス法がある。これらの方法は、とりわけ Voigt, Ioc. cit. の 64−79 ページに書かれている。
【0040】
好ましい粒子サイズのオクスカルバゼピンを生産するためには、慣用の粉砕技術および解凝集技術(de-agglomeration techniques)、例えばエア・ジェット製粉機、衝撃製粉機、ボール製粉機、振動製粉機、モーター製粉機、ピン製粉機などの技術が使用し得る。
【0041】
本発明による経口投与形は、オクスカルバゼピンに加え、製剤の正確な性質に対応する慣用の賦形剤を含み得る。賦形剤の種類は、結合剤、香味剤、希釈剤、濃化剤、滑剤(glidant)を含む。
【0042】
本発明による錠剤の製剤の場合、適切な賦形剤が錠剤核に使われ得る。適切な賦形剤には、例えばタルク、例えば SYLOID 244 FP などの Syloid(登録商標)タイプ (Grace) のような合成非晶無水珪酸などの二酸化ケイ素、AVICEL PH101, 102, 105, RC581 もしくは RC591 などの Avicel(登録商標)タイプ (FMC Corp.) 、Emcocel(登録商標)タイプ (Mendell Corp.) 、 Elecema(登録商標)タイプ (Degussa) などの微晶性セルロース、砂糖、糖アルコール、澱粉およびその誘導体(例えばラクト−ス、デキシトース、サッカロース、グルコース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、じゃがいも澱粉、とうもろこし澱粉、米澱粉、小麦澱粉、アミロペクチン)などの炭水化物、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、珪酸マグネシウムなどの流動性を調節する性質を持つ微粉末充填剤、およびゼラチン、トラガカントゴム、寒天、アルギン酸、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル、ポリエチレングリコール、例えば Polyox(登録商標)(Union Carbide) の名前で知られる賦形剤などの、特に重合度が約2.0×10から1.0×10であり、概算分子量が約1.0×10から5.0×10であるエチレンオキシドホモポリマー、ポリビニルピロリドン、特に平均分子量が約1000であり、重合度が約500から2500であるポビドン、または寒天やゼラチンなどの結合剤、例えばn−ドデシル硫酸塩、n−テトラデシル硫酸塩、n−ヘキサデシル硫酸塩、n−オクタデシル硫酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などのアルキル硫酸塩タイプ、n−ドデシルオキシエチル硫酸塩、n−テトラデシルオキシエチル硫酸塩、n−ヘキサデシルオキシエチル硫酸塩、n−オクタデシルオキシエチル硫酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などのアルキルエーテル硫酸塩、n−ドデカン硫酸塩、n−テトラデカン硫酸塩、n−ヘキサデカン硫酸塩、n−オクタデカン硫酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などのアルカン硫酸塩タイプ等のアニオン性の表面活性剤、ソルビタンモノラウリン酸、モノオレイン酸、モノステアリン酸やモノパルミチン酸、ソルビタントリステアリン酸、トリオレイン酸などの脂肪酸ポリヒドロキシアルコールエステル型、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸、モノオレイン酸、モノステアリン酸、モノパルミチン酸、トリステアリン酸、トリオレイン酸などの脂肪酸ポリヒドロキシアルコールエステルのポリオキシエチレン付加物型、ポリオキシエチルステアリン酸、ポリエチレングリコール400ステアリン酸、特に Pluronics(登録商標)タイプ(BWC)、 Synperonic(登録商標)タイプ(ICI)のエチレンオキシド/プロピレンオキシドのブロックポリマーであるポリエチレングリコール2000ステアリン酸などのポリエチレングリコール脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤等の界面活性剤を含み得る。
【0043】
錠剤はコーティングされていることが望ましい。
それゆえに、一態様において、本発明は経口投与形がコーティングされた錠剤である、本発明による経口投与形を提供する。
【0044】
オクスカルバゼピンは、保存の際に変色する傾向を示し、コーティング、例えば一重または二重のコーティングが、いかなる変色でもマスクできる点で有益であり得る。それゆえに、本発明の別の態様において、本発明は変色に安定な上記の固体の経口投与形を提供する。変色に安定な経口投与形は、温度25℃、相対湿度60%で保存し少なくとも3年間安定であることが望ましい。
【0045】
変色をマスクする点において、本発明による経口投与形に、例えば顔料などの着色剤を用いることが有益であり得る。錠剤の場合、着色剤は錠剤核中のオクスカルバゼピンおよび打錠賦形剤とを混合するか、コーティングの組成物に単独に用いるか、もしくは錠剤核とコーティング組成物の両方に用い得る。
【0046】
しかし、医薬製剤において、ある種の着色剤の高濃度での使用に関する医薬品監督当局の規制を考慮し、着色剤はでき得る限り低濃度で、いかなる場合においても医薬品監督当局に許容されるレベルより低いことが望ましい。例えば、FDAは、患者が摂取し得る酸化鉄(二価および三価)の量を、現在鉄元素として1日当たり5mgに設定する制限を課している。
【0047】
さらに、変色は濃度の現象である。すなわち、経口投与形におけるオクスカルバゼピンの濃度が高いほど、変色は明らかになる。変色をマスクするために必要な顔料は、単位投与形の中の活性成分の濃度に依存する。本発明による経口投与形はオクスカルバゼピンがかなりの高濃度で含まれるため、単純に錠剤の核に、加えた着色剤を医薬品監督当局の規制値以内に保って、顔料を添加するだけで、常に変色をマスクできるわけではない。
【0048】
驚くべきことに、ここで出願人は、錠剤の核の周囲のコーティングに対する比較的少量の着色剤の適用が、許容される制限内に低減した濃度の着色剤で、望ましいマスキング効果が得られることを見出した。
【0049】
医薬製剤で使用される既知の着色剤、例えば Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition (1994), Wade and Weller 編 130−134 ページに見られるような着色剤は、何れも本発明の使用に適している。適切な着色剤には、酸化チタン、酸化鉄(2価および3価共に)が含まれ、Fe(所望により水和物の形)が望ましい。
【0050】
着色剤が使用される際、コーティングに使用される量は特に投与形の大きさおよびオクスカルバゼピンの濃度に依存する。例えば酸化鉄を着色剤として使用した場合の量は、好ましくは単位投与形(例えば錠剤)当たり約0.1から1.6mg であり、さらに好ましくは単位投与形当たり0.3から0.9mg である。この着色剤はコーティング組成物にのみ使用した場合に、特に良好なマスキング効果を持つ。
【0051】
適切なコーティング物質は、錠剤、顆粒等のコーティングに慣用的に使われるものを含む。好ましいコーティング物質は、親水性であり、浸透性であり、かつ/もしくは少なくともある程度は水および腸液に可溶である。全てのコーティング物質は、特にここで参考文献として組み込まれている引用によって本明細書に包含される、公開された欧州特許出願 PCT / EP / 9800794 に記載されたいずれのコーティング物質、特に弾力性コーティング物質も、本発明の目的に適している。
【0052】
上記のコーティング物質は、製剤のコーティングで慣用的な、例えばタルク、例えば SYLOID 244 FP などの Syloid(登録商標)タイプ (Grace)の合成非晶珪酸などの二酸化ケイ素、例えば前述のポリエチレングリコール、吸収質などの保湿剤、その他の賦形剤と混合して使われる。
【0053】
コーティング物質は、例えば Citroflex (Pfizer)(登録商標)などのクエン酸トリエチル、トリアセチン、例えばフタル酸ジエチルやフタル酸ジブチルなどの様々なフタル酸エステル、例えば MYVACET 9−40 などのMyvacet(登録商標)タイプ (Eastman) のモノグリセリドとジグリセリドの混合物、例えば分子量約6000から8000の上記のポリエチレングリコールといった可塑剤、およびPluronic(登録商標)タイプ (BASF) や Synperonic(登録商標)タイプ(ICI)のエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、例えば珪酸マグネシウムや澱粉や、例えばSYLOID 244 FP などの SYLOIDタイプ の合成非晶珪酸などの微粉末鋳型乖離剤などの付加的な賦形剤を包含する。
【0054】
本発明によるコーティングされた錠剤の経口投与形は、単位投与形当たりにオクスカルバゼピンを高い割合で含む。本発明によるコーティングされた錠剤には、好ましくは、オクスカルバゼピンが75重量%まで、さらに詳しくは65から75%まで、例えば、65から73重量%まで含まれる。
【0055】
オクスカルバゼピンの商業的に利用可能な剤形には、オクスカルバゼピンが75重量%まで含まれる。しかし、これらの剤形はコーティングされていない錠剤である。さらに、商業的に利用可能な剤形の高濃度のオクスカルバゼピンは、低せん断エタノール造粒法という方法によって得られる。しかし、産業的なプロセスには有機溶媒を有利に用いることはできない。さらにまた、本発明における錠剤は、さらにコーティングの段階を経ることから、湿式造粒技術は、後のコーティング段階を行う前に乾燥させるもしくは実質的に乾燥させる必要があるために、製造過程がかなり遅れるという明らかな不利益がある。他方、錠剤の核をコーティングの前に十分に乾燥していない場合、錠剤の核のさらなる乾燥はコーティングの完全性を損ない得る。
【0056】
不幸にも、出願人は、(一部はオクスカルバゼピン、特にその粉砕したもの固有の性質のために、また一部は大きな投与形を作るための大量の賦形剤のために)慣用の乾式造粒法および錠剤材料を圧縮するための錠剤圧縮法を用いて高濃度の錠剤を作ることが実用面で非常に難しく、産業目的では実用的ではない程高い圧縮力によらなければ不可能であることを見出した。
【0057】
徹底的な試験の後、出願人は、(オクスカルバゼピンに関する)高濃度のコーティングされた錠剤を、湿式造粒技術を用い、製造過程のための時間も許容できる程度で、かつコーティングの完全性はそのままで成形しうることを見出した。
【0058】
それゆえに、本発明は、本発明の別の態様をなし、またオクスカルバゼピンおよび慣用の錠剤用賦形剤の水性高せん断造粒の段階からなる過程によって成形され得る、コーティングされた錠剤の形でのオクスカルバゼピンの経口投与形を提供する。
【0059】
水性「高せん断」(high hear)造粒法とは、造粒の何れの段階も、水の存在下に、かつ現在利用可能な高せん断力造粒装置(例えば下記の例1で示した高せん断ミキサー)で通常生じるせん断力下にあることを意味する。
【0060】
造粒は、例えば転動(built-up)造粒または破壊造粒のための既知の水性造粒法を用いる、それ自体が既知の製法で行われる。
【0061】
転動造粒の方法は、例えばドラム式、パン式、ディスク式の造粒機内でまたは流動床内で、例えば造粒塊に造粒液をスプレーすると同時にスプレー乾燥やスプレー固化によって乾燥させる作業からなり、連続的に作業するか、もしくは流動床内、バッチ式ミキサー内またはスプレー乾燥ドラム内で不連続的に作業する。
【0062】
破壊造粒の方法は、不連続的に行い得、始めに造粒塊を造粒液とあわせて湿らせ、それから得られた塊を粉砕し、既知の造粒法を用いて望ましい粒子サイズの粒子を形成し、それから粒子を乾燥させるのが望ましい。適切な造粒機は、例えば実施例1に示した Alexander granulator である。
【0063】
造粒塊は、粉砕された、好ましくは磨砕された有効な成分と、例えば AVICEL タイプの微晶性セルロースといった粉末状充填剤等の、上記の賦形剤からなる。AVICEL PH 102 が特に適している。使用する方法に依存して、造粒塊は前もって混合しておく形をとるか、1以上の賦形剤に有効成分を混合するもしくは有効成分に1以上の賦形剤を混合することによって得る。湿った造粒塊は、例えばスプレー乾燥によって、もしくは流動床内等で、前述の方法によって乾燥することが好ましい。
【0064】
錠剤の核形成のための圧縮は、慣用の錠剤製造機、例えば EK - 0 Korsch 偏心錠剤製造機によって行い得る。錠剤の核は、例えば、丸、楕円、長円、円筒などの様々な形をとり得、また使用した有効成分の量に依存して様々な大きさをとり得る。
【0065】
メジアン径約4から12μm、例えば6から8μmで40μmのふるいの最大の残さが2%であるオクスカルバゼピンは、特に上記の過程に適している。
【0066】
本発明による方法によって形成された錠剤の核は、コーティングされ得る。
好ましくは、コーティング組成物は好ましい濃度で水に溶解するか、懸濁している。望むならばポリエチレングリコールなどの補助剤を加え得る。溶液もしくは分散液は、タルクや例えば SYLOID 244 EP などの二酸化ケイ素といった他の賦形剤と共に、Aeromatic, Glatt, Wurster,もしくは Huettlin(ボールコーター)システムなどの流動床内のスプレーコーティング法のような既知の方法を用いて、またはコーティングパン内で Accela Cota もしくは浸漬コーティングの名前で知られる方法に従って、錠剤核上にスプレーされ得る。
【0067】
好ましくは、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース(セルロース HPMC)と顔料を含む水性の分散液を、慣用のスプレーコーティング技術を用いて、錠剤の核にスプレーする。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例を示す。
実施例1
調剤
【表1】

【表2】

【0069】
TRILEPTAL、セルロース HPM 603(結合剤)、微晶性セルロース(結合剤、充填剤、崩壊促進補助剤)の一部(約半分)をミキサー、好ましくはDIOSNA, LOEDIGE, FIELDER, GLATTなどの高速ミキサー内で混合する。混合物に水を加え、十分な粘度に至るまで、好ましくは高速ミキサーで練る。あるいは、HPM 603 はあらかじめ水に溶かしておいてもよい。湿った造粒塊を ALEXANDER Reibschnitzler, QUADRO - COMILL を用いて粒状化し、流動床(AEROMATIC, GLATT)内で乾燥する。残りの微晶性セルロース AEROSIL 200(流動性調節剤)およびクロスポビドン(崩壊剤)を、乾燥した粒子に加え、粉砕機(FREWITT, QUADRO - COMILL, FITZMILL)内で混合する。最後に、ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)を加え、(STOECKLIN container mixer, VRIECO mixer で)混合する。あるいは滑沢剤を粉砕したものに直接加えてもよい。最終的な混合物を(偏心圧縮機、回転圧縮機:KILIAN, KORSCH, FETTE, MANESTY で)圧縮して トリプレタル錠(TRILEPTAL 錠)を得る。
【0070】
回転コーティングパン(ACCELA - COTA, GLATT, DRIACOATER, DUMOULIN)内で、セルロース HPM 603(フィルム形成剤)、酸化鉄 黄色 17268(顔料)、PEG 8000(フィルム形成のための可塑剤)、タルク(抗粘着性剤、被覆剤)、二酸化チタン(被覆剤)からなる水性の調剤で、錠剤をコーティングした。あるいは、例えば流動床やエア・サスペンジョン装置などのコーティングの過程のための装置(AEROMATIC, GLATT, FREUND, HUETTLIN)を用いることも可能である。
【0071】
実施例2:食物の影響
20人の健康な男性の志願者に1200mg のトリレプタル(2×600mg)をそれぞれ二回投与した。1回目は、12時間絶食状態にあった後に投薬し、2回目はシリアルを小袋2つ(50g)、半脱脂乳150g、オレンジジュース200ml 、全粒粉トースト2枚、低脂質スプレッド10g、ジャム20gからなる高脂質食を喫食して15分後に投薬した。トリレプタル錠は200ml の水で服用した。血液試料は、投薬前、定常状態で1時間の間隔を空けてから、および1回の投薬後、次の時間に採取した:投薬後0.5、1、2、3、4、5、6、8、10、12、24、32、48、56、72時間。有効成分の血漿中の濃度は、HPLC分析を用いて検定した。投薬条件下での各々の志願者にとっての、時間対薬物血漿濃度曲線下面積(AUC)を決定した。
【0072】
AUC(喫食状態)/AUC(絶食状態)の比の平均は0.98であり、1回の投薬後の最低値は0.94であり最高値は1.02であり、それらの信頼度は90%である。AUC(喫食状態)/AUC(絶食状態)の平均は0.99であり、1回の投薬後の最低値は0.96であり最高値は1.03であり、それらの信頼度は90%である。
【0073】
これらの結果は、トリレプタル製剤の生物学的利用能への食物の影響がないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投与形が、食物と共であってもそうでなくても同様に服用し得るという指示を記載した指示書と組み合わせて包装されたオクスカルバゼピンを含む経口投与形。

【公開番号】特開2012−211202(P2012−211202A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172912(P2012−172912)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−109439(P2007−109439)の分割
【原出願日】平成12年10月31日(2000.10.31)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】