説明

医薬組成物

【課題】漢方エキス含有量が87重量%以上であっても、崩壊性及び成形性に優れる錠剤を提供すること。
【解決手段】(A)漢方エキス、ならびに、(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有してなる錠剤であって、漢方エキス含有量が87重量%以上である錠剤。(A)漢方エキスとしては、防風通聖散エキス、防已黄耆湯エキス、当帰飲子エキス、柴胡加竜骨牡蛎湯エキス、補中益気湯エキス、加味帰脾湯エキス、牛車腎気丸エキス、及び独活葛根湯エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方エキスを高濃度で含有する組成物に関する。さらに詳しくは、漢方エキスを87重量%以上含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
漢方エキスを含む錠剤を製造する場合、錠剤中のエキス濃度が増加するに伴って崩壊時間が著しく延長するため、エキスの含有量には限界があることが知られている。また、油脂成分含量の高いエキスの場合には、エキス含有量が一定濃度以下でないと錠剤に実用的な強度を与えることが難しい(非特許文献1参照)。このような事情から、エキスを高濃度に含有する錠剤の設計には課題が多く、1錠あたりの漢方エキス含有量を減らした錠剤を設計することが多い。しかし、この場合、患者が必要量の漢方エキスを服用するためには多量の添加剤(賦形剤、崩壊剤、結合剤など)も共に服用することになり、1回当たりの服用量が増大する。このため、漢方エキスを錠剤として服用する場合には、多数の錠剤を服用するか、あるいは、1錠あたりのサイズが大きい(1錠あたりの重量が大きい)錠剤を服用しなければならず、患者に負担が生じることになる。また、漢方エキス含有量を減らした錠剤を製造するには添加剤の原体を多量に用いることとなり、錠剤の製造に時間を要するなど生産効率が悪くなる。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1、2では、漢方薬の抽出液もしくはその濃縮液に、多孔性無水ケイ酸等の水不溶性超微粒子を添加して噴霧乾燥した粉末を用いることにより、崩壊性が向上した錠剤が得られることが報告されている。このようにして得られる錠剤のうち最もエキス配合量が多いものとしては、具体的には、当帰芍薬エキスに多孔性無水ケイ酸を添加して得られた、漢方エキス濃度が85%である錠剤(特許文献1の実施例5)が開示されている。
【0004】
特許文献3では、安中散を含有する混合末に軽質無水ケイ酸及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを添加混合したものを圧縮成型後、破砕して得られた顆粒に、さらに軽質無水ケイ酸を混合して圧縮成型することで、圧縮成型性に優れ、かつ、崩壊時間の遅延が抑制された安中散含有錠剤が得られることが報告されている。かかる方法によれば、安中散は錠剤全体に対して20〜80重量%配合することができ、例えば、実施例1では、安中散末と芍薬甘草湯エキス末の漢方エキス末を合計68%含有する錠剤が開示されている。
【0005】
特許文献4では、漢方エキス粉末や生薬エキス粉末にケイ酸カルシウムを特定の重量比で混合したものを湿式造粒することにより得られた顆粒を用いることで、崩壊時間の短い漢方含有錠剤を製造する技術が開示されている。例えば、第1実施形態では、前記方法により製造した漢方エキス含有量が50〜80%の各種漢方含有錠剤について崩壊時間が長くとも15分以内であることが確認されている。
【0006】
特許文献5では、漢方エキス粉末もしくはその造粒品に、約20〜100メッシュに造粒した崩壊剤を配合することにより、崩壊性の良好な漢方エキス錠剤を製造する技術が開示されている。崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースなど一般に崩壊剤として用いられているものが用いられると記載されており、例えば、実施例1〜5では、桂枝茯苓丸料エキス粉末85重量%に、合成ケイ酸アルミニウム8重量%、ステアリン酸マグネシウム1%、種々の粒度を有するカルボキシメチルセルロースカルシウム6重量%を配合した錠剤が開示されている。
【0007】
しかし、いずれの先行技術においても、1錠あたりに87重量%以上もの漢方エキスを含有する場合については、一切開示されていおらず、さらなる高含量化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−152416号公報
【特許文献2】特開昭57−11911号公報
【特許文献3】特開2007−161706号公報
【特許文献4】特開2000−119190号公報
【特許文献5】特開平1−258625号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】橋田 充編、経口投与製剤の処方設計、薬業時報社、平成10年4月15日発行、223〜233頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、漢方エキス含有量が87重量%以上であっても、崩壊性及び成形性に優れる錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが検討を重ねた結果、漢方エキスに、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合することにより、漢方エキス含有量が87重量%以上である錠剤を成形性良く製造することができ、かつ、得られた錠剤の崩壊性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、(A)漢方エキス、ならびに、(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有してなる錠剤であって、漢方エキス含有量が87重量%以上である錠剤、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の錠剤は、漢方エキスを87重量%以上の割合で含有していても、成形性よく製造することができ、かつ、崩壊性も良好であるという優れた効果を奏する。また、漢方エキスを高濃度で含有する錠剤を製造することができるため、配合される添加剤の量が少量となり、1回あたりの添加剤の服用量を減らすことが可能となる。ひいては、1回あたりの服用錠数を減らしたり、1錠の大きさを小さくしたりすることが可能となる。また、本発明の錠剤は、煩雑な工程を必要としないため、効率よく製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の錠剤は、(A)漢方エキス、ならびに、(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有してなる錠剤であって、漢方エキス含有量が87重量%以上であることに特徴を有する。
【0015】
従来、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸アルミン酸マグネシウムは、滑沢剤、吸着剤、結合剤、安定化剤、流動化剤等として医薬品に配合されている。本願発明では、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを、漢方エキスを高濃度に含有する場合にでも少量配合するだけで、驚くべきことに、圧縮成形性が飛躍的に高まることを見出した。また、これを錠剤にした時にその崩壊性が大きく改善されることを見出した。即ち、漢方エキスを1錠中に高濃度配合できることを見出した。
【0016】
このメタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムによる効果のメカニズムは不明であるが、他の添加物を配合した場合、例えば、一般的な流動化剤等を配合した場合には、漢方エキス含有錠の圧縮成形性も崩壊性も劣るものであったり、圧縮成形性を高めることが可能であったとしても崩壊性が劣るものであったが、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合した場合には圧縮成形性と崩壊性という相反する特性の両立が可能となり、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムに特異的な作用であると考えられる。
【0017】
本発明に用いられる(A)漢方エキスとしては、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであればよく、構成する生薬の組合せやその配合比率についても特に制限されない。例えば、「改訂 一般用漢方処方の手引き」〔財団法人 日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、じほう発行、平成21年〕や「改訂 一般用漢方処方の手引き 平成22年4月1日通知(加減方追加)対応追補版」〔財団法人 日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、じほう発行、平成22年〕に記載されている漢方処方をエキス化、即ち、漢方処方の生薬を用いて日本薬局方 エキス剤の製法等に従って得ることが出来る。漢方処方の具体例としては、防風通聖散、安中散、安中散加茯苓、胃風湯、胃苓湯、茵チン蒿湯、茵チン五苓散、温経湯、温清飲、温胆湯、延年半夏湯、黄耆建中湯、黄ゴン湯、応鐘散、黄連阿膠湯、黄連解毒湯、黄連湯、乙字湯、乙字湯去大黄、化食養脾湯、カッ香正気散、葛根黄連黄ゴン湯、葛根紅花湯、葛根湯、葛根湯加川キュウ辛夷、加味温胆湯、加味帰脾湯、加味解毒湯、加味逍遙散、加味逍遙散加川キュウ地黄、加味平胃散、乾姜人参半夏丸、甘草瀉心湯、甘草湯、甘麦大棗湯、帰耆建中湯、桔梗湯、帰脾湯、キュウ帰膠艾湯、キュウ帰調血飲、キュウ帰調血飲第一加減、響声破笛丸、杏蘇散、苦参湯、駆風解毒散、荊芥連翹湯、鶏肝丸、桂枝湯、桂枝加黄耆湯、桂枝加葛根湯、桂枝加厚朴杏仁湯、桂枝加芍薬生姜人参湯、桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加朮附湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝人参湯、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸料加ヨク苡仁、啓脾湯、荊防敗毒散、桂麻各半湯、鶏鳴散加茯苓、堅中湯、甲字湯、香砂平胃散、香砂養胃湯、香砂六君子湯、香蘇散、厚朴生姜半夏人参甘草湯、五虎湯、牛膝散、五積散、牛車腎気丸、呉茱萸湯、五物解毒散、五淋散、五苓散、柴陥湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、柴胡清肝湯、柴芍六君子湯、柴朴湯、柴苓湯、左突膏、三黄散、三黄瀉心湯、酸棗仁湯、三物黄ゴン湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯、紫雲膏、四逆散、四君子湯、滋血潤腸湯、七物降下湯、柿蒂湯、四物湯、炙甘草湯、芍薬甘草湯、鷓鴣菜湯、蛇床子湯、十全大補湯、十味敗毒湯、潤腸湯、蒸眼一方、生姜瀉心湯、小建中湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、小承気湯、小青竜湯、小青竜湯加杏仁石膏、小青龍湯加石膏、椒梅湯、小半夏加茯苓湯、消風散、升麻葛根湯、逍遙散、四苓湯、辛夷清肺湯、秦キュウ姜活湯、秦キュウ防風湯、参蘇飲、神秘湯、参苓白朮散、清肌安蛔湯、清湿化痰湯、清暑益気湯、清上ケン痛湯、清上防風湯、清心蓮子飲、清肺湯、折衝飲、川キュウ茶調散、千金鶏鳴散、銭氏白朮散、疎経活血湯、蘇子降気湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、大建中湯、大柴胡湯、大柴胡湯去大黄、大半夏湯、竹茹温胆湯、治打撲一方、治頭瘡一方、治頭瘡一方去大黄、中黄膏、調胃承気湯、丁香柿蒂湯、釣藤散、猪苓湯、猪苓湯合四物湯、通導散、桃核承気湯、当帰飲子、当帰建中湯、当帰散、当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散、当帰湯、当帰貝母苦参丸、独活葛根湯、独活湯、二朮湯、二陳湯、女神散、人参養栄湯、人参湯、排膿散、排膿湯、麦門冬湯、八味地黄丸、半夏厚朴湯、半夏瀉心湯、半夏白朮天麻湯、白虎湯、白虎加桂枝湯、白虎加人参湯、不換金正気散、伏竜肝湯、茯苓飲、茯苓飲加半夏、茯苓飲合半夏厚朴湯、茯苓沢瀉湯、分消湯、平胃散、防已黄耆湯、防已茯苓湯、補気健中湯、補中益気湯、補肺湯、麻黄湯、麻杏甘石湯、麻杏ヨク甘湯、麻子仁丸、揚柏散、ヨク苡仁湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、六君子湯、立効散、竜胆瀉肝湯、苓姜朮甘湯、苓桂甘棗湯、苓桂朮甘湯、六味丸、麻黄附子細辛湯、黄耆桂枝五物湯、解労散、加味四物湯、枳縮二陳湯、杞菊地黄丸、紫胡疎肝湯、柴蘇飲、芍薬甘草附子湯、沢瀉湯、竹葉石膏湯、知柏地黄丸、中建中湯、定悸飲、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰芍薬散加人参、当帰芍薬散加附子、排膿散及湯、八解散、附子理中湯、味麦地黄丸、明朗飲、抑肝散加芍薬黄連、連珠飲等が例示される。
【0018】
上記「一般用漢方処方の手引き」には、漢方エキスを構成する生薬の組合せやその配合量が記載されているが、構成する生薬やその配合比率を適宜変更して得られる漢方エキスであっても、本発明に使用することができる。例えば、防風通聖散エキスは、防風1.2重量部、黄ごん2.0重量部、大黄1.5重量部、芒硝1.5重量部、麻黄1.2重量部、石膏2〜3重量部、白朮2.0重量部、荊芥1.2重量部、連翹1.2重量部、桔梗2.0重量部、山梔子1.2重量部、芍薬1.2重量部、当帰1.2重量部、川きゅう1.2重量部、薄荷1.2重量部、滑石3〜5重量部、生姜1.2重量部、及び甘草2.0重量部からなる混合原料の抽出物として知られているが、白朮を含まないもの、配合比率を適宜変更したもの等であってもよい。抽出溶媒は特に限定されないが、水やエタノールが好ましい。
【0019】
これらの漢方エキスは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。好適な例としては、防風通聖散エキス、防已黄耆湯エキス、当帰飲子エキス、柴胡加竜骨牡蛎湯エキス、補中益気湯エキス、加味帰脾湯エキス、牛車腎気丸エキス、及び独活葛根湯エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種のエキスが挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムは、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであればよく、特に制限されない。例えば、比表面積は50〜500m/gが好ましく、100〜300m/gがより好ましい。また、粒子の形状は、粉末もしくは球形顆粒が好ましく、粉末がより好ましい。本発明で用いられる(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムは、市販品を用いることができ、例えば、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格等に適合するものが使用される。また、好適な市販品としては、富士化学工業社製「ノイシリン(登録商標)」シリーズ、富田製薬社製「ネオアルミンS(登録商標)」等が挙げられる。
【0021】
本発明の錠剤における(A)漢方エキスの含有量は、該錠剤の総量100重量%に対して、87重量%以上であり、90重量%以上が好ましく、92重量%以上がより好ましく、92〜96重量%がさらに好ましい。
【0022】
本発明の錠剤における(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量は、該錠剤の総量100重量%に対して、13重量%以下であり、10重量%以下が好ましく、8重量%以下がより好ましく、2〜8重量%がさらに好ましく、3〜6重量%がよりさらに好ましい。なお、本明細書において、「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量」又は「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムの重量」とは、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸アルミン酸マグネシウムの合計重量のことを意味する。
【0023】
また、従来、錠剤を製造するためには、結合剤や滑沢剤等種々の添加剤を組み合わせて用いるが、本願発明では、錠剤の成形性及び崩壊性を改善する効果を得るために、(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量は、(A)漢方エキス以外の成分、即ち、錠剤から(A)漢方エキスを除いた残余成分の総量100重量%に対して、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40〜95重量%、さらに好ましくは45〜95重量%、さらに好ましくは50〜95重量%である。
【0024】
本発明の錠剤において、(A)漢方エキスの重量は、良好な成形性及び崩壊性を有し、かつ、服用可能な量とするために、(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムの重量に対して、好ましくは7倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは12.5倍以上、さらに好ましくは15倍以上である。また、好ましくは200倍以下、より好ましくは150倍以下、さらに好ましくは100倍以下、さらに好ましくは50倍以下である。従って、(A)漢方エキスと(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムの重量比〔(A)/(B)〕は、7〜200が好ましく、10〜150がより好ましく、12.5〜100がさらに好ましく、15〜50がさらに好ましい。
【0025】
本発明の錠剤は、上記成分以外に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、矯味剤、防腐剤、キレート剤、抗酸化剤、清涼化剤、コーティング剤、安定化剤、流動化剤、粘稠剤、溶解補助剤、増粘剤、緩衝剤、香料、着色剤、吸着剤、湿潤剤、防湿剤、帯電防止剤、可塑剤、消泡剤、界面活性剤等の添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、乳糖、白糖等の糖類;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;ステアリン酸マグネシウム、夕ルク、酸化チタン等の無機物質等が挙げられる。
【0026】
本発明の錠剤は、(A)漢方エキス、(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有し、かつ、漢方エキスの含有量が87重量%以上であれば特に限定はなく、直接粉末圧縮法や顆粒圧縮法など当業者に公知の方法に従って、調製することができる。また、錠剤の形状や大きさも特に限定はなく、公知の方法に従って、糖衣やフィルムコート等のコーティング処理がされてもよい。
【0027】
具体的には、例えば、漢方エキスに、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウム、必要により、その他の添加剤を混合することにより得られた混合物を、そのまま、或いは公知の方法に従って造粒後に、打錠機に投入して成型加工する方法により調製することができる。本発明においては、造粒により成形性を向上させなくても効果が得られることから、漢方エキスに、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合し、漢方エキスの含有量が87重量%以上となる混合物をそのまま直接打錠することができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0029】
実施例1〜3及び比較例1〜5
表1に示す防風通聖散エキスとステアリン酸マグネシウム以外の原料とを混合した後に、さらにステアリン酸マグネシウムを添加して混合後、500μmの篩で混合粉を篩過したものを打錠用混合末とした。これを打錠機を用いて、200kNの予圧を負荷後に表2に示す500〜1500kNの本圧をかけて打錠した。なお、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム「ノイシリンFL1」(比表面積150m/g)、「ノイシリンFH2」(比表面積110m/g)、「ノイシリンUFL2」(比表面積300m/g)はいずれも富士化学工業社製である。
【0030】
【表1】

【0031】
得られた錠剤について、硬度計(PHARMA TEST社製、PTTB311E)を使用して硬度を測定した(n=5)。また、打錠圧が800、1200kNの錠剤については、打錠終了時のキャッピング、スティッキングを調べ、成形性を評価した。硬度の平均値、及び、キャッピング、スティッキングの「あり」「なし」について、結果を表2に示す。なお、錠剤硬度は6〜20kp程度のものが取り扱い性に優れることから好ましい。
【0032】
また、第十五改正日本薬局方 崩壊試験法に従って、崩壊試験装置(富山産業社製、NT−2HF)を用いて崩壊時間を測定し、崩壊性を評価した。測定試料としては、硬度が約10kpのものを6錠用いた。崩壊時間の最長値、最短値、そして6錠の平均崩壊時間を表2に示す。なお、各錠剤について、第十五改正日本薬局方 崩壊試験法 (1)即放性製剤の記載に従って、崩壊性の適否を併せて判定した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2より、結晶セルロース等の一般的な錠剤で汎用される添加剤を用いて漢方エキス含有量が高い錠剤を製造した場合には、十分な硬度の錠剤を得ることが出来ない上、キャッピングが見られ、成形性が悪かった(比較例1〜比較例3)。また、従来の漢方エキスを含有する錠剤に配合されているケイ酸カルシウム(比較例4)、軽質無水ケイ酸(比較例5)を用いた場合、漢方エキス含有量が87重量%以上という高い含有量でも、十分な硬度が得られ、キャッピングやスティッキングもなく、成形性は良好であったが、十分な崩壊性を得ることが出来なかった。一方、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの場合(実施例1〜3)には、漢方エキス含有量が87重量%以上であっても、成形性よく製造することができ、また、十分な硬度を有しながらも崩壊性にも優れることが明らかである。
【0035】
実施例4
表3に示す防已黄耆湯エキスとステアリン酸マグネシウム以外の原料とを混合した後に、さらにステアリン酸マグネシウムを添加して混合後、500μmの篩で混合粉を篩過したものを打錠用混合末とした。これを打錠機を用いて、200kNの予圧を負荷後に800〜1000kNの本圧をかけて打錠した。なお、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、「ノイシリンUFL2 」(比表面積300m/g、富士化学工業社製)を使用した。
【0036】
得られた錠剤について、前記と同様にして、硬度を測定し、成形性と崩壊性についても評価した。なお、崩壊時間の測定には、硬度が約10kpのものを6錠用いた。結果を表4に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
表4より、漢方エキスの種類が異なる場合にも、成形性よく、十分な硬度を有しながらも崩壊性に優れ、87重量%以上の漢方エキスを含有する錠剤を製造することが可能であることが明らかである。
【0040】
以下に処方例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0041】
製造例1〜7
表5及び表6に記載の処方について、公知の技術を用いて錠剤を製造する。
【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の錠剤は、漢方エキスを87重量%以上含有したものであっても、成形性及び崩壊性が改善された錠剤を簡便に製造することができる。また、本技術を用いることで、漢方エキスを高濃度含む錠剤を作ることができる、すなわち、添加剤の配合量を減らすことが可能となるため、1回あたりに服用する錠剤の量を減らしたり、1錠の大きさを小さくしたりすることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)漢方エキス、ならびに、(B)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び/又はケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有してなる錠剤であって、漢方エキス含有量が87重量%以上である錠剤。
【請求項2】
漢方エキス含有量が92重量%以上である、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
漢方エキス以外の成分中の(B)成分含有量が35重量%以上である、請求項1又は2記載の錠剤。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の重量比〔(A)/(B)〕が7〜200である、請求項1〜3いずれか記載の錠剤。
【請求項5】
漢方エキスが、防風通聖散エキス、防已黄耆湯エキス、当帰飲子エキス、柴胡加竜骨牡蛎湯エキス、補中益気湯エキス、加味帰脾湯エキス、牛車腎気丸エキス、及び独活葛根湯エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4いずれか記載の錠剤。

【公開番号】特開2012−224581(P2012−224581A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93799(P2011−93799)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】