説明

医薬組成物

【課題】薬学的活性剤の小粒子、例えば約7マイクロメーター未満の平均粒子サイズを有するものを、重金属汚染や、熱的・化学的分解を引き起こすことなく、安定に得ることのできる微粉化法の提供。
【解決手段】薬学的活性剤を噴射剤または圧縮ガス中に懸濁させ、このサスペンションを高圧均質化により処理し、そして減圧して乾燥粉末を得ることを含む、薬学的活性剤の微粉化法。薬学的活性剤としては、ピメクロリムス、フェニトイン等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的活性剤の小粒子、例えば約7マイクロメーター未満の平均粒子サイズを有するものの製造法、該方法により製造した薬学的活性剤および該粒子を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
小さいミクロンのまたはミクロンより小さいサイズ範囲の規定の粒子サイズを有する薬学的活性剤の粒子の制御された製造は、固有の技術的困難性を有する。慣用の破砕、粉砕ならびに湿式および乾式製粉過程は、しばしば、多かれ少なかれ重大な操作上の問題を伴うかまたは、例えば有機医薬化合物および活性剤を取り扱うとき、重金属汚染のために製品品質が悪くなる。
【0003】
例えば、製粉技術は、工業的操業において、固体の粒子サイズの微小化にしばしば使用される。しかしながら、乾式製粉技術は、許容されないレベルの塵埃をもたらすことがあり、それは製粉操作中に精巧な予備安全性措置を取ることを必要とする。さらに、多くの場合、乾式製粉は、薬学的活性剤の粒状製剤における無定形含量を増加させ、これは有利ではなく、また、劣化または有害作用さえ、伴い得る。乾式製粉工程は、著しい製品損失、または、製品のケーキングまたは装置の詰まりのような操作上の問題に悩まされている。後者は、接着性、粘性粉末を、慣用の乾式製粉装置において取り扱うとき頻繁に観察される。湿式製粉技術の主な制限は、粒子と粉砕媒体の直接の物理的接触、ならびに壁摩耗による重金属汚染である。薬学的活性剤の乾式および湿式粉砕において観察される他の技術的問題は、例えば製粉装置における局所的な高温、不均一な製品特性、およびバッチ間変動による、熱性および化学分解である。
【0004】
噴霧およびフリーズ・ドライ技術または超臨界流体を使用した粒子形成が、微粉化乾燥粉末を製造するための別法として使用されている。しかしながら、3方法全て、平均粒子サイズに関する要求にほとんど適合していない。さらに、熱不安定分子は、おそらく噴霧乾燥において典型的に使用される高温への暴露により、分解または減成しやすい。同様に、製剤の無定形含量のしばしば望ましくない増加が、噴霧およびフリーズ・ドライの両方で、ならびに超臨界流体での粒子形成でしばしば見られる。
【発明の概要】
【0005】
これらの技術的問題を解決する、制御された平均粒子サイズおよび制御された粒子サイズ分布(PSD)で、粉砕困難薬学的活性剤のミクロンまたはミクロンより小さいサイズの粒子の安行的製造のための、安定した単純な方法を提供する必要性がある。本発明は、上記の技術的問題を避けるか、最小化する方法を提供する。
【0006】
一つの局面において、本発明は、(a)薬学的活性剤を圧縮ガスまたは噴射剤中に懸濁させ、(b)このサスペンションを高圧均質化により処理し、そして(c)減圧して乾燥粉末を得ることを含む、例えば約7マイクロメーター未満の、例えば約0.1または0.5から約1、2、3、4、5、5.5、6、または6.5マイクロメーターの平均粒子サイズを有する、薬学的活性剤の制御された微粉化のための方法を提供する。
【0007】
他の局面において、本発明は、(a)薬学的活性剤を噴射剤中に懸濁させ、(b)このサスペンションを高圧均質化により処理し、そして(c)噴射剤中の微粉化薬学的活性剤のサスペンションを得ることを含む、例えば7マイクロメーター未満の、例えば約0.1または0.5から約1、2、3、4、5、5.5、6、または6.5マイクロメーターの平均粒子サイズを有する、薬学的活性剤の制御された微粉化のための方法を提供する。
【0008】
本薬学的活性剤は、圧縮ガスまたは噴射剤中に懸濁してよく、そして所望により1個以上の薬学的に許容される賦形剤をサスペンション媒体の形成のために使用してよい。
【0009】
本発明は、多種の薬学的活性剤で実施し得る。原体は、好ましくは実質的に純粋な形で存在する。原体粉末の粒子サイズは、本発明の方法により、約10から200マイクロメーター、好ましくは約10から40マイクロメーターの平均粒子サイズの粗製出発物質から、約7マイクロメーター未満、例えば約0.1または0.5から約1、2、3、4、5、5.5、6または6.5マイクロメーター、例えば約0.5から約5.0マイクロメーターの平均粒子サイズまで低下させる。本発明の方法は、好ましくは高アスペクト比、針骨状または針状結晶を微粉化する。このようなまたは類似の形態学を示す粒子は、慣用の製粉装置において、しばしば重大な操作上の問題の原因となる。特に、製粉機の中での圧縮された、嵩高い粉末ケーキの形成による装置の詰まりまたは不調は、頻繁に観察される。さらに、本発明の方法は、しばしば同様のまたは他の操作上の問題を伴う、非常に接着性または粘着性の原体の微粉化に特に適している。
【0010】
本発明の目的のために、“薬学的活性剤”は、医薬的または治療的作用を産生する全ての物質を意味する。薬学的活性剤の例は、水に難溶性および/または化学的もしくは熱的に不安定な活性剤を含むがこれらに限定されず、例えば、例えばフェニトイン(5,5−ジフェニルヒダントイン)、WO2000/075114の式Iの化合物(遊離または塩もしく溶媒和物形)、好ましくはその実施例の化合物、とりわけ式
【化1】

およびその薬学的に許容される塩のようなβ−アドレナリン受容体アゴニスト、ならびに、WO2004/016601の式Iの化合物(遊離または塩もしく溶媒和物形)、好ましくはその実施例の化合物、とりわけ実施例1、3、4、5および79のもの;WO2002/000679の式Iの化合物(遊離または塩もしく溶媒和物形)、好ましくはその実施例の化合物、とりわけ実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101のもののようなコルチコステロイ;PCT/EP2004/004605の式Iの化合物(塩または双性イオン形)、好ましくはその実施例の化合物、とりわけ実施例17、34、52、54、71、76、96、114、138、159、170、190、209、221、242および244のもののような抗ムスカリンアンタゴニスト;例えばEP427680に記載の通りのピメクロリムス(33−エピクロロ−33−デスオキシ−アスコマイシン);例えばEP296110に記載の通りのN−ベンゾイルスタウロスポリン;タンパク質;ペプチド;ビタミン;ステロイド;コルチコステロイドおよび気管支拡張剤である。
【0011】
さらに薬学的活性剤は、オキシカルバゼピン、カルバマゼピン、1−(2,6−ジフルオロ−ベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸アミド;WO04/005281の式Iの化合物、好ましくはその実施例の化合物、とりわけ実施例92のもののようなピリミジアルアミノベンズアミド;Cox−2選択的阻害剤、例えばWO99/11605に記載の通りの、例えば5−メチル−2−(2'−クロロ−6'−フルオロアニリノ)フェニル酢酸;化合物Aとして既知の下記構造式を有するカンプトテシン誘導体を含むが、これらに限定されない:
【化2】

【0012】
化合物Aは遊離または薬学的に許容される塩形であり得、そして、米国特許6,424,457に記載の通り製造できる。化合物Aは、その可能なエナンチオマー、ジアステレオマーおよび関連混合物、その薬学的に許容される塩およびその活性代謝物の形であり得る。
【0013】
本薬学的に許容される賦形剤は、界面活性剤であり得る。適当な界面活性剤は、例えばMyvacet(登録商標)9-08、(Fiedler loc. cit., p 1167)の商品名で既知であり、市販されている界面活性剤のようなアセチル化モノグリセリド、ペルフルオロカルボン酸、ポリエチレングリコール(PEG)ステロールエステル、例えばPEG 200、300、400または600(Fiedler loc. cit., p 1348)、ポリエチレンオキシドソルビタン脂肪酸エステル、例えばTween(登録商標)20、40、60、65、80または85(Fiedler loc. cit. pp 1754)、ソルビタンエステル、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエートまたはソルビタンモノパルミテート、プロピレングリコールおよびオレイン酸のような界面活性剤を含む。所望により1個以上の界面活性剤の組合せを使用できる。
【0014】
本発明の他の局面において、本賦形剤は担体であり得る。担体は、1個以上の結晶性糖、例えば1個以上の糖アルコールまたはポリオールから成り得る。好ましくはラクトースまたはグルコースを使用し得る。
【0015】
本発明のさらなる局面において、本賦形剤は、滑剤のような減摩剤または抗接着剤であり得る。適当な滑剤は、ロイシン、レシチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリルアルコール、スクロース一パリネート、メントール、例えば商品名Aerosil(登録商標)200の下に市販されているようなコロイド状二酸化ケイ素、および安息香酸ナトリウムまたはこれらの組合せを含む。
【0016】
さらなる局面において、本賦形剤は、抗菌剤、例えば塩化ベンザルコニウム、酸性化剤、例えばクエン酸、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、キレート剤、例えばジナトリウムEDTAを含み得る。
本賦形剤は、1種以上の添加剤の組合せを含み得る。
【0017】
本発明の方法において使用するための賦形剤の詳細は、Fiedler's “Lexikon der Hilfsstoffe”, 5th Edition, ECV Aulendorf 2002および“Handbook of Pharmaceutical Excipients”, Rowe, SheskeyおよびWeller, 4th Edition 2003に記載され、これらは引用により本明細書に包含する。
【0018】
本発明の一つの態様において、本発明の方法において使用する薬学的活性剤の粉末を圧縮ガスに懸濁する。圧縮ガスに懸濁する活性剤の量は、約0.1グラム/リットル(0.01%/体積)から約250グラム/リットル(25%/体積)の範囲であり得る。
【0019】
圧縮ガスの一つのクラスは、CO、エタン、プロパン、ブタン、ジメチルエーテルおよび窒素を含む。圧縮ガスの組合せも使用できる。好ましくはCOを使用し得る。
【0020】
圧縮ガスの他のクラスは、ヒドロフルオロアルカン(HFA)、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227)を含む噴射剤である。HFA 134aおよびHFA 227は、ヒト使用に適し、クロロフルオロ炭素(CFC)噴射剤とは対照的にオゾン層破壊作用はない。ヒドロフルオロアルカン噴射剤のさらなる例は、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンおよびジフルオロエタンである。噴射剤の組合せも使用できる。
【0021】
本発明の目的のために、“サスペンション”は、連続した、例えば圧縮ガス相中に分散した微粉固体から成る、二相系を意味する。
【0022】
本サスペンションは、粗製出発物質を撹拌加圧容器に充填することにより製造できる。該容器は、高圧での操作を可能にするために密閉封鎖でき、そして、圧縮ガスを封入してサスペンションを形成し得る。撹拌容器中の作業圧は、圧縮ガスに依存し得る。本発明による、室温での典型的な作業圧は、1.5から2バールから約300バール、例えばある種のヒドロフルオロアルカンについて約10から約30バール、例えば二酸化炭素について約55から約60バール、および例えば窒素について約200バールから約300バールの範囲であり得る。作業圧は、作業温度が室温から著しく低い、例えば約0から5℃であるとき、ヒドロフルオロアルカンの場合には約2から約5バールである。提案された方法のための適当な作業温度は、約−30℃から約50℃の範囲であり得る。全過程を、密閉封鎖した、耐圧装置中で行い得る。
【0023】
高圧均質化は、o/w、w/o、s/o/w、またはw/o/wエマルジョン、固体脂質ナノ粒子、安定化サスペンションの製造、および水性サスペンション中に分散された固体の脱凝集のための確立された技術である。慣用の高圧均質化では、液体中の固体または液体のサスペンションを最初に形成させ、次いで、数千バールまでの高圧で、均質化ユニット中で処理する。
【0024】
本発明に従って、圧縮ガスサスペンションの高圧均質化は、約10から約200マイクロメーターの平均粒子サイズの粗製出発物質から、例えば約7マイクロメーター未満の、例えば約1または2から約3、4、5、5.5、6、または6.5マイクロメーターの規定された製品粒子サイズの薬学的活性剤の微粉化粒子を製造するための有効な技術であり得る。ユニットの減圧後に乾燥粉末としてまたは圧縮ガスサスペンションとして回収し得る製品の該平均粒子サイズおよび該粒子サイズ分布は、提案された微粉化法の特徴的処理パラメーターの厳密な制御により、有効に制御し得る。均質化圧、サスペンション密度および固体濃度、作業温度、相互作用部構造の選択および装置を通過する回数(これは処理時間と非常に等価である)またはこれらの主要操作パラメーターの組合せを、製品品質の厳重な制御に使用できる。本発明の方法は、7マイクロメーター未満、例えば約1または2から約3、4、5、5.5、6または6.5マイクロメーターのサイズ範囲内の狭い粒子サイズ分布を産生するために使用できる。約1から約5マイクロメーターのサイズ範囲は、特に、例えば乾燥粉末吸入器(DPI)または定量吸入器(MDI)または加圧定量吸入器(pMDI)中の治療的吸入製剤の適用に適し得る。
【0025】
さらなる局面において、本発明は、1個または2個の撹拌加圧容器、高圧ホモゲナイザー、および1個の撹拌加圧容器または複数の撹拌加圧容器と高圧均質化ユニットfを相互連結させる、流体導管を含む、薬学的活性剤の微粉化用装置を提供する。出発物質のサスペンションの製造に使用するための撹拌加圧容器は、圧縮ガスの十分量を供給するためのラインに接続でき、それ自体、1個または複数個のディップ・チューブまたはガスシリンダーに、または加圧ガスを含むサージタンクに接続できる。圧縮ガスをポンプを通して設定点に到達するまで圧入することにより、所望の作業圧を設定し、制御できる。該高圧均質化ユニットは、強化ポンプ、および1個または複数個の相互作用チャンバー(ここで、粒子サイズ低下または微粉化が、粒子−粒子および粒子−壁衝突、剪断力および流体キャビテーションによって起こる)を含み得る。強化ポンプ、撹拌加圧容器と高圧均質化ユニット中の強化ポンプをつなぐライン、強化ポンプは、冷却し、圧縮ガス泡沫が強化ポンプの入口部分に蓄積することを避け得る。高圧均質化ユニットは、さらに強化ポンプを含み得る。均質化は、例えば静的結合構造の高圧ギャップまたはバルブを通して、1500バール未満、例えば200、500、750、1000または1500バールの規定圧低下に調節することにより達成し得る。動的高圧均質化バルブを使用できる。このバルブは、上昇した固体濃度での詰まりのような静的相互作用構造の主要な欠点のいくつかを解決する。遮断の場合、該バルブを開け、所望の圧低下を、手動でまたは自動で、適当な圧制御デバイスを使用して再調節し得る。
【0026】
本相互作用チャンバーは、ストリーム・スプリッターおよび衝突チャンバーを備え得る。圧縮ガス、固体粒子含有非溶媒および所望により薬学的に許容される賦形剤の流れをストリーム・スプリッターで2つの副流に分け、これらの2個の流れを衝突チャンバーで再合流させる。高圧ホモゲナイザー中の固体粒子の微粉化をもたらす主たる力は、剪断力、乱流、加速および流れ方向における速度変化;処理中粒子のホモゲナイザーの固体部分との衝突と、処理中粒子の相互衝突を含む、衝突力;および速度変化の増加と圧変化の減少を含むキャビテーション力、および乱流であり得る。さらなる力は、磨砕、すなわち、磨砕による研磨に帰せられる。
【0027】
微粉化が、例えば高圧バルブのような規定されたギャップを通した放圧により達成されるとき、微粉化をもたらす主たる力は、キャビテーション、剪断力、乱流、ホモゲナイザーの固体部分と処理粒子の衝突、および処理している粒子の相互衝突を含む衝突力ならびに磨砕であり得る。
【0028】
本発明の一つの態様において、本方法は、1個の撹拌加圧容器および高圧均質化ユニットから成る装置で行い得る。ホモゲナイザーの出口を、サスペンションを含む撹拌加圧容器に接続できる。処理サスペンションを、未処理サスペンションを含む容器に再送入する。合計処理時間を、粒状製品または圧縮ガスサスペンション中の粒子の平均粒子サイズを制御するために利用できる。高圧ホモゲナイザーの操作を、圧縮ガス中の活性剤のサスペンションが加圧容器中で形成された後に開始し得る。本ホモゲナイザーを下記の通り操作し得る:入口および出口を有するホモゲナイザーは、製品流に一定速度で所望の圧を供給するために設計された高圧ポンプに依存する。該ポンプは、相互作用チャンバー内の規定された固定された結合構造マイクロチャネルを通して、一定圧で製品を送達する。粒子サイズの低下および、撹拌加圧容器で先に形成されたサスペンションの均質化が相互作用チャンバー中で起こる。噴射相互作用チャンバーブロックは3種の異なる力:剪断、衝突およびキャビテーションの利用を可能にする。本高圧均質化は、薬学的活性剤のより均質な粒子サイズ低下、例えば微粉化および脱凝集を提供する。
【0029】
本発明の他の態様において、図1を参照して、本装置は、撹拌手段(16)を備える2個の撹拌圧(10)容器、および高圧均質化(12)ユニットから成り得る。ホモゲナイザー(12)の入口および出口は、高圧チューブ(15)で両撹拌加圧容器(10)に接続でき、そして全接続は、高圧3方向バルブ(11)または高圧バルブ(17)の手動または自動での操作により、個々に遮断できる。出発物質のサスペンションを2個の撹拌加圧容器の一方に形成させ、次いで均質化を開始し得る。ホモゲナイザーの出口を、最初は空である第二の加圧容器に接続できる。第一の撹拌加圧容器が空であり、第二の撹拌加圧容器が均質サスペンションで満たされているとき、バルブを、均質化サスペンションを含む撹拌加圧容器の中身が、ホモゲナイザーを通り、2回均質化サスペンションを最初の撹拌加圧容器中に回収するように操作できる。本発明のこの態様の利点は、装置を通過する回数を介した滞留時間の制御による、平均粒子サイズのより効率的な制御である。この態様における平均粒子サイズは、ホモゲナイザーを通過する総回数により制御され、そして約7マイクロメーター未満、例えば約0.1または0.5から約1、2、3、4.5、5.5、6または6.5マイクロメーターまでの平均粒子サイズを達成するための、典型的な実際的通過回数は約3回から25回範囲である。ホモゲナイザーを通過する総回数を達成したとき、サスペンションを貯蔵タンク(14)に貯蔵できる。本発明のこの態様において、静的相互作用構造および動的高圧解除バルブの両方を均質化のために使用できる。
【0030】
静的相互作用構造を特徴とする高圧ホモゲナイザーは、例えば、閉鎖系、例えばMicrofluidics Model M-110Y Microfluidizer(登録商標)であり得る。該装置およびMicrofluidizer(登録商標)の操作法は、さらに、米国特許4,533,254および米国特許4,908,154に記載されており、これらは引用して本明細書に包含する。膜ポンプも、元々の高圧ピストンポンプの変わりに、Microfluidics M-110Y Microfluidizer(登録商標)相互連結構造と併せて使用できる。
【0031】
動的高圧ホモゲナイザーは、例えば、高圧強化ポンプ、例えばLEWA LDE/1V M211S膜用量ポンプ(membrane dosage pump)、および調節可能なバルブ開口部またはギャップを伴う適当な高圧バルブを含むシステムであってよく、そしてバルブ座および本体は、好ましくは、例えば酸化ジルコニウム、タングステンカーバイドまたは類似の本質の物質キャビテーション耐性物質製である。バルブニードルまたはプランジャーは、好ましくはバルブ座より硬い物質製である。本動的高圧バルブは、下流圧制御のための適当な手段を使用して、手動でまたは自動で操作できる。
【0032】
本発明の他の局面において、本発明の方法は、操作系の減圧により得られる、約7マイクロメーター未満の、例えば約1または2マイクロメーターから約3、4、5、5.5、6または6.5マイクロメーターの平均粒子サイズを有する薬学的活性剤の無溶媒および無水分乾式粒子を提供する。約1から約5マイクロメーターのサイズの本薬学的活性剤粉末粒子は、何らさらに処理することなく、乾燥粉末吸入器(DPI)製剤で使用できる。
【0033】
本発明のさらなる局面において、本方法は、サスペンションを形成するために、ヒト使用に適する噴射剤中に微細に分散した、約7マイクロメーター未満の、例えば約0.1または0.5マイクロメーターから約1、2、3、4、5、5.5、6または6.5マイクロメーターの平均粒子サイズを有する薬学的活性剤の粒子を提供する。約0.5から約5マイクロメーターのサイズの粒子を含む本サスペンションは、直接、適当な吸入デバイスに充填し、次いで、定量(MDI)または加圧定量吸入器(pMDI)製剤で、何らさらなる後処理をすることなく使用できる。
【0034】
本発明の一つの利点は、噴射剤または圧縮ガス中の薬学的活性剤のサスペンションを、一段階法で粉砕でき、さらなる任意の後処理段階の必要性を無くすことである。圧縮ガスまたは噴射剤の減圧により、薬学的活性剤の乾燥粉末が得られ、それは何らさらに後処理することなく、吸入製剤のために使用できる。本方法は適用が容易であり、穏やかで不活性な条件下で行う。高用量の溶媒、無定形含量の増大、汚染および摩耗のような技術的問題は、本発明の方法により避けられる。
【0035】
さらなる局面において、本発明は、本発明の方法により得られる微粉化薬学的活性剤粒子および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。上記の薬学的に許容される賦形剤は、界面活性剤、担体および/または滑剤を含み、そして、例えばカプセル、錠剤またはサシェットのような固体投与形態の、医薬組成物の製造に使用できる。
【0036】
さらなる局面において、本発明は、軟膏または点眼剤において使用するための、薬学的活性剤の微粉化粒子を提供する。
【0037】
他の局面において、本発明は、非経腸製剤において使用するための、薬学的活性剤の微粉化粒子を提供する。
【0038】
他の局面において、本発明は、経口製剤において使用するための、薬学的活性剤の微粉化粒子を提供する。
【0039】
他の局面において、本発明は、局所製剤において使用するための、薬学的活性剤の微粉化粒子を提供する。
【0040】
さらなる局面において、本発明は、本発明の組成物を使用のための指示書と共に含む、包装物を提供する。
【0041】
本発明の構造および利点は、下記の本発明のいくつかの態様の非限定的な記載を、添付の図面と共に考慮して、明らかとなろう。
下記は、例示の方法による、非限定的記載である。
【実施例】
【0042】
実施例1
ピメクロリムスを噴射剤HFA227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)に懸濁し、Microfluidics Microfluidizer M-110YTM中で均質化する。1個の加圧容器を使用し、総処理時間は60分である。撹拌容器中の作業圧は約3バールであり、そして最大均質化圧は約500バールである。入口温度は0℃、そして出口温度は約30℃である。本加圧容器を60分の処理後に減圧し、そして乾式製品粉末を、標準オフライン分析ツールを使用して分析する。
【0043】
実施例2
ピメクロリムスを噴射剤HFA227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)に懸濁し、Microfluidics Microfluidizer M-110YTM中で均質化する。2個の加圧容器を使用し、そして装置を通過する回数を、製品の平均粒子サイズの制御のために使用する。作業圧は約3バール、そして最大均質化圧は約500バールである。入口温度は約0℃、そして出口温度は約30℃である。10回目の通過後、本系を減圧し、そして乾式製品粉末を、標準オフライン分析ツールを使用して分析する。
【0044】
実施例3
ピメクロリムスを噴射剤HFA134(1,1,1−トリフルオロエタン)に懸濁させ、厳密に制御された圧低下で、高圧バルブを通して均質化する。1個の加圧容器を使用し、総処理時間は180分である。作業圧は約10バール、そして最大均質化圧は約750バールであり、故に、開放バルブを通して、約740バールの圧低下を使用する。入口温度は約0℃、そして出口温度は約30℃である。本加圧容器を、180分の処理後に減圧し、乾式製品粉末を、標準オフライン分析ツールを使用して分析する。
【0045】
実施例1、2および3で得たピメクロリムス粒子を、約0.1%Tween 20含有水に再分散させ、サスペンションを形成し、次いで典型的に60秒超音波処理して、その後Sympatec Helosレーザー光回折粒子選別機を使用して、粒子サイズを測定する。粒子サイズ測定の結果を表1に説明する。処理時間は、実施例1に記載の通り、連続モードのランで60分であり、体積による平均粒子サイズ(x50)は2.7マイクロメーターおよびx90は11.4マイクロメーターである。実施例2に記載のランにおいて、サンプルをバッチモードで処理し、10回通過後の結果を報告する。この場合、x50は5.3(5.5)マイクロメーターおよびx90は19.2(20.6)マイクロメーターである。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例4
フェニトイン(5,5−ジフェニルヒダントイン)を噴射剤HFA134(1,1,1−トリフルオロエタン)に懸濁させ、厳密に制御された圧低下で、高圧バルブを通して均質化する。1個の加圧容器を使用し、総処理時間は240分である。作業圧は約10バール、そして最大均質化圧は約750バールである。入口温度は約0℃、そして出口温度は約30℃である。本加圧容器を240分の処理後に減圧し、乾式製品粉末を、標準オフライン分析ツールを使用して分析する。実施例4において製造したフェニトイン微粒子の粒子サイズ分布を図2に図説する。
【0048】
実施例5
フェニトイン(5,5−ジフェニルヒダントイン)を二酸化炭素に懸濁させ、厳密に制御された圧低下で、高圧バルブを通して均質化する。1個の加圧容器を使用し、総処理時間は240分である。作業圧は約57バール、そして最大均質化圧は約800バールである。入口温度は約0℃、そして出口温度は約30℃である。本加圧容器を240分の処理後に減圧し、乾式製品粉末を、標準オフライン分析ツールを使用して分析する。実施例5において製造したフェニトイン微粒子の粒子サイズ分布を図3に図説する。
【0049】
実施例4および5で得たフェニトイン粒子を、約0.1%Tween 20含有水に再分散させ、サスペンションを形成し、次いで典型的に60秒超音波処理して、その後Sympatec Helosレーザー光回折粒子選別機を使用して、粒子サイズを測定する。粒子サイズ測定の結果を表2に説明する。処理時間は、実施例4および5に記載の通り、連続モードのランで240分であり、そして、体積による平均粒子サイズ(x50)は各々1.48および1.46マイクロメーターであり、かつx90は各々3.57および3.02マイクロメーターである。
【0050】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明に従う、2個の撹拌加圧容器を含む、密閉、連続ループ装置の模式図である。本装置は、撹拌手段(16)を備える、2個の撹拌加圧(10)容器、高圧均質化(12)ユニットおよび貯蔵タンク(14)から成る。ホモゲナイザー(12)の入口および出口は、高圧チューブ(15)で両方の撹拌加圧容器(10)に接続され、そして全接続は、高圧3方向バルブ(11)または高圧バルブ(17)の手動または自動での操作により、個々に遮断される。
【0052】
【図2】図2は、本発明の方法を使用して製造したフェニトイン微粒子の例である。実施例4において、Sympatec Helosレーザー光回折粒子選別機を使用して測定した粒子サイズ分布は下記の通りである:x10=0.72マイクロメーター、x50=1.48マイクロメーター、およびx90=3.57マイクロメーター。
【0053】
【図3】図3は、本発明の方法を使用して製造したフェニトイン微粒子の例である。実施例5において、Sympatec Helosレーザー光回折粒子選別機を使用して測定した粒子サイズ分布は下記の通りである:x10=0.73マイクロメーター、x50=1.46マイクロメーター、およびx90=3.02マイクロメーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)薬学的活性剤を噴射剤または圧縮ガス中に懸濁させ、(b)このサスペンションを高圧均質化により処理し、そして(c)減圧して乾燥粉末を得ることを含む、薬学的活性剤の微粉化法。
【請求項2】
(a)薬学的活性剤を噴射剤中に懸濁させ、(b)このサスペンションを高圧均質化により処理し、そして(c)噴射剤中の微粉化薬学的活性剤のサスペンションを得ることを含む、薬学的活性剤の微粉化法。
【請求項3】
該方法により微粉化された薬学的活性剤が、約0.1から約7.0マイクロメーターの平均粒子サイズを有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該方法により微粉化された薬学的活性剤が、約0.5から約5.0マイクロメーターの平均粒子サイズを有する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
薬学的活性剤および圧縮ガスまたは噴射剤により形成されたサスペンションが、1個以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
薬学的活性剤が水に難溶性および/または化学的もしくは熱的に不安定である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
薬学的活性剤が、ピメクロリムス(33−エピクロロ−33−デスオキシ−アスコマイシン)、5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−(1H)−キノリン−2−オン、3−メチルチオフェン−2−カルボン酸(6S,9R,10S,11S,13S,16R,17R)−9−クロロ−6−フルオロ−11−ヒドロキシ−17−メトキシカルボニル−10,13,16−トリメチル−3−オキソ−6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−3H−シクロペンタ−[α]フェナントレン−17−イルエステル、N−ベンゾイルスタウロスポリン、オキシカルバゼピン、カルバマゼピン、1−(2,6−ジフルオロ−ベンジル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸アミド、cox−2阻害剤、ピリミジラルアミノベンズアミド、カンプトテシン誘導体、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ステロイド、気管支拡張剤の少なくとも1種から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
圧縮ガスが二酸化炭素、窒素、ジメチルエーテル、エタン、プロパンおよびブタンの少なくとも1種から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
圧縮ガスが、ヒト使用に適するHFA噴射剤である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
圧縮ガスがHFA134aおよびHFA227の少なくとも1種から選択される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
薬学的活性賦形剤が界面活性剤、担体および滑剤の少なくとも1種から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
界面活性剤がアセチル化モノグリセリド、ペルフルオロカルボン酸、ポリエチレングリコール(PEG)ステロールエステル、ポリエチレンオキシドソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノパルミテート、プロピレングリコールおよびオレイン酸の少なくとも1種から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
噴射剤または圧縮ガス中の薬学的活性剤のサスペンションを、静的結合構造を使用した均質化により処理する、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
噴射剤または圧縮ガス中の薬学的活性剤のサスペンションを、動的バルブを使用した均質化により処理する、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
薬学的活性剤および圧縮ガスまたは噴射剤のサスペンションを、第一の撹拌容器中で形成させ、そして微粉化工程後に第二の撹拌容器に貯蔵する、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の方法により得た、微粉化薬学的活性剤。
【請求項17】
請求項16記載の微粉化薬学的活性剤および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項17記載の組成物および使用指示書を含む、包装物。
【請求項19】
該微粉化薬学的活性剤を、吸入デバイス中で、インサイチュで製造する、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
吸入製剤における、請求項1から15のいずれかに記載の方法により得た微粉化薬学的活性剤の使用。
【請求項21】
非経腸製剤における、請求項1から15のいずれかに記載の方法により得た微粉化薬学的活性剤の使用。
【請求項22】
2個の撹拌加圧容器、
高圧ホモゲナイザー、
撹拌加圧容器と高圧ホモゲナイザーを相互連結させる、流体導管
を含む、薬学的活性剤の微粉化用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−10768(P2013−10768A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−177148(P2012−177148)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2007−504349(P2007−504349)の分割
【原出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】