説明

医薬組成物

7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤とを含有する医薬組成物、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤とからなる同時にまたは時間を置いて別々に投与するための肺疾患の治療および/または予防剤などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ホスホジエステラーゼIV阻害剤(PDE−IV阻害剤)とβ刺激剤とを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
従来、PDE−IV阻害剤とβ刺激剤の併用投与が、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの閉塞性肺疾患に有用であることが知られている(WO00/12078号)。
一方、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩をPDE−IV阻害剤として用いることが知られている(WO96/36624号)。
【発明の開示】
本発明の目的は、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤とを含有する医薬組成物などを提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(31)に関する。
(1) (a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩と(b)β刺激剤とを含有する医薬組成物。
(2) β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である(1)記載の医薬組成物。
(3) (a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩と(b)β刺激剤を有効成分とする同時にまたは時間を置いて別々に投与するための肺疾患の治療および/または予防剤。
(4) β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である(3)記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
(5) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、慢性急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である(3)または(4)記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
(6) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である(3)または(4)記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
(7) 肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である(3)または(4)記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
(8) (a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)β刺激剤を含有する第2成分を有することを特徴とするキット。
(9) β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である(8)記載のキット。
(10) (a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)β刺激剤を含有する第2成分を有することを特徴とする肺疾患の治療および/または予防用キット。
(11) β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である(10)記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
(12) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である(10)または(11)記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
(13) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である(10)または(11)記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
(14) 肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である(10)または(11)記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
(15) β刺激剤と同時にまたは時間を置いて別々に投与するための式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩。
(16) β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である(15)記載の7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩。
(17) β刺激剤と同時にまたは時間を置いて別々に投与するための式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
(18) β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である(17)記載の医薬組成物。
(19) (a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩および(b)β刺激剤を同時にまたは時間を置いて別々に投与することを特徴とする肺疾患の治療および/または予防方法。
(20) β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である(19)記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
(21) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である(19)または(20)記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
(22) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である(19)または(20)記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
(23) 肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である(19)または(20)記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
(24) (1)または(2)記載の医薬組成物を投与することを特徴とする肺疾患の治療および/または予防方法。
(25) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である(24)記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
(26) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である(24)記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
(27) 肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である(24)記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
(28) 肺疾患の治療および/または予防剤の製造のための(1)または(2)記載の(a)および(b)の使用。
(29) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である(28)記載の使用。
(30) 肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である(28)記載の使用。
(31) 肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である(28)記載の使用。
以下、式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタンを化合物(I)という。
化合物(I)の薬理学的に許容される塩は、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩などを包含する。
化合物(I)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩などがあげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などの塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジンなどの付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの付加塩があげられる。
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。
化合物(I)は、WO96/36624に記載の方法により製造することができる。
化合物(I)には、互変異性体などの立体異性体が存在し得るが、本発明の医薬組成物、肺疾患の治療および/または予防剤、キット、肺疾患の治療および/または予防用キットならびに肺疾患の治療および/または予防方法には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができ、本発明の化合物(I)には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物が包含される。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の医薬組成物、肺疾患の治療および/または予防剤、キット、肺疾患の治療および/または予防用キットならびに肺疾患の治療および/または予防方法に使用することができ、本発明の化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩に包含される。
β刺激剤としては、β受容体に作用するかまたはβ受容体に選択的に作用して交換神経を刺激するものであればいずれでもよいが、例えば
式(A)で表されるエフェドリン(ephedrine)、
式(B)で表されるメチルエフェドリン(methylephedrine)、
式(C)で表されるサルブタモール(salbutamol)、
式(D)で表されるプロカテロール(procaterol)、
式(E)で表されるテルブタリン(terbutaline)、
式(F)で表されるツロブテロール(tulobuterol)、
式(G)で表されるトリメトキノール(trimetoquinol)、
式(H)で表されるホルモテロール(formoterol)、
式(J)で表されるオルシプレナリン(orciprenaline)、
式(K)で表されるイソプレナリン(isoprenaline)、
式(L)で表されるクレンブテロール(clenbuterol)、
式(M)で表されるマブテロール(mabuterol)、
式(N)で表されるメトキシフェナミン(methoxyphenamine)、
式(O)で表されるヘキソプレナリン(hexoprenaline)、
式(P)で表されるフェノテロール(fenoterol)、

ビトルテロール(bitolterol)、クロルプレナリン(clorpren−aline)、メタプロテノール(metaprotenol)、イソプロテノール(isoprotenol)などがあげられ、これらは単独でも組み合わされていてもよい。
これらのβ刺激剤は、薬理学的に許容される塩(該薬理学的に許容される塩としては、前記化合物(I)の薬理学的に許容される塩として例示した塩などがあげられる)またはそれらの水和物として存在することもあるが、本発明の医薬組成物、肺疾患の治療および/または予防剤、キット、肺疾患の治療および/または予防用キットならびに肺疾患の治療および/または予防方法には、これらも使用することができる。また、これらβ刺激剤には、1つまたはそれ以上の不斉炭素などが存在し、2つ以上の立体異性体が存在するものもあるが、本発明の医薬組成物、肺疾患の治療および/または予防剤、キット、肺疾患の治療および/または予防用キットならびに肺疾患の治療および/または予防方法には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができる。
好ましく使用されるβ刺激剤としては、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロール、塩酸マブテロールなどがあげられる。
本発明の医薬組成物およびキットは、例えば肺疾患の治療などに使用することができ、より具体的にはCOPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎、間質性肺炎、肺繊維症などの治療に使用することができる。
本発明の医薬組成物、または肺疾患の治療および/または予防剤で使用される化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤は、これらそれぞれの有効成分を含有するように製剤化したものであれば、単剤(合剤)としてでも複数の製剤の組み合わせとしてでも使用または投与することができるが、中でも2つ以上の製剤の組み合わせが好ましい。複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する際には、同時にまたは時間を置いて別々に使用または投与することができる。なお、これら製剤は、例えば錠剤、注射剤、またはドライパウダー、エアロゾルなどの吸入剤などの形態として用いることが好ましい。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤との用量比(重量/重量)は、使用するβ刺激剤との組み合わせ、β刺激剤の効力などに応じて適宜調整すればよいが、具体的には例えば1/50(化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩/β刺激剤)〜50000/1、好ましくは1/30〜10000/1、より好ましくは1/20〜5000/1、さらに好ましくは1/10〜1000/1の間の比である。
複数の製剤の組み合わせとして投与する際には、例えば(a)化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と、(b)β刺激剤を含有する第2成分とを、それぞれ上記のように別途製剤化し、キットとして作成しておき、このキットを用いてそれぞれの成分を同時にまたは時間を置いて、同一対象に対して同一経路または異なった経路で投与することもできる。
該キットとしては、例えば保存する際に外部の温度や光による内容物である成分の変性、容器からの化学成分の溶出などがみられない容器であれば材質、形状などは特に限定されない2つ以上の容器(例えばバイアル、バッグなど)と内容物からなり、内容物である上記第1成分と第2成分が別々の経路(例えばチューブなど)または同一の経路を介して投与可能な形態を有するものが用いられる。具体的には、錠剤、注射剤、吸入剤などのキットがあげられる。吸入剤のキットにおいては、一般的に使用される定量噴霧式吸入器(MDI)、粉末吸入器などと組み合わせることもでき、上記第1成分と第2成分の投与のための1またはそれ以上の吸入装置が含まれていてもよい。例えば、上記第1成分の有効用量単位を含むドライパウダーを含むカプセルおよび上記第2成分の有効用量単位を含むドライパウダーを含むカプセルと共に、カプセルからのドライパウダーの送達に適合する1またはそれ以上のドライパウダー吸入装置などが含まれていてもよい。また、薬剤貯蔵部分が上記第1成分のドライパウダーを含む薬剤貯蔵部分と上記第2成分のドライパウダーを含む薬剤貯蔵部分からなる多用量ドライパウダー吸入器(MDPI)も当該キットに含まれる。
また、本発明の肺疾患の治療および/または予防方法は、上記で記載した医薬組成物または肺疾患の治療および/または予防剤で使用される化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤の使用または投与方法と同様にして実施できる。すなわち、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤を、それぞれの有効成分を含有するように製剤化し、例えば単剤としてまたは複数の製剤の組み合わせとして、好ましくは2つ以上の製剤を組み合わせて投与することにより実施できる。複数の製剤を組み合わせて投与する際には、これら製剤は、同時にまたは時間を置いて別々に投与することができ、上記で記載したようなキットを用いて投与することもできる。
次に、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩およびβ刺激剤を同時投与することによる肺疾患の治療効果について試験例により具体的に説明する。
試験例1 摘出気管支収縮弛緩試験
モルモット(350−500g)をエーテル麻酔下で放血致死させた後、気管支を摘出し、ジグザグ標本を作製する。栄養液としてクレーブス−ヘンゼライト(Krebs−Henseleit)液(37℃)を満たしたマグヌスバス中に、ジグザグ標本を懸垂する。ヒスタミンを添加することにより生じる収縮反応を、プリアンプ(AP−621G、日本光電)を介してレコーダーに記録する。なお、ヒスタミン添加による収縮(ヒスタミン収縮)が惹起された後、栄養液でジグザグ標本を洗浄し、ベースラインに戻ったところの差を100%最大弛緩とする。再度ヒスタミン収縮を惹起させ、試験化合物(化合物(I)および/またはβ刺激剤)を添加し、弛緩率を求める。この実験によって、ヒスタミン誘発による気管支平滑筋収縮に対する化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤の併用効果(気管支平滑筋収縮抑制または弛緩促進)を確認できる。
試験例2 ラットリポポリサッカライド(LPS)誘発気道好中球浸潤に対する化合物(I)とβ刺激剤の併用投与による抑制作用
試験は、公知の方法[パルマナリー・ファルマコロジー・セラピューティック(Pulm.Pharmacol.Ther.)、14巻、157−164ページ(2001年)]に準じて行った。
試験には7週齢の雄性SDラット(日本チャールズリバー社)を使用した。なお、ラットは室温19〜25℃、湿度30〜70%、1日12時間照明(午前7時〜午後7時)の飼育室にて、アルミケージに5〜6匹ずつ収容し、市販の固形飼料と水を自由に摂取させて飼育した。
化合物(I)1mgに対し乳糖(DVM社製)5mgからなる製剤(化合物(I)−乳糖製剤)を作製し、0.125重量/容量%チロキサポール水溶液(アレベール:登録商標、アズウェル社製)に化合物(I)の濃度が1.5mg/mLとなるように上記製剤を懸濁することにより化合物(I)投与用懸濁液を調製した。また、0.125重量/容量%チロキサポール水溶液に乳糖およびサルブタモール(シグマ社製)をそれぞれの濃度が7.5mg/mLおよび5μg/mLになるように懸濁することによりサルブタモール投与用懸濁液を調製した。さらに、0.125重量/容量%チロキサポール水溶液にサルブタモールおよび化合物(I)のそれぞれの濃度が5μg/mLおよび1.5mg/mLとなるように、サルブタモールおよび上記で調製した化合物(I)−乳糖製剤を懸濁させ併用投与用懸濁液を調製した。また、0.125重量/容量%チロキサポール水溶液に乳糖を7.5mg/mLとなるように溶解したものを投与溶媒とした。
プラスチックチャンバー(30×50×30cm)内にラットを入れ、5μg/mL LPS(シグマ社製)の生理食塩液を15分間、超音波ネブライザー(オムロン社製)を用い噴霧することにより吸入させた。LPS噴霧の30分前に、上記で調製したそれぞれの投与用懸濁液をラットの左右の気管支にそれぞれ100μLずつ、計200μL気管支内投与した(薬物投与群)。一方、同様にLPS噴霧の30分前に、投与溶媒を気管支内投与した群を設けた(溶媒投与群)。また、投与溶媒を気管支内投与し、LPSの生理食塩液の代わりに生理食塩液を噴霧した群を設けた(生理食塩液投与群)。
LPSの生理食塩液または生理食塩液噴霧の4時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を実施した。すなわち、ラットをペントバルビタール(大日本製薬社製)腹腔内投与により麻酔し、気管カニューレを介して生理食塩液で肺胞腔内を洗浄し、気管支肺胞洗浄液(BALF)を得た。
BALF中の総白血球数は自動血球カウンター(日本光電社製)を用いて測定した。また、細胞の塗抹標本を作成し、ギムザ染色をした後、光学顕微鏡にて観察し、好中球の細胞数を数えて比率を算出した。好中球数は総白血球数に好中球の細胞数比率を掛け合わせて算出した。BALF中の好中球数の増加に対する抑制率(%)は下記にしたがって計算した。

結果を第1表に示す。なお好中球数の各値は平均値±標準誤差で示してある。

溶媒投与群では、生理食塩液投与群よりBALF中の好中球数が3倍まで増加した。化合物(I)およびサルブタモールをそれぞれ単独投与しても、LPSにより誘発される好中球数の増加に影響を及ぼさなかった。一方、化合物(I)とサルブタモールを併用投与した群では、LPSによる好中球数の増加を97%抑制した。
LPSを吸入させることで、肺における好中球浸潤、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF−α)や強力な好中球遊走因子であるマクロファージ炎症蛋白質(MIP−2)などの増加などが観察されている[アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(Am.J.Physiol.)、276巻、L736ページ(1999年)]。これらの症状は、COPD患者で見られる症状と同様の症状である[トレンズ・イン・ファルマコロジカル・サイエンシス(Trends in Pharmacol.Sci.)、19巻、415ページ(1998年)]。従って、上記試験はCOPDの動物モデルとして有効であると考えられている。
COPD患者から得られるBALFや喀痰中には、多くの好中球が認められ、喀痰中または気管支粘膜中の好中球数が多い患者ほど気道閉塞は悪化している[アメリカン・レビュー・オブ・レスピラトリー・ディジィズ(Am.Rev.Respir.Dis.)、140巻、1527ページ(1989年);アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケア・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)、153巻、530ページ(1996年);アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・アンド・クリティカル・ケア・メディシン(Am.J.Respir.Crit.Care Med.)、158巻、1277ページ(1998年)]。また、好中球が放出するエラスターゼを動物に投与すると肺気腫様の症状を誘導する[ユーロピアン・レスピラトリー・ジャーナル(Eup.Respir.J.)、132巻、1155ページ(1985年)]。これらのことから、好中球の肺への浸潤を抑制することにより、例えばCOPD、肺気腫、慢性気管支炎などの治療が可能であると考えられる。
また、LPS誘発肺障害モデルは好中球性の炎症を呈することからARDSまたはALIの動物モデルとしても有効であると考えられている[ラボラトリー・アニマルズ(Lab.Anim.)、26巻、29ページ(1992年);アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・セル・アンド・モレキュラー・バイオロジー(Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.)、16巻、267ページ(1997年);インフラメーション(Inflammation)、23巻、263ページ(1999年)]。
一方、喘息の病態においても、肺胞内で好中球数が上昇していることが報告されている[クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・アレルギー(Clinical & Experimental Allergy)、33巻、1622ページ(2003年)]
従って、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤との併用は、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息などの肺疾患の治療および/または予防に有効であると考えられる。
β刺激剤は、喘息、気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫などの治療に用いられているが、その副作用として、重篤な血清カリウム値の低下を誘発することが報告されており、過度に使用を続けた場合、不整脈、場合によっては心停止を起こす可能性のあることが指摘されている(「1996年10月版 医療薬 日本医薬品集」、日本医薬情報センター編、薬業時報社、1996年)。
本発明の医薬組成物、肺疾患の治療および/もしくは予防剤、キット、または肺疾患の治療および/もしくは予防用キットにより、従来、喘息、気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫などの肺疾患の治療に用いられているβ刺激剤の投与量を低減でき、作用の向上だけでなく、上記の副作用を軽減できることも期待される。
上述したように、本発明に使用される医薬組成物または肺疾患の治療および/または予防剤は、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤それぞれの有効成分を含有するように製剤化したものであれば、単剤としてでも複数の製剤の組み合わせとしてでも使用、投与または製造することができる。これらの医薬組成物または肺疾患の治療および/または予防剤は、錠剤などの経口的投与または吸入剤、注射剤などの非経口的投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。また、複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する際には、同時にまたは時間を置いて別々に使用または投与することができる。
これら製剤は、それぞれ有効成分の他に製剤学的に許容される希釈剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、水、生理食塩水、植物油可溶化剤、等張化剤、保存剤、抗酸化剤などを適宜用いて常法により作成することができる。
錠剤の調製にあたっては、例えば乳糖などの賦形剤、澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを常法に従って用いればよい。
注射剤の調製にあたっては、水、生理食塩水、大豆油などの植物油、各種の溶剤、可溶化剤、等張化剤、保存剤、抗酸化剤などを常法により用いればよい。
また、吸入剤は活性成分を粉末または液状にして、吸入噴射剤または担体中に配合し、適当な吸入容器に充填することにより製造される。また上記活性成分が粉末の場合は通常の機械的粉末吸入器を、液状の場合はネブライザーなどの吸入器をそれぞれ使用することもできる。ここで吸入噴射剤としては従来公知のものを広く使用でき、フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−123、フロン−142c、フロン−134a、フロン−227、フロン−C318、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなどのフロン系化合物、プロパン、イソブタン、n−ブタンなどの炭化水素類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、窒素ガス、炭酸ガスなどの圧縮ガスなどがあげられる。さらに必要に応じて、各種の希釈剤、防腐剤、フレーバー類、上記で例示した賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
上記の目的で、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤を複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する場合には、それぞれの用量および投与回数は投与形態、患者の年齢、体重、症状などにより異なるが、通常一日当たり、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤を、それぞれ以下の用量で投与するのが好ましい。
経口的に、例えば錠剤として投与する場合、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤を、成人一人当たり、それぞれ0.01〜1000mgと0.01〜1000mg、好ましくは0.05〜300mgと0.05〜500mg、さらに好ましくは0.1〜200mgと1〜300mg、通常一日一回ないし数回にわけて、同時にまたは時間を置いて別々に投与する。
非経口的に、例えば注射剤または吸入剤として投与する場合、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤を、成人一人当たり、それぞれ1μg〜500mgと1μg〜500mg、好ましくは5μg〜300mgと0.04〜300mg、さらに好ましくは10μg〜100mgと0.05〜10mg、通常一日一回ないし数回にわけて、同時にまたは時間を置いて別々に投与する。
また上記の目的で、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤を単剤として使用または投与する場合には、それぞれの用量および投与回数は投与形態、患者の年齢、体重、症状などにより異なるが、上記の複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する場合のそれぞれの用量で1つの製剤として調製し、使用または投与するのが好ましい。
以下に、本発明の態様を実施例で説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
実施例1:錠剤(化合物(I))
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。化合物(I)40g、乳糖286.8gおよび馬鈴薯澱粉60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
処方 化合物(I) 20 mg
乳糖 143.4 mg
馬鈴薯澱粉 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6 mg
200 mg
実施例2:錠剤(硫酸サルブタモール)
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。硫酸サルブタモール8g、乳糖306.8gおよび馬鈴薯澱粉72gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分4mgを含有する)を得る。
処方 硫酸サルブタモール 4 mg
乳糖 153.4 mg
馬鈴薯澱粉 36 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6 mg
200 mg
実施例3:錠剤(化合物(I)と硫酸サルブタモールの単剤)
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。化合物(I)40g、硫酸サルブタモール40g、乳糖278.8gおよび馬鈴薯澱粉60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり化合物(I)20mgおよび硫酸サルブタモール4mgを含有する)を得る。
処方 化合物(I) 20 mg
硫酸サルブタモール 4 mg
乳糖 139.4 mg
馬鈴薯澱粉 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6 mg
200 mg
実施例4:注射剤(化合物(I))
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。化合物(I)1gを精製大豆油に溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mLとして練合・乳化する。得られる分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに2mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2mgを含有する)を得る。
処方 化合物(I) 2 mg
精製大豆油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72 mL
2.00 mL
実施例5:注射剤(フマル酸ホルモテロール)
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。フマル酸ホルモテロール0.25gを精製大豆油に溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mLとして練合・乳化する。得られる分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに2mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分0.5mgを含有する)を得る。
処方 フマル酸ホルモテロール 0.5 mg
精製大豆油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72 mL
2.00 mL
実施例6:注射剤(化合物(I)とフマル酸ホルモテロールの単剤)
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。化合物(I)1gおよびフマル酸ホルモテロール0.25gを精製大豆油に溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mLとして練合・乳化する。得られる分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに2mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり化合物(I)2mgおよびフマル酸ホルモテロール0.5mgを含有する)を得る。
処方 化合物(I) 2 mg
フマル酸ホルモテロール 0.5 mg
精製大豆油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72 mL
2.00 mL
実施例7:ドライパウダー吸入剤(化合物(I))
常法により、次の組成からなるドライパウダー吸入剤を調製する。ジェットミルを用いて、化合物(I)を粉砕する(体積平均粒子径:5〜20μm)。得られる化合物(I)の粉砕物と乳糖(Pharmatose 325M;登録商標、DMV社製)とを重量比1:5で混合し、ドライパウダー製剤を得る。該製剤は慣用のドライパウダー吸入器により、投与が可能である。
処方 化合物(I) 16.7 mg
乳糖 83.3 mg
100 mg
実施例8:ドライパウダー吸入剤(硫酸プロカテロール)
常法により、次の組成からなるドライパウダー吸入剤を調製する。ジェットミルを用いて、硫酸プロカテロールを粉砕する(体積平均粒子径:5〜20μm)。得られる硫酸プロカテロールの粉砕物と乳糖(Pharmatose 325M;登録商標、DMV社製)とを重量比1:30で混合し、ドライパウダー製剤を得る。該製剤は慣用のドライパウダー吸入器により、投与が可能である。
処方 硫酸プロカテロール 3.2 mg
乳糖 96.8 mg
100 mg
実施例9:ドライパウダー吸入剤(化合物(I)と硫酸プロカテロールの単剤)
常法により、次の組成からなるドライパウダー吸入剤を調製する。ジェットミルを用いて、化合物(I)と硫酸プロカテロールをそれぞれ粉砕する(体積平均粒子径:5〜20μm)。得られる化合物(I)と硫酸プロカテロールのそれぞれの粉砕物と乳糖(Pharmatose 325M;登録商標、DMV社製)とを重量比6:1:30で混合し、ドライパウダー製剤を得る。該製剤は慣用のドライパウダー吸入器により、投与が可能である。
処方 化合物(I) 16.2 mg
硫酸プロカテロール 2.7 mg
乳糖 81.1 mg
100 mg
【産業上の利用可能性】
本発明により、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩とβ刺激剤とを含有する医薬組成物などが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩と(b)β刺激剤とを含有する医薬組成物。
【請求項2】
β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である請求の範囲第1項記載の医薬組成物。
【請求項3】
(a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩と(b)β刺激剤を有効成分とする同時にまたは時間を置いて別々に投与するための肺疾患の治療および/または予防剤。
【請求項4】
β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である請求の範囲第3項記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
【請求項5】
肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、慢性気管支炎、慢性急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第3または4項記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
【請求項6】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第3または4項記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
【請求項7】
肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第3または4項記載の肺疾患の治療および/または予防剤。
【請求項8】
(a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)β刺激剤を含有する第2成分を有することを特徴とするキット。
【請求項9】
β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である請求の範囲第8項記載のキット。
【請求項10】
(a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)β刺激剤を含有する第2成分を有することを特徴とする肺疾患の治療および/または予防用キット。
【請求項11】
β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である請求の範囲第10項記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
【請求項12】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第10または11項記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
【請求項13】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第10または11項記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
【請求項14】
肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第10または11項記載の肺疾患の治療および/または予防用キット。
【請求項15】
β刺激剤と同時にまたは時間を置いて別々に投与するための式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項16】
β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である請求の範囲第15項記載の7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項17】
β刺激剤と同時にまたは時間を置いて別々に投与するための式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項18】
β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である請求の範囲第17項記載の医薬組成物。
【請求項19】
(a)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩および(b)β刺激剤を同時にまたは時間を置いて別々に投与することを特徴とする肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項20】
β刺激剤が、塩酸エフェドリン、dl−塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミン、硫酸イソプレナリン、塩酸イソプレナリン、硫酸オルシプレナリン、塩酸クロルプレナリン、塩酸トリメトキノール、硫酸サルブタモール、硫酸テルブタリン、硫酸ヘキソプレナリン、塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、臭化水素酸フェノテロール、フマル酸ホルモテロール、塩酸クレンブテロールおよび塩酸マブテロールからなる群から選ばれる化合物である請求の範囲第19項記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項21】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第19または20項記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項22】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第19または20項記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項23】
肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第19または20項記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項24】
請求の範囲第1または2項記載の医薬組成物を投与することを特徴とする肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項25】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第24項記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項26】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第24項記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項27】
肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第24項記載の肺疾患の治療および/または予防方法。
【請求項28】
肺疾患の治療および/または予防剤の製造のための請求の範囲第1または2項記載の(a)および(b)の使用。
【請求項29】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDS、ALI、喘息、気管支喘息、急性好酸球性肺炎および慢性好酸球性肺炎からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第28項記載の使用。
【請求項30】
肺疾患が、COPD、肺気腫、慢性気管支炎、ARDSおよびALIからなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第28項記載の使用。
【請求項31】
肺疾患が、喘息および気管支喘息からなる群から選ばれる疾患である請求の範囲第28項記載の使用。

【国際公開番号】WO2004/087151
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504280(P2005−504280)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004663
【国際出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】